説明

光または放射線検出器

【課題】基板の取り外しが容易な光または放射線検出器を提供することを目的とする。
【解決手段】パターン形成されるパターン本数の違いがあることを利用して、絶縁基板36に電気的に接続されたフレキシブル基板40にマルチプレクサ38を少なくとも搭載し、フレキシブル基板40の絶縁基板36側の一端を異方導電性接着剤40aによって絶縁基板36に電気的に接続するとともに、フレキシブル基板40の絶縁基板36側とは逆側(信号処理基板41側)の他端をコネクタ40bによって電気的に接続し、フレキシブル基板40にパターン形成されるピッチの幅dを、マルチプレクサ38よりも絶縁基板36側では狭くして、マルチプレクサ38よりも信号処理基板41側では広くすることで、マルチプレクサ38を境界にしてピッチ変換する。その結果、コネクタ40bによって信号処理基板41の取り外しが容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療分野、工業分野、さらには原子力分野等に用いられる光または放射線検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
X線検出器を例に採って説明する。一般的に、X線検出器に使用される集積回路は狭ピッチ(50〜300μm程度)であるので、集積回路をパターン形成した絶縁基板(例えばガラス基板)の接続方法として、狭ピッチにも適した異方導電性接着(ACF: Anisotropic Conductive Film)(以下、「ACF」と略記する)などの導電性接着を採用する。例えば、フレキシブル基板の絶縁基板側の一端をACFによって絶縁基板に電気的に接続するとともに、フレキシブル基板の絶縁基板側とは逆側である後段回路を搭載した後段基板側の他端をACFによって後段基板に電気的に接続している。このACFによって絶縁基板に電気的に接続されるフレキシブル基板については、ACF自体がリペア性(すなわち修復性)を持たないので、フレキシブル基板を絶縁基板から取り外して交換する場合には再利用されずに、必ず使い捨てとなる。フレキシブル基板は、ベアチップ集積回路を直接に搭載したテープ状の基板として、「TAB」(TAB: Tape Automated Bonding)とも呼ばれている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、フレキシブル基板の一端側を導電接着剤によって電気的に接続し、他端側をコネクタによって電気的に接続する技術をEL素子(エレクトロルミネッセント素子)に転用したものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−279319号公報(第1−3頁、図1)
【特許文献2】特開2002−352953号公報(第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、X線検出器で用いられる放射線撮像装置では、放射線感応型の放射線厚膜などに代表される変換層で発生する電荷(キャリア)は極めて微小で、それらを増幅するための集積回路は、特殊な構成を持つ場合が一般的である。したがって、集積回路そのものも非常に高価になりがちである。そこで、上述した特許文献1のようにフレキシブル基板(TAB)の両側をACF接続する技術を採用することが考えられる。すなわち、増幅するための集積回路をフレキシブル基板に搭載し、フレキシブル基板の両側をACF接続することで、狭ピッチ(100μm程度以下)で、かつフレキシブルな状態を保つことができる。そして、ACFでは、樹脂の中に導電性の粒子を混ぜ込み、その粒子をつぶすことで導電性を発動させ、同時に熱を加えることで樹脂を硬化し、強度および電極間の絶縁性を保持している。
【0005】
しかし、かかる場合には、次のような問題がある。すなわち、フレキシブル基板自身の不具合や、フレキシブル基板に関する接続の不具合のみならず、上述した後段回路の不具合によってX線検出器が不具合となる場合がある。その場合に、フレキシブル基板の両側がACF接続されていると、後段基板にACF接続されている全てのフレキシブル基板を取り外さなければならない。上述したようにフレキシブル基板を一旦取り外すと使い捨てとなるので、フレキシブル基板が不具合でなくともフレキシブル基板を全て破棄し、新たなフレキシブル基板を接続し直す、あるいは場合によってはX線検出器全体を破棄しなければならない。また、1つのフレキシブル基板のみが不具合であっても、不具合であるフレキシブル基板が分からない場合にはフレキシブル基板を全て取り外して破棄し、新たなフレキシブル基板を接続し直さなければならない。
【0006】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、基板の取り外しが容易な光または放射線検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、上記の問題を解決するために鋭意研究した結果、次のような知見を得た。
すなわち、キャリア(電荷情報)を時分割して出力するマルチプレクサに着目してみた。マルチプレクサよりも前段側ではパターン形成されるパターンの本数は多く、マルチプレクサよりも後段側ではパターン形成されるパターンの本数は少ない。パターン本数の違いを利用して、図7(a)の側面図に示すように、マルチプレクサMUXおよび増幅器Ampを搭載した集積回路ICをガラス基板Gに代表される絶縁基板に搭載する。すると、図7(b)の背面図に示すように、マルチプレクサMUXよりも後段側ではパターンの本数が前段側よりも少ないことから、ピッチの幅を狭ピッチよりも広くとることができる。したがって、従来のようなACFなどに代表される導電性接着を採用することなく、図7に示すようなコネクタCでマルチプレクサMUXよりも後段側にあるパターンを電気的に接続することが可能である。
【0008】
しかし、図7の場合にはマルチプレクサMUXをガラス基板Gに搭載することでコネクタCもガラス基板Gに搭載されることになる。したがって、コネクタによるガラス基板への負担によってガラス基板に損傷を与える場合がある。してみれば、マルチプレクサをガラス基板に搭載せずに、ガラス基板とは別の基板に搭載し、かつパターン本数の違いを利用すればよい。
【0009】
そこで、ガラス基板とは別の基板として、上述した特許文献1や特許文献2のようにフレキシブル基板を採用する。そのフレキシブル基板に少なくともマルチプレクサを搭載する。そして、パターン本数の違いを利用して、パターンの本数が多い狭ピッチの幅であるマルチプレクサよりも前段側(すなわちフレキシブル基板の絶縁基板側)の一端をACFなどに代表される導電性接着によって絶縁基板(変換基板)に電気的に接続するとともに、パターンの本数が少ない広ピッチの幅であるマルチプレクサよりも後段側(すなわちフレキシブル基板の絶縁基板側とは逆側)の他端をコネクタによって電気的に接続することが可能になる。すなわち、マルチプレクサを境界にしてピッチ変換して、少なくともマルチプレクサをフレキシブル基板に搭載すれば、コネクタは絶縁基板(変換基板)に損傷を与えることなく、フレキシブルの両端をそれぞれ電気的に接続することが可能で、フレキシブル基板の後段側にある後段基板の取り外しが容易になるという知見を得た。
【0010】
このような知見に基づくこの発明は、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、光または放射線の入射により前記光または放射線の情報を電荷情報に変換する変換層を形成した変換基板と、その変換基板に電気的に接続されたフレキシブル基板とを備え、そのフレキシブル基板を介して、変換された電荷情報を読み出すことで光または放射線を検出する光または放射線検出器であって、フレキシブル基板の変換基板側の一端を導電性接着によって変換基板に電気的に接続するとともに、フレキシブル基板の変換基板側とは逆側の他端をコネクタによって電気的に接続し、変換された電荷情報を時分割して出力するマルチプレクサをフレキシブル基板に少なくとも搭載し、フレキシブル基板にパターン形成されるピッチの幅を、前記マルチプレクサよりも変換基板側では狭くして、マルチプレクサよりも変換基板側とは逆側では広くすることで、マルチプレクサを境界にしてピッチ変換することを特徴とするものである。
【0011】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、マルチプレクサにおける前段側と後段側(すなわちフレキシブル基板の変換基板側とは逆側)との間でパターン本数に相違があることを利用して、フレキシブル基板に少なくともマルチプレクサを搭載する。そして、フレキシブル基板と変換基板とを電気的に接続すると、マルチプレクサよりも前段側(すなわちフレキシブル基板の変換基板側)ではパターン形成されるパターンの本数は多く、マルチプレクサよりも後段側(すなわちフレキシブル基板の変換基板側とは逆側)ではパターン形成されるパターンの本数は少なくなる。したがって、フレキシブル基板の変換基板側ではマルチプレクサを境界にしてピッチの幅を狭くして、フレキシブル基板の変換基板側とは逆側ではマルチプレクサを境界にしてピッチの幅を広くすることが可能である。そして、ピッチの幅が狭いフレキシブル基板の変換基板側の一端を導電性接着によって変換基板に電気的に接続する。ピッチの幅が広いフレキシブル基板の変換基板側とは逆側の他端をコネクタによって電気的に接続することが可能になる。その結果、フレキシブル基板の一部あるいは後段側(フレキシブル基板の変換基板側とは逆側)にある基板に不具合が生じても、不具合のあるフレキシブル基板のみをコネクタによって後段側の基板から外す、あるいは後段側の基板をコネクタによってフレキシブル基板から外すだけでよく、コネクタによって基板の取り外しが容易になる。
【0012】
具体的には、ピッチの幅を、マルチプレクサよりも変換基板側では画素ピッチよりも狭くして、マルチプレクサよりも変換基板側とは逆側では画素ピッチよりも広くする(請求項2に記載の発明)。導電性接着に適用できる狭ピッチの幅は50〜300μm程度であり、コネクタ接続に適用できる広ピッチの幅は400μm以上である。したがって、ピッチの幅を、マルチプレクサよりも変換基板側では50〜300μmの範囲とし、マルチプレクサよりも変換基板側とは逆側では400μm以上の範囲とするのが好ましい(請求項3に記載の発明)。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る光または放射線検出器によれば、パターン形成されるパターン本数の違いがあることを利用して、変換基板に電気的に接続されたフレキシブル基板にマルチプレクサを少なくとも搭載し、フレキシブル基板の変換基板側の一端を導電性接着によって変換基板に電気的に接続するとともに、フレキシブル基板の変換基板側とは逆側の他端をコネクタによって電気的に接続し、フレキシブル基板にパターン形成されるピッチの幅を、前記マルチプレクサよりも変換基板側では狭くして、マルチプレクサよりも変換基板側とは逆側では広くすることで、マルチプレクサを境界にしてピッチ変換する。その結果、コネクタによって基板の取り外しが容易になる。
【実施例】
【0014】
以下、図面を参照してこの発明の実施例を説明する。
図1は、実施例に係る放射線検出器の概略断面図であり、図2は、図1を等価回路で表した回路図であり、図3は、平面的に表した回路図であり、図4は、フレキシブル基板をパターン面からみて、引き延ばした概略図である。本実施例では直接変換型の放射線検出器を例に採って説明する。
【0015】
本実施例に係る放射線検出器30は、図1、図2に示すように、例えばX線などの放射線が入射することによりキャリアが生成される放射線感応型の半導体厚膜31と、半導体厚膜31の表面に設けられた電圧印加電極32と、半導体厚膜31の放射線入射側とは反対側にある裏面に設けられたキャリア収集電極33と、キャリア収集電極33への収集キャリアを溜める電荷蓄積用のコンデンサCaと、コンデンサCaに蓄積された電荷を取り出すための通常時OFF(遮断)の電荷取り出し用のスイッチ素子である薄膜トランジスタ(TFT)Trとを備えている。本実施例では、半導体厚膜31は放射線の入射によりキャリアが生成される放射線感応型の物質で形成されているが、光の入射によりキャリアが生成される光感応型の物質であってもよい。半導体厚膜31は、この発明における変換層に相当する。
【0016】
この他に、放射線検出器30は、薄膜トランジスタTrのソースに接続されているデータ線34と、薄膜トランジスタTrのゲートに接続されているゲート線35とを備えており、電圧印加電極32,半導体厚膜31,キャリア収集電極33,コンデンサCa,薄膜トランジスタTr,データ線34,およびゲート線35が絶縁基板36上に積層されて構成されている。絶縁基板36は、例えばガラス基板で形成されている。
【0017】
図1〜図3に示すように、縦・横式2次元マトリックス状配列で多数個(例えば、1024個×1024個)形成されたキャリア収集電極33ごとに、上述した各々のコンデンサCaおよび薄膜トランジスタTrがそれぞれ接続されており、それらキャリア収集電極33,コンデンサCa,および薄膜トランジスタTrが各検出素子DUとしてそれぞれ分離形成されている。また、電圧印加電極32は、全検出素子DUの共通電極として全面にわたって形成されている。また、上述したデータ線34は、図3に示すように、横(X)方向に複数本に並列されているとともに、上述したゲート線35は、図3に示すように、縦(Y)方向に複数本に並列されており、各々のデータ線34およびゲート線35は各検出素子DUに接続されている。また、データ線34は電荷−電圧変換群(アンプ)37を介してマルチプレクサ38に接続されており、ゲート線35はゲートドライバ39に接続されている。なお、検出素子DUの配列個数は上述の1024個×1024個だけでなく、実施形態に応じて配列個数を変更して使用することができる。したがって、検出素子DUが1個のみの形態であってもよい。マルチプレクサ38は、変換された電荷情報(キャリア)を時分割して出力する機能を有しており、この発明におけるマルチプレクサに相当する。
【0018】
検出素子DUは2次元マトリックス状配列で絶縁基板36にパターン形成されており、検出素子DUがパターン形成された絶縁基板36は『アクティブ・マトリクス基板』とも呼ばれている。この検出素子DUがパターン形成された絶縁基板36は、この発明における変換基板に相当する。
【0019】
なお、弾性体で形成されたフレキシブル基板40上に、電荷−電圧変換群(アンプ)37,マルチプレクサ38を絶縁基板36側から順に搭載している。このフレキシブル基板40は、絶縁基板36に形成されたデータ線34と、絶縁基板36の放射線入射側とは反対側に配設された信号処理基板41(図1、図3を参照)に電気的に接続されている。フレキシブル基板40は、この発明におけるフレキシブル基板に相当する。
【0020】
具体的には、フレキシブル基板40の絶縁基板36側の一端を異方導電性接着剤40aによって絶縁基板36に電気的にACF接続するとともに、フレキシブル基板40の絶縁基板36側とは逆側(すなわち信号処理基板41側)の他端をコネクタ40bによって電気的に接続する。また、図4に示すように、フレキシブル基板40にパターン形成されるピッチの幅dを、マルチプレクサ38よりも絶縁基板36側では狭く(ここではデータ線34のピッチの幅d)して、マルチプレクサ38よりも絶縁基板36側とは逆側(すなわち信号処理基板41側)では広くすることで、マルチプレクサ38を境界にしてピッチ変換する。
【0021】
より具体的には、ピッチの幅dを、マルチプレクサ38よりも絶縁基板36側では画素ピッチよりも狭くして、マルチプレクサ38よりも信号処理基板41側では画素ピッチよりも広くする。本実施例では、ピッチの幅dを、マルチプレクサ38よりも絶縁基板36側では50〜300μmの範囲とし、マルチプレクサ38よりも信号処理基板41側では400μm以上の範囲とする。
【0022】
なお、ゲートドライバ39についても図示を省略するフレキシブル基板40上に搭載してもよいし、信号処理基板41上に搭載してもよい。この他、キャリアである電荷信号を送り込むバッファ用送り出し回路(図示省略)や電荷信号をアナログからディジタル変換するA/D変換器(図示省略)などをフレキシブル基板40上に搭載してもよいし、信号処理基板41上に搭載してもよい。ゲートドライバ39やバッファ用送り出し回路やA/D変換器は、マルチプレクサ38からみると後段にあるので、これらをフレキシブル基板40上に搭載する場合にはマルチプレクサ38よりも信号処理基板41側に搭載する。
【0023】
これら半導体厚膜31や絶縁基板36などで形成された放射線検出器30を作成する場合には絶縁基板36の表面に、各種真空蒸着法による薄膜形成技術やフォトリソグラフィ法によるパターン技術を利用して、データ線34およびゲート線35を配線し、薄膜トランジスタTr,コンデンサCa,キャリア収集電極33,半導体厚膜31,電圧印加電極32などを順に積層形成する。なお、半導体厚膜31を形成する半導体については、アモルファス型の半導体や多結晶型の半導体などに例示されるように、用途や耐電圧などに応じて適宜選択することができる。また、半導体厚膜31を形成する物質についても、セレン(Se)などに例示されるように、特に限定されない。本実施例の場合には直接変換型の放射線検出器であるのでアモルファスセレンで半導体厚膜31を形成する。
【0024】
なお、放射線検出器30は半導体厚膜31を樹脂20によってモールド封止した後、筐体10によって収納される。
【0025】
続いて、放射線検出器30の作用について説明する。電圧印加電極32に高電圧(例えば数100V〜数10kV程度)のバイアス電圧Vを印加した状態で、検出対象である放射線を入射させる。
【0026】
放射線の入射によってキャリアが生成されて、そのキャリアが電荷情報として電荷蓄積用のコンデンサCaに蓄積される。ゲートドライバ39の信号取り出し用の走査信号によって、ゲート線35が選択されて、さらに選択されたゲート線35に接続されている検出素子DUが選択指定される。その指定された検出素子DUのコンデンサCaに蓄積された電荷が、選択されたゲート線35の信号によってON状態に移行した薄膜トランジスタTrを経由して、データ線34に読み出される。
【0027】
また、各検出素子DUのアドレス(番地)指定は、データ線34およびゲート線35の信号取り出し用の走査信号に基づいて行われる。マルチプレクサ38およびゲートドライバ39に信号取り出し用の走査信号が送り込まれると、ゲートドライバ39から縦(Y)方向の走査信号に従って各検出素子DUが選択される。そして、横(X)方向の走査信号に従ってマルチプレクサ38が切り換えられることによって、選択された検出素子DUのコンデンサCaに蓄積された電荷が、データ線34を介して、電圧−電圧変換群(アンプ)およびマルチプレクサ38を順に経て信号処理基板41に送り出される。
【0028】
上述の動作によって、例えばX線透視撮影装置の透視X線像の検出に本実施例に係る放射線検出器30を用いた場合、データ線34を介して信号処理基板41にて電荷情報が画像情報に変換されて、X線透視画像として出力される。
【0029】
上述の構成を備えた本実施例に係る放射線検出器30によれば、マルチプレクサ38における前段側と後段側(すなわちフレキシブル基板40の絶縁基板36側とは逆側)との間でパターン本数に相違があることを利用して、フレキシブル基板40に少なくともマルチプレクサ38を搭載する。そして、フレキシブル基板40と絶縁基板36とを電気的に接続すると、マルチプレクサ38よりも前段側(すなわちフレキシブル基板40の絶縁基板36側)ではパターン形成されるパターンの本数は多く、マルチプレクサ38よりも後段側(すなわちフレキシブル基板40の絶縁基板36側とは逆側)ではパターン形成されるパターンの本数は少なくなる。
【0030】
したがって、フレキシブル基板40の絶縁基板36側ではマルチプレクサ38を境界にしてピッチの幅dを狭くして、フレキシブル基板40の絶縁基板36側とは逆側(すなわち信号処理基板41側)ではマルチプレクサ38を境界にしてピッチの幅を広くすることが可能である。そして、ピッチの幅dが狭いフレキシブル基板40の絶縁基板36側の一端を導電性接着(ここでは異方導電性接着剤40a)によって絶縁基板36に電気的に接続する。ピッチの幅dが広いフレキシブル基板40の絶縁基板36側とは逆側(すなわち信号処理基板41側)の他端をコネクタ40bによって電気的に接続することが可能になる。その結果、フレキシブル基板40の一部あるいは後段側(フレキシブル基板40の絶縁基板36側とは逆側)にある信号処理基板41に不具合が生じても、不具合のあるフレキシブル基板40のみをコネクタ40bによって後段側にある信号処理基板41から外す、あるいは後段側にある信号処理基板41をコネクタ40bによってフレキシブル基板40から外すだけでよく、コネクタ40bによって信号処理基板41の取り外しが容易になる。
【0031】
具体的には、ピッチの幅dを、マルチプレクサ38よりも絶縁基板36側では画素ピッチよりも狭くして、マルチプレクサ38よりも絶縁基板36側とは逆側(すなわち信号処理基板41側)では画素ピッチよりも広くする。導電性接着に適用できる狭ピッチの幅dは50〜300μm程度であり、コネクタ接続に適用できる広ピッチの幅dは400μm以上である。したがって、ピッチの幅dを、マルチプレクサ38よりも絶縁基板36側では50〜300μmの範囲とし、マルチプレクサ38よりも絶縁基板36側とは逆側(信号処理基板41側)では400μm以上の範囲とするのが好ましい。
【0032】
本実施例では、各フレキシブル基板40ごとに接続/未接続を選択することができるので、不具合が生じているフレキシブル基板40の特定を容易にして、不用意なフレキシブル基板40の取り外しを回避することができるという効果をも奏する。また、後段の信号処理基板41に同形状のコネクタ40bを使用しておけば、その基板の交換だけで回路の性能向上を図ることも可能になり、(基板やそれを用いたプログラムなどの)バージョン変更にも容易に対応することができるという効果をも奏する。
【0033】
また、本実施例では、マルチプレクサ38の他に増幅器である電荷−電圧変換群(アンプ)37をもフレキシブル基板40上に搭載しており、上述したように不具合のあるフレキシブル基板40のみをコネクタ40bによって後段側にある信号処理基板41から外せばいいので、残りのフレキシブル基板40を外さずに再利用することができ、非常に高価であったマルチプレクサ38および電荷−電圧変換群(アンプ)37を含む集積回路をも再利用することができる。したがって、従来であれば、高価な集積回路を不用意に取り外していたのを、本実施例では不用意に取り外さなかった分だけ安価にすることができるという効果をも奏する。
【0034】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0035】
(1)上述した実施例では、入射した放射線を半導体厚膜31(変換層)によって電荷情報に直接的に変換した直接変換型の放射線検出装置をこの発明は適用したが、入射した放射線をシンチレータによって光に変換し、光感応型の物質で形成された半導体層によってその光を電荷情報に変換する間接変換型の放射線検出器をこの発明は適用してもよい。また、入射した光を光感応型の物質で形成された半導体層によって電荷情報に変換する光検出器をこの発明は適用してもよい。
【0036】
(2)上述した実施例では、X線を検出する場合を例に採って説明したが、核医学装置などに用いられるγ線を検出する検出装置をこの発明が適用することもできる。
【0037】
(3)上述した実施例では、ピッチの幅dを、マルチプレクサ38よりも絶縁基板36側では50〜300μmの範囲とし、マルチプレクサ38よりも絶縁基板36側とは逆側(信号処理基板41側)では400μm以上の範囲としたが、導電性接着やコネクタの種類によって適用できるピッチの幅dが上述した範囲外であれば、ピッチの幅dは上述した範囲に限定されない。
【0038】
(4)同様に、導電性接着やコネクタの種類によって適用できるピッチの幅dが上述した範囲外であれば、ピッチの幅dを、マルチプレクサ38よりも絶縁基板36側では狭く、マルチプレクサ38よりも信号処理基板41側では広くした状態で、かつ画素ピッチよりも広くてもよい。また、ピッチの幅dを、マルチプレクサ38よりも絶縁基板36側では狭く、マルチプレクサ38よりも信号処理基板41側では広くした状態で、かつ画素ピッチよりも狭くしてもよい。
【0039】
(5)上述した実施例では、導電性接着として異方導電性接着(ACF)を例に採って説明したが、等方導電性接着であってもよい。ただし、等方導電性接着の場合には、必要部分のみの導電性を実現するために、接着部のパターニング等を行う必要が発生する。その点を考慮すれば実施例のような異方導電性接着(ACF)の方がより好ましい。
【0040】
(6)上述した実施例では、フレキシブル基板40上に電荷−電圧変換群(アンプ)37およびマルチプレクサ38を搭載したが、図5に示すようにマルチプレクサ38のみを搭載してもよいし、上述したように電荷−電圧変換群(アンプ)37以外のゲートドライバ39やバッファ用送り出し回路(図示省略)やA/D変換器などに代表される回路をマルチプレクサ38とともにフレキシブル基板40上に搭載してもよい。すなわち、フレキシブル基板40に少なくともマルチプレクサ38を搭載すれば、搭載の形態については特に限定されない。なお、マルチプレクサ38のみをフレキシブル基板40上に搭載した場合には、電荷−電圧変換群(アンプ)37は絶縁基板36側に形成される。
【0041】
(7)上述した実施例では、フレキシブル基板40上に電荷−電圧変換群(アンプ)37およびマルチプレクサ38を1つの集積回路にまとめて搭載したが、図6に示すように、電荷−電圧変換群(アンプ)37を1つの集積回路とするとともに、マルチプレクサ38を1つの集積回路にして、各々の集積回路をフレキシブル基板40上に搭載してもよい。電荷−電圧変換群(アンプ)37は、マルチプレクサ38よりも前段側(フレキシブル基板40の絶縁基板36側)に接続されるので、電荷−電圧変換群(アンプ)37でのピッチの幅dは、図6に示すように、フレキシブル基板40の絶縁基板36側でのピッチの幅dと同じ幅である。なお、マルチプレクサ38よりも後段側の回路(例えばゲートドライバ39やバッファ用送り出し回路やA/D変換器など)を1つの集積回路とするとともに、マルチプレクサ38を1つの集積回路にして、各々の集積回路をフレキシブル基板40上に搭載してもよい。この場合には、後段側の回路でのピッチの幅dは、フレキシブル基板40の信号処理基板41側でのピッチの幅dと同じ幅である。
【0042】
(8)上述した実施例では、絶縁基板36,フレキシブル基板40,信号処理基板41で放射線検出器30を形成したが、コネクタ40bによって信号処理基板41の取り外しが容易になることから、絶縁基板36,フレキシブル基板40で放射線検出器30を形成してもよい。この場合には、コネクタ40bによって放射線検出器30への信号処理基板41の着脱を行う。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例に係る放射線検出装置の概略断面図である。
【図2】図1を等価回路で表した回路図である。
【図3】平面的に表した回路図である。
【図4】フレキシブル基板をパターン面からみて、引き延ばした概略図である。
【図5】変形例に係るフレキシブル基板の概略断面図である。
【図6】変形例に係るフレキシブル基板をパターン面からみて、引き延ばした概略図である。
【図7】この発明に基づく知見に至るまでのマルチプレクサの搭載を模式化した図であって、(a)は側面図、(b)は背面図である。
【符号の説明】
【0044】
30 … 放射線検出器
31 … 半導体厚膜
36 … 絶縁基板
38 … マルチプレクサ
40 … フレキシブル基板
40a … 異方導電性接着剤
40b … コネクタ
d … ピッチの幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光または放射線の入射により前記光または放射線の情報を電荷情報に変換する変換層を形成した変換基板と、その変換基板に電気的に接続されたフレキシブル基板とを備え、そのフレキシブル基板を介して、変換された電荷情報を読み出すことで光または放射線を検出する光または放射線検出器であって、フレキシブル基板の変換基板側の一端を導電性接着によって変換基板に電気的に接続するとともに、フレキシブル基板の変換基板側とは逆側の他端をコネクタによって電気的に接続し、変換された電荷情報を時分割して出力するマルチプレクサをフレキシブル基板に少なくとも搭載し、フレキシブル基板にパターン形成されるピッチの幅を、前記マルチプレクサよりも変換基板側では狭くして、マルチプレクサよりも変換基板側とは逆側では広くすることで、マルチプレクサを境界にしてピッチ変換することを特徴とする光または放射線検出器。
【請求項2】
請求項1に記載の光または放射線検出器において、前記ピッチの幅を、前記マルチプレクサよりも前記変換基板側では画素ピッチよりも狭くして、マルチプレクサよりも変換基板側とは逆側では前記画素ピッチよりも広くすることを特徴とする光または放射線検出器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光または放射線検出器において、前記ピッチの幅が、前記マルチプレクサよりも前記変換基板側では50〜300μmの範囲であり、マルチプレクサよりも変換基板側とは逆側では400μm以上の範囲であることを特徴とする光または放射線検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−171881(P2008−171881A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1470(P2007−1470)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】