説明

光ピックアップ装置および情報記録再生装置

【課題】PP法を用いた光ピックアップ装置において、再生信号における光利用効率を向上させると共に、低コスト化が可能であり、さらに、集積化に好適である光ピックアップ装置等を提供する。
【解決手段】本発明の光ピックアップ装置は、各第1の受光部131a〜131dが出力した電気信号から、再生信号およびプッシュプル信号を生成し、各第2の受光部131i〜131pが出力した電気信号から、対物レンズシフト信号を生成し、各第3の受光部131e〜131hが出力した電気信号から、フォーカス誤差信号を生成する。ここで、対物レンズシフト信号は、隣接する第2の受光部131i〜131pのいずれか2個が各々出力した電気信号から生成されており、かつ、各電気信号は、一方の値が正、他方の値が負となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク等の情報記録媒体に光学的に情報を記録したり、情報記録媒体に記録された情報を再生したりする、光ピックアップ装置および情報記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ピックアップ装置におけるトラッキングサーボの手法としては、プッシュプル法(以下「PP法」と称する)が挙げられる。PP法は、複数の受光部が各々受光した光の光量(光の強度)差を検出することで、ディトラックの度合いを検出する手法であり、該光量差が無い場合をジャストトラックと判断する手法である。なお、ディトラックとは、光ディスクのトラックに集光された光ビームがトラック中心からずれていることである。また、ジャストトラックとは、光ディスクのトラックに集光された光ビームがトラック中心にあることである。
【0003】
PP法を用いた光ピックアップ装置では、小型化および薄型化を実現し、信頼性を向上するために、ホログラム素子を用いたものが提案されており、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示されている光ピックアップ装置は、主にDVD(Digital Video Disk)用途のものであり、ホログラム素子が光ディスクの半径方向に2分割されており、さらに、分割されたホログラム素子の一方が光ディスクのトラック方向に2分割されている。そして、この光ピックアップ装置は、光ディスクからの反射ビームの、一方の半分からフォーカス誤差信号を、他方の半分からトラック誤差信号を、全部から情報信号(再生信号)を検出する。なお、トラック誤差信号には、トラックに対する位置を示す信号である、いわゆるプッシュプル信号が含まれている。プッシュプル信号は、光ディスクの半径方向に2分割された反射ビームを、さらに、光ディスクのトラック方向に2分割して得られた光から検出される。そして、特許文献1に係る光ピックアップ装置は、上記構成のホログラム素子を備えた光集積化ユニットと、該光集積化ユニットから出射されたレーザ光を光ディスク上に集光させるための対物レンズと、によって構成されている。
【0005】
ところで、一般的なPP法では、対物レンズをシフト(変位)させると、受光部が受光する反射戻り光が変位するため、ディトラックしていない場合であっても、トラック誤差信号にオフセットが発生する虞がある。
【0006】
すなわち、PP法では、光ディスクからの反射ビームの、左右の光量分布の差を、2分割された光検出器により検出して、トラック誤差信号を生成するのが一般的であるが、対物レンズがラジアル方向に移動した場合、該反射ビームの光軸が光検出器の中心からずれてしまう。また、PP法では、記録中または再生中の光ディスクに傾きが発生した場合にも、同様に反射ビームの光軸が光検出器の中心からずれてしまう。これにより、PP法では、実際はジャストトラックであるにも関らず、光検出器の差動信号にオフセットが発生し、ディトラックと判定してしまう虞がある。
【0007】
さらに、特許文献1に開示されている、PP法を用いた光ピックアップ装置では、ホログラム素子を通じた反射ビームのうち、0次回折光および−1次回折光が用いられておらず、+1次回折光のみが用いられている。なお、ホログラム素子からの0次回折光は、半導体レーザへ戻る方向に照射されることとなるので、特許文献1に開示されている、PP法を用いた光ピックアップ装置では、0次回折光を検出するための光検出器を配置することができない。ホログラム素子からの、0次回折光および−1次回折光を使用しない場合、特許文献1に開示されている、PP法を用いた光ピックアップ装置では、反射ビームの利用効率が50%未満にまで低下してしまう。
【0008】
一方、PP法の場合に発生するトラック誤差信号のオフセットを抑圧することが可能な技術としては、差動プッシュプル法(以下、「DPP法」と称する)が挙げられる。
【0009】
DPP法は、1個のメインビームと該メインビーム両側の2個のサブビームとのそれぞれにおいて、トラックを横切る方向に分割した差信号から、トラック誤差を検出する手法であり、トラッキングサーボの手法として用いられている。
【0010】
具体的に、DPP法では、発光部からの光ディスクへと出射すべき光を、回折格子により、3個(メインビーム1個およびサブビーム2個)に分離し、光ディスク上でのメインビーム位置に対し、光ディスク上での各サブビームの位置を、トラックピッチの1/2n(但し、nは整数)倍の距離ずつ、該メインビームの両側にそれぞれずらすことで、メインビームから得られるプッシュプル信号と、各サブビームから得られるプッシュプル信号と、を検出し、各プッシュプル信号の差動をとることで、オフセットの無いトラッキング信号を得ている。特許文献1には、DPP法を用いた光ピックアップ装置であって、小型化および薄型化を実現し、信頼性を向上するために、ホログラム素子を用いたものも開示されている。
【0011】
しかしながら、DPP法では、1個の光源から3個のビームを生成しているので、記録に関与することとなるメインビームの光量が低下し、その結果、記録スピードが遅くなり、記録の高速化の妨げになるという問題がある。すなわち、特許文献1に開示されている、DPP法を用いた光ピックアップ装置では、光ディスクへの情報の記録は、メインビームのみを用いて行っているため、各サブビームについては、記録に寄与しない。
【0012】
そこで、1ビームを用いるPP法でありながら、対物レンズの変位を示す対物レンズシフト信号を用いることにより、PP法で発生するオフセットを補正する様々な方法が提案されている。
【0013】
特許文献2は、対物レンズからの反射戻り光を、6分割された光検出器で検出し、光検出器での受光量に応じた出力信号を演算することで、対物レンズがシフトしてもトラック誤差信号のオフセットが少ない光学ヘッドが開示されている。
【特許文献1】特開平9−161282号公報(1997年6月20日公開)
【特許文献2】特開平8−306057号公報(1996年11月22日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献2に開示されている技術では、光ディスクからの反射ビームを、フォーカス制御部への光と、トラック制御部への光と、に、ハーフミラーを用いて分割しているが、これらの分割された光は、いずれかの光しか、再生信号として使用することができない。
【0015】
このため、特許文献2に開示されている技術では、再生信号における光利用効率が低下するという問題が発生する。
【0016】
また、特許文献2に開示されている技術では、フォーカス制御部への光と、トラック制御部への光と、をハーフミラーで分割しているため、フォーカス制御部とトラック制御部の各々で、計2個の光検出器が必要となるので、低コスト化が困難であり、また、接着固定箇所が増加し、これに伴い作業工程が増大するので、光学ヘッドの集積化に不適である。
【0017】
本発明は、上記の問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、PP法を用いた光ピックアップ装置において、再生信号における光利用効率を向上させると共に、低コスト化が可能であり、さらに、集積化に好適である光ピックアップ装置および情報記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る光ピックアップ装置は、上記の問題を解決するために、光を出射する光源と、上記光源からの光を、記録媒体の情報記録面上に集光させるための対物レンズと、上記記録媒体からの反射光を回折するホログラム素子と、上記ホログラム素子にて上記反射光が回折されて得られた回折光を受光し、受光した該回折光を光電変換して電気信号を生成して出力する、複数の受光部を有する光検出器と、を備え、上記ホログラム素子は、上記記録媒体のトラック接線方向と直交する3本の分割線により、第1領域および第2領域と、第3領域と、第4領域と、第5領域および第6領域と、に4分割されており、上記ホログラム素子は、上記記録媒体のトラック接線方向と平行であって該ホログラム素子の中心を通過する分割線により、上記第1および第2領域が、第1領域と第2領域とに2分割されていると共に、上記第5および第6領域が、第5領域と第6領域とに2分割されており、上記第1領域と、上記第2領域と、上記第3領域と、上記第4領域と、上記第5領域と、上記第6領域と、は、各々に入射された、回折すべき上記反射光の上記トラック接線方向における最大長さの比が、3:3:7:7:3:3となっており、上記光検出器は、上記反射光が、上記第1〜第6領域を透過して得られた、0次回折光を受光する、複数個の、第1の受光部と、上記回折光として、上記第1、第2、第5、および第6領域から得られた、+1次回折光または−1次回折光を受光する、複数個の、第2の受光部と、上記回折光として、上記第3および第4領域から得られた、+1次回折光または−1次回折光を受光する、複数個の、第3の受光部と、を備え、各上記第1の受光部が出力した電気信号から、上記情報記録面に記録された情報を再生するための再生信号およびプッシュプル信号を生成し、各上記第2の受光部が出力した電気信号から、上記対物レンズの位置を示す対物レンズシフト信号を生成し、各上記第3の受光部が出力した電気信号から、フォーカス誤差信号を生成するものであり、上記対物レンズシフト信号は、隣接する2個の上記第2の受光部が各々出力した上記電気信号から生成されており、かつ、各該電気信号は、一方の値が正、他方の値が負となっていることを特徴としている。
【0019】
上記の構成によれば、PP法によるトラッキングサーボが実施される光ピックアップ装置において、記録媒体からの反射光がホログラム素子を透過して得られた0次回折光、および、記録媒体からの反射光をホログラム素子で回折して得られた回折光(+1次回折光および−1次回折光)を用いて、再生信号、プッシュプル信号、対物レンズシフト信号、およびフォーカス誤差信号を生成することができる。この構成では、記録媒体からの反射光を分割する必要がないため、得られた再生信号においては、その光利用効率を高くすることができる。
【0020】
また、上記の構成によれば、再生信号およびプッシュプル信号は、第1の受光部が出力した電気信号から、対物レンズシフト信号は、第2の受光部が出力した電気信号から、フォーカス誤差信号は、第3の受光部が出力した電気信号から、それぞれ生成されている。第1〜第3の受光部はいずれも、例えば受光素子により構成することが可能であることから、第1〜第3の受光部を備えた光検出器は、1個の光検出器で実現可能であるため、低コスト化が可能であり、また、接着固定箇所の増加を抑制することができ、これに伴い作業工程の増大を抑制することができるので、光学ヘッドの集積化に際しても好適である。
【0021】
さらに、上記の構成によれば、第1、第2、第5、および第6領域から得られる回折光は、プッシュプル信号が含まれないため、第1、第2、第5、および第6領域から得られる、+1次回折光および−1次回折光から得られる電気信号を用いて、適切に対物レンズシフト信号を得ることができる。
【0022】
ここで、回折光の全光量は一定であるため、再生信号の振幅を大きくするために0次回折光の光量を多くすると、その分、+1次回折光および−1次回折光の光量が少なくなる。+1次回折光および−1次回折光の光量が少なくなるということは、すなわち、+1次回折光および−1次回折光に対する迷光の比率が高くなるということを意味している。大きな迷光が存在すると、トラック誤差信号にオフセットが発生してしまい、トラッキングサーボが適切に実施されなくなってしまう虞があるため、本発明に係る光ピックアップ装置では、大きな迷光の発生は、十分に抑制する必要がある。
【0023】
そこで、上記の構成によれば、2個の第2の受光部が各々出力した、2つの電気信号を減算することで、迷光を相殺(キャンセル)することができるため、発生する迷光を小さくすることができ、大きな迷光の発生を十分に抑制することができる。
【0024】
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、0次回折光と、上記回折光としての+1次回折光と、上記回折光としての−1次回折光と、の光量比は、1:8:1、または、1:12:1となっていることを特徴としている。
【0025】
上記の構成によれば、十分光量の大きな0次回折光を得ることができる。この場合、0次回折光から得られる再生信号は、十分大きな振幅とすることができるため、再生信号における光利用効率を十分向上させることができると共に、再生信号に対して十分良好な信号対雑音比を確保することができる。
【0026】
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、上記対物レンズシフト信号を生成するための、隣接する2個の上記第2の受光部を、2組以上備えており、かつ、隣接する2個の該第2の受光部の各組が互いに隣接していることを特徴としている。
【0027】
上記の構成によれば、2組以上の、2個の第2の受光部が各々出力した電気信号を、各組毎で減算することで、迷光を相殺(キャンセル)することができるため、発生する迷光を小さくすることができ、大きな迷光の発生を十分に抑制することができる。
【0028】
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、隣接する2個の上記第2の受光部に各々対応する、複数の補助受光部を備え、上記補助受光部は、上記回折光としての+1次回折光または−1次回折光を受光し、受光した該回折光を光電変換して電気信号を生成して出力するものであり、上記対物レンズシフト信号はさらに、隣接する2個の上記第2の受光部に対応する2個の上記補助受光部が各々出力した上記電気信号から生成されており、隣接する2個の上記第2の受光部に対応する2個の上記補助受光部が各々出力した上記電気信号は、一方の値が正、他方の値が負となっていることを特徴としている。
【0029】
上記の構成によれば、補助受光部をさらに設けることで、迷光を相殺(キャンセル)する割合をより高くすることができる。
【0030】
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、隣接する複数個の第2の受光部が離間されており、かつ、離間されている距離が10μm以上40μm以下であることを特徴としている。また、本発明に係る光ピックアップ装置は、隣接する2個の上記第2の受光部およびそれに対応する2個の上記補助受光部がそれぞれ離間されており、かつ、離間されている距離が10μm以上40μm以下であることを特徴としている。
【0031】
離間されている距離が10μmより小さいと、隣接する複数個の第2の受光部間では、信号漏れ込み、すなわち、隣接する複数個の第2の受光部間での電気信号の干渉が発生しやすくなり、該信号漏れ込みが発生すると、対物レンズシフト信号の振幅は低下する。但し、迷光キャンセルの効果を考えると、離間されている距離は、できるだけ小さくすることが好ましく、40μm以下とすれば十分である。これは、さらに補助受光部を備える場合であっても、同様のことが言える。
【0032】
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、光検出器上における、0次回折光の光軸から略等距離にある複数の上記第2の受光部が各々出力した電気信号は、値が正になるものと値が負になるものとが同数となっていることを特徴としている。
【0033】
上記の構成によれば、0次回折光の光軸付近に発生した迷光において、上記の各々の減算により、迷光を相殺(キャンセル)することができるため、発生する迷光を小さくすることができ、大きな迷光の発生を十分に抑制することができる。
【0034】
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、上記光源と上記対物レンズとの間に配置されたカップリングレンズを備え、上記情報記録面は、情報が記録されている2層の情報記録層を有しており、各第2の受光部および各第3の受光部は、光検出器上における、0次回折光の光軸を中心とする円の外側に配置されており、上記対物レンズの焦点距離をf1、上記カップリングレンズの焦点距離をf2、上記記録媒体に設けられている光透過層の比屈折率をn、上記記録媒体における光透過層の厚みの最大値をt、とすると、上記円の半径R3が、数式(1)となっていることを特徴としている。
【0035】
R3=(2×t/n)×(f2/f1) ・・・(1)
上記の構成によれば、0次回折光の光軸付近には、第2の受光部および第3の受光部が配置されないので、第2の受光部および第3の受光部に光透過層からの0次回折光である迷光が侵入することを抑制することができる。
【0036】
そして、上記のいずれかの光ピックアップ装置を備えた情報記録再生装置であれば、上記光ピックアップ装置と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0037】
以上のとおり、本発明に係る光ピックアップ装置は、光を出射する光源と、上記光源からの光を、記録媒体の情報記録面上に集光させるための対物レンズと、上記記録媒体からの反射光を回折するホログラム素子と、上記ホログラム素子にて上記反射光が回折されて得られた回折光を受光し、受光した該回折光を光電変換して電気信号を生成して出力する、複数の受光部を有する光検出器と、を備え、上記ホログラム素子は、上記記録媒体のトラック接線方向と直交する3本の分割線により、第1領域および第2領域と、第3領域と、第4領域と、第5領域および第6領域と、に4分割されており、上記ホログラム素子は、上記記録媒体のトラック接線方向と平行であって該ホログラム素子の中心を通過する分割線により、上記第1および第2領域が、第1領域と第2領域とに2分割されていると共に、上記第5および第6領域が、第5領域と第6領域とに2分割されており、上記第1領域と、上記第2領域と、上記第3領域と、上記第4領域と、上記第5領域と、上記第6領域と、は、各々に入射された、回折すべき上記反射光の上記トラック接線方向における最大長さの比が、3:3:7:7:3:3となっており、上記光検出器は、上記反射光が、上記第1〜第6領域を透過して得られた、0次回折光を受光する、複数個の、第1の受光部と、上記回折光として、上記第1、第2、第5、および第6領域から得られた、+1次回折光または−1次回折光を受光する、複数個の、第2の受光部と、上記回折光として、上記第3および第4領域から得られた、+1次回折光または−1次回折光を受光する、複数個の、第3の受光部と、を備え、各上記第1の受光部が出力した電気信号から、上記情報記録面に記録された情報を再生するための再生信号およびプッシュプル信号を生成し、各上記第2の受光部が出力した電気信号から、上記対物レンズの位置を示す対物レンズシフト信号を生成し、各上記第3の受光部が出力した電気信号から、フォーカス誤差信号を生成するものであり、上記対物レンズシフト信号は、隣接する2個の上記第2の受光部が各々出力した上記電気信号から生成されており、かつ、各該電気信号は、一方の値が正、他方の値が負となっている。
【0038】
これにより、PP法を用いた光ピックアップ装置において、再生信号における光利用効率を向上させると共に、低コスト化が可能であり、さらに、集積化に好適であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
〔前提技術〕
図10は、本発明の前提となる光ピックアップ装置の概略構成を示す断面図である。図11は、該光ピックアップ装置における、ホログラム素子と、光検出器の受光部上でのビーム形状と、の関係を表す、概略斜視図である。なお、本願各図面において、「X方向」はトラッキング方向を、「Y方向」はトラック接線方向を、「Z方向」はフォーカス方向を、それぞれ示している。また、X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに直交している。つまり、図10の断面図は、該光ピックアップ装置の、X方向およびZ方向における断面を示している。
【0040】
図10および図11に示す前提技術は、情報記録再生装置への適用に好適な光ピックアップ装置であり、特許文献1に開示されている技術において、補助受光領域を省略した構成に類似していると解釈することができる。
【0041】
図10に示す光ピックアップ装置は、集積化ユニット1、カップリングレンズ8、1/4波長板9、対物レンズ10、アクチュエータ11、対物レンズ用開口絞り16、および、ホルダー20を備える構成である。
【0042】
集積化ユニット1は、波長が例えば405nmである光を出射する半導体レーザチップ2、受光部31を有する光検出器30、および、ガラス基板50に搭載された偏光ホログラム素子52を備える。偏光ホログラム素子52は、入射された光の偏光方向に応じて、光を透過させたり回折させたりする作用を選択的に行う素子である。
【0043】
光ディスク12は、情報を記録するための情報記録層を2層有するものであり、光透過層12a、情報記録層12b(L1層)、および、情報記録層12c(L0層)を備える。
【0044】
半導体レーザチップ2から出射された光は、偏光ホログラム素子52を透過し、カップリングレンズ8を通過して、偏光方向がX方向となる直線偏光に変換される。この直線偏光は、1/4波長板9により円偏光に変換された後、光ディスク12の光透過層12aを透過し、情報記録層12bまたは12c上に集光される。
【0045】
一方、情報記録層12bまたは12cから反射された反射光は、円偏光であるが、1/4波長板9を通過することにより、偏光方向がY方向となる直線偏光に変換される。
【0046】
1/4波長板9を通過した上記反射光は、カップリングレンズ8を通過した後、情報記録層12bまたは12cでの反射前とは異なり、偏光方向がY方向となる直線偏光となっているため、偏光ホログラム素子52で回折され、反射戻り光61として、光検出器30の受光部31で受光される。
【0047】
なお、対物レンズ10、対物レンズ用開口絞り16、および、1/4波長板9は、ホルダー20に固定されてアクチュエータ11を構成しており、光検出器30の受光部31で検出された光を受光部31が光電変換して得られた電気信号に応じた、情報記録層12cの目標トラックに対する、対物レンズ10のフォーカスサーボ(Z方向の変位)およびトラッキングサーボ(X方向の変位)のときに、これらが一体的に駆動される。
【0048】
図11において、偏光ホログラム素子52は、偏光ホログラム素子52の中心を通りX方向に伸びる分割線501により、領域52aおよび52bと領域52cとに2分割されており、さらに、分割線501により分割された偏光ホログラム素子52の一方である領域52aおよび52bは、偏光ホログラム素子52の中心を通りY方向に伸びる分割線502により、領域52aと領域52bとに2分割されている。
【0049】
半導体レーザチップ2から出射された光から、上述した要領で得られる、反射戻り光61は、受光部31として受光部31a〜31dを有する光検出器30により受光される。
【0050】
ここで、受光部31a〜31dの各々が、受光した反射戻り光61を、光電変換した結果得られる出力信号を、それぞれSa〜Sdとすると、フォーカス誤差信号は(Sc−Sd)という演算より、トラック誤差信号は(Sa−Sb)という演算より、情報信号(再生信号)は(Sa+Sb+Sc+Sd)という演算より、それぞれ求められる。
【0051】
ここで、従来、偏光ホログラム素子52で回折された光のうち、−1次回折光は使用されない。このため、偏光ホログラム素子52における、+1次回折光と0次回折光と−1次回折光との回折効率、すなわち、+1次回折光と0次回折光と−1次回折光との光量比は、情報信号を得る回折光の効率を高くする必要があることから、1:0:1とされており、かつ、+1次回折光と0次回折光と−1次回折光との全光量を100%とすると、40%:0%:40%とされている。なお、該光量比の合計が100%とならないのは、偏光ホログラム素子52で回折された光には、高次の回折光(2次回折光等)がさらに含まれるためである。
【0052】
情報信号は、+1次回折光から得られる。また、+1次回折光の光量は、+1次回折光と0次回折光と−1次回折光との全光量のうちの、40%程度であるため、情報信号における光利用効率は、40%程度となり、非常に低くなる。
【0053】
本発明は、以上の構成を有する光ピックアップ装置に対して、再生信号における光利用効率を向上させるための工夫が行われたものであると解釈することができる。
【0054】
〔発明の背景〕
近年、BD(Blu-ray Disc)と呼ばれる、光透過層の厚みが0.1mmである光情報記録媒体に対して、光学的に情報を記録したり、該情報を再生したりする情報記録再生装置が知られている。BDは、情報記録面が1層の場合、光透過層の厚みは0.1mmとなり、情報記録面が2層の場合、対物レンズに遠いほうの情報記録層を第1の情報記録層(L0層)、対物レンズに近いほうの情報記録層を第2の情報記録層(L1層)とすると、第1の情報記録層(L0層)の光透過層の厚みが0.100mmとなり、第2の情報記録層(L1層)の光透過層の厚みが0.075mmとなる。これは、第1の情報記録層(L0層)と第2の情報記録層(L1層)との情報記録層の間隔が、0.025mmであるためである。
【0055】
DVDでは、光透過層の厚みが0.6mmであったが、BDでの光透過層の厚みは0.075〜0.1mmになるため、BDはDVDと比較して情報記録層と光透過層表面との間隔が短くなる。このことは、光透過層表面からの反射光の大きさが、光検出器で、約8倍〜6倍にまで大きくなることを意味する。光透過層表面からの反射光は、情報記録層からの戻り光(信号光)に対しての迷光となるが、該反射光が約8倍〜6倍にまで大きくなると、迷光による影響の度合いが、単位面積当たりに換算すると、BDはDVDと比較して約64倍〜36倍にまで大きくなることを意味する。つまり、BDはDVDと比較して、光透過層表面からの反射光、すなわち、迷光の影響を受けやすくなる。迷光が発生すると、実質的に反射ビームの光軸がずれるため、トラック誤差信号にはオフセットが発生し、トラッキングサーボが適切に実施されなくなってしまう。
【0056】
〔実施の形態1〕
図1は、本発明の光ピックアップ装置の概略構成を示す断面図である。なお、図1の断面図は、図10の断面図と同じく、該光ピックアップ装置の、X方向およびZ方向における断面を示している。
【0057】
図1に示す光ピックアップ装置は、情報記録再生装置への適用に好適な光ピックアップ装置であり、集積化ユニット101、カップリングレンズ108、1/4波長板109、対物レンズ110、アクチュエータ111、対物レンズ用開口絞り116、および、ホルダー120を備える構成である。
【0058】
集積化ユニット101は、波長が例えば405nmである光(光束)を出射する半導体レーザチップ(光源)102、例えばフォトダイオード等の受光素子により構成される、受光部131を有する光検出器130、および、ガラス基板150に搭載された偏光ホログラム素子(ホログラム素子)152を備える。偏光ホログラム素子152は、偏光ホログラム素子52と同じく、入射された光の偏光方向に応じて、光を透過させたり回折させたりする作用を選択的に行う素子である。
【0059】
光ディスク(記録媒体)112は、情報記録面において、情報を記録するための情報記録層を2層有する、BD等の光情報記録媒体であり、光透過層112a、および、情報記録層112b(L1層)および112c(L0層)を備える。なお、符号112dで示されている光ディスク112の部位は、光透過層表面である。
【0060】
ここまで説明した、図1に示す光ピックアップ装置の概略構成は、図10に示す光ピックアップ装置の概略構成と、概ね同一である。
【0061】
一方で、図1に示す光ピックアップ装置の集積化ユニット101は、光分岐素子140をさらに備える。光分岐素子140は、入射された光の偏光方向に応じて、光を透過させたり反射させたりするものであり、半導体レーザチップ102から入射される光に対して、偏光ホログラム素子152から入射される光の経路を変更させる、いわゆる往路光と復路光との光分岐手段として機能している。
【0062】
光ディスク112は、情報記録層(情報記録面)112cの光透過層の厚みが0.100mmとなり、情報記録層(情報記録面)112bの光透過層の厚みが0.075mmとなるが、これは、情報記録層112bと情報記録層112cとの間隔が、0.025mmであるためである。また、各光透過層(光透過層112aおよび情報記録層112b)の比屈折率はいずれも、1.59とする。さらに、記録媒体における、光透過層の厚みの最大値とは、光透過層表面から、該光透過層表面に最も遠い情報記録層までの、Z方向における距離(間隔)を意味しており、例えば、光ディスク112における、光透過層の厚みの最大値は、光透過層表面112dから、光透過層表面112dに最も遠い情報記録層である情報記録層112cまでの間隔、すなわち、0.100mmである。
【0063】
半導体レーザチップ102から出射された光は、光分岐素子140を透過し、偏光ホログラム素子152を透過し、カップリングレンズ108を通過して、偏光方向がX方向となる直線偏光に変換される。この直線偏光は、1/4波長板109により円偏光に変換された後、光ディスク112の光透過層112aを透過し、情報記録層112bまたは112c上に集光される。
【0064】
一方、情報記録層112bまたは112cから反射された反射光は、円偏光であるが、1/4波長板109を通過することにより、偏光方向がY方向となる直線偏光に変換される。
【0065】
1/4波長板109を通過した上記反射光は、カップリングレンズ108を通過して、情報記録層112bまたは112cでの反射前とは異なり、偏光方向がY方向となる直線偏光となっているため、偏光ホログラム素子152で回折される。
【0066】
偏光ホログラム素子152で回折された上記直線偏光は、光分岐素子140によりZ方向からX方向へと、さらに、X方向から再びZ方向へと、反射され、反射戻り光(回折光)161として、光検出器130の受光部131で受光される。
【0067】
なお、対物レンズ110、対物レンズ用開口絞り116、および、1/4波長板109は、ホルダー120に固定されてアクチュエータ111を構成しており、光検出器130の受光部131で検出された光を受光部131が光電変換して得られた電気信号に応じた、情報記録層112cの目標トラックに対する、対物レンズ110のフォーカスサーボ(Z方向の変位)およびトラッキングサーボ(X方向の変位)のときに、これらが一体的に駆動される。
【0068】
図2は、図1に示す光ピックアップ装置における、偏光ホログラム素子152と、光分岐素子140と、光検出器130の受光部131上でのビーム形状と、の関係を表す、概略斜視図である。また、図3は、偏光ホログラム素子152を拡大して示す平面図である。
【0069】
偏光ホログラム素子152は、領域152a〜152f(図3参照)の、計6つの領域に分割されている。
【0070】
具体的に、偏光ホログラム素子152は、X方向に伸びる各分割線601a〜601cにより、領域152aおよび152bと、領域(第3領域)152cと、領域(第4領域)152dと、領域152eおよび152fと、に4分割されている。また、偏光ホログラム素子152は、偏光ホログラム素子152の中心を通りY方向に伸びる分割線602により、領域152aおよび152bが、領域(第1領域)152aと領域(第2領域)152bとに2分割されており、領域152eおよび152fが、領域(第5領域)152eと領域(第6領域)152fとに2分割されている。
【0071】
また、各領域152a〜152dは、各々に入射された、反射光603の上記トラック接線方向における最大長さの比が概ね、3:3:7:7:3:3となっている。つまり、各領域152a、152b、152e、および152fにおける、該最大長さが3nである場合、各領域152c、152dにおける、該最大長さは約7nである。
【0072】
偏光ホログラム素子152を各領域152a〜152fに6分割し、6分割された偏光ホログラム素子152の各領域152a〜152fの、回折格子方向とピッチとをそれぞれ異ならせることで、偏光ホログラム素子152は、光検出器130の受光部131上における任意の位置に光を集光することができる。これにより、後述する第2の受光部である各受光部131i〜131pは、各領域152a、152b、152e、および152fからの回折光を受光できると共に、後述する第3の受光部である各受光部131e〜131hは、各領域152cおよび152dからの回折光を受光できるようになる。
【0073】
偏光ホログラム素子152の各領域152a〜152fは、光ディスク112の情報記録層112bまたは112cから反射された反射光を、それぞれ異なる方向に回折させる。ここで、偏光ホログラム素子152で回折された光には、0次回折光、+1次回折光、および、−1次回折光が存在するが、このうち、0次回折光については、厳密に言えば回折により得られたものでなく、偏光ホログラム素子152を透過した光に対応するため、各領域152a〜152fの各回折方向に関係なく、1種類である。従って、偏光ホログラム素子152で回折された光は、各領域152a〜152fからの+1次回折光(計6種類)と、各領域152a〜152fからの−1次回折光(計6種類)と、偏光ホログラム素子152からの0次回折光(1種類)の、計13種類である。なお、0次回折光は、上記反射光が、領域152a〜152fを透過して得られる。
【0074】
半導体レーザチップ102から出射された光から、上述した要領で得られる、反射戻り光161、すなわち、偏光ホログラム素子152で回折されて得られた13種類の上記光は、受光部131を有する光検出器130により受光される。
【0075】
ここからは、受光部131を有する光検出器130の具体的な構成について、図4を参照して説明する。
【0076】
図4に示すとおり、光検出器130は、受光部131として、第1の受光部である各受光部131a〜131d、第2の受光部である各受光部131i〜131p、および、第3の受光部である各受光部131e〜131hを有している。
【0077】
受光部131a〜131dは、反射戻り光161のうち、偏光ホログラム素子152の領域152a〜152fを透過して得られた0次回折光を受光する。受光部131e、受光部131f、受光部131j、受光部131k、受光部131n、および、受光部131oは、反射戻り光161のうち、偏光ホログラム素子152で回折された−1次回折光を受光する。受光部131g、受光部131h、受光部131i、受光部131l、受光部131m、および、受光部131pは、反射戻り光161のうち、偏光ホログラム素子152で回折された+1次回折光を受光する。
【0078】
また、各受光部131i〜131pは、偏光ホログラム素子152の、領域152a、152b、152e、および152fでの回折により得られた回折光を受光する。各受光部131e〜131hは、偏光ホログラム素子152の、領域152eおよび152dの回折により得られた回折光を受光する。
【0079】
また、受光部131a〜131pは、受光部131a〜131dが、受光部131eと受光部131fとが、受光部131gと受光部131hとが、受光部131iと受光部131mとが、受光部131jと受光部131nとが、受光部131kと受光部131oとが、受光部131lと受光部131pとが、それぞれ隣接して配置されている。
【0080】
受光部131iと受光部131jとは、図示しない配線により電気的に接続されており、受光部131iおよび受光部131jの各々から出力された電気信号(受光した反射戻り光161を光電変換して得られた電気信号)が加算されて出力される。受光部131kと受光部131lとは、図示しない配線により電気的に接続されており、受光部131kおよび受光部131lの各々から出力された電気信号(受光した反射戻り光161を光電変換して得られた電気信号)が加算されて出力される。受光部131mと受光部131nとは、図示しない配線により電気的に接続されており、受光部131mおよび受光部131nの各々から出力された電気信号(受光した反射戻り光161を光電変換して得られた電気信号)が加算されて出力される。受光部131oと受光部131pとは、図示しない配線により電気的に接続されており、受光部131oおよび受光部131pの各々から出力された電気信号(受光した反射戻り光161を光電変換して得られた電気信号)が加算されて出力される。
【0081】
ここで、本実施の形態では、受光部131a、受光部131b、受光部131c、受光部131d、受光部131e、受光部131f、受光部131g、受光部131h、の各々が受光した反射戻り光161を光電変換して得られた電気信号を、それぞれ、S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7、S8とし、受光部131iおよび受光部131jの各々から出力された上記電気信号の加算値をS9とし、受光部131kおよび受光部131lの各々から出力された上記電気信号の加算値をS10とし、受光部131mおよび受光部131nの各々から出力された上記電気信号の加算値をS11とし、受光部131oおよび受光部131pの各々から出力された上記電気信号の加算値をS12とする。
【0082】
フォーカス誤差信号(以下、「FES」と称する)は、数式(2)の演算により得られる。
【0083】
(S5+S8)−(S6+S7) ・・・(2)
プッシュプル信号(メインプッシュプル信号)は、数式(3)の演算により得られる。
【0084】
(S1+S2)−(S3+S4) ・・・(3)
対物レンズシフト信号は、数式(4)の演算により得られる。
【0085】
(S9+S12)−(S10+S11) ・・・(4)
トラック誤差信号は、数式(3)−α×数式(4)、厳密には、数式(5)の演算により得られる。
【0086】
{(S1+S2)−(S3+S4)}−α{(S9+S12)−(S10+S11)} ・・・(5)
なお、αは、数式(4)に与えるべき所定の係数である。
【0087】
再生信号(情報信号)となる、RF(Radio Frequency)信号は、数式(6)の演算により、偏光ホログラム素子152で回折された0次回折光受光用の、受光部131a〜131dからの電気信号の総和として求められる。
【0088】
(S1+S2+S3+S4) ・・・(6)
ここで、FESを得るための演算である数式(2)に関し、受光部131e〜131hの各々が受光した反射戻り光161を光電変換して得られた各電気信号に対して与えられる演算符号に着目すると、各該演算符号は、互いに隣接する受光部から得られる電子信号同士で、正すなわち加算を示す「+」か、負すなわち減算を示す「−」か、のいずれかで異なる。
【0089】
すなわち、数式(2)に関し、受光部131eから得られる上記電気信号に対して与えられる演算符号は「+」となる一方、それに隣接する受光部131fから得られる上記電気信号に対して与えられる演算符号は「−」となる。同様に、数式(2)に関し、受光部131hから得られる上記電気信号に対して与えられる演算符号は「+」となる一方、それに隣接する受光部131gから得られる上記電気信号に対して与えられる演算符号は「−」となる。
【0090】
また、対物レンズシフト信号を得るための演算である数式(4)に関し、受光部131i〜131pの各々が受光した反射戻り光161を光電変換して得られた各電気信号に対して与えられる演算符号に着目すると、各該演算符号は、互いに隣接する受光部から得られる電子信号同士で、正すなわち加算を示す「+」か、負すなわち減算を示す「−」か、のいずれかで異なる。
【0091】
すなわち、数式(4)に関し、受光部131iから得られる上記電気信号に対して与えられる演算符号は「+」となる一方、それに隣接する受光部131mから得られる上記電気信号に対して与えられる演算符号は「−」となる。同様に、数式(4)に関し、受光部131jから得られる上記電気信号に対して与えられる演算符号は「+」となる一方、それに隣接する受光部131nから得られる上記電気信号に対して与えられる演算符号は「−」となる。同様に、数式(4)に関し、受光部131oから得られる上記電気信号に対して与えられる演算符号は「+」となる一方、それに隣接する受光部131kから得られる上記電気信号に対して与えられる演算符号は「−」となる。同様に、数式(4)に関し、受光部131pから得られる上記電気信号に対して与えられる演算符号は「+」となる一方、それに隣接する受光部131lから得られる上記電気信号に対して与えられる演算符号は「−」となる。
【0092】
本発明に係る光ピックアップ装置は、1ビームを使用する、すなわち、半導体レーザチップ102からの光をメインビームとサブビームとに分割しないPP法であるため、該1ビームから得られた、数式(6)で示されるRF信号の振幅を、DPP法の場合よりも大きくすることができる。これにより、本発明に係る光ピックアップ装置では、RF信号において光利用効率を向上させることができるため、光ディスク120への情報の記録に関与することとなるメインビームの光量が低下することで、記録スピードが遅くなり、記録の高速化の妨げになるという問題を抑制することができる。また、本発明に係る光ピックアップ装置では、PP法でありながら、対物レンズ110の変位を示す、数式(4)で示される対物レンズシフト信号を用いることにより、PP法で発生するトラック誤差信号のオフセットを補正することができる。
【0093】
また、偏光ホログラム素子152における、+1次回折光と0次回折光と−1次回折光との回折効率、すなわち、+1次回折光と0次回折光と−1次回折光との光量比は、1:8:1(すなわち、0次回折光は、+1次回折光および−1次回折光の8倍の光量である)、または、1:12:1(すなわち、0次回折光は、+1次回折光および−1次回折光の12倍の光量である)とするのが好ましい。+1次回折光と0次回折光と−1次回折光との上記回折効率は、偏光ホログラム素子152に形成される、領域152a〜152fにおけるホログラムの溝の深さを適宜変更することで決定することができるが、この技術は周知の技術であるため詳細な説明を省略する。
【0094】
これにより、偏光ホログラム素子152からは、十分光量の大きな0次回折光を得ることができる。この場合、数式(6)で示されるRF信号は、十分大きな振幅とすることができるため、RF信号における光利用効率を十分向上させることができると共に、RF信号に対して十分良好な信号対雑音比(以下、「SN比」と称する)を確保することができる。なお、偏光ホログラム素子152からの+1次回折光および−1次回折光からは、FESが数式(2)により求められ、かつ、トラック誤差信号を数式(5)により求められている。+1次回折光または−1次回折光から、RF信号を得ることは、技術上は可能であるが、SN比の点において不利になることが考えられるため、好ましくない。すなわち、+1次回折光または−1次回折光から、RF信号を得る場合、得られたRF信号のレベルが低くなってしまうため、SN比の点において不利になる。また、+1次回折光および−1次回折光から、RF信号を得ることは、技術上は可能であるが、SN比の点において不利になることが考えられるため、やはり好ましくない。すなわち、ある信号を得るために必要な受光部の個数(受光領域の分割数)を増やすと、得られた該信号に雑音が重畳しやすくなり、これにより、該信号のSN比が悪化する。+1次回折光と−1次回折光とを足し合わせて、RF信号を得る場合には、RF信号に発生するノイズが多くなることが問題として挙げられる。
【0095】
ところで、+1次回折光を受光するための、受光部131g、受光部131h、受光部131i、受光部131l、受光部131m、および、受光部131pと、−1次回折光を受光するための、受光部131e、受光部131f、受光部131j、受光部131k、受光部131n、および、受光部131oと、は、0次回折光を受光することがないように、その配置を工夫する必要がある。
【0096】
特に、0次回折光からRF信号の振幅を十分大きくするために、+1次回折光と0次回折光と−1次回折光との回折効率が、1:8:1、または、1:12:1といった、0次回折光において回折効率が非常に高い、偏光ホログラム素子152を用いた光ピックアップ装置においては、+1次回折光および−1次回折光の各光量が、0次回折光の光量と比較して非常に少ないため、+1次回折光または−1次回折光を受光する各上記受光部に、光透過層表面112dからの反射光が入射すると、信号光に対する迷光の比率が高くなる。
【0097】
そのため、+1次回折光および−1次回折光を用いて、FESおよびトラック誤差信号を得ている場合には、信号光に対して迷光が及ぼす影響について、特に注意を払う必要がある。
【0098】
光ディスク112への情報の記録時、または、光ディスク112に記録された情報の再生時には、他層(情報が再生される、情報記録層112bまたは112c以外の層)から反射された光が、迷光として、光検出器130の受光部131に発生する場合がある。この場合の一例としては、情報記録層112cに記録された情報の再生時における情報記録層112bから反射された光、および、情報記録層112bに記録された情報の再生時における情報記録層112cから反射された光が挙げられる。
【0099】
すなわち、配置の工夫としては、偏光ホログラム素子152を透過する、上記他層から反射された光が、受光部131e〜131pに入射しないように、受光部131e〜131pを配置する必要がある。
【0100】
具体的に、偏光ホログラム素子152を透過した、上記他層から反射された光である反射光(迷光)163を、受光部131e〜131pに入射させないため、受光部131e〜131pは、光検出器130上における0次回折光の光軸163cを中心とする(X方向およびY方向に関して)半径R2の円よりも外側に配置されるのが好ましい。なお、半径R2は、対物レンズ110の焦点距離をf1、カップリングレンズ108の焦点距離をf2、光ディスク112の各光透過層の比屈折率(ここでは、1.59)をn、情報記録層11bおよび112cの間隔(ここでは、0.025mm)をsとすると、数式(7)により求められる。
【0101】
R2=(2×s/n)×(f2/f1) ・・・(7)
光透過層の厚みが、情報記録層112cで0.100mm、情報記録層112bで0.075mmという具合に、非常に薄い場合は、光透過層表面112dから反射される光(迷光)が及ぼす影響が無視できない。
【0102】
光透過層表面112dで反射された光を、偏光ホログラム素子152で回折された+1次回折光または−1次回折光を受光する受光部131e〜131pに入射させないため、受光部131e〜131pは、光検出器130上における0次回折光の光軸163cを中心とする(X方向およびY方向に関して)半径R3の円よりも外側に配置されるのが好ましい。なお、半径R3は、さらに、光ディスク112における、光透過層の厚みの最大値(ここでは、光透過層表面112dから情報記録層112cまでの間隔0.100mm)をtとすると、数式(8)により求められる。
【0103】
R3=(2×t/n)×(f2/f1) ・・・(8)
なおここで、光透過層の厚みの最大値tをパラメータとして用いている理由は、光透過層表面112dから反射される光である反射光(迷光)170の、光検出器130での受光時の光量を考慮した場合、該厚みが大きい、情報記録層112cを再生する時に、光検出器130における光透過層表面112dからの反射光170がより大きくなるためである。
【0104】
数式(8)に係る説明では、受光部131e〜131pが、光透過層表面112dからの反射光170を受光しないための、受光部131e〜131pの好ましい配置について説明を行ったが、たとえ、受光部131e〜131pに、光検出器130上における0次回折光の光軸163cを中心とした円状の迷光が仮に入射したとしても、光透過層表面112dでの反射光170の光量の増減、すなわち、図4において、光透過層表面112dからの反射光170の強度が変化することに起因する、S5、S6、S7、S8の数値変化幅を、それぞれ、ΔA、ΔB、ΔC、ΔDとすると、FESは、数式(9)となり、かつ、ΔA、ΔB、ΔC、ΔDはいずれも、概ね等しい値となるので、該迷光の影響はキャンセル(相殺)されることとなる。
【0105】
(S5+ΔA+S8+ΔB)−(S6+ΔC+S7+ΔD) ・・・(9)
同様に、光透過層表面112dでの反射光170の光量の増減に起因する、S9、S10の数値変化幅を、それぞれΔE、ΔFとすると、対物レンズシフト信号は、数式(10)となり、かつ、ΔE、ΔFはいずれも、概ね等しい値となるので、該迷光の影響はキャンセルされることとなる。
【0106】
(S9+ΔE+S12)−(S10+ΔF+S11) ・・・(10)
迷光は、光透過層表面112dからの反射光170等の、光検出器130上における0次回折光の光軸163cを中心とした円状のもの以外にも存在する。
【0107】
ここからは、第2の受光部である受光部131i〜131pに、光検出器130上における0次回折光の光軸163cを中心とした円状以外の迷光が入射した場合について、図4を参照して説明する。
【0108】
他の光学部品からの表面反射光、または、図示しないハウジング表面部分で反射された光が原因で発生した迷光は、光透過層表面112dからの反射光170のように、光検出器130上における0次回折光の光軸163cを中心とした円状の迷光になるとは限らない。ここでは、一例として、受光部131iおよび131m上付近に、円状の迷光171が発生した場合を考える。
【0109】
迷光171を光電変換して得られた電気信号に起因する、S9、S11の数値変化幅を、それぞれΔG、ΔHとすると、対物レンズシフト信号は、数式(11)により求められる。
【0110】
(S9+ΔG)+S12−S10−(S11+ΔH) ・・・(11)
ここで、ΔGとΔHとは概ね等しい値となる。また、互いに隣接する受光部131i〜131pの組合せに関し、一方の受光部から得られる電子信号と、他方の受光部から得られる電子信号と、の各該演算符号は、互いに異なっているため、数式(11)は、数式(12)で近似することができる。
【0111】
S9+S12−S10−S11 ・・・(12)
そして、数式(12)は、数式(4)と等しい演算であることは明らかである。このことは、対物レンズシフト信号に対する迷光171の影響がキャンセルされていることを意味している。迷光171をキャンセルするには、互いに隣接する受光部131i〜131pの組合せに関し、隣接する受光部同士の間隔を狭くすることと、一方の受光部から得られる電子信号と、他方の受光部から得られる電子信号と、の各該演算符号が、互いに異なっていることと、が必須となる。なお、隣接する受光部同士の間隔を狭くすることが必要である理由は、隣接する該受光部の両方で、略同じ強度分布およびビーム形状の迷光171を得る必要があるためである。
【0112】
以上の説明は、光検出器130上において、円状の迷光が発生した場合を例に行ったが、迷光の形状は円状に限定されるものではない。
【0113】
図5は、図4に示す光検出器130の構成において、迷光キャンセルの効果を説明する概略図である。図5に示す受光部131e〜131pでは、得られる上記電気信号に与えられる演算符号が「−」である受光部にハッチングを施している。ハッチングは、受光部131f、受光部131g、受光部131k、受光部131l、受光部131m、受光部131nに施されており、これらの受光部が、得られる上記電気信号に与えられる演算符号が「−」である受光部となる。光検出器130上または後述する光検出器130´上における、0次回折光の光軸163cから略等距離にある、受光部131i、131j、131k、131lが各々出力した電気信号は、値が「+」になるもの(ハッチング無)と値が「−」になるもの(ハッチング有)とが、2個ずつ、すなわち同じ個数となっている。
【0114】
結果、受光部131e〜131pで、隣接するそれぞれ2つの受光部が受光した反射戻り光161を光電変換して得られた各電気信号に対して与えられる演算符号が互いに異なっていることから、迷光のキャンセル効果があることがわかる。
【0115】
隣接するそれぞれ2つの受光部の、トラック接線方向に対して略平行な方向、すなわち、X方向に略等しい方向における間隔Diは、10μm以上かつ40μm以下であることが好ましい。間隔Diが10μmより小さいと、隣接する2つの受光部間では、信号漏れ込み、すなわち、隣接する2つの受光部間での電気信号の干渉が発生しやすくなり、該信号漏れ込みが発生すると、対物レンズシフト信号の振幅は低下する。但し、迷光キャンセルの効果を考えると、間隔Diは、できるだけ小さくすることが好ましく、40μm以下とすれば十分である。
【0116】
〔実施の形態2〕
ここからは、受光部131を有する光検出器130の具体的な構成の応用例について、図6を参照して説明する。なお、本実施の形態においても、本発明の光ピックアップ装置の概略構成を示す断面図は図1である。ここでは、図4と異なる部分についてのみ説明を行う。
【0117】
上述した図4および図5に示す光検出器130では、隣接するそれぞれ2つの受光部が受光した反射戻り光161を光電変換して得られた各電気信号に対して与えられる演算符号が互いに異なっている場合の説明を行ったが、光検出器130はこれに限定されず、隣接するそれぞれ4つの受光部、換言すれば、2組の、2つの受光部、が受光した反射戻り光161を光電変換して得られた各電気信号に対して与えられる演算符号が互いに異なっていてもよい。
【0118】
図6に示す光検出器130は、図4に示す光検出器130に対して、以下の構成が異なっている。すなわち、受光部131i〜131pはさらに、受光部131iと受光部131kとが、受光部131jと受光部131lとが、それぞれ隣接して、好ましくは間隔Diだけ離間されて配置されている。
【0119】
ここからは、図6に示す光検出器130において、一例として、受光部131kおよび131i上付近に、円状の迷光172が発生した場合を考える。
【0120】
迷光172を光電変換して得られた電気信号に起因する、S9、S10の数値変化を、それぞれΔI、ΔJとすると、対物レンズシフト信号は、数式(13)により求められる。
【0121】
(S9+ΔI)+S12−(S10+ΔJ)−S11 ・・・(13)
ここで、ΔIとΔJとは概ね等しい値となる。また、互いに隣接する受光部131i〜131pの組合せに関し、一方の受光部から得られる電子信号と、他方の受光部から得られる電子信号と、の各該演算符号は、互いに異なっているため、数式(13)は、数式(4)と等しい数式(12)で近似することができる。このことは、対物レンズシフト信号に対する迷光172の影響がキャンセルされていることを意味している。
【0122】
具体的に、迷光172は、他の光学部品での表面反射、または、記録または再生を行っている情報記録面112(図1参照)以外からの、上記反射光に起因して発生することが多く、このとき、受光部131上では、迷光172が集光されずに広がりを有する。一方、受光部131は、ホログラム素子152により集光された光を受光する為のものであるので、迷光172のサイズは受光部131の大きさに比べて通常大きくなり、これに伴い、迷光172も受光部131上において広範囲に発生する場合がある。このような場合であっても、隣接するそれぞれ4つの受光部での受光量に応じた出力信号の演算符号が互いに異なるようにすることで、迷光172がキャンセルされやすくなる。つまり、隣接するそれぞれ4つの受光部には、略同じ光強度分布および大きさの迷光172が入射することが多くなるため、各該受光部の演算符号を異ならせることで、迷光172の影響を少なくすることができる。
【0123】
図7は、図6に示す光検出器130の構成において、迷光キャンセルの効果を説明する概略図である。図7に示す受光部131e〜131pでは、得られる上記電気信号に与えられる演算符号が「−」である受光部にハッチングを施している。ハッチングは、図5と同様に、受光部131f、受光部131g、受光部131k、受光部131l、受光部131m、受光部131nに施されており、これらの受光部が、得られる上記電気信号に与えられる演算符号が「−」である受光部となる。
【0124】
隣接するそれぞれ2つの受光部の、トラック接線方向に対して略平行な方向、すなわち、X方向に略等しい方向における間隔Diは、10μm以上かつ40μm以下であることが好ましいのは言うまでも無いが、隣接する2組の、2つの受光部においても同様に、トラック接線方向に対して略平行な方向、すなわち、X方向に略等しい方向における間隔Diは、10μm以上かつ40μm以下であることが好ましい。また、2つの受光部は、3組以上が互いに隣接して設けられていてもよく、このときであっても、2つの受光部の、各組毎に、ある組に関して、一方の受光部から得られる上記電気信号に与えられる演算符号が「+」であり、他方の受光部から得られる上記電気信号に与えられる演算符号が「−」である構成とすることで、上記と同様の迷光キャンセル効果が得られる。
【0125】
〔実施の形態3〕
ここからは、別の、受光部を有する光検出器の具体的な構成について、図8を参照して説明する。なお、本実施の形態においても、本発明の光ピックアップ装置の概略構成を示す断面図は図1である。ここでは、図4と異なる部分についてのみ説明を行う。
【0126】
図8に示す光検出器130´は、図4に示す光検出器130に対して、以下の構成が異なっている。すなわち、受光部131i〜131pの各々のX方向における外側には、各々対応する補助受光部132i〜132pがそれぞれ備えられている。
【0127】
具体的に、隣接する受光部131iおよび受光部131mに関しては、X方向において、受光部131iとにより受光部131mを挟むように補助受光部132iが備えられていると共に、受光部131mとにより受光部131iを挟むように補助受光部132mが備えられている。隣接する受光部131jおよび受光部131nに関しては、X方向において、受光部131jとにより受光部131nを挟むように補助受光部132jが備えられていると共に、受光部131nとにより受光部131jを挟むように補助受光部132nが備えられている。隣接する受光部131kおよび受光部131oに関しては、X方向において、受光部131kとにより受光部131oを挟むように補助受光部132kが備えられていると共に、受光部131oとにより受光部131kを挟むように補助受光部132oが備えられている。隣接する受光部131lおよび受光部131pに関しては、X方向において、受光部131lとにより受光部131pを挟むように補助受光部132lが備えられていると共に、受光部131pとにより受光部131lを挟むように補助受光部132pが備えられている。各補助受光部132i〜132pと、各補助受光部132i〜132pに挟まれることとなる各受光部131i〜131pとは、それぞれ隣接して、好ましくは間隔Diだけ離間されて配置されている。
【0128】
補助受光部132i〜132pは、偏光ホログラム152で回折された、+1次回折光および−1次回折光を、受光しない位置に配置されており、各々対応する(符号に同じアルファベットが付されている)受光部131i〜131pと、光検出器130´内部において、各配線により電気的に接続されている。
【0129】
また、補助受光部132i〜132pの各々が受光した反射戻り光161を光電変換して得られた各電気信号は、対応する受光部131i〜131pの各々が受光した反射戻り光161を光電変換して得られた各電気信号と、互いに異なる演算符号が与えられている。
【0130】
ここからは、図8に示す光検出器130´において、一例として、受光部131iおよび補助受光部132m上付近に、円状の迷光173が発生した場合を考える。
【0131】
迷光173を光電変換して得られた電気信号に起因する、S9、S11の数値変化を、それぞれΔK、ΔLとすると、対物レンズシフト信号は、数式(14)により求められる。
【0132】
(S9+ΔK)+S12−S10−(S11+ΔL) ・・・(14)
ここで、ΔKとΔLとは概ね等しい値となる。また、互いに隣接する、受光部131iから得られる電子信号と、補助受光部132mから得られる電子信号と、の各該演算符号は、互いに異なっているため、数式(14)は、数式(4)と等しい数式(12)で近似することができる。このことは、対物レンズシフト信号に対する迷光173の影響がキャンセルされていることを意味している。補助受光部132i〜132pの各々が受光した反射戻り光161を光電変換して得られた各電気信号と、各々対応する受光部131i〜131pの各々が受光した反射戻り光161を光電変換して得られた各電気信号と、に、互いに異なる演算符号が与えることで、迷光173がキャンセルされやすくなる。この理由は、各補助受光部132i〜132pをさらに設けることで、迷光173の大きさよりも小さい異なる演算符号の各補助受光部132i〜132pにより、迷光173をさらに多分割して演算処理することになる為、迷光173のキャンセルの効果が高くなるためである。
【0133】
図9は、図8に示す光検出器130´の構成において、迷光キャンセルの効果を説明する概略図である。図9に示す、受光部131e〜131p、および、補助受光部132e〜132pでは、FESを得るための数式(2)、および、対物レンズシフト信号を得るための数式(4)において、得られる上記電気信号に与えられる演算符号が「−」である受光部にハッチングを施している。ハッチングは、受光部131f、受光部131g、受光部131k、受光部131l、受光部131m、受光部131n、さらには、補助受光部132k、補助受光部132l、補助受光部132m、および補助受光部132n、に施されており、これらの受光部または補助受光部が、得られる上記電気信号に与えられる演算符号が「−」である受光部または補助受光部となる。
【0134】
隣接する受光部と補助受光部との、トラック接線方向に対して略平行な方向、すなわち、X方向に略等しい方向における間隔Diは、10μm以上かつ40μm以下であることが好ましいのは言うまでも無い。
【0135】
なお、本実施の形態では、補助受光部132i〜132pは、それぞれ対応する受光部131i〜131pと、各配線により電気的に接続されているが、各配線は、光検出器132´外部に設けられていてもよいし、光検出器132´内部に設けられていてもよい。但し、出力信号の本数削減を考慮すると、各配線は、光検出器132´内部に設けられているのがより好ましい。
【0136】
迷光173をキャンセルするには、互いに隣接する受光部131i〜131pおよび補助受光部132i〜132pの組合せに関し、隣接する受光部と補助受光部との間隔を狭くすることと、受光部から得られる電子信号と、補助受光部から得られる電子信号と、の各該演算符号が、互いに異なっていることと、が必須となる。隣接する受光部と補助受光部との間隔を狭くすることが必要である理由は、隣接する該受光部および該補助受光部で、略同じ強度分布およびビーム形状の迷光173を得る必要があるためである。これらの必要条件さえ満足すれば、受光部131i〜131pと、補助受光部132i〜132pと、の位置をそれぞれ任意に入れ替えても同様の効果がある。
【0137】
本発明の光ピックアップ装置では、PP法によるトラッキングサーボが実施される光ピックアップ装置において、光ディスク112からの反射光を偏光ホログラム素子152で回折して得られた、+1次回折光、0次回折光、および−1次回折光を用いて、RF信号、プッシュプル信号、対物レンズシフト信号、およびFESを生成することができる。この構成では、光ディスク112からの反射光を分割する必要がないため、得られたRF信号においては、その光利用効率を高くすることができる。
【0138】
また、本発明に係る各光検出器130および130´は、受光部131a〜131pおよび/または補助受光部132i〜132pが、例えば受光素子により構成することが可能であることから、1個の光検出器として光ピックアップ装置に備えられるので、低コスト化が可能であり、また、接着固定箇所の増加を抑制することができ、これに伴い作業工程の増大を抑制することができるので、光学ヘッド自体の集積化に際しても有利である。
【0139】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、光ディスク等の情報記録媒体に光学的に情報を記録したり、情報記録媒体に記録された情報を再生したりする、光ピックアップ装置および情報記録再生装置に適用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の光ピックアップ装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す光ピックアップ装置における、ホログラム素子と、光分岐素子と、光検出器の受光部上でのビーム形状と、の関係を表す、概略斜視図である。
【図3】上記ホログラム素子を拡大して示す平面図である。
【図4】受光部を有する光検出器の具体的な構成を示す平面図である。
【図5】図4に示す光検出器の構成において、迷光キャンセルの効果を説明する概略図である。
【図6】受光部を有する光検出器の具体的な構成の応用例を示す平面図である。
【図7】図6に示す光検出器の構成において、迷光キャンセルの効果を説明する概略図である。
【図8】別の、受光部を有する光検出器の具体的な構成を示す平面図である。
【図9】図8に示す光検出器の構成において、迷光キャンセルの効果を説明する概略図である。
【図10】本発明の前提となる光ピックアップ装置の概略構成を示す断面図である。
【図11】図10に示す光ピックアップ装置における、ホログラム素子と、光検出器の受光部上でのビーム形状と、の関係を表す、概略斜視図である。
【符号の説明】
【0142】
101 集積化ユニット
102 半導体レーザチップ(光源)
112 光ディスク(記録媒体)
112a 光透過層
112bおよび112c 情報記録層
112d 光透過層表面
130 光検出器
130´ 光検出器
131 受光部
131a〜131d 受光部(第1の受光部)
131e〜131h 受光部(第3の受光部)
131i〜131p 受光部(第2の受光部)
132i〜132p 補助受光部
140 光分岐素子
152 偏光ホログラム素子(ホログラム素子)
161 反射戻り光(回折光)
163 他層から反射された光である反射光(迷光)
171〜173 迷光
601a〜601c、602 分割線
603 反射光
Di 隣接するそれぞれ2つの受光部の間隔
FES フォーカス誤差信号
S1〜S8 受光部131a〜131h、の各々から得られた電気信号
S9 受光部131iおよび受光部131jから得られた電気信号
S10 受光部131kおよび受光部131lから得られた電気信号
S11 受光部131mおよび受光部131nから得られた電気信号
S12 受光部131oおよび受光部131pから得られた電気信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、
上記光源からの光を、記録媒体の情報記録面上に集光させるための対物レンズと、
上記記録媒体からの反射光を回折するホログラム素子と、
上記ホログラム素子にて上記反射光が回折されて得られた回折光を受光し、受光した該回折光を光電変換して電気信号を生成して出力する、複数の受光部を有する光検出器と、を備え、
上記ホログラム素子は、上記記録媒体のトラック接線方向と直交する3本の分割線により、第1領域および第2領域と、第3領域と、第4領域と、第5領域および第6領域と、に4分割されており、
上記ホログラム素子は、上記記録媒体のトラック接線方向と平行であって該ホログラム素子の中心を通過する分割線により、上記第1および第2領域が、第1領域と第2領域とに2分割されていると共に、上記第5および第6領域が、第5領域と第6領域とに2分割されており、
上記第1領域と、上記第2領域と、上記第3領域と、上記第4領域と、上記第5領域と、上記第6領域と、は、各々に入射された、回折すべき上記反射光の上記トラック接線方向における最大長さの比が、3:3:7:7:3:3となっており、
上記光検出器は、
上記反射光が、上記第1〜第6領域を透過して得られた、0次回折光を受光する、複数個の、第1の受光部と、
上記回折光として、上記第1、第2、第5、および第6領域から得られた、+1次回折光または−1次回折光を受光する、複数個の、第2の受光部と、
上記回折光として、上記第3および第4領域から得られた、+1次回折光または−1次回折光を受光する、複数個の、第3の受光部と、を備え、
各上記第1の受光部が出力した電気信号から、上記情報記録面に記録された情報を再生するための再生信号およびプッシュプル信号を生成し、
各上記第2の受光部が出力した電気信号から、上記対物レンズの位置を示す対物レンズシフト信号を生成し、
各上記第3の受光部が出力した電気信号から、フォーカス誤差信号を生成するものであり、
上記対物レンズシフト信号は、隣接する2個の上記第2の受光部が各々出力した上記電気信号から生成されており、かつ、各該電気信号は、一方の値が正、他方の値が負となっていることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
0次回折光と、上記回折光としての+1次回折光と、上記回折光としての−1次回折光と、の光量比は、1:8:1、または、1:12:1となっていることを特徴とする請求項1に記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
隣接する2個の上記第2の受光部が離間されており、かつ、離間されている距離が10μm以上40μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
上記対物レンズシフト信号を生成するための、隣接する2個の上記第2の受光部を、2組以上備えており、かつ、隣接する2個の該第2の受光部の各組が互いに隣接していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
上記の各組を構成する、各第2の受光部がそれぞれ離間されており、かつ、離間されている距離が10μm以上40μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の光ピックアップ装置。
【請求項6】
隣接する2個の上記第2の受光部に各々対応する、複数の補助受光部を備え、
上記補助受光部は、上記回折光としての+1次回折光または−1次回折光を受光し、受光した該回折光を光電変換して電気信号を生成して出力するものであり、
上記対物レンズシフト信号はさらに、隣接する2個の上記第2の受光部に対応する2個の上記補助受光部が各々出力した上記電気信号から生成されており、
隣接する2個の上記第2の受光部に対応する2個の上記補助受光部が各々出力した上記電気信号は、一方の値が正、他方の値が負となっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項7】
隣接する2個の上記第2の受光部およびそれに対応する2個の上記補助受光部がそれぞれ離間されており、かつ、離間されている距離が10μm以上40μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の光ピックアップ装置。
【請求項8】
光検出器上における、0次回折光の光軸から略等距離にある複数の上記第2の受光部が各々出力した電気信号は、値が正になるものと値が負になるものとが同数となっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置。
【請求項9】
上記光源と上記対物レンズとの間に配置されたカップリングレンズを備え、
上記情報記録面は、情報が記録されている2層の情報記録層を有しており、
各第2の受光部および各第3の受光部は、光検出器上における、0次回折光の光軸を中心とする円の外側に配置されており、
上記対物レンズの焦点距離をf1、上記カップリングレンズの焦点距離をf2、上記記録媒体に設けられている光透過層の比屈折率をn、上記記録媒体における光透過層の厚みの最大値をt、とすると、上記円の半径R3が、数式(1)となっていることを特徴とする請求項1〜8のいずれ1項に記載の光ピックアップ装置。
R3=(2×t/n)×(f2/f1) ・・・(1)
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の光ピックアップ装置を備えた情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−135017(P2010−135017A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311198(P2008−311198)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】