光導波路型光結合機構
【課題】レーザバーからのレーザ光を簡単な構造で効率良く光ファイバへ入射することができる光導波路型光結合機構を提供する。
【解決手段】半導体レーザバー10と、該半導体レーザバー10の各発光素子11から出射された光を導光させるコア部21および該コア部21の周囲に形成されたクラッド部22からなる光導波路20と、コア31および該コア31の周囲に形成され、前記コア31へ光を閉じ込めるクラッド32からなる光ファイバ30とを備え、前記光導波路20が、前記光ファイバ30の側面に接合されており、前記半導体レーザバー10から出射された光が前記光導波路20のコア部21を介して前記光ファイバ30のコア31の側面へ入射されるものである。
【解決手段】半導体レーザバー10と、該半導体レーザバー10の各発光素子11から出射された光を導光させるコア部21および該コア部21の周囲に形成されたクラッド部22からなる光導波路20と、コア31および該コア31の周囲に形成され、前記コア31へ光を閉じ込めるクラッド32からなる光ファイバ30とを備え、前記光導波路20が、前記光ファイバ30の側面に接合されており、前記半導体レーザバー10から出射された光が前記光導波路20のコア部21を介して前記光ファイバ30のコア31の側面へ入射されるものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザバーと光ファイバを光接続する光導波路型結合機構に係り、特にファイバレーザに適用される光導波路型結合機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザにおける発光部は、1つの発光素子を基本として、横方向に数十素子程度並べたものをレーザバー、レーザバーを縦に並べたものをレーザスタックと呼んでいる。
【0003】
レーザバーとして、Bookham社のレーザバー“BAC50c−9XX−03/04”のデータシートを参考にレーザバーの構成について説明する(2007年3月1日検索、インターネット<URL http://www.bookham.com/datasheets/hpld/BAC50C−9xx−03.cfm>)。
【0004】
レーザバー60は、図18に示すように、厚さ1μm、幅100μm、共振長24mmの一つの発光素子61を、図19に示すように、基板62内に横に500μm間隔で19個並べたものである。
【0005】
一般的に、図20に示すように、19個の発光素子61の発光部から出射される光は、x軸方向に広がり角θx(光量の90%)約6度、y軸方向に広がり角θy(光量の90%)約60度となる。
【0006】
よって、レーザバー60の発光部から十分離れたz軸上の発光領域63では、図20に示されるような形状となる。
【0007】
レーザバー60から出射した光を光ファイバ70へ入射する場合、図21に示すような光導波路構造65を用いてレーザバー60からの出射形状を楕円形状から円形状に変換し、光ファイバ70へ高効率に入射する方法がある(特許文献1)。
【0008】
この他に、図22に示すように、レーザバー60の発光素子61の一つ一つにバンドル用光ファイバ72を光結合し、そのバンドル用光ファイバ72を結束部72aで束ねてバンドル化72bした後、目的の光ファイバ70へ光接続する方法がある。ここで、レーザバー60のy軸方向の光広がり角が大きいため、コリメートレンズ71を用いてy軸方向の光広がり角を小さくしてからバンドル用光ファイバ72へ光接続する。バンドル用光ファイバ72と光ファイバ70の断面形状は図23に示すように、バンドル用光ファイバ72の最外層のコア73と光ファイバ70のコア74の径とが一致するようにされる。
【0009】
また、伝送用光ファイバを用いて半導体レーザのレーザ光を目的の光ファイバへ側面より入射する技術(特許文献2)として、図24(a)に示すように、半導体素子80(一つの発光素子)から出射される光ビームの形状を円筒形レンズ81を用いて変換し、伝送用光ファイバ(送給用ファイバ)82へ高効率に入射し、その送給用ファイバ82の他端において、図24(b)に示すように、送給用ファイバ82を通して、マルチモード光源84からの光量をマルチモードファイバ86へ側面より供給する方式がある。
【0010】
【特許文献1】特許第3607211号公報
【特許文献2】特許第3337691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図21の光結合機構は、光導波路構造65を製造する上で難しい問題がある。また、レーザ光を入射させたい光ファイバ70の端面から入射させる方式(光接続)であるため、y軸方向への光の広がりが大きい場合、光ファイバ70にレーザ光を効率よく入射させることが困難である。
【0012】
図22のバンドルを用いた光結合機構は、バンドル用光ファイバ72へコリメートレンズ71を介在させるなどの手段を用いて光接続を行う必要があり、構造が複雑になる問題がある。また、バンドル部内にバンドル用光ファイバ72のクラッド層が含まれるため、図23に示すように、レーザ光が導波するコア73の領域以上に径が大きいコア74を要する光ファイバ70を用いないとレーザ光を高効率に入射させることができない。
【0013】
図24の光結合機構は、送給ファイバ82の1本当たり、1つの発光素子80からレーザ光を入射させることとなるため、複数の送給ファイバ82を用いる場合、レーザ光を入射させる発光素子80も送給ファイバ82と同数個必要となる。例えば、図24(b)に示すように、発光素子80から出射されたレーザ光が光ファイバ86へ側面から入射する際、1つの発光素子80につき、1本の送給ファイバ82が必要となるため、光ファイバ86への側面への光接続箇所が多くなり、装置が複雑で大掛かりとなってしまう。
【0014】
また、図24の光結合機構をレーザバーに適用するためには、図24(a)の円筒形レンズ81による送給ファイバ82への入射機構が複雑になる。
【0015】
そこで、本発明は、レーザバーからのレーザ光を簡単な構造で効率良く光ファイバへ入射することができる光導波路型光結合機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、発光素子を並列に複数個並べて構成される半導体レーザバーと、該半導体レーザバーの各発光素子から出射された光を導光させるコア部および該コア部の周囲に形成されたクラッド部からなる光導波路と、コアおよび該コアの周囲に形成され、前記コアへ光を閉じ込めるクラッドからなる光ファイバとを備え、前記光導波路が、前記光ファイバの側面に接合されており、前記半導体レーザバーから出射された光が前記光導波路のコア部を介して前記光ファイバのコアの側面へ入射されることを特徴とする光導波路型光結合機構である。
【0017】
請求項2の発明は、前記光導波路は、前記発光素子から出射された光の広がり角が前記光ファイバにおける光の受け入れ角以下になるテーパー状のコア部を有する請求項1記載の光導波路型光結合機構である。
【0018】
請求項3の発明は、前記光ファイバは、前記光導波路と接合されるコアの形状が、前記光導波路との接合面に対して平坦である請求項1または2記載の光導波路型光結合機構である。
【0019】
請求項4の発明は、前記光導波路は、前記コア部の形状を光導光軸に沿って変化させることにより伝播する光の広がり角を変換する機構を有する請求項2記載の光導波路型光結合機構である。
【0020】
請求項5の発明は、前記コア部は、半導体レーザバー側の側面がレンズ加工されている請求項2記載の光導波路型光結合機構である。
【0021】
請求項6の発明は、前記光導波路は、前記コア部内を伝播する前記発光素子から出射された光の方向を変換して前記光ファイバの側面へ導光する請求項1記載の光導波路型光結合機構である。
【0022】
請求項7の発明は、前記光ファイバは、希土類が添加されたコアとそのコアの周囲に形成された異なる2つのクラッドを有するファイバレーザ用ダブルクラッドファイバである請求項3記載の光導波路型光結合機構である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、レーザバーからのレーザ光を簡単な構造で効率良く光ファイバへ入射することができるという優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0025】
図1は、光導波路を用いて半導体レーザバーのレーザ光を光ファイバへ入射する本発明の光導波路型光結合機構の一実施の形態を示したものである。
【0026】
この光導波路型光結合機構は、半導体レーザバー10より出射されるレーザ光を、光導波路20を介して光ファイバ30の側面へ入射するものである。
【0027】
光導波路20は、半導体レーザバー10との接合及び光ファイバ30のコア31との接合を容易にするため、図示のような板状が好ましい。光導波路20のレーザバー10側の側面には、半導体レーザバー10の発光素子11と同じ間隔でコア部21が形成されており、半導体レーザバー10の各発光素子11から出射されるレーザ光は、このコア部21を伝送する。
【0028】
一方、レーザ光が入射される光ファイバ30において、コア31は、板状の光導波路20との接合を容易にすること及びレーザ光が入射されやすくするため、図示のように断面太鼓状など側面に平坦面をもつ非円形に形成するのが望ましい。
【0029】
図2に図1の装置のyz断面を示す。
【0030】
半導体レーザバー10の発光素子11は、図18にて説明したように、y軸方向の大きな広がり角を有し、一般に、その広がり角は約60度である。光ファイバの受け入れ角は、コアとクラッドの比屈折率差より決定されるが、一般に、大口径コアを有するマルチモード光ファイバのNAは0.2〜0.5(11度〜30度)である。よって、発光素子11のy軸方向の広がり角は、光ファイバの受け入れ角を上回り、光ファイバへの高効率な光接続ができない。
【0031】
そのため、y軸方向に対する広がり角を次第に減らすことを目的として図2の光導波路20のコア部21をテーパー形状とし、また出射側のクラッド部22の端面に反射コーティング23を形成する。
【0032】
ここで、y軸方向の広がり角に対し独立に扱うと、その減少は近似的に、以下で表される(図3参照)。
【0033】
Ds×sin(αs)=De×sin(αe) ・・・式(1)
よって、図3における反射コーティング23側の広がり角(αe)を光ファイバの受け入れ角以内又は等しくなるように、光導波路20の出力側(反射コーティング23側)におけるy軸方向のコア長Deを設定することにより、y軸方向に対して高効率に光ファイバ30と光結合を行うことができる。
【0034】
また、図4に示すように、反射コーティング側のy軸方向の広がり角(αe)を小さくするため、光導波路20のレーザバー10側(発光素子11側)の側面をレンズ加工した端面24とすることによっても高効率に光ファイバ30と光結合を行うことができる。
【0035】
ここで、図2〜4における光導波路20の光ファイバ側の側面には、光ファイバコア31へ入射した光が光ファイバコア31中を伝播する際、その光が光導波路20のクラッド22へ入射しないように反射コーティング23を施すことが、効率的な光結合を実現する上で有効である。
【0036】
図5に、図1におけるxz平面における1つの発光素子11及びその発光素子11より発光されるレーザ光を導光する光導波路20aのコア部21aを示す。このコア部21aは、形状変化部26と光ファイバ30aと結合する結合部27とを有する。
【0037】
x軸方向の発光素子11の広がり角は約6度であり、光ファイバ30aの受け入れ角より小さいため、発光素子11側の光導波路20のコア部21aの端部の幅Dssを変更しなくても光ファイバ30aへの光結合は可能である。
【0038】
ここで、この光結合は、y軸カップラーとなり、特許文献1にも記載されているが、その結合比は、受け入れ側コア面積(光ファイバコア面積)と、受け入れ側コア面積(光ファイバコア面積)と送給側コア面積(光導波路コア)の和、に対する比に比例する。よって、高効率に受け入れ側コアへ送給側コアの光を結合するためには送給側コア面積が小さいほうが望ましい。
【0039】
よって、図5に示すように、光ファイバ30aの受け入れ角とほぼ等しくなるようにDeeを小さくすることにより、より良い結合効率を得ることが可能である。当然ながら、光ファイバ30aの受け入れ角より光導波路20aのコア部21aの広がり角が大きくなると結合後に光ファイバ30a内を伝播することができず損失が発生するため、結合部27での光導波路20aのコア部21aの広がり角は、光ファイバ30aのコア31aの受け入れ角以下であることが好ましい。
【0040】
ここで、結合効率についての一例を説明する。
【0041】
半導体レーザバーにおける一つの発光素子11のサイズは、素子幅(図6におけるx軸方向)を100μm、高さを一般的な1μmとし、発光素子11のレーザ光Lの放射角は、y軸方向に60度、x軸方向に6度とした(図7(a)、(b))。
【0042】
図6は、光導波路20a内におけるコア部21aを簡略的に示したもので、コア部21aの形状変化部26では、図5に示したように曲がり部を有するが簡単のため、直線にて簡略化している。
【0043】
このレーザ光Lを入射させる光ファイバは、光導波路20aとの接合面が平らであることが望ましいので、簡単な説明のため図8に示すような、一辺が100μmの四角形の断面形状を有し、Yb,Er,Tmなどの希土類元素が添加されたコア31aと低屈折率樹脂を用いたクラッド32aとからなる光ファイバ30aを使用し、そのNAを0.46とした。ここで、コア31aの断面形状を四角形と定義したが、コア31aの光導波路20aと結合(接続)する面が光導波路の結合(接続)面に対して平ら(平行)となる形状であれば、図9(a)に示されるような太鼓状の非円形コア31a、図9(b)に示されるような多角形(8角形)のコア31aでも良い。
【0044】
光ファイバ30aの光の受け入れ角はNAより求められ、約28度である。ここで、各軸に対する広がり角と放射幅を独立に扱うと上述した式(1)の関係式より、光導波路20aの結合部27における各軸方向への放射角を28度と計算できる。
【0045】
結果は、図10(a)に示すようにy軸方向に約2μm、図10(b)に示すようにx軸方向に約23μmの放射幅を有する光導波路20aのコア形状にてレーザ光Lの放射角が28度になり、光ファイバ30aの受け入れ角とほぼ同じとなる。
【0046】
ここで、光ファイバへの結合効率は、先に述べたように、“受け入れ側である光ファイバのコア断面積”と“受け入れ側である光ファイバのコア断面積と光導波路結合部のコア断面積の和”の比に比例する。この例の場合、“受け入れ側である光ファイバのコア断面積”は、10000μm2であり、“受け入れ側である光ファイバのコア断面積と光導波路結合部のコア断面積の和”は、10046μm2となる。よって、光導波路コアからの光は、光ファイバコアへ99.5%結合する。
【0047】
ここで、図5でも説明したが、光導波路20aは板状であるため、y軸方向の加工が容易である。よって、光導波路20aのコア部21aのy軸方向のコア形状変化の効果の代わりに、レーザ入射側端面24を球面状に研磨し、平凸シリンドリカルレンズの効果を付加し、同様の効果を得ても良い(図11、12)。
【0048】
ここでの平凸シリンドリカルレンズの効果を有するためのレーザ入射側側面24の球面加工方法及び曲率設定については、一般的なレンズ加工法及び曲率設定と同様であるため記載を省く。
【0049】
次に、前記“BAC50c−9XX−03/04”からなる半導体レーザバーと光導波路を用いて上記構成を適用した場合の結合効率について記載する。
【0050】
ここで、光ファイバと光導波路との接合箇所を効率的に配置するため、図13に示すように、光ファイバ30cの両サイドより光導波路20cを用いて19個の発光素子11−1〜11−19からなるレーザバー10を結合した。
【0051】
すなわち、光ファイバ30cの両サイドに光導波路20cを設け、その光導波路20cに図5で説明したコア部21cを各発光素子11−1〜11−19に対応して形成し、それぞれのコア部21cに発光素子11−1〜11−19を結合し、コア部21cを光ファイバ30cの両サイドに結合部27にて結合して構成する。
【0052】
本構成にて光ファイバ30cへ入射した1番目の発光素子11−1のレーザ光は、その光量の99.5%は光ファイバ30cへ導光するが、残り0.5%は光導波路の結合部27にて損失となる。次に、2番目の発光素子11−2のレーザ光は、同様にその光量の99.5%は光ファイバ30cに結合するが、光ファイバ30cを導光していた1番目の発光素子11−1から結合した光のうち、0.5%は2番目の発光素子11−2のレーザ用光導波路コア部21cにおける結合部27にて損失となる。最後に、19番目の発光素子11−19の光結合部27では、発光素子11−19の光量の99.5%は光ファイバ30cに結合するが、結合までに光ファイバ30cを導光していた1〜18番目の発光素子11−1〜18より結合した光の0.5%が損失となる。
【0053】
よって、半導体レーザバー(発光素子19個×2)10を光ファイバ30cへの結合した際の光ファイバへの入射光量及び結合効率は、図14に示したようになる。
【0054】
ここで、一素子あたりのレーザ出力光は、2.63Wとした(19素子で50W出力の半導体レーザバーである)。光結合部にて光ファイバを導光していた光が損失として発生するため素子数が増加するほど効率は低くなるが、半導体レーザバーを2つ使用(38素子)使用した場合においても結合効率90%以上が得られる。
【0055】
本発明のもう一つの目的であるファイバレーザに使用する場合の適用例を図15で説明する。
【0056】
図15に示すように半導体レーザバー10のレーザ出力光を光導波路20を介してファイバレーザ用ダブルクラッドファイバ40に光結合したもので、ファイバレーザ用ダブルクラッドファイバ40は、Ybが添加された希土類添加コア41(外径:約5μm)の外周に、2つの異なるクラッドを形成したもので、該クラッドは、希土類添加コア41の外周に形成され、915nm又は975nmの波長を有する励起光を伝播させる励起光伝播コア(クラッド)42とその外周に形成されたクラッド43から構成されてなり、クラッド43までの外径は約130μmである。
【0057】
なお、図示していないが、クラッド43の外周に紫外線硬化型樹脂などからなる被覆層が形成されており、被覆層までの外径が約250μmである(例えば、Nufern社製のYDF−5/130)。
【0058】
光導波路20は、そのファイバレーザ用ダブルクラッドファイバ40の両側に沿って複数(図示では8×2個)が接続され、各光導波路10のコア部21が、励起光伝搬コア42の側面に結合される。
【0059】
この半導体レーザバー10のレーザ出力光を光導波路20を介して励起光伝播コア42へ光結合し、1030〜1080nmの波長を有するレーザ光が発光するが、図14に示すようにある効率(例えば90%)以上で光結合が可能な素子数を結合後、次の半導体レーザバー10と光導波路20を用いた光結合箇所まで一定の間隔s(例えば、励起光が90%以上吸収されるファイバレーザ用ダブルクラッドファイバ40のファイバ長)を置くことにより、励起光伝播コア42を伝播する半導体レーザバー10から光結合したレーザ光が希土類添加コア41へ吸収される。よって、励起光吸収後に再度、半導体レーザバー10と光導波路20を配置することで1本のファイバレーザ用ダブルクラッドファイバ40に対して沢山の励起光(レーザ光)を光結合することができる。
【0060】
また、図15に示すように、光導波路20を間隔pで対向するように配置し、ファイバレーザ用ダブルクラッドファイバ40の長手方向の両方向に励起光を伝播させることによって、その間隔p内のファイバレーザ用ダブルクラッドファイバ40に励起光のほとんどを吸収させることができ、一定の間隔sに対して2倍吸収させることができるとともに、吸収によって発生する熱量をファイバの長手方向に対して均一化(ファイバの長手方向に対する吸収光量を均一化)させることができる。
【0061】
次に本発明に用いる光導波路構造の例について説明する。
【0062】
本発明の光導波路構造において、光導波路20のコア部21は、接続する光ファイバコアと同じ材料又は同じ屈折率を有する材料が望ましい。例えば、石英にて励起光伝播コアを形成した光ファイバの場合、光導波路コアの材料も石英を選択することが望ましい。この場合、光導波路クラッドを石英の屈折率よりも低い屈折率からなる材料にて形成する(例えば、フッ素を添加した石英)ことが望ましい。
【0063】
又は、図16に示すように、空孔28を有するクラッド構造とすることによって、実効的な屈折率を下げてクラッド部22を形成しても良い。このとき、コア部21の周りにも同様の空孔部を形成してもよいが、製造を容易にするという点から、空孔クラッド部は光導波路コア部21の底辺のみとし、光導波路コア部21の側面及び上部は空気クラッドにしたり、屈折率の低い樹脂(図8に示した低屈折率樹脂クラッドと同じ材料でも良い)を用いて覆っても良い。
【0064】
また、図17(a)に示すように、石英よりも屈折率が低いガラス(例えば、フッ化物ガラス)50にパルスレーザ光52を集光レンズ53を介して照射し、図17(b)に示すように所望の形状を有する光導波路コア51を形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
【図2】図1のyz軸の断面図である。
【図3】図2の光導波路の断面図である。
【図4】図2の変形例を示す図である。
【図5】本発明の他の実施の形態を示す図である。
【図6】図5における光導波路のコア部を簡略して示した図である。
【図7】図5において発光素子のサイズと放射角を説明する図である。
【図8】図5における光ファイバの断面形状を示す図である。
【図9】図5における光ファイバの他の断面形状を示す図である。
【図10】図5において光導波路結合部のサイズと放射角を説明する図である。
【図11】図6のにおけるコア部の変形例を示す図である。
【図12】図11におけるコア部の入出射部のサイズと放射角を説明する図である。
【図13】本発明の他の実施の形態を示す図である。
【図14】本発明においてレーザ入力光と光ファイバへの結合効率の関係を示す図である。
【図15】本発明をファイバレーザに適用する場合の結合機構を示す図である。
【図16】本発明において、光導波路構造の例を示す図である。
【図17】本発明において、光導波路構造のコア部を形成する例を示す図である。
【図18】半導体レーザとしての発光素子を示す図である。
【図19】発光素子が組み込まれたレーザバーを示す図である。
【図20】レーザバーの出射光の広がり角を説明する図である。
【図21】従来の光導波路による半導体レーザと光ファイバの接続構造を示す図である。
【図22】従来の光導波路による半導体レーザと光ファイバの接続構造を示す図である。
【図23】図22において、バンドル光ファイバと光ファイバの断面形状を示す図である。
【図24】従来の光導波路による半導体レーザと光ファイバの接続構造を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
10 半導体レーザバー
11 発光素子
20 光導波路
21 コア部
22 クラッド部
30 光ファイバ
31 コア
32 クラッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザバーと光ファイバを光接続する光導波路型結合機構に係り、特にファイバレーザに適用される光導波路型結合機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザにおける発光部は、1つの発光素子を基本として、横方向に数十素子程度並べたものをレーザバー、レーザバーを縦に並べたものをレーザスタックと呼んでいる。
【0003】
レーザバーとして、Bookham社のレーザバー“BAC50c−9XX−03/04”のデータシートを参考にレーザバーの構成について説明する(2007年3月1日検索、インターネット<URL http://www.bookham.com/datasheets/hpld/BAC50C−9xx−03.cfm>)。
【0004】
レーザバー60は、図18に示すように、厚さ1μm、幅100μm、共振長24mmの一つの発光素子61を、図19に示すように、基板62内に横に500μm間隔で19個並べたものである。
【0005】
一般的に、図20に示すように、19個の発光素子61の発光部から出射される光は、x軸方向に広がり角θx(光量の90%)約6度、y軸方向に広がり角θy(光量の90%)約60度となる。
【0006】
よって、レーザバー60の発光部から十分離れたz軸上の発光領域63では、図20に示されるような形状となる。
【0007】
レーザバー60から出射した光を光ファイバ70へ入射する場合、図21に示すような光導波路構造65を用いてレーザバー60からの出射形状を楕円形状から円形状に変換し、光ファイバ70へ高効率に入射する方法がある(特許文献1)。
【0008】
この他に、図22に示すように、レーザバー60の発光素子61の一つ一つにバンドル用光ファイバ72を光結合し、そのバンドル用光ファイバ72を結束部72aで束ねてバンドル化72bした後、目的の光ファイバ70へ光接続する方法がある。ここで、レーザバー60のy軸方向の光広がり角が大きいため、コリメートレンズ71を用いてy軸方向の光広がり角を小さくしてからバンドル用光ファイバ72へ光接続する。バンドル用光ファイバ72と光ファイバ70の断面形状は図23に示すように、バンドル用光ファイバ72の最外層のコア73と光ファイバ70のコア74の径とが一致するようにされる。
【0009】
また、伝送用光ファイバを用いて半導体レーザのレーザ光を目的の光ファイバへ側面より入射する技術(特許文献2)として、図24(a)に示すように、半導体素子80(一つの発光素子)から出射される光ビームの形状を円筒形レンズ81を用いて変換し、伝送用光ファイバ(送給用ファイバ)82へ高効率に入射し、その送給用ファイバ82の他端において、図24(b)に示すように、送給用ファイバ82を通して、マルチモード光源84からの光量をマルチモードファイバ86へ側面より供給する方式がある。
【0010】
【特許文献1】特許第3607211号公報
【特許文献2】特許第3337691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、図21の光結合機構は、光導波路構造65を製造する上で難しい問題がある。また、レーザ光を入射させたい光ファイバ70の端面から入射させる方式(光接続)であるため、y軸方向への光の広がりが大きい場合、光ファイバ70にレーザ光を効率よく入射させることが困難である。
【0012】
図22のバンドルを用いた光結合機構は、バンドル用光ファイバ72へコリメートレンズ71を介在させるなどの手段を用いて光接続を行う必要があり、構造が複雑になる問題がある。また、バンドル部内にバンドル用光ファイバ72のクラッド層が含まれるため、図23に示すように、レーザ光が導波するコア73の領域以上に径が大きいコア74を要する光ファイバ70を用いないとレーザ光を高効率に入射させることができない。
【0013】
図24の光結合機構は、送給ファイバ82の1本当たり、1つの発光素子80からレーザ光を入射させることとなるため、複数の送給ファイバ82を用いる場合、レーザ光を入射させる発光素子80も送給ファイバ82と同数個必要となる。例えば、図24(b)に示すように、発光素子80から出射されたレーザ光が光ファイバ86へ側面から入射する際、1つの発光素子80につき、1本の送給ファイバ82が必要となるため、光ファイバ86への側面への光接続箇所が多くなり、装置が複雑で大掛かりとなってしまう。
【0014】
また、図24の光結合機構をレーザバーに適用するためには、図24(a)の円筒形レンズ81による送給ファイバ82への入射機構が複雑になる。
【0015】
そこで、本発明は、レーザバーからのレーザ光を簡単な構造で効率良く光ファイバへ入射することができる光導波路型光結合機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、発光素子を並列に複数個並べて構成される半導体レーザバーと、該半導体レーザバーの各発光素子から出射された光を導光させるコア部および該コア部の周囲に形成されたクラッド部からなる光導波路と、コアおよび該コアの周囲に形成され、前記コアへ光を閉じ込めるクラッドからなる光ファイバとを備え、前記光導波路が、前記光ファイバの側面に接合されており、前記半導体レーザバーから出射された光が前記光導波路のコア部を介して前記光ファイバのコアの側面へ入射されることを特徴とする光導波路型光結合機構である。
【0017】
請求項2の発明は、前記光導波路は、前記発光素子から出射された光の広がり角が前記光ファイバにおける光の受け入れ角以下になるテーパー状のコア部を有する請求項1記載の光導波路型光結合機構である。
【0018】
請求項3の発明は、前記光ファイバは、前記光導波路と接合されるコアの形状が、前記光導波路との接合面に対して平坦である請求項1または2記載の光導波路型光結合機構である。
【0019】
請求項4の発明は、前記光導波路は、前記コア部の形状を光導光軸に沿って変化させることにより伝播する光の広がり角を変換する機構を有する請求項2記載の光導波路型光結合機構である。
【0020】
請求項5の発明は、前記コア部は、半導体レーザバー側の側面がレンズ加工されている請求項2記載の光導波路型光結合機構である。
【0021】
請求項6の発明は、前記光導波路は、前記コア部内を伝播する前記発光素子から出射された光の方向を変換して前記光ファイバの側面へ導光する請求項1記載の光導波路型光結合機構である。
【0022】
請求項7の発明は、前記光ファイバは、希土類が添加されたコアとそのコアの周囲に形成された異なる2つのクラッドを有するファイバレーザ用ダブルクラッドファイバである請求項3記載の光導波路型光結合機構である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、レーザバーからのレーザ光を簡単な構造で効率良く光ファイバへ入射することができるという優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0025】
図1は、光導波路を用いて半導体レーザバーのレーザ光を光ファイバへ入射する本発明の光導波路型光結合機構の一実施の形態を示したものである。
【0026】
この光導波路型光結合機構は、半導体レーザバー10より出射されるレーザ光を、光導波路20を介して光ファイバ30の側面へ入射するものである。
【0027】
光導波路20は、半導体レーザバー10との接合及び光ファイバ30のコア31との接合を容易にするため、図示のような板状が好ましい。光導波路20のレーザバー10側の側面には、半導体レーザバー10の発光素子11と同じ間隔でコア部21が形成されており、半導体レーザバー10の各発光素子11から出射されるレーザ光は、このコア部21を伝送する。
【0028】
一方、レーザ光が入射される光ファイバ30において、コア31は、板状の光導波路20との接合を容易にすること及びレーザ光が入射されやすくするため、図示のように断面太鼓状など側面に平坦面をもつ非円形に形成するのが望ましい。
【0029】
図2に図1の装置のyz断面を示す。
【0030】
半導体レーザバー10の発光素子11は、図18にて説明したように、y軸方向の大きな広がり角を有し、一般に、その広がり角は約60度である。光ファイバの受け入れ角は、コアとクラッドの比屈折率差より決定されるが、一般に、大口径コアを有するマルチモード光ファイバのNAは0.2〜0.5(11度〜30度)である。よって、発光素子11のy軸方向の広がり角は、光ファイバの受け入れ角を上回り、光ファイバへの高効率な光接続ができない。
【0031】
そのため、y軸方向に対する広がり角を次第に減らすことを目的として図2の光導波路20のコア部21をテーパー形状とし、また出射側のクラッド部22の端面に反射コーティング23を形成する。
【0032】
ここで、y軸方向の広がり角に対し独立に扱うと、その減少は近似的に、以下で表される(図3参照)。
【0033】
Ds×sin(αs)=De×sin(αe) ・・・式(1)
よって、図3における反射コーティング23側の広がり角(αe)を光ファイバの受け入れ角以内又は等しくなるように、光導波路20の出力側(反射コーティング23側)におけるy軸方向のコア長Deを設定することにより、y軸方向に対して高効率に光ファイバ30と光結合を行うことができる。
【0034】
また、図4に示すように、反射コーティング側のy軸方向の広がり角(αe)を小さくするため、光導波路20のレーザバー10側(発光素子11側)の側面をレンズ加工した端面24とすることによっても高効率に光ファイバ30と光結合を行うことができる。
【0035】
ここで、図2〜4における光導波路20の光ファイバ側の側面には、光ファイバコア31へ入射した光が光ファイバコア31中を伝播する際、その光が光導波路20のクラッド22へ入射しないように反射コーティング23を施すことが、効率的な光結合を実現する上で有効である。
【0036】
図5に、図1におけるxz平面における1つの発光素子11及びその発光素子11より発光されるレーザ光を導光する光導波路20aのコア部21aを示す。このコア部21aは、形状変化部26と光ファイバ30aと結合する結合部27とを有する。
【0037】
x軸方向の発光素子11の広がり角は約6度であり、光ファイバ30aの受け入れ角より小さいため、発光素子11側の光導波路20のコア部21aの端部の幅Dssを変更しなくても光ファイバ30aへの光結合は可能である。
【0038】
ここで、この光結合は、y軸カップラーとなり、特許文献1にも記載されているが、その結合比は、受け入れ側コア面積(光ファイバコア面積)と、受け入れ側コア面積(光ファイバコア面積)と送給側コア面積(光導波路コア)の和、に対する比に比例する。よって、高効率に受け入れ側コアへ送給側コアの光を結合するためには送給側コア面積が小さいほうが望ましい。
【0039】
よって、図5に示すように、光ファイバ30aの受け入れ角とほぼ等しくなるようにDeeを小さくすることにより、より良い結合効率を得ることが可能である。当然ながら、光ファイバ30aの受け入れ角より光導波路20aのコア部21aの広がり角が大きくなると結合後に光ファイバ30a内を伝播することができず損失が発生するため、結合部27での光導波路20aのコア部21aの広がり角は、光ファイバ30aのコア31aの受け入れ角以下であることが好ましい。
【0040】
ここで、結合効率についての一例を説明する。
【0041】
半導体レーザバーにおける一つの発光素子11のサイズは、素子幅(図6におけるx軸方向)を100μm、高さを一般的な1μmとし、発光素子11のレーザ光Lの放射角は、y軸方向に60度、x軸方向に6度とした(図7(a)、(b))。
【0042】
図6は、光導波路20a内におけるコア部21aを簡略的に示したもので、コア部21aの形状変化部26では、図5に示したように曲がり部を有するが簡単のため、直線にて簡略化している。
【0043】
このレーザ光Lを入射させる光ファイバは、光導波路20aとの接合面が平らであることが望ましいので、簡単な説明のため図8に示すような、一辺が100μmの四角形の断面形状を有し、Yb,Er,Tmなどの希土類元素が添加されたコア31aと低屈折率樹脂を用いたクラッド32aとからなる光ファイバ30aを使用し、そのNAを0.46とした。ここで、コア31aの断面形状を四角形と定義したが、コア31aの光導波路20aと結合(接続)する面が光導波路の結合(接続)面に対して平ら(平行)となる形状であれば、図9(a)に示されるような太鼓状の非円形コア31a、図9(b)に示されるような多角形(8角形)のコア31aでも良い。
【0044】
光ファイバ30aの光の受け入れ角はNAより求められ、約28度である。ここで、各軸に対する広がり角と放射幅を独立に扱うと上述した式(1)の関係式より、光導波路20aの結合部27における各軸方向への放射角を28度と計算できる。
【0045】
結果は、図10(a)に示すようにy軸方向に約2μm、図10(b)に示すようにx軸方向に約23μmの放射幅を有する光導波路20aのコア形状にてレーザ光Lの放射角が28度になり、光ファイバ30aの受け入れ角とほぼ同じとなる。
【0046】
ここで、光ファイバへの結合効率は、先に述べたように、“受け入れ側である光ファイバのコア断面積”と“受け入れ側である光ファイバのコア断面積と光導波路結合部のコア断面積の和”の比に比例する。この例の場合、“受け入れ側である光ファイバのコア断面積”は、10000μm2であり、“受け入れ側である光ファイバのコア断面積と光導波路結合部のコア断面積の和”は、10046μm2となる。よって、光導波路コアからの光は、光ファイバコアへ99.5%結合する。
【0047】
ここで、図5でも説明したが、光導波路20aは板状であるため、y軸方向の加工が容易である。よって、光導波路20aのコア部21aのy軸方向のコア形状変化の効果の代わりに、レーザ入射側端面24を球面状に研磨し、平凸シリンドリカルレンズの効果を付加し、同様の効果を得ても良い(図11、12)。
【0048】
ここでの平凸シリンドリカルレンズの効果を有するためのレーザ入射側側面24の球面加工方法及び曲率設定については、一般的なレンズ加工法及び曲率設定と同様であるため記載を省く。
【0049】
次に、前記“BAC50c−9XX−03/04”からなる半導体レーザバーと光導波路を用いて上記構成を適用した場合の結合効率について記載する。
【0050】
ここで、光ファイバと光導波路との接合箇所を効率的に配置するため、図13に示すように、光ファイバ30cの両サイドより光導波路20cを用いて19個の発光素子11−1〜11−19からなるレーザバー10を結合した。
【0051】
すなわち、光ファイバ30cの両サイドに光導波路20cを設け、その光導波路20cに図5で説明したコア部21cを各発光素子11−1〜11−19に対応して形成し、それぞれのコア部21cに発光素子11−1〜11−19を結合し、コア部21cを光ファイバ30cの両サイドに結合部27にて結合して構成する。
【0052】
本構成にて光ファイバ30cへ入射した1番目の発光素子11−1のレーザ光は、その光量の99.5%は光ファイバ30cへ導光するが、残り0.5%は光導波路の結合部27にて損失となる。次に、2番目の発光素子11−2のレーザ光は、同様にその光量の99.5%は光ファイバ30cに結合するが、光ファイバ30cを導光していた1番目の発光素子11−1から結合した光のうち、0.5%は2番目の発光素子11−2のレーザ用光導波路コア部21cにおける結合部27にて損失となる。最後に、19番目の発光素子11−19の光結合部27では、発光素子11−19の光量の99.5%は光ファイバ30cに結合するが、結合までに光ファイバ30cを導光していた1〜18番目の発光素子11−1〜18より結合した光の0.5%が損失となる。
【0053】
よって、半導体レーザバー(発光素子19個×2)10を光ファイバ30cへの結合した際の光ファイバへの入射光量及び結合効率は、図14に示したようになる。
【0054】
ここで、一素子あたりのレーザ出力光は、2.63Wとした(19素子で50W出力の半導体レーザバーである)。光結合部にて光ファイバを導光していた光が損失として発生するため素子数が増加するほど効率は低くなるが、半導体レーザバーを2つ使用(38素子)使用した場合においても結合効率90%以上が得られる。
【0055】
本発明のもう一つの目的であるファイバレーザに使用する場合の適用例を図15で説明する。
【0056】
図15に示すように半導体レーザバー10のレーザ出力光を光導波路20を介してファイバレーザ用ダブルクラッドファイバ40に光結合したもので、ファイバレーザ用ダブルクラッドファイバ40は、Ybが添加された希土類添加コア41(外径:約5μm)の外周に、2つの異なるクラッドを形成したもので、該クラッドは、希土類添加コア41の外周に形成され、915nm又は975nmの波長を有する励起光を伝播させる励起光伝播コア(クラッド)42とその外周に形成されたクラッド43から構成されてなり、クラッド43までの外径は約130μmである。
【0057】
なお、図示していないが、クラッド43の外周に紫外線硬化型樹脂などからなる被覆層が形成されており、被覆層までの外径が約250μmである(例えば、Nufern社製のYDF−5/130)。
【0058】
光導波路20は、そのファイバレーザ用ダブルクラッドファイバ40の両側に沿って複数(図示では8×2個)が接続され、各光導波路10のコア部21が、励起光伝搬コア42の側面に結合される。
【0059】
この半導体レーザバー10のレーザ出力光を光導波路20を介して励起光伝播コア42へ光結合し、1030〜1080nmの波長を有するレーザ光が発光するが、図14に示すようにある効率(例えば90%)以上で光結合が可能な素子数を結合後、次の半導体レーザバー10と光導波路20を用いた光結合箇所まで一定の間隔s(例えば、励起光が90%以上吸収されるファイバレーザ用ダブルクラッドファイバ40のファイバ長)を置くことにより、励起光伝播コア42を伝播する半導体レーザバー10から光結合したレーザ光が希土類添加コア41へ吸収される。よって、励起光吸収後に再度、半導体レーザバー10と光導波路20を配置することで1本のファイバレーザ用ダブルクラッドファイバ40に対して沢山の励起光(レーザ光)を光結合することができる。
【0060】
また、図15に示すように、光導波路20を間隔pで対向するように配置し、ファイバレーザ用ダブルクラッドファイバ40の長手方向の両方向に励起光を伝播させることによって、その間隔p内のファイバレーザ用ダブルクラッドファイバ40に励起光のほとんどを吸収させることができ、一定の間隔sに対して2倍吸収させることができるとともに、吸収によって発生する熱量をファイバの長手方向に対して均一化(ファイバの長手方向に対する吸収光量を均一化)させることができる。
【0061】
次に本発明に用いる光導波路構造の例について説明する。
【0062】
本発明の光導波路構造において、光導波路20のコア部21は、接続する光ファイバコアと同じ材料又は同じ屈折率を有する材料が望ましい。例えば、石英にて励起光伝播コアを形成した光ファイバの場合、光導波路コアの材料も石英を選択することが望ましい。この場合、光導波路クラッドを石英の屈折率よりも低い屈折率からなる材料にて形成する(例えば、フッ素を添加した石英)ことが望ましい。
【0063】
又は、図16に示すように、空孔28を有するクラッド構造とすることによって、実効的な屈折率を下げてクラッド部22を形成しても良い。このとき、コア部21の周りにも同様の空孔部を形成してもよいが、製造を容易にするという点から、空孔クラッド部は光導波路コア部21の底辺のみとし、光導波路コア部21の側面及び上部は空気クラッドにしたり、屈折率の低い樹脂(図8に示した低屈折率樹脂クラッドと同じ材料でも良い)を用いて覆っても良い。
【0064】
また、図17(a)に示すように、石英よりも屈折率が低いガラス(例えば、フッ化物ガラス)50にパルスレーザ光52を集光レンズ53を介して照射し、図17(b)に示すように所望の形状を有する光導波路コア51を形成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図である。
【図2】図1のyz軸の断面図である。
【図3】図2の光導波路の断面図である。
【図4】図2の変形例を示す図である。
【図5】本発明の他の実施の形態を示す図である。
【図6】図5における光導波路のコア部を簡略して示した図である。
【図7】図5において発光素子のサイズと放射角を説明する図である。
【図8】図5における光ファイバの断面形状を示す図である。
【図9】図5における光ファイバの他の断面形状を示す図である。
【図10】図5において光導波路結合部のサイズと放射角を説明する図である。
【図11】図6のにおけるコア部の変形例を示す図である。
【図12】図11におけるコア部の入出射部のサイズと放射角を説明する図である。
【図13】本発明の他の実施の形態を示す図である。
【図14】本発明においてレーザ入力光と光ファイバへの結合効率の関係を示す図である。
【図15】本発明をファイバレーザに適用する場合の結合機構を示す図である。
【図16】本発明において、光導波路構造の例を示す図である。
【図17】本発明において、光導波路構造のコア部を形成する例を示す図である。
【図18】半導体レーザとしての発光素子を示す図である。
【図19】発光素子が組み込まれたレーザバーを示す図である。
【図20】レーザバーの出射光の広がり角を説明する図である。
【図21】従来の光導波路による半導体レーザと光ファイバの接続構造を示す図である。
【図22】従来の光導波路による半導体レーザと光ファイバの接続構造を示す図である。
【図23】図22において、バンドル光ファイバと光ファイバの断面形状を示す図である。
【図24】従来の光導波路による半導体レーザと光ファイバの接続構造を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
10 半導体レーザバー
11 発光素子
20 光導波路
21 コア部
22 クラッド部
30 光ファイバ
31 コア
32 クラッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を並列に複数個並べて構成される半導体レーザバーと、該半導体レーザバーの各発光素子から出射された光を導光させるコア部および該コア部の周囲に形成されたクラッド部からなる光導波路と、コアおよび該コアの周囲に形成され、前記コアへ光を閉じ込めるクラッドからなる光ファイバとを備え、前記光導波路が、前記光ファイバの側面に接合されており、前記半導体レーザバーから出射された光が前記光導波路のコア部を介して前記光ファイバのコアの側面へ入射されることを特徴とする光導波路型光結合機構。
【請求項2】
前記光導波路は、前記発光素子から出射された光の広がり角が前記光ファイバにおける光の受け入れ角以下になるテーパー状のコア部を有する請求項1記載の光導波路型光結合機構。
【請求項3】
前記光ファイバは、前記光導波路と接合されるコアの形状が、前記光導波路との接合面に対して平坦である請求項1または2記載の光導波路型光結合機構。
【請求項4】
前記光導波路は、前記コア部の形状を光導光軸に沿って変化させることにより伝播する光の広がり角を変換する機構を有する請求項2記載の光導波路型光結合機構。
【請求項5】
前記コア部は、半導体レーザバー側の側面がレンズ加工されている請求項2記載の光導波路型光結合機構。
【請求項6】
前記光導波路は、前記コア部内を伝播する前記発光素子から出射された光の方向を変換して前記光ファイバの側面へ導光する請求項1記載の光導波路型光結合機構。
【請求項7】
前記光ファイバは、希土類が添加されたコアとそのコアの周囲に形成された異なる2つのクラッドを有するファイバレーザ用ダブルクラッドファイバである請求項3記載の光導波路型光結合機構。
【請求項1】
発光素子を並列に複数個並べて構成される半導体レーザバーと、該半導体レーザバーの各発光素子から出射された光を導光させるコア部および該コア部の周囲に形成されたクラッド部からなる光導波路と、コアおよび該コアの周囲に形成され、前記コアへ光を閉じ込めるクラッドからなる光ファイバとを備え、前記光導波路が、前記光ファイバの側面に接合されており、前記半導体レーザバーから出射された光が前記光導波路のコア部を介して前記光ファイバのコアの側面へ入射されることを特徴とする光導波路型光結合機構。
【請求項2】
前記光導波路は、前記発光素子から出射された光の広がり角が前記光ファイバにおける光の受け入れ角以下になるテーパー状のコア部を有する請求項1記載の光導波路型光結合機構。
【請求項3】
前記光ファイバは、前記光導波路と接合されるコアの形状が、前記光導波路との接合面に対して平坦である請求項1または2記載の光導波路型光結合機構。
【請求項4】
前記光導波路は、前記コア部の形状を光導光軸に沿って変化させることにより伝播する光の広がり角を変換する機構を有する請求項2記載の光導波路型光結合機構。
【請求項5】
前記コア部は、半導体レーザバー側の側面がレンズ加工されている請求項2記載の光導波路型光結合機構。
【請求項6】
前記光導波路は、前記コア部内を伝播する前記発光素子から出射された光の方向を変換して前記光ファイバの側面へ導光する請求項1記載の光導波路型光結合機構。
【請求項7】
前記光ファイバは、希土類が添加されたコアとそのコアの周囲に形成された異なる2つのクラッドを有するファイバレーザ用ダブルクラッドファイバである請求項3記載の光導波路型光結合機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2009−47979(P2009−47979A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214652(P2007−214652)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(592032636)学校法人トヨタ学園 (57)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【出願人】(592032636)学校法人トヨタ学園 (57)
【Fターム(参考)】
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