説明

伝送路選択装置

【課題】通信システムの要求に応じて適切な伝送路を選択する。
【解決手段】受信電界強度検出部3は各伝送路の受信電界強度を検出し、パケットエラーレート検出部4は各伝送路の受信パケットエラーレートを算出して伝送路選択判定部6へ渡す。伝送路テスト用パケット生成部9はテスト用パケットを生成し基地局1へ送信する。遅延時間検出部5は、折返し受信したテスト用パケットの送受信時刻に基づき遅延時間を算出して伝送路選択判定部へ渡す。伝送路選択判定部は、選択優先順設定部7で設定された伝送路選択優先順設定値に従って、有効な伝送路の内から、パケットエラーレートが一番低い伝送路または遅延時間が一番短い伝送路を検索し検索された伝送路を送信用伝送路として選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局と移動局の間に複数の伝送路を有する無線通信システムにおいて、伝送路の内から一つを選択する伝送路選択装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の伝送路選択装置は、音声品質データ(パケット損失率または遅延時間)を基に音声品質の良否を判定し、その結果を考慮して発信端末を着信端末に接続するようにしたもの(例えば、特許公報1参照)や、所望波受信電界強度及び干渉波受信電界強度をそれぞれ検出してD/Uを算出し、またフレームエラーレートでFERを検出し、双方の履歴から将来のD/UとFERを予測して、通信チャネルの切換えを行なうもの(例えば、特許公報2参照)が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−144854号公報(第5頁−第7頁、図8)
【特許文献2】特開平11−150751号公報(第3頁−第5頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1記載の技術では、音声品質の良否を考慮して発信端末を着信端末に接続しているため、パケット通信にあっては、非音声の通信に対する配慮を欠くことになるという問題点がある。つまり、音声品質が劣悪なため音声通信にとっては不都合であっても、非音声通信には差し障りのない伝送路があり得るのである。
【0005】
また、特許文献2記載の技術では、受信電界強度は常に検出できるが、データ通信が行っていない場合はパケットエラーレートを検出することが不可能となるため、適切な伝送路を選択できなくなるという第1の問題点がある。また、パケット伝送の遅延時間を把握していないため、遅延時間を重視する音声通信などの場合はパケットエラーレートの低い伝送路は必ず遅延時間の短い伝送路とは限らないので、適切な伝送路を選択できなくなるという第2の問題点もある。
【0006】
そこで、本発明は、データ通信を行っているか否かに関わらず、常に各伝送路の受信電界強度,パケットエラーレートおよび遅延時間を把握し、通信システムの要求により設定された伝送路選択優先順に従って、適切な伝送路を選択して基地局へ送信し、通信信頼性の向上を図ることができる伝送路選択装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の伝送路選択装置は、基地局(図1の1)と移動局(図1の11)の間に複数伝送路を有する無線通信システムにおいて、移動局の受信部(図1の2)で各伝送路からの信号を受信し、受信電界強度検出部(図1の3)で各伝送路からの受信電界強度を検出し、さらに検出された各伝送路の受信電界強度を受信電界強度規定値と比較し、電界強度規定値以上であれば有効な伝送路として扱う。
【0008】
また、各伝送路を経て基地局より送信されたデータを移動局の受信部で受信し、パケットエラーレート検出部(図1の4)で受信したパケットに基づき各伝送路の受信パケットエラーレートを算出し、さらに算出された各伝送路パケットエラーレートを伝送路選択判定部(図1の6)へ渡す。
【0009】
また、伝送路テスト用パケット生成部(図1の9)で伝送路テスト用パケットを生成し、送信部(図1の10)より各伝送路経由で基地局へ送信する。基地局では受信したテスト用パケットを直ぐ移動局へ送信する。移動局で受信したテスト用パケットを遅延時間検出部(図1の5)で各伝送路の伝送路テスト用パケット送受信時刻に基づき遅延時間を算出し、さらに算出された各伝送路の遅延時間を伝送路選択判定部へ渡す。
【0010】
そして、伝送路選択判定部選択優先順設定部(図1の7)で設定された伝送路選択優先順設定値に従って、有効な伝送路の内から、パケットエラーレートが一番低い伝送路、または遅延時間が一番短い伝送路を検索し、検索された伝送路を送信用伝送路として選択して送信部に通知する。
【0011】
本発明では、定期的に伝送路テスト用パケットを各伝送路経由で移動局より基地局へ送信し、基地局は受信したテスト用パケットを受信時の伝送路で直ぐに移動局へ送信する。移動局では受信したテスト用パケットに基づき各伝送路のパケットエラーレートおよびパケットの遅延時間を算出する。従って、データ通信を行っているかに関わらず、常に各伝送路の受信電界強度、パケットエラーレートおよび遅延時間を把握でき、通信システムの要求によって設定された伝送路選択優先順に従って適切な伝送路を選択して基地局へパケットを送信し、通信信頼性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の効果は、通信システムの要求によって設定された伝送路選択優先順に従って適切な伝送路を選択して基地局へパケットを送信することとしたため、ニーズに合致し信頼性の高いデータ通信を行なうことができるということである。
【0013】
また、第2の効果は、定期的に伝送路テスト用パケットを移動局より基地局へ各伝送路経由で折り返し送受信により各伝送路のパケットエラーレートと遅延時間を測定する方式を採用したため、データ通信を行っていない場合も、常に各伝送路の受信パケットエラーレートと遅延時間を把握できるので、適切な送信伝送路を選択できるということである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の伝送路選択装置を有する無線通信システムを示し、移動局11が複数の伝送路の内から一つを選択して基地局1との間で無線通信を行なうものである。図面の煩雑化を回避するために、移動局11は一つのみを図示している。
【0015】
移動局11は、基地局1より送信された信号・データの受信を行う受信部2と、受信部2で受信されたデータを処理するデータ処理部8と、各伝送路からの受信電界強度を検出する受信電界強度検出部3と、各伝送路より受信したパケット数に基づき各伝送路の受信パケットエラーレートを算出するパケットエラーレート検出部4と、伝送路テスト用パケットを生成する伝送路テスト用パケット生成部9と、データ処理部8で処理されたデータおよび伝送路テスト用パケットを基地局1へデータを送信する送信部10を含んでいる。 また、基地局1から送り返され受信部2で受信された伝送路テスト用パケットの送受信時刻に基づいて各伝送路の遅延時間を算出する遅延時間算出部5と、通信システムの要求により送信用伝送路選択優先順を設定する選択優先順設定部7と、設定された送信用伝送路選択優先順に従って、電界強度,パケットエラーレートおよび遅延時間により送信用伝送路を判定して、その結果を送信部10へ出力する伝送路選択判定部6とから構成されている。
【0016】
遅延時間算出部5は記憶部を有し、記憶部は、図2に示すように、テスト用パケット送信時刻記憶テーブルA1とテスト用パケット受信時刻記憶テーブルA2を備えている。前者は、送信されたテスト用パケットのシーケンス番号と、それを送信した伝送路の識別番号と、送信時刻を記憶する。また、後者は、受信されたテスト用パケットのシーケンス番号と、それを受信した伝送路の識別番号と、受信時刻を記憶する。
【0017】
伝送路選択判定部6は記憶部を有し、記憶部は、図3に示すように、電界強度記憶テーブルB1とパケットエラーレート記憶テーブルB2と遅延時間記憶テーブルB3とを備え、また選択優先順位設定値を記憶する。電界強度記憶テーブルB1は、受信電界強度検出部3で検出された受信パケットの電界強度と有効性情報を伝送路毎に記憶する。パケットエラーレート記憶テーブルB2は、パケットエラーレート検出部4で算出されたパケットエラーレートを伝送路毎に記憶する。遅延時間記憶テーブルB3は、遅延時間算出部5で算出された遅延時間を伝送路毎に記憶する。選択優先順位設定値はパケットエラーレート優先と遅延時間優先の内のいずれかが選択優先順設定部7によって設定される。
【0018】
受信電界強度検出部3は、伝送路の受信電界強度を検出し、検出される各伝送路の受信電界強度と、受信電界強度規定値と比較し、受信電界強度が規定値以上であれば有効な伝送路として扱い、各伝送路の受信電界強度および有効性情報を伝送路選択判定部6の電界強度記憶テーブルB1に記憶する。
【0019】
パケットエラーレート検出部4は、各伝送路より受信したパケット数に基づき各伝送路の受信パケットエラーレートを算出し、算出された各伝送路のパケットエラーレートを伝送路選択判定部6のパケットエラーレート記憶テーブルB2に記憶する。
【0020】
伝送路テスト用パケット生成部9は、定期的にユニークなシーケンス番号を持つ伝送路テスト用パケットを生成し、まずテストパケット送信用の伝送路を伝送路1に指定しテスト用パケットが送信部10より伝送路1経由で基地局1へ送信され、その時の時刻を送信時刻としてテストパケットのシーケンス番号と送信用伝送路識別番号と一緒に遅延時刻算出部5のテスト用パケット送信時刻記憶テーブルA1に記憶する。そして、同じように、順に他の伝送路経由でテスト用パケットを基地局1へ送信し、それぞれの送信時刻とテストパケットのシーケンス番号と送信用伝送路識別番号と一緒に遅延時刻算出部5のテスト用パケット送信時刻記憶テーブルA1に記憶していく。
【0021】
基地局1は、受信したテスト用パケットを受信した伝送路を経由して直ぐに移動局11へ送信する。
【0022】
遅延時間算出部5は、受信されたテスト用パケットの受信時刻とテスト用パケットのシーケンス番号と受信伝送路識別番号を遅延時間算出部5のテスト用パケット受信時刻記憶テーブルA2に記憶する。そして、テスト用パケット受信時刻記憶テーブルA2とテスト用パケット送信時刻記憶テーブルA1に基づき、各伝送路の遅延時間を算出し、算出された各伝送路の遅延時間を伝送路選択判定部6の遅延時間記憶テーブルB3に記憶する。
【0023】
選択優先順設定部7は、通信システムの要求に応じて、パケットエラーレート優先と遅延時間優先の内のいずれか一つの設定値を伝送路選択判定部6の選択優先順設定値B4に記憶する。パケットエラーレート優先は、非音声通信のように伝送品質を遅延時間より重視するニーズの場合、遅延時間優先は、音声通信のように遅延時間を伝送品質より重視するニーズの場合に、それぞれ選択設定される。
【0024】
次に、図4のフローチャートを参照しながら、伝送路選択判定部6の動作を説明する。先ず、伝送路選択判定部6の選択優先順設定値B4に記憶されている設定値がパケットエラーレート優先であるかをチェックする(図4のステップC1)。選択優先順設定値B4がパケットエラーレート優先である場合は、伝送路選択判定部6のパケットエラーレート記憶テーブルB2および電界強度記憶テーブルB1を参照し有効伝送路の中にパケットエラーレートが一番低い伝送路を検索し(ステップC2)、検索された伝送路を送信伝送路として選択する(ステップC4)。
【0025】
一方、選択優先順設定値B4が遅延時間優先である場合は、伝送路選択判定部6の遅延時間記憶テーブルB3および電界強度記憶テーブルB1を参照し有効伝送路の中に遅延時間が一番短い伝送路を検索し(ステップC3)、検索された伝送路を送信伝送路として選択する(ステップC4)。
【0026】
なお、受信部2と、データ処理部8と、送信部10は、当業者にとってよく知られており、また本発明とは直接関係しないので、その動作の説明は省略する。
【0027】
このようにして、定期的な伝送路テスト用パケットの送受信により、データ通信があるか否かに関わらず、常に各伝送路のパケットエラーレートおよび遅延時間を把握でき、選択優先順設定値B4に従って、適切な送信用伝送路の選択が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の伝送路選択装置を有する無線通信システムを示すブロック図
【図2】図1の無線通信システムにおける遅延時間算出部5の記憶部を示すブロック図
【図3】図1の無線通信システムにおける伝送路選択判定部6の記憶部を示すブロック図
【図4】図1の無線通信システムにおける処理を示すフローチャート
【符号の説明】
【0029】
1 基地局
2 受信部
3 受信電界強度検出部
4 パケットエラーレート検出部
5 遅延時間算出部
6 伝送路選択判定部
7 選択優先順設定部
8 データ処理部
9 伝送路テスト用パケット生成部
10 送信部
11 移動局
A1 テスト用パケット送信時刻記憶テーブル
A2 テスト用パケット受信時刻記憶テーブル
B1 電界強度記憶テーブル
B2 パケットエラーレート記憶テーブル
B3 遅延時間記憶テーブル
B4 選択優先順設定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と移動局の間に複数の伝送路を有する無線通信システムにおける前記移動局の伝送路選択装置において、
前記基地局より送信された信号・データの受信を行う受信部と、
受信したデータを処理するデータ処理部と、
前記受信した信号により各伝送路からの受信電界強度を検出する受信電界強度検出部と、
前記各伝送路より受信したパケット数に基づき各伝送路の受信パケットエラーレートを算出するパケットエラーレート検出部と、
定期的に前記各伝送路に対するテスト用パケットを生成する伝送路テスト用パケット生成部と、
前記データ処理部におけるデータ処理結果と前記テスト用パケットを前記基地局へ送信する送信部と、
前記基地局から折返し受信した伝送路テスト用パケットの送受信時刻に基づいて各伝送路の遅延時間を算出する遅延時間算出部と、
送信用伝送路選択優先順を設定する選択優先順設定部と、
前記検出された各伝送路の受信電界強度と、前記算出された各伝送路の受信パケットエラーレートと、前記算出された各伝送路の遅延時間とに基づき、前記選択優先順設定部で設定された伝送路の選択優先順設定に従って送信用伝送路を決定して前記送信部に通知する伝送路選択判定部とを含むことを特徴とする伝送路選択装置。
【請求項2】
前記受信電界強度検出部は、前記検出した各伝送路の受信電界強度を受信電界強度規定値と比較し、電界強度規定値以上であれば有効な伝送路として扱い、各伝送路の受信電界強度および有効性情報を伝送路選択の判断要素として前記伝送路選択判定部へ渡すことを特徴とする請求項1記載の伝送路選択装置。
【請求項3】
前記伝送路テスト用パケット生成部は、前記生成したテスト用パケットと各送信伝送路識別番号を前記送信部へ渡すとともに、その時刻を送信時刻として前記遅延時間算出部へ渡し、前記送信部では前記送信伝送路識別番号で指定される伝送路により前記伝送路テスト用パケットを前記基地局へ送信することを特徴とする請求項1または請求項2記載の伝送路選択装置。
【請求項4】
前記優先選択順設定部は、当該無線通信システムの要求に応じて、前記パケットエラーレートの低い伝送路優先または前記遅延時間の短い伝送路優先のいずれかの優先順を設定し、その優先順設定値を伝送路選択の判断要素として前記伝送路選択判定部へ渡すことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の伝送路選択装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−72181(P2008−72181A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246479(P2006−246479)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】