説明

円筒内表面の加工装置および加工方法ならびに凹凸部品の製造方法およびパターンシートの製造方法

【課題】本発明は、円筒状のワークを横置きにしてワークの内表面を加工する場合であっても、ワークの撓みを抑制して良好に加工を行うことを目的とする。
【解決手段】円筒内表面の加工装置(レーザ照射装置6)は、ワーク3の両端を回転可能に支持するワーク支持台(中空支持軸64aおよびベアリング台64b)と、ワーク3を回転させる駆動装置(モータ、ベルト64cおよびプーリ64d)と、前記ワーク支持台に形成される孔64fから通されてワーク3内においてワーク3の軸方向に延びるヘッド支持軸(ヘッドガイド軸62およびヘッド駆動軸63b)と、前記ヘッド支持軸に沿って移動しながら、ワーク3の内表面にレーザ光を照射するヘッド61と、を備えて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状の内表面を有するワークの内表面をレーザ光により加工するための円筒内表面の加工装置および加工方法と、この加工方法を利用した凹凸部品の製造方法およびパターンシートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、円筒状のワークの内表面を加工する技術として、鉛直に立てた状態(中心軸が鉛直方向に沿った状態)の円筒状のワークの下端部を回転可能に支持するとともに、ワーク内に上方からエンドミルを挿入することで、ワークの内表面を加工する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−199393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、円筒状のワークの長さが長い場合には、従来技術のようにワークを縦置きにセットすることが困難になる場合がある。そこで、ワークを横置き(中心軸が水平方向に沿った状態)にして、ワークの内表面を加工することが考えられるが、従来のようにワークを片持ち支持すると、ワークが重力によって撓んでしまうといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、円筒状のワークを横置きにしてワークの内表面を加工する場合であっても、ワークの撓みを抑制して良好に加工を行うことができる円筒内表面の加工装置および加工方法と、この加工方法を利用した凹凸部品の製造方法およびパターンシートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る円筒内表面の加工装置は、円筒状の内表面を有するワークの内表面を、レーザ光により加工する円筒内表面の加工装置であって、前記ワークの両端を回転可能に支持する一対のワーク支持台と、前記ワークの一端に駆動力を付与して前記ワークを回転させる駆動装置と、前記一対のワーク支持台の少なくとも一方に形成される孔から通されて前記ワーク内において前記ワークの軸方向に延びるヘッド支持軸と、前記ヘッド支持軸に支持されて前記ワークの軸方向に移動しながら、前記内表面にレーザ光を照射するヘッドと、を備えて構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、一対のワーク支持台によってワークの両端が支持されるので、ワークを横置きにした場合であっても、ワークの撓みを抑制して良好に内表面を加工することができる。
【0008】
また、本発明に係る加工装置では、前記内表面に照射するレーザ光の光軸が水平方向を向くように、前記ヘッドが配設されているのが望ましい。
【0009】
ここで、「水平方向」とは、完全な水平方向を含む他、水平方向から僅かに傾いた方向をも含む。
【0010】
これによれば、仮にヘッドを支持するヘッド支持軸が自重やヘッドの重みによって鉛直方向に撓んだ場合であっても、この撓みによる影響を大きく受けずに、ヘッドと内表面との距離(水平方向の距離)を略同じ距離に維持することができる。そのため、内表面の加工を良好に形成することができる。
【0011】
また、本発明に係る加工装置では、前記ヘッドから照射するレーザ光を、前記内表面に対する所定位置に集束させるフォーカスサーボ制御を実行可能な制御装置を設けるのが望ましい。
【0012】
これによれば、フォーカスサーボ制御によってレーザ光が所定位置に集束されるので、内表面の加工を精度良く行うことができる。
【0013】
また、本発明に係る円筒内表面の加工方法は、円筒状の内表面を有するワークの内表面を、レーザ光により加工する円筒内表面の加工方法であって、前記ワークの両端を支持して、前記ワークを回転させる回転工程と、前記ワーク内に配設したヘッドから前記内表面にレーザ光を照射させつつ、前記ヘッドを前記ワークの軸方向に移動させることで、前記内表面を螺旋状に加工する加工工程と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、回転工程においてワークの両端が支持されるので、ワークを横置きにした場合であっても、ワークの撓みを抑制して良好に内表面を加工することができる。
【0015】
また、本発明に係る加工方法では、前記加工工程において、前記ヘッドから水平方向に向けて前記レーザ光を照射するのが望ましい。
【0016】
これによれば、仮にヘッドを支持するヘッド支持軸が自重やヘッドの重みによって鉛直方向に撓んだ場合であっても、この撓みによる影響を大きく受けずに、ヘッドと内表面との距離(水平方向の距離)を略同じ距離に維持することができる。そのため、内表面の加工を良好に形成することができる。
【0017】
また、本発明に係る加工方法では、前記加工工程において、前記ヘッドから照射するレーザ光を、前記内表面に対する所定位置に集束させるフォーカスサーボ制御を実行することが望ましい。
【0018】
これによれば、フォーカスサーボ制御によってレーザ光が所定位置に集束されるので、内表面の加工を精度良く行うことができる。
【0019】
また、本発明に係る加工方法では、前記回転工程の前に、前記ワークの内表面に、ヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層を形成するフォトレジスト形成工程を設けてもよい。
【0020】
これによれば、レーザ光のスポット径よりも小さな微細な穴部(例えば、サブミクロンオーダーの穴部)をフォトレジスト層に形成することができる。
【0021】
また、本発明に係る加工方法では、前記フォトレジスト形成工程を、前記フォトレジスト層を構成する化合物を有する塗布液中に、前記ワークの中心軸が鉛直方向に沿うように、前記ワークを入れて浸漬させる浸漬工程と、前記浸漬工程の後、前記ワークを中心軸回りに回転させながら引き上げる取出工程と、前記ワークの内表面に塗布された塗布液を乾燥させてフォトレジスト層を形成する乾燥工程と、で行ってもよい。
【0022】
これによれば、浸漬工程においてワークを塗布液中に浸けることにより、ワークの内表面全体に塗布液が塗布される。そのため、取出工程においてワークを液槽から取り出した後は、ワークの内表面全体に塗布された塗布液を略同時に乾燥させることができるので、例えばスプレーガンで塗布する方法のような乾燥が部分的に順次行われていく方法に比べ、フォトレジスト層を略均一な厚さに形成することができる。さらに、取出工程においてワークを回転させながら引き上げることにより、引き上げたワークの内表面を伝って流れ落ちようとする塗布液に遠心力がかかるので、この遠心力が抵抗となって塗布液が下方に流れ難くなる。そのため、重力の影響によって塗布液の厚さがワークの上部から下部に向けて徐々に厚くなってしまうことを抑えることができる。
【0023】
また、本発明に係る加工方法では、前記乾燥工程において、前記取出工程に引き続いてワークを回転させることでワーク上の塗布液を乾燥させるのが望ましい。
【0024】
これによれば、取出工程の後に引き続きワークを回転させることで塗布液を乾燥させるので、前述した重力の影響による塗布液の厚さのムラをより抑制することができるとともに、塗布液を迅速に乾燥させることができる。
【0025】
また、前述した加工方法で加工されたワークの内表面に金属材料を成膜させ、成膜した金属材料を取り外すことで外表面に凹凸パターンを有した金属材料からなる部品を製造してもよい。さらには、この製造方法で製造した凹凸部品をスタンパロールとして、パターンシートの製造方法に利用してもよい。すなわち、前述した製造方法で凹凸パターンが形成されたスタンパロールに、走行するシートを巻き付けて型付けすることにより、走行するシートに凹凸パターンを連続的に形成してもよい。これによれば、スタンパロールの表面に形成された例えばサブミクロンオーダーの凹凸パターンをシートに転写させることができ、サブミクロンオーダーの凹凸パターンを有するパターンシートを良好かつ簡易に製造することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ワークの両端が支持されて内表面が加工されるので、ワークを横置きにした場合であっても、ワークの撓みを抑制して良好に内表面を加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明に係る円筒内表面の加工方法およびパターンシートの製造方法の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は円筒内表面に塗布液を塗布するのに用いる設備を示す断面図であり、図2は浸漬工程を示す断面図(a)と、取出工程および乾燥工程を示す断面図(b)である。また、図3はレーザ照射装置を示す断面図(a)と、図3(a)のX−X断面図(b)であり、図4はワークをレーザ照射装置に装着する様子を示す断面図である。さらに、図5は、フォトレジスト層に凹部パターンが形成された状態を示す断面図(a)と、ワークの内表面からメッキ膜を成長させた状態を示す断面図(b)と、ワーク内部に形成された部品をワークから外してフォトレジスト層を除去した状態を示す断面図(c)である。
【0028】
最初に、円筒内表面の加工方法について説明する。
図1に示すように、まず、塗布液1を入れた液槽2を用意するとともに、円筒状のワーク3(被加工物)をその中心軸CA回りに回転可能に支持するチャック装置4を用意する。
【0029】
ここで、塗布液1は、後述するフォトレジスト層5(図3参照)を構成する化合物が有機溶剤に溶解されることで生成されている。例えば、塗布液1としては、下記化学式の色素材料を、有機溶剤であるTFP(テトラフルオロプロパノール)溶剤に2%(重量比)で溶解させたものを使用することができる。
【0030】
【化1】

【0031】
ワーク3の材料としては、ステンレス系の材料(もしくは加工しやすい金属材料)やAlなどが好ましい。また、ワーク3の内表面3aには、クロムメッキをしてもよい。このようにクロムメッキをすると、ワーク3の表面硬度や表面平滑性を上げることができる。なお、ワーク3の内表面3aに塗布液1を塗布する前においては、ワーク3を洗浄しておく。
【0032】
さらに、チャック装置4としては、図1に示すようなワーク3の外表面を支持する装置を利用する。このようなチャック装置4によれば、ワーク3の内表面を支持しないので、内表面全体に塗布液1を塗布できる。ただし、本発明はこれに限定されず、ワーク3の内表面を支持する装置で、ワーク3を保持してもよい。
【0033】
そして、図2(a)に示すように、チャック装置4で把持した円筒状のワーク3を、その中心軸CAが鉛直方向に沿うような姿勢で液槽2内に入れて、液槽2内の塗布液1中に浸漬させる(浸漬工程)。その後は、図2(b)に示すように、ワーク3を中心軸CA回りに回転させながら所定位置まで引き上げていく(取出工程)。
【0034】
これにより、液槽2から取り出したワーク3の内表面3aを伝って流れ落ちようとする塗布液1に遠心力がかかるので、塗布液1が下方に流れ難くなる。そのため、重力の影響によって塗布液1の厚さがワーク3の上部から下部に向けて徐々に厚くなってしまうことが抑えられる。また、液槽2の塗布液1中にワーク3を浸漬させるので、液槽2から取り出したワーク3の内表面3a全体に塗布された塗布液1は、略同時に乾燥するようになっている。
【0035】
そして、ワーク3を所定位置まで引き上げた後は、引き続きワーク3を回転させることでワーク3の内表面3aに塗布された塗布液1を乾燥させる(乾燥工程)。これにより、前述した重力の影響による塗布液1の厚さのムラの抑制が維持されつつ、ワーク3の内表面3aが迅速に乾燥する。そして、塗布液1の乾燥が完了すると、ワーク3の内表面3aに、ヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層5が所定の膜厚で形成されることとなる(フォトレジスト形成工程)。
【0036】
ここで、ヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層5とは、強い光の照射により光が熱に変換されてこの熱により材料が形状変化して凹部を形成することが可能な層であり、いわゆるヒートモード型の記録材料の層である。なお、フォトレジスト層5の膜厚の上限値は、1μm以下が望ましく、0.5μm以下がさらに望ましく、0.3μm以下が特に望ましい。また、フォトレジスト層5の膜厚の下限値は、0.01μm以上が望ましく、0.03μm以上がさらに望ましく、0.05μm以上が特に望ましい。
【0037】
なお、フォトレジスト層5の膜厚を良好にコントロールするためには、塗布液1の粘度を0.5〜10mPa・sの範囲から設定し、ワーク3の周速を0.1〜10m/sの範囲から設定し、引き上げ速度を0.02〜2m/sの範囲から設定することが望ましい。ここで、塗布液1の粘度調整は、溶剤の量を調整することによって行われる。
【0038】
なお、例えば、塗布液1の粘度を30mPa・sにするとともに、周速0.5m/sで内径120mmのワーク3を回転させながら、0.2m/sの速度で引き上げ、ワーク3の回転速度を徐々に上げていくことで周速を1m/sまで上げて乾燥を行うと、フォトレジスト層5の膜厚を略均一(0.1μm)にすることができる。ただし、フォトレジスト層5の膜厚は、ワーク3の周速や引き上げ速度だけでなく、塗布液1の物性、塗布液1とワーク3の内表面3aとの濡れ性などにも影響を受けるので、必要に応じて適宜条件を変更しながら、膜厚を調整するのが望ましい。
【0039】
その後は、図3(a)および(b)に示すように、加工装置としてのレーザ照射装置6にワーク3を横向きに(中心軸が水平になる向きに)装着する。ここで、「水平」とは、完全な水平方向を含む他、水平方向から僅かに傾いた方向をも含む。また、レーザ照射装置6は、ヘッド61、ヘッドガイド軸62、ヘッド駆動装置63およびワーク駆動装置64を主に備えて構成されている。ここで、ヘッドガイド軸62および後述するヘッド駆動軸63bは、ヘッド支持軸の一例に相当する。
【0040】
ヘッド61は、半導体レーザを内蔵しており、ワーク3内に挿入可能な大きさで形成されている。ヘッド61は、公知の光学部品(対物レンズ61a等)を備えており、図示せぬ制御装置によって対物レンズ61aなどが光軸方向に動かされることでフォーカスサーボ制御を実行するようになっている。これにより、ヘッド61から照射されるレーザ光が、フォトレジスト層5に対する所定位置に集束されるようになっている。また、ヘッド61の適所には、後述するヘッド駆動軸63bの雄ねじ部63aに螺合する雌ねじ部61bが形成されるとともに、ヘッドガイド軸62が挿入される貫通孔61cが形成されている。
【0041】
ヘッドガイド軸62は、ワーク3の軸方向に延びてヘッド61の移動をワーク3の軸方向に規制する部材であり、ヘッド61の貫通孔61cに挿入された状態で、その両端が一対の支持台65で支持されている。なお、図示左側の支持台65に形成される貫通孔65aに対して、ヘッドガイド軸62は着脱可能なクリアランスで嵌合している。
【0042】
ヘッド駆動装置63は、ワーク3の軸方向に延びるとともにヘッド61の雌ねじ部61bと螺合する雄ねじ部63aを有するヘッド駆動軸63bと、ヘッド駆動軸63bを回転させるモータ63cとを備えて構成されている。そして、モータ63cでヘッド駆動軸63bを回転させると、雄ねじ部63aが雌ねじ部61bを軸方向に押圧することによって、ヘッド61が軸方向において移動可能となっている。
【0043】
なお、ヘッド駆動軸63bの一端部(図示左側の端部)は、モータ63cの回転軸63dの先端に対してキー溝を介して連結されている。これにより、ヘッド駆動軸63bとモータ63cの回転軸63dは、回転方向においては相対移動不能となり、軸方向(離間する方向)においては相対移動可能となっている。
【0044】
ワーク駆動装置64は、ワーク3の両端部をそれぞれ支持する一対の中空支持軸64aと、中空支持軸64aを回転可能に支持する一対のベアリング台64bと、一対の中空支持軸64aの一方(図示右側の中空支持軸64a)に対して図示せぬモータからの回転力を伝達させるベルト64cおよびプーリ64dとを備えて構成されている。そして、中空支持軸64aとワーク3は、これらの間にテーパ面を有するスリーブ64eが圧入されることで互いに固定され、一体的に回転することが可能となっている。ここで、中空支持軸64aおよびベアリング台64bはワーク支持台の一例に相当し、図示せぬモータ、ベルト64cおよびプーリ64dは駆動装置の一例に相当する。そして、前述したヘッドガイド軸62およびヘッド駆動軸63bは、一対の中空支持軸64aの内周面で形成される孔64fを通って、ワーク3内を貫通するようになっている。
【0045】
次に、レーザ照射装置6を用いたワーク3の内表面3aの加工方法について説明する。
まず、レーザ照射装置6にワーク3を取り付ける際には、図4に示すように、レーザ照射装置6の左側の部品を左側にずらす。その後、ワーク3の右側端部を、右側の中空支持軸64aにスリーブ64eで仮止めするとともに、レーザ照射装置6の左側の部品を元の位置に戻して、ワーク3の左側端部を、左側の中空支持軸64aにスリーブ64eで仮止めする。続いて、各スリーブ64eをそれぞれワーク3に圧入することで、ワーク3を一対の中空支持軸64aに固定する。
【0046】
その後は、図3(a)に示すように、図示せぬモータから回転力をベルト64cおよびプーリ64dを介して中空支持軸64aに伝達させることで、ワーク3を回転させる(回転工程)。また、このとき、モータ63cを駆動するとともに、図示せぬ制御装置からヘッド61に信号を送ることで、ヘッド61がフォーカスサーボ制御されつつワーク3の軸方向に移動してフォトレジスト層5の所定の深さ位置にレーザ光を照射して、フォトレジスト層5全体に穴部パターン51が螺旋状に形成されることとなる(加工工程;図5(a)参照)。
【0047】
具体的には、フォトレジスト層5に、材料の光吸収波長域に入る波長(材料で吸収される波長)のレーザ光を照射すると、フォトレジスト層5によってレーザ光が吸収され、この吸収された光が熱に変換され、光の照射部分の温度が上昇する。これにより、フォトレジスト層5が、軟化、液化、気化、昇華、分解などの化学または/および物理変化を起こす。そして、このような変化を起こした材料が移動または/および消失して、ワーク3の内表面3a上から除去されることで、穴部パターン51が形成される。
【0048】
なお、レーザ照射装置6から照射されるレーザ光の出力値等は、レーザ光の照射によりワーク3の内表面3aが露出するような値に適宜設定されている。また、穴部パターン51の幅(半値幅)が1μm以下となるように、レーザ光のスポット径が適宜設定されている。ここで、半値幅とは、穴部パターン51の深さの半分の深さ位置での幅を意味する。
【0049】
また、レーザ照射装置6のヘッド61やヘッド61に信号を送る制御装置としては、例えばパルステック工業株式会社製NE500(波長405nm、NA0.85)を採用することができる。さらに、穴部パターン51の形成方法としては、例えば、ライトワンス光ディスクや追記型光ディスクなどで公知となっているピットの形成方法を適用することができる。具体的には、例えば、ピットサイズによって変化するレーザの反射光の強度を検出し、この反射光の強度が一定となるようにレーザの出力を補正することで、均一なピットを形成するといった、公知のランニングOPC技術(例えば、特許第3096239号公報段落[0012])を適用することができる。
【0050】
そして、フォトレジスト層5に穴部パターン51を形成した後は、図5(b)に示すように、ワーク3を図示せぬメッキ槽に入れて、ワーク3の内表面3aから、金属材料の一例としてメッキ材料からなるメッキ膜7を成長させた。なお、各穴部パターン51の底面から成長する各メッキ膜7は、フォトレジスト層5の厚さよりも高く成長すると、ワーク3の軸方向に成長して互いに接合する。その後は、ワーク3の内側に形成された円筒状の形成品(メッキ膜7)をワーク3から外して、図5(c)に示すように、その外表面に付着したフォトレジスト層5をエタノールなどの洗浄液で洗い流すととともに、その円筒状の形成品の内側に円柱状のロールRを嵌め込むことで、外表面に凹凸パターン31を有した凹凸部品の一例としてのスタンパロール30が製造される。
【0051】
なお、メッキ膜7をワーク3から取り外し易くするために、ワーク3の内表面3aに予め剥離液を塗布しておいてもよい。剥離液としては、市販のものが適用でき、シリコン系やカーボン系が好ましい。また、メッキ材料の種類としては、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデン、アルミニウム、チタン、銅などの金属または金属含有物またはこれらの合金などを採用できる。
【0052】
さらには、メッキ膜7をワーク3から取り外す際に、フォトレジスト層5を溶かす溶解液をメッキ膜7とワーク3の内表面3aの間に注入してもよい。また、ワーク3とメッキ膜7の熱膨張率が異なる場合には、これらを加熱または冷却することで、ワーク3よりもメッキ膜7が小径となるように変形させて、ワーク3からメッキ膜7を取り外し易くしてもよい。さらには、ワーク3の内表面3aとフォトレジスト層5との間に、新たな層を形成し、この層を溶解液で溶かすことで、ワーク3からメッキ膜7を取り外し易くしてもよい。
【0053】
次に、スタンパロール30を用いたパターンシートの製造方法について説明する。参照する図面において、図6は、スタンパロールを用いたパターンシートの製造方法を示す概念図である。
【0054】
図6に示すように、スタンパロール30は、公知のパターンシート製造装置10(例えば、特開2007−83447号参照)に組み込まれることにより、走行するシートWに微細パターンを連続的に形成することに寄与する。具体的に、パターンシート製造装置10では、シート供給手段11より、一定速度でシートWを送り出す。シートWは塗布手段12へ送り込まれ、シートWの表面に樹脂液が塗布される。
【0055】
ここで、塗布手段12は、シートWの表面に放射線硬化樹脂液を塗布する装置であり、放射線硬化樹脂液を供給する液供給源12Aと、液供給装置(送液ポンプ)12Bと、塗布ヘッド12Cと、塗布の際にシートWを巻き掛けて支持する支持ローラ12Dと、液供給源12Aより塗布ヘッド12Cまで放射線硬化樹脂液を供給するための配管等より構成される。
【0056】
そして、塗布手段12による樹脂液の塗布後に乾燥手段19によりシートWに塗布された樹脂液が乾燥され、溶剤分が蒸発する。次いで、シートWはスタンパロール30とニップローラ14からなる成形手段へ送り込まれる。これにより、連続走行するシートWが、回転するスタンパロール30とニップローラ14との間で押圧される。すなわち、スタンパロール30に、走行するシートWを巻き付けて型付けすることにより、シートWの樹脂層にスタンパロール30の外表面の凹凸パターンが連続的に転写される。
【0057】
次いで、シートWがスタンパロール30に巻き掛けられている状態で、樹脂硬化手段15によりシートWを透過して樹脂液層に放射線照射を行い、樹脂液層を硬化させる。その後、シートWを剥離ローラ16に巻き掛けることにより、シートWがスタンパロール30から剥離する。
【0058】
剥離されたシートWは、シート巻き取り手段18に搬送され、保護フィルム供給手段17より供給される保護フィルムHがシートWの表面に供給され、両フィルムが重なった状態でシート巻き取り手段18の巻き取りロールにより巻き取られ、収納される。以上により、微細パターンが形成されたパターンシートが製造される。
【0059】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
横置きにしたワーク3の両端が支持されて内表面3a上のフォトレジスト層5が加工されるので、ワーク3の撓みを抑制して良好にフォトレジスト層5を加工することができる。
【0060】
加工工程においてフォーカスサーボ制御を実行することで、レーザ光がフォトレジスト層5に対する所定位置に集束されるので、内表面3a上のフォトレジスト層5の加工を精度良く行うことができる。
【0061】
ワーク3の内表面3aに、ヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層5を形成したので、レーザ光をフォトレジスト層5に照射するだけでレーザ光のスポット径よりも小さな幅(例えばサブミクロンオーダー)の微細な穴部パターン51をフォトレジスト層5に形成することができる。
【0062】
ワーク3を液槽2に浸けた後回転させながら引き上げることで、ワーク3の内表面3a上の塗布液1が遠心力によって略均一の厚さになるとともに略同時に乾燥されるので、フォトレジスト層5の膜厚を略均一に形成して良好な穴部パターン51をワーク3の内表面3aに形成することができる。
【0063】
取出工程の後に引き続きワーク3を回転させることで塗布液1を乾燥させるので、重力の影響による塗布液1の厚さのムラの抑制を維持しつつ、塗布液1を迅速に乾燥させることができる。
【0064】
本実施形態のような取出工程および乾燥工程を経ることにより、非常に薄いフォトレジスト層5をワーク3の内表面3aに略均一の膜厚で形成することができるので、ワーク3の内側に形成するスタンパロール30の外表面の凹凸パターンを例えばサブミクロンオーダーで形成することができる。そのため、このような微細パターンが形成されたスタンパロール30を製造することができる。また、このスタンパロール30を用いてパターンシートを製造することで、サブミクロンオーダーの微細パターンを有するパターンシート(反射防止膜、偏光板、波長板、電子材料など)を、大面積で効率良く生産できる。なお、スタンパロール30は低コストで製造することができるので、スタンパロール30を予備ロールとして複数製作して、スタンパロールの再生産にかかる費用を抑制することができる。
【0065】
半導体レーザを用いることでヘッド61を小型にできるので、円筒状の内表面3aを有するワーク3が比較的小さなものであっても、ワーク3内に小型のヘッド61を入れて、ワーク3の内表面3aにあるフォトレジスト層5に良好にレーザ光を照射することができる。
【0066】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、ヘッド支持軸の一例としてのヘッドガイド軸62およびヘッド駆動軸63bの両端を支持したが、本発明はこれに限定されず、図7(a)に示すように、ヘッドガイド軸621およびヘッド駆動軸63eの一端部(図示左側の端部)のみを片持ち梁状に支持してもよい。ここで、参照する図7(a)は、図3(a)とは異なり、装置を横方向から切って上方向から見た横断面図である。
【0067】
また、図7に示す形態では、片持ち梁状に支持されたヘッドガイド軸621およびヘッド駆動軸63eの自重やヘッド61の重さによって、ヘッドガイド軸621およびヘッド駆動軸63eの先端が撓むおそれがあるため、ヘッド61の向きを、図7(b)に示すように横向きにするのが望ましい。すなわち、ヘッド61からフォトレジスト層5に照射するレーザ光の光軸の向きを、水平にするのが望ましい。これによれば、図7(c)に示すように、ヘッドガイド軸621等の先端が鉛直方向に撓んだ場合であっても、この撓みによる影響を大きく受けずに、ヘッド61とフォトレジスト層5との間の距離(ギャップ)を略同じ距離に維持することができる。すなわち、例えばレーザ光の光軸の向きを下向きに向けた場合には、ヘッドガイド軸621等が鉛直方向に撓んだ量ΔL1の分だけギャップが小さくなるが、レーザ光の光軸の向きを水平方向に向けた場合には、ギャップの変位量をΔL1よりも極めて小さいΔL2(L2−L2’)に抑えることができる。そのため、フォトレジスト層5の加工を良好に形成することができる。
【0068】
なお、このように片持ち梁状にヘッドガイド軸621およびヘッド駆動軸63eの一端部を支持する構造においては、前記実施形態のようなベルト64cおよびプーリ64dは必要ないので、構造を簡略化することができる。具体的に、この構造は、スリーブ64eを介してワーク3を内側から支持する中実支持軸66を支持台67で回転可能に支持するとともに、中実支持軸66の端部にモータ68を同軸上に設けているだけなので、シンプルな構造となっている。
【0069】
前記実施形態では、ワーク3の内表面3aを支持したが、本発明はこれに限定されず、例えば図8(a)に示すように、ワーク3の外表面3bを支持するようにしてもよい。ここで、参照する図8(a)は、図3(a)とは異なり、装置を横方向から切って上方向から見た横断面図である。具体的に、図8(a)に示す形態は、ワーク3の外表面3bを把持するチャッキング装置100,101をワーク3の両端に設け、これらのチャッキング装置100,101を支持台110,111で回転可能に支持するとともに、一方のチャッキング装置101をモータ120で回転させる構造となっている。これによれば、ワーク3の内表面3aを支持しないので、内表面3a全体にフォトレジスト層5を形成することができる。なお、この図8の構造も、図7と同様に、ヘッドガイド軸622およびヘッド駆動軸63fが片持ち梁状に支持される構造であるため、図8(b)に示すように、ヘッド61を横向きにするのが望ましい。
【0070】
前記実施形態では、穴部パターン51を形成したフォトレジスト層5に対してメッキ膜7を形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、フォトレジスト層5に穴部パターン51を形成した後、図9(a)〜(d)に示すように、蒸着またはスパッタリングにより凹凸形状を形成し、この凹凸形状に対してメッキ膜7を形成してもよい。
【0071】
具体的に、この方法では、図9(a),(b)に示すように、ワーク3を図示せぬ真空チャンバーに入れて、穴部パターン51を形成したフォトレジスト層5に対して金属材料の一例としてのクロム8を蒸着またはスパッタリングにより成膜する。その後は、図9(c)に示すように、エタノールなどの洗浄液でフォトレジスト層5を洗い流すと、ワーク3の内表面3aにクロム8からなるパターン(凸部)が形成される。そして、図9(d)に示すように、クロム8からなるパターンに対してメッキ膜7を形成することで、前記実施形態と同様にしてスタンパロールを製造することができる。
【0072】
また、図10(a)〜(d)に示すように、エッチングによりワーク3の内表面3aに微細な凹凸形状を形成した後、この凹凸形状に対してメッキ膜7を形成してもよい。
【0073】
具体的に、この方法では、図10(a)に示すように、フォトレジスト層5に穴部パターン51を形成した後、ワーク3の内表面3aに残ったフォトレジスト層5をマスクとしてエッチングを行うことによって、図10(b)に示すように、ワーク3の内表面3aに凹部3cを形成する。ここで、エッチングとしては、ウェットエッチング、ドライエッチング、RIE(リアクティブイオンエッチング)など、種々のエッチング方法を採用できる。
【0074】
そして、凹部3cを形成した後は、フォトレジスト層5を前記実施形態のような洗浄液で除去することで、図10(c)に示すように、ワーク3の内表面3aにエッチングによるパターン(凹部3c)が形成される。そして、図10(d)に示すように、凹部3cが形成されたワーク3の内表面3aに対してメッキ膜7を形成することで、前記実施形態と同様にしてスタンパロールを製造することができる。
【0075】
また、図11(a)〜(c)に示すように、穴部パターン51を形成したフォトレジスト層5の表面5aとワーク3の内表面3aとに連続するように、金属材料MMを蒸着またはスパッタリングによって成膜することでワーク3の内表面3aに微細な凹凸形状を形成し、この凹凸形状に対してメッキ膜7を形成してもよい。これによれば、図9に示す形態のように蒸着またはスパッタリング処理の後にワーク3の内表面3aに残るフォトレジスト層5を除去することなく、凹凸形状を形成することができるので、フォトレジスト層5を除去するための設備等が不要となり、製造コストを低減することができる。なお、図11のようにフォトレジスト層5の表面5aとワーク3の内表面3aとに連続するように金属材料MMを成膜するには、スパッタリングを採用するのが望ましく、図9のように金属材料(クロム8)を断続的に成膜するには、真空蒸着を採用するのが望ましい。また、この図11の実施形態については、ワーク3の内表面3aが露出するまで穴部パターン51を形成する必要はない。すなわち、穴部パターン51の底面でワーク3の内表面3aが覆われていても、金属材料MMからなる凹凸パターンを形成することができる。そして、以上のように構成された金属材料MMからなるパターンに対してメッキ膜7を形成することで、前記実施形態と同様にしてスタンパロールを製造することができる。
【0076】
前記実施形態では、ワーク3の内表面3aにヒートモード型のフォトレジスト層5を形成したが、本発明はこれに限定されず、フォトンモード型のフォトレジスト層や、露光によって現像液で溶解可能な物性に変化するフォトレジスト層などを形成してもよい。また、フォトレジスト層を設けずに、ワークの内表面に直接高出力のレーザ光を当ててワークの内表面を加工してもよい。
【0077】
前記実施形態では、ヘッド支持軸(ヘッドガイド軸62およびヘッド駆動軸63b)に対してヘッド61が相対的に移動するように構成したが、本発明はこれに限定されず、ヘッド支持軸とヘッドが一体に移動するように構成してもよい。
【0078】
前記実施形態では、ワーク3を液槽2内の塗布液1に浸けることで、ワーク3の内表面3aへの塗布液1の塗布を行ったが、本発明はこれに限定されず、例えばスプレーなどによって塗布を行ってもよい。
【0079】
前記実施形態では、ワーク3を回転させながら取り出した後、その回転を継続させることでワーク3の乾燥を行ったが、本発明はこれに限定されず、ワーク3を回転させながら取り出した後、その回転を止めてワーク3の乾燥を行ってもよい。ただし、前記実施形態のようにワーク3を回転させながら乾燥させる場合には、乾燥工程中においても重力の影響によるフォトレジスト層5の膜厚のムラを抑えることができるので、乾燥工程中においてもワーク3を回転させるのが望ましい。
【0080】
前記実施形態では、ワーク3を回転させるとともにヘッド61を軸方向に移動させることで、ワーク3の内表面3a全体に穴部パターン51を形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ヘッド61をワーク3の中心軸回りに回転させ、ワーク3を軸方向に移動させてもよい。
【0081】
前記実施形態では、円筒状のワーク3を加工対象としたが、本発明はこれに限定されず、例えば有底筒状のワークを加工対象としてもよい。
【0082】
前記実施形態では、塗布液1に入れる色素材料として化学式1で示すような材料を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、色素材料を有するフォトレジスト層5の好適な例としては、メチン色素(シアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素、オキソノール色素、メロシアニン色素など)、大環状色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素など)、アゾ色素(アゾ金属キレート色素を含む)、アリリデン色素、錯体色素、クマリン色素、アゾール誘導体、トリアジン誘導体、1−アミノブタジエン誘導体、桂皮酸誘導体、キノフタロン系色素などが挙げられる。中でも、メチン色素、オキソノール色素、大環状色素、アゾ色素が好ましい。
【0083】
中でも、色素型のフォトレジスト層5は、露光波長領域に吸収を有する色素を含有していることが好ましい。特に、光の吸収量を示す消衰係数kの値は、その上限が、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましく、1以下であることが最も好ましい。その理由は、消衰係数kが高すぎると、フォトレジスト層5の光の入射側から反対側まで光が届かず、不均一な穴が形成されるからである。また、消衰係数kの下限値は、0.0001以上であることが好ましく、0.001以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。その理由は、消衰係数kが低すぎると、光吸収量が少なくなるため、その分大きなレーザパワーが必要となり、加工速度の低下を招くからである。
【0084】
なお、フォトレジスト層5は、前記したように露光波長において光吸収があることが必要であり、かような観点からレーザ光源の波長に応じて適宜色素を選択したり、構造を改変することができる。
【0085】
例えば、レーザ光源の発振波長が780nm付近であった場合、ペンタメチンシアニン色素、ヘプタメチンオキソノール色素、ペンタメチンオキソノール色素、フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素などから選択することが有利である。この中でも、フタロシアニン色素またはペンタメチンシアニン色素を用いるのが好ましい。
【0086】
また、レーザ光源の発振波長が660nm付近であった場合は、トリメチンシアニン色素、ペンタメチンオキソノール色素、アゾ色素、アゾ金属錯体色素、ピロメテン錯体色素などから選択することが有利である。
【0087】
さらに、レーザ光源の発振波長が405nm付近であった場合は、モノメチンシアニン色素、モノメチンオキソノール色素、ゼロメチンメロシアニン色素、フタロシアニン色素、アゾ色素、アゾ金属錯体色素、ポルフィリン色素、アリリデン色素、錯体色素、クマリン色素、アゾール誘導体、トリアジン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、1−アミノブタジエン誘導体、キノフタロン系色素などから選択することが有利である。
【0088】
以下、レーザ光源の発振波長が780nm付近であった場合、660nm付近であった場合、405nm付近であった場合に対し、フォトレジスト層5(フォトレジスト材料)としてそれぞれ好ましい化合物の例を挙げる。ここで、以下の化学式2,3で示す化合物(I-1〜I-10)は、レーザ光源の発振波長が780nm付近であった場合の化合物である。また、化学式4,5で示す化合物(II-1〜II-8)は、660nm付近であった場合の化合物である。さらに、化学式6,7で示す化合物(III-1〜III-14)は、405nm付近であった場合の化合物である。なお、本発明はこれらをフォトレジスト材料に用いた場合に限定されるものではない。
【0089】
<レーザ光源の発振波長が780nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化2】

【0090】
<レーザ光源の発振波長が780nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化3】

【0091】
<レーザ光源の発振波長が660nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化4】

【0092】
<レーザ光源の発振波長が660nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化5】

【0093】
<レーザ光源の発振波長が405nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化6】

【0094】
<レーザ光源の発振波長が405nm付近である場合のフォトレジスト材料例>
【化7】

【0095】
また、特開平4−74690号公報、特開平8−127174号公報、同11−53758号公報、同11−334204号公報、同11−334205号公報、同11−334206号公報、同11−334207号公報、特開2000−43423号公報、同2000−108513号公報、及び同2000−158818号公報等に記載されている色素も好適に用いられる。
【0096】
このような色素型のフォトレジスト層5は、色素を、結合剤等と共に適当な溶剤に溶解して塗布液1を調製し、次いで、この塗布液1を、ワーク3上に塗布して塗膜を形成した後、乾燥することにより形成できる。その際、塗布液1を塗布する面の温度は、10〜40℃の範囲であることが好ましい。より好ましくは、下限値が、15℃以上であり、20℃以上であることが更に好ましく、23℃以上であることが特に好ましい。また、上限値としては、35℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることが更に好ましく、27℃以下であることが特に好ましい。このように被塗布面温度が上記範囲にあると、塗布ムラや塗布故障の発生を防止し、塗膜の厚さを均一とすることができる。
なお、上記の上限値及び下限値は、それぞれが任意で組み合わせることができる。
ここで、フォトレジスト層5は、単層でも重層でもよく、重層構造の場合、塗布工程を複数回行うことによって形成される。
塗布液1中の色素の濃度は、一般に0.01〜15質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜10質量%の範囲、より好ましくは0.5〜5質量%の範囲、最も好ましくは0.5〜3質量%の範囲である。
【0097】
塗布液1の溶剤としては、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン;ジクロルメタン、1,2−ジクロルエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素;ジメチルホルムアミド等のアミド;メチルシクロヘキサン等の炭化水素;テトラヒドロフラン、エチルエーテル、ジオキサン等のエーテル;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールジアセトンアルコール等のアルコール;2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール等のフッ素系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;等を挙げることができる。なお、フッ素系溶剤、グリコールエーテル類、ケトン類が好ましい。特に好ましいのはフッ素形溶剤、グリコールエーテル類である。更に好ましいのは、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルである。
上記溶剤は使用する色素の溶解性を考慮して単独で、或いは二種以上を組み合わせて使用することができる。塗布液1中には、更に、酸化防止剤、UV吸収剤、可塑剤、潤滑剤等各種の添加剤を目的に応じて添加してもよい。
【0098】
また、塗布の際、塗布液1の温度は、23〜50℃の範囲であることが好ましく、24〜40℃の範囲であることがより好ましく、中でも、25〜30℃の範囲であることが特に好ましい。
【0099】
塗布液1が結合剤を含有する場合、結合剤の例としては、ゼラチン、セルロース誘導体、デキストラン、ロジン、ゴム等の天然有機高分子物質;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイソブチレン等の炭化水素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル・ポリ酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、塩素化ポリエチレン、エポキシ樹脂、ブチラール樹脂、ゴム誘導体、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂等の熱硬化性樹脂の初期縮合物等の合成有機高分子;を挙げることができる。フォトレジスト層5の材料として結合剤を併用する場合に、結合剤の使用量は、一般に色素に対して0.01倍量〜50倍量(質量比)の範囲にあり、好ましくは0.1倍量〜5倍量(質量比)の範囲にある。
【0100】
また、フォトレジスト層5には、フォトレジスト層5の耐光性を向上させるために、種々の褪色防止剤を含有させることができる。
褪色防止剤としては、一般的に一重項酸素クエンチャーが用いられる。一重項酸素クエンチャーとしては、既に公知の特許明細書等の刊行物に記載のものを利用することができる。
その具体例としては、特開昭58−175693号公報、同59−81194号公報、同60−18387号公報、同60−19586号公報、同60−19587号公報、同60−35054号公報、同60−36190号公報、同60−36191号公報、同60−44554号公報、同60−44555号公報、同60−44389号公報、同60−44390号公報、同60−54892号公報、同60−47069号公報、同63−209995号公報、特開平4−25492号公報、特公平1−38680号公報、及び同6−26028号公報等の各公報、ドイツ特許350399号明細書、そして日本化学会誌1992年10月号第1141頁等に記載のものを挙げることができる。前記一重項酸素クエンチャー等の褪色防止剤の使用量は、色素の量に対して、通常0.1〜50質量%の範囲であり、好ましくは、0.5〜45質量%の範囲、更に好ましくは、3〜40質量%の範囲、特に好ましくは5〜25質量%の範囲である。
【0101】
なお、色素の吸収ピークの波長は、必ずしも可視光の波長域内であるものに限定されず、紫外域や、赤外域にあるものであっても構わない。
【0102】
レーザで穴部パターン51を形成する波長λwは、色素吸収波長λaとの関係において、λa<λwの関係であることが好ましい。このような関係にあれば、色素の光吸収量が適切で形成効率が高まるし、きれいな凹凸形状が形成できるからである。
【0103】
なお、穴部パターン51を形成するためのレーザ光の波長λwは、大きなレーザパワーが得られる波長であればよく、例えば、193nm、210nm、266nm、365nm、405nm、488nm、532nm、633nm、650nm、680nm、780nm、830nmなど、1000nm以下が好ましい。
【0104】
また、レーザ光の種類としては、ガスレーザ、固体レーザ、半導体レーザなど、どのようなレーザであってもよい。ただし、光学系を簡単にするために、固体レーザや半導体レーザを採用するのが好ましい。レーザ光は、連続光でもパルス光でもよいが、自在に発光間隔が変更可能なレーザ光を採用するのが好ましい。例えば、半導体レーザを採用するのが好ましい。レーザを直接オンオフ変調できない場合は、外部変調素子で変調するのが好ましい。
【0105】
また、レーザパワーは、加工速度を高めるためには高い方が好ましい。ただし、レーザパワーを高めるにつれ、スキャン速度(レーザ光でフォトレジスト層5を走査する速度)を上げなければならない。そのため、レーザパワーの上限値は、スキャン速度の上限値を考慮して、100Wが好ましく、10Wがより好ましく、5Wがさらに好ましく、1Wが最も好ましい。また、レーザパワーの下限値は、0.1mWが好ましく、0.5mWがより好ましく、1mWがさらに好ましい。
【0106】
さらに、レーザ光は、発信波長幅およびコヒーレンシが優れていて、波長並みのスポットサイズに絞ることができるような光であることが好ましい。また、露光ストラテジ(穴部パターン51を適正に形成するための光パルス照射条件)は、光ディスクで使われているようなストラテジを採用するのが好ましい。すなわち、光ディスクで使われているような、露光速度や照射するレーザ光の波高値、パルス幅などの条件を採用するのが好ましい。
【0107】
また、フォトレジスト層5の気化、昇華または分解は、その変化の割合が大きく、急峻であることが好ましい。具体的には、フォトレジスト層5の気化、昇華または分解時の示差熱天秤(TG−DTA)による重量減少率が5%以上であることが好ましく、より好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上である。また、フォトレジスト層5の気化、昇華または分解時の示差熱天秤(TG−DTA)による重量減少の傾き(昇温1℃あたりの重量減少率)が0.1%/℃以上であることが好ましく、より好ましくは0.2%/℃以上、更に好ましくは0.4%/℃以上である。
【0108】
また、軟化、液化、気化、昇華、分解などの化学または/および物理変化の転移温度は、その上限値が、2000℃以下であることが好ましく、1000℃以下であることがより好ましく、500℃以下であることがさらに好ましい。その理由は、転移温度が高すぎると、大きなレーザパワーが必要となるからである。また、転移温度の下限値は、50℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、150℃以上であることがさらに好ましい。その理由は、転移温度が低すぎると、周囲との温度勾配が少ないため、明瞭な穴エッジ形状を形成することができなくなるからである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】円筒内表面に塗布液を塗布するのに用いる設備を示す断面図である。
【図2】浸漬工程を示す断面図(a)と、取出工程および乾燥工程を示す断面図(b)である。
【図3】レーザ照射装置を示す断面図(a)と、図3(a)のX−X断面図(b)である。
【図4】ワークをレーザ照射装置に装着する様子を示す断面図である。
【図5】フォトレジスト層に凹部パターンが形成された状態を示す断面図(a)と、ワークの内表面からメッキ膜を成長させた状態を示す断面図(b)と、ワーク内部に形成された部品をワークから外してフォトレジスト層を除去した状態を示す断面図(c)である。
【図6】スタンパロールを用いたパターンシートの製造方法を示す概念図である。
【図7】ヘッドガイド軸等を片持ち梁状に支持した形態を示す図であり、レーザ照射装置を上から見た状態を示す横断面図(a)と、図7(a)のY−Y断面図(b)と、ヘッドとフォトレジスト層との距離の関係を示す拡大断面図(c)である。
【図8】ワークの外表面を支持する形態を示す図であり、レーザ照射装置を上から見た状態を示す横断面図(a)と、図8(a)のZ−Z断面図(b)である。
【図9】フォトレジスト層に穴部パターンが形成された状態を示す断面図(a)と、フォトレジスト層の表面とワークの内表面とにクロムを成膜した状態を示す断面図(b)と、ワークの内表面からフォトレジスト層を除去した状態を示す断面図(c)と、ワークの内表面からメッキ膜を成長させた状態を示す断面図(d)である。
【図10】エッチングによりワークの内表面に凹凸パターンを形成する形態を示す断面図であり、フォトレジスト層に穴部パターンが形成された状態を示す断面図(a)と、ワークの内表面をエッチングした状態を示す断面図(b)と、ワークの内表面からフォトレジスト層を除去した状態を示す断面図(c)と、ワークの内表面からメッキ膜を成長させた状態を示す断面図(d)である。
【図11】フォトレジスト層の内表面とワークの表面とに連続するように金属材料を成膜することで凹凸パターンを形成する形態を示す断面図であり、フォトレジスト層に穴部パターンが形成された状態を示す断面図(a)と、フォトレジスト層の表面とワークの内表面とに連続するように金属材料を成膜した状態を示す断面図(b)と、金属材料の表面からメッキ膜を成長させた状態を示す断面図(c)である。
【符号の説明】
【0110】
3 ワーク
3a 内表面
5 フォトレジスト層
5a 表面
6 レーザ照射装置
7 メッキ膜
51 穴部パターン
61 ヘッド
62 ヘッドガイド軸
63 ヘッド駆動装置
63b ヘッド駆動軸
63c モータ
64 ワーク駆動装置
64a 中空支持軸
64b ベアリング台
64c ベルト
64d プーリ
64e スリーブ
64f 孔
65 支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の内表面を有するワークの内表面を、レーザ光により加工する円筒内表面の加工装置であって、
前記ワークの両端を回転可能に支持する一対のワーク支持台と、
前記ワークの一端に駆動力を付与して前記ワークを回転させる駆動装置と、
前記一対のワーク支持台の少なくとも一方に形成される孔から通されて前記ワーク内において前記ワークの軸方向に延びるヘッド支持軸と、
前記ヘッド支持軸に支持されて前記ワークの軸方向に移動しながら、前記内表面にレーザ光を照射するヘッドと、を備えて構成されていることを特徴とする円筒内表面の加工装置。
【請求項2】
前記内表面に照射するレーザ光の光軸が水平方向を向くように、前記ヘッドが配設されていることを特徴とする請求項1に記載の円筒内表面の加工装置。
【請求項3】
前記ヘッドから照射するレーザ光を、前記内表面に対する所定位置に集束させるフォーカスサーボ制御を実行可能な制御装置を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の円筒内表面の加工装置。
【請求項4】
円筒状の内表面を有するワークの内表面を、レーザ光により加工する円筒内表面の加工方法であって、
前記ワークの両端を支持して、前記ワークを回転させる回転工程と、
前記ワーク内に配設したヘッドから前記内表面にレーザ光を照射させつつ、前記ヘッドを前記ワークの軸方向に移動させることで、前記内表面を螺旋状に加工する加工工程と、を備えたことを特徴とする円筒内表面の加工方法。
【請求項5】
前記加工工程において、
前記ヘッドから水平方向に向けて前記レーザ光を照射することを特徴とする請求項4に記載の円筒内表面の加工方法。
【請求項6】
前記加工工程において、
前記ヘッドから照射するレーザ光を、前記内表面に対する所定位置に集束させるフォーカスサーボ制御を実行することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の円筒内表面の加工方法。
【請求項7】
前記回転工程の前に、
前記ワークの内表面に、ヒートモードの形状変化が可能なフォトレジスト層を形成するフォトレジスト形成工程を設けたことを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の円筒内表面の加工方法。
【請求項8】
前記フォトレジスト形成工程は、
前記フォトレジスト層を構成する化合物を有する塗布液中に、前記ワークの中心軸が鉛直方向に沿うように、前記ワークを入れて浸漬させる浸漬工程と、
前記浸漬工程の後、前記ワークを中心軸回りに回転させながら引き上げる取出工程と、
前記ワークの内表面に塗布された塗布液を乾燥させてフォトレジスト層を形成する乾燥工程と、を有することを特徴とする請求項7に記載の円筒内表面の加工方法。
【請求項9】
前記乾燥工程において、
前記取出工程に引き続いてワークを回転させることでワーク上の塗布液を乾燥させることを特徴とする請求項8に記載の円筒内表面の加工方法。
【請求項10】
請求項4〜請求項9のいずれか1項に記載の加工方法で加工されたワークの内表面に金属材料を成膜させ、成膜した金属材料を取り外すことで外表面に凹凸パターンを有した金属材料からなる部品を製造することを特徴とする凹凸部品の製造方法。
【請求項11】
スタンパロールに、走行するシートを巻き付けて型付けすることにより、走行するシートにパターンを連続的に形成するパターンシートの製造方法であって、
前記スタンパロールとして、請求項10に記載の製造方法により外表面に凹凸パターンが形成された凹凸部品を用いることを特徴とするパターンシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−279615(P2009−279615A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134016(P2008−134016)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】