説明

乳飲料用乳化安定剤

【課題】 保存安定性に優れており、しかも加熱溶解する際に、特別な攪拌装置を要することなく安定して使用できる乳飲料用乳化安定剤を提供する。
【解決手段】 ショ糖脂肪酸エステル6〜16重量%、グリセリンモノ脂肪酸エステル29〜69重量%、ソルビタン脂肪酸エステル9〜21重量%、有機酸モノグリセリド8〜28重量%、及びカゼインナトリウム3〜7重量%を含有するものとし、かつ0.4%水溶液としたときのpH値が5〜9となるように調整した。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、乳飲料用乳化安定剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】コーヒー乳飲料、ミルクティー、ココア飲料のような乳飲料は保存安定性を確保するために各種乳化剤、安定剤が使用されるのが一般的であった。乳飲料を保存したときに脂肪の浮上によってできるオイルリング現象を防止し、またオイルリングが生じた場合でも軽い振とうで分散できる乳化安定剤(特開平6−125706号公報)も提案されているが、これらの乳化安定剤は使用時すなわち溶解時に、ホモミキサー等の特別な攪拌装置を使用しないと、完全な溶解が望めず、品質のよい乳飲料を得難いという問題があった。
【0003】前記特開平6−125706号公報に記載された乳化安定剤は、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル及びカゼインナトリウムを必須成分とするものであるため、そのグリセリンコハク酸脂肪酸エステルを他の化合物に変えて、前記問題点を解決できないか種々検討し、その他の有機酸モノグリセリドの使用も試みたが、一部不溶化するため、やはりホモミキサー等の特別な攪拌装置を使用しないと、均一に溶解させることはできず、実用化し難いものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる有機酸モノグリセリドを使用して、保存安定性に優れ、しかも加熱溶解する際に、通常のプロペラ攪拌にて簡単に溶解するため、特別な攪拌装置を要することなく、安定して使用できる乳飲料用乳化安定剤を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、有機酸モノグリセリドを含む乳化安定剤は溶解すると酸性溶液となり、この酸性領域では、有機酸モノグリセリドを含む乳化安定剤の溶解性が悪くなるが、pHを上げることにより、溶解性が改善されることを見いだし、本発明を完成した。
【0006】本発明では、前述の特開平6−125706号公報記載の発明において、乳化安定剤を水に溶解したときのpH値が特定の範囲となるように調整することによって、グリセリンコハク酸脂肪酸エステルに限ることなく、有機酸モノグリセリドを使用することができ、しかも、保存安定性に非常に優れ、かつ容易に安定して溶解できる乳飲料用乳化安定剤の提供を可能としたのである。
【0007】すなわち、本発明の乳飲料用乳化安定剤は、ショ糖脂肪酸エステル6〜16重量%、グリセリンモノ脂肪酸エステル29〜69重量%、ソルビタン脂肪酸エステル8〜28重量%、有機酸モノグリセリド8〜28重量%およびカゼインナトリウム3〜7重量%を必須成分として含有してなるもので、アルカリ剤の添加により、該乳化安定材を0.4%水溶液としたときのpH値が5〜9になるように調整されたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】pHの調整に使用されるアルカリ剤は、食品に使用できるものであれば何でもよく、特に限定されないが、例えば炭酸カリウム 重曹、炭酸ナトリウム等が使用し易い。なお、本発明の乳化安定剤のpHは、中性近く(0.4%水溶液とした時のpHが6〜8となるように)調整されるのが好ましい。
【0009】なお、上記脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の種類は特に限定されないが、炭素数が12〜22の飽和又は不飽和脂肪酸の1種又は2種以上の混合物であるのが一般的である。
【0010】有機酸モノグリセリドとして使用可能なものは、特に限定されないが、例えばコハク酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド及び酢酸モノグリセリド等が例示でき、これらは単独で使用されても、二種以上併用されてもよい。
【0011】なお、カゼインナトリウムは一般に食品に用いられるものであればよく、特に限定されるものではない。
【0012】かかる本発明の乳化安定剤は、コーヒー乳飲料、ミルクティー、ココア飲料などの乳及び乳製品を原料とする飲料に使用されるものであり、乳飲料全量に対して、0.1〜0.5重量%程度の配合で十分な効果を得ることができる。
【0013】本発明の乳化安定剤の各成分の割合は、前述の通りであるが、一般にショ糖脂肪酸エステルは9〜14重量%、グリセリンモノ脂肪酸エステルは39〜59重量%、ソルビタン脂肪酸エステルは12〜18重量%であるのが好ましい。
【0014】
【実施例】次に、本発明の実施例および比較例を挙げるが、本発明はこれによって限定されるものではない。
実施例1〜3及び比較例1〜3表1の処方に従って乳化安定剤を得た。なお、表中の各成分量は断らない限り重量部を示す。
【0015】
【表1】


【0016】(コーヒー乳飲料)つぎの手順でコーヒー乳飲料を調製し本発明の効果を確認した。
(1)配合. 原 料 配合割合(部). 牛乳 25. 砂糖 8. インスタントコーヒー 1.4. 重曹(pH調整) 0.01. 乳化安定剤 0.1. 水 残. 合計 100(2)調製方法(1)に示した配合処方に従い、水に乳化安定剤、インスタントコーヒー、牛乳、砂糖、重曹を添加し、65℃に加温し、ホモミキサーにて攪拌混合(10,000rpm ×5min)して乳化物を得た。これを容器に充填後、オートクレーブにて殺菌(120℃×15min )後、5℃に冷却してコーヒー乳飲料を調製した。
(3)評価上記の方法にて調製したコーヒー乳飲料を、40℃で1日、5℃で1日保存を1サイクルとし、保存安定性を評価し、その結果を表2に示した。
【0017】
【表2】


【0018】(評価方法)
溶解性:乳化安定剤の0.4%水溶液を70℃にて30分攪拌溶解し、120メッシュの篩で濾過し、不溶物を目視にて判断する。
○:プロペラ攪拌で不溶物がない×:プロペラ攪拌で不溶物がある保存安定性:保存中のコーヒー乳飲料のオイルリングを目視にて観察する。
○:オイルリングなし×:オイルリングあり
【0019】実施例1〜3の乳化安定剤では、溶解性及び保存安定性のいずれにも非常に優れた、品質のよいコーヒー乳飲料を安定して製造できた。しかし、比較例1の乳化安定剤では、保存安定性は良好だが、溶解性が悪く、また、比較例2、3の乳化安定剤では、溶解性には優れるが、保存安定性が悪く、品質のよいコーヒー乳飲料を製造することが困難であった。
【0020】(ミルクティー)つぎの手順でミルクティーを調製し本発明の効果を確認した。
(1)配合. 原 料 配合割合(部). 牛乳 25. 砂糖 8. 紅茶抽出液 30. 重曹(pH調整) 0.01. 乳化安定剤 0.1. 水 残. 合計 100(2)調製方法(1)に示した配合処方に従い、水に乳化安定剤、紅茶抽出液、牛乳、砂糖、重曹を添加し、65℃に加温し、ホモミキサーにて攪拌混合(10,000rpm ×5min)して乳化物を得た。これを容器に充填後、オートクレーブにて殺菌(120℃×15min )後、5℃に冷却してミルクティーを調製した。
(3)評価上記の方法にて調製したミルクティーを、40℃で1日、5℃で1日保存を1サイクルとし、保存安定性を評価し、その結果を表3に示した。
【0021】
【表3】


【0022】(評価方法)溶解性:乳化安定剤の0.4%水溶液を70℃にて30分攪拌溶解し、120メッシュの篩で濾過し、不溶物を目視にて判断する。
○:プロペラ攪拌で不溶物がない×:プロペラ攪拌で不溶物がある保存安定性:保存中のミルクティーのオイルリングを目視にて観察する。
○:オイルリングなし×:オイルリングあり
【0023】実施例1〜3の乳化安定剤では、溶解性及び保存安定性のいずれにも非常に優れた、品質のよいミルクティーを安定して製造できた。しかし、比較例1の乳化安定剤では、保存安定性は良好だが、溶解性が悪く、また、比較例2、3の乳化安定剤では、溶解性には優れるが、保存安定性が悪く、品質のよいミルクティーを製造することが困難であった。
【0024】
【発明の効果】本発明による乳化安定剤では、溶解性及び保存安定性のいずれにも非常に優れた、品質のよい乳飲料を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ショ糖脂肪酸エステル6〜16重量%、グリセリンモノ脂肪酸エステル29〜69重量%、ソルビタン脂肪酸エステル9〜21重量%、有機酸モノグリセリド8〜28重量%、及びカゼインナトリウム3〜7重量%を必須成分として含有してなるものであり、0.4%水溶液としたときのpH値が5〜9になるように調整されている乳飲料用乳化安定剤。
【請求項2】 有機酸モノグリセリドが、コハク酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド及び酢酸モノグリセリドからなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の乳飲料用乳化安定剤。

【公開番号】特開2002−142670(P2002−142670A)
【公開日】平成14年5月21日(2002.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−347629(P2000−347629)
【出願日】平成12年11月15日(2000.11.15)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】