内燃機関の排ガス浄化装置
【課題】加速時にNOxの排出量を低減する。
【解決手段】下流側空燃比センサ57の出力値Voxsに基づいて下流側空燃比センサに到達している排ガスの空燃比がリッチ空燃比であるか否かを判定するとともに、機関10の運転状態が加速運転状態であるか否かを判定する。そして、排ガス浄化装置は、下流側空燃比センサに到達している排ガスの空燃比がリッチ空燃比であり且つ機関の運転状態が加速運転状態である場合、冷却水ポンプ44bを回転させることにより冷却水を触媒冷却部44aに供給し、触媒43の後方部(下流側)を冷却する。これにより、触媒後方部の酸素吸蔵能力が低下するので、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比であるときに触媒43の下流に酸素が早期に漏れ出す。従って、加速時において機関の空燃比をリッチ空燃比へと早期に切り替えることができるので、NOxの排出量を低減できる。
【解決手段】下流側空燃比センサ57の出力値Voxsに基づいて下流側空燃比センサに到達している排ガスの空燃比がリッチ空燃比であるか否かを判定するとともに、機関10の運転状態が加速運転状態であるか否かを判定する。そして、排ガス浄化装置は、下流側空燃比センサに到達している排ガスの空燃比がリッチ空燃比であり且つ機関の運転状態が加速運転状態である場合、冷却水ポンプ44bを回転させることにより冷却水を触媒冷却部44aに供給し、触媒43の後方部(下流側)を冷却する。これにより、触媒後方部の酸素吸蔵能力が低下するので、触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比であるときに触媒43の下流に酸素が早期に漏れ出す。従って、加速時において機関の空燃比をリッチ空燃比へと早期に切り替えることができるので、NOxの排出量を低減できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気通路に酸素吸蔵機能を有する触媒を備えた内燃機関の排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関の排気通路に配設された酸素吸蔵機能(酸素吸蔵放出機能)を有する触媒(三元触媒)と、その触媒の下流側に配設された空燃比センサ(下流側空燃比センサ)と、を備え、その空燃比センサの出力値に基いて機関に供給される混合気の空燃比(機関の空燃比)を制御する空燃比制御装置(排ガス浄化装置)が広く知られている。触媒は酸素吸蔵機能を有するので、多量の未燃物を「吸蔵しておいた酸素」により浄化することができる(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−189399号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、触媒が酸素吸蔵機能を有するが故に、特に、機関の加速時等において却ってNOxの排出量が増大する場合がある。そのような状況について「後に詳細に説明する図9のタイムチャート」を参照しながら具体的に述べると、例えば、下流側空燃比センサの出力値が理論空燃比よりもリッチな空燃比(以下、単に「リッチ空燃比」とも称呼する。)に対応する値である場合、従来装置は機関の空燃比を理論空燃比よりもリーンな空燃比(以下、単に「リーン空燃比」と称呼する。)に制御する(図9の時刻t0以降を参照。)。
【0005】
ところが、下流側空燃比センサの出力値は「機関の空燃比がリーン空燃比に制御され始めた時点」から所定の時間が経過しなければ「リーン空燃比に相当する値」へと変化しない。これは、機関から排出された排ガスが下流側空燃比センサに到達するには不可避的な時間(ガス輸送遅れ時間Td)が必要であること、及び、酸素吸蔵機能によって触媒が過剰な酸素を吸蔵するために触媒の下流に酸素が流出し難いので下流側空燃比センサの出力値はリッチ空燃比に相当する値を示し続けること、等に基づく。
【0006】
このため、下流側空燃比センサの出力値がリッチ空燃比に相当する値であって機関の空燃比がリーン空燃比に制御されているときに、機関の運転状態が加速運転状態となることにより吸入空気量(従って、排ガス量)が急激に増大すると、触媒上流の排気通路内に過剰な酸素及びNOxが大量に存在する状態となる(図9の破線L2を参照。)。その後、触媒には過剰な酸素が流入し続けるので、触媒の酸素吸蔵量は最大酸素吸蔵量(触媒が吸蔵できる酸素の量の最大値)Cmaxの近傍値に到達し、触媒は新たに触媒に流入する酸素を吸蔵しきれなくなる。よって、触媒の下流に酸素が流出するので、下流側空燃比センサの出力値はリーン空燃比に相当する値へと変化する(図9の時刻t5を参照。)。
【0007】
この時点(図9の時刻t5)まで、機関の空燃比はリーン空燃比に制御されていて、且つ、吸入空気量が増大しているから、触媒上流の排気通路内にはNOxが大量に存在している(図9の値N1を参照。)。よって、その触媒上流の排気通路内のNOxが「NOxを浄化できない状態となっている触媒(酸素吸蔵量が略最大酸素吸蔵量Cmaxに到達している触媒)」に流入するので、NOxの排出量が増大するという問題(即ち、触媒が酸素吸蔵機能を有するがために却ってエミッションが悪化するという問題)が生じる。
【0008】
本発明は上記課題に対処するために為されたものであって、その目的の一つは、触媒の下流側の部位である触媒後方部を冷却することによって酸素を触媒の下流に早期に流出させ、以って、NOxの排出量を低減することが可能な内燃機関の排ガス浄化装置を提供することにある。
【0009】
本発明による内燃機関の排ガス浄化装置(以下、単に「本発明装置」とも称呼する。)は、
前記機関の排気通路に配設された酸素吸蔵機能を備える触媒と、
前記排気通路の前記触媒の下流に配設された空燃比センサと、
前記空燃比センサの出力値に基いて前記機関に供給される混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段と、
前記触媒の下流側の部位である触媒後方部を冷却する触媒冷却手段(触媒の上流側の部位である触媒前方部を冷却することなく触媒後方部を冷却する触媒冷却手段、又は、触媒後方部を触媒前方部に比べてより高い冷却効率にて冷却する触媒冷却手段)と、
を備える。
【0010】
これによれば、触媒前方部は相対的に冷却されることなく触媒後方部が相対的に冷却されるので、触媒後方部の酸素吸蔵能力(単位体積あたりに吸蔵できる酸素量)が触媒前方部の酸素吸蔵能力よりも低下する。従って、触媒に流入するガス(触媒流入ガス)の空燃比がリーン空燃比である場合(即ち、触媒に過剰な酸素が流入している場合)、触媒前方部の酸素吸蔵量が触媒前方部の最大酸素吸蔵量に実質的に到達した後、触媒に所定量の酸素が流入したとき、触媒後方部はもはや酸素を吸蔵することができない。
【0011】
それ故、触媒後方部を冷却しない場合に比較して、触媒の下流に酸素が早期に流出するので、下流側空燃比センサの出力値はリーン空燃比に相当する値へと早期に変化する(図9の時刻t4を参照。)。従って、触媒後方部を冷却しない場合に比較して、より早いタイミングにて機関の空燃比はリッチ空燃比へと切り替えられる。これにより、「触媒によって浄化されることのないNOx」を含むガスが機関から排気通路へと排出される時間を短くすることができる。特に、加速時等においては、排気通路へと排出されるNOxの量をより減少させることができる(図9の値N2を参照。)。この結果、本発明装置は、NOxの排出量を低減することができる。
【0012】
本発明装置の態様において、前記触媒冷却手段は、指示信号に応答して前記触媒後方部を冷却する状態と前記触媒後方部を冷却しない状態との何れかの状態を実現するように構成されている。この態様の排ガス浄化装置は、更に、前記触媒の温度を取得するとともに前記取得された触媒の温度が所定の閾値温度以上であるか否かを判定し、前記触媒の温度が前記閾値温度以上であると判定した場合に前記触媒冷却手段により前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を前記触媒冷却手段に送出する触媒冷却制御手段を備える。
【0013】
機関冷間時には機関から未燃物が多量に排出される。更に、機関冷間時には触媒の温度も低いので、触媒の貴金属の活性度及び触媒全体の酸素吸蔵能力は機関暖機後に比較して低い。従って、触媒の温度が閾値温度以下となるような機関冷間時に触媒後方部が冷却されると、多量の未燃物が排出される虞がある。これに対し、上記構成によれば、触媒の温度が閾値温度未満である場合(即ち、触媒の貴金属の活性度及び酸素吸蔵能力が低い場合)には触媒後方部は冷却されないので、触媒全体として多くの未燃物を浄化する能力を確保することができる。この結果、機関冷間時における未燃物の排出量が増大することを回避することができるとともに、機関暖機後におけるNOxの排出量を低減することができる。
【0014】
更に、本発明装置の態様において、
前記空燃比制御手段は、前記空燃比センサの出力値に基いて前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ空燃比であるか又は理論空燃比よりもリーンなリーン空燃比であるかを判定するように構成される。更に、前記空燃比制御手段は、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リーン空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リッチ空燃比に設定し、且つ、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リーン空燃比に設定するように構成される。
【0015】
加えて、本発明装置の態様は、前記機関の運転状態が加速運転状態にあるか否かを判定するとともに前記機関の運転状態が加速運転状態にあると判定した場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出する触媒冷却制御手段を備える。
【0016】
これによれば、機関の運転状態が加速運転状態へと移行した場合(即ち、機関の空燃比を早期にリッチ空燃比に変更しないと多量のNOxが機関から排出され、その結果、多量のNOxが触媒から流出してしまう可能性が高い場合)、触媒後方部が冷却される。従って、触媒から酸素が早期に漏れ出すので、機関の空燃比をリッチ空燃比へと早期に切り替えることが可能となる。この結果、定常運転時においては触媒後方部が冷却されないので触媒が高い酸素吸蔵能力を維持し、以って、エミッションを良好に維持することができ、且つ、加速運転時にはNOxの排出量を低減することができる。
【0017】
加えて、本発明装置の態様は、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリッチ空燃比であると判定される場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出する触媒冷却制御手段を備える。
【0018】
前記空燃比制御手段によれば、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリッチ空燃比であると判定される場合には機関の空燃比はリーン空燃比に設定される。更に、前記空燃比制御手段によれば、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリーン空燃比であると判定される場合には機関の空燃比はリッチ空燃比に設定される。従って、上記構成のように、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリッチ空燃比であると判定される場合には触媒後方部を冷却することによって酸素を触媒から早期に漏れ出させ、それにより前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリーン空燃比であると早期に判定させることにより、機関から排出され且つ触媒が浄化できないNOxの量を低減することができる。更に、この態様によれば、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリッチ空燃比であると判定される場合に機関の運転状態が加速運転状態になったとき、仮に加速運転状態であるとの判別が遅れた場合であっても、酸素を触媒から早期に漏れ出させることができる。よって、加速時に急増するNOxの排出量を有効に低減することができる。
【0019】
更に、本発明装置の態様は、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリッチ空燃比であり且つ前記機関の運転状態が加速運転状態にあると判定したとき、前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出する触媒冷却制御手段を備える。
【0020】
これによれば、上述したように、触媒後方部を冷却しなければ「機関から排出され且つ触媒が浄化できないNOxの量」が著しく増大する場合において、触媒後方部が冷却される。その結果、NOxの排出量を低減することができる。加えて、定常運転時或いは前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリーン空燃比である場合、触媒後方部は冷却されないので、そのような場合において触媒は大きな酸素吸蔵量を利用してエミッションを良好に維持することができる。
【0021】
加えて、上述した何れかの触媒冷却制御手段は、
前記触媒の上流側の部位である触媒前方部と前記触媒後方部との間の触媒の温度を検出する触媒温度センサを含むとともに、前記触媒温度センサにより検出される触媒の温度の変化率が所定の閾値変化率以上となったか否かを判定し、前記検出される触媒の温度の変化率が前記閾値変化率以上となったと判定したときに前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させる指示信号を送出することを許容するように構成され得る。
【0022】
発明者は、実験により、触媒内において酸素が活発に吸蔵されている部分の温度は、他の部分の温度よりも高くなることを見出した(後に詳述する図18を参照。)。従って、上記構成のように、触媒の前後方向の略中央部に備えられた触媒温度センサにより検出される温度の変化率が大きくなった場合、触媒の上流端から触媒の略中央部までの領域において触媒は酸素を吸蔵しきっていると考えることができる。それ故、触媒温度センサにより検出される温度の変化率が大きくなったときに触媒後方部の冷却を開始することにより、触媒前方部の酸素吸蔵能力を最大限発揮させ(即ち、触媒前方部においてNOxを最大限浄化させ)、且つ、触媒の下流に酸素を早期に漏れ出させることができる。この結果、NOxの排出量をより低減することができる。
【0023】
本発明装置の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明装置の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の各実施形態に係る排ガス浄化装置が適用される内燃機関の概略図である。
【図2】図2は、排ガスの空燃比と図1に示した上流側空燃比センサの出力値との関係を示したグラフである。
【図3】図3は、排ガスの空燃比と図1に示した下流側空燃比センサの出力値との関係を示したグラフである。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態に係る排ガス浄化装置(第1装置)のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図5】図5は、第1装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図6】図6は、第1装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図7】図7は、第1装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図8】図8は、第1装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図9】図9は、第1装置の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図10】図10は、本発明の第2実施形態に係る排ガス浄化装置(第2装置)のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図11】図11は、第2装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図12】図12は、第2装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図13】図13は、第2装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図14】図14は、本発明の第3実施形態に係る内燃機関の排ガス浄化装置(第3装置)のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図15】図15は、第3装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図16】図16は、本発明の第4実施形態に係る内燃機関の排ガス浄化装置(第4装置)のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図17】図17は、第4装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図18】図18は、本発明の第5実施形態に係る排ガス浄化装置(第5装置)の作動原理を説明するためのタイムチャートである。
【図19】図19は、第5装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図20】図20は、本発明の変形例に係る触媒の構成を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の各実施形態に係る内燃機関の排ガス浄化装置(以下、単に「装置」とも称呼する。)について図面を参照しながら説明する。この装置は、内燃機関の燃料噴射量制御装置でもあり、内燃機関の空燃比制御装置でもある。
【0026】
<第1実施形態>
(構成)
図1は、第1実施形態に係る排ガス浄化装置(以下、「第1装置」とも称呼する。)を、4サイクル・火花点火式・多気筒(直列4気筒)・内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。
【0027】
内燃機関10は、機関本体部20と、吸気系統30と、排気系統40と、を含む。
【0028】
機関本体部20は、シリンダブロック部及びシリンダヘッド部を含む。機関本体部20は、複数の気筒(燃焼室)21を備えている。各気筒は、図示しない「吸気ポート及び排気ポート」と連通している。吸気ポートと燃焼室21との連通部は図示しない吸気弁により開閉される。排気ポートと燃焼室21との連通部は図示しない排気弁により開閉される。各燃焼室21には図示しない点火プラグが配設されている。点火プラグは、図示しない「イグナイタ及びイグニッションコイル」と接続されている。
【0029】
吸気系統30は、インテークマニホールド31、吸気管32、複数の燃料噴射弁33、及び、スロットル弁34を備えている。
【0030】
インテークマニホールド31は、複数の枝部31aとサージタンク31bとを備えている。複数の枝部31aのそれぞれの一端は、複数の吸気ポートのそれぞれに接続されている。複数の枝部31aの他端はサージタンク31bに接続されている。
【0031】
吸気管32の一端はサージタンク31bに接続されている。吸気管32の他端には図示しないエアフィルタが配設されている。
【0032】
燃料噴射弁33は、一つの気筒(燃焼室)21に対して一つずつ配設されている。燃料噴射弁33は吸気ポートに設けられている。即ち、複数の気筒のそれぞれは、他の気筒とは独立して燃料供給を行う燃料噴射弁33を備えている。燃料噴射弁33は、噴射指示信号に応答し、正常である場合に「その噴射指示信号に含まれる指示燃料噴射量の燃料」を吸気ポート(従って、燃料噴射弁33に対応する気筒)内に噴射するようになっている。
【0033】
より具体的に述べると、燃料噴射弁33は、指示燃料噴射量に応じた時間だけ開弁する。燃料噴射弁33に供給されている燃料の圧力は、その燃料の圧力と吸気ポート内の圧力との差圧が一定になるように図示しないプレッシャレギュレータにより制御されている。従って、燃料噴射弁33は指示燃料噴射量と等量の燃料を噴射する。
【0034】
スロットル弁34は、吸気管32内に回動可能に配設されている。スロットル弁34は、吸気通路の開口断面積を可変とするようになっている。スロットル弁34は、図示しないスロットル弁アクチュエータにより吸気管32内で回転駆動されるようになっている。
【0035】
排気系統40は、エキゾーストマニホールド41、エキゾーストパイプ42、エキゾーストパイプ42に配設された上流側触媒43、触媒冷却装置44、及び、上流側触媒43よりも下流においてエキゾーストパイプ42に配設された「図示しない下流側触媒」を備えている。
【0036】
エキゾーストマニホールド41は、複数の枝部41aと集合部41bとを備えている。複数の枝部41aのそれぞれの一端は、複数の排気ポートのそれぞれに接続されている。複数の枝部41aのそれぞれの他端は集合部41bに集合している。この集合部41bは、複数(2以上であり、本例では4つ)の気筒から排出された排ガスが集合する部分であるから、排気集合部HKとも称呼される。
【0037】
エキゾーストパイプ42は集合部41bに接続されている。排気ポート、エキゾーストマニホールド41及びエキゾーストパイプ42は、排気通路を構成している。
【0038】
上流側触媒43は、セラミックの一種であるコージェライトからなり且つアルミナのコート層によりコーティングされた担持体を備え、その担持体に「白金、ロジウム及びパラジウム等」の貴金属(触媒物質)からなる活性成分を担持する三元触媒装置(排気浄化用の触媒)である。触媒43は、触媒43に流入するガス(触媒流入ガス)の空燃比が「三元触媒のウインドウ内の空燃比(例えば、理論空燃比)」であるとき、HC,CO,H2などの未燃成分を酸化するとともに窒素酸化物(NOx)を還元する機能を有する。この機能は触媒機能とも称呼される。更に、触媒43は、触媒43に流入する(過剰な)酸素を吸蔵する酸素吸蔵機能(酸素吸蔵放出機能)を有する。触媒43は、触媒43に流入するガスが過剰な未燃物を含んでいるとき、吸蔵している酸素を放出してその未燃物を浄化する。従って、この酸素吸蔵機能により空燃比が理論空燃比から偏移したとしても未燃成分及び窒素酸化物を浄化することができる。つまり、酸素吸蔵機能により、ウインドウの幅が拡大する。酸素吸蔵機能は、担持体に担持されているセリア(CeO2)等の酸素吸蔵材によってもたらされる。
【0039】
触媒冷却装置(触媒冷却手段)44は、触媒冷却部44a、冷却水ポンプ44b、放熱部44c及び冷却管44dを備えている。触媒冷却部44a、冷却水ポンプ44b及び冷却部44cは冷却管44dにより接続されている。
【0040】
触媒冷却部44aは、触媒後方部の周囲を取り囲むように配設されている。触媒後方部は、上流側触媒43の一部であって、上流側触媒43を流れる排ガスの流れ方向において上流側触媒43の略中央部よりも下流側の部位である。触媒冷却部44aは、その内部に冷却管44dを備えていて、冷却管44dを流れる冷却水(冷媒)により触媒後方部を冷却するようになっている。
【0041】
冷却水ポンプ44bは、電動ポンプであって、電気制御装置70から供給される指示信号に応答して回転及び停止する。冷却水ポンプ44bは、回転することにより冷却管44d内の冷却水を触媒冷却部44aに向けて圧送するようになっている。
【0042】
放熱部44cは、冷却管44d内の冷却水と大気との間で熱交換を行わせることにより、冷却水の温度を低下させるようになっている。
【0043】
このように構成された冷却装置44は、電気制御装置70からの指示信号に応答して触媒後方部を冷却する状態(冷却水ポンプ44bが回転される状態)と前記触媒後方部を冷却しない状態(冷却水ポンプ44bの回転が停止される状態)との何れかの状態を実現するように構成されている。
【0044】
図示しない下流側触媒は、上流側触媒43と同様の三元触媒装置である。なお、本明細書において、「触媒」は特に断りのない限り上流側触媒43を指す。
【0045】
このシステムは、熱線式エアフローメータ51、スロットルポジションセンサ52、水温センサ53、クランクポジションセンサ54、インテークカムポジションセンサ55、上流側空燃比センサ56、下流側空燃比センサ57、触媒温度センサ(触媒中央部触媒床温センサ)58、及び、アクセル開度センサ59、を備えている。
【0046】
エアフローメータ51は、吸気管32内を流れる吸入空気の質量流量(吸入空気流量)Gaに応じた信号を出力するようになっている。即ち、吸入空気量Gaは、単位時間あたりに機関10に吸入される吸入空気量を表す。
【0047】
スロットルポジションセンサ52は、スロットル弁34の開度(スロットル弁開度)を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。
【0048】
水温センサ53は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。冷却水温THWは、機関10の暖機状態(機関10の温度)を表すパラメータである。
【0049】
クランクポジションセンサ54は、クランク軸が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに同クランク軸が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号は、後述する電気制御装置70によって機関回転速度NEに変換される。
【0050】
インテークカムポジションセンサ55は、インテークカムシャフトが所定角度から90度、次いで90度、更に180度回転する毎に一つのパルスを出力するようになっている。後述する電気制御装置70は、クランクポジションセンサ54及びインテークカムポジションセンサ55からの信号に基づいて、基準気筒(例えば第1気筒)の圧縮上死点を基準とした絶対クランク角度CAを取得するようになっている。この絶対クランク角度CAは、基準気筒の圧縮上死点において「0°クランク角度」に設定され、クランク軸の回転角度に応じて720°クランク角度まで増大し、その時点にて再び0°クランク角度に設定される。
【0051】
上流側空燃比センサ56は、エキゾーストマニホールド41の集合部41b(排気集合部HK)と上流側触媒43との間の位置において「エキゾーストマニホールド41及びエキゾーストパイプ42の何れか」に配設されている。
【0052】
上流側空燃比センサ56は、例えば、特開平11−72473号公報、特開2000−65782号公報及び特開2004−69547号公報等に開示された「拡散抵抗層を備える限界電流式広域空燃比センサ」である。
【0053】
上流側空燃比センサ56は、図2に示したように、上流側空燃比センサ56の配設位置を流れる排ガスの空燃比(上流側空燃比abyfs)に応じた出力値Vabyfsを「空燃比センサ出力」として出力する。この出力値Vabyfsは、上流側空燃比センサ56に到達している排ガスの空燃比が大きくなるほど(リーンとなるほど)増大する。出力値Vabyfsは、上流側空燃比センサ56に到達している排ガスの空燃比が理論空燃比であるとき、理論空燃比相当値Vstoichに一致する。
【0054】
後述する電気制御装置70は、図2に示された関係を「空燃比変換テーブルMapabyfs(Vabyfs)」としてROM内に格納していて、実際の出力値Vabyfsを空燃比変換テーブルMapabyfs(Vabyfs)に適用することにより上流側空燃比abyfs(検出空燃比abyfs)を取得するようになっている。
【0055】
再び、図1を参照すると、下流側空燃比センサ57は、エキゾーストパイプ42内に配設されている。下流側空燃比センサ57の配設位置は、上流側触媒43よりも下流側であり、且つ、下流側触媒よりも上流側(即ち、上流側触媒43と下流側触媒との間の排気通路)である。下流側空燃比センサ57は、周知の起電力式の酸素濃度センサ(安定化ジルコニア等の固体電解質を用いた濃淡電池型の酸素濃度センサ)である。下流側空燃比センサ57は、排気通路であって下流側空燃比センサ57が配設されている部位を通過するガスである被検出ガスの空燃比(下流側空燃比)に応じた出力値Voxsを発生するようになっている。換言すると、出力値Voxsは、上流側触媒43から流出し且つ下流側触媒に流入するガスの空燃比(下流側空燃比afdown)に応じた値である。
【0056】
この出力値Voxsは、図3に示したように、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチのとき(即ち、被検出ガスに過剰な酸素が実質的に含まれていないとき)最大出力値max(例えば、約0.9V〜1.0V)となる。出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンのとき(即ち、被検出ガスに過剰な酸素が実質的に含まれているとき)最小出力値min(例えば、約0.1V〜0V)となる。更に、出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比であるとき最大出力値maxと最小出力値minの略中間の電圧Vst(中間電圧Vst、理論空燃比相当電圧Vst、例えば、約0.5V)となる。出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比からリーンな空燃比へと変化する際に最大出力値maxから最小出力値minへと急変する。同様に、出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比からリッチな空燃比へと変化する際に最小出力値minから最大出力値maxへと急変する。
【0057】
図1に示した触媒温度センサ58は、触媒前方部と触媒後方部との間であって触媒冷却部44aによって冷却されない部分(触媒前後方向中央部)に配設され、その配設された部位の触媒の温度(触媒床温)TempCを表す信号を出力するようになっている。触媒前方部は、上流側触媒43の一部(触媒後方部以外の部分)であって、上流側触媒43を流れる排ガスの流れ方向において上流側触媒43の略中央部よりも上流側の部位である。
【0058】
アクセル開度センサ59は、運転者によって操作されるアクセルペダルAPの操作量Accp(アクセルペダル操作量、アクセルペダルAPの開度)を表す信号を出力するようになっている。アクセルペダル操作量Accpは、アクセルペダルAPの操作量が大きくなるとともに大きくなる。
【0059】
電気制御装置70は、「CPU、CPUが実行するプログラム、ルックアップテーブル(マップ)、関数及び定数等を予め記憶したROM、CPUが必要に応じてデータを一時的に格納するRAM、バックアップRAM、並びに、ADコンバータを含むインターフェース等」からなる周知のマイクロコンピュータである。
【0060】
バックアップRAMは、機関10を搭載した車両の図示しないイグニッション・キー・スイッチの位置(オフ位置、始動位置及びオン位置等の何れか)に関わらず、車両に搭載されたバッテリから電力の供給を受けるようになっている。バックアップRAMは、バッテリから電力の供給を受けている場合、CPUの指示に応じてデータを格納する(データが書き込まれる)とともに、そのデータを読み出し可能となるように保持(記憶)する。従って、バックアップRAMは、機関10の運転停止中においてもデータを保持することができる。
【0061】
バックアップRAMは、バッテリが車両から取り外される等によりバッテリからの電力供給が遮断されると、データを保持することができない。そこで、CPUは、バックアップRAMへの電力供給が再開されたとき、バックアップRAMに保持されるべきデータを初期化(デフォルト値に設定)するようになっている。なお、バックアップRAMは、EEPROM等の読み書き可能な不揮発性メモリであってもよい。
【0062】
電気制御装置70は、上述したセンサ等と接続され、CPUにそれらのセンサからの信号を供給するようになっている。更に、電気制御装置70は、CPUの指示に応じて、各気筒に対応して設けられた点火プラグ(実際にはイグナイタ)、各気筒に対応して設けられた燃料噴射弁33、冷却水ポンプ44b、及び、スロットル弁アクチュエータ等に駆動信号(指示信号)を送出するようになっている。
【0063】
なお、電気制御装置70は、取得されたアクセルペダルの操作量Accpが大きくなるほどスロットル弁開度TAが大きくなるように、スロットル弁アクチュエータに指示信号を送出するようになっている。即ち、電気制御装置70は、運転者により変更される機関10の加速操作量(アクセルペダル操作量Accp)に応じて「機関10の吸気通路に配設されたスロットル弁34」の開度を変更するスロットル弁駆動手段を備えている。
【0064】
(第1装置による制御の概要)
第1装置は、上流側空燃比センサ56の出力値Vabyfsに基く上流側空燃比abyfsを目標空燃比abyfrに一致させるためのメインフィードバック制御(メインフィードバック量を用いた空燃比制御)を実行する。
【0065】
更に、第1装置は、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上であるか否かを判定し、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上であると判定した場合には下流側空燃比センサ57に到達している排ガスがリッチである(その排ガスに過剰な酸素が含まれていない)と判定して、目標空燃比abyfrをリーン空燃比に設定するようにサブフィードバック量KSFBを設定する。一方、第1装置は、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst未満であると判定した場合には下流側空燃比センサ57に到達している排ガスがリーンである(その排ガスに過剰な酸素が含まれている)と判定して、目標空燃比abyfrをリッチ空燃比に設定するようにサブフィードバック量KSFBを設定する。このサブフィードバック量KSFBを用いた制御は、サブフィードバック制御(下流側空燃比センサ57の出力値Voxsに基く空燃比制御)とも称呼される。
【0066】
加えて、第1装置は、以下に述べるように、触媒後方部を冷却する。
(1)第1装置は、上流側触媒43の温度(触媒温度TempC)が第1温度(低側閾値温度、触媒活性判定温度)TempLoth未満であるとき、触媒後方部の冷却を行わない。
(2)第1装置は、上流側触媒43の温度が第1温度TempLoth以上であるとき、触媒後方部の冷却を行う。
【0067】
(実際の作動)
次に、第1装置の実際の作動について説明する。
【0068】
<燃料噴射制御>
第1装置のCPUは、図4に示した燃料噴射制御ルーチンを、任意の気筒のクランク角度が吸気上死点前の所定クランク角度に一致する毎に、その気筒に対して繰り返し実行するようになっている。前記所定クランク角度は、例えば、BTDC90°CA(吸気上死点前90°クランク角度)である。クランク角度が前記所定クランク角度に一致した気筒は「燃料噴射気筒」とも称呼される。CPUは、この燃料噴射制御ルーチンにより、指示燃料噴射量Fiの計算及び燃料噴射の指示を行う。
【0069】
任意の気筒のクランク角度が吸気上死点前の所定クランク角度と一致すると、CPUはステップ400から処理を開始し、ステップ410にてフューエルカットフラグXFCが「0」であるか否かを判定する。フューエルカットフラグXFCの値は、イニシャルルーチンにおいて「0」に設定される。更に、フューエルカットフラグXFCの値は、フューエルカット条件が成立したとき(例えば、車両運転状態が減速運転状態となったとき)に「1」に設定され、フューエルカットフラグXFCの値が「1」である場合にフューエルカット条件が不成立となったとき「0」に設定される。なお、イニシャルルーチンは、機関10が搭載された車両のイグニッション・キー・スイッチがオフからオンに変更されたときにCPUにより実行されるルーチンである。
【0070】
いま、フューエルカットフラグXFCの値が「0」であると仮定する。この場合、CPUは、ステップ410にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ420乃至ステップ460の処理を順に行い、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0071】
ステップ420:CPUは、理論空燃比stoichからサブフィードバック量KSFBを減じた値を目標空燃比abyfr(abyfr=stoich−KSFB)に設定する。サブフィードバック量KSFBは、後述する図6に示したルーチンにより別途求められている。
【0072】
ステップ430:CPUは、「エアフローメータ51により計測された吸入空気量Ga、クランクポジションセンサ54の信号に基いて取得された機関回転速度NE、及び、ルックアップテーブルMapMc」に基いて「燃料噴射気筒の1回の吸気行程において、その燃料噴射気筒に吸入される空気量」である「筒内吸入空気量Mc(k)」を取得する。筒内吸入空気量Mc(k)は、各吸気行程に対応されながらRAM内に記憶される。筒内吸入空気量Mc(k)は、周知の空気量推定モデル(吸気通路における空気の挙動を模した物理法則に従って構築されたモデル)により算出されてもよい。
【0073】
ステップ440:CPUは、筒内吸入空気量Mc(k)を目標空燃比abyfrで除することにより基本燃料噴射量Fbaseを求める。従って、基本燃料噴射量Fbaseは、機関の空燃比(従って、上流側触媒43に流入する排ガスの空燃比)を目標空燃比abyfrに一致させるために計算上必要な燃料噴射量のフィードフォワード量である。このステップ440は、機関に供給される混合気の空燃比を目標空燃比abyfrに一致させるためのフィードフォワード制御手段(基本燃料噴射量算出手段)を構成している。
【0074】
ステップ450:CPUは、基本燃料噴射量Fbaseをメインフィードバック量DFiにより補正する。より具体的には、CPUは、基本燃料噴射量Fbaseにメインフィードバック量DFiを加えることにより、指示燃料噴射量(最終燃料噴射量)Fiを算出する。メインフィードバック量DFiは、機関の空燃比(従って、上流側触媒43に流入する排ガスの空燃比)を目標空燃比abyfrに一致させるための空燃比フィードバック量であり、上流側空燃比センサ56の出力値Vabyfsに基いて求められる。メインフィードバック量DFiの算出方法については後述する。
【0075】
ステップ460:CPUは、「指示燃料噴射量Fiの燃料」を「燃料噴射気筒に対応して設けられている燃料噴射弁33」から噴射させるための噴射指示信号を、その燃料噴射弁33に送出する。
【0076】
この結果、機関の空燃比を目標空燃比abyfrに一致させるために計算上必要な量(必要と推定される量)の燃料が燃料噴射気筒の燃料噴射弁33から噴射させられる。即ち、ステップ420乃至ステップ460は、機関10に供給される混合気の空燃比が目標空燃比abyfrとなるように指示燃料噴射量Fiを制御する指示燃料噴射量制御手段を構成している。
【0077】
一方、CPUがステップ410の処理を実行する時点において、フューエルカットフラグXFCの値が「1」に設定されていると、CPUはそのステップ410にて「No」と判定し、ステップ495に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、ステップ460の処理による燃料噴射が実行されないので、燃料の供給(燃料噴射)が停止される運転、即ち、フューエルカット運転が実行される。
【0078】
<メインフィードバック量の算出>
CPUは図5にフローチャートにより示した「メインフィードバック量算出ルーチン」を所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ500から処理を開始し、ステップ505に進んで「メインフィードバック制御条件(上流側空燃比フィードバック制御条件)」が成立しているか否かを判定する。
【0079】
メインフィードバック制御条件は以下の総ての条件が成立したときに成立する。
(A1)上流側空燃比センサ56が活性化している。
(A2)機関の負荷KLが閾値KLth以下である。
(A3)フューエルカット運転中でない(フューエルカットフラグXFCが「0」である。)。
【0080】
なお、負荷KLは、ここでは下記の(1)式により求められる負荷率である。この負荷KLに代え、アクセルペダル操作量Accpが用いられても良い。(1)式において、Mcは筒内吸入空気量であり、ρは空気密度(単位は(g/l))、Lは機関10の排気量(単位は(l))、「4」は機関10の気筒数である。
KL=(Mc/(ρ・L/4))・100% …(1)
【0081】
いま、メインフィードバック制御条件が成立しているものとして説明を続ける。この場合、CPUはステップ505にて「Yes」と判定して以下に述べるステップ510乃至ステップ540の処理を順に行い、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0082】
ステップ510:CPUは、図4のステップ420にて算出され且つRAMに格納されている「Nサイクル前の目標空燃比abyfr(k−N)」を読み込む。
【0083】
ステップ515:CPUは、下記(2)式に示したように、上流側空燃比センサ56の出力値Vabyfsを図2に示したテーブルMapabyfsに適用することにより、検出空燃比abyfsを得る。
abyfs=Mapabyfs(Vabyfs) …(2)
【0084】
ステップ520:CPUは、下記(3)式に従って、「現時点よりもNサイクル前の時点において燃焼室21に実際に供給された燃料の量」である「筒内燃料供給量Fc(k−N)」を求める。即ち、CPUは、「現時点よりもNサイクル(即ち、N・720°クランク角度)前の時点における筒内吸入空気量Mc(k−N)」を「検出空燃比abyfs」により除すことにより、筒内燃料供給量Fc(k−N)を求める。
Fc(k−N)=Mc(k−N)/abyfs …(3)
【0085】
このように、筒内燃料供給量Fc(k−N)を求めるために、現時点からNサイクル前の筒内吸入空気量Mc(k−N)を検出空燃比abyfsで除すのは、「燃焼室21内での混合気の燃焼により生成された排ガス」が上流側空燃比センサ56に到達するまでに「Nサイクルに相当する時間」を要しているからである。
【0086】
ステップ525:CPUは、下記(4)式に従って、「現時点よりもNサイクル前の時点において燃焼室21に供給されるべきであった燃料の量」である「目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)」を求める。即ち、CPUは、現時点からNサイクル前の筒内吸入空気量Mc(k−N)を現時点からNサイクル前の目標空燃比abyfr(k−N)で除すことにより、目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)を求める。
Fcr(k−N)=Mc(k−N)/abyfr(k−N) …(4)
【0087】
ステップ530:CPUは、下記(5)式に従って、筒内燃料供給量偏差DFcを取得する。即ち、CPUは、目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)から筒内燃料供給量Fc(k−N)を減じることにより、筒内燃料供給量偏差DFcを求める。この筒内燃料供給量偏差DFcは、Nストローク前の時点で筒内に供給された燃料の過不足分を表す量となる。
DFc=Fcr(k−N)−Fc(k−N) …(5)
【0088】
ステップ535:CPUは、下記(6)式に従って、メインフィードバック量DFiを求める。この(6)式において、Gpは予め設定された比例ゲイン、Giは予め設定された積分ゲインである。更に、(6)式の「値SDFc」は「筒内燃料供給量偏差DFcの積分値」である。つまり、CPUは、検出空燃比abyfsを目標空燃比abyfrに一致させるための比例積分制御により「メインフィードバック量DFi」を算出する。
DFi=Gp・DFc+Gi・SDFc …(6)
【0089】
ステップ540:CPUは、その時点における筒内燃料供給量偏差DFcの積分値SDFcに上記ステップ530にて求められた筒内燃料供給量偏差DFcを加えることにより、新たな筒内燃料供給量偏差の積分値SDFcを取得する。
【0090】
以上により、メインフィードバック量DFiが比例積分制御により算出され、このメインフィードバック量DFiが前述した図4のステップ450の処理により指示燃料噴射量Fiに反映される。
【0091】
一方、図5のステップ505の判定時において、メインフィードバック制御条件が不成立であると、CPUはそのステップ505にて「No」と判定してステップ545に進み、メインフィードバック量DFiの値を「0」に設定する。次いで、CPUは、ステップ550にて筒内燃料供給量偏差の積分値SDFcに「0」を格納する。その後、CPUは、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。このように、メインフィードバック制御条件が不成立であるとき、メインフィードバック量DFiは「0」に設定される。従って、基本燃料噴射量Fbaseのメインフィードバック量DFiによる補正は行われない。
【0092】
<サブフィードバック量KSFBの算出>
CPUは図6にフローチャートにより示した「サブフィードバック量KSFBの算出ルーチン」を所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ600から処理を開始してステップ610に進み、サブフィードバック制御条件が成立しているか否かを判定する。
【0093】
サブフィードバック制御条件は以下の総ての条件が成立したときに成立する。
(B1)メインフィードバック制御条件が成立している。
(B2)下流側空燃比センサ57が活性化している。
【0094】
いま、サブフィードバック制御条件が成立していると仮定して説明を続ける。この場合、CPUはステップ610にて「Yes」と判定し、ステップ620に進んで下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上であるか否かを判定する。即ち、CPUは、ステップ620にて「下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリッチ空燃比である(過剰な酸素を含んでいないガスである)か否か」を判定する。
【0095】
このとき、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上であると(即ち、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリッチ空燃比であると)、CPUはステップ620にて「Yes」と判定してステップ630に進み、サブフィードバック量KSFBを負の一定値(−A、但し、値Aは正の一定値)に設定する。その後、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、目標空燃比abyfrが理論空燃比stoichよりも大きい値(stoich+A)に設定されるので、機関の空燃比はリーン空燃比に制御される。
【0096】
一方、CPUがステップ620の処理を行う時点において、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst未満であると(即ち、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスに過剰な酸素が含まれておらず、その排ガスの空燃比がリーン空燃比であると)、CPUはステップ620にて「No」と判定してステップ640に進み、サブフィードバック量KSFBを正の一定値Aに設定する。その後、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、目標空燃比abyfrが理論空燃比stoichよりも小さい値(stoich−A)に設定されるので、機関の空燃比はリッチ空燃比に制御される。
【0097】
更に、CPUがステッ610の処理を実行する時点において、サブフィードバック制御条件が成立していなければ、CPUはステップ610にて「No」と判定してステップ650に進み、サブフィードバック量KSFBの値を「0」に設定する。この結果、目標空燃比abyfrは理論空燃比stoichに設定される。その後、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0098】
<触媒冷却フラグ操作>
CPUは、所定時間が経過する毎に図7にフローチャートにより示した「触媒冷却フラグ操作ルーチン」を実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図7のステップ700から処理を開始してステップ710に進み、上流側触媒43の温度(触媒温度TempC)が第1温度TempLoth未満であるか否かを判定する。
【0099】
このとき、触媒温度TempCが第1温度TempLoth未満であると、CPUはステップ710にて「Yes」と判定してステップ720に進み、触媒冷却フラグXCoolの値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ795に進んで、本ルーチンを一旦終了する。なお、触媒冷却フラグXCoolの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。
【0100】
一方、CPUがステップ710の処理を行う時点において、触媒温度TempCが第1温度TempLoth以上であると、CPUはステップ710にて「No」と判定してステップ730に進み、触媒冷却フラグXCoolの値を「1」に設定する。その後、CPUはステップ795に進んで、本ルーチンを一旦終了する。
【0101】
<触媒冷却(触媒後方部冷却)実施>
CPUは、所定時間が経過する毎に図8にフローチャートにより示した「触媒冷却実施ルーチン」を実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図8のステップ800から処理を開始してステップ810に進み、触媒冷却フラグXCoolの値が「1」であるか否かを判定する。
【0102】
このとき、触媒冷却フラグXCoolの値が「1」であると、CPUはステップ810にて「Yes」と判定してステップ820に進み、冷却水ポンプ44bを回転させることによって触媒後方部の冷却を開始する。その後、CPUはステップ825に進んで本ルーチンを一旦終了する。このように、触媒冷却フラグXCoolの値は、触媒後方部の冷却が実施されているとき「1」に設定される。
【0103】
一方、CPUがステップ810の処理を行う時点において、触媒冷却フラグXCoolの値が「0」であると、CPUはステップ810にて「No」と判定してステップ830に進み、冷却水ポンプ44bの回転を停止させることによって触媒後方部の冷却を停止(禁止)する。その後、CPUはステップ825に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0104】
このように、第1装置は、触媒温度TempCが第1温度TempLoth以上である場合、触媒後方部の温度が触媒前方部の温度よりも低下するように触媒後方部を触媒43の外部から冷却する。この触媒後方部の冷却によりもたらされる効果について図9を参照しながら説明する。
【0105】
図9は、目標空燃比abyfr(即ち、機関の空燃比)、触媒43の上流の排気通路に排出される酸素の総量、触媒43に流入する酸素の総量(従って、酸素吸蔵量OSAに相当する値)、及び、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsの変化の様子を示したタイムチャートである。
【0106】
図9に示した例においては、機関10の運転状態が定常状態にある場合の時刻t0にて出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstを超え、それにより下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比はリッチ空燃比と判定され、その結果、目標空燃比abyfrがリーン空燃比に設定されている。これにより、時刻t0以降において、実線L1により示したように、触媒43の上流の排気通路(以下、「触媒上流排気通路部」とも称呼する。)に排出される酸素の総量は次第に(略直線的に)増大する。このため、実線L10により示したように、「時刻t0からガス輸送遅れ時間Tdが経過した時刻t1」以降において、過剰な酸素が触媒に流入し始める。なお、図9に示した例においては、燃料噴射弁31により噴射された燃料が触媒上流排気通過部に流出するまでの遅れ時間は省略されている。
【0107】
ここで、触媒後方部が冷却されていない場合の触媒43の最大酸素吸蔵量がCmaxであると仮定し、触媒後方部が冷却されている場合の触媒43の最大酸素吸蔵量がC’maxであると仮定する。値C’maxは値Cmaxよりも当然に小さい。
【0108】
係る状態が継続すると、時刻t2にて機関10から触媒上流排気通路部に流出した酸素の総量は値C’maxに到達し、その後、時刻t3にて触媒上流排気通路部に流出した酸素の総量は値Cmaxに到達する。従って、「時刻t2からガス輸送遅れ時間Tdが経過した時刻t4」にて触媒の酸素吸蔵量OSAは値C’maxに到達し、「時刻t3からガス輸送遅れ時間Tdが経過した時刻t5」にて触媒の酸素吸蔵量OSAは値Cmaxに到達する。
【0109】
いま、時刻t3の近傍にて機関10の運転状態が加速運転状態へと変化したと仮定する。このとき、触媒後方部が冷却されていなければ、触媒43の最大酸素吸蔵量は値Cmaxであるから、時刻t5にて酸素が触媒43から漏れ出す。従って、実線の曲線M1に示したように、時刻t5にて、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsは理論空燃比相当電圧Vstよりも大きい値から小さい値へと変化し(従って、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリーン空燃比であると判定され)、目標空燃比abyfrはリッチ空燃比へと変更させられる。よって、この時刻t5まで、触媒上流排気通路部には機関10から過剰な酸素(及びNOx)が排出されている。しかも、機関10の運転状態が加速運転状態へと変化しているので、吸入空気量Gaは急激に増大し、単位時間あたりに触媒上流排気通路部に排出される酸素(及びNOx)の量は破線L2により示したように急増する。この結果、触媒後方部が冷却されていない場合に触媒43の下流に排出されてしまうNOxの量は値N1に応じた量となる。
【0110】
これに対し、触媒後方部が冷却されていると、触媒43の最大酸素吸蔵量は値C’maxであるから、時刻t4にて酸素が触媒43から漏れ出す。従って、破線の曲線M2に示したように、時刻t4にて、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsは理論空燃比相当電圧Vstよりも大きい値から小さい値へと変化し(従って、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリーン空燃比であると判定され)、目標空燃比abyfrはリッチ空燃比へと変更させられる。この場合、時刻t4まで、触媒上流排気通路部には機関10から過剰な酸素(及びNOx)が排出されているが、時刻t4における吸入空気量Gaの増大量はそれ程大きくない。この結果、触媒後方部が冷却されている場合に触媒43の下流に排出されてしまうNOxの量は「値N1よりも小さい値N2」に応じた量となる。
【0111】
以上の説明から理解されるように、第1装置においては触媒後方部が冷却されているので、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも大きい値から小さい値へと「より早いタイミング」にて変化し、この結果、排気通路に排出され且つ触媒43によって浄化されないNOxの量を低減することができる。
【0112】
以上、説明したように、第1装置は、
内燃機関10の排気通路に配設された酸素吸蔵機能を備える触媒(43)と、
前記排気通路の前記触媒(43)の下流に配設された空燃比センサ(下流側空燃比センサ57)と、
前記空燃比センサの出力値(下流側空燃比センサ57の出力値Voxs)に基いて前記機関10に供給される混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段(図4乃至図6、特に、図6のルーチンにより算出されるサブフィードバック量KSFB、及び、図4のステップ420を参照。)と、
前記触媒43の下流側の部位である触媒後方部を冷却する触媒冷却手段と(触媒冷却装置44の特に触媒冷却部44a)、
を備えた内燃機関の排ガス浄化装置であって、
前記触媒冷却手段は、指示信号に応答して前記触媒後方部を冷却する状態と前記触媒後方部を冷却しない状態との何れかの状態を実現するように構成されており(図8及び触媒冷却装置44の特に冷却水ポンプ44b)、
更に、
前記触媒(43)の温度を取得するとともに前記取得された触媒の温度が所定の閾値温度(第1温度TempLoth)以上であるか否かを判定し(触媒温度センサ58、図7のステップ710)、前記触媒の温度が前記閾値温度以上であると判定した場合に前記触媒冷却手段により前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を前記触媒冷却手段に送出し(図7のステップ710、ステップ730及び図8のステップ810、ステップ820)、前記触媒の温度が前記閾値温度未満であると判定した場合に前記触媒冷却手段により前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を前記触媒冷却手段に送出しない(図7の、特に、ステップ710、ステップ720及び図8のステップ810、ステップ830)、触媒冷却制御手段を備える。
【0113】
従って、第1装置は、特に、触媒43にリーン空燃比のガスが流入している場合において触媒43の酸素吸蔵量がある程度の値(触媒43が冷却されない場合の触媒43の最大酸素吸蔵量よりも小さい値)となったとき触媒43から酸素が流出する。そのために、触媒流入ガスの空燃比をリッチ空燃比へと早期に切り替えることができる。よって、触媒上流排気通路部に多量のNOxが流出することを回避することができ、その結果、触媒43により浄化されないNOxの量を低下することができる。更に、第1装置は、触媒43の温度が低い場合(触媒43の活性度が低い場合)には触媒後方部を冷却しないので、機関10が完全に暖機する前には触媒43全体として多くの未燃物を浄化する能力を確保することができる。この結果、触媒全体の最大酸素吸蔵量Cmaxを低下させた触媒を用いる場合に比較して、機関冷間時における未燃物の排出量が増大することを回避することもできる。
【0114】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る内燃機関の排ガス浄化装置(以下、単に「第2装置」と称呼する。)について説明する。第2装置は、以下に述べるように触媒後方部を冷却する点においてのみ、第1装置と相違する。
【0115】
(1)第2装置は、上流側触媒43の温度(触媒温度TempC)が、第1温度(低側閾値温度、触媒活性判定温度)TempLoth以上であり、且つ、第2温度(高側閾値温度、触媒過熱保護温度)TempHith以下である場合において、吸入空気量Gaの所定の単位時間あたりの増加量ΔGa(以下、単に「吸入空気量変化率ΔGa」とも称呼する。)が加速判定用閾値ΔGath以上となり(即ち、機関10の運転状態が加速運転状態にあり)、且つ、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上である(下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリッチ空燃比であるか、及び/又は、機関の空燃比(目標空燃比abyfr)がリーン空燃比である)とき、触媒後方部の冷却を行う。
【0116】
(2)第2装置は、上述した機関10の加速運転に基づく触媒後方部の冷却を実行している最中において、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst未満になると(下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリーン空燃比に変化するか、及び/又は、機関の空燃比(目標空燃比abyfr)がリッチ空燃比に変更させられると)、触媒後方部の冷却を停止する。
【0117】
(3)第2装置は、触媒後方部の冷却を実行しているときに触媒温度TempCが上記第1温度TempLothよりも低くなると、触媒の浄化率が過度に低下することを防止するために触媒後方部の冷却を停止する。
【0118】
(4)第2装置は、触媒後方部の冷却を実行していないときに触媒温度TempCが上記第2温度TempHithよりも高くなると、触媒を過熱から保護するために、触媒後方部の冷却を実行する。この場合、触媒温度TempCが、上記第2温度TempHithから所定値α(α>0)を減じた温度(TempHith−α)よりも低くなると、触媒後方部の冷却を停止する。
【0119】
(実際の作動)
第2装置のCPUは、図4乃至図6、図8、図10乃至図13にフローチャートにより示したルーチンを実行する。図4乃至図6、及び、図8については説明済みである。よって、以下、図10乃至図13を参照しながら第2装置の作動について説明する。
【0120】
第2装置のCPUは、所定時間が経過する毎に図10にフローチャートにより示した「加速時冷却制御開始ルーチン」を実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図10のステップ1000から処理を開始してステップ1010に進み、触媒冷却フラグXCoolの値が「0」であるか否か(即ち、触媒後方部の冷却が実施されているか否か)を判定する。
【0121】
このとき、触媒冷却フラグXCoolの値が「0」であると、CPUはステップ1010にて「Yes」と判定し、ステップ1020に進んで触媒温度TempCが第1温度TempLoth以上であるか否かを判定する。
【0122】
このとき、触媒温度TempCが第1温度TempLoth以上であると、CPUはステップ1020にて「Yes」と判定し、ステップ1030に進んで触媒温度TempCが第2温度TempHith以下であるか否かを判定する。
【0123】
このとき、触媒温度TempCが第2温度TempHith以下であると、CPUはステップ1030にて「Yes」と判定し、ステップ1040に進んで「吸入空気量Gaの所定の単位時間あたりの増加量ΔGa(即ち、吸入空気量変化率ΔGa)が加速判定用閾値ΔGath(吸入空気量変化率閾値ΔGath)以上であるか否か」を判定する。なお、CPUは、図示しないルーチンを前記単位時間の経過毎に繰り返し実行し、そのルーチンにおいて最新の吸入空気量Gaから前記単位時間前の吸入空気量Gaを減じることにより「吸入空気量変化率ΔGa」を取得している。このステップ1030は、機関10の運転状態が加速運転状態にあるか否かを判定するステップである。
【0124】
このとき、吸入空気量変化率ΔGaが加速判定用閾値ΔGath以上であると、CPUはステップ1040にて「Yes」と判定してステップ1050に進み、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上であるか否かを判定する。即ち、CPUはステップ1040にて、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsに基いて下流側空燃比センサ57に到達しているガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ空燃比であるか否かを判定する。
【0125】
このとき、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上であると、CPUはステップ1050にて「Yes」と判定してステップ1060に進み、触媒冷却フラグXCoolの値を「1」に設定する。この結果、CPUが図8に示したルーチンを実行することによって、触媒後方部の冷却が開始される。
【0126】
次に、CPUはステップ1070に進み、加速時冷却フラグXACの値を「1」に設定する。このように、加速時冷却フラグXACの値は、機関10の運転状態が加速運転状態にある場合に触媒後方部の冷却が開始されたとき「1」に設定され、その触媒後方部の冷却(機関10の加速運転に基づく触媒後方部の冷却)が終了したときに「0」に設定される(後に説明する図11のステップ1140を参照。)。なお、加速時冷却フラグXACの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。その後、CPUはステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0127】
一方、CPUが本ルーチンの処理を実行する時点にて、
・触媒冷却フラグXCoolの値が「0」でない(「1」である)場合、
・触媒温度TempCが第1温度TempLoth未満である場合、
・触媒温度TempCが第2温度TempHithよりも大きい場合、
・吸入空気量変化率ΔGaが加速判定用閾値ΔGath未満である場合、及び、
・下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst未満である場合、
の何れかが成立していると、CPUは上記場合に対応する「ステップ1010乃至ステップ1050のそれぞれのステップ」にて「No」と判定し、ステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。従って、上記場合の何れか一つが成立しているとき、触媒冷却フラグXCool及び加速時冷却フラグXACの値は変更されない。
【0128】
更に、第2装置のCPUは、所定時間が経過する毎に図11にフローチャートにより示した「加速時冷却制御終了ルーチン」を実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図11のステップ1100から処理を開始してステップ1110に進み、加速時冷却フラグXACの値が「1」であるか否かを判定する。
【0129】
このとき、加速時冷却フラグXACの値が「1」であると、CPUはステップ1110にて「Yes」と判定してステップ1120に進み、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst未満であるか否かを判定する。即ち、CPUはステップ1120にて、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsに基いて下流側空燃比センサ57に到達しているガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンなリーン空燃比であるか否かを判定する。
【0130】
このとき、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst未満であると、CPUはステップ1120にて「Yes」と判定してステップ1130に進み、触媒冷却フラグXCoolの値を「0」に設定する。この結果、CPUが図8に示したルーチンを実行することによって、触媒後方部の冷却が停止させられる。次に、CPUはステップ1140に進み、加速時冷却フラグXACの値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ1105に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0131】
一方、CPUが本ルーチンの処理を実行する時点にて、
・触媒冷却フラグXCoolの値が「1」でない(「0」である)場合、及び、
・出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上である場合、
の何れかが成立していると、CPUは上記場合に対応する「ステップ1110及びステップ1120のそれぞれのステップ」にて「No」と判定し、ステップ1195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。従って、上記場合の何れか一つが成立しているとき、触媒冷却フラグXCool及び加速時冷却フラグXACの値は変更されない。
【0132】
更に、第2装置のCPUは、所定時間が経過する毎に図12にフローチャートにより示した「触媒浄化率低下防止ルーチン」を実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図12のステップ1200から処理を開始してステップ1210に進み、触媒冷却フラグXCoolの値が「1」であるか否かを判定する。
【0133】
このとき、触媒冷却フラグXCoolの値が「1」であると、CPUはステップ1210にて「Yes」と判定してステップ1220に進み、触媒温度TempCが第1温度TempLoth未満であるか否かを判定する。即ち、CPUは、ステップ1210及びステップ1220において、触媒後方部の冷却中に触媒温度TempCが第1温度TempLothよりも小さくなったか否かを判定する。
【0134】
このとき、触媒温度TempCが第1温度TempLoth未満であると、CPUはステップ1220にて「Yes」と判定してステップ1230に進み、触媒冷却フラグXCoolの値を「0」に設定する。これにより、触媒後方部の冷却が停止させられる。次いで、CPUはステップ1240に進み、加速時冷却フラグXACの値を「0」に設定し、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0135】
一方、CPUが本ルーチンの処理を実行する時点にて、
・触媒冷却フラグXCoolの値が「1」でない(「0」である)場合、及び、
・触媒温度TempCが第1温度TempLoth以上である場合、
の何れかが成立していると、CPUは上記場合に対応する「ステップ1210及びステップ1220のそれぞれのステップ」にて「No」と判定し、ステップ1295に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。従って、上記場合の何れか一つが成立しているとき、触媒冷却フラグXCool及び加速時冷却フラグXACの値は変更されない。
【0136】
更に、第2装置のCPUは、所定時間が経過する毎に図13にフローチャートにより示した「触媒過熱防止ルーチン」を実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図13のステップ1300から処理を開始してステップ1310に進み、触媒冷却フラグXCoolの値が「0」であるか否かを判定する。このとき、触媒冷却フラグXCoolの値が「1」であると、CPUはステップ1310にて「No」と判定し、後述するステップ1350に直接進む。
【0137】
これに対し、触媒冷却フラグXCoolの値が「0」であると、CPUはステップ1310にて「Yes」と判定してステップ1320に進み、触媒温度TempCが第2温度TempHithよりも大きいか否かを判定する。このとき、触媒温度TempCが第2温度TempHith以下であると、CPUはステップ1320にて「No」と判定し、後述するステップ1350に直接進む。
【0138】
これに対し、触媒温度TempCが第2温度TempHithよりも大きいと、CPUはステップ1320にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1330及びステップ1340の処理を順に行い、ステップ1350に進む。
【0139】
ステップ1330:CPUは、触媒冷却フラグXCoolの値を「1」に設定する。これにより、触媒後方部の冷却が実施される。
ステップ1340:CPUは、触媒保護冷却フラグXhogoの値を「1」に設定する。このように、触媒保護冷却フラグXhogoの値は、触媒温度TempCが第2温度TempHithよりも大きいことに基いて触媒後方部の冷却が実施されているときに「1」に設定される。なお、触媒保護冷却フラグXhogoの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。
【0140】
次に、CPUはステップ1350に進み、触媒保護冷却フラグXhogoの値が「1」であるか否かを判定する。このとき、触媒保護冷却フラグXhogoの値が「1」でなければ、CPUはステップ1350にて「No」と判定し、ステップ1395に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0141】
これに対し、触媒保護冷却フラグXhogoの値が「1」であると、CPUはステップ1350にて「Yes」と判定してステップ1360に進み、触媒温度TempCが「第2温度TempHithから所定の正の温度αを減じた温度(TempC−α)」未満であるか否かを判定する。このとき、触媒温度TempCが温度(TempC−α)未満でなければ、CPUはステップ1360にて「No」と判定し、ステップ1395に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0142】
これに対し、触媒温度TempCが温度(TempC−α)未満であると、CPUはステップ1360にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1370及びステップ1380の処理を順に行い、その後、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0143】
ステップ1370:CPUは、触媒冷却フラグXCoolの値を「0」に設定する。これにより、触媒後方部の冷却が停止させられる。
ステップ1380:CPUは、触媒保護冷却フラグXhogoの値を「0」に設定する。
【0144】
以上、説明したように、第2装置は、
触媒43の下流に配設された空燃比センサの出力値(下流側空燃比センサ57の出力値Voxs)に基いて「その空燃比センサに到達しているガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ空燃比であるか又は理論空燃比よりもリーンなリーン空燃比であるか」を判定するとともに(図6のステップ620を参照。)、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リーン空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リッチ空燃比に設定し(図6のステップ640及び図4のステップ420を参照。)、且つ、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リーン空燃比に設定する(図6のステップ630及び図4のステップ420を参照。)ように構成された空燃比制御手段と、
前記機関10の運転状態が加速運転状態にあると判定され(図10のステップ1040での「Yes」との判定を参照。)且つ前記空燃比センサ(下流側空燃比センサ57)に到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定されている場合(図10のステップ1050での「Yes」との判定を参照。)に、前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出し(図10のステップ1060)、且つ、前記空燃比センサ(下流側空燃比センサ57)に到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定されている場合であっても機関10の運転状態が加速運転状態にないと判定した場合には前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出しない触媒冷却制御手段(図10のステップ1040での「No」との判定、及び、図8のルーチンを参照。)と、
を備える。
【0145】
従って、触媒43からリッチ空燃比の排ガスが流出しているが故に触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比である期間において機関10の運転状態が加速運転状態へと移行した場合(即ち、機関10の空燃比を早期にリッチ空燃比に変更しないと多量のNOxが機関10から排出され、その結果、多量のNOxが触媒43から流出してしまう可能性が高い場合)、触媒後方部が冷却される。これにより、触媒43の触媒後方部の酸素吸蔵能力が低下して触媒43から酸素が早期に漏れ出すので、機関10の空燃比をリッチ空燃比へと早期に切り替えることが可能となる。この結果、定常運転時においては触媒後方部が冷却されないので触媒43が高い酸素吸蔵能力を維持し、以って、エミッションを良好に維持することができ、且つ、加速運転時にはNOxの排出量を低減することができる。
【0146】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る内燃機関の排ガス浄化装置(以下、単に「第3装置」と称呼する。)について説明する。第3装置は、機関10の運転状態が加速運転状態となったとき、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsに関わらず(即ち、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比に関わらず)、触媒後方部の冷却を開始する点において第2装置と相違する。
【0147】
(実際の作動)
第3装置のCPUは、図4乃至図6、図8、図12乃至図15にフローチャートにより示したルーチンを実行する。図4乃至図6、図8、図12及び図13については説明済みである。よって、以下、図14乃至図15を参照しながら第3装置の作動について説明する。なお、既に説明したステップと同じ処理を行うステップには、既に説明したステップと同じ符号が付されている。以下において、そのようなステップの詳細な説明は適宜省略される。
【0148】
第3装置のCPUは、所定時間が経過する毎に図14にフローチャートにより示した「加速時冷却制御開始ルーチン」を実行するようになっている。このルーチンは、図10に示したルーチンのステップ1050を省略したルーチンである。従って、以下に述べる総ての条件が成立するとき、触媒冷却フラグXCoolの値が「1」に変更され且つ加速時冷却フラグXACの値が「1」に設定される。これにより、機関10の加速運転に基づく触媒後方部の冷却(加速時冷却制御)が開始される。
【0149】
・触媒冷却フラグXCoolの値が「0」である。
・触媒温度TempCが第1温度TempLoth以上である。
・触媒温度TempCが第2温度TempHith以下である。
・吸入空気量変化率ΔGaが加速判定用閾値ΔGath以上である。
【0150】
加えて、CPUは所定時間が経過する毎に図15にフローチャートにより示した「加速時冷却制御終了ルーチン」を実行するようになっている。このルーチンは、図11に示したルーチンのステップ1120をステップ1510に置換したルーチンである。このステップ1510にて、CPUは「加速時冷却フラグXACの値が「0」から「1」へと変更されてから所定時間Tthが経過したか否か」を判定する。この所定時間Tthは、加速時冷却フラグXACの値が「0」から「1」へと変更されてから所定時間Tthが経過すれば、触媒43から流出している排ガスの空燃比がリッチ空燃比からリーン空燃比(及び、その逆へ)変化するのに十分な時間となるように設定されている。
【0151】
そして、CPUは、加速時冷却フラグXACの値が「0」から「1」へと変更されてから所定時間Tthが経過していると、ステップ1510にて「Yes」と判定してステップ1130及びステップ1140の処理を行う。加速時冷却フラグXACの値が「0」から「1」へと変更されてから所定時間Tthが経過していなければ、CPUはステップ1510にて「No」と判定し、ステップ1595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。従って、加速時冷却フラグXACの値が「0」から「1」へと変更されてから所定時間Tthが経過した時点において、触媒後方部の冷却が停止させられる。
【0152】
なお、ステップ1510は、「加速時冷却フラグXACの値が「0」から「1」へと切り換わる直前の下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも大きい場合には出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以下となったか否か、及び、加速時冷却フラグXACの値が「0」から「1」へと切り換わる直前の下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以下である場合には出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも大きくなったか否か、を判定するステップ」に置換されてもよい。即ち、CPUは、機関10の加速運転に基づく触媒後方部の冷却(加速時冷却制御)が開始された場合、その開始時点(加速時冷却制御開始時点)において下流側空燃比センサ57に到達していた排ガスの空燃比がリッチ空燃比であった場合にはリーン空燃比へと変化した時点、及び、その開始時点(加速時冷却制御開始時点)において下流側空燃比センサ57に到達していた排ガスの空燃比がリーン空燃比であった場合にはリッチ空燃比へと変化した時点、にて、触媒後方部の冷却を停止してもよい。
【0153】
以上、説明したように、第3装置は、
第1及び第2装置と同様の空燃比制御手段と、
機関10の運転状態が加速運転状態にあるか否かを判定するとともに(図14のステップ1040を参照。)、機関10の運転状態が加速運転状態にあると判定した場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出し、且つ、機関10の運転状態が加速運転状態にないと判定した場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出しない触媒冷却制御手段(図14のステップ1040、ステップ1060、図8のルーチンを参照。)と、
を備える。
【0154】
従って、機関10の運転状態が加速運転状態へと移行した場合(即ち、機関10の空燃比を早期にリッチ空燃比に変更しないと多量のNOxが機関10から排出され、その結果、多量のNOxが触媒43から流出してしまう可能性が高い場合)、触媒後方部が冷却される。これにより、触媒後方部の酸素吸蔵能力が低下して触媒43から酸素が早期に漏れ出すから、機関10の空燃比をリッチ空燃比へと早期に切り替えることが可能となる。この結果、定常運転時においては触媒後方部が冷却されないので触媒43が高い酸素吸蔵能力を維持し、以って、エミッションを良好に維持することができ、且つ、加速運転時にはNOxの排出量を低減することができる。
【0155】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る内燃機関の排ガス浄化装置(以下、単に「第4装置」と称呼する。)について説明する。第4装置は、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上であるとき(即ち、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスがリッチ空燃比であると判定されているとき)、機関10の運転状態に関わらず、触媒後方部の冷却を開始する点において、第2装置と相違する。
【0156】
(実際の作動)
第4装置のCPUは、図4乃至図6、図8、図12、図13、図16及び図17にフローチャートにより示したルーチンを実行する。図4乃至図6、図8、図12及び図13については説明済みである。よって、以下、図16乃至図17を参照しながら第4装置の作動について説明する。なお、既に説明したステップと同じ処理を行うステップには、既に説明したステップと同じ符号が付されている。以下において、そのようなステップの詳細な説明は適宜省略される。
【0157】
第4装置のCPUは、所定時間が経過する毎に図16にフローチャートにより示した「リッチ時冷却制御開始ルーチン」を実行するようになっている。このルーチンは、図10に示したルーチンのステップ1040を省略し、且つ、ステップ1070をステップ1610に置換したルーチンである。従って、以下に述べる総ての条件が成立するとき、触媒冷却フラグXCoolの値がステップ1060にて「1」に変更され且つリッチ時冷却フラグXRIの値がステップ1610にて「1」に設定される。これにより、触媒後方部の冷却が開始される。なお、リッチ時冷却フラグXRIの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。
【0158】
・触媒冷却フラグXCoolの値が「0」である。
・触媒温度TempCが第1温度TempLoth以上である。
・触媒温度TempCが第2温度TempHith以下である。
・下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上である。
【0159】
加えて、CPUは所定時間が経過する毎に図17にフローチャートにより示した「リッチ時冷却制御終了ルーチン」を実行するようになっている。このルーチンは、図11に示したルーチンの「ステップ1110及びステップ1140」を「ステップ1710及びステップ1720」にそれぞれ置換したルーチンである。
【0160】
ステップ1710にて、CPUはリッチ時冷却フラグXRIの値が「1」であるか否かを判定する。そして、リッチ時冷却フラグXRIの値が「1」であるとき、CPUはステップ1710にて「Yes」と判定してステップ1120に進む。これに対し、リッチ時冷却フラグXRIの値が「1」でないとき、CPUはステップ1710にて「No」と判定し、ステップ1795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0161】
更に、ステップ1720にて、CPUはリッチ時冷却フラグXRIの値を「0」に設定する。従って、図17のルーチンによれば、以下に述べる総ての条件が成立するとき、触媒冷却フラグXCoolの値がステップ1130にて「0」に変更され且つリッチ時冷却フラグXRIの値がステップ1720にて「0」に変更される。
・リッチ時冷却フラグXRIの値が「1」である。
・下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst未満である。
【0162】
これにより、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst未満になったとき、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上である場合に開始させられる触媒後方部の冷却が停止させられる。
【0163】
以上、説明したように、第4装置は、第1乃至第3装置と同様の空燃比制御手を有する。更に、第4装置は、前記空燃比センサ(下流側空燃比センサ57)に到達しているガスの空燃比がリッチ空燃比であると判定される場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出し(図16のステップ1050及びステップ1060を参照。)、且つ、前記空燃比センサ(下流側空燃比センサ57)に到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比でないと判定される場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出しない(図16のステップ1050での「No」との判定、図17のステップ1120での「Yes」との判定、及び、図17のステップ1130)を参照。)、触媒冷却制御手段を備える。
【0164】
従って、第4装置は、前記空燃比センサ(下流側空燃比センサ57)に到達しているガスの空燃比がリッチ空燃比であると判定される場合には触媒後方部を冷却することによって触媒後方部の酸素吸蔵能力を低下させて酸素を触媒43から早期に漏れ出させることができる。そのため、第4装置は、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリーン空燃比であると早期に判定することができ、機関10の空燃比をリッチ空燃比へと早期に切り替えることができる。その結果、機関10から排気通路へと排出されるNOxの量を低減することができるので、結果としてNOxの排出量を低減することができる。
【0165】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態に係る内燃機関の排ガス浄化装置(以下、単に「第5装置」と称呼する。)について説明する。第5装置は、第2装置と同様、機関10の運転状態が加速運転状態にあるときに触媒後方部の冷却を開始する。但し、第5装置は、上流側触媒43の略中央部に配置された触媒温度センサ58により検出される触媒温度TempCの所定の単位時間(例えば、5秒)あたりの増大量(以下、触媒温度変化率ΔTempCとも称呼する。)が閾値触媒温度変化率ΔTempCth以上となったとき、触媒後方部の冷却を開始する点においてのみ第2装置と相違している。
【0166】
図18は、燃料供給停止(フューエルカット、F/C)終了後においてリッチ空燃比の排ガスを触媒43に流入させ、その後、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも大きくなった時点の直後の時点t1以降においてリーン空燃比の排ガスを触媒43に流入させた場合の「触媒43の各部の温度」の変化を示したタイムチャートである。
【0167】
曲線C1、C2及びC3は、それぞれ、上流側触媒43の上流側端部から20mmだけ下流側の部位、上流側触媒43の中央部、及び、上流側触媒43の下流側端部から20mmだけ上流側の部位に触媒の温度を示す。
【0168】
曲線C1に示されているように、酸素を放出しきった触媒43(図18において「リッチ」として示す。)に過剰な酸素(リーン空燃比の排ガス)が流入すると、先ず、触媒前方部位の温度が上昇する(時刻t2を参照。)。これは、時刻t2において触媒43の上流側端部から20mmだけ下流の部位にて触媒43が酸化されている(触媒43が酸素を吸蔵している)ためであると考えられる。
【0169】
次いで、曲線C2に示されているように、時刻t3にて触媒43の中央部の温度が上昇する。これは、時刻t3において上流側触媒43の中央部にて触媒43が酸化されている(触媒43が酸素を吸蔵している)ためであると考えられる。従って、時刻t2〜時刻t3においては、触媒43の中央よりも前方側のみが酸素を吸蔵した状態にある(図18において「リーン」として示す。)と考えられる。
【0170】
その後、曲線C3に示されているように、時刻t4にて触媒43の触媒後方部位の温度が上昇する。これは、時刻t4において触媒43の下流側端部から20mmだけ上流の部位にて触媒43が酸化されている(触媒43が酸素を吸蔵している)ためであると考えられる。従って、時刻t3〜時刻t4においては、触媒43の上方側端部から触媒43の中央よりも僅かに後方側の部位までが酸素を吸蔵した状態にあると考えられる。
【0171】
更に、時刻t4以降の所定の時点にて下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以下に低下する。この状態では、触媒43から酸素が流出しているので、触媒43の全体が酸素を吸蔵している(即ち、触媒43全体がリッチである)と考えられる。
【0172】
以上から理解されるように、上流側触媒43の中央部に配設された触媒温度センサ58によって検出される触媒温度TempCが上昇する時点は、その触媒温度センサ58よりも上流側においては酸素が吸蔵されていて、触媒後方部が酸素を吸蔵し終える時点が短時間内に訪れる時点である。そこで、触媒温度TempCが上昇した時点にて触媒後方部を冷却すれば、触媒前方部の酸素吸蔵能力を最大限発揮しつつ(即ち、触媒前方部に酸素を最大限吸蔵させた上で)、触媒43から酸素を早期に漏れ出させることができる。
【0173】
(実際の作動)
第5装置のCPUは、図4乃至図6、図8、図11至図13、及び、図19にフローチャートにより示したルーチンを実行する。図4乃至図6、図8、並びに、図11至図13については説明済みである。よって、以下、図19を参照しながら第5装置の作動について説明する。
【0174】
第5装置のCPUは所定時間が経過する毎に図19にフローチャートにより示した「加速時冷却制御開始ルーチン」を実行するようになっている。このルーチンは、図10に示したルーチンのステップ1050とステップ1060の間にステップ1910を追加したルーチンである。
【0175】
このステップ1910にて、CPUは触媒温度センサ58により検出される触媒温度TempCの所定の単位時間あたりの増大量(触媒温度変化率ΔTempC)が閾値触媒温度変化率ΔTempCth以上であるか否かを判定する。このとき、触媒温度変化率ΔTempCが閾値触媒温度変化率ΔTempCth未満であると、CPUはステップ1910にて「No」と判定し、ステップ1995に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0176】
一方、CPUがステップ1910の処理を行う時点において、触媒温度変化率ΔTempCが閾値触媒温度変化率ΔTempCth以上であると、CPUはステップ1910にて「Yes」と判定してステップ1060及びステップ1070に進む。これにより、触媒冷却フラグXCoolの値が「1」に設定されるので、触媒後方部の冷却が開始される。更に、加速時冷却フラグXACの値が「1」に設定される。
【0177】
即ち、第5装置は、以下に述べる総ての条件が成立するとき、触媒後方部の冷却(加速時冷却制御)を開始する。
・触媒冷却フラグXCoolの値が「0」である。
・触媒温度TempCが第1温度TempLoth以上である。
・触媒温度TempCが第2温度TempHith以下である。
・吸入空気量Gaの変化率ΔGaが加速判定用閾値ΔGath以上である(機関10の運転状態が加速運転状態である。)。
・下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上である(下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリッチである。)。
・触媒温度変化率ΔTempCが閾値触媒温度変化率ΔTempCth以上である。
【0178】
なお、第5装置は、第2装置と同様、加速時冷却制御の実行中(加速時冷却フラグXAC=1)において下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも小さくなると(即ち、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリーンになると)、触媒後方部の冷却を停止する(図12のルーチンを参照。)。
【0179】
以上、説明したように、第5装置は、第2装置と同様の「空燃比制御手段及び触媒冷却制御手段」を備える。但し、第5装置の触媒冷却制御手段は、「触媒43の上流側の部位である触媒前方部と触媒43の下流側の部位である触媒後方部との間の触媒の温度を検出する触媒温度センサ58」を含むとともに、その触媒温度センサ58により検出される触媒の温度の変化率ΔTempCが所定の閾値変化率(閾値触媒温度変化率ΔTempCth)以上となったか否かを判定し(図19のステップ1910を参照。)、前記検出される触媒の温度の変化率ΔTempCが前記閾値変化率ΔTempCth以上となったと判定したときに前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させる指示信号を送出することを許容するように構成されている(図19のステップ1910での「Yes」との判定、及び、ステップ1060を参照。)。
【0180】
前述したように、触媒43内の温度変化率が大きくなっている部分は、その部分にて酸素が活発に吸蔵されている部分である。従って、第5装置のように、触媒43の前後方向の略中央部に備えられた触媒温度センサ58により検出される温度の変化率ΔTempCが前記閾値変化率ΔTempCth以上となった場合に触媒後方部の冷却を開始することにより、触媒前方部の酸素吸蔵能力を最大限発揮させ(即ち、触媒前方部においてNOxを最大限浄化させ)、且つ、触媒43の下流に酸素を早期に漏れ出させることができる。この結果、機関10の空燃比を早期にリッチ空燃比に切り替えることができるので、結果として、NOxの排出量をより低減することができる。
【0181】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る内燃機関の排ガス浄化装置は、触媒後方部を冷却する(触媒前方部に比べ触媒後方部をより高い冷却効率にて冷却する)ことによって触媒後方部の酸素吸蔵能力を低下せしめ、それにより、触媒43の下流に酸素を早期に流出させ始める。その結果、機関10の空燃比を早期にリッチ空燃比へと切り替えることができるので、NOxの排出量を低減することができる。
【0182】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上流側触媒43は、機関10の運転状態に関わらず、触媒後方部が常に冷却されるように構成されていてもよい。
【0183】
この場合、例えば、図20に示した変形例のように、上流側触媒43が「タンデム構成(貴金属の担体を排ガスの流れ方向において2つに分割した構成)」である場合、上流側の貴金属の担体(触媒前方の担体)43aと下流側の貴金属の担体(触媒後方の担体)43cとの間に「排ガスが通過することができる吸熱材(吸熱板)43b」を配設してもよい。これにより、下流側の貴金属の担体43cに流入する排ガスの温度を低下させることができるので、触媒後方部を冷却することができる。なお、図20において、触媒45は上述した下流側触媒である。
【0184】
更に、この変形例は、上記実施形態に記載した「触媒後方部を冷却する必要があるとき」にのみ吸熱材43bを上流側の担体43aと下流側担体43cとの間に物理的に挿入し、触媒後方部を冷却する必要がないときには吸熱材43bを上流側の担体43aと下流側担体43cとの間から取り出すように構成されてもよい。
【0185】
加えて、上記各実施形態において、触媒後方部は一律に冷却されていたが、触媒後端部に向かうほど「より強く冷却される」ように構成されていてもよい。これは、触媒冷却部44aにおいて触媒後端部に近づくほど冷却管44dの密度を上昇させることにより達成することができる。更に、本発明において、触媒43全体が冷却される態様であってもよい。即ち、本発明においては、触媒後方部が触媒前方部に比べて「より強く冷却される」ような構成を採用することができる。換言すると、本発明が採用する触媒冷却手段は、触媒後方部を触媒前方部に比べてより高い冷却効率にて冷却する手段であればよい。
【0186】
更に、上記各実施形態において、下流側空燃比センサ57に到達している排ガス(即ち、触媒43から流出している排ガス)の空燃比がリッチ空燃比であるかリーン空燃比であるかは、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上であるか否かに基いて判定されいた。しかしながら、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリッチ空燃比であるかリーン空燃比であるかの判定は、そのような判定方法に限定されない。
【0187】
例えば、各排ガス浄化装置は、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが、「理論空燃比相当電圧Vstよりも小さく且つ最小出力値minよりも大きい低側閾値」よりも小さい値から大きい値へと変化したとき、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリッチ空燃比であると判定するとともに、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが、「理論空燃比相当電圧Vstよりも大きく且つ最大出力値maxよりも小さい高側閾値」よりも大きい値から小さい値へと変化したとき、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリーン空燃比であると判定するように構成されていてもよい。
【0188】
加えて、各排ガス浄化装置は、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが「理論空燃比相当電圧Vstよりも小さい場合において出力値Voxsの微分値(dVoxs/dt)が所定の正の閾値以上となったとき」に下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリッチ空燃比であると判定するとともに、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが「理論空燃比相当電圧Vstよりも大きい場合において出力値Voxsの微分値(dVoxs/dt)が負の値であってその絶対値が所定の正の閾値以上となったとき」に下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリーン空燃比であると判定するように構成されていてもよい。
【0189】
更に、上記各実施形態における空燃比制御手段(サブフィードバック制御)に代え、従来より周知であるサブフィードバック制御を採用してもよい。即ち、各実施形態は、理論空燃比相当電圧Vstを下流側目標値Voxsrefとして設定し、下流側空燃比センサの出力値Voxsが下流側目標値Voxsrefに一致するようにPID制御を行うことによってサブフィードバック量KSFBを算出してもよい。
【符号の説明】
【0190】
10…内燃機関、20…機関本体部、30…吸気系統、40…排気系統、41…エキゾーストマニホールド、42…エキゾーストパイプ、43…上流側触媒(触媒)、44…触媒冷却装置、44a…触媒冷却部、44b…冷却水ポンプ、44c…放熱部、44d…冷却管、56…上流側空燃比センサ、57…下流側空燃比センサ(酸素濃度センサ)、58…触媒温度センサ、70…電気制御装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気通路に酸素吸蔵機能を有する触媒を備えた内燃機関の排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、内燃機関の排気通路に配設された酸素吸蔵機能(酸素吸蔵放出機能)を有する触媒(三元触媒)と、その触媒の下流側に配設された空燃比センサ(下流側空燃比センサ)と、を備え、その空燃比センサの出力値に基いて機関に供給される混合気の空燃比(機関の空燃比)を制御する空燃比制御装置(排ガス浄化装置)が広く知られている。触媒は酸素吸蔵機能を有するので、多量の未燃物を「吸蔵しておいた酸素」により浄化することができる(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−189399号公報
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、触媒が酸素吸蔵機能を有するが故に、特に、機関の加速時等において却ってNOxの排出量が増大する場合がある。そのような状況について「後に詳細に説明する図9のタイムチャート」を参照しながら具体的に述べると、例えば、下流側空燃比センサの出力値が理論空燃比よりもリッチな空燃比(以下、単に「リッチ空燃比」とも称呼する。)に対応する値である場合、従来装置は機関の空燃比を理論空燃比よりもリーンな空燃比(以下、単に「リーン空燃比」と称呼する。)に制御する(図9の時刻t0以降を参照。)。
【0005】
ところが、下流側空燃比センサの出力値は「機関の空燃比がリーン空燃比に制御され始めた時点」から所定の時間が経過しなければ「リーン空燃比に相当する値」へと変化しない。これは、機関から排出された排ガスが下流側空燃比センサに到達するには不可避的な時間(ガス輸送遅れ時間Td)が必要であること、及び、酸素吸蔵機能によって触媒が過剰な酸素を吸蔵するために触媒の下流に酸素が流出し難いので下流側空燃比センサの出力値はリッチ空燃比に相当する値を示し続けること、等に基づく。
【0006】
このため、下流側空燃比センサの出力値がリッチ空燃比に相当する値であって機関の空燃比がリーン空燃比に制御されているときに、機関の運転状態が加速運転状態となることにより吸入空気量(従って、排ガス量)が急激に増大すると、触媒上流の排気通路内に過剰な酸素及びNOxが大量に存在する状態となる(図9の破線L2を参照。)。その後、触媒には過剰な酸素が流入し続けるので、触媒の酸素吸蔵量は最大酸素吸蔵量(触媒が吸蔵できる酸素の量の最大値)Cmaxの近傍値に到達し、触媒は新たに触媒に流入する酸素を吸蔵しきれなくなる。よって、触媒の下流に酸素が流出するので、下流側空燃比センサの出力値はリーン空燃比に相当する値へと変化する(図9の時刻t5を参照。)。
【0007】
この時点(図9の時刻t5)まで、機関の空燃比はリーン空燃比に制御されていて、且つ、吸入空気量が増大しているから、触媒上流の排気通路内にはNOxが大量に存在している(図9の値N1を参照。)。よって、その触媒上流の排気通路内のNOxが「NOxを浄化できない状態となっている触媒(酸素吸蔵量が略最大酸素吸蔵量Cmaxに到達している触媒)」に流入するので、NOxの排出量が増大するという問題(即ち、触媒が酸素吸蔵機能を有するがために却ってエミッションが悪化するという問題)が生じる。
【0008】
本発明は上記課題に対処するために為されたものであって、その目的の一つは、触媒の下流側の部位である触媒後方部を冷却することによって酸素を触媒の下流に早期に流出させ、以って、NOxの排出量を低減することが可能な内燃機関の排ガス浄化装置を提供することにある。
【0009】
本発明による内燃機関の排ガス浄化装置(以下、単に「本発明装置」とも称呼する。)は、
前記機関の排気通路に配設された酸素吸蔵機能を備える触媒と、
前記排気通路の前記触媒の下流に配設された空燃比センサと、
前記空燃比センサの出力値に基いて前記機関に供給される混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段と、
前記触媒の下流側の部位である触媒後方部を冷却する触媒冷却手段(触媒の上流側の部位である触媒前方部を冷却することなく触媒後方部を冷却する触媒冷却手段、又は、触媒後方部を触媒前方部に比べてより高い冷却効率にて冷却する触媒冷却手段)と、
を備える。
【0010】
これによれば、触媒前方部は相対的に冷却されることなく触媒後方部が相対的に冷却されるので、触媒後方部の酸素吸蔵能力(単位体積あたりに吸蔵できる酸素量)が触媒前方部の酸素吸蔵能力よりも低下する。従って、触媒に流入するガス(触媒流入ガス)の空燃比がリーン空燃比である場合(即ち、触媒に過剰な酸素が流入している場合)、触媒前方部の酸素吸蔵量が触媒前方部の最大酸素吸蔵量に実質的に到達した後、触媒に所定量の酸素が流入したとき、触媒後方部はもはや酸素を吸蔵することができない。
【0011】
それ故、触媒後方部を冷却しない場合に比較して、触媒の下流に酸素が早期に流出するので、下流側空燃比センサの出力値はリーン空燃比に相当する値へと早期に変化する(図9の時刻t4を参照。)。従って、触媒後方部を冷却しない場合に比較して、より早いタイミングにて機関の空燃比はリッチ空燃比へと切り替えられる。これにより、「触媒によって浄化されることのないNOx」を含むガスが機関から排気通路へと排出される時間を短くすることができる。特に、加速時等においては、排気通路へと排出されるNOxの量をより減少させることができる(図9の値N2を参照。)。この結果、本発明装置は、NOxの排出量を低減することができる。
【0012】
本発明装置の態様において、前記触媒冷却手段は、指示信号に応答して前記触媒後方部を冷却する状態と前記触媒後方部を冷却しない状態との何れかの状態を実現するように構成されている。この態様の排ガス浄化装置は、更に、前記触媒の温度を取得するとともに前記取得された触媒の温度が所定の閾値温度以上であるか否かを判定し、前記触媒の温度が前記閾値温度以上であると判定した場合に前記触媒冷却手段により前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を前記触媒冷却手段に送出する触媒冷却制御手段を備える。
【0013】
機関冷間時には機関から未燃物が多量に排出される。更に、機関冷間時には触媒の温度も低いので、触媒の貴金属の活性度及び触媒全体の酸素吸蔵能力は機関暖機後に比較して低い。従って、触媒の温度が閾値温度以下となるような機関冷間時に触媒後方部が冷却されると、多量の未燃物が排出される虞がある。これに対し、上記構成によれば、触媒の温度が閾値温度未満である場合(即ち、触媒の貴金属の活性度及び酸素吸蔵能力が低い場合)には触媒後方部は冷却されないので、触媒全体として多くの未燃物を浄化する能力を確保することができる。この結果、機関冷間時における未燃物の排出量が増大することを回避することができるとともに、機関暖機後におけるNOxの排出量を低減することができる。
【0014】
更に、本発明装置の態様において、
前記空燃比制御手段は、前記空燃比センサの出力値に基いて前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ空燃比であるか又は理論空燃比よりもリーンなリーン空燃比であるかを判定するように構成される。更に、前記空燃比制御手段は、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リーン空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リッチ空燃比に設定し、且つ、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リーン空燃比に設定するように構成される。
【0015】
加えて、本発明装置の態様は、前記機関の運転状態が加速運転状態にあるか否かを判定するとともに前記機関の運転状態が加速運転状態にあると判定した場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出する触媒冷却制御手段を備える。
【0016】
これによれば、機関の運転状態が加速運転状態へと移行した場合(即ち、機関の空燃比を早期にリッチ空燃比に変更しないと多量のNOxが機関から排出され、その結果、多量のNOxが触媒から流出してしまう可能性が高い場合)、触媒後方部が冷却される。従って、触媒から酸素が早期に漏れ出すので、機関の空燃比をリッチ空燃比へと早期に切り替えることが可能となる。この結果、定常運転時においては触媒後方部が冷却されないので触媒が高い酸素吸蔵能力を維持し、以って、エミッションを良好に維持することができ、且つ、加速運転時にはNOxの排出量を低減することができる。
【0017】
加えて、本発明装置の態様は、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリッチ空燃比であると判定される場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出する触媒冷却制御手段を備える。
【0018】
前記空燃比制御手段によれば、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリッチ空燃比であると判定される場合には機関の空燃比はリーン空燃比に設定される。更に、前記空燃比制御手段によれば、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリーン空燃比であると判定される場合には機関の空燃比はリッチ空燃比に設定される。従って、上記構成のように、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリッチ空燃比であると判定される場合には触媒後方部を冷却することによって酸素を触媒から早期に漏れ出させ、それにより前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリーン空燃比であると早期に判定させることにより、機関から排出され且つ触媒が浄化できないNOxの量を低減することができる。更に、この態様によれば、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリッチ空燃比であると判定される場合に機関の運転状態が加速運転状態になったとき、仮に加速運転状態であるとの判別が遅れた場合であっても、酸素を触媒から早期に漏れ出させることができる。よって、加速時に急増するNOxの排出量を有効に低減することができる。
【0019】
更に、本発明装置の態様は、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリッチ空燃比であり且つ前記機関の運転状態が加速運転状態にあると判定したとき、前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出する触媒冷却制御手段を備える。
【0020】
これによれば、上述したように、触媒後方部を冷却しなければ「機関から排出され且つ触媒が浄化できないNOxの量」が著しく増大する場合において、触媒後方部が冷却される。その結果、NOxの排出量を低減することができる。加えて、定常運転時或いは前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリーン空燃比である場合、触媒後方部は冷却されないので、そのような場合において触媒は大きな酸素吸蔵量を利用してエミッションを良好に維持することができる。
【0021】
加えて、上述した何れかの触媒冷却制御手段は、
前記触媒の上流側の部位である触媒前方部と前記触媒後方部との間の触媒の温度を検出する触媒温度センサを含むとともに、前記触媒温度センサにより検出される触媒の温度の変化率が所定の閾値変化率以上となったか否かを判定し、前記検出される触媒の温度の変化率が前記閾値変化率以上となったと判定したときに前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させる指示信号を送出することを許容するように構成され得る。
【0022】
発明者は、実験により、触媒内において酸素が活発に吸蔵されている部分の温度は、他の部分の温度よりも高くなることを見出した(後に詳述する図18を参照。)。従って、上記構成のように、触媒の前後方向の略中央部に備えられた触媒温度センサにより検出される温度の変化率が大きくなった場合、触媒の上流端から触媒の略中央部までの領域において触媒は酸素を吸蔵しきっていると考えることができる。それ故、触媒温度センサにより検出される温度の変化率が大きくなったときに触媒後方部の冷却を開始することにより、触媒前方部の酸素吸蔵能力を最大限発揮させ(即ち、触媒前方部においてNOxを最大限浄化させ)、且つ、触媒の下流に酸素を早期に漏れ出させることができる。この結果、NOxの排出量をより低減することができる。
【0023】
本発明装置の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明装置の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の各実施形態に係る排ガス浄化装置が適用される内燃機関の概略図である。
【図2】図2は、排ガスの空燃比と図1に示した上流側空燃比センサの出力値との関係を示したグラフである。
【図3】図3は、排ガスの空燃比と図1に示した下流側空燃比センサの出力値との関係を示したグラフである。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態に係る排ガス浄化装置(第1装置)のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図5】図5は、第1装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図6】図6は、第1装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図7】図7は、第1装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図8】図8は、第1装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図9】図9は、第1装置の作動を説明するためのタイムチャートである。
【図10】図10は、本発明の第2実施形態に係る排ガス浄化装置(第2装置)のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図11】図11は、第2装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図12】図12は、第2装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図13】図13は、第2装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図14】図14は、本発明の第3実施形態に係る内燃機関の排ガス浄化装置(第3装置)のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図15】図15は、第3装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図16】図16は、本発明の第4実施形態に係る内燃機関の排ガス浄化装置(第4装置)のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図17】図17は、第4装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図18】図18は、本発明の第5実施形態に係る排ガス浄化装置(第5装置)の作動原理を説明するためのタイムチャートである。
【図19】図19は、第5装置のCPUが実行するルーチンを示したフローチャートである。
【図20】図20は、本発明の変形例に係る触媒の構成を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の各実施形態に係る内燃機関の排ガス浄化装置(以下、単に「装置」とも称呼する。)について図面を参照しながら説明する。この装置は、内燃機関の燃料噴射量制御装置でもあり、内燃機関の空燃比制御装置でもある。
【0026】
<第1実施形態>
(構成)
図1は、第1実施形態に係る排ガス浄化装置(以下、「第1装置」とも称呼する。)を、4サイクル・火花点火式・多気筒(直列4気筒)・内燃機関10に適用したシステムの概略構成を示している。
【0027】
内燃機関10は、機関本体部20と、吸気系統30と、排気系統40と、を含む。
【0028】
機関本体部20は、シリンダブロック部及びシリンダヘッド部を含む。機関本体部20は、複数の気筒(燃焼室)21を備えている。各気筒は、図示しない「吸気ポート及び排気ポート」と連通している。吸気ポートと燃焼室21との連通部は図示しない吸気弁により開閉される。排気ポートと燃焼室21との連通部は図示しない排気弁により開閉される。各燃焼室21には図示しない点火プラグが配設されている。点火プラグは、図示しない「イグナイタ及びイグニッションコイル」と接続されている。
【0029】
吸気系統30は、インテークマニホールド31、吸気管32、複数の燃料噴射弁33、及び、スロットル弁34を備えている。
【0030】
インテークマニホールド31は、複数の枝部31aとサージタンク31bとを備えている。複数の枝部31aのそれぞれの一端は、複数の吸気ポートのそれぞれに接続されている。複数の枝部31aの他端はサージタンク31bに接続されている。
【0031】
吸気管32の一端はサージタンク31bに接続されている。吸気管32の他端には図示しないエアフィルタが配設されている。
【0032】
燃料噴射弁33は、一つの気筒(燃焼室)21に対して一つずつ配設されている。燃料噴射弁33は吸気ポートに設けられている。即ち、複数の気筒のそれぞれは、他の気筒とは独立して燃料供給を行う燃料噴射弁33を備えている。燃料噴射弁33は、噴射指示信号に応答し、正常である場合に「その噴射指示信号に含まれる指示燃料噴射量の燃料」を吸気ポート(従って、燃料噴射弁33に対応する気筒)内に噴射するようになっている。
【0033】
より具体的に述べると、燃料噴射弁33は、指示燃料噴射量に応じた時間だけ開弁する。燃料噴射弁33に供給されている燃料の圧力は、その燃料の圧力と吸気ポート内の圧力との差圧が一定になるように図示しないプレッシャレギュレータにより制御されている。従って、燃料噴射弁33は指示燃料噴射量と等量の燃料を噴射する。
【0034】
スロットル弁34は、吸気管32内に回動可能に配設されている。スロットル弁34は、吸気通路の開口断面積を可変とするようになっている。スロットル弁34は、図示しないスロットル弁アクチュエータにより吸気管32内で回転駆動されるようになっている。
【0035】
排気系統40は、エキゾーストマニホールド41、エキゾーストパイプ42、エキゾーストパイプ42に配設された上流側触媒43、触媒冷却装置44、及び、上流側触媒43よりも下流においてエキゾーストパイプ42に配設された「図示しない下流側触媒」を備えている。
【0036】
エキゾーストマニホールド41は、複数の枝部41aと集合部41bとを備えている。複数の枝部41aのそれぞれの一端は、複数の排気ポートのそれぞれに接続されている。複数の枝部41aのそれぞれの他端は集合部41bに集合している。この集合部41bは、複数(2以上であり、本例では4つ)の気筒から排出された排ガスが集合する部分であるから、排気集合部HKとも称呼される。
【0037】
エキゾーストパイプ42は集合部41bに接続されている。排気ポート、エキゾーストマニホールド41及びエキゾーストパイプ42は、排気通路を構成している。
【0038】
上流側触媒43は、セラミックの一種であるコージェライトからなり且つアルミナのコート層によりコーティングされた担持体を備え、その担持体に「白金、ロジウム及びパラジウム等」の貴金属(触媒物質)からなる活性成分を担持する三元触媒装置(排気浄化用の触媒)である。触媒43は、触媒43に流入するガス(触媒流入ガス)の空燃比が「三元触媒のウインドウ内の空燃比(例えば、理論空燃比)」であるとき、HC,CO,H2などの未燃成分を酸化するとともに窒素酸化物(NOx)を還元する機能を有する。この機能は触媒機能とも称呼される。更に、触媒43は、触媒43に流入する(過剰な)酸素を吸蔵する酸素吸蔵機能(酸素吸蔵放出機能)を有する。触媒43は、触媒43に流入するガスが過剰な未燃物を含んでいるとき、吸蔵している酸素を放出してその未燃物を浄化する。従って、この酸素吸蔵機能により空燃比が理論空燃比から偏移したとしても未燃成分及び窒素酸化物を浄化することができる。つまり、酸素吸蔵機能により、ウインドウの幅が拡大する。酸素吸蔵機能は、担持体に担持されているセリア(CeO2)等の酸素吸蔵材によってもたらされる。
【0039】
触媒冷却装置(触媒冷却手段)44は、触媒冷却部44a、冷却水ポンプ44b、放熱部44c及び冷却管44dを備えている。触媒冷却部44a、冷却水ポンプ44b及び冷却部44cは冷却管44dにより接続されている。
【0040】
触媒冷却部44aは、触媒後方部の周囲を取り囲むように配設されている。触媒後方部は、上流側触媒43の一部であって、上流側触媒43を流れる排ガスの流れ方向において上流側触媒43の略中央部よりも下流側の部位である。触媒冷却部44aは、その内部に冷却管44dを備えていて、冷却管44dを流れる冷却水(冷媒)により触媒後方部を冷却するようになっている。
【0041】
冷却水ポンプ44bは、電動ポンプであって、電気制御装置70から供給される指示信号に応答して回転及び停止する。冷却水ポンプ44bは、回転することにより冷却管44d内の冷却水を触媒冷却部44aに向けて圧送するようになっている。
【0042】
放熱部44cは、冷却管44d内の冷却水と大気との間で熱交換を行わせることにより、冷却水の温度を低下させるようになっている。
【0043】
このように構成された冷却装置44は、電気制御装置70からの指示信号に応答して触媒後方部を冷却する状態(冷却水ポンプ44bが回転される状態)と前記触媒後方部を冷却しない状態(冷却水ポンプ44bの回転が停止される状態)との何れかの状態を実現するように構成されている。
【0044】
図示しない下流側触媒は、上流側触媒43と同様の三元触媒装置である。なお、本明細書において、「触媒」は特に断りのない限り上流側触媒43を指す。
【0045】
このシステムは、熱線式エアフローメータ51、スロットルポジションセンサ52、水温センサ53、クランクポジションセンサ54、インテークカムポジションセンサ55、上流側空燃比センサ56、下流側空燃比センサ57、触媒温度センサ(触媒中央部触媒床温センサ)58、及び、アクセル開度センサ59、を備えている。
【0046】
エアフローメータ51は、吸気管32内を流れる吸入空気の質量流量(吸入空気流量)Gaに応じた信号を出力するようになっている。即ち、吸入空気量Gaは、単位時間あたりに機関10に吸入される吸入空気量を表す。
【0047】
スロットルポジションセンサ52は、スロットル弁34の開度(スロットル弁開度)を検出し、スロットル弁開度TAを表す信号を出力するようになっている。
【0048】
水温センサ53は、内燃機関10の冷却水の温度を検出し、冷却水温THWを表す信号を出力するようになっている。冷却水温THWは、機関10の暖機状態(機関10の温度)を表すパラメータである。
【0049】
クランクポジションセンサ54は、クランク軸が10°回転する毎に幅狭のパルスを有するとともに同クランク軸が360°回転する毎に幅広のパルスを有する信号を出力するようになっている。この信号は、後述する電気制御装置70によって機関回転速度NEに変換される。
【0050】
インテークカムポジションセンサ55は、インテークカムシャフトが所定角度から90度、次いで90度、更に180度回転する毎に一つのパルスを出力するようになっている。後述する電気制御装置70は、クランクポジションセンサ54及びインテークカムポジションセンサ55からの信号に基づいて、基準気筒(例えば第1気筒)の圧縮上死点を基準とした絶対クランク角度CAを取得するようになっている。この絶対クランク角度CAは、基準気筒の圧縮上死点において「0°クランク角度」に設定され、クランク軸の回転角度に応じて720°クランク角度まで増大し、その時点にて再び0°クランク角度に設定される。
【0051】
上流側空燃比センサ56は、エキゾーストマニホールド41の集合部41b(排気集合部HK)と上流側触媒43との間の位置において「エキゾーストマニホールド41及びエキゾーストパイプ42の何れか」に配設されている。
【0052】
上流側空燃比センサ56は、例えば、特開平11−72473号公報、特開2000−65782号公報及び特開2004−69547号公報等に開示された「拡散抵抗層を備える限界電流式広域空燃比センサ」である。
【0053】
上流側空燃比センサ56は、図2に示したように、上流側空燃比センサ56の配設位置を流れる排ガスの空燃比(上流側空燃比abyfs)に応じた出力値Vabyfsを「空燃比センサ出力」として出力する。この出力値Vabyfsは、上流側空燃比センサ56に到達している排ガスの空燃比が大きくなるほど(リーンとなるほど)増大する。出力値Vabyfsは、上流側空燃比センサ56に到達している排ガスの空燃比が理論空燃比であるとき、理論空燃比相当値Vstoichに一致する。
【0054】
後述する電気制御装置70は、図2に示された関係を「空燃比変換テーブルMapabyfs(Vabyfs)」としてROM内に格納していて、実際の出力値Vabyfsを空燃比変換テーブルMapabyfs(Vabyfs)に適用することにより上流側空燃比abyfs(検出空燃比abyfs)を取得するようになっている。
【0055】
再び、図1を参照すると、下流側空燃比センサ57は、エキゾーストパイプ42内に配設されている。下流側空燃比センサ57の配設位置は、上流側触媒43よりも下流側であり、且つ、下流側触媒よりも上流側(即ち、上流側触媒43と下流側触媒との間の排気通路)である。下流側空燃比センサ57は、周知の起電力式の酸素濃度センサ(安定化ジルコニア等の固体電解質を用いた濃淡電池型の酸素濃度センサ)である。下流側空燃比センサ57は、排気通路であって下流側空燃比センサ57が配設されている部位を通過するガスである被検出ガスの空燃比(下流側空燃比)に応じた出力値Voxsを発生するようになっている。換言すると、出力値Voxsは、上流側触媒43から流出し且つ下流側触媒に流入するガスの空燃比(下流側空燃比afdown)に応じた値である。
【0056】
この出力値Voxsは、図3に示したように、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチのとき(即ち、被検出ガスに過剰な酸素が実質的に含まれていないとき)最大出力値max(例えば、約0.9V〜1.0V)となる。出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンのとき(即ち、被検出ガスに過剰な酸素が実質的に含まれているとき)最小出力値min(例えば、約0.1V〜0V)となる。更に、出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比であるとき最大出力値maxと最小出力値minの略中間の電圧Vst(中間電圧Vst、理論空燃比相当電圧Vst、例えば、約0.5V)となる。出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチな空燃比からリーンな空燃比へと変化する際に最大出力値maxから最小出力値minへと急変する。同様に、出力値Voxsは、被検出ガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンな空燃比からリッチな空燃比へと変化する際に最小出力値minから最大出力値maxへと急変する。
【0057】
図1に示した触媒温度センサ58は、触媒前方部と触媒後方部との間であって触媒冷却部44aによって冷却されない部分(触媒前後方向中央部)に配設され、その配設された部位の触媒の温度(触媒床温)TempCを表す信号を出力するようになっている。触媒前方部は、上流側触媒43の一部(触媒後方部以外の部分)であって、上流側触媒43を流れる排ガスの流れ方向において上流側触媒43の略中央部よりも上流側の部位である。
【0058】
アクセル開度センサ59は、運転者によって操作されるアクセルペダルAPの操作量Accp(アクセルペダル操作量、アクセルペダルAPの開度)を表す信号を出力するようになっている。アクセルペダル操作量Accpは、アクセルペダルAPの操作量が大きくなるとともに大きくなる。
【0059】
電気制御装置70は、「CPU、CPUが実行するプログラム、ルックアップテーブル(マップ)、関数及び定数等を予め記憶したROM、CPUが必要に応じてデータを一時的に格納するRAM、バックアップRAM、並びに、ADコンバータを含むインターフェース等」からなる周知のマイクロコンピュータである。
【0060】
バックアップRAMは、機関10を搭載した車両の図示しないイグニッション・キー・スイッチの位置(オフ位置、始動位置及びオン位置等の何れか)に関わらず、車両に搭載されたバッテリから電力の供給を受けるようになっている。バックアップRAMは、バッテリから電力の供給を受けている場合、CPUの指示に応じてデータを格納する(データが書き込まれる)とともに、そのデータを読み出し可能となるように保持(記憶)する。従って、バックアップRAMは、機関10の運転停止中においてもデータを保持することができる。
【0061】
バックアップRAMは、バッテリが車両から取り外される等によりバッテリからの電力供給が遮断されると、データを保持することができない。そこで、CPUは、バックアップRAMへの電力供給が再開されたとき、バックアップRAMに保持されるべきデータを初期化(デフォルト値に設定)するようになっている。なお、バックアップRAMは、EEPROM等の読み書き可能な不揮発性メモリであってもよい。
【0062】
電気制御装置70は、上述したセンサ等と接続され、CPUにそれらのセンサからの信号を供給するようになっている。更に、電気制御装置70は、CPUの指示に応じて、各気筒に対応して設けられた点火プラグ(実際にはイグナイタ)、各気筒に対応して設けられた燃料噴射弁33、冷却水ポンプ44b、及び、スロットル弁アクチュエータ等に駆動信号(指示信号)を送出するようになっている。
【0063】
なお、電気制御装置70は、取得されたアクセルペダルの操作量Accpが大きくなるほどスロットル弁開度TAが大きくなるように、スロットル弁アクチュエータに指示信号を送出するようになっている。即ち、電気制御装置70は、運転者により変更される機関10の加速操作量(アクセルペダル操作量Accp)に応じて「機関10の吸気通路に配設されたスロットル弁34」の開度を変更するスロットル弁駆動手段を備えている。
【0064】
(第1装置による制御の概要)
第1装置は、上流側空燃比センサ56の出力値Vabyfsに基く上流側空燃比abyfsを目標空燃比abyfrに一致させるためのメインフィードバック制御(メインフィードバック量を用いた空燃比制御)を実行する。
【0065】
更に、第1装置は、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上であるか否かを判定し、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上であると判定した場合には下流側空燃比センサ57に到達している排ガスがリッチである(その排ガスに過剰な酸素が含まれていない)と判定して、目標空燃比abyfrをリーン空燃比に設定するようにサブフィードバック量KSFBを設定する。一方、第1装置は、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst未満であると判定した場合には下流側空燃比センサ57に到達している排ガスがリーンである(その排ガスに過剰な酸素が含まれている)と判定して、目標空燃比abyfrをリッチ空燃比に設定するようにサブフィードバック量KSFBを設定する。このサブフィードバック量KSFBを用いた制御は、サブフィードバック制御(下流側空燃比センサ57の出力値Voxsに基く空燃比制御)とも称呼される。
【0066】
加えて、第1装置は、以下に述べるように、触媒後方部を冷却する。
(1)第1装置は、上流側触媒43の温度(触媒温度TempC)が第1温度(低側閾値温度、触媒活性判定温度)TempLoth未満であるとき、触媒後方部の冷却を行わない。
(2)第1装置は、上流側触媒43の温度が第1温度TempLoth以上であるとき、触媒後方部の冷却を行う。
【0067】
(実際の作動)
次に、第1装置の実際の作動について説明する。
【0068】
<燃料噴射制御>
第1装置のCPUは、図4に示した燃料噴射制御ルーチンを、任意の気筒のクランク角度が吸気上死点前の所定クランク角度に一致する毎に、その気筒に対して繰り返し実行するようになっている。前記所定クランク角度は、例えば、BTDC90°CA(吸気上死点前90°クランク角度)である。クランク角度が前記所定クランク角度に一致した気筒は「燃料噴射気筒」とも称呼される。CPUは、この燃料噴射制御ルーチンにより、指示燃料噴射量Fiの計算及び燃料噴射の指示を行う。
【0069】
任意の気筒のクランク角度が吸気上死点前の所定クランク角度と一致すると、CPUはステップ400から処理を開始し、ステップ410にてフューエルカットフラグXFCが「0」であるか否かを判定する。フューエルカットフラグXFCの値は、イニシャルルーチンにおいて「0」に設定される。更に、フューエルカットフラグXFCの値は、フューエルカット条件が成立したとき(例えば、車両運転状態が減速運転状態となったとき)に「1」に設定され、フューエルカットフラグXFCの値が「1」である場合にフューエルカット条件が不成立となったとき「0」に設定される。なお、イニシャルルーチンは、機関10が搭載された車両のイグニッション・キー・スイッチがオフからオンに変更されたときにCPUにより実行されるルーチンである。
【0070】
いま、フューエルカットフラグXFCの値が「0」であると仮定する。この場合、CPUは、ステップ410にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ420乃至ステップ460の処理を順に行い、ステップ495に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0071】
ステップ420:CPUは、理論空燃比stoichからサブフィードバック量KSFBを減じた値を目標空燃比abyfr(abyfr=stoich−KSFB)に設定する。サブフィードバック量KSFBは、後述する図6に示したルーチンにより別途求められている。
【0072】
ステップ430:CPUは、「エアフローメータ51により計測された吸入空気量Ga、クランクポジションセンサ54の信号に基いて取得された機関回転速度NE、及び、ルックアップテーブルMapMc」に基いて「燃料噴射気筒の1回の吸気行程において、その燃料噴射気筒に吸入される空気量」である「筒内吸入空気量Mc(k)」を取得する。筒内吸入空気量Mc(k)は、各吸気行程に対応されながらRAM内に記憶される。筒内吸入空気量Mc(k)は、周知の空気量推定モデル(吸気通路における空気の挙動を模した物理法則に従って構築されたモデル)により算出されてもよい。
【0073】
ステップ440:CPUは、筒内吸入空気量Mc(k)を目標空燃比abyfrで除することにより基本燃料噴射量Fbaseを求める。従って、基本燃料噴射量Fbaseは、機関の空燃比(従って、上流側触媒43に流入する排ガスの空燃比)を目標空燃比abyfrに一致させるために計算上必要な燃料噴射量のフィードフォワード量である。このステップ440は、機関に供給される混合気の空燃比を目標空燃比abyfrに一致させるためのフィードフォワード制御手段(基本燃料噴射量算出手段)を構成している。
【0074】
ステップ450:CPUは、基本燃料噴射量Fbaseをメインフィードバック量DFiにより補正する。より具体的には、CPUは、基本燃料噴射量Fbaseにメインフィードバック量DFiを加えることにより、指示燃料噴射量(最終燃料噴射量)Fiを算出する。メインフィードバック量DFiは、機関の空燃比(従って、上流側触媒43に流入する排ガスの空燃比)を目標空燃比abyfrに一致させるための空燃比フィードバック量であり、上流側空燃比センサ56の出力値Vabyfsに基いて求められる。メインフィードバック量DFiの算出方法については後述する。
【0075】
ステップ460:CPUは、「指示燃料噴射量Fiの燃料」を「燃料噴射気筒に対応して設けられている燃料噴射弁33」から噴射させるための噴射指示信号を、その燃料噴射弁33に送出する。
【0076】
この結果、機関の空燃比を目標空燃比abyfrに一致させるために計算上必要な量(必要と推定される量)の燃料が燃料噴射気筒の燃料噴射弁33から噴射させられる。即ち、ステップ420乃至ステップ460は、機関10に供給される混合気の空燃比が目標空燃比abyfrとなるように指示燃料噴射量Fiを制御する指示燃料噴射量制御手段を構成している。
【0077】
一方、CPUがステップ410の処理を実行する時点において、フューエルカットフラグXFCの値が「1」に設定されていると、CPUはそのステップ410にて「No」と判定し、ステップ495に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。この場合、ステップ460の処理による燃料噴射が実行されないので、燃料の供給(燃料噴射)が停止される運転、即ち、フューエルカット運転が実行される。
【0078】
<メインフィードバック量の算出>
CPUは図5にフローチャートにより示した「メインフィードバック量算出ルーチン」を所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ500から処理を開始し、ステップ505に進んで「メインフィードバック制御条件(上流側空燃比フィードバック制御条件)」が成立しているか否かを判定する。
【0079】
メインフィードバック制御条件は以下の総ての条件が成立したときに成立する。
(A1)上流側空燃比センサ56が活性化している。
(A2)機関の負荷KLが閾値KLth以下である。
(A3)フューエルカット運転中でない(フューエルカットフラグXFCが「0」である。)。
【0080】
なお、負荷KLは、ここでは下記の(1)式により求められる負荷率である。この負荷KLに代え、アクセルペダル操作量Accpが用いられても良い。(1)式において、Mcは筒内吸入空気量であり、ρは空気密度(単位は(g/l))、Lは機関10の排気量(単位は(l))、「4」は機関10の気筒数である。
KL=(Mc/(ρ・L/4))・100% …(1)
【0081】
いま、メインフィードバック制御条件が成立しているものとして説明を続ける。この場合、CPUはステップ505にて「Yes」と判定して以下に述べるステップ510乃至ステップ540の処理を順に行い、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0082】
ステップ510:CPUは、図4のステップ420にて算出され且つRAMに格納されている「Nサイクル前の目標空燃比abyfr(k−N)」を読み込む。
【0083】
ステップ515:CPUは、下記(2)式に示したように、上流側空燃比センサ56の出力値Vabyfsを図2に示したテーブルMapabyfsに適用することにより、検出空燃比abyfsを得る。
abyfs=Mapabyfs(Vabyfs) …(2)
【0084】
ステップ520:CPUは、下記(3)式に従って、「現時点よりもNサイクル前の時点において燃焼室21に実際に供給された燃料の量」である「筒内燃料供給量Fc(k−N)」を求める。即ち、CPUは、「現時点よりもNサイクル(即ち、N・720°クランク角度)前の時点における筒内吸入空気量Mc(k−N)」を「検出空燃比abyfs」により除すことにより、筒内燃料供給量Fc(k−N)を求める。
Fc(k−N)=Mc(k−N)/abyfs …(3)
【0085】
このように、筒内燃料供給量Fc(k−N)を求めるために、現時点からNサイクル前の筒内吸入空気量Mc(k−N)を検出空燃比abyfsで除すのは、「燃焼室21内での混合気の燃焼により生成された排ガス」が上流側空燃比センサ56に到達するまでに「Nサイクルに相当する時間」を要しているからである。
【0086】
ステップ525:CPUは、下記(4)式に従って、「現時点よりもNサイクル前の時点において燃焼室21に供給されるべきであった燃料の量」である「目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)」を求める。即ち、CPUは、現時点からNサイクル前の筒内吸入空気量Mc(k−N)を現時点からNサイクル前の目標空燃比abyfr(k−N)で除すことにより、目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)を求める。
Fcr(k−N)=Mc(k−N)/abyfr(k−N) …(4)
【0087】
ステップ530:CPUは、下記(5)式に従って、筒内燃料供給量偏差DFcを取得する。即ち、CPUは、目標筒内燃料供給量Fcr(k−N)から筒内燃料供給量Fc(k−N)を減じることにより、筒内燃料供給量偏差DFcを求める。この筒内燃料供給量偏差DFcは、Nストローク前の時点で筒内に供給された燃料の過不足分を表す量となる。
DFc=Fcr(k−N)−Fc(k−N) …(5)
【0088】
ステップ535:CPUは、下記(6)式に従って、メインフィードバック量DFiを求める。この(6)式において、Gpは予め設定された比例ゲイン、Giは予め設定された積分ゲインである。更に、(6)式の「値SDFc」は「筒内燃料供給量偏差DFcの積分値」である。つまり、CPUは、検出空燃比abyfsを目標空燃比abyfrに一致させるための比例積分制御により「メインフィードバック量DFi」を算出する。
DFi=Gp・DFc+Gi・SDFc …(6)
【0089】
ステップ540:CPUは、その時点における筒内燃料供給量偏差DFcの積分値SDFcに上記ステップ530にて求められた筒内燃料供給量偏差DFcを加えることにより、新たな筒内燃料供給量偏差の積分値SDFcを取得する。
【0090】
以上により、メインフィードバック量DFiが比例積分制御により算出され、このメインフィードバック量DFiが前述した図4のステップ450の処理により指示燃料噴射量Fiに反映される。
【0091】
一方、図5のステップ505の判定時において、メインフィードバック制御条件が不成立であると、CPUはそのステップ505にて「No」と判定してステップ545に進み、メインフィードバック量DFiの値を「0」に設定する。次いで、CPUは、ステップ550にて筒内燃料供給量偏差の積分値SDFcに「0」を格納する。その後、CPUは、ステップ595に進んで本ルーチンを一旦終了する。このように、メインフィードバック制御条件が不成立であるとき、メインフィードバック量DFiは「0」に設定される。従って、基本燃料噴射量Fbaseのメインフィードバック量DFiによる補正は行われない。
【0092】
<サブフィードバック量KSFBの算出>
CPUは図6にフローチャートにより示した「サブフィードバック量KSFBの算出ルーチン」を所定時間の経過毎に繰り返し実行している。従って、所定のタイミングになると、CPUはステップ600から処理を開始してステップ610に進み、サブフィードバック制御条件が成立しているか否かを判定する。
【0093】
サブフィードバック制御条件は以下の総ての条件が成立したときに成立する。
(B1)メインフィードバック制御条件が成立している。
(B2)下流側空燃比センサ57が活性化している。
【0094】
いま、サブフィードバック制御条件が成立していると仮定して説明を続ける。この場合、CPUはステップ610にて「Yes」と判定し、ステップ620に進んで下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上であるか否かを判定する。即ち、CPUは、ステップ620にて「下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリッチ空燃比である(過剰な酸素を含んでいないガスである)か否か」を判定する。
【0095】
このとき、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上であると(即ち、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリッチ空燃比であると)、CPUはステップ620にて「Yes」と判定してステップ630に進み、サブフィードバック量KSFBを負の一定値(−A、但し、値Aは正の一定値)に設定する。その後、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、目標空燃比abyfrが理論空燃比stoichよりも大きい値(stoich+A)に設定されるので、機関の空燃比はリーン空燃比に制御される。
【0096】
一方、CPUがステップ620の処理を行う時点において、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst未満であると(即ち、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスに過剰な酸素が含まれておらず、その排ガスの空燃比がリーン空燃比であると)、CPUはステップ620にて「No」と判定してステップ640に進み、サブフィードバック量KSFBを正の一定値Aに設定する。その後、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。これにより、目標空燃比abyfrが理論空燃比stoichよりも小さい値(stoich−A)に設定されるので、機関の空燃比はリッチ空燃比に制御される。
【0097】
更に、CPUがステッ610の処理を実行する時点において、サブフィードバック制御条件が成立していなければ、CPUはステップ610にて「No」と判定してステップ650に進み、サブフィードバック量KSFBの値を「0」に設定する。この結果、目標空燃比abyfrは理論空燃比stoichに設定される。その後、CPUはステップ695に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0098】
<触媒冷却フラグ操作>
CPUは、所定時間が経過する毎に図7にフローチャートにより示した「触媒冷却フラグ操作ルーチン」を実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図7のステップ700から処理を開始してステップ710に進み、上流側触媒43の温度(触媒温度TempC)が第1温度TempLoth未満であるか否かを判定する。
【0099】
このとき、触媒温度TempCが第1温度TempLoth未満であると、CPUはステップ710にて「Yes」と判定してステップ720に進み、触媒冷却フラグXCoolの値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ795に進んで、本ルーチンを一旦終了する。なお、触媒冷却フラグXCoolの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。
【0100】
一方、CPUがステップ710の処理を行う時点において、触媒温度TempCが第1温度TempLoth以上であると、CPUはステップ710にて「No」と判定してステップ730に進み、触媒冷却フラグXCoolの値を「1」に設定する。その後、CPUはステップ795に進んで、本ルーチンを一旦終了する。
【0101】
<触媒冷却(触媒後方部冷却)実施>
CPUは、所定時間が経過する毎に図8にフローチャートにより示した「触媒冷却実施ルーチン」を実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図8のステップ800から処理を開始してステップ810に進み、触媒冷却フラグXCoolの値が「1」であるか否かを判定する。
【0102】
このとき、触媒冷却フラグXCoolの値が「1」であると、CPUはステップ810にて「Yes」と判定してステップ820に進み、冷却水ポンプ44bを回転させることによって触媒後方部の冷却を開始する。その後、CPUはステップ825に進んで本ルーチンを一旦終了する。このように、触媒冷却フラグXCoolの値は、触媒後方部の冷却が実施されているとき「1」に設定される。
【0103】
一方、CPUがステップ810の処理を行う時点において、触媒冷却フラグXCoolの値が「0」であると、CPUはステップ810にて「No」と判定してステップ830に進み、冷却水ポンプ44bの回転を停止させることによって触媒後方部の冷却を停止(禁止)する。その後、CPUはステップ825に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0104】
このように、第1装置は、触媒温度TempCが第1温度TempLoth以上である場合、触媒後方部の温度が触媒前方部の温度よりも低下するように触媒後方部を触媒43の外部から冷却する。この触媒後方部の冷却によりもたらされる効果について図9を参照しながら説明する。
【0105】
図9は、目標空燃比abyfr(即ち、機関の空燃比)、触媒43の上流の排気通路に排出される酸素の総量、触媒43に流入する酸素の総量(従って、酸素吸蔵量OSAに相当する値)、及び、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsの変化の様子を示したタイムチャートである。
【0106】
図9に示した例においては、機関10の運転状態が定常状態にある場合の時刻t0にて出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstを超え、それにより下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比はリッチ空燃比と判定され、その結果、目標空燃比abyfrがリーン空燃比に設定されている。これにより、時刻t0以降において、実線L1により示したように、触媒43の上流の排気通路(以下、「触媒上流排気通路部」とも称呼する。)に排出される酸素の総量は次第に(略直線的に)増大する。このため、実線L10により示したように、「時刻t0からガス輸送遅れ時間Tdが経過した時刻t1」以降において、過剰な酸素が触媒に流入し始める。なお、図9に示した例においては、燃料噴射弁31により噴射された燃料が触媒上流排気通過部に流出するまでの遅れ時間は省略されている。
【0107】
ここで、触媒後方部が冷却されていない場合の触媒43の最大酸素吸蔵量がCmaxであると仮定し、触媒後方部が冷却されている場合の触媒43の最大酸素吸蔵量がC’maxであると仮定する。値C’maxは値Cmaxよりも当然に小さい。
【0108】
係る状態が継続すると、時刻t2にて機関10から触媒上流排気通路部に流出した酸素の総量は値C’maxに到達し、その後、時刻t3にて触媒上流排気通路部に流出した酸素の総量は値Cmaxに到達する。従って、「時刻t2からガス輸送遅れ時間Tdが経過した時刻t4」にて触媒の酸素吸蔵量OSAは値C’maxに到達し、「時刻t3からガス輸送遅れ時間Tdが経過した時刻t5」にて触媒の酸素吸蔵量OSAは値Cmaxに到達する。
【0109】
いま、時刻t3の近傍にて機関10の運転状態が加速運転状態へと変化したと仮定する。このとき、触媒後方部が冷却されていなければ、触媒43の最大酸素吸蔵量は値Cmaxであるから、時刻t5にて酸素が触媒43から漏れ出す。従って、実線の曲線M1に示したように、時刻t5にて、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsは理論空燃比相当電圧Vstよりも大きい値から小さい値へと変化し(従って、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリーン空燃比であると判定され)、目標空燃比abyfrはリッチ空燃比へと変更させられる。よって、この時刻t5まで、触媒上流排気通路部には機関10から過剰な酸素(及びNOx)が排出されている。しかも、機関10の運転状態が加速運転状態へと変化しているので、吸入空気量Gaは急激に増大し、単位時間あたりに触媒上流排気通路部に排出される酸素(及びNOx)の量は破線L2により示したように急増する。この結果、触媒後方部が冷却されていない場合に触媒43の下流に排出されてしまうNOxの量は値N1に応じた量となる。
【0110】
これに対し、触媒後方部が冷却されていると、触媒43の最大酸素吸蔵量は値C’maxであるから、時刻t4にて酸素が触媒43から漏れ出す。従って、破線の曲線M2に示したように、時刻t4にて、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsは理論空燃比相当電圧Vstよりも大きい値から小さい値へと変化し(従って、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリーン空燃比であると判定され)、目標空燃比abyfrはリッチ空燃比へと変更させられる。この場合、時刻t4まで、触媒上流排気通路部には機関10から過剰な酸素(及びNOx)が排出されているが、時刻t4における吸入空気量Gaの増大量はそれ程大きくない。この結果、触媒後方部が冷却されている場合に触媒43の下流に排出されてしまうNOxの量は「値N1よりも小さい値N2」に応じた量となる。
【0111】
以上の説明から理解されるように、第1装置においては触媒後方部が冷却されているので、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも大きい値から小さい値へと「より早いタイミング」にて変化し、この結果、排気通路に排出され且つ触媒43によって浄化されないNOxの量を低減することができる。
【0112】
以上、説明したように、第1装置は、
内燃機関10の排気通路に配設された酸素吸蔵機能を備える触媒(43)と、
前記排気通路の前記触媒(43)の下流に配設された空燃比センサ(下流側空燃比センサ57)と、
前記空燃比センサの出力値(下流側空燃比センサ57の出力値Voxs)に基いて前記機関10に供給される混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段(図4乃至図6、特に、図6のルーチンにより算出されるサブフィードバック量KSFB、及び、図4のステップ420を参照。)と、
前記触媒43の下流側の部位である触媒後方部を冷却する触媒冷却手段と(触媒冷却装置44の特に触媒冷却部44a)、
を備えた内燃機関の排ガス浄化装置であって、
前記触媒冷却手段は、指示信号に応答して前記触媒後方部を冷却する状態と前記触媒後方部を冷却しない状態との何れかの状態を実現するように構成されており(図8及び触媒冷却装置44の特に冷却水ポンプ44b)、
更に、
前記触媒(43)の温度を取得するとともに前記取得された触媒の温度が所定の閾値温度(第1温度TempLoth)以上であるか否かを判定し(触媒温度センサ58、図7のステップ710)、前記触媒の温度が前記閾値温度以上であると判定した場合に前記触媒冷却手段により前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を前記触媒冷却手段に送出し(図7のステップ710、ステップ730及び図8のステップ810、ステップ820)、前記触媒の温度が前記閾値温度未満であると判定した場合に前記触媒冷却手段により前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を前記触媒冷却手段に送出しない(図7の、特に、ステップ710、ステップ720及び図8のステップ810、ステップ830)、触媒冷却制御手段を備える。
【0113】
従って、第1装置は、特に、触媒43にリーン空燃比のガスが流入している場合において触媒43の酸素吸蔵量がある程度の値(触媒43が冷却されない場合の触媒43の最大酸素吸蔵量よりも小さい値)となったとき触媒43から酸素が流出する。そのために、触媒流入ガスの空燃比をリッチ空燃比へと早期に切り替えることができる。よって、触媒上流排気通路部に多量のNOxが流出することを回避することができ、その結果、触媒43により浄化されないNOxの量を低下することができる。更に、第1装置は、触媒43の温度が低い場合(触媒43の活性度が低い場合)には触媒後方部を冷却しないので、機関10が完全に暖機する前には触媒43全体として多くの未燃物を浄化する能力を確保することができる。この結果、触媒全体の最大酸素吸蔵量Cmaxを低下させた触媒を用いる場合に比較して、機関冷間時における未燃物の排出量が増大することを回避することもできる。
【0114】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る内燃機関の排ガス浄化装置(以下、単に「第2装置」と称呼する。)について説明する。第2装置は、以下に述べるように触媒後方部を冷却する点においてのみ、第1装置と相違する。
【0115】
(1)第2装置は、上流側触媒43の温度(触媒温度TempC)が、第1温度(低側閾値温度、触媒活性判定温度)TempLoth以上であり、且つ、第2温度(高側閾値温度、触媒過熱保護温度)TempHith以下である場合において、吸入空気量Gaの所定の単位時間あたりの増加量ΔGa(以下、単に「吸入空気量変化率ΔGa」とも称呼する。)が加速判定用閾値ΔGath以上となり(即ち、機関10の運転状態が加速運転状態にあり)、且つ、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上である(下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリッチ空燃比であるか、及び/又は、機関の空燃比(目標空燃比abyfr)がリーン空燃比である)とき、触媒後方部の冷却を行う。
【0116】
(2)第2装置は、上述した機関10の加速運転に基づく触媒後方部の冷却を実行している最中において、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst未満になると(下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリーン空燃比に変化するか、及び/又は、機関の空燃比(目標空燃比abyfr)がリッチ空燃比に変更させられると)、触媒後方部の冷却を停止する。
【0117】
(3)第2装置は、触媒後方部の冷却を実行しているときに触媒温度TempCが上記第1温度TempLothよりも低くなると、触媒の浄化率が過度に低下することを防止するために触媒後方部の冷却を停止する。
【0118】
(4)第2装置は、触媒後方部の冷却を実行していないときに触媒温度TempCが上記第2温度TempHithよりも高くなると、触媒を過熱から保護するために、触媒後方部の冷却を実行する。この場合、触媒温度TempCが、上記第2温度TempHithから所定値α(α>0)を減じた温度(TempHith−α)よりも低くなると、触媒後方部の冷却を停止する。
【0119】
(実際の作動)
第2装置のCPUは、図4乃至図6、図8、図10乃至図13にフローチャートにより示したルーチンを実行する。図4乃至図6、及び、図8については説明済みである。よって、以下、図10乃至図13を参照しながら第2装置の作動について説明する。
【0120】
第2装置のCPUは、所定時間が経過する毎に図10にフローチャートにより示した「加速時冷却制御開始ルーチン」を実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図10のステップ1000から処理を開始してステップ1010に進み、触媒冷却フラグXCoolの値が「0」であるか否か(即ち、触媒後方部の冷却が実施されているか否か)を判定する。
【0121】
このとき、触媒冷却フラグXCoolの値が「0」であると、CPUはステップ1010にて「Yes」と判定し、ステップ1020に進んで触媒温度TempCが第1温度TempLoth以上であるか否かを判定する。
【0122】
このとき、触媒温度TempCが第1温度TempLoth以上であると、CPUはステップ1020にて「Yes」と判定し、ステップ1030に進んで触媒温度TempCが第2温度TempHith以下であるか否かを判定する。
【0123】
このとき、触媒温度TempCが第2温度TempHith以下であると、CPUはステップ1030にて「Yes」と判定し、ステップ1040に進んで「吸入空気量Gaの所定の単位時間あたりの増加量ΔGa(即ち、吸入空気量変化率ΔGa)が加速判定用閾値ΔGath(吸入空気量変化率閾値ΔGath)以上であるか否か」を判定する。なお、CPUは、図示しないルーチンを前記単位時間の経過毎に繰り返し実行し、そのルーチンにおいて最新の吸入空気量Gaから前記単位時間前の吸入空気量Gaを減じることにより「吸入空気量変化率ΔGa」を取得している。このステップ1030は、機関10の運転状態が加速運転状態にあるか否かを判定するステップである。
【0124】
このとき、吸入空気量変化率ΔGaが加速判定用閾値ΔGath以上であると、CPUはステップ1040にて「Yes」と判定してステップ1050に進み、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上であるか否かを判定する。即ち、CPUはステップ1040にて、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsに基いて下流側空燃比センサ57に到達しているガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ空燃比であるか否かを判定する。
【0125】
このとき、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上であると、CPUはステップ1050にて「Yes」と判定してステップ1060に進み、触媒冷却フラグXCoolの値を「1」に設定する。この結果、CPUが図8に示したルーチンを実行することによって、触媒後方部の冷却が開始される。
【0126】
次に、CPUはステップ1070に進み、加速時冷却フラグXACの値を「1」に設定する。このように、加速時冷却フラグXACの値は、機関10の運転状態が加速運転状態にある場合に触媒後方部の冷却が開始されたとき「1」に設定され、その触媒後方部の冷却(機関10の加速運転に基づく触媒後方部の冷却)が終了したときに「0」に設定される(後に説明する図11のステップ1140を参照。)。なお、加速時冷却フラグXACの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。その後、CPUはステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0127】
一方、CPUが本ルーチンの処理を実行する時点にて、
・触媒冷却フラグXCoolの値が「0」でない(「1」である)場合、
・触媒温度TempCが第1温度TempLoth未満である場合、
・触媒温度TempCが第2温度TempHithよりも大きい場合、
・吸入空気量変化率ΔGaが加速判定用閾値ΔGath未満である場合、及び、
・下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst未満である場合、
の何れかが成立していると、CPUは上記場合に対応する「ステップ1010乃至ステップ1050のそれぞれのステップ」にて「No」と判定し、ステップ1095に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。従って、上記場合の何れか一つが成立しているとき、触媒冷却フラグXCool及び加速時冷却フラグXACの値は変更されない。
【0128】
更に、第2装置のCPUは、所定時間が経過する毎に図11にフローチャートにより示した「加速時冷却制御終了ルーチン」を実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図11のステップ1100から処理を開始してステップ1110に進み、加速時冷却フラグXACの値が「1」であるか否かを判定する。
【0129】
このとき、加速時冷却フラグXACの値が「1」であると、CPUはステップ1110にて「Yes」と判定してステップ1120に進み、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst未満であるか否かを判定する。即ち、CPUはステップ1120にて、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsに基いて下流側空燃比センサ57に到達しているガスの空燃比が理論空燃比よりもリーンなリーン空燃比であるか否かを判定する。
【0130】
このとき、出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst未満であると、CPUはステップ1120にて「Yes」と判定してステップ1130に進み、触媒冷却フラグXCoolの値を「0」に設定する。この結果、CPUが図8に示したルーチンを実行することによって、触媒後方部の冷却が停止させられる。次に、CPUはステップ1140に進み、加速時冷却フラグXACの値を「0」に設定する。その後、CPUはステップ1105に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0131】
一方、CPUが本ルーチンの処理を実行する時点にて、
・触媒冷却フラグXCoolの値が「1」でない(「0」である)場合、及び、
・出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上である場合、
の何れかが成立していると、CPUは上記場合に対応する「ステップ1110及びステップ1120のそれぞれのステップ」にて「No」と判定し、ステップ1195に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。従って、上記場合の何れか一つが成立しているとき、触媒冷却フラグXCool及び加速時冷却フラグXACの値は変更されない。
【0132】
更に、第2装置のCPUは、所定時間が経過する毎に図12にフローチャートにより示した「触媒浄化率低下防止ルーチン」を実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図12のステップ1200から処理を開始してステップ1210に進み、触媒冷却フラグXCoolの値が「1」であるか否かを判定する。
【0133】
このとき、触媒冷却フラグXCoolの値が「1」であると、CPUはステップ1210にて「Yes」と判定してステップ1220に進み、触媒温度TempCが第1温度TempLoth未満であるか否かを判定する。即ち、CPUは、ステップ1210及びステップ1220において、触媒後方部の冷却中に触媒温度TempCが第1温度TempLothよりも小さくなったか否かを判定する。
【0134】
このとき、触媒温度TempCが第1温度TempLoth未満であると、CPUはステップ1220にて「Yes」と判定してステップ1230に進み、触媒冷却フラグXCoolの値を「0」に設定する。これにより、触媒後方部の冷却が停止させられる。次いで、CPUはステップ1240に進み、加速時冷却フラグXACの値を「0」に設定し、ステップ1295に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0135】
一方、CPUが本ルーチンの処理を実行する時点にて、
・触媒冷却フラグXCoolの値が「1」でない(「0」である)場合、及び、
・触媒温度TempCが第1温度TempLoth以上である場合、
の何れかが成立していると、CPUは上記場合に対応する「ステップ1210及びステップ1220のそれぞれのステップ」にて「No」と判定し、ステップ1295に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。従って、上記場合の何れか一つが成立しているとき、触媒冷却フラグXCool及び加速時冷却フラグXACの値は変更されない。
【0136】
更に、第2装置のCPUは、所定時間が経過する毎に図13にフローチャートにより示した「触媒過熱防止ルーチン」を実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、CPUは図13のステップ1300から処理を開始してステップ1310に進み、触媒冷却フラグXCoolの値が「0」であるか否かを判定する。このとき、触媒冷却フラグXCoolの値が「1」であると、CPUはステップ1310にて「No」と判定し、後述するステップ1350に直接進む。
【0137】
これに対し、触媒冷却フラグXCoolの値が「0」であると、CPUはステップ1310にて「Yes」と判定してステップ1320に進み、触媒温度TempCが第2温度TempHithよりも大きいか否かを判定する。このとき、触媒温度TempCが第2温度TempHith以下であると、CPUはステップ1320にて「No」と判定し、後述するステップ1350に直接進む。
【0138】
これに対し、触媒温度TempCが第2温度TempHithよりも大きいと、CPUはステップ1320にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1330及びステップ1340の処理を順に行い、ステップ1350に進む。
【0139】
ステップ1330:CPUは、触媒冷却フラグXCoolの値を「1」に設定する。これにより、触媒後方部の冷却が実施される。
ステップ1340:CPUは、触媒保護冷却フラグXhogoの値を「1」に設定する。このように、触媒保護冷却フラグXhogoの値は、触媒温度TempCが第2温度TempHithよりも大きいことに基いて触媒後方部の冷却が実施されているときに「1」に設定される。なお、触媒保護冷却フラグXhogoの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。
【0140】
次に、CPUはステップ1350に進み、触媒保護冷却フラグXhogoの値が「1」であるか否かを判定する。このとき、触媒保護冷却フラグXhogoの値が「1」でなければ、CPUはステップ1350にて「No」と判定し、ステップ1395に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0141】
これに対し、触媒保護冷却フラグXhogoの値が「1」であると、CPUはステップ1350にて「Yes」と判定してステップ1360に進み、触媒温度TempCが「第2温度TempHithから所定の正の温度αを減じた温度(TempC−α)」未満であるか否かを判定する。このとき、触媒温度TempCが温度(TempC−α)未満でなければ、CPUはステップ1360にて「No」と判定し、ステップ1395に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0142】
これに対し、触媒温度TempCが温度(TempC−α)未満であると、CPUはステップ1360にて「Yes」と判定し、以下に述べるステップ1370及びステップ1380の処理を順に行い、その後、ステップ1395に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0143】
ステップ1370:CPUは、触媒冷却フラグXCoolの値を「0」に設定する。これにより、触媒後方部の冷却が停止させられる。
ステップ1380:CPUは、触媒保護冷却フラグXhogoの値を「0」に設定する。
【0144】
以上、説明したように、第2装置は、
触媒43の下流に配設された空燃比センサの出力値(下流側空燃比センサ57の出力値Voxs)に基いて「その空燃比センサに到達しているガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ空燃比であるか又は理論空燃比よりもリーンなリーン空燃比であるか」を判定するとともに(図6のステップ620を参照。)、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リーン空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リッチ空燃比に設定し(図6のステップ640及び図4のステップ420を参照。)、且つ、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リーン空燃比に設定する(図6のステップ630及び図4のステップ420を参照。)ように構成された空燃比制御手段と、
前記機関10の運転状態が加速運転状態にあると判定され(図10のステップ1040での「Yes」との判定を参照。)且つ前記空燃比センサ(下流側空燃比センサ57)に到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定されている場合(図10のステップ1050での「Yes」との判定を参照。)に、前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出し(図10のステップ1060)、且つ、前記空燃比センサ(下流側空燃比センサ57)に到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定されている場合であっても機関10の運転状態が加速運転状態にないと判定した場合には前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出しない触媒冷却制御手段(図10のステップ1040での「No」との判定、及び、図8のルーチンを参照。)と、
を備える。
【0145】
従って、触媒43からリッチ空燃比の排ガスが流出しているが故に触媒流入ガスの空燃比がリーン空燃比である期間において機関10の運転状態が加速運転状態へと移行した場合(即ち、機関10の空燃比を早期にリッチ空燃比に変更しないと多量のNOxが機関10から排出され、その結果、多量のNOxが触媒43から流出してしまう可能性が高い場合)、触媒後方部が冷却される。これにより、触媒43の触媒後方部の酸素吸蔵能力が低下して触媒43から酸素が早期に漏れ出すので、機関10の空燃比をリッチ空燃比へと早期に切り替えることが可能となる。この結果、定常運転時においては触媒後方部が冷却されないので触媒43が高い酸素吸蔵能力を維持し、以って、エミッションを良好に維持することができ、且つ、加速運転時にはNOxの排出量を低減することができる。
【0146】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る内燃機関の排ガス浄化装置(以下、単に「第3装置」と称呼する。)について説明する。第3装置は、機関10の運転状態が加速運転状態となったとき、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsに関わらず(即ち、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比に関わらず)、触媒後方部の冷却を開始する点において第2装置と相違する。
【0147】
(実際の作動)
第3装置のCPUは、図4乃至図6、図8、図12乃至図15にフローチャートにより示したルーチンを実行する。図4乃至図6、図8、図12及び図13については説明済みである。よって、以下、図14乃至図15を参照しながら第3装置の作動について説明する。なお、既に説明したステップと同じ処理を行うステップには、既に説明したステップと同じ符号が付されている。以下において、そのようなステップの詳細な説明は適宜省略される。
【0148】
第3装置のCPUは、所定時間が経過する毎に図14にフローチャートにより示した「加速時冷却制御開始ルーチン」を実行するようになっている。このルーチンは、図10に示したルーチンのステップ1050を省略したルーチンである。従って、以下に述べる総ての条件が成立するとき、触媒冷却フラグXCoolの値が「1」に変更され且つ加速時冷却フラグXACの値が「1」に設定される。これにより、機関10の加速運転に基づく触媒後方部の冷却(加速時冷却制御)が開始される。
【0149】
・触媒冷却フラグXCoolの値が「0」である。
・触媒温度TempCが第1温度TempLoth以上である。
・触媒温度TempCが第2温度TempHith以下である。
・吸入空気量変化率ΔGaが加速判定用閾値ΔGath以上である。
【0150】
加えて、CPUは所定時間が経過する毎に図15にフローチャートにより示した「加速時冷却制御終了ルーチン」を実行するようになっている。このルーチンは、図11に示したルーチンのステップ1120をステップ1510に置換したルーチンである。このステップ1510にて、CPUは「加速時冷却フラグXACの値が「0」から「1」へと変更されてから所定時間Tthが経過したか否か」を判定する。この所定時間Tthは、加速時冷却フラグXACの値が「0」から「1」へと変更されてから所定時間Tthが経過すれば、触媒43から流出している排ガスの空燃比がリッチ空燃比からリーン空燃比(及び、その逆へ)変化するのに十分な時間となるように設定されている。
【0151】
そして、CPUは、加速時冷却フラグXACの値が「0」から「1」へと変更されてから所定時間Tthが経過していると、ステップ1510にて「Yes」と判定してステップ1130及びステップ1140の処理を行う。加速時冷却フラグXACの値が「0」から「1」へと変更されてから所定時間Tthが経過していなければ、CPUはステップ1510にて「No」と判定し、ステップ1595に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。従って、加速時冷却フラグXACの値が「0」から「1」へと変更されてから所定時間Tthが経過した時点において、触媒後方部の冷却が停止させられる。
【0152】
なお、ステップ1510は、「加速時冷却フラグXACの値が「0」から「1」へと切り換わる直前の下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも大きい場合には出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以下となったか否か、及び、加速時冷却フラグXACの値が「0」から「1」へと切り換わる直前の下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以下である場合には出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも大きくなったか否か、を判定するステップ」に置換されてもよい。即ち、CPUは、機関10の加速運転に基づく触媒後方部の冷却(加速時冷却制御)が開始された場合、その開始時点(加速時冷却制御開始時点)において下流側空燃比センサ57に到達していた排ガスの空燃比がリッチ空燃比であった場合にはリーン空燃比へと変化した時点、及び、その開始時点(加速時冷却制御開始時点)において下流側空燃比センサ57に到達していた排ガスの空燃比がリーン空燃比であった場合にはリッチ空燃比へと変化した時点、にて、触媒後方部の冷却を停止してもよい。
【0153】
以上、説明したように、第3装置は、
第1及び第2装置と同様の空燃比制御手段と、
機関10の運転状態が加速運転状態にあるか否かを判定するとともに(図14のステップ1040を参照。)、機関10の運転状態が加速運転状態にあると判定した場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出し、且つ、機関10の運転状態が加速運転状態にないと判定した場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出しない触媒冷却制御手段(図14のステップ1040、ステップ1060、図8のルーチンを参照。)と、
を備える。
【0154】
従って、機関10の運転状態が加速運転状態へと移行した場合(即ち、機関10の空燃比を早期にリッチ空燃比に変更しないと多量のNOxが機関10から排出され、その結果、多量のNOxが触媒43から流出してしまう可能性が高い場合)、触媒後方部が冷却される。これにより、触媒後方部の酸素吸蔵能力が低下して触媒43から酸素が早期に漏れ出すから、機関10の空燃比をリッチ空燃比へと早期に切り替えることが可能となる。この結果、定常運転時においては触媒後方部が冷却されないので触媒43が高い酸素吸蔵能力を維持し、以って、エミッションを良好に維持することができ、且つ、加速運転時にはNOxの排出量を低減することができる。
【0155】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る内燃機関の排ガス浄化装置(以下、単に「第4装置」と称呼する。)について説明する。第4装置は、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上であるとき(即ち、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスがリッチ空燃比であると判定されているとき)、機関10の運転状態に関わらず、触媒後方部の冷却を開始する点において、第2装置と相違する。
【0156】
(実際の作動)
第4装置のCPUは、図4乃至図6、図8、図12、図13、図16及び図17にフローチャートにより示したルーチンを実行する。図4乃至図6、図8、図12及び図13については説明済みである。よって、以下、図16乃至図17を参照しながら第4装置の作動について説明する。なお、既に説明したステップと同じ処理を行うステップには、既に説明したステップと同じ符号が付されている。以下において、そのようなステップの詳細な説明は適宜省略される。
【0157】
第4装置のCPUは、所定時間が経過する毎に図16にフローチャートにより示した「リッチ時冷却制御開始ルーチン」を実行するようになっている。このルーチンは、図10に示したルーチンのステップ1040を省略し、且つ、ステップ1070をステップ1610に置換したルーチンである。従って、以下に述べる総ての条件が成立するとき、触媒冷却フラグXCoolの値がステップ1060にて「1」に変更され且つリッチ時冷却フラグXRIの値がステップ1610にて「1」に設定される。これにより、触媒後方部の冷却が開始される。なお、リッチ時冷却フラグXRIの値は、上述したイニシャルルーチンにおいて「0」に設定されるようになっている。
【0158】
・触媒冷却フラグXCoolの値が「0」である。
・触媒温度TempCが第1温度TempLoth以上である。
・触媒温度TempCが第2温度TempHith以下である。
・下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上である。
【0159】
加えて、CPUは所定時間が経過する毎に図17にフローチャートにより示した「リッチ時冷却制御終了ルーチン」を実行するようになっている。このルーチンは、図11に示したルーチンの「ステップ1110及びステップ1140」を「ステップ1710及びステップ1720」にそれぞれ置換したルーチンである。
【0160】
ステップ1710にて、CPUはリッチ時冷却フラグXRIの値が「1」であるか否かを判定する。そして、リッチ時冷却フラグXRIの値が「1」であるとき、CPUはステップ1710にて「Yes」と判定してステップ1120に進む。これに対し、リッチ時冷却フラグXRIの値が「1」でないとき、CPUはステップ1710にて「No」と判定し、ステップ1795に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0161】
更に、ステップ1720にて、CPUはリッチ時冷却フラグXRIの値を「0」に設定する。従って、図17のルーチンによれば、以下に述べる総ての条件が成立するとき、触媒冷却フラグXCoolの値がステップ1130にて「0」に変更され且つリッチ時冷却フラグXRIの値がステップ1720にて「0」に変更される。
・リッチ時冷却フラグXRIの値が「1」である。
・下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst未満である。
【0162】
これにより、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst未満になったとき、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上である場合に開始させられる触媒後方部の冷却が停止させられる。
【0163】
以上、説明したように、第4装置は、第1乃至第3装置と同様の空燃比制御手を有する。更に、第4装置は、前記空燃比センサ(下流側空燃比センサ57)に到達しているガスの空燃比がリッチ空燃比であると判定される場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出し(図16のステップ1050及びステップ1060を参照。)、且つ、前記空燃比センサ(下流側空燃比センサ57)に到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比でないと判定される場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出しない(図16のステップ1050での「No」との判定、図17のステップ1120での「Yes」との判定、及び、図17のステップ1130)を参照。)、触媒冷却制御手段を備える。
【0164】
従って、第4装置は、前記空燃比センサ(下流側空燃比センサ57)に到達しているガスの空燃比がリッチ空燃比であると判定される場合には触媒後方部を冷却することによって触媒後方部の酸素吸蔵能力を低下させて酸素を触媒43から早期に漏れ出させることができる。そのため、第4装置は、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比がリーン空燃比であると早期に判定することができ、機関10の空燃比をリッチ空燃比へと早期に切り替えることができる。その結果、機関10から排気通路へと排出されるNOxの量を低減することができるので、結果としてNOxの排出量を低減することができる。
【0165】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態に係る内燃機関の排ガス浄化装置(以下、単に「第5装置」と称呼する。)について説明する。第5装置は、第2装置と同様、機関10の運転状態が加速運転状態にあるときに触媒後方部の冷却を開始する。但し、第5装置は、上流側触媒43の略中央部に配置された触媒温度センサ58により検出される触媒温度TempCの所定の単位時間(例えば、5秒)あたりの増大量(以下、触媒温度変化率ΔTempCとも称呼する。)が閾値触媒温度変化率ΔTempCth以上となったとき、触媒後方部の冷却を開始する点においてのみ第2装置と相違している。
【0166】
図18は、燃料供給停止(フューエルカット、F/C)終了後においてリッチ空燃比の排ガスを触媒43に流入させ、その後、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも大きくなった時点の直後の時点t1以降においてリーン空燃比の排ガスを触媒43に流入させた場合の「触媒43の各部の温度」の変化を示したタイムチャートである。
【0167】
曲線C1、C2及びC3は、それぞれ、上流側触媒43の上流側端部から20mmだけ下流側の部位、上流側触媒43の中央部、及び、上流側触媒43の下流側端部から20mmだけ上流側の部位に触媒の温度を示す。
【0168】
曲線C1に示されているように、酸素を放出しきった触媒43(図18において「リッチ」として示す。)に過剰な酸素(リーン空燃比の排ガス)が流入すると、先ず、触媒前方部位の温度が上昇する(時刻t2を参照。)。これは、時刻t2において触媒43の上流側端部から20mmだけ下流の部位にて触媒43が酸化されている(触媒43が酸素を吸蔵している)ためであると考えられる。
【0169】
次いで、曲線C2に示されているように、時刻t3にて触媒43の中央部の温度が上昇する。これは、時刻t3において上流側触媒43の中央部にて触媒43が酸化されている(触媒43が酸素を吸蔵している)ためであると考えられる。従って、時刻t2〜時刻t3においては、触媒43の中央よりも前方側のみが酸素を吸蔵した状態にある(図18において「リーン」として示す。)と考えられる。
【0170】
その後、曲線C3に示されているように、時刻t4にて触媒43の触媒後方部位の温度が上昇する。これは、時刻t4において触媒43の下流側端部から20mmだけ上流の部位にて触媒43が酸化されている(触媒43が酸素を吸蔵している)ためであると考えられる。従って、時刻t3〜時刻t4においては、触媒43の上方側端部から触媒43の中央よりも僅かに後方側の部位までが酸素を吸蔵した状態にあると考えられる。
【0171】
更に、時刻t4以降の所定の時点にて下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以下に低下する。この状態では、触媒43から酸素が流出しているので、触媒43の全体が酸素を吸蔵している(即ち、触媒43全体がリッチである)と考えられる。
【0172】
以上から理解されるように、上流側触媒43の中央部に配設された触媒温度センサ58によって検出される触媒温度TempCが上昇する時点は、その触媒温度センサ58よりも上流側においては酸素が吸蔵されていて、触媒後方部が酸素を吸蔵し終える時点が短時間内に訪れる時点である。そこで、触媒温度TempCが上昇した時点にて触媒後方部を冷却すれば、触媒前方部の酸素吸蔵能力を最大限発揮しつつ(即ち、触媒前方部に酸素を最大限吸蔵させた上で)、触媒43から酸素を早期に漏れ出させることができる。
【0173】
(実際の作動)
第5装置のCPUは、図4乃至図6、図8、図11至図13、及び、図19にフローチャートにより示したルーチンを実行する。図4乃至図6、図8、並びに、図11至図13については説明済みである。よって、以下、図19を参照しながら第5装置の作動について説明する。
【0174】
第5装置のCPUは所定時間が経過する毎に図19にフローチャートにより示した「加速時冷却制御開始ルーチン」を実行するようになっている。このルーチンは、図10に示したルーチンのステップ1050とステップ1060の間にステップ1910を追加したルーチンである。
【0175】
このステップ1910にて、CPUは触媒温度センサ58により検出される触媒温度TempCの所定の単位時間あたりの増大量(触媒温度変化率ΔTempC)が閾値触媒温度変化率ΔTempCth以上であるか否かを判定する。このとき、触媒温度変化率ΔTempCが閾値触媒温度変化率ΔTempCth未満であると、CPUはステップ1910にて「No」と判定し、ステップ1995に直接進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0176】
一方、CPUがステップ1910の処理を行う時点において、触媒温度変化率ΔTempCが閾値触媒温度変化率ΔTempCth以上であると、CPUはステップ1910にて「Yes」と判定してステップ1060及びステップ1070に進む。これにより、触媒冷却フラグXCoolの値が「1」に設定されるので、触媒後方部の冷却が開始される。更に、加速時冷却フラグXACの値が「1」に設定される。
【0177】
即ち、第5装置は、以下に述べる総ての条件が成立するとき、触媒後方部の冷却(加速時冷却制御)を開始する。
・触媒冷却フラグXCoolの値が「0」である。
・触媒温度TempCが第1温度TempLoth以上である。
・触媒温度TempCが第2温度TempHith以下である。
・吸入空気量Gaの変化率ΔGaが加速判定用閾値ΔGath以上である(機関10の運転状態が加速運転状態である。)。
・下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上である(下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリッチである。)。
・触媒温度変化率ΔTempCが閾値触媒温度変化率ΔTempCth以上である。
【0178】
なお、第5装置は、第2装置と同様、加速時冷却制御の実行中(加速時冷却フラグXAC=1)において下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vstよりも小さくなると(即ち、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリーンになると)、触媒後方部の冷却を停止する(図12のルーチンを参照。)。
【0179】
以上、説明したように、第5装置は、第2装置と同様の「空燃比制御手段及び触媒冷却制御手段」を備える。但し、第5装置の触媒冷却制御手段は、「触媒43の上流側の部位である触媒前方部と触媒43の下流側の部位である触媒後方部との間の触媒の温度を検出する触媒温度センサ58」を含むとともに、その触媒温度センサ58により検出される触媒の温度の変化率ΔTempCが所定の閾値変化率(閾値触媒温度変化率ΔTempCth)以上となったか否かを判定し(図19のステップ1910を参照。)、前記検出される触媒の温度の変化率ΔTempCが前記閾値変化率ΔTempCth以上となったと判定したときに前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させる指示信号を送出することを許容するように構成されている(図19のステップ1910での「Yes」との判定、及び、ステップ1060を参照。)。
【0180】
前述したように、触媒43内の温度変化率が大きくなっている部分は、その部分にて酸素が活発に吸蔵されている部分である。従って、第5装置のように、触媒43の前後方向の略中央部に備えられた触媒温度センサ58により検出される温度の変化率ΔTempCが前記閾値変化率ΔTempCth以上となった場合に触媒後方部の冷却を開始することにより、触媒前方部の酸素吸蔵能力を最大限発揮させ(即ち、触媒前方部においてNOxを最大限浄化させ)、且つ、触媒43の下流に酸素を早期に漏れ出させることができる。この結果、機関10の空燃比を早期にリッチ空燃比に切り替えることができるので、結果として、NOxの排出量をより低減することができる。
【0181】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る内燃機関の排ガス浄化装置は、触媒後方部を冷却する(触媒前方部に比べ触媒後方部をより高い冷却効率にて冷却する)ことによって触媒後方部の酸素吸蔵能力を低下せしめ、それにより、触媒43の下流に酸素を早期に流出させ始める。その結果、機関10の空燃比を早期にリッチ空燃比へと切り替えることができるので、NOxの排出量を低減することができる。
【0182】
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上流側触媒43は、機関10の運転状態に関わらず、触媒後方部が常に冷却されるように構成されていてもよい。
【0183】
この場合、例えば、図20に示した変形例のように、上流側触媒43が「タンデム構成(貴金属の担体を排ガスの流れ方向において2つに分割した構成)」である場合、上流側の貴金属の担体(触媒前方の担体)43aと下流側の貴金属の担体(触媒後方の担体)43cとの間に「排ガスが通過することができる吸熱材(吸熱板)43b」を配設してもよい。これにより、下流側の貴金属の担体43cに流入する排ガスの温度を低下させることができるので、触媒後方部を冷却することができる。なお、図20において、触媒45は上述した下流側触媒である。
【0184】
更に、この変形例は、上記実施形態に記載した「触媒後方部を冷却する必要があるとき」にのみ吸熱材43bを上流側の担体43aと下流側担体43cとの間に物理的に挿入し、触媒後方部を冷却する必要がないときには吸熱材43bを上流側の担体43aと下流側担体43cとの間から取り出すように構成されてもよい。
【0185】
加えて、上記各実施形態において、触媒後方部は一律に冷却されていたが、触媒後端部に向かうほど「より強く冷却される」ように構成されていてもよい。これは、触媒冷却部44aにおいて触媒後端部に近づくほど冷却管44dの密度を上昇させることにより達成することができる。更に、本発明において、触媒43全体が冷却される態様であってもよい。即ち、本発明においては、触媒後方部が触媒前方部に比べて「より強く冷却される」ような構成を採用することができる。換言すると、本発明が採用する触媒冷却手段は、触媒後方部を触媒前方部に比べてより高い冷却効率にて冷却する手段であればよい。
【0186】
更に、上記各実施形態において、下流側空燃比センサ57に到達している排ガス(即ち、触媒43から流出している排ガス)の空燃比がリッチ空燃比であるかリーン空燃比であるかは、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが理論空燃比相当電圧Vst以上であるか否かに基いて判定されいた。しかしながら、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリッチ空燃比であるかリーン空燃比であるかの判定は、そのような判定方法に限定されない。
【0187】
例えば、各排ガス浄化装置は、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが、「理論空燃比相当電圧Vstよりも小さく且つ最小出力値minよりも大きい低側閾値」よりも小さい値から大きい値へと変化したとき、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリッチ空燃比であると判定するとともに、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが、「理論空燃比相当電圧Vstよりも大きく且つ最大出力値maxよりも小さい高側閾値」よりも大きい値から小さい値へと変化したとき、下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリーン空燃比であると判定するように構成されていてもよい。
【0188】
加えて、各排ガス浄化装置は、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが「理論空燃比相当電圧Vstよりも小さい場合において出力値Voxsの微分値(dVoxs/dt)が所定の正の閾値以上となったとき」に下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリッチ空燃比であると判定するとともに、下流側空燃比センサ57の出力値Voxsが「理論空燃比相当電圧Vstよりも大きい場合において出力値Voxsの微分値(dVoxs/dt)が負の値であってその絶対値が所定の正の閾値以上となったとき」に下流側空燃比センサ57に到達している排ガスの空燃比がリーン空燃比であると判定するように構成されていてもよい。
【0189】
更に、上記各実施形態における空燃比制御手段(サブフィードバック制御)に代え、従来より周知であるサブフィードバック制御を採用してもよい。即ち、各実施形態は、理論空燃比相当電圧Vstを下流側目標値Voxsrefとして設定し、下流側空燃比センサの出力値Voxsが下流側目標値Voxsrefに一致するようにPID制御を行うことによってサブフィードバック量KSFBを算出してもよい。
【符号の説明】
【0190】
10…内燃機関、20…機関本体部、30…吸気系統、40…排気系統、41…エキゾーストマニホールド、42…エキゾーストパイプ、43…上流側触媒(触媒)、44…触媒冷却装置、44a…触媒冷却部、44b…冷却水ポンプ、44c…放熱部、44d…冷却管、56…上流側空燃比センサ、57…下流側空燃比センサ(酸素濃度センサ)、58…触媒温度センサ、70…電気制御装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配設された酸素吸蔵機能を備える触媒と、
前記排気通路の前記触媒の下流に配設された空燃比センサと、
前記空燃比センサの出力値に基いて前記機関に供給される混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段と、
前記触媒の下流側の部位である触媒後方部を冷却する触媒冷却手段と、
を備えた内燃機関の排ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の排ガス浄化装置であって、
前記触媒冷却手段は、指示信号に応答して前記触媒後方部を冷却する状態と前記触媒後方部を冷却しない状態との何れかの状態を実現するように構成されており、
更に、
前記触媒の温度を取得するとともに前記取得された触媒の温度が所定の閾値温度以上であるか否かを判定し、前記触媒の温度が前記閾値温度以上であると判定した場合に前記触媒冷却手段により前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を前記触媒冷却手段に送出する触媒冷却制御手段、
を備える排ガス浄化装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関の排ガス浄化装置であって、
前記触媒冷却手段は、
指示信号に応答して前記触媒後方部を冷却する状態と前記触媒後方部を冷却しない状態との何れかの状態を実現するように構成され、
前記空燃比制御手段は、
前記空燃比センサの出力値に基いて前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ空燃比であるか又は理論空燃比よりもリーンなリーン空燃比であるかを判定するとともに、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リーン空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リッチ空燃比に設定し、且つ、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リーン空燃比に設定するように構成され、
更に、
前記機関の運転状態が加速運転状態にあるか否かを判定するとともに前記機関の運転状態が加速運転状態にあると判定した場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出する触媒冷却制御手段、
を備えた排ガス浄化装置。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関の排ガス浄化装置であって、
前記触媒冷却手段は、
指示信号に応答して前記触媒後方部を冷却する状態と前記触媒後方部を冷却しない状態との何れかの状態を実現するように構成され、
前記空燃比制御手段は、
前記空燃比センサの出力値に基いて前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ空燃比であるか又は理論空燃比よりもリーンなリーン空燃比であるかを判定するとともに、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リーン空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リッチ空燃比に設定し、且つ、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リーン空燃比に設定するように構成され、
更に、
前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定される場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出する触媒冷却制御手段、
を備えた排ガス浄化装置。
【請求項5】
請求項1に記載の内燃機関の排ガス浄化装置であって、
前記触媒冷却手段は、
指示信号に応答して前記触媒後方部を冷却する状態と前記触媒後方部を冷却しない状態との何れかの状態を実現するように構成され、
前記空燃比制御手段は、
前記空燃比センサの出力値に基いて前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ空燃比であるか又は理論空燃比よりもリーンなリーン空燃比であるかを判定するとともに、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リーン空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リッチ空燃比に設定し、且つ、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リーン空燃比に設定するように構成され、
更に、
前記機関の運転状態が加速運転状態にあるか否かを判定し、前記機関の運転状態が加速運転状態にあると判定され且つ前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定されている場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出する触媒冷却制御手段、
を備えた排ガス浄化装置。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5の何れか一項に記載の燃機関の排ガス浄化装置であって、
前記触媒冷却制御手段は、
前記触媒の上流側の部位である触媒前方部と前記触媒後方部との間の触媒の温度を検出する触媒温度センサを含むとともに、前記触媒温度センサにより検出される触媒の温度の変化率が所定の閾値変化率以上となったか否かを判定し、前記検出される触媒の温度の変化率が前記閾値変化率以上となったと判定したときに前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させる指示信号を送出することを許容するように構成された排ガス浄化装置。
【請求項1】
内燃機関の排気通路に配設された酸素吸蔵機能を備える触媒と、
前記排気通路の前記触媒の下流に配設された空燃比センサと、
前記空燃比センサの出力値に基いて前記機関に供給される混合気の空燃比を制御する空燃比制御手段と、
前記触媒の下流側の部位である触媒後方部を冷却する触媒冷却手段と、
を備えた内燃機関の排ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の排ガス浄化装置であって、
前記触媒冷却手段は、指示信号に応答して前記触媒後方部を冷却する状態と前記触媒後方部を冷却しない状態との何れかの状態を実現するように構成されており、
更に、
前記触媒の温度を取得するとともに前記取得された触媒の温度が所定の閾値温度以上であるか否かを判定し、前記触媒の温度が前記閾値温度以上であると判定した場合に前記触媒冷却手段により前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を前記触媒冷却手段に送出する触媒冷却制御手段、
を備える排ガス浄化装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関の排ガス浄化装置であって、
前記触媒冷却手段は、
指示信号に応答して前記触媒後方部を冷却する状態と前記触媒後方部を冷却しない状態との何れかの状態を実現するように構成され、
前記空燃比制御手段は、
前記空燃比センサの出力値に基いて前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ空燃比であるか又は理論空燃比よりもリーンなリーン空燃比であるかを判定するとともに、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リーン空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リッチ空燃比に設定し、且つ、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リーン空燃比に設定するように構成され、
更に、
前記機関の運転状態が加速運転状態にあるか否かを判定するとともに前記機関の運転状態が加速運転状態にあると判定した場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出する触媒冷却制御手段、
を備えた排ガス浄化装置。
【請求項4】
請求項1に記載の内燃機関の排ガス浄化装置であって、
前記触媒冷却手段は、
指示信号に応答して前記触媒後方部を冷却する状態と前記触媒後方部を冷却しない状態との何れかの状態を実現するように構成され、
前記空燃比制御手段は、
前記空燃比センサの出力値に基いて前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ空燃比であるか又は理論空燃比よりもリーンなリーン空燃比であるかを判定するとともに、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リーン空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リッチ空燃比に設定し、且つ、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リーン空燃比に設定するように構成され、
更に、
前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定される場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出する触媒冷却制御手段、
を備えた排ガス浄化装置。
【請求項5】
請求項1に記載の内燃機関の排ガス浄化装置であって、
前記触媒冷却手段は、
指示信号に応答して前記触媒後方部を冷却する状態と前記触媒後方部を冷却しない状態との何れかの状態を実現するように構成され、
前記空燃比制御手段は、
前記空燃比センサの出力値に基いて前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチなリッチ空燃比であるか又は理論空燃比よりもリーンなリーン空燃比であるかを判定するとともに、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リーン空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リッチ空燃比に設定し、且つ、前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定した場合には前記機関に供給される混合気の空燃比を前記リーン空燃比に設定するように構成され、
更に、
前記機関の運転状態が加速運転状態にあるか否かを判定し、前記機関の運転状態が加速運転状態にあると判定され且つ前記空燃比センサに到達しているガスの空燃比が前記リッチ空燃比であると判定されている場合に前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させるための指示信号を送出する触媒冷却制御手段、
を備えた排ガス浄化装置。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5の何れか一項に記載の燃機関の排ガス浄化装置であって、
前記触媒冷却制御手段は、
前記触媒の上流側の部位である触媒前方部と前記触媒後方部との間の触媒の温度を検出する触媒温度センサを含むとともに、前記触媒温度センサにより検出される触媒の温度の変化率が所定の閾値変化率以上となったか否かを判定し、前記検出される触媒の温度の変化率が前記閾値変化率以上となったと判定したときに前記触媒冷却手段に前記触媒後方部を冷却させる指示信号を送出することを許容するように構成された排ガス浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2012−62776(P2012−62776A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205476(P2010−205476)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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