説明

位相比較器

【課題】比較演算に係る論理回路の回路規模を削減し、その結果、その回路面積を縮小し、遅延時間を短縮し、消費電力を低減することができる位相比較器を提供する。
【解決手段】位相比較器は、データとデータのハーフレートの位相が90°ずつずれた4相の第1〜第4のクロックとの間の位相を比較するもので、データを4相の第1〜第4のクロックで各々サンプリングする第1〜第4のサンプリング回路と、第1および第2のサンプリング回路によって、その位相が隣接する2相の第1および第2のクロックで各々サンプリングされた2つのデータ同士を比較し、両者が異なる場合に第1のアップ信号を出力する第1の比較回路と、第4および第1のサンプリング回路によって、その位相が隣接する2相の第4および第1のクロックで各々サンプリングされた2つのデータ同士を比較し、両者が異なる場合に第1のダウン信号を出力する第2の比較回路とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データとクロックとの間の位相を比較し、その比較結果を出力する位相比較器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PLL(位相同期ループ)回路やCDR(クロック・データ・リカバリ)回路で用いられる位相比較器(以下、PDという)は、その比較結果として、データとクロックとの間の位相差に応じて線形の出力をするHogge型PD(非特許文献1参照)と、クロックがデータに対して早いのか遅いのかのみを判断してバイナリの出力をするAlexander型PD(bang-bangと呼ばれる)(非特許文献2参照)の2種類が一般的である。
【0003】
バイナリ出力のPDを含むループは擬似的なデジタル回路と見なせる。このため、線形出力のPDと比較して構成の組合せがしやすく、プロセス変動、ノイズに強いという利点がある。また、バイナリ出力のPDの方が、線形出力のPDと比較して遅延時間を合わせやすいという特性も持ち合わせている。以下、本発明に関わるバイナリ出力のPDとして、Alexander型PDを例に挙げて説明する。
【0004】
図4は、クロックでデータを3倍オーバーサンプリングして得られる3種類のデータを用いて、クロックとデータとの間の位相を比較する従来のAlexander型PDの備える比較回路の構成を表す一例の回路図である。同図に示す比較回路には、それぞれデータDataをクロックCA,CB,CCでサンプリングした時のデータA,B,Cが入力される。比較回路からは、その比較結果となるアップ信号Upおよびダウン信号Downが出力される。
【0005】
なお、図5に示すように、クロックCA,CCは、データDataの中央部のタイミングでデータDataをサンプリングするクロックであり、クロックCBは、データDataの遷移部のタイミングでデータDataをサンプリングするクロックであるとする。
【0006】
下記表1は、図4に示す比較回路の動作を表す真理値表である。表1において、A,B,Cは、比較回路に入力されるデータの値を表す。‘X’は、不定値ではなく、‘1’または‘0’であることを表す。また、出力Upは、比較回路から出力されるアップ信号Upが‘1’(すなわち、ダウン信号Downが‘0’)になることを表す。同様に、出力Downは、比較回路から出力されるダウン信号Downが‘1’(すなわち、アップ信号Upが‘0’)になることを表す。また、出力Tri−Stateは、アップ信号Upおよびダウン信号Downが共に‘0’になることを表す。
【0007】
【表1】

【0008】
表1に示すように、データData遷移部のタイミング(CB)でサンプリングされたデータ(B)と、その直前のデータData中央部のタイミング(CA)でサンプリングされたデータ(A)とが異なる場合(B≠A)、データDataよりもクロックCA,CB,CCの方が遅いということであるから、比較回路からは、アップ信号Upとして‘1’(ダウン信号Downとして‘0’)が出力される。
【0009】
一方、データData遷移部のタイミング(CB)でサンプリングされたデータ(B)と、その直後のデータData中央部のタイミング(CC)でサンプリングされたデータ(C)とが異なる場合(B≠C)、データDataよりもクロックCA,CB,CCの方が早いということであるから、比較回路からは、ダウン信号Downとして‘1’(アップ信号Upとして‘0’)が出力される。
【0010】
なお、データDataの遷移がない場合(A=C=0、または、A=C=1)、比較回路からは、アップ信号Upおよびダウン信号Downとして共に‘0’が出力される(トライステート(Tri−State)となる)。
【0011】
図6は、上述の概念に基づき、4相ハーフレートのクロックでデータを4倍オーバーサンプリングして得られる4種類のデータを用いて、クロックとデータとの間の位相を比較する従来のAlexander型位相比較器の構成を表す一例の回路図である(非特許文献3参照)。図6に示すAlexander型PDは、データDataを4相クロックCI,CQ,CIb,CQbで各々サンプリングし、クロックCIで同期化したデータ同士の間で比較演算を行った後、その比較結果をさらにクロックCIで同期化してアップ信号Upおよびダウン信号Downを出力するための論理回路を備えている。
【0012】
なお、図7に示すように、クロックCI,CQ,CIb、CQbは、データDataのハーフレートの90°ずつ位相がずれた4相のクロックである。クロックCI,CIbはデータDataの中央部のタイミングでデータDataをサンプリングするクロックであり、クロックCQ,CQbは、データDataの遷移部のタイミングでデータDataをサンプリングするクロックであるとする。
【0013】
図6に示すAlexander型位相比較器の論理回路は、データDataの遷移部のタイミング(CQ,CQb)でサンプリングされたデータと、その前後のデータDataの中央部のタイミング(CI,CIb)でサンプリングされたデータとの間で比較演算を行う。また、そのために、各々異なるタイミングでサンプリングされたデータを同期化するためのフリップフロップやラッチを必要とする。このため、その回路規模が大きく、回路面積や消費電力も大きいという問題がある。また、この論理回路によってPLL回路内における遅延時間が増大すると、PLL回路の安定性に悪影響を与え、かつループゲインを減少させるという問題もあった。
【0014】
【非特許文献1】C.R.Hogge, "A self correcting clock recovery circuit", J.Lightwave Technol., vol.LT-3, pp.1312-1314, Dec.1985
【非特許文献2】J.D.H.Alexander, "Clock recovery from random binary signals", Electron.Lett., vol.11, no.22, pp.541-542, Oct.1975
【非特許文献3】J.E.Rogers, "A 10-Gb/s CDR/DEMUX With LC Delay Line VCO in 0.18um CMOS", IEEE J.Solid-State Circuits, vol.37, pp.1781-1789, Dec.2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、比較演算に係る論理回路の回路規模を削減し、その結果、その回路面積を縮小し、遅延時間を短縮し、消費電力を低減することができる位相比較器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、データと該データのハーフレートの90°ずつ位相がずれた4相の第1、第2、第3および第4のクロックとの間の位相を比較する位相比較器であって、
前記データを4相の前記第1、第2、第3および第4のクロックで各々サンプリングする第1、第2、第3および第4のサンプリング回路と、前記第1および第2のサンプリング回路によって、その位相が隣接する2相の前記第1および第2のクロックで各々サンプリングされた2つのデータ同士を比較し、両者が異なる場合に第1のアップ信号を出力する第1の比較回路と、前記第4および第1のサンプリング回路によって、その位相が隣接する2相の前記第4および第1のクロックで各々サンプリングされた2つのデータ同士を比較し、両者が異なる場合に第1のダウン信号を出力する第2の比較回路とを備えていることを特徴とする位相比較器を提供するものである。
【0017】
ここで、さらに、前記第2および第3のサンプリング回路によって、その位相が隣接する2相の前記第2および第3のクロックで各々サンプリングされた2つのデータ同士を比較し、両者が異なる場合に第2のダウン信号を出力する第3の比較回路と、前記第3および第4のサンプリング回路によって、その位相が隣接する2相の前記第3および第4のクロックで各々サンプリングされた2つのデータ同士を比較し、両者が異なる場合に第2のアップ信号を出力する第4の比較回路とを備えているのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の位相比較器では、隣接する2相のクロックでサンプリングされたデータ同士のみを比較する。また、本発明の位相比較器では、2相のクロックに分けて各々同期化し、2相のクロックで並列処理することができる。これにより、本発明の位相比較器では、従来の位相比較器と比べて、データの比較演算に係る論理回路の回路規模を大幅に削減することが可能である。このため、本発明の位相比較器は、従来の位相比較器と比べて、その回路面積が小さく、遅延時間も短く、消費電力も低減されている。また、本発明の位相比較器では、論理回路による遅延時間が短縮されるため、PLL回路やCDR回路の安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の位相比較器を詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の位相比較器(以下、PDという)の構成を表す一実施形態の回路図である。同図に示すPD10は、データDataと4相のクロックCI、CQ、CIb、CQbとの間の位相を比較し、その比較結果として、クロックCQの立上りのタイミングに同期化されたアップ信号UpCQおよびダウン信号DownCQと、クロックCQbの立上りのタイミングに同期化されたアップ信号UpCQbおよびDownCQbとを出力するものである。
【0021】
ここで、4相クロックCI、CQ、CIb、CQbは、同じく図7を参照して説明すると、データDataのハーフレートのクロックであり、その位相が各々90°ずつずれている。また、クロックCI、CIbは、データDataの中央部のタイミングでデータDataをサンプリングするクロックであり、クロックCQ,CQbは、データDataの遷移部のタイミングでデータDataをサンプリングするクロックであるとする。
【0022】
PD10は、図1に示すように、データDataのサンプリング回路となる4つのフリップフロップ12a、12b、12c、12dと、比較演算のためのタイミング調整回路となる4つのラッチ14a、14b、14c、14dと、比較回路となる4つのEXOR回路16a、16b、16c、16dと、出力段のタイミング調整回路となる4つのフリップフロップ18a、18b、18c、18dとを備えている。
【0023】
ここで、フリップフロップ12a、12b、12c、12dは、それぞれクロックCI、CQ、CIb、CQbの立上りのタイミングでデータDataをサンプリングする。フリップフロップ12a、12b、12c、12dのデータ入力DにはデータDataが入力され、そのクロック入力には、それぞれクロックCI、CQ、CIb、CQbが入力されている。
【0024】
ラッチ14a、14dは、それぞれフリップフロップ12a、12dの出力信号をクロックCQbのローレベルで通過(スルー)させ、ハイレベルで確定(ホールド)して、その出力タイミングを調整する。ラッチ14a、14dのデータ入力Dには、それぞれフリップフロップ12a、12dの出力信号が入力され、そのクロック入力には共にクロックCQbが入力されている。
【0025】
一方、ラッチ14b、14cは、それぞれフリップフロップ12b、12cの出力信号をクロックCQのローレベルで通過(スルー)させ、ハイレベルで確定(ホールド)して、その出力タイミングを調整する。ラッチ14b、14cのデータ入力Dには、それぞれフリップフロップ12b、12cの出力信号が入力され、そのクロック入力には共にクロックCQが入力されている。
【0026】
続いて、EXOR回路16aは、クロックCIでフリップフロップ12aによってサンプリングされ、さらにクロックCQbのタイミングでラッチ14aによってタイミング調整されたデータと、クロックCQでフリップフロップ12bによってサンプリングされたデータとを比較し、その比較結果を出力する。EXOR回路16aには、ラッチ14aの出力信号およびフリップフロップ12bの出力信号が入力されている。
【0027】
以下同様に、EXOR回路16bは、クロックCQでフリップフロップ12bによってサンプリングされ、さらにクロックCQのタイミングでラッチ14bによってタイミング調整されたデータと、クロックCIbでフリップフロップ12cによってサンプリングされ、さらにクロックCQのタイミングでラッチ14cによってタイミング調整されたデータとを比較し、その比較結果を出力する。EXOR回路16bには、ラッチ14b、14cの出力信号が入力されている。
【0028】
EXOR回路16cは、クロックCIbでフリップフロップ12cによってサンプリングされ、さらにクロックCQのタイミングでラッチ14cによってタイミング調整されたデータと、クロックCQbでフリップフロップ12dによってサンプリングされたデータとを比較し、その比較結果を出力する。EXOR回路16cには、ラッチ14cの出力信号およびフリップフロップ12dの出力信号が入力されている。
【0029】
EXOR回路16dは、クロックCQbでフリップフロップ12dによってサンプリングされ、さらにクロックCQbのタイミングでラッチ14dによってタイミング調整されたデータと、クロックCIでフリップフロップ12aによってサンプリングされ、さらにクロックCQbのタイミングでラッチ14aによってタイミング調整されたデータとを比較し、その比較結果を出力する。EXOR回路16dには、ラッチ14a、14dの出力信号が入力されている。
【0030】
EXOR回路16a、16b、16c、16dからは、比較結果として、データ同士が異なる場合にハイレベルが出力され、同一の場合にローレベルが出力される。
【0031】
最後に、フリップフロップ18a、18dは、クロックCQの立上りのタイミングでそれぞれEXOR回路16a、16dの出力信号を保持して出力する。フリップフロップ18a、18dのデータ入力Dには、それぞれEXOR回路16a、16dの出力信号が入力され、そのクロック入力には共にクロックCQが入力されている。また、フリップフロップ18a、18dからは、それぞれアップ信号UpCQおよびダウン信号DownCQが出力されている。
【0032】
一方、フリップフロップ18b、18cは、クロックCQbの立上りのタイミングでそれぞれEXOR回路16b、16cの出力信号を保持して出力する。フリップフロップ18b、18cのデータ入力Dには、それぞれEXOR回路16b、16cの出力信号が入力され、そのクロック入力にはクロックCQbが入力されている。また、フリップフロップ18b、18cからは、それぞれアップ信号UpCQbおよびダウン信号DownCQbが出力されている。
【0033】
ここで、PD10の出力段において、アップ信号UpCQおよびダウン信号DownCQは、クロックCQの立上りのタイミングに同期化され、アップ信号UpCQbおよびダウン信号DownCQbは、クロックCQbの立上りのタイミングに同期化されて出力される。すなわち、両者は、データDataの1つ分の時間だけずれたタイミングで交互に出力される。
【0034】
次に、下記表2を参照しながら、図1に示すPD10の動作を説明する。
【0035】
表2は、同じく図7に示すように、データDataを4相のクロックCI,CQ,CIb,CQbで4倍オーバーサンプリングした時のPD10の動作を表す真理値表である。表2において、I,Q,Ib,Qb(Qb’)は、それぞれデータDataを4相クロックCI,CQ,CIb,CQb(CQb’(1つ前のCQb))でサンプリングした時のデータを表す。また、UpCQ、UpCQb、DownCQ、DownCQbは、PD10から出力されるアップ信号UpCQ、UpCQbおよびダウン信号DownCQ、DownCQbの状態を表す。
【0036】
【表2】

【0037】
表2に示すように、データData中央部のタイミング(CI)でサンプリングされたデータ(I)と、その直前のデータData遷移部のタイミング(CQb’)でサンプリングされたデータ(Qb’)とが異なる場合(I≠Qb’)、データDataよりもクロックCQb’、CIの方が早いということであるから、PD10からは、ダウン信号DownCQとして‘1’が出力される。なお、それ以外の信号は‘0’が出力される。
【0038】
一方、データData中央部のタイミング(CI)でサンプリングされたデータ(I)と、その直後のデータData遷移部のタイミング(CQ)でサンプリングされたデータ(Q)とが異なる場合(I≠Q)、データDataよりもクロックCI、CQの方が遅いということであるから、PD10からは、アップ信号UpCQとして‘1’が出力される。なお、それ以外の信号は‘0’が出力される。
【0039】
また、データData中央部のタイミング(CIb)でサンプリングされたデータ(Ib)と、その直前のデータData遷移部のタイミング(CQ)でサンプリングされたデータ(Q)とが異なる場合(Ib≠Q)、データDataよりもクロックCQ、CIbの方が早いということであるから、PD10からは、ダウン信号DownCQbとして‘1’が出力される。なお、それ以外の信号は‘0’が出力される。
【0040】
一方、データData中央部のタイミング(CIb)でサンプリングされたデータ(Ib)と、その直後のデータData遷移部のタイミング(CQb)でサンプリングされたデータ(Qb)とが異なる場合(Ib≠Qb)、データDataよりもクロックCIb、CQbの方が遅いということであるから、PD10からは、アップ信号UpCQbとして‘1’が出力される。なお、それ以外の信号は‘0’が出力される。
【0041】
なお、データDataの遷移がない場合(表2において「その他」の場合)、PD10からは、アップ信号UpCQおよびダウン信号DownCQ、アップ信号UpCQbおよびダウン信号DownCQbとして全て‘0’が出力される。
【0042】
一例として、データDataよりも4相クロックCI、CQ、CIb、CQbの方が遅い場合のPD10の動作を説明する。図2に、データDataと4相クロックCI,CQ,CIb、CQbとの間の関係を示すように、データDataよりも4相クロックCI、CQ、CIb、CQbの方が遅い場合、データDataが遷移すればI≠Q、Ib≠Qbとなる。
【0043】
従って、図3のタイミングチャートに示すように、PD10から出力されるアップ信号UpCQは、EXOR回路16aによる比較の結果、データDataが遷移すればクロックCQの立上りのタイミングでハイレベルとなり、データDataの遷移がなければローレベルとなる。同様に、アップ信号UpCQbは、EXOR回路16cによる比較の結果、データDataが遷移すればクロックCQbの立上りのタイミングでハイレベルとなり、データDataの遷移がなければローレベルとなる。
【0044】
また、データDataよりも4相クロックCI、CQ、CIb、CQbの方が遅い場合には、データDataの遷移に関わらず、I=Qb’、Ib=Qとなる。このため、PD10から出力されるダウン信号DownCQおよびダウン信号DownCQbは、それぞれEXOR回路16dおよび16bによる比較の結果、同じく図3のタイミングチャートに示すように、データDataの遷移に関わらず常にローレベルとなる。
【0045】
以上のように、PD10では、隣接する2相のクロック(すなわち、CQb’とCI、CIとCQ、CQとCIb、CIbとCQb)でサンプリングされたデータ同士(すなわち、Qb’とI、IとQ、QとIb、IbとQb)のみを比較する。また、PD10では、図6に示す従来のPDのように、単一のクロック(図6に示す従来のPDではクロックCI)に同期化せず、2相のクロック(図1では、CQとCQb)に分けて各々同期化し、2相のクロックで並列処理している。
【0046】
これにより、PD10では、従来のPDと比べて、論理演算が簡単となり、同期化に必要な回路数も削減できるため、データの比較演算に係る論理回路の回路規模を大幅に削減することが可能となった。このため、PD10は、従来のPDと比べて、その回路面積が小さく、遅延時間も短く、消費電力も低減されている。また、PD10では、前述の通り、論理回路による遅延時間が短縮されるため、PLL回路やCDR回路の安定性を向上させることができる。
【0047】
なお、図1に示すPD10では、アップ信号UpCQおよびダウン信号DownCQと、アップ信号UpCQbおよびダウン信号DownCQbとを出力しているが、これは必須ではなく、例えばアップ信号UpCQおよびダウン信号DownCQのみを出力するようにしてもよいし、その逆に、アップ信号UpCQbおよびダウン信号DownCQbのみを出力するようにしてもよい。この場合、アップ信号およびダウン信号が出力される頻度は半分となるが、その回路規模をさらに削減することができる。
【0048】
本発明は、基本的に以上のようなものである。
以上、本発明の位相比較器について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の位相比較器の構成を表す一実施形態の回路図である。
【図2】図1に示す位相比較器において、データよりもクロックの方が遅れている場合のデータと4相クロックとの間の関係を表す一例の概念図である。
【図3】データとクロックの関係が図2の状態のときに図1に示す位相比較器の動作を表す一例のタイミングチャートである。
【図4】クロックでデータを3倍オーバーサンプリングして得られる3種類のデータを用いて、クロックとデータとの間の位相を比較する従来のAlexander型位相比較器の備える比較回路の構成を表す一例の回路図である。
【図5】図4に示す比較回路を備える位相比較器において、データとクロックとの間の関係を表す一例の概念図である。
【図6】4相ハーフレートのクロックでデータを4倍オーバーサンプリングして得られる4種類のデータを用いて、クロックとデータとの間の位相を比較する従来のAlexander型位相比較器の構成を表す一例の回路図である。
【図7】位相比較器において、データを4倍オーバーサンプリングする場合のデータと4相クロックとの間の関係を表す一例の概念図である。
【符号の説明】
【0050】
10 位相比較器
12a、12b、12c、12d、18a、18b、18c、18d フリップフロップ
14a、14b、14c、14d ラッチ
16a、16b、16c、16d EXOR回路
Data データ
CA、CB、CC、CI、CQ、CIb、CQb クロック
Up、UpCQ、UpCQb アップ信号
Down、DownCQ、DownCQb ダウン信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データと該データのハーフレートの90°ずつ位相がずれた4相の第1、第2、第3および第4のクロックとの間の位相を比較する位相比較器であって、
前記データを4相の前記第1、第2、第3および第4のクロックで各々サンプリングする第1、第2、第3および第4のサンプリング回路と、前記第1および第2のサンプリング回路によって、その位相が隣接する2相の前記第1および第2のクロックで各々サンプリングされた2つのデータ同士を比較し、両者が異なる場合に第1のアップ信号を出力する第1の比較回路と、前記第4および第1のサンプリング回路によって、その位相が隣接する2相の前記第4および第1のクロックで各々サンプリングされた2つのデータ同士を比較し、両者が異なる場合に第1のダウン信号を出力する第2の比較回路とを備えていることを特徴とする位相比較器。
【請求項2】
さらに、前記第2および第3のサンプリング回路によって、その位相が隣接する2相の前記第2および第3のクロックで各々サンプリングされた2つのデータ同士を比較し、両者が異なる場合に第2のダウン信号を出力する第3の比較回路と、前記第3および第4のサンプリング回路によって、その位相が隣接する2相の前記第3および第4のクロックで各々サンプリングされた2つのデータ同士を比較し、両者が異なる場合に第2のアップ信号を出力する第4の比較回路とを備えている請求項1に記載の位相比較器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−109208(P2006−109208A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294754(P2004−294754)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(501285133)川崎マイクロエレクトロニクス株式会社 (449)
【Fターム(参考)】