説明

光素子搭載基板、光電気混載基板および電子機器

【課題】光素子実装時に位置合わせが容易にできる光素子搭載基板、かかる光素子搭載基板を備え、光伝播性能および生産性に優れた光電気混載基板、および前記光素子搭載基板又は前記光電気混載基板を備えた電子機器を提供すること。
【解決手段】光導波路が形成された光回路層に積層され、かつ、受光部又は発光部4を有する光素子3を搭載した光素子搭載基板であって、電気回路層2と絶縁基板1とが積層してなり、かつ、前記光素子搭載基板は、前記電気回路層側又は前記絶縁基板側に厚さ方向に少なくとも一つの凹部を有し、前記光素子の少なくとも一部が前記凹部内に収納されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光素子搭載基板、光電気混載基板および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化の波とともに、大容量の情報を高速でやりとりできる広帯域回線(ブロードバンド)の普及が進んでいる。また、これらの広帯域回線に情報を伝送する装置として、ルーター装置、WDM(Wavelength Division Multiplexing)装置等の伝送装置が用いられている。これらの伝送装置内には、LSIのような演算素子、メモリーのような記憶素子等が組み合わされた信号処理基板が多数設置されており、各回線の相互接続を担っている。
各信号処理基板には、演算素子や記憶素子等が電気配線で接続された回路が構築されているが、近年、処理する情報量の増大に伴って、各基板では、極めて高いスループットで情報を伝送することが要求されている。しかしながら、情報伝送の高速化に伴い、クロストークや高周波ノイズの発生、電気信号の劣化、特性インピーダンスの不整合等の問題が顕在化しつつある。このため、電気配線がボトルネックとなって、信号処理基板のスループットの向上が困難になっている。
【0003】
一方、光搬送波を使用してデータを移送する光通信技術が開発され、近年、この光搬送波を、一地点から他地点に導くための手段として、光導波路が普及しつつある。この光導波路は、線状のコア部と、その周囲を覆うように設けられたクラッド部とを有している。コア部は、光搬送波の光に対して実質的に透明な材料によって構成され、クラッド部は、コア部より屈折率が低い材料によって構成されている。
このような光導波路では、コア部の一端から導入された光が、クラッド部との境界で反射しながら他端に搬送される。光導波路の入射側には、半導体レーザー等の発光素子が配置され、出射側には、フォトダイオード等の受光素子が配置される。発光素子から入射された光は光導波路を伝搬し、受光素子により受光され、受光した光の明滅パターンに基づいて通信を行う。
【0004】
最近になって、信号処理基板内の電気配線を光導波路で置き換える動きが進んでいる。電気配線を光導波路で置き換えることにより、前述したような電気配線の問題が解消され、信号処理基板のさらなる高スループット化が可能になると期待されている。
そして、演算素子や記憶素子はもちろん、光信号と電気信号の相互変換を担う発光素子や受光素子のような各素子の駆動には電力を供給するための電気配線が不可欠である。このため信号処理基板には、電気配線と光導波路とが混載されることとなり、このような基板(光電気混載基板)の開発が進められている。
【0005】
光電気混載基板において、受発光素子の受発光点と光導波路の位置合わせは、非常に高精度であることが要求され、様々な試みがなされている。
例えば、特許文献1には、上下認識カメラを介して光導波路基板と受発光点の位置合わせを行う方法について記載されている。しかしながら、複数の発光点を使用し、位置ずれの許容範囲を大きくする発明であり、より精密な導波路構造への対応は困難である。また、複数の発光点を準備することや、各発光点の光結合効率を測定し使用する発光点を決める等、多大な工数を必要とする。
一方、特許文献2には、光スルーホールを使用した光電気複合基板について記載されている。これは、一般的な光結合方法であるが、光スルーホールを形成する基板が分厚い場合、受発光点と、光導波路の距離が広くなり、光結合損失が大きくなる懸念がある。
特許文献3には、絶縁樹脂層に段差部を設け、段差部を接合位置決めガイドとし、光素子搭載基板と光導波路を接合することが記載されている。この方法によると、位置合わせが容易であり、光学素子と光導波路の光学的接続を精度良く行うことができる。しかしながら、光導波路が高分子材料で形成されたものである場合、光導波路の作製工程において加熱等により寸法変化が生じ、段差部に接合することが困難となる。また、光導波路のコアパターンを変更した場合、絶縁樹脂層と光学素子の配置も変更が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−258863号公報
【特許文献2】特開2007−148087号公報
【特許文献3】特開2009−288636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光素子実装時に位置合わせが容易にできる光素子搭載基板、かかる光素子搭載基板を備え、光伝播性能および生産性に優れた光電気混載基板、および光素子搭載基板又は光電気混載基板を備えた電子機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、光導波路が形成された光回路層に積層され、かつ、受光部又は発光部を有する光素子を搭載した光素子搭載基板であって、
電気回路層と絶縁基板とが積層してなり、かつ、前記光素子搭載基板は、前記電気回路層側又は前記絶縁基板側に厚さ方向に少なくとも一つの凹部を有し、前記光素子の少なくとも一部が前記凹部内に収納されていることを特徴とする光素子搭載基板である。
また、本発明は、光導波路が形成された光回路層の一面に、上記光素子搭載基板を積層することを特徴とする光電気混載基板である。
また、本発明は、上記光素子搭載基板を備えたことを特徴とする電子機器である。
また、本発明は、上記光電気混載基板を備えたことを特徴とする電子機器である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光素子搭載基板への光素子実装時に位置合わせが容易であり、総厚が薄い光素子搭載基板が得られる。また、光素子搭載基板を備え、光導波路と受発光素子との間の結合損失が十分に抑制された光電気混載基板、および光素子搭載基板又は光電気混載基板を備えた電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の光電気混載基板の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の光素子搭載基板の一実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の光素子搭載基板の一実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の光素子搭載基板の一実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の光素子搭載基板の一実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明の光電気混載基板の一実施形態を示す断面図である。
【図7】光導波路の一実施形態を示す断面図である。
【図8】本発明の光素子搭載基板の一実施形態を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の光素子搭載基板、光電気混載基板および電子機器について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0012】
(第一実施形態)
〈光電気混載基板100〉
図1は、本実施形態の光電気混載基板100の一例を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明では、図中の上側を「上」、下側を「下」という。また、断面図では、各基板の厚さ方向を強調して描いている。
本実施形態の光電気混載基板は、本実施形態の光素子搭載基板10と、光導波路が形成された光回路層20が積層されたものである。光素子搭載基板10に搭載されている光素子3は、電極5および受光部又は発光部4を有するものであり、電極5は電気回路層2と電気接続を、受光部又は発光部4は光導波路200と光通信をそれぞれ行うものである。光導波路200において、光9はコア部210内を伝搬するが、光路変換部213で進行方向が変化し、光素子3の受光部又は発光部4と光の授受が行われる。尚、図1において、光9は、受光部又は発光部4が発光部として機能している際の光9の進行方向を示す。
光素子3の受光部又は発光部4と、光回路層20の上面の距離は1μm〜50μmであることが好ましい。これにより、光素子搭載基板10に搭載された光素子3と光回路層20との光通信を高効率で行うことができる。
続いて、光素子搭載基板10及び光回路層20について説明する。
【0013】
〈光素子搭載基板10〉
本実施形態の光素子搭載基板10は、電気回路層2と絶縁基板1とが積層したものである。これにより、光回路層20に電気回路層2を直接積層し、効率的に光の伝搬を行うことができる。
光素子搭載基板10は、電気回路層2側又は絶縁基板1側に厚さ方向に凹部を少なくとも1つ有しており、光素子3の少なくとも一部は凹部内に収納されている。図1では、絶縁基板1側に凹部を有する例を示している。
【0014】
〈光素子3〉
図2に示す光素子3は、受光部又は発光部4及び電極5をその外表面に有するものである。
本実施形態において、光素子3は直方体状をなしており、その1つの面の中央部に受光部又は発光部4が設けられている。また、受光部又は発光部4を挟んでその左右には、それぞれ電極5が設けられている。
図2に示す光素子3は、受光部又は発光部4や電極5が設けられた面を、電気回路層2が設けられた側に向けて凹部内に収納される。これにより、自ずと電極5がスルーホール6上に位置することとなるため、光素子3の搭載位置を決めるのが容易であり、電気的接続が確立される。
また、光素子3は、光回路層20を積層する側の面に受光部又は発光部4を有しており、光素子搭載基板10と光回路層20を積層した際に、光回路層20と光の通信を行うことが出来る。また、受光部又は発光部4は、両方の機能を併せ持つ受発光部であっても良い。
【0015】
このような光素子3としては、面発光レーザー(VCSEL)、発光ダイオード(LED)等の発光素子、フォトダイオード(PD、APD)等の受光素子が挙げられる。
また、各電極5の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、金、銀、白金等が挙げられる。
【0016】
また、図2では、光素子3の上面が、絶縁基板1の光素子搭載部を除く領域より高い位置にあり、光素子搭載基板10において、光素子3が上に凸となる形状であるが、絶縁基板1および電気回路層2の厚みの合計より、光素子3の厚みが小さい場合、光素子3の上面が光素子搭載基板1の上面と同じ高さであっても良い。また、光素子3の上面が絶縁基板1の上面より低い位置であっても良く、その場合、アンダーフィル7を光素子3の上面に配しても良い。
前記凹部における絶縁基板1及び電気回路層2の厚さは、1μm〜10μmであることが好ましい。これにより、光素子搭載基板10の機械的強度を維持しつつ、光電気混載基板100における電気接続、光通信の信頼性をより向上することが出来る。
【0017】
図8は、図2に記載の光素子搭載基板10の上面図である。上面視において、前記凹部の面積は、光素子3の面積に対し、1.1〜3倍であることが好ましい。尚、前記凹部は、前記光素子3を収納するため、搭載する光素子3を納めることが可能な形状とする必要がある。また、前記光素子3の壁面と前記凹部の内壁面の間に、少なくとも1つの間隙があることが好ましい。これにより、光素子搭載基板10に光素子3を搭載する際の作業性が向上し、さらに、前記間隙よりアンダーフィル材7を流し込むことが出来る。
【0018】
特に限定されないが、上面視において、凹部の形状は、光素子3の形状と相似する形状が好ましい。これにより、省スペース化することができ、かつ、光素子3の実装位置の判別が容易となる。
【0019】
また、光素子3は、その下面に電極5を有しており、電気回路層2と電気接続されている。電極5と電気回路層2の間に存在する絶縁基板1には、スルーホール6が形成されており、スルーホール6を介して電気接続されている。
スルーホール穴加工後にスルーホール内壁の導通処理を行う工法としては無電解銅めっき法、ダイレクトめっき法等数々の処理方法が実用化されているが特に限定しない。
前記スルーホールに使用される導電性材料としては、各種ハンダ、各種ろう材、各種導電性ペースト(インク)等が挙げられる。
このうち、ハンダおよびろう材としては、Sn−Pb系の鉛ハンダの他、Sn−Ag−Cu系、Sn−Zn−Bi系、Sn−Cu系、Sn−Ag−In−Bi系、Sn−Zn−Al系の各種鉛フリーハンダ、JISに規定された各種低温ろう材等が挙げられる。
また、導電性ペースト(インク)としては、例えば、ハンダペースト、Agペースト、Cuペースト、Auペースト、またはこれらのインク等が挙げられる。これらの導電性ペースト(インク)は、乾燥前の状態でも導電性を有するが、乾燥または焼成により、優れた導電性を示す。
【0020】
電気回路層2は、光素子搭載基板10の積層方向において、光素子の受光部又は発光部4の少なくとも一部は、電気回路層2における電気配線と重ならないことが好ましい。これにより、電気回路層2の下に積層される光回路層20との光学的接続をスムーズに行うことができる。
【0021】
凹部と、凹部に実装する光素子3の間における空隙には、アンダーフィル剤を充填し、かつ、硬化したものであることが好ましい。これにより、光素子3を凹部内に確実に保持することができる。アンダーフィル剤の充填は、凹部にアンダーフィル剤を充填した後に、光素子を実装しても良いし、光素子実装後に、アンダーフィル剤を充填しても良い。アンダーフィル充填後に光素子を実装する場合、凹部と光素子の間における空隙を隙間なく充填することができる、また、光素子実装後にアンダーフィル剤を充填する場合も、凹部と光素子の間における空隙が非常に狭いため、毛細管現象により隙間なくアンダーフィル剤を充填することができる。
前記アンダーフィル剤は、硬化後、前記光素子の使用する光の波長において90%以上の透過性を有する樹脂からなる群から選ばれることが好ましい。ここで、前記光素子の使用する光の波長とは、本実施形態の光素子3から発光又は受光され、光回路層20を伝搬する光の波長を指す。前記光素子の使用する光の波長に分布が生じる場合は、前記光素子の使用する光の最も強度の強い波長において、90%以上の透過性を有する樹脂からなる群から選ばれることが好ましい。また、前記透過性は、硬化後50μmの厚さに成形した樹脂を測定したものとする。
これにより、受光部または発光部と光導波路との間に空気層がなくなり、空気層と絶縁基板との界面で発生する反射を無くし、光の伝搬を効率よく行うという効果を奏する。具体的には、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、シリコン樹脂、シリケート樹脂、BCB樹脂、ノルボルネン樹脂、有機無機ハイブリッド樹脂等が挙げられる。
【0022】
絶縁基板1は、電気回路層2に積層されている。
絶縁基板1としては、可撓性の高いフレキシブル基板や、剛性の高いリジッド基板が用いられる。
このうち、フレキシブル基板の具体例としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド等のフィルムを用いたフレキシブル絶縁基板が挙げられる。
また、フレキシブル基板の平均厚さは、光素子搭載基板10の可撓性および薄型化の観点から、5μm〜200μm程度であるのが好ましく、10μm〜100μm程度であるのがより好ましい。このような厚さのフレキシブル基板であれば、十分な可撓性を有するとともに、自重や搭載する各種素子の重量によって意図せず変形してしまうことが防止される。
一方、リジッド基板の具体例としては、ガラス布・エポキシ銅張積層板等のガラス基材銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板等のコンポジット銅張積層板、ポリエーテルイミド樹脂基板、ポリエーテルケトン樹脂基板、ポリサルフォン系樹脂基板等に含まれる耐熱・熱可塑性の有機系リジッド基板や、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板等に含まれるセラミックス系リジッド基板が挙げられる。
【0023】
絶縁基板1の構成材料は、前記光素子の使用する光の波長において透明であることが好ましい。ここで、前記光素子の使用する光の波長とは、本実施形態の光素子3から発光又は受光され、光回路層20を伝搬する光の波長を指す。前記光の波長に分布が生じる場合は、前記絶縁基板1の構成材料は、前記光素子の使用する光の最も強度の強い波長において、透明であることが好ましい。これにより、受光部又は発光部4と光回路層20との光の伝搬を、効率よく行うことができる。ここで、特定の波長において90%以上の透過性を有することを、その波長において透明であると定義する。また、前記透過性は、絶縁基板1の厚さ方向において測定したものとする。
このような、絶縁基材1の構成材料としては、光回路層20を伝搬する光の波長によって異なるが、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ガラス布エポキシ基板、ガラス基板等が挙げられる。
【0024】
一方、電気回路層2には、例えば、一旦全面に形成された導電層を直線状にパターニングする方法、あらかじめ線状にパターニングされた導電層を転写する方法等により、電気配線が形成される。この電気配線は、光素子3の受光部又は発光部4と、図示しない電源や各種ICとの間を電気的に接続するものであり、光素子3に駆動電力を供給したり、制御信号を送出したりするものである。かかる電気配線により、光素子3の駆動を制御することができる。
電気回路層(電気配線)2の平均厚さは、電気回路層2の構成材料や電気配線に要求される電気抵抗値等に応じて適宜設定されるものの、一例として1μm〜30μm程度とされる。
また、電気配線2の幅も、電気回路層2の構成材料や電気回路層2に要求される電気抵抗値等に応じて適宜設定されるものの、一例として2μm〜1000μm程度であるのが好ましく、5〜500μm程度であるのがより好ましい。
電気回路層2の構成材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等の各種金属材料が挙げられる。
【0025】
〈光回路層20〉
本発明に用いられる光回路層は、従来用いられるどのような光回路層を用いても良い。以下に、その一例について説明する。
図1に示す光回路層20は、光導波路200を有するものである。必要に応じて、支持基板等を備えていても良い。光導波路200は、下方からクラッド層(下部クラッド層)220、コア層210、およびクラッド層(上部クラッド層)230をこの順で積層してなる光導波路200で構成されている。また、図7は、光導波路200を、光導波路200の延伸方向に対して垂直に切断した断面図である。コア層210には、図7に示すように、コア部211と、このコア部211の側面に隣接する側面クラッド部212とが形成されている。
【0026】
光導波路200では、コア部211の一方の端部に入射された光を、コア部211とクラッド部(各クラッド層220、230および各側面クラッド部212)との界面で全反射させ、他方の端部に伝搬させることができる。これにより、出射端で受光した光の明滅パターンに基づいて光通信を行うことができる。
【0027】
コア部211とクラッド部との界面で全反射を生じさせるためには、界面に屈折率差が存在する必要がある。コア部211の屈折率は、クラッド部の屈折率より大きければよいが、その差は特に限定されないものの、0.5%以上であるのが好ましく、0.8%以上であるのがより好ましい。一方、上限値は、特に設定されなくてもよいが、好ましくは5.5%程度とされる。屈折率の差が前記下限値未満であると光を伝達する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えても、光の伝送効率のそれ以上の増大は期待できない。
なお、前記屈折率差とは、コア部211の屈折率をA、クラッド部の屈折率をBとしたとき、次式で表わされる。
屈折率差(%)=|A/B−1|×100
【0028】
また、図7に示す構成では、コア部211の横断面形状は、正方形または矩形(長方形)のような四角形であるのが一般的であるが、特に限定されず、真円、楕円のような円形、菱形、三角形、五角形のような多角形であってもよい。また、平面視では、直線状に形成されていても良いし、途中で湾曲、分岐等していてもよく、その形状は任意である。
コア部211の幅および高さは、特に限定されないが、それぞれ、1μm〜200μm程度であるのが好ましく、5μm〜100μm程度であるのがより好ましく、20μm〜70μm程度であるのがさらに好ましい。
【0029】
コア層210の構成材料は、上記の屈折率差が生じる材料であれば特に限定されないが、具体的には、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂のような各種樹脂材料の他、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス材料等を用いることができる。
また、これらの中でも特にノルボルネン系樹脂が好ましい。これらのノルボルネン系ポリマーは、例えば、開環メタセシス重合(ROMP)、ROMPと水素化反応との組み合わせ、ラジカルまたはカチオンによる重合、カチオン性パラジウム重合開始剤を用いた重合、これ以外の重合開始剤(例えば、ニッケルや他の遷移金属の重合開始剤)を用いた重合等、公知のすべての重合方法で得ることができる。
【0030】
また、コア部211、側面クラッド部212の構成材料として、上述のような屈折率差が生じる材料を用いない場合は、異なる構成材料で作成されたコア部211および側面クラッド部212を組み合わせて用いても良い。なお、光の減衰を抑制する観点からは、コア部211の構成材料と側面クラッド部212の構成材料との密着性(親和性)が高いことも重要である。
【0031】
一方、各クラッド層220、230は、それぞれ、コア層210の下部および上部に位置するクラッド部を構成するものである。このような各クラッド層220、230は、側面クラッド部212とともに、コア部211の外周を囲むクラッド部を構成し、これにより光導波路200は導光路として機能する。
クラッド層220、230の平均厚さは、コア層210の平均厚さ(各コア部211の平均高さ)の0.1〜1.5倍程度であるのが好ましく、0.2〜1.25倍程度であるのがより好ましく、具体的には、クラッド層220、230の平均厚さは、特に限定されないが、それぞれ、通常、1μm〜200μm程度であるのが好ましく、5μm〜100μm程度であるのがより好ましく、10μm〜60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、光回路層20が必要以上に大型化(厚膜化)するのを防止しつつ、クラッド層としての機能が好適に発揮される。
また、各クラッド層220、230の構成材料としては、例えば、前述したコア層210の構成材料と同様の材料を用いることができるが、特にノルボルネン系ポリマーが好ましい。
また、コア層210の構成材料およびクラッド層220、230の構成材料を選択する場合、両者の間の屈折率差を考慮して材料を選択すればよい。具体的には、コア層210とクラッド層220、230との境界において光を確実に全反射させるため、コア層210の構成材料の屈折率が、クラッド層220、230の屈折率に対して十分に大きくなるように材料を選択すればよい。これにより、光回路層20の厚さ方向において十分な屈折率差が得られ、コア部211からクラッド層220、230に光が漏れ出るのを抑制することができる。
なお、光の減衰を抑制する観点からは、コア層210の構成材料とクラッド層220、230の構成材料との密着性(親和性)が高いことも重要である。
【0032】
本実施形態は以下のような効果を奏する。
本実施形態の光素子搭載基板は、光導波路が形成された光回路層に積層され、かつ、受光部又は発光部を有する光素子を搭載した光素子搭載基板であって、電気回路層と絶縁基板とが積層してなり、かつ、前記光素子搭載基板は、前記電気回路層側又は前記絶縁基板側に厚さ方向に少なくとも一つの凹部を有し、受光部又は発光部を有する光素子の少なくとも1部が前記凹部内に収納されている。
光素子3が光素子搭載基板10の凹部内に少なくとも一部が収納されることにより、本実施形態の光素子搭載基板10の厚みは薄くなり、省スペース化することが出来るため、本実施形態の電子機器を小型化することが出来る。また、本実施形態において、電気回路層2の上面に絶縁基板1が積層される光素子搭載基板10は、光素子3の電極5と電気回路層2の距離が短くなるため、電気接続の信頼性が向上する。また、前記光素子搭載基板10を光回路層20の上面に積層した際に、光素子3の受光部又は発光部4と、光導波路200との距離が短くなるため、光通信の信頼性も向上する。
【0033】
本実施形態の光素子搭載基板は、凹部における絶縁基板1及び電気回路層2の厚さは、1μm〜10μmであってもよい。
これにより、光素子搭載基板10の機械的強度を維持しつつ、光電気混載基板100の電気接続、光通信の信頼性をより向上することが出来る。
【0034】
本実施形態の光素子搭載基板は、前記光素子搭載基板の積層方向において、前記光素子の受光部又は発光部の少なくとも一部は、前記電気回路層における電気配線と重ならないものであることが好ましい。
これにより、光素子3の受光部又は発光部4と、光導波路200の間における光の授受をスムーズに行うことが出来る。
【0035】
本実施形態の光素子搭載基板は、電気回路層2上に絶縁基板1が積層されたものであることが好ましい。
これにより、光素子搭載基板10の凹部に光素子3を収納した際に、光素子3の電極5と電気回路層2の距離、および光素子3の受光部又は発光部4と、光導波路200との距離を同時に短縮できるため、電気接続および光通信の信頼性を向上することが出来る。
【0036】
本実施形態の光素子搭載基板は、前記凹部と前記凹部に実装する前記光素子の間における空隙には、アンダーフィル剤を充填し、硬化したものであることが好ましい。
これにより、前記凹部内に確実に光素子3を固定することができ、物理的強度を向上することができる。さらに、前記受光部又は発光部4と光路変換部213との位置ずれを防止することが出来るため、光路変換部213における光伝搬損失を抑制することが出来る。また、アンダーフィル剤が充填されていることにより、前記凹部と前記凹部に実装する前記光素子3の間を伝搬する伝搬光が拡散、反射することを防ぐことが出来るため、光通信の信頼性を向上することが出来る。
【0037】
本実施形態の光素子搭載基板において、前記アンダーフィル剤は、硬化後、前記光素子の使用する光の波長において90%以上の透過性を有する樹脂からなる群から選ばれることが好ましい。
前述したアンダーフィル剤は実質的に透明であるため、光導波路200における前記光路変換部213と受光部又は発光部4の間における光の伝搬を妨げない。また、絶縁基板1の構成材料の屈折率と近い材料を用いることにより、絶縁基板1とアンダーフィル7の界面における伝搬光の反射・拡散を抑制することができるため、光通信の信頼性を向上することが出来る。
【0038】
本実施形態の光素子搭載基板において、絶縁基板1の構成材料は、前記光素子の使用する光の波長において透明であることが好ましい。ここで、透明とは、前記光素子の使用する光の波長において、90%以上の透過率を有することを指す。
これにより、前記凹部において、光素子3の受光部又は発光部4と、光導波路200における光路変換部213との間において容易に光を伝搬することができる。また、前記凹部において絶縁基板1を薄くしても、機械的強度の高い光素子搭載基板とすることができる。
また、前記絶縁基板の構成材料は、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ガラス布エポキシ基板、ガラス基板からなる群から選ばれるものであることが好ましい。
これらの材料を用いることにより、さらに光の伝搬損失を抑制することが出来る。
【0039】
本実施形態の光素子搭載基板は、上面視において、前記凹部の面積は、前記光素子の面積に対し1.1〜3倍であることが好ましい。
これにより、光素子3と光導波路200の光通信が確実に出来る実装位置の判別が容易であり、また、前記凹部内への光素子3の収納を容易に行うことが出来るため、光素子3実装時の作業性が高いものとなる。
【0040】
本実施形態の光素子搭載基板は、光素子3と、電気回路層2とが、絶縁基板1に形成されたスルーホール6を介して電気接続されていることが好ましい。
これにより、前記電気回路層2と光素子3の電気接続を確実なものとすることができる。また、図2に示すように、前記凹部の底面にスルーホール6を形成する場合は、絶縁基板1が他の部分より薄いため、スルーホールの形成が容易である。
【0041】
(第2実施形態)
以下、図3に示す本実施形態における光素子搭載基板10について説明するが、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図3において、上述した実施形態と同様の構成部分については、先に説明した図2と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0042】
図3に示す光素子搭載基板10は、絶縁基板1の凹部に貫通孔8が設けられたこと以外は、図2に示す実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態では、絶縁基板1の凹部における領域であって、光素子3の受光部又は発光部4の少なくとも一部と、光回路層20の光路変換部213の少なくとも一部とをつなぐ領域に、絶縁基板1の凹部を貫通する貫通孔8を有するものである。
このような構成では、光素子3の受光部又は発光部4と、光回路層20の光路変換部213の間における界面が、上述した実施形態より1つ少ないものとなる。このため、より一層、異なる材質の界面で生じる伝搬光の拡散・反射等による損失を抑制することが出来る。
【0043】
本実施形態の光素子搭載基板において、絶縁基板1は、光素子搭載基板の積層方向において、受光部又は発光部4の少なくとも一部と重なる貫通孔を有することが好ましい。
これにより、前記光素子3の受光部又は発光部4と、光回路層20との光通信における信頼性を向上することが出来る。
なお、上記の作用・効果以外に、本実施形態は、上述した実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0044】
(第3実施形態)
以下、図4に示す本実施形態における光素子搭載基板10について説明するが、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図4において、上述した実施形態と同様の構成部分については、先に説明した図2と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0045】
図4に示す光素子搭載基板10は、絶縁基板1を貫通し、電気回路層2を底面とする凹部であっても良い。前記凹部が絶縁基板1を貫通するものである場合、光素子3は、電気回路層に直接実装され、電極5と電気回路層2は直接接合される。その方法としては、超音波溶接、抵抗溶接等が挙げられる。
また、電気回路層2と光素子3の電極5は、単に接触しているのみであっても十分な電気的接続が図られるが、導電性材料を介して、または直接接合により接続されているのが好ましい。これにより、長期にわたって良好な電気的接続が保持される。
導電性材料としては、各種ハンダ、各種ろう材、各種導電性ペースト(インク)等が挙げられる。
また、ハンダおよびろう材は、リフローにより溶融し流動化して、電気回路層2と電極5との接触部周辺に濡れ広がる。これにより、電気回路層2と電極5との間が、より広い面積で接続されることとなる。その結果、接触抵抗が低下するとともに、接続部に集中し易い応力を緩和して接続信頼性を高めることができる。
なお、導電性材料がハンダ(ろう材を含む。)で構成される場合、電気回路層2を構成する金属成分の一部がハンダ側に溶解する現象が生じるおそれがある。この現象は、特に銅配線に対して生じる場合が多いことから「銅食われ」と呼ばれている。銅食われが発生すると、電気配線2が細くなったり、断線したりする等の不具合を招き、電気回路層2の機能を損なうおそれがある。
そこで、導電性材料と接する電気回路層2の表面には、あらかじめ、ハンダの下地として銅食われ防止膜(下地層)を形成しておくのが好ましい。この銅食われ防止膜の形成により、銅食われが防止され、電気回路層2の機能を長期にわたって維持することができる。
銅食われ防止膜の構成材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)等が挙げられ、銅食われ防止膜は、これらの金属組成1種からなる単層であってもよく、2種以上を含む複合層(例えば、Ni−Au複合層、Ni−Sn複合層等)であってもよい。
銅食われ防止膜の平均厚さは、特に限定されないが、0.05〜5μm程度であるのが好ましく、0.1〜3μm程度であるのがより好ましい。これにより、銅食われ防止膜そのものの電気抵抗を抑制しつつ、十分な銅食われ防止作用を発現させることができる。
なお、上記の作用・効果以外に、本実施形態は、上述した実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0046】
(第4実施形態)
以下、図5に示す本実施形態における光素子搭載基板10について説明するが、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図5において、上述した実施形態と同様の構成部分については、先に説明した図2と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0047】
図5に示す光素子搭載基板10は、電気回路層2と絶縁基板1との積層方向を上下に反転させ、電気回路層2を貫通して光素子搭載基板10に凹部を形成している。また、光素子3は下面に受光部又は発光部4を配し、上面に電極5を配するものである。
すなわち、図2に示した実施形態においては、光素子3の下面に電極5が配置され、スルーホールを介して電気回路層2と電気接続されていたが、本実施形態では、光素子搭載基板10の上面に光素子3の電極5および電気回路層2が配置されており、ワイヤーボンディングにより、前記電極5および前記電気回路層2が電気接続されている。
このような構成では、光素子搭載基板10と後に積層する光回路層20の光路変換部213と、光素子3の受光部又は発光部4との間に電気回路層2が存在しないため、光回路層20の光路変換部213と、光素子3の受光部又は発光部4との間における伝搬光の授受を阻害しないため、光素子搭載基板10と光回路層20の積層時の位置ずれに対する許容度が大きい。
【0048】
(第5実施形態)
以下、図6に示す本実施形態における光電気混載基板100について説明するが、上述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。なお、図6において、上述した実施形態と同様の構成部分については、先に説明した図1と同様の符号を付し、その詳細な説明を省略する。尚、図6において、光9は、受光部又は発光部4が発光部として機能している際の光9の進行方向を示す。
【0049】
図6に示す光素子搭載基板10は、受光部又は発光部4が光素子3の上面に設けられ、光素子搭載基板10の上に光回路層20が積層されたこと以外は、図2に示す実施形態と同様である。
すなわち、図2に示す実施形態の光素子搭載基板10は、図1に示すように、光素子3の下面に受光部又は発光部4が配置され、光回路層20の上面に光素子搭載基板10を積層して光接続することを想定した光素子搭載基板であるが、本実施形態の光素子搭載基板10は、図6に示すように、光素子搭載基板10の上面に光回路層20を積層して光接続することを想定した光素子搭載基板である。
このような構成では、電気回路層20において、光素子3が実装された面と反対側の面においても、素子を実装することが可能となる。
なお、上記の作用・効果以外に、本実施形態は、上述した実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0050】
〈光電気混載基板の製造方法〉
次に、上述したような光電気混載基板100を製造する方法の一例について説明する。
図1に示す光電気混載基板100は、光素子搭載基板10および光回路層20をそれぞれ用意し、これらを積層した後、得られた積層体に加工を施して製造される。
【0051】
以下、光電気混載基板100の製造方法について順次説明する。
[1]光導波路構造体の製造
まず、光電気混載基板100の製造に用いられる光素子搭載基板10の製造方法について説明する。
【0052】
[1−1]電気回路層の製造
絶縁基板1を用意し、その上面の一部または全部を覆うように電気回路層2を形成する。
この電気回路層2は、前述した金属組成の被膜であり、かかる被膜は、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の物理蒸着法、電解めっき、無電解めっき等のめっき法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法等の方法により形成される。
次いで、この電気回路層2を、各種パターニング法によりパターニングする。パターニング法としては、例えばフォトリソグラフィー法とエッチング法とを組み合わせた方法が挙げられる。
以上のようにして、絶縁基板1上に、電気回路層(電気配線)2が形成される。
また、電気回路層2の形成方法は、上記の方法に限定されず、導電性ペースト、導電性インク等を、絶縁基板1の上面の所定の領域に(電気配線2のパターンに沿って)供給した後、乾燥させる方法であってもよい。供給の方法としては、各種印刷法、各種塗布法等が挙げられる。
【0053】
[1−2]凹部の形成
次いで、光素子搭載基板10に凹部を形成する。
凹部の形成は、レーザー加工法、電子ビーム加工法、機械加工法等の各種加工法により行うことができるが、特にレーザー加工法により行うのが好ましい。レーザー加工法によれば、高い精度で加工することができるので、凹部の位置精度を高めることができる。その結果、コア部211の光軸と、凹部内に挿入される光素子3の光軸とを正確に合わせ、伝搬損失の低い光電気混載基板を得ることができる。
【0054】
また、レーザー加工法によれば、被加工材料の組成によって、加工レートが異なるため、それを利用して特定の層のみを選択的に加工することができる。この特性を利用することにより、光素子搭載基板10に対して選択的に加工を施す一方、電気回路層2を加工することなく残すことができる。これは、電気回路層2は金属系材料で構成されているため、レーザー加工における加工レートが他の材料に比べて小さいためである。なお、上記の特性は、各絶縁基板1が有機系材料で構成されている場合に特に顕著である。
また、特定の層のみを選択的に加工するためには、電気回路層2や絶縁基板1の構成材料に応じて、レーザー加工条件を適宜設定する。
加工条件の一例として、レーザーの出力密度が、30〜1000mJ/cm程度であるのが好ましく、50〜700mJ/cm程度であるのがより好ましい。これにより、光素子搭載基板10にレーザー加工を施した際に、電気回路層2を確実に残しつつ、絶縁基板1を選択的に加工することができる。
また、レーザー発振器としては、特に限定されないが、炭酸ガスレーザー、エキシマーレーザー、Arレーザー、He−Neレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等が挙げられる。
【0055】
また、レーザー加工法によれば、加工面の平坦性、平滑性が高くなる。これは、レーザーの熱により、加工領域の光素子搭載基板10がわずかに溶融し、凹凸が平均化されるためであると考えられる。加工面の平坦性、平滑性が向上すると、凹部の底面の面精度、換言すれば、伝搬光が通過する凹部の面精度も向上し、光の入射効率および出射効率を高めることができる。
さらには、加工面の平坦性、平滑性が高くなると、凹部の内面の凹凸が減少するので、その分だけ凹部と光素子3との距離を小さくすることができる。これにより、受光部又は発光部4とコア部211の露出面との離間距離が小さくなり、両者の結合損失を最小限にすることができるだけでなく、凹部内で光素子3の位置がずれる余地を最小限にすることができる。また、レーザーの照射領域は、気化して除去されるため、切削くずやバリの発生が防止されるという利点もある。
【0056】
[1−3]光素子の搭載
光素子搭載基板10は、光素子3を挿入可能な凹部を有しており、この凹部内に光素子3を挿入することにより、光素子3と電気回路層2の電気的接続を可能にし、同時に、光素子3と、後に積層する光回路層20の間で光学的接続を可能にするものである。
光素子3と電気回路層2を前述した方法により電気接続した後、前記凹部にアンダーフィル剤を流し込み、硬化させて、光素子3の位置を固定する。
さらに、必要に応じて、光素子搭載基板10上に電子部品(図示せず)を載置し、電気回路層2と電子部品とを電気的に接続する。
電子部品としては、例えば、LSI(Large Scale Integration)、IC(Integrated Circuit)、メモリー、抵抗、コンデンサー等が挙げられる。これらの電子部品は、光素子3の駆動を制御する機能を有するものでもよい。
これらの工程により、光素子搭載基板10が得られる。
【0057】
[2]光回路層の製造
まず、クラッド層220、コア層210およびクラッド層230をそれぞれ製造する。これらは、基材上に、各層の形成用組成物を塗布して液状被膜を形成した後、この基材をレベルテーブルに載置して、液状被膜表面の不均一な部分を水平化するとともに、溶媒を蒸発(脱溶媒)することにより形成される。
液状被膜を形成するための塗布法としては、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、ディッピング法、テーブルコート法、スプレー法、アプリケーター法、カーテンコート法、ダイコート法等の方法が挙げられる。
また、同一層(コア層210)内に、コア部211と、側面クラッド部212を形成する方法としては、例えば、フォトブリーチング法、フォトリソグラフィー法、直接露光法、ナノインプリンティング法、モノマーディフュージョン法等が挙げられる。
その後、形成したクラッド層220、コア層210およびクラッド層230を、互いに圧着する。これにより、クラッド層220、コア層210およびクラッド層230が接合、一体化され、光導波路200が得られる。光導波路200を光回路層20として用いることも出来るが、カバーフィルム、絶縁基板等を備えた光回路層20としても良い。絶縁基板を備える場合、前述の光素子搭載基板10に用いる絶縁基板1と同等のものを用いることが出来る。
【0058】
[3]光素子搭載基板および光回路層の積層
次いで、光素子搭載基板10と光回路層20とを積層する。
絶縁基板1と光回路層20の間や、電気回路層2と光回路層20の間は、それぞれ熱圧着や、各種接着剤(粘着剤を含む。)による接着等の方法で接着されていてもよいが、クラッド層220やクラッド層230が接着性を有している場合には、その接着性を利用して接着するようにしてもよい。
接着剤としては、例えば、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤の他、各種ホットメルト接着剤(ポリエステル系、変性オレフィン系)等が挙げられる。また、特に耐熱性の高いものとして、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリイミドアミドエーテル、ポリエステルイミド、ポリイミドエーテル等の熱可塑性ポリイミド接着剤が挙げられる。
以上のようにして、光素子搭載基板10および光回路層20が積層された図1に示す光電気混載基板100が得られる。
【0059】
〈電子機器〉
本発明の光素子搭載基板もしくは光電気混載基板を備える電子機器(本発明の電子機器)は、光信号と電気信号の双方の信号処理を行ういかなる電子機器にも適用可能であるが、例えば、ルーター装置、WDM装置、携帯電話、ゲーム機、パソコン、テレビ、ホーム・サーバー等の電子機器類への適用が好適である。これらの電子機器では、いずれも、例えばLSI等の演算装置とRAM等の記憶装置との間で、大容量のデータを高速に伝送する必要がある。したがって、このような電子機器が本発明の光電気混載基板を備えることにより、電気配線に特有なノイズ、信号劣化等の不具合が解消されるため、その性能の飛躍的な向上が期待できる。
さらに、光導波路部分では、電気配線に比べて発熱量が大幅に削減される。このため、基板内の集積度が高められるとともに、冷却に要する電力を削減することができ、電子機器全体の消費電力を削減することができる。
【0060】
以上、本発明の光素子搭載基板、光電気混載基板および電子機器の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば光素子混載基板を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、図7では、コア部211が1本である光導波路200(シングルチャンネル)について説明したが、コア部211が複数本である光回路(マルチチャンネル)についても本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 絶縁基板
10 光素子搭載基板
100 光電気混載基板
2 電気回路層(電気配線)
20 光回路層
200 光導波路
210 コア層
211 コア部
212 側面クラッド部
213 光路変換部
220、230 クラッド層
3 光素子
4 受光部又は発光部
5 電極
51 ワイヤーボンディング
6 スルーホール
7 アンダーフィル
8 貫通孔
9 光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路が形成された光回路層に積層され、かつ、受光部又は発光部を有する光素子を搭載した光素子搭載基板であって、
電気回路層と絶縁基板とが積層してなり、かつ、前記光素子搭載基板は、前記電気回路層側又は前記絶縁基板側に厚さ方向に少なくとも一つの凹部を有し、前記光素子の少なくとも一部が前記凹部内に収納されていることを特徴とする光素子搭載基板。
【請求項2】
前記凹部における前記絶縁基板及び前記電気回路層の厚さは、1μm〜10μmである請求項1に記載の光素子搭載基板。
【請求項3】
前記光素子搭載基板の積層方向において、前記光素子の受光部又は発光部の少なくとも一部は、前記電気回路層における電気配線と重ならないものである請求項1又は2に記載の光素子搭載基板。
【請求項4】
前記電気回路層上に前記絶縁基板が積層されたものである請求項1ないし3のいずれかに記載の光素子搭載基板。
【請求項5】
前記凹部と前記凹部に実装する前記光素子の間における空隙には、アンダーフィル剤を充填し、硬化したものである請求項1ないし4のいずれかに記載の光素子搭載基板。
【請求項6】
前記アンダーフィル剤は、硬化後、前記光素子の使用する光の波長において90%以上の透過性を有する樹脂からなる群から選ばれる請求項5に記載の光素子搭載基板。
【請求項7】
前記絶縁基板の構成材料は、前記光素子の使用する光の波長において透明である請求項1ないし6のいずれかに記載の光素子搭載基板。
【請求項8】
前記絶縁基板の構成材料は、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ガラス布エポキシ基板、ガラス基板からなる群から選ばれる請求項1ないし7のいずれかに記載の光素子搭載基板。
【請求項9】
上面視において、前記凹部の面積は、前記光素子の面積に対し1.1〜3倍である請求項1ないし8のいずれかに記載の光素子搭載基板。
【請求項10】
前記光素子と、前記電気回路層とが、前記絶縁基板に形成されたスルーホールを介して電気接続されている請求項1ないし9のいずれかに記載の光素子搭載基板。
【請求項11】
前記絶縁基板は、前記光素子搭載基板の積層方向において、受光部又は発光部の少なくとも一部と重なる貫通孔を有するものである請求項1ないし10のいずれかに記載の光素子搭載基板。
【請求項12】
光導波路が形成された光回路層の一面に、請求項1ないし11のいずれかに記載の光素子搭載基板を積層することを特徴とする光電気混載基板。
【請求項13】
前記受光部又は発光部と、前記光回路層の上面の距離は1μm〜50μmである請求項12に記載の光電気混載基板。
【請求項14】
前記光導波路は、環状オレフィン樹脂を含む材料で形成されるものである請求項12又は13に記載の光電気混載基板。
【請求項15】
請求項1ないし11のいずれかに記載の光素子搭載基板を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項16】
請求項12ないし14のいずれかに記載の光電気混載基板を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−8488(P2012−8488A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146707(P2010−146707)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】