説明

不揮発性半導体記憶装置

【課題】素子領域内に含まれる不純物の拡散を抑制する。
【解決手段】不揮発性半導体記憶装置は、基板101と、前記基板101内に形成されたウェル領域102とを備える。前記装置は、前記ウェル領域102内に形成された素子分離溝Tにより、前記基板の主面に平行な第1方向に延び、前記第1方向に垂直な第2方向に互いに隣接するよう区画された複数の素子領域103と、前記素子分離溝T内に埋め込まれ、前記素子領域103同士を分離する素子分離絶縁膜104とを備える。前記装置は、前記複数の素子領域103の内部に、前記複数の素子領域のそれぞれを上部素子領域103Aと下部素子領域103Bとに分断するよう形成され、前記ウェル領域102内に注入された不純物の拡散を抑制する第1の拡散抑制層111と、前記上部素子領域103Aの前記第2方向に垂直な側面に形成され、前記不純物の拡散を抑制する第2の拡散抑制層112とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、不揮発性半導体記憶装置に関し、例えば、浮遊ゲートに電荷を蓄積することでデータを記録するNAND型不揮発性メモリに適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
NAND型不揮発性メモリの製造工程では、基板内にウェル領域を形成する際、所望のチャネルプロファイルが得られるよう不純物注入を行う。使用する不純物(ドーパント)の例としては、B(ボロン)等が挙げられる。
【0003】
しかしながら、理想的なチャネルプロファイルが得られるよう不純物注入を行っても、その後のプロセスによる熱工程によって、注入した不純物が拡散し、チャネルプロファイルが理想的なプロファイルから逸脱してしまう。例えば、チャネル表面の不純物が熱工程によって深い方向に拡散してしまうと、非選択ビット線のチャネル電位が、空乏層が伸びないために上昇せず、メモリのブースト効率が悪化し、記録時(プログラム時)の誤書き込みが増大するという問題が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−31481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、素子領域(チャネル領域)内に含まれる不純物の拡散を抑制することが可能な不揮発性半導体記憶装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様の不揮発性半導体記憶装置は、例えば、基板と、前記基板内に形成されたウェル領域とを備える。更に、前記装置は、前記ウェル領域内において、前記ウェル領域内に形成された素子分離溝により、前記基板の主面に平行な第1方向に延び、かつ、前記第1方向に垂直な第2方向に互いに隣接するよう区画された複数の素子領域と、前記素子分離溝内に埋め込まれ、前記素子領域同士を分離する素子分離絶縁膜とを備える。更に、前記装置は、前記素子領域上にゲート絶縁膜を介して形成された浮遊ゲートと、前記浮遊ゲート上にゲート間絶縁膜を介して形成された制御ゲートとを備える。そして、前記装置は更に、前記複数の素子領域のそれぞれの内部に、前記複数の素子領域のそれぞれを上部素子領域と下部素子領域とに分断するよう形成され、前記ウェル領域内に注入された不純物の拡散を抑制する第1の拡散抑制層と、前記それぞれの上部素子領域の前記第2方向に垂直な側面に形成され、前記不純物の拡散を抑制する第2の拡散抑制層とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1実施形態の不揮発性半導体記憶装置の構成を示す平面図である。
【図2】図1の不揮発性半導体記憶装置の断面を示す側方断面図である。
【図3】図1の不揮発性半導体記憶装置の別の断面を示す側方断面図である。
【図4】素子領域内の不純物濃度の深さ方向のプロファイルを示したグラフである。
【図5】第1実施形態の不揮発性半導体記憶装置の製造方法を説明するための側方断面図(1/4)である。
【図6】第1実施形態の不揮発性半導体記憶装置の製造方法を説明するための側方断面図(2/4)である。
【図7】第1実施形態の不揮発性半導体記憶装置の製造方法を説明するための側方断面図(3/4)である。
【図8】第1実施形態の不揮発性半導体記憶装置の製造方法を説明するための側方断面図(4/4)である。
【図9】第1実施形態の不揮発性半導体記憶装置の製造方法の変形例を説明するための側方断面図(1/1)である。
【図10】第2実施形態の不揮発性半導体記憶装置の構成を示す側方断面図である。
【図11】第2実施形態の不揮発性半導体記憶装置の製造方法を説明するための側方断面図(1/2)である。
【図12】第2実施形態の不揮発性半導体記憶装置の製造方法を説明するための側方断面図(2/2)である。
【図13】第3実施形態の不揮発性半導体記憶装置の構成を示す側方断面図である。
【図14】第4実施形態の不揮発性半導体記憶装置の構成を示す側方断面図である。
【図15】第5実施形態の不揮発性半導体記憶装置の構成を示す側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の不揮発性半導体記憶装置の構成を示す平面図である。図1の不揮発性半導体記憶装置は、NAND型不揮発性メモリとなっている。
【0010】
本実施形態の不揮発性半導体記憶装置のメモリセルアレイ内では、図1に示すように、セルトランジスタ201及び選択トランジスタ202が、基板101上に2次元アレイ状に配置されている。図1には、基板101の主面に平行で、互いに直交するX方向及びY方向が示されている。X方向は、これらのトランジスタのチャネル幅方向、Y方向は、これらのトランジスタのゲート長方向に相当する。図1には更に、基板101の主面に垂直で、基板101の深さ方向に相当するZ方向が示されている。
【0011】
図1に示すメモリセルアレイ内では、基板101内にウェル領域102が形成され、ウェル領域102内に複数の素子領域103が形成されている。これら素子領域103は、ウェル領域102内において、Y方向に延び、X方向に互いに隣接するよう区画されている。Y方向は、本発明の第1方向の例であり、X方向は、本発明の第2方向の例である。素子領域103は、AA(Active Area)とも呼ばれる。セルトランジスタ201及び選択トランジスタ202は、図1に示すように、素子領域103上に形成されている。
【0012】
図1には更に、ウェル領域102内に形成され、素子領域103同士を分離する素子分離絶縁膜104が示されている。本実施形態の素子分離絶縁膜104は、STI(Shallow Trench Isolation)絶縁膜となっている。
【0013】
図1には更に、X方向に延びるワード線WL1〜WLN(Nは2以上の整数)と、X方向に延びる選択線SL1,SL2が示されている。本実施形態では、セルトランジスタ201の制御ゲートが、X方向に延びる形状に加工され、ワード線WL1〜WLNとなっている。同様に、選択トランジスタ202の制御ゲートも、X方向に延びる形状に加工され、選択線SL1,SL2となっている。
【0014】
図1には更に、Y方向に延びるビット線BL1〜BL3が示されている。図1に示すように、セルトランジスタ201は、ワード線WL1〜WLNとそれぞれの素子領域103との交点に設けられ、選択トランジスタ202は、選択線SL1,SL2とそれぞれの素子領域103との交点に設けられている。
【0015】
それぞれの素子領域103上では、選択トランジスタ202と、選択トランジスタ202間に挟まれた複数のセルトランジスタ201により、NANDストリングが構成されている。図1では、NANDストリングがX方向に複数本配置されてメモリセルアレイが構成されている。
【0016】
図2は、図1の不揮発性半導体記憶装置の断面を示す側方断面図である。図2は、図1に示すI−I’線に沿ったAA(Active Area)断面図となっている。図2には、不揮発性半導体記憶装置のX方向に平行な断面が示されている。
【0017】
図2には、図1と同様、基板101と、ウェル領域102と、素子領域103と、素子分離絶縁膜104が示されている。本実施形態では、基板101は、半導体基板、より詳細には、シリコン基板となっており、ウェル領域102は、P型不純物が注入されたP型ウェルとなっている。P型不純物は、ここではB(ボロン)である。また、基板101とウェル領域102との間には、埋め込みウェル領域102Nが形成されている。埋め込みウェル領域102は、N型不純物が注入されたN型ウェルとなっている。N型不純物は、例えばP(リン)である。
【0018】
図2には更に、ウェル領域102内に形成された素子分離溝Tが示されている。素子分離溝Tにより、素子領域103は、ウェル領域102内において、Y方向に延び、X方向に隣接し合うよう区画されている。また、素子分離絶縁膜104は、素子分離溝T内に埋め込まれ、これら素子領域103同士を分離している。
【0019】
図2には更に、図1と同様、素子領域103上に形成されたセルトランジスタ201が示されている。
【0020】
セルトランジスタ201はそれぞれ、ゲート絶縁膜121、浮遊ゲート122、ゲート間絶縁膜123、及び制御ゲート124を含んでいる。浮遊ゲート122は、素子領域103上にゲート絶縁膜121を介して形成されており、制御ゲート124は、浮遊ゲート122上にゲート間絶縁膜123を介して形成されている。ゲート絶縁膜121は、トンネル絶縁膜とも呼ばれ、ゲート間絶縁膜123は、IPD(Inter Poly-Si Dielectric)膜とも呼ばれる。
【0021】
ゲート絶縁膜121と浮遊ゲート122が、個々のセルトランジスタ201ごとに分断されているのに対し、ゲート間絶縁膜123と制御ゲート124は、X方向に隣接し合うセルトランジスタ201間で共有されている。本実施形態では、図2に示すように、素子分離絶縁膜104の上面が、浮遊ゲート122の上面よりも低くなっている。その結果、素子分離絶縁膜104上に位置するゲート間絶縁膜123の下面は、浮遊ゲート122上に位置するゲート間絶縁膜123の下面よりも低くなっており、同様に、素子分離絶縁膜104上に位置する制御ゲート124の下面は、浮遊ゲート122上に位置する制御ゲート124の下面よりも低くなっている。
【0022】
図2には更に、基板101上に、セルトランジスタ201を覆うよう形成された層間絶縁膜131が示されている。層間絶縁膜131は、例えばシリコン酸化膜である。
【0023】
図2には更に、ウェル領域102内に注入された不純物の拡散を抑制する第1及び第2の拡散抑制層111,112が示されている。
【0024】
第1の拡散抑制層111は、図2に示すように、素子領域103を上部素子領域103Aと下部素子領域103Bとに分断するよう、素子領域103内に形成されている。これにより、上部素子領域103Aに含まれる不純物が、第1の拡散抑制層111や下部素子領域103Bに拡散することや、逆に下部素子領域103Bに含まれる不純物が、第1の拡散抑制層111や上部素子領域103Aに拡散することが抑制される。
【0025】
図2では、素子領域103のX方向に垂直な側面が、S1で示されており、更に、上部素子領域103A、第1の拡散抑制層111、及び下部素子領域103BのX方向に垂直な側面がそれぞれ、S1A,S1B,及びS1Cで示されている。更には、浮遊ゲート122のX方向に垂直な側面が、S2で示され、素子分離溝Tの底面が、S3で示されている。更には、基板101の表面(素子領域103の上面)が、Sで示されている。
【0026】
第2の拡散抑制層112は、図2に示すように、素子領域103のX方向に垂直な側面S1に形成されており、より詳細には、上部素子領域103A、第1の拡散抑制層111、及び下部素子領域103BのX方向に垂直な側面S1A,S1B,及びS1Cに形成されている。これにより、上部素子領域103A、第1の拡散抑制層111、及び下部素子領域103Bに含まれる不純物が、素子分離絶縁膜104に拡散することが抑制される。
【0027】
第2の拡散抑制層112は更に、図2に示すように、素子分離溝Tの底面S3にも形成されている。これにより、素子分離溝Tの下部のウェル領域102に含まれる不純物が、素子分離絶縁膜104に拡散することが抑制される。
【0028】
図2では、上部素子領域103Aの下面及びX方向に垂直な側面S1Aが、第1及び第2の拡散抑制層111,112で完全に囲われている。これにより、上部素子領域103Aに含まれる不純物が、上部素子領域103Aの下面や側面S1Aを介して、外部に拡散することが抑制される。後述するように、本実施形態では、特に、上部素子領域103A内の不純物の拡散を抑制することが望まれるため、上部素子領域103Aの下面及び側面S1Aを、第1及び第2の拡散抑制層111,112で完全に囲うことの利点は大きい。
【0029】
本実施形態では、第1及び第2の拡散抑制層111,112は、SiC(シリコンカーバイド)層、より詳細には、SiX1-X層(ただし0<X<1)となっている。炭素原子Cは、シリコン原子Siと同じIV族原子であるが、シリコン原子Siよりも原子のサイズが小さい。よって、SiC層は、Si原子による格子間にC原子が埋まったような構造を有しており、格子間にC原子が存在することで、格子間にB原子等の不純物原子が入りにくくなっている。その結果、ウェル領域102内の不純物が、第1及び第2の拡散抑制層111,112の内部に拡散することや、第1及び第2の拡散抑制層111,112を介して拡散することが抑制される。
【0030】
本実施形態では、上記のSiC層内に含まれるC原子の濃度は、1.0×1018[atoms/cm3]から1.0×1020[atoms/cm3]の範囲内とし、望ましくは、1.0×1019[atoms/cm3]とする。これにより、本実施形態では、SiC層により、不純物の拡散を効果的に抑制することができる。
【0031】
図3は、図1の不揮発性半導体記憶装置の別の断面を示す側方断面図である。図3は、図1に示すJ−J’線に沿ったGC(Gate Conductor)断面図となっている。図3には、不揮発性半導体記憶装置のY方向に平行な断面が示されている。
【0032】
図3には、図2と同様、基板101と、ウェル領域102と、ウェル領域102(素子領域103)内に形成された第1の拡散抑制層111が示されている。
【0033】
図3には更に、Y方向に隣接し合うセルトランジスタ201と、これらのセルトランジスタ201を覆う層間絶縁膜131と、層間絶縁膜131上に形成されたビット線BL1が示されている。図3に示すように、第1の拡散抑制層111は、これらのセルトランジスタ201の下部に連続して形成されている。図3には更に、ウェル領域102内に、これらのセルトランジスタ201を挟むよう形成されたソース/ドレイン領域141が示されている。
【0034】
ここで、図2に示す素子領域103内の不純物濃度の深さ方向のプロファイル(不純物濃度プロファイル)について説明する。図2では、この深さ方向が、Z方向として示されている。
【0035】
図4は、素子領域103内の不純物濃度の深さ方向のプロファイルを示したグラフである。図4において、横軸は、基板101の表面Sからの深さ(nm)を表し、縦軸は、素子領域103内の不純物濃度(atoms/cm3)をログスケールで表す。
【0036】
本実施形態では、素子領域103内の不純物は、B(ボロン)原子である。図4では、B原子濃度の理想的なプロファイルが、曲線C1で示されている。図4では更に、素子領域103の内部及び側面に第1及び第2の拡散抑制層111,112を形成せず、B原子の拡散が生じた様子を内製シミュレータを用いて計算して得られたB原子濃度のプロファイルが、曲線C2で示されている。更には、同様のシミュレーションにより得られたAs(ヒ素)原子濃度及びP(リン)原子濃度のプロファイルが、それぞれ曲線C3及びC4で示されている。なお、「深さ」とは、基板101(ウェル領域102)の表面Sからの深さを意味する。
【0037】
ここで、理想的プロファイルC1について説明する。
【0038】
理想的プロファイルC1は、図4に示すように、2つの極大点P1,P3と、これらに挟まれた位置にある極小点P2を有している。より詳細には、理想的プロファイルC1は、基板101の表面付近、例えば、深さ約10nmの地点に極大点P1を有し、極大点P1よりやや深い位置、例えば、深さ約30nm〜60nm(例えば50nm)の地点に極小点P2を有し、素子分離絶縁膜104の底部(素子分離溝Tの底面S3)よりもやや浅い位置、例えば、深さ約150nmの地点に極大点P3を有している。
【0039】
このようなプロファイルには、次のような利点がある。
【0040】
まず、基板101の表面付近の不純物濃度が濃いことには、短チャネル効果を抑制する効果や、セルトランジスタ201の中性閾値Vthを向上させる効果がある。
【0041】
また、極大点P1よりやや深い位置の不純物濃度が薄いことには、メモリのブースト効率を向上させ、記録時(プログラム時)の誤書き込みを減らす効果がある。理由は、書き込み時において、非選択メモリセルのチャネル付近まで空乏層が延びるからである。その結果、非選択メモリセルには電子が注入されず、誤書き込みを起こす可能性が低くなる。なお、極小点P2の位置は、書き込み時において、非選択メモリセルのチャネル付近まで空乏層が延びる位置、と言うことができる。
【0042】
そして、素子分離絶縁膜104の底部よりもやや浅い位置の不純物濃度が濃いことには、ビット線間(素子領域103間)でのパンチスルーを抑制する効果がある。書き込み時において、一のNANDストリングのセルトランジスタ201が選択され、他のNANDストリングのセルトランジスタ201が非選択の場合、これらのNANDストリング間には大きな電位差が発生する。ここで、極大点P3が素子分離絶縁膜104の底部よりも深い位置にあると、他のNANDストリングの空乏層が、素子分離絶縁膜104の底部を越えて、一のNANDストリングにまで広がる可能性が高くなる。その結果、X方向に隣接するNANDストリング間でパンチスルーが発生する可能性が高くなる。一方、素子分離絶縁膜104の底部よりもやや浅い位置に極大点P3があれば、他のNANDストリングの空乏層が、素子分離絶縁膜104の底部を超えにくくなる。その結果、他のNANDストリングの空乏層が、隣接する一のNANDストリングにまで広がることを防止することができ、パンチスルーを抑制することができる。
【0043】
よって、一般に、NAND型不揮発性メモリを製造する際には、B原子のプロファイルがこのような理想的プロファイルC1となるよう、B原子の注入工程を行う。しかしながら、従来の製造方法によれば、このような理想的プロファイルC1が、その後のプロセスによる熱工程により、プロファイルC2のように崩れてしまう。
【0044】
この主な原因は、極大点P1付近や極大点P3付近のB原子が、熱工程によって、極小点P2付近に拡散してしまうことにあると考えられる。特に、極大点P1から極小点P2までの距離は比較的短いにもかかわらず、両者のB原子濃度差は大きいため、極大点P1付近から極小点P2付近へは、B原子が拡散しやすいと考えられる。
【0045】
そこで、本実施形態では、図1の不揮発性半導体記憶装置を製造する際、図4に示すように、第1の拡散抑制層111を、例えば、深さ50nmの地点を含む位置に形成する。本実施形態では、このような第1の拡散抑制層111により、素子領域103が、基板101の表面付近を含む上部素子領域103Aと、素子分離絶縁膜104の底部よりもやや浅い位置を含む下部素子領域103Bとに分断される。
【0046】
本実施形態では、このような第1の拡散抑制層111により、上部素子領域103Aや下部素子領域103B内のB原子が、第1の拡散抑制層111内に拡散することが抑制される。更には、上部素子領域103A内のB原子が、下部素子領域103Bへと拡散することや、下部素子領域103B内のB原子が、上部素子領域103Aへと拡散することも抑制される。これにより、本実施形態では、理想的プロファイルC1が、熱工程により崩れることを抑制することが可能となる。
【0047】
本実施形態では更に、上述のように、第2の拡散抑制層112を、上部素子領域103A、第1の拡散抑制層111、及び下部素子領域103Bの側面S1A,S1B,及びS1Cに形成する(図2参照)。これにより、これらの内部のB原子が素子分離絶縁膜104へと拡散することも抑制され、理想的プロファイルC1が熱工程により崩れることが、更に抑制される。このような効果には、素子分離溝Tの底面S3に形成された第2の拡散抑制層112も同様に寄与する。
【0048】
また、本実施形態では、上述のように、上部素子領域103Aの下面及び側面S1Aが、第1及び第2の拡散抑制層111,112で完全に囲われている(図2参照)。理想的プロファイルC1では、図4に示すように、極大点P1付近のB原子濃度が、極小点P2付近(更には極大点P3付近)のB原子濃度に比べて高く、また、極大点P1から極小点P2までの距離は比較的短いにもかかわらず、両者のB原子濃度差は大きい。よって、上部素子領域103Aから第1の拡散抑制層111や素子分離絶縁膜104へは、B原子が拡散しやすいと考えられる。
【0049】
よって、本実施形態では、上部素子領域103Aの下面及び側面S1Aを、第1及び第2の拡散抑制層111,112で完全に囲い、上部素子領域103AからのB原子の拡散を抑制している。これにより、上部素子領域103AからのB原子の拡散に起因する理想的プロファイルC1の崩れを抑制することが可能となる。
【0050】
ここで、図4を参照して、素子領域101の内部及び側面に、第1及び第2の拡散抑制層111,112を形成することの利点について、より詳細に説明する。
【0051】
本実施形態では、図1の不揮発性半導体記憶装置を製造する際、第1の拡散抑制層111を、おおよそ深さ50nmの地点を含む位置に形成する。これにより、熱工程による極小点P2付近へのB原子濃度の拡散が抑制される。その結果、本実施形態では、メモリのブースト効率が向上し、記録時の誤書き込みが少なくなる。
【0052】
また、本実施形態では、第1の拡散抑制層111により、素子領域103が、深さ10nmの地点を含む上部素子領域103Aと、素子分離絶縁膜104の底部よりやや浅い地点を含む下部素子領域103Bとに分断される。
【0053】
これにより、上部素子領域103A内のB原子が、第1の拡散抑制層111(更には下部素子領域103B)に拡散することが抑制される。その結果、本実施形態では、短チャネル効果が抑制されると共に、セルトランジスタ201の中性閾値Vthが向上する。
【0054】
更には、下部素子領域103B内のB原子が、第1の拡散抑制層111(更には上部素子領域103A)に拡散することが抑制される。その結果、本実施形態では、書き込み時における隣接するNANDストリング間でのパンチスルーが抑制される。
【0055】
このように、本実施形態では、素子領域101の内部及び側面に、第1及び第2の拡散抑制層111,112を形成することで、素子領域103内の不純物濃度プロファイルが理想的プロファイルC1から逸脱することを抑制することが可能となる。
【0056】
よって、本実施形態によれば、第1の拡散抑制層111内のB原子濃度が、上部素子領域103A内のB原子濃度や、下部素子領域103B内のB原子濃度よりも低い不揮発性半導体記憶装置を製造することが可能となる。このような不純物濃度プロファイルによれば、上述のように、メモリのブースト効率の向上、記録時の誤書き込みの減少、短チャネル効果の抑制、セルトランジスタ201の中性閾値Vthの向上、ビット線間でのパンチスルーの抑制等の効果が得られる。
【0057】
より詳細に言うと、上記の不純物濃度プロファイルでは、第1の拡散抑制層111付近のB原子濃度が、上部素子領域103A内のゲート絶縁膜121付近のB原子濃度や、下部素子領域103B内の素子分離絶縁膜104の底部よりやや浅い位置のB原子濃度よりも低くなる。下部素子領域103内における素子分離絶膜104の底部と同じ高さの地点を底部地点と呼ぶ場合、下部素子領域103B内の素子分離絶縁膜104の底部よりやや浅い位置は、例えば、底部地点よりも上方における底部地点近傍の地点と表現することができる。
【0058】
本実施形態では、第1及び第2の拡散抑制層111,112は、上述のように、SiC層となっている。C原子は、B原子に対して拡散を抑制する効果を有するが、As原子の拡散に対する影響は小さい。よって、第1及び第2の拡散抑制層111,112をSiC層とすることには、ソース/ドレイン領域141等のセル拡散層内のAs原子への影響が小さいという利点がある。このことも、メモリのブースト効率を向上させる点において有利である。
【0059】
なお、図4では、第1の拡散抑制層111の上面は、深さ約30nmの地点に位置しているが、これとは別の深さに位置していても構わない。同様に、図4では、第1の拡散抑制層111の下面は、深さ約70nmの地点に位置しているが、これとは別の深さに位置していても構わない。
【0060】
ここで、図2を参照して、第2の拡散抑制層112の形成位置について、より詳細に説明する。
【0061】
上述のように、本実施形態では、上部素子領域103Aの下面及び側面S1Aを、第1及び第2の拡散抑制層111,112で完全に囲い、上部素子領域103AからのB原子の拡散を抑制している。
【0062】
本実施形態では、この第2の拡散抑制層112は、図2に示すように、上部素子領域103Aの側面S1Aだけでなく、素子領域103の側面S1全体を覆うよう形成することが望ましい。即ち、第2の拡散抑制層112は、上部素子領域103Aの側面S1Aだけでなく、上部素子領域103A、第1の拡散抑制層111、及び下部素子領域103Bの側面S1A,S1B,及びS1Cに形成することが望ましい。これにより、素子領域103から素子分離絶縁膜104へのB原子の拡散を抑制し、セルトランジスタ201のパンチスルー耐圧やカットオフ特性を向上させることが可能となる。
【0063】
また、本実施形態では、第2の拡散抑制層112は、図2に示すように、素子領域103及び浮遊ゲート122のX方向に垂直な側面S1及びS2のうち、素子領域103の側面S1のみに形成されている。その結果、ゲート間絶縁膜123は、浮遊ゲート122の側面S2に直接接するよう形成されている。その結果、セルトランジスタ201のカップリング比が低減されずに済むという利点が得られる。
【0064】
以下、第1実施形態の不揮発性半導体記憶装置の製造方法について説明する。
【0065】
図5から図8は、第1実施形態の不揮発性半導体記憶装置の製造方法を説明するための側方断面図である。図5(A)から図8(B)に示す側方断面図は、いずれも図1に示すI−I’線に沿ったAA断面図に相当する。
【0066】
まず、基板101上に、犠牲層301を形成する(図5(A))。基板101はここでは、半導体基板、より詳細には、シリコン基板である。次に、基板101内に不純物を注入して、基板101内にウェル領域102を形成する(図5(A))。この不純物はここでは、P型不純物、より詳細には、B(ボロン)原子である。更には、基板101内に不純物を注入して、基板101内に埋め込みウェル領域102Nを形成する(図5(A))。この不純物はここでは、N型不純物、例えば、P(リン)原子である。
【0067】
次に、ウェル領域102内に、不純物の拡散抑制用の原子(ここでは炭素原子C)を注入する(図5(B))。これにより、ウェル領域102内に、ウェル領域102を上部ウェル領域102Aと下部ウェル領域102Bとに分断するよう、第1の拡散抑制層111が形成される(図5(B))。第1の拡散抑制層111は、その後の種々のアニール工程によって結晶化される。
【0068】
なお、図5(A)の工程において、B原子の注入は、B原子のプロファイルが、図4に示す理想的プロファイルC1となるよう行われる。また、図5(B)の工程において、C原子の注入は、基板101の表面から深さ約50nmの地点がC原子濃度のピーク(極大点)となるよう行われる。これにより、第1の拡散抑制層111は、基板101の表面から深さ50nmの地点を含む位置に形成される。
【0069】
次に、犠牲層301を除去した後、ウェル領域102上に、ゲート絶縁膜121の材料となる第1絶縁膜311を形成する(図6(A))。次に、第1絶縁膜311上に、浮遊ゲート122の材料となる第1電極層312を形成する(図6(A))。第1電極層312はここでは、ポリシリコン層とする。次に、第1電極層312上に、ハードマスクの材料となるマスク層321を形成する(図6(A))。
【0070】
次に、リソグラフィ及びRIE(Reactive Ion Etching)により、マスク層321、第1電極層312、第1絶縁膜311、及び第1の拡散抑制層111を貫通する素子分離溝Tを形成する(図6(B))。これにより、ウェル領域102内に、Y方向に延び、X方向に互いに隣接するよう区画された複数の素子領域103が形成される(図6(B))。
【0071】
素子分離溝Tは、その底面S3を、下部ウェル領域102Bの上面と下面との間に有するよう形成される。その結果、図6(B)に示すように、素子分離溝Tの形成後に残った上部ウェル領域102Aが、上部素子領域103Aとなり、素子分離溝Tの形成後に残った下部ウェル領域102Bの上方部分が、下部素子領域103Bとなる。
【0072】
図6(B)には、素子分離溝T内に露出した、素子領域103のX方向に垂直な側面S1と、第1電極層312のX方向に垂直な側面S2が示されている。更には、上部素子領域103A、第1の拡散抑制層111、及び下部素子領域103BのX方向に垂直な側面S1A,S1B,及びS1Cが示されている。
【0073】
次に、上部素子領域103Aの側面S1Aに第2の拡散抑制層112を形成するための処理を行う。本実施形態では、第2の拡散抑制層112を、SEG(選択成長)により形成する。その結果、第2の拡散抑制層112が、素子領域103の側面S1と素子分離溝Tの底面S3の全体を覆うよう形成される(図7(A))。
【0074】
また、本実施形態では、第2の拡散抑制層112をSEGで形成するため、第2の拡散抑制層112が、素子領域103の側面S1と第1電極層312の側面S2のうち、素子領域103の側面S1のみに選択的に形成される(図7(A))。このことには、後述するように、ゲート間絶縁膜123が浮遊ゲート122の側面S2に接するよう形成され、セルトランジスタ201のカップリング比が低減されずに済むという利点がある。
【0075】
本実施形態では、第2の拡散抑制層112の厚さは、素子分離溝Tが完全に埋まらない厚さとする。素子分離絶縁膜104を素子分離溝Tに埋め込まないと、素子領域103の素子分離ができないからである。また、本実施形態では、第2の拡散抑制層112は、SiC層とする。本実施形態では、こうして形成された第1及び第2の拡散抑制層111,112により、その後行われる種々の熱工程によるB原子の拡散を抑制することが可能となる。
【0076】
次に、第2の拡散抑制層112の形成後に、素子分離溝T内に、素子領域103同士を分離する素子分離絶縁膜104を埋め込む(図7(B))。素子分離絶縁膜104は、基板101の全面に素子分離絶縁膜104の材料を堆積し、この材料を、マスク層321をストッパとして、CMP(化学機械研磨)により平坦化することで形成される。なお、マスク層321は、このCMPに続いて行われるRIEにより除去される(図7(B))。
【0077】
次に、素子分離絶縁膜104のエッチング加工を行い、素子分離絶縁膜104の上面σ1を、第1電極層312の上面σ2よりも低くする(図8(A))。これにより、第1電極層312のX方向に垂直な側面の一部が露出する。図8(A)では、第1電極層312のこの露出した側面が、σ3で示されている。
【0078】
次に、第1電極層312及び素子分離絶縁膜104上に、ゲート間絶縁膜123の材料となる第2絶縁膜313を形成する(図8(B))。次に、第2絶縁膜313上に、制御ゲート124の材料となる第2電極層314を形成する(図8(B))。第2電極層314はここでは、ポリシリコン層とする。
【0079】
本実施形態では、図8(A)に示すエッチング工程により、素子分離絶縁膜104の上面σ1が、第1電極層312の上面σ2よりも低くなっている。
【0080】
その結果、素子分離絶縁膜104上に位置する第2絶縁膜313の下面は、第1電極層312上に位置する第2絶縁膜313の下面よりも低くなり、第2絶縁膜313は、第1電極層312の上面σ2及び露出側面σ3に接するよう形成される。また、素子分離絶縁膜104上に位置する第2電極層314の下面は、第1電極層312上に位置する第2電極層314の下面よりも低くなる。
【0081】
このように、本実施形態では、第2絶縁膜313が、第1電極層312の露出側面σ3に直接接するよう形成されるため、第1電極層312と第2電極層314との間の距離が短くなる。これにより、本実施形態では、セルトランジスタ201(図2)のカップリング比が向上される。
【0082】
本実施形態では更に、第1絶縁膜311、第1電極層312、第2絶縁膜313、及び第2電極層314のゲート加工、ソース/ドレイン領域141(図3)の形成、種々の層間絶縁膜、コンタクトプラグ、及び配線層の形成等が行われる。これにより、本実施形態の不揮発性半導体記憶装置が製造される。
【0083】
図9は、第1実施形態の不揮発性半導体記憶装置の製造方法の変形例を説明するための側方断面図である。図9(A)及び図9(B)に示す側方断面図は、いずれもAA断面図に相当する。
【0084】
まず、結晶成長により、半導体基板401上に、第1の拡散抑制層111を形成する(図9(A))。半導体基板401はここでは、シリコン基板であり、第1の拡散抑制層111はここでは、SiC層である。半導体基板401は、本発明の第1の半導体層の例である。
【0085】
次に、第1の拡散抑制層111上に、半導体層402を形成する(図9(A))。半導体層402はここでは、シリコン層である。半導体層402は、本発明の第2の半導体層の例である。
【0086】
このようにして、半導体基板401、第1の拡散抑制層111、及び半導体層402が積層された基板が形成される。この基板が、図2に示す基板101に相当する。
【0087】
次に、基板101上に、犠牲層301を形成する(図9(B))。次に、基板101内に不純物を注入して、基板101内にウェル領域102を形成する(図9(B))。ウェル領域102は、ウェル領域102の底面が、第1の拡散抑制層111の下面よりも低くなるよう形成される。これにより、第1の拡散抑制層111の上部に位置する上部ウェル領域102Aと、第1の拡散抑制層111の下部に位置する下部ウェル領域102Bと、を含むウェル領域102が形成される(図9(B))。不純物はここでは、P型不純物、より詳細には、B(ボロン)原子である。また、埋め込みウェル領域102Nも形成されるが、第1実施形態の不揮発性半導体記憶装置の製造方法(図5〜図8)と同様であるため省略する。
【0088】
なお、図9(A)の工程において、第1の拡散抑制層111及び半導体層402は、第1の拡散抑制層111が、基板101の表面から深さ約50nmの地点を含むこととなるよう形成される。また、図9(B)の工程において、B原子の注入は、B原子のプロファイルが、図4に示す理想的プロファイルC1となるよう行われる。これにより、理想的プロファイルC1の極小点P2が、第1の拡散抑制層111内に形成される。
【0089】
以降、本変形例では、図6(A)から図8(B)に示す工程が行われる。これにより、本実施形態の不揮発性半導体記憶装置が製造される。このように、第1の拡散抑制層111は、C原子の注入だけでなく、結晶成長によるSiC層の形成によっても形成することが可能である。
【0090】
以上のように、本実施形態では、素子領域103内に、不純物の拡散を抑制する第1の拡散抑制層111を形成し、素子領域103を、上部素子領域103Aと下部素子領域103Bとに分断する。更に、上部素子領域103AのX方向に垂直な側面S1Aに、第2の拡散抑制層112を形成する。
【0091】
これにより、本実施形態では、上部素子領域103A内の不純物が、第1の拡散抑制層111(更には下部素子領域103B)に拡散することや、素子分離絶縁膜104に拡散することを抑制することが可能となる。更には、下部素子領域103B内の不純物が、第1の拡散抑制層111や上部素子領域103Aに拡散することを抑制することが可能となる。更には、第1及び第2の拡散抑制層111、112の形成後の種々の熱工程による不純物のアウトディフュージョンによるドースロスを低減することが可能となる。
【0092】
また、本実施形態では、第2の拡散抑制層112を、上部素子領域103Aの側面S1Aだけでなく、上部素子領域103A、第1の拡散抑制層111、及び下部素子領域103Bの側面S1A,S1B,及びS1Cに形成する。これにより、素子領域103から素子分離絶縁膜104への不純物の拡散を抑制し、不揮発性半導体記憶装置のパンチスルー耐圧を向上させることが可能となる。
【0093】
また、本実施形態では、第2の拡散抑制層112を、素子領域103及び浮遊ゲート122のX方向に垂直な側面S1及びS2のうち、素子領域103の側面S1のみに形成する。これにより、ゲート間絶縁膜123を、浮遊ゲート122の側面S2に接するよう形成することが可能となり、セルトランジスタ201のカップリング比が、側面S2上に第2の拡散抑制層112が存在する場合のように低減されずに済む。
【0094】
また、本実施形態では、第2の拡散抑制層112を、SEGにより形成する。これにより、第2の拡散抑制層112を、素子領域103及び浮遊ゲート122の側面S1及びS2のうち、素子領域103の側面S1のみに選択的に形成することが可能となる。
【0095】
本実施形態では、このような第1及び第2の拡散抑制層111,112により、素子領域103内の不純物濃度プロファイルが理想的プロファイルから逸脱することを抑制することが可能となる。
【0096】
よって、本実施形態によれば、第1の拡散抑制層111内の不純物濃度が、上部素子領域103A内の不純物濃度や、下部素子領域103B内の不純物濃度よりも低い不揮発性半導体記憶装置を製造することが可能となる。このような不純物濃度プロファイルによれば、不揮発性半導体記憶装置のブースト効率の向上、記録時の誤書き込みの減少、短チャネル効果の抑制、セルトランジスタ201の中性閾値Vthの向上、書き込み時における隣接するNANDストリング間でのパンチスルーの抑制等の効果を得ることが可能となる。
【0097】
以下、本発明の第2から第5実施形態について説明する。これらの実施形態は、第1実施形態の変形例であり、これらの実施形態については、第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお、図1に示す構成は、第1実施形態と第2から第5実施形態で共通であるとする。
【0098】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態の不揮発性半導体記憶装置の構成を示す側方断面図である。図10は、図1に示すI−I’線に沿ったAA断面図となっている。
【0099】
第1実施形態では、図2に示すように、第2の拡散抑制層112が、素子領域103及び浮遊ゲート122のX方向に垂直な側面S1及びS2のうち、素子領域103の側面S1のみに形成されている。その結果、ゲート間絶縁膜123が、浮遊ゲート122の側面S2に接するよう形成されている。
【0100】
一方、第2実施形態では、図10に示すように、第2の拡散抑制層112が、素子領域103及び浮遊ゲート122のX方向に垂直な側面S1及びS2に連続して形成されている。その結果、ゲート間絶縁膜123が、浮遊ゲート122の側面S2に、第2の拡散抑制層112を介して形成されている。このような構成には、素子分離絶縁膜104やゲート間絶縁膜123を形成する際に、浮遊ゲート112の下面と側面S2との間のエッジEに、バーズビークが入ることを防止できるという利点がある。
【0101】
以下、第2実施形態の不揮発性半導体記憶装置の製造方法について説明する。
【0102】
図11及び図12は、第2実施形態の不揮発性半導体記憶装置の製造方法を説明するための側方断面図である。図11(A)から図12(B)に示す側方断面図は、いずれも図1に示すI−I’線に沿ったAA断面図に相当する。
【0103】
本実施形態では、まず、図5(A)から図6(B)に示す工程が行われる。この際、図5(A)及び(B)の工程は、図9(A)及び(B)の工程と差し替えても構わない。
【0104】
次に、上部素子領域103Aの側面S1Aに第2の拡散抑制層112を形成するための処理を行う。本実施形態では、第2の拡散抑制層112を、SEG以外の方法、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)により形成する。その結果、第2の拡散抑制層112が、基板101の全面に形成される(図11(A))。これにより、第2の拡散抑制層112は、図11(A)に示すように、素子領域103及び浮遊ゲート122の側面S1及びS2に連続して形成される。本実施形態では、こうして形成された第1及び第2の拡散抑制層111,112により、その後行われる種々の熱工程によるB原子の拡散を抑制することが可能となる。
【0105】
次に、第2の拡散抑制層112の形成後に、素子分離溝T内に、素子領域103同士を分離する素子分離絶縁膜104を埋め込む(図11(B))。素子分離絶縁膜104は、基板101の全面に素子分離絶縁膜104の材料を堆積し、この材料を、マスク層321をストッパとして、CMPにより平坦化することで形成される。このCMPにより、マスク層321上の第2の拡散抑制層112が除去される。なお、マスク層321は、このCMPに続いて行われるRIEにより除去される(図11(B))。
【0106】
ここで、素子分離絶縁膜104を熱酸化により形成する場合には、酸化剤が浮遊ゲート122とゲート絶縁膜121との界面に進入し、エッジEにバーズビークが入る。素子分離絶縁膜104を熱酸化で形成する場合の例としては、素子分離絶縁膜104に高温酸化膜(HTO膜)を使用する場合等が挙げられる。一方、図11(B)では、素子分離絶縁膜104の材料を堆積する際、浮遊ゲート112の下面と側面S2との間のエッジEは、第2の拡散抑制層112で覆われている。その結果、浮遊ゲート112の下面と側面S2との間のエッジEに酸化剤が侵入することを防止することができる。これにより、エッジEにバーズビークが入ることが防止される。
【0107】
次に、素子分離絶縁膜104のエッチング加工を行い、素子分離絶縁膜104の上面σ1を、第1電極層312の上面σ2よりも低くする(図12(A))。これにより、第2の拡散抑制層112のX方向に垂直な側面の一部が露出する。図12(A)では、第2の拡散抑制層112のこの露出した側面が、σ4で示されている。
【0108】
なお、図12(A)のエッチング加工は、素子分離絶縁膜104の上面σ1の高さが、第1電極層312の上面と下面の間の高さとなるよう行われる。また、このとき、第1電極層312のX方向に垂直な側面の一部に露出した第2の拡散抑制層112をエッチングすることにより、図13(B)で第1電極層312の側面S2に第2絶縁膜313を直接接するようにすることができる。その結果、ゲート間絶縁膜123は、浮遊ゲート122の側面S2に直接接するよう形成され、セルトランジスタ201のカップリング比が低減されないこととなる。
【0109】
次に、第1電極層312及び素子分離絶縁膜104上に、ゲート間絶縁膜123の材料となる第2絶縁膜313を形成する(図12(B))。次に、第2絶縁膜313上に、制御ゲート124の材料となる第2電極層314を形成する(図12(B))。
【0110】
本実施形態では、図12(A)に示すエッチング工程により、素子分離絶縁膜104の上面σ1が、第1電極層312の上面σ2よりも低くなっている。
【0111】
その結果、素子分離絶縁膜104上に位置する第2絶縁膜313の下面は、第1電極層312上に位置する第2絶縁膜313の下面よりも低くなり、第2絶縁膜313は、第1電極層312の上面σ2及び第2の拡散抑制層112の露出側面σ4に接するよう形成される。また、素子分離絶縁膜104上に位置する第2電極層314の下面は、第1電極層312上に位置する第2電極層314の下面よりも低くなる。
【0112】
なお、第2絶縁膜313を形成する際、浮遊ゲート112の下面と側面S2との間のエッジEは、第2の拡散抑制層112で覆われている。これにより、エッジEにバーズビークが入ることが防止される。
【0113】
本実施形態では更に、第1絶縁膜311、第1電極層312、第2絶縁膜313、及び第2電極層314のゲート加工、ソース/ドレイン領域141(図3)の形成、種々の層間絶縁膜、コンタクトプラグ、及び配線層の形成等が行われる。これにより、本実施形態の不揮発性半導体記憶装置が製造される。
【0114】
以上のように、本実施形態では、素子領域103内に、不純物の拡散を抑制する第1の拡散抑制層111を形成し、素子領域103を、上部素子領域103Aと下部素子領域103Bとに分断する。更に、上部素子領域103AのX方向に垂直な側面S1Aに、第2の拡散抑制層112を形成する。
【0115】
これにより、本実施形態では、第1実施形態と同様、上部素子領域103A内の不純物が、第1の拡散抑制層111(更には下部素子領域103B)に拡散することや、素子分離絶縁膜104に拡散することを抑制することが可能となる。更には、下部素子領域103B内の不純物が、第1の拡散抑制層111や上部素子領域103Aに拡散することを抑制することが可能となる。更には、第1及び第2の拡散抑制層111、112の形成後の種々の熱工程による不純物のアウトディフュージョンによるドースロスを低減することが可能となる。
【0116】
また、本実施形態では、第2の拡散抑制層112を、素子領域103及び浮遊ゲート122のX方向に垂直な側面S1及びS2に連続して形成する。これにより、素子分離絶縁膜104やゲート間絶縁膜123を形成する際に、浮遊ゲート112の下面と側面S2との間のエッジEに、バーズビークが入ることを防止することが可能となる。
【0117】
(第3から第5実施形態)
図13は、第3実施形態の不揮発性半導体記憶装置の構成を示す側方断面図である。図13は、図1に示すI−I’線に沿ったAA断面図となっている。
【0118】
第1及び第2実施形態では、第1及び第2の拡散抑制層111,112により不純物の拡散を抑制する構成を示した。これに対し、図13(第3実施形態)には、第1及び第2の拡散抑制層111,112のうち、第1の拡散抑制層111のみが設けられた構成が示されている。このような構成は、例えば、素子領域103から素子分離絶縁膜104への不純物の拡散が、あまり問題とならない場合に有効である。
【0119】
このような場合の例としては、素子分離絶膜104にもB(ボロン)が打ち込まれている場合が挙げられる。具体的には、素子分離絶縁膜104中のボロンの不純物濃度が、上部素子領域103A中のボロンの不純物濃度よりも高い場合である。理由は、この場合には、上部素子領域103A中のボロンの不純物濃度よりも素子分離絶縁膜104中のボロンの不純物濃度が高いため、上部素子領域103A中のボロンが、素子分離絶縁膜104へ拡散することはないからである。
【0120】
図14及び図15はそれぞれ、第4及び第5実施形態の不揮発性半導体記憶装置の構成を示す側方断面図である。図14及び図15は、図1に示すI−I’線に沿ったAA断面図となっている。
【0121】
図14及び図15には、図13とは逆で、第1及び第2の拡散抑制層111,112のうち、第2の拡散抑制層112のみが設けられた構成が示されている。図14には、図2の構成から第1の拡散抑制層111を除去した構成が示され、図15には、図10の構成から第1の拡散抑制層111を除去した構成が示されている。これらの構成は、例えば、素子領域103から素子分離絶縁膜104への不純物の拡散を抑制し、メモリのパンチスルー耐圧を向上させることが望まれる場合に有効である。
【0122】
以上のように、第3から第5実施形態では、素子領域103の内部に第1の拡散抑制層111を形成する、又は素子領域103のX方向に垂直な側面S1に第2の拡散抑制層112を形成することで、素子領域103内の不純物の拡散を抑制することが可能となる。
【0123】
以上、本発明の具体的な態様の例を、第1から第5実施形態により説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0124】
101 基板
102 ウェル領域
102A 上部ウェル領域
102B 下部ウェル領域
102N 埋め込みウェル領域
103 素子領域
103A 上部素子領域
103B 下部素子領域
104 素子分離絶縁膜
111 第1の拡散抑制層
112 第2の拡散抑制層
121 ゲート絶縁膜
122 浮遊ゲート
123 ゲート間絶縁膜
124 制御ゲート
131 層間絶縁膜
141 ソース/ドレイン領域
201 セルトランジスタ
202 選択トランジスタ
301 犠牲層
311 第1絶縁膜
312 第1電極層
313 第2絶縁膜
314 第2電極層
321 マスク層
401 半導体基板
402 半導体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板内に形成されたウェル領域と、
前記ウェル領域内において、前記ウェル領域内に形成された素子分離溝により、前記基板の主面に平行な第1方向に延び、かつ、前記第1方向に垂直な第2方向に互いに隣接するよう区画された複数の素子領域と、
前記素子分離溝内に埋め込まれ、前記素子領域同士を分離する素子分離絶縁膜と、
前記素子領域上にゲート絶縁膜を介して形成された浮遊ゲートと、
前記浮遊ゲート上にゲート間絶縁膜を介して形成された制御ゲートと、
前記複数の素子領域のそれぞれの内部に、前記複数の素子領域のそれぞれを上部素子領域と下部素子領域とに分断するよう形成され、前記ウェル領域内に注入された不純物の拡散を抑制する第1の拡散抑制層と、
前記それぞれの上部素子領域の前記第2方向に垂直な側面に形成され、前記不純物の拡散を抑制する第2の拡散抑制層と、
を備えることを特徴とする不揮発性半導体記憶装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の拡散抑制層は、SiC(シリコンカーバイド)層であることを特徴とする請求項1に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第1の拡散抑制層付近の不純物濃度は、前記上部素子領域内の前記ゲート絶縁膜付近の不純物濃度、及び前記下部素子領域内の前記素子分離絶縁膜の底部よりやや浅い位置の不純物濃度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第2の拡散抑制層は、前記それぞれの上部素子領域、前記第1の拡散抑制層、及び前記それぞれの下部素子領域の前記第2方向に垂直な側面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の不揮発性半導体記憶装置。
【請求項5】
前記第2の拡散抑制層は、前記複数の素子領域のそれぞれ及び前記浮遊ゲートの前記第2方向に垂直な側面のうち、前記複数の素子領域のそれぞれの前記側面のみに形成されており、
前記ゲート間絶縁膜は、前記浮遊ゲートの前記側面に直接接するよう形成されていることを特徴とする請求項1に記載の不揮発性半導体記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−253881(P2011−253881A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125739(P2010−125739)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】