説明

光電変換装置

【課題】光透過性基板を用いても、光リーク電流の発生による特性低下を確実に防止するとともに、安価で容易に大型化が可能な光電変換装置を提供する。
【解決手段】下電極41(第一電極)、ソース配線16、ゲート配線21は、それぞれ遮光性を有する導電性材料から形成される。これによって、下電極41(第一電極)、ソース配線16、及びゲート配線21は、本発明における遮光層を形成する。下電極41(第一電極)、ソース配線16、及びゲート配線21は、イメージセンサー1の厚み方向Tにおいて、互いに異なる2以上の位置(レベル)で広がるように形成されている。しかも、その一部は厚み方向Tにおいて互いに重なり合うように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置に関し、詳しくは光電変換装置の遮光構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光電変換装置は、ファクシミリ、複写機、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等のイメージセンサーとして広く使用されている。光電変換装置は、画素の高密度化、光学系の小型化を実現するために、フォトダイオードからなる光電変換素子と、光電変換素子からの信号の増幅、取り出し等を行う薄膜トランジスタ(TFT)とを絶縁膜を介して積層し、絶縁膜に設けたコンタクトホールで電気的に接続する構造が一般的である。
【0003】
従来、こうした光電変換装置は、シリコン単結晶基板(シリコンウェーハ)など、光を透過させない基板上に積層形成していたが、シリコンウェーハを基板として用いた場合、基板自体のコストが高く、かつ大面積の光電変換装置を形成することが困難であるという課題があった。このため、光電変換装置を形成する基板として、安価で、かつ容易に大型の基板が作成可能な、ガラス製の基板を用いた光電変換装置が知られている。
【0004】
しかし、光電変換装置を形成する基板として、ガラス製の基板を用いた場合、基板自体が光を透過させるため、外光の回り込みや漏れ光が薄膜トランジスタに達する懸念がある。薄膜トランジスタに外光が入射すると、光リーク電流が発生し、光電変換装置としての特性が低下する。このため、例えば、対向基板にブラックマトリクスを設けたり(例えば、特許文献1参照)、薄膜トランジスタの上層に遮光層を設置したもの(例えば、特許文献2、3参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−298290号公報
【特許文献2】特開2003−270663号公報
【特許文献3】特開2005−181422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したように、対向基板にブラックマトリクスを設けたり、薄膜トランジスタの上層に設けた遮光層の形状を変更しただけでは、漏れ光や迷光の回り込みによる薄膜トランジスタへの光の入射を確実に阻止することはできず、光リーク電流の発生による光電変換装置の特性低下を防ぐことが困難であった。
【0007】
本発明にかかるいくつかの態様は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光透過性基板を用いても、光リーク電流の発生による特性低下を確実に防止するとともに、安価で容易に大型化が可能な光電変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のいくつかの態様は次のような光電変換装置を提供した。
すなわち、本発明の光電変換装置は、光透過性基板に重ねて厚み方向に配された薄膜トランジスタと、該薄膜トランジスタと電気的に接続され、該薄膜トランジスタよりも上層に配される第1電極、光電変換層、および第2電極を順に積層してなる光電変換素子と、を少なくとも備えた光電変換装置であって、
前記光電変換素子と前記光透過性基板との間で、少なくとも厚み方向に沿った光の透過を阻止する遮光層を形成したことを特徴とする。
【0009】
前記遮光層は、少なくとも前記薄膜トランジスタに重ねて配されていることが好ましい。
前記遮光層は、厚み方向において互いに異なる2以上の位置で広がる複数の遮光層からなり、それぞれの遮光層は、互いにその一部が重なり合うように形成されていることが好ましい。
前記遮光層は、導電性材料から形成されることが好ましい。
前記遮光層は、前記第1電極、ソース配線、ゲート配線のうち、少なくとも2以上の配線から構成されることが好ましい。
【0010】
前記遮光層は、前記第1電極、平面で見て前記光透過性基板の一の方向に沿って形成される前記薄膜トランジスタのソース領域に電気的に接続されるソース配線、前記一の方向に沿って形成される前記薄膜トランジスタのドレイン領域に電気的に接続されるドレイン配線、前記一の方向に交差する他の方向に沿って形成される前記薄膜トランジスタのゲート電極と接続されるゲート配線のうち、少なくとも2以上の配線から構成されることが好ましい。
【0011】
前記遮光層は、前記光透過性基板と前記薄膜トランジスタとの間に広がるように形成されていることが好ましい。
前記遮光層は、電気的に接地されていることが好ましい。
前記遮光層は、遮光性金属膜から形成されることが好ましい。
前記薄膜トランジスタは、非晶質シリコン、多結晶シリコン、または単結晶シリコンから形成されていれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光電変換装置の一例であるイメージセンサーの等価回路図である。
【図2】光電変換装置を構成する画素の平面図である。
【図3】図2のA−A’線に沿った断面図である。
【図4】本発明の光電変換装置の別な実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の光電変換装置の一例であるイメージセンサーの一実施形態について説明する。なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0014】
図1は、イメージセンサー(光電変換装置)の受光領域を構成する素子、配線等を示した等価回路図である。
イメージセンサー(光電変換装置)1は、マトリクス状に配列された多数のセンサー部11を備えている。それぞれのセンサー部11には、PINダイオード(光電変換素子)12と、TFT(薄膜トランジスタ)13とが設けられている。センサー部11は、センサー制御回路部14に電気的に接続されている。このセンサー制御回路部14は、ソース配線(センサープリチャージ制御線)16を介してセンサー部11の動作を制御するための制御信号をセンサー部11に供給する。また、センサー出力制御線17を介して、センサー部11によって検出された出力信号がセンサー制御回路部14に出力される。
【0015】
TFT13のゲートは、ゲート配線(走査線)21に電気的に接続されており、そのソースは、ソース配線16に電気的に接続されている。TFT13のドレインは、PINダイオード12、及びTFT13のゲートとそれぞれ電気的に接続されている。TFT13は、ゲート配線21を介して供給される制御信号によって、オンオフが切り換えられる。PINダイオード12は、ソース配線16及びTFT13を介して供給されたプリチャージ電圧によってプリチャージされる。また、走査線駆動回路19は、m本の走査線21を順番に選択するための選択信号G1,G2...Gmを生成して各ゲート配線(走査線)21に出力する。
【0016】
TFT13のゲートは、PINダイオード12に電気的に接続されており、PINダイオード12にチャージされた電荷量の変化に応じて生じた電圧によって、オンオフが切り換えられる。より具体的には、PINダイオード12に生じる電荷量の変化は、PINダイオード12が検出する光に起因して生じるため、PINダイオード12によって、例えばイメージ情報を含む光(画像光)が検出されると、TFT13の駆動状態がオン状態に切り換えられる。こうした出力信号は、信号線22の電位が増幅された増幅信号として、TFT13を介してセンサー出力制御線17に出力される。
【0017】
図2は、イメージセンサーの画素を拡大して示す平面図である。また、図3は、図2のA−A’線に沿った断面図である。なお、これら図2及び図3は、各層、各部材を図面上で視認可能な程度の大きさとするため、これら各層、各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0018】
図2において、センサー部11には、平面視矩形状のPINダイオード12が設けられている。PINダイオード12は、各センサー部11,11…に対応して、X方向及びY方向にマトリクス状に配設されている。ゲート配線21は、PINダイオード12のX方向(一の方向)に沿って延びている。また、ソース配線16及びセンサー出力制御線17は、PINダイオード12のY方向(他の方向)に沿ってゲート配線21と交差するように延びている。
【0019】
TFT13は、そのソースがコンタクトホール25を介してソース配線16に電気的に接続されている。TFT13のゲート電極は、ゲート配線21の一部をY方向に沿って延在させて形成される。TFT13の駆動状態は、ゲート電極を介してチャネル領域に印加されるゲート電圧によって切り換え可能とされる。 TFT13は、そのドレインがセンサー出力制御線17に電気的に接続されている。
【0020】
PINダイオード12は、素子本体の上下面の夫々の面に下電極41(第一電極)及び上電極(第二電極)42を有している。下電極41は、コンタクトホール25を介してTFT13のドレインに電気的に接続されている。したがって、TFT13の動作時にPINダイオード13に光が照射された際には、当該光に応じてPINダイオード13に発生した光電流に基づいてセンサー信号制御線17に出力信号が出力される。
【0021】
図3において、イメージセンサー1は、光透過性基板、例えばガラス基板(光透過性基板)51上に積層された絶縁膜52、53、54、55、56及び57を有しており、これら絶縁膜から構成される積層構造中にTFT13が形成されている。
【0022】
TFT13は、半導体層61にチャネル領域62、ソース領域63、ドレイン領域64が形成されている。こうしたTFT13は、例えば、非晶質シリコン、多結晶シリコン、または単結晶シリコンから形成されていれば良い。
【0023】
PINダイオード12は、絶縁膜(有機平坦化層)56上に順に積層された下電極41(第一電極)、光電変換層44、及び上電極(第二電極)42を備えている。光電変換層44は、例えば、N型半導体層、受光層、及びP型半導体層などから形成されていれば良い。こうしたTFT13は、例えば、絶縁膜57で区画された範囲で、コンタクトホール25を含む広い領域に広がり、1画素を構成している。
【0024】
下電極41(第一電極)は、コンタクトホール25を介してTFT13に電気的に接続されている。また、上電極(第二電極)42は、画素電極を構成している。この上電極42は、例えば、ITO等の透明導電膜によって形成されており、PINダイオード12は、上電極42を透過して入射した外光Lを検出可能となっている。
【0025】
以上のような構成のイメージセンサー1において、下電極41(第一電極)、ソース配線16、ゲート配線21は、それぞれ遮光性を有する導電性材料から形成される。これによって、下電極41(第一電極)、ソース配線16、及びゲート配線21は、本発明における遮光層を形成する。また、センサー出力制御線17も遮光性を有する導電性材料から形成されるのが好ましい。
【0026】
下電極41(第一電極)、ソース配線16、センサー出力制御線17、及びゲート配線21は、イメージセンサー1の厚み方向Tにおいて、互いに異なる2以上の位置(レベル)で広がるように形成されている。しかも、その一部は厚み方向Tにおいて互いに重なり合うように形成されている。
【0027】
このように、下電極41(第一電極)、ソース配線16、及びゲート配線21を遮光層とすることによって、例えば、厚み方向Tに沿ってイメージセンサー1に入射した外光Lは、これら下電極41、ソース配線16、ゲート配線21によって遮光され、TFT13に到達することが無い。
【0028】
また、入射した外光Lがイメージセンサー1の内部で屈折、反射して迷光、漏れ光となっても、下電極41、ソース配線16、ゲート配線21は、厚み方向Tで互いに異なる位置でその一部が重なるように形成されているため、TFT13は確実に遮光される。このため、基板として光透過性のガラス基板を用いても、TFT13が光リーク電流の発生による特性低下を引き起こすことが無い。
【0029】
下電極41、ソース配線16、ゲート配線21からなる遮光層によって、厚み方向Tに対して傾斜した斜め方向からの光も、TFT13に到達しないように確実に遮光することができる。これにより、光透過性のガラス基板を用いて、光リーク電流を確実に防止した高感度で、かつ大面積のイメージセンサーを、ローコストに提供することが可能になる。
【0030】
なお、こうした下電極41、ソース配線16、ゲート配線21は、イメージセンサー1の入射側、即ち上電極(第二電極)42側から俯瞰した時に、少なくともTFT13を覆うように配線(レイアウト)されていれば良い。また、これら下電極41、ソース配線16、ゲート配線21のうち、少なくとも何れか2つを遮光性の導電材料で形成すればよい。
【0031】
下電極41、ソース配線16、ゲート配線21を構成する遮光性を有する導電性材料としては、例えば、Ta,Ti,W,Mo,Cr,Niなどの金属薄膜が好ましく挙げられる。
【0032】
図4は、本発明のイメージセンサー(光電変換装置)の別な実施形態を示す断面図である。図4に示すイメージセンサー(光電変換装置)は、図3に相当する位置におけるイメージセンサーの断面図であり、図3に示す実施形態と同様の構成部分については同一の番号を附し、その説明を省略する。
【0033】
この実施形態のイメージセンサー(光電変換装置)70では、TFT(薄膜トランジスタ)13と、ガラス基板(光透過性基板)51との間で、TFT13に重なる位置に、遮光層71が形成される。この遮光層71は、例えば、遮光性金属膜から形成されていれば良い。さらに、この遮光層71は、電気的に接地されている、即ちイメージセンサー70のグランド側配線(図示略)に接続されているのが好ましい。
【0034】
このような構成のイメージセンサー(光電変換装置)70によれば、基板を光透過性のガラス基板(光透過性基板)51で形成し、このガラス基板51を透過して間接光(漏れ光、反射光など)がTFT13に向けて入射しても、TFT13とガラス基板51との間に形成した遮光層71によって、TFT13に光が入ることを確実に防止する。これによって、ローコストな光透過性のガラス基板を用いても、TFT13の光リーク電流を確実に防止し、高感度なイメージセンサー70を実現できる。
【0035】
しかも、この遮光層71を接地してグランド電位にすることによって、TFT13の近傍に配された遮光層71自体が帯電することを防止できる。これによって、TFT13の近傍で寄生容量を増加させたり、静電破壊をもたらすといったTFT13に対する悪影響を確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0036】
1…イメージセンサー(光電変換装置)、12…PINダイオード(光電変換素子)、13…TFT(薄膜トランジスタ)、16…ソース配線(遮光層)、21…ゲート配線(遮光層)、41…下電極41(第一電極,遮光層)、42…上電極41(第二電極)、71…遮光層。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基板に重ねて厚み方向に配された薄膜トランジスタと、該薄膜トランジスタと電気的に接続され、該薄膜トランジスタよりも上層に配される第1電極、光電変換層、および第2電極を順に積層してなる光電変換素子と、を少なくとも備えた光電変換装置であって、 前記光電変換素子と前記光透過性基板との間で、少なくとも厚み方向に沿った光の透過を阻止する遮光層を形成したことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記遮光層は、少なくとも前記薄膜トランジスタに重ねて配されていることを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記遮光層は、厚み方向において互いに異なる2以上の位置で広がる複数の遮光層からなり、それぞれの遮光層は、互いにその一部が重なり合うように形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記遮光層は、導電性材料から形成されることを特徴とする請求項1ないし3何れか1項記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記遮光層は、前記第1電極、ソース配線、ゲート配線のうち、少なくとも2以上の配線から構成されることを特徴とする請求項4記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記遮光層は、前記第1電極、平面で見て前記光透過性基板の一の方向に沿って形成される前記薄膜トランジスタのソース領域に電気的に接続されるソース配線、前記一の方向に沿って形成される前記薄膜トランジスタのドレイン領域に電気的に接続されるドレイン配線、前記一の方向に交差する他の方向に沿って形成される前記薄膜トランジスタのゲート電極と接続されるゲート配線のうち、少なくとも2以上の配線から構成されることを特徴とする請求項4記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記遮光層は、前記光透過性基板と前記薄膜トランジスタとの間に広がるように形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記遮光層は、電気的に接地されていることを特徴とする請求項7記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記遮光層は、遮光性金属膜から形成されることを特徴とする請求項7または8記載の光電変換装置。
【請求項10】
前記薄膜トランジスタは、非晶質シリコン、多結晶シリコン、または単結晶シリコンからなることを特徴とする請求項1ないし9何れか1項記載の光電変換装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−226005(P2010−226005A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73835(P2009−73835)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】