説明

入退場管理システム

【課題】識別デバイスが暗所に保管されることがあっても、蓄電手段の残量が不足して識別デバイスと受信装置との間の通信が成立しなくなる不具合を生じにくい入退場管理システムを提供する。
【解決手段】通信機能部3は、互いに識別情報の送信頻度が異なる通常モードと省電力モードとのいずれかの動作モードで動作し、通常モードで動作する場合、所定の第1周期で識別情報を送信する。一方、省電力モードで動作する場合は、第1周期よりも長い第2周期で識別情報を送信する。モード制御部7は、太陽電池5の発電電力を計測し、当該計測結果から所定の判断基準に基づいて判断される識別デバイス1の周囲の明るさが規定値を下回ったときに、通信機能部3の動作モードを通常モードから省電力モードに切り替える制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別デバイスから受信装置に識別情報が送信されると、受信装置が識別情報の認証を行い当該認証結果に応じて前記対象領域への入退場を許可するか否かを決定する入退場管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ビル等においてオフィスなどの対象領域の出入口に配置された受信装置と、ユーザが携帯可能な薄型の識別デバイスとを用いた入退場管理システムが普及している。この入退場管理システムでは、識別デバイスから受信装置に識別情報を無線通信にて送信し、受信装置において、識別情報の認証を行い当該認証結果に応じて対象領域への入退場を許可するか否かを決定することにより、扉の解錠動作、あるいは自動ドア、自動改札機等の開閉動作を制御する。
【0003】
この種の入退場管理システムは、受信装置から送られてきた搬送波の電力を利用して送信する機能を識別デバイスに備えた受動型RFタグ(パッシブタグ)方式を採用することが一般的であるため、通信可能距離が比較的短く、受信装置に識別デバイスをかざす行為が求められる。
【0004】
これに対して、識別デバイス自身に電池を電源として具備し、当該電池からの電力供給を受けてデータ送信する機能を識別デバイスに備えた能動型RFタグ(アクティブタグ)方式を採用することで利便性を向上させることも提案されている。すなわち、自身に電源を備えた識別デバイスでは、受動型RFタグ方式に比べて受信装置との通信距離を長く(たとえば10m)することが可能である。これにより、受信装置に識別デバイスをかざす行為が不要となり、識別デバイスを所持(携帯)しているユーザが受信装置に近づくだけで受信装置−識別デバイス間の通信が可能になる。
【0005】
このように能動型RFタグ方式により識別デバイスと受信装置との間で通信を行う場合、識別デバイスに所定周期(たとえば1秒に1回の周期)で識別情報を受信装置に送信させることが一般的である。この場合、受信装置は識別デバイスからの識別情報を常時受け付けており、実際に識別情報を受信したときに当該識別情報の認証を行う。ここで、識別デバイスは識別情報を送信する度に電力を消費するため、識別情報を送信する周期が短くなるなどして送信の頻度が高くなるほど、一定時間当たりの消費電力量が大きくなる。
【0006】
ところで、識別デバイスに一次電池を具備する場合、定期的に電池交換等のメンテナンスが必要になるという不都合があるので、この種の識別デバイスにおいては、光エネルギを電気エネルギに変換する太陽電池を電源として用いることが考えられる(たとえば特許文献1参照)。
【0007】
また、識別デバイスに電源として太陽電池を備え、識別デバイスに設けた表示部を太陽電池で生成された電力により駆動して当該表示部に諸情報を表示させるということも考えられている(たとえば特許文献2、3参照)。
【0008】
ただし、太陽電池を用いる場合、太陽電池に光が入射しているときのみ太陽電池からの電力供給が可能であるとすれば、たとえば夜間などで太陽電池への入射光強度が低下する環境下で、識別デバイスと受信装置との間の通信が成立しなくなることがある。そこで、二次電池やキャパシタ等の蓄電手段を太陽電池と併せて用いることで、太陽電池に対する入射光強度が低下した環境下でも、安定した電力供給を継続的に行う構成とすることが好ましい。つまり、この構成によれば、太陽電池に光が入射していなくても、蓄電手段に蓄えられた電力を活用することで識別デバイスと受信装置との間の通信が可能となる。
【0009】
ところで、上述したように太陽電池と蓄電手段とを併用した識別デバイスであっても、長時間に亘って太陽電池に十分な光が入射しない場合、蓄電手段の残量は徐々に減少する。すなわち、ユーザは識別デバイスを入退場管理システムに使用しない間、引き出しやかばんや着衣のポケットやロッカーやクローゼット等の暗所に識別デバイスを収納して保管することがある。このように識別デバイスが暗所に保管されている状態では、太陽電池に十分な光が入射しないため太陽電池の発電電力が小さくなるにもかかわらず、識別デバイスは所定周期で識別情報を送信し続けるため、蓄電手段の残量が徐々に減少する。そして、蓄電手段の残量が不足すると、識別デバイスと受信装置との間の通信が成立せず、入退場管理システムが正常に機能しなくなる(ユーザが入退場できなくなる)おそれがある。この場合、太陽電池を一定時間光に晒すことで蓄電手段を充電すれば、蓄電手段の残量不足により識別デバイスと受信装置との間の通信が成立しなくなることは回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−24551号公報
【特許文献2】特開2002−32728号公報
【特許文献3】特開平10−240873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、蓄電手段の残量が一旦不足すると、太陽電池に光を当てて蓄電手段がある程度充電されるまで待たなければ識別デバイスと受信装置との間の通信を復旧することができず、当該通信の復旧に時間がかかるという問題がある。そのため、ユーザにおいてはすぐに入退場することができず、入退場管理システムの利便性がよくない。特に、夜間などで周囲が暗く太陽電池に電力を生成させるのに十分な光が届かない環境下では、すぐに蓄電手段を充電することはできず、識別デバイスと受信装置との間の通信が復旧するまでに比較的長い時間を要することがある。
【0012】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであって、識別デバイスが暗所に保管されることがあっても、蓄電手段の残量が不足して識別デバイスと受信装置との間の通信が成立しなくなる不具合を生じにくい入退場管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、対象領域の出入口に配置された受信装置と、ユーザに所持され受信装置と無線通信可能な識別デバイスとを備え、識別デバイスから受信装置に識別情報が送信されると、受信装置が識別情報の認証を行い当該認証結果に応じて前記対象領域への入退場を許可するか否かを決定する入退場管理システムであって、識別デバイスは、識別情報を電気情報として担持する情報保持部と、受信装置と無線通信を行うことにより識別情報を受信装置に送信する通信機能部と、光を受けることで電力を生成する太陽電池および太陽電池の生成した電力を蓄電する蓄電手段を含み少なくとも通信機能部に駆動電力を供給する電源部と、太陽電池の発電電力を計測し当該計測結果から判断される周囲の明るさに応じて通信機能部の動作モードを切り替えるモード制御部とを有し、通信機能部が、所定周期で識別情報を受信装置に送信する通常モードと、通常モードに比べて識別情報を送信する頻度の低い省電力モードとの2つの動作モードで動作可能であって、モード制御部が、予め定められている判断基準に基づいて周囲の明るさが規定値を下回ったと判断したときに、動作モードを省電力モードに切り替えることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、モード制御部にて周囲の明るさが規定値を下回ったと判断されると、通信機能部の動作モードが省電力モードに切り替わるので、通信機能部が通常モードで動作する場合に比べて、識別情報を受信装置に送信する頻度が低くなって通信機能部における一定時間当たりの消費電力量が小さく抑えられる。すなわち、ユーザが識別デバイスを入退場管理システムに使用せず暗所に保管している間、通信機能部が識別情報を送信する電力は無駄になるので、請求項1の発明では、この間の識別情報の送信頻度を低くすることで無駄な電力消費を抑制する。その結果、識別デバイスを暗所に保管した場合に蓄電手段の残量の減少が抑制されるため、蓄電手段の残量が不足して識別デバイスと受信装置との間の通信が成立しなくなる不具合を生じにくいという利点がある。また、モード制御部は、太陽電池の発電電力の計測結果から周囲の明るさを判断するので、太陽電池がセンサとして利用されることとなり、周囲の明るさを検知するセンサを太陽電池の他に別途設ける必要がない。なお、識別情報を送信する頻度とは、一定時間当たりの識別情報の送信回数を表しているから、当該頻度を低くするには一定時間当たりの送信回数を少なくすればよく、送信回数をゼロとする、つまり識別情報の送信を止めるようにしてもよい。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記モード制御部が、前記発電電力が所定の閾値を下回る状態が一定時間継続したときに、前記判断基準を満たし周囲の明るさが規定値を下回ったと判断することを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、通信機能部の動作モードは、太陽電池の発電電力が閾値を一瞬下回るだけでは省電力モードに切り替わらず、当該発電電力が閾値を下回る状態が一定時間継続して初めて省電力モードに切り替わることになる。したがって、ユーザが識別デバイスを入退場管理システムに使用する際、たとえばユーザの手の影などによって太陽電池への入射光強度が一瞬低下することがあっても、通信機能部の動作モードが誤って省電力モードに切り替わってしまうことはない。
【0017】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記モード制御部が、一定時間当たりの前記発電電力量が所定の閾値を下回ったときに、前記判断基準を満たし周囲の明るさが規定値を下回ったと判断することを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、通信機能部の動作モードは、一定時間当たりの太陽電池の発電電力量、つまり発電電力の累積値が所定の閾値を下回ると省電力モードに切り替わることになる。したがって、暗所に保管されている識別デバイスに瞬間的に外光が入射して太陽電池の発電電力が一瞬大きくなることがあっても、一定時間当たりの発電電力量が閾値を下回ってさえいれば、動作モードを省電力モードとして無駄な電力消費を抑制することができる。
【0019】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、前記モード制御部が、前記通信機能部が前記省電力モードで動作中に、予め定められている判断基準に基づいて周囲の明るさが規定値を上回ったと判断したときに、前記動作モードを前記通常モードに切り替えることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、モード制御部にて周囲の明るさが規定値を上回ったと判断されると、通信機能部の動作モードが通常モードに切り替わるので、ユーザが識別デバイスを暗所から取り出して入退場管理システムに使用する際には、通信機能部が省電力モードで動作する場合に比べて、識別情報を受信装置に送信する頻度が高くなる。したがって、識別デバイスの使用時には、省電力モードに比べて識別情報が送信されるまでの待ち時間を短くできる。
【0021】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記モード制御部が前記動作モードを前記通常モードに切り替える際の明るさの判断基準が、モード制御部が動作モードを前記省電力モードに切り替える際の明るさの判断基準より低く設定されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、通信機能部の動作モードが省電力モードに切り替わるときに比べて、通常モードに切り替わるときのほうが明るさの判断基準が低いので、ユーザが識別デバイスを使用する際に、動作モードが通常モードに切り替わらないという不都合を回避することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、識別デバイスが太陽電池の発電電力を計測し当該計測結果から判断される周囲の明るさに応じて通信機能部の動作モードを切り替えるモード制御部を有し、モード制御部では、識別デバイスが暗所に保管され、周囲の明るさが規定値を下回ったと判断したときに動作モードを省電力モードに切り替える。通信機能部は、省電力モードで動作すると通常モードに比べて識別情報を送信する頻度が低くなるので、一定時間当たりの消費電力量を小さく抑え、蓄電手段の残量の減少を小さく抑えることができる。結果的に、蓄電手段の残量が不足して識別デバイスと受信装置との間の通信が成立しなくなる不具合を生じにくいという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態1の識別デバイスを示す概略ブロック図である。
【図2】同上の入退場管理システムの適用例を示す概略図である。
【図3】同上の受信装置を示す概略ブロック図である。
【図4】同上のモード制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施形態1)
本実施形態の入退場管理システムは、図2に示すように対象空間としての部屋Rへの入退室管理に用いられるものであって、部屋Rの出入口の扉D付近の壁に設置された受信装置100と、ユーザHに携帯され当該受信装置100と無線通信する薄型(ここではカード型)の識別デバイス1とを構成要素として備えている。
【0026】
この入退場管理システムにおいては、識別デバイス1と受信装置100との間で電磁波を媒体とした無線通信を行うことにより、識別デバイス1を所有する各個人の認証を行うのであって、当該認証結果に応じて部屋への入退場を許可するか否かを決定する。
【0027】
すなわち、識別デバイス1には、各個人(識別デバイス1の所有者)を識別するための識別情報(ID)が電気情報として格納された情報保持部2(図1参照)が搭載されており、受信装置100との通信時に当該識別情報を受信装置100に送信する。そして、受信装置100は、受け取った識別情報を予め登録されているデータ(正規の識別情報)と照合し、認証に成功すれば扉Dを解錠し、認証に失敗すれば扉Dの施錠状態を維持するように扉Dの解錠動作を制御する。そのため、上記入退場管理システムを用いれば、ユーザHに識別デバイス1を所持させておくだけで当該ユーザHの入退室管理等が可能となる。
【0028】
識別デバイス1は、図1に示すように識別情報を記憶するメモリからなる情報保持部2と、受信装置100との間で無線通信を行う通信機能部3と、通信機能部3に対して電力供給を行う電源部4を備えている。この識別デバイス1は、少なくとも情報保持部2に記憶した識別情報を、通信機能部3を介して受信装置100に発信する機能を有する。さらに、識別デバイス1は後述する通信機能部3の動作モードを切り替えるためのモード制御部7を有している。なお、情報保持部2はメモリに限らず、たとえばディップスイッチの接点の開閉状態によって表される識別情報を担持するものであってもよい。
【0029】
電源部4は、受信装置100との通信に必要な電力を供給するものであって、外部から照射する光エネルギを電気エネルギに変換する光電変換素子である太陽電池5を有している。したがって、太陽電池5に対して十分な光量の光が照射する環境を確保することで、電池交換や充電等のメンテナンスを行うことなく、長期間に亘って安定した電力供給を実現することができる。ここでは、識別デバイス1の通常の使用形態において太陽電池5に光を照射できるように、識別デバイス1をたとえば名札のように周囲の人に視認されやすい形態でユーザHに所持されるものとする。
【0030】
また、電源部4においては、二次電池やキャパシタ等の蓄電手段6を太陽電池5と併せて用いることで、太陽電池5に対して光が照射しない環境下においても、通信機能部3に対して安定した電力供給を継続的に行う構成としてある。この構成によれば、太陽電池5に光が入射していなくても、蓄電手段6に蓄えられた電力を活用することで、識別デバイス1と受信装置100との間の通信が可能となる。そのため、太陽電池5の発電効率が高い日中に太陽電池5の出力で蓄電手段6を充電し、太陽電池5の発電効率が低下する夜間には蓄電手段6に蓄えた電力を活用することで、太陽電池5の出力を有効に利用できる。
【0031】
ここで、本実施形態の識別デバイス1は、太陽光が照射する屋外のみならず、太陽光に比べて低照度となる屋内(室内)においても太陽電池5で十分な電力を生成可能とするため、太陽電池5として、増感作用を持つ物質と電荷を輸送する電子輸送部および正孔輸送部とを有したものを用いている。増感作用を持つ物質は、光を吸収することにより電子(負の電荷)と正孔(正の電荷)とを別々の物質に振り分ける機能を持ち、このことが光電変換効果の発現の要因となる。ここで、増感作用を持つ物質より電子を受け取る材料部が電子輸送部であり、増感作用を持つ物質より正孔を受け取る材料部が正孔輸送部である。
【0032】
増感作用を持つ物質と電荷輸送部(電子輸送部および正孔輸送部)とを有した太陽電池5としては、色素増感太陽電池、量子ドット増感太陽電池、色素増感有機太陽電池等が知られているが、本実施形態では色素増感太陽電池を太陽電池5として採用することとする。色素増感型の太陽電池5は、基板を透明材料から形成することで全体として透過性を有した構成とすることができ、さらに、基板を可撓性のある樹脂フィルム等で形成すれば全体として可撓性を有した構成とすることが可能である。
【0033】
通信機能部3は、電源部4から電力供給を受けて能動型RFタグ(アクティブタグ)方式により受信装置100に対して識別情報を間欠的に送信する。ここで、通信機能部3は識別情報を送信する度に蓄電手段6に蓄積された電力を消費するものの、識別デバイス1の通常の使用形態においては太陽電池5に十分な光が照射するので、蓄電手段6の残量減少分は太陽電池5で生成される電力(以下、発電電力という)によって補われ、蓄電手段6の残量は殆ど減少しない。
【0034】
受信装置100は、図3に示すように識別デバイス1から送信される識別情報を受信する受信機能部110と、受信機能部110で受信した識別情報の認証を行う認証処理部111と、識別情報の認証結果を報知する報知部112と、部屋Rの出入口の扉Dの解錠動作を制御する解錠制御部113と、メモリからなる記憶部114とを有している。
【0035】
受信装置100の周囲(部屋Rの出入口付近)には、識別デバイス1と受信装置100との通信に用いられる電波が届く範囲内で認証エリア9(図2参照)が形成される。したがって、識別デバイス1を所持したユーザHが上記認証エリア9内に入ると、識別デバイス1から送信される識別情報を受信装置100で受信可能となる。
【0036】
認証処理部111は、受信した識別情報を記憶部114に予め記憶されている正規の識別情報と照合することで、識別情報の認証を行う。当該識別情報が正規の識別情報であると判断されて認証が正常に完了した場合には、受信装置100は、認証完了した識別情報を含む確認信号(ACK信号)を識別デバイス1に返信する。また、認証処理部111で識別情報の認証が正常に完了すれば、報知部112にてその旨を報知するとともに、解錠制御部113にて出入口の扉Dを解錠するための制御を行なう。一方で、識別情報の認証に失敗した場合には、報知部112にて警告を行うとともに、部屋Rの出入口の扉Dの施錠を維持するための制御を行う。報知部112は、認証処理部111における識別情報の認証結果を音や光によって報知する。なお、受信装置100の機能の一部を受信装置100に接続される他装置に持たせ、識別情報の照合を前記他装置にて行う構成としてもよい。
【0037】
ところで、本実施形態のように太陽電池5と蓄電手段6とを併用した識別デバイス1であっても、長時間に亘って太陽電池5に十分な光が入射しない場合、蓄電手段6の残量は徐々に減少する。すなわち、ユーザHは識別デバイス1を使用しない間、引き出しやかばんや着衣のポケットやロッカーやクローゼット等の暗所に識別デバイス1を収納して保管することがある。識別デバイス1が暗所に保管されている状態では、太陽電池5に十分な光が入射しないため太陽電池5の発電電力が小さくなるにもかかわらず、識別デバイス1は間欠的に識別情報を送信し続けるため、蓄電手段6の残量が徐々に減少する。そして、蓄電手段6の残量が不足すると、太陽電池5に光が照射しない状態で通信機能部3に十分な電力が供給されなくなるため、識別デバイス1と受信装置100との間の通信が成立せず、入退場管理システムが正常に機能しなくなる(ユーザHが入退室できなくなる)おそれがある。
【0038】
そこで、本実施形態では、以下に説明するようにモード制御部7にて通信機能部3の動作モードを切り替える構成を採用することにより、蓄電手段6の残量不足により識別デバイス1と受信装置100との間の通信が成立しなくなる不具合を生じにくくしてある。
【0039】
すなわち、本実施形態では、通信機能部3が識別情報を送信する頻度は一定ではなく、通信機能部3の動作モードとして、互いに識別情報の送信頻度が異なる通常モードと省電力モードとの2つの動作モードが設定されている。
【0040】
通信機能部3は、通常モードと省電力モードとのいずれかの動作モードで動作し、通常モードで動作する場合、所定の第1周期(たとえば1秒に1回の周期)で識別情報を送信する。一方、省電力モードで動作する場合は、第1周期よりも長い第2周期(たとえば10秒に1回の周期)で識別情報を送信する。ただし、両動作モードの関係はこの例に限るものではなく、省電力モードにおいて識別情報を送信する頻度が通常モードに比べて低くなっていればよい。要するに、識別情報を送信する頻度は一定時間当たりの識別情報の送信回数に対応するから、省電力モードでは通常モードに比較して一定時間当たりの識別情報の送信回数が少なくなっていればよく、たとえば一定時間当たりの識別情報の送信回数をゼロとする(つまり識別情報の送信を止める)ようにしてもよい。
【0041】
ここにおいて、通信機能部3は、識別情報を送信する度に電力を消費するため、当該送信の頻度が高くなるほど一定時間当たりの消費電力量が大きくなる。したがって、通常モードで動作する場合に比べると、送信頻度の低い省電力モードで動作する場合には、一定時間当たりの消費電力量は小さくなる。
【0042】
上述した通信機能部3の動作モード(通常モード、省電力モード)は、モード制御部7にて切替制御される。
【0043】
モード制御部7は、太陽電池5の発電電力を計測しており、当該計測結果から判断される識別デバイス1の周囲の明るさに応じて、通信機能部3の動作モードの切替制御を行う。ここでは、モード制御部7は、図4に示すように当初は通信機能部3の動作モードを通常モードに設定し(S1)、予め定められている判断基準に基づいて周囲の明るさが規定値を下回ったと判断したときに、通信機能部3の動作モードを通常モードから省電力モードに切り替える制御を行うものとする。
【0044】
具体的に説明すると、モード制御部7は、太陽電池5の発電電力を所定の第1の閾値と比較し、発電電力が第1の閾値を下回るとタイマ(図示せず)を作動する。そして、発電電力が第1の閾値未満となる間はタイマを作動し続け、当該タイマで一定時間が計時されると、識別デバイス1の周囲の明るさが規定値を下回ったものと判断する。なお、発電電力が第1の閾値以上となった場合にはタイマをリセットする。要するに、モード制御部7は、太陽電池5の発電電力が第1の閾値を下回る状態が一定時間継続することをもって(S2:Yes)、判断基準を満たして周囲の明るさが規定値を下回ったものと判断し、通信機能部3の動作モードを省電力モードに切り替える制御を行う(S3)。
【0045】
これにより、通信機能部3の動作モードは、太陽電池5の発電電力が第1の閾値を一瞬下回るだけでは省電力モードに切り替わることはなく、一定時間以上に亘って発電電力が第1の閾値を下回ったときに初めて省電力モードに切り替わることになる。そのため、ユーザHが識別デイバス1を入退場管理システムに使用する際に、たとえばユーザHの手の影などによって太陽電池5への入射光強度が一時的に低下し、発電電力が第1の閾値を下回ることがあっても、識別デバイス1の周囲の明るさが規定値を下回ったとの誤った判断により通信機能部3の動作モードが省電力モードに切り替わることはない。
【0046】
また、モード制御部7は、通信機能部3が省電力モードで動作中に、判断基準に基づいて周囲の明るさが規定値を上回ったと判断したときには、通信機能部3の動作モードを省電力モードから通常モードに切り替える制御を行う。ここでは、モード制御部7は、通信機能部3の動作モードを省電力モードに切り替えた後も太陽電池5の発電電力を第1の閾値と比較し続け、発電電力が第1の閾値以上となる状態が一定時間継続することをもって(S4:Yes)、判断基準を満たして周囲の明るさが規定値を上回ったものと判断し、通信機能部3の動作モードを通常モードに切り替える(S1)。
【0047】
ここに、モード制御部7では、太陽電池5から出力される電圧、電流、電力を監視することで太陽電池5の発電電力を計測する。具体的には、任意の抵抗負荷をかけた状態で電圧、電流、電力を計測する方式や、開放状態での電圧、短絡状態での電流を計測する方式などを採用する。
【0048】
以上説明した構成によれば、モード制御部7にて識別デバイス1の周囲の明るさが規定値を下回ったと判断されると、通信機能部3は動作モードが省電力モードに切り替わるため、通常モードに比べて識別情報の送信頻度が低くなって一定時間当たりの消費電力量が小さくなる。したがって、ユーザHが識別デバイス1を使用しない間、引き出しやかばんや着衣のポケットやロッカーやクローゼット等の暗所に識別デバイス1を保管するなどして、長時間に亘って太陽電池5に十分な光が入射しない場合でも、蓄電手段6の残量の減少を抑制することができる。これにより、通信機能部3を常に通常モードで動作させる場合に比べ、蓄電手段6の残量が減少しにくくなるため、蓄電手段6の残量不足により識別デバイス1と受信装置100との間の通信が成立しなくなる不具合を生じにくくなる。
【0049】
言い換えれば、ユーザHが帰宅後などで識別デバイス1を入退場管理システムに使用しない間は、識別デバイス1から送信される識別情報は何ら意味をなさず、この間に通信機能部3が識別情報を送信するために消費する電力は無駄になる。そこで、本実施形態では、この間の識別情報の送信頻度を低くすることにより無駄な電力消費を極力抑制しており、その結果として、蓄電手段6の残量減少が抑制される。
【0050】
さらに、モード制御部7にて識別デバイス1の周囲の明るさが規定値を上回ったと判断されると、通信機能部3は動作モードが省電力モードから通常モードに切り替わるので、ユーザHが識別デバイス1を使用する際には識別情報を送信するまでの待ち時間が長くなることを回避できる。要するに、ユーザHが識別デバイス1を使用する際に通信機能部3が省電力モードで動作していると、識別情報の送信頻度が低いため、識別デバイス1を受信装置100に近づけてから識別情報が受信装置100に送信されるまでにかかる待ち時間が比較的長くなる。これに対し、本実施形態の構成によれば、ユーザHが識別デバイス1を使用する際には通信機能部3は通常モードで動作するので、識別情報の送信頻度が高く、識別デバイス1を受信装置100に近づけてから識別情報が受信装置100に送信されるまでにかかる待ち時間を比較的短くすることができる。
【0051】
結果的に、識別デバイス1の不使用時には通信機能部3を省電力モードで動作させることで、蓄電手段6の残量の減少を抑制しながらも、識別デバイス1の使用時には通信機能部3を通常モードで動作させることで、入退場管理システムの使用感の悪化を回避することができる。
【0052】
また、ここでは太陽電池5の発電電力が太陽電池5への入射光強度、つまり識別デバイス1の周囲の明るさに関連していることに着目し、モード制御部7においては、太陽電池5の発電電力の計測結果を用いて識別デバイス1の周囲の明るさを判断している。そのため太陽電池5が明るさセンサとして兼用されることとなり、明るさ検出用のセンサを新たに設ける必要がなく、識別デバイス1の部品点数の増加を抑制できるという利点がある。
【0053】
ところで、本実施形態では、モード制御部7が通信機能部3の動作モードを省電力モードから通常モードに切り替える際の明るさの判断基準は、モード制御部7が前記動作モードを通常モードから省電力モードに切り替える際の明るさの判断基準よりも低く設定されている。ここでは明るさの判断基準として、第1の閾値と時間(発電電力が第1の閾値を下回るあるいは第1の閾値以上となる時間)との2つのパラメータを用いているので、通常モードに切り替える際には、省電力モードに切り替える際に比べて第1の閾値と前記時間との積を小さくする。
【0054】
具体的に説明すると、モード制御部7は、太陽電池5の発電電力が第1の閾値を下回る状態が1分間継続すると、周囲の明るさが規定値を下回ったと判断するものとする。ここで、第1の閾値は、識別デバイス1の周囲照度が10ルクスのときの太陽電池5の発電電力に相当する値とする。そのため、識別デバイス1の周囲照度が10ルクス未満の状態が1分以上継続すれば、通信機能部3の動作モードが省電力モードに切り替わることになる。一方、モード制御部7は、太陽電池5の発電電力が第1の閾値以上となる状態が2秒以上継続すると、周囲の明るさが規定値を上回ったものと判断する。そのため、識別デバイス1の周囲照度が10ルクス以上の状態が2秒以上継続すれば、通信機能部3の動作モードが通常モードに切り替わることになる。
【0055】
このように、動作モードを通常モードに切り替える際の判断基準を省電力モードに切り替える際の判断基準より低くしたことで、通信機能部3の動作モードは、省電力モードから通常モードに切り替わりやすくなる。その結果、ユーザHが識別デバイス1を使用するときに、通信機能部3が省電力モードから通常モードに切り替わらず、省電力モードのままで識別デバイス1が使用されるという不都合を回避することができる。
【0056】
なお、識別デバイス1の周囲の明るさの判断基準は上述の例に限るものではなく、たとえば太陽電池5の発電電力が第1の閾値を下回る状態が10分間継続することをもって、周囲の明るさが規定値を下回ったと判断するようにしてもよい。また、通常モードに切り替える際と省電力モードに切り替える際とで第1の閾値の大きさが異なるようにしてもよい。
【0057】
モード制御部7のさらに他の例として、一定時間当たりの太陽電池5の発電電力量(つまり、一定時間における太陽電池5の発電電力の累積値)を所定の閾値と比較し、前記発電電力量が閾値を下回ったことをもって、周囲の明るさが規定値を下回ったと判断するようにしてもよい。これにより、たとえばユーザHが識別デバイス1をポケットに入れている状態で、瞬間的に強烈な光がポケットに照射することで一瞬だけ太陽電池5の発電電力が大きくなることがあっても、一定時間当たりの発電電力量が閾値を超えない限りは、周囲の明るさは規定値を下回っていると判断される。この場合に、一定時間当たりの発電電力量が前記閾値以上となれば通常モードに切り替えるようにする。
【0058】
上述の例では受信装置100が識別情報の認証結果に応じて扉Dの解錠動作を制御する構成を示したが、この例に限らず、受信装置100が自動ドア、自動改札機等の開閉動作を制御する構成としてもよい。また、無線通信は基本的に電磁波を媒体とする通信を意味するが、識別デバイス1は電磁誘導を利用して受信装置100と通信(無線通信)を行うものであってもよい。
【0059】
(実施形態2)
本実施形態の入退場管理システムは、モード制御部7における識別デバイス1の周囲の明るさの判断基準が実施形態1の入退場管理システムと相違する。
【0060】
すなわち、本実施形態では、モード制御部7は太陽電池5の発電電力が第1の閾値を下回り、且つ一定時間当たりの発電電力の変動量が所定の第2の閾値を下回ったときに、周囲の明るさが規定値を下回ったものと判断し、通信機能部3の動作モードを省電力モードに切り替える制御を行う。また、モード制御部7は太陽電池5の発電電力が第1の閾値以上となり、且つ一定時間当たりの発電電力の変動量が第2の閾値以上となったときに、周囲の明るさが規定値を上回ったものと判断し、通信機能部3の動作モードを通常モードに切り替える。
【0061】
具体的に説明すると、モード制御部7は、太陽電池5の発電電力が第1の閾値を下回り、且つ1分間当たりの発電電力の変化量が第2の閾値を下回ると、周囲の明るさが規定値を下回ったものと判断する。ここで、第1の閾値は、識別デバイス1の周囲照度が10ルクスのときの太陽電池5の発電電力に相当する値とし、第2の閾値は、識別デバイス1の周囲照度が200ルクスのときの太陽電池5の発電電力に相当する値とする。そのため、識別デバイス1の周囲照度が10ルクス未満となって、且つ1分間当たりの変化が200ルクス未満であれば、通信機能部3の動作モードは省電力モードに切り替わる。一方、モード制御部7は、太陽電池5の発電電力が第1の閾値以上、且つ2秒間当たりの発電電力の変化量が第2の閾値以上であれば、周囲の明るさが規定値を上回ったものと判断する。そのため、識別デバイス1の周囲照度が10ルクス以上となって、且つ2秒間に200ルクス以上変化すれば、通信機能部3の動作モードは通常モードに切り替わる。
【0062】
以上説明した構成によれば、識別デバイス1が暗所に保管されると、通信機能部3の動作モードが省電力モードに切り替わり、その後、識別デバイス1が暗所から取り出されると、識別デバイス1の周囲照度の変化に伴い通信機能部3の動作モードが通常モードに切り替わることになる。ここで、モード制御部7は、動作モードを省電力モードから通常モードに切り替える際には、前記一定時間(ここでは2秒間)が経過するのを待つことなく、発電電力の変化量が第2の閾値以上となった時点で動作モードを通常モードに切り替えることができる。したがって、ユーザHが識別デバイス1をたとえば着衣のポケットから取り出して使用するとき、識別デバイス1を取り出してすぐに通信機能部3の動作モードを省電力モードから通常モードに切り替えることができ、省電力モードのままで識別デバイス1が使用されるという不都合を回避することができる。
【0063】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0064】
ところで、以上説明した構成の入退場管理システムを用いれば、たとえば不特定多数の来訪者のある管理領域への出入口に受信装置100を設置し、正規の(アポイントのある)来訪者には識別デバイス1を予め渡しておくことで、面識の有無に関わらず正規の来訪者を識別して前記管理領域への入場を許可することが可能となる。さらに、保育施設や介護施設等で集団行動が必要となる状況下において、各個人に識別デバイス1を携帯させることにより、点呼に代えて各個人の存在確認のために活用することも可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 識別デバイス
2 情報保持部
3 通信機能部
4 電源部
5 太陽電池
6 蓄電手段
7 モード制御部
100 受信装置
H ユーザ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象領域の出入口に配置された受信装置と、ユーザに所持され受信装置と無線通信可能な識別デバイスとを備え、識別デバイスから受信装置に識別情報が送信されると、受信装置が識別情報の認証を行い当該認証結果に応じて前記対象領域への入退場を許可するか否かを決定する入退場管理システムであって、識別デバイスは、識別情報を電気情報として担持する情報保持部と、受信装置と無線通信を行うことにより識別情報を受信装置に送信する通信機能部と、光を受けることで電力を生成する太陽電池および太陽電池の生成した電力を蓄電する蓄電手段を含み少なくとも通信機能部に駆動電力を供給する電源部と、太陽電池の発電電力を計測し当該計測結果から判断される周囲の明るさに応じて通信機能部の動作モードを切り替えるモード制御部とを有し、通信機能部は、所定周期で識別情報を受信装置に送信する通常モードと、通常モードに比べて識別情報を送信する頻度の低い省電力モードとの2つの動作モードで動作可能であって、モード制御部は、予め定められている判断基準に基づいて周囲の明るさが規定値を下回ったと判断したときに、動作モードを省電力モードに切り替えることを特徴とする入退場管理システム。
【請求項2】
前記モード制御部は、前記発電電力が所定の閾値を下回る状態が一定時間継続したときに、前記判断基準を満たし周囲の明るさが規定値を下回ったと判断することを特徴とする請求項1記載の入退場管理システム。
【請求項3】
前記モード制御部は、一定時間当たりの前記発電電力量が所定の閾値を下回ったときに、前記判断基準を満たし周囲の明るさが規定値を下回ったと判断することを特徴とする請求項1記載の入退場管理システム。
【請求項4】
前記モード制御部は、前記通信機能部が前記省電力モードで動作中に、予め定められている判断基準に基づいて周囲の明るさが規定値を上回ったと判断したときに、前記動作モードを前記通常モードに切り替えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の入退場管理システム。
【請求項5】
前記モード制御部が前記動作モードを前記通常モードに切り替える際の明るさの判断基準は、モード制御部が動作モードを前記省電力モードに切り替える際の明るさの判断基準より低く設定されていることを特徴とする請求項4記載の入退場管理システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−165315(P2010−165315A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9193(P2009−9193)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】