説明

乾燥インク放出ノズルの高速インク充填

本発明の教示内容は、OLEDや他の種類のディスプレイ装置の一部を成す1以上の基材の上に、1以上の材料(例えば、1種以上の固体など、1以上の薄膜)を積層するための装置および方法に関する。いくつかの実施の形態での開示内容は、1以上の基材の上にインクを積層するための装置および方法に関する。こうした装置には、例えば、インクを格納する1以上のチャンバと、1以上のチャンバ内にあってインクの液滴を噴射するように構成された複数の開口部と、例えば矩形配列の形を取る微細孔配列を有する放出ノズルと、を有し、各微細孔は入口ポートと出口ポートと有し、放出ノズルはチャンバから開口部を介して入口ポートで複数のインク液滴を受け取り、出口ポートから放出する。インク液滴は、放出ノズルの入口ポート上に間隔をあけて定められた固有の位置で受け取られる。いくつかの実施の形態では、複数(例えば3つ)の開口部を有する単一の液体インク格納チャンバが、複数の粒子が懸濁した液体の状態のインクを受け取り、インク液滴はチャンバからほぼ同時に、放出ノズル上の間隔をおいた別々の位置に向けて放出され、放出ノズルはキャリア液を蒸発させてから、固体の粒子を1以上の基材に積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
・関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2009年1月5日になされた米国仮特許出願第61/142,575号(ここでの参照により全体が本明細書に援用される)から得られる優先権の利益を主張する。
本発明の教示内容は、1以上の基材上に1以上の材料(例えば、1以上の固体からなる1以上の薄膜)を積層するための装置および方法に関する。より具体的に言えば、本発明の教示内容の様態は、1以上の固体から成る1以上の薄膜を、LEDその他の表示装置の一部を形成する1以上の基材の上に積層するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光装置(OLED)の製造においては、基材に1以上の有機薄膜を積層し、薄膜積層の一番上の層と一番下の層とを電極に結合する必要がある。薄膜の厚みは考慮すべき主要問題である。積層全体の厚みは約100nmであり、個々の層は、最適な形としては、±1nmを上回る精度で均一に積層される。また、薄膜純度も重要である。従来の装置は、以下の2つの方法のうちの1つを用いて薄膜積層を形成している:(1)相対的真空環境で有機材料を熱気化させた後、基材上に有機蒸気を凝結させる方法(蒸着);(2)有機材料を溶媒に溶かして得られる溶液で基材を被覆した後、溶媒を除去する方法。
【0003】
OLEDの有機薄膜の積層において考慮すべきもう1つの問題は、所望の位置に正確に薄膜を配置することである。この作業を行う従来の方法は2つあり、薄膜積層方法に応じて使い分けられる。熱気化させる方法の場合、シャドーマスク法を用いて、所望の形状のOLED薄膜を形成する。シャドーマスク技法では、先ず基材上のある領域に輪郭の明確なマスクを配置し、その後、基材全面に薄膜を積層する、という作業が必要となる。そして、積層が完了した時点でシャドーマスクは取り外される。マスクから露出していた領域には、基材上に積層された材料のパターンが形成される。しかし、この方法は効率が悪い。薄膜が必要なのはシャドーマスクから露出した領域だけであるにも関わらず、基材全体を被覆しなければならないからである。
【0004】
さらに、シャドーマスクは、使用のたびに被覆が厚くなり、最終的には廃棄するか、清掃作業が必要になる。そして最後に、広い面積を覆う場合、シャドーマスクは使用が難しい。マスクは、加工寸法(feature size)を小さくする目的で非常に薄く作られており、そのため構造的に不安定だからである。しかし、この蒸着の技術を用いれば、高い均一性および純度、そして優れた厚み制御でOLED薄膜を作ることができる。
【0005】
溶媒積層の場合は、インクジェット印刷を用いて、OLED薄膜のパターンを積層することができる。インクジェット印刷では、有機材料を溶媒に溶かして印刷可能なインクを生成する必要がある。さらに、インクジェット印刷は、従来、単一層のOLED薄膜積層に使用が限られており、そうした単一層の場合、多層積層と比較して性能が劣るのが一般的である。単一層に限定されるのは、通常、重ねて印刷すると、下にある有機層に破壊的な溶解が生じるからである。そしてさらに、基材に対する最初の準備作業でインクを積層する領域を定めておかないと、円形の積層領域にしかインクジェット印刷を行うことができず、その厚みの均一性も蒸着で積層された薄膜に比べて貧しい。しかも、こうした領域を定めておく作業を行えば、加工処理はコスト高かつ複雑になる。また、材料品質もインクジェット印刷の方が一般的に低い。これは、乾燥工程中に生じる材料の構造上の変化と、インク中に存在する材料不純物とが理由である。しかしながら、インクジェット印刷の技術を用いれば、非常に広い面積にOLED薄膜パターンを設けることができ、材料効率も良い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第2008/0311307号明細書
【特許文献2】米国特許第2006/0115585号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術のなかに、インクジェット印刷が有する広面積パターン形成能力と有機薄膜の蒸着で達成される高い均一性、純度、厚み制御とを併せ持つものは存在しない。インクジェットで処理された単一層OLED装置の品質は、広く市販するには適さないレベルに留まっており、また、熱気化による方法も、広い面積を対象にしようとするとやはり非実用的である。よって、OLED業界にとっては、高い薄膜品質と広い面積に使えて費用効果のよい大規模性とを共に実現できる技術を開発することは、大きな技術目標となっている。
【0008】
最後に、OLEDディスプレイの製造においても、金属、無機半導体および/または無機絶縁体の薄膜をパターン化して積層する必要がある。従来、こうしたものの積層には、蒸着および/またはスパッタリングが用いられている。パターン形成は、事前に基材に準備(例:絶縁体を用いたパターン化被覆)しておいたり、上述したシャドーマスクを用いたりして実現し、そして、未加工の基材または保護層を用いる場合は、従来技術のフォトリソグラフィを用いて実現する。これらの手法はいずれも、材料を浪費したり、追加処理の作業が必要となったりする点で、所望のパターンを直接積層する場合に比べて効率が悪い。従って、これらの材料に関してもやはり、高品質で、費用効率のよい、大面積の薄膜積層を行える方法および装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
各種実施の形態の例示的かつ非限定的な概要を以下に示す。
各種実施の形態により、例えば、1以上の基材上に1以上の材料を積層する装置および方法が提供されている。各種実施の形態において、こうした1以上の材料で1以上の薄膜を形成することができる。いくつかの実施の形態では、こうした1以上の薄膜は1種以上の固体から成る。いくつの実施の形態では、1種以上のインクが1以上の基材上に積層される。
【0010】
各種実施の形態により、1以上の基材上に1以上の材料(例:1以上の固体からなる1以上の薄膜)を積層するための装置が提供されている。いくつかの実施の形態では、本発明の教示内容による装置は、以下のうち1以上を有する。すなわち、(i)インクを格納するチャンバと、(ii)前記チャンバに対して間隔をおいて配置され、複数の微細孔を有する放出ノズルと、(iii)前記チャンバと流体連通する複数の開口部(ポートとも言う)と、である。各微細孔は、前記チャンバに対向する入口ポートが形成された第1の端部領域と出口ポートが形成された第2の端部領域とを有し、前記開口部の各々は、前記チャンバからインク液滴を量り取り、別々の送出経路に沿って、放出ノズルの入口ポート上に間隔を開けて置かれた別々の位置まで送出されるように構成されている。
【0011】
そして、各種実施の形態において、前記チャンバにはキャリア液中に複数の固体の粒子が溶解または懸濁したものとして形成された液体状態のインクが収容されており、前記インク液滴は、前記チャンバから前記開口部によってパルスにより量り取られて前記放出ノズルに送出され、前記放出ノズルは、前記キャリア液を気化させて、前記基材上に固体の粒子を積層する。
【0012】
また、1以上の基材上に1以上の材料(例:1以上の固体からなる1以上の薄膜)を積層するための、本発明の教示内容による装置の更なる実施の形態は、例えば、以下のうち1以上を有する。すなわち、(i)液体インクなどの液体を格納するように構成されたチャンバ;(ii)チャンバと流体連通するように配置された複数の開口部(orifice)であって、そのサイズ(例:直径、または開口部の縦軸に対して直交する断面の面積)がインクの通過を(例えば表面張力によって)防止できるように定められたもの;(iii)チャンバおよび/または開口部に動作可能に連結された1以上のチャンバ駆動装置(例:1以上のヒータまたは圧電材料)。複数の開口部の各々を通ってチャンバからほぼ同時に複数の液滴を(例えば、各開口部から1滴ずつ)噴出させるのに充分なエネルギを提供するように構成されている;(iv)チャンバに対して間隔をおいた位置に配置されており、複数の微細孔(micro-pore)が配列を形成してなる放出ノズル。各々の微細孔は、入口ポートが形成されてチャンバに対向している第1の端部領域と、出口ポートが形成されてチャンバとは反対の方向に向いた第2の端部領域とを有する;(v)間隔をおいて定められた複数の送出経路。各々が、開口部のいずれか1つから、放出ノズルの入口ポート上のそれぞれの固有の位置まで延びている;(vi)放出配列に動作可能に連結された1以上のノズル駆動装置(例:1以上のヒータまたは圧電材料)。例えば1以上の選定温度まで、および/または、選定温度範囲(例:摂氏約100度から摂氏約300度)で微細孔を加熱することにより、材料を微細孔から放出させるのに充分なエネルギを提供するように作られている。
【0013】
いくつかの実施の形態では、2以上(例えば3つ)の開口部が、チャンバと流体連通するように配置されており、微細孔の配列は長寸法と短寸法を有する長方形を成す。さらに、それらの流出口は一直線上に並び、その直線は矩形配列の長軸に対して平行となっている。また、他の実施の形態では、2以上(例えば3つ)の開口部が、チャンバと流体連通するように配置されており、微細孔配列は非矩形配列(例:V字形または三角形の形状を有する配列)を成す。さらに、3つの開口部は、それぞれの送出経路に沿ってチャンバから微細孔配列上に複数のインク液滴が噴出された際に、微細孔配列のうちインクで覆われる範囲が最適に(例:最大に)なるように並べられている。
【0014】
各種実施の形態により、1以上の基材上に1以上の材料(例:1以上の固体からなる1以上の薄膜)を積層する方法が提供される。いくつかの実施の形態では、例えば、本発明の教示内容による方法は、以下の処理のうち1以上を含む。すなわち、(a)キャリア液中に複数の粒子が溶解または懸濁して形成された液体インクをチャンバに供給する処理と、(b)各々が前記チャンバに流体連通した状態で間隔をおいて配置された2以上の開口部にパルス状のエネルギを供給することで、チャンバの液体インクの液滴を各々の開口部から同時に量り取る処理と、(c)量り取られたインク液滴を、それぞれ別の送出経路に沿って、間隔をおいて定められた放出ノズル上の別々の位置に同時に送出する処理と、(d)量り取られたインク液滴を、当該インク液滴を導く複数の微細孔を有する放出ノズルで受ける処理と、(e)前記複数の微細孔でインクを加熱してキャリア液を蒸発させることで、前記複数の粒子からキャリア液を取り除く処理と、(f)微細孔から複数の粒子を基材上に放出して、前記複数の粒子を固体の状態で基材上に積層する処理と、である。
【0015】
1以上の基材上に1以上の材料(例:1以上の固体からなる1以上の薄膜)を積層するための、本発明の教示内容による方法の更なる実施の形態は、例えば、以下の処理のうち1以上を含む。すなわち、(a)複数の粒子をキャリア液中に溶解または懸濁した状態で含む液体インクを、格納領域に格納しておく処理と、(b)前記格納領域に(熱的および/または機械的な)エネルギを供給することで、前記格納領域に間隔をおいた定められた2以上の位置から液体インクの複数の液滴を同時に噴射させ、各々の液滴を前記格納領域に隣接する面に定められた個別の位置に、別々の送出経路に沿って送出する処理と、(c)噴射された液滴の各々を極少量の液体インクに細分し、当該極少量の液体インクを前記面に近接する別々の微小格納領域内に収納する処理と、(d)微小格納領域を第1の温度(例えば、摂氏100度)まで加熱してキャリア液を蒸発させることで、微小格納領域内に、キャリア液を伴わない固体粒子を生成する処理と、(e)微小格納領域をさらに第2の温度(例えば、摂氏300度)まで加熱して、内部の固体粒子を気体に変化させる処理と、(f)(熱的および/または機械的なエネルギを加えることで)微小格納領域から隣接する基材の上に気体を送り、基材上で当該気体を凝固させる処理と、である。
【発明の効果】
【0016】
このように、各種実施の形態により薄膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本開示における上記および他の実施の形態について、以下、非限定的な例を示す図面を参照しながら説明する。当該図面において、同様の構成要素については同じ参照番号を付けてある。
【図1】(A)は、本発明の教示内容に基づき、各種実施の形態で考慮される、熱インク吐出機構および放出ノズルを有する印字ヘッドの一例を示す、側面方向から見た概略断面図であり、(B)は、本発明の教示内容に基づき、各種実施の形態で考慮される、矩形の微細孔配列を有した放出ノズルの実装の一例を示す、概略的な底面図である。
【図2】(A)は、インク噴射開口部と微細孔配列を有する放出ノズルとを備えたインクジェットを有する印字ヘッドの構成要素の一部を、部分的に断面で示す概略的な側面図であり、当該インクジェットが、微細孔配列上の共通の1つの位置に、共通の送出経路に沿って、一度に1つのインク液滴を発射する様子を図示している。(B)は、3つのインク噴射開口部と微細孔配列を有する放出ノズルとを備えたインクジェットを有する、本発明の教示内容の各種実施の形態による印字ヘッドの構成要素の一部を、部分的に断面で示す概略的な側面図であり、当該インクジェットが一度に3つのインク液滴を、3つの別々の送出経路に沿って、微細孔配列上の個別の位置に向けて発射する様子を図示している。
【図3】(A)は、図2(A)の印字ヘッドから発射された液体インクの液滴が、衝突後に矩形の微細孔配列の入口側に拡張した状態を概略的に図示した上面図である。(B)は、本発明の教示内容の各種実施の形態による図2(B)の印字ヘッドから3つ一組で発射された液体インクの液滴が、衝突後に矩形の微細孔配列の入口側に拡張した状態を概略的に図示した上面図である。(C)は、本発明の教示内容の各種実施の形態による、3つ一組で液滴を同時に噴射してV字形状を形成するように作られたインクジェットから3つ一組で発射された液体インクの液滴が、衝突後にV字形状の微細孔配列の入口側に拡張した状態を概略的に図示した上面図である。
【図4】本発明の教示内容の各種実施の形態により3つ一組で噴射された液体インク液滴が、衝突後に矩形の微細孔配列の入口側に拡張した状態を概略的に図示した上面図である。各液滴の直径は、配列の長寸法より小さく、配列の短寸法よりも大きい。
【図5】本発明の教示内容の各種実施の形態により3つ一組で噴射された液体インク液滴が、衝突後に矩形の微細孔配列の入口側に拡張した状態を概略的に図示した上面図であり、液滴のサイズが異なる場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、各種の非限定的かつ例示的な実施の形態について述べる。
以下の各種実施の形態によって本発明が教示する内容は、1以上の基材上に1以上の材料(例えば、1以上の固体からなる1以上の薄膜)を積層(deposit)する方法および装置に関する。こうした薄膜は、例えば、OLEDや大面積トランジスタ回路の設計および製造に用いることができる。ここに示す装置および方法によって積層することのできる材料は、有機材料、金属材料、無機半導体および絶縁体、その他である。無機半導体および絶縁体としては、無機酸化物、カルコゲニド、4族半導体、3〜5族化合物半導体、2〜6族半導体がある。
【0019】
さらに、各種実施の形態において本発明が教示する内容は、組み合わされて印字ヘッドを構成する、インク吐出装置および放出ノズルに関する。各種実施の形態では、例えば、吐出装置はインクジェットとすることができ、放出ノズルについては、薄膜材料を実質的に乾燥した形または固体の形で放出するように構成することができる。各種実施の形態において、放出される薄膜材料は、1以上の基材の上に積層することができる。
【0020】
本発明の教示内容は、例えば、米国特許出願第2008/0311307号(以下、「´307の開示内容」)が教示する装置および方法の形で具体化および/または実装することができる。なお、「´307の開示内容」については、ここでの参照により、その全体が本明細書に明示的に援用される。
印字ヘッド装置のいくつかの構成および/または用途では、単一の放出ノズルに液体インクを噴射する開口部を1つだけ有したインクジェット吐出装置で充分であり望ましい、という場合もある。しかしながら、本発明の教示内容で考慮しているのは、単一の放出ノズルに液体インクを噴射する開口部を1つだけ有する装置では所望の結果が得られない、という種類の印字ヘッド装置、および/または、その使用方法である。本発明の開示内容は、とりわけ、単一の放出ノズルに液体インクを噴射する開口部を複数(2以上)有するインクジェット吐出装置を提供するものである。
【0021】
例えば、´307の開示内容における印字ヘッド装置の各種実施の形態は、液体インクを格納するチャンバ1つにつき複数(例えば、2、3、4、5、6、または、それ以上)の開口部を備えるよう構成することができる。従って、駆動時には複数のインク液滴をチャンバから噴射することができる。さらに、インクを噴出させるための駆動手段(1または複数のエネルギ源であって、例えば、熱的なものおよび/または機械的なもの)は、複数の液滴(例えば、連通する3つの開口部を有したチャンバ1つにつき3つの液滴)が実質的に同時に噴射されるように構成することができる。加えて、駆動手段は、複数の液滴が各開口部から連続的に噴出されるように構成することもできる。
【0022】
本発明の教示内容の印字ヘッド装置のいくつかの構成では、本文中で後述するように、複数のインク格納チャンバから目標となる単一の微細孔配列に複数の液滴を積層することができ、その際には、前記配列に向けられた複数の開口部を利用する。各種実施の形態では、例えば、目標となる微細孔配列に関連付けられた複数のチャンバの各々が、配列に液体インク液滴を送出する1または複数の開口部を有している。こうした実施の形態のいくつかでは、複数のチャンバの各々は、液体インク液滴を送出するための開口部を1つしか有していない。例えば、いくつかの実施の形態(図示せず)では、3つのインク液滴を3つの別個の開口部−チャンバの組から送出することで、3つの開口部を備えた単一のインク格納チャンバを有する印字ヘッド装置(本文書で教示するようなもの)を用いた場合と同じ結果を実現することができる。
【0023】
また、後でさらに述べるが、各種の印字ヘッド装置の構成には、液体インク格納チャンバ1つにつき複数の開口部を有するインクジェットを採用するのが望ましい、というものもある。こうした構成の1つとして、液体インク格納チャンバを1つ備えたインクジェットと、それに隣接して微細孔配列を備えた放出ノズルと、を有する印字ヘッド装置がある。当該装置における微細孔配列は、少なくとも1方向の寸法が、インクジェットから噴射されるインク液滴のサイズよりも大きくなっている。単一のインクジェットがこうした構成(すなわち、インクを液体格納チャンバから噴射するため開口部を1つしか有していない構成)で使用される場合、微細孔配列全体を液体インクで濡らそうとすれば、複数のインク液滴を連続して噴射する必要がある。こうした単一開口部構成のいくつかで留意すべき点は、微細孔配列に複数のインク液滴を連続発射したとしても、配列全体を濡らすことは、不可能または非現実的であるかもしれない、ということである。
【0024】
図1(A)は、本発明の教示内容による、各種実施の形態における材料積層装置を示す概略図である。図1(A)の概略図が示すのは、熱インク吐出機構と放出ノズルとを有する、各種実施の形態による熱ジェット印字ヘッドである。
図1(A)を参照すると、基材上に材料を積層する装置の典型例が示されており、当該装置は、チャンバ130、複数の開口部170、放出ノズル180、そして、複数の微細孔導管160を有する(最後のものは微細孔とも言う)。
チャンバ130は、液体の形でインクを受け取り、当該インクを開口部170から放出ノズル180まで移動させる。インクは、例えば、キャリア液または溶媒に粒子が懸濁または溶解したもの、とすることができる。また、こうした粒子については、例えば、単一種類の分子または原子、分子および/または原子の集合体、または、それらの組合せとすることができる。図示した実施の形態では、各々の開口部170と放出ノズル180上の各自の対応位置とをつなぐ経路は、別々の、間隔をおいた、3つの各自の送出経路となっており、これらは、参照符号P1、P2、P3を付した点線で図示してある。
【0025】
図1(A)に示す実施の形態では、放出ノズル180は、仕切り部165によって隔てられた微細孔160を有する。いくつかの実施の形態では、微細孔160の中に微小多孔性材料(micro-porous material)を入れておくことも可能である。放出ノズル180のうち開口部170に近い方の表面には、放出ノズル180に通じる入口ポートが形作られており、一方、放出ノズル180のうち開口部170から遠い方(開口部170の反対側)の表面には、出口ポートが形作られている。基材(図示せず)は、放出ノズル180の出口ポートの近位に配置されており、出口ポートから出るインクは基材に受け止められ積層される。
【0026】
図1(A)の熱ジェット印字ヘッドはさらに下部構造体140を有し、ここに放出ノズル180が収容されている。放出ノズル180は下部構造体140の一部として形成することができる。ただし、別の構成として、放出ノズル180を別個に製造し、その後下部構造体140と組み合わせて一体化構造を形成することも可能である。上部構造体142にはチャンバ130が収容されている。適当な空洞および導管を上部構造体142に形成することで、チャンバ130を形成することができる。上部構造体142と下部構造体140とは、接着部120で結合されてハウジング構造を形成している。ハウジングによって、熱ジェット印字ヘッドは、加圧状態または真空状態のいずれでも動作させることができる。ハウジングは、放出ノズルから基材(図示せず)まで材料を移動させるための搬送気体を受け入れる入口ポート(図示せず)を更に有する場合がある。
【0027】
また、別の構成として、搬送気体を受け入れるためのポート(図示せず)を上部構造体142に設けることもできる。当該ポートには、搬送気体を受け入れるように構成したフランジを持たせることもでき、1つの実施の形態として、当該搬送気体は、1以上の実質的に不活性の気体の混合物から成る。当該混合物に含まれる気体については、装置によって積層される材料に対して実質的に非反応性の気体とすることができる(例えば、通常の有機材料と共に使用するのであれば、窒素またはアルゴン)。搬送気体は、微細孔160の中を流れることで、放出ノズル180から粒子を運び出すことができる。
【0028】
留意すべき点として、インクジェットヘッドと放出ノズルとの一体化は必須ではない。当業者であれば考えるように、インクジェットヘッドと放出ノズルとは、物理的に別々のユニットとして配置および利用できるようにしてもよい。本発明の教示内容で考慮する各種実施の形態が有するインクジェットヘッドおよび放出ノズルは、これら要素が物理的に別々のユニットとして配置および利用される、という構成で設けられている。
【0029】
インクの加熱および/または吐出のために、ヒータ110をチャンバ130に付加することも可能である。図1(A)では、ヒータ110はチャンバ130の内部に置かれている。ヒータ110は、1または複数の何らかの熱エネルギ源であって、チャンバ130および/または開口部170に動作可能に連結されており、液体インクに脈動エネルギを提供することで、各開口部170から液体インク液滴を1滴ずつ吐出させる。1つの実施の形態では、ヒータ110は、1分以下維持させてパルス状の熱を送り出す。例えば、ヒータにエネルギを与えるには、1kHzのサイクル周波数でデューティ比を可変にした方形波を用いることができる。そうすると、ヒータエネルギを用いて、チャンバ130から放出ノズル180に送られるインクの量を計量することができる。また、チャンバ130に格納する材料はインクに限らず、OLEDまたはトランジスタの製造に用いられる薄膜の形成に有用な材料を格納することもできる。開口部170については、インク吐出機構の駆動前に液体が吐出される事態を、チャンバ130内の液体の表面張力によって防止するように構成することができる。
【0030】
一般に、チャンバ130に連結するのに適当なエネルギ源としては、開口部170から液体インク液滴を噴射するのに充分なエネルギを提供することが可能であれば、どのようなものでもよい(例えば、振動などを利用する機械的なもの)。本発明の教示内容による1つの実施の形態では、ヒータ110の代わりに(または、これに加えて)、圧電材料を使用する。また、別の実施の形態では、各開口部170を別々のヒータまたは圧電材料に連結する。後者の実施の形態では、例えば、3つの発熱体を各開口部170の近くに1つずつ設けることが考えられる。
【0031】
図1(A)の実施の形態における放出ノズル180は、導管または微細孔160によって隔てられた仕切り部(剛性部分)165を有する。微細孔160および剛性部分165の集合で微細孔環境(environment)を形成することができる。微細孔環境は様々な材料から作ることができ、そうした材料としては、多孔質アルミナや、微小加工された孔を有するシリコンまたは炭化ケイ素からなる固体膜がある。微細孔160は、装置が適切に駆動されるまで、液体に溶解または懸濁した材料が放出ノズル180から外に出るのを防止するようになっている。吐出された液滴が放出ノズル180に達すると、液体は毛管作用の補助で微細孔160に引き込まれる。インク中の液体が、放出ノズル180の駆動前に気化すると、懸濁または溶解していた粒子が微細孔の壁に残り、当該壁を覆う状態となる。
【0032】
キャリア液は、例えば、1以上の溶媒で作ることができる。インク中の液体は、比較的蒸気圧の低い1以上の溶媒から作ればよい。それに代えて、または、それに加えて、インク中の液体に、比較的蒸気圧の高い1以上の溶媒を含ませることも可能である。その場合の1以上の溶媒は、移動および積層処理の間に当該溶媒がほぼ気化し、キャリア液中にあった複数の粒子が固体の粒子として積層される、という蒸気圧を有するものとする。そうすれば、積層された複数の固体の粒子が基材上に薄膜を作る。
【0033】
インク中の液体の気化を、放出ノズルの加熱によって促進または加速してもよい。また、気化した液体は、チャンバから除去し、収集することが可能であり(図示せず)、その手段としては、例えば、1以上の放出ノズル表面の上に気体を流すというものがある。必要とされる用途によっては、微細孔160は、断面における最小直線距離W(minimum linear cross-sectional distance)が数ナノメートルから数百ミクロンの導管(または通路)を備える。放出ノズル180を成す微細孔領域は、必要とされる用途に応じて、形状や面積を変えることが可能であるが(例えば、矩形、L字形、三角形、V字形など)、その断面における最大直線寸法Dは、典型的には数百ナノメートルから数十または数百ミリメートルの範囲にある。1つの実施の形態におけるW/Dの比率は、約1/5から約1/1000の範囲である。
【0034】
図1(A)に示す例示的な装置において、放出ノズル180はノズル用ヒータ150によって駆動される。ノズル用ヒータ150は、放出ノズル180の近傍に配置されている。ノズル用ヒータ150は金属薄膜で作ればよい。こうした金属薄膜は、例えばプラチナから作ることができる。ノズル用ヒータ150は、駆動されると、放出ノズル180にパルス状熱エネルギを供給し、供給を受けた放出ノズル180は動作して、微細孔または導管160の内部に入っていた材料を移動させる。その後、材料は放出ノズルから流出する。1つの実施の形態では、パルスを1分以下の時間尺度で変化させることができる。
【0035】
ノズル用ヒータ150は、所望の1または複数の温度に、あるいは、所望の温度範囲に、放出ノズル180内の材料を加熱するように構成することができる。例えば、各種実施の形態で、ノズル用ヒータ150は放出ノズル180内の材料を、摂氏約75度から摂氏約500度の範囲で1以上の所定温度まで加熱する。また、いくつかの実施の形態では、ノズル用ヒータ150は、放出ノズル180内の材料を摂氏約100度から摂氏約400度の範囲で1つの所定温度まで加熱する。
【0036】
インク粒子の移動の形は気化であるが、昇華によるもの、溶融した後の沸騰によるもの、いずれも含まれる。1つの実施の形態では、放出ノズル180内の材料(例えば、キャリア液中のインク粒子)は先ず、キャリア液を気化させるために摂氏約100度まで加熱される。後に残った固体(例えば、溶媒を伴わない状態または、ほぼ溶媒を伴わない状態のインク粒子)は、その後、摂氏約300まで加熱され、それによって気体に変換される。さらにその後、当該気体は基材上に積層され、そこで凝固する。それによって、1以上の薄膜を形成することができる。
【0037】
ここでも留意すべき点として、「粒子」という用語には一般に、単一の分子または原子から分子または原子の一群、並びに、これらの組合せのいずれも含まれる。一般に、放出ノズルに連結するのに適したエネルギ源としては、放出ノズル180にエネルギを供給し、それによって微細孔160から材料を放出させることができるであれば、どのようなものを用いてもよい(例:機械的なもの(例えば振動型のもの))。本発明の教示内容による1つの実施の形態では、ノズル用ヒータ150の代わりに(またはこれに加えて)圧電材料を用いる。
【0038】
上述したとおり、図1(A)に示す装置には複数の開口部170が存在し、それぞれがチャンバ130と流体連通するよう構成されている。開口部の数は可変であり、その数は、特定の装置ごとに様々な要因(さらに以下に述べるもの)に従って決められる。つまり、開口部の数は、例えば、微細孔160によって形成される配列のサイズおよび/または形状(例:矩形、L字形、三角形、V字形など)、そして、開口部から噴射される液体インク液滴のサイズに基づいて決めることができる(この文脈において、用語「サイズ」は、放出ノズルの入口面上に着地し拡張した1以上の液滴の直径の平均値または中間値を指す)。
【0039】
図1(B)は、各種実施の形態において基材上に薄膜を積層する装置の一部を成す放出ノズル180を示す図である。図1(B)において、放出ノズル用ヒータ150は、シリコンハウジング140上のプラチナ薄膜から成る。また、示される放出ノズル180の中央には、放出ノズルの微細孔160が見て取れる。ここに示す実施の形態における微細孔160は、正方形の配列を形成している。「D」で示すのは配列の長寸法であり、「D」で示すのは配列の短寸法である。ここで再び図1(A)を参照する。複数の開口部170は直線上に配設されて線を成し、微細孔160はほぼ平面的な矩形配列を形成している。開口部170が並んで成す線は、矩形の配列の長寸法(「D」)にほぼ平行となる位置にある。
【0040】
上述したように、ここでの教示内容は、米特許出願第2008/0311307号(「´307の開示内容」)において教示された装置および方法で具体化および/または実装することができる。「´307の開示」については、参照によって、全文が本明細書に明示的に援用される。
ここに記述するように、´307の開示内容による印字ヘッド装置の各種実施の形態では、個々の液体インク格納用チャンバが複数(例えば、2、3、4、5、6、または、それ以上)の開口部を有するように構成することができる。従って、駆動時、複数のインク液滴をチャンバから噴射させることができる。さらに、駆動手段(1または複数のエネルギ源であって、例えば、熱的なものおよび/または機械的なもの)は、複数の液滴(例えば、連通する開口部を3つ有するチャンバの場合は3つの液滴)をほぼ同時に噴射させるように構成することができる。加えて、駆動手段は、複数の液滴を各開口部から連続的に噴射させるように構成することができる。
【0041】
印字ヘッド装置の各種構成のうち、液体インク格納チャンバ1つにつき複数の開口部を用いることが望ましい構成としては、組み合わされる放出ノズルが有する複数の微細孔が、インクジェットに隣接して配列を成すように配置されており、(i)微細孔配列の面積、および/または、(ii)微細孔配列の長さ寸法の少なくとも1つが、インクジェットから噴射されるインクの液滴のサイズ(例えば、放出ノズルの入口面に衝突して拡張した後の液滴の直径の平均値または中間値)よりも大きい(例えば、1.5倍、3倍、5倍、10倍、20倍または、それ以上)、というものがある。例えば、微細孔が矩形の配列を形成し、インクを噴射するための開口部を1つしか備えていないインク格納チャンバを有したインクジェットを、1つだけ利用する場合、矩形の配列全体を液体インクで濡らすためには、インクの複数の液滴を連続して噴射する必要があるだろう。しかしながら、こうした、開口部が1つだけのインクジェットを有するいくつかの構成では、微細孔配列にインクの複数の液滴を連続発射したとしても、配列全体を濡らすことは、困難または不可能、あるいは非現実的であろう。
【0042】
本発明の教示内容によるいくつかの実施の形態では、2以上(例えば3つ)の開口部が、液体格納用チャンバと流体連通するように配置されており、放出ノズルの微細孔配列は、長寸法と短寸法とを備えた長方形を形成している。さらに、複数の開口部が並んで成す線は、矩形の配列の長軸に対して平行となる位置にある。また、他の実施の形態では、2以上(例えば3つ)の開口部が、チャンバと流体連通するように配置されており、微細孔形の配列は非矩形の配列(特に、V字形や三角形の形状を有した配列)を形成している。さらに、チャンバから噴射されたインクの複数(例えば3つ)の液滴が微細孔配列に衝突し拡張した後、液体インクが微細孔配列の入口を最適な状態で(例えば、面積が最大限となる形で)覆うように、3つの開口部を並べることができる。
【0043】
このように、本発明の教示内容による実施の形態は、開口部が3つのインクジェット式液体インク吐出装置から成り、これは、開口部が1つだけのインクジェット式液体インク吐出装置とは対照的なものである。インクジェットの開口部は、放出ノズルに隣接して(例えば上に)配列させることができる。開口部が3つのインクジェットでは、同時に3つの液滴を発射することができ(すなわち、3つのポートの各々から1つの液滴)、当該液滴は放出ノズルに向かって進み、そこに着地して拡張する。
【0044】
ここで、図2(A)および図2(B)を参照する。同図に示す構成要素のうち、図1(A)および図1(B)に関連して記述した構成要素と同じもの、実質的に類似したものについては、同じ参照番号で示してある。図2(A)と図2(B)は、材料を積層する装置を概略的に示している。図2(A)は、´307の出願による教示内容の範囲内の実施の形態を図示しており、図2(B)は、本発明の開示の教示内容による実施の形態を図示している。より具体的に言えば、図2(A)には、熱ジェット印字ヘッドの一部構成要素を選んで概略的に示してある。ここに示す構成要素は、先ずチャンバ130であり、当該チャンバ130は、キャリア液中に粒子を含んだ液体インク101を格納しており、単一の開口部170を有し、当該開口部はチャンバ130と流体連通している。また、放出ノズル180が図示してあり、当該放出ノズルは、チャンバ130との間に間隔をおいて配置されており、点線の長方形160によって示す領域に微細孔配列を有する。3つの液滴200が図示してあり、これらは微細孔配列160に向けて、チャンバ130から連続的に噴射されたものである。3つの液滴は、チャンバ130と微細孔配列160上の共通の目標箇所とを結ぶほぼ直線的な送出経路に沿って、それぞれ異なる位置に示されている。
【0045】
図2(B)は、本発明の開示の教示内容による熱ジェット印字ヘッドの一部構成要素を選んで、その例示的な実施の形態の概略を示す。ここに示す構成要素は、先ず、キャリア液中に粒子を含んだ液体インク101を格納したチャンバ130であり、当該チャンバは3つの開口部を有する。開口部は全体を参照番号170で指し、チャンバ130と流体連通している。また、放出ノズル180が図示してあり、当該放出ノズル180は、チャンバ130に対して間隔をおいて配置されており、点線の長方形160によって示す領域に微細孔配列を有する。3つ一組の液滴の組が3つ、参照番号202、204、206で示されており、これらは、例えば、図1(A)に関連して上述した方法で、チャンバ130から微細孔配列160に向けて連続して噴射されたものである。液滴の組に含まれる3つの液滴の各々は、チャンバ130と微細孔配列160上の各自の目標箇所とを結ぶほぼ直線的な送出経路に沿って、それぞれ異なる位置に示されている。つまり、3つの開口部の各々は、噴射した液滴を各自の送出経路に沿って微細孔配列上の固有の目標箇所に送る。
【0046】
図3(A)は、図2(A)の印字ヘッド(すなわち、単一チャンバ、単一開口部で、一度に液滴を1つだけ発射するインクジェット)を用いて得られる結果を概略的に図示した平面図である。既に述べたように、微細孔配列によって規定される領域(例えば図3(A)に示す、放出ノズル180の微細孔160が成す矩形の配列)の1以上の長さ寸法が液滴の直径を上回っていれば、インクジェットの単一開口部チャンバから配列上の共通の位置に向けて1以上の液滴を発射しても、不充分な結果しか得られない可能性がある。こうした結果は、配列の領域のうち、衝突後の液滴が拡張して濡らす範囲が充分でない場合に生じる。実際、図2(A)の印字ヘッドを使用した場合は、液滴が1つだけ吐出され、それが何らかの適当な噴射力および体積力(重力など)の作用で空間を移動した後、放出ノズルの微細孔配列の一部に着地し、そこを濡らす。図示してあるように、個々の液滴は、先ず目標領域の中心を濡らした後、外向きに拡張し、それが連続することで塗らされる領域は広がっていく:先ず領域305a、次いで領域305b、最後に最も広い領域305c。領域305cですら、微細孔領域の半分もカバーできていない。この程度のカバー範囲では、多くの用途において使用に耐えない。
【0047】
しかしながら、本発明の教示内容によれば、複数(例えば3つ)の開口部を用いてインクジェットの液体格納チャンバから液体インクの複数の液滴を同時に噴射する場合(例えば、図2(B)の3開口部印字ヘッドを用いる場合)、矩形の配列は、図3(B)に示すように、より均一に濡らされることになる。具体的には、各々の液滴は、微細孔配列上の各自の目標場所に衝突して拡張し、各々の液滴の径方向の遠位部分は、隣接する液滴の液体インクと重なる。3つの衝突点は、衝突後の液滴の液体インクで覆われる微細孔配列の範囲が最大になるよう選定しておくことができる。その結果、配列に含まれる微細孔のうちインクを受けるものの数が多くなる。
【0048】
図3(C)は、V字に似た形状を成すように3つ一組の液滴を同時に噴射する構成のインクジェットから発射された3つ一組の液滴が衝突した後、V字形状の微細孔配列の入口において、液体がどのように拡張するかを概略的に示した平面図である。
米特許出願第2008/0311307号(ここでの参照により全文が本明細書に明示的に援用される)に示された別の様態のいくつかは、本発明の開示の教示内容と組み合わせて用いることができる。例えば、無溶媒材料(´307の出願に記述されたもの)の積層プロセスの様態は、ここでも利用することができる(例えば、本発明の教示内容による、複数開口部インクジェットを有した印字ヘッドに利用できる)。さらに、例えば、本発明の教示内容の印字ヘッドを複数、各々に複数開口部インクジェットを対応させた複数の放出ノズルを有する装置の中に配列することができる。さらに加えて、例えば、1以上の容器から、本発明の教示内容の印字ヘッド装置のチャンバに液体インクを供給することもできる。ここで考慮するいくつかの実施の形態では、本発明の教示内容の印字ヘッドは複数が一緒に配列され、インクは、複数の貯蔵容器から組み合わされた1以上の液体格納チャンバに供給される。各種実施の形態において、目標とされて液体インクを受ける微細孔の配列は、擁壁によって囲まれ、当該擁壁は、微細孔の入口に供給されるインク(および/または他の材料)を物理的に閉じ込める閉じ込め井戸を形成する。
【0049】
また、各種実施の形態では、位置決めシステムを用いて、印字ヘッドまたは印字ヘッド配列の位置を調節する。それに加えて(あるいは、その代わりに)、基材の位置決めシステムを用いてもよい。いくつかの実施の形態では、微細孔の側壁について、非円筒形の幾何学形状を成すように形成することができる(例えば、テーパー形状として、各微細孔の直径が入口側端部から出口側端部に向かって大きくなるようにする)。ここに示す各種実施の形態では、制御システムを設けて、複数開口部液体格納チャンバおよび放出ノズルを有する印字ヘッドの制御を行うこともできる。当業者であれば、´307の開示内容に示す様態の中から、本発明の開示の教示内容と組み合わせ使用できるものを、上記以外にも選び出し実装することが可能であろう。
【0050】
上で述べたように、本発明の教示内容による印字ヘッド装置のいくつかの構成では、複数の液滴を、例えば、ほぼ同時に、目標となる単一の微細孔配列の上に積層することができ、その際には、複数の組み合わされたインク格納チャンバから前記配列に向けられた複数の開口部を利用する。例えば、各種印字ヘッド装置(図示せず)の実施の形態では、単一の目標微細孔配列と関連付けられた複数のチャンバの各々が、液体インク液滴を目標微細孔配列に送出するために1以上の開口部を有する。こうした実施の形態のいくつかでは、複数のチャンバの各々は、液体インク液滴を送出するための開口部を1つしか有していない。例えば、いくつかの実施の形態(図示せず)では、3つのインク液滴が3つの異なった開口部チャンバの組から、ほぼ同時に送出されるという構成(すなわち、3つの別個のチャンバの各々が、液体インクの液滴を1つずつ(必要であれば連続的に)噴射する開口部を1つだけ備える構成)によって、本明細書の教示する、単一のインク格納チャンバに3つの開口部を備えた印字ヘッド装置を用いた場合と同じ結果が達成される。
【0051】
例えば、1つの実施の形態(図示せず)では、3つの別個のチャンバが互いに近接するように(例えば、並んで)配置される。これら3つのチャンバは、例えば、共通の1つのハウジングの中に構成することも、別個の複数のハウジング(互いに近接するように装着または設置されたもの)の中に構成することも、あるいは、これらを組み合わせた形で構成することもできる。3つのチャンバの各々が格納している液体インク(同じ種類のインクでも異なる種類のインクでもよい)は、対応する目標となる単一の微細孔配列(例えば、矩形の微細孔配列)の上に積層される。本実施の形態では、3つのチャンバの各々は、目標の微細孔配列に液体インク液滴を送出するための開口部を1つしか有していない。個々の液滴が方向付けられる3つの送出経路は、各々の開口部と、目標となる単一の微細孔配列上に間隔をおいて定められた別々の位置とをつなぐ別々の線によって定められる。
【0052】
本発明の教示内容による各種実施の形態では、目標の微細孔配列の上に複数の液滴を積層するにあたって、配列が規定する領域を液滴が満たすようにするのが好ましい。こうした実施の形態に含まれる構成として、例えば以下のようなものがある。すなわち、微細孔配列が2以上の長さの異なる寸法(例えば、お互いに直交する第1および第2の長さ寸法であって、第1の寸法が第2の寸法よりも長いというもの)を有し、当該微細孔配列の長さ寸法のうち大きい方は、液滴の直径(具体的には、放出ノズルの入口面に衝突、拡張した後に計測された直径の平均値または中間値)よりも大きくなっているが、小さいほうの長さ寸法は液滴の直径より小さくなっている、という構成である。
【0053】
図4をさらに参照して一例を挙げれば、本発明の教示内容の印字ヘッド装置のいくつかの実施の形態では、参照番号160の微細孔の矩形配列の寸法は、配列の長寸法(D)が配列に積層される液滴305の直径(d)より大きいのに対し、配列の短寸法(D)は液滴305の直径(d)よりも小さい、というものになっている。こうした構成は、例えば、微細孔が液体インクを(毛管作用によって)引き込むにあたってより効果的であり、前記液滴を一線上に積層して、配列ならびに配列の周囲(配列を囲む)の領域を完全に覆うことで、非常に均一性の高い充填を行うことができる。このように、本発明の教示内容による構成や用法では、液滴直径が配列の長さ寸法の少なくとも1つよりも大きくなっている。ただし、全ての長さ寸法よりも大きい必要はない。
【0054】
本発明の教示内容の各種実施の形態では、インクジェットで噴射される液滴について、サイズの異なる液滴を用いることも考えている。これは、所定の微細孔配列領域の効果的な充填を容易にするための方法である。ここで図5を参照する。微細孔160で形成した配列などのように、微細孔の配列構成によっては、サイズの異なる液滴を噴射するように構成したインクジェットを用いる方が好ましい場合もある(例えば、1つの開口部が第1のサイズの液滴を噴射し、2つの開口部は第2のサイズの液滴を噴射し、第2のサイズは第1のサイズよりも小さい、というもの)。例えば、図5では、3つの液滴が、放出ノズル180の微細孔160の配列上でほぼ一線上に定められた別々の位置に積層される。そして、それら液滴のうち、外側または末端の2つの液滴(参照番号305eで示すもの)の直径dは、真ん中または中央の液滴(参照番号305mで示すもの)の直径dよりも小さくなっている。
【0055】
ここに記載した実施の形態によって例示したように、本発明の教示内容のいくつかの様態では、放出ノズルの目標の微細孔配列の入口を効率的かつ効果的に濡らすことができ、従って、微細孔に液体インクを導入するのも容易である。各種実施の形態によれば、目標の微細孔配列の50パーセント以上、60パーセント以上、70パーセント以上、80パーセント以上、90パーセント以上、または、実質的に全てが液体インクを受け止める。
【0056】
各種実施の形態において、本発明の開示内容による放出装置は、1以上の基材の上に実質的に固体の形で1以上の材料(例えばインク)を積層するのに用いることができる。インクを積層する各種実施の形態では、例えば、基材上に積層しようとする材料が当初はキャリア液中に粒子の形で懸濁または溶解している、という形でインクを構成することができる。キャリア液は、例えば、有機的なもの(アセトン、クロロホルム、イソプロパノール、クロルベンゼン、トルエンなど)とすることもできるし、水性のもの(水など)とすることもできる。キャリア液はまた、上に挙げた材料の混合物とすることもできる。基材上に積層する成分の1以上は、有機分子化合物とすることもできる。例えば、ペンタセン、aluminum tris-(8-hydroxyquinoline)(A1 Q3)、N,N'-diphenyl-N,N'-bis(3-methylphenyl)-(1,1-biphenyl)-4,4'-diamine(TPD)、バソクプロイン(BCP)、fac tris (2-phenylpyridine) iridium(Irppy)がある。基材上に積層される材料のうち1以上は、重合体とすることもできる。
【0057】
基材上に積層される材料のうち1以上は、半導体、絶縁体、伝導体などの無機物とすることもできる。積層材料のうち1以上は、電子入射材料(electron injection material)とすることができる。積層材料のうち1以上は、電子伝達材料(electron transport material)とすることができる。積層材料のうち1以上は、発光材料とすることができる。積層材料のうち1以上は、正孔輸送材料(hole transport material)とすることができる。積層材料のうち1以上は、正孔注入材料(hole injecting material)とすることができる。積層材料のうち1以上は、励起子障壁材料(exciton blocking material)とすることができる。積層材料のうち1以上は、光吸収材料(light absorbing material)とすることができる。積層材料のうち1以上は、化学センシング材料(chemical sensing)とすることができる。積層材料は、例えば、OLED、トランジスタ、光センサ、太陽光電池、そして化学センサにおいて、例えば、伝導体、発光素子、光吸収体、電荷ブロッカー、励起子ブロッカー、そして絶縁体として使用される。
【0058】
インクの特性によって、薄膜積層における重要な要素を定めることができる。インクの重要な性能基準の1つは、インク材をチャンバから放出ノズルに充填する際の、効率、信頼性、均一性とすることができる。また、関連する性能基準には、インクの以下の能力が含まれる。すなわち、(1)1以上の放出ノズル面を濡らすこと、(2)放出ノズルの穴に素早く引き込まれること、(3)放出ノズルのうち放出ノズル穴が設けられた領域に素早く拡張すること、である。
【0059】
もう1つのインクの重要な性能基準は、一貫した形で所望量の材料を放出ノズルに送出することであり、それにより、放出ノズルが材料を吐出するにあたって、毎回一定の所望量の材料が積層されることになる。インクは、チャンバ開口部から放出ノズルまで一定のインク量が確実に送出されるように作ることができる。これを実現するには、対象となるインクについて、インク液およびインク中に溶解または懸濁される材料の物理的および化学的な特性を設定する。そうした特性としては、粘性、揺変性、沸点、材料可溶性、表面エネルギ、蒸気圧が挙げられるが、これらに制限はされない。
【0060】
1つの実施の形態では、開示された実施の形態による放出装置を用いて、基材上に金属材料を積層することができる。積層する金属材料については、実質的に固体の形で積層することができる。積層する材料としては、溶媒に溶解または懸濁した有機金属前駆体材料を利用して形成された金属、または、溶媒に溶解または懸濁した金属とすることができる。溶媒に溶解または懸濁した金属は、少なくとも部分的にはナノ粒子で作ることもでき、その場合、ナノ粒子は有機化合物で被覆することができる。金属の例としては、金、銀、アルミニウム、マグネシウム、または銅を挙げることができる。金属は、合金または複数の金属の混合物とすることができる。そのような金属材料は、多くの用途において有用であるが、例えば、薄膜電極、電子回路要素間の電気的相互接続、そして、受動型(passive)の吸収または反射パターンとして用いることができる。
【0061】
本放出装置で積層される金属薄膜は、有機的電子装置(例えば、OLED、トランジスタ、光センサ、太陽光電池、化学センサ)を含んだ回路で利用される、電極および電気的相互接続の積層に用いることができる。有機金属材料または金属材料は、放出ノズルに送出され、放出ノズルの駆動時に基材に送出される。また、有機金属材料から金属材料への変換反応を生じさせることが可能であるが、そのタイミングは、チャンバから放出ノズルへ液体を送出する前および/または送出中、放出ノズルから基材への送出中、または基材上に積層された後とすることができる。放出ノズルから基材に金属材料を送出する場合、各種実施の形態では、ナノ粒子を利用するのが効果的である。そうすることで、金属を微細孔から移動させるのに必要なエネルギを小さくできるからである。本放出装置を利用して基材上に金属を積層すれば、材料の能率的利用や、金属薄膜が積層される材料(下にある基材や積層済みの他の層を含む)に損傷を与えない積層技術を採用できる、という効果がある。
【0062】
別の実施の形態における放出装置は、基材上に実質的に固体の形で無機半導体材料または絶縁体材料を積層するのに用いられる。積層材料には、キャリア液中に溶解または懸濁した有機または無機の前駆体材料を利用した合成物や、キャリア液中に溶解または懸濁した無機半導体または絶縁体が含まれる。液中に溶解または懸濁させる無機半導体または絶縁体は、全体または一部をナノ粒子で構成することができ、ナノ粒子は有機化合物で被覆することができる。無機半導体または絶縁体の例としては、IV族半導体(例:カーボン、シリコン、ゲルマニウム)、III−V族化合物半導体(例:窒化ガリウム、リン化インジウム、ガリウム砒素)、II−VI族化合物半導体(例:セレン化カドミウム、セレン化亜鉛、硫化カドミウム、テルル化水銀)、無機酸化物(例:酸化インジウムスズ、酸化アルミニウム、酸化チタン、シリコン酸化シリコン)、そして、その他カルコゲニドがある。無機半導体または絶縁体は、複数の無機化合物の混合物または合金とすることができる。半導体材料または絶縁体材料は、多くの用途に使用することができ、例えば、電極用の透明導体や電子回路要素間の電気相互接続、絶縁および不動態化層として、そして、電子装置や光電子工学装置の中の活性層として使用することができる。また、一体化して用いる場合、これらの層は有機的電子装置(例:OLED、トランジスタ、光センサ、太陽光電池、化学センサ)を含む回路で利用することができる。
【0063】
別の実施の形態では、前駆体、無機半導体、あるいは絶縁体の材料を放出ノズルに送出して、放出ノズルの駆動時に基材に送出させることができる。前駆体材料から所望の無機半導体または絶縁体の材料への変換反応を生じさせることが可能であるが、そのタイミングは、チャンバから放出ノズルへの液体の送出前および/または送出中、放出ノズルから基材への送出中、または基材上に積層された後、とすることができる。放出ノズルから基材まで無機半導体または絶縁体の材料を送出する場合、各種実施の形態では、ナノ粒子を利用するのが効果的である。そうすれば、材料を微細孔から移動させるのに必要なエネルギを小さくできる。また、本放出装置を利用して無機半導体または絶縁体の材料を基材上に積層すれば、材料の効率的な利用や、薄膜が積層される材料(下にある基材や積層済みの他の層を含む)に損傷を与えない積層技術を採用できる、という効果がある。
【0064】
以上、本発明の教示内容の原理を、本明細書に図示および記載した各種の例示的な実施の形態に関連付けて説明したが、本発明の教示内容の原理はそれらに限定されることはなく、これら実施の形態の修正形、別形、変形例および/またはや等価物をその範囲に含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の基材に1以上の材料を積層する積層装置であって、
インクを格納するチャンバと、
前記チャンバに対して間隔をおいて配置され、複数の微細孔を有する放出ノズルと、
前記チャンバと流体連通する複数の開口部と、を有し、
各微細孔は、前記チャンバに対向する入口ポートが形成された第1の端部領域と出口ポートが形成された第2の端部領域とを有し、
前記開口部の各々は、前記チャンバからインク液滴を量り取り、別々の送出経路に沿って、放出ノズルの入口ポート上に間隔を開けて置かれた別々の位置まで送出されるように構成されており、
前記チャンバには、キャリア液中に複数の固体の粒子が溶解または懸濁したものとして形成された液体状態のインクが収容されており、前記インク液滴は、前記チャンバから前記開口部によってパルスにより量り取られて前記放出ノズルに送出され、
前記放出ノズルは、前記キャリア液を気化させて、前記基材上に固体の粒子を積層すること、
を特徴とする積層装置。
【請求項2】
チャンバ内から各開口部を介してインク液滴を噴射させるためのパルスエネルギを供給する駆動装置を、各開口部に近接した位置にそれぞれ有すること、
を特徴とする請求項1に記載の積層装置。
【請求項3】
前記複数の駆動装置は、前記パルスエネルギを同時に供給し、それによって、前記インク液滴を同時に噴射させるように構成されていること、
を特徴とする請求項2に記載の積層装置。
【請求項4】
前記複数の開口部とは、第1、第2、第3の開口部であること、
を特徴とする請求項1に記載の積層装置。
【請求項5】
(i)前記複数の微細孔の前記入口ポートは長軸と短軸とを有する矩形の配列を形成し、(ii)前記第1、第2、第3の開口部は前記長軸に対して平行な線上に並んで配列され、
さらに、量り取られた液滴のうち少なくとも1つの直径が、前記長軸および短軸のうちの少なくとも一方の長さを下回ること、
を特徴とする請求項4に記載の積層装置。
【請求項6】
(i)前記複数の微細孔の前記入口ポートは非矩形形状の平面配列を形成し、(ii)(a)前記第1および第2の開口部と(b)前記第2および第3の開口部とによって規定される線分との組合せは、前記非矩形形状に類似の形状を形成し、
さらに、前記非矩形形状は、その面に沿って1以上の寸法を有し、当該1以上の寸法は、量り取られた液滴のうちの少なくとも1つの直径を上回ること、
を特徴とする請求項4に記載の積層装置。
【請求項7】
(i)前記平面配列はV字形状を有し、(ii)(a)前記第1および第2の開口部によって規定される線分と、(b)前記第2および第3の開口部によって規定される線分との組合せがV字形状を形成すること、
を特徴とする請求項6に記載の積層装置。
【請求項8】
前記開口部のうちの少なくとも1つは、第1のサイズの液滴を噴射するように構成されており、前記開口部のうちの他の少なくとも1つは、第2のサイズの液滴を噴射するように構成されており、前記第1のサイズは前記第2のサイズより大きいこと、
を特徴とする請求項1に記載の積層装置。
【請求項9】
1以上の基材上に1以上の材料を積層する積層方法であって、
(a)キャリア液中に複数の粒子が溶解または懸濁して形成された液体インクをチャンバに供給する処理と、
(b)各々が前記チャンバに流体連通した状態で間隔をおいて配置された2以上の開口部にパルス状のエネルギを供給することで、チャンバの液体インクの液滴を各々の開口部から同時に量り取る処理と、
(c)量り取られたインク液滴を、それぞれ別の送出経路に沿って、間隔をおいて定められた放出ノズル上の別々の位置に同時に送出する処理と、
(d)量り取られたインク液滴を、当該インク液滴を導く複数の微細孔を有する放出ノズルで受ける処理と、
(e)前記複数の微細孔でインクを加熱してキャリア液を蒸発させることで、前記複数の粒子からキャリア液を取り除く処理と、
(f)微細孔から複数の粒子を基材上に放出して、前記複数の粒子を固体の状態で基材上に積層する処理と、
を有することを特徴とする積層方法。
【請求項10】
前記開口部のうちの少なくとも1つは、第1のサイズの液滴を噴射するように構成されており、前記開口部のうちの他の1つは、第2のサイズの液滴を噴射するように構成されており、前記第1のサイズは前記第2のサイズより大きいこと、
を特徴とする請求項9に記載の積層方法。
【請求項11】
処理(b)は、前記チャンバと流体連通した状態で間隔をおいた位置にある第1、第2、第3の開口部にパルス状のエネルギを供給することで、3つ一組の液滴を量り取る処理を含み、
3つ一組の液滴は連続して複数組量り取られること、
を特徴とする請求項9に記載の積層方法。
【請求項12】
量り取られたインク液滴を放出ノズルで受ける処理は、量り取られた液滴を微細孔に通じる複数の入口で受け止め、当該量り取られた液滴を各々の入口から微細孔の内部に移動させるという処理をさらに含むこと、
を特徴とする請求項9に記載の積層方法。
【請求項13】
所定の数の前記複数の入口が、規則的に間隔をあけられて平面配列を形成し、前記平面配列の、平面に沿った寸法の少なくとも1つが、量り取られた液滴のうちの1つの直径よりも大きくなっており、
前記量り取られた液滴は、前記配列に沿って間隔をあけて定められた複数の別々の位置に積層され、量り取られた液滴を入口から移動させる処理の結果、前記所定の数の入口に対応する微細孔の50パーセント以上が極少量の液体インクを受け取ること、
を特徴とする請求項12に記載の積層方法。
【請求項14】
前記所定の数の入口に対応する微細孔の80パーセント以上が極少量の液体インクを受け取ること、
を特徴とする請求項13に記載の積層方法。
【請求項15】
処理(b)は、前記チャンバと流体連通した状態で間隔をおいた位置にある第1、第2、第3の開口部にパルス状にエネルギを供給することで、チャンバの液体インクの液滴を各々の開口部から同時に量り取る処理を含み、
処理(c)は、3つの液滴を、それぞれ別の送出経路に沿って、間隔をおいて定められた放出ノズル上の別々の位置に同時に送出する処理を含むこと、
を特徴とする請求項9に記載の積層方法。
【請求項16】
(i)前記複数の微細孔は、長軸と短軸とを有する矩形配列を形成し、(ii)前記第1、第2、第3の開口部は前記長軸に平行な線上に配列され、
さらに、量り取られた液滴のうち少なくとも1つの直径は、前記長軸および短軸のうちの少なくとも1つの長さを下回ること、
を特徴とする請求項15に記載の積層方法。
【請求項17】
(i)前記複数の微細孔は、非矩形形状の配列を形成し、(ii)(a)前記第1および第2の開口部が規定する線分と、(b)前記第2および第3の開口部によって規定される線分との組合せは、前記非矩形形状に類似の形状を形成し、
さらに、前記配列の面領域は、少なくとも1つの寸法、一般に前記送出経路に対して直交する方向における寸法が、量り取られた液滴のうち1つの直径よりも大きいこと、
を特徴とする請求項15に記載の積層方法。
【請求項18】
1以上の基材の上に1以上の材料を積層する積層方法であって、
複数の粒子をキャリア液中に溶解または懸濁した状態で含む液体インクを、格納領域に格納しておく処理と、
前記格納領域にエネルギを供給することで、前記格納領域に間隔をおいた定められた2以上の位置から液体インクの複数の液滴を同時に噴射させ、各々の液滴を前記格納領域に隣接する面に定められた個別の位置に、別々の送出経路に沿って送出する処理と、
噴射された液滴の各々を極少量の液体インクに細分し、当該極少量の液体インクを前記面に近接する別々の微小格納領域内に収納する処理と、
微小格納領域を第1の温度まで加熱してキャリア液を蒸発させることで、微小格納領域内に、キャリア液を伴わない固体粒子を生成する処理と、
微小格納領域をさらに第2の温度まで加熱して、内部の固体粒子を気体に変化させる処理と、
微小格納領域から隣接する基材の上に気体を送り、基材上で当該気体を凝固させる処理と、
を有することを特徴とする積層方法。
【請求項19】
前記格納領域にエネルギが送出されると同時に、3つの液体インク液滴が格納領域から同時に噴射され、各自の送出経路に沿って、前記面の個別の3つの位置に同時に送られること、
を特徴とする請求項18に記載の積層方法。
【請求項20】
規則的な間隔をおいた所定数の微小格納領域が配列を形成しており、
前記3つの液滴は、前記配列に沿って間隔をおいた別々の位置に積層され、それによって、前記細分する処理の結果として、配列された前記所定数の微小格納領域の80パーセント以上が極少量の液体インクを受け取る結果となり、
さらに、前記配列が成す平面領域は、少なくとも1つの寸法、一般に前記送出経路に直交する方向における寸法が、量り取られた液滴のうち1つの直径よりも大きいこと、
を特徴とする請求項19に記載の積層方法。
【請求項21】
前記平面領域は、少なくとも前記送出経路に直交する第2の寸法においては、噴射された液滴のうち1つの直径よりも小さいこと、
を特徴とする請求項20に記載の積層方法。
【請求項22】
前記2以上の間隔をおいて決められた位置のうち1つから噴射される液滴は第1のサイズを有するものであり、前記2以上の間隔をおいて決められた位置のうち別の1つから噴射される液滴は第2のサイズを有するものであり、
前記第1のサイズは前記第2のサイズよりも大きいこと、
を特徴とする請求項18に記載の積層方法。
【請求項23】
前記2以上の間隔をおいて決められた位置のうちの少なくとも1つは、第1のチャンバと流体連通した第1の開口部であり、前記2以上の間隔をおいて決められた位置のうちの別の少なくとも1つは、第2のチャンバに流体連通した第2の開口部であること、
を特徴とする請求項19に記載の積層方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−514837(P2012−514837A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544660(P2011−544660)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/020144
【国際公開番号】WO2010/078587
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(509264822)カティーヴァ、インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Kateeva,Inc.
【住所又は居所原語表記】1430 O’Brien Drive,Suite A,Menlo Park,California 94025 USA
【Fターム(参考)】