説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】ターボチャージャのタービン直後に設けられた酸化触媒が熱劣化してもその酸化触媒と一定の距離をおいて設けられたパティキュレートフィルタとの間の排気通路内に未燃燃料が溜まることを抑制する。
【解決手段】内燃機関の燃焼モードを第1再生燃焼モード又は第1再生燃焼モードより内燃機関直後の排気温度が高くなる第2再生燃焼モードに切替可能であり、酸化触媒とパティキュレートフィルとの間の排気温度が所定の閾値Gth以上又は内燃機関の冷却水の温度が所定の閾値Wth以下である場合に(ST3:NO)、内燃機関の燃焼モードを第1再生燃焼モードとし(ST6)、フィルタ再生制御中に、酸化触媒とパティキュレートフィルとの間の排気温度が所定の閾値Gth未満でありかつ内燃機関の冷却水の温度が所定の閾値Wthを超える場合に(ST3:YES)、内燃機関の燃焼モードを第2再生燃焼モードとする(ST4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関し、特に、燃料添加弁により未燃燃料を排気通路に添加することによって、排気通路に設置されたパティキュレートフィルタを再生する排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等に搭載されるディーゼルエンジンを駆動した際に排出される排気ガス中には、カーボンを主成分とする粒子状物質(Particulate Matter:以下「PM」という。)が含まれており、これが大気汚染の原因になる。
【0003】
PMが大気中に排出されることを防止する装置として、ディーゼルエンジンの排気通路に設置されるパティキュレートフィルタが知られている。このパティキュレートフィルタによって排気通路を通過する排気ガス中に含まれるPMを捕集することで排気ガスの浄化を図っている。
【0004】
パティキュレートフィルタを用いてPMの捕集を行う場合、捕集したPMの堆積量が増大するとパティキュレートフィルタに目詰まりが生じてしまう。パティキュレートフィルタに目詰まりが生じると、パティキュレートフィルタを通過する排気の圧力損失が増大し、それに伴ってエンジン出力の低下や燃費の悪化を招いてしまう。
【0005】
このような目詰まりを解消するため、従来より、パティキュレートフィルタに捕集されたPMの捕集量(堆積量)が所定量に達した際に、フィルタ再生動作が行われるようになっている。このフィルタ再生動作は、排気温度を上昇させる等の手法によりフィルタ温度を高温化することで、パティキュレートフィルタに捕集されたPMを燃焼させて除去するものである(例えば特許文献1を参照。)。例えば、エンジンの燃焼室に対する主燃料噴射後で排気弁が閉じられる前に少量の燃料を副次的に噴射するポスト噴射と、エンジンの排気通路においてパティキュレートフィルタより下流に設けられた排気絞り弁の絞り動作とが組み合わされて実行されることが挙げられる。これにより、排気通路に未燃燃料を供給すると共に排気温度を上昇させ、パティキュレートフィルタに捕集されているPMを燃焼除去し、パティキュレートフィルタを再生する。
【0006】
また、特許文献2に開示されている内燃機関の排気浄化装置では、エンジンの排気通路においてターボチャージャのタービンの下流側直後に、燃料添加弁および前段酸化触媒が設けられ、さらにその前段酸化触媒の下流側に一定の距離をおいて酸化触媒を担持したパティキュレートフィルタが設けられている。この内燃機関の排気浄化装置では、フィルタ再生動作として、燃料添加弁から排気通路に燃料を添加し、その燃料の一部が前段酸化触媒において酸化反応を起こして排気温度を上昇させ、更に、燃料の余部が下流側のパティキュレートフィルタにおいて酸化反応を起こし、パティキュレートフィルタの温度を上昇させて、捕集されているPMを燃焼除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−162675号公報
【特許文献2】特開2009−7977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献2に開示されている内燃機関の排気浄化装置のように、フィルタ再生動作に際して、排気通路に未燃燃料を供給するものでは、前段酸化触媒が熱劣化していると、前段酸化触媒において酸化反応による排気温度の上昇が不十分となり、前段酸化触媒とパティキュレートフィルタとの間の排気通路に、液化した未燃燃料が付着して、溜まりを形成することがある。そうなると、排気通路を形成する排気管の腐食、白煙の発生、パティキュレートフィルタの溶損といったことが懸念される。
【0009】
本発明はかかる問題に鑑みて創案されたものであり、排気通路に上流側から順に燃料添加弁、酸化触媒およびパティキュレートフィルタが設けられた内燃機関の排気浄化装置において、酸化触媒が熱劣化しても酸化触媒とその酸化触媒と一定の距離をおいて設けられたパティキュレートフィルタとの間の排気通路内に未燃燃料が溜まることを抑制することができる内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するための手段として、本発明の内燃機関の排気浄化装置は、以下のように構成されている。
【0011】
すなわち、本発明の内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関の排気通路に燃料を添加する燃料添加弁と、前記排気通路において前記燃料添加弁が燃料を添加する位置より下流側に設けられた酸化触媒と、前記排気通路において前記酸化触媒より下流側に一定の距離をおいて設けられ、排気中の粒子状物質を捕集するパティキュレートフィルタと、前記燃料添加弁による排気通路内への燃料の添加を伴うフィルタ再生制御を実行するフィルタ再生制御手段を有する制御装置と、を備えるものを前提としており、前記制御装置は、前記酸化触媒より下流側で排気温度を検出する排気温度検出手段と、内燃機関の燃焼モードを、第1再生燃焼モード又は、第1再生燃焼モードより内燃機関直後の排気温度が高くなる第2再生燃焼モードに切替可能な燃焼モード切替手段と、をさらに有する。そして、前記燃焼モード切替手段は、前記フィルタ再生制御中に、前記排気温度検出手段により検出される排気温度が所定の閾値以上である場合には、内燃機関の燃焼モードを前記第1再生燃焼モードとし、前記フィルタ再生制御中に、前記排気温度検出手段により検出される排気温度が前記所定の閾値未満である場合には、内燃機関の燃焼モードを前記第2再生燃焼モードとする、ことを特徴とするものである。
【0012】
フィルタ再生制御中であるにもかかわらず、酸化触媒とパティキュレートフィルタとの間の排気温度が所定の閾値未満である場合は、酸化触媒が熱劣化して酸化触媒とパティキュレートフィルタとの間の排気通路内に未燃燃料が付着していると推定することができる。本発明の内燃機関の排気浄化装置は、そのような場合に、燃焼モードを排気温度の高い第2再生燃焼モードとすることで、酸化触媒とパティキュレートフィルタとの間の排気温度を上昇させ、排気通路に付着している未燃燃料を気化して除去させることができる。
【0013】
また、本発明の内燃機関の排気浄化装置は、上記構成を備える内燃機関の排気浄化装置において、前記制御装置は、内燃機関の冷却水の温度を検出する冷却水温検出手段をさらに有し、前記燃焼モード切替手段は、前記フィルタ再生制御中に、前記排気温度検出手段により検出される排気温度が所定の閾値以上又は前記冷却水温検出手段により検出される内燃機関の冷却水の温度が所定の閾値以下である場合に、内燃機関の燃焼モードを前記第1再生燃焼モードとし、前記フィルタ再生制御中に、前記排気温度検出手段により検出される排気温度が前記排気温度の所定の閾値未満でありかつ前記冷却水温検出手段により検出される内燃機関の冷却水の温度が前記冷却水温度の所定の閾値を超える場合に、内燃機関の燃焼モードを第2再生燃焼モードとする、ものであることが好ましい。
【0014】
内燃機関の冷間始動時のように冷却水の温度が低い場合は、排気温度も当然に低く、酸化触媒が熱劣化していなくても酸化触媒とパティキュレートフィルタとの間の排気温度は当然に低くなるため、この時点で排気温度を上げる必要性は乏しい。上記構成を備える内燃機関の排気浄化装置によれば、このような場合に、燃焼モードを第1再生燃焼モードとすることができる。
【0015】
また、本発明の内燃機関の排気浄化装置は、上記構成を備える内燃機関の排気浄化装置において、排気再循環装置をさらに備え、前記第2再生燃焼モードにおける排気再循環量が前記第1再生燃焼モードにおける排気再循環量より少ないものであることが望ましい。
【0016】
例えば、前記第2再生燃焼モードは、排気再循環の停止を伴う燃焼モードである。
【0017】
前記燃料添加弁は、例えば、前記排気通路においてターボチャージャのタービンより下流側に燃料を添加するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の内燃機関の排気浄化装置によれば、酸化触媒とパティキュレートフィルタとの間の排気通路に未燃燃料が付着したり、溜まりを形成することが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】エンジンおよびその吸排気系の概略構成を示す図である。
【図2】エンジンECU等の制御系の構成を示すブロック図である。
【図3】フィルタ再生制御等の手順を示すフローチャートである。
【図4】エンジン負荷およびエンジン回転数をパラメータとした燃焼モードの実行前提条件を判定するためのテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、自動車に搭載されたコモンレール式筒内直噴型多気筒ディーゼルエンジン(圧縮自着火式内燃機関)に本発明を適用した場合について説明する。
【0021】
−エンジンの構成−
先ず、本実施形態に係るディーゼルエンジン(以下、単に「エンジン」という。)の概略構成について説明する。図1は本実施形態に係るエンジン1およびその吸排気系の概略構成図である。
【0022】
この図1に示すように、本実施形態に係るエンジン1は、基本的には、吸気系から供給される空気と燃料供給系から供給される燃料とを適宜の空燃比で混合して成る混合気を燃焼室2で燃焼させた後、その排気ガスを、排気系を経て大気に放出するようになっている。
【0023】
上記吸気系は、シリンダヘッドに形成された吸気ポート3に接続されるインテークマニホールド21に吸気管22を接続して形成される吸気通路を備え、この吸気通路に、その空気流通方向上流側から順にエアクリーナ23、スロットルバルブ24を配置した構成となっている。
【0024】
上記燃料供給系は、燃料供給路31に、その燃料供給方向上流側から順に燃料タンク32、サプライポンプ33、コモンレール34、複数の燃料噴射弁(インジェクタ)35,35,…を配置した構成となっている。サプライポンプ33は、エンジン1の図示しないクランクシャフトによって駆動されるもので、燃料タンク32から燃料を汲み上げ、この汲み上げた燃料を、燃料供給路31を介してコモンレール34に供給する。コモンレール34は、サプライポンプ33から供給された高圧燃料を所定圧力に保持(蓄圧)する蓄圧室としての機能を有し、この蓄圧した燃料を各燃料噴射弁35,35,…に分配する。燃料噴射弁35は、例えば、所定電圧が印加されたときに開弁して、燃焼室2内に燃料を噴射供給する電磁駆動式の開閉弁である。
【0025】
上記排気系は、シリンダヘッドに形成された排気ポート4に接続されるエキゾーストマニホールド41に排気管42を接続して形成される排気通路を有している。排気管40は、ターボチャージャ5直下流に接続されたアウトレットエルボ40aと、このアウトレットエルボ40aとフィルタ装置8bとを接続するフロントパイプ40bとを含んでいる。
【0026】
また、エンジン1には、ターボチャージャ(過給機)5、インタークーラ6、排気再循環装置としてのEGR装置7、前段酸化触媒(酸化触媒)8a、フィルタ装置8b、燃料添加弁9が装備されている。
【0027】
ターボチャージャ5は、周知のように排気ガス圧力を利用して吸入空気を昇圧過給するものであり、主としてコンプレッサハウジング内に収容されたコンプレッサインペラ5aと、タービンハウジング内に収容されたタービンホイール5bとを備えている。コンプレッサインペラ5aは、吸気管22途中に配置されており、タービンホイール5bは、エキゾーストマニホールド41の集合部と排気管42との間に配置されている。
【0028】
インタークーラ6は、ターボチャージャ5で昇圧過給した吸入空気を強制的に冷却するものであり、ターボチャージャ5のコンプレッサインペラ5aとスロットルバルブ24との間に配置されている。スロットルバルブ24は、その開度を無段階に調整することが可能な電子制御式の開閉弁であり、所定条件下において吸入空気の流路面積を絞り、この吸入空気の供給量を調整(低減)する機能を有している。
【0029】
EGR装置7は、排気の一部(EGRガス)を吸気系に戻して燃焼室2へ再度供給することにより燃焼温度を低下させ、これによってNOx発生量を低減させるものであり、EGR通路7aに、その上流からEGRクーラ7b、EGRバルブ7cを配置した構成である。
【0030】
上記EGRクーラ7bは、例えばEGR通路7aを通過する排気ガスとエンジン1の冷却水との間で熱交換を行うことにより排気ガスの温度を下げる熱交換器からなる。EGRバルブ7cは、EGR通路7a内を排気系側から吸気系側へ還流される排気ガスの還流量を制御するものである。
【0031】
前段酸化触媒8aは、ターボチャージャ5のタービンホイール5bより下流側の排気管42(アウトレットエルボ40a又はフロントパイプ40b)内に配設されている。
【0032】
フィルタ装置8bは、排気管42内において前段酸化触媒8aより下流側に一定の距離をおいて設けられている。フィルタ装置8bは、後段酸化触媒8baとこの後段酸化触媒8baに僅かの隙間を空けて連設されたパティキュレートフィルタ8bbとを備えている。
【0033】
パティキュレートフィルタ8bbには、例えば周知のDPFと呼ばれる、多孔質部材に酸化触媒(例えば白金等の貴金属を主成分とするもの)を担持させた構成からなる。このパティキュレートフィルタ8bbにおいては、排気中の有害物質を酸化触媒により酸化させて、二酸化炭素と水蒸気に変換し、PM(粒子状物質)を多孔質部材の微細孔に捕集する。
【0034】
燃料添加弁9は、排気管42内のターボチャージャ5のタービンホイール5bより下流側かつ前段酸化触媒8aより上流側で燃料を添加するように設けられている。この燃料添加弁9には、サプライポンプ33から添加剤供給路52を介して燃料が供給される。この燃料添加弁9から添加された未燃燃料は、前段酸化触媒8aにおいて酸化反応を起こし、その反応熱により排気ガス温度を昇温させる。さらに、燃料添加弁9から噴射された未燃燃料は、フィルタ装置8bの後段酸化触媒8baにおいても酸化反応を起こし、その反応熱により排気ガス温度を昇温させてパティキュレートフィルタ8bbに捕集されているPMを燃焼除去する。
【0035】
以上の如く構成されたエンジン1の各種動作は、上記エンジンECU(Electronic Control Unit)10により制御される。
【0036】
このエンジンECU10は、例えば図2に示すように、CPU101、ROM102、RAM103、バックアップRAM104等から構成されている。ROM102は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU101は、ROM102に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて各種の演算処理を実行する。また、RAM103は、CPU101での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM104は、例えばエンジン1の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。これらROM102、CPU101、RAM103ならびにバックアップRAM104は、双方向性バス107によって相互に接続されるとともに、入力インターフェース105や出力インターフェース106と接続されている。
【0037】
エンジンECU10は、各種のセンサ類の信号(運転パラメータ:車両の走行状態、エンジン1の運転状態に応じた信号)に基づいて、エンジン1の各種運転を制御するのであるが、本実施形態においては、主としてパティキュレートフィルタ8bbの再生制御等についてのみ説明する。
【0038】
入力インターフェース105には、図2に示すように、水温センサ71、エアフローメータ72、吸気温センサ73、吸気圧センサ74、A/F(空燃比)センサ76、排気温度センサ77a,77b,77c、レール圧センサ78、スロットル開度センサ79、アクセル開度センサ80、クランクポジションセンサ81、差圧センサ82等が接続されている。
【0039】
水温センサ71は、エンジン1の冷却水温に応じた検出信号を出力する。エアフローメータ72は、吸気系のスロットルバルブ24よりも上流において吸入空気の流量(吸入空気量)に応じた検出信号を出力する。吸気温センサ73は、インテークマニホールド21に配置され、吸入空気の温度に応じた検出信号を出力する。吸気圧センサ74は、インテークマニホールド21に配置され、吸入空気圧力に応じた検出信号を出力する。A/Fセンサ76は、排気系のフィルタ装置8bの下流側において排気中の酸素濃度に応じて連続的に変化する検出信号を出力する。
【0040】
排気温度センサ77aは、排気通路の前段酸化触媒8aより下流側かつパティキュレートフィルタ8bbより上流側で排気温度を検出するように設けられている。本実施形態では、後段酸化触媒8baの近傍上流側に設けられ、後段酸化触媒8baの入口排気温度に応じた検出信号を出力する。なお、排気通路の後段酸化触媒8baとパティキュレートフィルタ8bbとの間、およびパティキュレートフィルタ8bbの近傍下流側にも排気温度センサ77b,77cがそれぞれ設けられている。
【0041】
レール圧センサ78は、コモンレール34内に蓄えられている燃料の圧力に応じた検出信号を出力する。スロットル開度センサ79は、スロットルバルブ24の開度を検出する。アクセル開度センサ80は、アクセルペダルの踏み込み量に応じた検出信号を出力する。クランクポジションセンサ81は、エンジン1のクランクシャフト(図示省略)が一定角度回転する毎に検出信号(パルス信号)を出力する。差圧センサ82は、後段酸化触媒8baとパティキュレートフィルタ8bbとの間、および、パティキュレートフィルタ8bbの近傍下流側に設けられており、それぞれの圧力に応じた検出信号を出力し、エンジンECU10においてパティキュレートフィルタ8bbの前後の差圧が検出される。
【0042】
一方、出力インターフェース106には、スロットルバルブ24、燃料噴射弁35、EGRバルブ7c、燃料添加弁9等が接続され、エンジン1の運転状態等に応じてこれらバルブが制御されるようになっている。
【0043】
−フィルタ再生制御−
エンジンECU10は、パティキュレートフィルタ8bbに堆積しているPMの量を推定し、その推定量が所定の閾値(パティキュレートフィルタ8bbの再生が必要となる値)を超えていると判定した場合にフィルタ再生フラグをオン状態にし、フィルタ再生モードに移行する。フィルタ再生モードにおいては、パティキュレートフィルタ8bbに捕集されたPMを除去すべくフィルタ再生制御が実行される。このフィルタ再生制御においては、パティキュレートフィルタ8bbに捕集されたPMを燃焼除去させるために、燃料添加弁9から排気通路内に燃料が噴射される。排気通路内に燃料が噴射されると、その一部が前段酸化触媒8aにおいて酸化反応(燃焼)を起こして排気温度を上昇させる。さらに、前段酸化触媒8aで酸化反応しなかった余部の燃料が後段酸化触媒8baおよびパティキュレートフィルタ8bbにおいて酸化反応(燃焼)して排気温度を再び上昇させる。これにより、パティキュレートフィルタ8bbがPMを燃焼させるのに必要な温度まで上昇し、パティキュレートフィルタ8bbに捕集されたPMが燃焼除去される。
【0044】
燃料添加弁9から排気通路への燃料添加は、エンジンECU10が、クランクポジションセンサ81の出力から読み込んだ機関回転数Neに基づいて、予め実験等により作成されたマップを参照して要求添加量および添加間隔を算出し、その算出結果に応じて燃料添加弁9の開度を制御して行われる。
【0045】
また、フィルタ再生制御中は、エンジン1の燃焼モードが第1再生燃焼モードとこの第1再生燃焼モードよりエンジン1直後の排気温度が高くなる第2再生燃焼モードとに切替えられる。すなわち、エンジンECU10は、排気温度センサ77の出力より求まるフィルタ装置8bに流入する直前の排気温度が所定の閾値Gth以上ある場合、または、水温センサ71の出力より求まるエンジン冷却水の温度が所定の閾値Wth以下である場合に、第1再生燃焼モードとし、フィルタ装置8bに流入する直前の排気温度が上記閾値Gth未満であり、かつ、エンジン冷却水の温度が上記閾値Wthを超える場合に第2再生燃焼モードとする。
【0046】
本実施形態では、エンジンECU10は、第2再生燃焼モードにおいてEGR装置7のEGRバルブ7cを閉弁して排気再循環を停止し、第1再生燃焼モードにおいて同EGRバルブ7cを開弁して排気再循環を行うようになっている。これにより、第2再生燃焼モードの方が第1再生燃焼モードよりもエンジン1直後の排気温度が高くなるようになっている。なお、第2再生燃焼モードにおいてEGR装置7による排気再循環を停止させるのではなく、第2再生燃焼モードにおける排気再循環量を第1再生燃焼モードにおける排気再循環量よりも少なくすることにより、第2再生燃焼モードの方が第1再生燃焼モードよりもエンジン1直後の排気温度が高くなるようにしてもよい。
【0047】
なお、エンジンECU10はパティキュレートフィルタ8bbに堆積していると推定されるPMの量が所定の閾値未満であると判定した場合、フィルタ再生モードをOFF状態にする。フィルタ再生モードをOFF状態になると、上記第1再生燃焼モードおよび第2再生燃焼モードの何れよりもエンジン1直後の排気温度が低くなる通常燃焼モードに切替えられる。
【0048】
−燃焼モードの切替制御−
以下、エンジンECU10が実行する上記再生燃焼モードの切替制御等の手順について図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0049】
先ず、ステップST1において、フィルタ再生モード中であるか否かをフィルタ再生フラグがON状態であるか否かにより判定する。ここで、肯定判定をした場合はステップST2へ移り、否定判定した場合はステップST7へ移る。
【0050】
フィルタ再生フラグは、既述したように、パティキュレートフィルタ8bbに堆積していると推定されるPMの量が所定の閾値を超えていると判定された場合にONとされる。PM堆積量の推定方法は、例えば、周知の通り、エンジン1の運転条件(例えば、排気温度、燃料噴射量、機関回転数等)に応じたPM付着量を予め実験等により調べてマップ化しておき、このマップにより求められるPM付着量を積算してPMの堆積量とする方法、車両走行距離もしくは走行時間に応じてPM堆積量を推定する方法、パティキュレートフィルタ8bbの入口(上流側)圧力と出口(下流側)圧力との差圧を検出する差圧センサ82の出力に基づいてパティキュレートフィルタ8bbに捕集されたPM堆積量を推定する方法などが挙げられる。
【0051】
一方、フィルタ再生フラグのOFFは、既述したように、パティキュレートフィルタ8bbに堆積していると推定されるPMの量が所定の閾値未満であると判定された場合になされる。PM残量の推定方法は、例えば、周知の通り、排気温度に応じたPMの燃焼速度を実験等により調べてマップ化しておき、当初のPM堆積量からこのマップに基づき推定される燃焼除去量を減算して求める方法が挙げられる。
【0052】
ステップST2において、第2再生燃焼モードを実行するための前提条件を満たしているか否かを判定する。ここで肯定判定をした場合は、ステップST3に移り、否定判定をした場合は、ステップST5へ移る。
【0053】
このステップST2の判定は、吸気温度(外気温度)が低い場合のように、排気温度が上がり難い環境下にある場合に、比較的第2再生燃焼モードに切り替わり易く、吸気温度が高い場合のように、排気温度が上がり易い環境下にある場合に、比較的第1再生燃焼モードに切り替わり易くするものである。具体的には、エンジンECU10は、吸気温センサ73からの出力信号により求められる吸気温度に基づいて、エンジン負荷(燃料噴射量)とエンジン回転数をパラメータとした後述の第1テーブル〜第3テーブルから何れか1つのテーブルを選択し、選択したテーブルに基づいて上記前提条件を判定する。これらの第1テーブル〜第3テーブルはROM102内に予め記憶されている。
【0054】
エンジンECU10は、吸気温センサ73からの出力信号により求まる吸気温度が所定の閾値温度T1以上では、図4(a)に示すような第1テーブルを選択し、吸気温度が所定の閾値温度T2以上閾値温度T1未満では図4(b)に示すような第2テーブルを選択し、吸気温度が閾値温度T2未満では図4(c)に示すような第3テーブルを選択する。なお、吸気温度が高温側から低温側に変化する際の各閾値温度T1,T2よりも吸気温度が低温側から高温側に変化する際の閾値温度の方が所定値だけ高くなるようにヒステリシスを設けてもよい。
【0055】
また、本実施形態においては、吸気温度が高温側から低温側に移るにつれて、順に第1テーブル、第2テーブル、第3テーブルを選択するようになっているが、大気圧センサを設け、この大気圧センサの出力信号により求まる大気圧を吸気温度の代わりにパラメータとして、第1テーブル、第2テーブル、第3テーブルの何れかを選択するようにしてもよい。この場合、大気圧が高圧側から低圧側に移るにつれて、順に第1テーブル、第2テーブル、第3テーブルを選択するようになる。
【0056】
図4(a)に示す第1テーブルは、比較的排気温度が上がり易い環境下(比較的吸気温度が高い場合、比較的大気圧が高い場合)に選択されるテーブルであり、通常燃焼モードおよび第1再生燃焼モードの実行可能領域を設定している。通常燃焼モードは燃料噴射弁35の燃料噴射量がQ1以下且つエンジン1の回転数がNe1以下の領域に設定されている。第1再生燃焼モードは燃料噴射弁35の燃料噴射量がQ2以下且つエンジン1の回転数がNe2以下の領域に設定されている。ここで、Q1>Q2、Ne1>Ne2である。エンジンECU10は、この第1テーブルを選択した場合、第2再生燃焼モードの実行可能領域が設定されていないことから、ステップST2において否定判定を行う。なお、燃料噴射弁35の燃料噴射量は、例えば、エンジン1の回転数および吸入空気量をパラメータとした燃料噴射量を設定するためのマップに基づいて算出することができ、エンジン1の回転数は、例えば、クランクポジションセンサ81の出力信号に基づいて算出することができる。
【0057】
図4(b)に示す第2テーブルは、通常燃焼モード、第1再生燃焼モード、および第2再生燃焼モードの実行可能領域を設定している。通常燃焼モードは、燃料噴射弁35の燃料噴射量がQ3以下且つエンジン1の回転数がNe3以下の領域に設定されている。第1再生燃焼モードは燃料噴射弁35の燃料噴射量がQ4以下且つエンジン1の回転数がNe4以下の領域に設定されている。第2燃焼モードは、燃料噴射弁35の燃料噴射量がQ5以下且つエンジン1の回転数がNe5以下の領域に設定されている。ここで、Q3>Q4>Q5、Ne3>Ne4>Ne5である。エンジンECU10は、この第2テーブルを選択した場合、燃料噴射弁35の燃料噴射量がQ5以下且つエンジン1の回転数がNe5以下の場合に、ステップST2において肯定判定を行い、それ以外の場合に否定判定を行う。
【0058】
また、図4(c)に示す第3テーブルは、比較的排気温度が上がり難い環境下で選択されるテーブルであり、通常燃焼モードおよび第2再生燃焼モードの実行可能領域を設定している。通常燃焼モードは燃料噴射弁35の燃料噴射量がQ6以下且つエンジン1の回転数がNe6以下の領域に設定されている。第2再生燃焼モードは燃料噴射弁35の燃料噴射量がQ7以下、エンジン1の回転数がNe7以下の領域に設定されている。ここで、Q6>Q7、Ne6>Ne7である。エンジンECU10は、この第3テーブルを選択した場合、燃料噴射弁35の燃料噴射量がQ7以下且つエンジン1の回転数がNe7以下の場合に、ステップST2において肯定判定を行い、それ以外の場合に否定判定を行う。
【0059】
ステップST3において、排気温度センサ77から検出される排気温度が所定の閾値Gth未満であり、かつ、水温センサ71から検出される冷却水の温度が所定の閾値Wthを超えているか否かを判定する。ここで、肯定判定をした場合は、ステップST4に移り、否定判定をした場合はステップST5に移る。フィルタ再生モードに入り、燃料添加弁9から前段酸化触媒8aに燃料が添加されているにもかかわらず、フィルタ装置8bに流入する直前の排気温度が閾値Gthより低い場合、前段酸化触媒8aが熱劣化しており、前段酸化触媒8aとフィルタ装置8bとの間の排気通路に液化した未燃燃料が付着していたり、未燃燃料の溜まりが形成していることが想定される。本ステップST3は、このような場合に、肯定判定をして、後述するステップST4において比較的排気温度が高い第2再生燃焼モードに切替えるためのものである。なお、上記排気温度の閾値Gthとしては、フィルタ再生モード中その閾値より排気温度が低い場合に、前段酸化触媒8aが非活性状態であると推定できる値や、前段酸化触媒8aが熱劣化して前段酸化触媒8aとフィルタ装置8bとの間の排気通路に液化した未燃燃料が付着していると推定できる値が設定される。このような閾値は実験等により求められる。
【0060】
また、ステップST3において、エンジン1の冷却水の温度を判定パラメータとしているのは、次のような理由による。すなわち、エンジン1が冷間始動時に始動された場合のように冷却水の温度が低い場合は、排気温度も当然に低く、前段酸化触媒8aが活性できる条件を満たしていないことから、前段酸化触媒8aが熱劣化していなくても排気温度センサ77によって検出される排気温度は当然に低くなる。このような場合には、エミッションの悪化を防止するために、燃焼モードが第1再生燃焼モードとされる。
【0061】
また、冷却水の温度が低い場合は、燃焼室2内の温度も低く、このような場合に、第2再生燃焼モードにして排気再循環量をゼロないし少なくすると、パイロット噴射燃料が暖まり難くなり、パイロット噴射燃料等の着火性が悪化し易くなる。このような着火性の悪化を防止し好適な燃焼状態を維持するためにも燃焼モードが第1再生燃焼モードとされる。
【0062】
ステップST4において、燃焼モードを第1再生燃焼モードよりも排気温度が高い第2再生燃焼モードに切替える。既に同燃焼モードに設定されている場合はその燃焼モードを維持する。燃焼モードが比較的排気温度の高い第2再生燃焼モードに設定されることにより、前段酸化触媒8aとフィルタ装置8baとの間の排気通路を通過する排気温度が上昇し、その排気通路に付着ないし溜まっている液化した未燃燃料が気化して排気通路の下流側へ送り出される。また、前段酸化触媒8aに供給される排気温度が上昇することで、熱劣化している前段酸化触媒8aが活性化して前段酸化触媒8aを通過する排気温度が上昇しやすくなるため、前段酸化触媒8aとフィルタ装置8baとの間の排気通路を通過する排気温度は更に上昇し易くなる。もちろん、前段酸化触媒8aの熱劣化によりパティキュレートフィルタ8bbがフィルタ再生するために必要な温度まで昇温されていなかった場合は当該温度まで昇温されるようになるので、フィルタ再生が良好に遂行されるようになる。
【0063】
ステップST5において、第1再生燃焼モードを実行するための前提条件を満たしているか否かを判定する。ここで肯定判定をした場合は、ステップST6に移り、否定判定をした場合は、ステップST7へ移る。なお、このステップST5の判定は、ステップST2での説明と同じように、エンジンECU10が吸気温度に基づいて、図4(a)〜図4(c)に示す、第1テーブル〜第3テーブルから何れかを選択し、選択したテーブルに基づいて行う。例えば、エンジンECU10が図4(a)に示す、第1テーブルを選択した場合、燃料噴射弁35の燃料噴射量がQ2以下且つエンジン1の回転数がNe2以下の場合に、ステップST5において肯定判定を行い、それ以外の場合に否定判定を行う。また、例えば、エンジンECU10が図4(b)に示す、第2テーブルを選択した場合、燃料噴射弁35の燃料噴射量がQ4以下且つエンジン1の回転数がNe4以下の場合に、ステップST5において肯定判定を行い、それ以外の場合に否定判定を行う。また、例えばエンジンECU10が図4(c)に示す、第3テーブルを選択した場合、第1再生燃焼モードの実行可能領域が設定されていないことにより、ステップST5において否定判定を行う。
【0064】
ステップST6において、燃焼モードを第2再生燃焼モードより排気温度が低い第1再生燃焼モードに切替える。既に同燃焼モードに設定されている場合はその燃焼モードを維持する。
【0065】
ステップST7において、燃焼モードを第1および第2再生燃焼モードの何れよりも排気温度の低い通常燃焼モードに切替える。既に同燃焼モードに設定されている場合はその設定を維持する。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、例えば、燃料添加弁により未燃燃料を排気通路に添加することによって、排気通路に設置されたパティキュレートフィルタを再生する排気浄化装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 エンジン(内燃機関)
5 ターボチャージャ(過給機)
5b タービンホイール(タービン)
7 EGR装置(排気再循環装置)
8a 前段酸化触媒(酸化触媒)
8b フィルタ装置
8ba 後段酸化触媒
8bb パティキュレートフィルタ
9 燃料添加弁
10 エンジンECU(制御装置)
42 排気管(排気通路)
71 水温センサ(冷却水温検出手段)
77a,77b,77c 排気温度センサ(排気温度検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に燃料を添加する燃料添加弁と、
前記排気通路において前記燃料添加弁が燃料を添加する位置より下流側に設けられた酸化触媒と、
前記排気通路において前記酸化触媒より下流側に一定の距離をおいて設けられ、排気中の粒子状物質を捕集するパティキュレートフィルタと、
前記燃料添加弁による排気通路内への燃料の添加を伴うフィルタ再生制御を実行するフィルタ再生制御手段を有する制御装置と、
を備える内燃機関の排気浄化装置において、
前記制御装置は、
前記酸化触媒より下流側で排気温度を検出する排気温度検出手段と、内燃機関の燃焼モードを、第1再生燃焼モード又は、第1再生燃焼モードより内燃機関直後の排気温度が高くなる第2再生燃焼モードに切替可能な燃焼モード切替手段と、をさらに有し、
前記燃焼モード切替手段は、前記フィルタ再生制御中に、前記排気温度検出手段により検出される排気温度が所定の閾値以上である場合には、内燃機関の燃焼モードを前記第1再生燃焼モードとし、前記フィルタ再生制御中に、前記排気温度検出手段により検出される排気温度が前記所定の閾値未満である場合には、内燃機関の燃焼モードを前記第2再生燃焼モードとする、ことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記制御装置は、
内燃機関の冷却水の温度を検出する冷却水温検出手段をさらに有し、
前記燃焼モード切替手段は、前記フィルタ再生制御中に、前記排気温度検出手段により検出される排気温度が所定の閾値以上又は前記冷却水温検出手段により検出される内燃機関の冷却水の温度が所定の閾値以下である場合に、内燃機関の燃焼モードを前記第1再生燃焼モードとし、前記フィルタ再生制御中に、前記排気温度検出手段により検出される排気温度が前記排気温度の所定の閾値未満でありかつ前記冷却水温検出手段により検出される内燃機関の冷却水の温度が前記冷却水温度の所定の閾値を超える場合に、内燃機関の燃焼モードを第2再生燃焼モードとする、ことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
排気再循環装置をさらに備え、前記第2再生燃焼モードにおける排気再循環量が前記第1再生燃焼モードにおける排気再循環量より少ないことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記第2再生燃焼モードは、排気再循環の停止を伴う燃焼モードであることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記燃料添加弁は、前記排気通路においてターボチャージャのタービンより下流側に燃料を添加するものであることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−247195(P2011−247195A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121820(P2010−121820)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】