説明

代替燃料濃度推定装置、それを備える乗り物、及び代替燃料濃度推定方法

【課題】空気過剰率を所定の規定値にして混合燃料を燃焼させる内燃機関において、空気過剰率を第1規定値にしたままで、混合燃料中の代替燃料の濃度の演算を開始することができる代替燃料濃度演算システムを提供する。
【解決手段】ガソリンとエタノールが混合された混合燃料を燃焼室23で燃焼させるエンジンEと、混合燃料中のエタノール濃度がゼロのときに燃焼室23の空気過剰率が所定の第1規定値となるような規定燃料噴射量を噴射する燃料噴射装置とを備える自動二輪車1に用いられるECU60である。またECU60は、Oセンサからの出力から得られるO濃度に基づいて、Oフィードバック制御する。更にECU60は、Oフィードバック制御後の燃料噴射量を規定燃料噴射量で除して得られる実燃料補正率を算出し、この実燃料補正率と、ECU60に記憶される第1規定値とに基づいて前記濃度を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基準燃料に対して代替燃料が混合された混合燃料を燃焼させる内燃機関において、前記混合燃料に含まれる代替燃料の濃度を推定するための代替燃料濃度推定装置、それを備える乗り物、及び代替燃料濃度推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンには、ガソリンだけでなく、代替燃料、例えばエタノール又はメタノール等のアルコール燃料をガソリンに混合した混合燃料でも作動するもの、所謂FFV用エンジンがある。ガソリンと代替燃料とでは理論空燃比及びオクタン価が異なるため、混合燃料は、代替燃料の濃度に応じてその理論空燃比及びオクタン価等が変わる。それ故、FFV用のエンジンでは、混合燃料の燃焼効率を高めて出力を上げるために代替燃料の濃度に応じて空燃比及び点火タイミングを変えており、代替燃料の濃度を予め検出又は推定しておくことが好ましい。
【0003】
代替燃料の濃度を検出する方法として、例えば特許文献1に開示されるような、燃料系統にアルコール濃度センサを設けて直接計測する方法がある。これでは、アルコール濃度センサを燃料系統に設ける必要があり、部品点数が増加する。そのため、直接計測するのではなく、代替燃料の濃度を推定する方法が用いられている。
【0004】
代替燃料の濃度を推定する方法として、例えば特許文献2及び3に開示される方法がある。特許文献2には、Oフィードバック制御時に演算される補正係数を参照して、アルコール燃料の濃度を演算する方法が開示されている。また特許文献3には、排気系統に設けられるOセンサを用いてOフィードバック制御する際に得られる補正係数とアルコール燃料の濃度との相関関係に基づいて、アルコール燃料の濃度を推定する方法が開示されている。
【特許文献1】特開昭56−98540号公報
【特許文献2】特開昭63−5130号公報
【特許文献3】特開平5−163992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2及び3に開示される濃度演算方法は、自動四輪車のエンジンのように、常時、燃焼室の空気過剰率を1にして作動するようなエンジン(以下、「ストイキで作動するエンジン」ともいう)に用いる方法である。そのため、これらの方法では、例えば、自動二輪車等のエンジンのように、基本的に燃焼室の空気過剰率を1未満のリッチな状態で燃焼し得るようなエンジン(以下、「リッチな状態で作動するエンジン」ともいう)で代替燃料の濃度を推定する場合について何ら考慮されていない。
【0006】
ストイキで作動するエンジンと、リッチな状態で作動するエンジンとでは、作動時における燃焼室の空気過剰率が異なるため、Oフィードバック制御時に演算される補正係数が異なる。そのため、リッチな状態で作動するエンジンに関して、特許文献2及び3に開示される濃度演算方法をそのまま適用することは難しい。
【0007】
そこで、リッチな状態で作動するエンジンに関して前記濃度演算方法を適用する場合、わざわざエンジンをストイキの状態にしてからOフィードバック制御して前記濃度演算方法を実施する必要がある。そのため、濃度を演算する工程が複雑になってしまう。
【0008】
また、自動四輪車において、Oフィードバック制御は、燃焼室の空気過剰率を1にするための制御である。しかしながら、例えば自動二輪車のOフィードバック制御では、空気過剰率の目標値を1以外にしている場合がある。そのため、自動四輪車の推定方法をこのような自動二輪車に適用すると、混合燃料中の代替燃料の濃度を正確に推定できない場合がある。
【0009】
本発明の目的は、空気過剰率を所定の第1規定値にして混合燃料を燃焼させる内燃機関において、燃料噴射量を補正する前まで空気過剰率を第1規定値にしたまま混合燃料中の代替燃料の濃度の演算を開始することができる代替燃料濃度演算システムを提供することである。
【0010】
また他の本発明の目的は、混合燃料を燃焼させる内燃機関において、前記内燃機関の排気系に設けられた排ガスセンサからの出力値に応じて得られる排ガスに含まれる少なくとも1つの成分ガスの濃度に基づいて、前記燃焼室の空気過剰率が第2規定値となるように前記燃料噴射装置の燃料噴射量を補正しても、精度良く混合燃料中の代替燃料の濃度を演算することができる代替燃料濃度演算システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の代替燃料濃度推定装置は、基準燃料に代替燃料が混合された混合燃料を燃焼室で燃焼させる内燃機関と、前記混合燃料中の代替燃料の濃度がゼロのときに前記燃焼室の空気過剰率が1以外の第1規定値となるような規定燃料噴射量が予め設定された燃料噴射装置とを備えたものに用いられる代替燃料濃度推定装置であって、前記内燃機関の排気系に設けられた排ガスセンサからの出力値に応じて得られる排ガスに含まれる少なくとも1つの成分ガスの濃度に基づいて、前記燃焼室の空気過剰率が第2規定値となるように前記燃料噴射装置の燃料噴射量を補正する空気過剰率制御手段と、前記成分ガスの濃度に基づいて、前記燃焼室の空気過剰率が第2規定値となるように補正された後の燃料噴射量を前記規定燃料噴射量で除して得られる実燃料補正率を算出する燃料補正率演算手段と、前記燃料補正率演算手段により算出された前記実燃料補正率と前記第1規定値とに基づいて、前記濃度を推定する濃度推定手段とを備えるものである。
【0012】
本発明に従えば、燃料補正率演算手段により算出された実燃料補正率だけでなく第1規定値を用いることで、燃焼室の空気過剰率が1以外のストイキでない状態で燃焼する内燃機関において、燃料噴射量を補正する前まで空気過剰率を第1規定値にしたままで混合燃料中の代替燃料の濃度推定を開始することができる。従って、従来の技術のように、燃料噴射量を補正する前に前記燃焼室の空気過剰率を1にする必要がなくなり、濃度を推定するための工数が低減され、濃度を推定することが容易になる。また、従来の技術では、混合燃料中の代替燃料の濃度がゼロのときにOフィードバック制御を実施しておいて空気過剰率が1となるような燃料噴射量を予め求めておく必要があるが、本発明では第1規定値を参照することにより混合燃料中の代替燃料の濃度が推定でき、燃料噴射量を予め求めておく必要がない。
【0013】
上記発明において、前記濃度推定手段は、前記濃度を推定する際、前記実燃料補正率及び前記第1規定値に加えて、前記第2規定値にも基づいて、前記濃度を推定するように構成されることが好ましい。この構成に従えば、後述する図8に示すように第2規定値が考慮されていない場合より、精度良く混合燃料中の代替燃料の濃度を推定することができる。
【0014】
上記発明において、前記濃度推定手段は、相関関係式
Ke=[a{Kti(λ2E0/λ1E0)}+a{Kti(λ2E0/λ1E0)}n−1
・・・an−1{Kti(λ2E0/λ1E0)}+a]・・・・・・(1)
(Keは前記混合燃料中の代替燃料の濃度、a0,a1,a2,・・・,anは予め定められる係数、nは予め定められる定数)
を参照し、前記実燃料補正率Kti、前記第1規定値λ1E0及び前記第2規定値λ2E0に基づいて混合燃料中の代替燃料の濃度Keを推定することが好ましい。
【0015】
この構成に従えば、前記濃度推定手段は、相関関係式(1)を参照することで、算出された前記実燃料補正率Ktiと前記第1規定値λ1E0及び前記第2規定値λ2E0とに基づいて、前記濃度を推定することができる。
【0016】
上記発明において、前記空気過剰率制御手段は、前記内燃機関がアイドリング状態又は中高速走行状態にあるときに、前記燃料噴射装置の燃料噴射量を補正するように構成され、前記濃度推定手段は、燃料補正率演算手段により算出される実燃料補正率が整定した後に前記濃度の推定を行なうように構成されていることが好ましい。
【0017】
上記構成に従えば、アイドリング状態及び中高速走行状態で混合燃料中の代替燃料の濃度を推定する。アイドリング状態で混合燃料中の代替燃料の濃度を推定することで、内燃機関を駆動後の初期の段階で前記濃度を推定することが可能となる。また中高速走行状態で混合燃料中の代替燃料の濃度を推定することで、内燃機関の燃焼が安定している時に前記濃度の推定が可能となる。
【0018】
また上記構成では、前記燃料補正率演算手段により演算される実燃料補正率が整定することで、燃焼室の空気過剰率が第2規定値に整定される。空気過剰率が第2規定値に整定された状態で濃度の推定を実施することで、空気過剰率が整定していない場合に比べて、より精度良く実燃料補正率が算出され、混合燃料中の代替燃料の濃度が精度良く推定される。
【0019】
上記発明において、前記内燃機関の回転数を増加させる回転数制御手段を更に備え、前記回転数制御手段は、前記内燃機関がアイドリング状態であって、且つ前記空気過剰率制御手段が前記燃料噴射装置の燃料噴射量を補正するときに、前記回転数を増加させるように構成されていることが好ましい。上記構成に従えば、回転数制御手段によりアイドル状態における内燃機関の回転数を増加させることで、内燃機関の燃焼が安定する。
【0020】
上記発明において、貯留タンク内に貯留された前記混合燃料の増加を検出する燃料増加検出手段を更に有し、前記濃度推定手段は、前記燃料増加検出手段が前記混合燃料の増加を検出した後であって、前記濃度が推定されておらず且つ前記空気過剰率制御手段が停止している場合、予め定められた基準濃度を、推定された前記濃度とすることが好ましい。
【0021】
燃料増加検出手段が前記混合燃料の増加を検出した後は、代替燃料の濃度が変化している場合が多い。前回推定された濃度と変化後の濃度とがかけ離れている場合、変化後の代替燃料の濃度が推定されないまま放置されると、内燃機関の燃焼が不安定になることがある。上記構成に従えば、変化後に代替燃料の濃度が推定できない場合、予め定められた基準濃度を推定された濃度とすることで、推定された濃度と変化後の濃度とがかけ離れた状態となることが防げる。これにより内燃機関の燃焼が不安定になることが防げる。
【0022】
本発明の乗り物は、前述する何れかの代替燃料濃度推定装置と、前記基準燃料に対して前記代替燃料が混合された前記混合燃料が前記燃焼室で燃焼される内燃機関と、前記混合燃料中の代替燃料の濃度がゼロのときに前記燃焼室の空気過剰率が1以外の第1規定値となるような規定燃料噴射量が予め設定された燃料噴射装置とを備えるものである。
【0023】
本発明の乗り物に従えば、燃焼室の空気過剰率が1以外の第1規定値である状態で燃焼し得る内燃機関でも、実燃料補正率を算出することで、燃料中の代替燃料の濃度が推定できる。
【0024】
本発明の代替燃料濃度推定方法は、基準燃料に対して代替燃料が混合された混合燃料を燃焼室で燃焼させる内燃機関において、前記混合燃料中の代替燃料の濃度がゼロのときに前記燃焼室の空気過剰率が1以外の第1規定値となるような規定燃料噴射量が予め設定されている場合に、前記濃度を推定するための代替燃料濃度推定方法であって、前記内燃機関から排出される排ガスに含まれる少なくとも1つの成分ガスの濃度に基づいて、前記燃焼室の空気過剰率が第2規定値となるように補正された後の燃料噴射量を前記規定燃料噴射量で除して得られる実燃料補正率を算出し、算出された前記実燃料補正率と、前記第1規定値と、前記第2規定値とに基づいて前記濃度を推定する方法である。
【0025】
本発明の代替燃料推定方法に従えば、算出された実燃料補正率だけでなく第1規定値を用いることで、燃焼室の空気過剰率が1以外のストイキでない状態で燃焼し得るような内燃機関において、燃料噴射量を補正する前に空気過剰率を第1規定値にしたままで混合燃料中の代替燃料の濃度推定を開始することができる。従って、従来の技術ように、燃料噴射量を補正する前に前記燃焼室の空気過剰率を1にする必要がなくなり、濃度を推定するための工数が低減され、濃度を推定することが容易になる。また、従来の技術では、混合燃料中の代替燃料の濃度がゼロのときにOフィードバック制御を実施しておいて空気過剰率が1となるような燃料噴射量を予め求めておく必要があるが、本発明では、第1規定値及び第2規定値を参照することにより混合燃料中の代替燃料の濃度が推定でき、燃料噴射量を予め求めておく必要がない。
【0026】
本発明の代替燃料濃度推定装置は、基準燃料に代替燃料が混合された混合燃料を燃焼室で燃焼させる内燃機関と、前記混合燃料中の代替燃料の濃度がゼロのときに前記燃焼室の空気過剰率が1又はそれ以外の値である第1規定値となるようなに規定燃料噴射量が予め設定された燃料噴射装置とを備えたものに用いられる代替燃料濃度推定装置であって、前記内燃機関の排気系に設けられた排ガスセンサからの出力値に応じて得られる排ガスに含まれる少なくとも1つの成分ガスの濃度に基づいて、前記燃焼室の空気過剰率が第2規定値となるように前記燃料噴射装置の燃料噴射量を補正する空気過剰率制御手段と、前記成分ガスの濃度に基づいて、前記燃焼室の空気過剰率が前記第2規定値となるように補正された後の燃料噴射量を前記規定燃料噴射量で除して得られる実燃料補正率を算出する燃料補正率演算手段と、前記燃料補正率演算手段により算出された前記実燃料補正率と、前記第1規定値と、前記第2規定値とに基づいて、前記濃度を推定する濃度推定手段と、を備えるものである。
【0027】
本発明に従えば、前記燃焼室の空気過剰率が第2規定値となるように前記燃料噴射装置の燃料噴射量を補正しても、第1規定値だけを参照して演算するよりも精度良く混合燃料中の代替燃料の濃度を演算することができる代替燃料濃度演算システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、空気過剰率を所定の規定値にして混合燃料を燃焼させる内燃機関において、燃料噴射量を補正する前まで空気過剰率を第1規定値にしたままで、混合燃料中の代替燃料の濃度の演算を開始することができる。
【0029】
また、本発明によれば、混合燃料を燃焼させる内燃機関において、前記内燃機関の排気系に設けられた排ガスセンサからの出力値に応じて得られる排ガスに含まれる少なくとも1つの成分ガスの濃度に基づいて、前記燃焼室の空気過剰率が第2規定値となるように前記燃料噴射装置の燃料噴射量を補正しても、精度良く混合燃料中の代替燃料の濃度の演算ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
【0031】
[自動二輪車]
図1は、本発明の実施形態に係る自動二輪車1の右側面図であり、ライダーRが上体を前傾させて搭乗するロードスポーツタイプのものを示している。なお、以下の実施形態で用いる方向の概念は、自動二輪車1に搭乗したライダーRから見た方向の概念と一致するものとして説明する。
【0032】
図1に示すように、自動二輪車1は前輪2と後輪3とを備え、前輪2は略上下方向に延びるフロントフォーク5の下部にて回転自在に支持され、該フロントフォーク5は、その上端部に設けられた図示しないアッパーブラケットと、このアッパーブラケットの下方に設けられたアンダーブラケットとを介して図示しないステアリングシャフトに支持されている。ステアリングシャフトは、ヘッドパイプ6によって回転自在に支持されている。アッパーブラケットには、左右へ延びるバー型のステアリングハンドル4が取り付けられている。ライダーRは、ステアリングハンドル4を回動操作することにより、ステアリングシャフトを回転軸として前輪2を所望の方向へ転向させることができる。
【0033】
ヘッドパイプ6からは車体の骨格を構成する左右一対のメインフレーム7が後方へ延設されており、該メインフレーム7の後部からは、ピボットフレーム8が下方へ延設されている。このピボットフレーム8に設けられたピボット9には、スイングアーム10の前端部が
軸支されており、該スイングアーム10の後端部には後輪3が回転自在に支持されている。
【0034】
メインフレーム7の上方であってステアリングハンドル4の後方には燃料タンク12が設けられ、該燃料タンク12の後方には騎乗用のシート13が設けられている。また、左右のメインフレーム7間の下方にはエンジンEが搭載されている。このエンジンEは、並列4気筒の4サイクルエンジンであり、後述するようにシリンダヘッド20内に吸気用及び排気用のそれぞれのカム30,31を備えるダブル・オーバーヘッド・カムシャフト式(DOHC式)のエンジンである(図2参照)。エンジンEの出力は、図示しないトランスミッション及びチェーンを介して後輪3へ伝えられ、該後輪3が回転駆動することによって自動二輪車1に推進力が付与される。
【0035】
また、自動二輪車1の前部分、即ち、ヘッドパイプ6、メインフレーム7の前部、エンジンEの側方部分を覆うようにして、一体的に形成されたカウリング19が設けられている。ライダーRは、上記シート13に跨って自動二輪車1に搭乗し、ステアリングハンドル4の端部に回動可能に設けられたアクセルグリップ4Aを握り、且つエンジンEの後部近傍の左右に夫々設けられたステップ14に足を載せて走行する。また左側のステップ14の前方には、トランスミッションの段数を切換え可能なチェンジペダルが設けられている。
【0036】
[エンジン]
図2は、図1に示すエンジンEを拡大して概略を示す右側面図である。以下では、図1も参照しつつ説明する。エンジンEは、基準燃料であるガソリンに対して、ガソリンの代替燃料であるエタノールを混合した混合燃料を燃焼させて作動するものである。なお本実施形態において、ガソリン100%の燃料及びエタノール100%の燃料も、混合燃料に含まれるものとする。
【0037】
エンジンEは、4つのシリンダCを有し、図1及び2に示すように所定角度だけ前傾して設けられている。エンジンEは、基本的にシリンダヘッド20と、シリンダヘッドカバー21と、シリンダブロック22とを備えている。シリンダヘッド20の下部には、各シリンダCに夫々接続される4つの燃焼室23が形成されている。シリンダヘッド20の後部には、各燃焼室23に夫々接続される4つの吸気ポート20Aが形成されている。またシリンダヘッド20の前部には、各燃焼室23に夫々接続される4つの排気ポート20Bが形成されている。
【0038】
またシリンダヘッド20には、点火プラグ26と、4つの吸気バルブ24Aと、4つの排気バルブ24Bとが設けられている。点火プラグ26は、その先端が燃焼室23に突出するように配設されており、燃焼室23に供給される混合気体を点火可能に構成されている。4つの吸気バルブ24Aは、各吸気ポート20Aを夫々開閉可能に構成され、4つの排気バルブ24Bは、各排気ポート20Bを夫々開閉可能に構成されている。
【0039】
シリンダヘッド20の上部には、吸気カムシャフトと、排気カムシャフトとが回転可能に設けられている。吸気カムシャフトには、各吸気バルブ24Aに夫々対応して4つの吸気用カム30が一体的に設けられている。各吸気用カム30は、対応する吸気バルブ24Aに設けられたコッター25Aに当接している。そのため、各吸気バルブ24Aは、吸気カムシャフトが回転することで、上下動して対応する吸気ポート20Aを開閉する。排気カムシャフトには、各排気バルブ24Bに夫々対応して4つの排気用カム31が一体的に設けられている。各排気用カム31は、対応する排気バルブ24Bに設けられたコッター25Bに当接している。そのため、各排気バルブ24Bは、排気カムシャフトが回転することで、上下動して対応する排気ポート20Bを開閉する。
【0040】
またシリンダヘッド20の上部には、吸気カムシャフトと排気カムシャフトとを被うようにカムホルダが配設されている。吸気カムシャフトと排気カムシャフトとは、シリンダヘッド20の上部とカムホルダの下部とで挟み込まれて回動可能に保持される。更にこのカムホルダの上方からシリンダヘッドカバー21が被せられている。シリンダヘッドカバー21は、シリンダヘッド20の上部に固定されている。
【0041】
シリンダヘッド20の下部には、4つのシリンダCを有するシリンダブロック22が設けられている。シリンダブロック22は、各シリンダCが対応する燃焼室23に接続されるようにシリンダヘッド20の下部に配置されている。各シリンダCには、ピストン27が収容されている。更にシリンダブロック22の下部には、車幅方向に沿って延在するクランクシャフト28を収容するクランクケース29が設けられている。クランクケース29には、クランクシャフト28のクランク角に応じた出力を送信するクランク角センサ55が設けられている。
【0042】
クランクケース29、シリンダブロック22及びシリンダヘッド20には、これらを貫通する図示しないチェーントンネルが形成されている。チェーントンネルには、クランクシャフト28、吸気カムシャフト及び排気カムシャフトを連動して回転させる回転伝達機構が収容されている。回転伝達機構は、クランクシャフト28に固定されたクランクスプロケットと、吸気カムシャフトに固定された吸気カムスプロケットと、排気カムシャフトに固定されたカムスプロケットとを備え、これら3つのスプロケットにタイミングチェーンが巻回されて構成されている。
【0043】
シリンダヘッド20の上流側には、スロットルボディ40が設けられている。スロットルボディ40には、各吸気ポート20Aに夫々対応する吸気通路41が形成されている。吸気通路41には、2つのスロットルバルブ42,43が上流側及び下流側に分かれて夫々設けられている。上流側のスロットルバルブ43は、モータ44により駆動し、吸気通路41を開閉可能に構成されている。また下流側のスロットルバルブ42は、アクセルグリップ4Aと図示しないワイヤーで連結され、アクセルグリップ4Aの回動に連動して吸気通路41を開閉可能に構成されている。またスロットルボディ40には、インジェクタ47が設けられている。インジェクタ47は、フューエルポンプ48を介して混合燃料が貯留される燃料タンク12に接続されている。
【0044】
インジェクタ47は、フューエルポンプ48により供給される混合燃料を吸気通路41で噴射するように構成されている。またスロットルボディ40には、吸気通路41のスロットルバルブ42,43よりも下流側に吸気圧センサ49が設けられている。吸気圧センサ49は、吸気通路41の吸気圧に応じた出力を送信するように構成されている。更にスロットルボディ40は、エアクリーナ50に接続されている。
【0045】
シリンダヘッド20の下流側には、マフラー51が設けられている。マフラー51は、エキゾーストマニホールド部52と、サイレンサ部53とを備えている。エキゾーストマニホールド部52は、各排気ポート20Bに夫々対応して接続される4つのポートを有し、4つのポートが1本に集合してサイレンサ部53に接続されている。またエキゾーストマニホールド部52は、その1本に集合した部分にOセンサ54が設けられている。Oセンサ54は、排ガスに含まれるOの量に応じた出力を送信するように構成されている。
【0046】
更に燃料タンク12には、そこに貯留される代替燃料の液位に応じた出力を送信する液位センサ56が設けられている。また自動二輪車1には、トランスミッションの段数に応じた出力を送信するギヤポジションセンサ15が設けられている。
【0047】
[ECU]
センサ54、ギヤポジションセンサ15、吸気圧センサ49、クランク角センサ55及び液位センサ56は、ECU60に電気的に接続されている。ECU60は、各センサ15,49,54,55,56からの出力に基づいて、トランスミッションの段数、排ガスに含まれるO濃度、吸気通路41の吸気圧、エンジン回転数及び燃料タンク12内の液位を算出するように構成されている。
【0048】
またECU60は、スロットル開度センサ61と電気的に接続されている。スロットル開度センサ61は、アクセルグリップ4Aの角変位量、即ちスロットル開度に応じた出力をECU60に送信するように構成されている。そしてECU60は、スロットル開度センサ61からの出力に応じてモータ44を駆動し、スロットルバルブ43の開度を調整するように構成されている。更に、ECU60は、インジェクタ47にも電気的に接続されており、前記インジェクタ47から噴射する燃料噴射量を制御可能に構成されている。
【0049】
またECU60は、燃料マップを記憶している。この燃料マップでは、規定燃料噴射量が吸気通路41の吸気圧とエンジン回転数とに対応付けられている。規定燃料噴射量は、エタノール濃度が0%のとき、つまりガソリン100%のときに燃焼室23の空気過剰率が1未満の値となるように設定されている。そして燃料マップの各規定燃料噴射量は、混合燃料のエタノール濃度に応じて調整される。例えば、燃料マップの各燃料噴射量にエタノール濃度に応じて決まる調整係数を掛け合わせることで、燃料マップの各燃料噴射量の調整が行なわれる。
【0050】
図3(a)は、第1の空気過剰率マップを示す図であり、図3(b)は、第2の空気過剰率マップを示す図である。ECU60は、図3に示すような2つの空気過剰率マップを記憶している。第1の空気過剰率マップには、エタノール濃度が0%のとき、つまりガソリン100%の混合燃料をインジェクタ47から各規定燃料噴射量噴射させたときに計測された燃焼室23の空気過剰率である1未満の第1規定値が、計測時の吸気通路41の吸気圧及びエンジン回転数に対応付けられている。第2の空気過剰率マップには、エタノール濃度が0%のとき、つまりガソリン100%の混合燃料をインジェクタ47から各規定燃料噴射量噴射させたときに計測された燃焼室23の空気過剰率である1未満の第1規定値が、計測時のスロットル開度及びエンジン回転数に対応付けられている。
【0051】
図4(a)は、第3の空気過剰率マップを示す図であり、図4(b)は、第4の空気過剰率マップを示す図である。ECU60は、図4に示すような2つの空気過剰率マップを更に記憶している。ECU60は、後述するようにOフィードバック制御するように構成されており、第3の空気過剰率マップには、Oフィードバック制御時の燃焼室23の空気過剰率の目標値である第2規定値が、吸気通路41の吸気圧及びエンジン回転数に対応付けられている。第4の空気過剰率マップには、Oフィードバック制御時の燃焼室23の空気過剰率の目標値である第2規定値が、スロットル開度及びエンジン回転数に対応付けられている。第3及び第4の空気過剰率マップに配置される各第2規定値は、第1規定値より1に近い値であり、1又は1付近の値となっている。
【0052】
[ECUの動作]
ライダーがアクセルグリップ4Aを回動させると、その回動に連動して下流側のスロットルバルブ42が吸気通路41を開く。それと共に、ECU60は、スロットル開度センサ61からの出力に応じて、モータ44を駆動させて上流側のスロットルバルブ43の開度を調整する。またECU60は、各センサ49,55,61からの出力に基づいて、吸気通路41の吸気圧、エンジン回転数及びスロットル開度を算出する。そしてECU60は、図示しない燃料マップを参照しながら、算出された吸気通路41の吸気圧及びエンジン回転数に基づいて、規定燃料噴射量を決定する。そしてECU60は、決定した規定燃料噴射量をインジェクタ47に噴射させる。
【0053】
インジェクタ47により噴射される混合燃料と吸気通路41を通ってきた空気とを含む混合気体は、吸気ポート20Aを介して燃焼室23に供給される。そして吸気バルブ24Aが吸気ポート20Aを閉じる。そしてECU60は、点火プラグ26に点火させて、燃焼室23の混合気体を燃焼させる。これによりピストン27が押下げられてクランクシャフト28が回動する。これに連動して排気バルブ24Bが動いて排気ポート20Bを開放し、排ガスがマフラー51を介して大気に排出される。排ガスに含まれるO量に応じた出力がOセンサ54からECU60に送信される。ECU60は、この出力に基づいて排ガスに含まれるO濃度を算出する。
【0054】
前述の通り規定燃料噴射量は、燃焼室23の空気過剰率が1未満の第1規定値となるように設定されている。そのため、エンジンEは、基本的に、理論空燃比より吸気される空気量が少ない状態、つまり混合燃料が多いリッチな状態で作動することとなる。
【0055】
またECU60は、自動二輪車1がアイドリングしている間、若しくは中高速走行状態で、且つ一定速度、緩加速又は緩減速している間、Oフィードバック制御をする。なお、中高速走行状態とは、エンジン回転数が3000rpm以上8000rpm以下の範囲内で走行している状態のことであり、速度でいうと、40km以上150km以下の範囲である。以下では、ECU60が実施するOフィードバック制御について、更に詳細に説明する。
【0056】
ECU60は、各センサ49,61,55からの出力に基づいて、エンジン回転数、吸気圧、及びスロットル開度が中高速走行状態で、且つ一定速度、緩加速又は緩減速しているか否かを判断する。このような判断をしている間、ECU60は、Oセンサ54からの出力から算出されたO濃度に基づいて、燃焼室23の空気過剰率が目標とする第2規定値になっているか否かを判断する。ここで、第2規定値は、第3及び第4の空気過剰率マップを参照し、前記算出される吸気通路41の吸気圧、エンジン回転数及びスロットル開度に基づいて決定される。
【0057】
空気過剰率が第2規定値でないと判断すると、ECU60は、インジェクタ47から噴射される燃料噴射量を所定量増加又は減少させて、燃焼室23の空気過剰率を補正する。そして再度、算出されるO濃度に基づいて燃焼室23の空気過剰率が第2規定値となっているか否かを判断する。ECU60は、この作業を燃焼室23の空気過剰率が第2規定値になるまで繰り返す。そして、空気過剰率が第2規定値になると、ECU60は、このときの燃料噴射量をOフィードバック制御前の規定燃料噴射量で除して得られる実燃料補正率を演算する。つまり、ECU60は、燃焼室23の空気過剰率が第2規定値に補正された後の燃料噴射量を規定燃料噴射量で除して得られる実燃料補正率を演算する。
【0058】
混合燃料中のエタノール濃度が変化すると、混合燃料のオクタン価が変化し、また噴射すべき規定燃料噴射量も変化する。これらの変化に伴って、エンジンEの出力が変化してしまう。そのため、予め混合燃料中のエタノール濃度を推定し、それに応じてECU60における諸設定を変更しなければ、エンジンEにおいて所望の出力を得ることができない。それ故、代替燃料濃度推定装置であるECU60は、混合燃料中のエタノール濃度を推定可能に構成されている。以下では、混合燃料中のエタノール濃度を推定する方法について、詳細に説明する。
【0059】
[エタノール濃度の推定]
図5は、ECU60が混合燃料中のエタノール濃度を推定する際の濃度推定処理の手順を示すフローチャートである。以下の濃度推定処理において、その動作の主体は、主にECU60である。以下の説明では、説明の便宜上、動作主体が省略されている場合がある。
【0060】
濃度推定処理は、ライダーが自動二輪車1のメインキーをオンにすると始まり、ステップS1へと移行する。ステップS1では、給油の有無が判断される。給油の有無は、液位センサ56からの出力から算出される燃料タンク12内の液位の変化に基づいて判断される。変化があれば給油有りと判断され、変化がなければ給油無しと判断される。給油有りと判断されると、ステップS2に移行する。
【0061】
ステップS2では、エタノール濃度の推定を始めるために、ECU60が前記エタノール濃度を推定するためのプログラムを実行する。プログラムが実行されると、ステップS3に移行する。ステップS3では、エンジンEがアイドリング中か否かが判断される。アイドリング中か否かの判断は、ギヤポジションセンサ15からの出力に応じてトランスミッションの段位がニュートラルか否かによって判断する。段位がニュートラルであればアイドリング中と判断され、段位がニュートラルでなければアイドリング中でない、即ち走行中であると判断される。アイドリング中であると判断されると、ステップS4へ移行する。
【0062】
図6は、ECU60がアイドリング時にエタノール濃度を推定する際のアイドリング時濃度推定処理の手順を示すフローチャートである。ステップS4では、アイドリング時濃度推定処理が実施され、ステップS41に移行する。ステップS41では、ECU60がエンジン回転数を予め定められた回転数上昇させる、つまりアイドル回転数を予め定められた回転数、例えば数百rpm上昇させる。これにより、エンジン回転数が安定し、燃料マップをストイキに切替えても著しく出力が低下し、エンジンEが停止することが防げる。また、エンジン回転数を安定させることで推定されるエタノール濃度の誤差を小さくすることができる。アイドル回転数を上昇させると、ステップS42に移行する。
【0063】
ステップS42では、ECU60の燃料マップの各規定燃料噴射量を、ガソリン100%時に燃焼室23の空気過剰率が1となるような燃料噴射量に切替える、つまり図示しない前記燃料マップをストイキに切替える。ECU60は、切替えられた燃料マップを参照しながら、吸気通路41の吸気圧とエンジン回転数に基づいて燃料噴射量を決定する。そしてECU60は、決定した燃料噴射量をインジェクタ47に噴射させる。そして、燃料マップをストイキに切替えたままの状態で、ステップS43に移行する。ステップS43では、ECU60がOフィードバック制御を開始する。Oフィードバック制御が開始されると、ステップS44に移行する。
【0064】
ステップS44では、Oフィードバック制御において演算される実燃料補正率が整定しているか否かが判断される。フューエルポンプ48とインジェクタ47とを繋ぐチューブ62に給油前のエタノール濃度の混合燃料が残留していると、実燃料補正率が一定に定まらない。そのため、ステップS44では、実燃料補正率が整定するまで繰り返し判断が行なわれる。実燃料補正率が整定するまで待つことにより、この後のエタノール濃度推定がより精度良く行われる。実燃料補正率が整定すると、ステップS45に移行する。
【0065】
ステップS45では、まずECU60が各センサ49,55,61からの出力に基づいて、燃料補正率の整定後のエンジン回転数、吸気通路41の吸気圧、及びスロットル開度を算出する。そしてECU60は、所定の条件に応じて、例えばスロットル開度の大きさに応じて第3及び第4の空気過剰率マップのいずれか一方又は両方を選択する。
【0066】
いずれか一方の空気過剰率マップを選択した場合、ECU60は、選択された第3又は第4の空気過剰率マップを参照して、算出された吸気通路41の吸気圧、スロットル開度、及びエンジン回転数に応じて第2規定値λ2E0を選出する。第3及び第4の空気過剰率マップの両方が選択された場合、算出されたエンジン回転数、吸気通路41の吸気圧、及びスロットル開度に応じた第2規定値λ2E0を各々の空気過剰率マップから選出する。そして、選出された2つの第2規定値λ2E0を所定の割合で足し合わせた値を第2規定値λ2E0とする。なお、本実施形態では、足し合わせて求められた第2規定値λ2E0もまたECU60に記憶されたものとして扱う。第2規定値λ2E0を選出すると、ステップS46に移行する。
【0067】
ステップS46では、整定後の実燃料補正率Ktiと、ステップS45にて選出された第2規定値λ2Eoとに基づいて混合燃料中のエタノール濃度Keを推定する。具体的には、ECU60は、整定後の実燃料補正率Ktiとエタノール濃度Keとの関係を示す
Ke=[a{Kti(λ2E0/λ1E0}+a{Kti(λ2E0/λ1E0n−1
・・・an−1{Kti(λ2E0/λ1E0)}+a]・・・・・(1)
なる相関関係式(1)、本実施形態では、
Ke=[a{Kti(λ2E0/λ1E0
+a{Kti(λ2E0/1λE0)}+a]・・・・・(2)
なる相関関係式(2)を参照して、混合燃料中のエタノール濃度を推定する。なお、a,a,a,・・・,aは予め定められる係数、nは予め定められる定数である。さらに詳細に説明すると、ステップS42にて燃料マップがストイキに切替られているため第1規定値λ1E0に1が代入された、
Ke={a(Ktiλ2E0)+a(Ktiλ2E0)+a}・・・・・・・・・(3)
なる相関関係式(3)を実質的に参照して、混合燃料中のエタノール濃度を推定する。
【0068】
ECU60は、相関関係式(3)を参照して、整定後の実燃料補正率Ktiと、ステップS45にて選出された第2規定値λ2E0とに基づいて、エタノール濃度Keを推定する。
【0069】
このように、自動二輪車1では、通常、O2フィードバック制御が実施されないアイドリング時にO2フィードバック制御によるエタノール濃度推定を行なうことで、エタノール濃度の推定の機会を増やすことができる。エタノール濃度が推定されると、アイドリング時推定処理が終了する。
【0070】
図5に戻って説明する。アイドリング時推定処理が終了すると、ステップS5へと移行する。ステップS5では、推定されたエタノール濃度に基づいて、ECU60のエンジンEに関する諸設定が調整される。諸設定は、例えばエタノール濃度に応じた調整係数、点火プラグ26による点火タイミングである。諸設定を調整することにより、エンジンEに所望の出力を発生させることができる。所設定の調整が終了すると、濃度推定処理が終了する。
【0071】
またステップS3において、走行中のためアイドリング中でないと判断されると、ステップS6に移行する。図7は、ECU60が走行時にエタノール濃度を推定する際の走行時濃度推定処理の手順を示すフローチャートである。図8は、混合燃料中のエタノール濃度Keと実燃料補正率Ktiとの関係を示すグラフである。なお、縦軸がエタノール濃度Ke(%)を示し、横軸が実燃料補正率Ktiを示す。なお図8において、実線が本実施形態の推定方法で演算したときの関係を示している。
【0072】
ステップS6では、走行時濃度推定処理が実施され、ステップS51に移行する。ステップS51では、Oフィードバック制御が行われているか否かが判断される。Oフィードバック制御が行われていると判断されると、ステップS52に移行する。ステップS52では、Oフィードバック制御において演算される実燃料補正率が整定しているか否かが判断される。燃料補正率が整定していな場合、燃料補正率が整定するまで判断が繰り返される。実燃料補正率が整定すると、ステップS53に移行する。
【0073】
ステップS53では、ECU60は、まず各センサ49,55,61からの出力に基づいて、燃焼室23の空気過剰率が第2規定値に補正された後の吸気通路41の吸気圧、スロットル開度、及びエンジン回転数を算出する。そしてECU60は、所定の条件に応じて、例えばスロットル開度の大きさに応じて第1及び第2の空気過剰率マップの何れか一方又は両方を選択する。
【0074】
いずれか一方の空気過剰率マップを選択した場合、ECU60は、選択された第1及び第2の空気過剰率マップを参照して、算出された吸気通路41の吸気圧、スロットル開度、及びエンジン回転数に対応付けられた第1規定値λ1E0を選出する。第1及び第2の空気過剰率マップの両方が選択された場合、算出された吸気通路41の吸気圧、スロットル開度、及びエンジン回転数に応じた第1規定値λ1E0を各々の空気過剰率マップから選出する。そして、選出された2つの第1規定値λ1E0を所定の割合で足し合わせた値を第1規定値λ1E0とする。なお、本実施形態では、このように足し合わせて求められた第1規定値λ1E0もまたECU60に記憶されたものとして扱う。第1規定値λ1E0を選出すると、ステップS54に移行する。ステップS54では、ステップS45と同様の手順で第2規定値λ2E0を選出する。第2規定値λ2E0を選出すると、ステップS55に移行する。
【0075】
ステップS55では、整定後の実燃料補正率Ktiと、第1規定値λ1E0と、第2規定値λ2E0とに基づいて混合燃料中のエタノール濃度Keが推定される。具体的には、ECU60は、整定後の実燃料補正率Ktiとエタノール濃度Keとの関係を示す
Ke=[a{Kti(λ2E0/λ1E0)}
+a{Kti(λ2E0/λ1E0)}n−1
・・・an−1{Kti(λ2E0/λ1E0)}+a]・・・(1)
なる相関関係式(1)を、本実施形態では、
Ke=[a{Kti(λ2E0/λ1E0)}
+a{Kti(λ2E0/λ1E0)}+a]・・・・・・・・(2)
なる相関関係式(2)を参照し、ステップS52にて算出された整定後の実燃料補正率Ktiと、ステップS53で選出された第1規定値λ1E0と、ステップS54で選出された第2規定値λ2E0とに基づいて混合燃料中のエタノール濃度Keを推定する。
【0076】
濃度Keの演算は、相関関係式(2)に第1規定値λ1E0、第2規定値λ2E0及び実燃料補正率Ktiを直接代入する求め方でもよく、各々の項、例えば、Kti(λ2E0/λ1E0)を先に演算し、演算された各項を相関関係式(2)に代入するような求め方であってもよい。なお、相関関係式(2)から得られるエタノール濃度Keと実燃料補正率Ktiとの関係は、図8の実線のようになる。エタノール濃度が推定されると、走行時推定処理が終了する。
【0077】
またステップS51にて、Oフィードバック制御が行われていないと判断されると、ステップS56に移行する。ステップS56では、推定された混合燃料中のエタノール濃度が予め定められた基準濃度、例えば50%であるとして、エタノール濃度の推定を完了する。なお、基準濃度は、実際のエタノール濃度と推定されたエタノール濃度との差が大きすぎてエンジンEが作動しなくなることを防ぐべく規定された濃度である。
【0078】
このようにエタノール濃度を基準濃度にするのは、前回推定された濃度と変化後の濃度とがかけ離れている状態が長時間継続することを防ぐためである。前回推定された濃度と変化後の濃度とがかけ離れている場合、変化後の代替燃料の濃度が推定されないまま放置されると、内燃機関の燃焼が不安定になることがある。エタノール濃度を基準濃度にすることで、内燃機関の燃焼が不安定になることが防がれ、回転が安定する。エタノール濃度の推定を完了すると、走行時推定処理が終了する。
【0079】
再び、図5に戻って説明する。走行時推定処理が終了すると、ステップS5へと移行するステップS5では、推定されたエタノール濃度に基づいて、ECU60のエンジンEに関する諸設定が調整される。諸設定の調整が終了すると、濃度推定処理が終了する。
【0080】
またステップS1において、給油無しと判断されると、ステップS7に移行する。ステップS7では、前回の給油の後に、走行時推定処理が実行されてエタノール濃度が推定されたか否かを判断する。エタノール濃度が推定されていると判断されると、濃度推定処理が終了し、エタノール濃度が推定されていないと判断されると、ステップS8に移行する。そしてステップS8では、エンジンEが走行中か否かが判断される。走行中か否かの判断方法は、ステップS3の判断方法と同様である。走行中でないと判断されると、濃度推定処理が終了し、走行中であると判断されると、ステップS6へ移行する。
【0081】
このように、ECU60により算出された実燃料補正率と、第1及び第2の空気過剰率マップ内の第1規定値λ1E0と、第3及び第4の空気過剰率マップ内の第2規定値λ2E0を用いることで、燃焼室23の空気過剰率が1未満のリッチな状態で燃焼し得るようなエンジンEであっても、混合燃料中のエタノール濃度を推定することができる。具体的には、ECU60は、相関関係式(2)を参照することで、算出された前記実燃料補正率Ktiと、第1及び第2の空気過剰率マップ内の第1規定値λ1E0と第3及び第4の空気過剰率マップ内の第2規定値λ2E0に基づいて、混合燃料中のエタノール濃度を推定することができる。そのため、燃焼室23の空気過剰率が1未満である内燃機関において、代替燃料の濃度を推定する場合、従来の技術のように混合燃料中の代替燃料の濃度がゼロのときにOフィードバック制御を実施しておいて空気過剰率が1となるような燃料噴射量を予め求めなくとも、第1規定値λ1E0を参照することにより混合燃料中の代替燃料の濃度が推定できる。
【0082】
以下では、相関関係式(1)により代替燃料中のエタノール濃度が推定可能な理由を説明する。ストイキ状態で作動するエンジンにおいて、Oフィードバック制御後の燃料噴射量を、エタノール濃度がゼロの時に噴射される標準燃料噴射量で除算した標準燃料補正率Kとエタノール濃度Keとの間には、
Ke=(a+an−1・・・an−1K+a)・・・・・・・・・・・・・(4)
なる相関関係式(主に、n=2)が成り立つことが知られている。
【0083】
ところで、実燃料補正率Ktiは、エンジンEにおいて、Oフィードバック制御後の燃料噴射量を規定燃料噴射量で除算したものである。また、第1規定値λ1E0は、ガソリン100%時における実空燃比を理論空燃比で除した値である。第2規定値λ2E0は、Oフィードバック制御時の実空燃比を理論空燃比で除算した値である。そのため実燃料補正率に第2規定値λ2E0を乗算して、第1規定値λ1E0により除算したものは、標準燃料補正率Kとなる。従って、実燃料補正率Ktiに第2規定値λ2E0を乗算して第1規定値λ1E0で除算した値を相関関係式(4)の標準燃料補正値Kに代入すると、相関関係式(1)が得られる。従って、相関関係式(1)を参照することで、エタノール濃度が推定される。
【0084】
なお、上記構成について、以下のような構成に変更してもよい。ECU60の燃料マップの各規定燃料噴射量が、燃焼室23の空気過剰率が1を超えるような燃料噴射量に設定されてもよい。これにより第1及び第2の空気過剰率マップ内の第1規定値λ1E0が1を超える値に設定される。このような値に設定されることで、燃焼室23の空気過剰率が1を超えた状態で作動するようなエンジン、つまりリーンバーンエンジンであっても、混合燃料中のエタノール濃度を推定することができる。
【0085】
濃度推定処理において、ステップS1では、給油の有無を燃料タンク12内の液位の変化によって判断しているけれども、燃料タンク12の給油口を塞ぐキャップの開閉により判断してもよい。またアイドリング時濃度推定処理では、ステップS42においてECU60が燃料マップをストイキに切替えているが、ストイキに切替えずに走行時濃度推定処理と同様の方法でエタノール濃度の推定を実施してもよい。
【0086】
また相関関係式(1)を変形した相関関係式を記憶していてもよい。例えば、実燃料補正率Ktiを第2規定値λ2E0で乗算して、更に第1規定値λ1E0で除算して得られる算出値KTIを先に求めるようにして、変形された相関関係式に前記算出値を代入するような演算方法であってもよい。具体的には、
Ke=(aTI+aTI+a)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
なる相関関係式(5)と、
TI=Kti(λ2E0/λ1E0)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(6)
なる関係式(6)とを記憶しておき、これらの関係式と実燃料補正率Kti、第1規定値λ1E0及び第2規定値λ2E0と基づいて、濃度Keを演算する。
【0087】
また相関関係式でなく、実燃料補正率Kti、第1規定値λ1E0及び第2規定値λ2E0にエタノール濃度を対応付けた相関関係マップをECU60に記憶させておき、ECU60が、前記相関関係マップと、実燃料補正率Kti、第1規定値λ1E0及び第2規定値λ2E0とに基づいて、エタノール濃度を推定するように構成してもよい。
【0088】
また混合燃料に含まれる代替燃料は、エタノールに限定されず、メタノール等のアルコール燃料であってもよい。またガソリンの代替燃料と成るものであればよい。またフィードバック制御する際に、O以外の排ガスに含まれる成分ガスの濃度を検出して、この濃度に基づいてフィードバック制御してもよい。例えば、一酸化炭素、炭化水素又は窒素酸化物の量に応じて出力をECU60に送信するセンサを設けることによって実現できる。
【0089】
第2規定値λ2E0を1と見なす、即ちOフィードバック制御時の空気過剰率を1と見して、実燃料補正率Kti及び第1規定値λ1E0だけに基づいてエタノール濃度を推定するようにしてもよい。この場合、相関関係式(2)の第2規定値λ2E0を1とした、
Ke={a(Kti/λ1E0+a(Kti/λ1E0)+a}・・・・・・・・・(7)
なる相関関係式(7)を参照し、実燃料補正率Ktiと第1規定値λ1E0とに基づいて混合燃料中のエタノール濃度を推定する。このように第2規定値λ2E0を考慮せずにエタノール濃度を推定した場合、図8において一点差線で示すように、例えば、第2規定値λ2E0を考慮した場合に対して約10%程度(ΔKe)の誤差が生じる。しかしながら、第2規定値λ2E0の選出工程等を削減することができ、濃度推定の演算が容易となる。従って、ECU60の演算の負担を低減することができる。
【0090】
なお、本発明は、実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施形態に係る自動二輪車の右側面図であり、ライダーが上体を前傾させて搭乗するロードスポーツタイプのものを示している。
【図2】図1に示すエンジンを拡大して概略を示す右側面図である。
【図3】(a)は、第1の空気過剰率マップを示す図であり、(b)は、第2の空気過剰率マップを示す図である。
【図4】(a)は、第3の空気過剰率マップを示す図であり、(b)は、第4の空気過剰率マップを示す図である。
【図5】ECUが混合燃料中のエタノール濃度を推定する際の濃度推定処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】ECUがアイドリング時にエタノール濃度を推定する際のアイドリング時濃度推定処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】ECUが走行時にエタノール濃度を推定する際の走行時濃度推定処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】混合燃料中のエタノール濃度Keと実燃料補正率Ktiとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0092】
E エンジン
1 自動二輪車
12 燃料タンク
15 ギヤポジションセンサ
20 シリンダヘッド
23 燃焼室
47 インジェクタ
49 吸気圧センサ
54 Oセンサ
55 クランク角センサ
56 液位センサ
60 ECU
61 スロットル開度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準燃料に代替燃料が混合された混合燃料を燃焼室で燃焼させる内燃機関と、前記混合燃料中の代替燃料の濃度がゼロのときに前記燃焼室の空気過剰率が1以外の第1規定値となるような規定燃料噴射量が予め設定された燃料噴射装置とを備えたものに用いられる代替燃料濃度推定装置であって、
前記内燃機関の排気系に設けられた排ガスセンサからの出力値に応じて得られる排ガスに含まれる少なくとも1つの成分ガスの濃度に基づいて、前記燃焼室の空気過剰率が第2規定値となるように前記燃料噴射装置の燃料噴射量を補正する空気過剰率制御手段と、
前記成分ガスの濃度に基づいて、前記燃焼室の空気過剰率が前記第2規定値となるように補正された後の燃料噴射量を前記規定燃料噴射量で除して得られる実燃料補正率を算出する燃料補正率演算手段と、
前記燃料補正率演算手段により算出された前記実燃料補正率と前記第1規定値とに基づいて、前記濃度を推定する濃度推定手段と、
を備えることを特徴とする代替燃料濃度推定装置。
【請求項2】
前記濃度推定手段は、前記濃度を推定する際、前記実燃料補正率及び前記第1規定値に加えて、前記第2規定値にも基づいて、前記濃度を推定するように構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の代替燃料濃度推定装置。
【請求項3】
前記濃度推定手段は、相関関係式
Ke=[a{Kti(λ2E0/λ1E0)}+a{Kti(λ2E0/λ1E0)}n−1
・・・an−1{Kti(λ2E0/λ1E0)}+a]・・・・・・(1)
(Keは前記混合燃料中の代替燃料の濃度、a,a,a,・・・,aは予め定められる係数、nは予め定められる定数)
を参照し、前記実燃料補正率Kti、前記第1規定値λ1E0及び前記第2規定値λ2E0に基づいて混合燃料中の代替燃料の濃度Keを推定する
ことを特徴とする請求項2に記載の代替燃料濃度推定装置。
【請求項4】
前記空気過剰率制御手段は、前記内燃機関がアイドリング状態又は中高速走行状態にあるときに、前記燃料噴射装置の燃料噴射量を補正するように構成され、
前記濃度推定手段は、燃料補正率演算手段により算出される実燃料補正率が整定した後に前記濃度の推定を行なうように構成されている
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の代替燃料濃度推定装置。
【請求項5】
前記内燃機関の回転数を増加させる回転数制御手段を更に備え、
前記回転数制御手段は、前記内燃機関がアイドリング状態であって、且つ前記空気過剰率制御手段が前記燃料噴射装置の燃料噴射量を補正するときに、前記回転数を増加させるように構成されている
ことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1つに記載の代替燃料濃度推定装置。
【請求項6】
貯留タンク内に貯留された前記混合燃料の増加を検出する燃料増加検出手段を更に有し、
前記濃度推定手段は、前記燃料増加検出手段が前記混合燃料の増加を検出した後であって、前記濃度が推定されておらず且つ前記空気過剰率制御手段が停止している場合、予め定められた基準濃度を、推定された前記濃度とする
ことを特徴とする請求項2乃至5の何れか1つに記載の代替燃料濃度推定装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうち何れか1つに記載の代替燃料濃度推定装置と
前記基準燃料に対して前記代替燃料が混合された前記混合燃料が前記燃焼室で燃焼される内燃機関と、
前記混合燃料中の代替燃料の濃度がゼロのときに前記燃焼室の空気過剰率が1以外の第1規定値となるような規定燃料噴射量が予め設定された燃料噴射装置と、
を備えること特徴とする乗り物。
【請求項8】
基準燃料に代替燃料が混合された混合燃料を燃焼室で燃焼させる内燃機関において、前記混合燃料中の代替燃料の濃度がゼロのときに前記燃焼室の空気過剰率が1以外の第1規定値となるような規定燃料噴射量が予め設定されている場合に、前記濃度を推定するための代替燃料濃度推定方法であって、
前記内燃機関から排出される排ガスに含まれる少なくとも1つの成分ガスの濃度に基づいて、前記燃焼室の空気過剰率が第2規定値となるように補正された後の燃料噴射量を前記規定燃料噴射量で除して得られる実燃料補正率を算出し、算出された前記実燃料補正率と、前記第1規定値と、補正された後の燃料噴射量を前記燃料噴射装置が噴射した時の前記燃焼室の空気過剰率である第2規定値とに基づいて前記濃度を推定する
ことを特徴とする代替燃料濃度推定方法。
【請求項9】
基準燃料に代替燃料が混合された混合燃料を燃焼室で燃焼させる内燃機関と、前記混合燃料中の代替燃料の濃度がゼロのときに前記燃焼室の空気過剰率が1又はそれ以外の値である第1規定値となるような規定燃料噴射量が予め設定された燃料噴射装置とを備えたものに用いられる代替燃料濃度推定装置であって、
前記内燃機関の排気系に設けられた排ガスセンサからの出力値に応じて得られる排ガスに含まれる少なくとも1つの成分ガスの濃度に基づいて、前記燃焼室の空気過剰率が第2規定値となるように前記燃料噴射装置の燃料噴射量を補正する空気過剰率制御手段と、
前記成分ガスの濃度に基づいて、前記燃焼室の空気過剰率が前記第2規定値となるように補正された後の燃料噴射量を前記規定燃料噴射量で除して得られる実燃料補正率を算出する燃料補正率演算手段と、
前記燃料補正率演算手段により算出された前記実燃料補正率と、前記第1規定値と、前記第2規定値とに基づいて、前記濃度を推定する濃度推定手段と、
を備えることを特徴とする代替燃料濃度推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−133371(P2010−133371A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311768(P2008−311768)
【出願日】平成20年12月8日(2008.12.8)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】