説明

偏波変動による振動位置の検知装置

【課題】継続時間の比較的長い振動や衝撃が加わった場合であってもその発生位置を検知することが可能な装置を提供する。
【解決手段】本発明の検知装置は、偏光させた光波を折返部を介して往復させる並列した往路側導波手段および復路側導波手段と、往路側導波手段上に設けられ、負荷により所定の偏光成分強度に変化をもたらす往路側検知領域と、復路側導波手段上に設けられ、負荷により所定の偏光成分強度に変化をもたらす復路側検知領域と、往路側検知領域で生じた偏光成分強度を検知する第1の受光部と、往路側検知領域および復路側検知領域で生じた偏光成分の強度を検知する第2の受光部を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ファイバセンシングに関し、より詳細には、光ファイバへの物体の衝突等、光ファイバに物理的な振動や衝撃が加わった位置を検知するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
架空送電線の雷撃による事故点(雷撃位置)を標定する方法として、送電線路の方端から、送電線路の架空地線に内蔵されている光ファイバに直線偏光を入力し、光ファイバ中を進行する光波が、雷撃電流によるファラデー効果によって偏波変動し、その変化を送電線路の方端に設置した1/4波長板、検光子、O/E(光/電気変換器)で電気的に検知し、光ファイバ中を進行する光波信号の往路と復路とで発生した偏波変動の各々の検知波形の到達時間差を測定することで、事故点(雷撃位置)を標定する技術が既に提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平03−156387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のような従来技術による雷撃位置標定システムにおいては、光ファイバに加わる雷撃電流により発生する磁界によって生じるファラデー効果が引き起こす、当該光ファイバ中を進行する光波の偏波変動を検知しているため、その偏波変動の検知波形は、雷撃電流の継続時間とほぼ同じ時間の間の波形として観測される。一般的に、雷撃電流の継続時間は数μsと短いので、往路および復路を進行して時間差をもって到達し観測される各々の偏波変動波形A,Bは、図1Aに示すように、互いに重なり合うことがない。このため、各々の波形の到達時間t1およびt2を容易に識別でき、到達時間差Δt(t2−t1)を計測して雷撃の発生位置Xを計算、特定することが可能となる。
【0004】
いっぽう、光ファイバ中を進行する光波の偏波状態は、磁界等のファラデー効果によって変動するだけでなく、光ファイバに歪や外力が加えられた場合においても変動する。この原理を利用して、光ファイバに落石が衝突した場合にその落石発生位置を検知したり、光ファイバに物体が衝突した位置を検知したり、あるいは外部からの侵入者を検知したりすること等を目的として、防護フェンスや振動を検知したい箇所に光ファイバを敷設することも可能である。しかし、光ファイバに加わった振動や衝突の位置を従来技術を用いて検知しようとする場合には、上述の雷撃電流によって発生する上述の偏波変動と比較して、振動・衝突現象の継続時間は数秒と長いため、光波の偏波変動の検知波形の立ち上がり時間および波形の発生時間(波尾)が長くなる。このため、図1Bに示すように、往路で発生した偏波変動波形Aは、復路で発生した偏波変動波形Bの長い波尾の中に含まれた状態で観測されるので、偏波変動波形AおよびBの各々の到達時間t1、t2を識別してΔtを計算することが困難となり、結果として振動位置を特定することができないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の問題を解決すべく、本発明の検知装置は、偏光させた光波を折返部を介して往復させる並列した往路側導波手段および復路側導波手段と、往路側導波手段上に設けられ、負荷により所定の偏光成分強度に変化をもたらす往路側検知領域と、復路側導波手段上に設けられ、負荷により所定の偏光成分強度に変化をもたらす復路側検知領域と、往路側検知領域で生じた偏光成分強度を検知する第1の受光部と、往路側検知領域および復路側検知領域で生じた偏光成分の強度を検知する第2の受光部を備えたことを特徴とする。本発明の検知装置は、さらに、折返部より先、かつ復路側検知領域より手前に第1の光分波器を備えている。当該第1の光分波器は、復路側光波を2分して一方の光波を復路側検知領域より手前に設けた第1の偏光子を介して第1の受光部に導波し、他方の光波を復路側検知領域より先に設けた第2の偏光子を介して第2の受光部に導波する。上記往路側導波手段は第1の光ファイバであり、また、上記一方の光波は第2の光ファイバを導波し、他方の光波は第3の光ファイバを導波するように構成してもよい。
【0006】
本発明の検知装置の他の実施例においては、上記往路側導波手段および復路側導波手段の一部は第1の光ファイバであり、上記一方の光波は第2の光ファイバを導波し、上記他方の光波は、所定区間を第1の光合波器で第1の光ファイバに合波されて導波し、第2の受光器手前で第2の光分波器により分波され、第2の偏光子を介して第2の受光器に導波される。
【0007】
また、本発明の検知装置の他の実施例においては、上記往路側導波手段および復路側導波手段の一部は第1の光ファイバであり、上記偏光された光波は第1及び第2の波長を有し、第1の分波器は第1の波長及び第2の波長に分波する波長分解器であり、上記一方の光波は第1の波長を有し、上記他方の光波は第2の波長を有し、一方の光波が第1の偏光子を通過後に第2の光合波器により他方の光波と合波され、第1の合波器によって第1の光ファイバに合波して所定区間を導波し、第2の光分波器により分波し、さらに第3の光分波器によって第1の波長を有する一方の光波と第2の波長を有する他方の光波に分波し、第1の波長を有する光波は前記第1の受光器へ、第2の波長を有する光波は第2の偏光子を介して第2の受光器へ導波される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によって、波形の立ち上がり、および、波尾が長い振動や衝撃等の振動発生位置を特定することが可能となる。光ファイバを敷設して、落石の発生位置や、光ファイバ線路への物体の衝突等の発生位置を高い精度で検知したり、侵入フェンスに光ファイバを敷設して、侵入者のフェンスへの加振位を高い精度で検知したりすることが可能な検知装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明による光ファイバ検知装置の構成図を図2に示す。図2のシステムは、光源1と、光源から発生した光波を完全偏光にするための偏光子3Aと、往路の光ファイバ2A上で発生した偏波変動成分Aのみを検知するための光合分波器5、偏光子3C、復路光ファイバ2C及び受光器B(6B)と、偏波変動成分Aと復路光ファイバ2B上で発生した偏波変動成分Bとを検知するための復路光ファイバ2B、偏光子3B、及び受光器A(6A)とから構成される。
【0010】
図2の構成において、位置Xで振動が発生すると、光ファイバ中を伝播する光波の偏波状態は、往路光ファイバ2A、復路光ファイバ2B及び復路光ファイバ2Cの位置Xにおいて変動する。往路光ファイバ2Aの位置Xにおいて生じる偏波変動成分をAとし、復路光ファイバ2Bの位置X及び復路光ファイバ2Cの位置Xにおいて生じる偏波変動成分をBとすると、偏波変動成分Bが受光器6A及び6Bの各々にまず入射し、その後、光合分波器5により復路光ファイバ2B及び2Cに分岐された偏波変動成分Aがそれぞれの受光器に入射する。
【0011】
復路光ファイバ2Bの位置Xにおいて発生した偏波変動成分Bは、復路光ファイバ2Bを伝播した後に偏光子3Bを通過する。偏光子3Bは特定の偏波状態の光波のみを通過させるので、偏光子3Bから出力される光波の強度は、偏波変動成分Bの偏波変動特性に依存して変動する。したがって、受光器6Aにより成分Bの偏波変動波形が検知され、偏波変動成分Bの立ち上がり時間、すなわち、偏波変動成分Bの到達時間t1を観測することができる。一方、復路光ファイバ2Cの位置Xにおいて発生した偏波変動成分Bは復路光ファイバ2Cを伝播するが、復路光ファイバ2Cにおいては、振動発生位置Xから受光器6Bまでの間に偏光子が存在しない。したがって、偏波変動成分Bの偏波変動特性は光波強度の変動に変換されないので、受光器6Bにおいては、成分Bの偏波変動波形が検知されない。
【0012】
往路光ファイバ2Aの位置Xにおいて発生した偏波変動成分Aは、光合分波器5により復路光ファイバ2B及び復路光ファイバ2Cの各々へ分岐して伝播される。復路光ファイバ2Bへと分岐された偏波変動成分Aは、復路光ファイバ2Bの位置Xにおいて振動による偏波変動をいくらか受けた後、偏光子3Bを通過する。上述の場合と同様に、偏光子3Bから出力される光波の強度は偏波変動成分に依存して変動する。このようにして、受光器6Aにおいては、往路光ファイバ2A上で発生した偏波変動成分Aも、偏波変動成分Bに続いて複合して検知されるが、偏波変動成分Bの波形の立ち上がり時間よりも遅れて到達するため、偏波変動成分Bの波形の立ち上がり時間t1の計測には影響しない。一方、復路光ファイバ2Cへと分岐された偏波変動成分Aは、偏光子3Cをまず通過する。偏光子3Cから出力される光波の強度は偏波変動成分Aに依存して変動する。当該出力は復路光ファイバ2Cへ入射され、復路光ファイバ2Cの位置Xにおいて振動発生位置を通過する。復路光ファイバ2Cにおいては、受光器Bに至るまでの間に偏光子が存在しないため、復路光ファイバ2C上で振動による偏波変動が発生しても、その偏波変動は光波の強度変動には変換されず、受光器6Bはこの発生した偏波変動を検知しない。したがって、受光器6Bで検知される偏波変動波形は偏波変動波形A成分のみを表すことになる。
【0013】
従来技術においては、図2の受光器6Aに該当する受光器のみを使用して偏波変動成分AおよびBを検知していたため、時間的に先に到達する偏波変動成分Bの波形の中に偏波変動成分Aが埋もれてしまい、偏波変動成分Aの到達時間t2の判定が困難であった。これに対して、図2に示す本願発明の検知システムにおいては、受光器6Bの直前に偏光子が配置されていない復路光ファイバ2C上では、復路の位置Xにおける振動による偏波変動は光波強度に影響を与えず、復路光ファイバ2Cと受光器6Bとによって、偏波変動成分Aのみを検知することとなる。したがって、偏波変動成分Aの立ち上がり時間、すなわち、偏波変動成分Aの到達時間t2を精度よく計測することが可能となる。この結果、以下の計算式によって振動発生位置を精度よく検知することが可能となる。
【0014】
光源1から受光器6A及び6Bまでの往路および復路の光ファイバ全長をL[m]、光ファイバを伝播する光波の伝播速度をv[m/s]、光ファイバの屈折率をn、光速定数をc[m/s]、光源1から振動発生位置までの距離をXとし、偏波変動成分Aが受光器Bに到達するまでの時間をt2、偏波変動成分Bが受光器Aに到達するまでの時間をt1とすると、到達時間差Δtは、以下の式で表現される。
t1=X/v ・・・・・・・・・・・・・・・・ (式1)
t2=(L−X)/v ・・・・・・・・・・・・ (式2)
v=c/n[m/s] ・・・・・・・・・・・・ (式3)
Δt=t2−t1=(n/c)・(L−2X)・・ (式4)
ゆえに、光源から振動発生位置までの距離Xは、下記式で求めることができる。
X=(L−(c/n)・Δt)/2 ・・・・・・ (式5)
したがって、到達時間差Δtを計測することで、振動位置までの距離Xを求めることができるため、振動位置の検知が可能となる。
【実施例】
【0015】
本発明の一実施例を図3に示す。光源として例えば半導体レーザ光源1を、光ファイバとして例えばシングルモード光ファイバを、光合分波器として例えば溶融形光カプラ5を、受光器として例えばフォトダイオードからなる光受信器6A、6Bを用いる。半導体レーザ1の出力光波は、偏光子3Aで完全偏光された光波に変換されて往路光ファイバ2A上を伝播し、振動発生位置Xで偏波変動を受け(偏波変動成分A)、ダミーファイバ4を経由し、光カプラ5で分波される。復路光ファイバ2Bはフォトダイオード光受信器6Aの直前に挿入した偏光子3Bを介してフォトダイオード光受信器(6A)に接続され、もう一方の復路光ファイバ2Cは、光カプラ5の直後に接続した偏光子3Cとフォトダイオード光受信器6Bとの間に接続されている。
【0016】
フォトダイオード光受信器6Aが出力する電気信号は、復路の光ファイバ2B上の振動発生位置Xで偏波変動を受けた光波と、往路光ファイバ2A上の振動発生位置Xで偏波変動を受けた光波との両方を電気信号として検知し、受信した波形の観測手段としては、例えばオシロスコープ7が使用される。
【0017】
一方、復路の光ファイバ2Cにおいては、、往路上で発生した偏波変動成分Aが偏光子3Cにより光強度信号として変換されるが、フォトダイオード光受信器6Bの直前には偏光子が存在しない。このため、復路光ファイバ2C上の振動発生位置Xで偏波変動が生じても、フォトダイオード光受信器6Bは復路上の偏波変動を検知せず、偏波変動成分Aのみを表した電気信号を出力し、この電気信号がオシロスコープ7により観測される。
【0018】
オシロスコープ7で観測されるフォトダイオード光受信器6Aおよび6Bの2つの電気信号を同時に観測することで、各々の電気信号の観測時間、すなわち偏波変動成分Aおよび偏波変動成分Bの到達時間差Δt(t2−t1)を、オシロスコープ7の観測波形の立ち上がり時間から計測することができる。そして、前述した計算式にダミーファイバ4の長さLd[m]を加えた光ファイバの全長L[m]から、光源1から振動発生位置までの距離X、すなわち光ファイバに振動が加わった位置を算出することができる。この場合の計算式は、
X=((L+Ld)−(c/n)・Δt)/2 ・・・・・・・ (式6)
となる。
【0019】
往路および復路の光ファイバ長が短く、偏波変動成分AおよびBをオシロスコープ7で観測する場合には、Δtが小さくなって偏波変動成分A及びBの観測波形の立ち上がりを観測しにくくなる。このような場合には、ダミーファイバ4を挿入することによって、ダミーファイバ4を通過する時間分だけΔtを長くして、偏波変動波形成分Aおよび偏波変動波形成分Bを判定しやすくすることができる。
【0020】
また、オシロスコープ7で観測される各波形の到達時間差Δtは、各波形の到達時間t1およびt2を計測することで得られる。その際、フォトダイオード光受信器6Aで得られる波形は、偏波変動成分Bと遅れて到達する偏波変動成分Aとが複合された波形ではあるが、立ち上がり時間に着目して到達時間を判定することで、偏波変動成分Aの波形に影響されないで到達時間t1を計測することができる。同様に、フォトダイオード光受信器6Bで検知された波形の到達時間t2も、立ち上がり時間に着目して到達時間を判定すればよい。
【0021】
なお、構成上の注意点として、半導体レーザ光源1からフォトダイオード光受信器6Aまでの長さと半導体レーザ光源1からフォトダイオード光受信器6Bまでの長さとはは同一にしておくこととなる。複数の光ファイバを複合した光ファイバケーブルを用いることにより、この条件を満たすシステムを構築することが可能である。
【0022】
図2および図3においては、光源1の直後に偏光子3Aを挿入することで、光源から往路光ファイバに導入される光波を完全偏光としている。しかし、光源1として半導体レーザ1を利用する場合には、その出力光波は半導体レーザから出力された時点ですでに偏光しているため、偏光子3Aは省略することもできる。
【0023】
また、図3においては、一例として、光合分波器として溶融型光カプラを用いる構成を示した。しかし、溶融型光カプラを用いると通過光信号の挿入損失が大きくなるため、挿入損失を低減するべく、光サーキュレータを用いてもよい。
【0024】
さらに、往路光ファイバ及び復路光ファイバとして既設の光ファイバケーブルを利用する場合等、利用できる光ファイバ数に制限があるような場合には、図4に示すように、光合分波器5A、5B、5Cを配置して、往路、復路の光ファイバ数を合計2本にすることもできる。図4の構成においては、光合分波器5A及び5Bとして光サーキュレータを使用することができる。
【0025】
また、図5に示すように、発光する光の波長が異なる2つの光源1Aおよび1Bと、光波長によって分岐方向が異なるという特性を持つ波長合成分解器(例えば、WDMカプラ)7A、7B、7C及び7Dを用いて、往路および復路の光ファイバを1本で構成することもできる。図5において、光源1から出力される波長λ1の光波と光源2から出力される波長λ2の光波は、WDMカプラ7Aにより合成され、偏光子3Aにより完全偏光に変換され、光合分波器5A(光サーキュレータ)を通過する。これらの光波は、光ファイバ2を伝播した後、もう一つの光合分波器5B(光サーキュレータ)及びダミーファイバ4を介してWDMカプラ7Bにより別々の方向に分岐される。図5においては、分岐された波長λ1の光波は偏光子3Bに入射して、偏波変動に依存した強度変動を伴って出力され、WDMカプラ7Bに入射する。一方、分岐された波長λ2の光波はWDMカプラ7Cに入射し、偏光子から出力された波長λ1の光波と再び合成される。この合成された光波はサーキュレータ5Bを通過して、再び光ファイバ2を伝播するようになっている。
【0026】
図5の構成において、位置Xで振動が発生すると、光ファイバ2中を図中の右方向及び左方向にそれぞれ伝播する合成光波(波長λ1及びλ2)の偏波状態は変動する。右方向の合成光波に生じる偏波変動成分をAとし、左方向の合成光波に生じる偏波変動成分をBとすると、偏波変動成分Bの方が光サーキュレータ5A及びWDMカプラ7Dを先に通過して受信器6A又は6Bに入射し、その後、偏波変動成分Aが受信器6A又は6Bに遅れて入射する。
【0027】
光ファイバ2の振動発生位置において発生した偏波変動成分Bは、光ファイバ2を伝播した後に光サーキュレータ5Aを通過してWDMカプラ7Dに入射する。合成光波はここで分岐され、偏波変動成分Bを有する波長λ2の光波は偏光子3Cに入射する。偏光子3Cは特定の偏波状態の光波のみを通過させるので、偏光子3Cから出力される波長λ2の光波の強度は、偏波変動成分Bの偏波変動特性に依存して変動する。したがって、受光器6Aにより成分Bの偏波変動波形が検知され、偏波変動成分Bの立ち上がり時間、すなわち、偏波変動成分Bの到達時間t1を観測することができる。一方、WDMカプラ7Dにおいて分岐された、偏波変動成分Bを有する波長λ1の光波は受光器6Bに直接入射する。WDMカプラ7Dから受光器6Bまでの間に偏光子が存在しないので、偏波変動成分Bの偏波変動特性は波長λ1の光波の強度変動に変換されない。したがって、受光器6Bにおいては成分Bの偏波変動波形が検知されない。
【0028】
光ファイバ2の振動発生位置において発生した偏波変動成分Aは、光サーキュレータ5B及びダミーファイバ4を通過した後、WDMカプラ7Bに入射する。合成光波はここで分岐され、偏波変動成分Aを有する波長λ2の光波はWDMカプラ7Cに直接入射する。一方、偏波変動成分Aを有する波長λ1の光波は、偏光子3Bにより、成分Aの偏波変動特性に依存した強度変動を有する光波に変換された後にWDMカプラ7Bに入射する。再び合成された波長λ1及びλ2の光波は光ファイバ2を伝播し、振動による偏波変動をいくらか受けた後、光サーキュレータ5Aを介してWDMカプラ7Dに入射し、ここで分岐される。波長λ2の光波は偏光子3Cに入射される。偏光子3Cから出力される光波の強度は偏波変動成分に依存して変動する。このようにして、受光器6Aにおいては、光ファイバ2上で発生した偏波変動成分Aも、偏波変動成分Bに続いて複合して検知されるが、偏波変動成分Bの波形の立ち上がり時間よりも遅れて到達するため、偏波変動成分Bの波形の立ち上がり時間t1の計測には影響しない。一方、WDMカプラ7Dにおいて分岐された波長λ1の光波は受光器6Bに直接入射する。受光器6Bに至るまでの間に偏光子が存在しないため、受光器6Bに入射する光波は、偏波変動成分Aのみに依存する強度変動を有する。したがって、受光器6Bで検知される偏波変動波形は偏波変動波形A成分のみを表すことになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】従来技術の構成で観測される偏波変動波形を示す図である。
【図2】本発明の位置検知装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の位置検知装置の一実施例を示す図である。
【図4】本発明の位置検知装置の他の実施例を示す図である。
【図5】本発明の位置検知装置の他の実施例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光させた光波を折返部を介して往復させる並列した往路側導波手段および復路側導波手段と、前記往路側導波手段上に設けられ、負荷により所定の偏光成分強度に変化をもたらす往路側検知領域と、前記復路側導波手段上に設けられ、負荷により所定の偏光成分強度に変化をもたらす復路側検知領域と、前記往路側検知領域で生じた偏光成分強度を検知する第1の受光部と、前記往路側検知領域および復路側検知領域で生じた偏光成分の強度を検知する第2の受光部を備えたことを特徴とする検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の検知装置であって、前記折返部より先、かつ前記復路側検知領域より手前に第1の光分波器を備え、復路側光波を2分して一方の光波を前記復路側検知領域より手前に設けた第1の偏光子を介して前記第1の受光部に導波し、他方の光波を前記復路側検知領域より先に設けた第2の偏光子を介して前記第2の受光部に導波することを特徴とする検知装置
【請求項3】
請求項2に記載の検知装置であって、前記往路側導波手段は第1の光ファイバであり、
前記一方の光波は第2の光ファイバを導波し、前記他方の光波は第3の光ファイバを導波することを特徴とする検知装置。
【請求項4】
請求項2に記載の検知装置であって、前記往路側導波手段および前記復路側導波手段の一部は第1の光ファイバであり、前記一方の光波は、第2の光ファイバを導波し、前記他方の光波は、所定区間を第1の光合波器で第1の光ファイバに合波されて導波し、前記第2の受光器手前で第2の光分波器により分波され、第2の偏光子を介して第2の受光器に導波されることを特徴とする検知装置。
【請求項5】
請求項2に記載の検知装置であって、前記往路側導波手段および前記復路側導波手段の一部は第1の光ファイバであり、前記偏光された光波は、第1及び第2の波長を有し、前記第1の分波器は前記第1の波長及び第2の波長に分波する波長分解器であり、前記一方の光波は、第1の波長を有し、前記他方の光波は第2の波長を有し、前記一方の光波が前記第1の偏光子を通過後に第2の光合波器により他方の光波と合波され、前記第1の合波器によって前記第1の光ファイバに合波して所定区間を導波し、前記第2の光分波器により分波し、さらに第3の光分波器によって第1の波長を有する一方の光波と第2の波長を有する他方の光波に分波し、前記第1の波長を有する光波は前記第1の受光器へ、前記第2の波長を有する光波は前記第2の偏光子を介して前記第2の受光器へ導波されることを特徴とする検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−255966(P2007−255966A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78166(P2006−78166)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】