説明

光学フィルムの製造方法及び光学フィルム

【課題】優れた耐擦傷性が得られる光学フィルムの製造方法及び光学フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材フィルム10の一面側の最表面に光学機能層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜20を形成する工程、前記塗膜20の透明基材フィルム10とは反対側の面に表面粗さRaが10nm以下の平滑面40を接触させる工程、及び、前記塗膜20に前記平滑面40を接触させた状態で当該塗膜20を硬化させた後、当該平滑面40を剥離し、表面粗さRaが1nm以下の光学機能層70を形成する工程を含むことを特徴とする、光学フィルム1の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイ等の表面を保護する目的等で使用される、透明基材フィルム上に光学機能層を設けてなる光学フィルムの製造方法及び光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ等の画像表示装置における画像表示面は、取り扱い時に傷がつかないように、耐擦傷性を付与することが要求される。これに対して、基材フィルムにハードコート(HC)層を設けたハードコートフィルムや、更に反射防止性や防眩性等光学機能を付与した光学積層体を利用することにより、画像表示装置の画像表示面の耐擦傷性を向上させることが一般になされている。
【0003】
また、ハードコートフィルムでは、樹脂被膜に無機微粒子を含有させて当該樹脂被膜の硬度を向上させることが一般に知られている(特許文献1)。
しかし、そのような無機微粒子を含有させると、ハードコート層の表面の鉛筆硬度は向上するが、当該表面に凹凸が形成されやすく、ハードコート層に硬いものが接触したときに凸部に引っ掛かり、当該凸部に過大な力が加わり、微細な損傷を起こして耐擦傷性が低下する問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2008−165040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであり、優れた耐擦傷性が得られる光学フィルムの製造方法及び光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題点について鋭意検討を重ねた結果、光学フィルムの透明基材フィルムとは反対側の最表面となる光学機能層用硬化性樹脂組成物の塗膜に平滑面を接触させ、当該接触させた状態で塗膜を硬化させ、光学機能層とすることにより、光学機能層表面の表面粗さを低減し、優れた耐擦傷性を得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、上記問題点を解決する本発明の特徴は、以下の点である。
【0007】
本発明に係る光学フィルムの製造方法は、透明基材フィルムの一面側の最表面に光学機能層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成する工程、
前記塗膜の透明基材フィルムとは反対側の面に表面粗さRaが10nm以下の平滑面を接触させる工程、及び、
前記塗膜に前記平滑面を接触させた状態で当該塗膜を硬化させた後、当該平滑面を剥離し、表面粗さRaが1nm以下の光学機能層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0008】
表面粗さRaが10nm以下の平滑面が、光学機能層表面に表面粗さRaが1nm以下の平滑さを付与する。
なお、最表面とは、透明基材フィルムの一面側の最も外側の面を意味する。
【0009】
最表面の光学機能層の表面粗さRaが1nm以下であることにより、本発明の光学フィルムの表面に硬いものが接触したときに引っ掛かる凸部が無く、当該凸部に過大な力が加わることもないため、微細な損傷が発生せず、耐擦傷性が向上する。
【0010】
本発明に係る光学フィルムの製造方法では、前記平滑面は、ガラス又は金属からなる平滑面であることが、平滑さの付与が容易である点から好ましい。
【0011】
本発明に係る光学フィルムの製造方法の好適な実施形態では、前記塗膜を形成する工程において、前記光学機能層用硬化性樹脂組成物が平均粒径12nm〜1μmの微粒子を含むことも可能である。
【0012】
本発明に係る光学フィルムの製造方法の好適な実施形態では、前記光学機能層用硬化性樹脂組成物がハードコート層用硬化性樹脂組成物であり、前記光学機能層をハードコート層とすることも可能である。
【0013】
本発明に係る光学フィルムは、透明基材フィルムの一面側の最表面に光学機能層を設けた光学フィルムであって、当該光学機能層の透明基材フィルムとは反対側の面の表面粗さRaが1nm以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る光学フィルムの好適な実施形態では、前記光学機能層に平均粒径12nm〜1μmの微粒子を含むことも可能である。
【0015】
なお、本発明において、表面粗さRaは、JIS B 0601−2001に規定される算術平均粗さRaを表す。
本発明において、ハードコート層とは、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(500g荷重)で、H以上の硬度を示すものをいう。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、最表面に表面粗さRaが1nm以下の平滑な光学機能層を有することにより硬度を維持しながらも優れた耐擦傷性を有す光学フィルムを提供可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、まず本発明の光学フィルムの製造方法について説明し、次いで光学フィルム、並びにその必須構成要素である透明基材フィルム、及び光学機能層について順に説明する。
【0018】
なお、本発明において、表面粗さRaは、JIS B 0601−2001に規定される算術平均粗さRaを表す。
本発明において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを表す。
本発明において、「ハードコート層」とは、一般にJIS K5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験(500g荷重)で「H」以上の硬度を示すものである。
また、本発明の光には、可視及び非可視領域の波長の電磁波だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線が含まれる。
また、本発明において膜厚とは乾燥時の膜厚(乾燥膜厚)を意味する。
本発明において、分子量とは、分子量分布を有する場合には、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算値である重量平均分子量を意味し、分子量分布を有しない場合には、化合物そのものの分子量を意味する。
本発明において、微粒子の平均粒径とは、溶液中の当該粒子を動的光散乱方法で測定し、粒径分布を累積分布で表したときの50%粒子径(d50 メジアン径)を意味する。当該平均粒径は、日機装(株)製のMicrotrac粒度分析計又はNanotrac粒度分析計を用いて測定することができる。
上記微粒子は、凝集粒子であっても良く、凝集粒子である場合は、二次粒径が上記範囲内であれば良い。
【0019】
1.光学フィルムの製造方法
本発明に係る光学フィルムの製造方法は、透明基材フィルムの一面側の最表面に光学機能層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成する工程、
前記塗膜の透明基材フィルムとは反対側の面に表面粗さRaが10nm以下の平滑面を接触させる工程、及び、
前記塗膜に前記平滑面を接触させた状態で当該塗膜を硬化させた後、当該平滑面を剥離し、表面粗さRaが1nm以下の光学機能層を形成する工程を含むことを特徴とする。
【0020】
表面粗さRaが10nm以下の平滑面が、光学機能層表面に表面粗さRaが1nm以下の平滑さを付与する。
なお、最表面とは、透明基材フィルムの一面側の最も外側の面を意味する。
【0021】
最表面の光学機能層の表面粗さRaが1nm以下であることにより、本発明の光学フィルムの表面に硬いものが接触したときに引っ掛かる凸部が無く、当該凸部に過大な力が加わることもないため、微細な損傷が発生せず、耐擦傷性が向上する。
【0022】
(光学機能層の形成方法)
光学機能層の形成方法は、上記の工程を含み、光学機能層が透明基材フィルムの一面側の最表面に形成され、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
例えば、調製した光学機能層用硬化性樹脂組成物を透明基材フィルムの一面側の最表面に塗布し、塗膜を形成し、必要に応じて乾燥を行い、塗膜に平滑面を接触させ、塗膜を光及び/又は熱により硬化させ、平滑面を剥離し、光学機能層を形成する。
【0023】
光学機能層用硬化性樹脂組成物は、透明基材フィルムの一面側の最表面に塗布されればよく、透明基材フィルムに直接塗布しても良いし、透明基材フィルムの一面側に設けられた1層以上のその他の機能層上に塗布しても良い。
透明基材フィルムに直接塗布する場合は、本発明に係る光学フィルムの製造方法により製造される光学フィルムは、透明基材フィルム/光学機能層の2層構成である。また、透明基材フィルムの一面側に設けられたその他の機能層上に塗布する場合は、透明基材フィルム/1層以上のその他の機能層/光学機能層の3層以上の構成となる。
【0024】
光学機能層用硬化性樹脂組成物は、通常、溶剤にバインダー成分の他、無機微粒子や重合開始剤等を一般的な調製法に従って、混合し分散処理することにより調製される。混合分散には、ペイントシェーカー又はビーズミル等を用いることができる。
【0025】
塗布方法は、透明基材フィルム表面に光学機能層用硬化性樹脂組成物を均一に塗布することができる方法であれば特に限定されるものではなく、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ピードコーター法等の各種方法を用いることができる。
また、透明基材フィルム上への光学機能層用硬化性樹脂組成物の塗工量としては、得られる光学フィルムが要求される性能により異なるものであるが、乾燥後の塗工量が1g/m〜30g/mの範囲内、特に5g/m〜25g/mの範囲内であることが好ましい。
【0026】
塗膜に接触させる平滑面は表面粗さRaが10nm以下であるが、この様な平滑面を有するものは特に限定されず、作業性、平滑面の強度、経済性等を考慮して適宜選択することができる。例えば、ガラス又はクロム及び鉄等の金属からなる平滑面を用いることができる。強度及び繰り返し使用時に摩耗し難い点でクロムが好ましく、経済性の点から鉄製ローラの表面にクロムをメッキしたものが好ましい。
【0027】
乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥又は加熱乾燥、更にはこれらの乾燥を組み合わせる方法等が挙げられる。例えば、光学機能層用硬化性樹脂組成物の溶剤としてケトン系溶剤を用いる場合は、通常室温〜80℃、好ましくは40℃〜70℃の範囲内の温度で、20秒〜3分、好ましくは30秒〜1分程度の時間で乾燥工程が行われる。
【0028】
平滑面を接触させた光学機能層用硬化性樹脂組成物の塗膜に対し、当該硬化性樹脂組成物に含まれるバインダー成分や無機微粒子の反応性官能基に応じて、光照射及び/又は加熱して塗膜を硬化させることにより、塗膜が硬化した膜が形成される。
【0029】
光照射には、主に、紫外線、可視光、電子線、電離放射線等が使用される。紫外線硬化の場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等を使用する。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜5000mJ/cm程度である。
光照射する場合は、透明基材フィルム側から照射してもよいし、光照射可能な透明性を有するガラス等を平滑面を有する部材として用いている場合は、当該透明性を有する部材側から光照射してもよい。
加熱する場合は、通常40℃〜120℃の温度にて処理する。また、室温(25℃)で24時間以上放置することにより反応を行っても良い。
【0030】
その他の機能層の形成も上記光学機能層の形成方法を基に、適宜調節して行えばよい。
【0031】
本発明に係る光学フィルムの製造方法の好適な実施形態では、前記光学機能層用硬化性樹脂組成物がハードコート層用硬化性樹脂組成物であり、前記光学機能層をハードコート層とすることも可能である。光学機能層をハードコート層とすることにより、ディスプレイ表面の耐擦傷性を向上しやすくなる。
【0032】
図1は、本発明に係る光学フィルムの製造方法の一例を示した模式図である。
図1(a)に示すように、透明基材フィルム10の一面側に光学機能層用硬化性樹脂組成物としてハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜20を形成する。
次いで、図1(b)及び(c)に示すように、塗膜20の透明基材フィルム10とは反対側の面に表面粗さRaが10nm以下の平滑面40を有するガラス又は金属30を接触させる。
次いで、図1(d)に示すように、透明基材フィルム10側から塗膜20に光照射50し、当該塗膜を硬化させ、硬化した膜60とする。
次いで、図1(e)に示すように、平滑面40を剥離し、透明基材フィルム10の上に表面粗さRaが1nm以下のハードコート層70を有するハードコートフィルム1を得る。
【0033】
図2は、本発明に係る光学フィルムの製造方法の他の一例を示した模式図である。
図2(a)に示すように、一面側に帯電防止層80を設けた透明基材フィルム10の最表面、すなわち帯電防止層80上に光学機能層用硬化性樹脂組成物としてハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜20を形成する。
次いで、図2(b)及び(c)に示すように、塗膜20の透明基材フィルム10とは反対側の面に表面粗さRaが10nm以下の平滑面40を有するガラス30を接触させる。
次いで、図2(d)に示すように、ガラス30側から塗膜20に光照射50し、当該塗膜を硬化させ、硬化した膜60とする。
次いで、図2(e)に示すように、平滑面40を剥離し、透明基材フィルム10の上に表面粗さRaが1nm以下のハードコート層70を有するハードコートフィルム1を得る。
【0034】
一般に、光学機能層に含まれる微粒子の粒径が大きくなるほど、光学機能層表面の表面粗さも大きくなる。
これに対して、本発明に係る光学フィルムの製造方法の好適な実施形態では、光学機能層用硬化性樹脂組成物が平均粒径12nm〜1μmの微粒子を含んでいても、光学機能層表面の表面粗さが上記工程で接触させる平滑面により制御されるため、光学機能層表面の表面粗さRaを1nm以下とすることが可能である。
【0035】
2.光学フィルム
本発明に係る光学フィルムは、透明基材フィルムの一面側の最表面に光学機能層を設けた光学フィルムであって、当該光学機能層の透明基材フィルムとは反対側の面の表面粗さRaが1nm以下であることを特徴とする。
本発明に係る光学フィルムは、光学フィルムとしての機能又は用途を加味して、前記光学機能層の透明基材フィルム側に、その他の機能層、例えば、帯電防止層、ハードコート層、中〜高屈折率層等の1種又は2種以上の層を形成しても良い。
また、本発明の光学フィルムは、前記光学機能層が帯電防止剤や防眩剤等を含んでなることにより、帯電防止機能や防眩機能が付与されるものであっても良い。
【0036】
図3は、本発明に係る光学フィルムの層構成の一例を模式的に示した図である。透明基材フィルム10の一面側の最表面に、透明基材フィルム10とは反対側の面の表面粗さRaが1nm以下である光学機能層としてのハードコート層70が設けられている。
図4は、本発明に係る光学フィルムの層構成の他の一例を模式的に示した図である。透明基材フィルム10の一面側の最表面に、帯電防止層80及び光学機能層としてのハードコート層70がこの順で設けられている。ハードコート層70の透明基材フィルム10とは反対側の面の表面粗さRaは1nm以下である。
図5は、本発明に係る光学フィルムの層構成の他の一例を模式的に示した図である。透明基材フィルム10の一面側に、ハードコート層70及び光学機能層としての低屈折率層90がこの順で設けられている。低屈折率層90の透明基材フィルム10とは反対側の面の表面粗さRaは1nm以下である。
【0037】
以下、本発明に係る光学フィルムの必須の構成要素である透明基材フィルム、及び光学機能層、並びに必要に応じて適宜設けることができるハードコート層、帯電防止層、及び中〜高屈折率層よりなる群から選択される1種又は2種以上のその他の機能層について順に説明する。
【0038】
2−1.透明基材フィルム
透明基材フィルムの材質は、特に限定されないが、ハードコートフィルムに用いられる一般的な材料を用いることができ、例えば、セルロースアシレート、シクロオレフィンポリマー、アクリレート系ポリマー、又はポリエステルを主体とするものが挙げられる。ここで、「主体とする」とは、基材構成成分の中で最も含有割合が高い成分を示すものである。
【0039】
セルロースアシレートの具体例としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。シクロオレフィンポリマーとしては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体樹脂等が挙げられ、より具体的には、日本ゼオン(株)製のゼオネックスやゼオノア(ノルボルネン系樹脂)、住友ベークライト(株)製 スミライトFS−1700、JSR(株)製 アートン(変性ノルボルネン系樹脂)、三井化学(株)製 アペル(環状オレフィン共重合体)、Taconic社製の Topers(環状オレフィン共重合体)、日立化成(株)製 オプトレッツOZ−1000シリーズ(脂環式アクリル樹脂)等が挙げられる。アクリレート系ポリマーの具体例としては、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等が挙げられる。ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0040】
透明基材フィルムの厚さは、20μm以上300μm以下、好ましくは30μm以上200μm以下である。本発明においては、透明基材フィルム上にハードコート層を形成するのに際して、接着性向上のために、コロナ放電処理、酸化処理等の物理的な処理のほか、アンカー剤もしくはプライマーと呼ばれる塗料の塗布を予め行なってもよい。
【0041】
2−2.光学機能層
光学機能層としては、ディスプレイに表面保護、反射防止、又は帯電防止等の光学機能を付与し、本発明の趣旨を逸脱しないものであれば特に限定されず、従来公知の光学機能層を挙げることができる。光学機能層としては、例えば、ハードコート層、帯電防止層、防汚層、低屈折率層、及び中〜高屈折率層を挙げることができる。上記ハードコート層、帯電防止層等を形成する場合は、上記光学フィルムの製造方法で挙げた光学機能層用硬化性樹脂組成物をそれぞれの機能を付与する成分を添加し、調製すればよい。例えば、ハードコート層を形成する場合は、バインダー成分等を配合したハードコート層用硬化性樹脂組成物を用いればよい。
【0042】
また、光学機能層は1層のみであっても良いし、同種又は異種の2層以上の層であっても良い。
【0043】
本発明に係る光学フィルムの好適な実施形態では、前記光学機能層をハードコート層とすることが耐擦傷性向上の点から好ましい。
【0044】
以下、本発明の光学機能層の具体例として、ハードコート層、帯電防止層、防汚層、低屈折率層、及び中〜高屈折率層を挙げて説明する。
【0045】
2−2−1.ハードコート層
本発明のハードコート層は、少なくともバインダー成分を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。
本発明において「ハードコート層」とは、上述のように、JIS K5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験(500g荷重)でH以上の硬度を示すものである。
本発明に係る光学フィルムは、前記鉛筆硬度試験で更に2H以上であることが好ましい。
【0046】
ハードコート層の膜厚は、上記透明基材フィルムの強度や要求性能に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、好ましくは1〜100μm、更に5〜30μmの範囲にあることが好ましい。
【0047】
(ハードコート層用硬化性組成物)
本発明のハードコート層用硬化性組成物について説明する。
本発明のハードコート層用硬化性組成物は、少なくともバインダー成分を含むものであり、その他、硬度向上を目的として、微粒子、機能性付与を目的として防眩剤や防汚剤、及び帯電防止剤、コーティング適正の制御としてレベリング剤や溶剤、ブロッキング防止を目的として易滑剤等を含有していても良い。
【0048】
(バインダー成分)
ハードコート層用硬化性樹脂組成物に用いられるバインダー成分は、硬化してハードコート層のマトリクスとなる成分である。当該バインダー成分は、反応性官能基aを有し、当該バインダー成分同士で架橋することにより網目構造が形成され、ハードコート層の硬度を発現する。さらに、ハードコート層用硬化性樹脂組成物に後述する反応性無機微粒子が含まれる場合は、前記反応性官能基aと後述する反応性無機微粒子の反応性官能基aとが架橋結合し、ハードコート層の硬度を更に高める。
バインダー成分は、十分な架橋性を得るために、当該反応性官能基aを1分子あたり3つ以上有することが好ましい。当該反応性官能基aとしては、重合性不飽和基が好適に用いられ、好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合及びエポキシ基等が挙げられる。
【0049】
バインダー成分としては、硬化性有機樹脂が好ましく、塗膜とした時に光が透過する透光性のものが好ましく、紫外線又は電子線で代表される電離放射線により硬化する樹脂である電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂などを要求性能などに応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系などが挙げられる。
【0050】
バインダー成分として、1種又は2種以上のバインダー成分を用いることができる。
【0051】
バインダー成分としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンヘキサアクリレート、及びこれらの変性体が挙げられる。
尚、変性体としては、EO(エチレンオキサイド)変性体、PO(プロピレンオキサイド)変性体、CL(カプロラクトン)変性体、及びイソシアヌル酸変性体等が挙げられる。
【0052】
また、後述する2つ以上の反応性官能基aを有する分子量が10,000未満の化合物(B)と類似の骨格で分子量が10,000以上の化合物も用いることができる。この様な化合物としては、例えば、商品名ビームセット371(荒川化学工業(株)製)が挙げられる。
バインダー成分としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート及び/又はジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましく用いられ、ペンタエリスリトールトリアクリレートが特に好ましく用いられる。
【0053】
このほか、ハードコート層において、当該ハードコート層の硬度を向上させる点から、バインダー成分として、下記化学式(1)で表されるポリアルキレンオキシド鎖含有ポリマー(A)と2つ以上の反応性官能基aを有する分子量が10,000未満の化合物(B)とを組み合わせて用いることが好ましい。
【0054】
【化1】

化学式(1)において、Xは直鎖、分枝、又は環状の炭化水素鎖が単独又は組み合わされてなり、当該炭化水素鎖は置換基を有していても良く、また当該炭化水素鎖間には異種原子が含まれていても良い、前記置換基を除いた炭素数が3〜10の3価以上の有機基である。kは3〜10の整数を表す。L〜Lはそれぞれ独立に、エーテル結合、エステル結合、及びウレタン結合よりなる群から選択される1種以上を含む2価の基、又は、直接結合である。R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜4の直鎖又は分岐の炭化水素基である。n1、n2・・・nkはそれぞれ独立の数である。Y〜Yはそれぞれ独立に、1つ以上の反応性官能基aを有する化合物残基を示す。
【0055】
前記ポリマー(A)、及び前記化合物(B)が互いに反応可能であり、当該ポリマー(A)が、及び当該化合物(B)と架橋結合を形成するため、光学フィルムに優れた硬度を付与することができると推定される。
【0056】
(化学式(1)で表されるポリアルキレンオキシド鎖含有ポリマー(A))
前記ポリアルキレンオキシド鎖含有ポリマー(A)は、下記化学式(1)で表され、末端に3つ以上の反応性官能基aを有する分子量が1000以上のポリアルキレンオキシド鎖含有ポリマーである。
【0057】
【化2】

化学式(1)において、Xは直鎖、分枝、又は環状の炭化水素鎖が単独又は組み合わされてなり、当該炭化水素鎖は置換基を有していても良く、また当該炭化水素鎖間には異種原子が含まれていても良い、前記置換基を除いた炭素数が3〜10の3価以上の有機基である。kは3〜10の整数を表す。L〜Lはそれぞれ独立に、エーテル結合、エステル結合、及びウレタン結合よりなる群から選択される1種以上を含む2価の基、又は、直接結合である。R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜4の直鎖又は分岐の炭化水素基である。n1、n2・・・nkはそれぞれ独立の数である。Y〜Yはそれぞれ独立に、1つ以上の反応性官能基aを有する化合物残基を示す。
【0058】
化学式(1)において、Xは直鎖、分枝、又は環状の炭化水素鎖が単独又は組み合わされてなり、当該炭化水素鎖は置換基を有していても良く、また当該炭化水素鎖間には異種原子が含まれていても良く、前記置換基を除いた炭素数が3〜10の3価以上の有機基である。化学式(1)で表されるポリアルキレンオキシド鎖含有ポリマー(A)において、Xは、線状側鎖であるポリアルキレンオキシド鎖(O−Rnk部分が出ている分岐点をk個有する短い主鎖に該当する。
【0059】
上記炭化水素鎖は、−CH−のような飽和炭化水素又は−CH=CH−のような不飽和炭化水素を含むものである。環状の炭化水素鎖は、脂環式化合物からなるものであっても良いし、芳香族化合物からなるものであっても良い。また、炭化水素鎖間にはO、S等の異種原子が含まれていても良く、炭化水素鎖間にエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、ウレタン結合等を含んでいても良い。なお、直鎖や環状の炭化水素鎖に対して異種原子を介して分岐している炭化水素鎖は、後述する置換基の炭素数として数えられる。
【0060】
上記炭化水素鎖に有していても良い置換基としては、具体的にはハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基、シアノ基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、アセチル基、アセトキシ基、スルホン基等が挙げられるが特に限定されない。上記炭化水素鎖に有していても良い置換基には、上述のように直鎖や環状の炭化水素鎖に対して異種原子を介して分岐している炭化水素鎖も含まれ、例えば、アルコキシ基(RO−、ここでRは飽和又は不飽和の直鎖、分枝、又は環状の炭化水素鎖である。)、アルキルチオエーテル基(RS−、ここでRは飽和又は不飽和の直鎖、分枝、又は環状の炭化水素鎖である。)、アルキルエステル基(RCOO−、ここでRは飽和又は不飽和の直鎖、分枝、又は環状の炭化水素鎖である。)等が挙げられる。
【0061】
Xは、前記置換基を除いた炭素数が3〜10の3価以上の有機基である。Xの前記置換基を除いた炭素数が3未満であると、線状側鎖であるポリアルキレンオキシド鎖(O−Rnk部分を3個以上有することが困難となる。一方、Xの前記置換基を除いた炭素数が10を超えると、柔軟な部分が増え硬化膜の硬度が低下し、好ましくない。上記置換基を除いた炭素数の炭素数は、好ましくは3〜7であり、更に好ましくは3〜5である。
【0062】
Xとしては、上記条件を満たせば特に限定されない。例えば、下記構造を有するものが挙げられる。
【0063】
【化3】

【0064】
中でも、好適な構造としては、上記構造(x−1)、(x−2)、(x−3)、(x−7)等が挙げられる。
【0065】
Xの原料としては、中でも、1,2,3−プロパントリオール(グリセロール)、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等、水酸基を分子中に3個以上有する炭素数が3〜10の多価アルコール類や、カルボキシル基を分子中に3個以上有する炭素数が3〜10の多価カルボン酸類や、アミノ基を分子中に3個以上有する炭素数が3〜10の多価アミン酸類等が好適に用いられる。
【0066】
化学式(1)において、上記kは、分子中に有するポリアルキレンオキシド鎖(O−Rnkの数を表し、3〜10の整数を表す。kが3未満、すなわちポリアルキレンオキシド鎖が2つでは、十分な硬度が得られない。またkが10を超えると、柔軟な部分が増え硬化膜の硬度が低下し好ましくない。上記kは、好ましくは3〜7であり、更に好ましくは3〜5である。
【0067】
化学式(1)において、上記L〜Lはそれぞれ独立に、エーテル結合、エステル結合、及びウレタン結合よりなる群から選択される1種以上を含む2価の基、又は、直接結合である。エーテル結合、エステル結合、及びウレタン結合よりなる群から選択される1種以上を含む2価の基とは、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−COO−)、ウレタン結合(−NHCOO−)そのものであっても良い。これらの結合は分子鎖が広がりやすく自由度が高いため、他の樹脂成分との相溶性を実現しやすい。
【0068】
エーテル結合、エステル結合、及びウレタン結合よりなる群から選択される1種以上を含む2価の基としては、例えば、−O−R−O−、−O(C=O)−R−O−、−O(C=O)−R−(C=O)O−、−(C=O)O−R−O−、−(C=O)O−R−(C=O)O−、−(C=O)O−R−O(C=O)−、−NHCOO−R−O−、−NHCOO−R−O(C=O)NH−、−O(C=O)NH−R−O−、−O(C=O)NH−R−O(C=O)NH−、−NHCOO−R−O(C=O)NH−、−NHCOO−R−(C=O)O−、−O(C=O)NH−R−(C=O)O−、−NHCOO−R−O(C=O)−、−O(C=O)NH−R−O(C=O)−等が挙げられる。ここでRは、飽和又は不飽和の、直鎖、分枝、又は環状の炭化水素鎖を示す。
【0069】
上記2価の基の具体例としては、例えば、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール等のジオールや、フマル酸、マレイン酸、コハク酸等のジカルボン酸、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソボロンジイソシアネート等のジイソシアネート等の活性水素を除いた残基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
化学式(1)において、(O−Rnkは、アルキレンオキシドが繰り返し単位の線状側鎖であるポリアルキレンオキシド鎖である。ここでR〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1〜4の直鎖又は分岐の炭化水素基である。アルキレンオキシドとしては、メチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド等が挙げられるが、炭素数2〜3の直鎖又は分岐の炭化水素基であるエチレンオキシド、プロピレンオキシドが好適に用いられる。
【0071】
アルキレンオキシドR−Oの繰り返し単位数であるn1、n2・・・nkはそれぞれ独立の数である。n1、n2・・・nkは、分子全体として重量平均分子量が1000以上であることを満たせば特に限定されない。n1、n2・・・nkは、それぞれ異なっていても良いが、鎖長がほぼ同様であることがハードコート層を形成した際の硬度を維持しつつクラックを抑制する点から好ましい。従って、n1、n2・・・nkの差はそれぞれ0〜100程度、更に0〜50程度、特に0〜10程度であることが好ましい。
ハードコート層を形成した際の硬度を維持しつつクラックを抑制する点から、n1、n2・・・nkはそれぞれ2〜500の数であることが好ましく、更に2〜300の数であることが好ましい。
【0072】
〜Yはそれぞれ独立に、反応性官能基a、又は、1つ以上の反応性官能基aを有する化合物残基を示す。これにより、当該ポリアルキレンオキシド鎖含有ポリマーの末端に3つ以上の反応性官能基aがもたらされる。
〜Yが反応性官能基aそのものである場合、Y〜Yとしては例えば、(メタ)アクリロイル基等の重合性不飽和基が挙げられる。
【0073】
また、Y〜Yが1つ以上の反応性官能基aを有する化合物残基の場合の反応性官能基aとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基(CH=CH−)、CH=CR−(ここでRは炭化水素基)等の重合性不飽和基が挙げられる。後述する化合物(B)や反応性無機微粒子と反応可能なように、適宜反応性官能基aを選択すれば、化合物残基としては特に限定されない。Y〜Yが化合物残基の場合、当該Y〜Yが有する反応性官能基aの数は、1つでも良いが、2つ以上であることが更に架橋密度を上げることができ、ハードコート層とした際の硬度の点から好ましい。
【0074】
〜Yが1つ以上の反応性官能基aを有する化合物残基である場合、当該化合物残基は、少なくとも1つ以上の反応性官能基aと当該反応性官能基aとは別に更に反応性置換基を有する化合物から、当該反応性置換基又は当該反応性置換基の一部(水素等)を除いた残基である。
例えば、エチレン性不飽和基を有する化合物残基としては、具体的には例えば、以下の化合物のエチレン性不飽和基以外の反応性置換基又は反応性置換基の一部(水素等)を除いた残基が挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0075】
また、本発明に用いられるポリアルキレンオキシド鎖含有ポリマー(A)の分子量は、硬化膜に柔軟性を与え、クラックを防止する点から、1,000以上であり、更に好ましくは5,000以上、特に好ましくは10,000以上である。
【0076】
上記化学式(1)で表されるポリアルキレンオキシド鎖含有ポリマー(A)を含有する市販品としては、例えば、商品名ダイヤビームUK−4153(三菱レイヨン製;化学式(1)において、Xが(x−7)、kは3、L〜Lはそれぞれ直接結合、R〜Rはそれぞれエチレンであり、n1、n2、n3の合計が20、Y〜Yはそれぞれアクリロイルオキシ基である。)等が挙げられる。
【0077】
前記ポリマー(A)の含有量は、後述する前記化合物(B)100重量部に対して5〜100重量部であることが好ましく、10〜50重量部であることが更に好ましい。前記ポリマー(A)の含有量は、後述する前記化合物(B)100重量部に対して5重量部以上であれば、硬化膜に柔軟性と復元性を付与でき、100重量部以下であれば、硬化膜の硬さを維持できる。
【0078】
(2つ以上の反応性官能基aを有する分子量が10,000未満の化合物(B))
2つ以上の反応性官能基aを有する分子量が10,000未満の化合物(B)は、ハードコート層の硬度を向上させるものである。なお、上記ポリマー(A)の構造を有するものは、2つ以上の反応性官能基aを有する分子量が10,000未満の化合物(B)から除かれる。
本発明において当該化合物(B)は、上記ポリマー(A)と後述する反応性無機微粒子との組み合わせにおいて、互いに反応可能な反応性官能基aを有し、優れた硬度を有する広範な化合物から適宜選択して用いることができる。当該化合物(B)としては、1種単独で用いても良いが、2種以上を適宜混合して用いても良い。
2つ以上の反応性官能基aを有する分子量が10,000未満の化合物(B)は、1分子中に含まれる反応性官能基aが3個以上であることが、硬化膜の架橋密度をあげて、硬度を付与する点から好ましい。ここで化合物(B)が分子量分布を有するオリゴマーの場合、反応性官能基a数は、平均の個数で表される。
また、化合物(B)の分子量は、硬度向上の点から、5,000未満であることが好ましい。
【0079】
以下に具体例を挙げるが、本発明に用いられる化合物(B)は、これらに限定されるものではない。
重合性不飽和基を有する具体例として、重合性不飽和基を1分子内に2つ以上有する多官能(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン変性品、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン変性品、イソシアヌール酸EO変性トリ(メタ)アクリレート(東亞合成製アロニックスM−315等)、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、フタル酸水素−(2,2,2−トリ−(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチル、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン変性品等の3官能(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン変性品、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル、ウレタン変性品等の5官能(メタ)アクリレート化合物;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル、ウレタン変性品、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びそのEO、PO、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル、ウレタン変性品等の6官能(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0080】
(メタ)アクリレート系オリゴマー(乃至プレポリマー)としては、例えば、グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸若しくはカルボン酸塩基を持つモノマーとの付加反応によって得られるエポキシ(メタ)アクリレート類;ポリオールとポリイソシアネートとの反応物と水酸基を含有する(メタ)アクリレートとの付加反応によって得られるウレタン(メタ)アクリレート類;ポリオールと多塩基酸から成るポリエステルポリオールと、(メタ)アクリル酸とのエステル化によって得られるポリエステルアクリレート類;ポリブタジエン又は水添ポリブタジエン骨格を有する(メタ)アクリル化合物であるポリブタジエン(メタ)アクリレート等が挙げられる。本発明における必須成分が有する反応性官能基aが重合性不飽和基の場合、中でもウレタン(メタ)アクリレートは、硬化膜に硬度と柔軟性を与える点から、好適に用いられる。
【0081】
上記エポキシ(メタ)アクリレート類に用いられるグリシジルエーテルとしては、例えば、1,6−ヘキサンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、カルドエポキシ樹脂、グリセロールトリグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、上記ウレタン(メタ)アクリレート類に用いられるポリオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール、ポリブタジエンポリオール、ポリエステルジオール等が挙げられる。上記ウレタン(メタ)アクリレート類に用いられるポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフエニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメレチンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。上記ウレタン(メタ)アクリレート類に用いられる水酸基を含有する(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、上記ポリエステルアクリレート類に用いられるポリエステルポリオールを形成するためのポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、多塩基酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0082】
また、本発明に用いられる化合物(B)としては、分子量が10,000未満である下記化学式(2)で表される重合体も用いることができる。
【0083】
【化4】

化学式(2)中、Dは炭素数1〜10の連結基を表し、qは0又は1を表す。Rは水素原子又はメチル基を表す。Eは任意のビニルモノマーの重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていてもよい。o、pは各重合単位のモル%である。pは0であっても良い。
【0084】
化学式(2)中のDは炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していても良い。
【0085】
化学式(2)中の連結基Dの好ましい例としては、*−(CH−O−**,*−(CH−NH−**、*−(CH−O−**、*−(CH−O−**、*−(CH−O−(CH)−O−**、*−CONH−(CH−O−**、*−CHCH(OH)CH−O−**、*−CHCHOCONH(CH−O−**等が挙げられる。ここで、*は、ポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は、(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す。
【0086】
化学式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表すが、硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
【0087】
化学式(2)においてoは100モル%、すなわち単独の重合体であっても良い。また、oが100モル%であっても、oモル%で表された(メタ)アクリロイル基を含有する重合単位が2種以上混合して用いられた共重合体であってもよい。oとpの比は、特に制限はなく、硬度や、溶剤への溶解性、透明性等種々の観点から適宜選択することができる。
【0088】
化学式(2)中、Eは任意のビニルモノマーの重合単位を表し、特に制限はなく、硬度や、溶剤への溶解性、透明性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一あるいは複数のビニルモノマーによって構成されていても良い。
【0089】
例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸及びその誘導体等を挙げることができる。
【0090】
また、重量平均分子量が10,000未満である、末端や側鎖にエチレン性不飽和結合を有する反応性オリゴマーも用いることができる。当該反応性オリゴマーとしては、骨格成分がポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(アクリロニトリル/スチレン)、ポリ((メタ)アクリル酸2−ヒドロキシメチル/(メタ)アクリル酸メチル)、ポリ((メタ)アクリル酸2−ヒドロキシメチル/(メタ)アクリル酸ブチル)、及び、これらの樹脂とシリコーン樹脂との共重合体等が挙げられる。
【0091】
以上の化合物については市販品を用いることができる。重量平均分子量が10,000未満であり、且つ、2以上の重合性不飽和基を有するウレタンアクリレートとしては、共栄社化学(株)製 商品名AH−600、AT−600、UA−306H、UA−306T、UA−306I等;日本合成化学工業(株)製 商品名UV−1700B、UV−3000B、UV−3200B、UV−6300B、UV−6330B、UV−7000B等;荒川化学工業(株)製 商品名ビームセット500シリーズ(577、502H、504H、550B等);新中村化学工業(株)製 商品名U−6HA、U−15HA、UA−32P、U−324A等が挙げられる。中でも、本発明の前記ポリマー(A)との組み合わせにおいて好適に用いられるウレタン(メタ)アクリレートとしては、イソホロンジイソシアネートの単量体又は多量体とペンタエリスリトール多官能アクリレートとジペンタエリスリトール多官能アクリレートとを反応して得られるウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。当該ウレタン(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、商品名UV−1700B(日本合成化学工業(株)製)が挙げられる。
【0092】
また、重量平均分子量が10,000未満であり、且つ、2以上の重合性不飽和基を有するエポキシアクリレートとしては、昭和高分子(株)製 商品名SPシリーズ(SP−4060、1450等)、VRシリーズ(VR−60、1950;VR−90、1100等)等;日本合成化学工業(株)製 商品名UV−9100B、UV−9170B等;新中村化学工業(株)製 商品名EA−6320/PGMAc、EA−6340/PGMAc等が挙げられる。
【0093】
また、重量平均分子量が10,000未満であり、且つ、2以上の重合性不飽和基を有する反応性オリゴマーとしては、東亞合成(株)製 商品名マクロモノマーシリーズ AA−6、AS−6、AB−6、AA−714SK等が挙げられる。
【0094】
(微粒子)
微粒子は、ハードコート層に硬度を付与するために、必要に応じて適宜用いることができる成分である。
【0095】
微粒子は、要求される性能に応じて適宜選択すればよく、平均粒径10nm〜1μmであることが好ましく、平均粒径12〜500nmであることがより好ましい。平均粒径10nm〜1μmであれば、凝集粒子であっても良く、凝集粒子である場合は、二次粒径が上記範囲内であれば良い。微粒子の平均粒径が10nm未満ではハードコート層に十分な硬度を付与できないおそれがあり、平均粒径が1μmを超えると、ハードコート層の透明性が低下するおそれがある。
【0096】
一般に、光学機能層に含まれる微粒子の粒径が大きくなるほど、光学機能層表面の表面粗さも大きくなる。
これに対して、本発明に係る光学フィルムの製造方法の好適な実施形態では、ハードコート層用硬化性樹脂組成物が平均粒径12nm〜1μmの微粒子を含んでいても、ハードコート層表面の表面粗さが上記工程で接触させる平滑面により制御されるため、光学機能層表面の表面粗さRaを1nm以下とすることが可能である。
【0097】
また、微粒子は、透明性を損なうことなく、前記バインダー成分のみを用いた場合の復元率を維持しつつ、硬度を向上させる点から、粒径分布が狭く、単分散であることが好ましい。
【0098】
微粒子は、ハードコート層用硬化性樹脂組成物の全固形分に対して30〜70重量%含まれることが好ましく、40〜60重量%がより好ましい。30重量%未満ではハードコート層に十分な硬度を付与できないおそれがある。70重量%を超えると、充填率が上がり過ぎ、かえってハードコート層の硬度を低下させてしまうおそれがある。
【0099】
微粒子は単一の材質や単一の平均粒径のものだけでなく、材質や平均粒径の異なるものを2種類以上組み合わせて用いても良い。2種類以上組み合わせて用いる場合は、各粒子の平均粒径が12nm〜1μm以内で且つ各粒子の合計重量%が30〜70重量%となれば良い。
【0100】
微粒子は無機微粒子でも有機微粒子でも良いが、硬度付与の観点から無機微粒子であることが好ましい。
【0101】
無機微粒子としては、例えば、シリカ(SiO)、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物微粒子、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物微粒子などが挙げられる。金属微粒子、金属硫化物微粒子、金属窒化物微粒子等を用いても良い。
【0102】
硬度が高い点からは、シリカ、酸化アルミニウムが好ましい。また、後述するその他の層に対してハードコート層を相体的に高屈折率層とするためには、ジルコニア、チタニア、酸化アンチモン等の膜形成時に屈折率が高くなる微粒子を適宜選択して用いることができる。同様に、相対的に低屈折率層とするためには、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等のフッ化物微粒子などの膜形成時に屈折率が低くなる微粒子を適宜選択して用いることができる。更に、帯電防止性、導電性を付与したい場合には、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ等を適宜選択して用いることができる。これらは、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
無機微粒子の表面には通常、無機微粒子内ではこの形態で存在できない基を有する。これら表面の基は通常、相対的に反応しやすい官能基である。例えば、金属酸化物の場合には、例えば、水酸基及びオキシ基、例えば、金属硫化物の場合には、チオール基及びチオ基、又は例えば、窒化物の場合には、アミノ基、アミド基及びイミド基を有する。
【0103】
有機微粒子としては、例えば、プラスチックビーズを挙げることができる。プラスチックビーズとしては、具体例としては、ポリスチレンビーズ、メラミン樹脂ビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ベンゾグアナミンビーズ、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合ビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ等が挙げられる。上記プラスチックビーズは、その表面に疎水性基を有することが好ましく、例えば、スチレンビーズを挙げることができる。
【0104】
無機微粒子は、当該無機微粒子同士又は前記バインダー成分との間で架橋反応し、共有結合が形成可能な反応性官能基bを少なくとも粒子表面の一部に有する反応性無機微粒子であることが好ましい。反応性無機微粒子同士又は反応性無機微粒子と前記バインダー成分の間で架橋反応することにより、ハードコート層の硬度を更に向上させることができる。
【0105】
反応性無機微粒子には、1粒子あたりコアとなる無機微粒子の数が2つ以上のものも含まれる。また、反応性無機微粒子は、粒径を小さくすることにより含有量に対して、ハードコート層のマトリクス内での架橋点を高めることができる。
反応性無機微粒子は、ハードコート層に更に機能を付与するものであっても良く、目的に合わせて適宜選択して用いる。
【0106】
本発明の反応性無機微粒子は、中空粒子のような粒子内部に空孔や多孔質組織を有する粒子よりも、粒子内部に空孔や多孔質組織を有しない中実粒子を用いることが硬度向上の点から好ましい。
【0107】
反応性無機微粒子は、少なくとも表面の一部に有機成分が被覆され、当該有機成分により導入された反応性官能基bを表面に有する。ここで、有機成分とは、炭素を含有する成分である。また、少なくとも表面の一部に有機成分が被覆されている態様としては、例えば、無機微粒子の表面に存在する水酸基にシランカップリング剤等の有機成分を含む化合物が反応して、表面の一部に有機成分が結合した態様、または、無機微粒子の表面に存在する水酸基にイソシアネート基を有する有機成分を含む化合物が反応して、表面の一部に有機成分が結合した態様、のほか、例えば、無機微粒子の表面に存在する水酸基に水素結合等の相互作用により有機成分を付着させた態様や、ポリマー粒子中に1個又は2個以上の無機微粒子を含有する態様、などが含まれる。
【0108】
当該被覆している有機成分は、無機微粒子同士の凝集を抑制し、且つ無機微粒子表面へ反応性官能基を多く導入して膜(ハードコート層)の硬度を向上させる点から、粒子表面のほぼ全体を被覆していることが好ましい。このような観点から、無機微粒子を被覆している前記有機成分は、反応性無機微粒子中に1.00×10−3g/m以上含まれることが好ましい。無機微粒子表面に有機成分を付着乃至結合させた態様においては、無機微粒子を被覆している前記有機成分が、反応性無機微粒子中に2.00×10−3g/m以上含まれることが更に好ましく、反応性無機微粒子中に3.50×10−3g/m以上含まれることが特に好ましい。ポリマー粒子中に無機微粒子を含有する態様においては、無機微粒子を被覆している前記有機成分が、反応性無機微粒子中に3.50×10−3g/m以上含まれることが更に好ましく、反応性無機微粒子中に5.50×10−3g/m以上含まれることが特に好ましい。
【0109】
当該被覆している有機成分の割合は、通常、乾燥粉体を空気中で完全に燃焼させた場合の重量減少の恒量値として、例えば、空気中で室温から通常800℃までの熱重量分析により求めることができる。
なお、単位面積当りの有機成分量は、以下の方法により求めることができる。まず、示差熱重量分析(DTG)により、有機成分重量を無機成分重量で割った値(有機成分重量/無機成分重量)を測定する。次に、無機成分重量と用いた無機微粒子の比重から無機成分全体の体積を計算する。また、被覆前の無機微粒子が真球状であると仮定し、被覆前の無機微粒子の平均粒径から被覆前の無機微粒子1個当りの体積、及び表面積を計算する。次に、無機成分全体の体積を被覆前の無機微粒子1個当たりの体積で割ることにより、反応性無機微粒子の個数を求める。更に、有機成分重量を反応性無機微粒子の個数で割ることにより、反応性無機微粒子1個当たりの有機成分量を求める。最後に、反応性無機微粒子1個当りの有機成分重量を、被覆前の無機微粒子1個当りの表面積で割ることにより、単位面積当たりの有機成分量を求めることができる。
【0110】
反応性官能基bは、前記反応性官能基aと同じであっても異なっていても良い。
【0111】
少なくとも表面の一部に有機成分が被覆され、当該有機成分により導入された反応性官能基bを表面に有する反応性無機微粒子を調製する方法としては、当該無機微粒子に導入したい反応性官能基bにより、従来公知の方法を適宜選択して用いることができる。
中でも、本発明においては、被覆している有機成分が反応性無機微粒子中に、被覆前の無機微粒子の単位面積当たり1.00×10−3g/m以上含まれることが可能で、無機微粒子同士の凝集を抑制し、膜の硬度を向上させる点から、以下の(i)(ii)の無機微粒子のいずれかを適宜選択して用いることが好ましい。
(i)飽和又は不飽和カルボン酸、当該カルボン酸に対応する酸無水物、酸塩化物、エステル及び酸アミド、アミノ酸、イミン、ニトリル、イソニトリル、エポキシ化合物、アミン、β‐ジカルボニル化合物、シラン、及び官能基を有する金属化合物よりなる群から選択される1種以上の分子量500以下の表面修飾化合物の存在下、分散媒としての水及び/又は有機溶媒の中に無機微粒子を分散させることにより得られる、表面に反応性官能基bを有する無機微粒子。
(ii)被覆前の無機微粒子に導入する反応性官能基b、下記化学式(1)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物と、金属酸化物微粒子とを結合することにより得られる、表面に反応性官能基bを有する無機微粒子。
化学式(3)
−Q−C(=Q)−Q
化学式(3)中、Qは、NH、O(酸素原子)、又はS(硫黄原子)を示し、QはO又はSを示し、Qは、NH又は2価以上の有機基を示す。
【0112】
以下、好適に用いられる反応性無機微粒子を順に説明する。
(i)飽和又は不飽和カルボン酸、当該カルボン酸に対応する酸無水物、酸塩化物、エステル及び酸アミド、アミノ酸、イミン、ニトリル、イソニトリル、エポキシ化合物、アミン、β‐ジカルボニル化合物、シラン、及び官能基を有する金属化合物よりなる群から選択される1種以上の分子量500以下の表面修飾化合物の存在下、分散媒としての水及び/又は有機溶媒の中に無機微粒子を分散させることにより得られる、表面に反応性官能基bを有する無機微粒子。
上記(i)の反応性無機微粒子を用いる場合には、有機成分含量が少なくても膜強度を向上できるというメリットがある。
【0113】
上記(i)の反応性無機微粒子に用いられる上記表面修飾化合物は、カルボキシル基、酸無水物基、酸塩化物基、酸アミド基、エステル基、イミノ基、ニトリル基、イソニトリル基、水酸基、チオール基、エポキシ基、第一級、第二級及び第三級アミノ基、Si−OH基、シランの加水分解性残基、又はβ−ジカルボニル化合物のようなC−H酸基等の、分散条件下において上記無機微粒子の表面に存在する基と化学結合可能な官能基を有する。ここでの化学結合は、好ましくは、共有結合、イオン結合又は配位結合が含まれるが、水素結合も含まれる。配位結合は錯体形成であると考えられる。例えば、ブレンステッド又はルイスに従う酸性/塩基反応、錯体形成又はエステル化が、上記表面修飾化合物の官能基と無機微粒子表面の基の間で生じる。上記(i)の反応性無機微粒子に用いられる上記表面修飾化合物は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0114】
上記表面修飾化合物は通常、無機微粒子の表面の基との化学結合に関与できる少なくとも1つの官能基(以下、第1の官能基という)に加えて、当該官能基を介して上記表面修飾化合物に結びついた後に、無機微粒子に新たな特性を付与する分子残基を有する。分子残基又はその一部は疎水性又は親水性であり、例えば、無機微粒子を安定化、融和化、又は活性化させる。
例えば、疎水性分子残基としては、不活性化又は反発作用をもたらす、アルキル、アリール、アルカリル、アラルキル又はフッ素含有アルキル基等が挙げられる。親水性基としてはヒドロキシ基、アルコキシ基又はポリエステル基等が挙げられる。
【0115】
反応性無機微粒子が前記バインダー成分と反応できるように表面に導入される反応性官能基bは、当該バインダー成分に応じて、適宜選択される。当該反応性官能基bとしては、重合性不飽和基が好適に用いられ、好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合及びエポキシ基等が挙げられる。
【0116】
上記表面修飾化合物の上記分子残基中に、前記バインダー成分と反応できる反応性官能基bが含まれる場合には、上記表面修飾化合物中に含まれる第1の官能基を無機微粒子表面に反応させることによって、上記(i)の反応性無機微粒子の表面にバインダー成分と反応できる反応性官能基bを導入することが可能である。例えば、第1の官能基のほかに、更に重合性不飽和基を有する表面修飾化合物が、好適なものとして挙げられる。
【0117】
一方で、上記表面修飾化合物の上記分子残基中に、第2の反応性官能基を含有させ、当該第2の反応性官能基を足掛かりにして、上記(i)の反応性無機微粒子の表面にバインダー成分と反応できる反応性官能基bが導入されても良い。例えば、第2の反応性官能基として水酸基及びオキシ基のような水素結合が可能な基(水素結合形成基)を導入し、当該微粒子表面上に導入された水素結合形成基に、更に別の表面修飾化合物の水素結合形成基が反応することにより、バインダー成分と反応できる反応性官能基bを導入することが好ましい。すなわち、表面修飾化合物として、水素結合形成基を有する化合物と、重合性不飽和基などのバインダー成分と反応できる反応性官能基bと水素結合形成基を有する化合物とを併用して用いることが好適な例として挙げられる。水素結合形成基の具体例としては、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、グリシジル基、アミド基、といった官能基、もしくはアミド結合を示すものである。ここで、アミド結合とは、−NHC(O)や>NC(O)−を結合単位に含むものを示す旨である。本発明の表面修飾化合物に用いられる水素結合形成基としては、中でもカルボキシル基、水酸基、アミド基が好ましい。
【0118】
上記(i)の反応性無機微粒子に用いられる上記表面修飾化合物は500以下、より好ましくは400、特に200を超えない分子量を有する。このような低分子量を有するため、無機微粒子表面を急速に占有し、無機微粒子同士の凝集を妨げることが可能であると推定される。
【0119】
上記(i)の反応性無機微粒子に用いられる上記表面修飾化合物は、表面修飾のための反応条件下で好ましくは液体であり、分散媒中で溶解性又は少なくとも乳化可能であるのが好ましい。中でも分散媒中で溶解し、分散媒中で離散した分子又は分子イオンとして一様に分布して存在することが好ましい。
【0120】
飽和又は不飽和カルボン酸としては、1〜24の炭素原子を有しており、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、クエン酸、アジピン酸、琥珀酸、グルタル酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びステアリン酸、並びに対応する酸無水物、塩化物、エステル及びアミド、例えばカプロラクタム等が挙げられる。また、不飽和カルボン酸を用いると、重合性不飽和基を導入することができる。
【0121】
好ましいアミンの例は、化学式Q3−nNH(n=0,1又は2)を有するものであり、残基Qは独立して、1〜12、特に1〜6、特別好ましくは1〜4の炭素原子を有するアルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル及びブチル)、並びに6〜24の炭素原子を有するアリール、アルカリル又はアラルキル(例えば、フェニル、ナフチル、トリル及びベンジル)を表す。また、好ましいアミンの例としては、ポリアルキレンアミンが挙げられ、具体例は、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、アニリン、N−メチルアニリン、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、トルイジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンである。
【0122】
好ましいβ−ジカルボニル化合物は4〜12、特に5〜8の炭素原子を有するものであり、例えば、ジケトン(アセチルアセトンなど)、2,3−ヘキサンジオン、3,5−ヘプタンジオン、アセト酢酸、アセト酢酸−C−C−アルキルエステル(アセト酢酸エチルエステルなど)、ジアセチル及びアセトニルアセトンが挙げられる。
アミノ酸の例としては、β−アラニン、グリシン、バリン、アミノカプロン酸、ロイシン及びイソロイシンが挙げられる。
【0123】
好ましいシランは、少なくとも1つの加水分解性基又はヒドロキシ基と、少なくとも1つの非加水分解性残基を有する加水分解性オルガノシランである。ここで加水分解性基としては、例えば、ハロゲン、アルコキシ基及びアシルオキシ基が挙げられる。非加水分解性残基としては、反応性官能基bを有する及び/又は反応性官能基bを有しない非加水分解性残基が用いられる。また、フッ素で置換されている有機残基を少なくとも部分的に有するシランを使用しても良い。
【0124】
用いられるシランとしては特に限定されないが、例えば、CH=CHSi(OOCCH、CH=CHSiCl、CH=CHSi(OC、CH=CH−Si(OCOCH、CH=CH−CH−Si(OC、CH=CH−CH−Si(OOCCH、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GPTS)、γ−グリシジルオキシプロピルジメチルクロロシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTS)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−[N’−(2’−アミノエチル)−2−アミノエチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、2−[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]トリメトキシシラン、ビス−(ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ヒドロキシエチル−N−メチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン及び3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
上記シランカップリング剤としては、特に限定されず、公知のものを挙げることができ、例えば、KBM−502、KBM−503、KBE−502、KBE−503(商品名、いずれも、信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。
【0125】
官能基を有する金属化合物としては、元素周期表の第1群III〜V及び/又は第2群II〜IVからの金属Mの金属化合物が挙げられる。ジルコニウム及びチタニウムのアルコキシド、M(OR)(M=Ti、Zr)、(式中、OR基の一部はβ−ジカルボニル化合物又はモノカルボン酸などの錯生成剤により置換される。)が挙げられる。重合性不飽和基を有する化合物(メタクリル酸など)が錯生成剤として使用される場合には、重合性不飽和基を導入することができる。
【0126】
分散媒として、水及び/又は有機溶媒が好適に使用される。特に好ましい分散媒は、蒸留された(純粋な)水である。有機溶媒として、極性及び非極性及び非プロトン性溶媒が好ましい。それらの例として、炭素数1〜6の脂肪族アルコール(特にメタノール、エタノール、n(ノルマル)−及びi(イソ)−プロパノール及びブタノール)等のアルコール、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン及びブタノン等のケトン類、酢酸エチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン及びテトラヒドロピランなどのエーテル類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド類;スルホラン及びジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類及びスルホン類;及びペンタン、ヘキサン及びシクロヘキサン等の脂肪族(任意にハロゲン化された)炭化水素類が挙げられる。これらの分散媒は混合物として使用することができる。
分散媒は、蒸留(任意に減圧下)により容易に除去できる沸点を有することが好ましく、沸点が200℃以下、特に150℃以下の溶媒が好ましい。
【0127】
(i)の反応性無機微粒子の調製に際し、分散媒の濃度は、通常40〜90、好ましくは50〜80、特に55〜75重量%である。分散液の残りは、未処理の無機微粒子及び上記表面修飾化合物から構成される。ここで、無機微粒子/表面修飾化合物の重量比は、100:1〜4:1とすることが好ましく、更に50:1〜8:1、より更に25:1〜10:1とすることが好ましい。
【0128】
(i)の反応性無機微粒子の調製は、好ましくは室温(約20℃)〜分散媒の沸点で行われる。特に好ましくは、分散温度は50〜100℃である。分散時間は、特に使用される材料のタイプに依存するが、一般に数分から数時間、例えば、1〜24時間である。
【0129】
(ii)被覆前の無機微粒子に導入する反応性官能基b、下記化学式(3)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物と、コアとなる無機微粒子としての金属酸化物微粒子とを結合することにより得られる、表面に反応性官能基bを有する無機微粒子。
化学式(3)
−Q−C(=Q)−Q
化学式(3)中、Qは、NH、O(酸素原子)、又はS(硫黄原子)を示し、QはO又はSを示し、Qは、NH又は2価以上の有機基を示す。
上記(ii)の反応性無機微粒子を用いる場合には、有機成分量が高まり、分散性、及び膜強度がより高まるという利点がある。
【0130】
まず、被覆前の無機微粒子に導入したい反応性官能基b、上記化学式(3)に示す基、及びシラノール基又は加水分解によってシラノール基を生成する基を含む化合物(以下、反応性官能基修飾加水分解性シランという場合がある。)について説明する。
上記反応性官能基修飾加水分解性シランにおいて、当該無機微粒子に導入したい反応性官能基bは、前記バインダー成分と反応可能なように適宜選択すれば特に限定されない。上述したような重合性不飽和基を導入するのに適している。
【0131】
上記反応性官能基修飾加水分解性シランにおいて、上記化学式(3)に示す基の[−Q−C(=Q)−]部分は、具体的には、[−O−C(=O)−]、[−O−C(=S)−]、[−S−C(=O)−]、[−NH−C(=O)−]、[−NH−C(=S)−]、及び[−S−C(=S)−]の6種である。これらの基は、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。中でも、熱安定性の観点から、[−O−C(=O)−]基と、[−O−C(=S)−]基及び[−S−C(=O)−]基の少なくとも1種を併用することが好ましい。前記化学式(3)に示す基[−Q−C(=Q)−Q−]は、分子間において水素結合による適度の凝集力を発生させ、硬化物にした場合、優れた機械的強度、基材との密着性及び耐熱性等の特性を付与することが可能になると考えられる。
【0132】
また、加水分解によってシラノ−ル基を生成する基としては、ケイ素原子上にアルコキシ基、アリールオキシ基、アセトキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等を有する基を挙げることができ、アルコキシシリル基又はアリールオキシシリル基が好ましい。シラノール基又は、加水分解によってシラノ−ル基を生成する基は、縮合反応又は加水分解に続いて生じる縮合反応によって、金属酸化物微粒子と結合することができる。
【0133】
上記反応性官能基修飾加水分解性シランの好ましい具体例としては、例えば、下記化学式(4)及び(5)に示す化合物を挙げることができ、化学式(5)に示す化合物がより好ましく用いられる。
【0134】
【化5】

【0135】
【化6】

【0136】
化学式(4)及び(5)中、R、Rは同一でも異なっていてもよいが、水素原子又はCからCのアルキル基若しくはアリール基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、フェニル、キシリル基等を挙げることができる。ここでmは1、2又は3である。
[(RO)3ーmSi−]で示される基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリフェノキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルメトキシシリル基等を挙げることができる。このような基のうち、トリメトキシシリル基又はトリエトキシシリル基等が好ましい。
【0137】
化学式(4)及び(5)中、RはCからC12の脂肪族又は芳香族構造を有する2価の有機基であり、鎖状、分岐状又は環状の構造を含んでいてもよい。そのような有機基としては例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキサメチレン、シクロヘキシレン、フェニレン、キシリレン、ドデカメチレン等を挙げることができる。これらのうち好ましい例は、メチレン、プロピレン、シクロヘキシレン、フェニレン等である。
【0138】
化学式(4)中、Rは2価の有機基であり、通常、分子量14から10,000、好ましくは、分子量76から500の2価の有機基の中から選ばれる。例えば、ヘキサメチレン、オクタメチレン、ドデカメチレン等の鎖状ポリアルキレン基;シクロヘキシレン、ノルボルニレン等の脂環式又は多環式の2価の有機基;フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、ポリフェニレン等の2価の芳香族基;及びこれらのアルキル基置換体、アリール基置換体を挙げることができる。また、これら2価の有機基は炭素及び水素原子以外の元素を含む原子団を含んでいてもよく、ポリエーテル結合、ポリエステル結合、ポリアミド結合、ポリカーボネート結合、さらには前記化学式(3)に示す基を含むこともできる。
【0139】
化学式(4)及び(5)中、Rは(n+1)価の有機基であり、好ましくは鎖状、分岐状又は環状の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基の中から選ばれる。
【0140】
化学式(4)及び(5)中、Y’は反応性官能基bを有する1価の有機基を示す。上述のような反応性官能基bそのものであっても良い。例えば、反応性官能基bを重合性不飽和基から選択する場合、(メタ)アクリロイル(オキシ)基、ビニル(オキシ)基、プロペニル(オキシ)基、ブタジエニル(オキシ)基、スチリル(オキシ)基、エチニル(オキシ)基、シンナモイル(オキシ)基、マレエート基、(メタ)アクリルアミド基等を挙げることができる。また、nは好ましくは1〜20の正の整数であり、さらに好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜5である。
【0141】
本発明で用いられる反応性官能基修飾加水分解性シランの合成は、例えば、特開平9−100111号公報に記載された方法を用いることができる。すなわち、例えば、重合性不飽和基を導入したい場合、(イ)メルカプトアルコキシシランと、ポリイソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応可能な活性水素基含有重合性不飽和化合物との付加反応により行うことができる。また、(ロ)分子中にアルコキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物と、活性水素基含有重合性不飽和化合物との直接的反応により行うことができる。さらに、(ハ)分子中に重合性不飽和基及びイソシアネート基を有する化合物と、メルカプトアルコキシシラン又はアミノシランとの付加反応により直接合成することもできる。
【0142】
(ii)の反応性無機微粒子の製造においては、反応性官能基修飾加水分解性シランを別途加水分解操作を行った後、これと無機微粒子を混合し、加熱、攪拌操作を行う方法、もしくは反応性官能基修飾加水分解性シランの加水分解を無機微粒子の存在下に行う方法、また、他の成分、例えば、多価不飽和有機化合物、単価不飽和有機化合物、放射線重合開始剤等の存在下、無機微粒子の表面処理を行う方法を選ぶことができるが、反応性官能基修飾加水分解性シランの加水分解を無機微粒子の存在下行う方法が好ましい。(ii)の反応性無機微粒子を製造する際、その温度は、通常20℃以上150℃以下であり、また処理時間は5分〜24時間の範囲である。
【0143】
加水分解反応を促進するため、触媒として酸、塩もしくは塩基を添加してもよい。酸としては有機酸及び不飽和有機酸;塩基としては3級アミン又は4級アンモニウムヒドロキシドが好適な物として挙げられる。これら酸もしくは塩基触媒の添加量は反応性官能基修飾加水分解性シランに対して0.001〜1.0重量%、好ましくは0.01〜0.1重量%である。
【0144】
反応性無機微粒子としては、分散媒を含有しない粉末状の微粒子を用いてもよいが、分散工程を省略でき、生産性が高い点から微粒子を溶剤分散ゾルとしたものを用いることが好ましい。
【0145】
(その他の成分)
ハードコート層硬化性樹脂組成物には、上記成分のほかに、更に溶剤、重合開始剤、帯電防止剤、防眩剤等を適宜添加することもできる。更に、反応性又は非反応性レベリング剤、各種増感剤等の各種添加剤が混合されていても良い。帯電防止剤及び/又は防眩剤を含む場合には、ハードコート層に、更に帯電防止性及び/又は防眩性を付与できる。
【0146】
(溶剤)
前記バインダー成分の種類、量によっては、液状媒体としても機能し得ることがあるので、溶剤を用いなくてもハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗工できる場合がある。従って、適宜、固形成分を溶解分散し、濃度を調整して、塗工性に優れたハードコート層用硬化性樹脂組成物を調製するために溶剤を使用すれば良い。
【0147】
溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール(IPA)、ノルマルブタノール、イソブタノール、メチルグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、メチルグリコールアセテート、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類;蟻酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ニトロメタン、N―メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物;ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル類;塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、テトラクロルエタン等のハロゲン化炭化水素;ジメチルスルホキシド、炭酸プロピレン等のその他の物;又はこれらの混合物が挙げられる。
ハードコートフィルムの硬度を向上できる点から、MIBK、IPA、ノルマルブタノール及びPGMEが好ましく用いられる。
また、透明基材フィルムがセルローストリアセテートフィルム(TACフィルム)の場合、密着性を向上できる点からMEK、酢酸メチル、酢酸エチル、シクロヘキサノン及びアセトンが好ましく用いられる。
【0148】
(重合開始剤)
上記ラジカル重合性官能基やカチオン重合性官能基の開始又は促進させるために、必要に応じてラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等を適宜選択して用いても良い。これらの重合開始剤は、光照射及び/又は加熱により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
【0149】
ラジカル重合開始剤は、光照射及び/又は加熱によりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。例えば、光ラジカル重合開始剤としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N−アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N−アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられ、更に具体的には、1,3−ジ(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラキス(tert−ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3−フェニル−5−イソオキサゾロン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名イルガキュア651、チバ・ジャパン(株)製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名イルガキュア184、チバ・ジャパン(株)製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(商品名イルガキュア369、チバ・ジャパン(株)製)、ビス(η−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)(商品名イルガキュア784、チバ・ジャパン(株)製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0150】
また、カチオン重合開始剤は、光照射及び/又は加熱によりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能であれば良い。カチオン重合開始剤としては、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η−ベンゼン)(η−シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示され、さらに具体的には、ベンゾイントシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0151】
ラジカル重合開始剤としても、カチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示され、更に具体的には、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム等のスルホニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のスルホニウム塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等の2,4,6−置換−1,3,5トリアジン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0152】
(帯電防止剤)
帯電防止剤の具体例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜第3アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などのアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系などの両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系などのノニオン性化合物、スズ及びチタンのアルコキシドのような有機金属化合物及びそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられ、さらに上記に列記した化合物を高分子量化した化合物が挙げられる。また、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、又は金属キレート部を有し、且つ、電離放射線により重合可能なモノマー又はオリゴマー、或いは電離放射線により重合可能な重合可能な官能基を有する且つ、カップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物もまた帯電防止剤として使用できる。
【0153】
また、前記帯電防止剤の他の例としては、導電性微粒子が挙げられる。当該導電性微粒子の具体例としては、金属酸化物からなるものを挙げることができる。そのような金属酸化物としては、ZnO(屈折率1.90、以下、カッコ内の数値は屈折率を表す。)、CeO(1.95)、Sb(1.71)、SnO(1.997)、ITOと略して呼ばれることの多い酸化インジウム錫(1.95)、In(2.00)、Al(1.63)、アンチモンドープ酸化スズ(略称;ATO、2.0)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(略称;AZO、2.0)等を挙げることができる。前記導電性微粒子の平均粒径は、0.1nm〜0.1μmであることが好ましい。かかる範囲内であることにより、前記導電性微粒子をバインダーに分散した際、ヘイズがほとんどなく、全光線透過率が良好な高透明な膜を形成可能な組成物が得られる。
【0154】
(防眩剤)
防眩剤としては微粒子が挙げられ、微粒子の形状は、真球状、楕円状などのものであってよく、好ましくは真球状のものが挙げられる。また、微粒子は無機系、有機系のものが挙げられるが、好ましくは有機系材料により形成されてなるものが好ましい。微粒子は、防眩性を発揮するものであり、好ましくは透明性のものがよい。微粒子の具体例としては、プラスチックビーズが挙げられ、より好ましくは、透明性を有するものが挙げられる。プラスチックビーズの具体例としては、スチレンビーズ(屈折率1.59)、メラミンビーズ(屈折率1.57)、アクリルビーズ(屈折率1.49)、アクリル−スチレンビーズ(屈折率1.54)、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズなどが挙げられる。微粒子の添加量は、樹脂組成物100重量部に対し、2〜30重量部、好ましくは10〜25重量部程度である。
【0155】
(屈折率調整用粒子)
本発明においては、ハードコート層用硬化性樹脂組成物に屈折率調整用の粒子を添加して、ハードコート層の屈折率を調整しても良い。例えば、高屈折率微粒子を添加することにより、ハードコート層の屈折率を高め、高屈折率ハードコート層となる。
屈折率調整用の粒子としては、例えば、粒径が100nm以下の粒子を挙げることができる。このような粒子としては、酸化亜鉛(屈折率:1.90)、チタニア(屈折率:2.3〜2.7)、セリア(屈折率:1.95)、スズドープ酸化インジウム(屈折率:1.95)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)(屈折率:1.80)、イットリア(屈折率:1.87)、ジルコニア(屈折率:2.0)からなる群から選ばれた1種以上を挙げることができる。
【0156】
また、本発明に係る光学フィルムにおいては、上記ハードコート層だけでなく、上記ハードコート層と同一又は異なる第2のハードコート層を設けても良い。
【0157】
3.その他の層
本発明に係るハードコートフィルムは、上記したように透明基材フィルム及びハードコート層により基本的には構成されてなる。しかしながら、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、ハードコートフィルムとしての機能又は用途を加味して、上記ハードコート層の透明基材フィルム側又は透明基材フィルムとは反対側に、更に下記のような一又は二以上の層を設けてもよい。
【0158】
2−2−2.帯電防止層
帯電防止層は、帯電防止剤と硬化性樹脂を含む帯電防止層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。帯電防止層は前記ハードコート層の透明基材フィルム側又は透明基材フィルムとは反対側に設けることができる。帯電防止層の厚さは、30nm〜1μm程度であることが好ましい。
【0159】
帯電防止剤としては、上記ハードコート層の帯電防止剤で挙げたものと同様のものを用いることができる。
【0160】
帯電防止層用硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂としては、公知のものを適宜選択して、1種又は2種以上用いることができる。
【0161】
2−2−3.防汚層
本発明の好ましい態様では、光学フィルム最表面の汚れ防止を目的として防汚層を設けてもよい。防汚層は、光学フィルムに対して防汚性と耐擦傷性のさらなる改善を図ることが可能となる。防汚層は、防汚剤と硬化性樹脂組成物を含む防汚層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。
【0162】
防汚層用硬化性樹脂組成物に含まれる防汚剤や硬化性樹脂は、公知の防汚剤及び硬化性樹脂から適宜選択して1種又は2種以上を用いることができる。
【0163】
2−2−4.低屈折率層
低屈折率層は、当該層の透明基材フィルム側に隣接する層よりも屈折率が低い層であり、低屈折率層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなる。低屈折率層は前記ハードコート層の透明基材フィルム側又は透明基材フィルムとは反対側に設けることができる。当該低屈折率層用硬化性樹脂組成物には、前記隣接する層よりも屈折率が低くなるように、適宜公知の低屈折率硬化性樹脂や微粒子を用いることができる。
【0164】
2−2−5.中〜高屈折率層(屈折率が1.46〜2.00の屈折率層)
屈折率が1.46〜2.00の中〜高屈折率層を前記ハードコート層の透明基材フィルム側又は透明基材フィルムとは反対側に設け、当該中〜高屈折率層の透明基材フィルムとは反対側に隣接する層を上記低屈折率層等の中〜高屈折率層よりも屈折率の低い層にすることによりハードコートフィルムの反射防止性を高めることができる。
【0165】
2−3.その他の機能層
その他の機能層は、上記透明基材フィルムと光学機能層の間に設けられる層であって、得られる光学フィルムの用途、又は性能等を考慮して、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜選択して設けることができる。
その他の機能層としては、例えば、ハードコート層、帯電防止層、及び中〜高屈折率層等が挙げられる。これらその他の機能層が光学機能層と同種の層である場合、例えば、光学機能層がハードコート層で、その他の機能層もハードコート層である場合は、当該2つのハードコート層は、組成又は膜厚等が同一であっても良く、異なっていても良い。
その他の機能層としてのハードコート層、帯電防止層、及び中〜高屈折率層は、上記光学機能層で挙げたものを用いることができるため、ここでの説明は省略する。
【実施例】
【0166】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。なお、実施例中、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
シリカ微粒子(1)として、日産化学工業(株)製、メタノールシリカゾル(SiO)、スノーテックス−ZL、平均粒径80nm、コロイダルシリカ、固形分30%液を用いた。
アンチモンドープ酸化スズとして、ザ・インクテック(株)製、ASHD−300S、平均粒径100nmを用いた。
酸化ジルコニウム(ZrO)として、日本電工(株)製、PCS−60、平均粒径30nmを用いた。
ペンタエリスリトールトリアクリレートとして、日本化薬(株)製、PET30を用いた。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとして、日本化薬(株)製、カヤラッドDPHAを用いた。
重合開始剤として、チバ・ジャパン(株)製、イルガキュア184を用いた。
顔料に親和性のあるブロック共重合体として、ビックケミー・ジャパン(株)製、ディスパービック 163を用いた。
透明基材フィルム(1)として、TACフィルム(1)(厚み40μm、トリアセチルセルロース樹脂フィルム、コニカミノルタ(株)製)を用いた。
透明基材フィルム(2)として、TACフィルム(2)(厚み80μm、トリアセチルセルロース樹脂フィルム、商品名:TF80UL、富士フィルム(株)製)を用いた。
各化合物の略語はそれぞれ、以下の通りである。
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
MIBK:メチルイソブチルケトン
ZrO:酸化ジルコニウム
ATO:アンチモンドープ酸化スズ
TAC:トリアセチルセルロース
【0167】
後述する実施例において行った耐擦傷性及び鉛筆硬度の評価方法は以下の通りである。
【0168】
(1)耐擦傷性
光学フィルムを学振型磨耗堅牢度試験機(テスター産業(株)製、AB−301)にセットし、スチールウール(ボンスター#0000)で異なる荷重下で10往復擦り、傷がつかない最も高い荷重を測定した。傷は目視で確認した。
【0169】
(2)鉛筆硬度測定
異なる硬度の鉛筆を用い、500g荷重下でJIS K5600−5−4(1999)に準拠した試験方法で行い、傷がつかない最も硬度の高い鉛筆を測定した。傷は目視で確認した。
【0170】
(ハードコート層用硬化性樹脂組成物1の調製)
下記に示す組成の成分を配合して固形分50%のハードコート層用硬化性樹脂組成物1を調製した。
カヤラッドDPHA(バインダー成分):98部
イルガキュア184(重合開始剤):2部
MIBK:100部
【0171】
(反応性シリカ微粒子(1)の調製)
乾燥空気中、メルカプトプロピルトリメトキシシラン7.8部、ジブチルスズラウレート0.2部からなる溶液に対し、イソフォロンジイソシアネート20.6部を攪拌しながら50℃で1時間かけて滴下後、60℃で3時間攪拌した。これにペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)71.4部を30℃で1時間かけて滴下後、60℃で3時間加熱攪拌を行い、表面処理用化合物を合成した。
窒素空気下、メタノールシリカゾルを88.5部、前記表面処理用化合物8.5部、p−メトキシフェノール0.01部の混合溶液を60℃、4時間攪拌した。続いてこの混合溶液にメチルトリメトキシシラン3部を添加し、60℃、1時間攪拌した後、オルト蟻酸メチルエステル9部を添加し、さらに1時間、60℃で加熱攪拌することで、反応性シリカ微粒子(1)を得た。
【0172】
(ハードコート層用硬化性樹脂組成物2の調製)
下記に示す組成の成分を配合して固形分50%のハードコート層用硬化性樹脂組成物2を調製した。
反応性シリカ微粒子(1):固形分40部
DPHA(バインダー成分):58部
イルガキュア184(重合開始剤):2部
MIBK:100部
【0173】
(ハードコート層用硬化性樹脂組成物3の調製)
下記に示す組成の成分を配合して固形分50%のハードコート層用硬化性樹脂組成物3を調製した。
ASHD−300S(アンチモンドープ酸化スズ):固形分78部
カヤラッドDPHA(バインダー成分):20部
イルガキュア184(重合開始剤):2部
MIBK:100部
【0174】
(ハードコート層用硬化性樹脂組成物4の調製)
高屈折率微粒子として、酸化ジルコニウム、アニオン性の極性基を有する分散剤として、ディスパービック 163、及びバインダー成分としてDPHAを、ZrO:ディスパービック 163:DPHA=1.2:0.2:0.6の質量比となるように、マヨネーズ瓶に入れ、混合し、その混合物の4倍量のジルコニアビーズ(φ0.3mm)を媒体に用いて、ペイントシェーカーで10時間撹拌し、撹拌後にイルガキュア184を2部及びMIBKを加えて固形分45%のハードコート層用硬化性樹脂組成物4を得た。
【0175】
実施例1
厚さ40μmのTACフィルム(1)上にハードコート層用硬化性樹脂組成物1を、ドライ厚みで7μm塗工し、塗工面に表面粗さRa0.15nmのガラス板を接触させ、TACフィルム側より光量150mJ/cmで硬化させた。その後、前記ガラス板を剥離し、ハードコート層のTACフィルムとは反対側の面の表面粗さRaを0.25nmとした光学フィルムを得た。
【0176】
実施例2
実施例1において、ハードコート層用硬化性樹脂組成物1の代わりにハードコート層用硬化性樹脂組成物2を用いて、ドライ厚みで5μm塗工し、塗工面にクロムメッキした表面粗さRa0.15nmの金属板を接触させた以外は実施例1と同様にして、ハードコート層のTACフィルムとは反対側の面の表面粗さRaを0.50nmとした光学フィルムを得た。
【0177】
実施例3
実施例1において、透明基材フィルムをTACフィルム(1)の代わりに厚さ80μmのTACフィルム(2)を用い、ハードコート層用硬化性樹脂組成物1の代わりにハードコート層用硬化性樹脂組成物2を用いて、ドライ厚みで3μm塗工した以外は実施例1と同様にして、ハードコート層のTACフィルムとは反対側の面の表面粗さRaを0.72nmとした光学フィルムを得た。
【0178】
実施例4
実施例2において、ハードコート層用硬化性樹脂組成物2の代わりにハードコート層用硬化性樹脂組成物4を用いた以外は実施例2と同様にして、ハードコート層のTACフィルムとは反対側の面の表面粗さRaを0.80nmとした光学フィルムを得た。
【0179】
比較例1
実施例1において、ガラス板を接触させずに硬化させた以外は、実施例1と同様にして、ハードコート層のTACフィルムとは反対側の面の表面粗さRaを1.02nmとした光学フィルムを得た。
【0180】
比較例2
実施例2において、クロムメッキの金属板を接触させずに硬化させた以外は実施例2と同様にして、ハードコート層のTACフィルムとは反対側の面の表面粗さRaを1.48nmとした光学フィルムを得た。
【0181】
比較例3
実施例3において、ガラス板を接触させずに硬化させた以外は、実施例3と同様にして、ハードコート層のTACフィルムとは反対側の面の表面粗さRaを120nmとした光学フィルムを得た。
【0182】
比較例4
クロムメッキの金属板を接触させずに硬化させた以外は、実施例4と同様にして、ハードコート層のTACフィルムとは反対側の面の表面粗さRaを275nmとした光学フィルムを得た。
【0183】
比較例5
ハードコート層用硬化性樹脂組成物1の塗工面に接触させる金属板をビーズショット法により、粒径50μmのアルミナ粒子を高速の気体とともに金属板に吹き付けた後、クロムメッキをし、表面粗さRa300nmにした金属板にした以外は実施例1と同様にして、ハードコート層のTACフィルムとは反対側の面の表面粗さRaを345nmとした光学フィルムを得た。
【0184】
比較例6
ハードコート層用硬化性樹脂組成物1の塗工面に接触させるガラス板をビーズショット法により、粒径5μmのアルミナ粒子を高速の気体とともに金属板に吹き付けた後、クロムメッキをし、表面粗さRa20nmにした金属板にした以外は実施例1と同様にして、ハードコート層のTACフィルムとは反対側の面の表面粗さRaを32nmとした光学フィルムを得た。
【0185】
上記実施例1〜4及び比較例1〜6で得られた各光学フィルムの耐擦傷性及び鉛筆硬度を評価した結果を表1に示す。
表1より、実施例では表面粗さRaが0.15nmのガラス板を用いているため、微粒子を添加していない実施例1ではハードコート層のTACフィルムとは反対側の面の表面粗さRaが0.25nmと小さく、平均粒径120nm、100nm及び30nmの微粒子を添加した実施例2〜4においても表面粗さRaはそれぞれ、0.50nm、0.72nm及び0.80nmと小さく抑えられた。表面粗さRaが小さいため、凸部が小さく、スチールウールや鉛筆等の硬いものがハードコート層に接触しても、凸部への引っかかりが少なく、局所的に過大な力が加わらないため、光学フィルム全体として硬度を維持しながら優れた耐擦傷性を示した。
【0186】
しかし、ガラス板を用いて平滑化しなかった比較例1〜4ではハードコート層のTACフィルムとは反対側の面の表面粗さRaが1.02nm〜275nmと大きく、それぞれ、実施例1〜4に比べて耐擦傷性が低下した。
また、ガラス板を用いた比較例5及び6でも、当該ガラス板の表面粗さRaが300nm及び20nmと大きいため、ハードコート層のTACフィルムとは反対側の面の表面粗さRaが十分に低減できず、耐擦傷性が実施例1に比べて低くなった。
【0187】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】図1は、本発明に係る光学フィルムの製造方法の一例を模式的に示した図である。
【図2】図2は、本発明に係る光学フィルムの製造方法の他の一例を模式的に示した図である。
【図3】図3は、本発明に係る光学フィルムの層構成の一例を模式的に示した図である。
【図4】図4は、本発明に係る光学フィルムの層構成の他の一例を模式的に示した図である。
【図5】図5は、本発明に係る光学フィルムの層構成の他の一例を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0189】
1 光学フィルム
10 透明基材フィルム
20 塗膜
30 ガラス又は金属
40 平滑面
50 光照射
60 硬化した膜
70 ハードコート層
80 帯電防止層
90 低屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材フィルムの一面側の最表面に光学機能層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜を形成する工程、
前記塗膜の透明基材フィルムとは反対側の面に表面粗さRaが10nm以下の平滑面を接触させる工程、及び、
前記塗膜に前記平滑面を接触させた状態で当該塗膜を硬化させた後、当該平滑面を剥離し、表面粗さRaが1nm以下の光学機能層を形成する工程を含むことを特徴とする、光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記平滑面は、ガラス又は金属からなる平滑面であることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記塗膜を形成する工程において、前記光学機能層用硬化性樹脂組成物が平均粒径12nm〜1μmの微粒子を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記光学機能層用硬化性樹脂組成物がハードコート層用硬化性樹脂組成物であり、前記光学機能層がハードコート層であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
透明基材フィルムの一面側の最表面に光学機能層を設けた光学フィルムであって、当該光学機能層の透明基材フィルムとは反対側の面の表面粗さRaが1nm以下であることを特徴とする、光学フィルム。
【請求項6】
前記光学機能層に平均粒径12nm〜1μmの微粒子が含まれていることを特徴とする、請求項5に記載の光学フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−85864(P2010−85864A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256788(P2008−256788)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】