説明

内燃機関のリーン排ガス中の窒素酸化物の選択的接触還元のための排ガス浄化装置および排ガス浄化法

本発明は窒素酸化物の選択的接触還元(SCR)のための排ガス浄化装置に関する。前記装置は選択的接触還元のための触媒活性成分(SCR成分)を有する少なくとも1個の触媒を含有する。NO貯蔵触媒(5)が排ガス浄化装置のSCR触媒(3)の上流に配置されている。選択的接触還元を実施するために、NO貯蔵触媒とSCR触媒(3)の間にアンモニアに分解できる化合物を供給する配量手段(8)が用意されている。低い排ガス温度でNO貯蔵触媒(5)が排ガスに含まれる窒素酸化物を吸着し、排ガス温度が上昇してのみ窒素酸化物を脱着し、窒素酸化物は後でSCR触媒(3)により変換することができ、SCR触媒はその後活性になる。これはそれにもかかわらず窒素酸化物の改良された変換率を生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関のリーン排ガス中の窒素酸化物の選択的接触還元(SCR)のための排ガス浄化装置に関する。
【0002】
内燃機関で燃料の燃焼の間に排ガスが形成され、排ガスは汚染物として未燃焼炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)および粒子(煤)を含有する。ディーゼルエンジンおよびリーン燃焼ガソリンエンジンにおいて窒素酸化物および粒子の除去は特別な困難を生じる。
【0003】
法律により計画される自動車からの粒子および窒素酸化物排出の減少(2007年に予定される、ヨーロッパでのEUROVおよびアメリカでのLEVII)は従って汚染物の最大排出に関する将来の限界を満たす新しい排ガス浄化装置を用意することを要求する。
【0004】
燃焼の間に発生する窒素酸化物を変換するために、過去に2つの異なる接触法が成功することが示された。1つはNOx吸着剤技術であり、エンジンのリーン運転の間に窒素酸化物がいわゆるNOx貯蔵触媒に吸着し、リッチ運転の間に脱着し、還元する。もう1つはSCR技術であり、酸素の多い排ガスに含まれる窒素酸化物がアンモニア(NH)またはアンモニアに変換できる相当する前駆物質を使用して窒素と水に選択的に還元される(SCR=選択的接触還元)。
【0005】
NOx吸着剤技術において燃料中の硫黄成分がNOx貯蔵化合物の中毒を生じ、長時間安定性も期待されるほど多く残るが、アンモニアSCR法が多くの場合に発電所排ガスから窒素酸化物を除去するための長時間の使用に耐久性があることが示された。更に現在の技術状態により、将来必要な90%までのNOx変換率がSCR技術を使用してのみ実現できることが明らかである。特に400000マイルより多く耐久性が要求される過酷な使用に耐えるトラックにおいてはSCR装置を使用することがきわめて有望である。
【0006】
アンモニアの高い毒性および揮発性により無毒前駆物質化合物、特に尿素水溶液が輸送車両の用途に有利に使用される。尿素溶液は加水分解触媒を使用してまたは直接SCR触媒上でアンモニアと二酸化炭素に加水分解する。加水分解の上流とSCR触媒の上流にそれぞれ特定の配量装置を使用して尿素溶液を排ガス流に注入する。
【0007】
この種の排ガス後処理の欠点は尿素の加水分解と一般的なSCR触媒を使用するSCR反応が160℃より高く200℃までの温度でのみ開始し、すなわち低い温度範囲のSCR触媒のライトオフ(light off)温度が160℃〜200℃であることである。この発明に使用されるように、触媒のライトオフ温度は触媒が該当する汚染物(この場合に窒素酸化物)に50%の率で変換する触媒の上流の温度に関する。
【0008】
従ってこの温度範囲より低い排ガス温度での運転状態の間に、エンジンにより発生する窒素酸化物が変化せずに排ガス浄化装置を通過し、周囲に排出される。近代的なディーゼル車においてこれはコールドスタートの後だけでなく、通常の運転の間にも低い充填での運転条件下でまたはアイドリングの場合に起きる。発明者はディーゼルエンジンがアイドリングする場合に、排ガスに含まれる窒素酸化物の約65%のみがSCR触媒で窒素と水に変換することを発見した。反対に300℃より高い温度で変換率が90%以上である。ディーゼルエンジン用排ガス浄化装置の性能を評価する場合に、アイドル運転が評価の20%を占め、かなりの改良の可能性がある。
【0009】
この事実を説明するために、ドイツ特許第10054877A1号は選択的接触還元用触媒活性成分(SCR成分)および付加的な窒素酸化物用貯蔵成分を有する触媒を含有する排ガス浄化装置をすでに記載した。
【0010】
この付加的なNOx貯蔵成分の目的はSCR触媒上で160〜200℃より低い低温で排ガスに含まれる窒素酸化物を一時的に貯蔵し、後でSCR触媒上で余分なアンモニアを使用して還元できるように、高い温度で排出することである。しかしこの解決手段は部分的にしか成功しなかった。
【0011】
本発明の課題は、技術水準に比べて低い排ガス温度で窒素酸化物の変換に関する改良された活性を有する排ガス浄化装置を提供することである。本発明の他の課題は、リーン燃焼内燃機関からの粒子の排出を同時に減少することである。更に本発明の課題は低い排ガス温度で窒素酸化物の変換率が改良された排ガス浄化法を提供することである。
【0012】
前記課題は、内燃機関のリーン排ガスが流動する、選択的接触還元のための触媒活性成分(SCR成分)を有する少なくとも1個の触媒を含有する窒素酸化物の選択的接触還元のための排ガス浄化装置により解決される。前記排ガス浄化装置はNOx貯蔵触媒がSCR触媒の上流に配置され、排ガスにアンモニアの前駆物質化合物を供給する配量手段がNOx貯蔵触媒とSCR触媒の間に配置されることを特徴とする。
【0013】
排ガス装置にSCR触媒の上流に本発明により配置されるNOx触媒は2つの機能を果たす。
【0014】
第1にエンジンのコールドスタートの後にまたはアイドリングの間になおかなり冷たい排ガスに含まれる窒素酸化物を吸着できる。これは窒素酸化物が水と窒素に変換されずになお活性でないSCR触媒を離れることを阻止する。窒素酸化物は高い温度でのみ脱着され、引き続きSCR触媒に変換できる。
【0015】
第2にNOx貯蔵触媒は排ガス中の二酸化窒素と一酸化窒素の割合を増加し、これによりSCR触媒の効率が向上する。すなわち排ガス中で二酸化窒素と一酸化窒素がほぼ1:1の容積比を有する場合に、窒素酸化物を変換するためのSCR触媒の活性がきわめて高い。エンジン運転条件に依存して、リーン混合エンジンの未処理排ガスが一酸化窒素65〜95容積%を含有し、従って最適な組成と相違する。
【0016】
有利にNOx貯蔵触媒は不活性担体に被覆の形で設置する。適当な担体は自動車の排ガスの触媒作用に一般に使用されるセラミックまたは金属からなるいわゆるハネカム担体である。本発明による排ガス浄化装置の1つの有利な構成において、NOx貯蔵触媒を被覆としてディーゼル粒子フィルターに設置する。この場合にこの装置は第3の機能、すなわち排ガスからの煤粒子の除去を果たす。ディーゼル粒子フィルターは壁流動フィルター、フォームセラミックフィルター、セラミックファイバーフィルターまたは金網フィルターとして形成することができる。これらの担体およびフィルターは自動車排ガス触媒作用の当該業者に知られている。従ってこれらの担体の詳しい説明は省略する。
【0017】
NOx貯蔵触媒は少なくとも1個の白金属金属、白金、パラジウム、ロジウムまたはイリジウムで被覆または活性化された、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または希土類金属からなる群からの元素の少なくとも1個のアルカリ金属化合物を含む。
【0018】
NOx貯蔵触媒が付加的に、少なくとも1個の白金属金属、白金、パラジウム、ロジウム、およびイリジウムで被覆された、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、またはこれらの混合酸化物からなる群からの担体酸化物をベースとする触媒活性成分を含む場合は、一酸化窒素のための触媒の酸化活性を更に高めることができる。
【0019】
NOx貯蔵触媒が白金で被覆された酸化セリウムをベースとする貯蔵成分および付加的に酸化アルミニウムをベースとする担体上の酸化触媒として白金を含有することが特に有利である。酸化セリウムをベースとする貯蔵成分が窒素酸化物を貯蔵するためのきわめて低いライトオフ温度を示し、従って本発明による排ガス浄化装置に特に適している。前記貯蔵成分は窒素酸化物を約120℃と同じほど低い温度で高い程度で貯蔵し、これより高い温度で窒素酸化物を排出し、従って窒素酸化物をSCR触媒の下流で変換することができる。
【0020】
ここで酸化セリウムを純粋な物質としてまたは有利に酸化ジルコニウムとの混合酸化物として使用することができる。混合酸化物の全質量に関して5〜30質量%の酸化ジルコニウム含量を有するセリウム/ジルコニウム混合酸化物が有利である。前記混合酸化物は、例えばディーゼルエンジンの完全な充填の運転の間にまたはフォルター再生の間に発生することがある高い熱応力に特に耐性である。混合酸化物を、例えば酸化プラセオジムでドープすることにより耐熱性の更なる増加を達成できる。
【0021】
白金の担体として使用される酸化アルミニウムは10〜400m/gの高い比表面積を有するいわゆる遷移系列の酸化アルミニウムである。酸化ランタン2〜10質量%でのこの物質のドーピングがこの物質を熱応力に対して安定にすることができる。珪酸アルミニウムの全質量に関して1〜40質量%の二酸化珪素含量を有する珪酸アルミニウムが特に適している。
【0022】
すべての種類のNOx貯蔵物質が硫黄の中毒に弱いことが知られている。これはNOとSOの化学的類似性による。硝酸塩の形成により窒素酸化物を吸着できる物質は硫酸塩の形成により硫黄酸化物で同じに処理する。原則的に後者の反応に対する類似性が高い。これは形成される硝酸塩を硫酸塩に代えることができることを意味するが、この反応は可逆的でない。この理由から標準的NOx貯蔵触媒を時々脱硫酸塩化しなければならないことは周知である。この脱硫酸塩化は高温でリッチ排ガス条件下で行うことができる。しかし例えば酸化セリウムまたは酸化セリウムと酸化ジルコニウムの混合酸化物をベースとする前記の貯蔵物質のような、特別に形成されるNOx貯蔵物質をリーン排ガス条件下で約600℃の高温で脱硫酸塩化することができる。これは以下に熱的脱硫酸塩化と呼ばれる。
【0023】
一般にディーゼル粒子トラップを周期的に加熱して蓄積された煤を燃焼しなければならない。この燃焼のために、約600〜650℃の温度が必要である。酸化セリウムまたは酸化セリウムと酸化ジルコニウムの混合酸化物をベースとする前記のNOx貯蔵触媒をフィルターに被覆する場合に、フィルター再生と並行して周期的な熱的脱硫酸塩化を達成できる。
【0024】
更にNOx貯蔵触媒を貫流ハネカムモノリスに被覆し、全部の排ガス装置が粒子フィルターを含有する場合に、フィルター再生のための温度の増加を同様にNOx貯蔵触媒の脱硫酸塩化に使用できる。
【0025】
SCR触媒のSCR成分は有利に二酸化チタンと酸化バナジウムの固体の酸系を含む。更にこの物質は酸化タングステン、酸化モリブデン、二酸化珪素、硫酸塩、およびゼオライトからなる群からの少なくとも1個の成分を含有することができ、ゼオライトは酸性H形で存在できるかまたは金属イオンと交換することができる。しかしSCR触媒は完全にゼオライトからなっていてもよく、その際ゼオライトは酸性H形で存在するかまたは交換能力の中で金属イオン、特に鉄および銅と交換されている。
【0026】
ディーゼル粒子フィルターをNOx貯蔵触媒の担体として使用する場合は、時々煤を焼き払うことによりフィルターの再生を容易にするために、ディーゼル煤の発火温度を低下する触媒に成分を添加することが有利である。適当な物質は例えばドイツ特許第3141713A1号およびドイツ特許第32322792A1号から知られている。これらは例えば酸化リチウム、塩化銅、酸化バナジウム/アルカリ酸化物組合せ、バナジン酸リチウム、ナトリウム、カリウム、またはセリウムまたはこれらの混合物のような物質である。発火温度を低下するために、すでに貯蔵成分として使用される酸化セリウムも十分に適している。
【0027】
1つの有利な実施態様において、ディーゼル粒子フィルターとして、入口側にディーゼル排出粒子の発火温度を低下するために、純粋な酸化セリウムから形成される被膜が備えられ、出口側にセリウム/ジルコニウム混合酸化物上の白金および酸化ランタン4質量%で安定化されたγ−酸化アルミニウム上の白金の混合物から形成される被膜を有するいわゆる壁流動フィルターを使用する。
【0028】
排ガスへのアンモニアの添加の間に、過剰の配量、従って周囲へのアンモニアの好ましくない排出が起きることがある。これが発生することを避けるために、いわゆるアンモニア保護触媒、すなわち過剰のアンモニアを酸化する酸化触媒をSCR触媒の下流に配置することができる。
【0029】
選択的接触還元に必要なアンモニアを、有利に尿素溶液の形で排ガスに添加するが、アンモニアに容易に分解可能な他の前駆化合物が可能である。尿素のアンモニアおよび二酸化炭素への分解を容易にするために、いわゆる加水分解触媒をSCR触媒の上流に備えることができる。
【0030】
本発明を図1〜4および比較例および実施例により説明する。
【0031】
図1は排ガス浄化装置の基本構造を示す。
【0032】
図2は付加的な加水分解触媒およびアンモニア保護触媒を有する排ガス浄化装置を示す。
【0033】
図3はSCR触媒および上流酸化触媒を有する排ガス浄化装置での窒素酸化物排出の試験結果を示す。
【0034】
図4はSCR触媒および上流ディーゼル粒子フィルターを有し、前記フィルターに酸化触媒とNOx貯蔵触媒が被覆されている排ガス状浄化装置での窒素酸化物排出を示す。
【0035】
図1は本発明による排ガス浄化装置1の基本構造を示す図である。前記装置はコンバーターハウジング2内にSCR触媒3を含む。SCR触媒の上流にコンバーターハウジング4内に触媒5が備えられている。排ガスにアンモニアまたはアンモニアに分解可能な化合物を供給するための配量手段8は2つのコンバーターハウジングの間に配置されている。図1における配量手段は当業者に知られた配量手段を説明するために簡単な供給管としてのみ示される。
【0036】
触媒5は活性成分として酸化触媒とNOx貯蔵触媒を含む。これらの活性成分は有効なハネカム担体上のおよびディーゼル粒子フィルター上の被膜の形で設けることができる。
【0037】
図2は本発明の排ガス浄化装置の別の実施態様を示す。起こりうる過剰配量の間のアンモニアの排出を安全に避けるために、SCR触媒3の下流にアンモニア保護触媒7が備えられている。保護触媒は一般的な酸化触媒であり、その活性成分は白金/アルミニウム酸化物(白金で被覆されている、すなわち活性化されている酸化アルミニウム)により形成することができる。更に尿素をアンモニアに加水分解可能な加水分解触媒6がSCR触媒の上流に配置されている。3つのすべての触媒6,3および7は有利に1つのコンバーターハウジング2内に蓄積される。
【0038】
図1および2による排ガス装置の実施態様において、前記の酸化セリウムまたは酸化セリウムと酸化ジルコニウムの混合酸化物をベースとするNOx貯蔵触媒を使用することが最も有利である。引き続き排ガス装置を以下のように運転することができる。
【0039】
内燃機関のリーン排ガスをまずNOx貯蔵触媒に、引き続き選択的接触還元用SCR触媒に供給し、その際NOx貯蔵触媒とSCR触媒の間でアンモニアに分解可能な化合物を排ガスに供給する。内燃機関は連続的にリーン空気/燃料混合物を使用して運転することができる。排ガスに含まれる窒素酸化物は低い排ガス温度でNOx貯蔵触媒により貯蔵され、窒素酸化物が排ガス温度を上昇して徐々に排出される。約300℃より高い温度でほとんどすべての貯蔵された窒素酸化物が排出される。排出された窒素酸化物を引き続き下流SCR触媒で窒素と水に変換する。内燃機関に供給される空気/燃料混合物のリッチ空気/燃料混合物への周期的な変化は必要でない。
【0040】
触媒の窒素酸化物貯蔵能力はすでに記載された硫黄中毒により徐々に低下する。リーン排ガス条件下で時々排ガス温度を約600℃まで高めることにより最初の貯蔵能力を再び設定することができる。内燃機関の排ガス温度を高める手段は当業者に知られている。これは排ガス組成が純粋な酸化のままであるように行うことができる。
【0041】
排ガス装置が更にディーゼル粒子フィルターを有する場合は、前記工程のきわめて有利な変形が生じる。フィルターに集められたディーゼル煤を時々燃焼することにより粒子フィルターを再生しなければならない。これは純粋な酸化条件を維持しながら排ガス温度をディーゼル煤の発火温度に高めることにより行う。この発火温度はNOx貯蔵触媒を脱硫酸塩化するために十分である。従ってフィルター再生とNOx貯蔵触媒の脱硫酸塩化を並行して行う。NOx貯蔵触媒は粒子フィルターが再生される時はいつも自動的に脱硫酸塩化される。
【0042】
NOx貯蔵触媒が粒子フィルター自体に被覆される場合に最も有利な方法が生じる。
【0043】
比較例
技術水準による4.2リットルディーゼルエンジン用排ガス浄化装置はプレ触媒およびSCR触媒を使用して形成された。
【0044】
プレ触媒はEP0920913A1号の例1に示されるディーゼル酸化触媒(DAYゼオライトと混合した珪酸アルミニウム上のPt)であり、容積2リットルおよびセル密度62cm−2を有する金属製、貫流型ハネカム担体上の被膜の形で被覆されていた。被膜濃度は200g/ハネカム容積lであり、白金濃度は3.2g/ハネカム容積l(90g/ft)であった。
【0045】
SCR触媒は鉄交換ZSMSゼオライト触媒であり、容積4.6リットルおよびセル密度62cm−2を有する金属製ハネカム担体上の被膜の形で被覆されていた。
【0046】
図3はいわゆるESC(European Stationary Cycle)試験サイクル中のディーゼルエンジンからのこの装置および排ガス浄化装置の排出を示す。この試験サイクルは過酷な使用に耐えるディーゼルエンジンの排出の証明のために特別に開発され、全部で1680秒の持続時間で全部で13個の異なる充填状態を含む。
【0047】
図3の曲線(a)はディーゼルエンジンの窒素酸化物未処理排出を示す。曲線(b)はSCR触媒の下流の生じるNOx排出を示す。77.6%の持続時間にわたる。
【0048】
実施例
比較例に記載された排ガス浄化装置のプレ触媒の被膜の代わりに白金活性化セリウム/ジルコニウム混合酸化物(酸化セリウム80質量%、酸化ジルコニウム20質量%)から形成される被膜を使用した。被膜濃度は200g/lであり、白金濃度は2.65g/ハネカム容積l(75g/ft)であった。ここでセリウム/ジルコニウム混合酸化物は貯蔵触媒のNOx貯蔵成分を形成した。
【0049】
図4はESC試験サイクル実施中のこの装置で測定された排出を示す。全サイクルにわたる平均として窒素酸化物変換率は約86%であり、技術水準による排ガス浄化装置より明らかに高い。
【0050】
図3および図4の2つのプロットの比較は技術水準による排ガス浄化装置において試験サイクルの開始時にアイドリング期間中にかなり高い窒素酸化物排出が生じることを示す。これに対して本発明による排ガス浄化装置は、使用されるNOx貯蔵物質がすでにかなり低い排ガス温度で窒素酸化物を吸着するので、最初の240秒中にのみ低い窒素酸化物排出を示す。しかしながら充填を増加して、脱着温度を通過した後にかなり強い脱着ピークが生じる。しかし全試験サイクルにわたる平均として、排ガス浄化装置は窒素酸化物変換率の実質的な改良を生じる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のガス浄化装置の基本構造を示す図である。
【図2】付加的な加水分解触媒およびアンモニア保護触媒を有する排ガス浄化装置を示す図である。
【図3】SCR触媒および上流酸化触媒を有する排ガス浄化装置での窒素酸化物排出の試験結果を示す図である。
【図4】SCR触媒および上流ディーゼル粒子フィルターを有し、前記フィルターに酸化触媒とNOx貯蔵触媒が被覆されている排ガス状浄化装置での窒素酸化物排出を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物の選択的接触還元のための排ガス浄化装置であり、前記装置は選択的接触還元のための触媒活性成分(SCR成分)を有する少なくとも1個の触媒を含み、前記装置を内燃機関のリーン排ガスが流動する排ガス浄化装置において、SCR触媒の上流にNOx貯蔵触媒が配置され、排ガスにアンモニアの前駆化合物を供給する配量手段がNOx貯蔵触媒とSCR触媒の間に配置されていることを特徴とする窒素酸化物の選択的接触還元のための排ガス浄化装置。
【請求項2】
NOx貯蔵触媒がディーゼル粒子フィルターの上に被覆される請求項1記載の装置。
【請求項3】
ディーゼル粒子フィルターが壁流動フィルター、フォームセラミックフィルター、セラミックファイバーフィルターまたは金網フィルターである請求項2記載の装置。
【請求項4】
NOx貯蔵触媒がアルカリ金属、アルカリ土類金属、または希土類元素からなる群からの元素の少なくとも1個の化合物を含み、少なくとも1個の白金族金属、白金、パラジウム、ロジウムまたはイリジウムで活性化されている請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
NOx貯蔵触媒が付加的に酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、またはこれらの混合酸化物からなる群からの担体酸化物をベースとする触媒活性成分を含み、前記成分が少なくとも1個の白金族金属、白金、パラジウム、ロジウムおよびイリジウムで被覆されている請求項4記載の装置。
【請求項6】
窒素酸化物を貯蔵するために、NOx貯蔵触媒が酸化セリウムをベースとする貯蔵成分を含み、前記成分が白金で被覆され、および付加的に酸化アルミニウムをベースとする酸化触媒を含み、酸化触媒が白金で被覆されている請求項5記載の装置。
【請求項7】
SCR成分が二酸化チタンおよび酸化バナジウムの固体酸系を含む請求項1記載の装置。
【請求項8】
固体酸系が酸化タングステン、酸化モリブデン、二酸化珪素、流酸塩およびゼオライトぁらなる群からの少なくとも1個の成分を含み、ゼオライトが酸性H形の形で存在するか、または交換能力内で金属イオンと交換されていてもよい請求項7記載の装置。
【請求項9】
SCR成分が少なくとも1個のゼオライトを含み、ゼオライトが酸性H形で存在するかまたは交換能力内で金属イオンと交換されている請求項8記載の装置。
【請求項10】
ディーゼル粒子フィルターがNOx貯蔵触媒のほかに、ディーゼル煤の発火温度を低下する触媒活性成分を含む請求項3記載の装置。
【請求項11】
過剰のアンモニアを酸化するための酸化触媒がSCR触媒の下流に配置されている請求項1記載の装置。
【請求項12】
アンモニアに分解可能な前駆化合物を加水分解するための加水分解触媒がアンモニアの配量手段とSCR触媒の間に挿入されている請求項11記載の装置。
【請求項13】
アンモニアを使用する選択的接触還元により内燃機関のリーン排ガスから窒素酸化物を除去する方法において、内燃機関をリーン空気/燃料混合物を使用して連続的に運転し、得られたリーン排ガスを、まずNOx貯蔵触媒に、引き続き選択的接触還元のためのSCR触媒に供給し、アンモニアに分解可能な化合物をNOx貯蔵触媒とSCR触媒の間で排ガスに供給することを特徴とするリーン排ガスから窒素酸化物を除去する方法。
【請求項14】
NOx貯蔵触媒が酸化セリウムまたは酸化セリウムと酸化ジルコニウムの混合酸化物をベースとする請求項13記載の方法。
【請求項15】
排ガス装置が更にディーゼル粒子フィルターを含有し、前記フィルターが排ガス温度をフィルターに集められるディーゼル煤の発火温度に時々高めることにより再生され、同時にNOx貯蔵触媒が自動的に脱硫酸塩化する請求項14記載の方法。
【請求項16】
NOx貯蔵触媒がディーゼル粒子フィルターに被覆され、前記フィルターが排ガス温度をフィルターに集められるディーゼル煤の発火温度に時々高めることにより再生され、同時にNOx貯蔵触媒が自動的に脱硫酸塩化する請求項15記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−519332(P2006−519332A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501965(P2006−501965)
【出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/001945
【国際公開番号】WO2004/076829
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4、D−63457 Hanau、Germany
【Fターム(参考)】