説明

交通信号制御装置及び方法、到着プロファイルの推定装置、並びに、コンピュータプログラム

【課題】 車両感知器が設置されていなくても到着プロファイルをより正確に推定できるようにし、到着プロファイルを用いた交通需要の予測に基づく信号制御を高精度で行う。
【解決手段】 本発明の交通信号制御装置は、交差点C1の停止線Pに到着する車両5の予測交通量の時系列データである到着プロファイルPFを用いて、交通需要を予測した信号制御を行う予測制御部401Bと、交差点C2の上流側を走行する車両5の位置情報S3を含む車両情報に基づいて到着プロファイルPFを推定する推定部401Aとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点の停止線に到着する車両の予測交通量の時系列データである到着プロファイルを用いて行う、交通需要を予測した信号制御の改良に関する。
より詳しくは、上記到着プロファイルを用いて交差点での変動状況を動的に予測し、交通信号機の信号灯色を効率的に制御する交通信号制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の系統制御や広域制御による交通信号の信号制御方式を、信号制御パラメータ(スプリット、サイクル長及びオフセット等)の設定方式の視点で大別すると、時間帯に応じて信号制御パラメータを設定する定周期制御と、交通状況に応じて信号制御パラメータを設定する交通感応制御の2種類がある。
このうち、後者の交通感応制御は、端末の交通信号制御機ごとに行う端末感応制御と、路線系統制御或いは面制御される複数の交差点を対象に信号制御パラメータを変化させる中央感応制御に分類される。
【0003】
上記中央感応制御は、交通流の変動に対応した高度な系統制御や広域制御(面制御)を行えるため、交通量の時間変動が激しくかつ交通量が多く、高い交通処理効率が要求される道路に適用され、プログラム選択制御又はプログラム形成制御が採用される。
プログラム選択制御とは、予め設定された複数のプログラムの中から、車両感知器情報に基づいてそのときの交通状態に最適な一つのプログラムを選択する方式である。また、プログラム形成制御とは、予め有限個のパラメータ値を設定するのではなく、車両感知器情報に基づいてオンラインで信号制御パラメータや信号表示の切り替えタイミングを決定する方式である。
【0004】
交通管制センターが行う中央感応制御では、一般にプログラム選択制御が採用されているが、これには次のような短所がある。
(1)パラメータの設計に多大な労力を要する。
(2)交通状況の経年変化で状況が大きく変化した時の再設計が必要となる。
(3)評価指標(交通量と占有率の加重和)が経験的かつ曖昧である。
(4)余裕を持たせるためにサイクル長が長くなる傾向にあり、無駄な青時間が発生したり、歩行者待ち時間が大きくなったりし易い。
【0005】
そこで、上記短所を解決するために、交通管制センターの中央装置が交通状況に応じて信号制御パラメータを自動的に更新するプログラム形成制御が行われており、この制御方式はMODERATO(Management by Origin-DEstination Related Adaptation for Traffic Optimization)制御と呼ばれている(非特許文献1参照)。
【0006】
一方、上記MODERATO制御に加えて、一部の交差点に関して、信号制御に未来の予測情報を用いて青時間を最適化することにより、更にリアルタイム性を高めたUTMS(Universal Traffic Management Systems)という制御方式を採用する場合がある。このUTMS制御の特徴は次の通りである(非特許文献2参照)。
(1) 現在から1サイクル未来の交通需要の予測
(2) 車両の時間遅れの直接評価に基づいたリアルタイム制御の実現
(3) 分散型の制御意思決定:中央制御と連携するハイブリッド型または隣接交差点が強調して動作する自律型の制御モードが選択可能
【0007】
かかるUTMS制御では、車両が交差点の停止線に到着する予測交通量の時系列データである到着プロファイルを所定時間ごとに推定しており、この到着プロファイルと他の信号制御情報に基づいてシミュレーション演算を実行する。
上記シミュレーション演算は、具体的には、交差点全体の待ち行列台数の変動状況である遅れ時間(信号停止待ち時間)を算出し、この遅れ時間に基づく評価値が最も小さくなる青終了タイミングを探索し、最適な青終了タイミングを決定するものである(非特許文献2参照)。
【0008】
【非特許文献1】「改訂 交通信号の手引き」 編集・発行 社団法人 交通工学研究会(16〜18頁、83〜87頁)
【非特許文献2】「次世代信号制御方式の開発と実証実験」 SEIテクニカルレビュー 2004年3月 第166号 51〜55頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、UTMS制御を行うには到着プロファイルを推定することが不可欠であるが、従来では、その到着プロファイルを次のようにして求めている。
すなわち、交差点の上流側に設置された車両感知器を通過した車両台数を1秒から数秒単位ごとに集計し、次に、集計された車両グループが所定の車両速度(設定値又は計測値のいずれでもよい。)で走行するとの仮定の下で、その車両グループが停止線に到達する予測時刻を特定する。この車両グループを予測時刻順に並べたものが到着プロファイルである。
【0010】
また、UTMS制御では、通常、隣接する上流側の交差点から当該交差点に向かって流出する予測交通量の時系列データである隣接データを取得しており、この隣接データも加味して当該交差点の到着プロファイルを生成することにより、現在から1サイクル先未来までの当該交差点に対する流入交通の予測精度を向上させている。
従って、各予測時刻での当該交差点への流入交通量は、流入リンクごとに作成された到着プロファイルによって予測できることになる。
【0011】
しかしながら、従来のUTMS制御に用いる到着プロファイルにおける予測交通量は、すべて車両感知器による地点観測で得られた情報であるから、車両がリンクから流出又は流入した場合のような事情変更に適切に対応できないという欠点がある。
例えば、車両感知器の下流側から当該交差点の停止線までの間に脇道があり、車両感知器でカウントされた車両がその脇道から流出したり、逆に車両感知器を通過していない脇道からの車両が当該交差点に流入したりした場合には、到着プロファイルを構成する各車両グループ(予測交通量)に誤差が生じ、到着プロファイルを用いた交通需要の予測に基づく信号制御の精度が悪化することになる。
【0012】
また、車両感知器による地点観測で到着プロファイルを推定する場合には、車両感知器を通過した車両の速度がその後に変化すると、到着プロファイルの精度が悪化する可能性があるという欠点もある。
すなわち、この種の到着プロファイルの推定処理では、通常、車両感知器を通過した車両が一定速度で停止線に到達すると仮定するので、通過後の車両の速度が変化すると、その車両が実際に停止線に到着する時刻とその予想時刻との間にずれが生じ、この場合にも到着プロファイルに誤差が生じることになる。
【0013】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、到着プロファイルをより正確に推定できるようにして、到着プロファイルを用いた交通需要の予測に基づく信号制御を高精度で行うことができる交通信号制御装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の交通信号制御装置(請求項1)は、交差点の停止線に到着する車両の予測交通量の時系列データである到着プロファイルを用いて、交通需要を予測した信号制御を行う制御手段と、前記交差点の上流側を走行する前記車両の位置情報を含む車両情報を用いて前記到着プロファイルを推定する推定手段と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
上記交通信号制御装置によれば、推定手段が、交差点の上流側を走行する車両の位置情報を含む車両情報に基づいて到着プロファイルを推定するので、脇道に対する流出車両や流入車両があっても、それを到着プロファイルに反映することができ、車両感知器の場合に比べて到着プロファイルをより正確に推定することができる。
また、交差点の上流側を走行する車両の位置情報を含む車両情報に基づいて到着プロファイルを推定すると、走行途中の車両の速度変化にも対応することができ、この点においても、車両感知器の場合に比べて到着プロファイルをより正確に推定することができる。
【0016】
本発明の交通信号制御装置において、前記車両の位置情報を外部に送信可能な端末装置が当該車両に設けられている場合には、前記推定手段は、前記端末装置が送信した前記車両の位置情報を用いて前記到着プロファイルを推定することができる(請求項2)。
この場合、車両に設けられた端末装置が送信した車両の位置情報を用いるので、交通需要を予測した信号制御を行う制御エリアに車両感知器が設置されていない道路区間を含む場合であっても、その道路区間の到着プロファイルを推定することができる。
上記端末装置は、代表的な具体例としては、ナビゲーション機能を有する車載装置が採用されるが、搭乗者が任意に車両に持ち込める携帯電話機、PHS端末及び無線通信可能なノートPC等であってもよい。
【0017】
一方、本発明の交通信号制御装置において、前記交差点の上流側を走行する前記車両の位置データを検出する位置検出器がインフラ側に設けられている場合でも、本発明を実施することができる。
すなわち、インフラ側に上記位置検出器がある場合には、前記推定手段として、前記位置検出器が検出した位置データで特定される前記車両の位置情報を用いて前記到着プロファイルを推定するものを採用すればよい(請求項3)。
【0018】
なお、上記位置検出器は、代表的な具体例としては、撮像された車両の画像データからその現在位置データを生成するビデオカメラを採用することができる。
インフラ側に上記位置検出器を設けた場合には、本発明の到着プロファイルの推定処理に必要な車両の位置情報を、当該位置検出器の位置データから取得できる。このため、走行中の車両が前記端末装置を有していなくても、交差点に流入する全車両の位置情報を利用した推定処理が可能となり、この点で本発明の適用範囲が広がる。
【0019】
もっとも、インフラ側に設置される上記ビデオカメラ等の位置検出器の場合には、悪天候や夜間等の外的要因によって位置検出が不正確になることがあるので、車両の位置情報をより確実に得られるようにするには、車両に設けられた端末装置からの送信情報を使用することが好ましい。
本発明の交通信号制御方法(請求項4)は、本発明の交通信号制御装置(請求項1)が行う制御方法であり、当該制御装置と同様の作用効果を奏する。
【0020】
また、本発明のコンピュータプログラム(請求項5)は、本発明の交通信号制御方法(請求項4)をコンピュータに実行させるためのプログラムであり、当該制御方法と同様の作用効果を奏する。
更に、本発明の到着プロファイルの推定装置(請求項6)は、本発明の交通信号制御装置(請求項1)の推定手段として使用される装置であり、当該制御装置と同様の作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0021】
以上の通り、本発明によれば、車両感知器を用いた地点観測による車両台数を用いて到着プロファイルを推定する場合に比べて、その到着プロファイルをより正確に推定できるので、到着プロファイルを用いた交通需要の予測に基づく信号制御の精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第一実施形態〕
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の第一実施形態に係る交通信号制御装置を含む交通信号制御システムの全体構成を示している。図1に示すように、本実施形態の交通信号制御システムは、交通信号機1、車載装置2(図2参照)、車両感知器3、中央装置4、車載装置2を搭載した車両5などを含んでいる。
【0023】
各交通信号機1は、複数の交差点Ci(i=1〜12)のそれぞれに設置され、電話回線等の通信回線6を介してルータ7に接続されている。このルータ7は交通管制センター内の中央装置4に接続され、中央装置4は、所定エリア内の交差点Ciの各交通信号機1とLAN(Local Area Network)を構成している。
従って、中央装置4は、各交通信号機1と双方向通信が可能であり、各交通信号機1は他の交通信号機1とも双方向通信が可能である。なお、中央装置4は、交通管制センターではなく道路上に設置してもよい。
【0024】
車両感知器3は、各交差点Ciに流入する車両台数をカウントするために、対応する各交差点Ciの上流側に設置されており、図示しない通信回線を介して対応する各交通信号機1と繋がっている。
なお、図1では、図示を簡略化するために、各交差点Ciに信号灯器1bが1つだけ描写されているが、実際の各交差点Ciには、例えば図2に示すように、互いに交差する道路の上り下り用として4つの信号灯器1bが設置されている。
また、図1からは必ずしも明らかではないが、中央装置4の制御エリアに含まれる各道路区間(リンク)には、車両感知器3が設置されていない区間が含まれている。
【0025】
〔中央装置〕
図3は、本発明の交通信号制御装置を構成する中央装置4を示すブロック図である。
図3に示すように、中央装置4は、制御部401、表示部402、通信部403、記憶部404及び操作部405を含んでいる。
中央装置4の制御部401は、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピュータ(PC)等よりなり、交通信号機1や車両感知器3からの各種の交通情報の収集・処理(演算)・記録、信号制御及び情報提供を統括的に行う。制御部401は、内部バスを介して上記ハードウェア各部と繋がっており、これら各部の動作も制御する。
【0026】
中央装置4の制御部401は、自身のネットワークに属する交差点Ciの交通信号機1に対して、同一道路上の交通信号機1群を調整する系統制御や、この系統制御を道路網に拡張した広域制御(面制御)を行うとともに、前記MODERATO制御やUTMS制御を行うことができる。
MODERATO制御は、ネットワークに属するすべての交通信号機1をマクロ制御するもので、近飽和の交通状態に対応するために、負荷率という交通指標を用いて各交通信号機1に最適な信号制御パラメータをサイクルごとに自動生成する。
【0027】
例えば、スプリット制御の場合には、各交差点Ciについて、現示ごとの各流入路の負荷率の最大値を求め、現示負荷率の比で正規化されたスプリットを配分する負荷率比配分方式が採用される。
上記負荷率ρは、車両の流入流量Q(台/時)、待ち行列台数E(台/時)及び飽和交通流率s(台/時)を用いて、ρ=(Q+E)/s で定義される。
【0028】
一方、UTMS制御は、ネットワークに属する一部の交通信号機1をミクロ制御するものであり、着目する交差点Ciの上流側で観測された情報を基に交通状況の変化を事前に予測し、その予測に基づいて交差点Ciでの信号待ちによる遅れ時間を最小にするように、最適な青の打ち切りタイミングを決定する。
かかるUTMS制御では、ある交差点Ciにおける、停止線の到着プロファイルPF(図6参照)の情報と信号制御情報とに基づいてシミュレーション演算を行い、現時点から1サイクル以上未来までの待ち行列台数Eの変動状況を計算する。
【0029】
本実施形態では、中央装置4の制御部401が上記UTMS制御を行うことから、当該中央装置4の制御部401は、この制御部401が実行するコンピュータプログラムの機能部分として、交差点Ciの停止線に到着する車両5の予測交通量の時系列データである到着プロファイルPFの推定部401Aと、その到着プロファイルPFを用いて交通需要を予測した信号制御を行う予測制御部401Bとを備えている(図3参照)。
【0030】
従って、上記プロファイル推定部401Aを有する中央装置4の制御部401は、到着プロファイルPFの推定装置としての機能も併有する。
なお、プロファイル推定部401Aと予測制御部401Bが行う制御処理の内容については、後述する。
【0031】
中央装置4の通信部403は、通信回線6を介してLAN側と接続された通信インタフェースであり、所定時間ごとに信号灯器1bの灯色切り替えタイミング等に関する信号制御指令S1と、渋滞情報等を含む交通情報S2とを各交通信号機1に送信している。信号制御指令S1は、信号制御パラメータの演算周期(例えば、1.0〜2.5分)ごとに送信され、交通情報S2は例えば5分ごとに送信される。
また、中央装置4の通信部403は、各交通信号機1から、車載装置2が搭載されている車両5に関する情報である車両情報と、車両5通過時に生じるパルス信号よりなる車両感知器3の感知情報S5とをリアルタイム(例えば、0.1〜1.0秒周期)で受信している。車両情報には、少なくとも車両5の位置情報S3及び識別情報S4が含まれているが、車両5の速度情報が含まれていてもよい。
【0032】
中央装置4の記憶部404は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成されており、前記MODERATO制御やUTMS制御を行う制御プログラムと、この制御に用いる交通指標や到着プロファイルPF等の演算プログラムを記憶している。
また、記憶部404は、制御部401が生成した前記信号制御指令S1及び交通情報S2と、LAN側から取得した位置情報S3、識別情報S4及び感知情報S5を一時的に記憶する。
【0033】
中央装置4の表示部402は、自身が管理するエリアの道路地図と、この道路地図上のすべての交通信号機1や光ビーコン(図示せず)等の位置が表示された表示画面により構成され、中央オペレータに渋滞や事故等の交通状況を報知するものである。
中央装置4の操作部405は、キーボードやマウス等の入力インタフェースよりなり、この操作部405によって中央オペレータが上記表示部402に対する表示切り替え操作等を行えるようになっている。
【0034】
〔交通信号機〕
図2は、交通信号機1の全体構成を示す模式図である。
図2では、交通量の多い主道路RM1,RM2と交通量の少ない従道路RS1,RS2とが合流した交差点Ciを例示している。
この交通信号機1は、主道路RM1,RM2及び従道路RS1,RS2のそれぞれに設置された4つの信号灯器1bと、この信号灯器1bと通信回線8を介して接続された交通信号制御機1aとを備えている。
【0035】
交通信号制御機1aは、中央装置4から信号制御指令S1を受信し、当該信号制御指令S1に基づいて、各信号灯器1bの青、黄、赤及び右折矢等の各信号灯の点灯、消灯及び点滅を制御する。
交通信号制御機1aは、中央装置4から受信した交通情報S2と自身が記憶している交差点IDを、所定周期(例えば、0.1秒ごと)で車載装置2に送信する。また、交通信号制御機1aは、車載装置2から車両5の位置情報S3及び識別情報S4を受信し、車両感知器5から感知情報S5を受信する。
【0036】
図4は、上記交通信号制御機1aの構成を示すブロック図である。
図4に示すように、交通信号制御機1aは、制御部101、灯器駆動部102、有線通信部103、無線通信部105及び記憶部104を含んでいる。
交通信号制御機1aの制御部101は、一又は複数のマイクロコンピュータから構成されている。制御部101には、内部バスを介して灯器駆動部102、通信部103及び記憶部104が接続されており、制御部101はこれらのハードウェア各部の動作を制御する。
【0037】
この交通信号制御機1aの制御部101は、中央装置4が系統制御や広域制御(MODERATO制御やUTMS制御等)を行った結果の出力である信号制御指令S1に従って各信号灯器1bを駆動し、その指令S1に基づく所定のタイミングで各信号灯器1bの信号灯色を切り替える。
灯器駆動部102は、半導体リレー(図示せず)を備え、上記制御部101から入力された出力指令S1に基づいて、複数の信号灯器1bの青色灯、黄色灯、赤色灯それぞれに対応して各色の信号灯に供給される交流電圧(AC100V)又は直流電圧をオン/オフする。
【0038】
交通信号制御機1aの有線通信部103は、中央装置4及び車両感知器3との間で有線通信を行う通信インタフェースであり、中央装置4から信号制御指令S1及び交通情報S2を受信し、車両感知器3から車両の感知情報S5を受信する。
また、交通信号制御機1aの無線通信部105は、交差点Ciに流入する車両5の車載装置2との間で無線通信を行う通信インタフェースであり、交通情報S2を車載装置2に送信し、車両5の位置情報S3及び識別情報S4を車載装置2から受信する。
【0039】
上記無線通信部105は、DSRC(Dedicated Short Range Communication)、無線LANやWiMAX(World Interoperability for Microwave Access)などの通信装置よりなり、車両5に搭載された車載装置2との間で各種情報を無線通信することができる。
図2に示す例では、無線通信部105は、交差点Cに流入する複数の道路RM1,RM2,RS1,RS2のうち、1本の道路RM2を交差点Cに向かって流入する車両5の車載装置2のみと通信可能となっている。
【0040】
そして、本実施形態の無線通信部105は、車載装置2に対して交差点IDとともに対象となるリンク(図2の例では主道路RM2)のリンクIDを送信する。車載装置2は、無線通信部105から受信した情報に付されたリンクIDと走行中のリンクのリンクIDを照合することにより、自身に必要な情報を選択する。
また、無線通信部105の通信領域の延長(主道路RM2の走行方向長さ)は、50〜200m程度に設定されている。
【0041】
交通信号制御機1aの記憶部104は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成されており、有線通信部103が受信した信号制御指令S1及び交通情報S2と、無線通信部105が受信した車両5の位置情報S3及び識別情報S4等を記憶している。
【0042】
なお、図2に例示する交差点Cでは、交通信号制御機1aに無線通信部105と車両感知器3の双方が接続されているが、中央装置4の制御エリアに含まれる交差点Ci(i=1〜12)の交通信号制御機1aには、それらのいずれか一方のみが接続されている。
すなわち、例えば、交差点C2の場合には、流入道路RM2に車両感知器3がなく、交通信号制御機1aが無線通信部105を有し、逆に、交差点C1の場合には、流入道路RM2に車両感知器3が設置されており、交通信号制御機1aが無線通信部105を有していないものとする。
【0043】
〔車載装置〕
車両5に搭載された車載装置2は、交通信号制御機1aとの間で各種情報を無線通信する通信機能と、搭乗者が設定した目的地に案内するナビゲーション機能を有する。
図5は、その車載装置2の構成を示すブロック図である。
図5に示すように、車載装置2は、GPS処理部201、方位センサ202、車速取得部203、通信部204、記憶部205、操作部206、表示部207、音声出力部208及び処理部209等を含んでいる。
【0044】
GPS処理部201は、GPS衛星からのGPS信号を受信し、GPS信号に含まれる時刻情報、GPS衛星の軌道、測位補正情報等に基づいて、車両5の位置(緯度、経度及び高度)を計測する。
方位センサ202は、光ファイバジャイロなどで構成されており、車両5の方位及び角速度を計測する。車速取得部203は、車速センサ(図示せず)が車輪の角速度を検出することにより計測した車両5の速度データを取得する。
【0045】
車載装置2の通信部204は、車両5がある交差点Ciに向かって走行中に、交通信号制御機1aの無線通信部105の通信領域に入ると、その無線通信部105から交通情報S2を受信し、自身の位置情報S3及び速度情報S4をリアルタイム(例えば、0.1〜1.0秒周期)に無線通信部105に送信する。
車載装置2の記憶部205は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成されており、通信部204が受信した交通情報S2を記憶する。また、記憶部205は、道路地図データを記憶している。
【0046】
この道路地図データには、交差点IDと交差点の位置とを対応付けた交差点データ、リンクIDと、リンクの始点・終点・補間点(道路が折れ曲がる地点に対応)それぞれの位置と、リンクの始点に接続するリンクのリンクIDと、リンクの終点に接続するリンクのリンクIDと、リンクコストとを対応付けたリンクデータなどから構成されている。
リンクコストは、例えば、リンクとその終点に接続するリンクの組み合わせの数だけ用意されており、リンクの始点に進入してから当該リンクの終点を退出し、次に接続するリンクの始点に進入するまでに要する時間が設定されている。
【0047】
すなわち、リンクコストには、リンクの始点から終点までを走行するのに要するコスト(時間)と、リンクの終点から次のリンクの始点までを走行するのに要するコスト(時間)、つまり、交差点を通過するのに要するコストが含まれている。
【0048】
車載装置2の操作部206は、タッチパネルやボタン等から構成されており、ドライバを含む車両5の搭乗者が目的地の設定等を行えるようになっている。
車載装置2の表示部207は、車両5のダッシュボード部分に取り付けられたモニタ装置(図示せず)よりなり、作成した画像データを搭乗者に表示する。
また、音声出力部208は、処理部209が作成した音声データをスピーカー(図示せず)から出力する。
【0049】
車載装置2の処理部209は、1又は複数のマイクロコンピュータ等から構成されており、GPS処理部201、方位センサ202、車速取得部203、通信部204、記憶部205、操作部206、表示部207、音声出力部208の各処理を制御する。
また、処理部209は、GPS処理部201が計測した車両5の位置、方位センサ202が計測した車両5の方位及び角速度、車速取得部203が取得した車両5の速度の各データ、記憶部205に記憶している道路地図データに基づいてマップマッチング処理を行い、道路地図データのリンク上における車両5の位置を求める。
【0050】
〔到着プロファイルの推定処理〕
図6及び図7は、到着プロファイルの推定処理を示すための、道路の平面形状と到着プロファイルとの対応関係図である。
前記した通り、中央装置4の制御部401は、到着プロファイルPFの推定部401Aと、その到着プロファイルPFを用いて交通需要を予測した信号制御を行う予測制御部401Bとを備えるが、本発明の特徴は推定部401Aが行う到着プロファイルPFの推定処理の点にある。そこで、以下において、図6及び図7を参照しつつ、プロファイル推定部401Aが行う到着プロファイルの推定処理について説明する。
【0051】
〔車両感知器の感知情報を利用した推定処理〕
図6は、交通信号制御機1aに無線通信部105がなく、車両感知器3がある道路区間(交差点C2〜C1)について行う、車両感知器3の感知情報S5を利用した推定処理を示している。
この場合、プロファイル推定部401Aは、交差点C1の上流側に位置する車両感知器3から逐次受信する感知情報S5に基づいて、車両感知器3を通過した車両台数(地点観測による車両台数)を1秒から数秒単位ごとに集計した通過データD1を常時収集している。
【0052】
プロファイル推定部401Aは、通過データD1を構成する各時点の車両グループ(台数)が所定の車両速度vで走行するとの仮定の下で、その車両グループが停止線Pに到達する予測時刻を特定し、この各車両グループよりなる通過データD1を予測時刻順に並べて到着プロファイルPFを生成する。
一方、プロファイル推定部401Aは、車両感知器3の上流側で隣接する交差点C2から交差点C1に向かって流出する予測交通量の時系列データである隣接データD2を、その交差点C2の交通信号制御機1aから取得している。この隣接データD2は、交差点C2から交差点C1に向かって流出する車両台数を予測し、1秒から数秒単位ごとに集計した時系列データになっている。
【0053】
そこで、プロファイル推定部401Aでは、隣接データD2を構成する各時点の車両グループ(台数)についても、所定の車両速度vで走行するとの仮定の下で、その車両グループが停止線Pに到達する予測時刻を特定し、この各車両グループよりなる隣接データD2を予測時刻順に並べて到着プロファイルPFを生成している。
なお、上記所定の車両速度vは、予め設定された固定値であってもよいし、車載装置2からの車両情報に車両速度が含まれている場合には、車載装置2から取得した車両速度を使用することもできる。
【0054】
例えば、図6に示すように、車両感知器5と交差点C2の間に脇道R1があり、現時点t0においてその脇道R1から車両5Aが流入してきた場合を想定する。
この車両5Aは、現時点t0での通過データD1や隣接データD2には含まれることがないが、実際には、通過データD1と隣接データD2の間の時間帯に停止線Pに到着する車両と考えられるので、かかる車両5Aの台数分を到着プロファイルPFの予測交通量に含めないと、到着プロファイルPFを正確に推定しているとは言えない。
【0055】
また、図6に示すように、車両感知器3の下流側から交差点C1の停止線Pまでの間に脇道R2,R3がある場合を想定すると、車両感知器3でカウントされた車両5Cがその脇道R3から流出したり、逆に、車両感知器3を通過していない車両5Bが脇道R2から交差点C1に流入したりした場合にも、到着プロファイルPFの予測交通量に誤差が生じてしまう。
このように、地点観測である車両感知器3の感知情報S5に基づいて到着プロファイルPFを推定すると、車両感知器3の下流側や上流側での事情変更によって推定誤差が生じる。
【0056】
〔現時点の位置情報を利用した推定処理〕
一方、図7は、車両感知器3がない道路区間(交差点C3〜C2)について行う、現時点t0の位置情報S3を利用した推定処理を示している。
この場合、プロファイル推定部401Aは、車両5に搭載された車載装置2がリアルタイムに送信する車両5の位置情報S3を用いて、現時点t0の車両5の位置情報S3を特定し、この位置情報S3を用いて停止線Pに到着する車両5の予測交通量を求め、到着プロファイルPFを推定する。
【0057】
具体的には、プロファイル推定部401Aは、記憶部404に記憶している道路地図データと現時点の各車両5の位置情報S3とを対比して、交差点C1を含むリンクを走行する当該車両5の現在位置(現時点t0における車両5の位置)を逐次特定している。
そして、各車両5が所定の車両速度vで走行するとの仮定の下で、各車両5が停止線Pに到達する予測時刻を特定し、この各車両5のグループを予測時刻順に並べて到着プロファイルPFを生成する。
【0058】
従って、この場合のプロファイル推定部401Aは、現時点t0での位置情報S3が交差点C1を含むリンク上にあれば、到着プロファイルPFとして加味するし、そのリンク上になければ到着プロファイルPFとして加味しないようになっている。
このように、プロファイル推定部401Aは、現時点t0において交差点C1を含むリンクを走行中の各車両5の位置情報S3を用いて到着プロファイルPFを推定するので、車両感知器3の感知情報S5を用いる場合(図6)のような、流入車両5Bや流出車両5Cの存在に伴う推定誤差の問題は生じない。
【0059】
例えば、従来のように車両感知器3を図7に示す地点P0に設置したとすると、車両感知器3の感知信号S5を用いた推定処理では、その地点P0の下流側で脇道R3に流出した車両5Cであっても到着プロファイルPFに含まれたままとなるのに対し、車載装置2が送信した車両5の位置情報S3に基づく到着プロファイルPFの推定処理では、過去のある時点で車両5Cの位置情報S3がリンク上にあっても、この車両5Cがその後に脇道R3に流出した場合には、この車両5Cの位置情報S3は現時点t0ではリンク上に存在していないので、かかる流出車両5Cの台数分については、到着プロファイルPFの予測交通量に含まれない。
【0060】
また、車両感知器3の感知信号S5を用いた推定処理では、地点P0の下流側で脇道R2から流入した車両5Bについては到着プロファイルPFに含められないのに対し、車載装置2が送信した車両5の位置情報S3に基づく到着プロファイルPFの推定処理では、過去のある時点で車両5Bの位置情報S3がリンク上になくても、この車両5Bがその後に脇道R2から流入した場合には、この車両5Bの位置情報S3は現時点t0においてはリンク上に存在するので、かかる流入車両5Bの台数分については、到着プロファイルPFの予測交通量に含まれることになる。
【0061】
このように、本実施形態のプロファイル推定部401Aによれば、流入車両5Bや流出車両5Cがあっても、到着プロファイルPFを構成する予測交通量に誤差が生じることがなく、到着プロファイルPFを正確に推定することができる。
また、従来のように車両感知器3を図7に示す地点P0に設置したとすると、車両感知器3の感知信号S5を用いた推定処理では、地点P0を通過した車両5の速度がその後に地点P0の下流側で変化した場合、到着プロファイルPFに誤差が生じるのに対して、本実施形態では、プロファイル推定部401Aが、車両5の走行とともに時々刻々と変化する、車載装置2から送信情報である位置情報S3を用いて、現時点t0での到着プロファイルPFを逐次推定するので、車両5の速度変化があっても到着プロファイルPFに誤差が生じないという利点もある。
【0062】
更に、従来のように車両感知器3を図7に示す地点P0に設置したとすると、車両感知器3の感知信号S5を用いた推定処理では、その地点P0の上流側を走行する車両5については到着プロファイルPFに加味されないのに対し、車載装置2が送信した車両5の位置情報S3に基づく到着プロファイルPFの推定処理では、当該地点P0の上流側を走行する車両5の台数分についても到着プロファイルPFに加味されることになるので、到着プロファイルPFの推定精度が高くなる。
【0063】
〔予測制御部によるUTMS制御〕
上記プロファイル推定部401Aが推定する到着プロファイルPFは、交差点C1や交差点C2に繋がる各方向の流入リンクごとに生成される。
そこで、予測制御部401Bは、この各到着プロファイルPFを用いて現在から1サイクル未来までの当該交差点C1に対する流入交通を予測し、到着プロファイルPFと他の信号制御情報に基づいてシミュレーション演算を実行する。
【0064】
かかるシミュレーション演算は、具体的には、交差点Ci全体の待ち行列台数の変動状況である遅れ時間(信号停止待ち時間)を算出し、この遅れ時間に基づく評価値が最も小さくなる青終了タイミングを探索し、最適な青終了タイミングを決定することによって行われる。
【0065】
このように、本実施形態の交通信号制御システムによれば、中央装置4の制御部401が、交通需要を予測した信号制御の一つであるUTMS制御を行うに当たって、現時点t0の車両5の位置情報S3に基づいて到着プロファイルPFを推定するので、車両感知器3の感知情報S5で到着プロファイルPFを推定する従来法に比べて、到着プロファイルPFをより正確に推定でき、UTMS制御をより高精度で実施することができる。
また、本実施形態の交通信号制御システムによれば、車両5の車載装置2が送信した位置情報S3を用いるので、交通需要を予測した信号制御を行う中央装置4の制御エリアに車両感知器3が設置されていない道路区間を含む場合であっても、その道路区間の到着プロファイルPFを推定することができる。
【0066】
〔第二実施形態〕
図8は、本発明の第二実施形態を示すための、道路の平面形状と到着プロファイルとの対応関係図である。
この第二実施形態が第一実施形態(図1〜図7)と異なる点は次の(1)〜(3)の通りであり、これ以外の装置構成や、中央装置4が行う予測制御の内容等は、第一実施形態の場合と同様である。
【0067】
(1) 交差点C2に向かって走行する車両5を撮影してその画像データを取得するビデオカメラ9が設けられている。
(2) ビデオカメラ9は、画像データに基づいて車両5の位置データS6を生成する位置検出器としての機能を有し、この位置データS6を、交通信号制御機1aを介して中央装置4の制御部401にリアルタイムに送信する。
【0068】
(3) 中央装置4のプロファイル推定部401Aは、取得した位置データS6に基づいて現時点t0の車両5の位置情報S3を生成し、これらを用いて到着プロファイルPFを推定する。
以下、図8を参照しつつ、上記相違点(1)〜(3)を有する第二実施形態を説明する。
【0069】
図8に示すように、ビデオカメラ9は、交差点C2近傍の道路脇に設置されており、このビデオカメラ9の撮影方向は、設置位置から上流側(交差点C3側)に向けられている。ビデオカメラ9の撮影エリアA(図8のハッチング部分)の下流端は、交差点C2の停止線P近傍に設定され、同撮影エリアの上流端は、下流端から所定距離(例えば、150m)上流側に設定されている。
【0070】
ビデオカメラ9は、撮影したリアルタイムの画像データに基づいて、車両5の車頭や車尾などを抽出し、車両5の現在位置を検出する。このビデオカメラ9が検出する車両5の現在位置は、車両5の進行方向位置(例えば、交差点の停止線からの距離)である。
また、ビデオカメラ9は、撮影時刻の異なる画像データに基づいて車両5の速度を検出したり、車両5全体の特徴から車種や車色を検出したりすることもできる。なお、このビデオカメラ9は、単眼カメラでもステレオカメラでもいずれでもよい。
【0071】
ビデオカメラ9は、検出した車両5の位置データS6を、通信回線を通じて交通信号制御機1aにリアルタイムに送信し、中央装置4の通信部404は、その位置データS6を交通信号制御機1aからリアルタイムで受信する。
中央装置4のプロファイル推定部401Aは、ビデオカメラ9からの位置データS6に基づいて、現時点t0において撮影エリアAの範囲内にある車両5の位置情報S3を特定し、その各車両5が所定の車両速度vで走行するとの仮定の下で、各車両5が停止線Pに到達する予測時刻を特定し、この各車両5のグループを予測時刻順に並べて到着プロファイルPFを生成する。
【0072】
このように、本実施形態の交通信号制御システムにおいても、現時点t0における位置情報S3に対応する予測交通量で到着プロファイルPFを生成するので、リンクに対する流入車両5Bや流出車両5Cがあっても、到着プロファイルPFの予測交通量を正確に推定することができる。
すなわち、ビデオカメラ9で検出した位置データS6に基づく到着プロファイルPFの推定処理においても、その位置データS6が現時点t0で撮影エリアAにあればプロファイルに含ませ、無ければ含ませないことになるので、撮影エリアAの範囲を走行する車両5の流入や流出を加味した推定処理を行うことができ、到着プロファイルPFの推定精度が高くなる。
【0073】
例えば、従来のように車両感知器3を図8に示す地点P0に設置したとすると、車両感知器3の感知信号S5を用いた推定処理では、その地点P0の下流側で脇道R3に流出した車両5Cであっても到着プロファイルPFに含まれたままとなるのに対し、ビデオカメラ9で検出した位置データS6に基づく到着プロファイルPFの推定処理では、過去のある時点で車両5Cの位置データS6がリンク上にあっても、この車両5Cがその後に脇道R3に流出した場合には、この車両5Cの位置データS6は現時点t0ではリンク上に存在していないので、かかる流出車両5Cの台数分については、到着プロファイルPFの予測交通量に含まれない。
【0074】
また、車両感知器3の感知信号S5を用いた推定処理では、地点P0の下流側で脇道R2から流入した車両5Bについては到着プロファイルPFに含められないのに対し、ビデオカメラ9で検出した位置データS6に基づく到着プロファイルPFの推定処理では、過去のある時点で車両5Bの位置データS6がリンク上になくても、この車両5Bがその後に脇道R2から流入した場合には、この車両5Bの位置データS6は現時点t0においてはリンク上に存在するので、かかる流入車両5Bの台数分については、到着プロファイルPFの予測交通量に含まれることになる。
【0075】
また、従来のように車両感知器3を図8に示す地点P0に設置したとすると、車両感知器3の感知信号S5を用いた推定処理では、その地点P0の上流側を走行する車両5については到着プロファイルPFに加味されないのに対し、ビデオカメラ9で検出した位置データS6に基づく到着プロファイルPFの推定処理においては、当該地点P0の上流側に位置する撮影エリアA内の車両台数分についても到着プロファイルPFに加味されることになるので、到着プロファイルPFの推定精度が高くなる。
【0076】
更に、従来のように車両感知器3を図8に示す地点P0に設置したとすると、車両感知器3の感知信号S5を用いた推定処理では、地点P0を通過した車両5の速度がその後に地点P0の下流側で変化した場合、到着プロファイルPFに誤差が生じるのに対して、本実施形態では、プロファイル推定部401Aが、車両5の走行とともに時々刻々と変化する、ビデオカメラ9の位置データS6で特定される車両5の位置情報S3を用いて、現時点t0での到着プロファイルPFを逐次推定するので、第一実施形態の場合と同様に、車両5の速度変化があっても到着プロファイルPFに誤差が生じないという利点もある。
【0077】
一方、本実施形態では、プロファイル推定部401Aでの推定処理に必要な車両5の位置情報S3を、インフラ側のビデオカメラ9の現在位置データS6から取得するので、第一実施形態の場合とは異なり、走行中の車両5が車載装置2を有していなくても、交差点C2に流入する全車両5の位置情報S3を利用した高精度の推定処理が可能である。
しかし、インフラ側に設置される上記ビデオカメラ9等の位置検出器の場合には、悪天候や夜間等の外的要因によって位置検出が不正確になることがあり得る。従って、現時点t0の車両5の位置情報をより確実に取得するという観点からは、車載装置2からの送信情報を利用する第一実施形態の方が好ましい。
【0078】
なお、上記第二実施形態において、インフラ側において車両5の現在位置データS6を検出する位置検出器としては、前記ビデオカメラ9だけでなく、例えば、音波や電波の反射波によって車両5の現在位置を計測するレーダー装置を採用してもよい。
また、上記各実施形態では、車載装置2からの送信情報か、或いは、ビデオカメラ9からの送信情報のいずれか一方によって車両5の位置情報S3を取得しているが、一つの道路区間について双方の送信情報を利用することもできる。
【0079】
この場合、例えば、ビデオカメラ9の撮影エリアA内では、当該カメラ9からの送信情報で車両5の位置情報S3を取得し、その撮影エリアA外では、車載装置2からの送信情報で車両5の位置情報S3を取得するようにすれば、撮影エリアAよりも広い範囲で予測交通量を推定することできて好ましい。
【0080】
〔その他の変形例〕
これまで開示した実施形態はすべて例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内のすべての変更が本発明に含まれる。
例えば、上記実施形態では、到着プロファイルPFの推定処理を含めたUTMS制御を、すべて中央装置4の制御部401が行っているが、これらの算出及び制御を、交通信号制御機1aの制御部101に行わせることもできる。
【0081】
また、本発明は、中央装置4が広域制御を行う場合に限らず、LANに含まれる複数の交通信号機1が、中央装置4による制御とは別個のグループ単位での系統制御又は広域制御を行う場合にも適用することができる。
更に、上記実施形態では、車両5が車両情報を外部に送信する装置として、ナビゲーション機能を有する車載装置2を採用しているが、これ以外にも、搭乗者が任意に車両に持ち込める携帯電話機、PHS及び無線通信可能なノートPC等であってもよい。
【0082】
すなわち、車両5側からインフラ側への位置情報S3の通信装置は、車両5に固定的又は一時的に搭載され、交通インフラ側と無線通信して車両5の位置情報S3や識別情報S4等を含む車両情報を提供できる端末装置であればよい。
また、本発明は、制御エリア内のすべての道路に車両感知器3が設置されていない場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】第一実施形態の交通信号制御システムの全体構成を示す模式図である。
【図2】交通信号機の全体構成を示す模式図である。
【図3】中央装置の構成を示すブロック図である。
【図4】交通信号制御機の構成を示すブロック図である。
【図5】車載装置の構成を示すブロック図である。
【図6】車両感知器の感知情報で推定処理を行う場合の、道路の平面形状と到着プロファイルとの対応関係図である。
【図7】車両の位置情報で推定処理を行う場合の、道路の平面形状と到着プロファイルとの対応関係図である。
【図8】第二実施形態を示すための、道路の平面形状と到着プロファイルとの対応関係図である。
【符号の説明】
【0084】
1 交通信号機
1a 交通信号制御機
1b 信号灯器
101 制御部
102 灯器駆動部
103 有線通信部
104 記憶部
105 無線通信部
2 車載装置(端末装置)
201 GPS処理部
202 方位センサ
203 車速取得部
204 通信部
205 記憶部
206 操作部
207 表示部
208 音声出力部
209 処理部
3 車両感知器
4 中央装置(交通信号制御装置)
401 制御部(推定装置)
401A プロファイル推定部(推定手段)
401B 予測制御部(制御手段)
402 表示部
403 通信部(取得手段)
404 記憶部
405 操作部
5 車両
9 ビデオカメラ(位置検出器)
Ci 交差点
P 停止線
S1 信号制御指令
S2 交通情報
S3 位置情報
S4 識別情報
S5 感知情報
S6 現在位置データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点の停止線に到着する車両の予測交通量の時系列データである到着プロファイルを用いて、交通需要を予測した信号制御を行う制御手段と、
前記交差点の上流側を走行する前記車両の位置情報を含む車両情報を用いて前記到着プロファイルを推定する推定手段と、を備えていることを特徴とする交通信号制御装置。
【請求項2】
前記車両の位置情報を外部に送信可能な端末装置が当該車両に設けられており、
前記推定手段は、前記端末装置が送信した前記車両の位置情報を用いて前記到着プロファイルを推定する請求項1に記載の交通信号制御装置。
【請求項3】
前記交差点の上流側を走行する前記車両の位置データを検出する位置検出器がインフラ側に設けられており、
前記推定手段は、前記位置検出器が検出した位置データで特定される前記車両の位置情報を用いて前記到着プロファイルを推定する請求項1に記載の交通信号制御装置。
【請求項4】
交差点の停止線に到着する車両の予測交通量の時系列データである到着プロファイルを用いて、交通需要を予測した信号制御を行う交通信号制御方法であって、
前記交差点の上流側を走行する前記車両の位置情報を含む車両情報を用いて前記到着プロファイルを推定し、このようにして推定された当該到着プロファイルを用いて前記信号制御を行うことを特徴とする交通信号制御方法。
【請求項5】
交差点の停止線に到着する車両の予測交通量の時系列データである到着プロファイルを用いて行う、交通需要を予測した信号制御をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記交差点の上流側を走行する前記車両の位置情報を含む車両情報を用いて前記到着プロファイルを推定するステップと、
上記ステップで推定された前記到着プロファイルを用いて前記信号制御を行うステップと、を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項6】
交差点の停止線に到着する車両の予測交通量の時系列データである到着プロファイルを推定する推定装置であって、
前記交差点の上流側を走行する前記車両の位置情報を含む車両情報を取得する取得手段と、
取得された前記車両情報を用いて前記到着プロファイルを推定する推定手段と、を備えていることを特徴とする到着プロファイルの推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−245295(P2009−245295A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92799(P2008−92799)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】