説明

光電変換素子及びその製造方法、光センサ、並びに撮像素子及びそれらの駆動方法

【課題】光電変換素子として機能し、低い暗電流を示し、かつ素子を加熱処理した場合にも暗電流の増加幅を小さくすることが可能な光電変換素子及びそのような光電変換素子を備えた撮像素子を提供する。
【解決手段】透明導電性膜、光電変換膜、及び導電性膜をこの順で有する光電変換素子であって、前記光電変換膜は、光電変換層、及び電子ブロッキング層を含み、前記電子ブロッキング層が下記一般式(Y1)で表される化合物を含有する、光電変換素子。一般式(Y1)


(式中、R〜R、R’〜R’、及びR’’〜R’’は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子及びその製造方法、光センサ、並びに撮像素子及びそれらの駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体撮像素子としては、半導体中に光電変換部位を2次元的に配列して画素とし、各画素で光電変換により発生した信号をCCD回路やCMOS回路により電荷転送、読み出しを行う平面型受光素子が広く用いられている。従来の光電変換部位は、一般にSiなどの半導体中にPN接合を用いたフォトダイオード部が形成されたものが用いられている。
近年、多画素化が進む中で画素サイズが小さくなっており、フォトダイオード部の面積が小さくなり、開口率の低下、集光効率の低下及びその結果である感度低下が課題となっている。開口率等を向上させる手法として、有機材料を用いた有機光電変換膜を有する固体撮像素子が提案されている。
【0003】
有機光電変換膜において、高光電変換効率(高励起子解離効率)の発現のために、フラーレン又はフラーレン誘導体を用いた混合膜あるいはバルクへテロ構造を導入する技術が知られている。例えば特許文献1において、フラーレン又はフラーレン誘導体を含有する光電変換膜が開示されている。
【0004】
太陽電池において用いられる有機光電変換素子では、電力を取り出すことを目的とするため外部電界は加えないが、固体撮像素子の可視光センサとして使用される有機光電変換素子では、光電変換効率を最大限に引き出す必要があり、光電変換効率向上や応答速度向上のために外部から電圧を印加する。
光電変換効率向上や応答速度向上のために外部から電圧を印加すると、外部電界により電極からの正孔注入若しくは電子注入が生じ、これによって暗電流が増加することが問題となる。
【0005】
光電変換素子において通常電極として用いられる材料は、仕事関数(WF)が4.5eV前後の値のものが多く(例えば、ITO)、例えば、光電変換膜の材料としてフラーレン(C60)を用いた場合には、電極のWFとフラーレン(C60) LUMO間のエネルギーギャップが小さくなるため、特に電子が電極から光電変換膜部に注入されやすく、暗電流の増加が顕著となる。
注入電流による暗電流増加の防止に関しては、光電変換層に電荷が注入されるのを抑制する電荷ブロッキング層を設けることにより、効率良く注入キャリアを防止し、暗電流を低減する技術が開示されている(特許文献2)。
【0006】
光電変換素子を固体撮像素子として用いる場合、カラー化のために加熱工程を経てカラーフィルターを設置する必要があり、更に撮像素子を基板に半田付けする際に、基板ごと素子が加熱される。従って、これらのプロセス温度である170℃以上の温度で30分程度の条件で光電変換効率の低下、暗電流の増加が小さいことが望まれるが、上記特許文献1及び2においては、実用上重要な因子となる耐熱性については言及されておらず、高い耐熱性を持つ化合物構造については充分に記載されていない。
【0007】
特許文献3〜6にはフルオレン骨格を有する有機材料が記載されており、該有機材料を電界発光素子に用いることが記載されている。電界発光素子は、素子に電圧を印加した際に起こる発光を利用するものであるが、光電変換素子は、発光すると光電変換効率が低下するため、実質的に発光しないことが求められる。また、電界発光素子と光電変換素子とでは、正孔の移動方向が逆で、作用が異なるため、材料に要求される機能が異なる。
光電変換素子は入射した光の量に応じて信号を出力するため、素子には一定の電圧が印加される。既に述べたように、光電変換素子における電子ブロッキング材料の重要な機能は、電極からの電子注入の抑制である。これに対して、電界発光素子では発光の明暗を電圧で制御するため、このような機能は不要である。
特許文献7には、フルオレン骨格を有する有機材料が記載されており、該有機材料を色素増感太陽電池に用いることが記載されている。しかしながら、太陽電池に要求される特性は撮像素子要素を目的とする光電変換素子とは異なるため、暗電流低減や、素子の充分な耐熱性は不要であり、本発明の課題である暗電流及び耐熱性に関する記載は充分に開示されていない。
また、特許文献7に記載の化合物を用いて製膜する場合、アモルファス性が低いため結晶化による粒界発生及び膜表面に凹凸が形成される場合があり、光を散乱する原因となるため、個々の光電変換素子のサイズがミクロン単位となる光センサ或いは撮像素子等を目的とした光電変換素子の材料としては適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−123707号公報
【特許文献2】特開2008−72090号公報
【特許文献3】特開2005−290000号公報
【特許文献4】特許第3508984号公報
【特許文献5】特開2007−137795号公報
【特許文献6】特開2006−131783号公報
【特許文献7】特開2007−115665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光電変換素子用の材料では、高い光電変換効率、高速な応答性を実現するためには、暗電流を低減するための電極からの電荷注入に対するブロッキング能だけでなく、光電変換膜中で発生した電荷を電極まで輸送できる高い電荷輸送能も必要である。電荷輸送能に乏しい材料を使用した光電変換素子では光電流が観測されないことになる。更に、カラーフィルタ設置、保護膜設置、素子のハンダ付け等、加熱工程を有する製造プロセスへの適用や保存性の向上を考慮すると、光電変換素子用の材料は、高い耐熱性を有する必要がある。
すなわち、正孔輸送を利用したジアリールアミン部分骨格を持つ光電変換素子用材料の場合、小さな値のEa(電子親和力)、高ホール(正孔)輸送性、高耐熱性を満たすように材料設計を行う必要があるが、これらの要求を満たすには構造が大きく制限されることになる。
【0010】
その他にも、素子構成中で適当に使用できるよう、エネルギー準位の位置が好ましい値になるような分子設計を考慮する必要がある。
Ip(イオン化ポテンシャル)の値が小さい材料と、Eaの値の大きな材料(例えば、フラーレンC60)を接触させると、Ipの値が小さい材料層のHOMOからEaの値の大きな材料層のLUMOに熱励起により光電変換素子内で電荷(電子、正孔)が発生し、ノイズ源である暗電流が増大する。フラーレンC60と接触する電子ブロッキング層のIpは、十分大きい必要があり、かつ、フラーレンC60バルクへテロ層中でホールを輸送する材料のHOMOからホールを障壁なく受け取れる程度に小さい必要がある。即ち、電子ブロッキング層のIpはかなり限定された値になるよう設計しなければならず、上記のように元々自由度が小さかった材料設計に、更に大きな制約を加えなければならなかった。
【0011】
本発明は、上記のような問題点を改善すべくなされたものであり、光電変換素子に適用した場合に光電変換素子として機能し、かつ、低い暗電流を示し、かつ素子を加熱処理した場合にも暗電流の増加幅を小さくすることが可能な光電変換素子及びそのような光電変換素子を備えた撮像素子を提供することである。
また、本発明の別の目的は、前記光電変換素子を提供し得る化合物、及び光電変換材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による鋭意検討の結果、特定の構造の化合物を使用することで、上記の目的を達することが分かった。すなわち、上記課題は以下の手段によって解決することができる。
[1]
透明導電性膜、光電変換膜、及び導電性膜をこの順で有する光電変換素子であって、
前記光電変換膜は、光電変換層、及び電子ブロッキング層を含み、
前記電子ブロッキング層が下記一般式(Y1)で表される化合物を含有する、光電変換素子。
一般式(Y1)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、R〜R、R’〜R’、及びR’’〜R’’は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。但し、R〜R、R’〜R’、及びR’’〜R’’のうち少なくとも一つは環構造を3つ以上含む置換アミノ基を表す。Y、Y’、及びY’’はそれぞれ独立に、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又はケイ素原子を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。ny1は0〜2の整数を表す。ny2は0又は1を表す。)
[2]
前記一般式(Y1)で表される化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である、上記[1]に記載の光電変換素子。
一般式(1)
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、R〜R、R’、R’〜R’、R91、R’91、R’’〜R’’、R92、及びR’92は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。但し、R〜R、R’〜R’、R’’〜R’’のうち少なくとも一つは環構造を3つ以上含む置換アミノ基を表す。ny1は0〜2の整数を表す。ny2は0又は1を表す。)
[3]
前記一般式(Y1)で表される化合物が下記一般式(F−1)で表される化合物である、上記[1]又は[2]に記載の光電変換素子。
一般式(F−1)
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、R11は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。R12及びR17は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。R19及びR’19は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。但し、R12及びR17の少なくとも1つが環構造を3つ以上含む置換アミノ基を表す。m11及びm12は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。R11が前記一般式(F−1)中に複数存在する場合、複数のR11は互いに同じでも異なっていてもよい。nは1〜4の整数を表す。)
[4]
前記一般式(F−1)において、R11が、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表す、上記[3]に記載の光電変換素子。
[5]
前記一般式(F−1)において、m11及びm12が0である、上記[3]に記載の光電変換素子。
[6]
前記一般式(F−1)におけるR19及びR’19が、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は複素環基を表す、上記[3]〜[5]のいずれか1項に記載の光電変換素子。
[7]
前記一般式(F−1)におけるR19及びR’19が、それぞれ独立に、アルキル基を表す、上記[6]に記載の光電変換素子。
[8]
前記環構造を3つ以上含む置換アミノ基が下記一般式(A−1)で表される基である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の光電変換素子。
一般式(A−1)
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、Ra〜Raは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。*は結合位置を表す。Xaは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。)
[9]
前記一般式(A−1)におけるXaが、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、複素環基、酸素原子、硫黄原子、又はイミノ基である、上記[8]に記載の光電変換素子。
[10]
前記環構造を3つ以上含む置換アミノ基が、下記一般式(A−2)で表される基である、上記[1]〜[7]のいずれかに記載の光電変換素子。
一般式(A−2):−N(RB1)(RB2
(RB1及びRB2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。但し、RB1及びRB2の少なくともいずれかはアリール基又は複素環基を表し、RB1及びRB2に含まれる環の数が合計3以上である。)
[11]
前記RB1及びRB2の少なくともいずれかが、下記一般式(b−1)で表される基である、上記[10]に記載の光電変換素子。
一般式(b−1)
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、Rbは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。Xbは、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。Rbが複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。式中の2つのXbは互いに同じでも異なっていてもよい。*は結合位置を表す。m4は0〜3の整数を表し、m5は0〜4の整数を表す。)
[12]
前記一般式(F−1)におけるnが2である、上記[3]〜[11]のいずれか1項に記載の光電変換素子。
[13]
前記環構造を3つ以上含む置換アミノ基が下記一般式(A−3)で表される基、下記一般式(A−4)で表される基、又は下記一般式(A−5)で表される基である、上記[1]〜[7]、及び[12]のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【0023】
【化6】

【0024】
(一般式(A−3)〜(A−5)中、Ra33〜Ra38、Ra41、Ra44〜Ra48、Ra51、Ra52、Ra55〜Ra58は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。*は結合位置を表す。Xc、Xc、及びXcは、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。Z31、Z41、及びZ51は、それぞれ独立に、シクロアルキル環、芳香族炭化水素環、又は芳香族複素環を表し、これらは更に置換基を有してもよい。)
[14]
前記一般式(Y1)で表される化合物のイオン化ポテンシャル(Ip)が5.8eV以下である、上記[1]〜[13]のいずれか1項に記載の光電変換素子。
[15]
前記一般式(Y1)で表される化合物のイオン化ポテンシャル(Ip)が4.9eV以上である、上記[1]〜[14]のいずれか1項に記載の光電変換素子。
[16]
前記一般式(Y1)で表される化合物の分子量が500以上2000以下である、上記[1]〜[15]のいずれか1項に記載の光電変換素子。
[17]
前記光電変換層がn型有機半導体を含む、上記[1]〜[16]のいずれか1項に記載の光電変換素子。
[18]
前記n型有機半導体がフラーレン又はフラーレン誘導体である、上記[17]に記載の光電変換素子。
[19]
前記光電変換膜が下記一般式(I)の化合物を含む、上記[1]〜[18]のいずれか1項に記載の光電変換素子。
一般式(I)
【0025】
【化7】

【0026】
(式中、Zは5又は6員環を形成するのに必要な原子群を表す。L、L、及びLは、それぞれ独立に、無置換メチン基、又は置換メチン基を表す。Dは原子群を表す。n1は0以上の整数を表す。)
[20]
導電性膜、電子ブロッキング層、光電変換層、及び透明導電性膜が、この順に積層された、上記[1]〜[19]のいずれか1項に記載の光電変換素子。
[21]
上記[1]〜[20]のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法であって、前記光電変換層及び前記電子ブロッキング層を、それぞれ真空加熱蒸着により製膜する工程を含む製造方法。
[22]
上記[1]〜[20]のいずれか1項に記載の光電変換素子からなる光センサ。
[23]
上記[1]〜[20]のいずれか1項に記載の光電変換素子を備えた撮像素子。
[24]
上記[1]〜[20]のいずれか1項に記載の光電変換素子、上記[22]に記載の光センサ、又は上記[23]に記載の撮像素子の駆動方法であって、前記電子ブロッキング層に接触する電極を陰極に、もう一方の電極を陽極にして0Vより大きく、100V以下の電圧を印加する、駆動方法。
[25]
下記一般式(F−10)で表される化合物。
一般式(F−10)
【0027】
【化8】

【0028】
(式中、R111〜R118、R’111〜R’118は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。R115〜R118中のいずれか一つは、R’115〜R’118中のいずれか一つと連結し、単結合を形成する。A11及びA12は、それぞれ独立に下記一般式(A−1)で表される置換基を表す。A11はR111〜R114中のいずれか一つとして置換し、A12はR’111〜R’114中のいずれか一つとして置換する。Yはそれぞれ独立に、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又はケイ素原子を表し、これらは更に炭素数2以下の置換基を有していてもよい。)
一般式(A−1)
【0029】
【化9】

【0030】
(式中、Ra〜Raは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。*は結合位置を表す。Xaは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。)
[26]
上記[25]に記載の化合物を含む電子ブロッキング材料。
[27]
上記[25]に記載の化合物を含む膜厚1〜1000nmの膜。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、特定の構造の化合物を光電変換素子に適用した場合に光電変換素子として機能し、かつ、その素子は低い暗電流を示し、かつ該素子を加熱した場合にも暗電流の増加幅を小さくすることが可能な光電変換素子及びそのような光電変換素子を備えた撮像素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1(a)及び図1(b)は、それぞれ光電変換素子の一構成例を示す断面模式図。
【図2】撮像素子の1画素分の断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[光電変換素子]
本発明の光電変換素子は、透明導電性膜、光電変換膜、及び導電性膜をこの順で有する光電変換素子であって、
前記光電変換膜は、光電変換層、及び電子ブロッキング層を含み、
前記電子ブロッキング層が下記一般式(Y1)で表される化合物を含有する。
一般式(Y1)
【0034】
【化10】

【0035】
(式中、R〜R、R’〜R’、及びR’’〜R’’は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。但し、R〜R、R’〜R’、及びR’’〜R’’のうち少なくとも一つは環構造を3つ以上含む置換アミノ基を表す。Y、Y’、及びY’’はそれぞれ独立に、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又はケイ素原子を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。ny1は0〜2の整数を表す。ny2は0又は1を表す。)
【0036】
以下、本発明に係る光電変換素子の好適な実施形態について説明する。
本発明に係る光電変換素子は、導電性膜、光電変換層、電子ブロッキング層、及び透明導電性膜がこの順に積層されているものでも良いが、好ましい態様は、導電性膜、電子ブロッキング層、光電変換層、及び透明導電性膜がこの順に積層されているものである。
【0037】
図1に、本発明の光電変換素子の構成例を示す。
図1(a)に示す光電変換素子10aは、下部電極として機能する導電性膜(以下、下部電極とする)11上に、下部電極11上に形成された電子ブロッキング層16Aと、電子ブロッキング層16A上に形成された光電変換層12と、上部電極として機能する透明導電性膜(以下、上部電極とする)15がこの順に積層された構成である。
図1(b)に別の光電変換素子の構成例を示す。図1(b)に示す光電変換素子10bは、下部電極11上に、電子ブロッキング層16Aと、光電変換層12と、正孔ブロッキング層16Bと、上部電極15がこの順に積層された構成である。なお、図1(a)、図1(b)中の電子ブロッキング層、光電変換層、正孔ブロッキング層の積層順は、用途、特性に応じて逆にしても構わない。
本実施形態に係る光電変換素子を構成する要素について説明する。
【0038】
(電極)
電極(上部電極(透明導電性膜)15と下部電極(導電性膜)11)は、導電性材料から構成される。導電性材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、又はこれらの混合物などを用いることができる。
上部電極15から光が入射されるため、上部電極15は検知したい光に対し十分透明である事が必要である。具体的には、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属薄膜、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、高導電性、透明性等の点から、導電性金属酸化物である。上部電極15は有機光電変換層12上に成膜するため、該有機光電変換層12の特性を劣化させることのない方法で成膜される事が好ましい。
【0039】
下部電極11は、用途に応じて、透明性を持たせる場合と、逆に透明を持たせず光を反射させるような材料を用いる場合等がある。具体的には、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル、チタン、タングステン、アルミ等の金属及びこれらの金属の酸化物や窒化物などの導電性化合物(一例として窒化チタン(TiN)を挙げる)、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、及びこれらとITO又は窒化チタンとの積層物などが挙げられる。
【0040】
電極を形成する方法は特に限定されず、電極材料との適正を考慮して適宜選択することができる。具体的には、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等により形成することができる。
電極の材料がITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾルーゲル法など)、酸化インジウムスズの分散物の塗布などの方法で形成することができる。更に、ITOを用いて作製された膜に、UV−オゾン処理、プラズマ処理などを施すことができる。電極の材料がTiNの場合、反応性スパッタリング法をはじめとする各種の方法が用いられ、更にUV−オゾン処理、プラズマ処理などを施すことができる。
【0041】
上部電極15はプラズマフリーで作製することが好ましい。プラズマフリーで上部電極15を作成することで、プラズマが基板に与える影響を少なくすることができ、光電変換特性を良好にすることができる。ここで、プラズマフリーとは、上部電極15の成膜中にプラズマが発生しないか、又はプラズマ発生源から基体までの距離が2cm以上、好ましくは10cm以上、更に好ましくは20cm以上であり、基体に到達するプラズマが減ずるような状態を意味する。
【0042】
上部電極15の成膜中にプラズマが発生しない装置としては、例えば、電子線蒸着装置(EB蒸着装置)やパルスレーザー蒸着装置がある。EB蒸着装置又はパルスレーザー蒸着装置については、沢田豊監修「透明導電膜の新展開」(シーエムシー刊、1999年)、沢田豊監修「透明導電膜の新展開II」(シーエムシー刊、2002年)、日本学術振興会著「透明導電膜の技術」(オーム社、1999年)、及びそれらに付記されている参考文献等に記載されているような装置を用いることができる。以下では、EB蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をEB蒸着法と言い、パルスレーザー蒸着装置を用いて透明電極膜の成膜を行う方法をパルスレーザー蒸着法と言う。
【0043】
プラズマ発生源から基体への距離が2cm以上であって基体へのプラズマの到達が減ずるような状態を実現できる装置(以下、プラズマフリーである成膜装置という)については、例えば、対向ターゲット式スパッタ装置やアークプラズマ蒸着法などが考えられ、それらについては沢田豊監修「透明導電膜の新展開」(シーエムシー刊、1999年)、沢田豊監修「透明導電膜の新展開II」(シーエムシー刊、2002年)、日本学術振興会著「透明導電膜の技術」(オーム社、1999年)、及びそれらに付記されている参考文献等に記載されているような装置を用いることができる。
【0044】
TCOなどの透明導電膜を上部電極15とした場合、DCショート、あるいはリーク電流増大が生じる場合がある。この原因の一つは、光電変換層12に導入される微細なクラックがTCOなどの緻密な膜によってカバレッジされ、反対側の第一電極膜11との間の導通が増すためと考えられる。そのため、Alなど膜質が比較して劣る電極の場合、リーク電流の増大は生じにくい。上部電極15の膜厚を、光電変換層12の膜厚(すなわち、クラックの深さ)に対して制御する事により、リーク電流の増大を大きく抑制できる。上部電極15の厚みは、光電変換層12厚みの1/5以下、好ましくは1/10以下であるようにする事が望ましい。
【0045】
通常、導電性膜をある範囲より薄くすると、急激な抵抗値の増加をもたらすが、本実施形態に係る光電変換素子を組み込んだ固体撮像素子では、シート抵抗は、好ましくは100〜10000Ω/□でよく、薄膜化できる膜厚の範囲の自由度は大きい。また、上部電極(透明導電性膜)15は厚みが薄いほど吸収する光の量は少なくなり、一般に光透過率が増す。光透過率の増加は、光電変換層12での光吸収を増大させ、光電変換能を増大させるため、非常に好ましい。薄膜化に伴う、リーク電流の抑制、薄膜の抵抗値の増大、透過率の増加を考慮すると、上部電極15の膜厚は、5〜100nmであることが好ましく、更に好ましくは5〜20nmである事が望ましい。
【0046】
(電子ブロッキング層、正孔ブロッキング層)
本発明の光電変換素子における電子ブロッキング層は下記一般式(Y1)で表される化合物を含有する。この電子ブロッキング層に含まれる化合物(以下、本発明に係る化合物ともいう。)は、環構造を3つ以上含む置換アミノ基を置換基に有する化合物である。
更に、本発明における化合物は置換基があってもよいが、その置換基は真空加熱蒸着に適したものが好ましいため、熱で反応してしまう重合性基ではないことが好ましい。重合性基とは、何れかの末端が無置換(CH=Cという構造)である非芳香族二重結合を含む置換基及び脂環式エーテル構造を含む置換基であり、具体的にはスチリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシ基、オキセタン基を部分構造として持つ置換基が挙げられる。
一般式(Y1)
【0047】
【化11】

【0048】
(式中、R〜R、R’〜R’、及びR’’〜R’’は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。但し、R〜R、R’〜R’、及びR’’〜R’’のうち少なくとも一つは環構造を3つ以上含む置換アミノ基を表す。Y、Y’、及びY’’はそれぞれ独立に、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又はケイ素原子を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。ny1は0〜2の整数を表す。ny2は0又は1を表す。)
【0049】
前記一般式(Y1)で表される化合物で表される化合物は、ny1又はny2が0ではない場合、各フルオレンユニットは単結合で結合している。例えば、ny1が1を表す場合、一般式(Y1)の左側のフルオレンユニットのR〜Rのいずれか1つと、中央のフルオレンユニットのR’〜R’のいずれか1つとが結合し、単結合を形成する。その他の場合も同様である。
とR’、R’とR’’がそれぞれ結合すること、又はRとR’、R’とR’’がそれぞれ結合することが好ましく、RとR’、R’とR’’がそれぞれ結合することがより好ましい。
一般式(Y1)で表される化合物は、ny1及びny2が0を表す場合、下記一般式(Y1A)で表される化合物を表す。
一般式(Y1A)
【0050】
【化12】

【0051】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。但し、R〜Rのうち少なくとも一つは環構造を3つ以上含む置換アミノ基を表す。Yはそれぞれ独立に、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又はケイ素原子を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。)
【0052】
Yはそれぞれ独立に、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又はケイ素原子を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。すなわち、Yは炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又はケイ素原子からなる二価の連結基を表す。該置換基としては後述の置換基Wが挙げられる。
Yはそれぞれ独立に、−C(R21)(R22)−、−Si(R23)(R24)−、−N(R20)−、酸素原子、又は硫黄原子を表し、R20〜R24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表すことが好ましい。このうち、−C(R21)(R22)−、−Si(R23)(R24)−、−N(R20)−、が好ましく、−C(R21)(R22)−、−N(R20)−、がより好ましく、−C(R21)(R22)−が特に好ましい。
【0053】
前記−C(R21)(R22)−において、R21及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表す。R21及びR22は更に置換基を有してもよく、そのさらなる置換基の具体例は置換基Wが挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基、又はアルコキシ基である。
21及びR22として好ましくは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、複素環基であり、より好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、又は炭素数4〜16の複素環基であり、更に好ましくは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜18のアルキル基である。
【0054】
前記−Si(R23)(R24)−において、R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表す。R23及びR24は更に置換基を有してもよく、そのさらなる置換基の具体例は置換基Wが挙げられ、好ましくはアルキル基、アリール基、又はアルコキシ基である。
23及びR24として好ましくは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、複素環基であり、より好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、又は炭素数4〜16の複素環基であり、更に好ましくは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜18のアルキル基である。
また、R23及びR24は結合して環を形成してもよく、該環としては脂肪族炭化水素環が好ましく、炭素数4〜10の脂肪族炭化水素環がより好ましい。
【0055】
前記−N(R20)−において、R20は、好ましくは、アルキル基、アリール基、複素環基を表す。R20は更に置換基を有してもよく、そのさらなる置換基の具体例は置換基Wが挙げられ、好ましくはアルキル基、又はアリール基である。
20としてより好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、又は炭素数4〜16の複素環基であり、更に好ましくは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜18のアルキル基である。
【0056】
一般式(Y1)で表される化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0057】
一般式(Y1)におけるR〜R、R’〜R’、及びR’’〜R’’の定義及び好ましい範囲は後述する一般式(1)におけるR〜R、R’〜R’、及びR’’〜R’’と同様である。
一般式(1)
【0058】
【化13】

【0059】
(式中、R〜R、R’、R’〜R’、R91、R’91、R’’〜R’’、R92、及びR’92は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。但し、R〜R、R’〜R’、R’’〜R’’のうち少なくとも一つは環構造を3つ以上含む置換アミノ基を表す。ny1は0〜2の整数を表す。ny2は0又は1を表す。)
【0060】
前記一般式(1)で表される化合物は、ny1又はny2が0ではない場合、各フルオレンユニットは単結合で結合している。例えば、ny1が1を表す場合、一般式(1)の左側のフルオレンユニットのR〜Rのいずれか1つと、中央のフルオレンユニットのR’〜R’のいずれか1つとが結合し、単結合を形成する。その他の場合も同様である。
とR’、R’とR’’がそれぞれ結合すること、又はRとR’、R’とR’’がそれぞれ結合することが好ましく、RとR’、R’とR’’がそれぞれ結合することがより好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、ny1及びny2が0を表す場合、下記一般式(1A)で表される化合物を表す。
一般式(1A)
【0061】
【化14】

【0062】
(式中、R〜R、R’は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。但し、R〜R、R’のうち少なくとも一つは環構造を3つ以上含む置換アミノ基を表す。)
【0063】
一般式(1)において、ny1及びny2は括弧内の繰り返し単位数を表す。ny1は0〜2の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。ny2は0又は1を表し、1が好ましい。ny1及びny2が上記好ましい範囲であると、素子を構成した場合の暗電流及び耐熱性が有利である。
【0064】
〜Rは環構造を3つ以上含む置換アミノ基ではない場合、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、極性の低い置換基であると正孔の輸送に有利であるという理由から、水素原子、アルキル基、又はアリール基が好ましく、単純な構造の方が材料コスト的に有利であるという理由から、水素原子が特に好ましい。
〜Rが環構造を3つ以上含む置換アミノ基ではない場合、R〜Rの炭素数は0〜18が好ましく、0〜10がより好ましく、0〜6が更に好ましい。
〜Rがアルキル基を表す場合、該アルキル基としては、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基が更に好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、又はシクロヘキシル基が好ましい。
〜Rがアリール基を表す場合、該アリール基としては、炭素数6〜18のアリール基が好ましく、炭素数6〜14のアリール基がより好ましく、炭素数6〜10のアリール基が更に好ましい。具体的には、フェニル基、ナフチル基、又はアンスリル基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましい。
〜Rが複素環基を表す場合、該複素環基としては、炭素数4〜16の複素環基が好ましく、炭素数4〜10の複素環基がより好ましい。具体的には、ピリジル基、ピリミジル基、フラニル基、又はチエニル基が好ましい。
〜Rがアルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表す場合、これらは更に置換基を有していてもよい。該更なる置換基の具体例としては後述の置換基Wが挙げられる。
【0065】
及びR’はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、アルキル基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基が好ましく、極性の低い置換基であると正孔の輸送に有利であるという理由から、水素原子、アルキル基、又は複素環基がより好ましく、水素原子又はアルキル基が更に好ましく、アルキル基であれば反応性のプロトンが無いため、高い耐久性を推定できるという理由から、アルキル基が特に好ましい。
及びR’の炭素数は0〜18が好ましく、0〜10がより好ましく、0〜6が更に好ましい。
及びR’がアルキル基を表す場合、該アルキル基としては、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、又はシクロヘキシル基が好ましい。
及びR’がアリール基を表す場合、該アリール基としては、炭素数6〜18のアリール基が好ましく、炭素数6〜10のアリール基がより好ましい。具体的には、フェニル基、ナフチル基、又はアンスリル基が好ましい。
及びR’が複素環基を表す場合、該複素環基としては、炭素数4〜16の複素環基が好ましく、炭素数4〜10の複素環基がより好ましい。具体的には、ピリジル基、ピリミジル基、フラニル基、フルフリル基、又はチエニル基が好ましい。
及びR’がアルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表す場合、これらは更に置換基を有していてもよい。該更なる置換基の具体例としては後述の置換基Wが挙げられる。
【0066】
また、可能であれば、R〜R、R’のうち隣接するもの同士が互いに結合して環を形成してもよい。該環としては後述の環Rが挙げられる。
【0067】
R’〜R’、及びR’’〜R’’はR〜Rと同義であり、具体例及び好ましい範囲も同様である。
91、R’91、R92、及びR’92は、R及びR’と同義であり、具体例及び好ましい範囲も同様である。
【0068】
一般式(1)において、本発明の課題である高い素子の耐熱性が得られるという理由から、R’’及びRの少なくともいずれかが環構造を3つ以上含む置換アミノ基であることが好ましく、R’’及びRが環構造を3つ以上含む置換アミノ基であるものが特に好ましい。
一般式(1)において、ny1及びny2が0を表す場合、R及びRの少なくともいずれかが環構造を3つ以上含む置換アミノ基であることが好ましく、R及びRが環構造を3つ以上含む置換アミノ基であるものが特に好ましい。
【0069】
一般式(1)において、環構造を3つ以上含む置換アミノ基は、直接又は他の基を介して上記フルオレン骨格に結合することができる。
前記他の基として好ましくは、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基(−NH−)、であり、該アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基は更に置換基を有してもよい。該更なる置換基の具体例としては後述の置換基Wが挙げられる。前記他の基としてより好ましくは、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、炭素数6〜14のアリーレン基、炭素数4〜13の複素環基、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜12の炭化水素基(好ましくはアリール基又はアルキル基)を有するイミノ基(例えばフェニルイミノ基、メチルイミノ基、t−ブチルイミノ基)、更に好ましくは、炭素数1〜6のアルキレン基(例えばメチレン基、1,2−エチレン基、1,1−ジメチルメチレン基)、炭素数2のアルケニレン基(例えば−CH=CH−)、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば1,2−フェニレン基、2,3−ナフチレン基)である。
【0070】
構造が単純であれば材料コストの面で有利であるという理由から、環構造を3つ以上含む置換アミノ基は、他の基を介してフルオレン骨格に結合するより、直接結合するものが好ましい。
【0071】
環構造を3つ以上含む置換アミノ基は、環を合計して3つ以上含む置換アミノ基であることが好ましい。ここで、環構造を3つ以上含む置換アミノ基が縮合環を含む場合は、縮合環を構成する単環の各環式成分を1つの環として数えることとする。
環構造を3つ以上含む置換アミノ基において、環を合計して3〜5つ含むことがより好ましく、3〜4つ含むことが更に好ましい。環構造を3つ以上含む置換アミノ基の炭素数は、炭素数5〜40であることが好ましく、炭素数10〜30であることがより好ましい。
【0072】
環構造を3つ以上含む置換アミノ基は、好ましくは、2つの芳香族炭化水素が縮合することによって3つ以上の環が形成された構造を有する基を置換基として有するアミノ基である。また、置換アミノ基の窒素原子が環構造の一部に含まれている形態でもよい。具体例としてはカルバゾール構造、アクリダン構造、ジベンゾアゼピン構造、及びこれらのベンゾ縮環誘導体構造が挙げられる。
2つの芳香族炭化水素は、好ましくは6員環からなるものである。また、芳香族炭化水素自体が縮合環(ナフタレン等)であってもよい。
【0073】
環構造を3つ以上含む置換アミノ基として、具体的には、後述の例示A5〜A7等を置換基として有する置換アミノ基が挙げられる。また、後述の例示N1〜N13に示す基のように、置換アミノ基の窒素原子が環構造の一部に含まれている形態でもよい。
本発明に係る一般式(Y1)、一般式(1)及び一般式(F−1)で表される化合物は、このような環構造を3つ以上含む置換アミノ基を含んでいることで、この構造に特有な低い熱励起電流発生能と、加熱時の分子の状態変化が小さくなり、一般式(Y1)、一般式(1)及び一般式(F−1)で表される化合物間及び光電変換層に用いる化合物との間の分子間相互作用の変化が小さくなることが暗電流の低減及び加熱による暗電流増加の抑制に寄与すると考えられる。
環構造を3つ以上含む置換アミノ基の置換位置は特に限定されないが、上記R及びRの少なくともいずれかに有することが好ましい。
【0074】
前記一般式(1)において、環構造を3つ以上含む置換アミノ基としては、より具体的には、下記一般式(A−1)で表される基、下記一般式(A−2)で表される基、下記一般式(A−3)で表される基、下記一般式(A−4)で表される基、又は下記一般式(A−5)で表される基が挙げられる。
一般式(A−1)
【0075】
【化15】

【0076】
(式中、Ra〜Raは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。*は結合位置を表す。Xaは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。)
【0077】
一般式(A−1)において、Ra〜Raは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表す。極性の低い置換基であると正孔の輸送に有利であるという理由から、Ra〜Raは、水素原子、アルキル基、又はアリール基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
Ra〜Raがアルキル基を表す場合、該アルキル基としては、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が更に好ましい。また、アルキル基は直鎖状でも、分岐状でも、環状でもよい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、又はシクロヘキシル基が好ましい。
Ra〜Raがアリール基を表す場合、該アリール基としては、炭素数6〜18のアリール基が好ましく、炭素数6〜14のアリール基がより好ましく、炭素数6〜10のアリール基が更に好ましい。具体的には、フェニル基、又はナフチル基が好ましい。
Ra〜Raが複素環基を表す場合、該複素環基としては、炭素数4〜16の複素環基が好ましく、炭素数4〜10の複素環基がより好ましい。具体的には、ピリジル基、ピリミジル基、フラニル基、又はチエニル基が好ましい。
【0078】
Ra〜Raがアルキル基、アリール基、又は複素環基を表す場合、これらは更に置換基を有していてもよい。該更なる置換基としては、後述の置換基Wが挙げられる。
Ra〜Raのうち隣接するもの同士が互いに結合して環を形成してもよい。環としては後述の環Rが挙げられる。該環としては、好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピリミジン環等である。
【0079】
一般式(A−1)において、Xaは縮環を形成する部分を表し、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表す。Xaがアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表す場合、これらは更に置換基を有していてもよい。該更なる置換基としては、後述の置換基Wが挙げられる。
【0080】
Xaは、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、炭素数6〜14のアリーレン基、炭素数4〜13の複素環基、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜12の炭化水素基(好ましくはアリール基又はアルキル基)を有するイミノ基(例えばフェニルイミノ基、メチルイミノ基、t−ブチルイミノ基)が好ましく、単結合、炭素数1〜6のアルキレン基(例えばメチレン基、1,2−エチレン基、1,1−ジメチルメチレン基)、炭素数2のアルケニレン基(例えば−CH=CH−)、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば1,2−フェニレン基、2,3−ナフチレン基)が更に好ましい。
【0081】
一般式(A−1)で表される基の具体例としては、後述のN1〜N13で例示される基が挙げられる。また、その他に下記のものが挙げられる。但し、これらに限定されない。
【0082】
【化16】

【0083】
前記一般式(1)において、環構造を3つ以上含む置換アミノ基としては、下記一般式(A−2)で表される基も挙げられる。
【0084】
一般式(A−2): −N(RB1)(RB2
(RB1及びRB2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表す。但し、RB1及びRB2の少なくともいずれかはアリール基又は複素環基を表し、RB1及びRB2に含まれる環の数が合計3以上である。)
【0085】
一般式(A−2)中、RB1及びRB2は、アルキル基、アリール基、又は複素環基が好ましく、アリール基、又は複素環基がより好ましく、正孔輸送能が優れるという理由から、アリール基が更に好ましい。
B1及びRB2がアルキル基を表す場合、該アルキル基としては、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基が好ましい。
B1及びRB2がアリール基を表す場合、該アリール基としては、炭素数6〜18のアリール基が好ましく、炭素数6〜14のアリール基がより好ましい。具体的には、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ビフェニル基(これらのより具体的な例としては、後述のA1〜A11等)、アントリル基、又はピレニル基が好ましい。
B1及びRB2が複素環基を表す場合、該複素環基としては、炭素数4〜16の複素環基が好ましく、炭素数4〜10の複素環基がより好ましい。具体的には、カルバゾリル基、インドリル基、又はイミダゾリル基が好ましい。
B1及びRB2がアルキル基、アリール基、又は複素環基を表す場合、これらは更に置換基を有していてもよい。該更なる置換基の具体例としては後述の置換基Wが挙げられる。
【0086】
好ましくは、RB1及びRB2の少なくともいずれかは、下記一般式(b−1)で表される基である。更に好ましくは、RB1及びRB2の両方が下記一般式(b−1)で表される基である場合である。
一般式(b−1)
【0087】
【化17】

【0088】
(式中、Rbは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。Xbは、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。Rbが複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。式中の2つのXbは互いに同じでも異なっていてもよい。*は結合位置を表す。m4は0〜3の整数を表し、m5は0〜4の整数を表す。)
【0089】
Rbがアルキル基、アリール基、又は複素環基を表す場合、これらは更に置換基を有していてもよい。該更なる置換基の具体例としては後述の置換基Wが挙げられる。
複数のRbのうち隣接するもの同士が互いに結合して環を形成してもよい。環としては後述の環Rが挙げられ、好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環等である。
【0090】
Rbは、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数4〜16の複素環基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基が更に好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
また、m4が0、m5が0である場合も好ましい。
【0091】
Xbは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表す。Xbは、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基(例えば−CH=CH−)、炭素数6〜14のアリーレン基(例えば1,2−フェニレン基、2,3−ナフチレン基)、炭素数4〜13の複素環基、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜12の炭化水素基(好ましくはアリール基又はアルキル基)を有するイミノ基(例えばフェニルイミノ基、メチルイミノ基、t−ブチルイミノ基)が好ましく、単結合、炭素数1〜6のアルキレン基(例えばメチレン基、1,2−エチレン基、1,1−ジメチルメチレン基)、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜6のイミノ基が更に好ましい。
Xbがアルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表す場合、これらは更に置換基を有していてもよい。該更なる置換基としては、後述の置換基Wが挙げられる。
【0092】
一般式(b−1)で表される基の具体例を下記に挙げるが、これらに限定されない。
【0093】
【化18】

【0094】
前記一般式(1)において、環構造を3つ以上含む置換アミノ基としては、下記一般式(A−3)で表される基、下記一般式(A−4)で表される基、又は下記一般式(A−5)で表される基も挙げられる。
【0095】
【化19】

【0096】
(一般式(A−3)〜(A−5)中、Ra33〜Ra38、Ra41、Ra44〜Ra48、Ra51、Ra52、Ra55〜Ra58は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。*は結合位置を表す。Xc、Xc、及びXcは、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。Z31、Z41、及びZ51は、それぞれ独立に、シクロアルキル環、芳香族炭化水素環、又は芳香族複素環を表し、これらは更に置換基を有してもよい。)
【0097】
一般式(A−3)〜(A−5)において、Ra33〜Ra38、Ra41、Ra44〜Ra48、Ra51、Ra52、Ra55〜Ra58は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子)、又はアルキル基を表す。極性の低い置換基であると正孔の輸送に有利であるという理由から、水素原子、又はアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
Ra33〜Ra38、Ra41、Ra44〜Ra48、Ra51、Ra52、Ra55〜Ra58がアルキル基を表す場合、該アルキル基としては、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が更に好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、又はシクロヘキシル基が好ましい。
一般式(A−3)〜(A−5)において、Ra33〜Ra38、Ra41、Ra44〜Ra48、Ra51、Ra52、Ra55〜Ra58のうち隣接するもの同士が互いに結合して環を形成してもよい。環としては後述の環Rが挙げられる。該環としては、好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピリミジン環等である。
【0098】
Xc、Xc、及びXcは、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表す。Xc、Xc、及びXcがアルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表す場合、これらは更に置換基を有していてもよい。該更なる置換基としては、後述の置換基Wが挙げられる。
【0099】
Xc、Xc、及びXcは、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、炭素数6〜14のアリーレン基、炭素数4〜13の複素環基、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜12の炭化水素基(好ましくはアリール基又はアルキル基)を有するイミノ基(例えばフェニルイミノ基、メチルイミノ基、t−ブチルイミノ基)が好ましく、単結合、炭素数1〜6のアルキレン基(例えばメチレン基、1,2−エチレン基、1,1−ジメチルメチレン基)、炭素数2のアルケニレン基(例えば−CH=CH−)、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば1,2−フェニレン基、2,3−ナフチレン基)が更に好ましい。
【0100】
31、Z41、及びZ51は、それぞれ独立に、シクロアルキル環、芳香族炭化水素環、又は芳香族複素環を表す。一般式(A−3)〜(A−5)において、Z31、Z41、及びZ51はベンゼン環と縮合している。高い素子の耐熱性と高い正孔輸送能が期待できるという理由からZ31、Z41、及びZ51は芳香族炭化水素環であることが好ましい。
【0101】
一般式(A−3)〜(A−5)で表される基の具体例を下記に挙げるが、これらに限定されない。
【0102】
一般式(A−1)、(A−3)〜(A−5)で表される基の具体例としては、下記N1〜N135で例示される基が挙げられる。但し、これらに限定されない。一般式(A−1)〜(A−5)で表される基として好ましくはN−1〜N−93であり、N−1〜N−79がより好ましく、N−1〜N−37が更に好ましく、N−1〜N−3、N−12〜N−22、N−24〜N−35が中でも好ましく、N−1〜N−3、N−17〜N−22、N−30〜N−35が特に好ましく、N−1〜N−3、N−17〜N−19、N−30〜N−32が最も好ましい。
【0103】
【化20】

【0104】
【化21】

【0105】
【化22】

【0106】
【化23】

【0107】
【化24】

【0108】
【化25】

【0109】
【化26】

【0110】
【化27】

【0111】
【化28】

【0112】
【化29】

【0113】
本発明に係る一般式(Y1)で表される化合物としては、下記一般式(F−1)で表される化合物が好ましい。
一般式(F−1)
【0114】
【化30】

【0115】
(式中、R11は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。R12、及びR17、は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。R19及びR’19は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。但し、R12及びR17の少なくとも1つが環構造を3つ以上含む置換アミノ基を表す。m11及びm12は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。R11が前記一般式(F−1)中に複数存在する場合、複数のR11は互いに同じでも異なっていてもよい。nは1〜4の整数を表す。)
【0116】
11は、前記一般式(1)中のR〜Rにおけるハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基と同義であり、好ましい範囲も同様である。R11はアルキル基、アリール基、又は複素環基であることが好ましく、アルキル基、又はアリール基であることがより好ましい。
19及びR’19は、前記一般式(1)中のR及びR’における水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
m1は単純な構造であるとコスト面で有利という理由から、0〜2が好ましく、0の場合が特に好ましい。
【0117】
また、R12、R17は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜100のアリール基、炭素数4〜16の複素環基、炭素数2〜80の置換アミノ基、炭素数1〜18の置換メルカプト基が好ましく、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜80のアリール基、炭素数6〜60の置換アミノ基が更に好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜60のアリール基、炭素数10から50の置換アミノ基が特に好ましい。
また、これらが環構造を3つ以上含む置換アミノ基を表す場合、前述した一般式(A−1)又は一般式(A−2)で表される基が好ましい。
12、R17の好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、及び一般式(A−1)又は一般式(A−2)の説明で挙げた基が挙げられる。
12及びR17は、それぞれ同一でも異なっていてもよいが、同一であるものは合成が容易であり好ましい。
【0118】
一般式(F−1)において、nは括弧内の繰り返し単位数を表す。nは1〜4の整数を表し、1〜3が好ましく、1又は2がより好ましく、素子を構成した場合の暗電流及び耐熱性が有利であるという理由から、2が更に好ましい。
【0119】
本発明に係るフルオレン化合物のイオン化ポテンシャル(Ip)は、電子ブロッキング層に用いた場合に光電変換層中のホール輸送を担う材料から障壁なくホールを受け取る必要があるため、光電変換層中のホール輸送を担う材料のIpより小さい必要がある。特に、可視域に感度を有するような吸収の材料を選択した場合、より多くの材料に適合するためには、本発明に係るフルオレン化合物のイオン化ポテンシャルは5.8eV以下であることが好ましく、5.5eV未満であることがより好ましい。Ipが5.8eV以下であることであることにより、電荷輸送に対し障壁を発生させず、高い電荷捕集効率、高速応答性を発現させる効果が得られる。
また、Ipは、4.9eV以上であることが好ましく、5.0eV以上あることがより好ましい。Ipが4.9eV以上であることにより、より高い暗電流抑制効果が得られる。
なお、各化合物のIpは、紫外光電子分光法(UPS)や、大気中光電子分光装置(例えば、理研計器製AC−2など)によって測定できる。
本発明に係るフルオレン化合物のIpは、フルオレン骨格に結合する置換基を変えること等により前記範囲とすることができる。
【0120】
なお、深いEaの材料を含む光電変換層に対し、強く相互作用する構造の材料を用いると、沸き出し電荷が界面で形成されやすい。例えば、深いEaの材料と接触する分子について、平面性が高い材料を用いると、平面状に形成されたπ電子と深いEaの材料の分子軌道が相互作用しやすい傾向になり、沸き出し電荷が増大する界面が形成されやすい。そのため、本発明に係るフルオレン化合物は、5個以上の環からなる縮合環構造を含まないことが好ましい。また、分子間相互作用を抑制する意味で、立体障害を付与することも可能であるが、嵩だか過ぎる立体障害は、界面での信号電荷輸送を阻害するので、この点からも、5個以上の環からなる縮合環構造を含まないことが好ましい。
【0121】
以下、本発明に係るフルオレン化合物の具体例を示すが、本発明は以下の具体例には限定されない。また、式(a)〜(h)において、「R12とR17」、「R22aとR22b」、「R32、R37とR’32、R’37」等がそれぞれ同一でない場合について、例示した構造以外の組み合わせも可能である。
なお、以下の化合物例における部分構造は以下のものを示す。また、Me:メチル基、Et:エチル基、i−Pr:イソプロピル基、n−Bu:n−ブチル基、t−Bu:tert−ブチル基、2−MeOEt:2−メトキシ−1−エチル基、Ph:フェニル基、2−tol:2−トリル基、3−tol:3−トリル基、4−tol:4−トリル基、1−Np:1−ナフチル基、2−Np:2−ナフチル基、2−An:2−アンスリル基、2−Fn:2−フェナンスリル基、である。
【0122】
【化31】

【0123】
【化32】

【0124】
【化33】

【0125】
【化34】

【0126】
【化35】

【0127】
【化36】

【0128】
【化37】

【0129】
【化38】

【0130】
【化39】

【0131】
【化40】

【0132】
【化41】

【0133】
【化42】

【0134】
【化43】

【0135】
【化44】

【0136】
【化45】

【0137】
【化46】

【0138】
【化47】

【0139】
【化48】

【0140】
【化49】

【0141】
【化50】

【0142】
【化51】

【0143】
【化52】

【0144】
【化53】

【0145】
【化54】

【0146】
【化55】

【0147】
【化56】

【0148】
【化57】

【0149】
更に、素子駆動時の耐久性を付与する目的で一般式(Y1)、一般式(1)及び一般式(F−1)で表される化合物の水素原子を重水素原子で置換しても良い。
本発明に係る一般式(Y1)、一般式(1)及び一般式(F−1)で表される化合物の分子量は、好ましくは、500以上2000以下であり、より好ましくは、500以上1500以下である。分子量が500以上2000以下であることにより、材料の蒸着が可能となり、耐熱性をより高くすることができる。
また、本発明に係る一般式(Y1)、一般式(1)及び一般式(F−1)で表される化合物は、既知の方法を応用して合成することが可能である。
【0150】
本発明に係る一般式(Y1)、一般式(1)及び一般式(F−1)で表される化合物の使用量としては、製膜された後の状態での単層換算で10nm以上300nm以下が好ましく、更に好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上120nm以下である。光電変換層と電荷ブロッキング層の間に挿入する層として用いる場合は、単層換算で好ましくは100nm以下、より好ましくは50nm以下、更に好ましくは20nm以下である。
【0151】
製膜に用いる本発明に係わる一般式(Y1)、一般式(1)及び一般式(F−1)で表される化合物の純度は95%以上が好ましく、97%以上が更に好ましく、99%以上が特に好ましい。この材料純度は高速液体クロマトグラフィーを用いて254nmの吸光度をモニターしたクロマトグラムから決定することが出来る。含まれる不純物としては、合成時に混入する中間体及び副生生物が挙げられ、更に目的化合物の酸化、還元、加水分解等による分解物が挙げられる。
製膜に用いる本発明に係わる一般式(Y1)、一般式(1)及び一般式(F−1)で表される化合物に含まれる重元素不純物は、7000ppm以下が好ましく、100ppm以下が更に好ましく、10ppm以下が特に好ましい。不純物含量は高周波誘導結合プラズマ質量分析計を用いて決定できる。ここでいう重元素不純物とはマグネシウム、鉄、銅、パラジウム、ニッケル、ナトリウム、カリウム、セシウム、塩素、臭素、ヨウ素等を周期律表第3周期以降の元素を指すが、一般式(Y1)、一般式(1)及び一般式(F−1)に含まれる元素を除く。これらの重元素不純物はイオン性化合物あるいは有機化合物の置換基として含まれていても良い。これらの不純物は、再結晶等の操作によって除くことが出来るが、昇華精製による除去が好ましい。
【0152】
本発明は、下記一般式(F−10)で表される化合物にも関する。
一般式(F−10)
【0153】
【化58】

【0154】
(式中、R111〜R118、R’111〜R’118は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。R112、及びR117は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。R115〜R118中のいずれか一つは、R’115〜R’118中のいずれか一つと単結合で連結する。A11及びA12は、それぞれ独立に下記一般式(A−1)で表される置換基を表す。A11はR111〜R114中のいずれか一つとして置換し、A12はR’111〜R’114中のいずれか一つとして置換する。Yはそれぞれ独立に、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又はケイ素原子を表し、これらが更に置換基を有している場合、その炭素数は2以下が好ましい)
一般式(A−1)
【0155】
【化59】

【0156】
(式中、Ra〜Raは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。*は結合位置を表す。Xaは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。)
【0157】
また、本発明は、一般式(F−10)で表される化合物を含む光電変換材料、又は膜にも関する。
【0158】
本発明の光電変換素子が、図1(b)に示す態様のように正孔ブロッキング層を有する場合、正孔ブロッキング層を形成するための材料としては、電子受容性材料を用いることが好ましい。電子受容性材料としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、バソクプロイン、バソフェナントロリン、及びこれらの誘導体、トリアゾール化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、ビス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール化合物などを用いることができる。また、電子受容性有機材料でなくとも、十分な電子輸送性を有する材料ならば使用することは可能である。ポルフィリン系化合物や、DCM(4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(4−(ジメチルアミノスチリル))−4Hピラン)等のスチリル系化合物、4Hピラン系化合物を用いることができる。
具体的には特開2008−72090号公報(特許文献2)に記載の化合物が好ましい。
【0159】
電子ブロッキング層及び正孔ブロッキング層は、蒸着により形成することができる。蒸着は、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)のいずれでもよいが、真空蒸着等の物理蒸着が好ましい。真空蒸着により成膜する場合、真空度、蒸着温度等の製造条件は常法に従って設定することができる。その条件としては、真空度(装置内圧力)は1x10−2Pa以下が好ましく、1x10−3Pa以下が好ましく、1x10−4Pa以下が好ましい。高真空であるほど材料の分解を抑制できる。蒸着源となるるつぼの温度は、200℃以上500℃以下が好ましく、300℃以上400℃以下が更に好ましい。高温になるほど製膜速度が高くなり生産性が増し、低温であるほど材料の分解が抑制できる。
電子ブロッキング層及び正孔ブロッキング層の厚みは、10nm以上300nm以下が好ましく、更に好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。10nm以上とすることにより、好適な暗電流抑制効果が得られ、300nm以下とすることにより、好適な光電変換効率が得られる。なお、電荷ブロッキング層は複数層形成してもよい。
【0160】
(光電変換層)
また、光電変換層12を構成する有機材料は、p型有機半導体及びn型有機半導体の少なくとも一方を含んでいることが好ましい。
【0161】
p型有機半導体(化合物)は、ドナー性有機半導体(化合物)であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。更に詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物は、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これに限らず、上記したように、n型(アクセプター性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナー性有機半導体として用いてよい。光電変換層に用いる材料は光を吸収する必要があるため、色素であることが好ましく、吸収極大波長が400〜700nmの範囲であるものが好ましく、高感度にするために500〜600nmの範囲のものが好ましい。そのモル吸光係数は光を吸収する必要があるため、10000cm−1(mol/L)−1以上のものが好ましく、30000以上のものが更に好ましく、50000以上のものが特に好ましい。これらの吸収特性はクロロホルム希薄溶液を調整し、可視光分光吸収測定装置を用いて決定できる。
【0162】
p型有機半導体として好ましくは、下記一般式(I)で表される化合物である。
一般式(I)
【0163】
【化60】

【0164】
式中、Zは5又は6員環を形成するのに必要な原子群を表す。L、L、Lはそれぞれ無置換メチン基、又は置換メチン基を表す。Dは原子群を表す。n1は0以上の整数を表す。
【0165】
は5又は6員環を形成するのに必要な原子群を表し、形成される環としては、通常メロシアニン色素で酸性核として用いられるものが好ましく、その具体例としては例えば以下のものが挙げられる。
【0166】
(a)1,3−ジカルボニル核:例えば1,3−インダンジオン核、1,3−シクロヘキサンジオン、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン等。
(b)ピラゾリノン核:例えば1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−(2−ベンゾチアゾイル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン等。
(c)イソオキサゾリノン核:例えば3−フェニル−2−イソオキサゾリン−5−オン、3−メチル−2−イソオキサゾリン−5−オン等。
(d)オキシインドール核:例えば1−アルキル−2,3−ジヒドロ−2−オキシインドール等。
(e)2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核:例えばバルビツル酸又は2−チオバルビツル酸及びその誘導体等。誘導体としては例えば1−メチル、1−エチル等の1−アルキル体、1,3−ジメチル、1,3−ジエチル、1,3−ジブチル等の1,3−ジアルキル体、1,3−ジフェニル、1,3−ジ(p−クロロフェニル)、1,3−ジ(p−エトキシカルボニルフェニル)等の1,3−ジアリール体、1−エチル−3−フェニル等の1−アルキル−1−アリール体、1,3−ジ(2―ピリジル)等の1,3位ジヘテロ環置換体等が挙げられる。
(f)2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核:例えばローダニン及びその誘導体等。誘導体としては例えば3−メチルローダニン、3−エチルローダニン、3−アリルローダニン等の3−アルキルローダニン、3−フェニルローダニン等の3−アリールローダニン、3−(2−ピリジル)ローダニン等の3位ヘテロ環置換ローダニン等が挙げられる。
【0167】
(g)2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン(2−チオ−2,4−(3H,5H)−オキサゾールジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン等。
(h)チアナフテノン核:例えば3(2H)−チアナフテノン−1,1−ジオキサイド等。
(i)2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核:例えば3−エチル−2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン等。
(j)2,4−チアゾリジンジオン核:例えば2,4−チアゾリジンジオン、3−エチル−2,4−チアゾリジンジオン、3−フェニル−2,4−チアゾリジンジオン等。
(k)チアゾリン−4−オン核:例えば4−チアゾリノン、2−エチル−4−チアゾリノン等。
(l)2,4−イミダゾリジンジオン(ヒダントイン)核:例えば2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2,4−イミダゾリジンジオン等。
(m)2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン(2−チオヒダントイン)核:例えば2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン等。
(n)イミダゾリン−5−オン核:例えば2−プロピルメルカプト−2−イミダゾリン−5−オン等。
(o)3,5−ピラゾリジンジオン核:例えば1,2−ジフェニル−3,5−ピラゾリジンジオン、1,2−ジメチル−3,5−ピラゾリジンジオン等。
(p)ベンゾチオフェン−3−オン核:例えばベンゾチオフェン−3−オン、オキソベンゾチオフェン−3−オン、ジオキソベンゾチオフェンー3−オン等。
(q)インダノン核:例えば1−インダノン、3−フェニル−1−インダノン、3−メチル−1−インダノン、3,3−ジフェニル−1−インダノン、3,3−ジメチル−1−インダノン等。
【0168】
で形成される環として好ましくは、1,3−ジカルボニル核、ピラゾリノン核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含み、例えばバルビツル酸核、2−チオバルビツール酸核)、2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン核、2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核、2,4−チアゾリジンジオン核、2,4−イミダゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン核、2−イミダゾリン−5−オン核、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェンー3−オン核、インダノン核であり、より好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含み、例えばバルビツル酸核、2−チオバルビツール酸核)、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェンー3−オン核、インダノン核であり、更に好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含み、例えばバルビツル酸核、2−チオバルビツール酸核)であり、特に好ましくは1,3−インダンジオン核、バルビツル酸核、2−チオバルビツール酸核及びそれらの誘導体である。
【0169】
により形成される環として好ましいものは下記の式で表される。
【0170】
【化61】

【0171】
は5ないし6員環を形成するに必要な原子群を表す。Zとしては上記Zにより形成される環中から選ぶことができ、好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含む)であり、特に好ましくは1,3−インダンジオン核、バルビツル酸核、2−チオバルビツール酸核及びそれらの誘導体である。
【0172】
アクセプター部同士の相互作用を制御する事により、C60と共蒸着膜とした際、高い正孔輸送性を発現させる事ができることを見出した。アクセプター部の構造、及び立体障害となる置換基の導入により相互作用の制御を行う事が可能である。バルビツル酸核、2−チオバルビツール酸核において、2つのN位の水素を好ましくは2つとも、置換基により置換する事で好ましく分子間相互作用を制御する事が可能であり、置換基としては後述の置換基Wがあげられるが、より好ましくはアルキル基であり、更に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、又はブチル基である。
により形成される環が1,3−インダンジオン核の場合、下記一般式(IV)で示される基又は下記一般式(V)で示される基である場合が好ましい。
一般式(IV)
【0173】
【化62】

【0174】
41〜R44はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
一般式(V)
【0175】
【化63】

【0176】
41、R44、R45〜R48はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
【0177】
前記一般式(IV)で示される基の場合、R41〜R44はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基としては例えば置換基Wとして挙げたものが適用できる。また、R41〜R44はそれぞれ隣接するものが、結合して環を形成することができ、R42とR43が結合して環(例えば、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環)を形成する場合が好ましい。R41〜R44としては全てが水素原子である場合が好ましい。
前記一般式(IV)で示される基が前記一般式(V)で示される基である場合が好ましい。
前記一般式(V)で示される基の場合、R41、R44、R45〜R48はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基としては例えば置換基Wとして挙げたものが適用できる。R41、R44、R45〜R48としては全てが水素原子である場合が好ましい。
【0178】
により形成される環が2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含む)の場合、下記一般式(VI)で示される基である場合が好ましい。
一般式(VI)
【0179】
【化64】

【0180】
81、R82はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。R83は、酸素原子、硫黄原子又は置換基を表す。
【0181】
前記一般式(VI)で示される基の場合、R81、R82はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。置換基としては例えば置換基Wとして挙げたものが適用できる。R81、R82としてはそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はヘテロ環基(2−ピリジル等)が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、t−ブチル)を表す場合がより好ましい。
83は、酸素原子、硫黄原子又は置換基を表すが、R83としては酸素原子、又は硫黄原子を表す場合が好ましい。前記置換基としては結合部が窒素原子であるものと炭素原子であるものが好ましく、窒素原子の場合はアルキル基(炭素数1〜12)若しくはアリール基(炭素数6〜12)が好ましく、具体的にはメチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、フェニルアミノ基、又はナフチルアミノ基が挙げられる。炭素原子の場合は更に少なくとも一つの電子吸引性基が置換していれば良く、電子吸引性基としてはカルボニル基、シアノ基、スルホキシド基、スルホニル基、又はホスホリル基が挙げられ、更に置換基を有している場合が良い。この置換基としては前記Wが挙げられる。R83としては、該炭素原子を含む5員環又は6員環を形成するものが好ましく、具体的には下記構造のものが挙げられる。
【0182】
【化65】

【0183】
【化66】

【0184】
上記の基中のPhはフェニル基を表す。
、L、Lはそれぞれ独立に、無置換メチン基、又は置換メチン基を表す。置換メチン基同士が結合して環(例、6員環例えばベンゼン環)を形成してもよい。置換メチン基の置換基は置換基Wが挙げられるが、L、L、Lは全てが無置換メチン基である場合が好ましい。
【0185】
n1は0以上の整数を表し、好ましくは0以上3以下の整数を表し、より好ましくは0である。n1を増大させた場合、吸収波長域が長波長にする事ができるか、熱による分解温度が低くなる。可視域に適切な吸収を有し、かつ蒸着成膜時の熱分解を抑制する点でn1=0が好ましい。
【0186】
は原子群を表す。前記Dは−NR(R)を含む基であることが好ましく、更に、前記Dが−NR(R)が置換したアリール基(好ましくは、置換してよい、フェニル基又はナフチル基)を表す場合が好ましい。R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、又は置換基を表し、R、Rで表される置換基は置換基Wが挙げられるが、好ましくは、脂肪族炭化水素基(好ましくは置換されてよいアルキル基、アルケニル基)、アリール基(好ましくは置換されてよいフェニル基)、又はヘテロ環基である。 前記ヘテロ環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサジアゾール等の5員環が好ましい。
、Rが置換基(好ましくはアルキル基、アルケニル基)である場合、それらの置換基は、−NR(R)が置換したアリール基の芳香環(好ましくはベンゼン環)骨格の水素原子、又は置換基と結合して環(好ましくは6員環)を形成してもよい。この場合、後記の一般式(VIII)、(IX)又は(X)で表される場合が好ましい。
、Rは互いに置換基同士が結合して環(好ましくは5員又は6員環、より好ましくは6員環)を形成してもよく、また、R、RはそれぞれがL(L、L、Lのいずれかを表す)中の置換基と結合して環(好ましくは5員又は6員環、より好ましくは6員環)を形成してもよい。
はパラ位にアミノ基が置換したアリール基(好ましくはフェニル基)である場合が好ましい。この場合、下記一般式(II)で示されることが好ましい。該アミノ基は置換されていてもよい。該アミノ基の置換基としては、置換基Wが挙げられるが、脂肪族炭化水素基(好ましくは置換されてよいアルキル基)、アリール基(好ましくは置換されてよいフェニル基)、又はヘテロ環基が好ましい。前記アミノ基はアリール基が2つ置換した、いわゆるジアリール基置換のアミノ基が好ましく、この場合、下記一般式(III)で示されることが好ましい。更に該アミノ基の置換基(好ましくは置換されてよいアルキル基、アルケニル基)はアリール基の芳香環(好ましくはベンゼン環)骨格の水素原子、又は置換基と結合して環(好ましくは6員環)を形成してもよい。
一般式(II)
【0187】
【化67】

【0188】
式中、R〜Rはそれぞれ独立に置換基を表す。またこれらの置換基ではベンゼン環に対して相互にオルト位に位置する二つの置換基がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。n2は0〜3の整数を表し、0〜2が好ましく、0又は1が特に好ましい。
一般式(III)
【0189】
【化68】

【0190】
式中、R11〜R16、R20〜R24、R30〜R34はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。また、これらの置換基ではベンゼン環に対して相互にオルト位に位置する二つの置換基がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。n3は0〜3の整数を表し、0〜2が好ましく、0又は1が特に好ましい。
【0191】
、Rが脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロ環基の場合の置換基として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルホニル基、シリル基、芳香族ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、芳香族ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリル基、芳香族ヘテロ環基である。具体例は置換基Wで挙げたものが適用できる。
【0192】
、Rとして好ましくはアルキル基、アリール基、又は芳香族へテロ環基である。R、Rとして特に好ましくはアルキル基、Lと連結して環を形成するアルキレン基、又はアリール基であり、より好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、Lと連結して5ないし6員環を形成するアルキレン基、又は置換若しくは無置換のフェニル基であり、更に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、又は置換若しくは無置換のフェニル基である。
【0193】
前記Dが下記の一般式(VII)で示される場合も好ましい。
一般式(VII)
【0194】
【化69】

【0195】
式中、R91〜R98はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。mは0以上の整数を表す。mは0又は1である場合が好ましい。Rx、Ryは、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、mが2以上の場合、各6員環に結合するRx、Ryは異なる置換基であっても良い。また、R91とR92、R92とRxと、RxとR94、R94とR97、R93とRy、RyとR95、R95とR96、R97とR98はそれぞれ互いに独立して環を形成しても良い。また、L(nが0のときはL)との結合部は、R91、R92、R93の位置でも良く、その場合、一般式(VII)中のLとの結合部として表記されている部位に、それぞれR91、R92、R93に相当する置換基又は水素原子が結合し、隣接するR同士は結合して環を形成しても良い。ここで、「隣接するR同士は結合して環を形成しても良い。」とは、例えば、R91がL(nが0のときはL)との結合部になる場合、一般式(VII)の結合部にはR90が結合しているとするとR90とR93とが結合し環を形成してもよく、また、R92がL(nが0のときはL)との結合部になる場合、一般式(VII)の結合部にはR90が結合しているとするとR90とR91、R90とR93とがそれぞれ結合し環を形成してもよく、また、R93がL(nが0のときはL)との結合部になる場合、一般式(VII)の結合部にはR90が結合しているとするとR90とR91、R91とR92とがそれぞれ結合し環を形成してもよいことを言う。
上記の環はベンゼン環である場合が好ましい。
91〜R98、Rx、Ryの置換基は置換基Wが挙げられる。
91〜R96はいずれも水素原子である場合が好ましく、Rx、Ryはいずれも水素原子である場合が好ましい。R91〜R96は水素原子であり、かつRx、Ryも水素原子である場合が好ましい。
前記R97及びR98は、それぞれ独立に、置換されてよいフェニル基を表す場合が好ましく、該置換基としては置換基Wが挙げられるが、好ましくは無置換フェニル基である。
mは0以上の整数を表すが、0又は1が好ましい。
【0196】
前記Dが一般式(VIII)、(IX)又は(X)で表される基である場合も好ましい。
一般式(VIII)
【0197】
【化70】

【0198】
式中、R51〜R54はそれぞれ独立に、水素又は置換基を表す。該置換基として置換基Wが挙げられる。R52とR53、R51とR52はそれぞれ連結して環を形成してもよい。
一般式(IX)
【0199】
【化71】

【0200】
式中、R61〜R64はそれぞれ独立に、水素又は置換基を表す。該置換基として置換基Wが挙げられる。R62とR63、R61とR62はそれぞれ連結して環を形成してもよい。
一般式(X)
【0201】
【化72】

【0202】
式中、R71〜R73はそれぞれ独立に、水素又は置換基を表す。該置換基として置換基Wが挙げられる。R72とR73はそれぞれ連結して環を形成してもよい。
【0203】
前記Dは前記一般式(II)又は(III)で示される基がより好ましく用いられる。
一般式(II)中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。またRとR、RとR、RとR、RとR、RとRがそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。
〜Rにおける置換基は置換基Wが挙げられるが、好ましくはR〜Rが水素原子、又はRとR若しくはRとRが5員環を形成する場合であり、より好ましくはR〜Rのいずれもが水素原子である場合である。
、Rにおける置換基は置換基Wが挙げられるが、置換基の中でも、置換若しくは無置換のアリール基が好ましく、置換アリール基の置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチレン基、フェナントリル基、アントリル基)が好ましい。R、Rは好ましくはフェニル基、アルキル置換フェニル基、フェニル置換フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基又はフルオレニル基(好ましくは9,9’−ジメチル−2−フルオレニル基)である。
一般式(III)中、R11〜R14、R20〜R24、R30〜R34はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。またR11〜R14、R20〜R24、R30〜R34がそれぞれ互いに結合して環を形成してもよい。その環形成の例としては、R11とR12、R13とR14が結合してベンゼン環を、R20〜R24の隣接する2つ(R24とR23、R23とR20、R20とR21、R21とR22)が結合してベンゼン環を、R30〜R34の隣接する2つ(R34とR33、R33とR30、R30とR31、R31とR32)が結合してベンゼン環を、R22とR34が結合してN原子と共に5員環を形成する場合が挙げられる。
11〜R14、R20〜R24、R30〜R34で表される置換基は置換基Wが挙げられるが、好ましくはアルキル基(例えば、メチル基、エチル基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基)であり、これらの基は更に置換基W(好ましくはアリール基)が置換していてもよい。中でも、R20、R30が置換基である場合が好ましく、かつ、その他のR11〜R14、R21〜R24、R31〜R34は水素原子である場合がより好ましい。
【0204】
一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(pI)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(pI)
【0205】
【化73】

【0206】
式中、Zは、2つの炭素原子を含む環であって、5員環、6員環、又は、5員環及び6員環の少なくともいずれかを含む縮合環を表す。L、L、Lは、それぞれ独立に無置換メチン基又は置換メチン基を表す。nは0以上の整数を表す。Rp、Rp、Rp、Rp、Rp、Rpは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。RpとRp、RpとRp、RpとRp、RpとRp、それぞれ互いに結合して環を形成してもよい。Rp21、Rp22は、それぞれ独立に、置換アリール基、無置換アリール基、置換ヘテロアリール基、又は無置換ヘテロアリール基を表す。
【0207】
光電変換材料として上記のようにドナー部(−NRp21Rp22の部位)/アクセプター部(L〜Lを介してナフチレン基に結合している部位)の連結部をナフチレン基とした化合物をフラーレン類とともに使用することで、優れた耐熱性と高速応答性を有する光電変換素子が得られる。これは、ドナー部/アクセプター部の連結部をナフチレン基とすることで、フラーレン類との相互作用が向上し、応答速度が改善したものと考えられる。また、上記化合物は十分な感度を有する。
【0208】
一般式(pI)において、L、L、Lはそれぞれ独立に、無置換メチン基、又は置換メチン基を表す。置換メチン基における置換基同士が結合して環を形成してもよい。環としては6員環(例えば、ベンゼン環等)が挙げられる。置換メチン基の置換基は後述の置換基Wが挙げられる。L、L、Lは全てが無置換メチン基である場合が好ましい。
【0209】
は0以上の整数を表し、好ましくは0以上3以下の整数を表し、より好ましくは0である。nを増大させた場合、吸収波長域が長波長にすることができるが、熱による分解温度が低くなる。可視域に適切な吸収を有し、かつ蒸着成膜時の熱分解を抑制する点でn=0が好ましい。
【0210】
Rp〜Rpは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Rp〜Rpが置換基を表す場合、Rp〜Rpが表す置換基としては後述の置換基Wが挙げられるが、特にハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルケニル基、シアノ基ヘテロ環チオ基が好ましい。
Rp〜Rpは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルケニル基、シアノ基又はヘテロ環チオ基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基がより好ましく、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数4〜16の複素環基がより好ましく、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数6〜14のアリール基が更に好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基が更に好ましく、水素原子が特に好ましい。アルキル基の場合分岐があってもよい。また、Rp〜Rpが置換基である場合、さらなる置換基を有していてもよい。さらなる置換基としては後述の置換基Wが挙げられる。
Rp〜Rpの好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0211】
RpとRp、RpとRp、RpとRp、RpとRp、それぞれ互いに結合して環を形成してもよい。形成される環としては、後述の環Rが挙げられる。好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピリミジン環等である。
【0212】
Rp21、Rp22は、それぞれ独立に置換アリール基、無置換アリール基、置換ヘテロアリール基、又は無置換ヘテロアリール基を表す。
Rp21、Rp22の両方が無置換フェニル基ではないことが好ましい。
Rp21、Rp22が表すアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、炭素数6〜20のアリール基がより好ましい。アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、ターフェニル基、アントリル基、フルオレニル基が挙げられる。
Rp21、Rp22における置換アリール基の置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、t−ブチル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基)、ヘテロアリール基(例えば、チエニル基、フラニル基、ピリジル基、カルバゾリル基)が好ましい。
【0213】
Rp21、Rp22が表すアリール基又は置換アリール基は、好ましくは、フェニル基、置換フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオレニル基、置換フルオレニル基(好ましくは9,9’−ジアルキル−2−フルオレニル基)である。
【0214】
Rp21、Rp22がヘテロアリール基である場合、ヘテロアリール基としては、5員、6員又は7員の環又はその縮合環からなるヘテロアリール基が好ましい。ヘテロアリール基に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子挙げられる。ヘテロアリール基を構成する環の具体例としては、フラン環、チオフェン環、ピロール環、ピロリン環、ピロリジン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、イミダゾリン環、イミダゾリジン環、ピラゾール環、ピラゾリン環、ピラゾリジン環、トリアゾール環、フラザン環、テトラゾール環、ピラン環、チイン環、ピリジン環、ピペリジン環、オキサジン環、モルホリン環、チアジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペラジン環、トリアジン環等が挙げられる。
縮合環としては、ベンゾフラン環、イソベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、インドリン環、イソインドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、フタラジン環、キナゾリン環、キノキサリン環、ジベンゾフラン環、カルバゾール環、キサンテン環、アクリジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、フェナジン環、フェノキサジン環、チアントレン環、チエノチオフェン環、インドリジン環、キノリジン環、キヌクリジン環、ナフチリジン環、プリン環、プテリジン環等が挙げられる。
【0215】
Rp21、Rp22における置換ヘテロアリール基の置換基としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、t−ブチル基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基)、ヘテロアリール基(例えば、チエニル基、フラニル基、ピリジル基、カルバゾリル基)が好ましい。
Rp21、Rp22が表すヘテロアリール基又は置換ヘテロアリール基を構成する環としては、好ましくは、チオフェン環、置換チオフェン環、フラン環、置換フラン環、チエノチオフェン環、置換チエノチオフェン環、カルバゾリル基である。
【0216】
Rp21、Rp22は、それぞれ独立に、好ましくはフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ビフェニル基、アントラセニル基、フェナントレニル基であり、フェニル基、ナフチル基、又はフルオレニル基がより好ましい。Rp21、Rp22が置換基を有する場合の置換基として好ましくは、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基、アリール基又はヘテロアリール基であり、より好ましくはメチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、トリフルオロメチル基、フェニル基、又はカルバゾリル基である。
【0217】
が上記一般式(VI)で示される基又は上記一般式(VII)で示される基である場合、前記一般式(pI)で表される化合物は、それぞれ下記一般式(pII)で表される化合物又は下記一般式(pIII)で表される化合物となる。
一般式(pI)で表される化合物が、下記一般式(pII)で表される化合物、又は下記一般式(pIII)で表される化合物であることが好ましい。
【0218】
一般式(pII)
【0219】
【化74】

【0220】
式中、L、L、L、n、Rp、Rp、Rp、Rp、Rp、Rp、Rp21、Rp22は、一般式(pI)と同義であり、好ましい範囲も同様である。Rp41、Rp42、Rp43、Rp44は一般式(IV)におけるR41、R42、R43、R44と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0221】
一般式(pIII)
【0222】
【化75】

【0223】
式中、L、L、L、n、Rp、Rp、Rp、Rp、Rp、Rp、Rp21、Rp22は、一般式(pI)と同義であり、好ましい範囲も同様である。Rp51、Rp52、Rp53、Rp54、Rp55、Rp56は一般式(V)におけるR41、R44、R45、R46、R47、R48と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0224】
一般式(pI)で表される化合物は、下記一般式(pIV)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(pIV)
【0225】
【化76】

【0226】
式中、Z、L、L、L、n、Rp、Rp、Rp、Rp、Rp、Rpは、一般式(pI)と同義であり、好ましい範囲も同様である。
Rp〜Rp11、Rp12〜Rp16は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。ただし、Rp〜Rp11、Rp12〜Rp16のすべてが水素原子である場合を除く。また、Rp〜Rp11、Rp12〜Rp16のうち隣接するものが互いに結合して環を形成してもよい。更に、RpとRp、RpとRp16はそれぞれ連結してもよい。
【0227】
一般式(pIV)において、Rp〜Rp11、Rp12〜Rp16、はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。但し、Rp〜Rp11、Rp12〜Rp16のすべてが水素原子となることはない。なお、RpとRp又はRpとRp16が連結する場合は、これ以外のRp〜Rp11、Rp12〜Rp15がすべて水素原子となっていてもよい。
Rp〜Rp11、Rp12〜Rp16が置換基を表す場合、Rp〜Rp11、Rp12〜Rp16が表す置換基としては後述の置換基Wが挙げられるが、特にハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルケニル基、シアノ基、ヘテロ環チオ基が好ましい。
Rp〜Rp11、Rp12〜Rp16は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルケニル基、シアノ基又はヘテロ環チオ基であることが好ましく、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基がより好ましく、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、5員、6員若しくは7員環又はその縮合環からなる複素環基がより好ましく、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数2〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキルオキシ基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、5員若しくは6員環又はその縮合環からなる複素環基が更に好ましい。
アルキル基の場合、直鎖状でも分岐状でもよい。複素環基に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。
アルキル基、アルケニル基、アリール基等の具体例としては後述の置換基Wのアルキル基、アルケニル基、アリール基で例示する基が挙げられる。
【0228】
また、Rp〜Rp11、Rp12〜Rp16のうち隣接するものが互いに結合して環を形成してもよい。形成される環としては後述の環Rが挙げられる。形成される環として好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピリミジン環等である。
更に、RpとRp、RpとRp16はそれぞれ連結してもよい。RpとRp又はRpとRp16が連結する場合、ナフチレン基とフェニル基とを含む4環以上の縮合環となる。RpとRp又はRpとRp16との連結は、単結合でもよい。
【0229】
一般式(I)で表される化合物は、特開2000−297068号公報に記載の化合物であり、前記公報に記載のない化合物も、前記公報に記載の合成方法に準じて製造することができる。
以下に、一般式(I)で示される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0230】
【化77】

【0231】
【化78】

【0232】
【化79】

【0233】
【化80】

【0234】
【化81】

【0235】
【化82】

【0236】
【化83】

【0237】
【化84】

【0238】
【化85】

【0239】
【化86】

【0240】
【化87】

【0241】
【化88】

【0242】
【化89】

【0243】
【化90】

【0244】
【化91】

【0245】
【化92】

【0246】
【化93】

【0247】
【化94】

【0248】
【化95】

【0249】
【化96】


【0250】
上記例示化合物中、R101、R102はそれぞれ独立に水素原子、又は置換基を表す。置換基としては置換基Wが挙げられるが、アルキル基、又はアリール基が好ましい。
【0251】
また、上記一般式(I)で表される化合物は、例えば、以下の反応に従って合成することができる。
【0252】
【化97】

【0253】
上記式中、Rp、Rp、Rp、Rp、Rp、Rp、Rp21、Rp22は、前記と同義である。
なお上記合成例では、一般式(I)で表される化合物のうちZが1,3−ベンゾインダンジオン核である場合を挙げたが、Zが他の構造である場合も上記1,3−ベンゾインダンジオンを別のメロシアニン色素における酸性核となる化合物に変更することで上記と同様に合成することができる。
【0254】
n型有機半導体(化合物)は、アクセプター性有機半導体(化合物)であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。更に詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。
したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン、アントラセン、フラーレン、フェナントレン、テトラセン、ピレン、ペリレン、フルオランテン、又はこれらの誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5ないし7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。なお、これに限らず、上記したように、ドナー性有機化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機半導体として用いてよい。
【0255】
n型有機半導体としては、Eaが3.4〜5.2eVの化合物が好ましく、Eaが3.9〜4.5eVの化合物が特に好ましい。具体的には、フラーレン又はフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
【0256】
フラーレンとは、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレン540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブを表し、フラーレン誘導体とはこれらに置換基が付加された化合物のことを表す。置換基としては、アルキル基、アリール基、又は複素環基が好ましい。
フラーレン誘導体としては、特許文献1に記載の化合物が好ましい。
【0257】
また、フラーレン及びフラーレン誘導体としては、日本化学会編 季刊化学総説No.43(1999)、特開平10−167994号公報、特開平11−255508号公報、特開平11−255509号公報、特開2002−241323号公報、特開2003−196881号公報等に記載の化合物を用いることもできる。
【0258】
フラーレン及びフラーレン誘導体の含有量は、p型材料との混合層中において、それ以外に混合膜を形成する材料の量の50%以上の量(モル比)であることが好ましく、200%以上の量であることが更に好ましく、300%以上の量であることが特に好ましい。
【0259】
本発明の光電変換層及び電荷ブロッキング層を構成する有機化合物の化学構造は水素が部分的に又は完全に重水素化されていることが好ましい。重水素化することで該水素の反応性が抑えられ、素子耐久性が改善されることが期待できる。
【0260】
[材料物性パラメーター(N/C比、O/C比、屈折率、キャリア濃度)]
(1) N/C比:本発明の光電変換層及び電荷ブロッキング層を構成する有機化合物の化学構造は電子供与能と電子受容能を制御するために膜中の窒素原子数と炭素原子数の比(N/C)は重要である。N/Cは0以上0.10以下が好ましく、0以上0.05以下がより好ましい。
(2)O/C比:本発明の光電変換層及び電荷ブロッキング層を構成する有機化合物の化学構造は電子供与能と電子受容能を制御するために膜中の酸素原子数と炭素原子数の比(O/C)は重要である。O/Cは0以上0.3以下が好ましく、0以上0.10以下がより好ましい。
(3)屈折率:本発明の光電変換層及び電荷ブロッキング層を構成する有機化合物の屈折率はエリプソメトリー法により測定することができ、600nmにおいて1.5以上3.0以下が好ましい。光電変換層及び電荷ブロッキング層中にフラーレン又はフラーレン誘導体が多く含まれると増加する。
(4)キャリア濃度:本発明の光電変換層及び電荷ブロッキング層を構成する有機化合物のキャリア濃度は1.0×1010個/cm以上1.0×1020個/cm3以下が好ましい。移動度は高いほど感度が高く、素子応答速度が高くなるため好ましく、室温下、3x10V/cmの電界強度において、1x10−5cm/Vs以上が好ましく、1x10−4cm/Vs以上が更に好ましい。移動度はTOF(Time Of Flight)法により測定することができる。
【0261】
[材料製造方法(保存方法、粒径)]
(1)保存方法:本発明の光電変換層及び電荷ブロッキング層を構成する有機化合物は各々密閉容器に保存することが好ましい。前記密閉容器は防湿性材料からなることが好ましく、密閉容器内にて前記有機化合物の水分含量(含水率)が0.1重量%以下にすることが好ましい。含水率測定は、カール・フィッシャー法(日本工業規格JISにより規格化されていている)、熱分析(示差熱分析DTA、示差走査熱量測定DSC)によって行うことも出来る。防湿性材料はガラス材料、金属材料、プラスチック材料、あるいはこれらの複合材料が好ましく用いられる。より好ましくは、ガラスアンプルである。該防湿性材料の水分透過係数は、0.01g/m・day以下、好ましくは、0.005g/m・day以下、より好ましくは、0.001g/m・day以下である。前記防湿性材料は、紫外線(UV光)及び可視光の透過率が低いことが好ましくは、好ましくは50%以下、より好ましくは、40%以下、更に好ましくは、30%以下である。該防湿性材料は、酸素透過率が低いことが好ましく、25℃で50ml/atm・m・day以下であることが好ましく、より好ましくは10ml/atm・m・day以下、更に好ましくは1.0ml/atm・m・day以下である。材料を保管する密閉容器内及び密閉容器の保管庫内は不活性ガス(窒素、アルゴン等)で置換されていることが望ましい。
(2)粒径:本発明の光電変換層及び電荷ブロッキング層を構成する有機化合物の粉末粒径は前記D50%で表される平均粒径は、10μm〜200μmであり、20μm〜180μmが好ましく、40μm〜150μmがより好ましく、50μm〜120μmが特に好ましい。10μm未満であると、粒子同士の会合や粒子同士の接触の増大による静電気の発生などにより安定した蒸着速度を維持できず、200μmを超えると、単位時間当たりの粒子の落下量の変化が大きくなりやはり安定した蒸着速度を維持できないことがある。なお、前記D50%は、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となるときの平均粒径を示す。
【0262】
[製膜方法]
本発明の光電変換層及び電荷ブロッキング層は乾式製膜法又は湿式製膜法により製膜できる。乾式製膜法としては、蒸着法、スパッタ法等が使用できる。湿式製膜法は有機化学層を大面積化する際に有効な製膜法である。蒸着は、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)のいずれでもよいが、真空蒸着等の物理蒸着が好ましい。真空蒸着により成膜する場合、真空度、蒸着温度等の製造条件は常法に従って設定することができる。
湿式製膜法としては、インクジェット法、スプレー法、ノズルプリント法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法等が使用可能であるが、高精度パターニングの観点からはインクジェット法が好ましい。
【0263】
光電変換層の厚みは、10nm以上1000nm以下が好ましく、更に好ましくは50nm以上800nm以下、特に好ましくは100nm以上500nm以下である。10nm以上とすることにより、好適な暗電流抑制効果が得られ、1000nm以下とすることにより、好適な光電変換効率が得られる。
【0264】
本発明の光電変換素子は、光電変換層及び前記電子ブロッキング層を、それぞれ真空加熱蒸着により製膜する工程を含む製造方法により製造することが好ましい。
本発明においては光電変換膜が電子ブロッキング層及び光電変換層を含む2層以上の構成となる光電変換素子が好ましく、電子ブロッキング層において本発明に係る一般式(Y1)、一般式(1)及び一般式(F−1)で表される化合物を含み、光電変換層において一般式(I)の化合物及びフラーレン又はフラーレン誘導体を含む構成が好ましい。この構成例は図1(a)として既に示した。この構成における電圧印加方法については電子ブロッキング層側が陰極であり、光電変換層側が陽極となるように印加することが好ましい。図1(b)の構成の場合も電子ブロッキング材料側が陰極となる方法が好ましいのは同様である。印加電圧は0−100Vの範囲で選択できるが、1−40Vが好ましく、3−20Vの範囲が特に好ましい。高電圧であれば高効率となるが暗電流が増加し、低電圧であれば低暗電流であるが低効率となるため適切な範囲がある。また、本発明に係る光電変換素子を光センサとして使用した場合、また、撮像素子に組み込んだ場合も、前記と同様の方法により電圧の印加を行うことができる。
【0265】
[膜密度]
本発明の光電変換層は、この好ましくは、フラーレン又はフラーレン誘導体と、それ以外の少なくとも1種の材料が混合、若しくは積層された状態で形成される。本発明の光電変換層の膜密度は1.40g/cm以上2.00g/cm以下が好ましく1.50g/cm以上1.70g/cm以下が更に好ましい。
【0266】
[光センサ]
光電変換素子は光電池と光センサに大別できるが、本発明の光電変換素子は光センサに適している。光センサとしては、上記光電変換素子単独で用いたものでもよいし、前記光電変換素子を直線状に配したラインセンサや、平面上に配した2次元センサの形態とすることができる。本発明の光電変換素子は、ラインセンサでは、スキャナー等の様に光学系及び駆動部を用いて光画像情報を電気信号に変換し、2次元センサでは、撮像モジュールのように光画像情報を光学系でセンサ上に結像させ電気信号に変換することで撮像素子として機能する。
光電池は発電装置であるため、光エネルギーを電気エネルギーに変換する効率が重要な性能となるが、暗所での電流である暗電流は機能上は問題にならない。更にカラーフィルタ設置等の後段の加熱工程が必要ない。光センサは明暗信号を高い精度で電気信号に変換することが重要な性能となるため、光量を電流に変換する効率も重要な性能であるが、暗所で信号を出力するとノイズとなるため、低い暗電流が要求される。更に後段の工程に対する耐性も重要である。
【0267】
[撮像素子]
次に、光電変換素子10aを備えた撮像素子の構成例を説明する。なお、以下に説明する構成例において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号又は相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。
撮像素子とは画像の光情報を電気信号に変換する素子であり、複数の光電変換素子が同一平面状でマトリクス上に配置されており、各々の光電変換素子(画素)において光信号を電気信号に変換し、その電気信号を画素ごとに逐次撮像素子外に出力できるものをいう。そのために、画素ひとつあたり、一つの光電変換素子、一つ以上のトランジスタから構成される。
【0268】
図2は、本発明の一実施形態を説明するための撮像素子の概略構成を示す断面模式図である。この撮像素子は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等の撮像装置、電子内視鏡、携帯電話機等の撮像モジュール等に搭載して用いられる。
この撮像素子は、図1に示したような構成の複数の光電変換素子と、各光電変換素子の光電変換膜で発生した電荷に応じた信号を読み出す読み出し回路が形成された回路基板とを有し、該回路基板上方の同一面上に、複数の光電変換素子が1次元状又は二次元状に配列された構成となっている。
【0269】
図2に示す撮像素子100は、基板101と、絶縁層102と、接続電極103と、画素電極(下部電極)104と、接続部105と、接続部106と、光電変換膜107と、対向電極(上部電極)108と、緩衝層109と、封止層110と、カラーフィルタ(CF)111と、隔壁112と、遮光層113と、保護層114と、対向電極電圧供給部115と、読出し回路116とを備える。
【0270】
画素電極104は、図1に示した光電変換素子10aの電極11と同じ機能を有する。対向電極108は、図1に示した光電変換素子10aの電極15と同じ機能を有する。光電変換膜107は、図1に示した光電変換素子10aの電極11及び電極15間に設けられる層と同じ構成である。
【0271】
基板101は、ガラス基板又はSi等の半導体基板である。基板101上には絶縁層102が形成されている。絶縁層102の表面には複数の画素電極104と複数の接続電極103が形成されている。
【0272】
光電変換膜107は、複数の画素電極104の上にこれらを覆って設けられた全ての光電変換素子で共通の層である。
【0273】
対向電極108は、光電変換膜107上に設けられた、全ての光電変換素子で共通の1つの電極である。対向電極108は、光電変換膜107よりも外側に配置された接続電極103の上にまで形成されており、接続電極103と電気的に接続されている。
【0274】
接続部106は、絶縁層102に埋設されており、接続電極103と対向電極電圧供給部115とを電気的に接続するためのプラグ等である。対向電極電圧供給部115は、基板101に形成され、接続部106及び接続電極103を介して対向電極108に所定の電圧を印加する。対向電極108に印加すべき電圧が撮像素子の電源電圧よりも高い場合は、チャージポンプ等の昇圧回路によって電源電圧を昇圧して上記所定の電圧を供給する。
【0275】
読出し回路116は、複数の画素電極104の各々に対応して基板101に設けられており、対応する画素電極104で捕集された電荷に応じた信号を読出すものである。読出し回路116は、例えばCCD、CMOS回路、又はTFT回路等で構成されており、絶縁層102内に配置された図示しない遮光層によって遮光されている。読み出し回路116は、それに対応する画素電極104と接続部105を介して電気的に接続されている。
【0276】
緩衝層109は、対向電極108上に、対向電極108を覆って形成されている。封止層110は、緩衝層109上に、緩衝層109を覆って形成されている。カラーフィルタ111は、封止層110上の各画素電極104と対向する位置に形成されている。隔壁112は、カラーフィルタ111同士の間に設けられており、カラーフィルタ111の光透過効率を向上させるためのものである。
【0277】
遮光層113は、封止層110上のカラーフィルタ111及び隔壁112を設けた領域以外に形成されており、有効画素領域以外に形成された光電変換膜107に光が入射する事を防止する。保護層114は、カラーフィルタ111、隔壁112、及び遮光層113上に形成されており、撮像素子100全体を保護する。
【0278】
このように構成された撮像素子100では、光が入射すると、この光が光電変換膜107に入射し、ここで電荷が発生する。発生した電荷のうちの正孔は、画素電極104で捕集され、その量に応じた電圧信号が読み出し回路116によって撮像素子100外部に出力される。
【0279】
撮像素子100の製造方法は、次の通りである。
【0280】
対向電極電圧供給部115と読み出し回路116が形成された回路基板上に、接続部105,106、複数の接続電極103、複数の画素電極104、及び絶縁層102を形成する。複数の画素電極104は、絶縁層102の表面に例えば正方格子状に配置する。
【0281】
次に、複数の画素電極104上に、光電変換膜107を例えば真空加熱蒸着法によって形成する。次に、光電変換膜107上に例えばスパッタ法により対向電極108を真空下で形成する。次に、対向電極108上に緩衝層109、封止層110を順次、例えば真空加熱蒸着法によって形成する。次に、カラーフィルタ111、隔壁112、遮光層113を形成後、保護層114を形成して、撮像素子100を完成する。
【0282】
撮像素子100の製造方法においても、光電変換膜107に含まれる光電変換層の形成工程と封止層110の形成工程との間に、作製途中の撮像素子100を非真空下に置く工程を追加しても、複数の光電変換素子の性能劣化を防ぐことができる。この工程を追加することで、撮像素子100の性能劣化を防ぎながら、製造コストを抑えることができる。
【0283】
以下では、上述した撮像素子100の構成要素の封止層110の詳細について説明する。
[封止層]
封止層110としては次の条件が求められる。
第一に、素子の各製造工程において溶液、プラズマなどに含まれる有機の光電変換材料を劣化させる因子の浸入を阻止して光電変換層を保護することが挙げられる。
第二に、素子の製造後に、水分子などの有機の光電変換材料を劣化させる因子の浸入を阻止して、長期間の保存/使用にわたって、光電変換膜107の劣化を防止する。
第三に、封止層110を形成する際は既に形成された光電変換層を劣化させない。
第四に、入射光は封止層110を通じて光電変換膜107に到達するので、光電変換膜107で検知する波長の光に対して封止層110は透明でなくてはならない。
【0284】
封止層110は、単一材料からなる薄膜で構成することもできるが、多層構成にして各層に別々の機能を付与することで、封止層110全体の応力緩和、製造工程中の発塵等によるクラック、ピンホールなどの欠陥発生の抑制、材料開発の最適化が容易になることなどの効果が期待できる。例えば、封止層110は、水分子などの劣化因子の浸透を阻止する本来の目的を果たす層の上に、その層で達成することが難しい機能を持たせた「封止補助層」を積層した2層構成を形成することができる。3層以上の構成も可能だが、製造コストを勘案するとなるべく層数は少ない方が好ましい。
【0285】
[原子層堆積法(ALD法)による封止層110の形成]
光電変換材料は水分子などの劣化因子の存在で顕著にその性能が劣化してしまう。そのために、水分子を浸透させない緻密な金属酸化物・金属窒化物・金属窒化酸化物などセラミクスやダイヤモンド状炭素(DLC)などで光電変換膜全体を被覆して封止することが必要である。従来から、酸化アルミニウム、酸化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素やそれらの積層構成、それらと有機高分子の積層構成などを封止層として、各種真空製膜技術で形成されている。もっとも、これら従来の封止層は、基板表面の構造物、基板表面の微小欠陥、基板表面に付着したパーティクルなどによる段差において、薄膜の成長が困難なので(段差が影になるので)平坦部と比べて膜厚が顕著に薄くなる。このために段差部分が劣化因子の浸透する経路になってしまう。この段差を封止層で完全に被覆するには、平坦部において1μm以上の膜厚になるように製膜して、封止層全体を厚くすることが好ましい。
【0286】
画素寸法が2μm未満、特に1μm程度の撮像素子100において、カラーフィルタ111と光電変換層との距離、すなわち封止層110の膜厚が大きいと、封止層110内で入射光が回折/発散してしまい、混色が発生する。このために、画素寸法が1μm程度の撮像素子100は、封止層110全体の膜厚を減少させても素子性能が劣化しないような封止層材料/製造方法が好ましい。
【0287】
原子層堆積(ALD)法は、CVD法の一種で、薄膜材料となる有機金属化合物分子、金属ハロゲン化物分子、金属水素化物分子の基板表面への吸着/反応と、それらに含まれる未反応基の分解を、交互に繰返して薄膜を形成する技術である。基板表面へ薄膜材料が到達する際は上記低分子の状態なので、低分子が入り込めるごくわずかな空間さえあれば薄膜が成長可能である。そのために、従来の薄膜形成法では困難であった段差部分を完全に被覆し(段差部分に成長した薄膜の厚さが平坦部分に成長した薄膜の厚さと同じ)、すなわち段差被覆性が非常に優れる。そのため、基板表面の構造物、基板表面の微小欠陥、基板表面に付着したパーティクルなどによる段差を完全に被覆できるので、そのような段差部分が光電変換材料の劣化因子の浸入経路にならない。封止層110の形成を原子層堆積法で行なった場合は従来技術よりも効果的に必要な封止層膜厚を薄くすることが可能になる。
【0288】
原子層堆積法で封止層110を形成する場合は、先述した封止層110に好ましいセラミクスに対応した材料を適宜選択できる。もっとも、本発明の光電変換膜は光電変換材料を使用するために、光電変換材料が劣化しないような、比較的に低温で薄膜成長が可能な材料に制限される。アルキルアルミニウムやハロゲン化アルミニウムを材料とした原子層堆積法によると、光電変換材料が劣化しない200℃未満で緻密な酸化アルミニウム薄膜を形成することができる。特にトリメチルアルミニウムを使用した場合は100℃程度でも酸化アルミニウム薄膜を形成でき好ましい。酸化珪素や酸化チタンも材料を適切に選択することで酸化アルミニウムと同様に200℃未満で緻密な薄膜を形成することができ好ましい。
【0289】
本発明の有機光電変換素子及び撮像素子は水分及び/又は酸素の影響を低減させるためにゲッター材料を含むことが好ましい。ゲッター材は封止層にあっても良い。ゲッター材料は水分及び/又は酸素を吸収することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、水分を吸収する物質としてアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属の酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、シリカゲル、ゼオライト系化合物、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸ニッケル等の硫酸塩、アルミニウム金属錯体、アルミニウムオキサイドオクチレート等の有機金属化合物などが挙げられる。具体的には、アルカリ土類金属としては、Ca、Sr、Baなどが挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物としては、CaO、SrO、BaO等が挙げられる。その他にZr−Al−BaOや、アルミニウム金属錯体等も挙げられる。酸素を吸収する物質としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ、酸化マグネシウム、酸化鉄等が挙げられる。またFe、Mn、Zn、Ti及びこれら金属の硫酸塩・塩化物塩・硝酸塩等の無機塩も挙げられる。
【0290】
[置換基W]
置換基Wについて記載する。
置換基Wとしてはハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といっても良い)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH))、スルファト基(−OSOH)、その他の公知の置換基が挙げられる。
【0291】
更に好ましくは、Wは、下記の(1)〜(17)などを表す。
(1)ハロゲン原子
例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子
(2)アルキル基
直鎖、分岐、環状のアルキル基を表す。
(2−a)アルキル基
好ましくは炭素数1から30のアルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)
【0292】
(2−b)シクロアルキル基
好ましくは、炭素数3から30の置換又は無置換のシクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)
【0293】
(3)アルケニル基
直鎖、分岐、環状の炭素数2から30のアルケニル基を表す(例えばビニル、アリル、スチリル)
【0294】
(4)アルキニル基
好ましくは、炭素数2から30のアルキニル基(例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)
【0295】
(5)アリール基
好ましくは、炭素数6から30のアリール基(例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル、フェロセニル)
【0296】
(6)複素環基
好ましくは、5又は6員の、芳香族若しくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数 2から50の5若しくは6員の芳香族の複素環基である。
(例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル。なお、1−メチル−2−ピリジニオ、1−メチル−2−キノリニオのようなカチオン性の複素環基でも良い)
【0297】
(7)アルコキシ基
好ましくは、炭素数1から30のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)
【0298】
(8)アリールオキシ基
好ましくは、炭素数6から30のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)
【0299】
(9)アミノ基
好ましくは、アミノ基、炭素数1から30のアルキルアミノ基、炭素数6から30のアニリノ基(例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)
【0300】
(10)アルキルチオ基
好ましくは、炭素数1から30のアルキルチオ基(例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)
【0301】
(11)アリールチオ基
好ましくは、炭素数6から30のアリールチオ(例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)
【0302】
(12)ヘテロ環チオ基
好ましくは、炭素数2から30の置換又は無置換のヘテロ環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)
【0303】
(13)アルキル若しくはアリールスルフィニル基
好ましくは、炭素数1から30の置換又は無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換又は無置換のアリールスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)
【0304】
(14)アルキル若しくはアリールスルホニル基
好ましくは、炭素数1から30のアルキルスルホニル基、6から30のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)
【0305】
(15)アシル基
好ましくは、ホルミル基、炭素数2から30のアルキルカルボニル基、炭素数7から30のアリールカルボニル基、炭素数4から30の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基(例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)
【0306】
(16)ホスフィノ基
好ましくは、炭素数2から30のホスフィノ基(例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)
【0307】
(17)シリル基
好ましくは、炭素数3から30のシリル基(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)
【0308】
[環R]
環Rとしては、芳香族、又は非芳香族の炭化水素環、又は複素環や、これらが更に組み合わされて形成された多環縮合環が挙げられる。例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、及びフェナジン環が挙げられる。
【実施例】
【0309】
[各化合物の合成例]
(化合物(a−2)の合成)
2,7−ジブロモ−9,9−ジメチルフルオレン2.6g、トリベンゾアゼピン4.0g、t−ブトキシナトリウム1.7g、キシレン60ml、Pd[P(t−Bu)(ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0))0.25gを窒素下95℃で4時間加熱した。室温まで冷却した後メタノール300mlを加えて得られた結晶を濾過し、アセトニトリル、水、イソプロパノールで洗浄し、化合物(a−2)5.0gを得た。
【0310】
(化合物(a−6)の合成)
化合物(a−2)の合成において、トリベンゾアゼピンを等モルの9,10−ジフェニルアクリダンに置き換えた他は同様にして、化合物(a−6)4.5gを得た。(9,10−ジフェニルアクリダンはChemische Berichte,1904年, 37巻, 3202項を参考に合成した。)
【0311】
(化合物(a−7)の合成)
後述する化合物(a−20)の合成において、トリベンゾアゼピンを等モルのカルバゾールに置き換えた他は同様にして、化合物(a−7)3.3gを得た。
【0312】
(化合物(a−8)の合成)
後述する化合物(a−20)の合成において、トリベンゾアゼピンを等モルの7H−ジベンゾ[a,g]カルバゾールに置き換えた他は同様にして、化合物(a−8)3.7gを得た。7H−ジベンゾ[a,g]カルバゾールはJournal of the Chemical Society,1952年,1668項を参考に合成した。
【0313】
(化合物(a−11)の合成)
化合物(a−2)の合成において、トリベンゾアゼピンを等モルの3,6−ジフェニルカルバゾールに置き換えた他は同様にして、化合物(a−11)4.3gを得た。
【0314】
(化合物(a−20)の合成)
t−ブトキシナトリウム0.46g、キシレン15ml、酢酸パラジウム24mg、トリ(t−ブチル)ホスホニウムヘキサフルオロボレート0.11gを窒素下65℃で20分過熱攪拌し、2−ブロモ−7−(7−ブロモ−9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−9,9−ジメチルフルオレン1.0g、トリベンゾアゼピン1.0gを加え、窒素下110℃で5時間加熱した。室温まで冷却した後メタノール15mlを加えて得られた結晶を濾過し、アセトニトリル、水、アセトン、イソプロパノールで洗浄し、化合物(a−20)1.5gを得た。(2−ブロモ−7−(7−ブロモ−9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−9,9−ジメチルフルオレンはMacromolecules 35巻、3474頁、2002年を参考に合成した。)
【0315】
(化合物(a−21)の合成)
Journal of the American Chemical Society, 2003年, 125巻, 7796項を参考に、2,7−ビス(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−9,9−ジメチルフルオレンを合成した。この2gとN−ブロモスクシンイミド1.35g、炭酸プロピレン50mlを窒素下70℃で6時間加熱した。室温まで冷却した後、得られた結晶を濾過し、クロロホルムで再結晶をすることで2,7−ビス(7−ブロモー9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−9,9−ジメチルフルオレン1.7gを得た。化合物(a−20)の合成において、2−ブロモ−7−(7−ブロモ−9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−9,9−ジメチルフルオレンを等モルの2,7−ビス(7−ブロモー9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−9,9−ジメチルフルオレンに置き換えることで化合物(a−21)1.3gを得た。
【0316】
(化合物(b−2)の合成)
化合物(a−20)の合成において、トリベンゾアゼピンを等モルのビス(9,10−ジメチルフルオレン−2−イル)アミンに置き換えて得られたワックス状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン、ヘキサン使用)により精製し、化合物(b−2)0.5gを得た。
【0317】
(化合物(b−5)の合成)
化合物(a−2)の合成において、トリベンゾアゼピンを等モルの2,2‘−ジナフチルアミンに置き換えた他は同様にして、化合物(b−5)0.8gを得た。
【0318】
(化合物(b−7)の合成)
2,7−ジブロモ−9,9−ジメチルフルオレン0.8g、ビス(9,10−ジメチルフルオレン−2−イル)アミン2.0g、t−ブトキシナトリウム0.54g、キシレン25ml、Pd[P(t−Bu)0.12gを窒素下95℃で4時間加熱した。室温まで冷却した後アセトニトリル100mlを加えて得られたワックス状物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン、ヘキサン使用)により精製し、化合物(b−7)1.3gを得た。
【0319】
得られた合成化合物は必要に応じてアルバック理工株式会社TRS−160を用いて昇華若しくは蒸留により精製した。このときの真空度は0.07Paに設定した。
以上の合成例で得られた構造式を下記に示す。
【0320】
【化98】

【0321】
【化99】

【0322】
【化100】

【0323】
[実施例1]
図1(a)に示す形態の光電変換素子を作製した。すなわち、ガラス基板上に、アモルファス性ITO 30nmをスパッタ法により成膜後、下部電極とし、下部電極上にマスクを用いて化合物(a−2)を100nm真空加熱蒸着法により成膜し、電子ブロッキング層を形成した。更にその上に、マスクを用いて化合物(1)とフラーレン(C60)をそれぞれ単層換算で100nm、300nmとなるように共蒸着した層を真空加熱蒸着により25℃に基板の温度を制御した状態で成膜して、光電変換層を形成した。なお、光電変換層の真空蒸着は4×10−4Pa以下の真空度で行った。
更にその上に、上部電極としてスパッタ法によりマスクを用いてアモルファス性ITOを10nm成膜して透明導電性膜を形成し、光電変換素子を作製した。
化合物(1)、化合物(28)、化合物(70)を下記に示す。化合物(1)、(28)は特開2000−297068号公報を、化合物(70)は特開2001−081451号公報を参考に合成できる。
【0324】
【化101】

【0325】
[実施例2]
実施例1において、化合物(1)の膜厚を30nmとした他は同様にして光電変換素子を作製した。
【0326】
[実施例3〜13、比較例1〜3]
実施例1において、光電変換層及び電子ブロッキング層に用いた化合物(a−2)を表1に示すように変更したこと以外は同様にして、光電変換素子を作製した。
【0327】
[評価]
得られた各素子について光電変換素子として機能するかどうかの確認を行った。得られた各素子の図1(a)における電極11を陰極に、15を陽極にして、12Vの電圧を印加し、オプテル製定エネルギー量子効率測定装置(ソースメータはケースレー6430を使用)を用いて、光非照射時に流れる暗電流値と光照射時に流れる光電流値と、それらの値から波長550nmにおける外部量子効率の測定を行った。外部量子効率は、光電流値から暗電流値を引いた信号電流値を電子数に換算し、これを照射光の単位時間当たりの光子数で除することで計算した。照射した光量は50μW/cmとした。いずれの素子も暗電流は10nA/cm以下の暗電流を示すが、外部量子効率は50〜70%の高い値を示し、光電変換素子が機能することを確認した。
表1に、得られた各素子の暗電流値(相対値)及び、各素子を180℃の環境下で30分保持し、室温に戻した後に測定した暗電流の加熱前の暗電流に対する増加倍率を示す。なお、各材料のIpは、各材料をそれぞれ成膜した各単層膜を理研計器製AC−2により測定することにより求め、EaはIpからエネルギーギャップ分のエネルギーを差し引く事により求めた。エネルギーギャップに相当するエネルギーとして、上記単層膜の分光吸収スペクトルの長波端の波長をエネルギー換算した値を用いた。
更に、加熱後の外部量子効率も測定し、加熱前の値である50〜70%の範囲内のものを○として、50%未満となったものを×として表1に示した。
【0328】
比較例で用いた化合物を下記に示す。
【0329】
【化102】

【0330】
【表1】

【0331】
実施例1〜13では比較例1〜3に対して加熱後の暗電流の増加量が小さく、耐熱性が高いことが分かる。比較例1〜3では、加熱後の暗電流の増加量が200〜10000倍と非常に大きいのに対して、実施例1〜13では、加熱後の暗電流増加量が極めて小さいことがわかる。とりわけ、実施例4,5,7−9、12では加熱後の暗電流増加量が1未満となり、加熱によってむしろ暗電流が更に低減されていることから、本発明の化合物は暗電流を抑制する顕著な効果があることが分かる。同時に、加熱による外部量子効率の劣化も抑制されており、本発明の材料を用いた素子は耐熱性に優れることが分かる。
【0332】
更に図2に示す形態と同様の撮像素子を作製した。すなわち、図2の基板上に、アモルファス性ITO 30nmをスパッタ法により成膜後、フォトリソグラフィーにより基板上のフォトダイオード(PD)の上にそれぞれ1つずつ画素が存在するようにパターニングして下部電極とし、電子ブロッキング材料の製膜以降は、実施例1〜13、比較例1〜3と同様に作成した。その評価も同様に行い、表1と同様な結果が得られ、撮像素子においても本発明の実施例に基づいた素子は加熱後の暗電流増加量が小さく、耐熱性が高いことが示された。
【符号の説明】
【0333】
10a、10b 光電変換素子
11 下部電極(導電性膜)
12 光電変換層(光電変換膜)
15 上部電極(透明導電性膜)
16A 電子ブロッキング層
16B 正孔ブロッキング層
100 撮像素子
101 基板
102 絶縁層
103 接続電極
104 画素電極(下部電極)
105 接続部
106 接続部
107 光電変換膜
108 対向電極(上部電極)
109 緩衝層
110 封止層
111 カラーフィルタ(CF)
112 隔壁
113 遮光層
114 保護層
115 対向電極電圧供給部
116 読出し回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電性膜、光電変換膜、及び導電性膜をこの順で有する光電変換素子であって、
前記光電変換膜は、光電変換層、及び電子ブロッキング層を含み、
前記電子ブロッキング層が下記一般式(Y1)で表される化合物を含有する、光電変換素子。
一般式(Y1)
【化1】

(式中、R〜R、R’〜R’、及びR’’〜R’’は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。但し、R〜R、R’〜R’、及びR’’〜R’’のうち少なくとも一つは環構造を3つ以上含む置換アミノ基を表す。Y、Y’、及びY’’はそれぞれ独立に、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又はケイ素原子を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。ny1は0〜2の整数を表す。ny2は0又は1を表す。)
【請求項2】
前記一般式(Y1)で表される化合物が、下記一般式(1)で表される化合物である、請求項1に記載の光電変換素子。
一般式(1)
【化2】

(式中、R〜R、R’、R’〜R’、R91、R’91、R’’〜R’’、R92、及びR’92は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。但し、R〜R、R’〜R’、R’’〜R’’のうち少なくとも一つは環構造を3つ以上含む置換アミノ基を表す。ny1は0〜2の整数を表す。ny2は0又は1を表す。)
【請求項3】
前記一般式(Y1)で表される化合物が下記一般式(F−1)で表される化合物である、請求項1又は2に記載の光電変換素子。
一般式(F−1)
【化3】

(式中、R11は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。R12及びR17は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。R19及びR’19は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。但し、R12及びR17の少なくとも1つが環構造を3つ以上含む置換アミノ基を表す。m11及びm12は、それぞれ独立に0〜3の整数を表す。R11が前記一般式(F−1)中に複数存在する場合、複数のR11は互いに同じでも異なっていてもよい。nは1〜4の整数を表す。)
【請求項4】
前記一般式(F−1)において、R11が、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表す、請求項3に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記一般式(F−1)において、m11及びm12が0である、請求項3に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記一般式(F−1)におけるR19及びR’19が、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又は複素環基を表す、請求項3〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記一般式(F−1)におけるR19及びR’19が、それぞれ独立に、アルキル基を表す、請求項6に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記環構造を3つ以上含む置換アミノ基が下記一般式(A−1)で表される基である、請求項1〜7のいずれかに記載の光電変換素子。
一般式(A−1)
【化4】

(式中、Ra〜Raは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。*は結合位置を表す。Xaは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。)
【請求項9】
前記一般式(A−1)におけるXaが、単結合、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、複素環基、酸素原子、硫黄原子、又はイミノ基である、請求項8に記載の光電変換素子。
【請求項10】
前記環構造を3つ以上含む置換アミノ基が、下記一般式(A−2)で表される基である、請求項1〜7のいずれかに記載の光電変換素子。
一般式(A−2):−N(RB1)(RB2
(RB1及びRB2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。但し、RB1及びRB2の少なくともいずれかはアリール基又は複素環基を表し、RB1及びRB2に含まれる環の数が合計3以上である。)
【請求項11】
前記RB1及びRB2の少なくともいずれかが、下記一般式(b−1)で表される基である、請求項10に記載の光電変換素子。
一般式(b−1)
【化5】

(式中、Rbは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。Xbは、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。Rbが複数存在する場合、互いに同じでも異なっていてもよい。式中の2つのXbは互いに同じでも異なっていてもよい。*は結合位置を表す。m4は0〜3の整数を表し、m5は0〜4の整数を表す。)
【請求項12】
前記一般式(F−1)におけるnが2である、請求項3〜11のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項13】
前記環構造を3つ以上含む置換アミノ基が下記一般式(A−3)で表される基、下記一般式(A−4)で表される基、又は下記一般式(A−5)で表される基である、請求項1〜7、及び12のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【化6】

(一般式(A−3)〜(A−5)中、Ra33〜Ra38、Ra41、Ra44〜Ra48、Ra51、Ra52、Ra55〜Ra58は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又はアルキル基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。*は結合位置を表す。Xc、Xc、及びXcは、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。Z31、Z41、及びZ51は、それぞれ独立に、シクロアルキル環、芳香族炭化水素環、又は芳香族複素環を表し、これらは更に置換基を有してもよい。)
【請求項14】
前記一般式(Y1)で表される化合物のイオン化ポテンシャル(Ip)が5.8eV以下である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項15】
前記一般式(Y1)で表される化合物のイオン化ポテンシャル(Ip)が4.9eV以上である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項16】
前記一般式(Y1)で表される化合物の分子量が500以上2000以下である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項17】
前記光電変換層がn型有機半導体を含む、請求項1〜16のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項18】
前記n型有機半導体がフラーレン又はフラーレン誘導体である、請求項17に記載の光電変換素子。
【請求項19】
前記光電変換膜が下記一般式(I)の化合物を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の光電変換素子。
一般式(I)
【化7】

(式中、Zは5又は6員環を形成するのに必要な原子群を表す。L、L、及びLは、それぞれ独立に、無置換メチン基、又は置換メチン基を表す。Dは原子群を表す。n1は0以上の整数を表す。)
【請求項20】
導電性膜、電子ブロッキング層、光電変換層、及び透明導電性膜が、この順に積層された、請求項1〜19のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の光電変換素子の製造方法であって、前記光電変換層及び前記電子ブロッキング層を、それぞれ真空加熱蒸着により製膜する工程を含む製造方法。
【請求項22】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の光電変換素子からなる光センサ。
【請求項23】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の光電変換素子を備えた撮像素子。
【請求項24】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の光電変換素子、請求項22に記載の光センサ、又は請求項23に記載の撮像素子の駆動方法であって、前記電子ブロッキング層に接触する電極を陰極に、もう一方の電極を陽極にして0Vより大きく、100V以下の電圧を印加する、駆動方法。
【請求項25】
下記一般式(F−10)で表される化合物。
一般式(F−10)
【化8】

(式中、R111〜R118、R’111〜R’118は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、又はメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。R115〜R118中のいずれか一つは、R’115〜R’118中のいずれか一つと連結し、単結合を形成する。A11及びA12は、それぞれ独立に下記一般式(A−1)で表される置換基を表す。A11はR111〜R114中のいずれか一つとして置換し、A12はR’111〜R’114中のいずれか一つとして置換する。Yはそれぞれ独立に、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、又はケイ素原子を表し、これらは更に炭素数2以下の置換基を有していてもよい。)
一般式(A−1)
【化9】

(式中、Ra〜Raは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。*は結合位置を表す。Xaは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、又はイミノ基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。)
【請求項26】
請求項25に記載の化合物を含む電子ブロッキング材料。
【請求項27】
請求項25に記載の化合物を含む膜厚1〜1000nmの膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−228614(P2011−228614A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200509(P2010−200509)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】