説明

作業機

【課題】フロートセンサを採用したもので、燃料残量が少なくなった時点での燃料残量を精度良く表示できるようにした燃料情報表示装置を備えた作業機を提供する。
【解決手段】燃料噴射量の積算値を算出する消費量演算手段23E、消費量演算手段23Eによる演算結果に基づいて燃料残量の情報を出力する残量検出手段23F、及び燃料残量の情報を表示する燃料情報表示装置を備え、フロートセンサ56で検出された燃料タンク12内の燃料残量が、フロートセンサ56で検出可能な範囲の下限又は下限近くに設定された基準所定量に達すると、フロートセンサ56で検出された燃料タンク12内の燃料残量から消費量演算手段23Eでの算出結果による燃料消費量を減算して得られた燃料残量を、燃料情報表示装置で表示するようにしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内における液面の変化を検出するフロートセンサを備えて燃料残量の表示を行うように構成されている作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタなどの作業機では、上記のように燃料タンク内の液面を検出するフロートセンサからの検出情報に基づいて燃料残量や作業可能時間の表示を行うようにしているが、燃料タンク内の液面の変化に追随するフロートの位置を検出するフロートセンサの特性として、燃料残量が残り少なくなると正確な残量が把握し難いものであるため、燃料残量が残り少なくなった時点で、燃費の演算結果から残りの作業可能時間を算出して表示するように構成した燃料情報表示装置を備えたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−30441号公報(公報明細書の第2頁左上欄〜左下欄、図2、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構造の燃料情報表示装置では、燃費を検出する際の初期燃料残量として満タン時の燃料を基準とするとともに、現時点での燃料残量をフロートセンサで検出して、単位時間当たりの燃料消費量(燃費)を算出することにより作業可能時間を表示するようにしている。しかしながら、燃費の算出のために検出される現時点の燃料残量が、燃料タンク内の液面の変化に追随するフロートの位置を検出するフロートセンサでの検出値であるため、燃料タンク内の液面の変化に追随しようとするフロートが機械的な下限位置近くに達して液面の変化に追随し難いような状況になると、精度の良い検出情報を得難いものであった。
【0005】
本発明は、フロートセンサを採用したものでありながら、燃料残量が少なくなった時点での燃料残量を精度良く表示できるようにした燃料情報表示装置を備えた作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために講じた本発明の技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
〔解決手段1〕
解決手段1にかかる発明では、燃料タンク内における液面の変化に追随して上下位置が変化するフロートと、そのフロートの上下位置変化を検出するフロートセンサとを前記燃料タンクに備え、エンジンに対する燃料供給量を制御する燃料噴射装置における燃料噴射量の積算値を算出する消費量演算手段を備えるとともに、前記フロートセンサでの検出結果、又は前記消費量演算手段による演算結果に基づいて燃料残量の情報を出力する残量検出手段、及びその残量検出手段から出力される燃料残量の情報を表示する燃料情報表示装置を備え、前記残量検出手段は、前記フロートセンサで検出された燃料タンク内の燃料残量が、前記フロートセンサによって検出可能な範囲における残量検出値の下限、又は下限近くに設定された基準所定量に達すると、前記フロートセンサで検出された燃料タンク内の燃料残量から前記消費量演算手段での算出結果による燃料消費量を減算して得られた燃料残量の情報を、前記燃料情報表示装置に対して出力するように構成されている点に特徴がある。
【0007】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段1にかかる本発明の構成によると、フロートセンサによる液面の直接的な検出を行うことができるので、燃料タンクに対する燃料の継ぎ足しや抜き取りがあっても支障なく燃料タンク内の燃料残量の検出を行うことができる。
そして、燃料残量が前記基準所定量に達したことがフロートセンサで検出されると、その基準所定量を基準にして、燃料噴射装置における燃料噴射量の積算値を減算することによって燃料残量が算出されるので、燃料タンク内における初期の燃料量や、フロートセンサによる検出範囲とは関係なく、フロートセンサでの検出範囲の下限よりも下方側での残り少ない燃料残量を精度良く表示することができる利点がある。
【0008】
〔解決手段2〕
解決手段2にかかる発明では、燃料タンク内における液面の変化に追随して上下位置が変化するフロートと、そのフロートの上下位置変化を検出するフロートセンサとを前記燃料タンクに備え、エンジンに対する燃料供給量を制御する燃料噴射装置における燃料噴射量の積算値を算出する消費量演算手段、及び前記フロートセンサで検出された燃料タンク内の燃料残量から前記消費量演算手段での算出結果による燃料消費量を減算して得られた燃料残量を燃費で除算して作業可能時間を算出する作業可能時間演算手段を備えるとともに、前記フロートセンサでの検出結果、又は前記作業可能時間演算手段による演算結果に基づいて燃料情報を表示する燃料情報表示装置を備え、前記作業可能時間演算手段は、前記フロートセンサで検出された燃料タンク内の燃料残量が、前記フロートセンサによって検出可能な範囲における残量検出値の下限、又は下限近くに設定された基準所定量に達すると、前記算出された作業可能時間の情報を前記燃料情報表示装置に対して出力するように構成してある点に特徴がある。
【0009】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記解決手段2にかかる本発明の構成によると、フロートセンサによる液面の直接的な検出を行うことができるので、燃料タンクに対する燃料の継ぎ足しや抜き取りがあっても支障なく燃料タンク内の燃料残量の検出を行うことができる。
そして、燃料残量が前記基準所定量に達したことがフロートセンサで検出されると、その基準所定量を基準にして、燃料噴射装置における燃料噴射量の積算値を減算して得られた燃料残量を燃費で除算して作業可能時間が算出されるので、燃料タンク内における初期の燃料量や、フロートセンサによる検出範囲とは関係なく、燃料残量がフロートセンサでの検出範囲の下限を下回るような残り少ない状態での作業可能時間を精度良く表示することができる利点がある。
【0010】
〔解決手段3〕
解決手段3にかかる発明では、前記作業可能時間演算手段は、前記燃料噴射装置における燃料噴射量の情報に基づいて燃費を演算する燃費演算手段からの燃費の変化情報に伴って、前記基準所定量以下での作業可能時間の修正値を出力するように構成してある点に特徴がある。
【0011】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
トラクタなどの作業機では、一定走行速度での作業を継続的に行う場合が多いので、エンジン回転数を一定範囲に維持するようにアクセルセットして用いられることがある。このような作業形態では、作業内容や作業負荷が変化した場合にアクセルセットをやり直してエンジン回転数の設定値を変化させることがある。
上記の解決手段3にかかる本発明の構成によると、エンジン回転数の設定値が変化したことなどに伴う燃料噴射装置における燃料噴射量の情報に基づいて燃費を演算する燃費演算手段から、燃費が変化したことの情報を受けることにより、燃費の変化が把握されるので、このような変化に即応して前記基準所定量以下での作業可能時間の修正値も正確に出力できるようになる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】制御系統を示すブロック図
【図3】メータパネルの平面図
【図4】燃料タンク部分を示す説明図
【図5】液晶表示部を示す説明図
【図6】液晶表示部を示す説明図
【図7】液晶表示部を示す説明図
【図8】液晶表示部を示す説明図
【図9】液晶表示部を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
【0014】
〔作業機の全体構成〕
図1は、本発明に係る作業機の一例であるトラクタを示している。
このトラクタは、機体前部側の原動部に水冷式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと略称する)1を配備してあり、このエンジン1が出力する回転動力を、電子油圧制御式の主クラッチ2を経由して走行伝動系と作業伝動系とに分配供給するように構成してある。
走行伝動系に供給した動力は、左右一対の前輪3と左右一対の後輪4とに伝達され、作業伝動系に供給した動力は、機体フレームに兼用するトランスミッションケース5の後端部に備えた動力取り出し用のPTO軸6に伝達されるように構成してある。
トラクタの後部には、搭乗運転部9を覆うキャビン10を装備してあり、このキャビン10内に前輪操舵用のステアリングホイール7や運転座席8などを配備して搭乗運転部9を形成している。
【0015】
図1及び図2に示すように、トランスミッションケース5の後部には、左右一対のリフトアーム19、左右のリフトアーム19を上下方向に揺動駆動する左右一対のリフトシリンダ20、及び、作業装置連結用のリンク機構21、などを装備してある。これにより、ロータリ耕耘装置やプラウなどの各種の作業装置(図示せず)を昇降可能に付け換え装備することができる。
【0016】
左右のリフトシリンダ20には単動型の油圧シリンダを採用してある。左右のリフトシリンダ20は、それらに対する作動油の流れを制御することにより伸縮作動させることができる。左右のリフトシリンダ20に対する作動油の流れは電磁制御弁22の作動により制御する。
【0017】
前記エンジン1が配備された原動部には、燃料タンク12が配設してある。この燃料タンク12には、図4に示すように、タンク内部の液面に浮揚するフロート55を、水平方向の横軸芯55a周りで揺動自在に支持されたステー55bの遊端側に装着させてあり、前記フロート55の液面変化に伴ってフロート55が上下に位置変化し、これに伴って前記ステー55bが前記横軸芯55a周りで揺動角度を変化させるように装着されている。
そして、燃料タンク12の液面変化に伴う前記フロート55の上下位置変化を、前記ステー55bの角度変化によって検出するポテンショメータからなるフロートセンサ56を備えてある。このフロートセンサ56では、前記フロート55の液面変化を、上限ULから下限DLに至る角度範囲内で検出できるように構成されている。
前記フロートセンサ56での検出結果を後述するメインECU23へ燃料残量の検出信号として出力するように構成してある。また、後輪4の駆動系には、図示しないが、後輪4へ駆動力を伝える後輪駆動軸の回転を検出する車速センサ53を備えている。
【0018】
〔エンジンECUの構成〕
図2に示すように、エンジン1には、燃料の噴射量や噴射タイミングを電子制御するコモンレール式の燃料噴射装置11を備えてある。燃料噴射装置11は、燃料タンク12に貯留した燃料を圧送するサプライポンプ13、圧送した燃料を蓄圧するコモンレール14、蓄圧した燃料を噴射する複数のインジェクタ15、コモンレール14の内圧を検出する圧力センサ16、エンジン1の出力回転数を検出する電磁ピックアップ式の回転センサ17、及び、前記圧力センサ16や回転センサ17などの出力に基づいてサプライポンプ13や各インジェクタ15などの作動を制御するエンジン用の電子制御ユニット(以下、エンジンECUと略称する)18、などを備えて構成してある。エンジンECU18は、CPUやEEPROMなどを備えたマイクロコンピュータを利用して構成してある。
【0019】
図2に示すように、エンジンECU18は、CAN通信などの車内通信によって、トラクタに搭載したメイン電子制御ユニット(以下、メインECUと略称する)23に相互通信可能に接続してある。これにより、エンジンECU18は、搭乗運転部9に備えた自己復帰型のアクセルペダル24の操作位置を検出するペダルセンサ25の出力、搭乗運転部9に備えてある操作位置を位置保持可能に構成されたアクセルレバー26の操作位置を検出する第1レバーセンサ27の出力、及び、エンジン回転数の上限を設定するダイヤル式の上限設定器28の出力、などをメインECU23から受け取ることができる。又、メインECU23は、エンジンECU18が各インジェクタ15に指示する燃料噴射量、及び、回転センサ17の出力、などをエンジンECU18から受け取ることができる。
【0020】
そして、ペダルセンサ25の出力、第1レバーセンサ27の出力、及び、上限設定器28の出力、などに基づいてエンジン1の目標回転数を設定し、この目標回転数に回転センサ17の出力が一致するように、サプライポンプ13や各インジェクタ15などの作動を制御して燃料噴射量を調節することにより、エンジン回転数を制御する。
【0021】
〔メインECUの構成〕
メインECU23は、CPUやEEPROMなどを備えたマイクロコンピュータを利用して構成してある。メインECU23には、走行用制御手段23Aや作業用制御手段23Bなどを制御プログラムとして備えてある。
【0022】
走行用制御手段23Aは、副変速装置(図示せず)の作動を制御する副変速制御、主変速装置(図示せず)の作動を制御する主変速制御、及び、前後進切換装置(図示せず)の作動を制御する前後進切換制御、などを行なう。
【0023】
副変速制御では、搭乗運転部9に備えた変速レバー29の操作位置を検出する第2レバーセンサ30の出力に基づいて、変速レバー29の操作位置に応じた副変速装置の作動状態が得られるように副変速装置の作動を制御する。
【0024】
主変速制御では、変速レバー29に備えた増速スイッチ31及び減速スイッチ32の操作に基づいて、増速スイッチ31及び減速スイッチ32の操作回数に応じた主変速装置の変速作動状態が得られるように主変速装置の作動を制御する。
【0025】
前後進切換制御では、搭乗運転部9に備えた前後進切換レバー33の操作位置を検出する第3レバーセンサ34の出力に基づいて、前後進切換レバー33の操作位置に応じた前後進切換装置の作動状態が得られるように前後進切換装置の作動を制御する。
【0026】
作業用制御手段23Bは、作業用クラッチ(図示せず)及び作業用変速装置(図示せず)の作動を制御するPTO変速制御、及び、リフトシリンダ20の作動を制御して作業装置を昇降させる昇降制御、などを行なう。
【0027】
PTO変速制御では、搭乗運転部9に備えたダイヤル式のPTOスイッチ35の出力、及びPTO軸6の回転数を検出するPTO回転検出センサ36の出力に基づいて、PTOスイッチ35の操作位置に応じたPTO軸6の回転数を得られるように前記作業用変速装置の作動を制御する。
【0028】
昇降制御では、搭乗運転部9に備えた昇降レバー37の操作位置を検出する第4レバーセンサ38の出力と、リフトアーム19の上下揺動角度を検出するアームセンサ19aの出力とに基づいて、昇降レバー37の操作位置に応じたリフトアーム19の上下揺動角度(作業装置の高さ位置)が得られるようにリフトシリンダ20の作動を制御する周知のポジション制御などを行なう。
【0029】
また、メインECU23には、エンジン1の稼働時間を計測するタイマ23C、燃費を演算する燃費演算手段23D、燃料の消費量を演算する消費量演算手段23E、燃料残量を検出するための残量検出手段23F、及び残り作業可能時間を演算する作業可能時間演算手段23Gなどを制御プログラムとして備えてある。
【0030】
タイマ23Cは、回転センサ17の出力に基づいてエンジン1の稼働及び稼働停止を検知し、エンジン回転数が設定回転数(例えば100回転)以上である場合にエンジン1の稼働時間をカウントする。
【0031】
前記燃費演算手段23Dは、エンジンECU18が出力する燃料噴射量や回転センサ17の出力、及び、EEPROMに記憶した瞬間燃費算出用の各種の数値、などを瞬間燃費算出用の計算式に代入して算出した値に、所定の時定数(例えば200ms)によるローパスフィルタ処理を行なうことにより、瞬間燃費を得る瞬間燃費算出処理を行なう。又、この瞬間燃費算出処理により得た瞬間燃費、タイマ23Cの出力、及び、EEPROMに記憶した平均燃費算出用の各種の数値、などを所定の計算式に代入して平均燃費(単位時間当たりの燃料消費量)を算出する平均燃費算出処理を行なう。
【0032】
前記消費量演算手段23Eは、燃料噴射装置11におけるインジェクタ15の一回の開弁で噴射される燃料噴射量や回転センサ17のエンジン回転数の出力情報をエンジンECU18から受け取って、前記燃料噴射量を積算することにより燃料消費量を演算するように構成してある。この消費量演算手段23Eによる燃料消費量の演算は、燃料残量に関係なくエンジン回転数が設定回転数以上となった稼働開始時点から開始される。
【0033】
前記残量検出手段23Fは、フロートセンサ56で検出された燃料残量が予め設定された基準所定量MLよりも多い場合はそのフロートセンサ56による検出値を燃料残量として出力し、前記フロートセンサ56で検出された燃料残量が予め設定された基準所定量MLに達すると、その基準所定量MLに達した時点からの前記消費量演算手段23Eで演算された燃料消費量を、前記基準所定量MLから減算して燃料残量として出力するように構成されている。
すなわち、燃料残量が前記基準所定量MLに達したことの検出信号がフロートセンサ56で検出されるまでは、前記消費量演算手段23Eでの燃料消費量の情報とは関係なく、前記フロートセンサ56での検出結果がそのまま燃料残量として検出され、その検出値が後述する表示ECU44に出力される。
そして、燃料残量が前記基準所定量MLに達したことの検出信号がフロートセンサ56で検出されると、その基準所定量MLに達した時点における燃料残量が、予め設定された燃料残量(この実施形態では一例として10リッターに設定してある)として記憶されているので、その基準所定量MLとして記憶された燃料残量を後述する表示ECU44に出力し、燃料残量が前記基準所定量MLを下回ると、前記基準所定量MLとして記憶された燃料残量から、その基準所定量MLに達した時点における前記消費量演算手段23Eで演算された燃料消費量と、現時点における前記消費量演算手段23Eで演算された燃料消費量との差分を減算した値を燃料残量として前記表示ECU44に出力するように構成してある。
【0034】
前記作業可能時間演算手段23Gは、前記残量検出手段23Eから出力される燃料残量の出力値を、前記燃費演算手段23Dから出力される燃費(平均燃費)で除算して作業可能時間を算出するように構成されている。
【0035】
〔メータパネルの構成〕
図2及び図3に示すように、搭乗運転部9におけるステアリングホール7の前下方の位置にはメータパネル39を配備してある。メータパネル39には、エンジン回転数を表示するタコメータ40、燃料の残量を表示する燃料計41、エンジン冷却水の温度を表示する水温計42、主変速装置の変速段や副変速装置の変速段などを表示する液晶表示部43、及び、これらの作動を制御する制御手段としての表示用の電子制御ユニット(以下、表示ECUと略称する)44、などを備えてある。
【0036】
液晶表示部43には、図6乃至図9に示すように、主変速装置の変速段を文字表示する主変速段表示領域45、副変速装置の変速段を文字表示する副変速段表示領域46、前後進切換装置の状態を文字表示する前後進表示領域47、現在時刻を表示する時刻表示領域48、走行速度を数値化して表示する速度表示領域49、PTO軸6の回転数を表示するPTO回転数表示領域50、燃料残量、または作業可能時間を表示する燃料情報表示領域(燃料情報表示装置に相当する)51などを設けて、各種の情報を文字、又は記号で表示するように構成してある。
【0037】
〔表示ECUの構成〕
表示ECU44は、CAN通信などの車内通信によってエンジンECU18やメインECU23などに相互通信可能に接続してある。
これにより、表示ECU44は、図2に示すように、回転センサ17の出力、各レバーセンサ30,34の出力、増速スイッチ31の出力、減速スイッチ32の出力、PTO回転検出センサ36の出力、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサ52、車速センサ53、及びメインECU23の残量検出手段23F、及び作業可能時間演算手段23Gからの出力情報を受け取ることができるように構成されている。
【0038】
前記表示ECU44は、メータパネル39の各表示箇所に対して表示指令を出力する表示出力手段44Aと、表示箇所に表示される内容を、残量検出手段23Fによる残量情報、及び作業可能時間演算手段23Gからの出力情報に基づいて切換表示する表示切換手段44B、ならびにタイマ44Cを備えている。
【0039】
前記表示出力手段44Aは、回転センサ17の出力に基づいてタコメータ40で表示するエンジン回転数情報を出力し、フロートセンサ56の出力に基づいて燃料計41で表示する燃料の残量情報を出力し、水温センサ52の出力に基づいて水温計42で表示する冷却水の温度情報を出力する。
前記液晶表示部43に対しては、増速スイッチ31及び減速スイッチ32の出力に基づいて主変速段表示領域45により表示する主変速装置の変速段情報を出力し、第2レバーセンサ30の出力に基づいて副変速段表示領域46により表示する副変速装置の変速位置情報を出力し、第3レバーセンサ34の出力に基づいて前後進表示領域47により表示する前後進切換装置の切換情報を出力し、PTO回転検出センサ36の出力に基づいてPTO回転数表示領域50でのPTO軸6の回転数情報を出力し、前記フロートセンサ56及び残量検出手段23F、あるいは作業可能時間演算手段23Gの出力に基づいて燃料情報表示領域51に対して、燃料残量、あるいは作業可能時間を出力するように構成してある。
この表示出力手段44Aでの燃料残量の表示単位は1リッターであり、1リッター変化する毎に数値で表示し、作業可能時間は、0.2時間単位で数値で表示する。
【0040】
前記表示切換手段44Bは、燃料情報表示領域51で作業可能時間のみを表示する第1表示状態と、燃料残量と作業可能時間とを表示する第2表示状態とに表示状態を切換表示するものであるが、前記残量検出手段23Fによる燃料残量が基準所定量ML以上である場合には、原則として前記燃料情報表示領域51では燃料残量の表示は行わず、作業可能時間演算手段23Gの出力に基づく作業可能時間のみが表示される。
メインECU23の残量検出手段23Fで予め設定されている燃料残量の基準所定量MLは、燃料タンク12内に設けたフロート55の液面変化を検出するフロートセンサ56によって検出可能な範囲(上限ULと下限DLとの間)内における残量検出値の下限DL近くに設定すればよく、この実施形態では前述したように10リッターに設定してある。燃料残量が基準所定量ML以上であるときの燃料残量の情報は、前記フロートセンサ56の検出値に基づくメータパネル39の燃料計41の表示、また後述する押しボタンスイッチ54の操作によって得ることができる。
そして、前記残量検出手段23Fによる燃料残量が基準所定量MLを下回ると、前記燃料情報表示領域51は、前記作業可能時間とともに燃料残量が数値で表示されるところの、第2表示状態に表示状態を切り換えるように構成してある。このとき、図示しないが前記燃料情報表示領域51とは別の箇所でメータパネル39の適所に、給油を促すランプの点灯、もしくは文字の表示を行うようにしてもよい。
【0041】
また、前記表示切換手段44Bによる燃料情報表示領域51での表示内容は、通常は上記のように残量検出手段23Fによる燃料残量情報に基づいて切り換えられるが、これに優先して、メータパネル39の左下方に備えた押しボタンスイッチ54の押し操作によっても人為的に切換操作することができる。
つまり、燃料残量が基準所定量ML以上である場合には、基本的には前記表示切換手段44Bは、燃料情報表示領域51で作業可能時間のみを表示するように第1表示状態に切り換えられているが、前記押しボタンスイッチ54が押し操作されると一時的に第2表示状態に切換操作され、前記燃料情報表示領域51に作業可能時間とともに燃料残量が表示され、タイマ44Cで予め設定されている所定時間が過ぎると自動的に元の表示状態(第1表示状態)に復元するように構成してある。
燃料残量が基準所定量MLを下回ると、基本的には前記表示切換手段44Bは、燃料情報表示領域51で作業可能時間とともに燃料残量を表示するように第2表示状態に切り換えられているが、前記押しボタンスイッチ54が押し操作されると一時的に第1表示状態に切換操作され、前記燃料情報表示領域51に作業可能時間のみが表示され、タイマ44Cで予め設定されている所定時間が過ぎると自動的に元の表示状態(第2表示状態)に復元するように構成してある。
すなわち、燃料残量が基準所定量ML以上であるか下回っているかに拘わらず、前記押しボタンスイッチ54が押し操作される都度、作業可能時間のみを表示する第1表示状態と、燃料残量と作業可能時間とを表示する第2表示状態とに交互に切換表示されるように構成してあり、所定時間が過ぎると自動的に元の表示状態に復元するように構成してある。
【0042】
上記の燃料情報表示領域51に表示される燃料情報の表示は、前記表示出力手段44A及び前記表示切換手段44Bによって、図5及び図6に示すようにして行われる。
すなわち、燃料タンク12に備えたフロート55がタンク内の上部に位置しているような、基準所定量ML以上であることがフロートセンサ56で検出されている場合には、メインECU23の作業可能時間演算手段23Gの出力に基づいて、前記燃料情報表示領域51は作業可能時間のみを表示する第1表示状態(図5参照)となるように制御される。
この場合、燃料の給油直後などでは、作業可能時間演算手段23Gによる正確な情報が得られない虞があるので、この場合には、図示しない燃料タンク12の開閉を検出するセンサの検出結果に基づいて、燃料タンク12の蓋が閉じられてから所定時間だけ、過去の平均燃費から推定して作業可能時間を算出するように、前記作業可能時間演算手段23Gが構成され、その過去の平均燃費から推定して算出された作業可能時間を燃料情報表示領域51に表示するように構成されている。
【0043】
〔表示切換〕
燃料タンク12に備えたフロート55が燃料の消費に伴ってタンク内の下部近くに位置して、基準所定量MLに達したことがフロートセンサ56で検出されると、メインECU23の残量検出手段23F、及び作業可能時間演算手段23Gの出力に基づいて、前記燃料情報表示領域51では、燃料残量と作業可能時間とを表示する第2表示状態(図6参照)となるように制御される。
燃料残量が前記基準所定量MLからさらに減少して、残量が例えば3リッター程度の第1設定残量になると、前記燃料情報表示領域51では、燃料残量を表示していた箇所に「給油してください」と給油を促す文字を表示する状態となる。この状態でも作業可能時間が表示されていた箇所では、そのまま作業可能時間の表示が継続される。
そして、前記押しボタンスイッチ54が押し操作されると、その都度、前記「給油してください」と給油を促す文字を表示する状態と、燃料残量が表示される第2状態とに、交互に切換表示されるように構成してある。
【0044】
更に燃料が減少して、残量検出手段23Fによる燃料残量の検出値が例えば残り1リッター程度の第2設定残量になると計測誤差を考慮して燃料残量、及び作業可能時間の表示は、数値を表示せず空白を表示する(図8参照)。
【0045】
上記のフロートセンサ56による燃料タンク12内の液面の検出は、燃料が満杯の状態(上限UL)から、フロート55が動作可能な範囲の下限DL位置に達するまでの間で行うことできるように構成してあり、このフロートセンサ56で検出される燃料残量の検出結果は前記メータパネル39の燃料計41によってFULLからEMPTYまで表示される。この実施形態では、前記フロート55が動作可能な範囲の下限DLを、燃料タンク12内の燃料残量が、前記第1設定残量と同程度、もしくは少し上回る程度の3.5リッターに設定してある。
【0046】
前記作業可能時間演算手段23Gによる作業可能時間の演算は、燃費の増減によって演算結果が異なるので、燃費の増減変化に伴って作業時間が変化するように演算するものであるが、その演算結果の表示は次のようにして表示している。
つまり、アクセルレバー26によってアクセル位置が変更された場合には、そのアクセル状態を維持した運転が継続的になされる可能性が高いので、そのアクセルレバー26によるアクセル操作が行われたとき、直ちに変化した燃費に基づいて作業可能時間の演算を行い、その演算結果を直ちに燃料情報表示領域51に表示するように構成してある。
【0047】
しかし、一時的な負荷の増減や一時的なアクセルペダル24の踏み込みなどによって短時間の間での燃費の増減が生じても、そのような燃費の変化が一時的なもので安定していない可能性が高い場合には、作業可能時間の表示が頻繁に切換表示されないように構成してある。
つまり、一時的な負荷の増減や一時的なアクセルペダル24の踏み込みなどよってエンジン回転数が変化し瞬間燃費が変化しても、予め設定された所定時間の間は燃料情報表示領域51での作業可能時間の表示を変化させず、所定時間経過後で平均燃費が変化した場合に燃料情報表示領域51での作業可能時間の表示を変化させるようにしているので、作業可能時間が頻繁に変化して見難くなることを回避できるようにしてある。
【0048】
〔その他〕
メインECU23及び表示ECU44は、キースイッチ57のオフ操作に基づいて作動停止する際には、それまでに算出したエンジン1の総稼働時間、リセット後のエンジン1の稼働時間、平均燃費又はリセット後の平均燃費、及び、燃料の使用量又はリセット後の燃料使用量をEEPROMに書き込み保存する書き込み処理を行なう。
【0049】
そして、図2、図5、及び図6に示すように、メインECU23及び表示ECU44は、メータパネル39の近くに備えたキースイッチ57のオン操作により起動すると、EEPROMに書き込まれている各種の情報を読み出し、メータパネル39及び液晶表示部43の情報表示領域49に表示させる。
【0050】
このとき、エンジンスタート時にフロートセンサ56による燃料残量の検出値が前記基準所定量MLを下回っている場合には、燃料残量が正確に検出されない場合があるので、残量表示、及び作業可能時間の表示をせずにアスタリスクを表示するようにしてある(図7参照)。
また、キースイッチ57がON操作されているだけでエンジンが始動されていない状態、あるいは、キースイッチ57がOFF操作されている時にも、残量表示、及び作業可能時間の表示をせずにアスタリスクを表示するようにしてもよい。
【0051】
表示ECU44に対して、エンジンECU18やメインECU23とのCAN通信などによる車内通信が途絶えた場合には、前記燃料情報表示領域51には、残量表示、及び作業可能時間の表示をせずにバー表示をするようにしてある(図9参照)。
【0052】
〔別実施形態の1〕
上記実施形態では、残量検出手段23Fによる燃料残量が基準所定量MLを下回ると、燃料情報表示領域51に、作業可能時間とともに、燃料残量を数値で表示する第2表示状態に表示状態を切り換えるように構成したものであるが、これに限らず、例えば第2表示状態として燃料残量のみを表示するようにしてもよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0053】
〔別実施形態の2〕
上記実施形態では、残量検出手段23Fによる燃料残量が基準所定量MLを下回ると、燃料情報表示領域51に、作業可能時間とともに、燃料残量を数値で表示する第2表示状態に表示状態を切り換えるように構成したものであるが、これに限らず、例えば第1表示状態、第2表示状態の区別なく作業可能時間のみを表示するようにしてもよい。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0054】
〔別実施形態の3〕
上記の実施形態では、基準所定量MLをフロートセンサ56による検出範囲の下限DL位置よりも上方側に設定して、基準所定量MLに達すると直ちに、燃料残量の表示を基準所定量MLから減算した演算結果で表示するようにしたものであるが、これに限らず、フロートセンサ56が検出可能な範囲の下限DLに達するまではフロートセンサ56による実測値を表示し、下限DLに達すると演算結果に切り換えるようにしてもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成されている。
【0055】
〔別実施形態の4〕
上記の実施形態では、燃料残量が前記基準所定量MLからさらに減少して、残量が前記第1設定残量になると、前記燃料情報表示領域51では、燃料残量を表示していた箇所に「給油してください」と給油を促す文字を表示する状態となり、押しボタンスイッチ54による人為操作を加えてから切り替わるようにしたものであるが、これに限らず次のようにしてもよい。
すなわち、燃料残量が前記基準所定量MLからさらに減少して、残量が第1設定残量になると、前記燃料情報表示領域51では、燃料残量を表示する状態と、その燃料残量を表示していた箇所に「給油してください」と給油を促す文字を表示する状態とが、所定短時間毎に交互に自動的に繰り返し表示される状態となるように構成してもよい。この状態でも作業可能時間が表示されていた箇所では、そのまま作業可能時間の表示が継続される。
その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0056】
〔別実施形態の5〕
上記の実施形態では、残量検出手段23Fと作業可能時間演算手段23Gとの両方を備えていたが、これに限らず、作業可能時間演算手段23Gを省いて、残量検出手段23Fを備え、燃料残量を表示するように構成したものであってもよい。その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【0057】
〔別実施形態の6〕
上記の実施形態では、燃料噴射量を積算することにより燃料消費量を演算するように構成された消費量演算手段23Eによる燃料消費量の演算を、エンジン1の稼働開始時点から開始していたが、これに限らず、例えば、燃料残量が基準所定量MLに達した時点から燃料噴射量の積算を開始して、基準所定量MLでの燃料残量から消費量演算手段23Eによる燃料噴射量の積算値を減算して燃料残量を検出するように構成してもよい。
この場合、作業可能時間演算手段23Gを備えるものにおいては、作業可能時間の演算も燃料残量が基準所定量MLに達した時点から開始される。その他の構成は前述した実施形態のものと同様である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る作業機の表示構造は、トラクタ以外に、田植機やコンバインなどの農用作業機、あるいは、バックホーやホイールローダなどの建設用作業機、などに適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 エンジン
11 燃料噴射装置
12 燃料タンク
23D 燃費演算手段
23E 消費量演算手段
23G 作業可能時間演算手段
51 燃料情報表示領域(燃料情報表示装置)
55 フロート
56 フロートセンサ
DL 下限
ML 基準所定量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内における液面の変化に追随して上下位置が変化するフロートと、そのフロートの上下位置変化を検出するフロートセンサとを前記燃料タンクに備え、
エンジンに対する燃料供給量を制御する燃料噴射装置における燃料噴射量の積算値を算出する消費量演算手段を備えるとともに、
前記フロートセンサでの検出結果、又は前記消費量演算手段による演算結果に基づいて燃料残量の情報を出力する残量検出手段、及びその残量検出手段から出力される燃料残量の情報を表示する燃料情報表示装置を備え、
前記残量検出手段は、前記フロートセンサで検出された燃料タンク内の燃料残量が、前記フロートセンサによって検出可能な範囲における残量検出値の下限、又は下限近くに設定された基準所定量に達すると、前記フロートセンサで検出された燃料タンク内の燃料残量から前記消費量演算手段での算出結果による燃料消費量を減算して得られた燃料残量の情報を、前記燃料情報表示装置に対して出力するように構成されている作業機。
【請求項2】
燃料タンク内における液面の変化に追随して上下位置が変化するフロートと、そのフロートの上下位置変化を検出するフロートセンサとを前記燃料タンクに備え、
エンジンに対する燃料供給量を制御する燃料噴射装置における燃料噴射量の積算値を算出する消費量演算手段、及び前記フロートセンサで検出された燃料タンク内の燃料残量から前記消費量演算手段での算出結果による燃料消費量を減算して得られた燃料残量を燃費で除算して作業可能時間を算出する作業可能時間演算手段を備えるとともに、
前記フロートセンサでの検出結果、又は前記作業可能時間演算手段による演算結果に基づいて燃料情報を表示する燃料情報表示装置を備え、
前記作業可能時間演算手段は、前記フロートセンサで検出された燃料タンク内の燃料残量が、前記フロートセンサによって検出可能な範囲における残量検出値の下限、又は下限近くに設定された基準所定量に達すると、前記算出された作業可能時間の情報を前記燃料情報表示装置に対して出力するように構成してある作業機。
【請求項3】
前記作業可能時間演算手段は、前記燃料噴射装置における燃料噴射量の情報に基づいて燃費を演算する燃費演算手段からの燃費の変化情報に伴って、前記基準所定量以下での作業可能時間の修正値を出力するように構成してある請求項2記載の作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−154224(P2012−154224A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12878(P2011−12878)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】