説明

出入管理システム

【課題】 安価な設備コストで利用者の出入管理を行う。
【解決手段】 可視光素子で構成される照明装置14を各部屋に設置し、この設置された照明装置14と利用者が所持する認証情報蓄積用携帯機20との間で可視光通信を行い、照明装置14から出射される情報光を利用者が所持する認証情報蓄積用携帯機20で受光し、この受光した情報光を出入情報として処理して蓄積する。この蓄積された出入情報は、情報読取器30を介して施解錠制御盤50に出力され、予め設定された解析情報に基づいて解析し、この解析結果を利用者の出入履歴として得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の出入を管理する出入管理システムに関し、特に、出入を管理する各部屋内に備え付けられた照明装置から特定の管理情報を可視光として発し、この可視光を発する照明装置と利用者が所持する携帯機との間で可視光通信を行って利用者の出入を管理する出入管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、人間の目に光として認識できる波長を持った電磁波である可視光(約380nm〜780nm)を用いて様々な情報を通信する可視光通信の開発が進められている。この可視光通信とは、応答速度が速くまた電気的に制御できるLED(Light Emitting Diode)などの可視光素子の特性を応用し、人間の目には感じられない程の速度で高速に点滅させて情報光として受光素子に出射し、受光した情報光の受光量に応じた電気信号を所定の閾値と比較して「0」、「1」に2値化し、様々な情報を通信するというものである。可視光域は人間に安全なため、照明に用いている数ワットという高い電力のままデータ送信することができる。しかも、照明は至る所に設置されているため、照明機器に通信機能を付加するだけでワイヤレス環境が構築できる。これにより、従来の無線や赤外線で生じていた問題点を克服することができるとともに、環境に安全な超高速通信が実現できるという利点がある。
【0003】
ところで、従来から知られている出入管理システムでは、例えば磁気カードやICカード等のカード情報(暗証番号など)、指紋、虹彩等の身体的特徴による個人識別情報、通行条件などを管理端末によって登録しておき、これら登録情報との照合結果に基づいて例えばオフィスビル、倉庫、研究室等の通行制御を行っている。そして、このような出入管理システムとしては、例えば特許文献1に開示されるようなものが周知である。
【0004】
特許文献1に開示される出入管理システムは、図4に示すように、個人識別媒体であるIDカードのデータを読み取るための非接触カードリーダ(媒体識別手段)101、生体特徴の代表的なものである指紋を読みとるための指紋読みとり器(個人特定手段)102、自由な出入りを制限するドア103、IDカードから読み込んだIDデータ並びに指紋がこのドアを出入りできる者のデータを示すか否かを判定する制御部104で構成され、指紋読みとり器102及びドア103の電気錠は制御部104に電気的に接続されている。
【0005】
この出入管理システムでは、特定区域105への出入りを望む者が、カードリーダ101に指紋データ検索のキーとなる自分のIDカードを近づけると、カードリーダ101がIDデータを読み取り、そのIDデータが制御部104に送られ、IDデータが特定区域105に出入り可能な者を表すか否かを判定する。そして、出入りする者が指を指紋読みとり器102の所定の位置に置くと、指紋が読み込まれ、その指紋に従い、制御部104が指紋を読み込ませた者に対し特定区域105に出入が可であるか否かを判断し、この判断結果に応じて電気錠の施解錠制御を行う。
【特許文献1】特開平11−232513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の出入管理システムを含め、従来から知られている出入管理システムでは、以下に示すような課題があった。
(1)所定動作により電気錠が解錠された場合に、出入りを望む者が実際に出入したかが判別できない。例えば電気錠を解錠して扉を開けただけで実際には入室していなくても入室と判断してしまう。
(2)正当な入館者しか退出できないアンチパスバック等の機能も(1)の抜け道がある。
(3)電気錠が解錠された際、前の人の後追いで出入した場合、その出入理履歴が残らない。これに対処するには、大掛かりで高価なフラッパーゲートなどの装置を別途設置するしかない。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、安価な設備コストで利用者の出入管理を行うことができる出入管理システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載された出入管理システムは、可視光を用いて利用者の出入履歴を管理する出入管理システムであって、
前記利用者の出入履歴を管理する管理領域毎に設置された可視光素子からなる照明装置を備え、該照明装置毎に設定された情報光を出射する出入情報通信装置と、
前記利用者が所持するものであって、前記出入情報通信装置から出射された前記情報光を前記管理領域内での移動に伴って受光し、該受光した情報光を予め設定された閾値をもとに2値化処理し、該2値化処理されたデータを出入情報として順次蓄積する出入情報蓄積用携帯機とを具備したことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載された出入管理システムは、可視光を用いて利用者の出入履歴を管理する出入管理システムであって、
前記利用者の出入履歴を管理する管理領域毎に設置された可視光素子からなる照明装置を備え、該照明装置毎に設定された情報光を出射する出入情報通信装置と、
前記利用者が所持するものであって、前記出入情報通信装置から出射された前記情報光を前記管理領域内での移動に伴って受光し、該受光した情報光を予め設定された閾値をもとに2値化処理し、該2値化処理されたデータを出入情報として順次蓄積する出入情報蓄積用携帯機と、
前記出入情報蓄積用携帯機に蓄積された前記出入情報を読み取る情報読取器とを具備したことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載された出入管理システムは、可視光を用いて利用者の出入履歴を管理する出入管理システムであって、
前記利用者の出入履歴を管理する管理領域毎に設置された可視光素子からなる照明装置を備え、該照明装置毎に設定された情報光を出射する出入情報通信装置と、
前記利用者が所持するものであって、前記出入情報通信装置から出射された前記情報光を前記管理領域内での移動に伴って受光し、該受光した情報光を予め設定された閾値をもとに2値化処理し、該2値化処理されたデータを出入情報として順次蓄積する出入情報蓄積用携帯機と、
前記出入情報蓄積用携帯機に蓄積された前記出入情報を読み取り、この読み取った出入情報の解析結果に基づいて電気錠を施解錠制御する処理装置とを具備したことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載された出入管理システムは、請求項3の出入管理システムにおいて、
前記処理装置は、入館時で外部から前記電気錠の解錠を行うときに前記出入情報蓄積用携帯機から読み取った解錠情報と予め記憶された解錠用情報とを比較し、読み取った解錠情報が正当な情報であるか否かを判別し、退館時には前記出入情報蓄積用携帯機から読み取った出入情報と予め記憶された解析情報とを比較して出入情報の解析を行い、解析結果に応じて前記出入情報が正常であるか否かを判別する情報読取器を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の出入管理システムによれば、既存の照明装置を可視光素子に変更し、その照明装置から出射される可視光を用いて出入情報を通信することにより、安価な設備コストで確実に利用者の出入管理を行うことができる。
【0013】
また、出入情報の通信方法として可視光通信を用いているので、出入情報に基づいた情報光を所定範囲内にのみ出射させることができ、他の場所から送信された異なる情報を受信する恐れがなく、信頼性の高い出入管理を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、添付した図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明に係る出入管理システムの電気的構成を示す概略ブロック図、図2は本発明に係る出入管理システムの使用例の動作を示すフローチャート図、図3は図2の出入管理システムの他の使用例の動作を示すフローチャート図である。
【0015】
本例の出入管理システムは、例えばオフィスビル、研究所、倉庫などの出入管理が必要な場所に設置され、例えばLEDなどの可視光素子を用いた照明装置から発せられる可視光により様々な情報を通信する可視光通信を採用している。可視光通信は、例えば天井にある照明器具などがそのまま情報発信の通信インフラになり、その光が届く場所しかデータが到達しないので、その部屋から外へは情報が漏れないという利点を有している。本例の出入管理システムでは、この可視光通信を採用することにより、照明装置から利用者が所持する出入情報蓄積用携帯機に対して出入情報を送信し、出入情報蓄積用携帯機に蓄積された出入情報に基づいて利用者の出入管理を行っている。
【0016】
まず、本例の出入管理システムの電気的構成について図1を参照しながら説明する。図1に示すように、出入管理システム1は、出入情報通信装置10、出入情報蓄積用携帯機20、情報読取器30、施解錠装置40を備えて概略構成される。
【0017】
出入情報通信装置10は、制御部11、制御部側レベル調整部12、照明装置側レベル調整部13、照明装置14を備えて構成される。出入情報通信装置10は、利用者が所持する出入情報蓄積用携帯機20に対し、各照明装置14の設置場所、日時、滞在時間などの出入情報を送信している。
【0018】
制御部11は、例えばCPUを搭載したパーソナルコンピューターなどで構成され、出入情報記憶手段11a、照明制御用駆動手段11bを備えている。制御部11は、照明装置14の設置場所、日時、滞在時間などの出入情報の出力制御、照明装置14から出射される出入情報を含む情報光の駆動制御を行っている。また、制御部11は、後述する施解錠制御盤50と接続されており、施解錠制御盤50から通信される出入情報や解析結果を取り込み、この取り込んだ出入情報や解析結果を例えば不図示のプリンタや他のパソコンなどの周辺機器に出力制御している。
【0019】
出入情報記憶手段11aは、例えば磁気的、光学的記憶媒体若しくは半導体メモリなどで構成される。出入情報記憶手段11aは、照明装置14の設置場所、日時、滞在時間など利用者の出入に関する各種情報を記憶している。そして、この記憶されている各照明装置14毎の出入情報を照明制御用駆動手段11bに出力している。
【0020】
照明制御用駆動手段11bは、出入情報記憶手段11aからの各照明装置14毎の出入情報を入力として、各出入情報に応じた情報光で各照明装置14を駆動するための駆動制御信号を制御部側レベル調整部12に出力している。
【0021】
制御部側レベル調整部12は、例えばレベルコンバータなどで構成され、照明制御用駆動手段11bから出力された駆動制御信号の信号電圧のレベルを調整している。そして、レベル調整された駆動制御信号は、制御部側レベル調整部12と同構成の照明装置側レベル調整部13に出力され、再度信号電圧のレベルが調整された後、照明装置14に出力される。これにより、各照明装置14には、照明装置14毎にレベル調整された駆動制御信号が入力される。
【0022】
照明装置14は、例えばLEDなどの高速に点滅して可視光を出射する可視光素子を複数列設して構成される。照明装置14は、利用者の出入履歴を管理する管理領域毎(例えば各部屋内や通路など)に設置される。照明装置14は、各設置場所に応じて設定された出入情報を送信するため、制御部11から出力される駆動制御信号により点滅駆動された可視光を出射している。これにより、可視光は、設置された場所毎の情報光として利用者が通過する所定範囲内に出射される。
【0023】
出入情報蓄積用携帯機20は、例えば非接触ICチップ内蔵のカードやリモコンなどの携帯型の送受信機能を有し、例えば利用者が移動時に首からぶら下げて所持する。出入情報蓄積用携帯機20は、情報光処理部21、データ蓄積部22、情報送信部23を備えている。出入情報蓄積用携帯機20は、照明装置14から出射された情報光を所定範囲内で受光し、受光した情報光を処理し出入情報として蓄積する。この蓄積された出入情報は、出入情報蓄積用携帯機20を情報読取器30に近づけたときに、情報読取器20によって非接触で読み取られる。
【0024】
情報光処理部21は、例えば基板上にドットマトリクス状に配列されたフォトダイオードなどで構成された受光手段21aと、受光手段21aが受光した情報光に応じた電気信号を増幅する増幅手段21bと、増幅手段21bで増幅した電気信号を所定閾値と比較して2値化する比較手段21cとを具備する。情報光処理部21は、出入情報通信装置10から出射された情報光を受光手段21aが受光し、この受光した情報光に応じた電気信号を増幅手段21bで増幅し、この増幅された情報光に応じた電気信号を予め設定された所定の閾値と比較して「0」、「1」に2値化する。そして、2値化された情報光の電気信号を出入情報としてデータ蓄積部22に出力する。
【0025】
データ蓄積部22は、例えば半導体メモリなどの記憶媒体で構成され、情報光処理部21からの出入情報を逐次蓄積している。この蓄積された出入情報は、所定操作(例えば出入情報蓄積用携帯機20を情報読取器30にかざす操作)により情報送信部23から情報読取器30に出力される。
【0026】
情報送信部23は、例えばCPUとメモリを実装した非接触ICチップから構成され、後述する情報読取器30の情報受信部31の所定範囲内に出入情報蓄積用携帯機20を近接させて出入情報を送信する。
【0027】
情報読取器30は、例えば例えばオフィスビル、研究所、倉庫などの出入管理される出入口に設置され、情報受信部31、操作部32、表示部33、読取器側通信用入出力部34を備えて構成される。情報読取器30は、電気錠60が施錠された部屋に入館する際、出入情報蓄積用携帯機20から解錠情報(電気錠60を解錠するために必要な情報、例えば暗証番号、指紋、虹彩等の身体的特徴による個人識別情報など)を読み取っている。また、情報読取器30は、退館時に出入情報蓄積用携帯機20に蓄積された出入情報を受信して施解錠装置40に出力している。
【0028】
情報受信部31は、例えば出入情報蓄積用携帯機20に具備された非接触ICチップに対応したリーダーなどの読取装置で構成され、リーダーから発せられる特定周波数帯の電磁波を利用し、出入情報蓄積用携帯機20から送信された出入情報を受信して読取器側通信用入出力部34を介して後述する施解錠制御盤50の制御盤側通信用入出力部51に出力している。
【0029】
操作部32は、例えばテンキーや操作ボタンなどで構成され、暗証番号入力や手動で電気錠60の施解錠に関する各種情報の入力を行う。また、表示部33は、例えばLEDや液晶画面などで構成され、出入情報蓄積用携帯機20から送信された出入情報や後述する施解錠制御盤50からの施解錠制御に応じた表示内容を点滅/点灯表示や文字表示している。
【0030】
読取器側通信用入出力部34は、例えばRS−232CやUSBなどの通信用インターフェースで構成され、情報読取器30と施解錠装置40との間で行われる様々なデータ通信や電源供給に用いられる。
【0031】
施解錠装置40は、出入情報蓄積用携帯機20や情報読取器30からの情報(出入情報を含む)に基づいて電気錠60の施解錠制御を行う施解錠制御盤50と、利用者が建物に入退出を行う際に使用する扉の錠前を電気的に施解錠する電気錠60とを備えている。ここでは、施解錠装置40として、閉扉状態が所定時間継続したときに自動的に電気錠60を施錠状態に保持するオートロックシステムを採用している。
【0032】
施解錠制御盤50は、制御盤側通信用入出力部51、情報記憶部52、解析処理部53、表示部54、操作部55、電源供給部56、警報発報部57を備えて構成され、情報読取器30からの解錠情報や出入情報蓄積用携帯機20からの出入情報に基づいて各種処理を行う。また、施解錠制御盤50は、出入情報通信装置10とケーブルや無線LANを用いたイーサネット(登録商標)などのネットワーク通信ができるように構成されており、施解錠制御盤50が入力した出入情報や出入情報の解析結果などの各種情報を適宜通信している。
【0033】
制御盤側通信用入出力部51は、読取器側通信用入出力部34と同一の構成であり、情報読取器30と施解錠制御部11との間で行われる各種データ通信や電源供給時に用いられる。また、情報読取器30からの解錠情報や出入情報に基づいて、電気錠60へ出力する施解錠信号や錠の状態信号などの施解錠に関する信号も通信している。
【0034】
情報記憶部52は、例えば磁気的、光学的記憶媒体や半導体メモリなどで構成され、各照明装置14毎に設定された出入情報、利用者が通行する正確な通過ルートや通過する部屋の順番、利用者毎に設定された部屋の利用権限、各照明装置14が設置された場所における利用者の滞在時間の上限や下限などの予め設定された出入情報を解析するのに必要な解析情報を記憶している。また、情報記憶部52は、外部から電気錠60を解錠する際に、出入情報蓄積用携帯機20から情報読取器30が読み取った解錠情報と比較するための解錠用情報も記憶している。
【0035】
解析処理部53は、入館時に外部から電気錠60の解錠を行うときに読み取った解錠情報と予め情報記憶部52に記憶されている解錠用情報とを比較し、読み取った解錠情報が正当な情報であるか否かを判別し、正当な情報と判別したときに解錠信号を制御盤側通信用入出力部51を介して電気錠60に出力している。また、解析処理部53は、退館時に情報読取器30からの出入情報と情報記憶部52に予め記憶された解析情報とを比較して出入情報の解析を行い、解析結果に応じて出入情報が正常であるか否かを判別する。そして、全ての出入情報の解析結果が正常であると判断された場合のみ解錠信号を制御盤側通信用入出力部51を介して電気錠60に出力する。
【0036】
操作部54は、例えばテンキーや操作ボタンなどで構成され、暗証番号入力や手動で電気錠60の施解錠に関する各種情報の入力を行う。また、表示部55は、例えばLEDや液晶画面などで構成され、出入情報蓄積用携帯機20から送信された出入情報や施解錠制御盤50からの施解錠制御に基づいた表示内容を点滅/点灯表示や文字表示している。
【0037】
電源供給部56は、例えば商用電源(AC100V)である外部電源から電源の供給を受け、情報読取器30と施解錠装置40にそれぞれ具備される各部に駆動電源を供給している。
【0038】
警報発報部57は、有線若しくは無線通信インタフェースで構成され、出入情報蓄積用携帯機20から出力された出入情報と情報記憶部52に記憶されている解析情報とを用いて解析した結果が正常でないと判断された場合、例えば警報機などのブザー発報、管理者や登録先の携帯電話への通報、電話回線などの公衆回線網遠隔に配置される不図示の管理センタとの間で通信などを行い、異常発生を報知・通報する。
【0039】
電気錠60は、出入情報蓄積用携帯機20から送信された出入情報に応じて、施解錠制御盤50から出力される施解錠信号(施錠信号又は解錠信号)により扉枠の係止穴に対してデッドボルトを突出(施錠時)又は引き込む(解錠時)ことにより施解錠している。なお、本例では、閉扉状態が所定時間継続したときに自動的に施錠されるオートロックシステムを採用している。
【0040】
次に、上述した出入管理システム1の使用例について、図2と図3を参照しながらぞれぞれ具体例を挙げて説明する。
【0041】
まず、本例の出入管理システム1を利用者の出入管理として使用した場合について具体的に説明する。この場合、出入管理システム1は、例えばオフィスビルや研究所に設けられ、非接触ICチップ内蔵のカードを出入情報蓄積用携帯機20として使用し、建物の入出口に入館用と退館用の情報読取器30が設置された構成であり、入館および退館時にデータ照合を行っている。
【0042】
図2に示すように、まず、オフィスや研究所に入館したとき、入口付近に設定された情報読取器30にカード20をかざす(ST1)。これにより、情報読取部30は、カード20から解錠情報を読み取り、読み取った解錠情報を施解錠装置40に送出する。施解錠装置40では、情報読取部30からの解錠情報を解析し、カード20が有効であるか否かの判別を行う(ST2)。施解錠装置40は、情報読取部30からの解錠情報が情報記憶部52に予め登録されている解錠情報との照合が一致した場合(ST2−Yes)、電気錠60を解錠して利用者を入館させる。これに対し、情報読取部30からの解錠情報が登録されていない情報か、或いは不正な解錠情報である場合には(ST2−No)、電気錠60の解錠は行わない。
【0043】
解錠情報の照合が一致し、利用者が建物に入館して利用したい部屋に入室すると、その部屋の所定箇所(例えば天井)に設置されている照明装置14からは所定範囲内で情報光が常時送信されている(ST3)。そして、この情報光は、利用者が所持するカード20が所定範囲内に来ると、カード20によって受光され、所定の処理が施された後、各部屋毎の出入情報としてカード20内に蓄積される(ST4)。この出入情報の蓄積は、カード20を所持する利用者が照明装置14の所定範囲内を通過する度に行われる。
【0044】
そして、退館時に、利用者が所持するカード20を出口に設定された情報読取器30の所定位置にかざすと、カード20内に蓄積された出入情報が情報読取器30に送信され、情報読取器30から施解錠装置40の施解錠制御盤50に出入情報が出力される。そして、施解錠制御盤50では、情報読取器30から受信した出入情報を解析する(ST5)。施解錠制御盤50は、出入情報が予め設定された解析情報と条件が一致したとき(ST5−Yes)、正常と判断し、電気錠60に解錠信号を出力して電気錠60を解錠する。これに対し、出入情報が予め設定された解析情報と条件が一致しないときは(ST5−No)、利用者が所定の行動をしていないと判断し、警報発報部57から発報・通報し、電気錠60は解除しない。
【0045】
次に、本例の出入管理システム1をスーパーマーケット等の商業施設のマーケティングとして使用した場合について具体的に説明する。この場合、出入管理システム1は、例えばスーパーマーケットに設けられ、出入情報蓄積用携帯機20は非接触ICチップを具備したタグとしてショッピングカートに設置され、商品が陳列されている各フロアの通路毎に照明装置14を配置した構成である。なお、この場合の出入管理システム1は、施解錠装置40がない構成である。
【0046】
図3に示すように、消費者がスーパーマーケットに入店し、ショッピングカートを自走してショッピングを行うと(ST11)、各商品フロアを移動した際に、各商品フロアに配設された照明装置14から所定範囲内に送信される情報光がショッピングカートに設置されたタグ20によって受光される。このタグ20によって受光された情報光は、所定の信号処理が施され、各商品フロア毎に設定された出入情報としてタグ20内に蓄積される(ST12、ST13)。このタグ20内への出入情報の蓄積は、ショッピングカートに設置されたタグ20が照明装置14の所定範囲内を通過する度に行われる。
【0047】
そして、退店時、タグ20に蓄積された出入情報は、例えばショッピングカートの返却置場にて情報読取器30により読み取られる(ST14)。この読み取られた出入情報は、不図示の管理システム(パソコンなどの端末装置)に通信されて解析され、その解析の結果、消費者の通過ルートや通行履歴、各商品フロアでの滞在時間、レジでの待ち時間などの各種情報が得られる。
【0048】
このように、上述した出入管理システム1は、各部屋に設置された照明装置14から出射される情報光を利用者が所持する出入情報蓄積用携帯機20で受光し、この受光した情報光を処理して出入情報として出入情報蓄積用携帯機20に蓄積する。そして、蓄積した出入情報は、情報読取器30を介して施解錠制御盤50に出力され、予め設定された解析情報との照合により利用者の出入履歴を解析する。これにより、利用者が建物に入館してから退館するまでの各部屋毎の出入履歴を認識することができ、正常な行動を行っていない利用者の不正退出を防止することができる。
【0049】
また、既存の照明をLEDなどの可視光素子を用いた照明に交換するだけでよく、設備コストを安価にすることができる。また、出入情報の通信手段として可視光通信を用いているので、限られた範囲内にのみ情報光が出射され、無線LANなどのように送信エリアが広範囲にならず、異なる出入情報を受信したり、他の場所に情報が漏洩するのを防止する効果を奏するとともに、エリア構成が容易にできるという利点がある。
【0050】
さらに、スーパーマーケットなどの商業施設に構築すれば、消費者の行動パターンや各商品フロアでの滞在時間、現在人気のある商品の種類などの様々なマーケティングリサーチをすることができ、集客率の向上や商品の販売促進などの経営戦略に役立てることもできる。
【0051】
ところで、上述した出入管理システムにおいて、出入情報蓄積用携帯機20から送信された出入情報を情報読取器30で読取った後、施解錠装置40に出力する構成としたが、これに限定されることはなく、情報読取器30の機能を施解錠制御装置40に組み込んで一体化した処理装置として構成しても良い。
【0052】
また、上述した実施形態では、施解錠装置40として、電気錠60を解錠制御した後、閉扉状態が所定時間継続したときに自動的に施錠制御される構成として説明したが、扉の開閉状態および電気錠60の施解錠状態をモニタし、情報読取器30から施錠情報が入力されたときにモニタ情報に応じて施錠制御する構成とすることもできる。
【0053】
以上、本発明を用いて最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る出入管理システムの電気的構成を示す概略ブロック図である。
【図2】本発明に係る出入管理システムの使用例の動作を示すフローチャート図である。
【図3】図2の出入管理システムの他の使用例の動作を示すフローチャート図である。
【図4】従来の出入管理システムの概略図である。
【符号の説明】
【0055】
1 出入管理システム
10 出入情報通信装置
11 制御部
11a 出入情報記憶手段
11b 照明制御用駆動手段
12 制御部側レベル調整部
13 照明装置側レベル調整部
14 照明装置
20 出入情報蓄積用携帯機
21 情報光処理部
21a 受光手段
21b 増幅手段
21c 比較手段
22 データ蓄積部
23 情報送信部
30 情報読取器
31 情報受信部
32 操作部
33 表示部
34 読取器側通信用入出力部
40 施解錠装置
50 施解錠制御盤
51 制御盤側通信用入出力部
52 情報記憶部
53 解析処理部
54 表示部
55 操作部
56 電源供給部
57 警報発報部
60 電気錠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を用いて利用者の出入履歴を管理する出入管理システムであって、
前記利用者の出入履歴を管理する管理領域毎に設置された可視光素子からなる照明装置を備え、該照明装置毎に設定された情報光を出射する出入情報通信装置と、
前記利用者が所持するものであって、前記出入情報通信装置から出射された前記情報光を前記管理領域内での移動に伴って受光し、該受光した情報光を予め設定された閾値をもとに2値化処理し、該2値化処理されたデータを出入情報として順次蓄積する出入情報蓄積用携帯機とを具備したことを特徴とする出入管理システム。
【請求項2】
可視光を用いて利用者の出入履歴を管理する出入管理システムであって、
前記利用者の出入履歴を管理する管理領域毎に設置された可視光素子からなる照明装置を備え、該照明装置毎に設定された情報光を出射する出入情報通信装置と、
前記利用者が所持するものであって、前記出入情報通信装置から出射された前記情報光を前記管理領域内での移動に伴って受光し、該受光した情報光を予め設定された閾値をもとに2値化処理し、該2値化処理されたデータを出入情報として順次蓄積する出入情報蓄積用携帯機と、
前記出入情報蓄積用携帯機に蓄積された前記出入情報を読み取る情報読取器とを具備したことを特徴とする出入管理システム。
【請求項3】
可視光を用いて利用者の出入履歴を管理する出入管理システムであって、
前記利用者の出入履歴を管理する管理領域毎に設置された可視光素子からなる照明装置を備え、該照明装置毎に設定された情報光を出射する出入情報通信装置と、
前記利用者が所持するものであって、前記出入情報通信装置から出射された前記情報光を前記管理領域内での移動に伴って受光し、該受光した情報光を予め設定された閾値をもとに2値化処理し、該2値化処理されたデータを出入情報として順次蓄積する出入情報蓄積用携帯機と、
前記出入情報蓄積用携帯機に蓄積された前記出入情報を読み取り、この読み取った出入情報の解析結果に基づいて電気錠を施解錠制御する処理装置とを具備したことを特徴とする出入管理システム。
【請求項4】
前記処理装置は、入館時で外部から前記電気錠の解錠を行うときに前記出入情報蓄積用携帯機から読み取った解錠情報と予め記憶された解錠用情報とを比較し、読み取った解錠情報が正当な情報であるか否かを判別し、退館時には前記出入情報蓄積用携帯機から読み取った出入情報と予め記憶された解析情報とを比較して出入情報の解析を行い、解析結果に応じて前記出入情報が正常であるか否かを判別する情報読取器を備えたことを特徴とする請求項3記載の出入管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−139689(P2006−139689A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330639(P2004−330639)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】