説明

内燃機関の燃料供給装置における圧力振動の励振方法および装置

【課題】燃料の音速の簡単且つ確実な決定方法を可能にする、内燃機関の燃料供給装置内の圧力振動の励振方法および装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の燃料供給装置(1)における圧力振動の励振方法では、燃料タンク(20)内または燃料配管(5、10、15、25、30、35、40)内の圧力を表わす変数が評価され、内燃機関の少なくとも1つの運転状態において、燃料タンク(20)内または燃料配管(5、10、15、25、30、35、40)内の燃料の固有振動が励振される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料供給装置における圧力振動の励振方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ここで、燃料供給装置が少なくとも1つの燃料タンクおよび少なくとも1つの燃料配管を含み、この場合、少なくとも1つの燃料タンク内の圧力が圧力センサにより測定され、且つ測定圧力の関数として圧力振動が決定されることが既知である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、燃料の音速の簡単且つ確実な決定方法を可能にする、内燃機関の燃料供給装置における圧力振動の励振方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、内燃機関の燃料供給装置における圧力振動の励振方法は、内燃機関の少なくとも1つの運転状態において、燃料タンク内または燃料配管内の燃料の固有振動が励振される。
【0005】
また、本発明によれば、内燃機関の燃料供給装置における圧力振動の励振装置は、励振手段を備え、励振手段が、内燃機関の少なくとも1つの運転状態において、燃料タンク内または燃料配管内の燃料の固有振動を励振する。
【発明の効果】
【0006】
本発明による内燃機関の燃料供給装置における圧力振動の決定方法および装置は、従来技術に比較して、内燃機関の少なくとも1つの運転状態において、燃料タンク内または燃料配管内の燃料の固有振動が励振されるという利点を有している。このようにして、例えば燃料タンク内または燃料配管内の燃料の音速の確実な決定を可能にする、燃料タンク内または燃料配管内における評価可能な圧力振動が達成可能である。一般に、例えば燃料の固有周波数または音速のような、燃料タンク内または燃料配管内の燃料の性質は簡単且つ確実に決定可能である。
【0007】
本発明はさらに、有利な改良および改善が可能である。
固有振動が励振されたときに得られる、燃料タンク内または燃料配管内の圧力を表わす変数の評価において、燃料タンク内または燃料配管内の燃料の音速が決定されることは特に有利である。
【0008】
このようにして、燃料タンク内または燃料配管内の燃料の圧力振動が確実に測定可能であり、これによりその影響の十分な補償を可能にする。燃料の音速の決定は、このようにして、特性曲線群を使用することなく、したがって少ない費用で決定可能である。
【0009】
固有振動の時間経過から、固有振動の周波数が、特にフーリエ変換により決定されることが特に有利である。このようにして、圧力振動が、特に簡単且つ確実に決定可能である。したがって、この周波数情報もまた前記圧力振動の補償のために使用可能である。
【0010】
固有振動の周波数、振動長さおよび固有振動の振動次数から燃料の音速が決定されるとき、他の利点が得られる。このようにして、燃料の音速は、特に簡単且つ正確に数学的関係から求められる。
【0011】
固有振動が内燃機関の作業運転または走行運転中に励振されるとき、他の利点が得られる。このようにして、固有振動の励振のために、場合により燃料の音速を決定するために、内燃機関の作業運転または走行運転が中断される必要はない。
【0012】
しかしながら、固有振動が内燃機関の惰性運転中に励振されるときもまたそれは有利である。惰性運転中においては、それが内燃機関の運転を本質的に妨害することなく、燃料タンク内または燃料配管内への燃料供給が遮断可能である。燃料供給の遮断により、評価されるべき固有振動への外乱変数の影響が十分に回避可能なので、音速の決定がさらにより確実に実行可能である。特に、燃料供給を遮断した場合、燃料ポンプにより発生される圧力衝撃が燃料タンク内または燃料配管内の圧力を表わす測定変数においてもはや検出されないので、この変数の経過はきわめて平滑である。測定変数の測定信号内の外乱が小さいことにより、求められるべき固有周波数がフーリエ・スペクトル内においてより簡単且つより正確に検出可能である。
【0013】
したがって、固有振動が、惰性運転中において、燃料供給が中断されているとき、および/または燃料排出が中断されているときに励振されるとき、それは特に有利である。即ち、燃料排出が中断されているときにおいても、燃料タンク内または燃料配管内の燃料排出に基づく外乱圧力振動が測定変数の時間経過に重なることが回避されるので、測定変数の測定信号内の外乱が小さいことにより、求められる固有振動の固有周波数がフーリエ・スペクトル内に同様により簡単且つより正確に検出可能である。
【0014】
燃料の音速が、燃料タンク内または燃料配管内の燃料の温度の関数としても決定されるとき、他の利点が得られる。このようにして、燃料の音速がさらにより正確に決定可能である。特に燃料の音速は燃料の温度に著しく従属するので、このことは特に燃料温度が低下する惰性運転に対して適用される。
【0015】
固有振動が圧力弁の短時間の開放により励振されるとき、他の利点が得られる。このようにして、燃料タンク内または燃料配管内において、固有振動は、例えば圧力センサによっても解像可能な十分に大きな振幅が達成可能である。
【0016】
この関係において、圧力弁の開放時間が予想固有振動の周期より短いかまたは等しく選択されるとき、それは特に有利である。このようにして、希望の固有振動もまた励振可能であることが保証される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1において、符号1は、一般的には、例えば車両を駆動する内燃機関の燃料供給装置を示す。この場合、燃料は、貯蔵容器65から、図1には示されていない低圧ポンプにより、第1の燃料供給配管5、燃料配量ユニット70、第2の燃料供給配管10、高圧ポンプ75、および第3の燃料供給配管15を介して、燃料タンク20内にポンプ移送される。燃料配量ユニット70は、制御装置105により操作され且つ高圧ポンプ75の燃料吸込量を制御する。燃料配量ユニット70が制御装置105により閉じられた場合、高圧ポンプ75はもはや燃料を燃料タンク20内に供給せず、燃料タンク20は、以下において燃料圧力タンクまたはレールとも呼ばれる。燃料配量ユニット70が開かれた状態においてのみ高圧ポンプ75は燃料をレール20内にポンプ移送可能である。この場合、制御装置105は、高圧ポンプ75からレール20内にポンプ移送可能な吸込量を燃料配量ユニット70の開度の対応の設定により制御する。この場合、燃料配量ユニット70は、例えば弁の形に形成されていてもよい。レール20内に存在する燃料は、第1の高圧配管25を介して第1の噴射弁85に、第2の高圧配管30を介して第2の噴射弁90に、第3の高圧配管35を介して第3の噴射弁95に、および第4の高圧配管40を介して第4の噴射弁100に、内燃機関の燃焼室内にそれぞれ噴射するために供給可能である。この場合、噴射は、内燃機関の1つまたは複数のシリンダ内に直接行われても、または代替態様として内燃機関の吸気管内に行われてもよい。この場合、1つのシリンダ内に、噴射弁の少なくとも1つを介して燃料が直接噴射されてもよい。図1においては、例として4つの噴射弁が示されているが、噴射弁の数はそれより多くてもまたは少なくてもよい。例えば、加速ペダルを介して設定されたドライバの希望トルクを変換するために、または内燃機関の燃焼室内に所定の空気/燃料混合物組成を達成するために、噴射弁85、90、95、100は、制御装置105により所定の開放時期および開放時間を設定するように操作される。さらに、以下において圧力制御弁45がレール20の範囲内に配置されている。レール20内に燃料の希望圧力を設定するために、圧力制御弁45は、制御装置105により操作される。さらに、レール20の範囲内に圧力センサ55が配置され、圧力センサ55は、レール20内の燃料圧力を測定し且つ対応の測定信号pを制御装置105に伝送する。さらに図1に示されているように、オプションとして、レール20の範囲内、好ましくはレール20の内壁内に、温度センサ80が設けられていてもよく、温度センサ80は、レール20内の燃料の温度を測定し且つ対応の測定信号Tを制御装置105に伝送する。制御装置105に供給される、その他の入力変数が、図1において符号120により示されている。その他の入力変数120は、例えばエンジン回転速度および内燃機関負荷であっても、特に内燃機関が惰性運転にあるかまたは牽引運転にあるかに関する情報であってもよい。これらのその他の入力変数120から、制御装置105は内燃機関の運転状態を決定可能である。
【0018】
ここで、本発明により、内燃機関の少なくとも1つの運転状態において、レール20内の燃料の固有振動を励振し且つ励振された固有振動において得られたレール20内の圧力を圧力センサ55により測定するように設計されている。このとき、この測定圧力は、測定信号の形で圧力センサ55から制御装置105に伝送される。圧力センサ55はレール20内の燃料圧力を連続的に測定するので、制御装置105に、このように測定信号によりレール20内の燃料圧力の時間経過が供給される。図2には、本発明による励振装置50を表わす機能図が示され、この機能図によってもまた本発明による方法が理解される。この場合、励振装置50は、制御装置105内においてソフトウェアによりまたはハードウェアにより実行されていてもよい。図2に示すように、励振装置50は、走査ユニット110を含み、走査ユニット110に圧力センサ55の測定信号pが供給されている。走査ユニット110は、フーリエ変換のためにその出力端に走査値pを提供するために、当業者に既知のように測定信号pを走査し、フーリエ変換は後置されているフーリエ変換ユニット115により実行される。次に、フーリエ変換ユニット115は固有周波数fを決定ユニット60に供給し、決定ユニット60にはさらに、振動長さとしてのレール20の長さl、および周波数fを有する形成された固有振動の振動次数nが供給されている。フーリエ変換において提供された振動周波数から、それぞれ付属の振動次数nが当業者に既知のように決定可能である。
【0019】
追加態様およびオプションとして、決定ユニット60に、さらに温度センサ80により決定された燃料温度Tが供給されてもよい。以下においては、はじめに、燃料温度Tは考慮されないものと仮定されるべきである。次に、決定ユニット60は、供給された固有周波数f、振動次数nおよび振動長さlから、次式によりレール20内の燃料の音速vを決定する。
【0020】
【数1】

【0021】
=f・l・n/2 (1)
圧力が当該運転点においてではなく隣接点においてのみ測定可能であるときは、場合により発生する燃料温度Tの変化が考慮されなければならない。音速と温度との関数関係が、例えば特性曲線群内に記憶されている場合、測定点から当該運転点への外挿が可能である。音速は、当該運転点および測定点が相互に異なるときにのみ補正されなければならない。その他の場合には、音速と温度との関数関係が圧力測定において直接且つ自動的に考慮される。即ち、式(1)から出発して、燃料温度Tの燃料の音速vへの影響が考慮可能である。この場合、式(1)により決定された音速vは、燃料温度Tの関数として燃料の補正音速vskorrに補正され、次に補正音速vskorrが、音速vの代わりに決定ユニット60から出力される。特性曲線群は、例えば試験台上において決定されてもよい。燃料温度Tが測定されない場合においても、例えば内燃機関の特定の運転状態における燃料の温度特性がわかっているときには、燃料温度Tが考慮可能である。例えば惰性運転においては、制御により圧力制御弁45を通過する燃料が少ないことから僅かな絞り損失が得られるにすぎず、また高圧ポンプ75により僅かな燃料が圧縮されるにすぎないので、一般に燃料温度Tは低下する。燃料の音速は、上記のように燃料温度Tに著しく従属するので、惰性過程の間においてはレール20内の燃料の冷却が考慮されなければならない。この考慮は、上記のように燃料温度Tの測定により行われても、または冷却特性が記憶されている適切な特性曲線群のデータにより行われてもよい。したがって、例えば同様に試験台上において決定されたこれらの特性曲線群は、惰性過程のどの時点において、燃料がいずれの温度を有しているかを与える。このように決定された燃料温度Tは、次に、例えば特性曲線または特性曲線群により、上記のように式(1)により決定された音速vに対する値を補正するために上記のように使用可能である。
【0022】
このように決定された、場合により温度の関数として補正された音速は、次に、制御装置105内の後処理に供給されてもよい。レール20内の燃料の音速は、特に、例えば図1の燃料供給装置1により形成されているコモン・レール・システムにおいて、幾つかの制御機能に対して重要な変数である。即ち、音速は、例えばレール20内および高圧配管25、30、35、40内の圧力波の補償のために必要とされ、これはレール20内および高圧配管25、30、35、40内の圧力振動の影響の正確な補償のために重要である。この場合、燃料の音速は燃料の密度および圧縮率の関数であり、したがって音速は燃料の種類および燃料温度の関数である。燃料温度は原理的に上記のように測定またはモデル化可能であるが、給油燃料の品質の検出はその時点においては可能ではない。
【0023】
さらに、固有周波数fを確実に決定するために、したがってレール20内の燃料の音速を決定するためにも、レール20内の燃料の固有振動がいかに励振可能であるかという問題のみが重要となる。このために、圧力センサ55により解像可能なレール20内の圧力振動が誘導されるべきである。外部励振されたレール20内の燃料のこのような固有振動は、例えば圧力制御弁45の短時間の開放により行われてもよい。この場合、圧力制御弁45の時定数、即ち圧力制御弁45が短時間開かれている時間は、検出されるべき予想固有振動の周期より大きくてはならない。レール20内の燃料の固有振動は約700−1000Hzの範囲内にあるので、圧力制御弁45は2ミリ秒より小さいかまたは等しい時定数を有していなければならない。固有振動が、短時間ではあるが特に必ずしも全開である必要はない圧力制御弁45の上記の開放により発生された場合、発生された固有振動の振幅は十分大きな値が得られ、この振幅は圧力センサ55により解像可能であり、したがって測定可能である。通常の圧力センサは、今日、約2.5バールを解像する。この場合、例えば高圧ポンプ75により供給される、例えば約400バールの燃料の基本レール圧力から出発して、振動の振幅は約50バールの値を有し、したがってこの振幅は圧力センサ55により問題なく解像可能である。今日の燃料供給装置に対して提案されている、例えば約400バールの燃料の基本レール圧力は、燃料供給装置の確実な運転に対する約300バールの基本値から出発して、固有振動を発生するためにおよび振動それ自身のためにそれぞれ約50バールを加えて得られる。この場合、固有振動の周波数、即ち固有周波数は一次近似であり、即ち等エントロピー比においては固有振動の振幅とは無関係である。これは線形系の典型的な性質であり、必ずしも非線形系に対しては適用されない。ここでは一次近似において線形系が取り扱われるので、圧力制御弁45の短時間の開放によりいかなる圧力降下ないしいかなる固有振動の振幅が発生されるかは問題ではない。測定固有周波数fはそれとは無関係にほぼ同じ値となるであろう。即ち、圧力制御弁45により励振された振動振幅に関する要求は小さいものである。圧力制御弁45に最大許容流量が与えられた場合、それに応じて、流量の精度、流動時間または圧力制御弁45の開口断面積に対する高い要求は設定されない。振動を励振するために圧力制御弁45の動特性が十分であること、即ち圧力制御弁45の開放時間が上記のように十分に短く保持可能なことが重要である。即ち、圧力制御弁45が短時間の開放の間にいかなる開度で開かれるかは重要ではない。
【0024】
固有振動の励振は、例えば燃料供給装置1により燃料が供給される内燃機関の特定の運転状態の存在の関数として行われてもよい。励振装置50は励振ユニット125を含み、励振ユニット125にはその他の入力変数120が供給され、また励振ユニット125はその他の入力変数120から当業者に既知のように内燃機関の運転状態を導く。特に、励振ユニット125は、内燃機関が牽引運転にあるかまたは惰性運転にあるかを決定する。励振ユニット125は、供給されたその他の入力変数120から導かれた内燃機関の実際の運転状態を、レール20内における固有振動の励振のために設定された内燃機関の運転状態と比較する。これらが一致した場合、固有振動を励振するために、励振ユニット125は、圧力制御弁45に上記のような短時間の開放を命令する。さらに、励振ユニット125は、フーリエ変換ユニット115を、走査値pの時間列から固有周波数fを決定するように作動させる。これらが一致しなかった場合、励振ユニット125による圧力制御弁45のこのような操作は行われず、また励振ユニット125によるフーリエ変換ユニット115の作動もまた行われない。したがって、固有周波数fを決定するための走査値pの時間列の評価は行われない。
【0025】
図2の例に示すように、励振装置50は、走査ユニット110、フーリエ変換ユニット115、決定ユニット60および励振ユニット125を含む。この場合、走査ユニット110、フーリエ変換ユニット115、および決定ユニット60は、圧力センサ55により測定された、圧力信号pの時間経過を評価するように機能し、また励振ユニット125はレール20内の燃料の固有振動を励振するように機能する。代替態様として、励振装置50は、圧力センサ55および/または圧力制御弁45を含んでもよい。他の代替実施態様においては、走査ユニット110および/またはフーリエ変換ユニット115が、励振装置50の外に、例えば圧力センサ55と共に共通構造グループ内に配置されていてもよい。この例においては、励振ユニット125が、内燃機関の所定の運転状態が存在した場合にフーリエ変換ユニット115を作動し、存在しなかった場合に非作動とすると説明されてきた。代替態様として、励振ユニット125が、それに対応して、走査ユニット110または決定ユニット60を作動ないし非作動としてもよい。
【0026】
評価されるべき固有振動を励振するために、作業運転を表わす、または車両を駆動する場合には、内燃機関の走行運転を表わす内燃機関の牽引運転が所定の運転状態として設定されていてもよい。この場合、この運転状態は、この運転状態において短時間の間レール20内の燃料の圧力変動ないし圧力振動が許容されているときにのみ、固有振動の励振のために許容される。その他の場合、評価されるべき固有振動の励振のための所定の運転状態として、内燃機関の惰性運転が選択されてもよい。上記のように、惰性運転においては、一般に燃料温度は低下するので、この音速に対するできるだけ確実な値を得るために、この場合には、レール20内の燃料の音速の決定において燃料温度Tが上記のように考慮されるべきである。燃料温度Tが考慮されない場合、音速に対して決定された値は対応の誤差を有している。
【0027】
特に内燃機関の惰性運転においては、固有振動の励振のために、燃料配量ユニット70を閉じることが行われる。このために、固有振動の励振のために設定された内燃機関の惰性運転が実際に存在することを励振ユニット125が検出したとき、燃料配量ユニット70は、それに対応して、制御装置105により、特に励振装置50の励振ユニット125により操作される。それに対応して、噴射弁85、90、95、100を介しての噴射が中断されてもよく、この場合、固有振動の励振のために設定された内燃機関の惰性運転が存在し且つそれがその他の入力変数120によって励振ユニット125により検出されたとき、噴射弁85、90、95、100は、制御装置105によりないし励振ユニット125により、それに対応して操作される。ここで、燃料配量ユニット70は閉じられているので、高圧ポンプ75はもはやレール20内に燃料を供給しない。このとき、燃料は第3の燃料供給配管15を介して流入せず、さらに燃料は高圧配管25、30、35、40を介して流出しないので、レール20は閉じた系を示す。ここで、圧力制御弁45の短時間の開放により、励振ユニット125によって固有振動が励振可能である。このとき、この励振固有振動に対して圧力センサ55により測定された圧力信号p内においては、高圧ポンプ75によりないし噴射弁85、90、95、100の噴射過程により誘導された圧力衝撃は消失しているので、レール20内の燃料の圧力は、時間的にきわめて平滑に経過している。圧力信号p内の少ない外乱により、求められる固有周波数fはフーリエ・スペクトル内においてより簡単且つより正確に検出可能である。
【0028】
惰性運転において固有振動を励振するために、燃料供給を中断するために燃料配量ユニット70のみを励振するか、または燃料排出を中断するために噴射弁85、90、95、100のみを励振するように設計されていてもよく、この場合、このとき圧力信号pの上記外乱の一部のみがそれぞれ回避される。燃料供給のみが中断された場合、燃料噴射におけるレール20内の圧力降下に基づく外乱は抑制されない。噴射弁85、90、95、100による燃料の噴射即ち燃料排出のみが中断された場合、高圧ポンプ75により誘導された圧力衝撃に基づいて測定圧力信号p内に得られた外乱は抑制されない。高圧ポンプ75が供給している間に噴射が遮断されたとき、レール20内の圧力を制限するために圧力制御弁45はしばらくしてから開かれる。圧力信号p内の外乱の完全な抑制は、例えば燃料配量ユニット70を閉じることにより燃料供給が中断されるのみならず、例えば噴射弁85、90、95、100を閉じることにより燃料排出もまた中断されたときにのみ達成可能である。
【0029】
圧力信号pは、圧力センサ55により測定された、レール20内の燃料の圧力の時間経過を示す。圧力のこの時間経過は、走査ユニット110により走査値pの時間順序に変換される。走査値pのこの時間列からフーリエ変換ユニット115は、周波数スペクトルを決定し且つそれから例えば最高振幅を有する振動として固有周波数fを抽出する。
【0030】
上記においては、レール20内の固有振動がいかに励振および評価可能であるかが記載されてきた。それに対応して、燃料供給配管5、10、15の1つ内の、または高圧配管25、30、35、40の1つ内の燃料の固有振動が励振および評価されてもよい。このために、対応の燃料供給配管または高圧配管が対応の弁および対応の圧力センサを備え、オプションとして対応の温度センサを備えていてもよい。第1の燃料供給配管5を除き、残りの燃料供給配管10、15内および高圧配管25、30、35、40内において、燃料配量ユニット70の遮断により燃料供給が、また噴射弁85、90、95、100の遮断により燃料排出が中断可能であるので、上記のように、特に内燃機関の惰性運転において、対応の燃料供給配管10、15内ないし対応の高圧配管25、30、35、40内に誘導された固有振動の外乱が上記のように回避可能である。したがって、上記のように、燃料供給配管5、10、15内ないし高圧配管25、30、35、40内の燃料の音速もまた決定可能である。
【0031】
圧力それ自身の代わりに、一般に、圧力を表わす変数が測定且つ評価されてもよい。この場合、この変数の時間経過が上記のように走査およびフーリエ変換によって固有周波数に評価可能であり、この場合、音速の決定は、上記のように圧力を表わす変数から決定可能である。この場合、上記の例においては、固有周波数fおよび音速vないし補正音速vskorrを決定するために、圧力を表わす変数として圧力それ自身が使用されてきた。圧力を表わす変数は、例えば圧力センサ55内において形成される変数、例えばレール20内の燃料の圧力に比例する、たわみが与えられる圧力膜の振幅であってもよい。
【0032】
固有振動を励振且つ評価するために、内燃機関の複数の運転状態、例えば内燃機関の牽引運転のみならず惰性運転をも設定することもまた可能である。
使用される燃料は、例えばディーゼル燃料であってもガソリンであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】燃料供給装置の概略系統図である。
【図2】本発明による方法および本発明による装置を説明するための機能図である。
【符号の説明】
【0034】
1 燃料供給装置
5、10、15 燃料供給配管
20 燃料タンク(レール)
25、30、35、40 高圧配管(燃料配管)
45 圧力制御弁(励振手段)
50 励振装置
55 圧力センサ
60 決定ユニット
65 貯蔵容器
70 燃料配量ユニット
75 高圧ポンプ
80 温度センサ
85、90、95、100 噴射弁
105 制御装置
110 走査ユニット
115 フーリエ変換ユニット
120 その他の入力変数
125 励振ユニット
固有周波数
l レール長さ(振動長さ)
n 振動次数
p 圧力信号
走査値
T 燃料温度
音速
skorr 補正音速

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の少なくとも1つの運転状態において、燃料タンク(20)内または燃料配管(5、10、15、25、30、35、40)内の燃料の固有振動が励振されることを特徴とする内燃機関の燃料供給装置(1)における圧力振動の励振方法。
【請求項2】
前記固有振動が励振されたときに得られる、燃料タンク(20)内または燃料配管(5、10、15、25、30、35、40)内の圧力を表わす変数が評価されることを特徴とする請求項1に記載の励振方法。
【請求項3】
前記評価において、燃料タンク(20)内または燃料配管(5、10、15、25、30、35、40)内の燃料の音速が決定されることを特徴とする請求項2に記載の励振方法。
【請求項4】
前記固有振動の時間経過から、固有振動周波数がフーリエ変換により決定されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の励振方法。
【請求項5】
前記固有振動周波数、振動長さおよび固有振動の振動次数から、燃料の音速が決定されることを特徴とする請求項4に記載の励振方法。
【請求項6】
前記固有振動が、内燃機関の作業運転または走行運転中に励振されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の励振方法。
【請求項7】
前記固有振動が、内燃機関の惰性運転中に励振されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の励振方法。
【請求項8】
前記燃料の音速が、燃料タンク(20)内または燃料配管(5、10、15、25、30、35、40)内の燃料の温度の関数としても決定されることを特徴とする請求項3ないし7のいずれかに記載の励振方法。
【請求項9】
前記固有振動が、燃料供給が中断されているときおよび燃料排出が中断されているときの少なくともいずれかのときに、励振されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の励振方法。
【請求項10】
前記固有振動が、圧力弁(45)の短時間の開放により励振されることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の励振方法。
【請求項11】
前記圧力弁(45)の開放時間が、予想固有振動の周期より短いかまたは等しく選択されることを特徴とする請求項10に記載の励振方法。
【請求項12】
励振手段(45)を備え、励振手段(45)が、内燃機関の少なくとも1つの運転状態において、燃料タンク(20)内または燃料配管(5、10、15、25、30、35、40)内の燃料の固有振動を励振することを特徴とする内燃機関の燃料供給装置(1)における圧力振動の励振装置(50)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−153016(P2006−153016A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−343216(P2005−343216)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】