説明

内燃機関

【課題】過給機及び排気還流装置を備えた内燃機関において、排気還流装置の制御弁の開閉不良を抑制した内燃機関を提供する。
【解決手段】エンジン1は、高圧側タービン室42を有する高圧過給機40及び低圧側タービン室52を有する低圧過給機50を有する多段式過給装置4と、排気通路の排気を吸気通路23に還流する排気還流装置9と、燃焼室11にて発生した排気を同排気通路33に供給するエキゾーストマニホールド32とを備えている。そして、多段式過給装置4には、エキゾーストマニホールド32と接続する排気側過給通路80が設けられ、排気側過給通路80には、排気がエキゾーストマニホールド32から低圧側タービン室52に流れる状態と排気がエキゾーストマニホールド32から高圧側タービン室42に流れる状態とを切り替える機能と、排気還流装置9の排気還流量を調量する機能とを併せ有する切替制御バルブ60が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧側タービン室を有する高圧過給機及び低圧側タービン室を有する低圧過給機を有する多段式過給機と、排気通路の排気を吸気通路に還流する排気還流装置と、燃焼室にて発生した排気を同排気通路に供給するエキゾーストマニホールドとを備える内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関には、吸気の過給特性の向上を図る目的として、吸気通路において高圧段及び低圧段のコンプレッサホイールが吸気の流れ方向に対して直列に設けられるとともに排気通路において高圧段及び低圧段のタービンホイールが排気の流れ方向に対して直列に設けられた、いわゆる多段式過給装置を備えるものが知られている。また、内燃機関には、機関出力の向上及び排気エミッションの低減等を目的として、排気通路を流れる排気を吸気通路に還流する排気還流装置が設けられている。このような多段式過給装置及び排気還流装置を備えた内燃機関としては、特許文献1のものが挙げられる。
【0003】
図9を参照して、従来の多段式過給装置及び排気還流装置を備えた内燃機関の構造について説明する。
図9に示すように、この内燃機関100では、吸気通路110に設けられたインテークマニホールド111を介して内燃機関本体120の燃焼室121に空気が供給される。そして燃焼室121にて燃焼した排気がエキゾーストマニホールド112を介して排気通路130に排出される。排気通路130には、高圧過給機150のタービン室151に排気を供給する第1接続配管140と、低圧過給機160のタービン室161に排気を供給する第2接続配管141と、各タービン室151,161を互いに接続する第3接続配管142とが設けられている。この第3接続配管142は、タービン室151の排気下流側に接続されるとともに、第2接続配管141に合流する態様にて設けられている。また、第2接続配管141には、第1接続配管140に供給された排気を同第1接続配管140を通じて高圧過給機150のタービン室151へ供給する状態と、排気を第2接続配管141を通じて低圧過給機160のタービン室161に供給する状態とを切り替える切替バルブ170が設けられている。
【0004】
エキゾーストマニホールド112には、エキゾーストマニホールド112と吸気通路110とを互いに接続する連通路181を有する排気還流装置180が設けられている。この排気還流装置180の連通路181には、排気通路130から吸気通路110に還流する排気の量、即ちEGRガスの量を調節するEGR弁182が設けられている。また、EGR弁182より排気上流側には、連通路181の排気を冷却するEGRクーラ183が設けられている。なおEGR弁182は、連通路181においてインテークマニホールド111の近傍に配設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−98250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、内燃機関本体120におけるインテークマニホールド111が配置される側は、同エキゾーストマニホールド112が配置される側よりも雰囲気温度が低くなっている。そのため、EGR弁182には、排気に含まれる未燃炭化水素(以下、「未燃HC」)が堆積してしまい、EGR弁182の開閉不良を引き起こしてしまう場合がある。また、低温時には、EGR弁182に凝縮水が生じることに起因して開閉不良を引き起こしてしまう場合がある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、多段式過給装置及び排気還流装置を備えた内燃機関において、排気還流装置の制御弁の開閉不良を抑制することのできる内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
(1)請求項1に記載の発明は、高圧側タービン室が形成される高圧側タービンハウジングを有する高圧過給機及び低圧側タービン室が形成される低圧側タービンハウジングを有する低圧過給機を有する多段式過給装置と、排気通路の排気を吸気通路に還流する排気還流装置と、燃焼室にて発生した排気を同排気通路に供給するエキゾーストマニホールドとを備える内燃機関において、前記排気通路は、前記エキゾーストマニホールドと前記高圧側タービン室及び前記低圧側タービン室とを接続する接続通路を含み、同接続通路には、排気が前記エキゾーストマニホールドから前記低圧側タービン室に流れる状態と前記エキゾーストマニホールドから前記高圧側タービン室に流れる状態とを切り替える機能と、前記排気還流装置の排気還流量を調量する機能とを併せ有する切替制御バルブが設けられることを要旨とする。
【0009】
この発明によれば、エキゾーストマニホールドと高圧側タービン室及び低圧側タービン室とを接続する接続通路に切替制御バルブが設けられるため、同切替制御バルブの雰囲気温度がこれが例えばインテークマニホールド近傍に設けられた場合と比較して高くなる。したがって、未燃HCの堆積により切替制御バルブにおいて開閉不良が発生することを抑制することができる。また、低温時においても、雰囲気温度が高いことにより切替制御バルブに凝縮水が生じにくい環境となるため、そうした凝縮水に起因する切替制御バルブの開閉不良を制御することができるようになる。
【0010】
また、切替制御バルブが、図9に示す従来構造の切替バルブ170とEGR弁182との機能を併せ有する構成であるため、従来構造では切替バルブ170及びEGRバルブ182についてそれぞれ必要であった配置スペースを切替制御バルブの1つの配置スペースに集約することができる。したがって、内燃機関の他の構成部品のための配置スペースを確保することができるようになる。更に、従来構造では切替バルブ170及びEGRバルブ132の2つ必要であったのが、切替制御バルブの1つになったことにより、内燃機関を構成する部品点数の削減を図ることができるようになる。
【0011】
(2)請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関において前記高圧側タービンハウジングと前記低圧側タービンハウジングとは一体に構成されることを要旨とする。
この発明によれば、高圧側タービンハウジングと低圧側タービンハウジングとを互いに離間した態様にて設けた場合と比較して、多段式過給装置の装置全体として小型化を図ることができるようになる。
【0012】
(3)請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の内燃機関において、前記切替制御バルブは、前記高圧側タービン室に排気を供給する第1供給部と、前記低圧側タービン室に排気を供給する第2供給部と、前記排気還流装置に排気を供給する第3供給部とが設けられた基部と、前記第2供給部及び前記第3供給部の開閉状態を制御する弁体とを備えることを要旨とする。
【0013】
(4)請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の内燃機関において、前記排気還流装置には、前記切替制御バルブと前記吸気通路とを接続する連通路が設けられ、前記連通路の吸入口は、前記切替制御バルブの前記基部に対して前記高圧側タービン室の吸入口及び前記低圧側タービン室の吸入口の少なくとも一方と前記接続通路との接続方向に対して直交する方向に接続されて同方向に延伸することを要旨とする。
【0014】
この発明によれば、連通路が高圧側タービンハウジング及び低圧側タービンハウジングの少なくとも一方とエキゾーストマニホールドとの間に形成される空間に設けることが可能となり、同連通路が高圧側タービンハウジングや低圧側タービンハウジング、あるいはエキゾーストマニホールドと干渉することを抑制することができるようになる。
【0015】
(5)請求項5に記載の発明は、請求項3または請求項4のいずれか一項に記載の内燃機関において、前記第2供給部の排気が通過する流路断面積は、前記第1供給部の同流路断面積よりも大きいことを要旨とする。
【0016】
この発明によれば、低圧側タービン室に供給される排気の流量を高圧側タービン室に供給される排気の流量よりも大きく設定することができる。したがって、低圧過給機を作動させる場合において、その応答性を向上させることができるようになる。
【0017】
(6)請求項6に記載の発明は、請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載の内燃機関において、前記第2供給部の排気が通過する流路断面積は、前記第3供給部の同流路断面積よりも大きいことを要旨とする。
【0018】
この発明によれば、高圧側タービン室に供給される排気の流量を排気還流装置に供給される排気の流量よりも大きく設定することができる。したがって、エキゾーストマニホールドからの排気が排気還流装置よりも高圧過給機に多く流れるため、高圧過給機を作動させる場合において、その応答性を向上させることができるようになる。
【0019】
(7)請求項7に記載の発明は、請求項3〜請求項6のいずれか一項に記載の内燃機関において、前記第1供給部の排気が通過する流路断面積は、前記第3供給部の同流路断面積よりも大きいことを要旨とする。
【0020】
この発明によれば、低圧側タービン室に供給される排気の流量を排気還流装置に供給される排気の流量よりも大きく設定することができる。したがって、エキゾーストマニホールドからの排気が排気還流装置よりも低圧過給機に多く流れるため、低圧過給機を作動させる場合において、その応答性を向上させることができるようになる。
【0021】
(8)請求項8に記載の発明は、請求項3〜請求項7のいずれか一項に記載の内燃機関において、前記基部は、平板状をなし前記エキゾーストマニホールドと前記高圧側タービン室及び前記低圧側タービン室を形成するハウジングとの間に介装されるものであり、前記第1供給部及び前記第2供給部は、前記基部を厚み方向に貫通する貫通孔によりそれぞれ形成されることを要旨とする。
【0022】
この発明によれば、切替制御バルブがエキゾーストマニホールドと高圧側タービン室及び低圧側タービン室との距離を短くすることができるようになる。また、切替制御バルブがエキゾーストマニホールドの吐出口と高圧側タービン室の吸入口及び低圧側タービン室の吸入口のそれぞれを直接接続することにより、切替制御バルブとエキゾーストマニホールドとを接続するための接続配管及び切替制御バルブと高圧側タービン室及び低圧側タービン室のそれぞれを接続するための接続配管が不要となる。したがって、内燃機関の部品点数を削減することができるようになる。
【0023】
(9)請求項9に記載の発明は、請求項3〜請求項8のいずれか一項に記載の内燃機関において、前記弁体は、機関負荷状態が低負荷のとき、前記第2供給部を全閉とすることを要旨とする。
【0024】
この発明によれば、機関負荷状態が低負荷のときにはエキゾーストマニホールドからの排気が直接低圧側タービン室に供給されず、高圧側タービン室に供給されるようになる。これにより、低負荷において高圧過給機を作動状態にするとき、その応答性を向上させることができるようになる。
【0025】
(10)請求項10に記載の発明は、請求項3〜請求項9のいずれか一項に記載の内燃機関において、前記弁体は、機関負荷状態が中負荷のとき、前記第2供給部及び前記第3供給部はそれぞれ開状態であることを要旨とする。
【0026】
この発明によれば、機関負荷状態が中負荷のときには、エキゾーストマニホールドから高圧側タービン室を介することなく低圧側タービン室に供給されるため、中負荷において低圧過給機が作動するときには、その応答性を向上させることができるようになる。また、排気還流装置にて排気を還流するため、排気性状の悪化を抑制することができる。
【0027】
(11)請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の内燃機関において、前記弁体は、機関負荷状態が中負荷のとき、同中負荷の範囲内において負荷が増大するにつれて前記第2供給部の開度を増大させることを要旨とする。
【0028】
この発明によれば、機関負荷状態が中負荷のときには、その中負荷の範囲内において負荷が増大するにつれて第2供給部の開度が増大することにより、エキゾーストマニホールドから高圧側タービン室を介することなく低圧側タービン室に供給される排気の量が負荷の増大に伴い増大することになる。したがって、負荷の増大に伴い低圧過給機の過給圧が増大するため、負荷に応じた過給を行うことができるようになる。
【0029】
(12)請求項12に記載の発明は、請求項3〜請求項11のいずれか一項に記載の内燃機関において、前記弁体は、機関負荷状態が高負荷のとき、前記第2供給部を全開とするとともに、前記第3供給部を全閉とすることを要旨とする。
【0030】
この発明によれば、機関負荷状態が高負荷のときには、第2供給部を全開とすることにより、低圧過給機の駆動を最大の状態とすることができる。したがって、吸気通路の過給特性を向上させることができるようになる。また、第3供給部を全閉とすることにより、排気還流装置への排気の供給を停止し、機関出力の向上を図ることができるようになる。
【0031】
(13)請求項13に記載の発明は、請求項3〜請求項12のいずれか一項に記載の内燃機関において、前記弁体は、単一部材により構成されることを要旨とする。
この発明によれば、弁体を複数の部材の組み合わせにて構成された場合よりも部品点数を削減することができる。したがって、切替制御バルブの構成を簡素化できるとともに、コストダウンを図ることができるようになる。
【0032】
(14)請求項14に記載の発明は、請求項3〜請求項13のいずれか一項に記載の内燃機関において、前記弁体は、前記第2供給部に設けられる第1弁体及び前記第3供給部に設けられる第2弁体により構成され、前記第2供給部と前記第3供給部とは、前記基部の所定の方向において同位置に設けられ、前記第1弁体及び前記第2弁体を回転させることによりそれぞれの開閉を可能とするとともに、前記第1弁体及び前記第2弁体の双方に挿通する共通のシャフトが設けられることを要旨とする。
【0033】
この発明によれば、第1弁体及び第2弁体をそれぞれ別々のシャフトにて構成した場合よりも切替制御バルブを構成する部品点数を削減することができる。したがって、切替制御バルブの構成を簡素化できるとともにコストダウンを図ることができるようなる。
【0034】
(15)請求項15に記載の発明は、請求項14に記載の内燃機関において、前記第1弁体及び前記第2弁体とはともにバタフライ弁であり、前記第1弁体に対して前記第2弁体は、互いに直交する態様にて前記シャフトに取り付けられてなることを要旨とする。
【0035】
この発明によれば、機関負荷状態が高負荷のときに、第1弁体により第2供給部を全開とし、第2弁体により第3供給部を全閉とすることができる。したがって、低圧過給機の駆動を最大にすることができるとともに、排気還流装置からの排気が燃焼室に供給されなくなるため、機関出力の向上を図ることができるようになる。
【0036】
(16)請求項16に記載の発明は、請求項3〜請求項15のいずれか一項に記載の内燃機関において、前記高圧側タービン室の吸入口と前記低圧側タービン室の吸入口とは互いに隣接して設けられることを要旨とする。
【0037】
この発明によれば、高圧側タービン室の吸入口と低圧側タービン室の吸入口とが互いに隣接することにより、切替制御バルブの基部に設けられる第1供給部と第2供給部との距離を短くすることができる。したがって、基部を小型化することができるようになり、ひいては切替制御バルブの小型化を図ることができるようになる。
【0038】
(17)請求項17に記載の発明は、請求項16に記載の内燃機関において、前記基部には、前記排気還流装置における前記エキゾーストマニホールドとの接続口が、前記高圧側タービンハウジングの前記エキゾーストマニホールドとの接続口と前記低圧側タービンハウジングの前記エキゾーストマニホールドとの接続口の少なくとも一方と隣接して設けられることを要旨とする。
【0039】
この発明によれば、基部の排気還流装置の接続口が高圧側タービンハウジングの接続口または低圧タービンハウジングの接続口の少なくとも一方と隣接するため、基部を小型化することができるようになり、切替制御バルブの小型化を図ることができるようになる。
【0040】
(18)請求項18に記載の発明は、請求項1〜請求項17のいずれか一項に記載の内燃機関において、前記切替制御バルブは、前記エキゾーストマニホールドの吐出口及び前記高圧側タービン室の吸入口及び前記低圧側タービン室の吸入口のそれぞれを直接接続し、前記切替制御バルブに対して、前記エキゾーストマニホールドの吐出口と前記高圧側タービンハウジングの前記エキゾーストマニホールドとの接続口及び前記低圧側タービンハウジングの前記エキゾーストマニホールドとの接続口とが互いに反対側に位置する態様にて設けられることを要旨とする。
【0041】
この発明によれば、切替制御バルブに対してエキゾーストマニホールドと高圧側タービンハウジング及び低圧側タービンハウジングとが同じ側に位置する態様にて設けられた場合と比較して、切替制御バルブとエキゾーストマニホールド、高圧側タービンハウジング及び低圧側タービンハウジングとの接続態様が簡単化されるようになる。
【0042】
(19)請求項19に記載の発明は、請求項18に記載の内燃機関において、前記多段式過給装置には、前記高圧側タービン室と前記低圧側タービン室とを互いに接続する連通用排気通路が設けられ、前記連通用排気通路は、前記高圧側タービン室及び前記低圧側タービン室の少なくとも一方に一体に設けられることを要旨とする。
【0043】
この発明によれば、連通用排気通路が高圧側タービン室及び低圧側タービン室の少なくとも一方に一体に設けられることにより、連通用排気通路を高圧側タービンハウジング及び低圧側タービンハウジングとは別の配管等にて構成する場合と比較して、多段式過給装置を構成する部品点数を削減することができるようになる。
【0044】
(20)請求項20に記載の発明は、請求項18または請求項19に記載の内燃機関において、前記高圧側タービンハウジングと前記低圧側タービンハウジングとは単一部材にて構成されることを要旨とする。
【0045】
この発明によれば、高圧側タービンハウジング及び低圧側タービンハウジングを各別の部材によって構成される場合と比較して、多段式過給装置の部品点数を削減することができるようになる。
【0046】
(21)請求項21に記載の発明は、請求項18〜請求項20のいずれか一項に記載の内燃機関において、前記多段式過給装置には、前記エキゾーストマニホールドからの排気を前記低圧過給機に供給する低圧側排気通路が設けられ、前記低圧側タービンハウジングには、前記低圧側排気通路が一体に設けられることを要旨とする。
【0047】
この発明によれば、低圧側排気通路が低圧側タービンハウジングに一体に設けられることにより、低圧側排気通路と低圧側タービンハウジングとが各別の部材によって構成される場合と比較して、多段式過給装置の部品点数の削減を図ることができるようになる。
【0048】
(22)請求項22に記載の発明は、請求項18〜請求項21のいずれか一項に記載の内燃機関において、前記多段式過給装置には、前記エキゾーストマニホールドからの排気を前記高圧過給機に供給する高圧側排気通路が設けられ、前記高圧側タービンハウジングには、前記高圧側排気通路が一体に設けられることを要旨とする。
【0049】
この発明によれば、高圧側排気通路が高圧側タービンハウジングに一体に設けられることにより、高圧側排気通路と高圧側タービンハウジングとが各別の部材によって構成される場合と比較して、多段式過給装置の部品点数の削減を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の内燃機関を具体化した第1の実施形態について、同内燃機関の構成を模式的に示す模式図。
【図2】同実施形態の高圧過給機について、同過給機を軸方向に沿う断面構造を示す断面図。
【図3】同実施形態の高圧側タービン室と低圧側タービン室について、(a)高圧側タービン室及び低圧側タービン室の平面構造を示す平面図、(b)高圧側タービン室を高圧側タービン室が配置される方向の側面から見た側面構造を示す側面図、(c)高圧側タービン室及び低圧側タービン室の正面構造を示す平面図。
【図4】同実施形態の切替制御バルブについて、機関負荷状態が低負荷のときの制御弁の状態における斜視構造を示す斜視図。
【図5】同実施形態の切替制御バルブについて、機関負荷状態が中負荷のときの制御弁の状態における斜視構造を示す斜視図。
【図6】同実施形態の切替制御バルブについて、機関負荷状態が高負荷のときの制御弁の状態における斜視構造を示す斜視図。
【図7】同実施形態の切替制御バルブについて、(a)高圧側タービン室と低圧側タービン室とエキゾーストマニホールドとの断面構造を示す断面図、(b)切替制御バルブから見た切替制御バルブと高圧側タービン室及び低圧側タービン室との側面構造を示す側面図。
【図8】本発明の内燃機関を具体化した第2の実施形態について、切替制御バルブの斜視構造を示す斜視図。
【図9】従来の内燃機関について、同内燃機関の構成を模式的に示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1〜図7を参照して、本発明の内燃機関を、多段式過給機及び排気還流装置を備えたディーゼルエンジン(以下、「エンジン1」)として具体化した第1の実施形態について説明する。
【0052】
図1に示すように、エンジン1のエンジン本体10には、外部からエンジン1内に取り込まれる吸気を燃焼室11へ供給する吸気通路23と、燃焼室11から排出されたガス(以下、「排気」)を外部へ排出する排気通路33とがそれぞれ接続されている。
【0053】
また、吸気通路23及び排気通路33のそれぞれには、排気通路33内を流通する排気により吸気通路23内の吸気を過給する多段式過給装置4が設けられている。また、エンジン1には、排気通路33内の排気を吸気通路23に還流する排気還流装置9が設けられている。
【0054】
吸気通路23は、吸気が流通するための吸気管21と、吸気管21の吸気を各燃焼室11に供給するインテークマニホールド22とにより構成されている。吸気管21には、吸気上流側から順に外気に含まれる塵埃等の異物を捕捉するエアクリーナ24と、吸気通路23内の吸気を冷却するインタークーラ25と、吸気量を調節するディーゼルスロットル26とが設けられている。
【0055】
排気通路33は、排気が流通するための排気管31と、各燃焼室11からの排気を排気管31に供給するエキゾーストマニホールド32とにより構成されている。排気管31には、排気を浄化する排気浄化装置34が設けられている。
【0056】
多段式過給装置4には、高圧過給機40及び低圧過給機50と、吸気通路23の一部を構成する吸気側過給通路70及び排気通路33の一部を構成する排気側過給通路80とが設けられている。高圧過給機40は低圧過給機50よりも体格が小さく設定されるとともに膨張比及び圧縮比が大きく設定されている。また、吸気側過給通路70は、吸気通路23のうちのエアクリーナ24とインタークーラ25との間に設けられ、排気側過給通路80は、排気通路33のうちのエキゾーストマニホールド32と排気浄化装置34との間に設けられている。
【0057】
高圧過給機40のハウジング41内には、高圧側タービン室42及び高圧側コンプレッサ室43が形成されている。高圧側タービン室42には、排気により回転するタービンホイール45が設けられている。高圧側コンプレッサ室43には、吸気を過給するコンプレッサホイール46が設けられている。これらホイールは、ロータシャフト47により接続されている。
【0058】
低圧過給機50のハウジング51内には、低圧側タービン室52及び低圧側コンプレッサ室53が形成されている。低圧側タービン室52には、排気により回転するタービンホイール55が設けられている。低圧側コンプレッサ室53には、吸気を過給するコンプレッサホイール56が設けられている。これらホイールは、ロータシャフト57により接続されている。
【0059】
吸気側過給通路70は、入口側吸気通路71、高圧側吸気通路72、低圧側吸気通路73及び連通用吸気通路74により構成されている。また、低圧側吸気通路73には、吸気側切替バルブ75が設けられている。入口側吸気通路71は、エアクリーナ24と低圧側コンプレッサ室53とを接続している。高圧側吸気通路72は、高圧側コンプレッサ室43の出口とインタークーラ25の入口とを接続している。低圧側吸気通路73は、低圧側コンプレッサ室53と高圧側吸気通路72とを接続している。連通用吸気通路74は、低圧側吸気通路73における吸気側切替バルブ75の吸気上流側から分岐するとともに高圧側コンプレッサ室43の入口に接続している。
【0060】
吸気側切替バルブ75は、制御装置を通じて開閉制御される電磁弁であり、開弁状態にあるときには低圧過給機50のコンプレッサ室53とインタークーラ25の入口との間を連通し、閉弁状態にあるときには低圧過給機50のコンプレッサ室53とインタークーラ25の入口との間を遮断する。
【0061】
排気側過給通路80は、入口側排気通路81、高圧側排気通路82、低圧側排気通路83、連通用排気通路84及び出口側排気通路85により構成されている。また、排気側過給通路80には、切替制御バルブ60が設けられている。この切替制御バルブ60は、排気側過給通路80において高圧過給機40および低圧過給機50の排気上流側に位置している。入口側排気通路81は、エキゾーストマニホールド32と切替制御バルブ60の入口とを接続している。高圧側排気通路82は、切替制御バルブ60の出口と高圧過給機40のタービン室42の入口とを接続している。低圧側排気通路83は、切替制御バルブ60の出口と低圧側タービン室52の入口とを接続している。連通用排気通路84は、高圧側タービン室42の出口と低圧側タービン室52の入口とを接続している。出口側排気通路85は低圧過給機50のタービン室52の出口と排気浄化装置34とを接続している。
【0062】
排気還流装置9には、排気通路33及び吸気通路23を互いに連通する連通管9aが設けられている。具体的には、連通管9aは、切替制御バルブ60とインテークマニホールド22とを接続している。これにより、連通管9a内の通路(以下、「排気還流通路9c」)が、切替制御バルブ60とインテークマニホールド22とを互いに連通することになる。この連通管9aには、排気を冷却するEGRクーラ9bが設けられている。この排気還流装置9により、排気通路33の排気の一部は、EGRクーラ9bを介して冷却された状態にて吸気通路23の吸気と混合され、燃焼室11に供給されるようになる。
【0063】
切替制御バルブ60は、エキゾーストマニホールド32からの排気を入口側排気通路81及び高圧側排気通路82を介して高圧側タービン室42へ供給する状態と排気を入口側排気通路81及び低圧側排気通路83を介して低圧側タービン室52へ供給する状態とを切り替える機能と、排気還流通路9cへ還流する排気の流量を調節する機能とを併せ有する四方切替弁である。この切替制御バルブ60は機関負荷状態に応じて開閉切替動作を行う。具体的には、機関負荷状態が低負荷のときには切替制御バルブ60の低圧側排気通路83側が閉弁するとともに排気還流通路9c側が開弁し、機関負荷状態が中負荷のときには切替制御バルブ60の低圧側排気通路83側及び排気還流通路9c側がともに開弁し、機関負荷状態が高負荷のときには、切替制御バルブ60の低圧側排気通路83側が開弁し、排気還流通路9c側が閉弁する。
【0064】
ところで、図9に示す従来構造においては、EGR弁182がインテークマニホールド111との合流部に近いため、EGR弁182からインテークマニホールド111に供給される排気の流速が低下するようになる。したがって、吸気通路110から高圧過給機150または低圧過給機160を経てインテークマニホールド111に供給される過給された吸気との間に速度差を生じてしまう。その結果、これら吸気が互いに混合され難くなり、燃焼室11内での燃焼安定性を低下させてしまう場合があった。
【0065】
また、エンジン本体のインテークマニホールド111が配置される側は、エキゾーストマニホールド112が配置される側と比較して、雰囲気温度が低いため、高い雰囲気温度下におかれることを嫌う構成部品が多く配設される。そのため、EGR弁182がエンジン本体のインテークマニホールドが配置される側に配置されると、他の構成部品の配置スペースが確保し難くなってしまう。
【0066】
その点において、本実施形態の切替制御バルブ60は、エキゾーストマニホールド32と高圧過給機40及び低圧過給機50とを接続する接続通路を構成する排気側過給通路80に設けられるため、排気還流通路9cにおける切替制御バルブ60からエキゾーストマニホールド32との合流部までの距離を長くなる。したがって、インテークマニホールド22において吸気と混合される排気(EGRガス)の流速が高められるようになり、上記のような排気と吸気との混合が困難な問題の発生を抑制することができるようになる。また、エンジン本体10のインテークマニホールド22が配置される側の配置スペースが確保し難くなる問題を解消することができるようになる。
【0067】
図2を参照して、高圧過給機40及び低圧過給機50の内部構造について説明する。ここで、高圧過給機40及び低圧過給機50のそれぞれは、互いに体格が異なるのみであり、内部構造は概ね共通しているため、高圧過給機40についてのみ説明する。また、図中の括弧にて付した符号は、高圧過給機40の部位に対応する低圧過給機50の同一部位を示している。なお、高圧側タービン室42については、図3以降にて詳細な構造の説明をするため、図2の高圧側タービン室42の一部とその説明を省略する。
【0068】
図2に示すように、高圧過給機40の外枠を形成するハウジング41には、タービンハウジング41aと、コンプレッサハウジング41bと、タービンハウジング41aとコンプレッサハウジング41bとの間に設けられる支持ハウジング41cとにより構成されている。タービンハウジング41aは、その内部に高圧側タービン室42が形成され、コンプレッサハウジング41bは、その内部に高圧側コンプレッサ室43が形成され、支持ハウジング41cは、その内部に支持部44が形成されている。この支持部44は、タービンホイール45及びコンプレッサホイール46を互いに接続するロータシャフト47を回転可能に支持する軸受機構48が設けられている。この軸受機構48は、高圧側タービン室42側及び高圧側コンプレッサ室43側にそれぞれ配設されている。
【0069】
高圧側コンプレッサ室43には、連通用吸気通路74に接続されるとともに低圧過給機50のコンプレッサ室53からの空気を吸入する吸入側接続部43aと、インタークーラ25と接続するとともに同インタークーラ25に向けて吐出する吐出側接続部43bとが設けられている。吸入側接続部43aの接続口となる吸入口43cは、ロータシャフト47の延設方向に沿った方向に開口されている。そして、吐出側接続部43bの接続口となる吐出口43dは、ロータシャフト47の延設方向に対して直交した方向に開口されている。
【0070】
以上の構成により、高圧側タービン室42内に排気が供給されることによって、タービンホイール45が回転するとともに、ロータシャフト47に接続されたコンプレッサホイール46が回転する。これにより、排気通路33の排気を効率よく排出するとともに、吸気通路23の吸気を燃焼室11に過給することができる。
【0071】
図3を参照して、高圧過給機40のタービンハウジング41a及び低圧過給機50のタービンハウジング51aの配置態様及び接続態様について説明する。ここで、図3(a)は、統合タービンハウジング90を低圧側タービン室52の吐出口52d側より見た平面図であり、図3(b)は、図3(a)の矢視B方向から見た側面図であり、図3(c)は、図3(a)の矢視C方向から見た正面図である。なお、図3(a)の破線は、統合供給部91に設けられた各通路を示している。
【0072】
一般に、多段式過給装置をエンジンに搭載する場合、高圧過給機及び低圧過給機の2種類の過給機を用いるため、エンジンの車両内における搭載スペースを多段式過給装置が占める割合が1つの過給機を用いた構造よりも増大してしまう。特に高圧過給機及び低圧過給機は互いに複数種類の配管にて接続されるとともに他の構成部材とも配管にて接続されるため、配管接続態様も複雑となり、それに伴い配管の部品点数の増加及び配置スペースの増大も懸念される。そのため、多段式過給機の部品点数を低減するとともに配置スペースをコンパクト化することが望まれている。
【0073】
そこで、本実施形態では、高圧過給機40及び低圧過給機50の各タービンハウジング41a,51aを一体化することにより、高圧過給機40及び低圧過給機50の配管接続の部品点数の低減及びコンパクト化を図るとともに、高圧過給機40及び低圧過給機50自体のコンパクト化を図っている。以下に、高圧過給機40のタービンハウジング41a及び低圧過給機50のタービンハウジング51aの具体的な構成について説明する。
【0074】
図3(a)に示すように、高圧過給機40のタービンハウジング41aと低圧過給機50のタービンハウジング51aとは単一部材にて構成されることにより一体化が図られている(以下、「統合タービンハウジング90」)。この統合タービンハウジング90には、エキゾーストマニホールド32(図1参照)からの排気を供給するための統合供給部91が設けられている。また、高圧過給機40のタービンハウジング41a及び低圧過給機50のタービンハウジング51aには、スクロール部42a,52aがそれぞれ設けられている。また、高圧過給機40及び低圧過給機50の配置態様は、高圧過給機40のロータシャフト47と低圧過給機50のロータシャフト57とが互いに平行となるとともに、ロータシャフト47,57の延設方向に対して直交する方向に対して高圧側タービン室42及び低圧側タービン室52が並列に配置されている。そして、これら高圧側タービン室42及び低圧側タービン室52のロータシャフト47の延設方向に対して直交する方向における間に統合供給部91が配置されている。
【0075】
統合供給部91には、エキゾーストマニホールド32からの排気を高圧側タービン室42に供給する高圧側供給部92と、排気を低圧側タービン室52に供給する低圧側供給部93と、スクロール部42aから低圧側タービン室52に接続する連通用供給部94とが設けられている。これら高圧側供給部92、低圧側供給部93及び連通用供給部94内のそれぞれの空間には、高圧側供給通路92A、低圧側供給通路93A及び連通用供給通路94Aが形成されている。
【0076】
低圧側供給部93は、統合供給部91に設けられた連通用供給部94と合流するように設けられ、スクロール部52aに排気を供給するようになる。したがって、低圧側供給通路93Aと連通用供給通路94Aは、スクロール部52aの一つの入口において同スクロール部52aに排気を供給するようになる。
【0077】
図3(b)に示すように、連通用供給部94は、統合供給部91から高圧側タービン室42に向かい延設されている部位を含んでいる。そして、連通用供給部94の同部位には、ロータシャフト47と同軸の円筒形状の通路である第1通路94aと、この第1通路94aから屈曲するとともに低圧側タービン室52に向かう第2通路94bとが設けられている。この第2通路94bは、第1通路94aの延設方向に対して直交する方向に延設されている。また、高圧側供給部92と第2通路94bとは互いに隣接するとともに、ロータシャフト47の延設方向に対して略同位置に配設されている。この配置構成により、統合供給部91の大型化を抑制し、ひいては統合タービンハウジング90の大型化を抑制している。
【0078】
図3(c)に示すように、ロータシャフト47の延設方向において、高圧側タービン室42のスクロール部42aと低圧側タービン室52のスクロール部52aとは互いに異なった位置に設けられている。具体的には、ロータシャフト47の延設方向において、高圧側タービン室42のスクロール部42aは、低圧側タービン室52のスクロール部52aよりもコンプレッサ室43側に位置する態様にて設けられている。
【0079】
また、ロータシャフト47の延設方向において、連通用供給部94の第2通路94bは、低圧側タービン室52のスクロール部52aと同位置となる態様にて設けられている。そして、高圧側供給部92も同様にスクロール部52aと同位置となる態様にて設けられている。
【0080】
図4〜図9を参照して、切替制御バルブ60の構造及び高圧過給機40及び低圧過給機50及びエキゾーストマニホールド32との接続態様について説明する。図4は、機関負荷状態が低負荷のときの切替制御バルブ60の開閉態様を示し、図5は、機関負荷が中負荷のときの切替制御バルブ60の開閉態様を示し、図6は、機関負荷が高負荷のときの切替制御バルブの開閉態様を示している。
【0081】
図4に示すように、切替制御バルブ60には、エキゾーストマニホールド32の吐出口32a(図7参照)と統合供給部91(図3参照)とにそれぞれ直接接続される平板状の基部61が設けられている。この基部61には、エキゾーストマニホールド32からの排気を統合供給部91に供給する供給部62が設けられている。この供給部62には、高圧側供給部92に排気を供給する第1供給部62aと低圧側供給部93に排気を供給する第2供給部62bとが設けられている。また供給部62には、エキゾーストマニホールド32からの排気を排気還流装置9の連通管9aに供給する第3供給部62cが設けられている。
【0082】
第1供給部62a及び第2供給部62bは、それぞれ基部61の厚さ方向に沿って貫通する円形の貫通孔にて形成されている。そして、第3供給部62cは、基部61のエキゾーストマニホールド32の吐出口32aが接続される側の面61aから基部61の厚み方向に沿って延びるとともに、その厚み方向に対して直交する方向に延びる態様の円形の貫通孔にて形成されている(図7(b)参照)。
【0083】
第1供給部62a〜第3供給部62cの大きさの関係について、第2供給部62bの内径R2は、第1供給部62aの内径R1及び第3供給部62cの内径R3よりも大きく形成されている。また、第1供給部62aの内径R1は、第3供給部62cの内径R3よりも大きく形成されている。これらの内径R1〜R3の大きさの関係(R2>R1>R3)により第2供給部62bがエキゾーストマニホールド32からの排気の通過を許容する流路断面積は、第1供給部62a及び第3供給部62cの流路断面積よりも大きくなる。そして、第2供給部62bの流路断面積は、第3供給部62cの流路断面積よりも大きくなる。
【0084】
基部61には、第2供給部62b及び第3供給部62cの開閉状態を切り替える平板状の弁体63が設けられている。この弁体63は、基部61に設けられた回転機構64に固定されることにより、図中の矢印RXに示す基部61の周方向に回転可能となる。
【0085】
この弁体63は、アクチュエータ65により回転駆動される。このアクチュエータ65は、例えば圧力差に基づいて軸方向に沿って移動可能なロッドと、ロッドに接続されるとともに弁体63に接続されるリンク機構とにより構成されている。即ち、ロッドの軸方向への移動は、リンク機構により弁体63が回転する力に伝達される。
【0086】
弁体63には、第2供給部62b及び第3供給部62cの開閉状態の切り替えを行う切り欠き形状である第1開閉部63aと、第1供給部62aを開弁状態に維持するとともに第3供給部62cの開閉状態の切り替えを行う貫通孔である第2開閉部63bとが形成されている。
【0087】
この切替制御バルブ60は、エキゾーストマニホールド32と統合タービンハウジング90とに以下の態様にて取り付けられている。
図7(a)に示すように、切替制御バルブ60は、エキゾーストマニホールド32の吐出口32aと統合供給部91との間に設けられるとともに、同吐出口32aと統合供給部91とにそれぞれ直接接続されている。また、切替制御バルブ60に対して、高圧過給機40及び低圧過給機50とエキゾーストマニホールド32とが互いに反対側に設けられている。これにより、第1供給部62a及び第2供給部62bのそれぞれが基部61の厚み方向に沿った貫通孔の形状にて、エキゾーストマニホールド32と統合タービンハウジング90とを互いに連通することができる。
【0088】
第3供給部62cの連通管9aとの接続口は、第1供給部62aの高圧側タービン室42との接続口(即ち、高圧側排気通路82との接続口)及び第2供給部62bの低圧側タービン室52との接続口(即ち、低圧側排気通路83との接続口)のそれぞれに対して直交する態様にて設けられている。これにより、連通管9aは、エキゾーストマニホールド32と統合タービンハウジング90との間に形成された空間Sの間に延設されている。特に連通管9aは、エキゾーストマニホールド32と高圧側タービン室42との間に形成された空間Sの間に延設されている。
【0089】
図7(b)に示すように、切替制御バルブ60は、第1供給部62aが高圧側供給部92と対応した位置、第2供給部62bが低圧側供給部93と対応した位置となるように統合タービンハウジング90に取り付けられている。
【0090】
ここで、先の図1に示す吸気側過給通路70において、統合タービンハウジング90内に形成される各通路の対応は以下のように関係になる。
即ち、高圧側排気通路82は高圧側供給通路92Aにより構成されている。また低圧側排気通路83は低圧側供給通路93Aにより構成されている。また連通用排気通路84は連通用供給通路94Aにより構成されている。
【0091】
以上の構成により、統合タービンハウジング90内には、高圧側タービン室42、低圧側タービン室52、高圧側排気通路82、低圧側排気通路83及び連通用排気通路84が形成されている。
【0092】
次に、機関負荷状態に応じた切替制御バルブ60の開閉状態について説明する。
図4に示すように、機関負荷状態が低負荷のとき、第2供給部62bは全閉状態となり、第3供給部62cは第2開閉部63bにより開状態となる。また、第1開閉部63aにより第1供給部62aは略全開状態が維持されている。これにより、エキゾーストマニホールド32からの排気は、第1供給部62aから高圧側供給通路92Aを介して高圧側タービン室42に供給されるとともに、排気の一部は、排気還流通路9cを介して吸気通路23に供給される。そして、高圧側タービン室42に供給された排気は連通用排気通路84を経て低圧側タービン室52に供給された上で排気浄化装置34に供給される。一方、排気還流通路9cからの排気はインテークマニホールド22にて吸気と混合されて燃焼室11に供給される。
【0093】
ここで、第2供給部62bが全閉状態となることにより、排気は第2供給部62bを介して低圧側タービン室52への供給が停止される。一方、第1供給部62aは全開状態が維持されているため、第1供給部62a及び高圧側排気通路82を介して高圧側タービン室42に排気が供給される。以上により、多段式過給装置4において高圧過給機40のみが駆動することになる。
【0094】
また、第3供給部62cにおいては、低負荷の範囲内において、そのときどきの負荷の状態によって第3供給部62cの開閉状態が制御される。即ち、低負荷の範囲内において、そのときどきの負荷の状態によって排気還流通路9cを介して吸気通路23に還流する排気の流量が調節される。
【0095】
図5に示すように、機関負荷状態が中負荷のとき、第2開閉部63bにより第2供給部62b及び第3供給部62cはそれぞれ開状態となる。また、第1開閉部63aにより第1供給部62aは全開状態が維持されている。これにより、エキゾーストマニホールド32からの排気は、第1供給部62aから高圧側供給通路92Aを介して高圧側タービン室42に供給されるとともに第2供給部62bから低圧側供給通路93Aを介して低圧側タービン室52に供給される。そして、低圧側タービン室52に供給された排気は排気浄化装置34に供給される。また、排気の一部は、排気還流通路9cを介してインテークマニホールド22にて吸気と混合されて燃焼室11に供給される。
【0096】
また、第2供給部62bにおいては、中負荷の範囲内において、負荷が増大するに伴い第2供給部62bの開度が増大される。即ち、低負荷の範囲内において、負荷が増大するに伴いエキゾーストマニホールド32から直接低圧側タービン室52に供給される排気の流量が増大する。一方、中負荷の範囲内において、そのときどきの負荷の状態によって第3供給部62cの開閉状態が制御される。即ち、中負荷の範囲内において、そのときどきの負荷の状態によって排気還流通路9cを介して吸気通路23に還流する排気の流量が制御される。
【0097】
ここで、第2供給部62bが負荷が増大するに伴い第2供給部62bの開度が増大することにより、負荷が増大するに伴い第2供給部62bを通過する流量、即ち、第2供給部62b及び低圧側排気通路83を介して低圧側タービン室52に供給される排気の流量が増大する。一方、低圧側タービン室52に供給される排気の流量が増大することに伴い、切替制御バルブ60に供給される排気の全流量のうちの第1供給部62a及び高圧側排気通路82を介して高圧側タービン室42に供給される排気の流量の割合が低下する。したがって、負荷が増大するに伴い、低圧過給機50が徐々に駆動状態に移行するとともに、高圧過給機40が徐々に停止状態に移行するようになる。
【0098】
図6に示すように、機関負荷状態が高負荷のとき、第2開閉部63bにより第2供給部62bは全開状態となり、第3供給部62cは全閉状態となる。また、第1開閉部63aにより第1供給部62aは全開状態が維持されている。これにより、エキゾーストマニホールド32からの排気は、第2供給部62bから低圧側供給通路93Aを介して低圧側タービン室52に供給される。そして、低圧側タービン室52に供給された排気は、排気浄化装置34に供給される。また、第1供給部62aは全開状態であるが、低圧側タービン室52と高圧側供給通路92Aとの圧力差が殆どないため、排気は高圧側供給通路92Aを介して高圧側タービン室42には殆ど供給されない。
【0099】
ここで、第2供給部62bが全開状態となるため、第2供給部62b及び低圧側排気通路83を介して低圧側タービン室52に供給される排気の流量は最大となる。したがって、低圧過給機50が最大限に駆動するようになる。一方、排気が高圧側タービン室42に殆ど供給されないため、高圧過給機40は停止するようになる。
【0100】
以上により、切替制御バルブ60により、機関負荷状態に応じて、エキゾーストマニホールド32からの排気を高圧側タービン室42を介して低圧側タービン室52に供給する流通経路とエキゾーストマニホールド32から直接低圧側タービン室52に供給する流路経路とを切り替えることにより、機関負荷状態に応じた過給特性を得ることができるようになる。また、機関負荷状態に応じて、連通管9aを介して吸気通路23に供給する排気の流量を制御することにより、機関負荷状態に応じて適切なエンジン出力を得ることができるようになる。
【0101】
本実施形態のエンジン1によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、排気側過給通路80に切替制御バルブ60が設けられる構成である。したがって、入口側排気通路81と高圧側排気通路82及び低圧側排気通路83との間に切替制御バルブ60が設けられるため、同切替制御バルブ60の雰囲気温度がこれが例えばインテークマニホールド22の近傍に設けられた場合と比較して高くなる。したがって、未燃HCの堆積により切替制御バルブ60において開閉不良が発生することを抑制することができる。また、低温時においても、雰囲気温度が高いことにより切替制御バルブ60に凝縮水が生じにくい環境となるため、そうした凝縮水に起因する切替制御バルブ60の開閉不良を制御することができるようになる。
【0102】
また、切替制御バルブ60が、エキゾーストマニホールド32からの排気を入口側排気通路81及び高圧側排気通路82を介して高圧側タービン室42へ供給する状態と入口側排気通路81及び低圧側排気通路83を介して低圧側タービン室52へ供給する状態とを切り替える機能と、排気還流装置9の連通管9aに供給する排気の流量を調節する機能こと併せ有している。したがって、図9に示す従来構造の切替バルブ170及びEGR弁182のような、エキゾーストマニホールド32からの排気を高圧側タービン室42へ供給する状態と低圧側タービン室52へ供給する状態との切り替えと、連通管9aに供給する排気の流量を制御とを各別に設ける構成と比較して、各別に切替バルブを設けるためのスペースが1つ省略することができる。その結果、エンジン1の他の構成部品のための配置スペースを確保することができるようになるとともに、各別に切替バルブを設ける構成と比較してエンジン1を構成する部品点数を削減することができるようになる。
【0103】
(2)本実施形態では、高圧過給機40のタービンハウジング41a及び低圧過給機50のタービンハウジング51aは一体に構成されている。したがって、タービンハウジング41a及びタービンハウジング51aを離間した状態にて各別に設ける構成よりも多段式過給装置4の全体として小型化を図ることができるようになる。
【0104】
(3)本実施形態では、切替制御バルブ60の第3供給部62cと連通管9aとの接続方向は、第1供給部62aと高圧側供給部92との接続方向及び第2供給部62bと低圧側供給部93との接続方向に対して直交する方向に接続される構成である。したがって、連通管9aの延設方向がエキゾーストマニホールド32と統合タービンハウジング90との間の空間が形成される方向であるため、連通管9aがエキゾーストマニホールド32あるいは統合タービンハウジング90に干渉することを抑制することができるようになる。
【0105】
(4)本実施形態では、切替制御バルブ60の第2供給部62bの流路断面積は、第1供給部62aの流路断面積及び第3供給部62cの流路断面積よりも大きい構成である。したがって、第2供給部62bから低圧側供給部93を介して低圧側タービン室52に供給される排気の流量を第1供給部62aから高圧側供給部92及び高圧側タービン室42を介して低圧側タービン室52に供給される排気の流量、及び排気還流装置9の連通管9aに供給される排気の流量よりも多く設定することができる。その結果、低圧過給機50を作動させるときに、その応答性を向上させることができるようになる。
【0106】
(5)本実施形態では、第1供給部62aの流路断面積は、第3供給部62cの流路断面積よりも大きい構成である。したがって、第1供給部62aから高圧側供給部92を介して高圧側タービン室42に供給される排気の流量を第3供給部62cから連通管9aに供給される排気の流量よりも多く設定することができる。その結果、高圧過給機40を作動させるときに、その応答性を向上させることができる。
【0107】
(6)本実施形態では、切替制御バルブ60においては、基部61が平板状をなし、エキゾーストマニホールド32と統合タービンハウジング90との間に介装される構成である。そして、第1供給部62a及び第2供給部62bは、基部61の厚み方向を貫通する貫通孔にて形成される構成である。この構成によれば、切替制御バルブ60の厚み方向において小型化を図ることができるようになる。
【0108】
(7)また、切替制御バルブ60は、エキゾーストマニホールド32の吐出口32aと統合タービンハウジング90の統合供給部91と直接接続する構成である。したがって、エキゾーストマニホールド32の吐出口32aと切替制御バルブ60との間の接続配管(入口側排気通路81)及び切替制御バルブ60と統合供給部91との間の接続配管とが不要となり、エキゾーストマニホールド32と統合タービンハウジング90とを最短距離にて接続することができる。その結果、エンジン1が全体としてコンパクト化することができるようになる。
【0109】
(8)本実施形態では、機関負荷状態が低負荷のときには、切替制御バルブ60は第2供給部62bを全閉状態とする。これにより、低負荷のときにはエキゾーストマニホールド32から直接低圧側タービン室52に排気が供給されることなく、高圧側タービン室42を介して低圧側タービン室52に供給される。これにより高圧過給機40を作動状態とすることができるため、低負荷に応じた過給を行うことができるようになる。
【0110】
また、機関負荷状態が低負荷のときには、そのときどきの負荷の状態において、第3供給部62cの開閉状態を開状態または閉状態に制御することにより、排気還流装置9の連通管9aに排気が調節されるため、NOx排出量の調整及び排気性状の調整を行うことができるようになる。
【0111】
(9)本実施形態では、機関負荷状態が中負荷のときには、切替制御バルブ60の第2供給部62bを開状態とする。これにより、中負荷のときにはエキゾーストマニホールド32から高圧側タービン室42を介することなく、直接低圧側タービン室52に排気が供給されることとなるため、中負荷において低圧過給機50を作動するときには、その応答性を向上させることができるようになる。また、高圧過給機40よりより高い過給特性を有する低圧過給機50を作動状態とすることができるため、中負荷に応じた過給を行うことができるようになる。
【0112】
(10)また、中負荷の範囲内において、負荷が増大するにつれて切替制御バルブ60は第2供給部62bの開度を増大させている。したがって、中負荷の範囲内において、負荷が増大するにつれてエキゾーストマニホールド32から高圧側タービン室42を介することなく直接低圧側タービン室52に供給される排気の流量が増大することになる。したがって、負荷の増大につれて、低圧過給機50の過給圧が増大するため、負荷に応じた過給を行うことができるようになる。
【0113】
(11)本実施形態では、機関負荷状態が高負荷のときには、切替制御バルブ60の第2供給部62bを全開状態として、第3供給部62cを全閉状態とする。これにより、エキゾーストマニホールド32からの排気は、その殆どが直接低圧側タービン室52に供給されるため、低圧過給機50を最大限に作動させることができるようになる。したがって、高負荷に応じた過給を行うことができるようになる。また、第3供給部62cが全閉状態であるため、連通管9aへの排気の供給が停止され、エンジン1の出力の向上を図ることができるようになる。
【0114】
(12)本実施形態では、切替制御バルブ60の弁体63が単一部材により構成されている。したがって、弁体を複数の部材の組み合わせにより構成される場合よりも部品点数を削減することができるようになる。したがって、切替制御バルブ60の部品点数の削減を図ることができるようになる。
【0115】
(13)本実施形態では、統合タービンハウジング90により高圧側供給部92と低圧側供給部93とが互いに隣接して設けられる構成である。したがって、基部61を小型化できるようになり、切替制御バルブ60の小型化を図ることができるようになる。
【0116】
(14)本実施形態では、第3供給部62cのエキゾーストマニホールド32との接続口は、第1供給部62a及び第2供給部62bのエキゾーストマニホールド32との接続口と隣接した態様にて設けられている。したがって、基部61に設けられる第1供給部62aと第2供給部62bとの距離を短くすることができる。その結果、基部61を小型化できるようになり、切替制御バルブ60の小型化を図ることができるようになる。
【0117】
(15)切替制御バルブ60に対して、エキゾーストマニホールド32と高圧過給機40及び低圧過給機50とが同じ側に配置される態様にて設けられた場合には、基部61の第1供給部62a及び第2供給部62bは、基部61の厚み方向の同じ側にエキゾーストマニホールド32の吐出口32aとの接続口と統合供給部91との接続口とを設けなければならない。したがって、基部61の小型化を図ることが困難であった。その点において、本実施形態では、切替制御バルブ60に対して、エキゾーストマニホールド32と高圧過給機40及び低圧過給機50とが互いに反対側に配置される態様にて設けられる構成である。したがって、基部61の厚み方向の一方側にエキゾーストマニホールド32の吐出口32aとの接続口を設け、他方側に統合供給部91との接続口を設ける構成となるため、基部61の厚み方向の片側のみに接続口が設けられる構成ではなくなり、基部61の小型化を図ることができるようになる。
【0118】
(16)本実施形態では、統合供給部91の連通用供給部94により高圧側タービン室42と低圧側タービン室52とを連通する構成である。したがって、連通用供給部94を別部材にて設ける場合と比較して、多段式過給装置4を構成する部品点数を削減することができるようになる。
【0119】
(17)本実施形態では、高圧側タービン室42及び低圧側タービン室52が統合タービンハウジング90として単一部材により構成されている。したがって、高圧側タービン室42及び低圧側タービン室52を各別にて設ける場合よりも多段式過給装置4の部品点数を削減することができるようになる。
【0120】
(18)本実施形態では、統合タービンハウジング90の統合供給部91に高圧側供給部92が設けられる構成である。したがって、高圧側供給部92を各別の部材として設ける場合よりも多段式過給装置4の部品点数を削減することができるようになる。
【0121】
(19)また、統合供給部91に低圧側供給部93が設けられる構成である。したがって、低圧側供給部93を各別の部材として設ける場合よりも多段式過給装置4の部品点数を削減することができるようになる。
【0122】
(第2の実施形態)
図8を参照して、本発明の内燃機関を、多段式過給機及び排気還流装置を備えたディーゼルエンジンとして具体化した第2の実施形態について説明する。なお、本実施形態では、切替制御バルブ60の構成が異なるのみであるため、同一部材には同一符号を付し、その説明を省略する。また、図中の「機関高さ方向X1」は、エンジン本体10のシリンダの軸線方向を示す。
【0123】
切替制御バルブ60Aは、エキゾーストマニホールド32に対して機関高さ方向X1に沿った態様にて取り付けられる。
図8に示すように、切替制御バルブ60Aには、基部61Aと弁体63Aと回転機構64Aとアクチュエータ65Aとから構成されている。
【0124】
基部61Aには、第1供給部62a〜第3供給部62cがそれぞれ設けられている。第2供給部62b及び第3供給部62cは互いに機関高さ方向X1に対して同位置となる態様にて設けられている。そして、第1供給部62aは、第2供給部62b及び第3供給部62cのそれぞれに対して機関高さ方向X1の下方となる態様にて設けられている。
【0125】
弁体63Aには、第2供給部62bの貫通孔内に設けられた第1弁体66と、第3供給部62cの貫通孔内に設けられた第2弁体67とが含まれる。これら第1弁体66及び第2弁体67は、バタフライ式の弁であり、共通のシャフト(以下、「共通シャフト68」)によりそれぞれ接続されている。この共通シャフト68の回転により、第1弁体66及び第2弁体67は第2供給部62b及び第3供給部62cの開度が増減するように回転する。また、第1供給部62aには、機関負荷にかかわらず連通状態であってもよいため、弁体は設けられていない。
【0126】
第1弁体66と第2弁体67とは互いに共通シャフト68の回転方向に対して互いに直交する態様にて共通シャフト68に取り付けられている。したがって、機関負荷が低負荷のときには、第3供給部62cを全開状態とするとともに、第2供給部62bを全閉状態に設定することが可能となる。一方、機関負荷が高負荷のときには、第3供給部62cを全閉状態とするとともに、第2供給部62bを全開状態に設定することが可能となる。
【0127】
切替制御バルブ60Aには、アクチュエータ65Aが設けられている。このアクチュエータ65Aは共通シャフト68と接続し、アクチュエータ65Aの駆動に伴い共通シャフト68が回転する。
【0128】
本実施形態のエンジン1によれば、第1の実施形態の効果(1)〜(11)、(13)〜(19)に加え、以下の効果を奏することができる。
(20)本実施形態によれば、第1弁体66と第2弁体67とは共通シャフト68により取り付けられる構成である。したがって、第1弁体66と第2弁体67との各別にシャフトを取り付ける構成と比較して、アクチュエータ65A等の切替制御バルブ60Aの部品点数の削減を図ることができるようになる。
【0129】
(21)本実施形態によれば、第1弁体66と第2弁体67とは互いに直交する態様にて設けられる構成である。したがって、機関負荷状態が高負荷のときには、第2供給部62bを全開状態とするとともに、第3供給部62cを全閉状態に設定することができる。したがって、高負荷に応じた過給特性を得るとともに、排気還流装置9による排気の還流が停止されるため、エンジン1の出力の向上を図ることができるようになる。
【0130】
(その他の実施形態)
本発明の内燃機関は、上記各実施形態のエンジン1に限定されることなく、以下の変更が可能である。
【0131】
・上記各実施形態では、統合タービンハウジング90の統合供給部91により高圧側供給部92、低圧側供給部93、及び連通用供給部94がそれぞれ一体に設けられる構成であったが、これら高圧側供給部92、低圧側供給部93、及び連通用供給部94のそれぞれは、統合タービンハウジング90と各別に設けられる構成であってもよい。
【0132】
・上記各実施形態では、統合タービンハウジング90により高圧側タービン室42及び低圧側タービン室52が単一部材として構成されたが、高圧側タービン室42及び低圧側タービン室52は別部材として構成されてもよい。
【0133】
・上記各実施形態では、高圧側タービン室42及び低圧側タービン室52が単一部材にて構成されることにより、連通用供給部94がこれらタービン室42,52に対して一体に設けられる構成であったが、連通用供給部94の形成態様はこれに限定されることはない。例えば、高圧側タービン室42と低圧側タービン室52とが別部材として構成される場合においては、連通用供給部94は、高圧側タービン室42または低圧側タービン室52のどちらかに一体に設けられる構成であればよい。
【0134】
・また、高圧側タービン室42及び低圧側タービン室52は一体として設けられたが、高圧側タービン室42及び低圧側タービン室52は、互いに離間して設けられる態様であってもよい。
【0135】
・上記各実施形態では、切替制御バルブ60に対して、エキゾーストマニホールド32と高圧過給機40及び低圧過給機50とが互いに反対側に位置する態様にて設けられたが、エキゾーストマニホールド32と高圧過給機40及び低圧過給機50とは、切替制御バルブ60に対して同じ側に位置する態様にて設けられてもよい。
【0136】
・上記各実施形態では、切替制御バルブ60は、エキゾーストマニホールド32の吐出口32aと統合供給部91とそれぞれ直接接続される構成であったが、これら接続態様はこれに限定されることはない。切替制御バルブ60とエキゾーストマニホールド32とは接続配管を介して接続されてもよい。また切替制御バルブ60と統合供給部91とは接続配管を介して接続されてもよい。そしてこれら接続配管を同時に用いてもよい。
【0137】
・上記各実施形態では、第3供給部62cのエキゾーストマニホールド32との接続口が、第1供給部62a及び第2供給部62bのエキゾーストマニホールド32とのそれぞれの接続口と隣接して設けられる態様であったが、第3供給部62cの接続口は第1供給部62aまたは第2供給部62bのいずれかに隣接して設けられる態様であってもよい。
【0138】
・上記各実施形態では、統合供給部91により高圧側供給部92と低圧側供給部93とが互いに隣接した態様にて設けられたが、高圧側供給部92と低圧側供給部93とは、離間した態様にて設けられてもよい。
【0139】
・上記各実施形態では、切替制御バルブ60の基部61に設けられた第1供給部62a及び第2供給部62bをそれぞれ基部61の厚み方向に貫通した貫通孔により形成するようにしたが、第1供給部62a及び第2供給部62bの形状はこれに限定されることはない。例えば、第1供給部62a及び第2供給部62bは、基部61の片側にエキゾーストマニホールド32の接続口と統合供給部91の接続口とを有する略U字形状にてそれぞれ形成されてもよい。
【0140】
・上記各実施形態では、第1供給部62a〜第3供給部62cのそれぞれは円形の穴形状にて形成されたが、第1供給部62a〜第3供給部62cの形状はこれに限定されることはない。例えば、第1供給部62a〜第3供給部62cのそれぞれが楕円形状にて形成されてもよい。
【0141】
・上記各実施形態では、第1供給部62a〜第3供給部62cのそれぞれの流路断面積が互いに異なった構成としたが、第1供給部62a〜第3供給部62cのそれぞれの流路断面積は全て同じであってもよい。
【0142】
・上記各実施形態では、第3供給部62cが第1供給部62a及び第2供給部62bに対して直交する方向に延設される構成であったが、第3供給部62cは第1供給部62a及び第2供給部62bと同様の方向に延設される構成であってもよい。
【0143】
・また、第1供給部62aと第2供給部62bとが互いに異なる方向に延設されるときには、第3供給部62cは第1供給部62a及び第2供給部62bのどちらかに対して直交する態様にて設けられていればよい。これにより、その直交した側のタービン室とエキゾーストマニホールド32との間に形成される空間に連通管9aを延設させることにより、連通管9aと統合タービンハウジング90及びエキゾーストマニホールド32との干渉を抑制する効果を得ることができるようになる。
【0144】
・上記各実施形態では、内燃機関としてディーゼルエンジンを例示したが、本発明は例えばガソリンエンジンとして具現化することができる。
【符号の説明】
【0145】
1…ディーゼルエンジン(エンジン)、4…多段式過給装置、9…排気還流装置、9a…連通管、9b…EGRクーラ、9c…排気還流通路、10…エンジン本体(内燃機関本体)、11…燃焼室、21…吸気管、22…インテークマニホールド、23…吸気通路、24…エアクリーナ、25…ディーゼルスロットル、31…排気管、32…エキゾーストマニホールド、32a…吐出口、33…排気通路、34…排気浄化装置、40…高圧過給機、41…ハウジング、41a…タービンハウジング(高圧側タービンハウジング)、41b…コンプレッサハウジング、41c…支持ハウジング、42…高圧側タービン室、42a…スクロール部、43…高圧側コンプレッサ室、43a…吸入側接続部、43b…吐出側接続部、43c…吸入口、43d…吐出口、44…支持部、45…タービンホイール、46…コンプレッサホイール、47…ロータシャフト、48…軸受機構、50…低圧過給機、51…ハウジング、51a…タービンハウジング(低圧側タービンハウジング)、51b…コンプレッサハウジング、51c…支持ハウジング、52…低圧側タービン室、52a…スクロール部、52d…吐出口、53…低圧側コンプレッサ室、53a…吸入側接続部、53b…吐出側接続部、53c…吸入口、53d…吐出口、54…ベアリング室、55…タービンホイール、56…コンプレッサホイール、57…ロータシャフト、58…軸受機構、60,60A…切替制御バルブ、61…基部、62…供給部、62a…第1供給部、62b…第2供給部、62c…第3供給部、63,63A…弁体、63a…第1開閉部、63b…第2開閉部、64,64A…回転機構、65,65A…アクチュエータ、66…第1弁体、67…第2弁体、68…共通シャフト、69…アクチュエータ、70…吸気側過給通路、71…入口側吸気通路、72…低圧側吸気通路、73…連通用吸気通路、74…高圧側吸気通路、75…吸気側切替バルブ、80…排気側過給通路、81…入口側排気通路、82…高圧側排気通路、83…低圧側排気通路、84…連通用排気通路、85…出口側排気通路、90…統合タービンハウジング、91…統合供給部、92…高圧側供給部、92A…高圧側供給通路、93…低圧側供給部、93A…低圧側供給通路、94…連通用供給部、94A…連通用供給通路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧側タービン室が形成される高圧側タービンハウジングを有する高圧過給機及び低圧側タービン室が形成される低圧側タービンハウジングを有する低圧過給機を有する多段式過給装置と、排気通路の排気を吸気通路に還流する排気還流装置と、燃焼室にて発生した排気を同排気通路に供給するエキゾーストマニホールドとを備える内燃機関において、
前記排気通路は、前記エキゾーストマニホールドと前記高圧側タービン室及び前記低圧側タービン室とを接続する接続通路を含み、同接続通路には、排気が前記エキゾーストマニホールドから前記低圧側タービン室に流れる状態と前記エキゾーストマニホールドから前記高圧側タービン室に流れる状態とを切り替える機能と、前記排気還流装置の排気還流量を調量する機能とを併せ有する切替制御バルブが設けられる
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関において、
前記高圧側タービンハウジングと前記低圧側タービンハウジングとは一体に構成される
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の内燃機関において、
前記切替制御バルブは、前記高圧側タービン室に排気を供給する第1供給部と、前記低圧側タービン室に排気を供給する第2供給部と、前記排気還流装置に排気を供給する第3供給部とが設けられた基部と、前記第2供給部及び前記第3供給部の開閉状態を制御する弁体とを備える
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関において、
前記排気還流装置には、前記切替制御バルブと前記吸気通路とを接続する連通路が設けられ、
前記連通路の吸入口は、前記切替制御バルブの前記基部に対して前記高圧側タービン室の吸入口及び前記低圧側タービン室の吸入口の少なくとも一方と前記接続通路との接続方向に対して直交する方向に接続されて同方向に延伸する
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項5】
請求項3または請求項4のいずれか一項に記載の内燃機関において、
前記第2供給部の排気が通過する流路断面積は、前記第1供給部の同流路断面積よりも大きい
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項6】
請求項3〜請求項5のいずれか一項に記載の内燃機関において、
前記第2供給部の排気が通過する流路断面積は、前記第3供給部の同流路断面積よりも大きい
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項7】
請求項3〜請求項6のいずれか一項に記載の内燃機関において、
前記第1供給部の排気が通過する流路断面積は、前記第3供給部の同流路断面積よりも大きい
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項8】
請求項3〜請求項7のいずれか一項に記載の内燃機関において、
前記基部は、平板状をなし前記エキゾーストマニホールドと前記高圧側タービン室及び前記低圧側タービン室を形成するハウジングとの間に介装されるものであり、
前記第1供給部及び前記第2供給部は、前記基部を厚み方向に貫通する貫通孔によりそれぞれ形成される
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項9】
請求項3〜請求項8のいずれか一項に記載の内燃機関において、
前記弁体は、機関負荷状態が低負荷のとき、前記第2供給部を全閉とする
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項10】
請求項3〜請求項9のいずれか一項に記載の内燃機関において、
前記弁体は、機関負荷状態が中負荷のとき、前記第2供給部及び前記第3供給部はそれぞれ開状態である
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項11】
請求項10に記載の内燃機関において、
前記弁体は、機関負荷状態が中負荷のとき、同中負荷の範囲内において負荷が増大するにつれて前記第2供給部の開度を増大させる
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項12】
請求項3〜請求項11のいずれか一項に記載の内燃機関において、
前記弁体は、機関負荷状態が高負荷のとき、前記第2供給部を全開とするとともに、前記第3供給部を全閉とする
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項13】
請求項3〜請求項12のいずれか一項に記載の内燃機関において、
前記弁体は、単一部材により構成される
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項14】
請求項3〜請求項13のいずれか一項に記載の内燃機関において、
前記弁体は、前記第2供給部に設けられる第1弁体及び前記第3供給部に設けられる第2弁体により構成され、
前記第2供給部と前記第3供給部とは、前記基部の所定の方向において同位置に設けられ、
前記第1弁体及び前記第2弁体を回転させることによりそれぞれの開閉を可能とするとともに、前記第1弁体及び前記第2弁体の双方に挿通する共通のシャフトが設けられる
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項15】
請求項14に記載の内燃機関において、
前記第1弁体及び前記第2弁体とはともにバタフライ弁であり、
前記第1弁体に対して前記第2弁体は、互いに直交する態様にて前記シャフトに取り付けられてなる
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項16】
請求項3〜請求項15のいずれか一項に記載の内燃機関において、
前記高圧側タービン室の吸入口と前記低圧側タービン室の吸入口とは互いに隣接して設けられる
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項17】
請求項16に記載の内燃機関において、
前記基部には、前記排気還流装置における前記エキゾーストマニホールドとの接続口が、前記高圧側タービンハウジングの前記エキゾーストマニホールドとの接続口と前記低圧側タービンハウジングの前記エキゾーストマニホールドとの接続口の少なくとも一方と隣接して設けられる
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項18】
請求項1〜請求項17のいずれか一項に記載の内燃機関において、
前記切替制御バルブは、前記エキゾーストマニホールドの吐出口及び前記高圧側タービン室の吸入口及び前記低圧側タービン室の吸入口のそれぞれを直接接続し、
前記切替制御バルブに対して、前記エキゾーストマニホールドの吐出口と前記高圧側タービンハウジングの前記エキゾーストマニホールドとの接続口及び前記低圧側タービンハウジングの前記エキゾーストマニホールドとの接続口とが互いに反対側に位置する態様にて設けられる
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項19】
請求項18に記載の内燃機関において、
前記多段式過給装置には、前記高圧側タービン室と前記低圧側タービン室とを互いに接続する連通用排気通路が設けられ、
前記連通用排気通路は、前記高圧側タービン室及び前記低圧側タービン室の少なくとも一方に一体に設けられる
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項20】
請求項18または請求項19に記載の内燃機関において、
前記高圧側タービンハウジングと前記低圧側タービンハウジングとは単一部材にて構成される
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項21】
請求項18〜請求項20のいずれか一項に記載の内燃機関において、
前記多段式過給装置には、前記エキゾーストマニホールドからの排気を前記低圧過給機に供給する低圧側排気通路が設けられ、
前記低圧側タービンハウジングには、前記低圧側排気通路が一体に設けられる
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項22】
請求項18〜請求項21のいずれか一項に記載の内燃機関において、
前記多段式過給装置には、前記エキゾーストマニホールドからの排気を前記高圧過給機に供給する高圧側排気通路が設けられ、
前記高圧側タービンハウジングには、前記高圧側排気通路が一体に設けられる
ことを特徴とする内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−255565(P2010−255565A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108022(P2009−108022)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】