傾斜機能性複合材料の製造方法
【課題】製品構成の自由度が図れ、目的とする寸法形状や必要な強度を得ることが可能な傾斜機能性複合材料の製造方法を提供する。
【解決手段】円柱の半径方向の外側に材料11を、内側に材料12を、その間に傾斜機能材料13を、それぞれ同心円状に配置した傾斜機能性複合材料10の製造方法であり、傾斜機能材料13を、材料12の粉末に材料11の粉末を傾斜配合した積層体とし、しかもこの積層体を、材料11の粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体で構成し、材料11、積層体、及び材料12を、融点の高い側から低い側へかけて、順次、加圧加熱処理をすることで材料11、積層体、材料12、及びそれらの界面も結合する。
【解決手段】円柱の半径方向の外側に材料11を、内側に材料12を、その間に傾斜機能材料13を、それぞれ同心円状に配置した傾斜機能性複合材料10の製造方法であり、傾斜機能材料13を、材料12の粉末に材料11の粉末を傾斜配合した積層体とし、しかもこの積層体を、材料11の粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体で構成し、材料11、積層体、及び材料12を、融点の高い側から低い側へかけて、順次、加圧加熱処理をすることで材料11、積層体、材料12、及びそれらの界面も結合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融点の異なる材料を接合した円筒又は円柱の形状を有する製品、例えば、自動車用電動モータや家電用モータの整流子、又はテンションローラ(高分子材料の薄層フィルムを製造する際に、ある温度環境で引張りながら巻取るローラや溶融めっきの電極材)等への使用に適した傾斜機能性複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用電動モータや家電用モータには、整流子が使用されている。
この整流子は、円筒型をしており、電気の良導体である金属(銅)と絶縁体である高分子材料(フェノール樹脂)の結合体であるため、高速連続運転時に発生する熱に起因する熱応力や、断続運転に起因する疲労現象により、金属と高分子材料との界面に亀裂が生じ、最終的に破壊する恐れがあるため、安全性の確保や長寿命化が望まれてきた。
そこで、この円筒型の整流子に傾斜機能材料の概念を導入し、電気の良導体である銅と絶縁体であるフェノール樹脂という2つの性質を持ち、同時に単一の界面ではなく、傾斜層により熱応力や応力集中を緩和する傾斜機能性複合材料の導入が試みられてきた。
【0003】
上記した円筒型(円柱も同様)の傾斜機能性複合材料において、その半径方向に組成を傾斜させる方法としては、例えば、特許文献1、2に示す方法がある。
特許文献1には、円筒状の型枠にスラリーを入れて遠心力を付加することにより、外周から内周にかけて傾斜組成を連続形成してパイプ形状に成形する方法が記載されている。具体的には、2種類以上の粉末材料に有機分散剤及び溶媒を加えてスラリーを作製し、このスラリーに遠心力を付与することにより、傾斜組成を形成している。
また、特許文献2には、円筒状の仕切体と、内部に同心円状に階段状凹部を持つ円柱状凸起の支持台とを組合わせ、半径方向に組成を傾斜させた傾斜機能性複合材料を作製する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−103135号公報
【特許文献2】特開2008−307071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、遠心力を利用するため、2種類の粉末原料に密度差があると、密度の大きい材料の組成が外周側へ偏ることになる。つまり、内周側へ密度の大きい材料の組成を配置することが困難である。
また、特許文献2の方法では、仕切体の間に各混合粉を充填するため、仕切体の間隔を狭くするとブリッジ等が発生し易く、粉末の均一な充填が難しい。特に、軸方向に長い傾斜機能材料を造る場合、仕切体の高さを高くする必要があるが、仕切体を高くし、隣り合う仕切体の間隔を狭くすると、ブリッジ等が更に発生し易くなり、粉末の充填がますます阻害され、良好な傾斜組成化した層の形成が難しくなる。
更に、特許文献1、2のいずれの方法も、傾斜機能性複合材料を構成する2種類の材料の配合割合を考慮することなく、一度の焼結で製造しようとしているため、例えば、各層ごとの収縮や膨張が考慮されておらず、目的とする寸法形状や必要な強度を得ることが難しい。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、製品構成の自由度が図れ、目的とする寸法形状や必要な強度を得ることが可能な傾斜機能性複合材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る傾斜機能性複合材料の製造方法は、円筒又は円柱の半径方向内側又は外側の一方に材料Xを、他方に該材料Xとは融点の異なる材料Yを、前記材料Xと前記材料Yの間に傾斜機能材料を、それぞれ同心円状に配置した傾斜機能性複合材料の製造方法であって、
前記傾斜機能材料を、前記材料Yの粉末に前記材料Xの粉末を傾斜配合した積層体とし、しかも該積層体を、該材料Xの粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体で構成し、
前記材料X、前記積層体、及び前記材料Yを、融点の高い側から低い側へかけて、順次、加圧加熱処理をすることで、前記材料X、前記積層体、前記材料Y、及びそれらの界面も結合する。
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係る傾斜機能性複合材料の製造方法は、円筒又は円柱の半径方向内側又は外側の一方に金属材料を、他方に有機樹脂材料Aを、前記金属材料と前記有機樹脂材料Aの間に傾斜機能材料を、それぞれ同心円状に配置した傾斜機能性複合材料の製造方法であって、
前記傾斜機能材料を、前記有機樹脂材料A又は前記有機樹脂材料Aと接合可能な有機樹脂材料Bの粉末に、前記金属材料の粉末を傾斜配合した積層体とし、しかも該積層体を、該金属材料の粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体で構成し、
前記金属材料、前記積層体、及び前記有機樹脂材料Aを、融点の高い側から低い側へかけて、順次、加圧加熱処理をすることで、前記金属材料、前記積層体、前記有機樹脂材料A、及びそれらの界面も結合する。
【0009】
第2の発明に係る傾斜機能性複合材料の製造方法において、前記積層体には無機質繊維Cを添加し、前記金属材料に線膨張係数を近似させたことが好ましい。
また、他方に配置される前記有機樹脂材料Aには無機質繊維Dが含まれることが好ましい。
【0010】
第1、第2の発明に係る傾斜機能性複合材料の製造方法において、前記円筒状圧粉体は、予め金型により圧縮成形した複数の環状圧粉体を軸方向に積層して形成することが好ましい。
ここで、前記各環状圧粉体の成形は、前記金型の温度を上げて又は前記環状圧粉体を構成する原料粉末の湿度を下げて、前記環状圧粉体を構成する際に原料粉末の流動性を高めて行うのがよい。
更に、第1、第2の発明に係る傾斜機能性複合材料の製造方法において、前記加圧加熱処理には、放電プラズマ焼結法を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明に係る傾斜機能性複合材料の製造方法は、傾斜機能材料を、材料Yの粉末に材料Xの粉末を傾斜配合した積層体とし、しかも積層体を、材料Xの粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体で構成するため、積層体を、材料Xの粉末の配合割合ごとに独立した円筒状圧粉体で構成できる。
また、材料X、積層体、及び材料Yを、融点の高い側から低い側へかけて、順次、加圧加熱処理をすることで、材料X、積層体、材料Y、及びそれらの界面も結合するので、材料Xの粉末の配合割合の変化による収縮や膨張を考慮しながら、傾斜機能性複合材料を製造できる。
従って、製品構成の自由度が図れ、目的とする寸法形状や必要な強度が得られる傾斜機能性複合材料を製造できる。
【0012】
第2の発明に係る傾斜機能性複合材料の製造方法は、傾斜機能材料を、有機樹脂材料A又は有機樹脂材料Aと接合可能な有機樹脂材料Bの粉末に、金属材料の粉末を傾斜配合した積層体とし、しかも積層体を、金属材料の粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体で構成するため、積層体を、金属材料の粉末の配合割合ごとに独立した円筒状圧粉体で構成できる。
また、金属材料、積層体、及び有機樹脂材料Aを、融点の高い側から低い側へかけて、順次、加圧加熱処理をすることで、金属材料、積層体、有機樹脂材料A、及びそれらの界面も結合するので、金属材料の粉末の配合割合の変化による収縮や膨張を考慮しながら、傾斜機能性複合材料を製造できる。
従って、製品構成の自由度が図れ、目的とする寸法形状や必要な強度が得られる傾斜機能性複合材料を製造できる。
【0013】
ここで、積層体に無機質繊維Cを添加し、金属材料に線膨張係数を近似させた場合、積層体の金属材料側の線膨張係数を金属材料とほぼ同様の値に調整できる。これにより、線膨張係数の差に起因した積層体と金属材料との界面における隙間の発生を抑制、更には防止できる。
【0014】
また、円筒状圧粉体を、予め金型により圧縮成形した複数の環状圧粉体を軸方向に積層して形成する場合、積層された各環状圧粉体の密度を均一にでき、円筒状圧粉体を軸方向にわたって略均一にできる。これは、環状圧粉体の軸方向の長さが、円筒状圧粉体の長さと比較して短く、しかも環状圧粉体が圧縮成形されているため、略均一な密度の環状圧粉体を成形できることによる。なお、複数の環状圧粉体を軸方向に積層することで、円筒状圧粉体の軸方向の長さも調整できる。
そして、各環状圧粉体の成形を、金型の温度を上げて又は環状圧粉体を構成する原料粉末の湿度を下げて、環状圧粉体を構成する際に原料粉末の流動性を高めて行う場合、金型内へ流し込まれた原料粉末内の空隙を低減できる。
【0015】
更に、加圧加熱処理に、放電プラズマ焼結法を用いる場合、傾斜機能性複合材料の製造を、省電力かつ短時間に実施できるため、生産効率の向上と製造コストの低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る傾斜機能性複合材料の製造方法で製造した傾斜機能性複合材料の正断面図、(B)は(A)を機械加工した製品の正断面図である。
【図2】(A)〜(D)はそれぞれ同傾斜機能性複合材料の製造方法による高融点材リッチ層の環状圧粉体の成形工程の説明図である。
【図3】(A)〜(F)はそれぞれ同高融点材リッチ層の環状圧粉体の成形工程の説明図である。
【図4】(A)〜(D)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る傾斜機能性複合材料の製造方法による低融点材リッチ層の環状圧粉体の成形工程の説明図である。
【図5】(A)〜(F)はそれぞれ同低融点材リッチ層の環状圧粉体の成形工程の説明図である。
【図6】(A)〜(D)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る傾斜機能性複合材料の製造方法による有機樹脂材料の成形工程の説明図である。
【図7】(A)〜(F)はそれぞれ同有機樹脂材料の成形工程の説明図である。
【図8】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る傾斜機能性複合材料の製造方法による高融点材リッチ層の環状圧粉体と金属材料との焼結工程の説明図である。
【図9】同焼結工程の説明図である。
【図10】(A)、(B)はそれぞれ同焼結工程の説明図、(C)は同焼結工程により得られた焼結体の正断面図、(D)は(C)を機械加工した後の焼結体の正断面図である。
【図11】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る傾斜機能性複合材料の製造方法による傾斜機能性複合材料の焼結工程の説明図である。
【図12】(A)、(B)はそれぞれ同焼結工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、本発明の一実施の形態に係る傾斜機能性複合材料の製造方法により製造した傾斜機能性複合材料について説明した後、本発明の一実施の形態に係る傾斜機能性複合材料の製造方法について説明する。
【0018】
図1(A)に示すように、傾斜機能性複合材料(以下、単に複合材料ともいう)10は、円柱の半径方向外側(一方)に銅(材料Xである金属材料の一例)11を、内側(他方)に銅11より融点の低い熱硬化性フェノール樹脂(材料Yである有機樹脂材料Aの一例)12を、銅(Cu)11とフェノール樹脂12の間に傾斜機能材料13を、それぞれ同心円状に配置したものである。
この傾斜機能性複合材料10は、フェノール樹脂の粉末(以下、フェノール樹脂粉末ともいう)に銅の粉末(以下、銅粉ともいう)を傾斜配合して焼結させた焼結体であり、銅11側からフェノール樹脂12側へかけて2つの層、即ち半径方向の外側層14、内側層15が段階的(ここでは、2段階)に設けられたものである。なお、図1(B)は、自動車用電動モータに設けられた整流子16を示しており、整流子16は、傾斜機能性複合材料10を機械加工して形成したものである。
【0019】
傾斜機能材料13の厚みは、銅11とフェノール樹脂12とを接合できれば、特に限定されるものではないが、整流子に使用する場合は、従来品の整流子(アンカータイプ)における銅部分の埋め込み深さ以内(例えば、10mm以下)とすることが好ましい。
整流子における銅部分の埋め込み深さは、フェノール樹脂部分に絶縁層を併せ持たせる必要があることから整流子のタイプによってその形状や寸法が異なるため、一概に設定することが困難である。しかし、例えば、汎用性のあるタイプの整流子に着目すると6mm以下(下限は、2mm程度)が好ましい。なお、製品によっては、銅部分により近づいたポイントでも絶縁がとれる必要があることから、傾斜機能材料の厚みを更に好ましくは2〜3mm程度とするのがよい。
【0020】
傾斜機能材料を構成する半径方向の積層数は、複合材料の製造時や使用時の応力を緩和し、割れの発生を防止する観点から、多い方(例えば、10層程度まで)が望ましいが、層数を多くすると製造時の時間やコストが増大する。このため、複合材料の機能とコストを両立させるため、層数を5層以下(下限は、1層、更には2層)とするのがよい。
なお、各層14、15を形成する銅粉の傾斜配合は、銅11側からフェノール樹脂12側へかけて、銅粉の配合割合を減少させた配合とする。例えば、銅の含有量を、層14では65〜85質量%(ここでは75質量%)と多く、層15では40〜60質量%(ここでは50質量%)と層14よりも少なくする。
【0021】
ここで、複合材料10の各層14、15の形成に使用する銅の粉末には、電解により得られたフレーク状のものを使用する。
電解により得られた銅粉は、薄い層を形成するために粒径をある程度細かくすることができる(例えば、平均粒径が30〜60μm程度)。また、成型性に優れるため、層中の銅の割合が多くなっても、圧粉体の成型性が低下しない作用を備えている。更に、電解により得られた銅粉は、アトマイズにより得られた銅粉よりも、熱伝導率が高いことから、熱放出(割れ防止)の観点からも好ましい。
しかし、銅粉には、アトマイズ粉を使用することもできる。このアトマイズ粉は、一般に球形で流動性がよく、樹脂粉との混合時における均一混合性がよい。
更に、銅粉には、例えば、銀コーティングの銅粉等も使用でき、これにより電気伝導率を向上させて薄膜化を図ることができる。
【0022】
以上に示した複合材料に使用する金属は、銅に限定されるものではなく、樹脂との接合が考えられる他の金属材料、例えば、アルミニウムやニッケル、又はステンレス等を使用することもできる。
また、樹脂にフェノール樹脂を使用したが、これに限定されるものではなく、金属との接合が考えられる他の樹脂、例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等(例えば、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)樹脂)を使用することもできる。
なお、複合材料の各層の形成に使用する樹脂には、接合対象であるフェノール樹脂との接合性が良好な同一成分のフェノール樹脂を使用したが、接合性が良好(接合可能)であれば、フェノール樹脂以外の他の樹脂(有機樹脂材料B)でもよい。
【0023】
また、傾斜機能材料は、フェノール樹脂の粉末とガラス繊維(無機質繊維Cの一例)との混合物に、銅の粉末を傾斜配合して焼結させた焼結体で構成することもできる。
このガラス繊維には、アスペクト比が10〜500(好ましくは、上限を450、更には400)のものを使用することが好ましい。これにより、金属材料と有機樹脂材料及びガラス繊維との混合性(分散性)を良好にでき、その結果、製品品質の向上が図れる。
なお、ガラス繊維の含有量は、傾斜機能材料の線膨張係数(熱膨張係数)が、銅の線膨張係数に近似する(近傍となる)ように調整されている。
【0024】
ここで、銅の線膨張係数に近似するとは、線膨張係数の差による割れの発生を防止できる値、例えば、常温(20℃)を基準とした銅の線膨張係数の±10%(好ましくは±7%、更に好ましくは±5%)以内程度である。具体的には、銅の線膨張係数が16.5×10−6(K−1)であり、熱硬化性フェノール樹脂の粉末とガラス繊維との混合物の線膨張係数が16×10−6(K−1)である。なお、フェノール樹脂の線膨張係数は40〜60×10−6(K−1)であり、ガラス繊維の線膨張係数は銅の線膨張係数よりも小さい。
この熱硬化性フェノール樹脂の粉末とガラス繊維は、予め混合されその混合物の線膨張係数が調整されたものを使用することが好ましい。
【0025】
加熱温度が比較的低温である50〜100℃の範囲では、焼結体の線膨張係数を上記した方法で調整しているため、フェノール樹脂の含有率による影響はほとんどなく、焼結体の線膨張係数はほぼ一定である。
しかし、加熱温度を上昇させると、焼結体の線膨張係数がフェノール樹脂の含有量に影響され、焼結体の線膨張係数が大きくなる。このため、混合物に銅粉を傾斜配合した層を、銅側からフェノール樹脂側へかけて複数形成することで、隣合う層の界面で傾斜機能性複合材料にかかる応力を分散でき、傾斜機能性複合材料の割れを抑制できる。この分割は、隣合う各層の線膨張係数の差が±20%(好ましくは±15%、更に好ましくは±10%)以内となるように行うのがよい。
なお、傾斜配合した層は、銅粉の含有率を徐々に変化させ、焼結後は各層の含有率をなだらかにして、連続的にすることもできる。
【0026】
ここでは、無機質繊維Cにガラス繊維を使用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、有機樹脂材料との混合物の線膨張係数を金属材料の線膨張係数近傍となるように調整できる他の無機質繊維、例えば、セラミックス繊維やウィスカー等を使用することもできる。
更に、傾斜機能性複合材料の他方側のフェノール樹脂に、無機質繊維Dが含まれてもよい(無機質繊維Dの含有量は、例えば、0を超え50質量%以下程度)。この無機質繊維Dには、上記した無機質繊維Cと同一形状で同一材質のものを使用できるが、異なる形状又は材質のものを使用することもできる。
なお、傾斜機能性複合材料の径方向両側に配置される銅とフェノール樹脂は、塊状物を機械加工することにより成形できるが、粉末原料を焼結して製造してもよい。
【0027】
続いて、本発明の一実施の形態に係る傾斜機能性複合材料の製造方法について説明する。
図1(A)、(B)に示す傾斜機能性複合材料10の製造に際しては、銅11とフェノール樹脂12の間に配置される傾斜機能材料13を、フェノール樹脂の粉末に銅の粉末を傾斜配合した積層体とし、しかもこの積層体を、銅の粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体、即ち層14(高融点材リッチ層)となる円筒状圧粉体と、層15(高融点材リッチ層よりも融点の低い低融点材リッチ層)となる円筒状圧粉体とで構成する。
【0028】
この各円筒状圧粉体を成形するに際しては、図2、図3に示す金型20を使用する。
図2(A)に示すように、金型20は、ステンレス鋼製のものであり、受け皿21と、受け皿21の中央に軸心を合わせて立設配置される円柱状の中子22と、受け皿21に立設され、中子22の外周面とは一定の隙間23を有して配置される円筒型のダイ24とを有している。なお、中子22とダイ24はそれぞれ、複数の案内ボルト25〜27を介して受け皿21に取付け取外し可能になっている。
上記した中子22の外周面とダイ24の内周面とで形成される隙間23には、円筒型のパンチ28が挿入可能となっており、このパンチ28は、パンチ押さえ部材29により、受け皿21に対して所定の圧力で押圧可能になっている。なお、隙間23の内幅は、製造する層14の厚みに応じて、ダイ24の内径又は中子22の外径を変えることで調整できる。
【0029】
まず、層14となる円筒状圧粉体の製造方法について、図2、図3を参照しながら説明する。
図2(B)に示すように、隙間23内に層14を構成する原料粉体30を充填する。なお、隙間23への原料粉末30の充填は、中子22とダイ24の温度を上げて(温度:50〜100℃程度)、又は原料粉末30の湿度を下げて(湿度:30%以下程度)、環状圧粉体31を構成する際に原料粉末30の流動性を高めながら行うのがよい。
次に、図2(C)に示すように、充填した原料粉末30の上にパンチ28を配置し、更に、図2(D)に示すように、パンチ28の上にパンチ押さえ部材29を配置する。そして、図3(A)に示すように、パンチ押さえ部材29を押圧し、円筒状圧粉体よりも軸方向の長さが短い短尺の環状圧粉体31を成形する。なお、パンチ押さえ部材29の押圧力は、環状圧粉体31の成型後の密度を考慮して調整する。
【0030】
この環状圧粉体31は、環状圧粉体31の軸方向の品質(密度等)を略均一にする観点から、アスペクト比(=(外径)/(軸方向の長さ))を1〜20(好ましくは下限を5)とするのがよい。従って、このアスペクト比を考慮して、隙間23内に充填する原料粉末30の量を調整することが好ましい。
このように、環状圧粉体31を成形した後は、図3(B)に示すように、隙間23内からパンチ押さえ部材29を取外し、図3(C)に示すように、受け皿21から中子22とダイ24を取外す。そして、図3(D)に示すように、ダイ24の下に圧粉体抜取り治具32を配置し、再度、パンチ28の上にパンチ押さえ部材29を配置した後、図3(E)に示すように、パンチ押さえ部材29を押圧することで、圧粉体抜取り治具32の抜取り用受け皿21a上にパンチ28と環状圧粉体31を押出し、図3(F)に示すように、環状圧粉体31を成形できる。
【0031】
なお、円筒状圧粉体の軸方向の長さは、上記した操作を繰り返し行うことで製造した複数の環状圧粉体31を軸方向に積層して調整することが好ましい。
従って、円筒状圧粉体の軸方向の長さが、1つの環状圧粉体31で充分である場合は、上記した操作を繰り返し行う必要はない。
【0032】
次に、層15となる円筒状圧粉体の製造方法について、図4、図5を参照しながら説明するが、上記した層14と略同様の方法であるため、同一部材には同一番号を付して説明する。
なお、ここで成形する環状圧粉体33は、上記した層14の内側に配置して焼結されるため、成形する環状圧粉体33の外径を、層14の内径と同等に又は僅かに(2mm以下程度)小さくする。そのため、ここでは、これに応じた図4(A)に示す金型34(寸法以外は金型20と同一構成)を使用する。
まず、図4(B)に示すように、隙間35内に層15を構成する原料粉体36を充填する。
【0033】
次に、図4(C)に示すように、充填した原料粉末36の上にパンチ37を配置し、図4(D)に示すように、パンチ37の上にパンチ押さえ部材38を配置する。そして、図5(A)に示すように、パンチ押さえ部材38を押圧し、円筒状圧粉体よりも軸方向の長さが短い短尺の環状圧粉体33を成形する。
このように、環状圧粉体33を成形した後は、図5(B)に示すように、隙間35内からパンチ押さえ部材38を取外し、図5(C)に示すように、受け皿39から中子40とダイ41を取外す。そして、図5(D)に示すように、ダイ41の下に圧粉体抜取り治具42を配置し、再度、パンチ37の上にパンチ押さえ部材38を配置した後、図5(E)に示すように、パンチ押さえ部材38を押圧することで、圧粉体抜取り治具42の抜取り用受け皿39a上にパンチ37と環状圧粉体33を押出し、図5(F)に示すように、環状圧粉体33を成形できる。
【0034】
最後に、フェノール樹脂12となる円柱状圧粉体の製造方法について、図6、図7を参照しながら説明する。なお、ここで使用する図6(A)に示す金型43は、前記した金型20、34の中子がなく、その寸法が異なっているのみであり、他の機能は同一であるため、同一部材には同一番号を付して説明する。
まず、図6(B)に示すように、円筒型のダイ44内に、フェノール樹脂12を構成する原料粉体45を充填する。次に、図6(C)に示すように、充填した原料粉末45の上にパンチ46を配置し、図6(D)に示すように、パンチ46の上にパンチ押さえ部材47を配置する。そして、図7(A)に示すように、パンチ押さえ部材47を押圧し、円筒状圧粉体よりも軸方向の長さが短い短尺の圧粉体48を成形する。
【0035】
このように、圧粉体48を成形した後は、図7(B)に示すように、ダイ44内からパンチ押さえ部材47を取外し、図7(C)に示すように、受け皿49からダイ44を取外す。そして、図7(D)に示すように、ダイ44の下に圧粉体抜取り治具50を配置し、再度、パンチ46の上にパンチ押さえ部材47を配置した後、図7(E)に示すように、パンチ押さえ部材47を押圧することで、圧粉体抜取り治具50の抜取り用受け皿49a上にパンチ46と圧粉体48を押出し、図7(F)に示すように、圧粉体48を成形できる。
【0036】
続いて、上記した環状圧粉体31、33、圧粉体48を用いて、傾斜機能性複合材料10を製造する方法について説明する。
傾斜機能性複合材料10の焼結(加圧加熱処理)は、図8〜図12に示す放電プラズマ焼結装置を用いて、放電プラズマ焼結法(SPS法:Spark Plasma Sintering)により行う。
放電プラズマ焼結法は、例えば、取扱い操作の容易さ、ランニングコストの低廉さ、材料を選ばない多様性、ハイスピード焼結等の特性をもち、焼結技術の熟練を不要とし、金属、セラミックス、ポリマー、コンポジット材料をはじめ、傾斜機能材料、ナノフェーズ材料、熱電半導体材料など、広範囲の材料を対象とする焼結法である。
【0037】
この方法は、圧粉体粒子間隙に低電圧でパルス状の大電流を投入し、火花放電現象により瞬時に発生する放電プラズマによる表面熱拡散や電解拡散等の効果を応用したものである。これにより、従来法に比べ200〜500℃ほど低い温度域で、昇温と保持の時間を含め、金属やセラミックでも概ね5〜20分程度の短時間で焼結を完了できる。なお、この方法は、ON−OFF直流パルス通電を用いた加圧焼結法の一種であり、パルス通電では、焼結の進行状況を観測しながら投入エネルギーをデジタル的に精度よく制御することができる。
【0038】
この方法を用いた異種材料の接合については、主に、融点の高い金属同士、あるいは金属/セラミックスの接合について、従来から研究開発がなされているが、融点や線膨張係数の大きく異なる樹脂と金属の接合に用いられた例はなかった。そのため、金型内に金属部品を装填し、この金属部品の周りに樹脂を注入(充填)する「インサート成形」が主流であった。
しかし、以下に示す方法により、図8(A)に示す放電プラズマ焼結装置を用いて傾斜機能性複合材料10を製造できる。
【0039】
図8(A)に示すように、使用する放電プラズマ焼結装置に設けられた焼結用治具60は、下部スペーサ61と、この下部スペーサ61の中央に軸心を合わせて立設され、その下側が外方へ向けて拡径した円筒型の下部パンチ62を有している。なお、下部スペーサ61と下部パンチ62はグラファイト製である。
この下部パンチ62の外周には、ステンレス鋼製のストッパー63が嵌め込まれ、下部パンチ62の拡径した部分により、ストッパー63が所定の高さ位置に支持されている。また、下部パンチ62の外周には、セラミックス製の絶縁リング64も嵌め込まれ、この絶縁リング64がストッパー63上に配置されている。
そして、下部パンチ62内には、円柱状の中子65の下部が嵌入され、中子65が下部パンチ62を介してスペーサ61上に立設されている。なお、中子65は、グラファイトで構成されているが、導電性のないセラミックス等で構成するのが好ましい。
【0040】
まず、層14の製造方法について、図8〜図10を参照しながら説明する。
図8(A)、(B)に示すように、絶縁リング64上に傾斜機能性複合材料10を構成する円筒型の銅11をセットする。これにより、銅11の内周面と、中子65の外周面との間に隙間66が形成される。
そして、図8(B)、図9に示すように、隙間66内に、層14を構成する環状圧粉体31を、中子65の外周面に沿って、予め設定した高さまで複数個積み上げ、残存する隙間66(環状圧粉体31が配置されていない部分)に円筒型の上部パンチ67の下部を嵌め込む。なお、中子65は、銅11の内周面側に複数の環状圧粉体31を積み上げた後、環状圧粉体31内に挿入してもよい。また、積み上げられた環状圧粉体31と中子65との間に、BN(ボロンナイトライド)又はカーボンペーパーを配置することで、焼結体の中子65からの焼結体の離型を容易にすることが好ましい。
【0041】
次に、図9、図10(A)に示すように、銅11の外周を囲むように、グラファイト製又はステンレス鋼製のダイ68を配置し、上部パンチ67上に上部スペーサ69を取付ける。なお、上部パンチ67と上部スペーサ69はグラファイト製である。
ここで、ダイ68は、上部にボルト70が取付けられたボルト受け71を介して、下部スペーサ61上に支持されている。このボルト70はセラミックス製であり、ボルト受け71はステンレス鋼製である。
これらを放電プラズマ焼結装置の真空チャンバー(図示しない)内に配置し、上部パンチ67と下部パンチ62を、上部パンチ電極と下部パンチ電極(図示しない)とで挟込み、加圧手段(図示しない)により加圧する。
【0042】
そして、電源により、上部パンチ電極と下部パンチ電極に通電して、図10(B)に示すように、環状圧粉体31の焼結を行う。なお、焼結の際、環状圧紛体31と銅11の界面も結合される(1回目の焼結)。
この焼結は、銅11と銅の含有率が高い層14の焼結であるため、焼結保持温度を400〜550℃(ここでは、450〜500℃)とし、保持時間を2〜10分(ここでは3分)、加圧力を40〜70MPa(50〜60MPa)とする。なお、焼結保持温度までは、10〜20分(ここでは、14〜15分)で昇温する。
ここで、温度制御は、ダイ68に設けられた熱電対挿入孔72に、熱電対を挿入して行う。
焼結が終了した後は、加圧力を抜いて自然冷却する。
これにより、図10(C)に示すように、銅11の内周面側に層14が形成された円筒型の焼結体73が得られるため、これを図10(D)に示すように機械加工する。
【0043】
次に、層15及びフェノール樹脂12の製造方法について、図11、図12を参照しながら説明する。なお、ここでは、上記した中子65を使用しないため、円筒型の下部パンチ62と上部パンチ67を使用する代わりに、同じくカーボングラファイト製の円柱状の下部パンチ74と上部パンチ75を使用するが、同一部材には同一番号を付して説明する。
図11(A)、(B)に示すように、絶縁リング64上に円筒型の焼結体73をセットし、その内側に、層15を構成する環状圧粉体33を、焼結体73の内周面に沿って、予め設定した高さまで複数個積み上げる。そして、この環状圧粉体33の内側に、フェノール樹脂12を構成する圧粉体48を、環状圧粉体33の内周面に沿って、予め設定した高さまで複数個積み上げる。
【0044】
この積み上げた環状圧粉体33と圧粉体48の上に上部パンチ75を配置する。
そして、図12(A)に示すように、焼結体73の外周を囲むように、ダイ68を配置し、上部パンチ75上に上部スペーサ69を取付ける。
これらを放電プラズマ焼結装置の真空チャンバー内に配置し、上部パンチ75と下部パンチ74を、上部パンチ電極と下部パンチ電極とで挟込み、加圧手段により加圧する。
そして、電源により、上部パンチ電極と下部パンチ電極に通電して、図12(B)に示すように、環状圧粉体33及び圧粉体48の焼結を行う。なお、焼結により層14と環状圧紛体33の界面及び環状圧紛体33と圧紛体48の界面も結合される(2回目の焼結)。
この焼結は、銅の含有率が低い層15とフェノール樹脂12の焼結であるため、焼結保持温度を、1回目の焼結よりも低く設定する。
【0045】
具体的には、焼結保持温度を170〜380℃(ここでは、200〜350℃)とし、保持時間を0又は0を超え1分(ここでは0分)、加圧力を40〜70MPa(50〜60MPa)とする。なお、焼結保持温度までは、5〜20分(ここでは、8〜15分)で昇温する。
また、焼結保持温度までの昇温途中でステップヒーティングを行うこともできる。
具体的には、保持温度を、樹脂の軟化温度(ここでは約100℃)よりやや高めの100〜120℃(ここでは120℃)とし、保持時間を1〜10分(ここでは5分)、加圧力を40〜70MPa(ここでは、60MPa)とする。なお、保持温度までは、1〜5分(ここでは、2分)で昇温する。軟化点直上の温度におけるステップヒーティングにより、加圧力の作用下で軟化した樹脂の流動性がよくなり、内部の空隙が減少し、ガス抜きができると共に、緻密性も上昇する。
その後、焼結保持温度まで昇温する。
【0046】
焼結が終了した後は、加圧力を抜いて自然冷却する。
これにより、図1(A)に示す傾斜機能性複合材料10が得られる。
このように、複合材料10を構成する銅11、層14、15からなる積層体、及びフェノール樹脂12を、融点(高融点材料の含有率)の高い側から低い側へかけて、順次、加圧加熱処理をすることで、銅11、積層体、フェノール樹脂12、及びそれらの界面も結合でき、フェノール樹脂の品質低下を招くことなく、複合材料10を製造できる。
また、上記したように、残留熱応力の緩和機能を有する複合材料10を、焼結処理時間の極めて短い放電プラズマ焼結法により製造することで、焼結させた複合材料10の残留応力の除去熱処理が不要となるため、整流子1個を製造するのに要する消費エネルギーを、更に減少させることができる。
【0047】
そして、高融点金属やセラミックスの焼結と比較して、低温度の焼結処理が可能になる。
なお、複合材料の焼結条件は、上記した条件に限定されるものではなく、例えば、各金属材料、有機材料、及び無機材料の種類に応じて、その融点や焼結後の密度等を考慮して適宜設定できる。
また、傾斜機能性複合材料10の製造は、以上に示した放電プラズマ焼結法に限定されるものではなく、傾斜機能性複合材料10の性能が得られれば、他の製造方法を用いてもよい。
以上の方法により、製品構成の自由度が図れ、目的とする寸法形状や必要な強度を得ることが可能となる。
【0048】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の傾斜機能性複合材料の製造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、傾斜機能性複合材料を、自動車用電動モータに設けられた整流子の銅とフェノール樹脂とを接合する箇所に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、家電用モータの整流子に適用することもでき、更には金属と樹脂を接合する箇所であれば、例えば、自動車、電車、航空機、船舶、各種家電製品、テンションローラ等に適用することもできる。
なお、前記実施の形態においては、材料Xを金属材料とし、材料Yを有機樹脂材料Aとした場合について説明したが、傾斜機能性複合材料の使用用途に応じて、材料Xを金属材料、セラミックス材料、又は有機樹脂材料とし、また材料Yを、材料Xとは融点が異なる金属材料、セラミックス材料、又は有機樹脂材料とすることもできる。
【0049】
そして、前記実施の形態においては、円柱状の傾斜機能性複合材料の半径方向の最外層を金属材料で構成し、最内層を有機樹脂材料で構成した場合について説明したが、最外層を有機樹脂材料で構成し、最内層を金属材料で構成することもできる。これは、積層体を、金属材料の粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体で構成できることによる。
更に、前記実施の形態においては、円柱状の傾斜機能性複合材料を製造した場合について説明したが、円筒型の傾斜機能性複合材料を製造することもできる。この場合、傾斜機能性複合材料の製造のための最後の焼結にも、中子を使用すればよい。
なお、金属材料、傾斜機能材料、及び有機樹脂材料の同心円状の配置とは、断面真円状のみならず、例えば、各層の厚みが部分的に異なる場合や、また楕円や卵形でもよい。
【符号の説明】
【0050】
10:傾斜機能性複合材料、11:銅(金属材料)、12:フェノール樹脂(有機樹脂材料A)、13:傾斜機能材料、14、15:層、16:整流子、20:金型、21:受け皿、21a:抜取り用受け皿、22:中子、23:隙間、24:ダイ、25〜27:案内ボルト、28:パンチ、29:パンチ押さえ部材、30:原料粉体、31:環状圧粉体、32:圧粉体抜取り治具、33:環状圧粉体、34:金型、35:隙間、36:原料粉体、37:パンチ、38:パンチ押さえ部材、39:受け皿、39a:抜取り用受け皿、40:中子、41:ダイ、42:圧粉体抜取り治具、43:金型、44:ダイ、45:原料粉体、46:パンチ、47:パンチ押さえ部材、48:圧粉体、49:受け皿、49a:抜取り用受け皿、50:圧粉体抜取り治具、60:焼結用治具、61:下部スペーサ、62:下部パンチ、63:ストッパー、64:絶縁リング、65:中子、66:隙間、67:上部パンチ、68:ダイ、69:上部スペーサ、70:ボルト、71:ボルト受け、72:熱電対挿入孔、73:焼結体、74:下部パンチ、75:上部パンチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、融点の異なる材料を接合した円筒又は円柱の形状を有する製品、例えば、自動車用電動モータや家電用モータの整流子、又はテンションローラ(高分子材料の薄層フィルムを製造する際に、ある温度環境で引張りながら巻取るローラや溶融めっきの電極材)等への使用に適した傾斜機能性複合材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用電動モータや家電用モータには、整流子が使用されている。
この整流子は、円筒型をしており、電気の良導体である金属(銅)と絶縁体である高分子材料(フェノール樹脂)の結合体であるため、高速連続運転時に発生する熱に起因する熱応力や、断続運転に起因する疲労現象により、金属と高分子材料との界面に亀裂が生じ、最終的に破壊する恐れがあるため、安全性の確保や長寿命化が望まれてきた。
そこで、この円筒型の整流子に傾斜機能材料の概念を導入し、電気の良導体である銅と絶縁体であるフェノール樹脂という2つの性質を持ち、同時に単一の界面ではなく、傾斜層により熱応力や応力集中を緩和する傾斜機能性複合材料の導入が試みられてきた。
【0003】
上記した円筒型(円柱も同様)の傾斜機能性複合材料において、その半径方向に組成を傾斜させる方法としては、例えば、特許文献1、2に示す方法がある。
特許文献1には、円筒状の型枠にスラリーを入れて遠心力を付加することにより、外周から内周にかけて傾斜組成を連続形成してパイプ形状に成形する方法が記載されている。具体的には、2種類以上の粉末材料に有機分散剤及び溶媒を加えてスラリーを作製し、このスラリーに遠心力を付与することにより、傾斜組成を形成している。
また、特許文献2には、円筒状の仕切体と、内部に同心円状に階段状凹部を持つ円柱状凸起の支持台とを組合わせ、半径方向に組成を傾斜させた傾斜機能性複合材料を作製する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−103135号公報
【特許文献2】特開2008−307071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、遠心力を利用するため、2種類の粉末原料に密度差があると、密度の大きい材料の組成が外周側へ偏ることになる。つまり、内周側へ密度の大きい材料の組成を配置することが困難である。
また、特許文献2の方法では、仕切体の間に各混合粉を充填するため、仕切体の間隔を狭くするとブリッジ等が発生し易く、粉末の均一な充填が難しい。特に、軸方向に長い傾斜機能材料を造る場合、仕切体の高さを高くする必要があるが、仕切体を高くし、隣り合う仕切体の間隔を狭くすると、ブリッジ等が更に発生し易くなり、粉末の充填がますます阻害され、良好な傾斜組成化した層の形成が難しくなる。
更に、特許文献1、2のいずれの方法も、傾斜機能性複合材料を構成する2種類の材料の配合割合を考慮することなく、一度の焼結で製造しようとしているため、例えば、各層ごとの収縮や膨張が考慮されておらず、目的とする寸法形状や必要な強度を得ることが難しい。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、製品構成の自由度が図れ、目的とする寸法形状や必要な強度を得ることが可能な傾斜機能性複合材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る傾斜機能性複合材料の製造方法は、円筒又は円柱の半径方向内側又は外側の一方に材料Xを、他方に該材料Xとは融点の異なる材料Yを、前記材料Xと前記材料Yの間に傾斜機能材料を、それぞれ同心円状に配置した傾斜機能性複合材料の製造方法であって、
前記傾斜機能材料を、前記材料Yの粉末に前記材料Xの粉末を傾斜配合した積層体とし、しかも該積層体を、該材料Xの粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体で構成し、
前記材料X、前記積層体、及び前記材料Yを、融点の高い側から低い側へかけて、順次、加圧加熱処理をすることで、前記材料X、前記積層体、前記材料Y、及びそれらの界面も結合する。
【0008】
前記目的に沿う第2の発明に係る傾斜機能性複合材料の製造方法は、円筒又は円柱の半径方向内側又は外側の一方に金属材料を、他方に有機樹脂材料Aを、前記金属材料と前記有機樹脂材料Aの間に傾斜機能材料を、それぞれ同心円状に配置した傾斜機能性複合材料の製造方法であって、
前記傾斜機能材料を、前記有機樹脂材料A又は前記有機樹脂材料Aと接合可能な有機樹脂材料Bの粉末に、前記金属材料の粉末を傾斜配合した積層体とし、しかも該積層体を、該金属材料の粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体で構成し、
前記金属材料、前記積層体、及び前記有機樹脂材料Aを、融点の高い側から低い側へかけて、順次、加圧加熱処理をすることで、前記金属材料、前記積層体、前記有機樹脂材料A、及びそれらの界面も結合する。
【0009】
第2の発明に係る傾斜機能性複合材料の製造方法において、前記積層体には無機質繊維Cを添加し、前記金属材料に線膨張係数を近似させたことが好ましい。
また、他方に配置される前記有機樹脂材料Aには無機質繊維Dが含まれることが好ましい。
【0010】
第1、第2の発明に係る傾斜機能性複合材料の製造方法において、前記円筒状圧粉体は、予め金型により圧縮成形した複数の環状圧粉体を軸方向に積層して形成することが好ましい。
ここで、前記各環状圧粉体の成形は、前記金型の温度を上げて又は前記環状圧粉体を構成する原料粉末の湿度を下げて、前記環状圧粉体を構成する際に原料粉末の流動性を高めて行うのがよい。
更に、第1、第2の発明に係る傾斜機能性複合材料の製造方法において、前記加圧加熱処理には、放電プラズマ焼結法を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明に係る傾斜機能性複合材料の製造方法は、傾斜機能材料を、材料Yの粉末に材料Xの粉末を傾斜配合した積層体とし、しかも積層体を、材料Xの粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体で構成するため、積層体を、材料Xの粉末の配合割合ごとに独立した円筒状圧粉体で構成できる。
また、材料X、積層体、及び材料Yを、融点の高い側から低い側へかけて、順次、加圧加熱処理をすることで、材料X、積層体、材料Y、及びそれらの界面も結合するので、材料Xの粉末の配合割合の変化による収縮や膨張を考慮しながら、傾斜機能性複合材料を製造できる。
従って、製品構成の自由度が図れ、目的とする寸法形状や必要な強度が得られる傾斜機能性複合材料を製造できる。
【0012】
第2の発明に係る傾斜機能性複合材料の製造方法は、傾斜機能材料を、有機樹脂材料A又は有機樹脂材料Aと接合可能な有機樹脂材料Bの粉末に、金属材料の粉末を傾斜配合した積層体とし、しかも積層体を、金属材料の粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体で構成するため、積層体を、金属材料の粉末の配合割合ごとに独立した円筒状圧粉体で構成できる。
また、金属材料、積層体、及び有機樹脂材料Aを、融点の高い側から低い側へかけて、順次、加圧加熱処理をすることで、金属材料、積層体、有機樹脂材料A、及びそれらの界面も結合するので、金属材料の粉末の配合割合の変化による収縮や膨張を考慮しながら、傾斜機能性複合材料を製造できる。
従って、製品構成の自由度が図れ、目的とする寸法形状や必要な強度が得られる傾斜機能性複合材料を製造できる。
【0013】
ここで、積層体に無機質繊維Cを添加し、金属材料に線膨張係数を近似させた場合、積層体の金属材料側の線膨張係数を金属材料とほぼ同様の値に調整できる。これにより、線膨張係数の差に起因した積層体と金属材料との界面における隙間の発生を抑制、更には防止できる。
【0014】
また、円筒状圧粉体を、予め金型により圧縮成形した複数の環状圧粉体を軸方向に積層して形成する場合、積層された各環状圧粉体の密度を均一にでき、円筒状圧粉体を軸方向にわたって略均一にできる。これは、環状圧粉体の軸方向の長さが、円筒状圧粉体の長さと比較して短く、しかも環状圧粉体が圧縮成形されているため、略均一な密度の環状圧粉体を成形できることによる。なお、複数の環状圧粉体を軸方向に積層することで、円筒状圧粉体の軸方向の長さも調整できる。
そして、各環状圧粉体の成形を、金型の温度を上げて又は環状圧粉体を構成する原料粉末の湿度を下げて、環状圧粉体を構成する際に原料粉末の流動性を高めて行う場合、金型内へ流し込まれた原料粉末内の空隙を低減できる。
【0015】
更に、加圧加熱処理に、放電プラズマ焼結法を用いる場合、傾斜機能性複合材料の製造を、省電力かつ短時間に実施できるため、生産効率の向上と製造コストの低減が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る傾斜機能性複合材料の製造方法で製造した傾斜機能性複合材料の正断面図、(B)は(A)を機械加工した製品の正断面図である。
【図2】(A)〜(D)はそれぞれ同傾斜機能性複合材料の製造方法による高融点材リッチ層の環状圧粉体の成形工程の説明図である。
【図3】(A)〜(F)はそれぞれ同高融点材リッチ層の環状圧粉体の成形工程の説明図である。
【図4】(A)〜(D)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る傾斜機能性複合材料の製造方法による低融点材リッチ層の環状圧粉体の成形工程の説明図である。
【図5】(A)〜(F)はそれぞれ同低融点材リッチ層の環状圧粉体の成形工程の説明図である。
【図6】(A)〜(D)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る傾斜機能性複合材料の製造方法による有機樹脂材料の成形工程の説明図である。
【図7】(A)〜(F)はそれぞれ同有機樹脂材料の成形工程の説明図である。
【図8】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る傾斜機能性複合材料の製造方法による高融点材リッチ層の環状圧粉体と金属材料との焼結工程の説明図である。
【図9】同焼結工程の説明図である。
【図10】(A)、(B)はそれぞれ同焼結工程の説明図、(C)は同焼結工程により得られた焼結体の正断面図、(D)は(C)を機械加工した後の焼結体の正断面図である。
【図11】(A)、(B)はそれぞれ本発明の一実施の形態に係る傾斜機能性複合材料の製造方法による傾斜機能性複合材料の焼結工程の説明図である。
【図12】(A)、(B)はそれぞれ同焼結工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、本発明の一実施の形態に係る傾斜機能性複合材料の製造方法により製造した傾斜機能性複合材料について説明した後、本発明の一実施の形態に係る傾斜機能性複合材料の製造方法について説明する。
【0018】
図1(A)に示すように、傾斜機能性複合材料(以下、単に複合材料ともいう)10は、円柱の半径方向外側(一方)に銅(材料Xである金属材料の一例)11を、内側(他方)に銅11より融点の低い熱硬化性フェノール樹脂(材料Yである有機樹脂材料Aの一例)12を、銅(Cu)11とフェノール樹脂12の間に傾斜機能材料13を、それぞれ同心円状に配置したものである。
この傾斜機能性複合材料10は、フェノール樹脂の粉末(以下、フェノール樹脂粉末ともいう)に銅の粉末(以下、銅粉ともいう)を傾斜配合して焼結させた焼結体であり、銅11側からフェノール樹脂12側へかけて2つの層、即ち半径方向の外側層14、内側層15が段階的(ここでは、2段階)に設けられたものである。なお、図1(B)は、自動車用電動モータに設けられた整流子16を示しており、整流子16は、傾斜機能性複合材料10を機械加工して形成したものである。
【0019】
傾斜機能材料13の厚みは、銅11とフェノール樹脂12とを接合できれば、特に限定されるものではないが、整流子に使用する場合は、従来品の整流子(アンカータイプ)における銅部分の埋め込み深さ以内(例えば、10mm以下)とすることが好ましい。
整流子における銅部分の埋め込み深さは、フェノール樹脂部分に絶縁層を併せ持たせる必要があることから整流子のタイプによってその形状や寸法が異なるため、一概に設定することが困難である。しかし、例えば、汎用性のあるタイプの整流子に着目すると6mm以下(下限は、2mm程度)が好ましい。なお、製品によっては、銅部分により近づいたポイントでも絶縁がとれる必要があることから、傾斜機能材料の厚みを更に好ましくは2〜3mm程度とするのがよい。
【0020】
傾斜機能材料を構成する半径方向の積層数は、複合材料の製造時や使用時の応力を緩和し、割れの発生を防止する観点から、多い方(例えば、10層程度まで)が望ましいが、層数を多くすると製造時の時間やコストが増大する。このため、複合材料の機能とコストを両立させるため、層数を5層以下(下限は、1層、更には2層)とするのがよい。
なお、各層14、15を形成する銅粉の傾斜配合は、銅11側からフェノール樹脂12側へかけて、銅粉の配合割合を減少させた配合とする。例えば、銅の含有量を、層14では65〜85質量%(ここでは75質量%)と多く、層15では40〜60質量%(ここでは50質量%)と層14よりも少なくする。
【0021】
ここで、複合材料10の各層14、15の形成に使用する銅の粉末には、電解により得られたフレーク状のものを使用する。
電解により得られた銅粉は、薄い層を形成するために粒径をある程度細かくすることができる(例えば、平均粒径が30〜60μm程度)。また、成型性に優れるため、層中の銅の割合が多くなっても、圧粉体の成型性が低下しない作用を備えている。更に、電解により得られた銅粉は、アトマイズにより得られた銅粉よりも、熱伝導率が高いことから、熱放出(割れ防止)の観点からも好ましい。
しかし、銅粉には、アトマイズ粉を使用することもできる。このアトマイズ粉は、一般に球形で流動性がよく、樹脂粉との混合時における均一混合性がよい。
更に、銅粉には、例えば、銀コーティングの銅粉等も使用でき、これにより電気伝導率を向上させて薄膜化を図ることができる。
【0022】
以上に示した複合材料に使用する金属は、銅に限定されるものではなく、樹脂との接合が考えられる他の金属材料、例えば、アルミニウムやニッケル、又はステンレス等を使用することもできる。
また、樹脂にフェノール樹脂を使用したが、これに限定されるものではなく、金属との接合が考えられる他の樹脂、例えば、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等(例えば、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン)樹脂)を使用することもできる。
なお、複合材料の各層の形成に使用する樹脂には、接合対象であるフェノール樹脂との接合性が良好な同一成分のフェノール樹脂を使用したが、接合性が良好(接合可能)であれば、フェノール樹脂以外の他の樹脂(有機樹脂材料B)でもよい。
【0023】
また、傾斜機能材料は、フェノール樹脂の粉末とガラス繊維(無機質繊維Cの一例)との混合物に、銅の粉末を傾斜配合して焼結させた焼結体で構成することもできる。
このガラス繊維には、アスペクト比が10〜500(好ましくは、上限を450、更には400)のものを使用することが好ましい。これにより、金属材料と有機樹脂材料及びガラス繊維との混合性(分散性)を良好にでき、その結果、製品品質の向上が図れる。
なお、ガラス繊維の含有量は、傾斜機能材料の線膨張係数(熱膨張係数)が、銅の線膨張係数に近似する(近傍となる)ように調整されている。
【0024】
ここで、銅の線膨張係数に近似するとは、線膨張係数の差による割れの発生を防止できる値、例えば、常温(20℃)を基準とした銅の線膨張係数の±10%(好ましくは±7%、更に好ましくは±5%)以内程度である。具体的には、銅の線膨張係数が16.5×10−6(K−1)であり、熱硬化性フェノール樹脂の粉末とガラス繊維との混合物の線膨張係数が16×10−6(K−1)である。なお、フェノール樹脂の線膨張係数は40〜60×10−6(K−1)であり、ガラス繊維の線膨張係数は銅の線膨張係数よりも小さい。
この熱硬化性フェノール樹脂の粉末とガラス繊維は、予め混合されその混合物の線膨張係数が調整されたものを使用することが好ましい。
【0025】
加熱温度が比較的低温である50〜100℃の範囲では、焼結体の線膨張係数を上記した方法で調整しているため、フェノール樹脂の含有率による影響はほとんどなく、焼結体の線膨張係数はほぼ一定である。
しかし、加熱温度を上昇させると、焼結体の線膨張係数がフェノール樹脂の含有量に影響され、焼結体の線膨張係数が大きくなる。このため、混合物に銅粉を傾斜配合した層を、銅側からフェノール樹脂側へかけて複数形成することで、隣合う層の界面で傾斜機能性複合材料にかかる応力を分散でき、傾斜機能性複合材料の割れを抑制できる。この分割は、隣合う各層の線膨張係数の差が±20%(好ましくは±15%、更に好ましくは±10%)以内となるように行うのがよい。
なお、傾斜配合した層は、銅粉の含有率を徐々に変化させ、焼結後は各層の含有率をなだらかにして、連続的にすることもできる。
【0026】
ここでは、無機質繊維Cにガラス繊維を使用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、有機樹脂材料との混合物の線膨張係数を金属材料の線膨張係数近傍となるように調整できる他の無機質繊維、例えば、セラミックス繊維やウィスカー等を使用することもできる。
更に、傾斜機能性複合材料の他方側のフェノール樹脂に、無機質繊維Dが含まれてもよい(無機質繊維Dの含有量は、例えば、0を超え50質量%以下程度)。この無機質繊維Dには、上記した無機質繊維Cと同一形状で同一材質のものを使用できるが、異なる形状又は材質のものを使用することもできる。
なお、傾斜機能性複合材料の径方向両側に配置される銅とフェノール樹脂は、塊状物を機械加工することにより成形できるが、粉末原料を焼結して製造してもよい。
【0027】
続いて、本発明の一実施の形態に係る傾斜機能性複合材料の製造方法について説明する。
図1(A)、(B)に示す傾斜機能性複合材料10の製造に際しては、銅11とフェノール樹脂12の間に配置される傾斜機能材料13を、フェノール樹脂の粉末に銅の粉末を傾斜配合した積層体とし、しかもこの積層体を、銅の粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体、即ち層14(高融点材リッチ層)となる円筒状圧粉体と、層15(高融点材リッチ層よりも融点の低い低融点材リッチ層)となる円筒状圧粉体とで構成する。
【0028】
この各円筒状圧粉体を成形するに際しては、図2、図3に示す金型20を使用する。
図2(A)に示すように、金型20は、ステンレス鋼製のものであり、受け皿21と、受け皿21の中央に軸心を合わせて立設配置される円柱状の中子22と、受け皿21に立設され、中子22の外周面とは一定の隙間23を有して配置される円筒型のダイ24とを有している。なお、中子22とダイ24はそれぞれ、複数の案内ボルト25〜27を介して受け皿21に取付け取外し可能になっている。
上記した中子22の外周面とダイ24の内周面とで形成される隙間23には、円筒型のパンチ28が挿入可能となっており、このパンチ28は、パンチ押さえ部材29により、受け皿21に対して所定の圧力で押圧可能になっている。なお、隙間23の内幅は、製造する層14の厚みに応じて、ダイ24の内径又は中子22の外径を変えることで調整できる。
【0029】
まず、層14となる円筒状圧粉体の製造方法について、図2、図3を参照しながら説明する。
図2(B)に示すように、隙間23内に層14を構成する原料粉体30を充填する。なお、隙間23への原料粉末30の充填は、中子22とダイ24の温度を上げて(温度:50〜100℃程度)、又は原料粉末30の湿度を下げて(湿度:30%以下程度)、環状圧粉体31を構成する際に原料粉末30の流動性を高めながら行うのがよい。
次に、図2(C)に示すように、充填した原料粉末30の上にパンチ28を配置し、更に、図2(D)に示すように、パンチ28の上にパンチ押さえ部材29を配置する。そして、図3(A)に示すように、パンチ押さえ部材29を押圧し、円筒状圧粉体よりも軸方向の長さが短い短尺の環状圧粉体31を成形する。なお、パンチ押さえ部材29の押圧力は、環状圧粉体31の成型後の密度を考慮して調整する。
【0030】
この環状圧粉体31は、環状圧粉体31の軸方向の品質(密度等)を略均一にする観点から、アスペクト比(=(外径)/(軸方向の長さ))を1〜20(好ましくは下限を5)とするのがよい。従って、このアスペクト比を考慮して、隙間23内に充填する原料粉末30の量を調整することが好ましい。
このように、環状圧粉体31を成形した後は、図3(B)に示すように、隙間23内からパンチ押さえ部材29を取外し、図3(C)に示すように、受け皿21から中子22とダイ24を取外す。そして、図3(D)に示すように、ダイ24の下に圧粉体抜取り治具32を配置し、再度、パンチ28の上にパンチ押さえ部材29を配置した後、図3(E)に示すように、パンチ押さえ部材29を押圧することで、圧粉体抜取り治具32の抜取り用受け皿21a上にパンチ28と環状圧粉体31を押出し、図3(F)に示すように、環状圧粉体31を成形できる。
【0031】
なお、円筒状圧粉体の軸方向の長さは、上記した操作を繰り返し行うことで製造した複数の環状圧粉体31を軸方向に積層して調整することが好ましい。
従って、円筒状圧粉体の軸方向の長さが、1つの環状圧粉体31で充分である場合は、上記した操作を繰り返し行う必要はない。
【0032】
次に、層15となる円筒状圧粉体の製造方法について、図4、図5を参照しながら説明するが、上記した層14と略同様の方法であるため、同一部材には同一番号を付して説明する。
なお、ここで成形する環状圧粉体33は、上記した層14の内側に配置して焼結されるため、成形する環状圧粉体33の外径を、層14の内径と同等に又は僅かに(2mm以下程度)小さくする。そのため、ここでは、これに応じた図4(A)に示す金型34(寸法以外は金型20と同一構成)を使用する。
まず、図4(B)に示すように、隙間35内に層15を構成する原料粉体36を充填する。
【0033】
次に、図4(C)に示すように、充填した原料粉末36の上にパンチ37を配置し、図4(D)に示すように、パンチ37の上にパンチ押さえ部材38を配置する。そして、図5(A)に示すように、パンチ押さえ部材38を押圧し、円筒状圧粉体よりも軸方向の長さが短い短尺の環状圧粉体33を成形する。
このように、環状圧粉体33を成形した後は、図5(B)に示すように、隙間35内からパンチ押さえ部材38を取外し、図5(C)に示すように、受け皿39から中子40とダイ41を取外す。そして、図5(D)に示すように、ダイ41の下に圧粉体抜取り治具42を配置し、再度、パンチ37の上にパンチ押さえ部材38を配置した後、図5(E)に示すように、パンチ押さえ部材38を押圧することで、圧粉体抜取り治具42の抜取り用受け皿39a上にパンチ37と環状圧粉体33を押出し、図5(F)に示すように、環状圧粉体33を成形できる。
【0034】
最後に、フェノール樹脂12となる円柱状圧粉体の製造方法について、図6、図7を参照しながら説明する。なお、ここで使用する図6(A)に示す金型43は、前記した金型20、34の中子がなく、その寸法が異なっているのみであり、他の機能は同一であるため、同一部材には同一番号を付して説明する。
まず、図6(B)に示すように、円筒型のダイ44内に、フェノール樹脂12を構成する原料粉体45を充填する。次に、図6(C)に示すように、充填した原料粉末45の上にパンチ46を配置し、図6(D)に示すように、パンチ46の上にパンチ押さえ部材47を配置する。そして、図7(A)に示すように、パンチ押さえ部材47を押圧し、円筒状圧粉体よりも軸方向の長さが短い短尺の圧粉体48を成形する。
【0035】
このように、圧粉体48を成形した後は、図7(B)に示すように、ダイ44内からパンチ押さえ部材47を取外し、図7(C)に示すように、受け皿49からダイ44を取外す。そして、図7(D)に示すように、ダイ44の下に圧粉体抜取り治具50を配置し、再度、パンチ46の上にパンチ押さえ部材47を配置した後、図7(E)に示すように、パンチ押さえ部材47を押圧することで、圧粉体抜取り治具50の抜取り用受け皿49a上にパンチ46と圧粉体48を押出し、図7(F)に示すように、圧粉体48を成形できる。
【0036】
続いて、上記した環状圧粉体31、33、圧粉体48を用いて、傾斜機能性複合材料10を製造する方法について説明する。
傾斜機能性複合材料10の焼結(加圧加熱処理)は、図8〜図12に示す放電プラズマ焼結装置を用いて、放電プラズマ焼結法(SPS法:Spark Plasma Sintering)により行う。
放電プラズマ焼結法は、例えば、取扱い操作の容易さ、ランニングコストの低廉さ、材料を選ばない多様性、ハイスピード焼結等の特性をもち、焼結技術の熟練を不要とし、金属、セラミックス、ポリマー、コンポジット材料をはじめ、傾斜機能材料、ナノフェーズ材料、熱電半導体材料など、広範囲の材料を対象とする焼結法である。
【0037】
この方法は、圧粉体粒子間隙に低電圧でパルス状の大電流を投入し、火花放電現象により瞬時に発生する放電プラズマによる表面熱拡散や電解拡散等の効果を応用したものである。これにより、従来法に比べ200〜500℃ほど低い温度域で、昇温と保持の時間を含め、金属やセラミックでも概ね5〜20分程度の短時間で焼結を完了できる。なお、この方法は、ON−OFF直流パルス通電を用いた加圧焼結法の一種であり、パルス通電では、焼結の進行状況を観測しながら投入エネルギーをデジタル的に精度よく制御することができる。
【0038】
この方法を用いた異種材料の接合については、主に、融点の高い金属同士、あるいは金属/セラミックスの接合について、従来から研究開発がなされているが、融点や線膨張係数の大きく異なる樹脂と金属の接合に用いられた例はなかった。そのため、金型内に金属部品を装填し、この金属部品の周りに樹脂を注入(充填)する「インサート成形」が主流であった。
しかし、以下に示す方法により、図8(A)に示す放電プラズマ焼結装置を用いて傾斜機能性複合材料10を製造できる。
【0039】
図8(A)に示すように、使用する放電プラズマ焼結装置に設けられた焼結用治具60は、下部スペーサ61と、この下部スペーサ61の中央に軸心を合わせて立設され、その下側が外方へ向けて拡径した円筒型の下部パンチ62を有している。なお、下部スペーサ61と下部パンチ62はグラファイト製である。
この下部パンチ62の外周には、ステンレス鋼製のストッパー63が嵌め込まれ、下部パンチ62の拡径した部分により、ストッパー63が所定の高さ位置に支持されている。また、下部パンチ62の外周には、セラミックス製の絶縁リング64も嵌め込まれ、この絶縁リング64がストッパー63上に配置されている。
そして、下部パンチ62内には、円柱状の中子65の下部が嵌入され、中子65が下部パンチ62を介してスペーサ61上に立設されている。なお、中子65は、グラファイトで構成されているが、導電性のないセラミックス等で構成するのが好ましい。
【0040】
まず、層14の製造方法について、図8〜図10を参照しながら説明する。
図8(A)、(B)に示すように、絶縁リング64上に傾斜機能性複合材料10を構成する円筒型の銅11をセットする。これにより、銅11の内周面と、中子65の外周面との間に隙間66が形成される。
そして、図8(B)、図9に示すように、隙間66内に、層14を構成する環状圧粉体31を、中子65の外周面に沿って、予め設定した高さまで複数個積み上げ、残存する隙間66(環状圧粉体31が配置されていない部分)に円筒型の上部パンチ67の下部を嵌め込む。なお、中子65は、銅11の内周面側に複数の環状圧粉体31を積み上げた後、環状圧粉体31内に挿入してもよい。また、積み上げられた環状圧粉体31と中子65との間に、BN(ボロンナイトライド)又はカーボンペーパーを配置することで、焼結体の中子65からの焼結体の離型を容易にすることが好ましい。
【0041】
次に、図9、図10(A)に示すように、銅11の外周を囲むように、グラファイト製又はステンレス鋼製のダイ68を配置し、上部パンチ67上に上部スペーサ69を取付ける。なお、上部パンチ67と上部スペーサ69はグラファイト製である。
ここで、ダイ68は、上部にボルト70が取付けられたボルト受け71を介して、下部スペーサ61上に支持されている。このボルト70はセラミックス製であり、ボルト受け71はステンレス鋼製である。
これらを放電プラズマ焼結装置の真空チャンバー(図示しない)内に配置し、上部パンチ67と下部パンチ62を、上部パンチ電極と下部パンチ電極(図示しない)とで挟込み、加圧手段(図示しない)により加圧する。
【0042】
そして、電源により、上部パンチ電極と下部パンチ電極に通電して、図10(B)に示すように、環状圧粉体31の焼結を行う。なお、焼結の際、環状圧紛体31と銅11の界面も結合される(1回目の焼結)。
この焼結は、銅11と銅の含有率が高い層14の焼結であるため、焼結保持温度を400〜550℃(ここでは、450〜500℃)とし、保持時間を2〜10分(ここでは3分)、加圧力を40〜70MPa(50〜60MPa)とする。なお、焼結保持温度までは、10〜20分(ここでは、14〜15分)で昇温する。
ここで、温度制御は、ダイ68に設けられた熱電対挿入孔72に、熱電対を挿入して行う。
焼結が終了した後は、加圧力を抜いて自然冷却する。
これにより、図10(C)に示すように、銅11の内周面側に層14が形成された円筒型の焼結体73が得られるため、これを図10(D)に示すように機械加工する。
【0043】
次に、層15及びフェノール樹脂12の製造方法について、図11、図12を参照しながら説明する。なお、ここでは、上記した中子65を使用しないため、円筒型の下部パンチ62と上部パンチ67を使用する代わりに、同じくカーボングラファイト製の円柱状の下部パンチ74と上部パンチ75を使用するが、同一部材には同一番号を付して説明する。
図11(A)、(B)に示すように、絶縁リング64上に円筒型の焼結体73をセットし、その内側に、層15を構成する環状圧粉体33を、焼結体73の内周面に沿って、予め設定した高さまで複数個積み上げる。そして、この環状圧粉体33の内側に、フェノール樹脂12を構成する圧粉体48を、環状圧粉体33の内周面に沿って、予め設定した高さまで複数個積み上げる。
【0044】
この積み上げた環状圧粉体33と圧粉体48の上に上部パンチ75を配置する。
そして、図12(A)に示すように、焼結体73の外周を囲むように、ダイ68を配置し、上部パンチ75上に上部スペーサ69を取付ける。
これらを放電プラズマ焼結装置の真空チャンバー内に配置し、上部パンチ75と下部パンチ74を、上部パンチ電極と下部パンチ電極とで挟込み、加圧手段により加圧する。
そして、電源により、上部パンチ電極と下部パンチ電極に通電して、図12(B)に示すように、環状圧粉体33及び圧粉体48の焼結を行う。なお、焼結により層14と環状圧紛体33の界面及び環状圧紛体33と圧紛体48の界面も結合される(2回目の焼結)。
この焼結は、銅の含有率が低い層15とフェノール樹脂12の焼結であるため、焼結保持温度を、1回目の焼結よりも低く設定する。
【0045】
具体的には、焼結保持温度を170〜380℃(ここでは、200〜350℃)とし、保持時間を0又は0を超え1分(ここでは0分)、加圧力を40〜70MPa(50〜60MPa)とする。なお、焼結保持温度までは、5〜20分(ここでは、8〜15分)で昇温する。
また、焼結保持温度までの昇温途中でステップヒーティングを行うこともできる。
具体的には、保持温度を、樹脂の軟化温度(ここでは約100℃)よりやや高めの100〜120℃(ここでは120℃)とし、保持時間を1〜10分(ここでは5分)、加圧力を40〜70MPa(ここでは、60MPa)とする。なお、保持温度までは、1〜5分(ここでは、2分)で昇温する。軟化点直上の温度におけるステップヒーティングにより、加圧力の作用下で軟化した樹脂の流動性がよくなり、内部の空隙が減少し、ガス抜きができると共に、緻密性も上昇する。
その後、焼結保持温度まで昇温する。
【0046】
焼結が終了した後は、加圧力を抜いて自然冷却する。
これにより、図1(A)に示す傾斜機能性複合材料10が得られる。
このように、複合材料10を構成する銅11、層14、15からなる積層体、及びフェノール樹脂12を、融点(高融点材料の含有率)の高い側から低い側へかけて、順次、加圧加熱処理をすることで、銅11、積層体、フェノール樹脂12、及びそれらの界面も結合でき、フェノール樹脂の品質低下を招くことなく、複合材料10を製造できる。
また、上記したように、残留熱応力の緩和機能を有する複合材料10を、焼結処理時間の極めて短い放電プラズマ焼結法により製造することで、焼結させた複合材料10の残留応力の除去熱処理が不要となるため、整流子1個を製造するのに要する消費エネルギーを、更に減少させることができる。
【0047】
そして、高融点金属やセラミックスの焼結と比較して、低温度の焼結処理が可能になる。
なお、複合材料の焼結条件は、上記した条件に限定されるものではなく、例えば、各金属材料、有機材料、及び無機材料の種類に応じて、その融点や焼結後の密度等を考慮して適宜設定できる。
また、傾斜機能性複合材料10の製造は、以上に示した放電プラズマ焼結法に限定されるものではなく、傾斜機能性複合材料10の性能が得られれば、他の製造方法を用いてもよい。
以上の方法により、製品構成の自由度が図れ、目的とする寸法形状や必要な強度を得ることが可能となる。
【0048】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の傾斜機能性複合材料の製造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、傾斜機能性複合材料を、自動車用電動モータに設けられた整流子の銅とフェノール樹脂とを接合する箇所に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、家電用モータの整流子に適用することもでき、更には金属と樹脂を接合する箇所であれば、例えば、自動車、電車、航空機、船舶、各種家電製品、テンションローラ等に適用することもできる。
なお、前記実施の形態においては、材料Xを金属材料とし、材料Yを有機樹脂材料Aとした場合について説明したが、傾斜機能性複合材料の使用用途に応じて、材料Xを金属材料、セラミックス材料、又は有機樹脂材料とし、また材料Yを、材料Xとは融点が異なる金属材料、セラミックス材料、又は有機樹脂材料とすることもできる。
【0049】
そして、前記実施の形態においては、円柱状の傾斜機能性複合材料の半径方向の最外層を金属材料で構成し、最内層を有機樹脂材料で構成した場合について説明したが、最外層を有機樹脂材料で構成し、最内層を金属材料で構成することもできる。これは、積層体を、金属材料の粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体で構成できることによる。
更に、前記実施の形態においては、円柱状の傾斜機能性複合材料を製造した場合について説明したが、円筒型の傾斜機能性複合材料を製造することもできる。この場合、傾斜機能性複合材料の製造のための最後の焼結にも、中子を使用すればよい。
なお、金属材料、傾斜機能材料、及び有機樹脂材料の同心円状の配置とは、断面真円状のみならず、例えば、各層の厚みが部分的に異なる場合や、また楕円や卵形でもよい。
【符号の説明】
【0050】
10:傾斜機能性複合材料、11:銅(金属材料)、12:フェノール樹脂(有機樹脂材料A)、13:傾斜機能材料、14、15:層、16:整流子、20:金型、21:受け皿、21a:抜取り用受け皿、22:中子、23:隙間、24:ダイ、25〜27:案内ボルト、28:パンチ、29:パンチ押さえ部材、30:原料粉体、31:環状圧粉体、32:圧粉体抜取り治具、33:環状圧粉体、34:金型、35:隙間、36:原料粉体、37:パンチ、38:パンチ押さえ部材、39:受け皿、39a:抜取り用受け皿、40:中子、41:ダイ、42:圧粉体抜取り治具、43:金型、44:ダイ、45:原料粉体、46:パンチ、47:パンチ押さえ部材、48:圧粉体、49:受け皿、49a:抜取り用受け皿、50:圧粉体抜取り治具、60:焼結用治具、61:下部スペーサ、62:下部パンチ、63:ストッパー、64:絶縁リング、65:中子、66:隙間、67:上部パンチ、68:ダイ、69:上部スペーサ、70:ボルト、71:ボルト受け、72:熱電対挿入孔、73:焼結体、74:下部パンチ、75:上部パンチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒又は円柱の半径方向内側又は外側の一方に材料Xを、他方に該材料Xとは融点の異なる材料Yを、前記材料Xと前記材料Yの間に傾斜機能材料を、それぞれ同心円状に配置した傾斜機能性複合材料の製造方法であって、
前記傾斜機能材料を、前記材料Yの粉末に前記材料Xの粉末を傾斜配合した積層体とし、しかも該積層体を、該材料Xの粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体で構成し、
前記材料X、前記積層体、及び前記材料Yを、融点の高い側から低い側へかけて、順次、加圧加熱処理をすることで、前記材料X、前記積層体、前記材料Y、及びそれらの界面も結合することを特徴とする傾斜機能性複合材料の製造方法。
【請求項2】
円筒又は円柱の半径方向内側又は外側の一方に金属材料を、他方に有機樹脂材料Aを、前記金属材料と前記有機樹脂材料Aの間に傾斜機能材料を、それぞれ同心円状に配置した傾斜機能性複合材料の製造方法であって、
前記傾斜機能材料を、前記有機樹脂材料A又は前記有機樹脂材料Aと接合可能な有機樹脂材料Bの粉末に、前記金属材料の粉末を傾斜配合した積層体とし、しかも該積層体を、該金属材料の粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体で構成し、
前記金属材料、前記積層体、及び前記有機樹脂材料Aを、融点の高い側から低い側へかけて、順次、加圧加熱処理をすることで、前記金属材料、前記積層体、前記有機樹脂材料A、及びそれらの界面も結合することを特徴とする傾斜機能性複合材料の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の傾斜機能性複合材料の製造方法において、前記積層体には無機質繊維Cを添加し、前記金属材料に線膨張係数を近似させたことを特徴とする傾斜機能性複合材料の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の傾斜機能性複合材料の製造方法において、他方に配置される前記有機樹脂材料Aには無機質繊維Dが含まれることを特徴とする傾斜機能性複合材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の傾斜機能性複合材料の製造方法において、前記円筒状圧粉体は、予め金型により圧縮成形した複数の環状圧粉体を軸方向に積層して形成したことを特徴とする傾斜機能性複合材料の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の傾斜機能性複合材料の製造方法において、前記各環状圧粉体の成形は、前記金型の温度を上げて又は前記環状圧粉体を構成する原料粉末の湿度を下げて、前記環状圧粉体を構成する際に原料粉末の流動性を高めて行うことを特徴とする傾斜機能性複合材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の傾斜機能性複合材料の製造方法において、前記加圧加熱処理には、放電プラズマ焼結法を用いることを特徴とする傾斜機能性複合材料の製造方法。
【請求項1】
円筒又は円柱の半径方向内側又は外側の一方に材料Xを、他方に該材料Xとは融点の異なる材料Yを、前記材料Xと前記材料Yの間に傾斜機能材料を、それぞれ同心円状に配置した傾斜機能性複合材料の製造方法であって、
前記傾斜機能材料を、前記材料Yの粉末に前記材料Xの粉末を傾斜配合した積層体とし、しかも該積層体を、該材料Xの粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体で構成し、
前記材料X、前記積層体、及び前記材料Yを、融点の高い側から低い側へかけて、順次、加圧加熱処理をすることで、前記材料X、前記積層体、前記材料Y、及びそれらの界面も結合することを特徴とする傾斜機能性複合材料の製造方法。
【請求項2】
円筒又は円柱の半径方向内側又は外側の一方に金属材料を、他方に有機樹脂材料Aを、前記金属材料と前記有機樹脂材料Aの間に傾斜機能材料を、それぞれ同心円状に配置した傾斜機能性複合材料の製造方法であって、
前記傾斜機能材料を、前記有機樹脂材料A又は前記有機樹脂材料Aと接合可能な有機樹脂材料Bの粉末に、前記金属材料の粉末を傾斜配合した積層体とし、しかも該積層体を、該金属材料の粉末の配合割合ごとに圧縮成形した径の異なる円筒状圧粉体で構成し、
前記金属材料、前記積層体、及び前記有機樹脂材料Aを、融点の高い側から低い側へかけて、順次、加圧加熱処理をすることで、前記金属材料、前記積層体、前記有機樹脂材料A、及びそれらの界面も結合することを特徴とする傾斜機能性複合材料の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の傾斜機能性複合材料の製造方法において、前記積層体には無機質繊維Cを添加し、前記金属材料に線膨張係数を近似させたことを特徴とする傾斜機能性複合材料の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3記載の傾斜機能性複合材料の製造方法において、他方に配置される前記有機樹脂材料Aには無機質繊維Dが含まれることを特徴とする傾斜機能性複合材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の傾斜機能性複合材料の製造方法において、前記円筒状圧粉体は、予め金型により圧縮成形した複数の環状圧粉体を軸方向に積層して形成したことを特徴とする傾斜機能性複合材料の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の傾斜機能性複合材料の製造方法において、前記各環状圧粉体の成形は、前記金型の温度を上げて又は前記環状圧粉体を構成する原料粉末の湿度を下げて、前記環状圧粉体を構成する際に原料粉末の流動性を高めて行うことを特徴とする傾斜機能性複合材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の傾斜機能性複合材料の製造方法において、前記加圧加熱処理には、放電プラズマ焼結法を用いることを特徴とする傾斜機能性複合材料の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−91379(P2012−91379A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239837(P2010−239837)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【出願人】(596030678)オタライト株式会社 (2)
【出願人】(000143455)株式会社高田工業所 (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【出願人】(596030678)オタライト株式会社 (2)
【出願人】(000143455)株式会社高田工業所 (14)
【Fターム(参考)】
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