説明

光半導体装置用封止剤及びそれを用いた光半導体装置

【課題】高温多湿下で使用された場合であっても、光半導体装置の明るさが低下し難い、光半導体装置用封止剤及び光半導体装置を提供する。
【解決手段】分子内にエピスルフィド含有基を有するシリコーン樹脂と、エピスルフィド含有基と反応可能な熱硬化剤とを含有する光半導体装置用封止剤であって、シリコーン樹脂は、平均組成式が下記式(1)で表される樹脂成分を含有し、かつエピスルフィド含有基の含有比率が3〜50モル%であることを特徴とする光半導体装置用封止剤。
【化1】


式(1)において、a/(a+b+c+d)=0〜0.2、b/(a+b+c+d)=0.3〜1.0、c/(a+b+c+d)=0〜0.5、d/(a+b+c+d)=0〜0.3を満たし、R〜Rは、少なくとも1個がエピスルフィド含有基を表し、他のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置において光半導体素子からなる発光素子を封止するための光半導体装置用封止剤及びそれを用いた光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)装置などの光半導体装置は消費電力が低く、かつ寿命が長い。また、光半導体装置は、過酷な環境下でも使用され得る。従って、光半導体装置は、携帯電話用バックライト、自動車用ランプ、照明器具または看板などの幅広い用途で使用されている。
【0003】
光半導体装置に用いられている光半導体素子からなる発光素子、例えばLEDは、直接大気と触れると大気中の水分や浮遊するゴミ等により急速にその発光特性を低下させるため、通常、光半導体装置用封止剤で封止されている。
【0004】
下記の特許文献1には、光半導体装置用封止剤として、水添ビスフェノールAグリシジルエーテルと脂環式エポキシモノマーと、潜在性触媒とを混合した、熱カチオン重合により硬化するエポキシ樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−73452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の光半導体装置が高温多湿の過酷な環境で使用された場合、光半導体装置発光時の明るさが徐々に低下するという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、光半導体装置が高温多湿下で使用された場合であっても、光半導体装置の明るさが低下し難い、光半導体装置用封止剤及び光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、分子内にエピスルフィド含有基を有するシリコーン樹脂と、前記エピスルフィド含有基と反応可能な熱硬化剤とを含有する光半導体装置用封止剤であって、前記シリコーン樹脂は、平均組成式が下記一般式(1)で表される樹脂成分を含有し、かつ下記式(a)より求められるエピスルフィド基含有比率が3〜50モル%である、光半導体装置用封止剤である。
【0009】
【化1】

【0010】
一般式(1)中、a、b、c及びdは、それぞれa/(a+b+c+d)=0〜0.2、b/(a+b+c+d)=0.3〜1.0、c/(a+b+c+d)=0〜0.5、d/(a+b+c+d)=0〜0.3を満たし、R〜Rは、少なくとも1個がエピスルフィド含有基を表し、他のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0011】
エピスルフィド基の含有比率(モル%)=(平均組成が一般式(1)で表される樹脂の1分子あたりに含まれるエピスルフィド基の平均個数×エピスルフィド基の分子量/平均組成が一般式(1)で表される樹脂成分の平均分子量)×100 ・・・式(a)
【0012】
本発明に係る光半導体装置は、光半導体からなる発光素子と、該発光素子を封止するように設けられており、かつ本発明に係る光半導体装置用封止剤の硬化物を備える。本発明に係る光半導体装置では、LEDなどの光半導体からなる発光素子を封止するように、本発明の光半導体装置用封止剤の硬化物が配置されているため、光半導体装置用封止剤の硬化物からなる封止部において、高温で高湿度の環境で使用されたとしても透光性が低下し難い。従って、過酷な条件下で使用されたとしても、光半導体装置からの光の明るさが低下し難い、光半導体装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る光半導体装置用封止剤は、平均組成式が一般式(1)で表わされる樹脂成分を有するシリコーン樹脂と、エピスルフィド含有基と反応可能な硬化剤と含有しているため、本発明の光半導体装置用封止剤の硬化物は、高温高湿度下においても劣化し難く、透光性が低下し難い。従って、本発明に係る光半導体装置用封止剤を用いて構成された光半導体装置は、高温で高湿度の環境のような過酷な環境の元で使用されたとしても、明るさが低下し難い。よって、過酷な条件下で使用されたとしても、長期間に渡って明るい光半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0015】
〔一般式(1)で表わされる樹脂を含有するシリコーン樹脂〕
上記平均組成式が上記一般式(1)で表されるとは、本発明の光半導体装置用封止剤が上記式(1)で表される樹脂成分のみを含有する場合だけでなく、種々の構造の樹脂成分を含有する混合物である場合に、含有する樹脂成分の組成の平均をとると上記式(1)で表される場合も意味する。
【0016】
上記一般式(1)のシリコーン樹脂中に含まれる、R〜Rの少なくとも1個は、エピスルフィド含有基であり、かつ、エピスルフィド含有基の比率が3〜50モル%である。エピスルフィド含有基の比率が3モル%に満たないと、光半導体装置用封止剤が充分に硬化し難くなり、硬化物の耐湿性が低下する。50モル%を超えると、光半導体装置用封止剤の硬化物の耐熱性が低くなる。
【0017】
より好ましい下限は5モル%であり、より好ましい上限は40モル%である。
【0018】
なお、本明細書において、上記エピスルフィド含有基の比率とは、上記シリコーン樹脂成分の平均組成物中に含まれる上記エピスルフィド含有基の比率である。具体的には、下記式(a)を用いて求められた比率である。
【0019】
エピスルフィド含有基含有比率(モル%)=(平均組成が一般式(1)で表される樹脂の1分子あたりに含まれるエピスルフィド含有基の平均個数×エピスルフィド含有基の分子量/平均組成が一般式(1)で表される樹脂成分の平均分子量)×100 ・・・式(a)
【0020】
エピスルフィド含有基は、例えば、上記一般式(1)中、R〜Rの少なくとも1個が、環状エーテル含有基であるシリコーン樹脂にチオシアン酸カリウム、チオシアン酸アンモニウム塩等のチオシアン酸塩やチオ尿素を反応させて環状エーテル含有基をエピスルフィド化することにより得られる。
【0021】
上記環状エーテル含有基としては特に限定されず、例えば、グリシジル含有基、エポキシシクロヘキシル含有基、またはオキセタン含有基等の環状エーテル基が挙げられる。なかでも、グリシジル含有基及び/又はエポキシシクロヘキシル含有基が好適である。
【0022】
なお本明細書において環状エーテル含有基とは、少なくとも骨格の一部に環状エーテル基を含む官能基である。上記環状エーテル含有基は、例えば、環状エーテル基を骨格に含み、アルキル基やアルキルエーテル基等の他の骨格も含む官能基であってもよい。
【0023】
上記グリシジル含有基としては特に限定されず、例えば、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基または4−グリシドキシブチル基等が挙げられる。
【0024】
上記エポキシシクロヘキシル含有基としては特に限定されず、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、または3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基等が挙げられる。
【0025】
上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂において、上記エピスルフィド含有基以外のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素基或いはそのフッ素化物を表す。
【0026】
上記直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、またはシクロヘキシル基が挙げられる。
【0027】
上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂において、(RSiO2/2)で表される構造単位(以下、二官能構造単位ともいう)は、下記一般式(1−2)で表される構造、すなわち、二官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基又はアルコキシ基を構成する構造を含む。
【0028】
【化2】

【0029】
上記一般式(1−2)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0030】
また、上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂において、(RSiO3/2)で表される構造単位(以下、三官能構造単位ともいう)は、下記一般式(1−3)又は(1−4)で表される構造、すなわち、三官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の2つがそれぞれヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、三官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含む。
【0031】
【化3】

【0032】
上記一般式(1−3)及び(1−4)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0033】
また、上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂において、(SiO4/2)で表される構造単位(以下、四官能構造単位ともいう)は、下記一般式(1−5)、(1−6)又は(1−7)で表される構造、すなわち、四官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の3つ若しくは2つがヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造、又は、四官能構造単位中のケイ素原子に結合した酸素原子の1つがヒドロキシル基若しくはアルコキシ基を構成する構造を含む。
【0034】
【化4】

【0035】
上記一般式(1−5)、(1−6)及び(1−7)中、Xは、OH又はORを表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0036】
上記一般式(1−2)〜(1−7)において、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基としては特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基またはt−ブトキシ基が挙げられる。
【0037】
また、上記一般式(1)中、aは、a/(a+b+c+d)の下限が0、上限が0.2の関係を満たす数値である。a/(a+b+c+d)が0.2を超えると、本発明の光半導体装置用封止剤の耐熱性が悪くなることがある。より好ましい上限は0.15であり、さらに好ましくは0.1である。
【0038】
また、上記一般式(1)中、bは、b/(a+b+c+d)の下限が0.3、上限が1.0の関係を満たす数値である。b/(a+b+c+d)が0.3未満であると、本発明の光半導体装置用封止剤の硬化物が硬くなりすぎ、クラック等が発生することがある。より好ましい下限は0.4であり、さらに好ましくは0.5である。
【0039】
また、上記一般式(1)中、cは、c/(a+b+c+d)の下限が0、上限が0.5の関係を満たす数値である。c/(a+b+c+d)が0.5を超えると、本発明の光半導体装置用封止剤としての適正な粘度を維持するのが困難になったり、密着性が低下する場合がある。より好ましい上限は0.4であり、さらに好ましくは0.3である。
【0040】
更に、上記一般式(1)中、dは、d/(a+b+c+d)の下限が0、上限が0.3の関係を満たす数値である。d/(a+b+c+d)が0.3を超えると、本発明の光半導体装置用封止剤としての適正な粘度を維持するのが困難になったり、密着性が低下する場合がある。より好ましい上限は0.2であり、さらに好ましくは0.1である。
【0041】
上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂について、テトラメチルシラン(以下、TMS)を基準に29Si−核磁気共鳴分析(以下、NMR)を行うと、置換基の種類によって若干の変動は見られるものの、上記一般式(1)の(RSiO1/2で表される構造単位に相当するピークは+10〜0ppm付近に現れ、上記一般式(1)の(RSiO2/2及び(1−2)の二官能構造単位に相当する各ピークは−10〜−50ppm付近に現れ、上記一般式(1)の(RSiO3/2、(1−3)及び(1−4)の三官能構造単位に相当する各ピークは−50〜−80ppm付近に現れ、上記一般式(1)の(1−5)、(1−6)及び(1−7)の(SiO4/2の四官能構造単位に相当する各ピークは−90〜−120ppm付近に現れる。
【0042】
従って、29Si−NMRを測定し、それぞれのシグナルのピーク面積を比較することによって一般式(1)の比率を測定することが可能である。
【0043】
但し、上記TMSを基準にした29Si−NMR測定で上記一般式(1)の官能構造単位の見分けがつかない場合は、29Si−NMR測定結果だけではなく、H−NMRや19F−NMRで測定した結果を必要に応じて用いることにより構造単位の比率を見分けることができる。
【0044】
上記シリコーン樹脂は、アルコキシ基を0.5〜10モル%含有することが好ましい。このようなアルコキシ基が含有されていると、耐熱性や耐光性が飛躍的に向上する。これはシリコーン樹脂中にアルコキシ基が含有されていることにより、硬化速度を飛躍的に向上させることができるため、硬化時での熱劣化が防止できているためと考えられる。
【0045】
また、このように硬化速度が飛躍的に高められることにより、硬化促進剤を添加する場合には比較的少ない添加量でも充分な硬化性が得られるようになる。
【0046】
アルコキシ基の含有量が0.5モル%未満であると、硬化速度が充分に得られず耐熱性が悪くなることがあり、10モル%を超えると、シリコーン樹脂や組成物の貯蔵安定性が悪くなったり、耐熱性が悪くなることがある。アルコキシ基の含有量のより好ましい下限は1モル%であり、より好ましい上限は5モル%である。
【0047】
なお、本明細書において、上記アルコキシ基の含有量は、上記シリコーン樹脂成分の平均組成物中に含まれる上記アルコキシ基の量を意味する。
【0048】
上記シリコーン樹脂はシラノール基を含有しないほうが好ましい。シラノール基はポリマーの貯蔵安定性を著しく悪化させるほか、樹脂組成物としたときの貯蔵安定性も著しく悪くなるために好ましくない。このようなシラノール基は、真空化で加熱することで減少させることが可能であり、シラノール基の量は赤外分光法を用いて測定可能である。
【0049】
本発明の光半導体装置用封止剤において、上記シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)の好ましい下限は1000、好ましい上限は5万である。上記シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)が1000未満であると、熱硬化時に揮発成分が多くなり、硬化後による膜減りが多くなり好ましくない。上記シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)が5万を超えると、粘度調節が困難になるため好ましくない。上記シリコーン樹脂の数平均分子量(Mn)のより好ましい下限は1500、より好ましい上限は15000である。
【0050】
なお、本明細書において、数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて求めた値であり、Waters社製の測定装置(カラムとして昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)を2本用い、測定温度が40℃、流速が1mL/min、溶媒としてテトラヒドロフラン、標準物質としてポリスチレンを用いる)を用いて測定した値を意味する。
【0051】
上記シリコーン樹脂を合成する方法としては特に限定されず、例えば、(1)SiH基を有するシリコーン樹脂と、環状エーテル基を有するビニル化合物とを、必要に応じて触媒の存在下SiH基とビニル基とをハイドロシリレーション反応させ、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アンモニウム塩等のチオシアン酸塩やチオ尿素を環状エーテル含有基と反応させてエピスルフィド化する方法、または(2)シロキサン化合物と環状エーテル基を有するシロキサン化合物とを縮合反応させ、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アンモニウム塩等のチオシアン酸塩やチオ尿素を環状エーテル含有基と反応させてエピスルフィド化する方法等が挙げられる。
【0052】
上記環状エーテル含有基を有するビニル化合物としては、分子内に1個以上の環状エーテル含有基を有するビニル化合物であれば特に限定されず、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートまたはビニルシクロヘキセンオキシドなどのエポキシ基含有化合物が挙げられる。
【0053】
上記方法(2)において、シロキサン化合物としては、例えば、下記一般式(2)、(3)、(4)及び(5)のシロキサン単位を持つアルコキシシラン又はその部分加水分解物が挙げられる。
【0054】
【化5】

【0055】
上記一般式(2)〜(5)中、R22〜R27は、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0056】
上記一般式(2)〜(5)中、R22〜R27が直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素である場合、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基またはフェニル基が挙げられる。
【0057】
また、上記一般式(2)〜(5)中、ORで表される直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基は、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基またはt−ブトキシ基等が挙げられる。
【0058】
上記一般式(2)で表される化合物としては、具体的には例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシランまたはトリフェニルエトキシシランが挙げられる。
【0059】
上記一般式(3)で表される化合物としては、具体的には例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソプロピル(メチル)ジメトキシシラン、シクロヘキシル(メチル)ジメトキシシランまたはメチル(フェニル)ジメトキシシランが挙げられる。
【0060】
上記一般式(4)で表される化合物としては、具体的には例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシランまたはフェニルトリメトキシシランが挙げられる。
【0061】
上記一般式(5)で表される化合物としては、具体的には例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
【0062】
上記環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物としては、例えば、下記一般式(6)、(7)または(8)で表される環状エーテル含有基を有するアルコキシシラン又はその部分加水分解物が挙げられる。
【0063】
【化6】

【0064】
上記一般式(6)、(7)、(8)中、R28、R29、R30の少なくとも一つ、R31及び/又はR32、R33は環状エーテル含有基であり、環状エーテル含有基以外のR28、R29、R30、R31、R32は、炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、ORは、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基を表す。
【0065】
一般式(6)、(7)、(8)中、R28、R29、R30の少なくとも一つ、R31及び/又はR32、R33で表される環状エーテル含有基としては特に限定されず、例えば、グリシジル含有基、エポキシシクロヘキシル含有基、オキセタン含有基が挙げられる。なかでも、グリシジル含有基及び/又はエポキシシクロヘキシル含有基が好適である。
【0066】
上記グリシジル含有基としては特に限定されず、例えば、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基または4−グリシドキシブチル基が挙げられる。
【0067】
上記エポキシシクロヘキシル含有基としては特に限定されず、例えば、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基または3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基が挙げられる。
【0068】
上記一般式(6)及び(7)中、環状エーテル含有基以外のR28、R29、R30、R31、R32は、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、イソへキシル基またはシクロヘキシル基が挙げられる。
【0069】
また、上記一般式(6)、(7)及び(8)中、ORで表される直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜4のアルコキシ基は、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基またはt−ブトキシ基が挙げられる。
【0070】
上記一般式(6)で表される化合物としては、具体的には例えば、3−グリシドキシプロピル(ジメチル)メチルメトキシシランまたは2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(ジメチル)メトキシシランが挙げられる。
【0071】
上記一般式(7)で表される化合物としては、具体的には例えば、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジブトキシシラン、2,3−エポキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシランまたは2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジエトキシシランが挙げられる。
【0072】
上記一般式(8)で表される化合物としては、具体的には例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランまたは2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0073】
上記方法(2)において、上記シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物とを縮合反応させる具体的な方法としては、例えば、上記シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有する化合物とを水、及び、酸又は塩基性触媒の存在下で反応させてシリコーン樹脂を合成する方法が挙げられる。
【0074】
上記水の配合量としては、上記シロキサン化合物と上記環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物中のケイ素原子に結合したアルコキシ基を加水分解できる量であれば特に限定されず、適宜調整される。
【0075】
上記酸性触媒は、上記シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物とを反応させるための触媒であり、例えば、無機酸、有機酸、これらの酸無水物又は誘導体が挙げられる。
【0076】
上記無機酸としては、例えば、リン酸、ホウ酸または炭酸が挙げられる。
【0077】
上記有機酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸またはオレイン酸が挙げられる。
【0078】
上記塩基性触媒は、上記シロキサン化合物と環状エーテル含有基を有するシロキサン化合物とを反応させるための触媒であり、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシドまたはアルカリ金属のシラノール化合物が挙げられる。
【0079】
上記アルカリ金属の水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたは水酸化セシウムが挙げられる。
【0080】
上記アルカリ金属のアルコキシドとしては、例えば、ナトリウム−t−ブトキシド、カリウム−t−ブトキシドまたはセシウム−t−ブトキシドが挙げられる。
【0081】
上記アルカリ金属のシラノール化合物としては、例えば、ナトリウムシラノレート化合物、カリウムシラノレート化合物またはセシウムシラノレート化合物が挙げられる。
なかでも、カリウム系触媒及びセシウム系触媒が好適である。
【0082】
本発明の光半導体装置用封止剤において、上述した樹脂以外に、本発明の効果を妨げない範囲で硬化性化合物を含有してもよい。そのような化合物としては例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基またはエポキシ基を有する化合物が挙げられる。中でも、エポキシ化合物が好ましい。エポキシ化合物としては特に限定はされず、従来公知の種々のエポキシ化合物を用いることができる。
【0083】
上記エポキシ基と反応可能なその他の硬化性化合物の配合量としては特に限定はされないが、好ましい上限は、上述したシリコーン樹脂の合計100重量部に対して10重量部である。より好ましい上限は5重量部、更に好ましい上限は3重量部、特に好ましい上限は1重量部である。
【0084】
〔熱硬化剤〕
本発明の光半導体装置用封止剤は、上記環状エピスルフィド含有基と反応する熱硬化剤(以下、単に熱硬化剤ともいう)を含有する。
【0085】
上記熱硬化剤としては、上記シリコーン樹脂の環状エピスルフィド含有基と反応可能なものであれば特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ダイマー酸変性エチレンジアミン、N−エチルアミノピペラジン、イソホロンジアミン等の脂肪族アミン類、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジエピスルフィドスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルメタン、4,4’−ジアミノジフェノルエーテル等の芳香族アミン類、メルカプトプロピオン酸エステル、エポキシ樹脂の末端メルカプト化合物等のメルカプタン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシエピスルフィド)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシエピスルフィド)−1−メチルエチル)エピスルフィド)エチリデン)ビスフェノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラック等のフェノール樹脂類、これらフェノール樹脂類の芳香環を水素化したポリオール類、ポリアゼライン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−1,2無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2無水物等の脂環式酸無水物類、3−メチルグルタル酸無水物等の分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する3−アルキルグルタル酸無水物、2−エチル−3−プロピルグルタル酸無水物等の分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する2,3−ジアルキルグルタル酸無水物、2,4−ジエチルグルタル酸無水物、2,4−ジメチルグルタル酸無水物等の分岐していてもよい炭素数1〜8のアルキル基を有する2,4−ジアルキルグルタル酸無水物等のアルキル置換グルタル酸無水物類、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族酸無水物類、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エピスルフィドイミダゾール等のイミダゾール類及びその塩類、上記脂肪族アミン類、芳香族アミン類、及び/又はイミダゾール類とエポキシ樹脂との反応により得られるアミンアダクト類、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジン類、ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリエピスルフィドホスフィン等の有機ホスフィン類またはジシアンジアミド等が挙げられる。これらの熱硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0086】
上記熱硬化剤のなかでも、耐熱性を高めるため、脂環式酸無水物類、アルキル置換グルタル酸無水物類、芳香族酸無水物類等の酸無水物が好ましく、より好ましくは、脂環式酸無水物類、アルキル置換グルタル酸無水物類であり、特に好ましくは、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−1,2無水物、シクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸−1,2無水物、または2,4−ジエチルグルタル酸無水物である。
【0087】
上記熱硬化剤の配合量としては特に限定されないが、上記シリコーン樹脂100重量部に対して、好ましい下限は1重量部、好ましい上限は200重量部である。この範囲であると、本発明の光半導体装置用封止剤は、充分に架橋反応が進行し、耐熱性及び耐光性に優れるとともに、透湿度が充分に低いものとなる。より好ましい下限は5重量部、より好ましい上限は120重量部である。
【0088】
〔硬化促進剤〕
本発明の光半導体装置用熱硬化性組成物は、更に、硬化促進剤を含有することが好ましい。
【0089】
上記硬化促進剤としては特に限定されず、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類及びその塩類;トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;トリフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩類;アミノトリアゾール類、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート等の錫系、オクチル酸亜鉛等の亜鉛系、アルミニウム、クロム、コバルト、ジルコニウム等のアセチルアセトナート等の金属触媒類等が挙げられる。これらの硬化促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
上記硬化促進剤の配合量としては特に限定されないが、上記シリコーン樹脂100重量部に対して、好ましい下限は0.01重量部、好ましい上限5重量部である。0.01重量部未満であると、上記硬化促進剤を添加する効果が得られず、5重量部を超えると、硬化物の着色や耐熱性、耐光性の低下が著しくなるため好ましくない。より好ましい下限は0.05重量部であり、より好ましい上限は1.5重量部である。
【0091】
〔カップリング剤〕
本発明の光半導体装置用熱硬化性組成物は、接着性付与のためにカップリング剤を含有してもよい。
【0092】
上記カップリング剤としては特に限定されず、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。これらカップリング剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0093】
上記カップリング剤の配合割合としては、上記シリコーン樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が5重量部である。0.1重量部未満であると、カップリング剤の配合効果が充分発揮されないことがあり、5重量部を超えると、余剰のカップリング剤が揮発し、本発明の光半導体装置用熱硬化性組成物を硬化させたときに高温環境下で硬化物の厚みが減少することがある。
【0094】
本発明の光半導体装置用封止剤は、必要に応じて、分散剤、酸化防止剤、消泡剤、着色剤、変性剤、レベリング剤、光拡散剤、熱伝導性フィラー、難燃剤等の添加剤が配合されていてもよい。
【0095】
本発明の光半導体装置用封止剤の硬化温度は特に限定されないが、好ましい硬化温度としては80℃〜180℃である。硬化温度が80℃より低いと硬化が進行しないことがあり、180℃より高ければパッケージの熱劣化が起こることがあり好ましくない。より好ましくは100℃〜150℃である。
【0096】
硬化には特に限定されないが、ステップキュア方式を用いることが好ましい。ステップキュア方式は、一旦低温で仮硬化させておき、その後に高温で硬化させる方法であり、封止剤の硬化収縮を抑えることが可能であるため好ましい。
【0097】
本発明の光半導体装置用封止剤の製造方法としては特に限定されず、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、三本ロール、ビーズミル等の混合機を用いて、常温又は加温下で、上述したシリコーン樹脂、熱硬化剤、酸化ケイ素微粒子、及び、必要に応じて上記硬化促進剤、酸化防止剤等の各所定量を混合する方法等が挙げられる。
【0098】
上記発光素子としては、半導体を用いた発光素子であれば特に限定されず、例えば、上記発光素子が発光ダイオードである場合、例えば、基板上にLED形式用半導体材料を積層した構造が挙げられる。この場合、半導体材料としては、例えば、GaAs、GaP、GaAlAs、GaAsP、AlGaInP、GaN、InN、AlN、InGaAlN、SiC等が挙げられる。
【0099】
上記基板としては、例えば、サファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、GaN単結晶等が挙げられる。また、必要に応じ基板と半導体材料の間にバッファー層が形成されていてもよい。上記バッファー層としては、例えば、GaN、AlN等が挙げられる。
【0100】
本発明の光半導体装置は、具体的には、例えば、発光ダイオード装置、半導体レーザー装置、フォトカプラ等が挙げられる。このような本発明の光半導体装置は、例えば、液晶ディスプレイ等のバックライト、照明、各種センサー、プリンター、コピー機等の光源、車両用計測器光源、信号灯、表示灯、表示装置、面状発光体の光源、ディスプレイ、装飾、各種ライトまたはスイッチング素子等に好適に用いることができる。
【0101】
〔実施例及び比較例〕
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0102】
(合成例1)
ジメチルジメトキシシラン750g、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン150gを、2000mLのセパラブルフラスコに温度計、滴下装置、攪拌機を取り付けた反応容器に入れ50℃で攪拌した。次いで反応容器に水酸化カリウム1.9gを水250gに溶解させた溶液をゆっくりと滴下し、滴下後50℃で6時間攪拌した。酢酸2.1gを加えた後、反応液を入れた容器を減圧して揮発成分を除去し、反応液をろ過して酢酸カリウムを取り除き、ろ液を洗浄液(ヘキサン/水)を用いて洗浄し、洗浄液を入れた容器を減圧して揮発成分を除去し、ポリマーAを得た。ポリマーAの分子量はMn=11000、Mw=25000であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.90(EpMeSiO2/20.10
であり、3−グリシドキシプロピル基含有量は14モル%、エポキシ当量は760g/eq.であった。
【0103】
なお、分子量は、ポリマーA(10mg)にテトラヒドロフラン(1mL)を入れ溶解するまで攪拌し、Waters社製の測定装置(カラム:昭和電工社製 Shodex GPC LF−804(長さ300mm)×2本、測定温度:40℃、流速:1mL/min、溶媒:テトラヒドロフラン、標準物質:ポリスチレン)を用いてGPC測定により測定した。また、エポキシ当量は、JIS K−7236に準拠して求めた。
【0104】
(合成例2)
ジメチルジメトキシシラン440g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン160gを、2000mLのセパラブルフラスコに温度計、滴下装置、攪拌機を取り付けた反応容器に入れ50℃で攪拌した。次いで反応容器に水酸化カリウム1.2gを水170gに溶解させた溶液をゆっくりと滴下し、滴下後50℃で6時間攪拌した。酢酸1.3gを加えた後、反応液を入れた容器を減圧して揮発成分を除去し、反応液をろ過して酢酸カリウムを取り除き、ろ液を洗浄液(ヘキサン/水)を用いて洗浄し、洗浄液を入れた容器を減圧して揮発成分を除去し、ポリマーBを得た。ポリマーBの分子量はMn=2300、Mw=4800であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.84(EpSiO3/20.16
であり、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基含有量は22モル%、エポキシ等量は550g/eq.であった。
【0105】
なお、ポリマーBの分子量及びエポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0106】
(合成例3)
ジメチルジメトキシシラン400g、トリメトキシメチルシラン100g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン100gを、2000mLのセパラブルフラスコに温度計、滴下装置、攪拌機を取り付けた反応容器に入れ50℃で攪拌した。次いで反応容器に水酸化カリウム1.3gを水180gに溶解させた溶液をゆっくりと滴下し、滴下後50℃で6時間攪拌した。酢酸1.4gを加えた後、反応液を入れた容器を減圧して揮発成分を除去し、反応液をろ過して酢酸カリウムを取り除き、ろ液を洗浄液(ヘキサン/水)を用いて洗浄し、洗浄液を入れた容器を減圧して揮発成分を除去し、ポリマーCを得た。ポリマーCの分子量はMn=3200、Mw=5400であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.71(MeSiO3/20.18(EpSiO3/20.11
であり、3−グリシドキシプロピル基含有量は15モル%、エポキシ当量は780g/eq.であった。
【0107】
なお、ポリマーCの分子量及びエポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0108】
(合成例4)
ジメチルジメトキシシラン400g、トリメトキシメチルシラン50g、テトラメトキシシラン50g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン100gを、2000mLのセパラブルフラスコに温度計、滴下装置、攪拌機を取り付けた反応容器に入れ50℃で攪拌した。次いで反応容器に水酸化カリウム1.3gを水180gに溶解させた溶液をゆっくりと滴下し、滴下後50℃で6時間攪拌した。酢酸1.4gを加えた後、反応液を入れた容器を減圧して揮発成分を除去し、反応液をろ過して酢酸カリウムを取り除き、ろ液を洗浄液(ヘキサン/水)を用いて洗浄し、ポリマーDを得た。ポリマーDの分子量はMn=2600、Mw=3600であり、29Si−NMRより
(MeSiO2/20.73(MeSiO3/20.09(EpSiO3/20.10(SiO4/20.08
であり、3−グリシドキシプロピル基含有量は14モル%、エポキシ当量は760g/eq.であった。
【0109】
なお、ポリマーDの分子量及びエポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0110】
(合成例5)
トリメチルメトキシシラン30g、ジメチルジメトキシシラン100g、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン450gを、2000mLのセパラブルフラスコに温度計、滴下装置、攪拌機を取り付けた反応容器に入れ50℃で攪拌した。次いで反応容器に水酸化カリウム0.8gを水134gに溶解させた溶液をゆっくりと滴下し、滴下後50℃で6時間攪拌した。酢酸0.9gを加えた後、反応液を入れた容器を減圧して揮発成分を除去し、反応液をろ過して酢酸カリウムを取り除き、ポリマーEを得た。ポリマーEの分子量はMn=2000であり、29Si−NMRより
(MeSiO1/20.08(MeSiO2/20.28(EpSiO3/20.64
であり、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基含有量は57モル%、エポキシ等量は210g/eq.であった。
【0111】
なお、分子量、エポキシ当量は、合成例1と同様にして求めた。
【0112】
(合成例6)
上記で合成したポリマーA300gにトルエン600g、メタノール300gを、2000mLのセパラブルフラスコに温度計、滴下装置、攪拌機を取り付けた反応容器に入れ攪拌した。次いで反応容器にチオ尿酸36gを入れ50℃で3時間反応させた。反応液を水300gで5回洗浄し、洗浄液を入れた容器を減圧して揮発成分を除去し、エピスルフィド含有基を有するシリコーン樹脂Aを得た。
【0113】
(合成例7)
ポリマーAをポリマーBに変更し、チオ尿酸量を50gに変更した以外は合成例5と同様に合成し、エピスルフィド含有基を有するシリコーン樹脂Bを得た。
【0114】
(合成例8)
ポリマーAをポリマーCに変更した以外は合成例5と同様に合成し、エピスルフィド含有基を有するシリコーン樹脂Cを得た。
【0115】
(合成例9)
ポリマーAをポリマーDに変更した以外は合成例5と同様に合成し、エピスルフィド含有基を有するシリコーン樹脂Dを得た。
【0116】
(合成例10)
ポリマーAをポリマーEに変更し、チオ尿酸量を130gに変更した以外は合成例5と同様に合成し、エピスルフィド含有基を有するシリコーン樹脂Eを得た。
【0117】
(実施例1)
エピスルフィド含有基を有するシリコーン樹脂A100gと、酸無水物(リカシッドMH−700G、新日本理化社製)25gと、硬化促進剤(U−CAT SA 102、サンアプロ社製)0.3gとを混合機へ投入し、混合した後、脱泡を行い、光半導体素子用封止剤を得た。
【0118】
(実施例2)
エピスルフィド含有基を有するシリコーン樹脂B100gと、酸無水物(リカシッドMH−700G、新日本理化社製)30gと、硬化促進剤(U−CAT SA 102、サンアプロ社製)0.3gとを混合機へ投入し、混合した後、脱泡を行い、光半導体素子用封止剤を得た。
【0119】
(実施例3)
エピスルフィド含有基を有するシリコーン樹脂C100gと、酸無水物(リカシッドMH−700G、新日本理化社製)25gと、硬化促進剤(U−CAT SA 102、サンアプロ社製)0.3gとを混合機へ投入し、混合した後、脱泡を行い、光半導体素子用封止剤を得た。
【0120】
(実施例4)
エピスルフィド含有基を有するシリコーン樹脂D100gと、酸無水物(リカシッドMH−700G、新日本理化社製)25gと、硬化促進剤(U−CAT SA 102、サンアプロ社製)0.3gとを混合機へ投入し、混合した後、脱泡を行い、光半導体素子用封止剤を得た。
【0121】
(比較例1)
ポリマーA100gと、酸無水物(リカシッドMH−700G、新日本理化社製)25gと、硬化促進剤(U−CAT SA 102、サンアプロ社製)0.3gとを混合機へ投入し、混合した後、脱泡を行い、光半導体素子用封止剤を得た。
【0122】
(比較例2)
エピスルフィド含有基を有するシリコーン樹脂E100gと、酸無水物(リカシッドMH−700G、新日本理化社製)61gと、硬化促進剤(U−CAT SA 102、サンアプロ社製)0.3gとを混合機へ投入し、混合した後、脱泡を行い、光半導体素子用封止剤を得た。
【0123】
(光半導体装置の作製)
銀メッキされたリード電極付きハウジング材(PPA)に、ダイボンド材によって主発光ピークが460nmの発光素子が実装されており、発光素子とリード電極とを金ワイヤーで電気的に接続されている光半導体素子に、実施例及び比較例で作製した光半導体素子用封止剤を注入し、100℃×3時間+130℃×3時間で硬化させ、光半導体装置を作製した。
【0124】
〔評価〕
(耐湿信頼性試験)
作製した光半導体装置について、23℃の温度下、積分球を用いた全光束測定装置(「OL770」、18インチ積分球、オプトロニックラボラトリーズ社製)を用いて発光素子に20mAの電流を流した時の全光束を測定した(以下、「初期全光束」と称することがある)。
【0125】
次いで、発光素子に20mAの電流を流した状態で光半導体装置を110℃、85RH%のチャンバーに入れた。100時間後と300時間後に、全光束を測定し、初期全光束に対する全光束の低下率を算出した。全光束の低下率が5%未満の場合:◎、5〜10%未満の場合:○、10〜20%未満の場合を△、30以上の場合:×とした。
【0126】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にエピスルフィド含有基を有するシリコーン樹脂と、前記エピスルフィド含有基と反応可能な熱硬化剤とを含有する光半導体装置用封止剤であって、
前記シリコーン樹脂は、平均組成式が下記一般式(1)で表される樹脂成分を含有し、かつ下記式(a)より求められるエピスルフィド含有基の含有比率が3〜50モル%であることを特徴とする光半導体装置用封止剤。
【化1】

一般式(1)中、a、b、c及びdは、それぞれa/(a+b+c+d)=0〜0.2、b/(a+b+c+d)=0.3〜1.0、c/(a+b+c+d)=0〜0.5、d/(a+b+c+d)=0〜0.3を満たし、R〜Rは、少なくとも1個がエピスルフィド含有基を表し、他のR〜Rは、直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜8の炭化水素或いはそのフッ素化物を表し、これらは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
エピスルフィド含有基の比率(モル%)=(平均組成が一般式(1)で表される樹脂の1分子あたりに含まれるエピスルフィド含有基の平均個数×エピスルフィド含有基の分子量/平均組成が一般式(1)で表される樹脂成分の平均分子量)×100 ・・・(a)
【請求項2】
光半導体装置からなる発光素子と、該発光素子を封止するように設けられた請求項1に記載の光半導体装置用封止剤とを備える、光半導体装置。

【公開番号】特開2010−209138(P2010−209138A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53534(P2009−53534)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】