説明

共重合芳香族ポリエステル、二軸配向ポリエステルフィルムおよび磁気記録媒体

【課題】本発明の目的は、寸法安定性、特に温度や湿度といった環境変化に対する寸法安定性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムおよび上記の寸法安定性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムを提供しうるポリエステルの提供。
【解決手段】4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分およびフェニレン基またはナフタレンジイル基にジカルボン酸が付加した芳香族ジカルボン酸成分とアルキレングリコールまたはシクロアルキレングリコールからなるグリコール成分とからなる共重合芳香族ポリエステルであって、
芳香族ジカルボン酸成分のモル数を基準として、4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分を5モル%以上90モル%未満含む共重合芳香族ポリエステルおよびそのフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は4,4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸を共重合した芳香族ポリエステルならびにそれを用いた二軸配向ポリエステルフィルムおよび磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートに代表される芳香族ポリエステルは優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有することから、フィルムなどに幅広く使用されている。特にポリエチレン−2,6−ナフタレートは、ポリエチレンテレフタレートよりも優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有することから、それらの要求の厳しい用途、例えば高密度磁気記録媒体などのベースフィルムなどに使用されている。しかしながら、近年の高密度磁気記録媒体などでの寸法安定性の要求はますます高くなってきており、さらなる特性の向上が求められている。
【0003】
一方、特許文献1〜4にはポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4´−ジカルボキシレートから得られるフィルムが提案されている。該公報によると、高強度で低熱収縮性のフィルムが得られている。
これら特許文献で提示されたポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4´−ジカルボキシレートは、結晶化温度が非常に低くガラス転移点と近いために、延伸と共に結晶化の促進が激しくなり、充分に延伸できないといった問題がある。そこで前述の特許文献では、均一な延伸を実施するために段階的に延伸することが提案されている。
【0004】
しかしながら、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのフィルムを製造している従来の装置では前述の段階的な延伸は実施できず、特別な装置が必要という課題をかかえていた。
一方、近年の磁気記録媒体などにおける記録密度向上への要求は厳しく、それに伴いベースフィルムに求められる寸法安定性も、ポリエチレンテレフタレートはもちろん、ポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムでも達成できない状況となってきていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭46−11600号公報
【特許文献2】特開昭49−51367号公報
【特許文献3】特開昭49−59176号公報
【特許文献4】特開昭50−8869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の目的は、寸法安定性、特に温度や湿度といった環境変化に対する寸法安定性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムおよび上記の寸法安定性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムを提供しうるポリエステルおよびそれを用いた二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0007】
本発明の第2の目的は、温度や湿度といった環境変化に対する寸法安定性と、平坦性および巻取性とを高度に両立させやすい二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
さらに、本発明の第3の目的は、湿度変化に対する寸法安定性に優れ、延伸などの製膜性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
さらにまた、本発明の第4の目的は、寸法安定性と製膜性に優れ、しかもカールの問題がなく、高温での加工特性にも優れた二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、湿度膨張係数と温度膨張係数はともにヤング率と非常に密接な関係にあり、ヤング率が高いほど一般的に低くなる。しかしながら、ヤング率はいくらでも高められるというわけではなく、製膜性や直交する方向のヤング率確保の点から自ずと限界がある。そのため、同じヤング率なら温度や湿度に対するより低い膨張係数をもつフィルムが得られないか鋭意研究したところ、前述のポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4´−ジカルボキシレートからなるフィルムは、低い湿度膨張係数を示すことから、製膜性に問題があるものの好適なフィルムとして考えた。
【0009】
そこで、本発明者らは、4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分を共重合成分として用いたとき、驚くべきことにポリアルキレン−1,2−ジフェノキシアルキレン−4,4´−ジカルボキシレートとその共重合相手である芳香族ポリエステルの両方の優れた特性を兼備するフィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
かくして本発明によれば、下記式(I)および(II)で示される芳香族ジカルボン酸成分と下記式(III)で示されるグリコール成分とを含む共重合芳香族ポリエステルであって、
共重合芳香族ポリエステルを構成する全芳香族ジカルボン酸成分のモル数を基準として、下記式(I)で表される4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分を5モル%以上90モル%未満含む共重合芳香族ポリエステルおよびそれを用いた二軸配向ポリエステルフィルムが提供される。
【0011】
【化1】

【0012】
上記構造式(I)〜(III)中の、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基、Rは炭素数2〜4のアルキレン基もしくは炭素数8〜10のシクロアルキレン基を示す。
【0013】
また、本発明者らは、上記共重合芳香族ポリエステルからなるフィルム層を積層フィルムの1層として用い、それぞれの表面に特定の表面性を持たせるとき、寸法安定性に加え、平坦性と巻取性とを具備する二軸配向積層ポリエステルフィルムが得られることも見出し、本発明に到達した。
【0014】
かくして本発明によれば、フィルム層Aの片面に、フィルム層Bが積層された二軸配向積層ポリエステルフィルムであって、二軸配向積層ポリエステルフィルムのフィルム層B側の表面粗さ(RaB)がフィルム層A側の表面粗さ(RaA)よりも1.0nm以上大きく、少なくとも一方のフィルム層が上記共重合芳香族ポリエステルからなる二軸配向ポリエステルフィルムも提供される。
【0015】
さらにまた、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4、4´−ジカルボキシレートからなるフィルムは、前述のとおり、結晶化温度とガラス転移点とが近いため延伸などの製膜性が乏しく、延伸などによって温度膨張係数を調整すること難しかったが、前記共重合芳香族ポリエステルからなるフィルム層を、多層フィルムを形成するフィルム層として用いたとき、驚くべきことにポリアルキレン−1,2−ジフェノキシエタン−4、4´−ジカルボキシレート、その共重合相手である芳香族ポリエステル、さらに他のフィルム層を形成する芳香族ポリエステルのそれぞれの優れた特性を兼備し、製膜性に優れることも見出した。
【0016】
かくして本発明によれば、フィルム層(A´)とフィルム層(B´)とをそれぞれ5層以上有する二軸配向多層積層フィルムであって、
フィルム層(B´)は、下記式(I´)で表される繰り返し単位(I´)と下記式(II´)で表される繰り返し単位(II´)とを、繰り返し単位のモル数を基準として、それぞれ5モル%以上80モル%未満、20モル%を超え95モル%以下の範囲で有する芳香族ポリエステル(B´)からなり、
フィルム層(A´)は、下記式(II´)で表される繰り返し単位を、95モル%を超えて有する芳香族ポリエステル(A´)からなる二軸配向ポリエステルフィルムが提供される。
【0017】
【化2】

【0018】
上記式(I´)および(II´)中、Rは炭素数1〜10のアルキレン基、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基、Rは炭素数2〜4のアルキレン基もしくは炭素数8〜10のシクロアルキレン基を示す。
【発明の効果】
【0019】
本発明の芳香族ポリエステルによれば、4,4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分の優れた特性を維持しつつ、製膜性を高度に高めることができ、その結果、従来のポリエステル対比、優れた寸法安定性を具備する二軸配向ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0020】
したがって、本発明によれば、湿度と温度による影響も加味した高度の寸法安定性が求められる用途、特に高密度磁気記録媒体のベースフィルムに適したフィルムが提供される。そして、本発明のフィルムを用いれば、優れた寸法安定性を有する高密度磁気記録媒体なども提供できる。
【0021】
また、本発明によれば、さらに平坦性と巻取性とを高度に両立させやすい二軸配向積層ポリエステルフィルムも得られる。
さらにまた、本発明によれば、さらに延伸などの製膜性に優れた二軸配向多層積層フィルムも提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<芳香族ポリエステル>
本発明の共重合芳香族ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とからなる。
まず、具体的な前述の構造式(I)で示される4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分としては、Rの部分が炭素数1〜10のアルキレン基であるものであり、好ましくは4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分、4、4´−(トリメチレンジオキシ)ビス安息香酸成分、4、4´−(ブチレンレンジオキシ)ビス安息香酸成分などが挙げられる。これらの中でも本発明の効果の点からは、上記一般式(I)におけるRの炭素数が偶数のものが好ましく、特に4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分が好ましい。
【0023】
つぎに、具体的な前述の式(II)で示される芳香族ジカルボン酸成分としては、Rの部分が、フェニレン基またはナフタレンジイル基であるものであり、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、2,7−ナフタレンジカルボン酸成分などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果の点からは、比較的機械強度などの物性を向上させやすいテレフタル酸成分および2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が好ましく、特に2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が好ましい。
【0024】
最後に、前述の式(III)で示されるグリコール成分としては、Rの部分が炭素数2〜4のアルキレン基もしくは炭素数8〜10のシクロアルキレン基であるものであり、エチレングリコール成分、トリメチレングリコール成分、テトラメチレングリコール成分、シクロヘキサンジメタノール成分などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果の点からは、比較的機械強度などの物性を向上させやすいエチレングリコール成分が好ましい。
【0025】
なお、本発明の共重合芳香族ポリエステルは、本発明の効果を損なわない範囲で、それ自体公知の共重合成分、例えば脂肪族ジカルボン酸成分、脂環族ジカルボン酸成分、前述の式(III)に該当しないアルキレングリコール成分、ヒドロキシカルボン酸成分、トリメリット酸などの3官能以上の官能基を有する酸成分やアルコール成分などを共重合してもよい。もちろん、共重合芳香族ポリエステルを構成する全芳香族ジカルボン酸成分のモル数を基準として、前述の式(I)および(II)で示される芳香族ジカルボン酸成分の合計モル数および前述の式(III)で示されるグリコール成分のモル数が、それぞれ90モル%以上、さらに95モル%以上を占めることが好ましい。
【0026】
ところで、本発明の共重合芳香族ポリエステルの特徴は、共重合芳香族ポリエステルを構成する全芳香族ジカルボン酸成分のモル数を基準としたとき、5モル%以上90モル%未満の範囲で、上記式(I)で示される4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分が共重合されていることである。4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分の割合が下限未満では、湿度膨張係数の低減効果などが発現されがたい。他方、上限を超えると、製膜性が損なわれ、ヤング率などの機械的特性を延伸によって向上させにくく、温度膨張係数を下げにくくなることや、さらにひどい場合は延伸などの製膜工程で破断してしまう。また、驚くべきことに、4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分による湿度膨張係数の低減効果は、比較的少ない量でも効率的に発現される。そのような観点から、好ましい4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分の含有割合の上限は、78モル%以下であり、他方下限は、5モル%以上、さらに10モル%以上、よりさらに20モル%以上である。
【0027】
そのような観点から、上記式(II)で示される芳香族ジカルボン酸成分の好ましい割合は、上限が95モル%以下、さらに90モル%以下、特に80モル%以下であり、下限が10モル%以上、22モル%以上である。
このような特定量の4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分を共重合した共重合芳香族ポリエステルとすることで、温度膨張係数と湿度膨張係数の両方をともに低い成形品、例えばフィルムなどを製造することができる。
【0028】
なお、上記4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分の共重合量は、重合段階で所望の共重合量となるように原料の組成を調整するか、酸成分として上記4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分のみを用いたホモポリマーもしくはその共重合量が多いポリマーと、共重合していないポリマーまたは共重合量の少ないポリマーとを用意し、所望の共重合量となるようにこれらを溶融混練によってエステル交換させることで調整できる。
【0029】
<芳香族ポリエステル樹脂の製造方法>
本発明の共重合芳香族ポリエステルの製造方法について、詳述する。
前述の構造式(I)で示される4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分としては、アルキルエステル体を使用することが好ましく、特に4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸メチルエステルを使用することが好ましい。4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸メチルエステルは、パラヒドロキシ安息香酸メチルエステルを炭酸カリウムの存在下無水極性溶媒中でジハロエタンと反応させることによって得ることができる。
【0030】
また、本発明の芳香族ポリエステルは、4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸及びそのアルキルエステル誘導体と例えばエチレングリコールとを反応させ、ポリエステル前駆体を製造する。その際、他の芳香族ジカルボン酸成分、例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸やテレフタル酸もしくはそのエステル形成性誘導体と一緒に反応させることもできる。そして、このようにして得られたポリエステル前駆体を重合触媒の存在下で重合することで製造でき、必要に応じて固相重合などを施しても良い。このようにして得られる芳香族ポリエステルのP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度は、0.4〜1.5dl/g、さらに0.5〜1.2dl/gの範囲にあることが本発明の効果の点から好ましい。
【0031】
また、ポリエステルの前駆体を製造する際の反応温度としては、190℃〜250℃の範囲で行なうことが好ましく、常圧下または加圧下で行なう。190℃よりも低いと反応が十分に進行しにくく、250℃よりも高いと副反応物であるジエチレングリコールなどが生成しやすい。
【0032】
なお、ポリエステルの前駆体を製造する反応工程では、公知のエステル化もしくはエステル交換反応触媒を用いてもよい。例えば酢酸マンガン、酢酸亜鉛、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、チタン化合物などが上げられる。フィルムにしたときの表面高突起を抑えることができるチタン化合物が好ましい。
【0033】
つぎに、重縮合反応について説明する。まず、重縮合温度は得られるポリマーの融点以上でかつ230〜300℃以下、より好ましくは融点より5℃以上高い温度から融点より30℃高い温度の範囲である。重縮合反応では通常100Pa以下の減圧下で行なうのが好ましい。
【0034】
重縮合触媒としては、少なくとも一種の金属元素を含む金属化合物が挙げられる。なお、重縮合触媒はエステル化反応においても使用することができる。金属元素としては、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、スズ、コバルト、ロジウム、イリジウム、ジルコニウム、ハフニウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。より好ましい金属としては、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、スズなどであり、前述したように、特にチタン化合物を使用するとフィルムとしたときに触媒で使用した残存金属の影響による表面の高突起物を抑えられるため、これを使用することが好ましい。
【0035】
これらの触媒は単独でも、あるいは併用してもよい。かかる触媒量は、芳香族ポリエステルの繰り返し単位のモル数に対して、0.001〜0.1モル%、さらには0.005〜0.05モル%が好ましい。
【0036】
具体的なエステル化触媒、エステル交換触媒および重縮合触媒としてのチタン化合物としては、例えば、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート、蓚酸チタン酸リチウム、蓚酸チタン酸カリウム、蓚酸チタン酸アンモニウム、酸化チタン、チタンのオルトエステル又は縮合オルトエステル、チタンのオルトエステル又は縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸からなる反応生成物、チタンのオルトエステル又は縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物からなる反応生成物、チタンのオルトエステル又は縮合オルトエステルと少なくとも2個のヒドロキシル基を有する多価アルコール、2−ヒドロキシカルボン酸、又は塩基からなる反応生成物などが挙げられる。
【0037】
そして、本発明の共重合芳香族ポリエステルは、前述の通り、所望の共重合量の共重合芳香族ポリエステルとなるように重合してもよいし、溶融混練時にエステル交換反応が進むので、2種以上の共重合量の異なる芳香族ポリエステルを作成し、それらを溶融混練して所望の共重合量となるようにブレンドして作成してもよい。
【0038】
<フィルム>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、前述の共重合芳香族ポリエステルを溶融製膜して、シート状に押出し、製膜方向(以下、縦方向、長手方向またはMD方向と称することがある。)およびそれに直交する方向(以下、幅方向、横方向またはTD方向と称することがある。)に延伸することで作成できる。そして、前述のとおり、結晶性が改良されていることから、製膜性に優れた、例えば厚み斑の均一なフィルムとなる。
【0039】
もちろん、前述の本発明の共重合芳香族ポリエステルを溶融製膜したフィルムであることから、4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分と前述の式(II)と(III)からなる芳香族ポリエステルの優れた機械的特性なども具備している。また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは単層に限られず、積層フィルムであってもよく、その場合、少なくとも一つの層が前述の本発明の共重合芳香族ポリエステルからなるフィルム層であればよいことは容易に理解されるであろう。
【0040】
ところで、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、優れた寸法安定性を発現する点から、フィルムのその面方向における少なくとも1方向の温度膨張係数(αt)が、14ppm/℃以下であることが好ましい。なお、好ましくはフィルムの幅方向の温度膨張係数(αt)がフィルムの少なくとも一方向における温度膨張係数が上限以下であることで、例えば最も寸法安定性が求められるフィルムの方向と合わせることで、環境変化に対する優れた寸法安定性を得られるフィルムに発現することが出来る。好ましい温度膨張係数(αt)の下限は、−10ppm/℃以上、さらに−7ppm/℃以上、特に−5ppm/℃以上であり、また上限は10ppm/℃以下、さらに7ppm/℃以下、特に5ppm/℃以下である。また、例えば磁気記録テープとしたとき、雰囲気の温湿度変化による寸法変化に対して優れた寸法安定性を発現できることから、上記温度膨張係数を満足する方向は、二軸配向ポリステルフィルムの幅方向であることが好ましい。
【0041】
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム面方向の少なくとも一方向、好ましくは上記温度膨張係数が14ppm/℃以下の方向におけるフィルムの湿度膨張係数(αh)とヤング率(Y)とが、以下の式(1)の関係を満足することが好ましい。
αh<−1.2Y+17 (1)
(ここで、αhは湿度膨張係数(ppm/%RH)を、Yはヤング率(GPa)を示す。)
【0042】
得られた二軸配向ポリエステルフィルムが、上記式(1)の関係を満足しない場合、従来のポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートからなるフィルムと同等なヤング率に対するαhにしかならず、ポリアルキレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4´−ジカルボキシレートを特定の範囲で共重合したことによる湿度膨張の低減効果が十分に発現されない。なお、上記関係式(1)における「−1.2」という係数は、本発明の実施例および比較例のヤング率とαhの関係から導き出されたものである。好ましい湿度膨張係数(αh)とヤング率(Y)の関係は、
αh<−1.2Y+16.5 (1’)
よりさらに
αh<−1.2Y+16.0 (1’’)
である。
なお、上記ヤング率とαhの関係式について、下限は特に制限されないが、通常、
αh>−1.2Y+12.0 (1’’’)
程度である。上述のようなヤング率、αtやαhは、前述の共重合の組成および後述の延伸によって調整できる。
【0043】
さらに、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの好ましい態様について、さらに詳述する。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム面方向の少なくとも一方向、好ましくは上記温度膨張係数が14ppm/℃以下である方向のフィルムのヤング率が少なくとも4.5GPa以上あることが好ましく、上限は特に制限されないが通常12GPa程度が好ましい。特に好ましいヤング率の範囲は5〜11GPa、特に6〜10GPaの範囲にあることが好ましい。この範囲から外れると、前述のαtやαhを達成することが困難になることや、機械的特性が不十分になることがある。このようなヤング率は、前述のブレンドまたは共重合の組成および後述の延伸によって調整できる。また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、磁気テープのベースフィルムに用いる場合など、フィルム面方向の少なくとも一方向、好ましくは上記温度膨張係数が14ppm/℃以下である方向の湿度膨張係数が1〜7(ppm/%RH)、さらに3〜7(ppm/%RH)、特に3〜6(ppm/%RH)の範囲にあることが好ましく、下限は特に制限されないが通常1(ppm/%RH)程度が好ましい。この範囲から外れると、湿度変化に対する寸法変化が大きくなる。このような湿度膨張係数は、前述のブレンドまたは共重合の組成および後述の延伸によって調整できる。
【0044】
なお、上記温度膨張係数が14ppm/℃以下の方向については、少なくとも一方向、好ましくは前述のとおり、幅方向が満足していれば良い。もちろん、幅方向に直交する方向も寸法安定性の点からは、同様な温度膨張係数や湿度膨張係数、さらにヤング率などを満足することが好ましい。
【0045】
また、本発明の共重合芳香族ポリエステルは、本発明の効果を阻害しない範囲で、それ自体公知の添加剤や他の樹脂をブレンドして組成物としてもよい。添加剤としては、紫外線吸収剤等の安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、離型剤、顔料、核剤、充填剤あるいはガラス繊維、炭素繊維、層状ケイ酸塩などが挙げられ、用いられる用途の要求に応じて適宜選択すればよい。また、他の樹脂としては、脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂、液晶性樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルイミド、ポリイミドなどが挙げられる。
【0046】
<二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、製膜方向と幅方向に延伸してそれぞれの方向の分子配向を高めたものであり、例えば以下のような方法で製造することが製膜性を維持しつつ、ヤング率を高め、温度膨張係数や湿度膨張係数を低減しやすいことから好ましい。
【0047】
まず、上述の本発明の共重合芳香族ポリエステルを原料とし、これを乾燥後、該芳香族ポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+50)℃の温度に加熱された押出機に供給して、例えばTダイなどのダイよりシート状に押出す。この押出されたシート状物を回転している冷却ドラムなどで急冷固化して未延伸フィルムとし、さらに該未延伸フィルムを二軸延伸する。
【0048】
なお、本発明で規定するαt、αh、さらにヤング率などを達成するためには、その後の延伸を進行させやすくすることが必要であり、本発明のポリエステルポリマーは結晶化速度が速い傾向にあり、そのような観点から冷却ドラムによる冷却は非常に速やかに行なうことが好ましい。そのような観点から、20〜60℃という低温で行なうことが好ましい。このような低温で行なうことで、未延伸フィルムの状態での結晶化が抑制され、その後の延伸をよりスムーズに行なうことが可能となる。
【0049】
二軸延伸としては、それ自体公知のものを採用でき、逐次二軸延伸でも同時二軸延伸でもよい。
ここでは、縦延伸、横延伸および熱処理をこの順で行なう逐次二軸延伸の製造方法を一例として挙げて説明する。まず、最初の縦延伸は共重合芳香族ポリエステルのガラス転移温度(Tg:℃)ないし(Tg+40)℃の温度で、3〜8倍に延伸し、次いで横方向に先の縦延伸よりも高温で(Tg+10)〜(Tg+50)℃の温度で3〜8倍に延伸し、さらに熱処理として共重合芳香族ポリエステルの融点以下の温度でかつ(Tg+50)〜(Tg+150)℃の温度で1〜20秒、さらに1〜15秒熱固定処理するのが好ましい。
【0050】
なお、ポリアルキレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4´−ジカルボキシレートでは、結晶化が始まる温度が低すぎて上記の温度でも十分な延伸を行なうことは困難であったが、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分だけでなく、前記式(II)で示される芳香族ジカルボン酸が共重合されていることにより延伸が可能となる。
【0051】
前述の説明は逐次二軸延伸について説明したが、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは縦延伸と横延伸とを同時に行なう同時二軸延伸でも製造でき、例えば先で説明した延伸倍率や延伸温度などを参考にすればよい。
【0052】
また、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムが積層フィルムの場合、2種以上の溶融ポリエステルをダイ内で積層してからフィルム状に押出し、好ましくはそれぞれのポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+70)℃の温度で押出すか、2種以上の溶融ポリエステルをダイから押出した後に積層し、急冷固化して積層未延伸フィルムとし、ついで前述の単層フィルムの場合と同様な方法で二軸延伸および熱処理を行なうとよい。また、前述の塗布層を設ける場合、前記した未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルムの片面または両面に所望の塗布液を塗布し、後は前述の単層フィルムの場合と同様な方法で二軸延伸および熱処理を行なうことが好ましい。
【0053】
本発明によれば、本発明の上記二軸配向ポリエステルフィルムをベースフィルムとし、その一方の面に非磁性層および磁性層をこの順で形成し、他方の面にバックコート層を形成することなどでデータストレージなどの磁気記録テープとすることができる。
ところで、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、前述の通り単層フィルムに限られず、積層フィルムであってもよく、それによって平坦性と巻取性とを両立しやすい。
【0054】
以下、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムが二軸配向積層ポリエステルフィルムである場合について、説明する。
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムがフィルム層Aとフィルム層Bとを積層した二軸配向積層ポリエステルフィルムである場合、少なくともフィルム層AおよびBのいずれかが前述の共重合芳香族ポリエステルからなるものであればよく、他のフィルム層は、前述の共重合芳香族ポリエステル以外のポリエステルからなるものであってもよい。
【0055】
具体的な前述の共重合芳香族ポリエステル以外のポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのアルキレンテレフタレートを繰り返し単位とするポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリトリメチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレン−2,6−ナフタレートなどのアルキレン−2,6−ナフタレートを繰り返し単位とするポリアルキレン−2,6−ナフタレートが好ましく挙げられる。これらの中でも、機械的特性などの点からポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましく、特にポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。また、ガラス転移温度を高くできる共重合成分を共重合することや、ポリエーテルイミドや液晶樹脂をブレンドすること(例えば、特開2000−355631号公報、特開2000−141475号公報および特開平11−1568号公報などを参照)も好ましい。特にエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とする場合は、このような共重合やブレンドをすることが好ましい。また、より環境変化に対する寸法安定性を向上させる観点から、国際公開2008/096612号パンフレットに記載された6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分および6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分などを共重合したものも好ましい。
【0056】
なお、4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分を共重合している芳香族ポリエステルは、少なくともフィルム層AまたはBのいずれかに用いられていればよいが、環境変化に対する寸法安定性を向上させる観点からは、より厚いフィルム層に用いられていることが好ましく、両フィルム層に用いられていることがもっとも好ましい。
上記、4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸酸成分が特定量共重合されている芳香族ポリエステルおよび他方の層を形成するポリエステルは、本発明の効果を阻害しない範囲で、それ自体公知の他の共重合成分を共重合しても良い。
【0057】
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、前述のとおり、フィルム層Aの片面にフィルム層Bを積層したものであり、二軸配向積層ポリエステルフィルムのフィルム層B側の表面粗さ(RaB)が、二軸配向積層ポリエステルフィルムのフィルム層A側の表面粗さ(RaA)よりも1.0nm以上、さらに2.0nm以上、よりさらに3.0nm以上大きいことが好ましい。RaAとRaBとの表面粗さの差を下限以上にすることで、単層フィルムに比べ、優れた平坦性と巻取性とを高度に具備させることができる。なお、RaAとRaBとの差の上限は、特に制限されないが、フィルム層A側の表面を、フィルム層B側によって損なわれないようにする点から、8.0nm以下、好ましくは5.0nm以下、さらに好ましくは4.0nm以下であることが好ましい。
【0058】
また、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、得られる積層フィルムに優れた平坦性を具備させるために、フィルム層A側の表面粗さ(RaA)は1.0〜7.0nm、さらに1.5〜5.0nm、特に2.0〜4.0nmの範囲にあることが好ましい。一方、得られる積層フィルムに優れた巻取性を具備させるために、フィルム層B側の表面粗さ(RaB)は5.0〜15.0nm、さらに6.0〜10.0nm、特に6.0〜8.0nmの範囲にあることが好ましい。
【0059】
このような表面粗さは、粗くしたい側のフィルム層に不活性粒子を含有させたりして、突起を形成すればよい。含有させる不活性粒子としては、(1)耐熱性ポリマー粒子(例えば、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステルなどからなる粒子)、(2)金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなど)、金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなど)、金属の硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、炭素(例えば、カーボンブラック、グラファイト、ダイアモンドなど)および粘土鉱物(例えば、カオリン、クレー、ベントナイトなど)などのような無機化合物からなる粒子、さらに(3)異なる素材を例えばコアとシェルに用いたコアシェル型などの複合粒子など粒子の状態で添加する外部添加粒子や(4)触媒などの析出によって形成する内部析出粒子などを挙げることができる。これらの中で特に架橋シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、カオリン及びクレーからなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが好ましく、特に架橋シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレンおよび二酸化ケイ素(但し、多孔質シリカなどは除く)からなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが、粒子の粒径のバラツキを小さくしやすいことから好ましい。もちろん、これらは2種以上を併用しても良い。
【0060】
また、含有させる不活性粒子の大きさや割合は、それぞれ所望の表面粗さに応じて調整すればよい。具体的には、フィルム層Bに含有させる不活性粒子の平均粒径は、0.05〜1.0μm、さらに0.1〜0.8μmの範囲にあることが好ましく、特に磁気記録媒体として用いる場合は0.1〜0.5μm、さらに0.1〜0.3μmの範囲にあることが好ましい。また、フィルム層Bに含有させる不活性粒子の含有量は、該フィルム層の重量を基準として、0.1〜1.0重量%、さらに0.15〜0.5重量%の範囲にあることが好ましく、特に磁気記録媒体として用いる場合は0.2〜0.4重量%、さらに0.2〜0.3重量%の範囲にあることが好ましい。また、フィルム層Aは、不活性粒子を含有しないか、含有する場合は、不活性粒子の平均粒径は、0.01〜0.3μm、さらに0.05〜0.25μmの範囲にあることが好ましく、特に磁気記録媒体として用いる場合は0.1〜0.2nm、さらに0.1〜0.15μmの範囲にあることが好ましい。また、フィルム層Aが不活性粒子を含有する場合の不活性粒子の含有量は、該フィルム層の重量を基準として、0.005〜0.3重量%、さらに0.01〜0.2重量%の範囲にあることが好ましく、特に磁気記録媒体として用いる場合は0.05〜0.15重量%、さらに0.1〜0.1重量%の範囲にあることが好ましい。
【0061】
ところで、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、フィルム層Aの片面にフィルム層Bを積層したもので、フィルム層AとBの間に、他のフィルム層が介在しても良い。そのような中でも、好ましい二軸配向積層ポリエステルフィルムの層構成として、以下の2つを挙げることができる。
【0062】
まず、好ましい第1の層構成は、不活性粒子の脱落を抑えつつ、生産性を高める場合に好ましい層構成であり、フィルム層Bの厚みが、積層フィルム全体の厚みに対して、50〜90%、好ましくは55〜85%、さらに好ましくは60〜80%の範囲のものである。フィルム層Bはフィルム層Aよりも表面粗さが大きいことから、フィルム層Aに比べより大きな粒子を含有するか、より多く粒子を含有することになり、そのような粒子の脱落をフィルム層Bの厚みを下限以上にすることでより抑制しやすくなる。また、二軸配向積層ポリエステルフィルムを製膜する際に生じる製品とならない部分を回収して用いようとする場合、フィルム層Bの厚みを下限以上にすることで、フィルム層Bに大量の回収されたポリマー(回収チップ)を用いることができ、フィルムコストを抑制することもできる。なお、フィルム層Aに回収チップを用いると、フィルム層Bだけに粒径の大きな粒子を含有させることができなくなり、表面粗さの調整が難しくなったり、フィルム層Aの平坦性が損なわれたりする。他方、フィルム層Bの厚み割合が上限を越えると、フィルム層Aの厚みが非常に薄くなり、フィルムB層の粒子の影響がフィルムA層に影響するようになり、表面が粗くなり、電磁変換特性が悪化しやすくなる。なお、寸法安定性の観点からは、前述の共重合芳香族ポリエステルはより厚いフィルム層に用いられていることが好ましく、そのような観点から、第1の層構成では、共重合芳香族ポリエステルは、フィルム層Bに用いられるのが好ましい。
【0063】
つぎに、好ましい第2の層構成は、より平坦性と走行性とを高度に具備させやすい層構成であり、フィルム層Aの厚みが、積層フィルム全体の厚みに対して、50〜97%、好ましくは70〜96%、さらに好ましくは80〜95%の範囲のものである。前述のとおり、フィルム層Bはフィルム層Aよりも表面粗さが大きいことから、フィルム層Aに比べより大きな粒子を含有するか、より多く粒子を含有することになる。そのため、フィルム層Bに含有される不活性粒子による突起が、フィルム層Aの表面を突き上げ、フィルム層A表面の平坦性を低下させやすい。そのため、フィルム層Aの厚みを下限以上にすることで、そのような平坦性の低下を抑制しやすくなる。また、フィルム層Aの厚みを厚くするということは、フィルム層Bの厚みを薄くすることになり、フィルム層B中に含まれる不活性粒子の厚み方向の位置が揃いやすくなる。その結果、フィルム層Bの表面にある突起の高さが揃いやすくなり、突起の高さを均一にしやすいという利点もある。そのような観点から、フィルム層Bの厚みは、含有する最も平均粒径の大きな不活性粒子の平均粒径に対して、0.5倍から4倍の範囲にあることが好ましい。なお、寸法安定性の観点からは、前述の共重合芳香族ポリエステルはより厚いフィルム層に用いられていることが好ましく、そのような観点から、第2の層構成では、共重合芳香族ポリエステルは、フィルム層Aに用いられるのが好ましい。
【0064】
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムの好ましい態様について、さらに詳述する。本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、磁気テープなどのベースフィルムとして用いたとき、ベースフィルムが伸びないようにフィルム面方向における少なくとも一方向は、ヤング率が5.5GPa以上という高いヤング率を有することが好ましい。しかも、このようにヤング率を高くすることで、より湿度膨張係数を小さくすることができる。ヤング率の上限は制限されないが、通常11GPaである。好ましいヤング率は、フィルムの長手方向が3〜10GPa、さらに3.5〜9GPa、特に4〜8GPaの範囲であり、フィルムの幅方向が5〜11GPa、さらに5.5〜11GPa、特に6〜10GPaの範囲である。
【0065】
また、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、優れた寸法安定性を発現する点から、少なくとも一方向、好ましくはフィルムの幅方向の温度膨張係数(αt)が10ppm/℃以下であることが好ましい。フィルムの少なくとも一方向における温度膨張係数が10ppm/℃以下であることで環境変化に対する優れた寸法安定性を発現することができる。温度膨張係数の下限は制限されないが、通常−15ppm/℃である。好ましい温度膨張係数(αt)は−10〜10ppm/℃、さらに−7〜7ppm/℃、特に−5〜5ppm/℃の範囲であることが、例えば磁気記録テープとしたとき、雰囲気の温湿度変化による寸法変化に対して優れた寸法安定性を発現できることから好ましい。
【0066】
さらにまた、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、優れた寸法安定性を発現する点から、少なくとも一方向、好ましくはフィルムの幅方向の湿度膨張係数が1〜7ppm/%RH、さらに3〜7ppm/%RH、よりさらに3〜6ppm/%RHの範囲にあることが、特に磁気記録テープにしたときの寸法安定性の点で好ましい。特に、磁気記録テープにベースフィルムに用いる場合、湿度膨張係数の小さい方向が二軸配向積層ポリエステルフィルムの幅方向であることが、トラックずれなどを極めて抑制できることから好ましい。なお、本発明において、フィルムの幅方向とは、フィルムの製膜方向(長手方向、縦方向と称することもある。)に直交する方向であり、横方向と称することもある。
【0067】
また、上記温度膨張係数が10ppm/℃以下の方向については、少なくとも一方向、好ましくは前述のとおり、幅方向が満足していれば良いが、それに直交する方向も寸法安定性の点からは、同様な温度膨張係数や湿度膨張係数、さらにヤング率などを満足することが好ましい。
【0068】
もちろん、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、環境変化に対する寸法安定性の観点からは、全てのフィルム層が、前述の式(I)で示される4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分が特定量共重合されている芳香族ポリエステルからなることが好ましい。なお、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、特に断らない限り、前述の本発明の二軸配向ポリエステルフィルムで説明したのと同様なことが言える。
【0069】
<二軸配向積層ポリエステルフィルムの製造方法>
本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、以下で特に断らない限り、前述の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法と同様な製造方法を好適に採用できる。
まず、ポリエステル(少なくとも一つのフィルム層は上述の4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分を共重合している共重合芳香族ポリエステル)を原料とし、これを乾燥後、溶融状態、好ましくはそれぞれの層を形成するポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+70)℃の温度でダイ内において積層してからフィルム状に押出すか、それぞれを溶融状態でシート状にダイから押出した後に積層し、急冷固化して積層未延伸フィルムとし、さらに該積層未延伸フィルムを二軸延伸する。
【0070】
つぎに、縦延伸と横延伸およびその後の熱処理の温度は、前述の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法で説明した温度を、それぞれのフィルム層を形成するポリエステルが満足することが好ましい。特に、突起を均一としつつ寸法安定性高める観点からは、熱固定処理の温度を180〜220℃、さらに好ましくは190〜210℃の範囲で1〜15秒行なうことが好ましい。
【0071】
また、不活性粒子を含有させる方法については、それ自体公知の方法を採用でき、例えばポリエステルの製造工程において、反応系に添加しても良いし、ポリエステルに溶融混練によって添加してもよい。粒子の分散性の点から、好ましくはポリエステルの反応系に添加して、粒子濃度の高いポリエステル組成物をマスターポリマーとして製造し、そのマスターポリマーを、粒子を含まないか、粒子濃度の低いポリエステル組成物と混ぜ合わせる方法が好ましい。
【0072】
本発明によれば、本発明の上記二軸配向積層ポリエステルフィルムをベースフィルムとし、そのフィルム層A側の表面に非磁性層および磁性層がこの順で形成され、フィルム層B側の表面にバックコート層を形成することなどで磁気記録テープとすることができる。
ところで、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、上述のとおり、二軸配向積層ポリエステルフィルムであることが好ましく、また、以下のような二軸配向多層積層フィルムであることも好ましい。
【0073】
<二軸配向多層積層フィルム>
本発明の二軸配向多層積層フィルムは、フィルム層(A´)とフィルム層(B´)とをそれぞれ5層以上積層したものである。好ましい積層数は、フィルム層(A´)とフィルム層(B´)の合計層数で31〜10001の範囲、さらに51〜1001の範囲にあることが層構成の均一性と効果の発現性の点から好ましい。積層数が下限未満であると、延伸性の向上効果が小さくなりやすく、またカールの発生を抑制しがたくなる。なお、積層数の上限は特に制限されないが、積層構造を維持しやすい点から、上記上限以下であることが好ましい。また、フィルム層(A´)の1層あたり厚みは、0.1〜1000nmの範囲、さらに1〜100nmの範囲にあることが層構成の均一性と効果の発現性の点から好ましい。
【0074】
<芳香族ポリエステル(B´)>
本発明の特徴の一つは、フィルム層(B´)を構成する芳香族ポリエステルが、前記式(I´)で表される繰り返し単位(I´)と前記式(II´)で表される繰り返し単位(II´)とを、全繰り返し単位のモル数を基準として、それぞれ5モル%以上80モル%未満、20モル%を超え95モル%以下の範囲で有する芳香族ポリエステル(B´)からなることである。上記式(I´)の繰り返し単位の割合が下限未満では湿度膨張係数の低減効果が発現されがたい。なお、上限は、成形性などの観点から、80モル%未満である。好ましい繰り返し単位(I´)の共重合量の上限は、78モル%以下、さらに60モル%以下、よりさらに50モル%以下、特に40モル%以下であり、他方下限は、5モル%以上、さらに7モル%以上、よりさらに10モル%以上、特に15モル%以上である。
【0075】
このような特定量の繰り返し単位(I´)を共重合した芳香族ポリエステルをフィルム層(B)に用いることで、湿度膨張係数を同じヤング率ならより低くすることができる。
なお、前述の繰り返し単位(I´)および(II´)で示されるR、RおよびRはそれぞれ前述の式(I)、(II)および(III)で説明したのと同様である。もちろん、本発明における芳香族ポリエステル(B)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、それ自体公知の他の共重合成分を共重合しても良い。
これらの観点から、繰り返し単位(II´)は、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましく、最も好ましいのはエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートである。
【0076】
ところで、本発明における芳香族ポリエステル(B´)は、DSCで測定した融点が、200〜260℃の範囲、さらに210〜255℃の範囲、特に215〜250℃の範囲にあることが製膜性と得られるフィルムの機械的特性の点から好ましい。また、本発明における芳香族ポリエステル(B´)は、DSCで測定したガラス転移温度(以下、Tgと称することがある。)が、80〜120℃の範囲、さらに85〜118℃の範囲、特に90〜116℃の範囲にあることが、フィルムの延伸性、耐熱性や寸法安定性の点から好ましい。なお、このような融点やガラス転移温度は、共重合成分の種類と共重合量、そして副生物であるジアルキレングリコールの制御などによって調整できる。なお、フィルムにした後の高温での加工、例えば磁性層の塗布などの加工性を向上させる観点からは、Tgはできる限り高いことが好ましい。そのため、本発明の目的を損なわない範囲で、ガラス転移温度を高くできる共重合成分を共重合することや、ポリエーテルイミドや液晶樹脂をブレンドすること(例えば、特開2000−355631号公報、特開2000−141475号公報および特開平11−1568号公報などを参照)も好ましい態様である。
【0077】
なお、上記4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分の共重合量は、重合段階で所望の共重合量となるように原料の組成を調整するか、酸成分として上記4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分のみを用いたホモポリマーもしくはその共重合量が多いポリマーと、共重合していないポリマーまたは共重合量の少ないポリマーとを用意し、所望の共重合量となるようにこれらを溶融混練によってエステル交換させることで調整できる。
【0078】
<芳香族ポリエステル(A´)>
本発明における芳香族ポリエステル(A´)は、前述の芳香族ポリエステル(B´)からなるフィルム層(B´)の延伸性を高めつつ、ヤング率などの機械的特性を実用に耐えうるように発現させるためのフィルム層(A´)を構成するものである。そのため、前記式(II´)で表される繰り返し単位を、95モル%を超えて有することが好ましい。
【0079】
したがって、芳香族ポリエステル(A´)の4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分の共重合量は、全酸成分のモル量を基準として5モル%未満であることが好ましい。また、芳香族ポリエステル(A)、芳香族ポリエステル(B)を構成する繰返し単位であるRはエチレン基が90モル%、好ましくは95モル%、特に97モル%以上であることが好ましい。Rをエチレン基にすることにより、湿度変化に対する寸法安定性向上効果と加工時の伸び抑制効果とをより高度に発現出来る。
【0080】
ところで、本発明における芳香族ポリエステル(A´)は、フィルム層(A´)を構成するポリエステル樹脂組成物としてみたときのDSCにおけるTg(ガラス転移温度)が105℃以上であることが、後述のtanδを満足させやすいことから好ましい。好ましい芳香族ポリエステル(A´)のガラス転移温度の下限は110℃以上、さらに115℃以上であり、上限は特に制限されないがフィルム層(B´)と積層したときの製膜性の点から150℃以下、さらに140℃以下が好ましい。
【0081】
このような点から、具体的な芳香族ポリエステルとしては、繰り返し単位(II´)の95モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートからなるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましく、さらにTgを高くできるような成分を共重合したものや、ブレンドしたものであっても良い。ところで、芳香族ポリエステル(A´)はエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエチレンテレフタレートであってもよい。ただし、ポリエチレンテレフタレートの場合は、前述のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートと異なり、ホモポリマーでは、ガラス転移温度が低くなりやすい。そのため、ガラス転移温度を高くできる成分を共重合することや、ポリエーテルイミドや液晶樹脂をブレンドすること(例えば、特開2000−355631号公報、特開2000−141475号公報および特開平11−1568号公報などを参照)が好ましい。
【0082】
本発明における芳香族ポリエステル(A´)は、DSCで測定した融点が、230〜300℃の範囲、さらに240〜290℃の範囲、特に250〜280℃の範囲にあることが製膜性の点から好ましい。
【0083】
<多層積層フィルム>
本発明の二軸配向多層積層フィルムは、より環境変化に対する寸法安定性を向上させる観点から、芳香族ポリエステル(B´)からなるフィルム層(B´)をより厚く用いていることが好ましい。そのような観点から、本発明の二軸配向多層積層フィルムは、フィルム層(B´)の厚みの合計が、多層積層フィルムの厚みに対して、30〜80%、好ましくは35〜75%、さらに好ましくは40〜70%の範囲にあることが好ましい。このような範囲とすることで、湿度変化に対する寸法安定性向上効果と加工時の伸び抑制効果とをより高度に発現出来る。下限未満では湿度膨張係数の低減効果が乏しくなりやすく、他方上限を超えるとフィルム層(A)による加工時の伸び抑制効果が乏しくなりやすい。
【0084】
また、本発明の二軸配向多層積層フィルムはフィルム層(A´)および(B´)を合計したフィルム全体に占める繰り返し単位のモル数を基準としたとき、繰り返し単位(I´)の占める割合が、3〜40モル%、好ましくは5〜35モル%、さらに好ましくは7〜30モル%の範囲にあることが好ましい。このような範囲とすることで、湿度変化に対する寸法安定性を向上させやすく、また加工時の伸び抑制効果をより高度に発現出来る。下限未満では湿度膨張係数の低減効果が乏しくなりやすく、他方上限を超えると延伸性の向上効果が乏しくなることや、高温で加工した時の伸びが発生しやすくなることがある。
【0085】
本発明において、二軸配向多層積層フィルムの粘弾性測定における製膜方向の高温側tanδのピーク温度は95℃以上、さらに105℃以上であることが好ましい。上記ピーク温度が下限未満では、高温での加工時の伸びの抑制効果が乏しくなる。好ましい上記ピーク温度は100〜200℃、さらに110〜200℃の範囲、よりさらに115〜180℃の範囲である。なお、tanδのピーク温度は通常高温側にフィルム層(A´)に起因するピークが、低温側にフィルム層(B´)に起因するピークが現れやすく、このような高温側のピーク温度が存在することによって、高温での加工時の伸びを抑制することができる。また、フィルム層(A´)によってこのような高温側のtanδのピーク温度を高く発現させるには、前述のようなポリエステル(A´)の選択と製膜方向の分子配向を高める、すなわちより高い延伸倍率などで延伸を行なうことなどによって調整できる。
【0086】
もちろん、本発明の効果を損なわない範囲で、他のフィルム層を積層したり、塗膜層を設けたりしても良い。
ところで、本発明の二軸配向多層多層積層フィルムは、一方の表面の表面粗さ(Ra)は1nm〜20nm、更に好ましくは2nm〜10nmであることが好ましい。
通常フィルムの表面粗さを粗くするには、フィルム層に不活性粒子を含有させたりして、突起を形成すればよい。含有させる不活性粒子としては、前述の不活性粒子を好ましく挙げることができる。
【0087】
走行性の観点からは、フィルム層に含有させる不活性粒子の平均粒径は、0.05〜1.0μm、さらに0.1〜0.8μmの範囲にあることが好ましく、特に磁気記録媒体として用いる場合は0.1〜0.5μm、さらに0.1〜0.3μmの範囲にあることが好ましい。また、フィルム層に含有させる不活性粒子の含有量は、該フィルム層の重量を基準として、0.005〜1.0重量%、さらに0.01〜0.5重量%の範囲にあることが好ましい。なお、本発明の二軸配向多層積層フィルムは、特に断らない限り、前述の本発明の二軸配向ポリエステルフィルムで説明したのと同様なことが言える。
【0088】
本発明の二軸配向多層積層フィルムの好ましい態様について、さらに詳述する。
本発明の二軸配向多層積層フィルムは、磁気テープなどのベースフィルムとして用いたとき、ベースフィルムが伸びないようにフィルム面方向における少なくとも一方向は、ヤング率が5.0GPa以上という高いヤング率を有することが好ましい。しかも、このようにヤング率を高くすることで、より湿度膨張係数を小さくすることができる。ヤング率の上限は制限されないが、通常11GPaである。好ましいヤング率は、フィルムの長手方向が3〜11GPa、さらに3〜10GPa、さらに3.5〜10GPa、よりさらに3.5〜9GPa、特に4.0〜9GPa、最も好ましくは4.0〜8GPaの範囲であり、フィルムの幅方向が4〜11GPa、さらに5〜11GPa、さらに5.5〜11GPa、よりさらに6〜10GPa、特に7〜10GPaの範囲である。
【0089】
また、本発明の二軸配向多層積層フィルムは、優れた寸法安定性を発現する点から、少なくとも一方向、好ましくはフィルムの幅方向の温度膨張係数(αt)が10ppm/℃以下であることが好ましい。フィルムの少なくとも一方向における温度膨張係数が10ppm/℃以下であることで環境変化に対する優れた寸法安定性を発現することができる。温度膨張係数の下限は制限されないが、通常−15ppm/℃である。好ましい温度膨張係数(αt)は−10〜10ppm/℃、さらに−7〜7ppm/℃、特に−5〜5ppm/℃の範囲であることが、例えば磁気記録テープとしたとき、雰囲気の温湿度変化による寸法変化に対して優れた寸法安定性を発現できることから好ましい。
【0090】
本発明の二軸配向多層積層フィルムは、少なくともフィルム面内方向の一方向の湿度膨張係数は、下限が1ppm/%RH、さらに3ppm/%RHであることが好ましく、上限は8ppm/%RH、さらに7ppm/%RH、特に6ppm/%RHであることが好ましく、1〜8ppm/%RH、3〜8ppm/%RH、さらには3〜7ppm/%RHの範囲にあることが、特に磁気記録テープにしたときの寸法安定性の点で好ましい。特に、磁気記録テープにベースフィルムに用いる場合、上記湿度膨張係数を満足する方向が幅方向であることが、トラックずれなどを極めて抑制できることから好ましい。
【0091】
本発明の二軸配向多層積層フィルムの厚みは、用途に応じて適宜決めればよく、磁気記録テープのベースフィルムに用いる場合は、2〜10μm、さらに3〜7μm、特に4〜6μmの範囲が好ましい。
【0092】
<二軸配向多層積層フィルムの製造方法>
本発明の二軸配向多層積層フィルムは、特に断らない限り、前述の本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムで説明したのと同様な方法で製造できる。
まず、フィルム層(A´)および(B´)を形成する芳香族ポリエステル(A´)と(B´)を原料とし、これらを乾燥後、溶融状態、好ましくはそれぞれの層を形成するポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+70)℃の温度でダイ内において積層してからフィルム状に押出すか、それぞれを溶融状態でシート状にダイから押出した後に積層し、急冷固化して積層未延伸フィルムとし、さらに該積層未延伸フィルムを二軸延伸する。
【0093】
二軸延伸としては、逐次二軸延伸でも同時二軸延伸でもよい。
ここでは、逐次二軸延伸で、縦延伸、横延伸および熱処理をこの順で行なう製造方法を一例として挙げて説明する。まず、最初の縦延伸は芳香族ポリエステル(A´)もしくは(B´)のどちらか高いほうのガラス転移温度(Tg:℃)ないし(Tg+40)℃の温度で、3〜10倍に延伸し、次いで横方向に先の縦延伸よりも高温で(Tg+10)〜(Tg+50)℃の温度で3〜10倍に延伸し、さらに熱処理としてポリマーの融点以下の温度でかつ(Tg+50)〜(Tg+150)℃の温度で1〜20秒熱固定処理するのが好ましい。特に好ましい熱固定処理は、温度が180〜220℃、さらに190〜210℃の範囲で、時間は1〜15秒である。
【0094】
本発明によれば、本発明の上記二軸配向多層積層フィルムをベースフィルムとし、その一方の面、好ましくはより平坦な側の表面に非磁性層および磁性層をこの順で形成し、他方の面、好ましくはより平坦でない側の表面にバックコート層を形成することで、磁気記録テープとすることができる。
【実施例】
【0095】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明では、以下の方法により、その特性を測定および評価した。
【0096】
(1)固有粘度
得られた共重合芳香族ポリエステルおよびフィルムの固有粘度は、P−クロロフェノール/テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定して求めた。
【0097】
(2)ガラス転移点および融点
ガラス転移点、融点はDSC(TAインスツルメンツ株式会社製、商品名:Thermal Analyst2100)により昇温速度20℃/minで測定した。
【0098】
(3)共重合量
酸成分については、試料50mgをp−クロロフェノール:重テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに140℃で溶解し、400MHz 13C−NMR(日立電子製、JEOL A600)にて140℃で測定し、それぞれの酸成分量を測定した。
【0099】
(4)ヤング率
得られたフィルムを試料巾10mm、長さ15cmで切り取り、チャック間100mm、引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分の条件で万能引張試験装置(東洋ボールドウィン製、商品名:テンシロン)にて引っ張る。得られた荷重―伸び曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を計算する。
【0100】
(5)温度膨張係数(αt)
得られたフィルムを、フィルムの製膜方向および幅方向が、ぞれぞれ測定方向となるように、長さ15mm、幅5mmに切り出す。そして、真空理工製TMA3000にセットし、窒素雰囲気下(0%RH)、60℃で30分前処理し、その後室温まで降温させる。その後25℃から70℃まで2℃/minで昇温して、各温度でのサンプル長を測定する。次いで、次式より温度膨張係数(αt)を算出する。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値を用いた。
αt={(L60−L40)}/(L40×△T)}+0.5
ここで、上記式中のL40は40℃のときのサンプル長(mm)、L60は60℃のときのサンプル長(mm)、△Tは20(=60−40)℃、0.5は石英ガラスの温度膨張係数(ppm/℃)である。
【0101】
(6)湿度膨張係数(αh)
得られたフィルムを、フィルムの製膜方向および幅方向が、それぞれ測定方向となるように長さ15mm、幅5mmに切り出す。そして、真空理工製TMA3000にセットし、30℃の窒素雰囲気下で、湿度30%RHと湿度70%RHにおけるそれぞれのサンプルの長さを測定し、次式にて湿度膨張係数を算出する。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値をαh(ppm/%RH)とした。
αh=(L70−L30)/(L30×△H)
ここで、上記式中のL30は30%RHのときのサンプル長(mm)、L70は70%
RHのときのサンプル長(mm)、△H:40(=70−30)%RHである。
【0102】
(7)中心面平均粗さ(Ra)
Zygo社製 非接触三次元表面構造解析顕微鏡(NewView5022)を用いて測定倍率25倍、測定面積283μm×213μm(=0.0603mm)の条件にて測定し、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトにより中心面平均粗さRaを以下の式より求めた。
【0103】
【数1】

【0104】
Zjkは測定方向(283μm)、それと直交する方向(213μm)をそれぞれM分割、N分割したときの各方向のj番目、k番目の位置における2次元粗さチャート上の高さである。
【0105】
(8)巻取性
スリット速度60m/分で、スリット幅1000mmのサイズで、8000m巻いた時の巻き上がったフィルムロールを観察し、以下の基準で巻取性を評価した。
良 : シワが見られない
可 : シワが多少見られるが、実用的には問題ないレベル
不可: シワが多数発生
【0106】
(9)電磁変換特性
電磁変換特性測定には、ヘッドを固定した1/2インチリニアシステムを用いた。記録は、電磁誘導型ヘッド(トラック幅25μm、ギャップ0.1μm)を用い、再生はMRヘッド(8μm)を用いた。ヘッド/テープの相対速度は10m/秒とし、記録波長0.2μmの信号を記録し、再生信号をスペクトラムアナライザーで周波数分析し、キャリア信号(波長0.2μm)の出力Cと、スペクトル全域の積分ノイズNの比をC/N比とし、実施例1を0dBとした相対値を求め、以下の基準で、評価した。
良 : +1dB以上
可 : −1dB以上、+1dB未満
不可: −1dB未満
なお、電磁変換特性測定に供する磁気記録テープは、以下の方法で作成した。
まず、各実施例及び比較例で得られたフィルムの一方の表面(積層フィルムの場合はフィルム層Bの表面)に下記組成のバックコート層塗料をダイコーターで塗布し、乾燥させた後、フィルムの他方の表面(積層フィルムの場合はフィルム層Aの表面)に下記組成の非磁性塗料、磁性塗料をダイコーターで同時に膜厚を変えて塗布し、磁気配向させて乾燥させる。さらに、小型テストカレンダ−装置(スチ−ルロール/ナイロンロール、5段)で、温度:70℃、線圧:200kg/cmでカレンダ−処理した後、70℃、48時間キュアリングする。上記テ−プを12.65mmにスリットし、カセットに組み込み磁気記録テープとした。なお、乾燥後のバックコート層、非磁性層および磁性層の厚みは、それぞれ0.5μm、1.2μmおよび0.1μmであった。
【0107】
<非磁性塗料の組成>
・二酸化チタン微粒子 :100重量部
・エスレックA(積水化学製塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体):10重量部
・ニッポラン2304(日本ポリウレタン 製ポリウレタンエラストマ):10重量部
・コロネートL(日本ポリウレタン製ポリイソシアネート):5重量部
・レシチン : 1重量部
・メチルエチルケトン :75重量部
・メチルイソブチルケトン :75重量部
・トルエン :75重量部
・カーボンブラック : 2重量部
・ラウリン酸 :1.5重量部
<磁性塗料の組成>
・鉄(長さ:0.3μm、針状比:10/1、1800エルステッド) :100重量部
・エスレックA(積水化学製塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体:10重量部
・ニッポラン2304(日本ポリウレタン 製ポリウレタンエラストマ):10重量部
・コロネートL(日本ポリウレタン製ポリイソシアネート):5重量部
・レシチン : 1重量部
・メチルエチルケトン :75重量部
・メチルイソブチルケトン :75重量部
・トルエン :75重量部
・カーボンブラック : 2重量部
・ラウリン酸 :1.5重量部
<バックコート層塗料の組成:>
カーボンブラック :100重量部
熱可塑性ポリウレタン樹脂 :60重量部
イソシアネート化合物 :18重量部
(日本ポリウレタン工業社製コロネートL)
シリコーンオイル :0.5重量部
メチルエチルケトン :250重量部
トルエン :50重量部
【0108】
(10)積層フィルムおよびフィルム層の厚み
積層フィルムを層間の空気を排除しながら10枚重ね、JIS規格のC2151に準拠し、(株)ミツトヨ製ダイヤルゲージMDC−25Sを用いて、10枚重ね法にて厚みを測定し、1枚当りのフィルム厚みを計算する。この測定を10回繰り返して、その平均値を1枚あたりの積層フィルム全体の厚みとした。
一方、フィルム層Aおよびフィルム層Bまたはフィルム層(A´)およびフィルム層(B´)の厚みは、フィルムの小片をエポキシ樹脂にて定成形し、ミクロトームにて約60nmの厚みの超薄切片(フィルムの製膜方向および厚み方向に平行に切断する)を作成する。この超薄切片の試料を透過型電子顕微鏡(日立製作所製H−800型)にて観察し、フィルム層Aとフィルム層Bまたはフィルム層(A´)およびフィルム層(B´)のポリマーが異なり、境界が観察できる場合はその境界からフィルム層AとBまたはフィルム層(A´)およびフィルム層(B´)の厚みを求め、境界が観察できないような同種のポリマーの場合は、不活性粒子の存在量が変化する厚みの位置を、それぞれの表面側からそれぞれ100箇所求め、それらの平均値からA層とB層の厚みを求めた。
【0109】
(11)フィルムの生産性
フィルムB層に入れられる回収チップの回収可能比率から、以下の基準で、評価した。
良 : 60%以上
可 : 40%以上、60%未満
不可: 40%未満
【0110】
(12)加工時の伸びによる塗布斑
ダイコーターで、20MPaの張力条件で、幅500mmにスリットされた長さ500mのフィルムにおける一方の表面に、前記(9)の電磁変換特性の測定で用いた組成の非磁性塗料、磁性塗料を同時に、乾燥後の非磁性層および磁性層の厚みが、それぞれ1.2μmおよび0.1μmとなるように膜厚を変えて塗布し、磁気配向させて120℃×30秒の条件で乾燥させる。さらに、小型テストカレンダ−装置(スチ−ルロール/ナイロンロール、5段)で、温度:70℃、線圧:200kg/cmでカレンダ−処理した後、70℃、48時間キュアリングする。そして、得られた磁性層付フィルムについて、目視判定により、以下の基準で塗布斑を評価した。なお、目視判定は、フィルムの裏側に蛍光灯を設置し、磁性層の抜けによる光の漏れをカウントすることで行い、この磁性層付フィルムを必要に応じてバックコート層などを設けた上で、幅12.65mmにスリットし、カセットに組み込みことで磁気記録テープにできる。
良 :塗布抜けが2個/250m未満
可 :塗布抜けが2個/250m以上10個/250m未満
不可:塗布抜けが10個/250m以上
【0111】
(13)粘弾性測定
フィルムサンプルをフィルムの製膜方向(MD)に長さ35mm、幅方向(TD)に幅3mmとなるように切り、オリエンテック(株)製のバイブロン装置(DDV−01FP)を用い、荷重3g、周波数1Hzで室温から200℃まで5℃/分で昇温して、MD方向に測定する。得られたチャートよりtanδのピーク温度及びピーク強度を求める。
【0112】
(14)カール
フィルムサンプルをフィルムの製膜方向(MD)に長さ250mm、幅方向(TD)に幅100mmとなるように切り取り、20MPaの荷重で120℃×1分処理し、カールの度合いを下記基準により判断した。
良 :カールなし
可 :フィルムサンプルの四方のみが軽くめくれる程度のカール
不可:フィルムサンプルが筒状に丸まる程のカール
【0113】
[実施例1]
4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.71dl/gの芳香族ポリエステルaを得た。この芳香族ポリエステルの融点は243℃、ガラス転移温度は74℃であった。
一方、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールとをチタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.62dl/gの芳香族ポリエステルbを得た。このポリエチレン−2,6−ナフタレートの融点は265℃、ガラス転移温度は120℃であった。
更に、ポリエステルbと同様に2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールとをチタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行った後に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、1.5重量%となるように含有させた固有粘度0.60dl/gの芳香族ポリエステルcを得た。
このようにして得られた芳香族ポリエステルa、b、cを、酸成分の75モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分となるように、また平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように、押し出し機に供給して290℃でダイから溶融状態で回転中の温度40℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が100℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、110℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.5倍で延伸し、その後190℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0114】
[実施例2]
実施例1と同様にして得られた芳香族ポリエステルa、b、cを、酸成分の75モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分となるように、また平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように、押し出し機に供給して290℃でダイから溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が105℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率5.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、115℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後190℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0115】
[実施例3]
実施例1と同様にして得られた芳香族ポリエステルa、b、cを、酸成分の65モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分となるように、また平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように、押し出し機に供給して290℃でダイから溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が105℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、115℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後180℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0116】
[実施例4]
実施例1と同様にして得られた芳香族ポリエステルa、b、cを、酸成分の30モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分となるように、また平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように、押し出し機に供給して290℃でダイから溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が110℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、120℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後210℃で5秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0117】
[実施例5]
4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.69dl/gで、酸成分の85モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分、15モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分である芳香族ポリエステルを得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。この芳香族ポリエステルの融点は223℃、ガラス転移温度は77℃であった。
このようにして得られた芳香族ポリエステルを、押し出し機に供給して260℃でダイから溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が90℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、95℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.5倍で延伸し、その後190℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0118】
[実施例6]
4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.65dl/gで、酸成分の85モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分、15モル%がテレフタル酸成分である芳香族ポリエステルを得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。この芳香族ポリエステルの融点は226℃、ガラス転移温度は74℃であった。
このようにして得られた芳香族ポリエステルを、押し出し機に供給して260℃でダイから溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が90℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、95℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.5倍で延伸し、その後190℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0119】
[実施例7]
4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.64dl/gで、酸成分の70モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分、30モル%がテレフタル酸成分である芳香族ポリエステルを得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。この芳香族ポリエステルの融点は200℃、ガラス転移温度は73℃であった。
このようにして得られた芳香族ポリエステルを、押し出し機に供給して260℃でダイから溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が90℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、95℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.5倍で延伸し、その後190℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0120】
[実施例8]
4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.64dl/gで、酸成分の10モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分、90モル%がテレフタル酸成分である芳香族ポリエステルを得た。なお、該芳香族ポリエステルには、重縮合反応の前に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。この芳香族ポリエステルの融点は226℃、ガラス転移温度は76℃であった。
このようにして得られた芳香族ポリエステルを、押し出し機に供給して260℃でダイから溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が90℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、95℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.5倍で延伸し、その後190℃で3秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0121】
[比較例1]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.62dl/gであるポリエチレン−2,6−ナフタレートを得た。なお、該ポリエチレン−2,6−ナフタレートには、重縮合反応の前に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。このポリエチレン−2,6−ナフタレートの融点は265℃、ガラス転移温度は120℃であった。
このようにして得られたポリエチレン−2,6−ナフタレートを、押し出し機に供給して300℃でダイから溶融状態で回転中の温度60℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が140℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、140℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.3倍で延伸し、その後200℃で10秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0122】
[比較例2]
比較例1において、製膜方向の延伸温度を140℃に、製膜方向の延伸倍率を4.0倍に、幅方向の延伸温度を140℃に、幅方向の延伸倍率を4.0倍に、熱固定処理温度を200℃に変更するほかは同様な操作を繰り返して、厚さ10μm二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0123】
[比較例3]
4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.72dl/gであるポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4、4´−ジカルボキシレートを得た。なお、該ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4、4´−ジカルボキシレートには、重縮合反応の前に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。
このポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4、4´−ジカルボキシレートの融点は243℃、ガラス転移温度は74℃であった。
このようにして得られたポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4、4´−ジカルボキシレートを、押し出し機に供給して280℃でダイから溶融状態で回転中の温度40℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が80℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.0倍で行ったところ結晶化が進みすぎ、白色となり更なる横方向の延伸を行なうことができなかった。
【0124】
[比較例4]
テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.63dl/gであるポリエチレンテレフタレートを得た。なお、該ポリエチレンテレフタレートには、重縮合反応の前に平均粒径0.5μmのシリカ粒子を、得られる樹脂組成物の重量を基準として、0.2重量%となるように含有させた。このポリエチレンテレフタレートの融点は254℃、ガラス転移温度は78℃であった。
このようにして得られたポリエチレンテレフタレートを、押し出し機に供給して280℃でダイから溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が100℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、110℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後200℃で10秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸延伸フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0125】
【表1】

【0126】
表1中の、NAは2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、EBAは4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分、TAはテレフタル酸成分、固有粘度、融点およびガラス転移温度はフィルムの状態での共重合芳香族ポリエステルの値、MDはフィルムの製膜方向、TDはフィルムの幅方向を示す。
【0127】
[実施例9]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸、およびエチレングリコールを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.61dl/gで、酸成分の70モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の30モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、グリコール成分の2モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層A用の芳香族ポリエステル(A−1)を得た。なお、芳香族ポリエステルには、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた。この芳香族ポリエステル(A−1)の融点は240℃、ガラス転移温度は100℃であった。また平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.15重量%と、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた以外は前記(A−1)と同様にして、フィルム層B用の芳香族ポリエステル(B−1)を得た。この芳香族ポリエステル(B−1)の融点は240℃、ガラス転移温度は100℃であった。このようにして得られた芳香族ポリエステル(A−1)と(B−1)とを、それぞれ別の押し出し機に供給して290℃で厚み比が1:2となるようダイ内で積層し、溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸積層フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が110℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、120℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後210℃で5秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0128】
[実施例10]
実施例9において、含有する不活性粒子を平均粒径0.15μmのシリカ粒子に変更し、かつその含有量を0.2重量%に変更した以外、芳香族ポリエステル(A−1)と同様な操作を繰り返して芳香族ポリエステル(A−2)を製造した。また、実施例9において、含有する不活性粒子を、平均粒径0.5μmのシリコーン粒子と平均粒径0.15μmのシリカ粒子とに変更し、かつそれらの含有量をそれぞれ0.02重量%と0.2重量%に変更した以外は、芳香族ポリエステル(B−1)と同様な操作を繰り返して、芳香族ポリエステル(B−2)製造した。そして、このようにして得られた芳香族ポリエステル(A−2)をフィルム層A用に、また芳香族ポリエステル(B−2)をフィルム層B用とし、それぞれ別の押し出し機に供給して290℃で厚み比が1:1となるようダイ内で積層し、溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸積層フィルムとした以外は、実施例9と同様な操作を繰り返して、二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0129】
[実施例11]
芳香族ポリエステル(A−1)の不活性粒子を、平均粒径0.05μmのシリカ粒子0.3重量%に変更したものを、フィルム層A用の芳香族ポリエステル(A−3)として、また芳香族ポリエステル(B−1)の不活性粒子を、平均粒径0.2μmのシリカ粒子0.2重量%と、平均粒径0.05μmのシリカ粒子0.3重量%に変更したものをフィルム層B用の芳香族ポリエステル(B−3)として得た以外、実施例1と同様にして、芳香族ポリエステル(A−3)および芳香族ポリエステル(B−3)を同様にして得た。このようにして得られた芳香族ポリエステル(A−3)と(B−3)とを、それぞれ別の押し出し機に供給して290℃で厚み比が1:4となるようダイ内で積層し、溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸積層フィルムとした以外は、実施例9と同様な操作を繰り返して、二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0130】
[実施例12]
芳香族ポリエステル(A−1)の不活性粒子を、平均粒径(一次粒子径)0.06μmのアルミナ粒子0.2重量%に変更したものを、フィルム層A用の芳香族ポリエステル(A−4)として、また芳香族ポリエステル(B−1)の不活性粒子を、平均粒径0.3μmの架橋ポリスチレン粒子0.15重量%と、平均粒径(一次粒子径)0.06μmのアルミナ粒子0.2重量%に変更したものをフィルム層B用の芳香族ポリエステル(B−4)として得た以外、実施例1と同様にして、芳香族ポリエステル(A−4)および芳香族ポリエステル(B−4)を得た。このようにして得られた芳香族ポリエステル(A−4)と(B−4)とを、それぞれ別の押し出し機に供給して290℃で厚み比が1:2となるようダイ内で積層し、溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸積層フィルムとした以外は、実施例9と同様な操作を繰り返して、二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0131】
[実施例13]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.61dl/gで、酸成分の90モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の10モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分、グリコール成分の99モル%がエチレングリコール成分、1モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層A用の芳香族ポリエステル(A−5)を得た。なお、芳香族ポリエステル(A−5)には、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた。この芳香族ポリエステル(A−5)の融点は254℃、ガラス転移温度は112℃であった。また、不活性粒子を平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.15重量%と、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%に変更した以外は芳香族ポリエステル(A−5)と同様にして、フィルム層B用の芳香族ポリエステル(B−5)を得た。この芳香族ポリエステル(B−5)の融点は254℃、ガラス転移温度は112℃であった。このようにして得られた芳香族ポリエステルを、実施例9と同様にして未延伸積層フィルムとし、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が125℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、135℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後210℃で5秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0132】
[実施例14]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.61dl/gで、酸成分の25モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の75モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、2モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層A用の芳香族ポリエステル(A−6)を得た。なお、芳香族ポリエステル(A−6)には、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた。この芳香族ポリエステル(A−6)の融点は226℃、ガラス転移温度は77℃であった。また、不活性粒子を平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.15重量%と、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%に変更した以外は芳香族ポリエステル(A−6)と同様にして、フィルム層B用の芳香族ポリエステル(B−6)を得た。この芳香族ポリエステル(B−6)の融点は226℃、ガラス転移温度は77℃であった。このようにして得られた芳香族ポリエステルを、押し出し機に供給して290℃でダイから溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が105℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、120℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.5倍で延伸し、その後210℃で5秒間熱固定処理を行い、未延伸フィルムの厚みを調整して厚さ10μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0133】
[実施例15]
フィルム層Aとフィルム層Bの厚み比(A:B)を2:1に変更した以外は、実施例9と同様に行い、二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0134】
[実施例16]
実施例9において、フィルム層A用のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(A−1)を、後述の実施例22のA−7に変更したほかは同様な操作を繰り返した。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0135】
[実施例17]
実施例15において、フィルム層B用のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(B−1)を、後述の比較例5のB−7に変更したほかは同様な操作を繰り返した。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0136】
[実施例18]
テレフタル酸ジメチル、4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸、およびエチレングリコールを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.61dl/gで、酸成分の30モル%がテレフタル酸成分、酸成分の70モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、グリコール成分の2モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層A用の芳香族ポリエステル(A−10)を得た。なお、芳香族ポリエステルには、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた。この芳香族ポリエステル(A−10)の融点は200℃、ガラス転移温度は73℃であった。また平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.15重量%と、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた以外は前記(A−10)と同様にして、フィルム層B用の芳香族ポリエステル(B−8)を得た。この芳香族ポリエステル(B−8)の融点は200℃、ガラス転移温度は73℃であった。このようにして得られた芳香族ポリエステル(A−10)と(B−8)とを、それぞれ別の押し出し機に供給して280℃で厚み比が1:2となるようダイ内で積層し、溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸積層フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が100℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、110℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後160℃で5秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0137】
[実施例19]
テレフタル酸ジメチル、4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸、およびエチレングリコールを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.61dl/gで、酸成分の90モル%がテレフタル酸成分、酸成分の10モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、グリコール成分の2モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層A用の芳香族ポリエステル(A−11)を得た。なお、芳香族ポリエステルには、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた。この芳香族ポリエステル(A−11)の融点は226℃、ガラス転移温度は76℃であった。また平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.15重量%と、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた以外は前記(A−11)と同様にして、フィルム層B用の芳香族ポリエステル(B−9)を得た。この芳香族ポリエステル(B−9)の融点は226℃、ガラス転移温度は76℃であった。このようにして得られた芳香族ポリエステル(A−11)と(B−9)とを、それぞれ別の押し出し機に供給して280℃で厚み比が1:2となるようダイ内で積層し、溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸積層フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が100℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、110℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後200℃で5秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0138】
[実施例20]
テレフタル酸ジメチル、4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸、およびエチレングリコールを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.61dl/gで、酸成分の15モル%がテレフタル酸成分、酸成分の85モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、グリコール成分の2モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層A用の芳香族ポリエステル(A−12)を得た。なお、芳香族ポリエステルには、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた。この芳香族ポリエステル(A−12)の融点は226℃、ガラス転移温度は74℃であった。また平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.15重量%と、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた以外は前記(A−12)と同様にして、フィルム層B用の芳香族ポリエステル(B−10)を得た。この芳香族ポリエステル(B−10)の融点は226℃、ガラス転移温度は74℃であった。このようにして得られた芳香族ポリエステル(A−12)と(B−10)とを、それぞれ別の押し出し機に供給して280℃で厚み比が1:2となるようダイ内で積層し、溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸積層フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が100℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、110℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後200℃で5秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0139】
[実施例21]
テレフタル酸ジメチルおよびエチレングリコールを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.61dl/gで、酸成分の100モル%がテレフタル酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、グリコール成分の2モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層A用の芳香族ポリエステル(A−13)を得た。なお、芳香族ポリエステルには、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた。この芳香族ポリエステル(A−13)の融点は254℃、ガラス転移温度は78℃であった。このようにして得られた芳香族ポリエステル(A−13)と実施例11で作成した(B−9)とを、それぞれ別の押し出し機に供給して280℃で厚み比が1:2となるようダイ内で積層し、溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸積層フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が100℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、110℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.0倍で延伸し、その後200℃で5秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0140】
[実施例22]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.61dl/gで、酸成分の70モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の30モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分で、2モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム単層用の芳香族ポリエステル(A−7)を得た。なお、芳香族ポリエステル(A−7)には、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.15重量%含有させた。この芳香族ポリエステル(A−7)の融点は240℃、ガラス転移温度は100℃であった。このようにして得られた芳香族ポリエステル(A−7)を、溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸(単層)フィルムとした以外は、実施例9と同様な操作を繰り返して、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0141】
[実施例23]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.61dl/gで、酸成分の70モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の30モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分で、2モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム単層用の芳香族ポリエステル(A−8)を得た。なお、芳香族ポリエステル(A−8)には、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた。この芳香族ポリエステル(A−8)の融点は240℃、ガラス転移温度は100℃であった。このようにして得られた芳香族ポリエステル(A−8)を、溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸(単層)フィルムとした以外は、実施例9と同様な操作を繰り返して、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0142】
[比較例5]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.62dl/gで、グリコール成分の1.5モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層A用のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(A−9)を得た。なお、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(A−9)には、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた。また、不活性粒子を平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.15重量%と、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%に変更した以外は前記(A−9)同様にして、フィルム層B用のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(B−7)を得た。これらのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(A−9)と(B−7)の融点は270℃、ガラス転移温度は120℃であった。そして、実施例9と同様にして未延伸積層フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が140℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、140℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.3倍で延伸し、その後200℃で10秒間熱固定処理を行い、厚さ5μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0143】
[比較例6]
比較例5において、製膜方向の延伸温度を140℃に、製膜方向の延伸倍率を4.0倍に、幅方向の延伸温度を140℃に、幅方向の延伸倍率を4.0倍に、熱固定処理温度を200℃に、そして未延伸フィルムの厚みを変更するほかは同様な操作を繰り返して厚さ5μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0144】
[比較例7]
比較例5において、製膜方向の延伸温度を140℃に、製膜方向の延伸倍率を4.5倍に、幅方向の延伸温度を140℃に、幅方向の延伸倍率を3.4倍に、熱固定処理温度を200℃に、そして未延伸フィルムの厚みを変更するほかは同様な操作を繰り返して厚さ5μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0145】
[実施例24]
実施例19で作成したポリエステル(A−11)を、溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸(単層)フィルムとし、製膜方向の延伸倍率を4.0倍から3.0倍に変更した以外は、実施例11と同様な操作を繰り返して、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0146】
[比較例8]
テレフタル酸ジメチルおよびエチレングリコールを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.61dl/gで、酸成分の100モル%がテレフタル酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、グリコール成分の2モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層B用の芳香族ポリエステル(B−11)を得た。なお、芳香族ポリエステルには、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%と平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.15重量%含有させた。この芳香族ポリエステル(B−11)の融点は254℃、ガラス転移温度は78℃であった。こうして得られたポリエステル(B−11)と実施例13で作成した(A−13)とを、それぞれ別の押し出し機に供給して280℃で厚み比が1:2となるようダイ内で積層し、溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し未延伸積層フィルムとした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が100℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、110℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.0倍で延伸し、その後200℃で5秒間熱固定処理を行い、厚さ10μmの二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表2に示す。
【0147】
【表2】

【0148】
表2中の、A−1〜13およびB−1〜11は、それぞれ各実施例で説明した芳香族ポリエステルの種類、EBA割合は全酸成分中の4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分のモル%、MDはフィルムの製膜方向、TDはフィルムの幅方向を示し、A面とB面とは、二軸配向積層ポリエステルフィルムのフィルム層A側の表面と、フィルム層B側の表面とを示す。
【0149】
[実施例25]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行い、グリコール成分の1.5モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層(A´)用のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(A´−1)を得た。なお、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(A´−1)には、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.3重量%、平均粒径0.15μmのシリカ粒子を0.2重量%含有させた。
また、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行い、酸成分の73モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の27モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、グリコール成分の2モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層(B´)用の芳香族ポリエステル(B´−1)を得た。この芳香族ポリエステル(B´−1)の融点は242℃、ガラス転移温度は102℃であった。
このようにして得られた芳香族ポリエステル(A´−1)と(B´−1)を170℃で6時間乾燥後、押出し機に供給し、295℃まで加熱して溶融状態とし、(A´−1)の層用ポリエステルを101層、(B´−1)の層用ポリエステルを100層に分岐させた後、(A´−1)の層と(B´−1)の層が交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して、その積層状態を保持したままダイへと導き、溶融状態で回転中の温度50℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し、(A´−1)の層と(B´−1)の層が交互に積層された総数201層の未延伸多層積層フィルムを作成した。尚、B´層とA´層の吐出比率は2:1とした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が135℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率5.3倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、145℃で横方向(幅方向)に延伸倍率6.0倍で延伸し、その後190℃で5秒間熱固定処理を行い、厚さ5μmの二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0150】
[実施例26]
B´層とA´層の吐出比率が1:1となるように変更する以外は、実施例25と同様な操作を繰り返して、二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0151】
[実施例27]
B´層とA´層の吐出比率が4:1となるように変更する以外は、実施例25と同様な操作を繰り返して、二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0152】
[実施例28]
A´層の層数を51層、B´層の層数を50層、総数101層に変更する以外は、実施例25と同様な操作を繰り返して、二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0153】
[実施例29]
縦の延伸倍率を5.5倍、横の延伸倍率を5.3倍に変更する以外は、実施例25と同様な操作を繰り返して、二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0154】
[実施例30]
縦の延伸倍率を5.0倍、横の延伸倍率を7.5倍に変更する以外は、実施例25と同様な操作を繰り返して、二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0155】
[実施例31]
フィルムB´層の芳香族ポリエステル酸成分の65モル%を2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の35モル%を4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分に変更する以外は、実施例25と同様な操作を繰り返して、二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0156】
[実施例32]
フィルムB´層の芳香族ポリエステル酸成分の82モル%を2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の18モル%を4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分に変更する以外は、実施例25と同様な操作を繰り返して、二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0157】
[実施例33]
フィルムA´層の芳香族ポリエステルを、酸成分の98モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の2モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分であるものに変更する以外は、実施例25と同様な操作を繰り返して、二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0158】
[実施例34]
A´層の層数を25層、B´層の層数を25層、総数50層に変更する以外は、実施例25と同様な操作を繰り返して、二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0159】
[実施例35]
シリカ粒子をA´層側ではなくB´層側に含有させ、かつA´層の層数を10層、B´層の層数を11層(B´層が両表面を形成するように配置)、総数21層に変更する以外は、実施例25と同様な操作を繰り返して、二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0160】
[実施例36]
テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行い、グリコール成分の1.5モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層(A´)用のポリエチレンテレフタレート(A´−2)を得た。なお、ポリエチレンテレフタレート(A´−2)には、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.3重量%、平均粒径0.15μmのシリカ粒子を0.2重量%含有させた。
また、テレフタル酸ジメチル、4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行い、酸成分の90モル%がテレフタル酸、酸成分の10モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、グリコール成分の2モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層(B´)用の芳香族ポリエステル(B´−2)を得た。この芳香族ポリエステル(B´−2)の融点は226℃、ガラス転移温度は76℃であった。
このようにして得られたB´層用の芳香族ポリエステル(B´−2)とA´層用のポリエチンテレフタレート(A´−2)を170℃で3時間乾燥後、押出し機に供給し、280℃まで加熱して溶融状態とし、A´層用ポリエステルを101層、B´の層用ポリエステルを100層に分岐させた。その後、A´の層とB´の層が交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して、その積層状態を保持したままダイへと導き、溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し、A´の層とB´の層が交互に積層された総数201層の未延伸多層積層フィルムを作成した。なお、B´層とA´層の吐出比率は2:1とした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が100℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、110℃で横方向(幅方向)に延伸倍率5.5倍で延伸し、その後190℃で5秒間熱固定処理を行い、厚さ5μmの二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0161】
[実施例37]
A´層の層数を51層、B´層の層数を50層、総数101層に変更する以外は、実施例36と同様な操作を繰り返して、二軸配向多層積層フィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0162】
[実施例38]
フィルムB´層の芳香族ポリエステル酸成分の30モル%をテレフタル酸成分、酸成分の70モル%を4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分に変更する以外は、実施例36と同様な操作を繰り返して、二軸配向多層積層フィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0163】
[実施例39]
フィルムB´層の芳香族ポリエステル酸成分の15モル%をテレフタル酸成分、酸成分の85モル%を4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分に変更する以外は、実施例36と同様な操作を繰り返して、二軸配向多層積層フィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0164】
[実施例40]
フィルム層A´の芳香族ポリエステル(A´−2)にフィルム層A´の重量を基準として、5重量%のポリエーテルイミド(GE社製ウルテム1010(ガラス転移温度:215℃))をブレンドしたこと以外は、実施例37と同様にして、二軸配向多層積層フィルムを得た。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0165】
[実施例41]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行い、酸成分の73モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の27モル%が4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、グリコール成分の2モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層(A´)用の芳香族ポリエステル(A´−3)を得た。なお、芳香族ポリエステルには、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.3重量%、平均粒径0.15μmのシリカ粒子を0.2重量%含有させた。そして、フィルムA´層の芳香族ポリエステルを(A´−3)のポリエステルに変更し、縦の延伸倍率を5.8倍、横の延伸倍率を7.7倍、横の延伸温度を140℃に変更する以外は実施例25と同様な操作を繰り返して、二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0166】
[実施例42]
フィルムB´層の単層フィルムと変更する以外は、実施例25と同様な操作を繰り返して、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0167】
[比較例9]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.62dl/gで、グリコール成分の1.5モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層(B´)用のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(B´−3)を得た。フィルムB´層の芳香族ポリエステルを(B´−3)のポリエステルに変更し、縦の延伸倍率を5.0倍、横の延伸倍率を6.4倍、横の延伸温度を150℃に変更する以外は実施例25と同様な操作を繰り返して、二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0168】
[実施例43]
1層のB´層と1層のA´層の2層積層フィルムと変更する以外は、実施例25と同様な操作を繰り返して、二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0169】
[実施例44]
テレフタル酸ジメチル、4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行い、酸成分の90モル%がテレフタル酸成分、酸成分の10モル%が4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、グリコール成分の2モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層(A´)用の芳香族ポリエステル(A´−4)を得た。なお、芳香族ポリエステル(A´−4)には、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.3μmのシリカ粒子を0.3重量%、平均粒径0.15μmのシリカ粒子を0.2重量%含有させた。
このようにして得られたA´層用の芳香族ポリエステル(A´−4)とB´層用の芳香族ポリエステル(B´−2)とを170℃で3時間乾燥後、押出し機に供給し、280℃まで加熱して溶融状態とし、A´層用ポリエステルを101層、B´の層用ポリエステルを100層に分岐させた。その後、A´の層とB´の層が交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して、その積層状態を保持したままダイへと導き、溶融状態で回転中の温度30℃の冷却ドラム上にシート状に押し出して、A´の層とB´の層が交互に積層された総数201層の未延伸多層積層フィルムを作成した。尚、B´層とA´層の吐出比率は2:1とした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が100℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率3.0倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、110℃で横方向(幅方向)に延伸倍率6.0倍で延伸し、その後190℃で5秒間熱固定処理を行い、厚さ5μmの二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0170】
[実施例45]
フィルムB´層の単層フィルムと変更する以外は、実施例44と同様な操作を繰り返して、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0171】
[比較例10]
テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行って、固有粘度0.62dl/gで、グリコール成分の1.5モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層(B´)用のポリエチレンテレフタレート(B´−4)を得た。実施例44において、フィルムA´層の芳香族ポリエステルを(A´−4)から、(A´−2)に変更し、フィルムB´層の芳香族ポリエステルを上記記載のポリエステル(B´−4)に変更し、縦の延伸倍率を3.5倍、横の延伸倍率を5.5倍に変更する以外は実施例44と同様な操作を繰り返して、二軸配向多層積層フィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0172】
[実施例46]
フィルムA´層の芳香族ポリエステルを(A´−4)から(A´−2)に変更し、1層のB´層と1層のA´層の2層積層フィルムと変更する以外は、実施例44と同様な操作を繰り返して、二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの特性を表3に示す。
【0173】
【表3】

【0174】
ここで、表3中の、EBA割合は、全酸成分のモル数を基準としたときの、4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分の割合、Tgがガラス転移温度、Tmは融点、MDは製膜方向、TDは幅方向を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明の共重合芳香族ポリエステルおよびそれから得られる二軸配向ポリエステルフィルムは、従来のポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートやポリアルキレン−6、6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエートでは達成できなかったような優れた寸法安定性を有し、寸法安定性が求められる用途、特に高密度磁気記録媒体のベースフィルムとして、好適に使用することができる。
【0176】
さらに、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、上記寸法安定性に加え、高度に平坦性と巻取性と両立させやすいことから、特に高密度磁気記録媒体のベースフィルムとして、好適に使用することができる。
さらにまた、本発明の二軸配向多層積層フィルムは、優れた寸法安定性と高温での加工時に伸びが生じにくく、しかもカールも抑制されていることから、さまざまな用途に利用でき、特に高密度磁気記録媒体の支持体として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)および(II)で示される芳香族ジカルボン酸成分と下記式(III)で示されるグリコール成分とを含む共重合芳香族ポリエステルであって、
共重合芳香族ポリエステルを構成する全芳香族ジカルボン酸成分のモル数を基準として、下記式(I)で表される4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分を5モル%以上90モル%未満含むことを特徴とする共重合芳香族ポリエステル。
【化1】

上記構造式(I)〜(III)中の、Rは、炭素数1〜10のアルキレン基、Rはフェニル基またはナフタレンジイル基、Rは炭素数2〜4のアルキレン基もしくは炭素数8〜10のシクロアルキレン基を示す。
【請求項2】
4、4´−(アルキレンジオキシ)ビス安息香酸成分が、4、4´−(エチレンジオキシ)ビス安息香酸成分である請求項1記載の共重合芳香族ポリエステル。
【請求項3】
前記式(II)で示される芳香族ジカルボン酸成分が、テレフタル酸成分または2,6−ナフタレンジカルボン酸成分である請求項1記載の共重合芳香族ポリエステル。
【請求項4】
前記式(III)で示されるグリコール成分がエチレングリコール成分である請求項1記載の共重合芳香族ポリエステル。
【請求項5】
請求項1記載の共重合芳香族ポリエステルからなる二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項6】
少なくとも一つの層が、前記共重合芳香族ポリエステルからなる請求項5記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項7】
フィルム層Aの片面に、フィルム層Bが積層された積層フィルムであって、積層フィルムのフィルム層B側の表面粗さ(RaB)がフィルム層A側の表面粗さ(RaA)よりも1.0nm以上大きい請求項6記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記積層フィルムのフィルム層A側の表面粗さ(RaA)が1.0〜7.0nmの範囲で、フィルム層B側の表面粗さ(RaB)が5.0〜15.0nmの範囲にある請求項7記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項9】
フィルム層Bは、その厚みが、積層フィルム全体の厚みに対して、50〜90%の範囲にあり、かつ前記共重合芳香族ポリエステルからなる請求項7または8のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項10】
フィルム層Aは、その厚みが、積層フィルム全体の厚みに対し、50〜97%の範囲にあり、かつ前記共重合芳香族ポリエステルからなる請求項7または8のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項11】
フィルム層AおよびBの両層が、前記共重合芳香族ポリエステルからなる請求項7に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項12】
フィルム層(A´)とフィルム層(B´)とをそれぞれ5層以上有する二軸配向多層積層フィルムであって、フィルム層(B´)は、下記式(I´)で表される繰り返し単位(I´)と下記式(II´)で表される繰り返し単位(II´)とを、全繰り返し単位のモル数を基準として、それぞれ5モル%以上80モル%未満、20モル%を超え95モル%以下の範囲で有する芳香族ポリエステル(B´)からなり、フィルム層(A´)は、全繰り返し単位のモル数を基準として、下記式(II´)で表される繰り返し単位を、95モル%を超えて有する芳香族ポリエステル(A´)からなる請求項6記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【化2】

上記式(I´)および(II´)中、Rは炭素数1〜10のアルキレン基、Rはフェニレン基またはナフタレンジイル基、Rは炭素数2〜4のアルキレン基もしくは炭素数8〜10のシクロアルキレン基を示す。
【請求項13】
フィルム層(B´)の合計の厚みが、多層積層フィルム全体の厚みに対して、30〜80%の範囲にある請求項12記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項14】
フィルム層(A´)および(B´)を合計した多層積層フィルム全体にしめる繰り返し単位のモル数を基準としたとき、繰り返し単位(I´)の占める割合が、3〜40モル%の範囲にある請求項12記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項15】
繰り返し単位(II´)がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートもしくはエチレンテレフタレートである請求項12記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項16】
フィルム面方向における少なくとも一方向のヤング率が4.5GPa以上である請求項5、6、7または12のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項17】
フィルム面方向における少なくとも一方向の湿度膨張係数が1〜7(ppm/%RH)の範囲にある請求項5、6、7または12のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項18】
二軸配向ポリエステルフィルムが、磁気記録媒体のベースフィルムに用いられる請求項5、6、7または12のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項19】
請求項5、6、7または12のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムと、その片面に形成された磁性層とからなる磁気記録媒体。

【公開番号】特開2012−82379(P2012−82379A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268375(P2010−268375)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】