説明

光モジュールおよび光モジュールの製造方法

【課題】光学的調心を行うことなく外部光ファイバを結合するためのスリーブの位置決めを行うことが可能で、種々の形態のスリーブに対して集光ユニットの共用を可能とすること。
【解決手段】光モジュール1は、短尺光ファイバ14を収容するスタブ12を内蔵するスリーブ13と、短尺光ファイバ14と光結合される第1の集光レンズ9が実装されるとともに、スリーブ13を組み付ける取付端面が形成された集光ユニット2と、第1の集光レンズ9と光結合される第2の集光レンズ26a、26b、および、フォトダイオード23a、23bが実装された送信ユニット20a、20bとを備え、スタブ12の先端部はスリーブ13の接合端面より突き出ており、集光ユニット2の取付端面にはスタブ12の先端部を嵌合して位置決めする凹部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを用いて光信号を送信、受信、送受信するための光モジュールおよび光モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光モジュールの外部光ファイバと光素子を光結合するのに、コリメート光学系(例えば、特許文献1を参照)を用いる代わりに、収束光学系(例えば、特許文献2を参照)を用いることが提案されている。収束光学系を用いる光モジュールでは、複数の光信号送信ユニットと光信号受信ユニットの光学的調心を個別に行うことが可能となり、さらには、光ファイバの光学的調心も個別に行うことが可能となった。このため、光ファイバの光学的位置決めは、光信号送信ユニットおよび光信号受信ユニットの位置決めと別に独立して行うことが可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−144602号公報
【特許文献2】特開平9−211258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、収束光学系を用いる場合でも、光ファイバの結合のためのコネクタスリーブの調心は、光モジュールの筐体(集光ユニット)の取付け端面上で光軸に対し所定の位置になるように個別にXY方向(取付端面に平行な方向)あるいはスタブのZ方向(取付端面に垂直な方向)の調心が行われている。このため、コリメート光学系の場合と同様に調心に要する工数が大きく、収束光学系を用いたことによる利点が十分生かされていない。また、光ファイバを結合するためのコネクタスリーブに、種々の形態のものがあるが、それぞれのスリーブ形態に応じた光学的調心が必要で、共用性に欠けている。
【0005】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、光学的調心を行うことなく外部光ファイバを結合するためのスリーブの位置決めを行うことが可能で、種々の形態のスリーブに対して集光ユニットの共用が可能な光モジュールとその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による光モジュールは、光学レンズを介して収束光学系を構成することにより外部光ファイバと光素子とを光結合する光モジュールで、短尺光ファイバを収容するスタブを内蔵するスリーブと、短尺光ファイバと光結合される第1の集光レンズと波長選択フィルタが実装されるとともに、スリーブを組み付ける取付端面が形成された集光ユニットと、第1の集光レンズと光結合される第2の集光レンズ、および、光素子が実装された送信ユニットとを備える。そして、スタブの先端部はスリーブの接合端面より突き出ており、集光ユニットの取付端面にはスタブの先端部を嵌合して位置決めする凹部が形成されている。
【0007】
また、本発明による光モジュールでは、第1の集光レンズの光軸と第2の集光レンズの光軸は短尺光ファイバの光軸と平行で、第1の集光レンズの光軸は短尺光ファイバの光軸とオフセットさせてもよい。また、第1の集光レンズの光軸は第2の集光レンズの光軸とオフセットさせてもよい。
また、第1の集光レンズの一方のビームウェスト位置を、短尺光ファイバの端部に設定することができる。
さらに、送信ユニットを、第1の集光レンズの他方のビームウェスト位置を含む面において、集光ユニットに固定することができる。
【0008】
また、本発明による光モジュールの製造方法は、光学レンズを介して収束光学系を構成することにより外部光ファイバと光素子とを光結合する光モジュールの製造方法で、短尺光ファイバと光結合される第1の集光レンズと波長選択フィルタとが実装された集光ユニットの取付端面に凹部が形成されており、短尺光ファイバを収容し、スリーブに内蔵されるスタブの先端部はスリーブの接合端面より突き出ており、スタブの先端部を凹部に嵌合して位置決めし、第2の集光レンズ、および、光素子が実装された送信ユニットを集光ユニットに固定して第1の集光レンズと第2の集光レンズとを光結合することにより光モジュールが製造される。
【0009】
また、本発明による光モジュールの製造方法では、第1の集光レンズの一方のビームウェスト位置を短尺光ファイバの端部に設定し、送信ユニットを、第1の集光レンズの他方のビームウェスト位置を含む面において集光ユニットに固定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スリーブに内蔵されたスタブの先端部がスリーブの接合端面より突き出ており、集光ユニットの取付端面にはスタブの先端部を嵌合して位置決めする凹部が形成されているので、光学的調心を行うことなく外部光ファイバを結合するためのスリーブの位置決めを行うことが可能で、種々の形態のスリーブに対して集光ユニットの共用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による光モジュールの実施形態の一例を示す概略図である。
【図2】ピグテール型の光コネクタ、第1の送信ユニット、第2の送信ユニット、受信ユニットが装着された光モジュールの一例を示す概略図である。
【図3】第1の集光レンズの固定について説明する図である。
【図4】SCスリーブ、LCスリーブおよびピグテールの装着について説明する図である。
【図5】結合ロスと公差との間の関係を示す図である。
【図6】SCスリーブ、LCスリーブ、ピグテールの回転角の調整について説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による光モジュールについて説明する。図1は、本発明による光モジュールの実施形態の一例を示す概略図である。図1(A)は、光モジュール1の外観図を示し、図1(B)は、図1(A)に示した光モジュール1の断面図を示す。
図1(A)に示すように、この光モジュール1では、集光ユニット2には一例としてピグテール型の光コネクタ3が結合されている。そして、図1(B)に示すように、集光ユニット2には、光信号を送信する第1の送信ユニット(TOSA、Transmitter Optical Sub-Assembly)が接合される第1の送信ユニット接合面4、光信号を送信する第2の送信ユニット(TOSA)が接合される第2の送信ユニット接合面5、光信号を受信する受信ユニット(ROSA、Receiver Optical Sub-Assembly)が接合される受信ユニット接合面6が設けられている。
【0013】
また、集光ユニット2の内部には、第1の波長選択フィルタ(WDMフィルタ、Wavelength Division Multiplexing Filter)7、第2の波長選択フィルタ8、第1の集光レンズ9、カットフィルタ10が設けられている。
ここで、カットフィルタ10は、第1の送信ユニットから送信される第1の波長の光信号、および、第2の送信ユニットから送信される第2の波長の光信号を遮断する。これにより、第1の送信ユニットおよび第2の送信ユニットから送信された光信号の反射戻り光が受信ユニットに入射することを防止する。
【0014】
また、ピグテール型の光コネクタ3は、フェルール11、スタブ12、スリーブ13を有する。スリーブ13(以下、ピグテールスリーブと呼ぶ)は、短尺光ファイバ14を収容したスタブ12を内蔵し、集光ユニット2と接合するフランジ15を有する。また、スタブ12の一端には、外部光ファイバを収容するフェルール11の先端が挿入される。さらに、スタブ12の先端側には、集光ユニット2の凹部に嵌合し、スタブ12の位置決めをする位置決め部16が設けられている。
【0015】
図2は、ピグテール型の光コネクタ3、第1の送信ユニット20a、第2の送信ユニット20b、受信ユニット21が装着された光モジュール1の一例を示す概略図である。
この光モジュール1は、集光ユニット2を構成する筺体22の一方の端部に、スタブ12を固定するスリーブ13を接合固定し、反対側の端部に第1の波長の信号光を発光するレーザダイオード23aが実装された第1の送信ユニット20aを接合固定してなる。また、筺体22の側面には、第2の波長の信号光を発光するレーザダイオード23bが実装された第2の送信ユニット20bが接合固定される。さらに、筺体22の反対側の側面には、信号光を受光するフォトダイオード25が実装された受信ユニット21が接合固定される。
【0016】
集光ユニット2の筺体22内には、第1の波長選択フィルタ7、第2の波長選択フィルタ8、第1の集光レンズ9、カットフィルタ10が配置される。第1の集光レンズ9は、短尺光ファイバ14の端部に一方のビームウェスト位置をもつ。第1の集光レンズ9の他方のビームウェスト位置は、例えば、第1の送信ユニット20aが接合固定される第1の送信ユニット接合面4上となるように設定される。そして、この第1の集光レンズ9は、例えば、像倍率が「1」で筺体22の中央部分に設置される。
【0017】
また、短尺光ファイバ14から第1の集光レンズ9へと向かう光路は、第2の波長選択フィルタ8を透過して第1の集光レンズ9に向かうものと、第2の波長選択フィルタ8により方向が曲げられて受信ユニット21に向かうものとに分岐される。第2の波長選択フィルタ8と受信ユニット21との間の光路中には、カットフィルタ10が配置され、第1の送信ユニットおよび第2の送信ユニットから送信された光信号の反射戻り光の入射を防止する。
【0018】
受信ユニット21内には、球レンズ24が配置される。そして、球レンズ24の一方のビームウェスト位置はフォトダイオード25の受光部に位置し、他方のビームウェスト位置は、受信ユニット21が受信ユニット接合面6に固定された状態で、短尺光ファイバ14の端部に位置するように設定される。
【0019】
さらに、第1の集光レンズ9の光路は、第1の波長選択フィルタ7を透過して送信ユニット20aに向かうものと、第1の波長選択フィルタ7により方向が曲げられて送信ユニット20bに向かうものとに分岐され、方向が曲げられた光路のビームウェスト位置は、例えば、第2の送信ユニット20bが接合固定される第2の送信ユニット接合面5上となるように設定される。
【0020】
送信ユニット20a内には、第2の集光レンズ26aが配置され、一方のビームウェスト位置はレーザダイオード23aの発光部に位置し、他方のビームウェスト位置は、例えば、第1の送信ユニット20aが第1の送信ユニット接合面4に固定された状態で、第1の送信ユニット接合面4上に位置するように設定される。そして、第2の集光レンズ26aは、第1の送信ユニット接合面4にビームウェスト位置を有する第1の集光レンズ9と光結合される。
【0021】
また、送信ユニット20b内には、第2の集光レンズ26bが配置され、一方のビームウェスト位置はレーザダイオード23bの発光部に位置し、他方のビームウェスト位置は、例えば、第2の送信ユニット20bが第2の送信ユニット接合面5に固定された状態で、第2の送信ユニット接合面5上に位置するように設定される。そして、第2の集光レンズ26bは、第2の送信ユニット接合面5上にビームウェスト位置を有する第1の集光レンズ9と光結合される。
【0022】
スタブ12内に収納された短尺光ファイバ14の集光ユニット2側の端面は、反射戻り光を低減するため、短尺光ファイバ14の光軸に垂直な面に対し6度程度傾斜するように研磨することとしてもよい。
また、短尺光ファイバ14と第2の集光レンズ26aとは、それぞれの光軸が一致するように配置される。一方、第1の集光レンズ9は、その光軸が短尺光ファイバ14および第2の集光レンズ26aの光軸からオフセットするように配置して、短尺光ファイバ14の光軸に対し所定の角度で、光が短尺光ファイバ14の傾斜端面に入射するようにする。これらの配置位置は計算により求めることができる。これにより、傾斜端面で屈折した光は、短尺光ファイバ14内を短尺光ファイバ14の光軸に平行に伝播する。
【0023】
ここで、第1の集光レンズ9は、集光ユニット2の筺体22の内壁を利用して位置決めがなされ、筺体22に接合固定される。図3は、第1の集光レンズ9の固定について説明する図である。
図3(A)に示すように、集光ユニット2の筺体22には、第1のレンズ9を固定する第1の内壁面30と、第2の内壁面31とが形成される。そして、図3(B)に示すように、第1の内壁面30および第2の内壁面31に、第1のレンズ9を保護するドーナツ状の保護部材32が接触するよう第1のレンズ9を筺体22に固定する。この固定は、筺体22外側からの貫通YAG(Yittrium-Aluminium-Garnet)レーザ溶接、樹脂による接着固定、あるいは、圧入などにより行われる。
【0024】
ここで、第1の内壁面30および保護部材32の寸法、公差は、第1の内壁面30と保護部材32との間の隙間(クリアランス)が十分小さくなるように設定されている。例えば、第1の内壁面30の径が3.015mm、公差が±0.01mm、保護部材32の外壁面の径が2.999mm、公差が±0.006mmに設定される。この場合、隙間の最大値は0.016mmとなり、最小値は0.000mmとなる。
【0025】
なお、図1および図2では、集光ユニット2の筺体22にピグテール型の光コネクタ3が装着された場合について説明したが、光モジュール1は、同一の筺体22に、各種形態のコネクタスリーブ、例えば、SC光コネクタ用のスリーブ(以下、SCスリーブと呼ぶ)、LC光コネクタ用のスリーブ(以下、LCスリーブと呼ぶ)を装着することもできるように設計されている。図4(A)には、SCスリーブの各部の寸法が、図4(B)には、LCスリーブの各部の寸法が、図4(C)には、ピグテールスリーブの各部の寸法が、図4(D)には、筺体22にSCスリーブが装着された状態が示されている。
【0026】
図4(A)〜(C)に示すように、SCスリーブにおけるスタブ41aの外径D1、LCスリーブにおけるスタブ41bの外径D2、ピグテールスリーブにおけるスタブ12の外径D3は互いに異なっており、例えば、D1は2.499mm、D2は1.25mm、D3は1.4mmに設計されている(D1>D3>D2)。
【0027】
このうち、スタブの外径が最も大きいのはSCスリーブであるため、このSCスリーブのスタブ41aの外径D1を基準として、筺体22の凹部の内径D6が設計される。具体的には、スタブ41aの外壁面と筺体22の凹部の内壁面45との間の隙間(クリアランス)が十分小さくなるよう内径D6が設計される。すなわち、内径D6は、スタブ41bの外径との差が十分小さくなるよう設計される。
【0028】
そして、スタブ41aを保持するスリーブ42aには、筺体22と接合されるフランジ43aが設けられている。このスタブ41aは、フランジ43a(筺体22と接合される接合端面)から距離D5だけ突き出すように設けられる。図4(D)に示すように、この突き出した部分が、内径がD6である筺体22の凹部と嵌合することにより、光軸に直交するx軸、y軸方向のスタブ41aの位置決めが、特別な調心作業を行うことなく容易にできる。
例えば、D1を2.499mm、D1の公差を±0.005mm、D6を2.519mm、D6の公差を±0.01mmとした場合、スタブ41aの外壁面と筺体22の凹部の内壁面45との間の隙間の最大値は0.0175mmとなり、最小値は0.0025mmとなる。
【0029】
図4(B)に示すLCスリーブの場合も、スタブ41bを保持するスリーブ42bに、筺体22と接合されるフランジ43bが設けられる。そして、スタブ41bは、フランジ43b(筺体22と接合される接合端面)から距離D5だけ突き出すように設けられる。
【0030】
しかし、スタブ41bの外径D2は、筺体22の凹部の内径D6よりも小さいため、このままではスタブ41bのx軸、y軸方向の位置決めが困難である。そのため、外径がD1である位置決め部44がスタブ41bの周りに設けられ、スタブ41bの先端部を構成する。位置決め部44の半径方向の幅(D1−D2)/2は、位置決め部44の外壁面と筺体22の凹部の内壁面45との間の隙間(クリアランス)が十分小さくなるよう設計される。
この位置決め部44は、内径がD6である筺体22の凹部に嵌合する。これにより、光軸に直交するx軸、y軸方向のスタブ41bの位置決めが、特別な調心作業を行うことなく容易にできる。
【0031】
図4(C)に示すピグテールスリーブの場合も同様に、スタブ12は、フランジ15(筺体22と接合される接合端面)から距離D5だけ突き出すように設けられている。そして、特別な調心作業を行うことなく、スタブ12のx軸、y軸方向の位置決めを行うため、外径がD1である位置決め部16がスタブ12の周りに設けられ、スタブ12の先端部を構成する。
【0032】
位置決め部16の半径方向の幅(D1−D3)/2は、位置決め部16の外壁面と筺体22の凹部の内壁面45との間の隙間(クリアランス)が十分小さくなるよう設計される。この位置決め部16が、内径D6の筺体22の凹部に嵌合し、これによって、光軸に直交するx軸、y軸方向のスタブ12の位置決めがなされる。
例えば、D1を2.499mm、D1の公差を±0.010mm、D6を2.519mm、D6の公差を±0.01mmとした場合、位置決め部16の外壁面と筺体22の凹部の内壁面45との隙間の最大値は0.020mmとなり、最小値は0.000mmとなる。また、筺体22の第1の内壁面30と筺体22の凹部の内壁面45との間の偏心加工公差を±0.01mmとすると、第1のレンズ9とスタブ12との間の偏心量の最大値を0.0475mmとすることができる。
【0033】
また、第1の集光レンズ9の保護部材32が固定される第2の内壁面31は、SCスリーブ、LCスリーブ、あるいは、ピグテールスリーブを筺体22に取り付ける取付端面46からの距離が所定の距離となるよう、精度よく加工することができる。例えば、第2の内壁面31は、±0.02mmの精度で加工することができる。この場合、第1の集光レンズ9を第2の内壁面31に押し当てて固定し、フランジ43a、43b、15を取付端面46に押し当てて固定することで、z軸方向の公差を±0.1mm以下とすることができる。
【0034】
図5は、結合ロスと公差との間の関係を示す図である。図5(A)の横軸はx軸、y軸方向の公差であり、図5(B)の横軸はz軸方向の公差である。
図5(A)からわかるように、x軸、y軸方向の偏心量が0.0475mmである場合には、第1のレンズ9と短尺光ファイバ14との間の光結合のロスを0.5dBよりも小さくできる。また、図5(B)からわかるように、z軸方向の公差が±0.1mmである場合も、第1のレンズ9と短尺光ファイバ14との間の光結合のロスを0.5dBよりも小さくできる。
このように、光モジュール1をこのような構成とすることにより、第1のレンズ9とスタブ12、41a、41bとを、結合ロスが最小である公差内(x軸、y軸方向について±0.05mm、z軸方向について±0.1mm)で、特別な調心作業を行うことなく、固定することができる。
【0035】
筺体22に対するSCスリーブ、LCスリーブ、ピグテールスリーブの固定は、筺体22の取付端面46に対してフランジ43a、43b、15をYAGレーザ溶接することにより行われる。この場合、フランジ43a、43b、15の外径は、すべてのスリーブに対して同一(D4)とするのが望ましい。これにより、YAGレーザ溶接の溶接条件の変更が不要となる。
また、ここでは、フランジ43a、43b、15(筺体22と接合される接合端面)からのスタブ41a、41b、12の突き出し距離を一定値(D5)としている。これは、SCスリーブ、LCスリーブ、ピグテールスリーブ間で、光ファイバの端部から第1の集光レンズ9までの距離を一定とする必要があるためである。
【0036】
また、SCスリーブ、LCスリーブ、ピグテールスリーブの光軸周りの回転角の調整は、フランジ43a、43b、15に基準面(Dカット面)を設けることにより可能となる。
図6は、SCスリーブ、LCスリーブ、ピグテールの回転角の調整について説明する概略図である。
図6に示すように、フランジ43a、43b、15には、基準面(Dカット面)50が設けられる。そして、その基準面50と、例えば受信ユニット21を接合固定する受信ユニット接合面6とが平行となるよう目視で確認して、SCスリーブ、LCスリーブ、ピグテールスリーブを接合する。これにより、SCスリーブ、LCスリーブ、ピグテールスリーブの回転角の調整も容易に行うことができる。
【0037】
光モジュール1の製造は以下のようにして行う。
まず、筺体22に、第1の波長選択フィルタ7、第2の波長選択フィルタ8、第1の集光レンズ9、カットフィルタ10を取り付け、また、SCスリーブ、LCスリーブ、あるいは、ピグテールスリーブ3のいずれかを取り付けて集光ユニット2を形成する。
ここで、第1の集光レンズ9の取り付けは、図3を用いて説明したように、第1の内壁面30および第2の内壁面31に保護部材32を接合固定することにより行う。また、SCスリーブ、LCスリーブ、あるいは、ピグテールスリーブ3の取り付けは、図4を用いて説明したように、SCスリーブ、LCスリーブ、あるいは、ピグテールスリーブ3を筺体22の凹部に嵌合し、SCスリーブ、LCスリーブ、あるいは、ピグテールスリーブ3を筺体22に接合固定することにより行う。
【0038】
その後、送信ユニット20a、20b、受信ユニット21について、図2に示すようなジョイントスリーブ27a、27b、28を用いて、それぞれの光軸方向であるz軸方向の位置の調整が行われる。さらに、第1の送信ユニット接合面4、第2の送信ユニット接合面5、受信ユニット接合面6上の直交するx軸、y軸方向において、それぞれ送信ユニット20a、20b、受信ユニット21の位置を調整することにより調心が行われる。
送信ユニット20a、20bの調心は、レーザダイオード23a、23bを発光させて、光ファイバ11からの出力を検出することにより行う。また、受信ユニット21の調心は、光ファイバ11からモニタ光を送出させ、フォトダイオード24の出力を検出することにより行う。
【0039】
例えば、第1の集光レンズ9のビームウェスト位置が、第1の送信ユニット接合面4上に設定されている場合、第1の送信ユニット接合面4を基準にして、第2の集光レンズ26aのビームウェスト位置の調整を行えばよい。同様に、第1の集光レンズ9のビームウェスト位置が、第2の送信ユニット接合面5上に設定されている場合、第2の送信ユニット接合面5を基準にして、第2の集光レンズ26bのビームウェスト位置の調整を行えばよい。このように、x軸、y軸、z軸方向の調心を、短尺光ファイバ14の端部を基準とするのではなく、第1の送信ユニット接合面4、第2の送信ユニット接合面5を基準として行うことができるので、容易にかつ精度よく調心を行うことができる。
【0040】
なお、上記実施の形態では、収束光学系を構成する光モジュール1が、2つの送信ユニット20a、20b、1つの受信ユニット21を備える場合について説明したが、送信ユニット、受信ユニットの数はこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0041】
1…光モジュール、2…集光ユニット、3…ピグテール型の光コネクタ、4…第1の送信ユニット接合面、5…第2の送信ユニット接合面、6…受信ユニット接合面、7…第1の波長選択フィルタ、8…第2の波長選択フィルタ、9…第1の集光レンズ、10…カットフィルタ、11…フェルール、12,41a,41b…スタブ、13,42a,42b…スリーブ、14…短尺光ファイバ、15,43a,43b…フランジ、16,44…位置決め部、20a…第1の送信ユニット、20b…第2の送信ユニット、21…受信ユニット、22…筺体、23a,23b…レーザダイオード、24…球レンズ、25…フォトダイオード、26a,26b…第2の集光レンズ、27a,27b,28…ジョイントスリーブ、30…第1の内壁面、31…第2の内壁面、32…保護部材、45…凹部の内壁面、46…取付端面、50…基準面(Dカット面)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学レンズを介して収束光学系を構成することにより外部光ファイバと光素子とを光結合する光モジュールであって、
短尺光ファイバを収容するスタブを内蔵するスリーブと、
前記短尺光ファイバと光結合される第1の集光レンズと波長選択フィルタが実装されるとともに、前記スリーブを組み付ける取付端面が形成された集光ユニットと、
前記第1の集光レンズと光結合される第2の集光レンズ、および、前記光素子が実装された少なくとも1つの送信ユニットとを備え、
前記スタブの先端部は前記スリーブの接合端面より突き出ており、前記集光ユニットの前記取付端面には前記スタブの先端部を嵌合して位置決めする凹部が形成されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記第1の集光レンズの光軸と前記第2の集光レンズの光軸は前記短尺光ファイバの光軸と平行であり、前記第1の集光レンズの光軸は前記短尺光ファイバの光軸とオフセットしていることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記第1の集光レンズの光軸は前記第2の集光レンズの光軸とオフセットしていることを特徴とする請求項2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記第1の集光レンズの一方のビームウェスト位置が前記短尺光ファイバの端部に設定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記送信ユニットは、前記第1の集光レンズの他方のビームウェスト位置を含む面において、前記集光ユニットに固定されていることを特徴とする請求項4に記載の光モジュール。
【請求項6】
光学レンズを介して収束光学系を構成することにより外部光ファイバと光素子とを光結合する光モジュールの製造方法であって、
短尺光ファイバと光結合される第1の集光レンズと波長選択フィルタとが実装された集光ユニットの取付端面に凹部が形成されており、前記短尺光ファイバを収容し、スリーブに内蔵されるスタブの先端部は前記スリーブの接合端面より突き出ており、該スタブの先端部を前記凹部に嵌合して位置決めし、第2の集光レンズ、および、前記光素子が実装された送信ユニットを前記集光ユニットに固定して前記第1の集光レンズと前記第2の集光レンズとを光結合することを特徴とする光モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記第1の集光レンズの一方のビームウェスト位置を前記短尺光ファイバの端部に設定し、前記送信ユニットを、前記第1の集光レンズの他方のビームウェスト位置を含む面において前記集光ユニットに固定することを特徴とする請求項6に記載の光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−68345(P2012−68345A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211631(P2010−211631)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000154325)住友電工デバイス・イノベーション株式会社 (291)
【Fターム(参考)】