説明

光偏向器、光走査装置、画像形成装置及び画像投影装置

【課題】可動板の質量を増やすことなく、配線が比較的な動歪補正手段を備えた光偏向器を提供する。
【解決手段】可動板201の裏面に動歪補正手段として、動歪補正用圧電素子220、230、231を設ける。そして、駆動梁204の裏面の駆動用圧電素子210の上部電極、下部電極をトーション梁203を通し、動歪補正用圧電素子220の上部電極、下部電極には電極逆転部240、250を介して接続し、動歪補正用圧電素子230、231の上部電極、下部電極にはそのまま接続する。可動板201上の動歪は、トーション梁203と平行な方向では駆動梁204の反り変形と同じ方向に発生し、トーション梁に直交する方向では駆動梁204の反り変形と逆方向に発生する。該動歪は、駆動用圧電素子210と同位相及び逆位相で動歪補正用圧電素子220、230を駆動することで軽減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型ガルバノミラーを用い、レーザ光等の光ビームを偏向・走査する光偏向器に関し、さらに、この光偏向器を備えた光走査装置、この光走査装置を光書込みユニットとして備える画像形成装置、この光偏向器を投影面の走査ユニットとして備える画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロマシン技術を用いた、小型ガルバノミラーによる光偏向器(光走査装置)は、ポリゴンミラーや従来型のガルバノミラーに較べて省電力化、小型化や高速化の可能性があり、駆動部分の形成もシリコンウエハーを素材として、半導体微細加工技術を用いて大量で安価に形成できる可能性があるため実用化が期待されている。
【0003】
図23に、この種の光偏向器の従来の構成例を示す。図23において、10は表面にミラー面を有する可動板であり、該可動板10がトーション梁20a,20bにより揺動可能に支持され、厚み方向に反りを発生する駆動梁30a,30b,30c,30dが、それぞれ一端がトーション梁20a,30aに接続され、他端が固定部(固定ベース)40に接続されてカンチレバーを形成している。駆動梁30a,30cと30b,30dとにそれぞれ逆方向の反りを発生させ、該反りの方向を交互に切り替えることにより、ミラー面を有する可動板10は図24(a),(b)のように揺動する。駆動梁30a,30b,30c,30dの駆動には、電磁力によるもの、静電力によるもの、あるいは圧電素子によるものなどが知られている。なお、図23の構成は一例にすぎず、他にも種々の構成のものが提案されている。
【0004】
ところで、このようなマイクロマシン技術を用いた光偏向器では、小型化、高速化などに伴い、駆動時のミラー面に動歪が発生し、ミラー面の光学特性を劣化させてしまうことが課題の一つとなっている。このような課題を解決するために、従来よりいくつかの提案がなされている。例えば、特許文献1には、フレーム、梁及びミラー一部を一体成形し、このミラー部の裏面全体に、帯状、マトリクス状、ハニカム状などの複数の凹凸部を形成して剛性を高め、ミラー部の動歪を抑制することが記載されている。また、特許文献2には、反射ミラーの反射面と反対側の面に、一帯に圧電素子を設け、この圧電素子に反射ミラーの撓みを打ち消す方向の力を発生させて、能動的に反射ミラーの動歪を補正することが記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、動歪が生じない領域まで凹凸部を設けているため、可動部であるミラー部が重くなり、慣性モーメントも増大し、ミラー部の偏向角を大きくするには駆動に大きなエネルギーが必要になる。特許文献2の場合も、反射ミラーの反射面と反対側の面に、一帯に動歪補正用の圧電素子を設けるため、同様の問題がある。また、特許文献2の場合、製造工程が複雑で、動歪補正のための制御も複雑である。さらに、特許文献2の従来の構成では、反射ミラーを支持するトーション梁上に、反射ミラーの揺動駆動用の配線と動歪補正用の配線を施す必要があるため、設計自由度が低く、特に、反射ミラーを2軸駆動させる場合には、配線が非常に困難になるなどの問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来の光偏向器の上述したような問題を解決し、反射面を有する可動板の重量を増やすことなく、反射面の動歪を抑制でき、また、動歪補正用の配線も容易で設計自由度が増す、簡易な構成の光偏向器を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、このような光偏向器を用いることで、小型で高速、光学特性の良い光走査装置を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、このような光走査装置を用いて良好な画像を形成する画像形成装置、さらには良好な画像を投影する画像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明の光偏向器は、反射面を有する可動板と、前記可動板を揺動可能に支持するトーション梁と、前記トーション梁に揺動駆動力を作用させる揺動駆動手段とを具備する光偏向器において、前記可動板上に、該可動板の動歪を補正する動歪補正手段が設けられ、前記揺動駆動手段と前記動歪補正手段が共通の電極を通して駆動されることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の光偏向器において、前記揺動駆動手段と前記動歪補正手段が同位相又は逆位相で駆動されることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2に記載の光偏向器において、前記揺動駆動手段の電極が電極逆転部を通して前記動歪補正手段の電極に接続されて、前記揺動駆動手段と前記動歪補正手段が逆位相で駆動されることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光偏向器において、前記動歪補正手段は、その長手方向が前記トーション梁に平行となっていることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光偏向器において、前記動歪補正手段は、その長手方向が前記トーション梁と直交していることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光偏向器において、前記動歪補正手段は複数設けられ、ある動歪補正手段は、その長手方向が前記トーション梁に平行となっており、他の動歪補正手段は、その長手方向が前記トーション梁と直交していることを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光偏向器において、前記動歪補正手段は、前記可動板の外周に沿うように設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光偏向器において、前記動歪補正手段は圧電素子で構成されていること特徴とする。
【0017】
請求項9の発明は、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光偏向器において、前記揺動駆動手段と前記動歪補正手段がともに圧電素子で構成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項10の発明の光走査装置は、光源と、光源からの光ビームを偏向させる請求項1乃至9のいずれか1項記載の光偏向器と、偏向された光ビームを被走査面にスポット状に結像する結像光学系とを備えることを特徴とする。
【0019】
請求項11の発明の画像形成装置は、請求項10記載の光走査装置と、光ビームの走査により潜像を形成する感光体と、潜像をトナーで顕像化する現像手段と、トナー像を記録紙に転写する転写手段とを有することを特徴とする。
【0020】
請求項12の発明の画像投影装置は、光源と、前記光源からの光ビームを画像信号に応じて変調する変調器と、前記光ビームを略平行光とするコリメート光学系と、前記略平行光とされた光ビームを偏向して投影面に投射する請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光偏向器とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光偏向器によれば、可動板の質量を増やすことなく、配線が比較的容易な動歪補正手段を設けることができる。また、揺動駆動手段と動歪補正手段が一緒に同位相または逆位相で駆動されることで、簡易な構成で揺動駆動手段と動歪補正手段を制御することができる。さらに、動歪補正手段を、トーション梁と平行及び/又は直交するように、さらには可動板の外周に沿うように設けることで、可動板上の動歪分布に応じて、効果的に動歪を補正することができる。
本発明の光走査装置によれば、このような光偏向装置を用いることで、小型でも高速、光学特性(ビームスポット特性)の良い光走査装置を提供することができる。また、本発明の画像形成装置によれば、このような光走査装置を用いることで、良好な画像を形成することでき、さらに、本発明の画像投影装置によれば、スクリーン上に良好な画像を投影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1の光偏向器の概略構成図である。
【図2】実施例1の可動板の裏側を示す図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】実施例1の可動板の揺動の様子を示す図である。
【図5】実施例1の可動板の動歪の分布を示す図である。
【図6】本発明の実施例2の光偏向器の概略構成図である。
【図7】実施例2の可動板の裏側を示す図である。
【図8】実施例2の駆動梁とトーション梁の接続部の断面図である。
【図9】実施例2の可動板上の動歪補正用圧電素子と電極逆転部の接続部の平面図及び断面図である。
【図10】実施例2の可動板の揺動の様子を示す図である。
【図11】実施例2の可動板の動歪の分布を示す図である。
【図12】本発明の実施例3の光偏向器の概略構成図である。
【図13】実施例3の可動板の裏側を示す図である。
【図14】実施例3の裏側の第1の駆動用圧電素子と動歪補正用圧電素子の詳細図である。
【図15】実施例3の駆動梁の反り変形の様子を示す図である。
【図16】実施例3の可動板の動歪の分布を示す図である。
【図17】実施例3の動歪補正用圧電素子の配置の別の例を示す図である。
【図18】本発明の光偏向器を用いた光走査装置の一例の全体構成図である。
【図19】図18の光走査装置の光偏向器と駆動手段の接続を示す図である。
【図20】図18の光走査装置を光書込みユニットとして実装した画像形成装置の一例の全体構成図である。
【図21】本発明の光偏向器を用いた画像投影装置の一例の全体斜視図である。
【図22】図21の画像投影装置を駆動系も含めて示した概略構成図である。
【図23】従来の光偏向器の一例の概略構成図である。
【図24】図23の可動板の揺動の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す光偏向器は一例にすぎず、本発明の光偏向器は、後述の特許請求の範囲内において種々の構成、変形を採用することが可能である。
【実施例1】
【0024】
図1に、本発明の光偏向器の実施例1の概略構成を示す。本実施例では、反射面を有する可動板の揺動は電磁駆動され、動歪補正は圧電駆動される。図1において、可動板101は片面(表面)に反射面102を有している。この可動板101は、トーション梁103を介して固定枠104に対して揺動可能に支持されている。トーション梁103は、可動板101の重心線(図中、破線で示す)から所定の距離だけオフセットした位置で可動板101を支持している。固定枠104はベース105に支持され、ベース105には駆動用の永久磁石106が設けられている。
【0025】
図2に可動板101の反射面102とは反対側の面(裏面)を示す。図2に示すように、可動板101の裏面には、揺動駆動手段としてのコイル状の駆動用電極111と、該駆動用電極111に並列接続された動歪補正手段としての動歪補正用圧電素子112とが設けられている。動歪補正用圧電素子112は、長手方向がトーション梁103に平行に配置されている。
【0026】
図3は、図2のA−A線断面図を示したものである。可動板101の裏面にはトーション梁103から延長して接着層110が形成されて、該接着層110に駆動用電極111が形成され、絶縁膜116で覆われている。動歪補正用圧電素子112は、接着層110上に、下部電極113、圧電材料114、上部電極115、絶縁膜116が積層された構造となっている。ここで、下部電極113は駆動用電極111の一端に直接接続されるが(駆動用電極がそのまま下部電極となる)、上部電極115は、電極接続部117を介して駆動用電極111の他端と接続される。電極接続部117は、絶縁膜116に開口を設けて形成される。
【0027】
可動板101は、ベース105上の永久磁石106と該可動板101の裏面のコイル状の駆動用電極111との間に働く電磁力によって、トーション梁103に平行な軸周りに揺動する。この揺動の際、トーション梁103には可動板101に垂直な方向に撓むため、可動板101にはトーション梁103の延長上を中心に大きな動歪が発生する。
【0028】
図4に可動板101の揺動の様子、図5に可動板101上の動歪の分布を示す。図5の動歪分布は、図4のZ軸方向の変位の方向を符号で、大きさを符号の密度で示している。
【0029】
図5に示すように、図1のような構成の光偏向器では、可動板101は中央下部が窪み、トーション梁103の付け根付近が出っ張るような動歪が発生する。可動板101の揺動角が大きくなるにつれ、可動板101の動歪も大きくなるため、動歪は揺動と同位相で発生する。
【0030】
本実施例では、このような動歪を効果的に補正するために、図2に示したように、動歪補正用圧電素子112は、長手方向がトーション梁103の延長上に設けられている。該動歪補正用圧電素子112の上部電極115と下部電極113の間に電圧が印加されると、圧電材料114が、圧電特性(ピエゾ特性)により、可動板101の面内方向に伸縮することで反り変形する。この反り変形は可動板101の揺動による動歪と逆方向に起こることによって、動歪が低減する。
【0031】
動歪補正用圧電素子112は、コイル状の駆動電極111と並列で接続されており、同位相で駆動される。前述したように、動歪は揺動駆動と同位相で起こるため、効果的に動歪を低減することができる。また、トーション梁103上での揺動駆動用の配線と動歪補正用の配線は共通であるので、トーション梁103上の配線を増やすことなく、動歪補正用圧電素子112を設けることができる。このため、配線設計が簡単になる。
【実施例2】
【0032】
図6に、本発明の光偏向器の実施例2の概略構成を示す。本実施例では、可動板の揺動、動歪補正が共に圧電駆動される。図6において、可動板201は片面(表面)に反射面202を有している。この可動板201はトーション梁203に揺動可能に支持され、トーション梁203は、可動板202とは反対側の端部が駆動梁204に接続されている。駆動梁204は、長手方向がトーション梁203の長手方向とは直交する方向になるように配置され、一端がトーション梁203の端部に接続されると共に、もう一方の端部は固定部205に接続されている。すなわち、本実施例では、駆動梁204は、トーション梁203の片側にのみ配置され、この駆動梁204で可動板201とトーション梁203とを固定部205に対して片持ち支持した構成となっている。このような構成とすることで、小型で、大きな揺動角を得ることが可能になる。
【0033】
図7に、可動板201とトーション梁203と駆動梁204の裏側を示す。駆動梁204は、揺動駆動手段としての駆動用圧電素子210を有している。該駆動用圧電素子210は、後述するように駆動梁片面に接着層、下部電極、圧電材料、上部電極が積層された平板状のユニモルフ構造となっている。可動板101上には、動歪補正手段として、長手方向がトーション梁203と平行な動歪補正用圧電素子220、長手方向がトーション梁203と直交する一対の動補正用圧電素子230、231が設けられている。動歪補正用圧電素子220、230、231は、駆動用圧電素子210と同様に、接着層、下部電極、圧電材料、上部電極の積層構造となっている。後述するように、駆動用圧電素子210から延長された上部電極及び下部電極は、動歪補正用圧電素子220に対しては、電極逆転部240、250により、駆動用圧電素子210からの上部電極が該動歪補正用圧電素子220の下部電極へ、また、駆動用圧電素子210からの下部電極が該動歪補正用圧電素子220の上部電極へそれぞれ接続される。一方、動歪補正用圧電素子230、231に対しては、駆動用圧電素子210からの上部電極及び下部電極が、該動歪補正用圧電素子230、231の上部電極及び下部電極にそのまま接続される。
【0034】
図8に、駆動梁204とトーション梁203の接続部の拡大断面図を示す。図8に示すように、駆動用圧電素子210は、駆動梁204の片面(裏面)に、接着層211、下部電極212、圧電材料213、上部電極214が積層されて構成されている(ユニモルフ構造)。そして、トーション梁203の部分で圧電材料213のかわりに絶縁膜215が積層されて、接着層211、下部電極212、絶縁膜215、上部電極214が可動板201まで延びている。
【0035】
図9に、可動板201上の動歪補正用圧電素子220と電極逆転部240との接続部の拡大図を示す。なお、電極逆転部250側の接続部も同様である。図9中、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図を示す。図9において、212と214はトーション梁203から延びてきた下部電極と上部電極、221と222と223は動歪補正用圧電素子220の下部電極と圧電材料と上部電極、241と242は電極逆転部240を構成する電極接続部である。図9(b)に示すように、トーション梁203から延びてきた上部電極214は、電極接続部241を介して、動補正用圧電素子220の下部電極221と接続される。また、図9(c)に示すように、トーション梁203から延びてきた下部電極212は、電極接続部242を介して、動補正用圧電素子220の上部電極223と接続される。
【0036】
なお、動補正用圧電素子230、231に対しては、トーション梁203から延びてきた上部電極214と下部電極212を、そのまま該動補正用圧電素子230、231の上部電極と下部電極とすればよい。その構成は図8と同様であるので、詳細は省略する。
【0037】
本実施例において、駆動用圧電素子210の上部電極と下部電極の間に電圧を印加すると、駆動梁204全体が反り変形する。この駆動梁204の反り変形によってトーション梁203の軸回りに捩りが発生し、可動板201が揺動する。この揺動の際、可動板201に動歪が発生する。
【0038】
図10に可動板201の揺動の様子、図11に可動板201上の動歪の様子を示す。図11に示すように、動歪は、トーション梁203と平行な方向では駆動梁204の反り変形と同じ方向に発生し、トーション梁203に直交する方向では駆動梁204の反り変形と逆方向に発生する。
【0039】
本実施例では、可動板201に設けた2方向の動歪補正用圧電素子220、230、231により、可動板201上のトーション梁203の平行な方向の動歪とトーション梁203に直交する方向の動歪を効果的に低減することが可能である。すなわち、長手方向がトーション梁203と平行な動歪補正用圧電素子220は電極逆転部240、250により駆動用圧電素子210と逆位相で駆動されるため、駆動梁204の反り変形と逆方向に反るように駆動される。したがって、駆動梁204の反り変形と同じ方向に発生するトーション梁203と平行な方向の動歪が低減する。また、長手方向がトーション梁203と直交する動歪補正用圧電素子230、231は、駆動用圧電素子210と同位相で駆動されるため、駆動梁204の反り変形と同一方向に反るように駆動される。したがって、駆動梁204の反り変形と逆方向に発生するトーション梁203に直交する方向の動歪が低減する。
【0040】
このように、本実施例では、簡単な構成で、可動板の二方向の且つ逆位相で発生する動歪を効果的に補正することが可能である。
【0041】
なお、図8、図9ではトーション梁203上に上部電極と下部電極の両方を配線するとしたが、例えば、図7において、左側のトーション梁203には駆動用圧電素子210からの上部電極のみを配線し、右側のトーション梁203には下部電極のみを配線するようにしてもよい。この場合、左側のトーション梁203からの上部電極を電極逆転部240で動歪補正用圧電素子220の下部電極に接続し、右側のトーション梁203からの下部電極を電極逆転部250で動歪補正用圧電素子220の上部電極に接続する。また、動歪補正用圧電素子230、231については、左側のトーション梁203からの上部電極と右側のトーション梁203からの下部電極をそのまま、該動歪補正用圧電素子230、231の上部電極と下部電極にする。これにより、トーション梁203上の配線を簡単化でき、配線設計が簡易になる。また、電極逆転部240、250の構成も簡単になる。
【実施例3】
【0042】
図12に、本発明の光偏向器の実施例3の全体構成図を示す。本実施例では、二軸方向の光を偏向する光偏向器の揺動、動歪が共に圧電駆動される。図12において、可動板301は片面(表面)に反対面302を有している。この可動板301は第1のトーション梁303a,303bに揺動可能に支持されている。第1のトーション梁303a,303bは、可動板301と反対側の端部が第1の駆動梁304a,304bの中央部に接続されている。第1の駆動梁304a,304bは長手方向が第1のトーション梁303a,303bの長手方向と直交する方向になるように配置され、該第1の駆動梁304a,304bの両端は可動枠305に接続されている。さらに、可動枠305は、第2のトーション梁306a,306bに揺動可能に支持されている。第1のトーション梁303a,303bの軸と第2のトーション梁306a,306bの軸は直交している。この第2のトーション梁306a,306bは、可動枠305と反対側の端部が第2の駆動梁307a,307bの中央部に接続されている。第2の駆動梁307a,307bは、長手方向が第2のトーション梁の長手方向と直交する方向になるように配置され、該第2の駆動梁307a,307bの両端は固定部308に接続されている。
【0043】
図13に、図12の光偏向器の裏側を示す。第1の駆動梁304a,304bには、それぞれ第1のトーション梁の長手方向303a,303bを挟んで、揺動駆動手段として、それぞれ第1の駆動用圧電素子310aと310b、310cと310dが設けられている。同様に、第2の駆動梁307a,307bには、それぞれ第2のトーション梁306a,306bを挟んで、揺動駆動手段として、それぞれ第2の駆動用圧電素子311aと311b、311cと311dが設けられている。可動板301には、動歪補正手段として、該可動板の外周に沿うように、二つの動歪補正用圧電素子312a,312bが設けられている。第1の駆動用圧電素子310a〜310d、第2の駆動用圧電素子311a〜311d及び動歪補正用圧電素子312a,312bはいずれも、接着層、下部電極、圧電材料、上部電極が積層された構成となっている。
【0044】
図14に第1の駆動用圧電素子310a〜310dと動歪補正用圧電素子312a312bの配線の様子を示す。第1の駆動用圧電素子310a,310cの上部電極、下部電極が第1のトーション梁303a,303bを通して一方の動歪補正用圧電素子312aの上部電極、下部電極に接続される。また、第1の駆動用圧電素子310b,310dの上部電極、下部電極が第1のトーション梁303a,303bを通して他方の動歪補正用圧電素子312bの上部電極、下部電極に接続される。
【0045】
本実施例の場合も、例えば、第1の駆動用圧電素子310a,310bから上部電極のみを動歪補正用圧電素子312a,312bの上部電極に接続し、第1の駆動用圧電素子310c,310dから下部電極のみを動歪補正用圧電素子312a,312bの下部電極に接続することでもよい。これにより、第1のトーション梁303a,303b上の配線が簡単化される。
【0046】
第1の駆動梁304a,304b上の第1の駆動用圧電素子310aと310b、310cと310dは、互いに逆位相で駆動される。ここで、該第1の駆動用圧電素子の310aと310c同士、310bと310d同士は、それぞれ同位相の関係にある。これにより、第1の駆動梁304a,304bは図15のように反り変形する。この第1の駆動梁304a,304bの反り変形により、第1のトーション梁303a,303bが捩じれ、可動板301が第1のトーション梁303a,303bの軸周りに揺動する。同様に、第2の駆動梁307a,307b上の第2の駆動用圧電素子311aと311b、311cと311dが、互いに逆位相で駆動される。該第2の駆動用圧電素子の311aと311c同士、311bと311d同士は、それぞれ同位相の関係にある。これにより、第2の駆動梁307a,307bも、図15と同様の反り変形をする。この第2の駆動梁307a,307bの反り変形により、第2のトーション梁306a,306bが捩じれ、可動枠305が該第2のトーション梁306a,306bの軸周りに揺動する。これにより、可動板301が、該第2のトーション梁306a,306bの長手方向と平行な軸周りに揺動される。こうして、可動板301は、二軸方向に揺動する。
【0047】
図16に、可動板301が揺動したときの該可動板301上の動歪を示す。図16に示すように、図12のような二軸駆動の光偏向器の場合、可動板301には第1のトーション梁303a,303bの軸対称に逆位相の動歪が発生する。
【0048】
本実施例では、二つの動歪補正用圧電素子312a,312bが可動板301の外周に沿うように設けられている。ここで、動歪補正用圧電素子312aは第1の駆動用圧電素子310a,310cと同位相で駆動され、また、動歪補正用圧電素子312bは第1の駆動用圧電素子310b,310dと同位相で駆動される。該第1の駆動用圧電素子の310a,310cと310b.310dとでは、位相が逆の関係にある。このため、二つの動歪補正用圧電素子312a,312bは、可動板301の外周に沿って第1のトーション梁303a,303bに軸対称に、それぞれ逆方向に反るように駆動される。そして、該動歪補正用圧電素子312a,312bの反り方向は、動歪を打ち消す方向である。
【0049】
本実施例により、可動板301の動歪の変化率の大きな可動板外周の動歪を効率的に低減することが可能になる。
【0050】
なお、可動板301の寸法によっては、該可動板301の外周に沿うように動歪補正用圧電素子312a,312bを設けると、揺動時に膜変形を起こすことが考えられる。この場合には、図17に示すように、可動板301の外径から内側にある程度オフセットした形状の動歪補正用圧電素子312a,312bを設けることで、膜振動に寄与する面積が小さくなり、動歪を低減することができる。
【実施例4】
【0051】
本実施例は、実施例1、2などの1軸方向に光を偏向する光偏向器を用いて画像形成装置の光書き込みユニットとしての光走査装置を提供するものである。
【0052】
図18に本実施例の光走査装置の全体構成図、図19に該光走査装置に用いる光偏向器と駆動手段の接続図を示す。
【0053】
図18において、レーザ素子1020からのレーザ光は、コリメータレンズ系1021を経た後、光偏向器1022により偏向される。この光偏向器1022として、実施例1、2などの構成の光偏向器が用いられる。光偏向器1022で偏向されたレーザ光は、その後、第一レンズ1023aと第二レンズ1023b、反射ミラー1023cからなる走査光学系1023を経て感光ドラム等のビーム走査面1022に照射される。
【0054】
図19に示すように、光偏向器1022は駆動手段1024と電気的に連結されている。この駆動手段1024が、光偏向器1022の揺動駆動手段、動歪補正手段に駆動電圧を印加する。これにより、光偏向器1022のミラー部が揺動してレーザ光が偏向され、ビーム走査面1022上が光走査される。同時に、ミラー部の動歪が補正される。
【0055】
本発明の光偏向器を利用した光走査装置は写真印刷方式のプリンタや複写機などの画像形成装置のための光書込ユニットの構成部材として最適である。
【実施例5】
【0056】
本実施例は、実施例4の光走査装置を光書込みユニットの構成部材として実装した画像形成装置を提供するものである。
【0057】
図20に本実施例の画像形成装置の一例の全体構成図を示す。図20において、1001が光書込みユニットであり、レーザビームを被走査面に出射して画像を書き込む。1002は光書込みユニット1001による走査対象としての被走査面を提供する像担持体としての感光体ドラムである。
【0058】
光書込みユニット1001は、記録信号によって変調された1本又は複数本のレーザビームで感光体ドラム1002の表面(被走査面)を同ドラムの軸方向に走査する。感光体ドラム1002は矢印1003方向に回転駆動され、帯電手段1004により帯電された表面に、光書込みユニット1001により光走査されることによって、静電潜像が形成される。この静電潜像は現像手段1005でトナー像に顕像化され、このトナー像は転写手段1006で記録紙1007に転写される。転写されたトナー像は定着手段1008によって記録紙1007に定着される。感光体ドラム1002の転写手段1006対向部を通過した感光体ドラムの表面部分はクリーニング部1009で残留トナーを除去される。
【0059】
なお、感光体ドラム1002に代えてベルト状の感光体を用いる構成も可能である。また、トナー像を記録紙以外の転写媒体に一旦転写し、この転写媒体からトナー像を記録紙に転写して定着させる構成とすることも可能である。
【0060】
光書込みユニット1001は記録信号によって変調された1本又は複数本のレーザビームを発するレーザ素子としての光源部1020と、レーザビームを変調する光源駆動手段1500と、実施例1、2などの本発明の1軸方向にレーザビームを偏向する光偏向器1002と、この光偏向器1022のミラー基板のミラー面に光源部1020からの、記録信号によって変調されたレーザビーム(光ビーム)を結像させるための結像光学系1021と、ミラー面で反射・偏向された1本又は複数本のレーザビームを感光体ドラム1002の表面(被走査面)に結像させるための手段である走査光学系1023などから構成される。光偏向器1022は、その駆動のための集積回路(駆動手段)1024とともに回路基板1025に実装された形で光書込みユニット1001に組み込まれている。
【0061】
光偏向器1022は、従来の回転多面鏡に比べ駆動のための消費電力が小さいため、画像形成装置の省電力化に有利である。また、光偏向器1022のミラー基板の振動時の風切り音は回転多面鏡に比べ小さいため、画像形成装置の静粛性の改善に有利である。さらに、光偏向器1022は、回転多面鏡に比べ設置スペースが圧倒的に少なくて済み、また、発熱量もわずかであるため、小型化が容易であり、したがって画像形成装置の小型化に有利である。
【0062】
なお、記録紙1007の搬送機構、感光体ドラム1002の駆動機構、現像手段1005、転写手段1006などの制御手段、光源部1020の駆動系などは、従来の画像形成装置と同様でよいため図20では省略されている。
【実施例6】
【0063】
本実施例は、実施例3のような2軸方向に光を偏向する光偏向器を実装した画像投影装置を提供するものである。
【0064】
図21に本実施例の画像投影装置の全体構成図を示す。図21において、筐体2000に赤(R)、緑(G)、青(B)の異なる3波長のレーザ光を出射するレーザ光源2001−R,2001−G,2001−Bが取り付けられ、これらレーザ光源2001−R,2001−G,2001−Bの出射端近傍には、該レーザ光源2001−R,2001−G,2001−Bからの出射光を略平行光に集光する集光レンズ2002−R,2002−,002−Bが配置されている。集光レンズ2002−R,2002−,002−Bで略平行になったR,G,Bのレーザ光は、ミラー2003やハーフミラー2004を経て、合成プリズム2005によって合成され、光偏向器2006のミラー面に入射される。光偏向器2006には、実施例3のような2軸方向に光を偏向する構成の光偏向器(二次元反射角度可変ミラー)が使用される。光偏向器2006のミラー面に入射した合成レーザ光は、光偏向器2006によって二次元偏向走査されて投影面に投射され、画像を投影する。
【0065】
図22は、本実施例の画像投影装置の制御系も含めた概略構成図である。なお、図22では、3波長のレーザ光源や集光レンズは一つにまとめて示し、また、ミラー、ハーフミラー、合成プリズムは省略してある。
【0066】
画像情報に応じて画像生成部2011で画像信号を生成し、この画像信号が変調器2012を介して光源駆動回路2013に送られると共に、スキャナ駆動回路2014に画像同期信号が送られる。スキャナ駆動回路2014は、画像同期信号に応じて駆動信号を光偏向器2006に与える。この駆動信号によって、光偏向器2006のミラー部2010は、直交した2つの方向に所定角度(例えば10deg程度)の振幅で共振振動し、入射したレーザ光が二次元偏向走査される。一方、レーザ光源2001から出射されるレーザ光は、光源駆動回路2013により、光偏向器2006の二次元偏向走査のタイミングに合わせて強度変調されており、これによって、投影面2007に二次元の画像情報が投影される。強度変調はパルス幅を変調してもよいし、振幅を変調してもよい。変調器2012は画像信号をパルス幅変調あるいは振幅変調し、この変調された信号を光源駆動回路2013によりレーザ光源2001を駆動できる電流に変調してレーザ光源2001を駆動する。
【0067】
ここで、光偏向手段には、ポリゴンミラーなどの回転走査ミラーを使用することもできるが、本発明の実施例3のような構成の光偏向器(二次元反射角度可変ミラー)2006は、回転走査ミラーに比べ駆動のための消費電力が小さいため、画像投影装置の省電力に有利である。また、光偏向器2006のミラー基板の振動時の風切り音は回転走査ミラーに比べて小さいため、画像投影装置の静粛性の改善に有利である。さらに光偏向器2006は、回転走査ミラーに比べ設置スペースが圧倒的に少なくて済み、また、発熱量もわずかであるため、小型化が容易であり、したがって、画像投影装置の小型化に有利である。
【符号の説明】
【0068】
101 可動板
102 反射面
103 トーション梁
104 固定部
105 ベース
106 永久磁石
111 駆動用電極
112 動歪補正用圧電素子
201 可動板
202 反射面
203 トーション梁
204 駆動梁
205 固定部
210 駆動用圧電素子
220,230 動歪補正用圧電素子
240,250 電極逆転部
301 可動板
302 反射面
303a,303b 第1のトーション梁
304a,304b 第1の駆動梁
305 駆動枠
306a,306b 第2のトーション梁
307a,307b 第2の駆動梁
308 固定部
310a〜310d 第1の駆動用圧電素子
311a〜311d 第2の駆動用圧電素子
312a,312b 動歪補正用圧電素子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開2001−249300号公報
【特許文献2】特開平11−218709号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射面を有する可動板と、前記可動板を揺動可能に支持するトーション梁と、前記トーション梁に揺動駆動力を作用させる揺動駆動手段とを具備する光偏向器において、
前記可動板上に、該可動板の動歪を補正する動歪補正手段が設けられ、前記揺動駆動手段と前記動歪補正手段が共通の電極を通して駆動されることを特徴とする光偏向器。
【請求項2】
前記揺動駆動手段と前記動歪補正手段が同位相又は逆位相で駆動されることを特徴とする請求項1に記載の光偏向器。
【請求項3】
前記揺動駆動手段の電極が電極逆転部を通して前記動歪補正手段の電極に接続されて、前記揺動駆動手段と前記動歪補正手段が逆位相で駆動されることを特徴とする請求項2に記載の光偏向器。
【請求項4】
前記動歪補正手段は、その長手方向が前記トーション梁に平行となっていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光偏向器。
【請求項5】
前記動歪補正手段は、その長手方向が前記トーション梁と直交していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光偏向器。
【請求項6】
前記動歪補正手段は複数設けられ、ある動歪補正手段は、その長手方向が前記トーション梁に平行となっており、他の動歪補正手段は、その長手方向が前記トーション梁と直交していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光偏向器。
【請求項7】
前記動歪補正手段は、前記可動板の外周に沿うように設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光偏向器。
【請求項8】
前記動歪補正手段は圧電素子で構成されていること特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光偏向器。
【請求項9】
前記揺動駆動手段と前記動歪補正手段がともに圧電素子で構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光偏向器。
【請求項10】
光源と、光源からの光ビームを偏向させる請求項1乃至9のいずれか1項記載の光偏向器と、偏向された光ビームを被走査面にスポット状に結像する結像光学系とを備えることを特徴とする光走査装置。
【請求項11】
請求項10記載の光走査装置と、光ビームの走査により潜像を形成する感光体と、潜像をトナーで顕像化する現像手段と、トナー像を記録紙に転写する転写手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
光源と、
前記光源からの光ビームを画像信号に応じて変調する変調器と、
前記光ビームを略平行光とするコリメート光学系と、
前記略平行光とされた光ビームを偏向して投影面に投射する請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光偏向器とを有することを特徴とする画像投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−17916(P2011−17916A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162762(P2009−162762)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】