説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】酸化触媒により排気ガス中の還元物質を燃焼させた際の燃焼熱を利用して再生処理が実施されるパティキュレートフィルタを具備する内燃機関の排気浄化装置において、酸化触媒が劣化しても燃料消費の悪化を抑制したS被毒解消処理によりパティキュレートフィルタの良好な再生処理を実現可能とする。
【解決手段】本内燃機関の排気浄化装置においては、排気通路のパティキュレートフィルタの上流側に配置された硫黄成分検出装置の保持部のSOX保持量Aが推定され(ステップ102)、SOX保持量が設定量A’以上となった時に酸化触媒のS被毒解消処理が実施され(ステップ104)、パティキュレートフィルタの再生処理の初期におけるパティキュレートフィルタの昇温速度Sが設定速度S’以下となった時(ステップ107)には、設定量を減少させる(ステップ108)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パティキュレートの大気放出を抑制するために、内燃機関の排気通路にパティキュレートフィルタを配置することが提案されている。パティキュレートフィルタは、捕集パティキュレート量が多くなるほど排気抵抗を増加させる。それにより、排気抵抗が許容値を超えないようにするために、パティキュレートフィルタにおいては定期的又は不定期的に捕集パティキュレートを焼失させる再生処理が必要となる。
【0003】
再生処理において、パティキュレートフィルタに担持された酸化触媒、又は、パティキュレートフィルタの直上流側に配置された酸化触媒装置に担持された酸化触媒により排気ガス中の還元物質を酸化させた際の発熱を利用して捕集パティキュレートの一部を燃焼温度まで昇温させる。こうして、捕集パティキュレートの一部を燃焼させれば、その燃焼熱により残りの捕集パティキュレートも燃焼させることができる。
【0004】
パティキュレートフィルタ又は酸化触媒装置等に担持されて排気通路内に位置する酸化触媒は、排気ガス中のSOXが付着して機能低下(S被毒)するために、酸化触媒の温度を約400°Cまで高めて排気ガスの空燃比をリッチにすることにより酸化触媒のS被毒を解消することが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−209766
【特許文献2】特開2004−176664
【特許文献3】特開2004−301127
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の内燃機関に排気浄化装置において、酸化触媒のS被毒の解消処理は、パティキュレートフィルタの再生処理より頻繁に実施されるようになっており、それにより、酸化触媒のS被毒程度が低いにも係わらずにS被毒解消処理が実施されることがあり、燃料消費を悪化させる。
【0007】
硫黄成分検出装置により酸化触媒近傍を通過した排気ガス中のSOX量の積算値を検出すれば、この積算値は酸化触媒のS被毒程度に対応するために、酸化触媒のS被毒程度を推定することができる。それにより、硫黄成分検出装置により酸化触媒近傍を通過した排気ガス中のSOX量の積算値(又はこの積算値に対応する値)を検出して、検出された積算値が設定積算値を超える時にだけS被毒の解消処理を実施するようにすれば、燃料消費の悪化を抑制することができる。
【0008】
しかしながら、このようにS被毒の解消処理を実施して燃料消費の悪化を抑制すると、パティキュレートフィルタの再生処理において、酸化触媒の劣化によりパティキュレートフィルタの再生処理が不十分となって、排気抵抗が許容値を超えるようになるまでパティキュレートフィルタにパティキュレートが捕集されてしまうことがある。
【0009】
従って、本発明の目的は、酸化触媒により排気ガス中の還元物質を燃焼させた際の燃焼熱を利用して再生処理が実施されるパティキュレートフィルタを具備し、燃料消費の悪化を抑制したS被毒解消処理により酸化触媒が劣化してもパティキュレートフィルタの良好な再生処理を実現可能とする内燃機関の排気浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置は、排気通路に配置されて排気ガス中のパティキュレートを捕集するためのパティキュレートフィルタであって、酸化触媒により排気ガス中の還元物質を燃焼させた際の燃焼熱を利用して再生処理が実施されるパティキュレートフィルタと、前記排気通路の前記パティキュレートフィルタの上流側に配置されて前記酸化触媒近傍を通過する排気ガス中の硫黄成分を検出する硫黄成分検出装置とを具備し、前記硫黄成分検出装置は、排気ガス中のSOX及びNOXを保持し、SOX保持量が増加するほどNOX保持可能量が減少する保持部を具備し、前記保持部に保持されたNOX保持量に基づき前記SOX保持量を推定するものであり、前記SOX保持量が設定値量上となった時に、又は、前記SOX保持量に基づき推定される前記酸化触媒近傍を通過した排気ガス中のSOX量の積算値が設定積算値以上となった時に、前記酸化触媒のS被毒解消処理が実施される内燃機関の排気浄化装置において、前記再生処理の初期における前記パティキュレートフィルタの昇温速度が設定速度以下となった時には、前記設定量又は前記設定積算値を減少させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明による請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置によれば、燃料消費の悪化を抑制するために、排気通路のパティキュレートフィルタの上流側に硫黄成分検出装置を配置し、硫黄成分検出装置は、排気ガス中のSOX及びNOXを保持し、SOX保持量が増加するほどNOX保持可能量が減少する保持部を具備し、保持部に保持されたNOX保持量に基づきSOX保持量を推定するものであり、SOX保持量が設定量以上となった時に、又は、SOX保持量に基づき推定される酸化触媒近傍を通過した排気ガス中のSOX量の積算値が設定積算値以上となった時に、酸化触媒のS被毒解消処理が実施される内燃機関の排気浄化装置において、再生処理の初期におけるパティキュレートフィルタの昇温速度が設定速度以下となった時には、酸化触媒のS被毒程度が低いにも係わらずに酸化触媒が機能低下していることとなるために酸化触媒が劣化していると考えられ、設定量又は設定積算値を減少させることによりS被毒程度が低くてもS被毒解消処理が実施されるようにし、酸化触媒のS被毒による機能低下を改善することによってパティキュレートフィルタの良好な再生処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による内燃機関の排気浄化装置の実施形態を示す概略図である。
【図2】硫黄成分検出装置を示す概略断面図である。
【図3】本発明による内燃機関の排気浄化装置における酸化触媒のS被毒解消及びパティキュレートフィルタの再生処理のためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明による内燃機関の排気浄化装置の実施形態を示す概略図であり、同図において、1は内燃機関の排気通路である。内燃機関は、ディーゼルエンジン又は筒内噴射式火花点火内燃機関のような希薄燃焼を実施する内燃機関である。このような内燃機関の排気ガス中には、比較的多くのパティキュレートが含まれるために、排気通路1には、パティキュレートの大気放出を抑制するためのパティキュレートフィルタ2が配置されている。3は同一ハウジング内においてパティキュレートフィルタ2の直上流側に配置された酸化触媒装置である。酸化触媒装置3は排気ガス中のHC及びCO等を排気ガス中の酸素を使用して酸化させることにより浄化するものである。
【0014】
パティキュレートフィルタ2は、例えば、コージライトのような多孔質材料から形成されたハニカム構造をなすウォールフロー型であり、多数の軸線方向に延在する隔壁によって細分された多数の軸線方向空間を有している。隣接する二つの軸線方向空間において、一方は栓によって排気下流側を閉鎖され、他方は栓によって排気上流側を閉鎖される。こうして、隣接する二つの軸線方向空間の一方は排気ガスの流入通路となり、他方は流出通路となり、排気ガスが必ず隔壁を通過する。排気ガス中のパティキュレートは、隔壁の細孔の大きさに比較して非常に小さいものであるが、隔壁の排気上流側表面及び隔壁内の細孔表面上に衝突して捕集される。こうして、各隔壁は、パティキュレートを捕集する捕集壁として機能する。パティキュレートフィルタ2には、隔壁の表面上にアルミナ等を使用して白金Pt等の貴金属酸化触媒が担持されている。
【0015】
酸化触媒装置3も、例えば、コージライトのような多孔質材料から形成されたハニカム構造を有し、パティキュレートフィルタ2とは異なり、各軸線方向空間において排気下流側も排気上流側も閉鎖されていない。各軸線方向空間を形成する隔壁の表面上にはアルミナ等を使用して白金Pt等の貴金属酸化触媒が担持されている。
【0016】
図1において、4は酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2へ流入する排気ガス中の硫黄成分を検出するための硫黄成分検出装置である。また、5は硫黄成分検出装置4の上流側において排気ガス中に燃料を供給する燃料供給装置である。6はパティキュレートフィルタ2から流出する排気ガスの温度をパティキュレートフィルタ2の温度として検出するための温度センサであり、パティキュレートフィルタ2の温度を直接的に測定するものとしても良い。
【0017】
図2は、硫黄成分検出装置4の実施形態を示す概略断面図である。同図において、41は硫黄成分検出装置4を構成する熱電対等の温度センサである。42は温度センサ41の感温部を覆うように配置されたNOX及びSOX保持部である。
【0018】
NOX及びSOX保持部42は、排気通路1を通過する排気ガス中に晒されて排気ガス中のNOX及びSOXを保持するものであり、例えば、NOX保持材と白金Ptのような貴金属触媒とを温度センサ41の感温部に塗布することにより形成することができる。
【0019】
NOX保持材は、カリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類金属、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つである。
【0020】
このようにNOX保持材及び貴金属触媒により形成されたNOX及びSOX保持部42は、排気ガスがリーン空燃比である時、すなわち、排気ガス中の酸素濃度が高い時に、排気ガス中のNOXを硝酸塩として吸収し、排気ガス中のSOXを硫酸塩として吸収する。NOX及びSOX保持部42は、NOX保持材の量に応じて、SOXが保持されていない時のNOX保持可能量(又はNOX及びSOXの保持可能量)を有し、硝酸塩に比較して硫酸塩は安定な物質であるために、SOXが保持されていない時のNOX保持可能量を基準値として、SOX保持量が増加するほど、現在のNOX保持可能量は減少することとなる。
【0021】
それにより、NOX及びSOX保持部42における現在のNOX保持可能量を検出して基準値から減算すれば、NOX及びSOX保持部42における現在のSOX保持量に対応する値となる。現在のSOX保持量は、NOX及びSOX保持部42にSOXが保持されていなかった時から現在までの間にNOX及びSOX保持部42の位置において排気通路1を通過した排気ガス中に含まれるSOX量の積算値に一定の保持割合を乗算した値と考えることができる。
【0022】
一方、NOX及びSOX保持部42にSOXが保持されていなかった時から現在までの間に酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2へ流入した排気ガス中の積算SOX量に一定の付着割合を乗算した値だけ酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2に担持された酸化触媒がS被毒したと考えることができる。
【0023】
また、NOX及びSOX保持部42にSOXが保持されていなかった時から現在までの間にNOX及びSOX保持部42の位置において排気通路1を通過した排気ガス中の積算SOX量は、NOX及びSOX保持部42にSOXが保持されていなかった時から現在までの間に酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2へ流入した排気ガス中の積算SOX量と同じであり、こうして、NOX及びSOX保持部42にSOXが保持されていなかった時、すなわち、NOX及びSOX保持部42のSOX保持量が零であった時に、酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2に担持された酸化触媒はS被毒していない又はS被毒が解消された場合には、NOX及びSOX保持部42のSOX保持量は、酸化触媒近傍を通過した排気ガス中のSOX量の積算値に対応し、また、酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2に担持された酸化触媒のS被毒程度に対応していると考えることができる。
【0024】
NOX及びSOX保持部42の現在のNOX保持可能量を検出するためには、先ずは、NOX及びSOX保持部42を排気ガス中に長時間晒すことによりNOX及びSOX保持部42に最大限に排気ガス中のNOXを吸収させる。次いで、排気ガスの空燃比をリッチ(理論空燃比よりリッチ側の空燃比)とする。排気ガスの空燃比をリッチにするためには、燃料供給装置5によって排気ガス中に追加燃料を供給したり、気筒内での燃焼空燃比をリッチにしたり、又は、膨張行程又は排気行程において気筒内へ追加燃料を供給したりすれば良い。
【0025】
排気ガスの空燃比がリッチとされると、NOX及びSOX保持部42周りの酸素濃度が低下し、又は、NOX及びSOX保持部42の貴金属触媒が排気ガス中のHC等の還元物質を排気ガス中の酸素を使用して酸化させることによりNOX及びSOX保持部42周りの酸素濃度が低下し、それにより、以下に示すように、NOX及びSOX保持部42に吸収されているNOXが放出され、それと同時に、放出NOXはNOX及びSOX保持部42の貴金属触媒により排気ガス中の還元物質(例えばCO)を使用して還元される。
【0026】
1/2Ba(NO3)2→1/2BaO+NO+3/4O2−309.6kJ/mol
CO+NO→1/2N2+2CO2+373.2kJ/mol
3/2CO+3/4O2→3/2CO2+424.5kJ/mol
こうして、1molのNOに対して約490kJの発熱が発生する。それにより、NOX及びSOX保持部42近傍の排気ガスの空燃比がリッチにされる前のNOX及びSOX保持部42の温度TbとNOX及びSOX保持部42近傍の排気ガスの空燃比がリッチにされた後の最高温度Taとの間の温度上昇値ΔT(Ta−Tb)を温度センサ41により測定すれば、この温度上昇値ΔTに基づいてNOX及びSOX保持部42に保持されていたNOX保持量(mol)、すなわち、現在のNOX保持可能量を検出することができる。
【0027】
また、NOX及びSOX保持部42に保持されているNOXは、NOX及びSOX保持部42の温度を約500°Cとすれば酸素濃度を低下させなくても放出される。これを利用して、例えばNOX及びSOX保持部42を加熱する電気ヒータを設けてNOX及びSOX保持部42を加熱すれば、NOX及びSOX保持部42が全てのNOXを放出するのに使用した熱量に基づき、NOX及びSOX保持部42の現在のNOX保持可能量を検出することも可能である。
【0028】
酸化触媒装置3の酸化触媒及びパティキュレートフィルタ2の酸化触媒は、排気ガス中のSOXが付着して酸化機能が低下する(S被毒)。それにより、酸化機能が大きく低下する前に酸化触媒のS被毒を解消する処理を実施することが必要である。また、パティキュレートフィルタ2は、捕集したパティキュレートによって排気抵抗が許容値を超えるようになる前に捕集したパティキュレートを焼失させる再生処理を実施することが必要である。図3は、本実施形態の内燃機関の排気浄化装置における酸化触媒のS被毒解消処理及びパティキュレートフィルタ2の再生処理のためのフローチャートであり、本フローチャートは電子制御装置において設定時間間隔毎に繰り返して実施される。
【0029】
先ずは、ステップ101において、硫黄成分検出装置3の現在のSOX保持量を検出する時期であるか否かが判断される。この判断が否定される時には、酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2の酸化触媒のS被毒程度に対応する硫黄成分検出装置3の現在のSOX保持量は検出されず、ステップ105へ進む。
【0030】
一方、ステップ101の判断が肯定される時には、ステップ102において、前述したようにして硫黄成分検出装置3の現在のSOX保持量Aが検出される。次いで、ステップ103において、現在のSOX保持量Aが設定量A’以上であるか否かが判断され(又は、現在のSOX保持量Aに対応する酸化触媒近傍を通過した排気ガス中のSOX量の積算値が設定積算値以上であるか否かが判断され)、この判断が否定される時には、酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2の酸化触媒のS被毒程度は低いために、S被毒解消処理を実施することなく、ステップ105へ進む。
【0031】
しかしながら、現在のSOX保持量Aが設定量A’以上である時には、酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2の酸化触媒のS被毒程度は高いために、ステップ104においてS被毒解消処理が実施されてステップ105へ進む。こうして、S被毒解消処理は、酸化触媒のS被毒程度が高い時にだけ実施されるために、燃料消費の悪化を抑制することができる。S被毒解消処理は、先ずは、排気ガスの空燃比をリーンに維持する程度に燃料供給装置5によって排気ガス中に第一追加燃料を供給し、第一追加燃料を酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2の酸化触媒において排気ガス中の十分な量の酸素を使用して燃焼させ、酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2の温度を約400°C以上に昇温する。次いで、排気ガスの空燃比をリッチにするように燃料供給装置5によって第二追加燃料を供給する。もちろん、このような第一及び第二追加燃料は、燃料噴射弁を使用して膨張行程又は排気行程において気筒内へ供給するようにしても良い。
【0032】
このようなS被毒解消処理によって、酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2の酸化触媒のS被毒は完全に解消されると共に、硫黄成分検出装置4のNOX及びSOX保持部42は、熱容量が小さいために第一追加燃料により約650°以上に昇温され、第二追加燃料を含むリッチ空燃比の排気ガスによってNOX及びSOX保持部42に保持されたSOXが完全に放出される。それにより、S被毒解消処理以降においても、NOX及びSOX保持部42のSOX保持量を酸化触媒のS被毒程度に対応させることができる。
【0033】
ステップ105では、パティキュレートフィルタ2の再生時期であるか否かが判断される。例えば、設定運転時間毎にパティキュレートフィルタ2の再生時期とすれば良い。設定運転時間は、どのように内燃機関を運転しても、排気抵抗が許容値を超えて機関出力を著しく低下させるほどのパティキュレート量がパティキュレートフィルタ2に捕集されないように設定される。
【0034】
ステップ105の判断が否定される時にはそのまま終了するが、ステップ105の判断が肯定される時には、ステップ106において、パティキュレートフィルタ2の再生処理が実施される。再生処理は、排気ガスの空燃比をリーンに維持する程度に燃料供給装置5から排気ガス中へ追加燃料を供給する(又は、膨張行程又は排気行程において気筒内へ追加燃料を供給する)。この時の追加燃料は前述のS被毒解消処理の第一追加燃料よりは多くされる。このように排気ガス中へ供給された燃料は、酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2に担持された酸化触媒により排気ガス中の多量の酸素を使用して良好に燃焼して、パティキュレートフィルタ2の捕集パティキュレートの一部を燃焼温度(約600°C)へ昇温する。こうして、捕集パティキュレートの一部が燃焼を開始すれば、その燃焼熱によって残りの捕集パティキュレートも燃焼温度となって燃焼させることができる。
【0035】
ステップ107では、パティキュレートフィルタ2の直下流側に配置された温度センサ6を使用してパティキュレートフィルタ2から排出される排気ガス温度をパティキュレートフィルタ2の温度として検出し、パティキュレートが燃焼を開始する前の再生処理初期におけるパティキュレートフィルタ2の昇温速度Sを算出し、この昇温速度Sが設定速度S’以下であるか否かが判断される。この判断が否定される時には、特に問題はなくそのまま終了する。
【0036】
酸化触媒近傍を通過した排気ガス中のSOX量の積算値が設定積算値以上となった時には、ステップ104において酸化触媒のS被毒解消処理が実施されるために、パティキュレートフィルタの再生処理が実施される時には酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2の酸化触媒のS被毒程度が高いはずはなく、それにも係わらずに、再生処理においてパティキュレートの燃焼が開始されるまでのパティキュレートフィルタ2の昇温速度Sが低くステップ107の判断が肯定されるのであれば、酸化触媒がシンタリング等により機能低下していると考えられる。これを放置すると、パティキュレートフィルタ2の再生処理が不十分となって、再生処理後にパティキュレートが残留し、排気抵抗が許容値を超えるほどのパティキュレートがパティキュレートフィルタ2に捕集されるようになってしまう。
【0037】
本フローチャートでは、これを防止するために、ステップ107の判断が肯定される時には、ステップ108において、S毒解消処理を実施するか否かの判断に使用する閾値(硫黄成分検出装置のSOX保持量に対する閾値)である設定量A’を値aだけ減少させ、次いで、ステップ104においてS被毒解消処理を実施するようになっている。ここで、S毒解消処理を実施するか否かが、酸化触媒近傍を通過した排気ガス中のSOX量の積算値により判断される場合には、その閾値である設定積算値を減少させることとなる。
【0038】
それにより、酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2の酸化触媒が劣化により機能低下した時には、酸化触媒のS被毒程度が低くても、S被毒解消処理が実施されて酸化触媒のS被毒による機能低下が改善され、パティキュレートフィルタの良好な再生処理を実現することができる。
【0039】
酸化触媒の劣化がさらに進行して、値aだけ減少させた現在の設定量A’を閾値とするS被毒解消処理では、再生処理初期のパティキュレートフィルタ2の昇温速度Sが再び設定速度S’以下になってしまうのであれば、ステップ108において、設定量A’はさらに値aだけ小さくされ、S被毒解消処理がさらに頻繁に実施されるようになっている。
【0040】
ところで、再生処理において、パティキュレートフィルタ2は高温となるが、排気ガスの空燃比がリーンであるために、酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2に担持された酸化触媒のS被毒は解消しない。また、硫黄成分検出装置4においてNOX保持可能量を検出するために排気ガスの空燃比がリッチとされる時は、酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2の温度が低いために、やはり、酸化触媒装置3及びパティキュレートフィルタ2に担持された酸化触媒のS被毒は解消しない。
【0041】
また、本実施形態において、パティキュレートフィルタ2の直上流側に酸化触媒装置3が配置されているが、これは本発明を限定するものではなく省略可能である。また、パティキュレートフィルタ2の直上流側の酸化触媒装置3が配置されている場合には、パティキュレートフィルタ2自身に担持させた酸化触媒を省略するようにしても良い。
【0042】
本実施形態において、パティキュレートフィルタ2の再生処理は、設定運転時間毎としたが、設定走行距離毎としても良いし、不定期的としても良く、排気抵抗が許容値を超えて機関出力が著しく低下するほどのパティキュレートがパティキュレートフィルタ2に捕集される前に再生処理が実施されるようになっていれば良い。
【符号の説明】
【0043】
1 排気通路
2 パティキュレートフィルタ
3 酸化触媒装置
4 硫黄成分検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気通路に配置されて排気ガス中のパティキュレートを捕集するためのパティキュレートフィルタであって、酸化触媒により排気ガス中の還元物質を燃焼させた際の燃焼熱を利用して再生処理が実施されるパティキュレートフィルタと、前記排気通路の前記パティキュレートフィルタの上流側に配置されて前記酸化触媒近傍を通過する排気ガス中の硫黄成分を検出する硫黄成分検出装置とを具備し、前記硫黄成分検出装置は、排気ガス中のSOX及びNOXを保持し、SOX保持量が増加するほどNOX保持可能量が減少する保持部を具備し、前記保持部に保持されたNOX保持量に基づき前記SOX保持量を推定するものであり、前記SOX保持量が設定量以上となった時に、又は、前記SOX保持量に基づき推定される前記酸化触媒近傍を通過した排気ガス中のSOX量の積算値が設定積算値以上となった時に、前記酸化触媒のS被毒解消処理が実施される内燃機関の排気浄化装置において、前記再生処理の初期における前記パティキュレートフィルタの昇温速度が設定速度以下となった時には、前記設定量又は前記設定積算値を減少させることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−144749(P2011−144749A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6003(P2010−6003)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】