説明

光学素子および撮像装置

【課題】応答性の向上を図る上で有利な光学素子およびそのような光学素子を備える撮像装置を提供する。
【解決手段】図7(B)に示すように、中央の電極部材40に電圧Eを印加し、残り2つの電極部材38、42を開放状態としていると、第1の液体14は移動することなくその位置に位置した状態で保持されている。図7(A)に示すように、電圧印加手段22が、中央の電極部材40を開放状態とし、残り2つの電極部材38、42に電圧Eを印加すると、第1の液体14が第2の液体16によって周囲を囲まれた状態で、第1の液体14の
うちの半分は一方の退避室34に向かって移動すると同時に、第1の液体14の残りの半分は他方の退避室34に向かって移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学素子および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有極性または導電性を有する液体に電界を作用させることにより、電気毛管現象(エレクトロウエッティング現象)を用いて導電性または液体の形状を変化させることによって液体の光学特性を変化させる光学素子が提案されている。
また、有極性または導電性を有する液体に電界を作用させることにより、液体自体を所望の方向に移動させる液体移動手段が提案されている(特許文献1参照)。
この液体移動手段では、液体(液滴)に接触する第1電極と、液体に対して絶縁層を介して設けられ所定方向に沿って並べて配置された複数の第2電極と、第1電極と各第2電極との間に印加する電圧を個別に制御する制御手段とを備え、制御手段による第2電極への電圧印加の箇所を前記所定方向に変えることで絶縁層上の液体を前記所定方向に移動させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-336898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこのような液体移動手段を、撮像装置の撮影光学系の光軸上に配置し、前記液体を光軸と直交する方向に移動させることでシャッターを構成した場合、シャッターの応答性の向上を図る上で液体の移動速度の高速化が求められる。
しかしながら上記の従来技術では、液体に作用する電界強度を上げるにも限界があり液体の移動速度を高速化する上で限界があった。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、応答性の向上を図る上で有利な光学素子およびそのような光学素子を備える撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するため、本発明は、収容室を有する容器と、前記収容室に封入された有極性または導電性を有する第1の液体と、前記収容室に封入され前記第1の液体と互いに混合しない第2の液体と、前記第1の液体に電界をかけるための第1の電極および第2の電極と、前記第1の電極と第2の電極の間に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、前記電圧印加手段による前記第1、第2の電極への電圧印加の箇所を変えることで、前記第1の液体を前記収容室内の前記第2の液体中で移動する光学素子であって、前記収容室は、前記第1の液体の有無により光の透過量の調整を行なうための調整室と、前記調整室に連通し前記調整室から退避された前記第1の液体の収容を可能とした複数の退避室とを備え、前記調整室および前記複数の退避室は、前記光が透過する方向において互いに対向する第1、第2の端面壁を備え、前記第1の電極は、前記調整室および前記複数の退避室の前記第1、第2の端面壁のうちの一方の端面壁に設けられ、前記第2の電極は、前記第1、第2の端面壁のうちの他方の端面壁に設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、収容室を有する容器と、前記収容室に封入された有極性または導電性を有する第1の液体と、前記収容室に封入され前記第1の液体と互いに混合しない第2の液体と、前記第1の液体に電界をかけるための第1の電極および第2の電極と、前記第1の電極と第2の電極の間に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、前記電圧印加手段による前記第1、第2の電極への電圧印加の箇所を変えることで、前記第1の液体を前記収容室内の前記第2の液体中で移動する光学素子であって、前記収容室は、光が透過する方向において互いに対向する第1、第2の端面壁を含んで構成され、前記第1の電極は、前記第1、第2の端面壁のうちの一方の端面壁に設けられ、前記第2の電極は、前記第1、第2の端面壁のうちの他方の端面壁に設けられ、前記第2の電極は、中央電極部材と、前記中央電極部材の周囲に設けられた複数の周囲電極部材とで構成され、前記第1の電極は、前記中央電極部材および前記複数の周囲電極部材に対向する単一の電極部材で構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、被写体像を導く撮影光学系と、前記撮影光学系の光軸上に設けられた撮像素子と、前記光軸上で前記撮像素子の前方に設けられた光学素子とを備え、前記光学素子は、収容室を有する容器と、前記収容室に封入された有極性または導電性を有する第1の液体と、前記収容室に封入され前記第1の液体と互いに混合しない第2の液体と、前記第1の液体に電界をかけるための第1の電極および第2の電極と、前記第1の電極と第2の電極の間に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、前記電圧印加手段による前記第1、第2の電極への電圧印加の箇所を変えることで、前記第1の液体を前記収容室内の前記第2の液体中で移動するものであって、前記収容室は、前記第1の液体の有無により光の透過量の調整を行なうための調整室と、前記調整室に連通し前記調整室から退避された前記第1の液体の収容を可能とした複数の退避室とを備え、前記調整室および前記複数の退避室は、前記光が透過する方向において互いに対向する第1、第2の端面壁を備え、前記第1の電極は、前記調整室および前記複数の退避室の前記第1、第2の端面壁のうちの一方の端面壁に設けられ、前記第2の電極は、前記第1、第2の端面壁のうちの他方の端面壁に設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、被写体像を導く撮影光学系と、前記撮影光学系の光軸上に設けられた撮像素子と、前記光軸上で前記撮像素子の前方に設けられた光学素子とを備え、前記光学素子は、収容室を有する容器と、前記収容室に封入された有極性または導電性を有する第1の液体と、前記収容室に封入され前記第1の液体と互いに混合しない第2の液体と、前記第1の液体に電界をかけるための第1の電極および第2の電極と、前記第1の電極と第2の電極の間に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、前記電圧印加手段による前記第1、第2の電極への電圧印加の箇所を変えることで、前記第1の液体を前記収容室内の前記第2の液体中で移動するものであって、前記収容室は、光が透過する方向において互いに対向する第1、第2の端面壁を含んで構成され、前記第1の電極は、前記第1、第2の端面壁のうちの一方の端面壁に設けられ、前記第2の電極は、前記第1、第2の端面壁のうちの他方の端面壁に設けられ、前記第2の電極は、中央電極部材と、前記中央電極部材の周囲に設けられた複数の周囲電極部材とで構成され、前記第1の電極は、前記中央電極部材および前記複数の周囲電極部材に対向する単一の電極部材で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、収容室に設けられた複数の電極部材によって第1の液体に電圧を印加することで第1の液体を分割させて移動させるので、第1の液体をひとまとまりのままで移動させる場合に比較して、第1の液体の質量と移動距離を低減させることができるので、第1の液体の移動速度を高速化でき、光学素子の応答性の向上を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(A)は液体移動の原理を説明する断面図、(B)は(A)のAA線矢視図である。
【図2】(A)は光学素子10の構成を示す縦断面図、(B)は(A)のAA線断面図である。
【図3】(A)は図2(A)のBB線矢視図、(B)は図2(A)のCC線矢視図である。
【図4】光学素子10の動作説明図である。
【図5】光学素子10の動作説明図である。
【図6】光学素子10の動作説明図である。
【図7】(A)、(B)は光学素子10の動作説明図である。
【図8】撮像装置100の構成を示すブロック図である。
【図9】撮像装置100の撮影光学系104の構成を示す図である。
【図10】(A)は比較例における第1の液体14の移動を説明する図、(B)は本実施の形態における第1の液体14の移動を説明する図である。
【図11】(A)、(B)は第2の電極20の変形例を示す平面図である。
【図12】第2の実施の形態の光学素子10の構成を示す縦断面図である。
【図13】(A)、(B)は第2の実施の形態の光学素子10の動作説明図である。
【図14】第3の実施の形態の光学素子10の動作説明図である。
【図15】第3の実施の形態の光学素子10の動作説明図である。
【図16】(A)、(B)、(C)は第4の実施の形態の光学素子10の動作説明図である。
【図17】(A)、(B)は第5の実施の形態の光学素子10の動作説明図である。
【図18】第1の電極18の平面図である。
【図19】第6の実施の形態の光学素子10の動作説明図である。
【図20】第6の実施の形態の光学素子10の動作説明図である。
【図21】第6の実施の形態の光学素子10の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
まず、電界による液体移動の動作原理について説明する。
図1(A)は液体移動の原理を説明する断面図、(B)は(A)のAA線矢視図である。
図1(A)、(B)に示すように、光が透過する方向において互いに間隔gをおいて対向する第1、第2の端面壁1A、1Bと、第1、第2の端面壁1A、1Bを接続する側面壁1Cとにより密閉された収容室1が形成されている。
第1の端面壁1Aの内面全域には第1の電極2が形成され、第1の電極2が収容室1に臨む表面は撥水膜3Aで覆われている。
第2の端面壁1Bの内面には第2の電極4が設けられており、第2の電極4は2つの電極体4A、4Bが第1、第2の端面壁1A、1Bが対向する方向と直交する方向に延在する仮想軸Lに沿って並べて配置されている。
2つの電極体4A、4Bの表面および第2の端面壁1Bの内面の全域は絶縁膜5で覆われ、絶縁膜5が収容室1に臨む表面全域は撥水膜3Bで覆われている。
収容室1には第1の液体6と第2の液体7が封入され、第1の液体6は有極性または導電性を有するものであり、第2の液体7は第1の液体6の周囲を囲むように封入され、第1の液体と互いに混合しないものである。
第1の液体6には第1の電極2が撥水膜3Aを介して臨み、また、第2の電極4が絶縁膜5と撥水膜3Bを介して臨んでいる。
【0009】
まず、初期状態では、第1の電極2と第2の電極4の2つの電極体4A、4Bが共にグランドレベルに接続されており、この状態で第1の液体6が一方の電極体4Aの全域と他方の電極体4Bのうち電極体4Aに近接する部分とにわたって位置している。
この状態では、第1の液体6はその表面張力によって図1(A)、(B)に実線で示すように平面視円形の形状を呈している。
ここで、他方の電極体4Bに電圧Eが印加されると、絶縁体5が第1の液体6に臨む箇所に正電荷がチャージされ、これにより、第1の液体6が絶縁体5に臨む箇所に電界(静電気力)が作用して第1の液体6が絶縁体5に臨む箇所に負電荷が引寄せられ、言い換えると、第1の液体6を構成する分子が引き寄せられる。
すると、第1の液体6は、図1(A)、(B)に破線で示すように、電極体4Bに向かって引き寄せられるように形状が変化し、やがて、第1の液体6が第2の液体7によって周囲を囲まれた状態で第1の液体6全体が仮想軸Lの延在方向に沿って一方の電極体4Aの上から他方の電極体4Bの上に移動する。
なお、撥水膜3A、3Bは第1の液体6が第1、第2の電極2、4上で移動する際に液体6と第1、第2の端面壁1A、1Bとの間で生じる抵抗を削減し、移動しやすくする作用を果たすものである。
このように、有極性または導電性を有する第1の液体6に第1、第2の電極2、4によって電界を作用させることで第1の液体6が移動される。
【0010】
次に、本実施の形態の光学素子10について説明する。
本実施の形態において光学素子10はシャッターを構成している。
図2(A)は光学素子10の構成を示す縦断面図、(B)は(A)のAA線断面図である。
図3(A)は図2(A)のBB線矢視図、(B)は図2(A)のCC線矢視図である。
図4、図5、図6は光学素子10の動作説明図である。
図2(A)、(B)に示すように、光学素子10は、容器12と、第1の液体14と、
第2の液体16と、第1の電極18および第2の電極20と、電圧印加手段22(図4参照)とを含んで構成されている。
容器12は、互いに対向し平行をなして延在する第1の端面壁24、第2の端面壁26と、これら第1、第2の端面壁24、26を接続する側面壁28とを有し、それら第1、第2の端面壁24、26と側面壁28とにより密閉した収容室30が設けられている。第1、第2の端面壁24、26は、絶縁性を有する材料で形成され、さらに、第1、第2の端面壁24、26は光を透過する透明な材料で形成されている。
第1、第2の端面壁24、26を構成する材料として、例えば、透明で絶縁性を有する合成樹脂材料あるいは透明なガラス材料を用いることができる。
ここで容器12の厚さ方向とは、第1の端面壁24と第2の端面壁26とが互いに対向する方向であり、光が光学素子10を透過する方向と合致している。
【0011】
本実施の形態では、第1、第2の端面壁24、26は同形同大に形成された長方形板状を呈し、側面壁28は第1、第2の端面壁24、26の輪郭に沿った長方形枠状を呈し、収容室30は扁平な柱状を呈し、収容室30は均一の矩形断面で前記光が透過する方向と直交する方向に延在している。
収容室30は、調整室32と、複数の退避室34とを備えており、言い換えると、調整室32および複数の退避室34は、前記光が透過する方向において互いに対向する第1、第2の端面壁24、26を備えている。
調整室32は、第1の液体14の有無により光の透過量の調整を行なうためのものであり、退避室34は、調整室32に連通し調整室32から退避された第1の液体14の収容を可能としたものである。
本実施の形態では、調整室32は収容室30の延在方向の中央に位置し、退避室34は収容室30の延在方向の両側にそれぞれ設けられている。本実施の形態では、収容室30の延在方向が容器12の長辺の方向と平行している。
言い換えると、2つの退避室34は調整室32に対して、前記光が透過する方向と直交する方向から連通され、調整室32の両側で前記光が透過する方向と直交する方向に延在する直線上に設けられている。
【0012】
第1の液体14は、有極性または導電性を有し収容室30に封入されている。
第2の液体16は、第1の液体14と互いに混合しないものであり、第1の液体14の周囲を囲むように収容室30に封入されている。
また、第1の液体14と第2の液体16は実質的に等しい比重を有しかつ第1の液体14の透過率は第2の液体16の透過率よりも低くなるように形成されている。
本実施の形態では、第1の液体14は、例えば、純水とエタノールとエチレングリコールを混合した液体に光を透過しない材料からなる微粒子が混合されることで形成されている。
前記微粒子としては、例えばカーボンブラックを用いることができる。カーボンブラックを用いる場合には、カーボンブラックが、第1の液体14に対して満遍なく混合されるように、それらの表面に親水コーティング処理をなすことが好ましい。前記親水コーティング処理は、例えば、カーボンブラックの表面に親水基を形成することでなされる。
【0013】
また、本実施の形態では、第2の液体16は透明なシリコンオイルで構成されている。第2の液体16を構成するシリコンオイルとして低粘度のものを用いることにより、第1、第2の液体14、16の間の粘性抵抗の低減と、第1の液体14と第1、第2の端面壁24、26との間の摩擦の緩和が図られ、第1の液体14の移動速度の高速化による応答性の向上を図る上で有利となっている。
なお、第1の液体14として使用できる液体としては、本実施の形態に限定されるものではなく、例えば、ニトロメタン、無水酢酸、酢酸メチル、酢酸エチル、メタノール、アセトニトリル、アセトン、エタノール、プロピオニトリル、テトロヒドロフラン、n−ヘキサン、2−プロパノール、2−ブタノン、n−ブチロニトリル、1−プロパノール、1−ブタノール、ジメチルスルホキシド、クロロベンゼン、エチレングリコール、ホルムアミド、ニトロベンゼン、炭酸プロピレン、1,2−ジクロロエタン、二硫化炭素、クロロホルム、ブロモベンゼン、四塩化炭素、トリクロロ酢酸無水物、トルエン、ベンゼン、エチレンジアミン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、リン酸トリブチル、ピリジン、ベンゾニトル、アニリン、1,4−ジオキサン、ヘキサメチルホスホルアミドなどが挙げられる。
また、第2の液体16として使用できる液体は、例えば、シリコン、デカン系、オクタン系、ノナン、ヘプタンなどが挙げられる。
また、第1の液体14および第2の液体16は、それぞれ単一の液体で形成してもよいし、複数の液体を混合して形成してもよい。要は、第1の液体14と第2の液体16が実質的に等しい比重を有するように形成されていればよい。
【0014】
第1、第2の電極18、20は、第1の液体14に電界をかけるためのものである。
図2(A)、図3(A)に示すように、第1の電極18は、調整室32および2つの退避室34の第1の端面壁24に設けられ、本実施の形態では、第1の電極18は、調整室32および2つの退避室34の第1の端面壁24にわたって延在する単一の電極部材36で構成されている。本実施の形態では、図3(A)に示すように、電極部材36は、第1の端面壁24の輪郭よりも一回り小さい輪郭の矩形状に形成されている。
図2(A)、図3(B)に示すように、第2の電極20は、調整室32および2つの退避室34の第2の端面壁26に設けられ、本実施の形態では、第2の電極20は、それぞれ切り離されて設けられた3つの電極部材38、40、42で構成され、3つの電極部材38、40、42のうちの1つの電極部材40が調整室32の第2の端面壁26に、残りの2つの電極部材38、42が2つの退避室34にそれぞれ設けられている。
これら3つの電極部材38、40、42は、前記光が透過する方向と直交する方向に延在する直線に沿って配置されている。本実施の形態では、前記直線が容器12の長辺の方向と平行している。
本実施の形態では、図3(B)に示すように、3つの電極部材38、40、42は、同形同大の形状を呈し、互いに等しい間隔をおいて配置されている。
また、各電極部材38、40、42が互いに隣り合う縁部は、前記直線の延在方向と直交する方向に延在する2010として形成され、隣り合う電極部材は、凹凸部2010が互いに平行し隙間を空けて向かい合った状態で配置されている。本実施の形態では、凹凸部2010の形状は振幅が均一の三角波状に形成されている。
第1、第2の電極18、20、すなわち、各電極部材36、38、40、42は、例えば、光を透過可能なITO膜(IndiumTinOxide膜)などの導電材料で形成されている。
なお、図3(A)、(B)において、符号1802は電極部材36から延出された配線部、符号2002は各電極部材38、40、42から延出された配線部である。
【0015】
図4に示すように、電圧印加手段22は容器12の外部に設けられ、第1の電極18に配線部1802(図3参照)を介して電気的に接続されたグランド端子2202と、第2の電極20の電極部材38、40、42に配線部2002(図3参照)を介して電気的に接続された複数の電圧出力端子2204とを備えている。
電圧印加手段22は、電圧Eを出力する電源22Aを有し、電圧出力端子2204を介して第2の電極20の各電極部材38、40、42のそれぞれに選択的に電圧Eを印加できるように構成されている。
【0016】
また、図2(A)、(B)に示すように、収容室30に臨む第2の端面壁26の内面およびこの内面に設けられた第2の電極20上に絶縁膜44が形成されている。
したがって、第1の電極18と第2の電極20との間に電圧が印加されることで絶縁膜44の表面に例えばプラス電荷が帯電され、これにより第1の液体14に電界がかかり、第1の液体14を構成する分子に電界(静電気力)が作用して第1の液体14の移動がなされるように構成されている。
【0017】
また、第2の端面壁26の内面および第1の電極18の全域を覆うように光を透過する透明な撥水膜46が形成されている。
また、側面壁28の内面を覆うように撥水膜46が形成されている。
撥水膜46は第2の液体16に対する濡れ性が第1の液体14に対する濡れ性よりも高くなるように構成されている。言い換えると、撥水膜46に対する第2の液体16の接触角は、撥水膜46に対する第1の液体14の接触角よりも小さい値となるように構成されている。
撥水膜46は第1の液体14が第1、第2の電極18、20上で移動する際に第1の液体14と第1、第2の端面壁24、26との間で生じる抵抗を削減し、移動しやすくする作用を果たすものである。
撥水膜46は、親油性を有する膜であり、例えば、シリコンを主成分とする材料を焼き付けることで、あるいは、非結晶フッ素樹脂からなる材料を成膜することで形成することができ、撥水膜46としては、従来公知の様々な材料を採用可能である。
【0018】
次に、光学素子10の動作について説明する。
図7(A)、(B)は光学素子10の動作説明図である。
まず、光学素子10の調整室32が光を遮蔽する状態から光を透過する状態に変化する場合の動作について説明する。
初期状態で、第1の液体14は、図4に示すように、調整室32で第1の電極18の電極部材36と第2の電極20の中央の電極部材40とに挟まれた箇所に位置している。
この状態で、電圧印加手段22は、中央の電極部材40に電圧Eを印加し、残り2つの電極部材38、42を開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)としている。
したがって、第1の電極18と中央の電極部材40に印加された電圧Eによる電界が中央の電極部材40に臨んだ箇所に位置している第1の液体14に作用することで、第1の液体14は移動することなくその位置に位置した状態で保持され、その結果、第1の液体14の大部分は中央の電極部材40に臨み、第1の液体14の一部が隣接する2つの電極部材38、42に臨んでいる。
この状態で、図7(B)に示すように、調整室32に向かって進行する入射光は、調整室32に位置する透過率が低い第1の液体14によって遮蔽される。
【0019】
次に、図5に示すように、電圧印加手段22が、中央の電極部材40を開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)とし、残り2つの電極部材38、42に電圧Eを印加すると、すなわち、第2の電極20への電圧印加の箇所を残り2つの電極部材38、42に変える。
すると、図5に示すように、第1の電極18と2つの電極部材38、42に印加された電圧Eによる電界が中央の電極部材40に臨んだ箇所に位置している第1の液体14に作用することで、第1の液体14が第2の液体16によって周囲を囲まれた状態で、第1の液体14のうちの半分は一方の退避室34に向かって移動すると同時に、第1の液体14の残りの半分は他方の退避室34に向かって移動する。
これにより、図6に示すように、第1の液体14が2分割され、2つの退避室34にそれぞれ収容される。したがって、第1の液体14の半分は一方の退避室34に位置した状態で保持され、第1の液体14の残りの半分は他方の退避室34に位置した状態で保持される。
この際、分割された一方の第1の液体14の大部分は一方の電極部材38に臨み、分割された一方の第1の液体14の一部が隣接する中央の電極部材40に臨み、分割された他方の第1の液体14の大部分は他方の電極部材42に臨み、分割された他方の第1の液体14の一部が隣接する中央の電極部材40に臨んでいる。
この状態で、図7(A)に示すように、調整室32に向かって進行する入射光は、調整室32に位置する透過率が高い第2の液体16を透過する。
【0020】
次に、上述とは逆に、光学素子10の調整室32が光を透過する状態から遮蔽する状態に変化する場合の動作について説明する。
図6に示すように、分割された第1の液体14が2つの退避室34にそれぞれ収容された状態で、電圧印加手段22が、中央の電極部材40に電圧Eを印加し、残り2つの電極部材38、42を開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)とする。
すると、図5に示すように、第1の電極18と中央の電極部材40に印加された電圧Eによる電界が2つの電極部材38、42に臨んだ箇所に位置している分割された第1の液体14にそれぞれ作用することで、分割された第1の液体14が第2の液体16によって周囲を囲まれた状態で、各退避室34から調整室32に向かって移動する。
これにより、図4に示すように、2つに分割されていた第1の液体14が調整室32に収容され合体する。
したがって、第1の電極18と中央の電極部材40に印加された電圧Eによる電界が第1の液体14に作用することで、第1の液体14は移動することなく中央の電極部材40に臨んだ箇所に位置した状態で保持され、その結果、第1の液体14の大部分は中央の電極部材40に臨み、第1の液体14の一部が隣接する2つの電極部材38、42に臨んでいる。
この状態で、図7(B)に示すように、調整室32に向かって進行する入射光は、調整室32に位置する透過率が低い第1の液体14によって遮蔽される。
【0021】
以上のように、電圧印加手段22により電圧印加の箇所を変えて、第1の液体14を調整室32から2つの退避室34に分割して移動させることで調整室32を光が透過可能な状態とし、また、2つの退避室34に退避していた第1の液体14を調整室32に移動させて合体させることで調整室32を光が遮蔽される状態とすることによって、光学素子10をシャッターとして機能させることができる。
【0022】
次に、上述した光学素子10をシャッターとして、例えば、デジタルスチルカメラやビデオカメラなどの撮像装置の撮影光学系に設けた場合について説明する。
図8は撮像装置100の構成を示すブロック図、図9は撮像装置100の撮影光学系104の構成を示す図である。
図8に示すように撮像装置100は外装を構成する不図示のケースを有し、前記ケースにはレンズ鏡筒102が組み込まれるとともに、ケースの表面にはディスプレイ112やシャッタボタンや撮影にまつわる種々の操作を行うための操作スイッチ116が設けられている。
レンズ鏡筒102には、撮影光学系104と、撮影光学系104によって捉えられた被写体像を撮像する撮像素子106が組み込まれている。
撮像装置100は、撮像素子106から出力された撮像信号に基づいて画像データを生成し、メモリカードなどの記憶媒体108に記録する画像処理部110、前記画像データをディスプレイ112に表示させる表示制御部114、シャッタボタンや操作スイッチ116の操作に応じて画像処理部110、表示制御部114を制御するCPUを含む制御部118などを備えている。
【0023】
図9に示すように、撮影光学系104は、その光軸G上において、被写体から撮像素子106に向かって、第1のレンズ群120、第2のレンズ群122、第3のレンズ群124、第4のレンズ群126、フィルター群128がこの順番で配置されている。
本例においては、第1のレンズ群120、第3のレンズ群124が光軸方向に移動不能に設けられ、第2のレンズ群122がズームレンズとして光軸方向に移動可能に設けられ、第4のレンズ群126がフォーカスレンズとして光軸方向に移動可能に設けられている。
第1のレンズ群120によって導かれた被写体からの光束は第2のレンズ群122によって平行な光束とされ第3のレンズ群124に導かれて、第4のレンズ群126、フィルター群128を介して撮像素子106の撮像面106Aに収束される。
光学素子10は、フィルター群128と撮像素子106の間に配置され、調整室32を光軸G上に位置させ光が透過する方向を光軸Gと平行させた状態で、第1の液体14が移動することにより、第1の液体14が撮像素子106に導かれる光束を遮断できるように設けられている。
したがって、光学素子10において、第1の液体14の移動により光束が遮られると、撮像面106Aに照射される時間、すなわち、撮像素子106の露光時間を制御することができる。
なお、撮影光学系104によって収束される被写体像の光束の断面積は撮像素子106の撮像面106Aに近づくほど小さくなる。したがって、本実施の形態のように、光学素子10を撮像素子106の撮像面106Aの直前に配置すると、光学素子10によって開放および遮蔽する光束の断面積が小さくなるので、第1の液体14の移動距離を縮小でき、光学素子10の小型化および応答性の向上を図る上で有利となる。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態によれば、調整室32に収容されている第1の液体14が退避室34に設けられた電極部材38、42から印加される電界によって分割されて退避室34に移動され、また、各退避室34に分割して収容されている第1の液体14が調整室32に設けられた電極部材40から印加される電界によって各退避室34から収容室32に移動されて合体される。
したがって、第1の液体14を分割した状態で移動させるので、第1の液体14をひとまとまりのままで移動させる場合に比較して、第1の液体14の質量と移動距離を低減させることができることから、第1の液体14の移動速度を高速化でき、光学素子10の応答性の向上を図る上で有利となる。
【0025】
次に比較例について説明する。
図10(A)は比較例における第1の液体14の移動を説明する図、(B)は本実施の形態における第1の液体14の移動を説明する図である。
図10(B)に示すように、本実施の形態の光学素子10では、第1の液体14が2つに分割された状態で調整室32と各退避室34との間を移動する。
図10(A)に示すように、比較例の光学素子10では、本実施の形態における光学素子10の第1の液体14と同じ体積の第1の液体14がひとまとまりの状態で調整室32と一方の退避室34との間を移動する。
したがって、第1の液体14の体積が同一ならば、本実施の形態では、分割された第1の液体14の体積と質量は、それぞれ比較例の第1の液体14の半分となる。
比較例において、第1の液体14が隣接する電極部材上を移動するために必要な移動量は、第1の液体14の直径(液径)とほぼ等しい。
これに対して実施の形態において、分割された第1の液体14が隣接する電極部材上に移動して合体するために必要な移動量は、比較例の移動量の半分とほぼ等しい。
実施の形態では、分割された第1の液体14の体積が比較例の半分であるため、第1の液体14の直径は比較例よりも大幅に小さく、したがって、本実施の形態による分割された第1の液体14が移動すべき移動量は、比較例の第1の液体14が移動すべき移動量に比較して大幅に短縮される。
また、印加される電界が同じであれば、第1の液体14の質量が軽いほど移動速度が速くなる。
したがって、本実施の形態の光学素子10は、比較例と比べて、第1の液体14の移動量が少なく、かつ、質量も軽いので、第1の液体14の移動速度を高速化する上で有利となる。
【0026】
また、本実施の形態では、各電極部材38、40、42が互いに隣り合う縁部には前記直線の延在方向と直交する方向に凹凸部2010が延在形成され、隣り合う電極部材は、凹凸部2010が互いに平行して向かい合った状態で配置されている。
したがって、電極部材の配置間隔を第1の液体14の直径と同じ寸法か、直径よりもやや大きな寸法としても、第1の液体14の大部分が1つの電極部材に位置した状態で、移動方向における第1の液体14の一部を隣の電極部材に臨ませることができ、電極部材の配置間隔を大きくしたい場合に有利となる。
また、凹凸部2010の形状は本実施の形態のように振幅がほぼ一定の三角波状としてもよいが、図11(A)に示すように、凹凸部2010の形状を振幅がほぼ一定の方形波状としても上述と同様の効果を奏することは無論である。
【0027】
また、図11(B)に示すように、調整室32の端面壁26に設けられた電極部材40の凹凸部2010の延在方向の中央には、凹凸部2010を構成する他の凸部よりも退避室34の端面壁26側に大きく突出する凸部2012を設け、各退避室34の端面壁26に設けられた電極部材38、42の凹凸部2010の延在方向の中央には、凹凸部2010を構成する他の凹部よりも該退避室34の中央側に大きく窪む凹部2014を設け、凸部2012が凹部2014に隙間を空けて向かい合った状態で配置した場合には次の効果が奏される。
すなわち、各退避室34の電極部材38、42上に位置した第1の液体14が調整室32の電極部材40に向かって移動する際に、凸部2012の部分が他の中央の電極部材40の凹凸部2010の部分に比べて第1の液体14により広い面積で接触していることから、凸部2012の部分から第1の液体14に電界を強く作用させることができる。
これにより、第1の液体14の中央部分を他の部分よりも先行して調整室32の電極部材40に向けて移動させることができ、したがって、第1の液体14をより円滑に移動させることができ、第1の液体14の退避室34から調整室32への移動速度を高める上で有利となる。
なお、第1の液体14に電界を作用させるためには、第1の液体14の大部分が1つの電極部材に位置した状態で、第1の液体14の一部が隣の電極部材に臨んでいればよく、各電極部材38、40、42が互いに隣り合う箇所に凹凸部2010が形成されておらず、前記直線の延在方向と直交する方向に直線状に形成されていてもよいことは無論である。しかしながら、凹凸部2010が形成されていると、上述したように移動速度の高速化を図る上で有利となる。
【0028】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、第1の液体14が透明であり、第2の液体16の透過率が第1の液体14の透過率よりも低くなるように形成されている点が第1の実施の形態と異なっている。
図12は第2の実施の形態の光学素子10の構成を示す縦断面図、図13(A)、(B)は第2の実施の形態の光学素子10の動作説明図である。なお、以下の実施の形態において、第1の実施の形態と同一または同様の箇所、部材には同一の符号を付して説明する。
図12に示すように、光学素子10は、第1の実施の形態と同様に、容器12と、第1の液体14と、第2の液体16と、第1の電極18および第2の電極20と、電圧印加手段22とを含んで構成されている。
第1の液体14は、有極性または導電性を有し収容室30に封入されている。
第2の液体16は、第1の液体14と互いに混合しないものであり、第1の液体14の周囲を囲むように収容室30に封入されている。
また、第1の液体14と第2の液体16は実質的に等しい比重を有しかつ第2の液体16の透過率は第1の液体14の透過率よりも低くなるように形成されている。
本実施の形態では、第1の液体14は、例えば、純水とエタノールとエチレングリコールを混合した液体で構成され、第2の液体16は透明なシリコンオイルで構成され光を透過しない材料からなる微粒子(例えばカーボンブラック)が混合されることで形成されている。
容器12、第1の電極18および第2の電極20、電圧印加手段22は第1の実施の形態と同様に構成されている。
【0029】
次に、光学素子10の動作について説明する。
まず、光学素子10の調整室32が光を透過する状態から光を遮蔽する状態に変化する場合の動作について説明する。
初期状態で、第1の液体14は、図12、図13(A)に示すように、調整室32で第1の電極18の電極部材36と第2の電極20の中央の電極部材40とに挟まれた箇所に位置している。
この状態で、電圧印加手段22は、中央の電極部材40に電圧Eを印加し、残り2つの電極部材38、42を開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)としている。
したがって、第1の電極18と中央の電極部材40に印加された電圧Eによる電界が中央の電極部材40に臨んだ箇所に位置している第1の液体14に作用することで、第1の液体14は移動することなくその位置に位置した状態で保持され、その結果、第1の液体14の大部分は中央の電極部材40に臨み、第1の液体14の一部が隣接する2つの電極部材38、42に臨んでいる。
この状態で、図13(A)に示すように、調整室32に向かって進行する入射光は、調整室32に位置する透過率が高い第1の液体14を透過する。
【0030】
次に、電圧印加手段22が、中央の電極部材40を開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)とし、残り2つの電極部材38、42に電圧Eを印加すると、すなわち、第2の電極20への電圧印加の箇所を残り2つの電極部材38、42に変える。
すると、図13(B)に示すように、第1の電極18と2つの電極部材38、42に印加された電圧Eによる電界が中央の電極部材40に臨んだ箇所に位置している第1の液体14に作用することで、第1の液体14が第2の液体16によって周囲を囲まれた状態で、第1の液体14のうちの半分は一方の退避室34に向かって移動すると同時に、第1の液体14の残りの半分は他方の退避室34に向かって移動する。
これにより、第1の液体14が2分割され、2つの退避室34にそれぞれ収容される。
したがって、第1の液体14の半分は一方の退避室34に位置した状態で保持され、第1の液体14の残りの半分は他方の退避室34に位置した状態で保持される。
この際、分割された一方の第1の液体14の大部分は一方の電極部材38に臨み、分割された一方の第1の液体14の一部が隣接する中央の電極部材40に臨み、分割された他方の第1の液体14の大部分は他方の電極部材42に臨み、分割された他方の第1の液体14の一部が隣接する中央の電極部材40に臨んでいる。
この状態で、図13(B)に示すように、調整室32に向かって進行する入射光は、調整室32に位置する透過率が低い第2の液体16で遮蔽される。
【0031】
次に、上述とは逆に、光学素子10の調整室32が光を遮蔽する状態から透過する状態に変化する場合の動作について説明する。
分割された第1の液体14が2つの退避室34にそれぞれ収容された状態で、電圧印加手段22が、中央の電極部材40に電圧Eを印加し、残り2つの電極部材38、42を開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)とする。
すると、図13(B)に示すように、第1の電極18と中央の電極部材40に印加された電圧Eによる電界が2つの電極部材38、42に臨んだ箇所に位置している分割された第1の液体14にそれぞれ作用することで、分割された第1の液体14が第2の液体16によって周囲を囲まれた状態で、各退避室34から調整室32に向かって移動する。
これにより、図13(A)に示すように、2つに分割されていた第1の液体14が調整室32に収容され合体する。
したがって、第1の電極18と中央の電極部材40に印加された電圧Eによる電界が第1の液体14に作用することで、第1の液体14は移動することなく中央の電極部材40に臨んだ箇所に位置した状態で保持され、その結果、第1の液体14の大部分は中央の電極部材40に臨み、第1の液体14の一部が隣接する2つの電極部材38、42に臨んでいる。
この状態で、図13(A)に示すように、調整室32に向かって進行する入射光は、調整室32に位置する透過率が低い第1の液体14によって透過する。
第2実施の形態の光学素子10によっても第1の実施の形態と同様に、電圧印加手段22により電圧印加の箇所を変えて、第1の液体14を分割させて調整室32と2つの退避室34の間で移動させることにより、調整室32を光が透過可能な状態と光が遮蔽される状態に変化させることで光学素子10をシャッターとして機能させることができる。
したがって、第2の実施の形態においても第1の実施の形態と同様に、第1の液体14の移動速度を高速化でき、光学素子10の応答性の向上を図る上で有利となる。
【0032】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態は、退避室34を4つ設け、第1の液体14を4分割して調整室32と各退避室34との間で移動させる点が第1の実施の形態と異なっている。
図14、図15は第3の実施の形態の光学素子10の動作説明図であり、光学素子10を平面視している。
図14に示すように、4つの退避室34は、光が透過する方向から見て調整室32の周囲にその周方向に沿って同一のピッチで(90度のピッチで)並べられて設けられている。
言い換えると、収容室30は、前記光が透過する方向から見て十字架状を呈し、この十字架状の中心に調整室32が位置し、4つのうちの2つの退避室34は、調整室32の両側で前記光が透過する方向と直交する方向に延在する直線上に設けられ、残りの2つの退避室34は、調整室32の両側で前記光が透過する方向と直交する方向で前記直線と直交する別の直線上に設けられている。
調整室32および4つの退避室34は、前記光が透過する方向において互いに対向する第1端面壁(不図示)と、第2の端面壁26とを備えている。
4つの退避室34は、さらに、第1、第2端面壁を接続する側面壁28を備え、各退避室34は、調整室32に連通する箇所を除いて第1、第2端面壁の間が側面壁28により仕切られている。
そして、隣り合う退避室34の側面壁28は、調整室32に連通する箇所において第1、第2端面壁の間を延在する角部2802を形成している。本実施の形態では、角部2802は直角を呈している。
第3の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、第1の液体14と第2の液体16は実質的に等しい比重を有しかつ第1の液体14の透過率は第2の液体16の透過率よりも低くなるように形成され、第2の液体16は第1の液体14の周囲を囲むように収容室30に封入されている。
【0033】
図14に示すように、第1の電極18は、調整室32および4つの退避室34の第1の端面壁に設けられ、第1の電極18は、調整室32および4つの退避室34の第1の端面壁にわたって延在する単一の電極部材36で構成されている。本実施の形態では、電極部材36は、第1の端面壁の輪郭よりも一回り小さい輪郭の十字架状に形成されている。
第2の電極20は、調整室32および4つの退避室34の第2の端面壁26に設けられ、本実施の形態では、第2の電極20は、それぞれ切り離されて設けられた同形同大の5つの電極部材50A、50B、50C、50D、50Eで構成され、5つの電極部材のうちの1つの電極部材50Aが調整室32の第2の端面壁26に、残りの4つの電極部材50B、50C、50D、50Eが4つの退避室34の第2の端面壁26にそれぞれ設けられている。
中心の電極部材50Aと、4つの電極部材50B、50C、50D、50Eとが互いに隣り合う縁部は、前記直線の延在方向と直交する方向に延在する凹凸部2010として形成され、隣り合う電極部材は、凹凸部2010が互いに平行し隙間を空けて向かい合った状態で配置されている。
【0034】
電圧印加手段22は、第1の電極18にグランド電位を供給するとともに、第2の電極20の5つの電極部材50A、50B、50C、50D、50Eのそれぞれに選択的に電圧Eを印加できるように構成されている。
【0035】
次に、光学素子10の動作について説明する。
まず、光学素子10の調整室32が光を遮蔽する状態から光を透過する状態に変化する場合の動作について説明する。
初期状態で、第1の液体14は、図14に示すように、調整室32で第1の電極18の電極部材36と第2の電極20の中央の電極部材50Aとに挟まれた箇所に位置している。
この状態で、電圧印加手段22は、中央の電極部材50Aに電圧Eを印加し、残り4つの電極部材50B、50C、50D、50Eを開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)としている。
したがって、第1の電極18と中央の電極部材50Aに印加された電圧Eによる電界が中央の電極部材50Aに臨んだ箇所に位置している第1の液体14に作用することで、第1の液体14は移動することなくその位置に位置した状態で保持され、その結果、第1の液体14の大部分は中央の電極部材50Aに臨み、第1の液体14の一部が隣接する4つの電極部材50B、50C、50D、50Eに臨んでいる。
この状態で、調整室32に向かって進行する入射光は、調整室32に位置する透過率が低い第1の液体14によって遮蔽される。
【0036】
次に、電圧印加手段22が、図15に示すように、中央の電極部材50Aを開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)とし、残り4つの電極部材50B、50C、50D、50Eに電圧Eを印加すると、すなわち、第2の電極20への電圧印加の箇所を残り4つの電極部材50B、50C、50D、50Eに変える。
すると、第1の電極18と4つの電極部材50B、50C、50D、50Eに印加された電圧Eによる電界が中央の電極部材50Aに臨んだ箇所に位置している第1の液体14に作用することで、第1の液体14が第2の液体16によって周囲を囲まれた状態で、第1の液体14は4分割されてそれぞれ4つの退避室34に向かって移動する。
これにより、4分割された第1の液体14が4つの退避室34にそれぞれ収容される。
この際、分割された第1の液体14の大部分は各4つの電極部材50B、50C、50D、50Eに臨み、第1の液体14の一部は隣接する中央の電極部材50Aに臨んでいる。
この状態で、調整室32に向かって進行する入射光は、調整室32に位置する透過率が高い第2の液体16を透過する。
【0037】
次に、上述とは逆に、光学素子10の調整室32が光を透過する状態から遮蔽する状態に変化する場合の動作について説明する。
図15に示すように、分割された第1の液体14が4つの退避室34にそれぞれ収容された状態で、電圧印加手段22が、中央の電極部材50Aに電圧Eを印加し、残り4つの電極部材50B、50C、50D、50Eを開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)とする。
すると、第1の電極18と中央の電極部材50Aに印加された電圧Eによる電界が4つの電極部材50B、50C、50D、50Eに臨んだ箇所に位置している第1の液体14にそれぞれ作用することで、分割された第1の液体14が第2の液体16によって周囲を囲まれた状態で、各退避室34から調整室32に向かって移動する。
これにより、図14に示すように、4つに分割されていた第1の液体14が調整室32に収容され合体する。
したがって、第1の電極18と中央の電極部材50Aに印加された電圧Eによる電界が第1の液体14に作用することで、第1の液体14は移動することなく中央の電極部材50Aに臨んだ箇所に位置した状態で保持され、その結果、第1の液体14の大部分は中央の電極部材50Aに臨み、第1の液体14の一部が隣接する4つの電極部材50B、50C、50D、50Eに臨んでいる。
この状態で、調整室32に向かって進行する入射光は、調整室32に位置する透過率が低い第1の液体14によって遮蔽される。
【0038】
このような第3実施の形態の光学素子10によっても第1の実施の形態と同様に、電圧印加手段22により電圧印加の箇所を変えて、第1の液体14を分割させて調整室32と4つの退避室34の間で移動させることにより、調整室32を光が透過可能な状態と光が遮蔽される状態に変化させることで光学素子10をシャッターとして機能させることができる。
特に第3の実施の形態では、第1の液体14を4分割するため、第1の実施の形態に比較して、第1の液体14の移動速度をより高速化でき、光学素子10の応答性の向上を図る上でより有利となる。
また、第3の実施の形態では、収容室30に4つの角部2802が臨んでいるため、調整室32に収容されている第1の液体14が分割されて各退避室34に移動される際に、第1の液体14が各角部2802の部分で分離されることによって円滑に分割されるので、第1の液体14の移動速度を高速化する上でより有利となる。
なお、収容室30に角部2802が形成されていなくても第1の液体14を分割して移動することはできるが、角部2802が形成されていると角部2802が形成されていない場合に比較して、上述のように第1の液体14の移動速度の高速化を図る上で有利である。
【0039】
(第4の実施の形態)
次に第4の実施の形態について説明する。
第4の実施の形態は第3の実施の形態の変形例であり、構成は第3の実施の形態と同一であるが、2つに第1の液体14を分割する際の動作が第3の実施の形態と異なっている。
図16(A)、(B)、(C)は第4の実施の形態の光学素子10の動作説明図である。
図16(A)に示すように、電圧印加手段22によって、対向する2つの退避室34の電極部材50B、50Dに電圧Eを印加し、残りの2つの退避室34の電極部材50C、50Eおよび中心の電極部材50Aを開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)とし、第1の液体14を2つに分割して対向する2つの退避室34に収容しておく。
この状態で、調整室32に向かって進行する入射光は、調整室32に位置する透過率が高い第2の液体16を透過する。
【0040】
次に、電圧印加手段22により、中央の電極部材50Aに電圧Eを印加し、残り4つの電極部材50B、50C、50D、50Eを開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)とする。
すると、図16(B)に示すように、対向する2つの退避室34に収容されていた第1の液体14が第2の液体16によって周囲を囲まれた状態で、各退避室34から調整室32に向かって移動し、第1の液体14が調整室32に収容され合体する。
この状態で、調整室32に向かって進行する入射光は、調整室32に位置する透過率が低い第1の液体14によって遮蔽される。
この際、互いに接近する方向に移動する2つの第1の液体14が合体するので、そのときに各第1の液体14に作用していた力によって、図16(B)に二点鎖線で示すように、合体した第1の液体14は対向する2つの退避室34を結ぶ直線と直交する直線上に沿って、すなわち、残り2つの退避室34を結ぶ直線上に沿って引き伸ばされた形状に変形する。
この変形が生じている状態で、図16(C)に示すように、電圧印加手段22によって、残りの2つの退避室34の電極部材50C、50Eに電圧Eを印加し、2つの退避室34の電極部材50B、50Dおよび中心の電極部材50Aを開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)とすると、第1の液体14は、残りの2つの退避室34の電極部材50C、50Eに印加された電圧Eによる電界の作用により2つに分離され、残り2つの退避室34にそれぞれ移動して収容される。
この状態で、調整室32に向かって進行する入射光は、調整室32に位置する透過率が高い第2の液体16を透過する。
【0041】
第4の実施の形態によれば、第1の液体14が対向する2つの退避室34から調整室32に移動して合体して変形した後、その変形した方向に位置する残り2つの退避室34に第1の液体14を移動させるようにしたので、2つの対向する退避室34から調整室32に第1の液体14を移動させた後、速やかに第1の液体14を残り2つの退避室34に移動させることができるため、第1の液体14が調整室32に留まっている時間を短くでき、光学素子10による光路の遮蔽動作の高速化を図る上で有利となる。
【0042】
(第5の実施の形態)
次に第5の実施の形態について説明する。
第5の実施の形態は第3の実施の形態の変形例であり、退避室34を8つ設け、第1の液体14を8つに分割するものである。
図17(A)、(B)は第5の実施の形態の光学素子10の動作説明図、図18は第1の電極18の平面図である。
図17(A)に示すように、光学素子10は収容室30を備え、収容室30は、調整室32と、調整室32の外周に等間隔をおいて配置された8つの退避室34とを備えている

調整室32および8つの退避室34は、前記光が透過する方向において互いに対向する第1端面壁(不図示)と、第2の端面壁26とを備えている。
8つの退避室34は、さらに、第1、第2端面壁を接続する側面壁28を備え、各退避室34は、調整室32に連通する箇所を除いて第1、第2端面壁の間が側面壁28により仕切られている。
そして、隣り合う退避室34の側面壁28は、調整室32に連通する箇所において第1、第2端面壁の間を延在する角部2802を形成し、本実施の形態では、角部2802は鋭角を呈している。
第5の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、第1の液体14と第2の液体16は実質的に等しい比重を有しかつ第1の液体14の透過率は第2の液体16の透過率よりも低くなるように形成され、第2の液体16は第1の液体14の周囲を囲むように収容室30に封入されている。
【0043】
図18に示すように、第1の電極18は、調整室32および8つの退避室34の第1の端面壁に設けられ、第1の電極18は、調整室32および8つの退避室34の第1の端面壁にわたって延在する単一の電極部材36で構成されている。本実施の形態では、電極部材36は、第1の端面壁の輪郭よりも一回り小さい輪郭で形成されている。
図17(A)に示すように、第2の電極20は、調整室32および8つの退避室34の第2の端面壁26に設けられ、本実施の形態では、第2の電極20は、それぞれ切り離されて設けられた9つの電極部材で構成され、そのうちの1つの電極部材50Fは、調整室32の第2の端面壁26に設けられ、残りの8つの電極部材50Gは同形同大に形成され8つの退避室34の第2の端面壁26にそれぞれ設けられている。
【0044】
電圧印加手段は、第1の電極18にグランド電位を供給するとともに、第2の電極20の9つの電極部材50F、50Gのそれぞれに選択的に電圧Eを印加できるように構成されている。
【0045】
次に、光学素子10の動作について説明する。
まず、光学素子10の調整室32が光を遮蔽する状態から光を透過する状態に変化する場合の動作について説明する。
初期状態で、第1の液体14は、図17(A)に示すように、調整室32で第1の電極18の電極部材36と第2の電極20の中央の電極部材50Fとに挟まれた箇所に位置している。
この状態で、電圧印加手段22は、中央の電極部材50Fに電圧Eを印加し、残り8つの電極部材50Gを開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)としている。
したがって、第1の電極18と中央の電極部材50Fに印加された電圧Eによる電界が中央の電極部材50Fに臨んだ箇所に位置している第1の液体14に作用することで、第1の液体14は移動することなくその位置に位置した状態で保持され、その結果、第1の液体14の大部分は中央の電極部材50Fに臨み、第1の液体14の一部が隣接する8つの電極部材50Gに臨んでいる。
この状態で、調整室32に向かって進行する入射光は、調整室32に位置する透過率が低い第1の液体14によって遮蔽される。
【0046】
次に、電圧印加手段22が、中央の電極部材50Fを開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)とし、残り8つの電極部材50Gに電圧Eを印加すると、すなわち、第2の電極20への電圧印加の箇所を残り8つの電極部材50Gに変える。
すると、第1の電極18と8つの電極部材50Gに印加された電圧Eによる電界が中央の電極部材50Fに臨んだ箇所に位置している第1の液体14に作用することで、図17(B)に示すように、第1の液体14が第2の液体16によって周囲を囲まれた状態で、第1の液体14は8分割されてそれぞれ8つの退避室34に向かって移動する。
これにより、8分割された第1の液体14が8つの退避室34にそれぞれ収容される。
この際、分割された第1の液体14の大部分は各8つの電極部材50Gに臨み、第1の液体14の一部は隣接する中央の電極部材50Fに臨んでいる。
この状態で、調整室32に向かって進行する入射光は、調整室32に位置する透過率が高い第2の液体16を透過する。
【0047】
次に、上述とは逆に、光学素子10の調整室32が光を透過する状態から遮蔽する状態に変化する場合の動作について説明する。
図17(B)に示すように、分割された第1の液体14が8つの退避室34にそれぞれ収容された状態で、電圧印加手段22が、中央の電極部材50Fに電圧Eを印加し、残り8つの電極部材50Gを開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)とする。
すると、第1の電極18と中央の電極部材50Fに印加された電圧Eによる電界が8つの電極部材50Gに臨んだ箇所に位置している第1の液体14にそれぞれ作用することで、分割された第1の液体14が第2の液体16によって周囲を囲まれた状態で、各退避室34から調整室32に向かって移動する。
これにより、図17(A)に示すように、8つに分割されていた第1の液体14が調整室32に収容され合体する。
したがって、第1の電極18と中央の電極部材50Fに印加された電圧Eによる電界が第1の液体14に作用することで、第1の液体14は移動することなく中央の電極部材50Fに臨んだ箇所に位置した状態で保持され、その結果、第1の液体14の大部分は中央の電極部材50Fに臨み、第1の液体14の一部が隣接する8つの電極部材50Gに臨んでいる。
この状態で、調整室32に向かって進行する入射光は、調整室32に位置する透過率が低い第1の液体14によって遮蔽される。
【0048】
このような第5実施の形態の光学素子10によっても第1の実施の形態と同様に、第1の液体14を分割させて調整室32と8つの退避室34の間で移動させることにより、調整室32を光が透過可能な状態と光が遮蔽される状態に変化させることで光学素子10をシャッターとして機能させることができる。
特に第5の実施の形態では、第1の液体14を8分割するため、第1の液体14を2分割する第1の実施の形態あるいは第1の液体14を4分割する第3の実施の形態に比較して、第1の液体14の移動速度をより高速化でき、光学素子10の応答性の向上を図る上でより有利となる。
また、収容室30に8つの角部2802が臨んでいるため、第3の実施の形態と同様に、調整室32に収容されている第1の液体14が分割されて各退避室34に移動される際に、第1の液体14が各角部2802の部分で分離されることによって円滑に分割されるので、第1の液体14の移動速度を高速化する上でより有利となる。
【0049】
(第6の実施の形態)
次に第6の実施の形態について説明する。
第6の実施の形態は、第1の液体14を分割する際には2段階に分けて分割し第1の液体14を合体する際には1段階で行なうようにすることで応答性の向上を図るものである。
図19乃至図21は第6の実施の形態の光学素子10の動作説明図である。
図19に示すように、光学素子10は、容器12と、第1の液体14と、第2の液体16と、第1の電極18および第2の電極20と、電圧印加手段22とを含んで構成されている。
容器12は、光が透過する方向において互いに対向し平行をなして延在する第1の端面壁(不図示)、第2の端面壁26と、これら第1、第2の端面壁24、26を接続する側面壁28とを有し、それら第1、第2の端面壁と側面壁28とにより密閉した収容室30が設けられている。
第1の電極18は、第1の端面壁24に設けられ、第2の電極20は、第2の端面壁26に設けられている。
第2の電極20は、中央電極部材52と、中央電極部材52の周囲に設けられた複数の周囲電極部材54とで構成され、本実施の形態では周囲電極部材54は、中央電極部材52の両側にそれぞれ3つずつ設けられている。3つの周囲電極部材54は3つの周囲電極部材54のうち中央に位置する第1周囲電極部材54Aと、第1周囲電極部材54を挟む2つの第2周囲電極部材54Bとで構成されている。
第1の電極18は、中央電極部材52および複数の周囲電極部材54に対向する単一の電極部材56で構成されている。
【0050】
電圧印加手段22は、第1の電極18にグランド電位を供給するとともに、第2の電極20の中央電極部材52および6つの周囲電極部材54のそれぞれに選択的に電圧Eを印加できるように構成されている。
【0051】
次に、光学素子10の動作について説明する。
まず、光学素子10の収容室30が光を遮蔽する状態から光を透過する状態に変化する場合の動作について説明する。
初期状態で、第1の液体14は、図19に示すように、収容室30で第1の電極18の電極部材56と第2の電極20の中央電極部材52とに挟まれた箇所に位置している。
この状態で、電圧印加手段22は、中央の電極部材52に電圧Eを印加し、残り6つの電極部材54を開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)としている。
したがって、第1の電極18と中央電極部材52に印加された電圧Eによる電界が中央電極部材52に臨んだ箇所に位置している第1の液体14に作用することで、第1の液体14は移動することなくその位置に位置した状態で保持され、その結果、第1の液体14の大部分は中央電極部材52に臨み、第1の液体14の一部が隣接する6つの周囲電極部材54に臨んでいる。
この状態で、収容室30に向かって進行する入射光は、収容室30に位置する透過率が低い第1の液体14によって遮蔽される。
【0052】
次に、電圧印加手段22が、図20に示すように、中央電極部材52、4つの第2周囲電極部材54Bを開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)とし、2つの第1周囲電極部材54Aに電圧Eを印加する。すなわち、第2の電極20への電圧印加の箇所を第1周囲電極部材54Aに変える。
すると、第1の電極18と2つの第1周囲電極部材54Aに印加された電圧Eによる電界が中央電極部材52に臨んだ箇所に位置している第1の液体14に作用することで、第1の液体14が第2の液体16によって周囲を囲まれた状態で、第1の液体14は2分割されてそれぞれ2つの第1周囲電極部材54Aに向かって移動する。
これにより、2分割された第1の液体14が2つの第1周囲電極部材54Aに臨んだ状態で保持される。
この際、分割された第1の液体14の大部分は各第1周囲電極部材54Aに臨み、第1の液体14の一部は隣接する中央電極部材52、第2周囲電極部材54Bに臨んでいる。
【0053】
次に、電圧印加手段22は、図21に示すように、中央電極部材52、2つの第1周囲電極部材54Aを開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)とし、4つの第2周囲電極部材54Bに電圧Eを印加する。すなわち、第2の電極20への電圧印加の箇所を第2周囲電極部材54Bに変える。
すると、第1の電極18と4つの第2周囲電極部材54Bに印加された電圧Eによる電界が各第1周囲電極部材54Aに臨んだ箇所に位置している第1の液体14に作用することで、第1の液体14が第2の液体16によって周囲を囲まれた状態で、第1の液体14は2分割されてそれぞれ各第2周囲電極部材54Bに向かって移動する。
これにより、4分割された第1の液体14が4つの第2周囲電極部材54B上に臨んだ状態で保持される。
この際、分割された第1の液体14の大部分は各第2周囲電極部材54Bに臨み、第1の液体14の一部は隣接する中央電極部材52、第1周囲電極部材54Aに臨んでいる。この状態で、収容室30に向かって進行する入射光は、収容室30に位置する透過率が高い第2の液体16を透過する。
【0054】
次に、上述とは逆に、光学素子10の収容室30が光を透過する状態から遮蔽する状態に変化する場合の動作について説明する。
図21に示すように、4つに分割された第1の液体14が4つの第2周囲電極部材54Bに臨む箇所にそれぞれ位置した状態で、電圧印加手段22が、中央電極部材52に電圧Eを印加し、2つの第1周囲電極部材54Aおよび4つの第2周囲電極部材54Bの全てを開放状態(あるいはグランド電位を印加した状態)とする。
すると、第1の電極18と中央電極部材52に印加された電圧Eによる電界が4つの第2周囲電極部材54Bに臨んだ箇所に位置している第1の液体14にそれぞれ作用することで、分割された第1の液体14が第2の液体16によって周囲を囲まれた状態で、中央電極部材52に向かって移動する。
これにより、図19に示すように、4つに分割されていた第1の液体14が中央電極部材52上で合体する。
したがって、第1の電極18と中央電極部材52に印加された電圧Eによる電界が第1の液体14に作用することで、第1の液体14は移動することなく中央電極部材52に臨んだ箇所に位置した状態で保持され、その結果、第1の液体14の大部分は中央電極部材52に臨み、第1の液体14の一部が隣接する第1周囲電極部材54A、第2周囲電極部材54Bに臨んでいる。
この状態で、収容室30に向かって進行する入射光は、収容室30に位置する透過率が低い第1の液体14によって遮蔽される。
【0055】
このような第6実施の形態の光学素子10によっても第1の実施の形態と同様に、電圧印加手段22により電圧印加の箇所を変えて、第1の液体14を分割させて中央電極部材52と周囲電極部材54との間を移動させることにより、収容室30を光が透過可能な状態と光が遮蔽される状態に変化させることで光学素子10をシャッターとして機能させることができる。
特に第6の実施の形態では、第1の液体14をいったん2分割した後、2分割された第1の液体14をそれぞれ2分割するため、第1の液体14を2分割するに足る電圧を第1周囲電極部材54A、第2周囲電極部材54Bに印加すればよく、第1の液体14を同時に4つに分割する場合に比較して電圧が少なくて済み、省電力化を図る上で有利となる。
また、4分割された第1の液体14を中央電極部材54Aに移動させて1つに合体させる際には、第1の液体14が4分割されているため体積および質量が、2分割されている場合よりも第1の液体14の体積および質量よりも小さいため、第1の液体14の移動速度をより高速化でき、光学素子10の応答性の向上を図る上でより有利となる。
【0056】
なお、実施の形態では、複数の電極部材を2つあるいは4つあるいは8つ設けることによって第1の液体14を2分割、4分割、8分割する場合について説明したが、複数の電極部材の数はそれらに限定されるものではない。複数の電極部材を2つ以上の偶数個または偶数個設けることによって第1の液体14を分割してもよいことは無論である。
また、実施の形態では、光学素子10がシャッターとして構成されている場合について説明したが、光学素子10をNDフィルター(NeutralDensityFilter)として構成してもよいことは無論である。この場合には、例えば、第1の液体14および第2の液体16の一方の透過率をNDフィルターとして機能する値にするとともに、第1の液体14および第2の液体16の他方の透過率を100%とすればよい。
また、透過率(減光率)が異なる複数種類のNDフィルターを光学素子10によって構成するとともに、それら複数の光学素子10を、撮像装置100の光軸上に多層化して配置すれば減光率を複数種類に変化させることができるNDフィルターを構成することができる。
また、本実施の形態では、撮像装置100がデジタルスチルカメラやビデオカメラである場合について説明したが、本発明は、カメラ付きの携帯電話機、カメラ付きのPDA(パーソナルデジタルアシスタント)、カメラ付きのノートパソコンなど種々の撮像装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0057】
10……光学素子、12……容器、14……第1の液体、16……第2の液体、18……第1の電極、20……第2の電極、22……電圧印加手段、24……第1の端面壁、26……第2の端面壁、30……収容室、32……調整室、34……退避室、100……撮像装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容室を有する容器と、
前記収容室に封入された有極性または導電性を有する第1の液体と、
前記収容室に封入され前記第1の液体と互いに混合しない第2の液体と、
前記第1の液体に電界をかけるための第1の電極および第2の電極と、
前記第1の電極と第2の電極の間に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、
前記電圧印加手段による前記第1、第2の電極への電圧印加の箇所を変えることで、前記第1の液体を前記収容室内の前記第2の液体中で移動する光学素子であって、
前記収容室は、前記第1の液体の有無により光の透過量の調整を行なうための調整室と、前記調整室に連通し前記調整室から退避された前記第1の液体の収容を可能とした複数の退避室とを備え、
前記調整室および前記複数の退避室は、前記光が透過する方向において互いに対向する第1、第2の端面壁を備え、
前記第1の電極は、前記調整室および前記複数の退避室の前記第1、第2の端面壁のうちの一方の端面壁に設けられ、前記第2の電極は、前記第1、第2の端面壁のうちの他方の端面壁に設けられている、
ことを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記退避室は前記調整室に対して、前記光が透過する方向と直交する方向から連通されていることを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項3】
前記退避室は、前記光が透過する方向から見て前記調整室の周囲に並べられて設けられていることを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項4】
前記退避室は、前記光が透過する方向から見て前記調整室の周囲にその周方向に沿って同一のピッチで並べられて設けられていることを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項5】
前記退避室は2つ設けられ、前記2つの退避室は、前記調整室の両側で前記光が透過する方向と直交する方向に延在する直線上に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項6】
前記退避室は4つ設けられ、前記4つのうちの2つの退避室は、前記調整室の両側で前記光が透過する方向と直交する方向に延在する直線上に設けられ、残りの2つの退避室は、前記調整室の両側で前記光が透過する方向と直交する方向で前記直線と直交する別の直線上に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項7】
前記各退避室は、前記調整室に連通する箇所を除いて前記第1、第2端面壁の間が側面壁により仕切られており、
隣り合う前記退避室の側面壁は、前記調整室に連通する箇所において前記第1、第2端面壁の間を延在する角部を形成している、
ことを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項8】
前記第1の電極は、前記調整室および前記複数の退避室の前記第1、第2の端面壁のうちの一方の端面壁にわたって延在する単一の電極部材で構成され、
前記第2の電極は、前記調整室および前記複数の退避室の前記第1、第2の端面壁のうちの他方の端面壁にそれぞれ切り離されて設けられた複数の電極部材で構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の光学素子。
【請求項9】
前記第2の電極の複数の電極部材が互いに隣り合う箇所には前記直線の延在方向と直交する方向に凹凸部が延在形成され、
前記隣り合う電極部材は、前記凹凸部が互いに隙間を空けて向かい合った状態で配置されている、
ことを特徴とする請求項8記載の光学素子。
【請求項10】
前記第2の電極の複数の電極部材が互いに隣り合う箇所には前記直線の延在方向と直交する方向に凹凸部が延在形成され、
前記隣り合う電極部材は、前記凹凸部が互いに隙間を空けて向かい合った状態で配置され、
前記調整室の端面壁に設けられた前記電極部材の前記凹凸部の延在方向の中央には、前記凹凸部を構成する他の凸部よりも前記退避室の端面壁側に大きく突出する凸部が設けられ、
前記各退避室の端面壁に設けられた前記電極部材の前記凹凸部の延在方向の中央には、前記凹凸部を構成する他の凹部よりも該退避室の中央側に大きく窪む凹部が設けられ、
前記凸部が前記凹部に隙間を空けて向かい合った状態で配置されている、
ことを特徴とする請求項8記載の光学素子。
【請求項11】
収容室を有する容器と、
前記収容室に封入された有極性または導電性を有する第1の液体と、
前記収容室に封入され前記第1の液体と互いに混合しない第2の液体と、
前記第1の液体に電界をかけるための第1の電極および第2の電極と、
前記第1の電極と第2の電極の間に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、
前記電圧印加手段による前記第1、第2の電極への電圧印加の箇所を変えることで、前記第1の液体を前記収容室内の前記第2の液体中で移動する光学素子であって、
前記収容室は、光が透過する方向において互いに対向する第1、第2の端面壁を含んで構成され、
前記第1の電極は、前記第1、第2の端面壁のうちの一方の端面壁に設けられ、前記第2の電極は、前記第1、第2の端面壁のうちの他方の端面壁に設けられ、
前記第2の電極は、中央電極部材と、前記中央電極部材の周囲に設けられた複数の周囲電極部材とで構成され、
前記第1の電極は、前記中央電極部材および前記複数の周囲電極部材に対向する単一の電極部材で構成されている、
ことを特徴とする光学素子。
【請求項12】
前記周囲電極部材は、前記中央電極部材の両側にそれぞれ3つずつ設けられていることを特徴とする請求項11記載の光学素子。
【請求項13】
前記第1の液体の透過率は、前記第2の液体の他方の透過率よりも低くなるように形成されていることを特徴とする請求項1または11記載の光学素子。
【請求項14】
前記第2の液体の透過率は、前記第1の液体の透過率よりも低くなるように形成されていることを特徴とする請求項1または11記載の光学素子。
【請求項15】
被写体像を導く撮影光学系と、
前記撮影光学系の光軸上に設けられた撮像素子と、
前記光軸上で前記撮像素子の前方に設けられた光学素子とを備え、
前記光学素子は、
収容室を有する容器と、
前記収容室に封入された有極性または導電性を有する第1の液体と、
前記収容室に封入され前記第1の液体と互いに混合しない第2の液体と、
前記第1の液体に電界をかけるための第1の電極および第2の電極と、
前記第1の電極と第2の電極の間に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、
前記電圧印加手段による前記第1、第2の電極への電圧印加の箇所を変えることで、前記第1の液体を前記収容室内の前記第2の液体中で移動するものであって、
前記収容室は、前記第1の液体の有無により光の透過量の調整を行なうための調整室と、前記調整室に連通し前記調整室から退避された前記第1の液体の収容を可能とした複数の退避室とを備え、
前記調整室および前記複数の退避室は、前記光が透過する方向において互いに対向する第1、第2の端面壁を備え、
前記第1の電極は、前記調整室および前記複数の退避室の前記第1、第2の端面壁のうちの一方の端面壁に設けられ、前記第2の電極は、前記第1、第2の端面壁のうちの他方の端面壁に設けられている、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項16】
被写体像を導く撮影光学系と、
前記撮影光学系の光軸上に設けられた撮像素子と、
前記光軸上で前記撮像素子の前方に設けられた光学素子とを備え、
前記光学素子は、
収容室を有する容器と、
前記収容室に封入された有極性または導電性を有する第1の液体と、
前記収容室に封入され前記第1の液体と互いに混合しない第2の液体と、
前記第1の液体に電界をかけるための第1の電極および第2の電極と、
前記第1の電極と第2の電極の間に電圧を印加する電圧印加手段とを備え、
前記電圧印加手段による前記第1、第2の電極への電圧印加の箇所を変えることで、前記第1の液体を前記収容室内の前記第2の液体中で移動するものであって、
前記収容室は、光が透過する方向において互いに対向する第1、第2の端面壁を含んで構成され、
前記第1の電極は、前記第1、第2の端面壁のうちの一方の端面壁に設けられ、前記第2の電極は、前記第1、第2の端面壁のうちの他方の端面壁に設けられ、
前記第2の電極は、中央電極部材と、前記中央電極部材の周囲に設けられた複数の周囲電極部材とで構成され、
前記第1の電極は、前記中央電極部材および前記複数の周囲電極部材に対向する単一の電極部材で構成されている、
ことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−288798(P2009−288798A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199175(P2009−199175)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【分割の表示】特願2006−88810(P2006−88810)の分割
【原出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】