説明

内径測定装置及びその内径測定装置を用いた管路内径測定システム

【課題】管路内走行時に管の正確な内径を測定できる内径測定装置及びその内径測定装置を用いた管路内径測定システムを提供する。
【解決手段】本体部及び本体部を既設管路の内部で走行可能に支持する本体支持部、本体部に配設されて既設管路の内径を計測する内径測定部を備える内径測定装置において、内径測定装置の重心位置を、内径測定装置の既設管路への導入状態における中央位置に対して下方へ偏位させる。これにより、既設管路内を走行中の内径測定装置に振動等が付与されることに起因する内径測定装置の内壁に沿った旋回しながらの走行が抑制される。その結果、内径測定部による計測の軌跡が管路の軸線に平行するので、既設管路の正確かつ精密な内径測定が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内径測定装置及びその内径測定装置を用いた管路内径測定システム、特に、既設管路用の内径測定装置及びその内径測定装置を用いた管路内径測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地下に敷設された下水道管路は、長年に亘る使用で、下水から発生する硫化水素等の酸性物質の腐蝕により老朽化し、さらに土圧による静荷重、特に重量車両が地表面を走行することに起因する活荷重により管の断面が大きく変化してしまうことがある。このような断面変形した管路は、流下能力が低下し、その結果、所定の設計流量以内のときでもマンホールから溢水して、地上構造物の水没や、地盤の陥没等を引き起こすことがある。かかる事態を防止すべく、管路の健全度を定期的に計測して把握することが必要である。このような管路の健全度を把握するためには、内径測定が簡易で非常に有効な方法である。
【0003】
また、老朽化して健全度が低下した管路に対して補修工事を行う際に、例えば、反転工法によって管路内に未硬化の管状ライニング材を空気圧で反転させながら挿入して、その後、管状ライニング材を拡径させた状態で熱または光線によって硬化させる内面ライニング工法によって補修工事を行う場合は、施工前に管の内径に適合する管状ライニング材を選択することは、高品質な管路の内壁の仕上がりを得ることにとって非常に重要である。一方、施工後においても、管路の内壁の品質の確認のために、補修工事の仕上がり具合を把握する必要がある。これらのライニング材の選択及び補修工事の仕上がり具合を把握する場合も、上記した管路の内径測定が必要となる。
【0004】
特許文献1には、管路の内径を測定する装置が開示されており、管路の内径変位量を変位計で直接測定する構成が示されている。この特許文献1に開示される内径測定装置は、管路に導入可能な中空円筒状の本体部を備え、この本体部を支持して走行可能な転輪を有する本体部支持部が、本体部の周面に放射状に複数配置される。この本体部支持部は、その転輪が管路の内壁に当接されるとともに内壁に対して付勢されているので、内径測定装置の走行に伴って管路の内壁の形状に追従しながら本体部を支持する。
【0005】
本体部は、この本体部支持部と隣接して本体部の周面に放射状に複数配置された腕部を備える。腕部の先端にはローラが設けられ、このローラが管路の内壁に当接されるとともに内壁に対して付勢されている。ローラは、本体部に配置された変位測定機構にワイヤを介して連結されている。そして、内径測定装置が管路の内部で移動せしめられると、管路の内壁に対して付勢された腕部が管路の内径に応じて拡縮されるので、この変位測定機構に連結されたワイヤが引き出され、あるいは引き込まれ、ワイヤの引出し/引込みにより変位測定機構の空気圧の変化が測定されて、管路の内径が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−214958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の内径測定装置を管路内で走行させると、内径の変化によって内径測定装置の体勢に変化が生じて、本体支持部によって放射状に支持された内径測定装置が管路の内壁に沿って旋回しながら走行してしまうので、変位測定機構に内径の変位を伝達する腕部の接触軌跡が螺旋状となり、管路の内径の測定に誤差が生じる。特に、長距離の管路における内径の計測では、累積誤差が増大することが懸念される。
【0008】
これに対して、内径測定装置の発進地点、到着地点等の既知の位置をもとに内径の測定誤差を補正することもできるが、補正対象となる区間内において内径測定装置の体勢が複数回変化して測定誤差が発生した場合には、正確な補正が困難となる。また、正確な補正を行うには複数点での位置補正を行う必要があるが、既設下水管路のような地中に埋設された管路においては、かかる補正を行うことが困難であることが懸念される。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、管路内走行時に管路の正確な内径を測定できる内径測定装置及びその内径測定装置を用いた管路内径測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明による内径計測装置は、既設管路内に導入可能な本体部と、該本体部を前記既設管路の内部で走行可能に支持する本体支持部と、前記本体部に配設されて前記既設管路の内径を測定する内径測定部と、を備える内径測定装置において、前記既設管路の内部への導入状態における前記内径測定装置の上下長の中央位置に対して前記内径測定装置の重心位置を下方へ偏位させたことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、内径測定装置の重心位置を、内径測定装置が既設管路に導入された状態における上下長の中央位置に対して下方へ偏位させることにより、既設管路内を走行中の内径測定装置に振動等が付与されることに起因する内径測定装置の内壁に沿った旋回しながらの走行が抑制される。
【0012】
この結果、既設管路の内径の変化や既設管路の内壁の表面凹凸に対応しつつも、内径測定装置の本体部に配設された内径測定部が既設管路の内径を測定しつつ内径測定装置が走行され、内径測定部による計測の軌跡が管路の軸線に平行するので、既設管路の正確かつ精密な内径測定が達成される。
【0013】
請求項2に記載の発明による内径計測装置は、請求項1に記載の内径測定装置において、前記重心位置の偏位は、前記既設管路内への導入状態で当該装置の下部側に位置する部材を上部側に位置する部材に対して重量を増大させて設定したことを特徴とする。
【0014】
この構成は、請求項1の重心位置の偏位の内容を具体的に明らかにしたものであり、内径測定装置の下方部位の重量を内径測定装置の上方部位の重量に対して増大させるとともに、内径測定装置の下方部位に配設される本体支持部及び腕部の重量を増大させる簡易な構成なので、部材点数が抑制されて装置の故障の可能性が低減された上で内径測定装置の重心を内径測定装置の軸心より下方に位置させることができる。
【0015】
請求項3に記載の内径測定装置は、円柱状の中心体及び、該中心体の一部を外部に露出させて浮動回転自在に保持する保持体を有する本体部と、該本体部を前記既設管路の内部で走行可能に支持する本体支持部と、前記中心体の露出部分に配設されて前記既設管路の内径を測定する内径測定部と、を備え、前記中心体の重心位置を回転の中心軸から偏位させたことを特徴とする。
【0016】
この構成によると、中心体が、保持体に対して浮動回転するように係合されているとともに、中心体の重心位置が中心体の中心軸から偏位するように設定されているので、既設管路の内径差や既設管路の表面凹凸に対応して保持体が中心体の周面上で浮動回転されつつ、中心体の水平状態が維持される。この結果、既設管路の内径の変化や既設管路の内壁の表面凹凸に対応しつつも、内径測定装置の中心体の露出部分に配設された内径測定部が既設管路の内径を測定しつつ内径測定装置が走行され、内径測定部による計測の軌跡が管路の軸線に平行するので、既設管路の正確かつ精密な内径測定が達成される。
【0017】
請求項4に記載の発明による内径測定装置は、請求項3に記載の内径測定装置において、前記重心位置の偏位は、前記中心体の露出部分に重錘を取り付けて形成されたことを特徴とする。
【0018】
この構成は、請求項3の重心位置の偏位の内容を具体的に明らかにしたものであり、中心体の重心の偏位が重錘によって実現されるので、簡易に製造できかつ製造コストを削減した上で中心体の重心を中心体の軸心より下方に位置させることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明による内径測定装置は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の内径測定装置において、前記本体支持部は、該本体支持部の端部に回転自在に軸支された車輪を備え、該車輪は、前記既設管路への導入状態で接地面が前記既設管路の内壁に沿う形状に形成されたことを特徴とする。
【0020】
この構成によると、既設管路の内壁に沿って当接する接地面を有して本体支持部の端部に取り付けられた車輪が、既設管路の内壁に間隙なく接地されて、内壁に付与される内径測定装置の重量荷重の反力が車輪の接地面に垂直に付与されるので、内径測定装置の水平状態が保持されて内径測定装置を既設管路の内部において安定して走行させることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明による管路内径測定システムは、請求項1〜5に記載の内径測定装置を用いた管路内径測定システムであって、前記内径測定装置を走行させる内径測定装置走行手段と、前記内径測定装置の内径測定部により測定された内径の測定データを伝送するデータ伝送手段と、該データ伝送手段により伝送された前記測定データに基づいて前記既設管路の内径の状況を把握するデータ処理手段と、該データ処理手段により把握された前記測定データを表示するデータ表示手段と、を備えることを特徴とする。
【0022】
この構成によると、既設管路の走行時に内径測定装置が既設管路の内壁に沿って旋回しながらの走行が抑制され、あるいは本体部の中心体がその回転軸を中心として回転することが抑制されて中心体の水平状態が維持されるので、既設管路の正確かつ精密な内径を測定して測定データを得ることができる。そして、この測定データを分析あるいは提供することにより、既設管路の補修工事を行う場合に、適切な寸法の管を事前に準備することが可能となり、または、補修工事後の仕上がり具合の把握・管理を正確に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、内径測定装置の重心位置を、内径測定装置が既設管路に導入された状態における上下長の中央位置に対して下方へ偏位させる、あるいは本体部の中心体の重心位置を中心体の回転中心軸から偏位させることで、既設管路内を走行中の内径測定装置に振動等が付与されることに起因する内径測定装置の内壁に沿った旋回しながらの走行が抑制される。
【0024】
この結果、既設管路の内径の変化や既設管路の内壁の表面凹凸に対応しつつも、内径測定装置の本体部、あるいは中心体に配設された内径測定部が、既設管路の内径を測定しつつ内径測定装置が走行され、内径測定部による計測の軌跡が管路の軸線に平行する。従って、既設管路の正確かつ精密な内径測定が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る内径測定装置の概略を説明する図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る管路内径測定システムの概略を説明する図である。
【図5】同じく、本実施の形態に係る管路内径測定システムのコンピュータにおけるデータ処理の過程を概略的に説明する図である。
【図6】同じく、本実施の形態に係る管路内径測定システムの一連の工程の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施の形態について、図1〜図6に基づいて詳細に説明する。なお、本発明の一実施の形態に係る内径測定装置が適用される既設管路として、下水管路を例にとって説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態に係る内径測定装置10の概略を説明する図である。図示のように、内径測定装置10は、本体部12を備える。本体部12は、中心体である中空円筒状の中心体14と、この中心体14を内周面において浮動回転自在に保持する中空円筒状の保持体16を備える。本実施の形態では、保持体16は、第1保持体16−1、第2保持体16−2により構成されており、第1保持体16−1及び第2保持体16−2の内周面において、中心体14がその外周面において係合保持される。
【0028】
中心体14の外周面と第1保持体16−1及び第2保持体16−2の内周面は、保持体16に対して中心体14が回転する場合または中心体14に対して保持体16が回転する場合のいずれの場合においても、摩擦抵抗が極力低減された状態で回転されるように表面加工が施されている。そして、中心体14の外周面と第1保持体16−1の内周面との間、及び、中心体14の外周面と第2保持体16−1の内周面との間には、流体、例えば潤滑油が注入されており、中心体14が、第1保持体16−1及び第2保持体16−2によって浮動回転自在に保持される。
【0029】
第1保持体16−1は中心体14の前方部分、第2保持体16−2は中心体14の後方部分に備えられ、中心体14には、その中央部分が外部に露出された露出部14eが形成される。すなわち、中心体14は、その外周面から既設下水管路である管路200の内壁200a方向に突出形成された第1フランジ部14a及び、中心体14の外周面から管路200の内壁200a方向に突出形成された段差部14b、を中心体14の同芯上に順次備えて略円柱状に板金形成されている。この第1フランジ部14aと、第1保持体16−1の外周面から管路200の内壁200a方向に突出形成された第2フランジ部16aとが当接されて、第1保持体16−1の中心体14の外周面上における管路200の延在方向への動きが規制される。また、段差部14bと、第2保持体16−2の外周面から管路200の内壁200a方向に突出形成された第3フランジ部16bとが当接されて、第2保持体16−2の中心体14の外周面上における管路200の延在方向への動きが規制される。そして、第1フランジ部14aと段差部14bとの間が外部に露出された露出部14eとして構成される。
【0030】
第1保持体16−1側の外周面上部及び第2保持体16−2側の外周面上部には、管路200内において内径測定装置10を支持する前方上部支持部30−1及び後方上部支持部30−2がそれぞれ配設されている。なお、この前方上部支持部30−1及び後方上部支持部30−2はいずれも同じ構造であり、説明の便宜上、それぞれの構成部材には、前方上部支持部30−1において付した符号と同一の符号を付している。
【0031】
第1保持体16−1には、その外周面上部において、第1保持体16−1の長尺方向に延在するガイド溝(図示しない)が形成され、このガイド溝に沿って第1保持体16−1の外周面上を往復移動するスライダ34が配備される。そして、このスライダ34を矢線Aで示す内径測定装置10の進行方向と反対方向に付勢する図示しないスプリングが、ガイド溝に取り付けられている。そして、板金形成された第1アーム32aの一端がブラケット16bに揺動自在に係合されるとともに、同じく板金形成された第2アーム32bの一端がスライダ34の上面に取り付けられたブラケット34aに揺動自在に係合されて、第1アーム32aの他端と第2アーム32bの他端とが揺動自在に連結されてリンク機構が形成される。この第1アーム32aの他端と第2アーム32bの他端との連結部分に、第1車輪36が回転自在に軸支される。これにより、第1車輪36が管路200の内壁200aに付勢状態で当接される。
【0032】
第1保持体16−1の外周面下部及び第2保持体16−2の外周面下部には、本体支持部である前方下部支持部40−1、40−2及び後方下部支持部40−3、40−4が配設されている。なお、この前方下部支持部40−1、40−2及び後方下部支持部40−3、40−4はいずれも同じ構造であり、説明の便宜上、それぞれの構成部材には、前方下部支持部40−1において付した符号と同一の符号を付している。また、前方下部支持部40−1は、上述した前方上部支持部30−1と同様のリンク機構により構成されているので、前方上部支持部30−1と異なる部分について説明する。
【0033】
前方下部支持部40−1は、第1アーム42aと第2アーム42bとが互いに揺動自在に連結され、この連結部分に、車輪軸45が取り付けられた車輪軸支持部44が軸支される。そして、この車輪軸45には、断面視で、内側面から外側面に移行するに従って漸次縮径して、管路200の内壁200aに沿うテーパ状に形成された接触面46aを有する第2車輪46が、回転自在に取り付けられる。かかる構成を有する前方下部支持部40−1の第2車輪46が、管路200の内壁200aに付勢状態で当接される。
【0034】
図2は、図1のII−II線断面図である。図示のように、本体部12の前方部分は、上記のような構成を有する前方上部支持部30−1及び前方下部支持部40−1、40−2によって3点で支持される。すなわち、前方上部支持部30−1及び前方下部支持部40−1、40−2は、本体部12に対して放射状に配設され、管路200の内壁200aの周方向の異なる位置に付勢状態で、第1転輪36及び第2転輪46が当接される。なお、本体部12の後方部分は、前方上部支持部30−1及び前方下部支持部40−1、40−2と同様の配置構成がなされた後方上部支持部30−2及び後方下部支持部40−3、40−4によって、3点で支持される。
【0035】
次に、内径測定部について説明する。内径測定部は、リンク機構で構成された腕部20−1〜20−4及び測定部24−1〜24−4を備えて形成され、中心体14と管路200の内壁200aの周方向の異なる位置との間の距離を計測して、管路200の内径を測定する。
【0036】
まず、腕部20−1〜20−4について説明する。なお、腕部20−1〜20−4はいずれも同じ構造であり、説明の便宜上、それぞれの構成部材には、腕部20−1において付した符号と同一の符号を付している。
【0037】
図1で示すように、腕部20−1は、中心体14の露出部14eに配設される。この腕部20−1は、中心体14の外周面上に取り付けられたシリンダ20d及びこのシリンダ20dに内蔵されたスプリング(図示しない)によってロッド20eを介してシリンダ20dに近接する方向に付勢されるシリンダスライダ20fを備える。このシリンダスライダ20fは、中心体14の外周面上に形成された、中心体14の長尺方向に延在するガイド溝(図示しない)に配備されているので、このガイド溝に沿ってシリンダスライダ20fが中心体14の外周面上で往復移動される。そして、このシリンダスライダ20fに、アッパアーム20aの一端がブラケット20cを介して揺動自在に軸支されるとともに、アッパアーム20aの他端に、計測ワイヤ連結ブラケット20hを介して回転部材20gが回転自在に軸支される。また、このアッパアーム20aの略中央部分にはロアアーム20bの一端が揺動自在に軸支され、ロアアーム20bの他端は、段差部14bの頂面に取り付けられた段差部ブラケット14dに揺動自在に軸支される。これにより、回転部材20gが管路200の内壁200aに付勢状態で当接される。
【0038】
図3は、図1のIII−III線断面図である。なお、図3において、後部上部支持部30−2及び後部下部支持部40−3、40−4は、図面及び説明の簡略化のため、その図示を省略する。図示のように、上記のような構成を有する腕部20−1〜20−4は、中心体14に対して放射状に配設され、管路200の内壁200aの周方向の異なる位置に付勢状態で、回転部材20gが当接される。
【0039】
次に、内径測定部の測定部24−1〜24−4について説明する。なお、測定部24−1〜24−4はいずれも同じ構造であり、説明の便宜上、それぞれの構成部材には、測定部24−1において付した符号と同一の符号を付している。
【0040】
図1で示すように、測定部24−1は、測定器24bが連結された変位計24aが、中心体14に対して拡径されて形成された密閉ケース18に収容されるとともに、この変位計24aにピストン24cを介して計測ワイヤ24dが連結される。また、測定部24は、中心体14の内周面において、本体部12の幅方向で仕切りを形成する第1隔壁26c及び第2隔壁26d、中心体14の内周面と第1隔壁26cと第2隔壁26dとにより囲まれて形成された空間を中心体14の延在方向において中心体14の上下方向に区分する第3隔壁26eによって形成されたシリンダ室を備える。
【0041】
このシリンダ室は、ピストン24cにより第1シリンダ室26a及び第2シリンダ室26bに区分され、第1シリンダ室26aが第1隔壁26cによって密閉されて加圧気体が供給されるとともに、第2シリンダ室26bが第2隔壁26dによって中心体14の内部空間と一部連通するように微小な間隙を介して外気に開放されるように形成される。そして、第1シリンダ室26a及び第2シリンダ室26bの気圧変位が測定器24bによって測定される。
【0042】
そして、計測ワイヤ24dがワイヤ送りローラ24eを介して中心体14の内部から段差部14bと中心体14の内部とを連通するワイヤ挿通孔14cに挿入されるとともに、段差部14bの頂面側から計測ワイヤ24dが引き出されて、計測ワイヤ24dが計測ワイヤ連結ブラケット22hに連結される。
【0043】
次に、重錘部50について説明する。重錘部50は、重錘50a及び本体部係合部50bを備える。重錘50aは鋳型成形された重量物であり、この重錘50aの上面には本体部係合部50bが取り付けられている。この重錘部50の本体部係合部50bが本体部12の中心体14の外周面の下部に取り付けられて、内径測定装置10または中心体14の重心位置が、内径測定装置10が管路200内に導入された状態において中心体14の回転中心軸線(図示しない)から下方向に偏位される。
【0044】
次に、本実施の形態に係る内径測定装置10を用いた管路内径測定システム(以下、単に「システム」という)60について、図4及び図5に基づいて説明する。図4は、本実施の形態に係るシステム60の概略を説明する図である。図示のように、システム60は、内径測定装置10及びこの内径測定装置10が伝送ケーブル72を介して操作盤74に接続される。また、操作盤74は電源76によって電源が供給される。そして、操作盤74にはコンピュータ70、モニタ78がケーブル72a、72bを介して順次接続される。
【0045】
図5は、本実施の形態に係るコンピュータ70の構成の概略を説明する図である。図示のように、コンピュータ70は、密閉ケース18の外側面を介して変位計24aと操作盤74とを接続する伝送ケーブル72によって計測データDが入力される入力部72a、入力部72aで入力された計測データDを処理するデータ処理手段である演算処理装置70b、処理された計測データを記憶する記憶装置70c、処理された計測データをモニタ78に出力する出力部70dを備える。そして、記憶装置70cの記憶領域には、内径測定の対象区間の設置当時の内径値である基準内径Sが予め記憶されている。なお、演算処理装置70bは、例えば中央演算処理装置(CPU)で構成され、記憶装置70cは、例えばハードディスクドライブ(HDD)で構成される。
【0046】
操作盤74、電源76、モニタ78は、コンピュータ70と同様に公知技術を適用したものであり、本発明に係る本実施の形態では特筆する事情もないので、その詳細な説明を省略する。
【0047】
次に、本実施の形態に係る内径測定装置10及びシステム60の適用について、図4及び図6に基づいて説明する。図6は、本実施の形態に係るシステム60の内径測定の工程の概略を説明する図である。図示のように、システム60による内径測定の工程は、測定工程S1、演算処理工程S2、データ表示工程S3を経ることにより実行される。
【0048】
測定工程S1では、内径測定装置10により管路200の内径が測定される。まず、図示しない移動駆動装置に内径測定装置10を連結させて、内径測定装置10を管路200内に導入配置する。このとき、腕部20−1〜20−4の回転部材22gが管路200の内壁200aに当接されるとともに、腕部20−1〜20−4が管路200の内壁200aに対して付勢される。同様に、前方上方支持部30−1と後方上部支持部30−2の第1車輪36、前方下部支持部40−1、40−2と後方下部支持部40−3、40−4の第2車輪46が管路200の内壁200aに当接されるとともに、これらの支持部を構成するリンク機構が管路200の内壁200aに対して付勢される。
【0049】
この状態において、操作盤74の操作により移動駆動装置を駆動させて、内径測定装置10を管路200の内部において矢線Bで示す進行方向に移動させる。管路200の内壁200aの表面に凹凸がある場合は、リンク機構によって構成された前方上部支持部30−1、前方下部支持部40−1及び40−2、後方上部支持部30−2、後方下部支持部40−3及び40−4が伸縮せしめられて本体部12への衝撃荷重が吸収される。また、内壁200aの表面凹凸等によって、これらの支持部によっては吸収しきれない程度の振動等が内径測定装置10に付与されると、第1保持体16−1、第2保持体16−2が内壁200aに沿って、中心体14の外周面上で浮動回転せしめられる。その一方で、中心体14は、その外周面の下部に重錘部50が取り付けられており、中心体14の重心位置が下方向に偏位されるので、第1保持体16−1、第2保持体16−2の浮動回転に対する中心体14の相対的な回転が抑制される。そして、テーパ状の接触面46aを有する前方下部支持部40−1、40−2と後方下部支持部40−3、40−4の第2車輪46が、管路200の内壁200に間隙なく接地されて、内壁200aに付与される内径測定装置10の重量荷重の反力が第2車輪46の接触面46aに垂直に付与される。
【0050】
この内径測定装置10の進行方向Bへの移動により、管路200の内径が測定される。このとき、腕部20−1〜20−4が管路200の内壁200aに対して付勢されて回転部材20gが管路200の内壁200aに当接されているので、管路200の内径が拡径すると、管路200の内径の変化に追従して、腕部20−1〜20−4が管路200の内壁200aに対して拡径方向に揺動される。腕部20−1〜20−4が拡径方向に揺動されると、計測ワイヤ24dが腕部20−1〜20−4の既設管路200の拡径方向への付勢力に追従して、本体部12の内部から引き出される。そして、管路200の内径変位により計測ワイヤ24dが引き出されるとともにピストン24cが圧縮方向に移動せしめられて第1シリンダ室26aが加圧される。そして、第1シリンダ室26aと第2シリンダ室26bとの気圧変位が測定器24bにより測定されて、中心体14の軸心から内壁200aまでの距離が測定される。この測定データDが、伝送ケーブル72を介してコンピュータ70に伝送される。
【0051】
一方で、管路200の内径が縮径すると、管路200の内径の変化に追従して、腕部20−1〜20−4が管路200の内壁200aに対して縮径方向に揺動される。腕部20−1〜20−4が縮径方向に揺動されると、計測ワイヤ24dが腕部20−1〜20−4の既設管路200の拡径方向への付勢力に抗して、本体部12の内部から引き込まれる。そして、管路200の内径変位によりピストン24cが減圧方向に移動せしめられて第1シリンダ室26aが減圧される。そして、第1シリンダ室26aと第2シリンダ室26bとの気圧変位が測定器24bにより測定されて、第1保持体14の軸心から内壁200aまでの距離が測定される。この測定データDが、伝送ケーブル72を介してコンピュータ70に伝送される。コンピュータ70に伝送された測定データDは、コンピュータ70の入力部70aによって受信される。
【0052】
このとき、腕部20−1〜20−4は、中心体14の露出部14eに配設されており、中心体14の重心位置が重錘部50により中心体14の回転中心軸線から下方向に偏位されるので、中心体14の回転が抑制される。
【0053】
演算処理工程S2では、演算処理装置74bにおいて、測定データDが記憶装置74cの記憶領域に予め記憶された基準内径Sと対比されるとともに、管路200における測定区間の内径が算出されて、測定区間ごとの測定値データR1〜Rnが生成される。また、この測定値データR1〜Rnに基づいて、表作成処理及びグラフ化処理がなされる。そして、記憶装置70cの記憶領域に測定値データR1〜Rnが記憶・集積される。
【0054】
その後、データ表示工程S3において、表作成処理及びグラフ化処理がなされた測定値データR1〜Rnが、コンピュータ70の出力部70dからモニタ78に出力されて、測定値データR1〜Rnがモニタ78に表示される。
【0055】
以上のような構成とすることにより、本体部12の中心体14の下方に重錘部50が取り付けられているので、内径が変化する管路200内を走行する場合や、表面に凹凸がある管路200内を走行する場合に、内径測定装置10に振動が付与されても中心体14の重心位置が下方に偏位されるので、中心体14の内壁200aに沿った旋回しながらの走行が抑制されて、その体勢が水平に維持される。また、本体部12の中心体14が、第1保持体16−1及び第2保持体16−1に対して浮動回転するように係合されているので、管路200の内径の変化や管路200の内壁200aの表面凹凸に対応して第1保持体16−1及び第2保持体16−2が中心体14の外周面上で浮動回転されつつ、中心体14の水平状態が維持される。更に、テーパ状の接地面46aを有する前方下部支持部40−1、40−2と後方下部支持部40−3、40−4の第2車輪46が管路200の内壁200aに間隙なく接地されて、内壁200aに付与される内径測定装置10の重量荷重の反力が第2車輪46の接地面46aに垂直に付与されるので、内径測定装置10の水平状態が維持されて管路200の内部において安定して走行させることができる。
【0056】
そして、管路200の内径の変化や管路200の内壁200aの表面凹凸に対応して、リンク機構によって構成された前方上部支持部30−1、前方下部支持部40−1及び40−2、後方上部支持部30−2、後方下部支持部40−3及び40−4が伸縮せしめられるので、内径測定装置10への衝撃荷重が吸収される。
【0057】
この結果、管路200の内径の変化や管路200の内壁200aの表面凹凸に対応しつつ内径測定装置10の水平状態が維持されて、管路200の内部において、内径測定装置10の内壁に沿った旋回しながらの走行が抑制され、腕部20−1〜20−4と管路200の内壁200aとの接触点の軌跡が、管路200の軸線に平行するので、この内径測定装置10によって管路200の正確かつ精密な内径を測定することができる。
【0058】
かかる内径測定装置10を用いて測定された管路200の内径の測定データDが、コンピュータ70に伝送されるとともにコンピュータ70の演算処理装置70bによって処理されるので、管路200の内径の測定区間ごとの正確かつ精密な測定値データR1〜Rnを得ることができる。従って、測定値データR1〜Rnを分析あるいは提供することにより、管路200の内壁200aの補修工事を行う場合に、適切な寸法の管を事前に準備することが可能となり、または、補修工事後の仕上がり具合の把握・管理を正確に行うことが可能となる。
【0059】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。上記実施の形態では、本体部12が、第1保持体16−1、第2保持体16−2によって中心体14が保持されて浮動回転自在に構成されている例を示したが、例えば、本体部12をかかる二重構造とせずに、単一のチューブや円柱体を用いて構成した場合にも適用可能である。
【0060】
また、本体部12を二重構造とせずに単一のチューブや円柱体を用いて構成する場合、本体部12の重心位置を前方下部支持部及び40−1、40−2及び後方下部支持部40−3、40−4に対して下方部位に設定できる構成であればよい。例えば、第2保持体16−1、第2保持体16−2の下部の肉厚を増大させる等によって上方部位に対して重量を増大させるとともに、第1保持体16−1に配設される前方下部支持部40−1及び40−2の肉厚を増大させる等によって前方上部支持部30−1に対して重量を増大させ、更に、第2保持体16−2に配設される後方下部支持部40−3及び40−4の肉厚を増大させる等によって、後方上部支持部30−2に対して重量を増大させて、本体部12の重心位置を本体部12の下方部位に設定することが可能となる。
【0061】
更に、本体部12を二重構造とせずに単一のチューブや円柱体を用いて構成する場合、第1保持体16−1に配設される一対の前方下部支持部40−1、40−2、及び第2保持体16−2に配設される一対の後方下部支持部40−3、40−4の本体部12における配設位置を、本体部12の周方向における離間距離を増大させることで、前方下部支持部40−1、40−2及び後方下部支持部40−3、40−4による本体部12の支持中心位置を本体部12の上方に移行させることができる。これにより、支持中心位置に対して内径測定装置10の重心位置が相対的に更に下方に偏位されて、内径測定装置10の既設管路200への導入状態における上下長の中央位置に対して、内径測定装置10の重心位置が下方に偏位されるので、内径測定装置10の内壁200aに沿った旋回しながらの走行が抑制される。
【0062】
また、上記実施の形態では、内径測定部が腕部20−1〜20−4及び測定部24−1〜24−4を備え、腕部20−1〜20−4を測定部24−1〜24−4に連結させて管路200の内径を測定及び検出する場合を例として説明したが、かかる手段に限定されない。例えば、管路200の内壁200aの周方向の異なる位置にレーザを放射させて、その反射時間を計測して管路200の内径の測定を実行する内径測定部となるレーザ発生装置を、本体部あるいは中心体に設置してもよい。また、この内径測定部は、レーザ発生装置に限定されず、超音波発生装置や電波発生装置を用いてもよい。
【0063】
また、上記実施の形態では、重錘部50が中心体14に単体で取り付けられている場合を例として説明したが、複数の重錘部50を中心体14に取り付けて重心を偏位させてもよい。
【0064】
上記実施の形態では、中心体14の外周面と第1保持体16−1の内周面との間、及び、中心体14の外周面と第2保持体16−2の内周面との間に流体が注入されている場合を例として説明したが、流体に代えて複数のボールを中心体14の外周面と第1保持体16−1の内周面との間、及び、中心体14の外周面と第2保持体16−2の内周面との間に配置して、中心体14を浮動回転させてもよい。
【0065】
また、上記実施の形態では、内径の測定データDが伝送ケーブル72を介してコンピュータ70に伝送される場合を例として説明したが、内径測定装置10に測定データDを記憶させる内蔵メモリを取り付けて、この内蔵メモリに測定データDを記憶・蓄積させるとともに、測定終了後にこの内蔵メモリから測定データDをコンピュータ70に出力させてもよい。
【0066】
更に、内径測定装置10の走行方向前方にテレビカメラを取り付けて、管路200内を撮影及び録画して、測定データDまたは測定値データR1〜Rnと照合できるようにしてもよい。これにより、実際の管路200の内部の映像と数値化された情報とによって、更に精度の高い正確な内径測定を実行することが可能となる。
【0067】
上記実施の形態では、前方上部支持部30−1、前方下部支持部40−1、40−2、後方上部支持部30−2、後方下部支持部40−3、40−4の6本が本体部12に対して放射状に配設された場合を例として説明したが、本体部12が安定して支持される本数であればこの本数に限定されることはない。同様に、腕部20−1〜20−4の4本が本体部12に対して放射状に配設された場合を例として説明したが、管路200の内径を適切に測定できる本数であればこの本数に限定されることはない。
【符号の説明】
【0068】
10 内径測定装置
12 本体部
14 中心体
16 保持体
16−1 第1保持体
16−2 第2保持体
20−1〜20−4 腕部
24−1〜24−4 測定部
30−1 前方上部支持部
30−2 後方上部支持部
40−1、40−2 前方下部支持部(本体支持部)
40−3、40−4 後方下部支持部(本体支持部)
46 第2車輪(車輪)
50 重錘部
60 管路内径測定システム
70 コンピュータ
70b 演算処理装置(データ処理手段)
70c 記憶装置
72 伝送ケーブル(データ伝送手段)
78 モニタ(データ表示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管路内に導入可能な本体部と、
該本体部を前記既設管路の内部で走行可能に支持する本体支持部と、
前記本体部に配設されて前記既設管路の内径を測定する内径測定部と、を備える内径測定装置において、
前記既設管路の内部への導入状態における前記内径測定装置の上下長の中央位置に対して前記内径測定装置の重心位置を下方へ偏位させたことを特徴とする内径測定装置。
【請求項2】
前記重心位置の偏位は、
前記既設管路内への導入状態で当該装置の下部側に位置する部材を上部側に位置する部材に対して重量を増大させて設定したことを特徴とする請求項1に記載の内径測定装置。
【請求項3】
円柱状の中心体及び、該中心体の一部を外部に露出させて浮動回転自在に保持する保持体を有する本体部と、
該本体部を前記既設管路の内部で走行可能に支持する本体支持部と、
前記中心体の露出部分に配設されて前記既設管路の内径を測定する内径測定部と、を備え、
前記中心体の重心位置を回転の中心軸から偏位させたことを特徴とする内径測定装置。
【請求項4】
前記重心位置の偏位は、
前記中心体の露出部分に重錘を取り付けて形成されたことを特徴とする請求項3に記載の内径測定装置。
【請求項5】
前記本体支持部は、
該本体支持部の端部に回転自在に軸支された車輪を備え、
該車輪は、
前記既設管路への導入状態で前記既設管路への接触面が前記既設管路の内壁に沿う形状に形成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の内径測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の内径測定装置を用いた管路内径測定システムであって、
前記内径測定装置を走行させる内径測定装置走行手段と、
前記内径測定装置の内径測定部により測定された内径の測定データを伝送するデータ伝送手段と、
該データ伝送手段により伝送された前記測定データに基づいて前記既設管路の内径の状況を把握するデータ処理手段と、
該データ処理手段により把握された前記測定データを表示するデータ表示手段と、
を備えることを特徴とする管路内径測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−13060(P2011−13060A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156535(P2009−156535)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000219358)東亜グラウト工業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】