説明

作業車

【課題】走行機体がサスペンション機構を介して走行装置を支持する作業車において、走行機体の対地高さを所定高さに維持させることができるとともに耐久性および応答性で優れたものにする。
【解決手段】サスペンション機構の作動を機体上昇側及び機体下降側に変更自在な作動変更手段を備え、サスペンション機構の作動の昇降変位を検出する昇降検出手段41による検出情報を基に、サスペンション機構の作動が目標範囲側に移動するように作動変更手段を操作する制御手段40を備えてある。サスペンション機構が作動停止状態になると、サスペンション機構の作動が目標範囲側に移動するように作動変更手段を昇降検出手段41による検出情報に基づく制御手段40の制御に優先して操作する補助制御手段45を備えてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体がサスペンション機構を介して走行装置を支持する作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した作業車は、サスペンション機構の作動によって走行地の凹凸を吸収しながら走行することを可能にしたものである。
この種の作業車として、従来、特許文献1に記載されたトラクタがあった。特許文献1に記載されたトラクタでは、前輪14に作用するシリンダ16,17を有したサスペンションシステムを備えている。(各符号は、公報に記載されたものである。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】USP6145859号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業車が走行する作業地では舗装路に比べて凹凸が多いことや、作業車はローダやプラウなどの作業装置を装着されることが多いことにより、作業地の凹凸や作業装置の荷重に起因してサスペンション機構が作動し、サスペンション機構の作動が目標範囲を超えて機体上昇側や機体下降側に変位しやすい。
【0005】
サスペンション機構の作動が目標範囲を超えて変位すると、これによる走行機体の対地高さ変化のために作業装置の対地高さが大幅に変化して作業しにくくなることから、作業車にあっては、サスペンション機構を備えても、走行機体の対地高さの変化を抑制して有利に作業できるように、サスペンション機構の作動を機体上昇側及び機体下降側に変更させる作動変更手段を備えることがある。
つまり、作業装置の荷重などによってサスペンション機構の作動が目標範囲から機体上昇側及び機体下降側に変位すると、走行機体の対地高さができるだけ所定の高さ範囲になるように、サスペンション機構の作動を目標範囲側に移動させるように構成することがある。
【0006】
作業車では、サスペンション機構の作動が頻繁に発生しやすいことから、サスペンション機構の作動に伴う作動変更手段も頻繁に作動することになると、作動変更手段の耐久性の面での問題が発生する。
【0007】
本発明の目的は、サスペンション機構を備えるものでありながら、走行機体の対地高さを所定高さに維持させることができ、しかも耐久性および応答性の面でも優れた作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本第1発明は、走行機体がサスペンション機構を介して走行装置を支持する作業車において、
前記サスペンション機構の作動の昇降変位を検出する昇降検出手段と、
前記サスペンション機構の作動を機体上昇側及び機体下降側に変更自在な作動変更手段と、
前記昇降検出手段による検出情報を基に、前記サスペンション機構の作動が目標範囲側に移動するように前記作動変更手段を操作する制御手段とを備え、
前記サスペンション機構の作動停止状態を検出する停止状態検出手段を備え、
前記サスペンション機構が作動停止状態になると、前記停止状態検出手段による検出情報を基に、前記サスペンション機構の作動が目標範囲側に移動するように前記作動変更手段を前記昇降検出手段による検出情報に優先して操作する補助制御手段を備えてある。
【0009】
本第1発明の構成によると、サスペンション機構の作動が発生すると、制御手段が作動変更手段を作動するように操作して作動変更手段がサスペンション機構の作動を目標範囲側に移動させるから、サスペンション機構の作動変位の発生にかかわらず、走行機体の対地高さを所定高さ範囲になるよう調整させることができる。
【0010】
ローダ、プラウなどの作業装置が連結され、作業装置が上昇非作業状態に上昇されると、作業装置の全荷重が走行機体に掛かり、作業装置が下降作業状態に下降されると、作業装置が接地支持されることから走行機体に掛かる荷重が低くなる。殊にローダによる土砂のすくい取りが行なわれた場合、すくい取り土砂の重量による大荷重が走行機体に掛かり、ローダによる土砂の放出が行なわれた場合、走行機体にすくい取り土砂によって掛かっていた大荷重が無くなる。
つまり、サスペンション機構の作動が地面の凹凸などによる小荷重によって発生した場合、その作動は機体上昇側に変位した後に機体下降側に復帰変位したり、機体下降側に変位した後に機体上昇側に復帰変位したりする。これに対し、作業装置による作業が行なわれた場合、作業装置の取り扱い物によって走行機体に掛かる大荷重が発生したり無くなったりすることにより、サスペンション機構の作動が機体上昇側や機体下降側に大きく変位し、かつ復帰側の変位が発生しないとか、復帰側の変位がわずかになることがある。すなわち、サスペンション機構の作動が機体上昇側や機体下降側に変位した際、機体上昇側や機体下降側に変位したままとなり、その後の復帰側の変位が発生しないとか、復帰側の変位がわずかとなるところの作動停止状態がサスペンション機構に発生する。
【0011】
この場合、本第1発明の構成によると、サスペンション機構の作動停止状態が停止状態検出手段によって検出されてこの検出情報を基に補助制御手段が作動変更手段を昇降検出手段による検出情報に優先して操作し、作動変更手段が作動してサスペンション機構の作動を目標範囲側に移動させる。これにより、作業装置の連結や作業装置による作業に起因したサスペンション機構の大きな作動変位が発生した場合、これに速やかに対応させてサスペンション機構の作動を目標範囲に移動させる操作を行わせて走行機体の対地高さを所定高さ範囲になるように迅速に調整させることができる。
【0012】
したがって、サスペンション機構の作動によって走行地の凹凸を吸収させて乗り心地よく走行できるものでありながら、作業装置を連結しない場合も、作業装置を連結した場合も、走行機体および作業装置の対地高さを所定高さまたは略所定高さにして作業性などの良い状態で作業することができる。
しかも、サスペンション機構に小荷重による作動変位が発生するなど、サスペンション機構に作動停止状態が発生しない場合、作動変更手段が制御手段によって昇降検出手段による検出情報を基に操作されることにより、作動変更手段の作動頻度を比較的低くして作動変更手段の劣化を発生しにくくし、作動変更手段に優れた耐久性を備えさせることができる。
作業装置の重量や作業装置による取り扱い物の重量による荷重が掛かったり、作業装置による取り扱い物による荷重が無くなったりした場合、作動変更手段が補助制御手段によって停止状態検出手段による検出情報を基に、昇降検出手段による検出情報に優先して操作されることにより、作業装置の重量や作業装置による取り扱い物の重量に起因した荷重によるサスペンション機構の作動変位に迅速に対応させてサスペンション機構の作動を目標範囲側に移動させ、走行機体および作業装置を適切な対地高さまたはそれに近い高さに迅速に調整させて作業性の良い状態で作業することができる。
【0013】
本第2発明は、走行機体がサスペンション機構を介して走行装置を支持する作業車において、
前記サスペンション機構の作動を機体上昇側及び機体下降側に変更自在な作動変更手段と、
前記サスペンション機構の作動の最大位置及び最小位置を検出し、前記最大及び最小位置の間の中間位置を検出する中間位置検出手段と、
前記中間位置が目標範囲から外れる回数を積算する積算手段と、
前記積算手段による積算回数が設定積算回数を越えると、中間位置が目標範囲側に移動するように、前記作動変更手段を操作する制御手段とを備え、
前記サスペンション機構の作動停止状態を検出する停止状態検出手段を備え、
前記サスペンション機構が作動停止状態になると、前記停止状態検出手段による検出情報を基に、前記サスペンション機構の作動が目標範囲側に移動するように前記作動変更手段を前記積算手段による積算回数に優先して操作する補助制御手段を備えてある。
【0014】
本第2発明の構成によると、サスペンション機構が作動しても、かつサスペンション機構の作動が目標範囲から変位しても、直ちに作動変更手段が作動するとは限らない。
【0015】
つまり、サスペンション機構の作動が小荷重に起因して発生した場合、その作動は機体上昇側に変位した後に機体下降側に変位したり、機体下降側に変位した後に機体上昇側に変位したりして、サスペンション機構の作動に最大及び最小位置が生じることから、サスペンション機構の作動の最大位置及び最小位置が検出されて最大及び最小位置の間の中間位置が検出され、中間位置と目標範囲とが比較されて中間位置が目標範囲から外れた回数が積算され、積算回数が設定積算回数を越えると、中間位置が目標範囲側に移動するように作動変更手段が作動する。したがって、サスペンション機構の作動が目標範囲から機体上昇側及び機体下降側に変位しても、かつ中間位置が目標範囲から機体上昇側及び機体下降側に変位しても、中間位置が目標範囲から外れた回数が設定積算回数を越えなければ、作動変更手段は作動しない。
要するに、サスペンション機構の作動が目標範囲を機体上昇側及び機体下降側に外れても、かつ中間位置が目標範囲を機体上昇側及び機体下降側に外れても、中間位置が目標範囲から外れた回数が設定積算回数を越えなければ、積算用の設定時間の間において走行機体は所定の高さ範囲にあるとみなして、作動変更手段を作動させず、サスペンション機構の作動が発生する度に作動変更手段が作動するよう構成する場合に比べて、作動変更手段の作動頻度を小さくして作動変更手段の劣化を発生しにくくすることができる。
【0016】
ローダ、プラウなどの作業装置が連結され、作業装置が上昇非作業状態に上昇されると、作業装置の全荷重が走行機体に掛かり、作業装置が下降作業状態に下降されると、作業装置が接地支持されることから走行機体に掛かる荷重が低くなる。殊にローダによる土砂のすくい取りが行なわれた場合、すくい取り土砂の重量による大荷重が走行機体に掛かり、ローダによる土砂の放出が行なわれた場合、走行機体にすくい取り土砂によって掛かっていた大荷重が無くなる。
つまり、サスペンション機構の作動が地面の凹凸などの小荷重によって発生した場合、その作動は機体上昇側に変位した後に機体下降側に復帰変位したり、機体下降側に変位した後に機体上昇側に復帰変位したりする。これに対し、作業装置による作業が行なわれた場合、作業装置の取り扱い物によって走行機体に掛かる大荷重が発生したり無くなったりすることにより、サスペンション機構の作動が機体上昇側や機体下降側に大きく変位し、かつ復帰側の変位が発生しないとか、復帰側の変位がわずかになることがある。すなわち、サスペンション機構の作動が機体上昇側や機体下降側に変位し際、機体上昇側や機体下降側に変位したままとなり、その後の復帰側の変位が発生しないとか、復帰側の変位がわずかとなるところの作動停止状態がサスペンション機構に発生する。
【0017】
この場合、本第2発明の構成によると、サスペンション機構の作動停止状態が停止状態検出手段によって検出されてこの検出結果を基に補助制御手段が作動変更手段を積算手段による積算回数に優先して操作する。これにより、作業装置の連結や作業装置による作業に起因したサスペンション機構の大きな作動変位が発生した場合、これに速やかに対応させてサスペンション機構の作動を目標範囲に移動させる操作を行わせて走行機体の対地高さを所定高さ範囲になるように迅速に調整させることができる。
【0018】
したがって、サスペンション機構の作動によって走行地の凹凸を吸収させて乗り心地よく走行できるものでありながら、作業装置を連結しない場合も、作業装置を連結した場合も、走行機体および作業装置の対地高さを所定高さまたは略所定高さにして作業性などの良い状態で作業することができる。
しかも、サスペンション機構に地面の凹凸による作動変位が発生するなど、サスペンション機構に作動停止状態が発生しない場合、作動変更手段が制御手段によって設定積算回数を基に操作されることにより、作動変更手段の作動頻度を比較的低くして作動変更手段の劣化を発生しにくくし、作動変更手段に優れた耐久性を備えさせることができる。
作業装置の重量や作業装置による取り扱い部の重量による荷重が掛かったり、作業装置による取り扱い物による荷重が無くなったりした場合、作動変更手段が補助制御手段によって停止状態検出手段による検出情報を基に、設定積算回数に優先して操作されることにより、作業装置の重量や作業装置の取り扱い物の重量による荷重に起因したサスペンション機構の作動変位に迅速に対応させてサスペンション機構の作動を目標範囲側に移動させ、走行機体および作業装置を適切な対地高さまたはそれに近い高さに迅速に調整させて作業性の良い状態で作業することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】トラクタの全体を示す側面図である。
【図2】前輪支持部を示す側面図である。
【図3】油圧回路図である。
【図4】支持ブラケットを示す斜視図である。
【図5】油圧シリンダの作動変位を示す説明図である。
【図6】サスペンション制御装置のブロック図である。
【図7】油圧シリンダの制御の前半のフロー図である。
【図8】油圧シリンダの制御の後半のフロー図である。
【図9】(a)は、油圧シリンダの作動変位を示す説明図である。(b)は、油圧シリンダの作動速度変化を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
[1]
図1に示すように、左右一対の走行装置としての前輪1,1、左右一対の後輪2,2を備えて、作業車の一例であるトラクタが構成されている。
【0021】
図1に示すように、トラクタの走行機体5は、エンジン4、このエンジン4の後部に連結されたミッションケース3、エンジン4の下部に前輪支持用に連結された前輪支持フレーム5aを備えて構成してある。走行機体5は、ミッションケース3の後部の両横側に上下揺動操作自在に装着されたリフトアーム3aを備えている。右及び左の後輪2は機体後部のミッションケース3にサスペンション機構を介して支持されておらず、位置固定状態で支持されている。
このトラクタは、走行機体5の後部にリフトアーム3aを介してプラウ(図示せず)を上昇非作業状態と下降作業状態とに昇降操作自在に連結されて乗用型耕耘機を構成するなど、走行機体5の後部に各種の作業装置を昇降操作自在に連結されて各種の乗用型作業機を構成する。また、このトラクタは、走行機体5の前部にフロントローダ(図示せず)を昇降操作自在に連結され、乗用型ローダを構成する。
【0022】
図1,2,4に示すように、側面視U字状の支持ブラケット6が前輪支持フレーム5aの後部の横軸芯P1周りに上下に揺動自在に支持されて、前輪支持フレーム5aの前部と支持ブラケット6の前部とに亘って、2本の油圧シリンダ7,7(サスペンション機構に相当)が接続されている。支持ブラケット6の前後軸芯P2周りに前車軸ケース8がローリング自在に支持されており、前車軸ケース8の右及び左側部に右及び左の前輪1が支持されている。
つまり、走行機体5は、支持フレーム5aにおいて、2本の油圧シリンダ7,7を介して左右一対の前輪1,1を支持している。
【0023】
[2]
次に、油圧シリンダ7の油圧回路について説明する。
図3に示すように、油圧シリンダ7は底部側の油室7a及びピストン側の油室7bを備えた複動型に構成されている。油圧シリンダ7の油室7aに接続された油路9に、ガス封入式のアキュムレータ11、パイロット操作式の一対の逆止弁13及び油圧回路の保護用のリリーフ弁15が接続されており、口径が「大」「中」「小」の3種類のオリフィス部を備えたパイロット操作式の切換弁17が、アキュムレータ11の手前部分に備えられ、切換弁17を操作するパイロット弁20が備えられている。油圧シリンダ7の油室7bに接続された油路10に、ガス封入式のアキュムレータ12、パイロット操作式の一対の逆止弁14及び油圧回路の保護用のリリーフ弁16が接続されている。
【0024】
図3に示すように、逆止弁13,14にパイロット作動油を給排操作するパイロット弁19が備えられており、パイロット弁19により逆止弁13,14が遮断状態(アキュムレータ11,12と油圧シリンダ7の油室7a,7bとの間を遮断する状態)、及び開放状態(アキュムレータ11,12から油圧シリンダ7の油室7a,7b、及び油圧シリンダ7の油室7a,7bからアキュムレータ11,12への両方の作動油の流れを許容する状態)に操作される。
【0025】
図3に示すように、ポンプ30の作動油がフィルター31、分流弁32及び逆止弁33を介して制御弁18(作動変更手段に相当)に供給されており、分流弁32と逆止弁33との間にリリーフ弁34が接続されている。油路9における油圧シリンダ7の油室7aと逆止弁13との間の部分と、制御弁18とに亘って油路21が接続され、油路10における油圧シリンダ7の油室7bと逆止弁14との間の部分と、制御弁18とに亘って油路22が接続されている。
【0026】
図3に示すように、制御弁18は、油路21(油圧シリンダ7の油室7a)に作動油を供給する上昇位置18U、油路22(油圧シリンダ7の油室7b)に作動油を供給する下降位置18D、及び中立位置18Nの3位置切換式で、パイロット操作式に構成されており、制御弁18を操作するパイロット弁29が備えられている。
【0027】
図3に示すように、油路21にパイロット操作式の逆止弁23及び絞り部25が備えられている。油路22にパイロット操作式の逆止弁24、逆止弁26(逆止弁24が油路10側で、逆止弁26が制御弁18側)及び絞り部27が備えられており、逆止弁24と逆止弁26(絞り部27)との間にリリーフ弁28が接続されている。
パイロット弁19,20,29は電磁操作式であり、後述の[3]、[4]、[5]に記載のように、制御装置35が備える制御手段40によってパイロット弁19及びパイロット弁20,29が操作され、逆止弁13,14、制御弁18及び切換弁17が操作される。
【0028】
[3]
次に、油圧シリンダ7の作動について説明する。
前項[2]に記載の構造により、図3に示すように、制御弁18が中立位置18Nに操作され、逆止弁13,14が開放状態に操作されている場合、地面の凹凸に応じて前車軸ケース8及び支持ブラケット6が横軸芯P1周りに上下に揺動しようとすると、油圧シリンダ7が伸縮して、油圧シリンダ7の油室7a,7bとアキュムレータ11,12との間で作動油が往復し、油圧シリンダ7がバネ定数K1を備えたサスペンション機構として作動する。
【0029】
この場合、油圧シリンダ7の油室7b及び油路10の圧力が、リリーフ弁28により設定圧MP1に維持されている。油圧シリンダ7の油室7aの圧力をPH、油圧シリンダ7の油室7aのピストンの受圧面積をAH、油圧シリンダ7の油室7bのピストンの受圧面積をAR(ピストンロッドの分だけARはAHよりも小さい)として、機体の前部に掛かる重量(油圧シリンダ7に掛かる重量)をMとし、重力加速度をgとすると、下記の式(1)が成立する。
式(1) M×g=PH×AH−MP1×AR
【0030】
これにより、油圧シリンダ7の油室7bの圧力MP1、油圧シリンダ7の油室7aのピストンの受圧面積AH、油圧シリンダ7の油室7bのピストンの受圧面積ARが一定であるので、油圧シリンダ7の油室7aの圧力PHは、油圧シリンダ7の油室7bの圧力MP1よりも高いものとなっており、機体の前部に掛かる重量(油圧シリンダ7に掛かる重量)Mによって変化する。
【0031】
油圧シリンダ7のバネ定数K1は、油圧シリンダ7の油室7a,7bの圧力PH,MP1によって決まるものとなっており、油圧シリンダ7の油室7aの圧力PHが大きくなるのに伴って大きくなり、油圧シリンダ7の油室7aの圧力PHが小さくなるのに伴って小さくなる。従って、油圧シリンダ7のバネ定数K1は、機体の前部に掛かる重量(油圧シリンダ7に掛かる重量)Mによって決まるものとなり、機体の前部に掛かる重量(油圧シリンダ7に掛かる重量)Mが大きくなるのに伴って大きくなり、機体の前部に掛かる重量(油圧シリンダ7に掛かる重量)Mが小さくなるのに伴って小さくなる。
【0032】
図3に示すように、制御弁18が上昇位置18Uに操作され、逆止弁13,14が遮断状態に操作されると、制御弁18から作動油が油圧シリンダ7の油室7aに供給され、油圧シリンダ7の油室7bから作動油が、逆止弁24(パイロット圧により開放状態に操作されている)、及びリリーフ弁28を介して排出される。この場合、油圧シリンダ7の油室7b及び油路10の圧力が、リリーフ弁28により設定圧MP1に維持されている。
【0033】
これにより、油圧シリンダ7が伸長作動して機体の前部が上昇する(サスペンション機構である油圧シリンダ7の作動を機体上昇側に変更した状態に相当)。この後、制御弁18が中立位置18Nに操作され、逆止弁13,14が開放状態に操作されると、油圧シリンダ7が伸長した状態で、前述のように油圧シリンダ7がサスペンション機構として作動する。
【0034】
図3に示すように、制御弁18が下降位置18Dに操作され、逆止弁13,14が遮断状態に操作されると、制御弁18から作動油が油圧シリンダ7の油室7bに供給され、油圧シリンダ7の油室7aから作動油が、逆止弁23(パイロット圧により開放状態に操作されている)及び絞り部25、制御弁18を介して排出される。この場合、油圧シリンダ7の油室7b及び油路10の圧力が、リリーフ弁28により設定圧MP1に維持されている。
【0035】
これにより、油圧シリンダ7が収縮作動して機体の前部が下降する(サスペンション機構である油圧シリンダ7の作動を機体下降側に変更した状態に相当)。この後、制御弁18が中立位置18Nに操作され、逆止弁13,14が開放状態に操作されると、油圧シリンダ7が収縮した状態で、前述のように油圧シリンダ7がサスペンション機構として作動する。
【0036】
図3及び図6に示すように、油圧シリンダ7の油室7aの圧力を検出する圧力センサー36が備えられて、圧力センサー36の検出値が制御装置35に入力されており、圧力センサー36の検出値に基づいて、機体の前部に掛かる重量(油圧シリンダ7に掛かる重量)Mが演算される。
【0037】
これにより、連結された作業装置によって機体の前部に掛かる重量(油圧シリンダ7に掛かる重量)Mが大きくなると(例えばフロントローダによる土砂のすくい上げ(積載)が行なわれた状態、荷物の積み上げが行なわれた状態、プラウを下降作業状態に下降させてプラウが接地支持された状態)、油圧シリンダ7のバネ定数K1は大きくなるので、これに伴い切換弁17が絞り側(口径「小」のオリフィス部側)に操作されて、油圧シリンダ7の減衰力が大きくなる。
【0038】
連結された作業装置によって機体の前部に掛かる重量(油圧シリンダ7に掛かる重量)Mが小さくなると(例えばフロントローダによる土砂の放出が行なわれた状態や、荷物の積み下ろしを行なわれた状態、プラウを上昇非作業状態に上昇されてプラウの荷重が機体前部に持ち上げ作用した状態)、油圧シリンダ7のバネ定数K1は小さくなるので、これに伴い切換弁17が絞り側(口径「大」のオリフィス部側)に操作されて、油圧シリンダ7の減衰力が小さくなる。
【0039】
[4]
図6は、油圧シリンダ7を操作するサスペンション制御装置のブロック図である。この図に示すように、サスペンション制御装置は、パイロット弁19,20,29に連係された制御装置35を備え、この制御装置35に連係された圧力センサー36、作動位置センサー37を備えている。
【0040】
制御装置35は、マイクロコンピュータを利用して構成されており、制御手段40、昇降検出手段41、中間位置検出手段42、積算手段43、積算回数設定手段44、補助制御手段45、目標設定手段46、停止状態検出手段38を備えている。
【0041】
次に、油圧シリンダ7の制御の前半について、図5,7に基づいて説明する。
作動位置センサー37は、油圧シリンダ7の作動位置(伸縮位置)を検出する。作動位置センサー37の検出値が制御装置35に入力され、制御装置35において油圧シリンダ7の作動位置(伸縮位置)が記憶されている。
【0042】
昇降検出手段41は、作動位置センサー37の検出情報と、目標設定手段46によって設定された油圧シリンダ7の作動の中央位置(図5参照)とを基に、油圧シリンダ7の作動の中央位置に対する昇降変位を検出する。この場合、伸縮式の作動位置センサー37を油圧シリンダ7に直接に取り付けて、油圧シリンダ7の作動位置(伸縮位置)を検出する。あるいは、ロータリ式の作動位置センサー37を図2に示す横軸芯P1の位置に取り付けて、支持フレーム5に対する支持ブラケット6の角度を油圧シリンダ7の作動位置(伸縮位置)として検出する。
【0043】
図5に示すように、油圧シリンダ7の作動位置(伸縮位置)が中央位置であると、機体が地面と略平行(略水平)な状態となる。中央位置に対して機体上昇側及び機体下降側にある程度の範囲を持った目標範囲H1が目標設定手段46によって設定されている。
【0044】
制御装置35によって積算回数Nが設定されている。先ず積算回数Nが「0」に設定される(ステップS2)。制御弁18が中立位置18Nに操作され、逆止弁13,14が開放状態に操作された状態(油圧シリンダ7がサスペンション機構として作動する状態)において(ステップS3)、制御周期T12のカウントが開始され(ステップS4)、油圧シリンダ7の作動位置(伸縮位置)が検出されて記憶される(ステップS5)。
【0045】
中間位置検出手段42は、制御周期T12が経過すると(図5の時点T2参照)、時点T2から設定時間T11だけ過去(図5の時点T2から時点T1参照)の全ての油圧シリンダ7の作動位置(伸縮位置)から、油圧シリンダ7の作動の最大位置A1及び最小位置A2を検出し、最大及び最小位置A1,A2の間の中間位置B1(最大及び最小位置A1,A2の間の中央の位置)を検出する(ステップS6,S7,S8)。
【0046】
図5に示すように、最大位置A1は、油圧シリンダ7の作動位置が機体上昇側に変位した後に機体下降側に変位する位置(油圧シリンダ7が伸長作動から収縮作動に切り換わる位置)である。最小位置A2は、油圧シリンダ7の作動位置が機体下降側に変位した後に機体上昇側に変位する位置(油圧シリンダ7が収縮作動から伸長作動に切り換わる位置)である。
【0047】
この場合、前回の制御周期T12の経過時点から今回の制御周期T12の経過時点(図5の時点T2参照)までの間の油圧シリンダ7の作動位置(伸縮位置)が、新たな油圧シリンダ7の作動位置(伸縮位置)として記憶され、時点T2から設定時間T11だけ過去の時点T1よりも過去の油圧シリンダ7の作動位置(伸縮位置)は消去されるのであり、制御周期T12の経過毎に、制御装置において記憶されている油圧シリンダ7の作動位置(伸縮位置)の一部が更新されることになる。
【0048】
ステップS6,S7において、設定時間T11を油圧シリンダ7(サスペンション機構)の共振周波数の1周期分よりも少し長い程度に設定すると、設定時間T11の間に1個の最大位置A1及び1個の最小位置A2が検出され、この場合には1個の最大及び最小位置A1,A2から中間位置B1が検出される(ステップS8)。
ステップS6,S7において、設定時間T11をある程度長いものに設定すると、設定時間T11の間に複数個の山位置及び谷位置となる作動変位が検出される。この場合には、複数個の山位置のうちの最大の山位置を最大位置A1とみなし、複数個の谷位置のうちの最小の谷位置を最小位置A2とみなして、最大位置A1及び最小位置A2から中間位置B1が検出される(ステップS8)。
【0049】
中間位置B1が検出されると、中間位置B1と目標範囲H1とが比較され(ステップS9)、中間位置B1が目標範囲H1から機体下降側に外れていると、積算手段43によって積算回数Nに「1」が減算される(ステップS10)。中間位置B1が目標範囲H1から機体上昇側に外れていると、積算手段43によって積算回数Nに「1」が加算される(ステップS11)。中間位置B1が目標範囲H1に入っていると、積算回数Nへの加算及び減算は行われない。
次にステップS4に移行し、ステップS4〜S11が行われて、中間位置B1の検出、中間位置B1と目標範囲H1との比較、積算回数Nの加算及び減算が行われるのであり、再びステップS4に移行して、ステップS4〜S11が繰り返して行われる。
【0050】
[5]
次に、油圧シリンダ7の制御の後半について、図8,9に基づいて説明する。
図9(a)は、油圧シリンダ7の作動変位を示す説明図である。図9(b)は、油圧シリンダ7の作動速度の変化を示す説明図である。図9(a)のA域に示す作動変位は、油圧シリンダ7に地面の凹凸によって発生する作動変位であり、図9(b)のA域に示す作動速度は、図9(a)のA域に示す作動変位に対応した作動速度である。図9(b)に示す作動速度V1は、作動変位S1が発生した後に発生する作動速度である。
【0051】
つまり、油圧シリンダ7に地面の凹凸による機体上昇側の作動変位が発生した場合、この作動変位の後、機体下降側への復帰変位が発生して作動が目標範囲H1に戻る。油圧シリンダ7に地面の凹凸による機体下降側の作動変位が発生した場合、この作動変位の後、機体上昇側への復帰変位が発生して作動が目標範囲H1に戻る。したがって、油圧シリンダ7に地面の凹凸による作動変位が発生した場合、油圧シリンダ7の作動が目標範囲H1を外れても、後に作動が目標位置H1に戻る方向の作動速度が発生する。油圧シリンダ7の作動が目標範囲H1を外れてから目標範囲H1に戻る方向の作動速度が発生するのは、油圧シリンダ7の固有共振周期の約1/4以内である。
【0052】
図9(a)のB域に示す作動変位S2,S3は、連結されたフロントドーザによる土砂のすくい取りを行なわれた場合の作動変位である。図9(b)のB域に示す作動速度は、図9(a)のB域に示す作動変位S2,S3に対応した作動速度である。図9(b)に示す作動速度V2は、作動変位S2に対応する仮想の作動速度を示す。
【0053】
つまり、油圧シリンダ7にフロントドーザによるすくい取り土砂の重量に起因した機体上昇側の作動変位が発生した場合、機体下降側への復帰変位が発生しない。復帰変位が発生することがあっても、復帰変位がわずかとなり、作動が目標範囲H1に戻らない。すなわち、フロントローダによる土砂のすくい取りが行われ、すくい取り土砂の重量に起因して油圧シリンダ7に機体上昇側の作動変位が発生した場合、油圧シリンダ7の作動が目標範囲H1を外れた位置に停止して目標範囲H1に向かう復帰変位が発生せず、仮想の作動速度V2の如き作動速度が発生しない。
フロントドーザによる土砂の放出を行なわれた場合、土砂放出が行なわれるまでに走行機体に掛かっていた土砂重量による荷重が無くなることにより、油圧シリンダ7に発生する作動変位が機体下降側への作動変位となる。したがって、土砂放出が行なわれた場合、作動変位の変位方向の点において、土砂のすくい取りを行われた場合と異なるが、油圧シリンダ7の作動が目標範囲H1を外れた位置に停止して目標範囲H1に向かう復帰変位が発生せず、目標範囲H1に戻る方向の作動速度が発生しない点において、土砂のすくい取りを行われた場合と同様である。
【0054】
停止状態検出手段38は、作動位置センサー37による検出情報を基に、油圧シリンダ7の作動停止状態を検出する。
すなわち、作動位置センサー37によって検出された油圧シリンダ7の作動データを微分処理して油圧シリンダ7の作動速度を算出する。油圧シリンダ7の作動が目標範囲H1を外れた後、油圧シリンダ7の作動が目標範囲H1に向けて復帰変位する作動速度の有無、および復帰変位の作動速度が発生した場合の復帰変位の作動速度の値を判別し、油圧シリンダ7の作動が目標範囲H1を外れてから設定計測時間が経過するまでの間に復帰変位の作動速度が発生しなかったと判別した場合、および復帰変位の作動速度の発生があっても、発生した復帰変位の作動速度の値が設定基準値よりも小であると判断した場合、油圧シリンダ7の作動が目標範囲H1を外れた後において油圧シリンダ7が作動停止状態になったと検出する。前記設定計測時間として、油圧シリンダ7の固有共振周期の1/4よりも大の時間を設定する。
【0055】
制御手段40は、中間位置B1の検出、中間位置B1と目標範囲H1との比較、積算回数Nの加算及び減算が行われると(ステップS4〜S11)、その度ごとに停止状態検出手段38による作動停止状態の検出が行なわれた否かを判別する(ステップS12)。制御手段40は、停止状態検出手段38による作動停止状態の検出が行われたと判別した場合、作動停止状態の検出が行われてからの経過時間tの計測を行なう。
補助制御手段45は、積算回数設定手段44を作動させて、下降側設定積算回数ND1(設定積算回数に相当)及び上昇側設定積算回数NU1(設定積算回数に相当)を以下のように設定させる。
【0056】
制御装置35に、第1基準数NDS及び第2基準数NDL、第1基準数NUS及び第2基準数NULが設定されている。補助制御手段45は、積算回転数設定手段44により、最初に下降側設定積算回数ND1として第2基準数NDLを設定し、上昇側設定積算回数NU1として第2基準数NULを設定している(ステップS1)。この場合、第1基準数NDSが第2基準数NDLよりも小さな値に設定され、第1基準数NUSが第2基準数NULよりも小さな値に設定されている。
【0057】
下降側設定積算回数ND1として第2基準数NDLが設定され (作動頻度が低くなる状態に相当)、上昇側設定積算回数NU1として第2基準数NULが設定された状態において (作動頻度が低くなる状態に相当)、作業装置の昇降操作が行われたと判断した場合、補助制御手段45は、積算回数設定手段44により、下降側設定積算回数ND1として第1基準数NDSを設定し (作動頻度が高くなる状態に相当)、上昇側設定積算回数NU1として第1基準数NUSを設定する (作動頻度が高くなる状態に相当)(ステップS14)。
【0058】
制御装置35に、停止状態検出手段38による作動停止状態の検出が行なわれてからの設定経過時間t0が設定されている。この設定経過時間t0として、作動停止状態になった油圧シリンダ7の作動を目標範囲H1に戻す調整を行なうのに必要な時間を設定してある。
停止状態検出手段38による作動停止状態の検出が行なわれてからの経過時間tが設定経過時間t0に達するまでは、下降側設定積算回数ND1として第1基準数NDSが維持され 、上昇側設定積算回数NU1として第1基準数NUSが維持される。停止状態検出手段38による作動停止状態の検出が行なわれてからの経過時間tが設定経過時間t0に達すると、下降側設定積算回数ND1として元の第2基準数NDLに戻して設定され、上昇側設定積算回数NU1として元の第2基準数NULに戻して設定される。
【0059】
制御手段40は、前述のようにして下降側設定積算回数ND1及び上昇側設定積算回数NU1が設定されて、積算回数Nと下降側設定積算回数ND1及び上昇側設定積算回数NU1とを比較し、積算回数Nが下降側設定積算回数ND1に達したと判断すると(下回ると)(ステップS16)、機体の前部が下降して機体が地面に対して前下がり状態であると判断し、制御弁18を上昇位置18Uに操作し、逆止弁13,14を作動状態に操作する(ステップS17)。
【0060】
これにより、前項[3]に記載のように、油圧シリンダ7の油室7b及び油路10の圧力がリリーフ弁28により設定圧MP1に維持された状態で、油圧シリンダ7が伸長作動して機体の前部が上昇する。中間位置B1と目標範囲H1との差の分だけ油圧シリンダ7が伸長作動すると(中間位置B1が目標範囲H1に入ると)、ステップS2に移行して積算回数Nが「0」に設定されて、制御弁18が中立位置18Nに操作され、逆止弁13,14が開放状態に操作された状態(油圧シリンダ7がサスペンション機構として作動する状態)に復帰する。
【0061】
制御手段40は、積算回数Nが上昇側設定回数NU1に達したと判断すると(上回ると)(ステップS19)、機体の前部が上昇して機体が地面に対して前上がり状態であると判断し、制御弁18を下降位置18Dに操作し、逆止弁13,14を作動状態に操作する(ステップS19)。
【0062】
これにより、前項[3]に記載のように、油圧シリンダ7の油室7b及び油路10の圧力がリリーフ弁28により設定圧MP1に維持された状態で、油圧シリンダ7が収縮作動して機体の前部が下降する。中間位置B1と目標範囲H1との差の分だけ油圧シリンダ7が収縮作動すると(中間位置B1が目標範囲H1に入ると)、ステップS2に移行して積算回数Nが「0」に設定されて、制御弁18が中立位置18Nに操作され、逆止弁13,14が開放状態に操作された状態(油圧シリンダ7がサスペンション機構として作動する状態)に復帰する。
【0063】
前述のようにして、ステップS4〜S11が繰り返して行われても、積算回数Nが下降側設定積算回数ND1に達せず(下回らず)(ステップS16)、且つ、上昇側積算回数NUが上昇側設定積算回数NU1に達しなければ(上回らなければ)(ステップS18)、制御弁18が中立位置18Nに操作され、逆止弁13,14が開放状態に操作された状態(油圧シリンダ7がサスペンション機構として作動する状態)が維持される。
【0064】
したがって、油圧シリンダ7の作動が目標範囲H1を機体上昇側及び機体下降側に外れた作動変位が油圧シリンダ7に発生した場合、油圧シリンダ7の作動が目標範囲H1に戻るものである場合、補助制御手段45が積算手段43による積算回数として通常用でかつ低作動頻度側の第2基準数NDL及び第2基準数NULを採用することによって昇降検出手段41による検出情報を基に制御手段40を介して制御弁18を操作し、油圧シリンダ7の作動が目標範囲側に移動するように制御弁18を作動させる頻度を低くした状態で油圧シリンダ7の作動を目標範囲側に移動させるサスペンション制御が行なわれる(ステップS1〜12、16〜19)。
【0065】
油圧シリンダ7の作動が目標範囲H1を機体上昇側及び機体下降側に外れた作動変位が油圧シリンダ7に発生した場合、フロントローダによる土砂のすくい取り及び放出が行なわれた場合の如く油圧シリンダ7の作動が目標範囲H1に戻らないものである場合、補助制御手段45が停止状態検出手段38による検出情報を基に、積算手段43による積算回数として通常用でかつ低作動頻度側の第2基準数NDL及び第2基準数NULに優先して高作動頻度側の第1基準数NDS、第1基準数NUSを採用することによって昇降検出手段41による検出情報に優先して制御手段40を介して制御弁18を操作し、油圧シリンダ7の作動が目標範囲側に移動するように制御弁18を作動させる頻度を高くした状態で油圧シリンダ7の作動を目標範囲側に移動させるサスペンション制御が行なわれる(ステップS1〜19)。
【0066】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための形態]の図7のステップS4〜S8において、設定時間T11を少し長く設定して、複数個の最大位置A1及び複数個の最小位置A2を検出するように構成した場合、以下のようにして図7のステップS8の中間位置B1を検出してもよい。
【0067】
(1) 複数個の最大位置A1及び複数個の最小位置A2において、1個の最大位置A1及び1個の最小位置A2を1個の組として、最大及び最小位置A1,A2の複数の組に分けて、各組において中間位置B1を検出することによって、複数個の中間位置B1を検出して、複数個の中間位置B1の平均値を図7のステップS8の中間位置B1とする。
【0068】
(2) 複数個の最大位置A1において最大位置A1の平均値を検出し、複数個の最小位置A2において最小位置A2の平均値を検出し、最大及び最小位置A1,A2の平均値から中間位置B1を検出して、図7のステップS8の中間位置B1とする。
【0069】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための形態][発明の実施の第1別形態]において、中間位置B1を最大及び最小位置A1,A2の間の中央の位置に設定するのではなく、機体の前部に装着する作業装置(例えばフロントローダ)の有無や種類、作業形態等に基づいて、中間位置B1を最大及び最小位置A1,A2の間の中央の位置から少し機体上昇側(油圧シリンダ7の伸長側)の位置に設定したり、中間位置B1を最大及び最小位置A1,A2の間の中央の位置から少し機体下降側(油圧シリンダ7の収縮側)の位置に設定したりしてもよい。
例えば機体の前部に作業装置(例えばフロントローダ)を装着した場合、中間位置B1を最大及び最小位置A1,A2の間の中央の位置から少し機体上昇側(油圧シリンダ7の伸長側)の位置に設定することにより、機体が地面に対して少し前上がり状態になるようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、トラクタの他、ローダ等の建設機械、フォークリフトに利用できる。
【符号の説明】
【0071】
1 走行装置
5 走行機体
7 サスペンション機構
18 作動変更手段
38 停止状態検出手段
40 制御手段
41 昇降検出手段
42 中間位置検出手段
43 積算手段
45 補助制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体がサスペンション機構を介して走行装置を支持する作業車であって、
前記サスペンション機構の作動の昇降変位を検出する昇降検出手段と、
前記サスペンション機構の作動を機体上昇側及び機体下降側に変更自在な作動変更手段と、
前記昇降検出手段による検出情報を基に、前記サスペンション機構の作動が目標範囲側に移動するように前記作動変更手段を操作する制御手段とを備え、
前記サスペンション機構の作動停止状態を検出する停止状態検出手段を備え、
前記サスペンション機構が作動停止状態になると、前記停止状態検出手段による検出情報を基に、前記サスペンション機構の作動が目標範囲側に移動するように前記作動変更手段を前記昇降検出手段による検出情報に基づく前記制御手段の制御に優先して操作する補助制御手段を備えてある作業車。
【請求項2】
走行機体がサスペンション機構を介して走行装置を支持する作業車であって、
前記サスペンション機構の作動を機体上昇側及び機体下降側に変更自在な作動変更手段と、
前記サスペンション機構の作動の最大位置及び最小位置を検出し、前記最大及び最小位置から中間位置を検出する中間位置検出手段と、
前記中間位置が目標範囲から外れる回数を積算する積算手段と、
前記積算手段による積算回数が設定積算回数を越えると、中間位置が目標範囲側に移動するように、前記作動変更手段を操作する制御手段とを備え、
前記サスペンション機構の作動停止状態を検出する停止状態検出手段を備え、
前記サスペンション機構が作動停止状態になると、前記停止状態検出手段による検出情報を基に、前記サスペンション機構の作動が目標範囲側に移動するように前記作動変更手段を前記積算手段による積算回数に優先して操作する補助制御手段を備えてある作業車。
【請求項3】
前記中間位置検出手段は、設定時間の間における複数個の最大位置及び複数個の最小位置を検出し、それらの検出値に基づく平均値から前記中間位置を検出している請求項2に記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−224338(P2012−224338A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−185379(P2012−185379)
【出願日】平成24年8月24日(2012.8.24)
【分割の表示】特願2009−4673(P2009−4673)の分割
【原出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】