説明

光学式角度センサ

【課題】パン方向、チルト方向、更には、ROTATION方向の回転角度を広範囲で、磁場影響を受けずに、高精度で小型の光学式角度センサを提供すること。
【解決手段】測定対象部に設けられた2色以上の色パターンと、前記色パターン上に照射する光源と、前記色パターンの透過又は反射光を前記色パターンに集光する光学レンズと、前記光学レンズで集光された光強度検出する多画素光センサを備え、第一色パターンのPan方向の移動量を測定しPan方向角度を算出し、第二色パターンを第一色パターンから分離検出してチルト方向の移動量を測定しチルト方向角度を算出することで、色パターンを測定対象の回転に応じ回転する球面上に設置し、その所定位置を観測することで、広角度範囲で高精度で小型で測定可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Pan、Tilt方向の2軸方向や、Pan、Tilt、Rotationの3軸方向に回転するカメラユニットや、ロボットの姿勢制御コントローラや、ゲーム機のジョイスティックに用いられる角度センサに関するものである。
【0002】
特に、磁気影響がなく、測定角度範囲が広く、測定精度も高い、絶対位置計測が可能な光学式角度センサに関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来の角度センサとしては、例えば以下の方式が提案されている。
【0004】
例えば特許文献1に示すように、測定対象物であるシャフトの円周方向にカラーブロックを貼り付け、そのカラーブロックに光を照射し、その反射光変化から回転角度を算出するものが提案されている。
【0005】
また、特許文献2に示すように、測定対象物である回転体に、一体となった色パターンを装着し、回転角度に依存した色パターンの透過光量を検出し、回転角度を測定するものが提案されている。
【0006】
しかし、これらは、1軸の回転方向の角度を測定することが可能であるが、2軸同時に回転角度が変化するような場合には使用できない。
【0007】
そこで、以下に示すような2軸角度センサが提案されている。
【0008】
例えば、光位置センサであるPSD素子 (Position Sensitive Detector)を用いた方式である。
【0009】
測定対象物へ光を照射し、その反射光をPSD素子で受光し、受光面上での光スポットの位置を検出することで、PAN、Tilt方向の角度を算出するものである。
【0010】
測定対象物の回転角度変化に対応して、PSD素子に入射する光の位置が変化するために、位置信号を検出することで、回転角度を算出することができるものである。
【0011】
近年、Pan、Tilt方向の2軸の角度が測定できる角度センサに加えて、更に回転方向も測定できる3軸の角度センサの実用化が期待されている。
【0012】
そこで、従来の2軸角度センサや1軸の角度センサを組み合わせて3軸の角度検出を行なうことが考えられるが、原理上困難であるので、以下に示すような新しい方式が提案されている。
【0013】
例えば、特許文献3に記載されているように、誘導起電力を検出する方式である。
【0014】
すなわち、球状の外面を持った半球面体部の外面に、巻回された第1コイルと、前記半球面体部が回転自在に係合する受け部材の凹所を囲んで設けられた第2コイルのいずれか一方に、互いに周波数の異なる電圧を供給し交代磁場を発生させ、これにより発生した誘導起電力を周波数毎に検出し、3軸の回転角度を算出する方式である。
【0015】
また、特許文献4に示されているように、回折角度の変化を利用する方式も提案されている。
【0016】
すなわち、検出対象面に矩形格子を設け、この矩形格子に光を照射することで、0次回折光、±1次回折光が発生する。この回折光を、4分割フォトダイオード上に集光させて、各フォトダイオード上に集光するビームスポットが、矩形格子の角度変化に対応して移動することに伴う信号量変化を検出することで、3軸角度測定する方式である。
【0017】
更には、特許文献5に示されているように、磁界強度を検出する方式も提案されている。
【0018】
すなわち、回転体に2つの磁石を設け、複数の磁電変換素子を回転体から隔離して設置することにより、回転体からの磁界強度を複数の磁電変換素子で検出することで、回転角度を検出する方式である。
【0019】
また、特許文献6にも示されているように、加速度、ジャイロ、磁気センサを複合させて、正確に回転角度を検出する方式も提案されている。
【0020】
すなわち、3軸の特定位置に、それぞれ加速度、ジャイロ、磁気センサを設け、3軸回転角度を算出する方式である。
【0021】
また、特許文献7にも示されているような、モアレ縞を用いる方式も提案されている。
【0022】
すなわち、測定対象に設けた格子に、測定対象から離れて設けられた光源から、光を照射することで発生したモアレ縞の変化を検出することで、3軸角度を算出する方式である。
【0023】
また、特許文献8に示すように、測定対象物であるターゲットマーカーの第1の色マーカーを検出して粗位置を算出し、更に第1〜3の色マーカーを検出して微位置を算出し、位置情報を得るとういう提案もなされている。
【特許文献1】特開2005−134390号公報(第28頁、図3)
【特許文献2】特開平11−264743号公報(第5頁、図3)
【特許文献3】特許第3218327号公報(第5頁、図2)
【特許文献4】特開2007−218842号公報(第11頁、図1)
【特許文献5】特開2007−248069号公報(第13頁、図1)
【特許文献6】特許第3797661号公報(第8頁、図1)
【特許文献7】特許第3698796号公報(第19頁、図20)
【特許文献8】特許第3626400号公報(第11頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、前記従来の構成では、特に、磁気影響がなく、測定角度範囲が広い上に測定精度も高く、絶対位置計測が可能な角度センサを実現する事は困難であった。
【0025】
例えば、2軸の角度測定のためにPSD素子を用いた場合について説明する。
【0026】
PSD素子は、素子上にスポット光が照射された場合に、その重心位置を2つの電極へ流れる電流比を計測し算出するものであるが、スポットの形状が変化した場合に、測定位置が変化するとともに、温度変化が起った場合にも計測値が変化するため、位置検出精度が悪く、高精度な角度計測が困難であるという課題を有していた。
【0027】
また、例えば特許文献1や特許文献2に示した1軸の角度センサを複数個用いて、2軸や3軸の回転角度を測定する方法が考えられる。
【0028】
しかし、2軸もしくは3軸の回転が独立に動くような場合は、各軸に個別に角度センサを複数個設けることは、物理構成上困難であり、測定できないという課題を有していた。
【0029】
また、3軸の角度測定をする場合にも、以下に示す課題を有している。
【0030】
例えば従来の特許文献3の第5頁の図2にも示された誘導起電力を検出する方式や、特許文献5の第13頁、図1に示したような、磁石と磁気センサを用いた方式や特許文献6の第8頁、図1に示されている磁気センサを用いた方式は、磁気の影響を受けやすく、カメラやロボット等に使用されるモーターやアクチュエータの磁石やコイル磁場の影響を受け、測定信号が変化してしまい、正確な測定ができないという課題を有していた。
【0031】
また、磁気を用いない方式として、例えば光を用いた方式が提案されている。
【0032】
例えば、特許文献4に開示されているように、回折光を4分割のフォトディテクターで受光する方式は、磁気の影響を受けないものの、測定の範囲が極めて狭いという課題を有していた。
【0033】
すなわち、測定対象部に設定された矩形格子の回転角度が大きくなった場合に、矩形格子からの回折光の反射角度も大きくなり、回折光が、4分割のフォトダイオードから大きくずれて、検出可能なフォトダイオード部分からはみ出してしまい、信号を検出できなくなってしまうという課題を有していた。
【0034】
一般にこれら角度センサは少なくとも10度以上の角度変化を測定する事が要望されており、これら従来の方式では要求に答える事は出来なかった。
【0035】
広い角度範囲で測定できる方式としては、例えば、特許文献7に開示されているように、モアレ縞を用いる方式が提案されている。この方式は、特許文献7 第19頁、図20にも示しているように測定対象からはなれた位置に光源を設けて、測定対象部に設けられた光センサでモアレ縞の変化を観察することで、入射角度変化を広範囲にわたって検出するものである。
【0036】
しかし、3軸の回転角度を測定するには、複数個の光源を、測定対象から離れた位置に設置する必要があると共に、更に測定対象部には3つの格子ペアと3つの光センサを必要とするため、測定装置としては、非常に大掛かりな物となり、小型化は困難であるという課題を有していた。
【0037】
更に、広い角度範囲を測定する方式としては、特許文献8に示した方法が提案されている。すなわち、対象物にターゲットマーカーを設置し、その3次元位置X-Y-Zを、ステレオカメラを用いて撮像した画像を予め準備したカラーパターンとマッチングすることにより算出するものである。
【0038】
しかし、本方式ではカメラ光学系を用いて、カメラより離れた対象物に設置したターゲットマーカーのX-Y-Z座標を算出することはできるが、PAN-Tilt-Rotation方向の回転角度を、高精度に検出するのが困難であるという課題を有していた。また、ステレオカメラが必要なため装置の小型化にも課題を有していた。
【0039】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、広い角度範囲で、磁気影響を受けない小型の光学式角度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0040】
前記従来の課題を解決するために、本発明の光学式角度センサは、測定対象部に設けられた少なくとも2色以上からなる色パターンと、前記色パターン上に光を照射する光源と、前記色パターンを透過もしくは反射した光を前記色パターンに集光する光学レンズと、前記光学レンズで集光された光の強度を検出する多画素光センサとを備え、第一の色成分からなる色パターンのPan方向の移動量を測定してPan方向角度を算出し、第二の色成分からなる色パターンを第一の色パターンから分離検出してTilt方向の移動量を測定してTilt方向角度を算出するものである。
【0041】
本構成によって、広い角度範囲で、高精度な磁気影響を受けない小型の2軸光学式角度センサを提供できる。
【0042】
また、本発明の光学式角度センサは、測定対象部に設けられた少なくとも3色以上の色パターンと、前記色パターン上に光を照射する光源と、前記色パターンを透過もしくは反射した光を前記色パターンに集光する光学レンズと、前記光学レンズで集光された光の強度を検出する多画素光センサとを備え、第一の色成分からなる色パターンのPan方向の移動量を測定してPan方向角度を算出し、第二の色成分からなる色パターンを分離検出してTilt方向の移動量を測定してTilt方向角度を算出し、第三の色成分からなる色パターンを分離検出してRotation方向の回転角度を検出してRotation方向角度を算出するものである。
【0043】
本構成によって、広い角度範囲で、高精度な磁気影響を受けない小型の3軸光学式角度センサを提供できる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の光学式角度センサによれば、広い角度範囲で測定可能で、しかも磁気影響を受けない高精度な小型の光学式角度センサを容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0046】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における光学式角度センサの概略図である。
【0047】
図1において、レンズユニット1は、例えば複数枚のレンズを鏡筒に組み込んだものである。
【0048】
これにより、図1には記載していないが、被写体の像を撮像素子部2上に結像することができる。
【0049】
撮像素子部2は例えばCMOSセンサを用いる。これにより被写体の映像を電気信号に変換され、別個設けられた画像処理装置で画像情報を得ることができる。
【0050】
レンズユニット1と撮像素子部2は一体となって設置されており、図には示していないが別途設けられた例えばVCM駆動アクチュエータにより、PAN、TILT、Rotation方向に駆動することができる。
【0051】
レンズユニット1の回転中心は特に限定するものでないが、図1に示すように多画素光センサ7の背面部のPAN、Tiltの回転軸が交差した点を回転中心に設定した場合を例に取り説明する。
【0052】
半球面体部3は、レンズユニット1の回転中心を中心点として、その形状が半球面体となるように設けられている。半球面体部3の材質は特に限定するものではなく、プラスティック、ガラス、金属等を用いる。
【0053】
半球面体部3上には、色パターン4が形成されている。色パターンの材料は特に限定するものではないが、顔料や染料が好ましい。
【0054】
色パターン4の形成方法としては、例えばインクジェット方式を用いる。ノズルを半球面体部へ向けて適切に噴射することで、所望の色パターン4を得ることができる。
【0055】
本発明は、半球面体材料に直接色パターン4を形成することに限定するものではなく、例えば、プラスティック等のフィルムに色パターンを形成したものを、半球面体部3上に貼り付けても構わない。
【0056】
光源5は例えば、LEDを用いる。本発明はLEDに限定するものではなく、LDもしくはハロゲンランプを用いても構わない。
【0057】
LEDとしては、例えば白色LEDを用いるのが好ましい。RGBの3色の色成分を有しており、半球面体部3上に設ける色パターンを、現状公知技術として用いられている、RGBの光の3原色やシアン、イエロー、マゼンタの補色を用いる事ができるため有用である。
【0058】
光源5は、計測部分である半球面体部3上に設けられた色パターンの頂点部分に向けて照射するのが好ましい。
【0059】
図では示していないが、光学レンズを用いて光源5からの光を集光し、半球面体部3上に照射すると、更に明るい照明ができるため好ましいといえる。
【0060】
多画素光センサ7は例えばCMOSセンサを用い、RGB画素を多数配列したものを用いる。高画素になると演算速度が遅くなるので、例えば30×30の900画素の多画素光センサ7を用いるのが好ましい。これにより例えば1KHz以上の高速の処理が容易に実現できる。
【0061】
レンズ6は、半球面体部3上の色パターンを高倍率で多画素光センサ7上に結像させる働きを有する。これにより高精度で、色パターンの変化を検出することができる。
【0062】
かかる構成によれば、光源4から出射した光を半球面体部3上に設けられた色パターンに照射することで、色パターン4がレンズ6により多画素光センサ7上に結像する。このときレンズユニット1と撮像素子部2がPAN方向に回転すると、半球面体部3上の色パターン4が移動すると同時に多画素光センサ7に結像する像は、図1に示したPAN方向に移動する。この移動量を検出することで、PAN方向の回転角度を算出することができる。
【0063】
次に、TILT方向の角度算出方法について説明する。レンズユニット1および撮像素子部2がTILT方向に回転すると、それらと一体的に形成された半球面体部3もTILT方向に回転する。
【0064】
この時、半球面体部3の中心は、レンズユニット1および撮像素子部2の回転中心に設定されているので、多画素光センサ7との距離は変化しない。これにより、半球面体部3上の色パターン4をボケない画像で多画素光センサ7上に再現できる。
【0065】
半球面体部3上の色パターン4がTILT方向に移動することで多画素光センサ7上に結像した色パターン4も移動する。図に示したようにTILT方向に移動する。この移動量を検出することで、TILT方向の回転角度を算出することができる。
【0066】
半球面体部3上の色パターン4は半球面体部3上に設定することが可能なので、最大±90度の範囲で回転角度測定が可能となる。
【0067】
また、レンズユニット1および撮像素子部2には、大掛かりな測定装置を設置する必要がなく、本発明では半球面体部3およびその上に設けられた色パターンを設けるだけで測定できる。
【0068】
これは、レンズユニット1および撮像素子部2等の駆動部分の質量付加を極力低減化できるとともに、測定対象に容易に取り付けることができるという点で、極めて有用といえる。
【0069】
なお、本実施の形態において、半球面体部3をレンズユニット1の回転中心に設置した、好ましい例について説明したが、必ずしも厳密な半球面体でなくても構わない。多画素光センサ7上に色パターンの像が結像すれば、移動方向が算出できる。
【0070】
図2に、色パターン4の一例を示す。図2(a)は半球面体部3上に設けられた色パターン4で、縦横の格子状のパターンとなっている。
【0071】
色パターン4は図2(b)と(c)に示すように縦と横方向のパターンで成り立っている。例えば図2(b)の縦縞のパターンが青色、図2(c)のパターンを赤色に設定されている。
【0072】
従って図2(a)は青、赤色からなる2色の色パターンを合成することで構成されている。
【0073】
色パターン(a)から、(b)および(c)へ分離する方法は、例えば、多画素光センサ7を用いて行う。多画素光センサ7の各画素をRGBのカラーフィルターを用いたものを使用することで、多画素光センサ7上に結像した色パターンを色分離することができる。すなわち、青成分の画素からの信号のみを検出することで(a)の青色のパターンが、赤成分の画素からの信号のみを検出することで(b)の赤色のパターンを検出することができる。
【0074】
なお、本発明では、多画素光センサ7で色分離を実施する例について述べたが、本発明はこれに限定するものではない。
【0075】
レンズ6と多画素光センサ7の間に、例えば赤、青の色を分離するダイクロイックフィルターを設けることで、(b)の赤色のパターンを反射させ、(a)の青色のパターンを透過させてそれぞれの色パターンを2個の多画素光センサ7で検出しても構わない。この時多画素光センサ7はカラーフィルターのないものを用いるのが好ましい。より、高感度で高画素数で測定することができる。
【0076】
また、本発明では色を赤色と青色を用いて説明したが、限定するものではない。赤色と緑色もしくは、青色と緑色の組み合わせを用いても構わない。また、単色光を複数用いても構わない。色パターンの各種パターンを、色分離できればなんら問題ない。
【0077】
図3は、レンズユニット1が回転した場合に、多画素光センサ7に結像した像が動く様子を示した図である。図3を用いて、角度検出する例について説明する。
【0078】
図3(a)は、ある時点でのPAN方向の角度を検出するための色パターンを示す。また(c)はTILT方向の角度変化を算出するための色パターンを示す。
【0079】
図1にも示したように、レンズユニット1がPAN方向に回転した場合、多画素光センサ7に結像する像は、図3(b)に示した方向にシフトして検出される。このシフト量は、角度変化量に対応しているので、予めシフト量と角度変化量との関係を把握しておくことで、シフト量より角度変化量を算出することができる。図3(a)の色パターンの周期は一定なのでこの幅の中の変化は、測定値を補間することによりさらに高精度化できる。
【0080】
また、このシフト量は、PAN方向に回転時に、TILT方向の回転が発生したとしてもまったく問題なく独立に計測できる。
【0081】
また、図1のレンズユニット1がTILT方向に回転した場合は、図3(c)の色パターンの変化を検出することで算出できる。
【0082】
すなわち、図3(d)にも示したように、回転変化前後において多画素光センサ7によって検出した青色のパターンのシフト量を検出することで、PAN方向と同様にTILT方向も検出できる。
【0083】
PAN方向の回転が発生したとしても、独立に検出しているので問題なく高精度に検出できる。
【0084】
図(b)、図(c)に示した色パターンは、シフト方向を法線ベクトルとする破線を例にとり示している。これにより移動方向のシフト幅を容易に検出できる。
【0085】
なお、本発明の色パターンはこの例に限定するものではない。線の太さ、線の方向、間隔は適切に設定することができる。また、破線に限定するものではないことはもちろんである。十字形状、丸形状、三角形状、四角形状、星形状等の任意形状を用いても構わない。
【0086】
また、本実施例では、色の色調を一定にした場合について述べたが、色の階調を位置に応じて変化させても構わない。
【0087】
予め、位置と階調との関係を把握しておけば、階調を検出することでPAN、TILT方向の絶対位置を検出することができて極めて有用である。
【0088】
階調の検出は、各色パターンの階調を多値化することで、多画素光センサ7に入射する各色の光の強度も多値化するので、これを検出することで容易に階調を検出することができる。
【0089】
また、PAN、TILT方向の両方に用いても、問題ないことはいうまでもない。
【0090】
このように、本発明は、各角度の回転軸毎に、色パターンの色を割り当てるとともに、これを色分離することにより各方向での信号を分離検出することができるので、クロストークのない精度がよい安定な測定が実現できる。
【0091】
(実施の形態2)
実施の形態1ではPAN、TILTの2軸方向に利用した場合について述べたが、実施の形態2では、PAN、TILT方向の回転角度の測定に加え、Rotation軸の回転角度も測定する場合について説明する。
【0092】
図4は、本発明の実施の形態2の光学式角度センサの概略図である。
【0093】
実施の形態1で説明したように、光学レンズ41で集光した像は撮像素子部42上に結像する。図4には示していないが、レンズユニット41と撮像素子部42は、アクチュエータによりPAN、TILT、ROTATION方向に回転することができる。
【0094】
レンズユニット1および撮像素子部42の回転中心位置を中心点として、半球面体部43が設けられている。図4では撮像素子部42の底面に接着した構造を示したが、これに限定するものではない。
【0095】
半球面体部43上には色パターン44が設けられている。
【0096】
光源46から出射した光は、色パターン44の中央部を照射する。
【0097】
色パターン44からの反射光は、光学レンズ45により集光され遮光フィルター47に到達する。
【0098】
遮光フィルター47は、特定の色を遮断するもので例えばダイクロイックフィルターを用いる。
【0099】
遮光フィルター47を通過した光は、多画素光センサ48に到達し、色パターンが結像される。
【0100】
図5は、PAN、TILT、ROTATION方向の3軸を測定するための色パターンの一例である。
【0101】
図5(a)は、半球面体部43上に設ける色パターン44の一例であり、同図に示した(b)、(c)、(d)から成り立っている。
【0102】
例えば(b)はPAN方向の測定用に用いる色パターンで、例えば赤色のパターンを使用する。(c)はTILT方向の測定用に用いる色パターンで、例えば青色を使用する。
【0103】
(d)はRotation方向の角度検出用に用いるもので、例えば緑色の色パターンを使用する。
【0104】
(d)のパターンは、例えば水平方向に周期的な平行線を用いる。
【0105】
次に、図5(d)のパターンを用いて、Rotation方向の回転角度を算出する方法について述べる。
【0106】
図6を用いて、その算出方法について述べる。
【0107】
図6の(a-1)および(b-1)および(c-1)は色パターン44がRotation方向に回転する際、多画素光センサ上で観察される結像の例を示したものである。
【0108】
(a-1)に比べて(b-1)は右方向に回転し、(c−1)は左方向に回転した場合を示している。
【0109】
(a-2)、(b-2)、(c-2)は遮光フィルター47のパターンを示している。
【0110】
図に示した黒い線の部分は、緑色を反射し、赤色、青色を透過するフィルターを用いる。
【0111】
例えば、真空蒸着等の成膜プロセスで緑反射フィルターを形成する。これにより、緑色に関して周期的に光を遮断できる遮光フィルターが実現できる。
【0112】
また、撮像素子部の色フィルターにも用いられるような、公知の緑色の染料もしくは顔料等の吸収フィルターをウェットプロセスで形成しても構わない。
【0113】
遮光フィルター47を通過した光は、多画素光センサ48に到達する。多画素光センサ48で、例えば緑色だけの信号を抽出する。その一例を図6の(a-3)、(b-3)、(c-3)に示す。
【0114】
(a-3)に示したように、ある周期をもったモアレ縞が観測することができる。
【0115】
モアレ縞のピッチは、色パターンと遮光フィルターの線のピッチをω、それぞれの格子の傾きをθとした場合、以下の式で示される。
【0116】
モアレ縞のピッチ=ω/[2・sin(θ/2)]
従って、色パターンと遮光フィルターのピッチは一定で決まっているので、モアレ縞のピッチを測定することで傾きθを測定することができる。
【0117】
本実施例の場合、傾きθがRotation方向の回転角度となるように設定しているので、傾きθを求めることで回転角度が絶対値として算出できる。
【0118】
傾きθは例えば、(a−3)にも示したように、最小ピーク値を有した画素を求め、それを最小自乗法で直線近似を行うのが好ましい。
【0119】
これを多画素光センサ48全体にわたって実施することにより、最小値を溝とした直線近似群が得られる。これら線群の間隔であるピッチを算出し、平均値を求めることで傾きを算出できる。
【0120】
すなわち、(b-3)に示したように、傾きに応じて線のピッチが変化していることがわかる。
【0121】
なお、多画素光センサ48の最小ピークを有した各画素の位置を用いて、モアレ縞のピッチを求める例について説明したがこれに限定するものではない。最大値を有する画素の位置を用いても構わない。
【0122】
また、特定位置での信号の強度変化量から回転角度を算出しても構わない。
【0123】
(c−3)に、(b−3)と逆の左回転方向に同じだけ回転した場合を示している。
【0124】
図からもわかるように、線幅は同じであり、同じ絶対量の角度だけ変化していることがわかる。また、直線近似した直線の傾きは逆方向の左方向に傾いていることがわかる。
【0125】
これより、近似した直線の傾きを用いることで回転量だけでなく、回転方向も観測できることがわかる。実用上有用といえる。
【0126】
かかる構成により、PAN、TILT方向の回転が任意に生じた状態で、ROTATION方向に回転が生じた場合でも、Rotation方向の角度変化だけを色パターンを用いることで、分離検出できるために非常に精度よい角度測定が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明にかかる光学式角度センサは、広範囲の角度範囲で、高精度で、小型で計測できる特徴を有し、カメラ用の角度センサ等として有用である。またロボットの姿勢制御やゲーム機用ジョイスティックにも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明の実施の形態1における2軸光学式角度センサの概略図
【図2】本発明の実施の形態1における色パターンの一例を示す模式図
【図3】本発明の実施の形態1におけるPAN、TILT回転角測定の方法を説明する概略図
【図4】本発明の実施の形態2における3軸光学式角度センサの概略図
【図5】本発明の実施の形態2におけるROTATION角度測定のための色パターンの一例を示す模式図
【図6】本発明の実施の形態2におけるROTATION回転角度算出の方法を説明する概略図
【符号の説明】
【0129】
1,41 レンズユニット
2,42 撮像素子部
3,43 半球面体部
4,44 色パターン
5,45 光源
6,46 レンズ
7,48 多画素光センサ
47 遮光フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象部に設けられた少なくとも2色以上からなる色パターンと、前記色パターン上に光を照射する光源と、前記色パターンを透過もしくは反射した光を前記色パターンに集光する光学レンズと、前記光学レンズで集光された光の強度を検出する多画素光センサとを備え、第一の色成分からなる色パターンのPan方向の移動量を測定してPan方向角度を算出し、第二の色成分からなる色パターンを第一の色パターンから分離検出してTilt方向の移動量を測定してTilt方向角度を算出する光学式角度センサ。
【請求項2】
前記色パターンが、特定形状のマーカーを周期的に繰り返して配置されたことを特徴とする請求項1記載の光学式角度センサ。
【請求項3】
前記特定形状のマーカーが、円形状もしくは四角形状もしくは三角形状もしく十字形状もしくは星形状である請求項2記載の光学式角度センサ。
【請求項4】
測定対象部の回転中心位置が中心点となる球面形状の半球面体体を設け、前記半球面体体上に前記色パターンを形成もしくは設置したことを特徴とする請求項1記載の光学式角度センサ。
【請求項5】
測定対象部に設けられた少なくとも3色以上の色パターンと、前記色パターン上に光を照射する光源と、前記色パターンを透過もしくは反射した光を前記色パターンに集光する光学レンズと、前記光学レンズで集光された光の強度を検出する多画素光センサとを備え、第一の色成分からなる色パターンのPan方向の移動量を測定してPan方向角度を算出し、第二の色成分からなる色パターンを分離検出してTilt方向の移動量を測定してTilt方向角度を算出し、第三の色成分からなる色パターンを分離検出してRotation方向の回転角度を検出してRotation方向角度を算出する光学式角度センサ。
【請求項6】
青色と赤色と緑色成分から形成された前記色パターンと、青色と赤色と緑色フィルターを周期的に各画素上に配置した前記多画素光センサとを備えた請求項5に記載の光学式角度センサ。
【請求項7】
格子状に形成された前記第三の色成分からなる色パターンと、前記色パターンと前記多画素光センサとの間に、前記第三の色成分を遮光させる格子状の遮光フィルターを設け、前記色パターンと前記遮光フィルターとで形成されたモアレ縞の変化量を前記多画素光センサで検出し、前記色パターンと前記多画素光センサとの回転方向の角度を算出する請求項5に記載の光学式角度センサ。
【請求項8】
前記遮光フィルターが、前記第三の色成分からなる格子状の色パターンのピッチと同等である請求項7記載の光学式角度センサ。
【請求項9】
Pan方向に等間隔で形成されたマーカーを有する第一の色成分からなる色パターンと、
前記色パターンを前記多画素光センサで検出した後、色パターンの移動前後での画像を比較する画像比較手段とを有し、前記画像比較手段によりPan方向の移動量を検出し、前記移動量に基づいてPan方向角度を算出する請求項5記載の光学式角度センサ。
【請求項10】
Tilt方向に等間隔で形成されたマーカーを有する第一の色成分からなる色パターンと、前記色パターンを前記多画素光センサで検出した後、色パターンの移動前後での画像を比較する画像比較手段とを有し、前記画像比較手段によりTilt方向の移動量を検出し、前記移動量に基づいてTilt方向角度を算出する請求項5記載の光学式角度センサ。
【請求項11】
前記測定対象部に設けられた色パターンが、位置により予め決められた階調に設定され、階調を測定する事により位置を算出する請求項5記載の光学式角度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−140386(P2010−140386A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317933(P2008−317933)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】