説明

位置合わせ方法、インプリント方法、位置合わせ装置、及び位置計測方法

【課題】 新規な位置合わせ方法や位置合わせ装置、インプリント方法を提供する。
【解決手段】 第1の本発明は、
第1のアライメントマーク104を有する第1の平板状物体と、第2のアライメントマーク113を有する第2の平板状物体とを対向させて配置する。そして、撮像素子が観測する撮像エリア内の互いに重ならない位置に、第1及び第2の領域を設けておき、2つの前記平板状物体の面内方向に略垂直な方向から、前記第1及び第2のアライメントマークを前記撮像素子で撮像する。そして、前記第1の領域内の予め定められた位置からの前記第1のアライメントマークのズレに関する第1の情報と、前記第2の領域内の予め定められた位置からの前記第2のアライメントマークのズレに関する第2の情報とを用いて、位置合わせ制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置合わせ方法及び位置合わせ装置に関する。また、インプリント方法及びインプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、例えば非特許文献1に紹介されているように、モールド上の微細な構造を半導体、ガラス、樹脂や金属等のワークに加圧転写する微細加工技術が開発され、注目を集めている。
【0003】
これらの技術は、数ナノメートルオーダーの分解能を持つためナノインプリントあるいはナノエンボッシングなどと呼ばれ、半導体製造に加え、立体構造をウエハレベルで一括加工可能である。
【0004】
これらは、フォトニッククリスタル等の光学素子、μ−TAS(Micro TotalAnalysis System)、バイオチップの製造技術等として幅広い分野への応用が期待されている。
【0005】
このようなナノインプリントのうち、例えば、光インプリント方式を半導体製造技術に用いる場合について、以下に説明する。
【0006】
まず、基板(例えば半導体ウエハ)上に光硬化樹脂からなる樹脂層を形成する。
【0007】
次に、所望の凹凸構造が形成されたモールドを前記樹脂層に押し当て、加圧する。その後、紫外線を照射することで光硬化樹脂を硬化させ、前記樹脂層に凹凸構造が転写される。更に、この樹脂層をマスクとしてエッチング等を行い、基板へ所望の構造が形成されることになる。
【0008】
ところで、このような半導体製造に際しては、モールドと基板の位置合わせが必要である。
【0009】
例えば、半導体のプロセスルールが100nm以下になるような昨今の状況において、装置に起因する位置合わせ誤差の許容範囲は、数nm〜数十nmと言われる程、厳しいものとなっている。
【0010】
このような位置合わせ方法として、例えば、特許文献1ではモールドと基板を樹脂を介在した状態で接触させ、位置合わせを行う方法が提案されている。
【0011】
まず、基板に設けられているアライメントマーク以外の部分に光硬化性樹脂を選択的に塗布する。次に、基板をモールドに相対する位置に移動する。この状態でモールドとワークの距離を縮め、前記アライメントマークが樹脂で埋まらないような高さまで近づける。
【0012】
この状態で位置合わせを行い、その後最終的な加圧を行う、という方法が採られている。位置合わせのための光学系としては、モールド側のアライメントマーク付近の浅い焦点深度部分のみを観察する方式が用いられている。
【0013】
具体的には、モールドと基板とのそれぞれ設けられたマークを、色収差を用いて一つの撮像素子に結像させている。
【非特許文献1】Stephan Y.Chou et.al.,Appl.Phys.Lett,67,3114,1995
【特許文献1】米国特許第6696220号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、実際には、モールドと基板との反射率は大きく異なることが多い。石英などの透過率が高いモールドに設けられたマークと、反射率の高いシリコン基板側のマークとが、垂直方向に投影したときに重なる場合には、撮像画像におけるモールド側のマークが、基板側のマークに埋もれてしまう場合がある。
【0015】
斯かる場合、モールドと基板のそれぞれに設けられているアライメントマーク像を、十分な階調幅をもって撮像することができないために、高い検出分解能を得ることができない場合がある。
【0016】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、新規な位置合わせ方法や位置合わせ装置、インプリント方法を提供することを目的とする。また、別の本発明の目的は、2つの物体の相対的な位置関係や、相対的な移動量を計測する為の位置計測方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の本発明は、
光源と撮像素子を用いて、2つの平板状物体の位置合わせを行う位置合わせ方法であって、
第1のアライメントマークを有する第1の平板状物体と、第2のアライメントマークを有する第2の平板状物体とを対向させて配置し、
撮像素子が観測する撮像エリア内の互いに重ならない位置に、第1及び第2の領域を設けておき、
2つの前記平板状物体の面内方向に略垂直な方向から、前記第1及び第2のアライメントマークを前記撮像素子で撮像し、
前記第1の領域内の予め定められた位置からの前記第1のアライメントマークのズレに関する第1の情報と、前記第2の領域内の予め定められた位置からの前記第2のアライメントマークのズレに関する第2の情報とを用いて、前記第1の平板状物体と前記第2の平板状物体との面内方向の位置を合わせるための位置合わせ制御を行い、且つ
前記位置合わせ制御を行いながら、前記第1の平板状部材と前記第2の平板状部材とのギャップを狭くして、3μm以下のギャップになるように調整することを特徴とする。
【0018】
ここで、前記撮像素子で撮像される前記第1及び第2のアライメントマークの撮像画像は、それぞれコントラスト調整が行われていることを特徴とする請求項1に記載の位置合わせ方法。なお、前記第1の領域及び第2の領域の面積あるいは、其処に含まれる撮像素子の画素数を揃えておくことで、後の工程におけるフーリエ変換などの信号処理を行いやすくなる。
【0019】
また、前記第1及び第2の物体の高さに起因した倍率変化に応じて、前記第1及び第2の領域で観察される画像の倍率補正を行うこともできる。
【0020】
第2の本発明は、
第1の本発明に記載の位置合わせ方法を行うための位置合わせ装置であり、以下の特徴を有する。
【0021】
すなわち、前記第1及び第2の平板状物体の少なくとも一方を面内方向に動かすための可動手段と、
前記第1及び第2の平板状物体の少なくとも一方を面内方向に垂直方向に動かすための可動手段とを備えていることを特徴とする。
【0022】
第3の本発明は、
撮像素子を用いて、2つの平板状物体の位置合わせを行って、一方の物体が有するインプリントパターンを、他方の物体あるいは他方の物体上のパターン形成層にインプリントするインプリント方法であって、
第1のアライメントマークを有する第1の平板状物体であるモールドと、第2のアライメントマークを有する第2の平板状物体である基板とを対向させて配置し、
撮像素子が観測する撮像エリア内の互いに重ならない位置に、第1及び第2の領域を設けておき、
2つの前記平板状物体の面内方向に略垂直な方向から、前記第1及び第2のアライメントマークを前記撮像素子で検出し、
前記第1の領域内の予め定められた位置からの前記第1のアライメントマークのズレに関する第1の情報と、前記第2の領域内の予め定められた位置からの前記第2のアライメントマークのズレに関する第2の情報とを用いて、前記第1の平板状物体と前記第2の平板状物体との面内方向の位置を合わせるための位置合わせ制御を行い、且つ
前記第2の平板状物体である基板、あるいはその上に設けられているパターン形成層に、前記第1の平板状物体であるモールドが有するインプリントパターンをインプリントすることを特徴とする。
【0023】
第4の本発明は、第3の本発明に記載のインプリント方法を行うインプリント装置であって、前記第1及び第2の平板状物体の少なくとも一方を面内方向に動かすための可動手段と、
前記第1及び第2の平板状物体の少なくとも一方を面内方向に垂直方向に動かすための可動手段とを備えていることを特徴とする。
【0024】
第5の本発明は、撮像素子を用いて、2つの平板状物体の位置合わせを行う位置合わせ方法であって、
アライメントマークとして、ピッチP1からなる第1の周期構造を有する第1の平板状物体と、ピッチP2からなる第2の周期構造を有する第2の平板状物体とを対向させて配置し、
撮像素子が観測する撮像エリア内の互いに重ならない位置に、第1及び第2の領域を設けておき、
前記撮像素子を用いて、2つの前記平板状物体の面内方向に略垂直な方向から、前記第1及び第2の周期構造を、それぞれ前記第1及び第2の領域内で撮像し、
撮像して得られる画像情報から、前記第1及び第2の周期構造のそれぞれに対応した基本周波数を抽出し、
それらを演算することによってモアレ縞成分を抽出し、
該モアレ縞成分から取得される2つの平板状物体の面内方向の位置ずれに関する情報を用いて、前記第1の平板状物体と前記第2の平板状物体の面内方向の位置合わせを行うことを特徴とする。
【0025】
第6の本発明は、撮像素子を用いて、2つの物体の位置に関する計測する位置計測方法であって、
アライメントマークとして、ピッチP1からなる第1の周期構造を有する第1の物体と、ピッチP2からなる第2の周期構造を有する第2の物体とを対向させて配置し、
撮像素子が観測する撮像エリア内の互いに重ならない位置に、第1及び第2の領域を設けておき、
前記撮像素子を用いて、2つの前記物体の面内方向に略垂直な方向から、前記第1及び第2の周期構造を、それぞれ前記第1及び第2の領域内で撮像し、
撮像して得られる画像情報から、前記第1及び第2の周期構造のそれぞれに対応した基本周波数を抽出し、それらを演算することによってモアレ縞成分を抽出し、
前記第1の物体と前記第2の物体の面内方向に関する位置計測を行うことを特徴とする。
【0026】
第7の本発明は、モールドの加工面に形成されたパターンを基板表面の樹脂を硬化させることによって転写するインプリント方法であって、
該モールドに設けられているアライメントマークを撮像素子で観察する際に、該モールドと基板との間のギャップあるいは該アライメントマークを構成する部材の膜厚に応じて、該撮像素子に入射する光の波長を制御することを特徴とする。
【0027】
第8の本発明は、
撮像素子を用いて、2つの部材の位置合わせを行う位置合わせ方法であって、
第1のアライメントマークを有する第1の部材と、第2のアライメントマークを有する第2の部材とを対向させて配置し、
撮像素子が観測する撮像エリア内の第1の領域で、前記第1のアライメントマークに関する第1の画像情報を取得し、
前記撮像素子が観測する撮像エリア内であって、且つ前記第1の領域とは異なる第2の領域で、前記第2のアライメントマークに関する第2の画像情報を取得し、
前記第1の画像情報と前記第2の画像情報とを演算処理し、
前記演算処理により出力される出力情報を用いて、2つの部材の位置合わせを行なうことを特徴とする。
【0028】
ここで、前記演算処理は、前記第1の領域と前記第2の領域との重なっていない箇所における前記第1及び第2の画像情報を用いて行なうこともできる。
【0029】
第9の本発明は、
撮像素子を用いて、2つの平板状物体の位置合わせを行う位置合わせ方法であって、
アライメントマークとして、ピッチP1からなる第1の周期構造を有する第1の平板状物体と、ピッチP2からなる第2の周期構造を有する第2の平板状物体とを対向させて配置し、
撮像素子が観測する撮像エリア内の互いに重ならない位置に、第1及び第2の領域を設けておき、
前記撮像素子を用いて、2つの前記平板状物体の面内方向に略垂直な方向から、前記第1及び第2の周期構造を、それぞれ前記第1及び第2の領域内で撮像し、
撮像して得られる画像情報を演算することによって、前記第1の平板状物体と第2の平板状物体との相対的な位置に関する位置情報を取得し、
前記位置情報を用いて、前記第1の平板状物体と前記第2の平板状物体の面内方向の位置合わせを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、新規な位置合わせ方法や位置合わせ装置、インプリント方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
(第1の実施形態)
光源と撮像素子を用いて、2つの平板状物体の位置合わせを行う位置合わせ方法に関する発明について、図1を利用しながら説明する。
【0032】
なお、図1(a)は、撮像素子により観測される撮像エリア1995の画像の例示であり、図1(b)は、2つの平板状物体を対向して配置させた場合に、平板状物体の面内方向に平行な方向から見た場合の模式図である。図1(c)に関しては、後述する。図1(a)において、1999は顕微鏡の鏡筒における可視範囲である。
【0033】
まず、第1のアライメントマーク104を有する第1の平板状物体309と、第2のアライメントマークを有する第2の平板状物体312とを対向させて配置する。その際、撮像素子が観測する撮像エリア1999内の互いに重ならない位置に、第1の領域610及び第2の領域611を設けておく。これら2つの領域は、予め撮像エリア内における位置を決めておくことにより定められるものである。
【0034】
そして、2つの前記平板状物体の面内方向に略垂直な方向から、前記第1及び第2のアライメントマークを前記撮像素子で撮像すると、図1(a)のような画像が得られる。
【0035】
ここで、第1の領域610の重心や中央に、第1の平板状部材のアライメントマーク104が来て、且つ第2の領域611の重心や中央に第2の平板状部材のアライメントマーク113が来ている場合に、位置合わせが完了するように設定しておく。
【0036】
なお、位置合わせが完了するとは、2つの物体の面内方向に関する所望の位置合わせ条件(位置合わせの程度)を満足していることを意味する。
【0037】
実際の位置合わせは以下のように行う。
【0038】
前記第1の領域内の予め定められた位置(例えば、第1の領域内中央)からの前記第1のアライメントマークのズレに関する第1の情報を取得する。
【0039】
更に、前記第2の領域内の予め定められた位置(例えば、第2の領域内中央)からの前記第2のアライメントマークのズレに関する第2の情報を取得する。
【0040】
第1及び第2の情報の取得順序は、特に限定されず、同時に取得してもよい。
【0041】
そして、この2つの情報から、前記第1の平板状物体と前記第2の平板状物体との面内方向の位置を合わせるための位置合わせ制御を行う。
【0042】
位置合わせ制御は例えば、以下のように行う。
【0043】
まず、第1及び第2の平板状物体のそれぞれを面内方向に駆動し得る駆動機構を有する場合は、それぞれの物体のアライメントマークが、予め定められた位置に来るように位置合わせを行う。
【0044】
あるいは、いずれか一方の平板状物体は固定しておき、他方の物体に関する位置ズレ情報と、当該固定された物体の位置ズレに関する情報の2つを考慮して、面内方向に移動可能な物体の方を動かすのである。例えば、固定されている第1の平板状物体の位置が、第1の領域内で、右方向に5メモリずれており、且つ第2の領域内で第2の平板状物体の位置が左に2メモリずれている場合、次のように位置合わせを行う。
【0045】
すなわち、第2の平板状物体の位置を右に2メモリ(スケール)動かすのではなく、右に7メモリ(2+5)動かすのである。勿論、このような位置合わせはあくまで一例である。
【0046】
また、第1及び第2のいずれか一方にしか、面内方向の駆動機構が設けられていない場合には、上述の後者のアライメント方向により位置を調整することになる。
【0047】
更にまた、光学系が有する光軸を動かせる場合には、レンズ等を含み構成される光学系を動かすことによって、光軸を補正することも、位置合わせ制御に取り込むことができる。
【0048】
そして、第1及び第2の平板状部材の位置が、所望の位置に調整できたら、その位置関係を保ち続けるように、位置合わせ制御(例えば、フィードバック制御)を行いながら、2つの前記平板状部材の間隔(ギャップ)を狭めていく。間隔は、3μm以下になるように近づけていく。なお、本実施形態に係る発明をインプリント方法に組入れる場合は、好ましくは、1μm以下のギャップになるようにすることが好ましい。
【0049】
更に、2つの物体間に光硬化性あるいは熱硬化性の樹脂を介在させ、当該樹脂に、第1あるいは第2の物体が有するパターンを転写する場合には、300nm以下の間隔になるまで狭めるのがよい。なお、好ましくは200nm以下、更に好ましくは、100nm以下になるまで、間隔を狭めるのがよい。樹脂の硬化後に、その間隔(ギャップ)に対応する厚さが、いわゆる残膜として残るからである。
【0050】
本実施形態においては、2つの平板状物体のそれぞれに設けられたアライメントマークを観察する場合に、それぞれのコントラスト調整や、いわゆるSN比の調整を行うこともできる。
【0051】
以下では、一つの撮像素子で、2つの平板状物体のアライメントマークを同時に観測できる場合、すなわち両方のマークが同じ焦点深度内に入っている場合の説明である。
【0052】
さて、反射率の異なるモールドと基板のマークが重なり合っている場合を考える。このようなときに信号処理をするとコントラストが十分取れず、正確な計測を妨げる場合がある。
【0053】
例えば、第1の平板状部材がインプリントパターンを有するモールドである場合、そのモールドに設けられているアライメントマークは、その透過率が高くなってしまう。例えば、モールドが石英から作製されている場合には、当該マークは、石英に設けられた凹部や凸部で構成される。一方、第2の平板状物体が例えば、シリコンである場合には、両者の透過率および反射率の違いにより、モールド側のマークのコントラストが基板側のマークのコントランストより低くなる傾向がある。そのために、モールド側のマークが、基板側のマークに埋もれてしまうような場合がある。
【0054】
従って、本実施形態に係る発明のように、両方のマークを垂直方向から観察した場合に、それぞれのマークを観測する領域を互いに光学的に影響を及ぼさない位置に配置しておけば、それぞれのマーク像に対してコントラストを調整できる。
【0055】
コントラストの調整方法は、光学系によって撮像素子に入る光を調節しても良いし、撮像素子側の露光時間を変えても良い。
【0056】
また、垂直方向から観察する理由は、インプリントを行う場合には、モールドまたは基板をz軸方向(平板状部材の面内方向に垂直な方向)に移動させるため、モールドまたは基板の移動による撮像素子内でのマーク位置変化を無くすためである。当然、斜めから観察する場合には、マークの位置変化に対応した信号処理方法を行わなければならず複雑になってしまう。
【0057】
さらに、インプリントを行う場合は、従来の露光装置のようにマスクと基板間のギャップが一定ではない。そのため、z軸方向の移動と共に倍率が変化し、その変化に応じた信号処理を必要とする場合がある。そのような処理は垂直である方が等方的であるため簡単である。
【0058】
再度、図1を用いて説明する。第1の平板状物体としてのモールドと、第2の平板状物体としての基板のマークを、それぞれ光学的に重ならない配置にしている。
【0059】
図1(a)は上面図、(b)は断面図ということになる。撮像素子の第1の領域A(610)と第2の領域B(611)は対角にとってある。その領域内にモールド側のアライメントマーク104と、基板側のアライメントマーク113が配置されるように調整されている。勿論、光学的に重ならない位置であれば、これら2つの領域の設け方は、特に限定されるものではない。
【0060】
なお、撮像エリア内における、モールド側のマークと基板側のマークとの間隔は、数十から数百マイクロメートルである。また、モールドと基板とのギャップ(z軸方向の距離)が数マイクロメートルの状態である。そのため顕微鏡の開口数を考慮しても第1の領域Aと第2の領域Bに影響を及ぼさないようになっている。
【0061】
ステージ精度はサブマイクロメートルやナノメートル、時にはサブナノメートルなので、容易にこのような状態にすることができる。図1(c)は、両側のマークを同時に撮像した場合の様子を例示的に示したものである。左側が基板側のマーク(図1(a)におけるマーク113)、右側が、モールド側のマーク(図1(a)におけるマーク104)のラインプロファイルである。横軸は位置、縦軸は光強度である。シリコン基板と石英モールドとでは反射率が大きく異なる様子が分かる。マークのライン幅は、例えばサブマイクロメートルから数マイクロメートルである。マークの深さは例えば数十ナノメートルから数マイクロメートルである。そのため、光の波長(例えば400から800nm)より短い場合があり、マークのエッジが元の形状からくずれ、裾を大きく引くような形状になる。両者のマークが、撮像エリア内において十分離れているこの例では、互いに影響を及ぼすことがない。
【0062】
また、このようにモールドと基板マークを別々の領域に分けてマーク情報を取得することの他のメリットを述べる。
【0063】
それは、インプリントを行う場合、モールドと基板とのギャップを狭めながら位置合わせを行う必要がある。焦点深度内の場合であっても、モールドまたは基板の高さによって光学倍率が変化してしまい。斯かる変化は、高精度な位置合わせが求められるナノインプリントにおいては重大である。
【0064】
斯かる場合であっても、モールドと基板のマークが十分に離れている場合には、倍率の変化に応じて補正することが容易になる。倍率補正は、例えばマークの間隔と元の設計値を比較することによって実現できる。垂直であれば等方的な倍率変化のため容易に補正ができる。なお、斜めから観察するような場合には撮像素子に近い側と遠い側でパターンの大きさが異なって見えてしまうため倍率の補正は複雑になる。
【0065】
図2(a)は、CCDやMOS型撮像素子など撮像素子307の撮像領域内で、場所に応じてコントラストの調整ができるようにした構成である。
【0066】
撮像素子307の手前に、場所に対応して特性の異なる第1の光学素子803を配置している。光学素子は色フィルター、干渉フィルター、NDフィルター、偏光板等に加えそれらの組み合わせである。
【0067】
なお、実施形態4で説明するように、モールドと基板とのギャップに応じて、光源側や、撮像素子側に設けるフィルターの透過波長帯域を変えることも、コントラスト向上の点からは好ましい。
【0068】
301は光源、302は照明光学系、303は第1のビームスプリッター、304は、第1の結像光学系306は第2の結像光学系である。309はインプリントパターンとアライメントマーク310が設けられているモールドである。313は、第1の物体位置である。
【0069】
312は、シリコンウエハなどの基板であり、311がウエハに設けられているアライメント用マークである。
【0070】
図2(b)は、撮像素子307の撮像領域内で、場所に応じてコントラストの調整ができるようした別の構成である。場所に対応して特性の異なる第1の光学素子1301を光源側に配置している。光学素子は色フィルター、干渉フィルター、NDフィルター、偏光板等に加えそれらの組み合わせである。
【0071】
図3(a)は、コントラスト調整を行うため、モールドおよび基板のマークにそれぞれに対応した光量となるように光量制御機構901を用いた光学系の構成である。モールドおよび基板の反射率などに応じて光量の制御を行うことができる。
【0072】
なお、この場合、モールドおよび基板マークを個別で取るため、第1の光量、第2の光量で2回以上撮像する必要がある。なお、図2と共通する部分については、符号の説明は省略する。
【0073】
図3(b)は、光源からの光量を変えるために回転式シャッター902を用いた構成である。モールドおよび基板のマーク位置の反射率に応じてシャッターを切り替える。この時も2回以上撮像する必要がある。なお、このように光量を調整する方法であっても良いが、撮像素子の露光時間やゲインをモールドおよび基板の特性に合わせて変更しても良い。
【0074】
図4(a)、(b)はモールドと基板の位置合わせにおいて、ボックスインボックス方式の位置合わせ方法で用いるマークの例である。
【0075】
撮像素子の第1の領域A(610)はモールド側、第2の領域B(611)は基板側のマークを示す。一つの撮像素子を用いた場合は、例えば、図1(a)のように第1及び第2の領域が撮像される。
【0076】
そして、撮像素子から第1及び第2の領域における画像データを取得し、必要に応じて反射光の強度プロファイルデータを取得するための信号処理を行う。位置合わせの際には、それぞれの領域内における予め定めた位置(例えば、重心位置や中心位置)に、それぞれのアライメントマークがくるように、モールドと基板とそれぞれの面内方向の位置を調整する。あるいは、電子的に、2つの画像を重ね合わせて、重なり画像からモールドと基板間の相対的なズレ量を取得し、そのズレ量が小さくなるように位置合わせを行うこともできる。
【0077】
なお、第1の実施形態において説明した位置合わせ方法は、インプリント装置に適用する場合だけではなく、例えば光を使う、コンタクト露光装置やプロキシミティ露光装置にも適用され得る。更に、粗動調整と微動調整を行うことができる装置においては、まず粗動調整を公知の位置合わせ方法により行い、その後、微動調整として、上述した位置合わせ方法を行うこともできる。
【0078】
また、第1及び第2のそれぞれの領域を撮像するための撮像素子を2つ用いる時は、それぞれの撮像素子が撮像するエリアの補償を行う為に、後述の参照実施例のように標準基板等を用い、予め2つの撮像エリアの差異に関する情報を取得しておく。
【0079】
(第2の実施形態:インプリント方法)
以下に、第2の実施形態として、インプリント方法に関する発明を説明する。
【0080】
撮像素子を用いて、2つの平板状物体の位置合わせを行うこと自体は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0081】
本実施形態では、一方の物体が有するインプリントパターンを、他方の物体あるいは他方の物体上のパターン形成層にインプリントを行う。なお、インプリントするという表現は、インプリントパターンを転写するということと同じ意味である。但し、実際には、一方の物体であるモールドが有するインプリントパターンが、反転したパターンがパターン形成層に形成されることになる。
【0082】
まず、第1のアライメントマークを有する第1の平板状物体であるモールドと、第2のアライメントマークを有する第2の平板状物体である基板とを対向させて配置する。
【0083】
そして、撮像素子が観測する撮像エリア内の互いに重ならない位置に、第1及び第2の領域を設けておき、2つの前記平板状物体の面内方向に略垂直な方向から、前記第1及び第2のアライメントマークを前記撮像素子で検出する。
【0084】
その後、前記第1の領域内の予め定められた位置からの前記第1のアライメントマークのズレに関する第1の情報と、前記第2の領域内の予め定められた位置からの前記第2のアライメントマークのズレに関する第2の情報とを利用する。すなわち、この2つの情報から、前記第1の平板状物体と前記第2の平板状物体との面内方向の位置を合わせるための位置合わせ制御を行う。
【0085】
そして、前記第2の平板状物体である基板、あるいはその上に設けられているパターン形成層に、前記第1の平板状物体であるモールドが有するインプリントパターンをインプリントする。
【0086】
インプリントする際には、基板とモールドが直接接触する場合には加圧力を必要とする。基板とモールド間に樹脂を介在させ、当該樹脂をパターン形成層として使用する場合には、加圧力は必要に応じて加えればよい。
【0087】
A)モールドについて
本実施形態に係る発明において用いるモールドとしては、石英からなるモールドや窒化シリコンからなるモールドなどを用いることができる。
【0088】
また、モールドの表面層の材料を以下のように工夫することも好ましい。すなわち、表面層として、屈折率が、1.7よりも大きい屈折率を有する材料を利用することで、光硬化樹脂との屈折率の違いにより、モールドとウエハに設けられた位置合わせ構造を検出し、高精度の位置合わせができる。なお、表面層の屈折率は、1.7以上、好ましくは1.8以上、更に好ましくは1.9以上である。上限は例えば、3.5以下である。勿論、使用可能であれば上限値はこれに限定されるものではない。また、表面層の一部が上記屈折率を備えていれば、更に表面層が他の層により被覆されていてもよい。
【0089】
通常、屈折率が大きく異なる物質間では、界面の屈折や反射、散乱によって、構造物を認識することができる。したがって、モールドの表面層の屈折率が高いほどコントラストは取りやすくなる。
【0090】
屈折率の上限としては特に制限はないが、紫外光を透過する代表的な誘電体の屈折率として、フッ化カルシウム(CaF)が1.43、石英(代表的には、SiOで表される。)が1.45、アルミナ(代表的には、Alで表される。)が1.78、窒化シリコン(SiN)が2.0、チタン酸化物(代表的には、TiOで表される。)が2.4程度である。
【0091】
これらの物質の紫外光、例えば365nm付近の波長に対する透過率は、CaFが97%程度、SiOが90%程度、Alが80%程度、TiOが60%程度、SiNが90%程度である。表面層を構成する材料の屈折率の上限は3.5以下、好ましくは3.0以下である。
【0092】
なお、屈折率の値自体は、測定波長にも依存するが、上記データは、可視光(波長633nm)における屈折率である。
【0093】
このように、モールドの表面に、屈折率の高い材料を用いた例を図5に示す。図5において、5510は石英(SiO2であり、その厚さは、525μm)であり、その表面に、高屈折率材料からなる表面層5000として、SiNやTiO2を設けた場合の例である。表面層として、SiNを用いた場合には、その厚さは50nm、TiO2の場合には、その厚さは、例えば60nmである。このように高屈折材料を用いることで、モールドと基板間に介在する樹脂によって、モールドのアライメントマークが見え難くなることを回避できる。
【0094】
B)基板
前述の基板は、インプリント装置においては、ワークと呼ばれる場合もある。その例としては、Si基板(Siウエハ)、GaAs基板等の半導体基板、樹脂基板、石英基板、ガラス基板などである。また、これらの材料からなる基板に、薄膜を成長させたり、貼り合わせたりして形成される多層基板も使用できる。勿論、石英基板などの光透過性の基板を使用することもできる。
【0095】
C)樹脂
基板とモールド間に樹脂を介在させるために、例えば、基板上に樹脂をディスペンサーにより塗布する。基板上に塗布される樹脂を硬化させるためには、例えば紫外線をモールド側から当該樹脂に照射することにより行われる。光硬化性樹脂の例としては、ウレタン系やエポキシ系やアクリル系などがある。
【0096】
また、フェノール樹脂やエポキシ樹脂やシリコーンやポリイミドなどの熱硬化性を有する樹脂や、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリカーボネ−ト(PC)、PET、アクリルなどの熱可塑性を有する樹脂を用いることもできる。必要に応じて加熱処理を行うことでパターンを転写する。勿論、被加工物が樹脂を含まずに構成される場合は、加圧力のみにより、被加工物を物理的に変形させることになる。
【0097】
(第3の実施形態:モアレ電子合成)
次に、第3の実施形態に係る発明について説明する。
【0098】
具体的には、撮像素子を用いて、2つの平板状物体の位置合わせを行う位置合わせ方法である。
【0099】
まず、アライメントマークとして、ピッチP1からなる第1の周期構造を有する第1の平板状物体と、ピッチP2からなる第2の周期構造を有する第2の平板状物体とを対向させて配置する。
【0100】
そして、第1の実施形態同様に、撮像素子が観測する撮像エリア内の互いに重ならない位置に、第1及び第2の領域を設けておく。
【0101】
前記撮像素子を用いて、2つの前記平板状物体の面内方向に略垂直な方向から、前記第1及び第2の周期構造を、それぞれ前記第1及び第2の領域内で撮像する。
【0102】
撮像して得られる画像情報から、前記第1及び第2の周期構造のそれぞれに対応した基本周波数を抽出する。
【0103】
更に、それらを演算することによってモアレ縞成分を抽出し、該モアレ縞成分から取得される2つの平板状物体の面内方向の位置ずれに関する情報を用いて、前記第1の平板状物体と前記第2の平板状物体の面内方向の位置合わせを行うのである。
【0104】
以下、より具体的に説明する。
【0105】
なお、第1の平板状物体として石英モールドを用い、第2の平板状物体としてシリコンなどのウエハ基板を用いた場合を挙げて説明するが、勿論、本実施形態に係る発明は、他の平板状物体を排除するものではない。
【0106】
図4(c)、(d)にそれぞれグレーティングから構成されるモールドおよび基板のマークの構成を示す。610は第1の領域であり、611は第2の領域である。第1の領域に観察されるモールド側のアライメントマークは、ピッチP1で第1の周期構造(例えば、凹部や溝)が設けられている。第2の領域に観察される基板側のアライメントマークは、ピッチP2で第2の周期構造(例えば、凹部や溝)が設けられている。
【0107】
撮像素子から得られる画像情報から、これら第1及び第2の周期構造に対応した基本周波数を抽出したり、前述のモアレ縞成分を抽出したり、更にこのモアレ縞成分にから位置ずれ情報を取得するための信号処理に関して、以下説明する。
【0108】
図6に信号処理方法を説明する。
【0109】
図6(a)は倍率補正を行わない場合である。
【0110】
S−1の工程においては、一つの撮像素子が観測する撮像エリア内第1の領域Aと第2の領域Bの画像を取得する。なお、この2つの領域は、互いに画像が重ならない領域であることが望ましいが、2つの領域が互いに異なる部分を含んでいるのであれば、2つの領域は部分的に重なっていてもよい。
【0111】
この際領域Aと領域Bの面積は同じにすることが望ましい。その理由は、FFT解析をするような場合にサンプリング数が同じにする場合が多いからである。なお、面積が違う場合には、同じになるように周辺部のデータをそのまま拡張する等の処理を適宜行うのがよい。
【0112】
S−2の工程においてそれぞれの画像において信号処理A、信号処理Bを行う。
【0113】
このときの処理はローパス、ハイパス、バンドパス、FFT、平滑化、差分等の一般的なフィルター処理である。また、モールドおよび基板の反射率などによってコントラストが最適になるようにゲイン調整する。
【0114】
このS−2の工程は省略することもでき、即ち、互いに異なる領域からの画像情報を得た後、直接S−3の演算工程を行なうこともできる。
【0115】
なお、実施形態4で説明するように、モールドと基板とのギャップに応じて、光源側や、撮像素子側に設けるフィルターの透過波長帯域を変えることも、コントラスト向上の点からは好ましい。
【0116】
S−3の工程で演算処理を行う。演算処理は画像をそのまま足しても良いし、掛け算しても良いし、差分をとっても良い。またその他の関数であってもよい。S−4の工程で信号処理Cを行う。このときの信号処理もS−2で用いたようなフィルターを用いる。S−5の工程で位置検出を行う。
【0117】
なお、それぞれの領域についての画像データをそれぞれ異なる撮像素子を用いて行う場合には、後述する参照実施例にあるように、予めリファレンスとなる標準基板を用いて、所望の位置合わせ完了条件となる情報を取得しておくことになる。
【0118】
図6(b)は、前述のS−2の工程を、S2−1にて倍率補正を行う工程を加えた場合である。
【0119】
特にインプリントにおいては、モールド又は基板の高さが変化し、それと共に光学倍率も変化する。このような場合に倍率補正を行わないと高精度な位置あわせができない場合がある。
【0120】
倍率補正の方法は、バーとバーの間隔と設計値を比較し、設計値に合うように係数を変化させることなどにより行う。
【0121】
なお、S−2以降の信号処理は2次元データで行っても良いし、1次元データに変換しても良い。なお、ここでは領域が2つの場合を説明したが、さらに多くの領域があっても良い。
【0122】
図4(a)、(b)を用いた場合の信号処理の例を説明する。
【0123】
まず、S−1の工程で領域Aと領域Bの画像を取得する。S−2の工程で倍率補正および領域Aと領域Bにそれぞれ平滑化フィルターを用い、ノイズの低減を図る。さらに、領域Aと領域Bのコントラストを調整する。S−3の工程で信号処理後の領域Aと領域Bを足し合わせる。この状況は光学的に重ね合わせた場合と類似したものになる。S−4の工程でさらに平滑化フィルターなどによる信号処理を行う。S−5の工程で位置を検出する。なお、信号処理の方法として、S−2の工程で領域Aと領域Bにおけるマークの重心をそれぞれ直接求めても良い。S−3の工程でその重心の差分を求める。S−4の工程では特に信号処理を行わない。S−5の工程で差分をモールドと基板の距離に変換する。この差がゼロとなるようなときが位置合わせの終了条件である。
【0124】
図4(c)、(d)を用いた場合の信号処理の例を説明する。
【0125】
S−1の工程で画像を取得する。S−2の工程で、倍率補正および、2次元データから平均化処理を行うことによって1次元化を行う。さらにFFTフィルターにより周期構造の基本周波数の成分を切り出す。S−3の工程でそれぞれを数学的に掛け算する。これは、次のような数式で表される。なお、δは位置のずれである。下記の式では、簡単のために周期P2の側にだけ位置のズレ量δを加味した場合をしめしている。勿論、周期P1の側にも位置のズレ量を加味することもできる。なお、位置合わせに重要なことは、両者の相対的な位置ズレ情報を取得することである。また、基本周波数の成分を切り出す際に、P1とP2を画像情報から抽出せずに、予め定められている既知の値を利用することもできる。
【0126】
【数1】

【0127】
右辺の第2項がモアレ縞の成分である。
【0128】
S−4の工程でFFTによって低周波である第2項と高周波成分である第1項に簡単に分けることができる。すなわちモアレ縞の成分として以下の項を抜き出せる。
【0129】
【数2】

【0130】
S−5の工程で位相成分
【0131】
【数3】

【0132】
を抽出し、ここから位置に関連したδを検出することができる。
【0133】
この位置合わせにおいては位相成分がゼロになる時が位置合わせの終了した条件とすることが多い。なお、グレーティングは703、704のような異なるピッチのマークを並列に配置し、それぞれのグレーティングの基本周波数から同じピッチの2組のモアレ縞を発生させて、それらを使って位置合わせを行っても良い。この場合、基板にP1およびP2、モールドにP1およびP2のマークがそれぞれ重ならないように配置される。なお、図8に示すように、基板側のピッチP1のグレーティングとモールドのピッチP2のグレーティング、及びモールドのピッチP1のグレーティングと基板のピッチP2のグレーティングによって2組のモアレ縞を発生させることも好ましい。このように2組のモアレ縞を作る最大のメリットは、撮像対象物と撮像素子の間の相対的な変位をキャンセルできることである。また変位が倍に拡大されるという点でも好ましい。
【0134】
なお、この式から分かるように、上記数式3(数3)は変位に比例している。従って、モールドと基板の間の位置変位を直線的に計測することができる。
【0135】
当然、モールドと基板の間の位置変位を計測するだけでなく、一般的な平面と平面の相対的な位置変位を直線的に計測することができることになる。本発明(上記第6の本発明)は、このような2つの物体の位置に関する計測(例えば面内方向の相対的な移動量などの計測や、それぞれの位置自体の計測などである。)をも包含する概念である。
【0136】
なお位置計測方法の応用としては、ステージの位置を計測するためのリニアスケールのようなものがある。
【0137】
なお、通常のボックスインボックスのようなアライメントマークはゼロ点で感度が高くなるようになっている。従って、このような位置計測方法に用いるマークとしては、既述のグレーティングの方が、直線的な計測には向いているということになる。また、このような計測方法が採用される2つの物体としては、一般的には平板状の物体である。但し、必ずしも平板状ではなくても、グレーティングなどの上記アライメントマークが付されている物体であれば特に制限されるものではない。例えば部分的に曲面を有する物体と平板状の物体であってもよい。
【0138】
また、ここでは2つのグレーティングを掛け合わせてモアレ縞を発生させたが、Pのピッチである701の撮像結果にPのピッチの正弦波を数値的に掛け、モアレ縞を出しても良い。さらに、Pのピッチである701の撮像結果にPのピッチの正弦波を掛け、フィルターを用いて定数成分を抜き出し位相を検出しても良い。
【0139】
ところで、本実施形態において説明した信号処理によってグレーティング等のパターンを重ねることと、光学的に重ねる場合の本質的な違いを述べる。
【0140】
信号処理による方は理想的な状況であるのに対し、光学的に重ね合わせる場合には多重反射などの影響をうける。
【0141】
特に、モールドと基板の反射率が異なる場合にはその影響を受けることが多い。
【0142】
従って、2つのマークを実際に光学的に重ね合わせる場合には、検出アルゴリズムによっては、計測に誤差を生じる場合がある。そのため本発明のように、垂直方向から観察した場合に、互いに重なり合わない領域を利用することで理想的な信号を取得し、誤差を発生しにくくすることができる。
【0143】
なお、本実施形態においては、撮像素子により得られる第1、第2の周期構造に対応した画像データから、FFTフィルターにより周期構造の基本周波数の成分を抽出した時点で、モールドと基板間の位置ズレ量δが把握できる。従って、更に演算(図6における演算S3)を行うことなく、位置調整を行うこともできる。
【0144】
また、撮像素子により得られる画像情報から周期構造の基本周波数成分を抽出せずに、即ち、基本周波数自体は予め既知の情報として入力して、モールドと基板間の相対的な位置ズレ情報を抽出することもできる。S−3の工程で掛け算する際にサイン関数同士の掛け算にしているが、勿論、コサインや別の関すうを利用することもできる。
【0145】
以下、本実施形態に係る発明をインプリント装置に適用した場合の実施例について、図7から図10を用いて説明する。
【0146】
図7は、インプリント装置を模式的に示したものである。
7000は光源(ハロゲンランプ)、7010は撮像素子(CCD、1.3Mpixels、12bit)、7020はレンズ(10倍、NA=0.28)である。7030は、光硬化性樹脂を硬化させるためのUV光源であり、レンズ7020が有する光軸に対して、傾斜している。
【0147】
7040は、モールドを保持する筐体である。7060はインプリントパターンが形成されているモールドである。7070はシリコンなどのウエハ基板である。7080は、除振テーブル、7081、7082、7083は、粗動調整を行うためのステージ群であり、それぞれ紙面に垂直方向、横方向、縦方向への動作に対応する可動手段となる。
【0148】
このステージ群は例えば、XYZに対する位置調整精度を±1μm以下、θ(軸まわりの回転角)は±1mdeg以下の精度を有する。7084は圧電素子を利用した微動調整用のステージである。
【0149】
そして、XYZ200μmのレンジで1nm以下の精度のアライメント調整ができる。また、α(x軸まわりの回転角)、β(y軸回りの回転角)のレンジは、それぞれ±1000μrad、θのレンジは、±800μradである。
【0150】
7050は、信号処理や制御信号を送るためのコンピュータである。
【0151】
石英からなるモールドには、予め矩形や十字形のアライメントマークと周期P1からなるグレーティングが形成されている。なお、モールド表層には、SiN層が50nmの膜厚で形成されており、アライメントマークのため溝の深さは、166nmである。基板はシリコンウエハであり、アライメントマークのため溝の深さは、150nmである。また、基板にも周期P2からなるグレーティングが設けられている。
【0152】
図8では、撮像素子で観測したモールド側のマーク8000(実線で囲まれたエリア)と、基板側のマーク8500(点線で囲まれたエリア)とが重なった様子が示されている。なお、図8においては、既述のようにモールドにもピッチP2のグレーティングが設けられており、また基板側にもピッチP1のグレーティングが設けられている。
【0153】
基板側、モールド側にそれぞれ設けられているグレーティングは、光学的に重ならないように配置されている。そして、撮像エリア内の重ならない位置に、第1の領域8010と第2の領域8510を定める。なお、図8においては、基板とモールド間に光硬化性の樹脂としてのレジストが介在している。
【0154】
図9(a)は、図8における画像データから第1の領域8010を抽出したものである。図9(b)は、図8における画像データから第2の領域8510を抽出したものである。
【0155】
図10を用いて、具体的に信号処理について説明する。
【0156】
まず、第1及び第2の領域における画像データを切り出して抽出する。図10における2910と2920で示した工程である。
【0157】
当該画像データを元に、必要に応じて、倍率補正、2次元データの1次元化を行った後、高速フーリエ変換フィルター(FFTフィルター)により、周期構造の基本周波数成分をサイン波として抽出する(2915、2925)。上述のようにこれらを数学的に掛け算する(2930)。なお、既述の数式では、位置のズレδは、基板側の位置に起因するものとした式を示している。すなわち、モールド側の位置は所望の位置に合っているものとして処理する場合の式である。
【0158】
勿論、基板側の位置は所望の位置に合っているものとして、演算してもよいし、モールド側と基板側のそれぞれに起因した位置ズレd1、d2の両方を用いた演算を行うこともできる。
【0159】
上記演算2930により、モアレ縞の成分が取得できる(2940)。
【0160】
【数4】

【0161】
そして、位相成分である、−(2π/P)δを抽出する。図11における点線3010は、位相ズレ成分が無い場合のモアレ縞成分のプロファイルであり、実線3010が実際に、前述の位相成分3500だけずれている場合を示している。
【0162】
当該、位相成分のズレを相殺するように、モールドに対して基板を相対的に動かすことにより、位置合わせを行うことができる。
【0163】
なお、モアレ縞の成分が有する周期以上に、基板とモールドとが所望の位置からズレている場合には、実際の位相ずれの大きさが正確に把握できない場合がある。図8に示しているように、まず、粗動調整をグレーティングの横に設けられている十字や矩形のマークで行い、その後、微動調整として、当該グレーティングを用いて、上述の位相ズレを検出するのがよい。勿論、粗動調整に際しては、必ずしも、図8のようなアライメントマークを用いる必要はなく、公知の方法を適宜採用できる。
【0164】
(第4の実施形態)
本実施形態に係るインプリント方法は、
モールドの加工面に形成されたパターンを基板表面の樹脂を硬化させることによって転写するインプリント方法に関する。
【0165】
そして、当該該モールドに設けられているアライメントマークを撮像素子で観察する際に、該モールドと基板との間のギャップあるいは該アライメントマークを構成する部材の膜厚に応じて、該撮像素子に入射する光の波長を制御することを特徴とする。
【0166】
以下、具体的に説明する。
【0167】
インプリントにおいては、モールドと基板との間に、パターンが転写される樹脂を介在させる場合がある。そして、当該樹脂とモールドとの屈折率が近い場合、インデックスマッチングと呼ばれるモールドに凹凸により形成されているアライメント用のマークが消失する場合(実際には、観察が困難になる場合)がある。
【0168】
モールドのマークが消失するインデックスマッチングを回避する方法としては、高屈折率材料をマークに使うことが有効である。
【0169】
しかし、ナノインプリントではモールドと基板のギャップが数十から数百ナノメートルになることもある。このような場合には、光の干渉効果によりマークのコントラストが低く場合があり、より一層の改良が求められる。
【0170】
インプリントのモールド(の特にアライメントマーク部分)に高屈折率材料を用いることが好ましい理由を説明する。ここでは、屈折率がそれぞれSiO:1.45、樹脂:1.5、SiN:2.0であるとする。屈折率がn,nである境界面での反射率Rは次のような式で表される。
【0171】
【数5】

【0172】
従って、SiOと樹脂の境界面での反射率は
R=2.9×10−4
この値は非常に小さい。マークを観察するとインデックスマッチングと呼ばれ、観察しにくい状況である。一方SiNと樹脂の境界面での反射率は
R=2.0×10−2
であり、SiOの場合に比べ2桁良い。ちなみに、SiOと空気の境界面での反射率は
R=3.4×10−2
である。このようにモールドのマークにSiNを用いることによって反射率が大きく向上することが分かる。
【0173】
ところで、インプリントではモールドと基板のギャップおよび高屈折率材料の膜が数十から数百ナノメートルになるときがある。
【0174】
このような場合には光の干渉効果が顕著に現れる。SiO、SiN,樹脂(Gap=100nm)、Siの層構成で、SiNの膜厚を可変にした場合の波長と反射光強度を図19に示す。
【0175】
図19は、無限厚のSi上に、100nmの樹脂層を設け、その上に、SiN層(厚さは20nm、50nm、150nm)を設け、更にその上に無限厚のSiO2を配置した4層構成としてシミュレーションした結果である。
【0176】
なお、SiNは20nm、50nm、150nmである。計算の方法は、フレネル反射のモデルを用いた。Referenceとしては、上記4層構成からSiN層を除いた3層構成(上記SiO2、樹脂、Siの層構成)である。
【0177】
当然、SiNがある構成と無い構成(Reference)の差が大きいほどマークを観察したときのコントラストは良くなる。
【0178】
例えば、波長600nmの部分では、SiN50nmの時が0.27であるのに対して、SiN150nmでは0.11である。Referenceが0.11であるため、600nmの波長では、SiNが50nmの場合のコントラストがもっともよいことになる。800nmの波長では、SiNの場合がコントラストがもっともよい。400nmの波長では、20nmの場合のコントラストが最も良い。
【0179】
次に、SiO、SiN(膜厚=50nm)、樹脂(Gap可変)、Siの3層構成で、Gapとなる樹脂の部分を可変にした場合の波長に対する反射光強度を図20に示す。
【0180】
なお、Gapは50nm、100nm、200nmである。
【0181】
波長が600nmの場合で反射光強度を比較すると、ギャップが100nmで0.273、50nmで0.099、200nmで0.033であった。
【0182】
600nmの波長で比較すると、Referenceが0.11に対し、Gapが100nmの場合のコントラストが最も良い。500nmの波長では、Gapが100nmの場合のコントラストが最も良い。800nmの波長では、Gapが200nmの場合のコントラストが良いということになる。
【0183】
このように、SiNの膜厚や樹脂のGapが数十−数百ナノメートル(観測する光の波長の数分の1〜数倍)の場合には波長によって反射率が変化している。このため、SiNの膜厚や樹脂のGapに応じて撮像素子に入る光の波長を制御することが望ましい。
【0184】
なお、撮像素子に入るスペクトルが400から800nmである場合には、この範囲のスペクトルの平均とReferenceの差によってコントラストが決まる。
【0185】
次に、位置合わせの方法について説明する。
【0186】
位置合わせにおいて、モールドのマークのコントラストが良いほどその精度が向上する。ここではモールドと基板を近づけながら位置合わせをする場合のマークの観察波長について説明する。なお、SiNは50nmであるとする。Gapが200nmの場合には、400から450nmの波長にてマークを観察する。更に近づいて、Gapが100nmでは、500から550nmの波長で観察する。さらに近づいてGapが50nmでは400から450nmの波長で観察する。当然、Gapはこの他の値であっても最適な波長で観察する。
【0187】
波長を選択する方法としては、色フィルターを用いる方法や、複数のレーザー光を用いる方法がある。なお、色フィルターは照明光学系側に配置しても、撮像素子側に配置しても良い。
【0188】
上述の実施形態1から3において説明した発明に、本実施形態にて説明した概念を導入することも好ましい態様である。
【0189】
例えば、既述の実施形態1から3において、波長フィルターを通して、撮像素子に光情報を入力する場合に、ギャップに応じて、波長フィルタの透過波長帯域を変更することで、常時コントラストの高い像情報を得ることができる。
【0190】
また、モールドの加工面に形成されたパターンを基板表面の樹脂を硬化させることによって転写するインプリント装置において、以下の構成を有することは好ましい。具体的には、モールドを観察する撮像素子を有し、モールドと基板のギャップに応じて撮像素子に入射する波長を制御する手段を有する構成である。
【0191】
ここで、前記波長を制御する手段としては、色フィルターや複数の光源(例えば、複数の波長を出力可能な光源)により構成する。
【0192】
(その他の実施形態)
以下の実施形態においては、つぎのような構成を採ることができる。
【0193】
すなわち、モールドの加工面にある第1の物体位置とモールドの加工面より被加工部材側にある第2の物体位置を観察する光学系を含み、
前記第1の物体位置を観察する第1の撮像素子と前記第2の物体位置を観察する第2の撮像素子との間の相対的な観察位置関係を認識する手段を用いることによって、モールドと被加工部材の位置合わせを行うように構成することができる。
【0194】
その際、前記観察位置の差を認識する手段として、基準基板を用いる構成を採ることができる。
【0195】
また、前記第1および第2の撮像素子によって予め撮像したデーターと第1および第2の撮像素子で撮像するデーターを比較することによって、モールドと被加工部材の位置合わせを行う構成を採ることができる。
【0196】
また、前記第1および第2の撮像素子の中にあるいくつかの領域をそれぞれ比較することによってモールドと被加工部材の位置合わせを行う構成を採ることができる。
【0197】
また、その他の実施の形態においては、上記新規なパターン転写による加工方法を実現するため、つぎのような構成を採ることができる。
【0198】
すなわち、モールドの加工面にある第1の物体位置とモールドの加工面に対し被加工部材側にある第2の物体位置を観察する光学系を含む。
【0199】
そして、前記第1の物体位置を観察する第1の撮像素子と前記第2の物体位置を観察する第2の撮像素子との間の相対的な観察位置関係を認識する手段を用いることによってモールドと被加工部材の位置合わせを行うように構成することができる。
【0200】
その際、前記観察位置の差を認識する手段として、基準基板を用いる構成を採ることができる。
【0201】
また、前記基準基板によって観察位置の差を認識する工程、前記第2の物体位置で被加工部材とモールドの位置合わせを行う工程を含む構成を採ることができる。また、前記第1および第2の撮像素子によって予め撮像したデーターと第1および第2の撮像素子で撮像するデーターを比較することによってモールドと被加工部材の位置合わせを行う構成を採ることができる。
【0202】
また、前記撮像素子の中にあるいくつかの領域を切り出す工程、それぞれの領域で信号処理を行う工程、該信号処理結果を元にさらに信号処理を含む構成を採ることができる。
【0203】
また、前記位置合わせのマークとして異なるピッチのグレーティングを用い、第1および第2の撮像素子によって撮像したデーターを重ね合わせる信号処理することによって発生するモアレ縞を利用する構成を採ることができる。
【0204】
上記したその他の実施の形態によれば、モールドと基板の2つの物体位置を同軸で観察する光学系を用い、2つの物体位置におけるそれぞれの撮像範囲の相対的位置関係を基準基板によって計測する。そして、その結果を利用してモールドと基板の位置合わせを行うことができる。
【0205】
これにより、モールドと基板が離れた状態で位置合わせすることができ、モールドおよび基板にダメージを与えることなく、高速でモールドと基板の位置合わせをすることが可能となる。
【0206】
また、モールドと基板のマークを法線方向から観察した場合に別の領域とすることにより、モールドと基板のマークの干渉が起こらず、信号処理が容易となる。
【0207】
また、本発明に係るパターン転写装置を以下のように構成することもできる。ここでいう装置とは、モールドに形成されている凹凸パターンを、基板あるいは基板と該モールド間に介在する樹脂に転写するためのパターン転写装置である。そして、第1の焦点深度における画像を取得するための第1の撮像部と、第2の焦点深度における画像を取得するための第2の撮像部とを備えている。
【0208】
まず、該モールドが有する第1のアライメントマークと、該基板が有する第2のアライメントマークとを該第1の焦点深度内に配置し、該第1の撮像部で観察して第1の画像を取得する。更に、該モールドあるいは該基板が有する第3のアライメントマークを該第2の焦点深度内に配置し、該第2の撮像部で観察して第2の画像を取得する。
【0209】
そして、該第1及び第2の画像を用いて、該第1及び第2の撮像部の観察範囲の差に関する情報を取得するように構成する。
【0210】
ここで、第3のアライメントマークは、第1あるいは第2のアライメントマークと同一のものであっても、別のマークであっても良い。
【0211】
また、前記第1の焦点深度内に前記モールドのアライメントマークを配置し、前記第2の焦点深度内に被転写基板のアライメントマークを配置し、該モールドと該被転写基板との面内方向の位置合わせを行うこともできる。
【0212】
また、前記第2の焦点深度内に前記モールドのアライメントマークを配置し、前記第1の焦点深度内に被転写基板のアライメントマークを配置し、該モールドと該被転写基板との面内方向の位置合わせを行うこともできる。
【0213】
更に、別の実施形態に係る位置合わせ方法として、以下の方法がある。具体的には、撮像素子を用いて、2つの部材の位置合わせを行う位置合わせ方法であり、まず、第1のアライメントマークを有する第1の部材と、第2のアライメントマークを有する第2の部材とを対向させて配置する。そして、撮像素子が観測する撮像エリア内の第1の領域で、前記第1のアライメントマークに関する第1の画像情報を取得する。そして、前記撮像素子が観測する撮像エリア内であって、且つ前記第1の領域とは異なる第2の領域で、前記第2のアライメントマークに関する第2の画像情報を取得する。2つの画像情報の取得の順番は特に限定されるものではない。次に、前記第1の画像情報と前記第2の画像情報とを演算処理し、前記演算処理により出力される出力情報を用いて、2つの部材の位置合わせを行うのである。演算処理に関しては、既述の様々な演算方法を用いることができる。
【0214】
なお、前記演算処理を行なう際には、前記第1の領域と前記第2の領域との重なっていない箇所における前記第1及び第2の画像情報を用いて行うことが好ましい。前記第1の部材と第2の部材としては、平板状の部材が好適であるが、種々の凹凸や曲面を持った部材もそれを保持して移動させることが可能であるならば特に限定されるものではない。
【0215】
更にまた、別の実施形態に係る位置合わせ方法として、以下の方法がある。具体的には、撮像素子を用いて、2つの平板状物体の位置合わせを行う位置合わせ方法である。まず、アライメントマークとして、ピッチP1からなる第1の周期構造を有する第1の平板状物体と、ピッチP2からなる第2の周期構造を有する第2の平板状物体とを対向させて配置する。
【0216】
そして、撮像素子が観測する撮像エリア内の互いに重ならない位置である第1及び第2の領域を前記撮像素子を用いて撮像する。実際には、2つの前記平板状物体の面内方向に略垂直な方向から、前記第1及び第2の周期構造を、それぞれ前記第1及び第2の領域内で撮像する。なお、既述のように2つの領域において重なっていない領域があればよいが、好ましくは、完全に2つの領域を重ならないようにする。
【0217】
そして、撮像して得られる画像情報を演算することによって、前記第1の平板状物体と第2の平板状物体との相対的な位置に関する位置情報を取得する。この前記位置情報を用いて、前記第1の平板状物体と前記第2の平板状物体の面内方向の位置合わせを行う。演算処理に関しては、既述の様々な演算方法を用いることができる。演算に際して、既述の実施例においては、基本周波数を画像情報から抽出することを述べているが、ピッチP1とP2に関する値は、撮像されて得られる画像データから抽出するのではなく、予め仕様書や設計書において与えられている情報を用いても良い。斯かる場合は、画像データから位置のズレ情報(δ)を取得して、当該δが所定の値(例えばゼロ)になるように位置合わせを行なっていく。
【0218】
〔参照実施例〕
以下に、上述した本発明に適用できる参照実施例について説明する。
【0219】
[参照実施例1]
参照実施例1においては、モールドと基板の位置合わせ方法の例について説明する。
【0220】
図12に、本参照実施例における基準基板を用いたモールドと基板の位置合わせ方法を説明する図を示す。
【0221】
図12において、101は第1の物体位置、102は第2の物体位置、103はモールド、104はモールドマークである。
【0222】
110は基準基板、111は基準基板マーク、112は基板、113は基板マークである。
【0223】
本参照実施例の位置合わせ方法においては、モールド103の加工面にある第1の物体位置101と、加工面に対し基板112側にある第2の物体位置102を観察する光学系を用いる。
【0224】
これによって、それぞれモールドマーク104と基板マーク113を同時に観察できるようになっている。
【0225】
なお、第1の物体位置101と第2の物体位置102は、例えば数マイクロメートル以上離れており、加工面に対し平行な面内に基板を高速に動かしても、モールドと基板は接触しない位置関係にある。
【0226】
図12(a)、(b)、(c)、(d)の各場合において、中央の図が、第1の物体位置101における第1の観察範囲106を示している。
【0227】
また、図12の右の図が、第2の物体位置102における第2の観察範囲107を示している。なお、第1の観察範囲106のうち撮像部分を第1の撮像範囲108、第2の観察範囲107のうち撮像部分を第2の撮像範囲109とする。
【0228】
また、図12の左の図が、第1の物体位置のA−A’におけるモールド103と基板112の断面を示している。
【0229】
一般に、このような2つの物体位置を観察する撮像素子を、ナノメートルの精度で同軸に配置することは容易ではなく、第1の観察範囲106と第2の観察範囲107の中心位置には差が発生する。また、それぞれの観察範囲と撮像範囲の間にも中心位置の差が発生する。さらに、第1の撮像範囲とモールドマークの中心位置にも差がある。最終的に位置合わせを行いたいのはモールドと基板であり、ここでは、モールドマークの中心に基板マークの中心を合わすこととする。なお、説明の簡便のために、第1の観察範囲、第1の撮像範囲は一致しており、第2の観察範囲と第2の撮像範囲は一致しているとする。この仮定をしても説明の一般性は失われない。また、簡単のため、第1の観察範囲と第2の観察範囲の中心位置はy方向のみずれているとする。
【0230】
なお、座標は第2の物体位置から第1の物体位置へ向かう向きをz方向の正の向きとする。
【0231】
本参照実施例の位置合わせ方法の概略を説明する。本方法では、モールドと基板の位置合わせを行うために、基準基板110を用いる。
【0232】
その手順は、以下の通りである。
(1)モールドと基準基板を第1の物体位置で面内移動機構を用いて合わせる(図12(a))
(2)基準基板をzの負の向きに移動させ、第2の物体位置で像を取得する(図12(b))
(3)第2の物体位置で、観察された像と基板を面内移動機構を用いて合わせる(図12(c))
(4)基板をzの正の向きに移動するだけで、第1の物体位置でモールドに基板が合う(図12(d))
ところで、同じ基板上にいくつものパターンを転写するステップアンドリピートのような場合には、基板の最初の一箇所で位置合わせをすればよい。その後は面内移動機構の精度(サブナノメートル)により繰り返し転写することができる。
【0233】
次に、詳細を説明する。第1の物体位置でモールドマークの所望の位置に基板マークを合わせるには、第2の物体位置において基板マークをどの位置配置することに相当するかを知ることが必要となる。この作業はモールドを交換した時にのみ行うようなものである。図12(a)は第1の物体位置101において、基準基板マーク111を、モールドマーク104に合わせこんだ状態を示す。この状態を実現する為の方法を次に説明する。モールドマーク104は第1の撮像範囲の中心にあるものとする。基板を基板保持部に配置し、面内移動機構を使って、基準基板マークの中心をモールドマークに合わせこむことができる。
【0234】
この時の位置合わせは面内移動機構を用いることによりナノメートルの精度で行うことが可能である。
【0235】
なお、この時、第2の物体位置102の像を特に使う必要は無い。
【0236】
次に、図12(b)に示すように基準基板を、基板昇降機構を使ってzの負の向きに移動し、基準基板マーク111が第2の物体位置102に入るようにする。その間xy方向に基準基板はずれない。
【0237】
この状態では、第2の物体位置102において基準基板マークが観察され、この状態を撮像し、記憶する。なお、この時第1の物体位置101の像を特に使う必要は無い。
【0238】
次に図12(c)及び(d)を使って、モールドと基板との位置合わせの方法を説明する。これは新たな基板を配置するごとに行う操作である。
【0239】
まず、図12の(c)において、基板112の配置された基板保持部を面内移動機構によってモールド103に対向する指定位置(これをF1−1とする)に配置する。
【0240】
この時、第2の物体位置に基板マーク113が観察される。この基板マークの中心を図12(b)の第2の物体位置102において観察した基準基板マーク111の中心になるように面内移動機構を使って位置合わせを行う。
【0241】
この位置合わせはモールドと基板が離れた状態であるため高速に行うことができる。
【0242】
この時の基板保持部の指定位置(F1−1)と位置合わせが終了した時の基板保持部の位置(これをS1−1とする)の差(これをE1−1とする)を記憶する。なお、この時特に第1の物体位置101の像を特に使う必要は無い。
【0243】
次に、図12(d)に示すように、基板112をzの正の向きに上昇させ、基板を第1の物体位置101に配置する。
【0244】
この時、基本的にモールドと基板は位置合わせが終了している状態となっている。これ以降の同じ基板上の転写にはこのE1−1のずれがあることを前提として指定位置を設定してインプリントを行う。
【0245】
なお、この時特に第2の物体位置102の像を使う必要は無い。
【0246】
もし、図12(d)の第1の物体位置においてモールドと基板との位置にずれて許容範囲外である場合には、さらにモールドと基板を位置合わせすることもできる。この操作が必要な場合はモールドと基板が樹脂を介して接触するために応力を受け、モールドと基板の位置がずれるような時が考えられる。
【0247】
モールドと基板の位置ずれがある場合で、モールドと基板のずれが基板の位置に関係なく同じ量であれば、次の処理を行う。つまり、この時の基板保持部の指定位置(F1−1)と位置合わせが終了した時の基板保持部の位置(これをS1−2とする)の差(これをE1−2とする)を記憶する。
【0248】
この時(c)において第2の物体位置で位置合わせを行っているので、この値は大きなものとならない。
【0249】
これ以降の同じ基板上の転写にはこのE1−2のずれがあることを前提として、指定位置を設定してインプリントを行う。
【0250】
以上、基板のある1点におけるモールドと基板のずれ情報に基づいて、基板全面での位置合わせを実施する方法について述べたが、基板全面におけるずれ情報を予め測定しておき、そのずれ情報に基づいてモールドと基板の位置合わせを実施しても良い。
【0251】
次に、本参照実施例で用いる基準基板の構成について説明する。図13に、本参照実施例の基準基板の構成を示す。
【0252】
基準基板は転写される基板そのものを使うことも可能である。しかしながら、転写される基板の場合、プロセス中の歪みや個体間の差なども懸念されるため、安定した基準基板を使用する方が望ましい。
【0253】
図13(a)に示す基準基板は、四角い形状をした基準基板201上にモールドのパターン領域と同じ大きさの領域202が配置され、その四隅に基準基板マーク203が配置されて構成されている。
【0254】
図13(b)に示す基準基板は、円形の形状をした基準基板204で、転写する基板と同じサイズにより構成されている。
【0255】
基準基板上には基準基板マークのあるパターン領域205と基準基板マークのないパターン領域206がある。この構成においては基準基板マークのある位置で補正を行うことができる。
【0256】
図13(c)に示される基準基板は、転写される基板そのものを基準基板207として用いる場合である。この場合、全てにおいて補正を行っても良いし、図13(b)のようにいくつかの点で補正しても良い。
【0257】
次に、本参照実施例に用いる計測用光学系について説明する。
【0258】
図14に本参照実施例の計測用光学系の構成を示す。
【0259】
本実施例の計測用光学系においては、光源301から出た光は照明光学系302、第1のビームスプリッター303、第1の結像光学系304を通り、モールド309および基板312に到達する。
【0260】
これらで反射した光は、第1の結像光学系304、第1のビームスプリッター303、第2の結像光学系306を通り、第2のビームスプリッター305を経て第1の撮像素子307、第2の撮像素子308に結像する。
【0261】
第1の撮像素子307には第1の物体位置313の像が結像され、第2の撮像素子308には第2の物体位置314の像が結像される。
【0262】
ここでは、第1の撮像素子307にモールドマーク310、第2の撮像素子308に基板マーク311が結像している。
【0263】
次に、本実施例におけるモールドに形成されている凹凸パターンを基板あるいは該基板と該モールド間に介在する樹脂に転写するパターン転写装置を構成する加工装置について説明する。
【0264】
図15に、本参照実施例1における加工装置の構成例を示す。
【0265】
図15において、401は露光光源、402は鏡筒、403はモールド保持部、404は基板保持部、405は基板昇降機構(z)、406は面内移動機構(xy)である。
【0266】
407は図14の計測用光学系、408は撮像素子、409は解析機構である。
【0267】
モールド保持部403は、真空チャック方式等によってモールド411のチャッキングを行う。
【0268】
基板412は面内移動機構により所望の位置に移動することができ、基板昇降機構により高さの調整および加圧を行うことができる。
【0269】
なお、面内移動機構および基板昇降機構は、干渉計などによる距離計測がされており、制御精度はサブナノメートルとなっている。基板の位置移動、加圧、露光等の制御はインプリント制御機構410によって行う。
【0270】
[参照実施例2]
参照実施例2においては、参照実施例1とは異なる形態の、モールドと基板との位置合わせ方法について説明する。
【0271】
本実施例においては、参照実施例1と共通する部分の説明は省略し、差異のある部分について説明する。
【0272】
図16に、本参照実施例における、モールドと基板の位置合わせ方法を説明する図を示す。
【0273】
本参照実施例においては、基準基板の両面にそれぞれ第1の基準基板マーク506および第2の基準基板マーク504を配置し、基準基板505の光学的な厚さを第1の物体位置501と第2の物体位置503の距離と同じとしている。
【0274】
これにより、第1の物体面でモールドマークの所望の位置に基板マークを合わせるには、第2の物体面において基板マークをどの位置に移動すればよいかを以下に説明するように一度に知ることができる。
【0275】
図16(a)は、第1の物体位置501に基準基板505の第1の基準基板マーク506がある場合である。
【0276】
また、第2の基準基板マーク504は、第2の物体位置503にある。
【0277】
まず、基準基板を基板保持部(不図示)に配置し、面内移動機構によりモールドマーク507を基準として、第1の基準基板マーク506を第1の物体位置において位置合わせをする。
【0278】
このときの方法として例えば、第1の基準基板マークの中心とモールドマークの中心が一致するように合わせる。この時、第2の物体位置503には第2の基準基板マーク504があり、この時の像を記憶する。その後、基準基板を基板保持部から回収する。
【0279】
次に、基板を位置合わせする方法を説明する。
【0280】
これは基本的に参照実施例1と同様である。図16(b)において、基板の配置された基板保持部を、面内移動機構によりモールドに対向する指定位置(これをF2−1とする)に配置する。この時、第2の物体位置に第1の基板マーク514および第2の基板マーク515が観察される。この第1の基板マークの中心を図16(a)の第2の物体位置おいて観察した基準基板マークの中心になるように位置合わせを行う。この時の基板保持部の指定位置(F2−1)と位置合わせが完了した基板保持部の位置(これをS2−1とする)の差(これをE2−1とする)を記憶する。
【0281】
図16(c)は基板が配置された基板保持部を上昇させ、第1および第2の基板マーク514、515が第1の物体位置に配置された状態である。
【0282】
通常この状態で、モールドと基板の位置合わせは完了している。これ以降の同じ基板上の転写にはこのE2−1のずれがあることを前提として指定位置を設定してインプリントを行う。
【0283】
なお、参照実施例1と同様に、モールドと基板がずれて許容範囲外であるような場合においては、図16(c)で示される第1の物体位置にて、面内移動機構を使ってモールドマーク507を基準として第2の基板マーク515を合わせる。
【0284】
この時、図16(b)において第2の物体位置で位置合わせを行っているので大きなずれとはならない。
【0285】
指定位置(F2−1)と位置合わせが完了した基板保持部の位置(これをS2−2とする)の差(これをE2−2とする)を記憶する。これ以降の同じ基板上の転写にはこのE2−2のずれがあることを前提として指定位置を設定してインプリントを行う。
【0286】
[参照実施例3]
参照実施例3においては、参照実施例1とは画像の処理方法が異なる、モールドと基板の位置合わせ方法について説明する。
【0287】
本参照実施例においては、参照実施例1と共通する部分の説明は省略し、差異のある部分について説明する。
【0288】
図17に本実施例における信号処理方法を説明する図を示す。まず、基準基板613を第1の物体位置601で観察した場合を説明する。図17(a)に、基準基板613の基準基板マーク614が、第1の物体位置にある状態を示す。ここでは、第1の撮像領域608において、モールドマーク604を基準として、第1の領域A610がモールドマークを包含する領域として割り当てる。その後、ある間隔で第1の領域B611、第1の領域C612を割り当てる。基準基板マーク614は第1の領域Cに対して、面内移動機構で移動させることにより、位置合わせを行う。この時例えば、第1の領域Aと第1の領域Cを画像から切り出し、それぞれのコントラストを調整し、さらにそれらを重ね合わせるなどの信号処理を行って所望の位置に配置する。基準基板マーク614と第1の領域Cとの位置合わせが終了した後に、基板昇降機構を使って基準基板を第2の物体位置まで下げ、第2の物体位置603にて、基準基板マーク614を観察する。図17(b)に、基準基板の基準基板マークが第2の物体位置にある状態を示す。ここでは、第2の撮像領域609において、基準基板マーク614を基準として、第2の領域C617が基準基板マークを包含するように領域を割り当てる。その後、ある間隔で第2の領域B616,第2の領域A615を割り当てる。その後、基準基板を基板保持部から回収する。
【0289】
次に、基板の位置合わせする方法を説明する。
【0290】
図17(c)に、基板を第2物体位置で観察した場合を説明する図を示す。図17(c)において、基板の配置された基板保持部を、面内移動機構によりモールドに対向する指定位置(これをF3−1とする)に配置する。この時、第2の物体位置に基板マーク619が観察される。この時、第2の領域Bを画像から切り出し、図17(b)において取得した第2の領域Cの画像と重ね合わせることによって位置合わせを行う。この位置合わせはモールドと基板の接触がないため高速に行うことができる。なお、それぞれの画像は予めコントラストなどの信号処理を行っておく。次に、基板を第1物体位置で観察した場合を説明する。基板昇降機構により基板をzの正の向きに上昇させ、基板マークが第1の物体位置に配置された状態を図17(d)に示す。通常、この状態でモールドと基板の位置合わせは、終了しており、その位置ずれは許容範囲内であることが期待される。この時の基板保持部の指定位置(F3−1)と位置合わせ後の基板保持部の位置(これをS3−1とする)の差(これをE3−1とする)を記憶する。これ以降の同じ基板上の転写にはこのE3−1のずれがあることを前提として、指定位置を設定してインプリントを行う。
【0291】
なお、参照実施例1と同様に、モールドと基板がずれて許容範囲外となるような場合においては、モールドと基板が第1の物体位置において、最終的にモールドと基板を位置あわせする。この時、図17(c)において第2の物体位置で位置合わせを行っているので大きなずれとはならない。指定位置(F3−1)と位置合わせ後の基板保持部の位置(これをS3−2とする)差(これをE3−2とする)を記憶する。これ以降の同じ基板上の転写にはこのE3−2のずれがあることを前提として、指定位置を設定してインプリントを行う。
【0292】
このように、撮像素子の別々の領域を用いることの効果は、モールドおよび基板において反射率が異なるため、モールドと基板の画像を独立に信号処理することができるため、位置合わせの精度を上げやすくなることである。
【0293】
また、上下に重なり合わないために互いに干渉の影響を考慮する必要が無く、マークの自由度をあげることができる。
【0294】
次に、このようなマークの中で、モアレ縞を画像処理によって発生させることにより、高精度の位置合わせを行う方法について説明する。
【0295】
図18に、本参照実施例3におけるモアレ縞を画像処理して位置合わせを行う際に用いる位置合わせマークを説明する図を示す。
【0296】
図18(a)はピッチPのバーが並んだパターン701とピッチPのバーが並んだパターン702からなる第1のマークである。
【0297】
図18(b)はピッチPとピッチPの並びが(a)と逆の場合である第2のマークである。
【0298】
第1のマークと第2のマークを重ね合わせることによって、図18(c)のような合成像706を発生する。
【0299】
この合成像においては、左右のモアレ縞の位相が同じであり、モールドと基板の位置合わせが終了している状態を示している。
【0300】
なお、モールドと基板の位置合わせが終了していない状態においては、左右のモアレ縞の位相が異なる。ところで、モアレ縞の周期はピッチPで、次のような式で表される。
【0301】
【数6】

【0302】
このように、光学倍率を使わなくてもモールドと基板の位置ずれが拡大される。
【0303】
次に、XYθの位置合わせを行う第1のマークとして(d)、第2のマークとして(e)のように配置する。
【0304】
マークの第1領域および第3領域でy方向およびθ、マークの第2領域および第4領域でx方向およびθの位置合わせを行うことができる。(f)は位置合わせが終了した時の合成像である。
【0305】
以上で説明した本発明に係る技術は、半導体製造技術、フォトニッククリスタル等の光学素子やμ−TAS等のバイオチップの製造技術等として利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0306】
【図1】本発明を説明するための2つの平板状物体に設けられたアライメントマークの関係を示す図である。
【図2】本発明における計測光学系を説明する図である。(a)光学素子により撮像素子の各位置に到達する光を調整する構成を説明する図。(b)光源側の光学素子により撮像素子の各位置に到達する光を調整する構成を説明する図。
【図3】本発明における計測光学系を説明する図。(a)光量制御装置により光を調整する構成を説明する図。(b)回転式シャッターにより光を調整する構成を説明する図。
【図4】本発明のにおけるマークを説明する図である。(a)モールドマーク、(b)基板マーク、(c)周期構造のモールドマーク、(d)周期構造の基板マーク。
【図5】本発明に適用され得るモールドの構成の一例である。
【図6】本発明における信号処理方法を説明する図であり、(a)倍率補正のない場合、(b)倍率補正のある場合である。
【図7】本発明におけるインプリント方法を実施するための装置構成の例である。
【図8】撮像素子により、モールド側と基板側とに設けられているアライメントマークを観察した場合の画像の例である。
【図9】2つの領域におけるグレーティング像である。
【図10】本発明に係る信号処理の例を説明するための図である。
【図11】位相のズレを説明するための図である。
【図12】参照実施例1における基準基板を用いたモールドと基板の位置合わせ方法を説明する図。(a)は基準基板を第1物体位置に合わせ観察した場合を説明する図。(b)は基準基板を第2物体位置で観察した場合を説明する図。(c)は基板を第2物体位置で観察した場合を説明する図。(d)は基板を第1物体位置で観察した場合を説明する図。
【図13】参照実施例1における基準基板の構成を説明する図。
【図14】参照実施例1における計測用光学系を説明する図。
【図15】参照実施例1における加工装置を説明する図。
【図16】参照実施例2におけるモールドと基板の位置合わせ方法を説明する図。(a)は基準基板を観察した場合を説明する図。(b)は基板を第2物体位置で観察した場合を説明する図。(c)は基板を第1物体位置で観察した場合を説明する図。
【図17】参照実施例3における信号処理方法を説明する図。(a)は基準基板を第1物体位置で観察した場合を説明する図。(b)は基準基板を第2物体位置で観察した場合を説明する図。(c)は基板を第2物体位置で観察した場合を説明する図。(d)は基板を第1物体位置で観察した場合を説明する図。
【図18】本発明の実施例3における位置合わせマークを説明する図。(a)は1軸計測用の第1のマークを説明する図。(b)は1軸計測用の第2のマークを説明する図。(c)は1軸計測用の合成像を説明する図。(d)はXYθ計測用の第1のマークを説明する図。(e)はXYθ計測用の第2のマーク、(f)XYθ計測用の合成像を説明する図。
【図19】撮像素子入力される波長と光強度との関係を示したものである。
【図20】撮像素子入力される波長と光強度との関係を示したものである。
【符号の説明】
【0307】
101 第1の物体位置
102 第2の物体位置
103 モールド
104 モールドマーク
105 中心位置の差
106 第1の観察範囲
107 第2の観察範囲
108 第1の撮像範囲
109 第2の撮像範囲
110 基準基板
111 基準基板マーク
112 基板
113 基板マーク
201 基準基板
202 パターン領域
203 基準基板マーク
204 転写基板と同じサイズの基準基板
205 マークのあるパターン領域
206 マークの無いパターン領域
207 基板
208 パターン領域
301 光源
302 照明光学系
303 第1のビームスプリッター
304 第1の結像光学系
305 第2のビームスプリッター
306 第2の結像光学系
307 第1の撮像素子
308 第2の撮像素子
309 モールド
310 モールドマーク
311 基板マーク
312 基板
313 第1の物体位置
314 第2の物体位置
401 光源
402 鏡筒
403 モールド保持部
404 基板保持部
405 基板昇降機構
406 面内移動機構
407 計測用光学系
408 撮像素子
409 解析機構
410 インプリント制御機構
411 モールド
412 基板
501 第1の物体位置
502 モールド
503 第2の物体位置
504 第2の基準基板マーク
505 基準基板
506 第1の基準基板マーク
507 モールドマーク
508 撮像範囲の中心位置の差
509 第1の観察範囲
510 第1の撮像範囲
511 第2の観察範囲
512 第2の撮像範囲
513 基板
514 第1の基板マーク
515 第2の基板マーク
601 第1の物体位置
602 モールド
603 第2の物体位置
604 モールドマーク
605 第1の観察範囲
606 撮像範囲の中心位置の差
607 第2の観察範囲
608 第1の撮像領域
609 第2の撮像領域
610 第1の領域A
611 第1の領域B
612 第1の領域C
613 基準基板
614 基準基板マーク
615 第2の領域A
616 第2の領域B
617 第2の領域C
618 基板
619 基板マーク
701 ピッチPのパターン
702 ピッチPのパターン
703 第1のマーク
704 第2のマーク
705 モアレ縞
706 合成像
707 ピッチPのパターン
708 ピッチPのパターン
709 XYθ計測用の第1のマーク
710 マークの第1領域
711 マークの第2領域
712 マークの第3領域
713 マークの第4領域
714 XYθ計測用の第2のマーク
715 XYθ計測用のモアレ縞
716 XYθ計測用の合成像
803 領域で特性の異なる第1の光学素子
901 光量制御装置
902 回転式シャッター
1301 光源側の領域で特性の異なる光学素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と撮像素子を用いて、2つの平板状物体の位置合わせを行う位置合わせ方法であって、
第1のアライメントマークを有する第1の平板状物体と、第2のアライメントマークを有する第2の平板状物体とを対向させて配置し、
撮像素子が観測する撮像エリア内の互いに重ならない位置に、第1及び第2の領域を設けておき、
2つの前記平板状物体の面内方向に略垂直な方向から、前記第1及び第2のアライメントマークを前記撮像素子で撮像し、
前記第1の領域内の予め定められた位置からの前記第1のアライメントマークのズレに関する第1の情報と、前記第2の領域内の予め定められた位置からの前記第2のアライメントマークのズレに関する第2の情報とを用いて、前記第1の平板状物体と前記第2の平板状物体との面内方向の位置を合わせるための位置合わせ制御を行い、且つ
前記位置合わせ制御を行いながら、前記第1の平板状部材と前記第2の平板状部材とのギャップを狭くして、3μm以下のギャップになるように調整することを特徴とする位置合わせ方法。
【請求項2】
前記撮像素子で撮像される前記第1及び第2のアライメントマークの撮像画像は、それぞれコントラスト調整が行われていることを特徴とする請求項1に記載の位置合わせ方法。
【請求項3】
前記第1の領域及び第2の領域の面積が等しいことを特徴とする請求項1に記載の位置合わせ方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の物体の高さに起因した倍率変化に応じて、前記第1及び第2の領域で観察される画像の倍率補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の位置合わせ方法。
【請求項5】
前記光源を用いて、第1の光量で前記第1の領域を撮像し、該第1の光量とは異なる第2の光量で前記第2の領域を撮像することを特徴とする請求項1に記載の位置合わせ方法。
【請求項6】
請求項1に記載の位置合わせ方法を行うための位置合わせ装置であって、前記第1及び第2の平板状物体の少なくとも一方を面内方向に動かすための可動手段と、前記第1及び第2の平板状物体の少なくとも一方を面内方向に垂直方向に動かすための可動手段とを備えていることを特徴とする位置合わせ装置。
【請求項7】
撮像素子を用いて、2つの平板状物体の位置合わせを行って、一方の物体が有するインプリントパターンを、他方の物体あるいは他方の物体上のパターン形成層にインプリントするインプリント方法であって、
第1のアライメントマークを有する第1の平板状物体であるモールドと、第2のアライメントマークを有する第2の平板状物体である基板とを対向させて配置し、
撮像素子が観測する撮像エリア内の互いに重ならない位置に、第1及び第2の領域を設けておき、
2つの前記平板状物体の面内方向に略垂直な方向から、前記第1及び第2のアライメントマークを前記撮像素子で検出し、
前記第1の領域内の予め定められた位置からの前記第1のアライメントマークのズレに関する第1の情報と、前記第2の領域内の予め定められた位置からの前記第2のアライメントマークのズレに関する第2の情報とを用いて、前記第1の平板状物体と前記第2の平板状物体との面内方向の位置を合わせるための位置合わせ制御を行い、且つ
前記第2の平板状物体である基板、あるいはその上に設けられているパターン形成層に、前記第1の平板状物体であるモールドが有するインプリントパターンをインプリントすることを特徴とするインプリント方法。
【請求項8】
請求項7に記載のインプリント方法を行うインプリント装置であって、前記第1及び第2の平板状物体の少なくとも一方を面内方向に動かすための可動手段と、前記第1及び第2の平板状物体の少なくとも一方を面内方向に垂直方向に動かすための可動手段とを備えていることを特徴とするインプリント装置。
【請求項9】
撮像素子を用いて、2つの平板状物体の位置合わせを行う位置合わせ方法であって、
アライメントマークとして、ピッチP1からなる第1の周期構造を有する第1の平板状物体と、ピッチP2からなる第2の周期構造を有する第2の平板状物体とを対向させて配置し、
撮像素子が観測する撮像エリア内の互いに重ならない位置に、第1及び第2の領域を設けておき、
前記撮像素子を用いて、2つの前記平板状物体の面内方向に略垂直な方向から、前記第1及び第2の周期構造を、それぞれ前記第1及び第2の領域内で撮像し、
撮像して得られる画像情報から、前記第1及び第2の周期構造のそれぞれに対応した基本周波数を抽出し、それらを演算することによってモアレ縞成分を抽出し、該モアレ縞成分から取得される2つの平板状物体の面内方向の位置ずれに関する情報を用いて、前記第1の平板状物体と前記第2の平板状物体の面内方向の位置合わせを行うことを特徴とする位置合わせ方法。
【請求項10】
撮像素子を用いて、2つの物体の位置に関する計測する位置計測方法であって、
アライメントマークとして、ピッチP1からなる第1の周期構造を有する第1の物体と、ピッチP2からなる第2の周期構造を有する第2の物体とを対向させて配置し、
撮像素子が観測する撮像エリア内の互いに重ならない位置に、第1及び第2の領域を設けておき、
前記撮像素子を用いて、2つの前記物体の面内方向に略垂直な方向から、前記第1及び第2の周期構造を、それぞれ前記第1及び第2の領域内で撮像し、
撮像して得られる画像情報から、前記第1及び第2の周期構造のそれぞれに対応した基本周波数を抽出し、それらを演算することによってモアレ縞成分を抽出し、前記第1の物体と前記第2の物体の面内方向に関する位置計測を行うことを特徴とする位置計測方法。
【請求項11】
モールドの加工面に形成されたパターンを基板表面の樹脂を硬化させることによって転写するインプリント方法であって、該モールドに設けられているアライメントマークを撮像素子で観察する際に、該モールドと基板との間のギャップあるいは該アライメントマークを構成する部材の膜厚に応じて、該撮像素子に入射する光の波長を制御することを特徴とするインプリント方法。
【請求項12】
撮像素子を用いて、2つの部材の位置合わせを行う位置合わせ方法であって、
第1のアライメントマークを有する第1の部材と、第2のアライメントマークを有する第2の部材とを対向させて配置し、
撮像素子が観測する撮像エリア内の第1の領域で、前記第1のアライメントマークに関する第1の画像情報を取得し、
前記撮像素子が観測する撮像エリア内であって、且つ前記第1の領域とは異なる第2の領域で、前記第2のアライメントマークに関する第2の画像情報を取得し、
前記第1の画像情報と前記第2の画像情報とを演算処理し、
前記演算処理により出力される出力情報を用いて、2つの部材の位置合わせを行なう位置合わせ方法。
【請求項13】
前記演算処理は、
前記第1の領域と前記第2の領域との重なっていない箇所における前記第1及び第2の画像情報を用いて行なわれる請求項12記載の位置合わせ方法。
【請求項14】
撮像素子を用いて、2つの平板状物体の位置合わせを行う位置合わせ方法であって、
アライメントマークとして、ピッチP1からなる第1の周期構造を有する第1の平板状物体と、ピッチP2からなる第2の周期構造を有する第2の平板状物体とを対向させて配置し、
撮像素子が観測する撮像エリア内の互いに重ならない位置に、第1及び第2の領域を設けておき、
前記撮像素子を用いて、2つの前記平板状物体の面内方向に略垂直な方向から、前記第1及び第2の周期構造を、それぞれ前記第1及び第2の領域内で撮像し、
撮像して得られる画像情報を演算することによって、前記第1の平板状物体と第2の平板状物体との相対的な位置に関する位置情報を取得し、
前記位置情報を用いて、前記第1の平板状物体と前記第2の平板状物体の面内方向の位置合わせを行うことを特徴とする位置合わせ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−221822(P2008−221822A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108341(P2007−108341)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】