説明

分割可能な電極及びこの電極を用いたプラズマ処理装置ならびに電極交換方法

【課題】 プラズマがガス噴出孔を通じて電極のさらに内部に入り込み、電極支持部材をスパッタすることによる金属汚染を防止し、かつ寿命の長い電極を提供すること。
【解決手段】 本発明の電極は、一以上のガス通路孔23aを有する上部板22aと、一以上のガス噴出孔23bを有する下部板22bとを有し、かつ上部板22aと下部板22bを上下に分割可能な構成とすると共に、上部板22aのガス通路孔23a及び下部板22bのガス噴出孔23bの一方又は両方を、その一部又は全部を電極面22sに対して斜めに設けるか、又はその一部を電極面22sに対して平行に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体製造装置、特にプラズマエッチング装置やプラズマCVD装置などのプラズマを用いて被処理体を処理する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造プロセスにおいて、例えば、エッチングを行う際には、プロセスガス(以下、ガスという。)をガス導入機構により処理室内に導入し、プラズマを発生させ、前記プラズマを用いて被処理体であるウエハを処理するプラズマ処理装置が用いられている。
【0003】
プラズマ処理装置、例えば、2つの高周波電源を有する平行平板型プラズマエッチング装置において、ガス導入機構としては、ガス供給源から供給されたガスを、中空部に一旦導入した後、ウエハに対向して設置された一以上のガス噴出孔を有する電極から導入する機構が用いられており、ここで前記ガス噴出孔は、電極面に対して垂直に設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のプラズマ処理装置におけるガス導入機構の電極では、上部電極及び下部電極間に発生したプラズマがガス噴出孔を通じて電極のさらに内部に入り込み、電極支持部材、例えば、アルミニウムからなる冷却板をスパッタし、それが金属汚染の原因となっていた。
【0005】
プラズマがガス噴出孔を通じて電極のさらに内部に入り込むことを防止するために、例えば、特開平9−275093号公報では、ガス噴出孔を前記ガス噴出孔の一方の開口端から他方の開口端を見通せない構造としているが、ガス噴出孔の加工や、電極の寿命で、高コストになる問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明の電極は、一以上のガス通路孔を有する上部板と、一以上のガス噴出孔を有する下部板とからなり、かつ前記上部板と前記下部板とを上下に分割可能な構成とすることで、前記上部板のガス通路孔及び前記下部板のガス噴出孔を別々に加工することができ、加工を高精度で、かつ低コストで行えるようになる。さらに、プラズマによって侵食され易い部分のみ、例えば、前記下部板のみを交換することが可能になり、電極の寿命が従来のものに比して長くなる。
【0007】
また、上部板のガス通路孔及び下部板のガス噴出孔の一方又は両方について、その一部又は全部を電極面に対して斜めに設ける、又はその一部を電極面に対して平行に設けることで、上部電極及び下部電極間に発生したプラズマがガス噴出孔及びガス通路孔を通じて電極のさらに内部に入り込むことを防ぐことができる。このため、プラズマが電極支持部材、例えば、アルミニウムからなる冷却板をスパッタした際に起こる金属汚染を防ぐことができる。
【0008】
また、上部板及び下部板の一方を、他方に対して固定した第1の固定位置からスライドさせ、第2の固定位置で固定可能な構造とすることで、上部板と下部板の接合面付近のプラズマによって侵食され易い部分を変えながら使用可能になり、電極の寿命が従来のものに比して長くなる。
【0009】
また、上部板及び下部板の一方又は両方は、180度反転して、その両面を使用可能としたことで、一方の面をプラズマ発生領域側に向けて使用した後、180度反転して、他方の面をプラズマ発生領域側に向けて使用可能になり、電極の寿命が従来のものに比して長くなる。
【0010】
また、上部板及び下部板の一方又は両方の一部分を、分離可能な構成とすることで、侵食された部分を効率良く交換可能になり、電極の寿命が従来のものに比して長くなる。
【0011】
また、電極は、一以上のガス通路孔を有する上部板と、一以上のガス噴出孔を有し、かつ電極面に対して平行な面となるように削り取られた表面を有する下部板と、一以上のガス通路孔を有し、かつ前記削り取られた表面を有する下部板の削り取られた厚さ分の厚さを持つスペーサとからなり、前記スペーサは、前記上部板及び前記削り取られた表面を有する下部板間、又は電極支持部材及び前記上部板間に挟んで使用可能としたことで、電極部分全体の厚さを変えることなく、下部板の再利用が可能になり、電極の寿命が従来のものに比して長くなる。
【0012】
また、電極は、一以上のガス噴出孔を有し、かつ電極面に対して平行な面となるように削り取られた表面を有する電極と、一以上のガス通路孔を有し、かつ前記削り取られた表面を有する電極の削り取られた厚さ分の厚さを持つスペーサとからなり、前記スペーサは、電極支持部材及び前記削り取られた表面を有する電極間に挟んで使用可能としたことで、電極部分全体の厚さを変えることなく、電極の再利用が可能になり、電極の寿命が従来のものに比して長くなる。
【0013】
また、電極の表面を電極面に対して平行な面となるように削り取る工程と、一以上のガス通路孔を有し、かつ前記削り取る工程により加工された電極の削り取られた厚さ分の厚さを持つスペーサを、電極の一部分として取り付ける工程とを含む方法によりプラズマ処理装置の電極を交換することで、電極部分全体の厚さを変えることなく、電極の再利用が可能になり、電極の寿命が従来のものに比して長くなる。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明からも明らかなように、本発明の上部電極によれば、加工を高精度で、かつ低コストで行えるようになると共に、電極の寿命が従来のものに比して著しく長くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を2つの高周波電源を有する平行平板型プラズマエッチング装置に適用した実施の形態について説明する。
【0016】
図1に示した2つの高周波電源を有する平行平板型プラズマエッチング装置1には、気密に保たれた処理容器2内に、処理室3が形成されていると共に、処理容器2は接地線4によって接地されている。また、処理容器2の底部には、絶縁支持板5が設けられている。そして、ウエハWをゲートバルブ6から搬入して、絶縁支持板5の上部に、ウエハWを載置すると共に、下部電極となるサセプタ7が配置されている。
【0017】
サセプタ7は、絶縁支持板5及び処理容器2の底部を貫く昇降軸8によって昇降自在に支持されている。また、昇降軸8は、処理容器2の外部に設置されている駆動モータ9によって昇降自在な構造となっている。さらに、サセプタ7と絶縁支持板5との間には、昇降軸8の外周を囲むように伸縮自在な気密部材であるベローズ10が設けられており、処理室3を気密に保つように構成されている。
【0018】
また、サセプタ7の内部には、図示しない温度調節機構が設けられていると共に、図示しない温度センサが設けられている。従って、処理時には、サセプタ7を介してウエハWを所定の温度に維持することができる。さらに、サセプタ7上には、ウエハWを吸着保持するための静電チャック11が設けられている。そして、処理容器2の外部に設置された高圧直流電源12から所定の高電圧を静電チャック11に印加すると、クーロン力によりウエハWが静電チャック11上面に吸着して、保持される構成となっている。
【0019】
また、静電チャック11の外周で、かつサセプタ7の周縁を囲む位置には、プラズマ中のエッチャントイオンを効果的にウエハWに入射させるためのフォーカスリング13が配置されている。
【0020】
処理室3の上部には、絶縁支持部材14を介して、例えば、アルミニウムからなる略円盤状の上部電極支持部材15が設けられている。この上部電極支持部材15の内部には、中空部16が形成されており、中空部16には、ガス導入管17が接続されている。さらに、ガス導入管17には、バルブ18及びマスフローコントローラ19を介して、ガス供給源20が接続されている。
【0021】
上部電極支持部材15には、中空部16の下方に対応する位置に、一以上のガス供給孔21が形成されている。さらに、上部電極支持部材15の下面には、上部電極22が密着して取り付けられていると共に、上部電極22はサセプタ7と対向して配置されている。
【0022】
また、上部電極22は、導電性材料、例えば、シリコンからなる略円盤状であると共に、上部板22a及び下部板22bを有し、かつ上下に分割可能な構成となっている。そして、上部板22aには、一以上のガス通路孔23が、また、下部板22bには、一以上のガス噴出孔23bがそれぞれ設けられている。従って、上部板22aのガス通路孔23a及び下部板22bのガス噴出孔23bを別々に加工することができ、加工を高精度で、かつ低コストで行えるようになる。さらに、プラズマによって侵食され易い部分のみ、例えば、下部板22bのみを交換することが可能になり、電極の寿命が従来のものに比して長くなる。
【0023】
さらに、上部電極支持部材15のガス供給孔21に対応する位置には上部板22aのガス通路孔23aが形成されており、上部板22aのガス通路孔23aに対応する位置には下部板22bのガス噴出孔23bが形成されている。従って、ガス供給源20から供給されるガスは、中空部16に一旦導入された後、ガス供給孔21、ガス通路孔23a及びガス噴出孔23bを介して、ウエハW上に均一に供給される。
【0024】
上部電極22の周縁には、シールドリング24が取り付けられている。シールドリング24は、プラズマの拡散を防止し、プラズマ発生領域に所望のプラズマ密度のプラズマを形成するために設けられている。
【0025】
処理容器2の下方壁には、処理室3内のガスを排気するための排気管25が接続されていると共に、この排気管25には、真空引き機構(真空ポンプ)26が接続されている。従って、処理時には、真空引き機構(真空ポンプ)26を作動させることにより、処理室3内を所定の減圧雰囲気に真空引きすることができる。また、排気管25と処理室3とが連通する部分には、スリット状の排気板27が設けられている。
【0026】
また、上部電極22には、上部電極支持部材15及びマッチング回路からなる上部整合器28aを介して、第1高周波電源29aが接続されている。一方、サセプタ7には、マッチング回路からなる下部整合器28bを介して、第2高周波電源29bが接続されている。従って、処理時には、まずサセプタ7上にウエハWを載置し、処理室3内をガスの導入及び真空引きにより所定の減圧雰囲気に保つ。その後、上部電極22に第1高周波電源29aから所定の高周波電力を印加すると、処理室3内にプラズマが励起され、さらに、サセプタ7には、第2高周波電源29bから所定の高周波電力が印加され、励起されたプラズマが効果的にウエハWの被処理面に引き込まれる。その結果、ウエハWに対して、所望のエッチング処理を施すことができる。
【0027】
また、処理容器2の外部には、図示しない光学式表面センサが設けられており、この光学式表面センサは、図示しない発光側光学系及び受光側光学系、CPUで構成されている。従って、発光側光学系より上部電極22に光を照射し、反射した光を受光側光学系で感知して上部電極22の表面状態を検出し、CPUでプラズマによって侵食される前の上部電極22の表面状態と比較することにより、上部電極22の寿命の有無を判断することができる。
【0028】
ここで、上部電極22の表面状態を検出する手段としては、光学式表面センサに限定されるものではない。例えば、電磁式表面センサや、処理時間及び処理回数から上部電極22の寿命を判断する手段のように、上部電極22の寿命を判断できれば、どのような手段でもよい。
【0029】
次に、本発明を適用した上部電極22の取り付けについて説明する。
【0030】
図2に示したプラズマ処理装置30は、上部板22a及び下部板22b、シールドリング24、上部電極用ねじ31a、シールドリング用ねじ31bの取り付け前の状態を示している。
【0031】
上部電極22を取り付ける際には、図2に示した状態から、上部板22a及び下部板22bを、上部電極用ねじ31aにより一緒に上部電極支持部材15に固定する。さらに、上部電極22の周辺をシールドリング24で覆い、シールドリング24を、シールドリング用ねじ31bにより固定する。
【0032】
次に、図1に示した2つの高周波電源を有する平行平板型プラズマエッチング装置1における、破線で囲った部分の上部電極22の詳細な構成について説明する。
【0033】
図3に示した上部電極22の拡大図(図1の破線で囲った部分)は、本発明の第1実施例を示したものであり、上部電極22は、上部板22aと下部板22bとを有し、上部板22aのガス通路孔23aは、それの全部が電極面22sに対して上部板22aの中心に向って斜めに設けられている。ここで、電極面22sは、上部電極22のプラズマ発生領域に面した部分である。従って、上部電極22及びサセプタ7(図1参照)間に発生したプラズマが、下部板22bのガス噴出孔23b及び上部板22aのガス通路孔23aを通じて電極のさらに内部に入り込むことを防ぐことができる。このため、上部電極支持部材15、例えば、アルミニウムからなる冷却板をスパッタした際に起こる金属汚染を防ぐことができる。
【0034】
図4に示した上部電極22の拡大図は、図3に示した第1実施例の上部電極22が、プラズマによって侵食されたときの侵食部分32を黒く塗りつぶして示したものであり、プラズマは、上部板22aのガス通路孔23aの側面23sに当たるため、電極のさらに内部までは入り込まず、侵食部分32は、上部電極支持部材15には至っていない。
【0035】
図5に示した上部電極22の拡大図は、本発明の第2実施例を示したものであり、上部電極22は、上部板22aと下部板22bとを有し、上部板22aのガス通路孔23aは、それの下部板22bに面する部分が電極面22sに対して平行に設けられている。従って、上部電極22及びサセプタ7間に発生したプラズマが、下部板22bのガス噴出孔23b及び上部板22aのガス通路孔23aを通じて電極のさらに内部に入り込むことを防ぐことができる。このため、上部電極支持部材15、例えば、アルミニウムからなる冷却板をスパッタした際に起こる金属汚染を防ぐことができる。
【0036】
また、図5に示した第2実施例の上部電極22は、下部板22bを、上部板22aに対して固定した第1の固定位置から回転によりスライドさせ、第2の固定位置で固定可能な構造としている。従って、プラズマが当たる上部板22aのガス通路孔23aの側面23sの位置を変えることができるので、電極の寿命が従来のものに比して長くなる。
【0037】
図6に示した上部電極22の拡大図は、図5に示した第2実施例の上部電極22が、下部板22bを回転によりスライドさせて変えながら使用したときに、プラズマによって侵食されたときの侵食部分32を黒く塗りつぶして示したものであり、プラズマは、上部板22aのガス通路孔23aの側面23sに当たるため、電極のさらに内部までは入り込まず、侵食部分32は、上部電極支持部材15には至っていないと共に、プラズマが当たる上部板22aのガス通路孔23aの側面23sの位置が変わるので、上部板22aの下部板22bに面する部分のガス通路孔23aの側面23sが複数箇所侵食されている。
【0038】
ここで、上部板22a及び下部板22bの一方を、他方に対して固定した第1の固定位置からスライドさせ、第2の固定位置で固定可能とした構造は、本実施例にかかるものに限定されるものではない。例えば、下部板22bに限定されず、上部板22aを回転によりスライドさせてもよいし、被処理体としてLCD用ガラス基板を用いた場合には、上部板22aの端部に、固定位置や電極の幅を調節するスペーサを挟みながら直線的にスライドさせてもよい。このように、上部板22a及び下部板22bの一方を、他方に対して固定した第1の固定位置からスライドさせ、第2の固定位置で固定可能な構造なら、どのような構造でもよい。
【0039】
図7に示した上部電極22の拡大図は、本発明の第3実施例を示したものであり、上部電極22は、上部板22aと下部板22bとを有し、上部板22aのガス通路孔23aは、それの上部電極支持部材15に面する部分及び下部板22bに面する部分が電極面22sに対して平行に設けられている。従って、上部電極22及びサセプタ7間に発生したプラズマが、下部板22bのガス噴出孔23b及び上部板22aのガス通路孔23aを通じて電極のさらに内部に入り込むことを防ぐことができる。このため、上部電極支持部材15、例えば、アルミニウムからなる冷却板をスパッタした際に起こる金属汚染を防ぐことができる。
【0040】
また、図7に示した第3実施例の上部電極22は、下部板22bを、上部板22aに対して固定した第1の固定位置から回転によりスライドさせ、第2の固定位置で固定可能な構造としていると共に、上部板22aは、180度反転して、その両面を使用可能としている。従って、プラズマが当たる上部板22aのガス通路孔23aの側面23sの位置を変えることができると共に、上部板22aの一方の面をプラズマ発生領域側に向けて使用した後、上部板22aを180度反転して、他方の面をプラズマ発生領域側に向けて使用することができるので、電極の寿命が従来のものに比して著しく長くなる。
【0041】
図8に示した上部電極22の拡大図は、図7に示した第3実施例の上部電極22が、上部板22aの一方の面をプラズマ発生領域側に向けて、下部板22bを回転によりスライドさせて変えながら使用した後、上部板22aを180度反転して、他方の面をプラズマ発生領域側に向けて使用したときに、プラズマによって侵食されたときの侵食部分32を黒く塗りつぶして示したものであり、プラズマは、上部板22aのガス通路孔23aの側面23sに当たるため、電極のさらに内部までは入り込まず、侵食部分32は、上部電極支持部材15には至っていないと共に、プラズマが当たる上部板22aのガス通路孔23aの側面23sの位置が変わり、上部板22aを180度反転させるので、上部板22aの上部電極支持部材15に面する部分のガス通路孔23aの側面23sが複数箇所侵食されている。
【0042】
ここで、上部板22a及び下部板22bの一方又は両方は、180度反転して、その両面を使用可能としたものは、本実施例にかかるものに限定されるものではない。例えば、電極面22sに対して垂直にガス噴出孔23bが設けられた下部板22bでもよいし、図3に示した第1実施例の上部板22aのようにガス通路孔23aの全部が電極面22sに対して斜めに設けられているものでもよい。このように、上部板22a及び下部板22bの一方又は両方は、180度反転して、その両面を使用可能としたものなら、どのようなものでもよい。
【0043】
図9に示した上部電極22の拡大図は、本発明の第4実施例を示したものであり、上部電極22は、上部板22aと下部板22bとを有し、上部板22aのガス通路孔23aの下部板22bに面する部分が電極面22sに対して平行に設けられていると共に、平行に設けられた部分のガス通路孔23aの側面23sに沿った上部板22aの一部分を、分離可能な、例えば、シリコンからなるカートリッジ33で構成している。従って、上部電極22及びサセプタ7間に発生したプラズマが、下部板22bのガス噴出孔23b及び上部板22aのガス通路孔23aを通じて電極のさらに内部に入り込むことを防ぐことができる。このため、上部電極支持部材15、例えば、アルミニウムからなる冷却板をスパッタした際に起こる金属汚染を防ぐことができる。また、プラズマによって侵食された部分を効率良く交換することが可能になり、電極の寿命が従来のものに比して長くなる。
【0044】
また、図9に示した第4実施例の上部電極22は、下部板22bを、上部板22aに対して固定した第1の固定位置から回転によりスライドさせ、第2の固定位置で固定可能な構造としている。従って、プラズマが当たる上部板22aのガス通路孔23aの側面23sの位置を変えることができるので、電極の寿命が従来のものに比して長くなる。
【0045】
ここで、上部板22a及び下部板22bの一方又は両方の一部分を、分離可能とした構成は、本実施例にかかるものに限定されるものではない。例えば、カートリッジ33を下部板22bのプラズマ発生領域側に面した部分に設けてもよい。このように、プラズマによって侵食され易い上部板22a及び下部板22bの一方又は両方の一部分を、分離可能とした構成としたものなら、どのような構成でもよい。
【0046】
図10に示した上部電極22の拡大図は、本発明の第5実施例を示したものであり、図4に示したプラズマによって侵食された上部電極22において、プラズマによって侵食された下部板22bの一部を、プラズマによって侵食される前の電極面22sに対して平行な面となるように下部板22bの表面を研磨して削り取り、上部板22a及び下部板22bは180度反転し、削り取られた表面を有する下部板22bの削り取られた厚さ分の厚さを持つ、例えば、シリコンからなるスペーサ34を、上部板22a及び削り取られた表面を有する下部板22b間に挟んだ状態を示している。従って、上部電極部分全体の厚さを変えることなく、下部板22bの再利用が可能になり、電極の寿命が従来のものに比して長くなる。
【0047】
ここで、下部板22bの表面を電極面22sに対して平行な面となるように削り取る方法は、研磨に限定されるものではない。例えば、切断でもよい。このように、下部板22bの表面を電極面22sに対して平行な面となるように削り取る方法なら、どのような方法でもよい。
【0048】
図11に示した上部電極22の拡大図は、本発明の第6実施例を示したものであり、プラズマによって侵食された従来の上部電極において、プラズマによって侵食された従来の上部電極の一部を、プラズマによって侵食される前の電極面22sに対して平行な面となるように従来の上部電極の表面を研磨して削り取り、削り取られた表面を有する従来の上部電極の削り取られた厚さ分の厚さを持つ、例えば、シリコンからなるスペーサを、上部電極支持部材15及び削り取られた表面を有する従来の上部電極間に挟んだ状態を示している。従って、上部電極部分全体の厚さを変えることなく、従来の上部電極の再利用が可能になり、電極の寿命が従来のものに比して長くなる。
【0049】
ここで、図11においては、削り取られた従来の上部電極は下部板22bとして、スペーサは上部板22aとして示されている。
【0050】
ここで、従来の上部電極の表面を電極面22sに対して平行な面となるように削り取る方法は、研磨に限定されるものではない。例えば、切断でもよい。このように、従来の上部電極の表面を電極面22sに対して平行な面となるように削り取る方法なら、どのような方法でもよい。
【0051】
次に、上部板22a及び下部板22bの一方を、他方に対して固定した第1の固定位置からスライドさせ、第2の固定位置で固定可能な構造としたときの上部板22aについて説明する。
【0052】
図12に示した上部板22aは、図5に示した第2実施例の上部板22aの全体をプラズマ発生領域側から見た場合を示した平面図であり、ガス通路孔23aは、第1の固定位置から回転により円周方向にスライドさせ、第2の固定位置で固定可能なように、下部板22bに面する部分が同心円上に略円弧状(スリット)に設けられていると共に、180度反転して、その両面を使用可能なように、中心点対称に設けられている。
【0053】
ここで、上部板22a及び下部板22bの一方を、他方に対して固定した第1の固定位置からスライドさせ、第2の固定位置で固定可能な構造としたときの上部板22aは、かかるものに限定されるものではない。例えば、被処理体としてLCD用ガラス基板を用いた場合、上部板22aの端部に、固定位置や電極の幅を調節するスペーサを挟みながら直線的にスライドさせるには、ガス通路孔23aは、下部板22bに面する部分を略直線状に設ければよい。このように、上部板22a及び下部板22bの一方を、他方に対して固定した第1の固定位置からスライドさせ、第2の固定位置で固定可能な構造としたときの上部板22aなら、どのようなものでもよい。
【0054】
以上、本発明の実施の形態において、本発明を2つの高周波電源を有する平行平板型プラズマエッチング装置に適用した実施の形態について説明したが、本発明はかかる装置に限定されるものではない。本発明は、各種プラズマ処理装置に対しても適用することが可能であると共に、被処理体としてウエハにかえて、例えば、LCD用ガラス基板を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明を適用した2つの高周波電源を有する平行平板型プラズマエッチング装置の縦断面図である。
【図2】本発明を適用した上部電極を取り付ける前の状態のプラズマ処理装置を示した斜視図である。
【図3】図1に示した2つの高周波電源を有する平行平板型プラズマエッチング装置における、本発明の第1実施例を示した上部電極(図1において破線で囲まれた部分)の拡大図である。
【図4】図3に示した上部電極が、プラズマによって侵食されたときの上部電極の拡大図である。
【図5】図1に示した2つの高周波電源を有する平行平板型プラズマエッチング装置における、本発明の第2実施例を示した上部電極の拡大図である。
【図6】図5に示した上部電極が、下部板22bを回転によりスライドさせて変えながら使用したときの上部電極の拡大図である。
【図7】図1に示した2つの高周波電源を有する平行平板型プラズマエッチング装置における、本発明の第3実施例を示した上部電極の拡大図である。
【図8】図7に示した上部電極が、下部板22bを回転によりスライドさせて変えながら使用した後、上部板を180度反転して使用したときの上部電極の拡大図である。
【図9】図1に示した2つの高周波電源を有する平行平板型プラズマエッチング装置における、本発明の第4実施例を示した上部電極の拡大図である。
【図10】図1に示した2つの高周波電源を有する平行平板型プラズマエッチング装置における、本発明の第5実施例を示した上部電極の拡大図である。
【図11】図1に示した2つの高周波電源を有する平行平板型プラズマエッチング装置における、本発明の第6実施例を示した上部電極の拡大図である。
【図12】図5に示した第2実施例の上部板の全体をプラズマ発生領域側から見た場合を示した平面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 平行平板型プラズマエッチング装置
2 処理容器
3 処理室
4 接地線
5 絶縁支持板
6 ゲートバルブ
7 サセプタ(下部電極)
8 昇降軸
9 駆動モータ
10 ベローズ
11 静電チャック
12 高圧直流電源
13 フォーカスリング
14 絶縁支持部材
15 上部電極支持部材
16 中空部
17 ガス導入管
18 バルブ
19 マスフローコントローラ
20 ガス供給源
21 ガス供給孔
22 上部電極
22a 上部板
22b 下部板
22s 電極面
23a ガス通路孔
23b ガス噴出孔
23s ガス通路孔の側面
24 シールドリング
25 排気管
26 真空引き機構(真空ポンプ)
27 排気板
28a 上部整合器
28b 下部整合器
29a 第1高周波電源
29b 第2高周波電源
30 プラズマ処理装置
31a 上部電極用ねじ
31b シールドリング用ねじ
32 侵食部分
33 カートリッジ
34 スペーサ
W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密に保たれた処理容器内に配置され、被処理体を載置する載置台と、前記載置台に対向して配置された一以上のガス噴出孔を有する電極とを備えたプラズマ処理装置において、
前記電極が、一以上のガス噴出孔を有し、かつ電極面に対して平行な面となるように削り取られた表面を有する電極と、
一以上のガス通路孔を有し、かつ前記削り取られた表面を有する電極の削り取られた厚さ分の厚さを持つスペーサとからなり、
前記スペーサが、電極支持部材及び前記削り取られた表面を有する電極間に挟まれて使用可能としたことを特徴とする電極。
【請求項2】
気密に保たれた処理容器内に配置され、被処理体を載置する載置台と、前記載置台に対向して配置された一以上のガス噴出孔を有する電極とを備えたプラズマ処理装置において、
前記電極が、一以上のガス噴出孔を有し、かつ電極面に対して平行な面となるように削り取られた表面を有する電極と、
一以上のガス通路孔を有し、かつ前記削り取られた表面を有する電極の削り取られた厚さ分の厚さを持つスペーサとからなり、
前記スペーサが、電極支持部材及び前記削り取られた表面を有する電極間に挟まれて使用可能としたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
プラズマ処理装置の処理室内に、プロセスガスを導入する一以上のガス噴出孔を有する電極を交換する方法において、
前記電極の表面を電極面に対して平行な面となるように削り取る工程と、
一以上のガス通路孔を有し、かつ前記削り取る工程により加工された電極の削り取られた厚さ分の厚さを持つスペーサを、電極の一部分として取り付ける工程と、を含むことを特徴とするプラズマ処理装置の電極を交換する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−49567(P2011−49567A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208875(P2010−208875)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【分割の表示】特願2001−39749(P2001−39749)の分割
【原出願日】平成13年2月16日(2001.2.16)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】