説明

制振ワッシャ

【課題】弾性率選定等の設計自由度が広く、インジェクターの支持部のように繰り返し振動荷重が負荷される部分での応用適性に優れた制振ワッシャを提供する。
【解決手段】荷重が負荷される2つの部材1,2の対向する2平面間1b,2aに挟装される制振ワッシャであって、環状に形成された弾性板材4とゴム又は樹脂からなる制振基材層5とを一体とした環状複合体6からなり、上記弾性板材4は、上記荷重が負荷される方向aに賦形された起伏形状部4a,4b,4cを含み、且つ周方向に沿って複数の透孔4dを備え、上記弾性板材4は、その板面の一部が制振基材層5より露出乃至は制振基材層5の薄膜で覆われると共に上記透孔4d内に制振基材層5が係入した状態で制振基材層5に埋入されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エンジン等の内燃機関における直噴式の燃料噴射装置(インジェクター)をシリンダヘッドにおいて支持する部分に挟装される制振ワッシャに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジンにおいては、ロッカーカバーやオイルパン等のカバー部材のシリンダヘッド或いはシリンダブロックに対するボルトによる取付部にシールワッシャが挟装される。また、シリンダヘッドにインジェクターをその燃料噴射口が燃焼室に臨むよう支持し、この支持部分には燃焼ガスの外部への漏出を防止するシールワッシャが挟装される。これらのシールワッシャは、挟装部をシールすると共に、防音防振効果が期待されるものであり、特許文献1及び特許文献2には、このようなシール部材としてのシールワッシャが開示されている。特許文献1及び特許文献2に開示されたシールワッシャは、いずれも金属製のバネ性芯材にゴム等の弾性材を一体としたものであり、長期にわたりシール性及び防振性を維持し得るものである。特に、特許文献2のシールワッシャは、エンジンヘッド部の2平面間の隙間に挟装されるもので、インジェクター自体が燃焼圧の影響で軸方向上下に振動することによる上記隙間の広狭変動に対する追随性を維持し、長期間にわたりシールできるものとされている。
【0003】
また、特許文献3には、金網の空隙をゴムで充填した複合材料シートからなるインジェクター用ガスケットが開示されている。
【特許文献1】実開昭63−158615号公報
【特許文献2】特開2004−36775号公報
【特許文献3】特開2006−71023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2のシールワッシャは、シール部(リップ部)のつぶし代範囲とバネ性芯材(ワッシャ座金)のU字状曲折部とにより上記隙間の広狭変動に追随させんとするもので、その変形幅が大きいことから、隙間の広狭変動が大きくてもシール性の維持が図られる。而して、これらの場合、荷重を受ける部分にゴムが介在する為、ゴムのへたりが発生し軸力の低下が起こる。また、特許文献3に開示されたインジェクター用ガスケットは、ゴムが金網の空隙に充填されるから、金網の担持力によりそのへたりが抑えられるが、荷重方向に対する金網の弾性範囲が狭く制振機能を高めるには、上記シートを複数枚重ねることが必要となる。そして、これら特許文献1〜3に開示されたシールワッシャ或いはインジェクター用ガスケットにおいては、制振機能を担う弾性率が、バネ性芯材或いは金網の仕様(芯材の板厚、曲げ加工態様、金網の線径、編み方等)に大きく依存する為、その弾性率選定等の設計自由度が狭く、上記のような制振ワッシャへの応用には、一層の改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記のような実情に鑑みなされたもので、弾性率選定等の設計自由度が広く、インジェクターの支持部のように繰り返し振動荷重が負荷される部分での応用適性に優れた制振ワッシャを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る制振ワッシャは、荷重が負荷される2つの部材の対向する2平面間に挟装される制振ワッシャであって、環状に形成された弾性板材とゴム又は樹脂からなる制振基材層とを一体とした環状複合体からなり、上記弾性板材は、上記荷重が負荷される方向に賦形された起伏形状部を含み、且つ周方向に沿って複数の透孔を備え、上記弾性板材は、その板面の一部が制振基材層より露出乃至は制振基材層の薄膜で覆われると共に上記透孔内に制振基材層が係入した状態で制振基材層に埋入されていることを特徴とする。
【0007】
本発明において、前記弾性板材は、内周側部分及び外周側部分の段違い状平板部と、両平板部を繋ぐ傾斜板部とよりなる皿ばね状部材からなり、上記段違い状平板部と傾斜板部とにより前記起伏形状部が形成されるよう構成されたものとすることができる。また、前記弾性板材は、平板部と山形状部とよりなり、この平板部と山形状部とにより前記起伏形状部が形成されるよう構成されたものとすることもできる。この場合、前記山形状部が、前記弾性板材の周方向に沿って連続的な突条体や、複数の不連続山部からなるものとすることができる。更に、前記弾性板材は、山部と谷部とが周方向に繰り返す波形部材からなり、前記起伏形状部が、この山部と谷部とにより形成されるよう構成されたものとすることもできる。
【0008】
また、前記透孔は、円形であって周方向に等間隔で形成されているもの、或いは、矩形状であって周方向に等間隔且つ周方向に配向するよう形成されているものとすることができる。更に、前記環状複合体の外周部の少なくとも前記2平面に対面する部位には金属製リング部材が一体とされているものとしても良い。そして、前記環状複合体の内周部に、前記制振基材層によるグロメット部が形成されているものとしても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る制振ワッシャは、インジェクターのような振動する装置を支持する部位、即ち、荷重が負荷される2つの部材の対向する2平面間にこれを挟装するよう用いれば、弾性板材とこれに一体とされたゴム又は樹脂からなる制振基材層との相乗作用によって、振動が吸収され、振動による異音発生が抑制される。また、制振基材層内に埋入された状態の弾性板材と制振基材層とが相乗したゴム弾性又は樹脂特有の弾性作用により、挟装時の2平面間の相互の面圧が発現し、そのシール性が得られる。しかも、弾性板材は、その板面の一部がエラストマー層より露出乃至は制振基材層の薄膜で覆われているから、上記荷重の弾性板材に負荷される割合が大きく、制振基材層のへたりが大幅に軽減され、長く振動吸収機能及びシール性が維持される。更に、透孔内に制振基材層の一部が係入し、そのアンカー効果により、弾性板材と制振基材層との強固な一体化が図られる。そして、弾性板材に形成される透孔の大きさ及び数を変えることにより、弾性板材と制振基材層とが複合した環状複合体の弾性率(ばね定数)の適宜選定が可能となり、設計自由度が広がり、インジェクターの支持部のように振動荷重の負荷態様が多様な部分での応用適性が増大する。
【0010】
前記弾性板材を、内周側部分及び外周側部分の段違い状平板部と、両平板部を繋ぐ傾斜板部とよりなる皿ばね状部材からなるもの、或いは、平板部と山形状部とよりなるもの、更には、山部と谷部とが周方向に繰り返す波形部材からなるものとすれば、これらの形状的特性に応じた、環状複合体の弾性率の適宜選定が可能となり、より設計自由度が広がる。平板部と山形状部とよりなるものとする場合は、山形状部を連続的なものとするか不連続なものとするかによっても、弾性率の多様な設定が可能となる。更に、弾性板材の弾性を担う主たる部位としてのこれら起伏形状部と、透孔の形成態様とが密接に関連して、弾性板材の弾性率に大きく影響し、薄型でありながら、環状複合体の弾性率の選定可変範囲がより広くなる。
【0011】
また、前記透孔として、円形或いは矩形状であって周方向に等間隔で形成されているものとすれば、その形成が簡易であると共に、周方向に沿った均等な弾性率の発現を可能とし、後者の場合、周方向に配向するよう形成されているものとすれば、透孔の形成面積を大きく確保することができ、弾性率の選定自由度がより広がることになる。
【0012】
前記環状複合体の外周部の少なくとも前記2平面に対面する部位に金属製リング部材を一体としたものとすれば、高い反発力により高周波域での振動にも優れた制振性が得られる。更に、前記環状複合体の内周部に、前記制振基材層によるグロメット部が形成されているものとすれば、荷重が負荷される2つの部材の対向する2平面間に挟装した場合、このグロメット部の圧縮弾性変形により、シール性がより向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の最良の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は本発明の制振ワッシャの一実施形態を示す平面図、図2は図1におけるX−X線矢視断面図、図3は同制振ワッシャを介してシリンダヘッドにインジェクターを支持させた状態を示す縦断面図、図4は他の実施形態の図1と同様図、図5〜図9は更に他の実施形態の図2と同様図である。
【0014】
図3は、エンジン等の内燃機関のシリンダヘッド1に、本発明の制振ワッシャ3を介してインジェクター2を支持した状態を示し、白抜矢示方向先側が燃料の噴射口であり、この噴射口が燃焼室(不図示)に臨むものである。尚、インジェクター2の内部には、燃料の流通管路等が形成されるが、図では便宜上この図示を省略している。インジェクター2は途中に段差部2aを有する円柱形であり、シリンダヘッド1に形成された支持孔1aに挿入され、支持孔1a周囲の肩部1bに制振ワッシャ3を介して段差部2aを担持させることによりシリンダヘッド1に支持される。従って、肩部1bと、段差部2aとが、制振ワッシャ3が挟装される2つの部材(シリンダヘッド1及びインジェクター2)の対向する2平面とされる。
【0015】
インジェクター2は、燃料噴射時には、その噴射動作に伴い白抜矢示方向(荷重負荷方向)a及びその反方向に振動を繰り返す。従って、上記2平面1b、2a間では、その振動に伴う衝撃音が発生し、エンジン駆動時の騒音の一因となる。然るに、この2平面1b、2a間には、制振ワッシャ3が挟装されるから、制振ワッシャ3によってその振動が抑えられ、騒音の発生が抑制される。この制振ワッシャ3の構成について、以下にその詳細を述べる。
【0016】
図1乃至図3に示すように、本実施形態の制振ワッシャ3は、環状に形成された皿ばね状弾性板材4とゴム又は樹脂からなる制振基材層5とを一体とした環状複合体6からなる。この弾性板材4は、金属板を打抜きプレス加工したものであり、内周側部分及び外周側部分に段違い状に形成された環状平板部4a,4bと、両平板部4a,4bを繋ぐ環状傾斜板部4cとよりなる皿ばね形状とされ、段違い状平板部4a,4bと、傾斜板部4cとにより起伏形状部が賦形形成され、複数の円形の透孔4d…が両平板部4a,4bに跨るよう周方向に沿って傾斜板部4cに形成されている。両平板部4a,4bの片面(前記2平面1b、2a側の面)は、図例では制振基材層5の薄膜(厚みd;数μm〜50μm)で覆われているが、露出していても良い。そして、弾性板材4は、略全体が制振基材層5内に埋入された状態とされ、各透孔4d…内には制振基材層5が係入している。このように、両平板部4a,4bの2平面1b、2aに対面する側の面が制振基材層5より露出乃至は制振基材層5の薄膜で覆われているから、2平面1b、2aと直接若しくは制振基材層5の薄膜を介して接し、この部分では弾性板材4に対して負荷される荷重の割合が大きくなる。また、傾斜板部4cは制振基材層5内に埋入した状態であるから、弾性板材4に対する荷重の負荷は制振基材層5を介してなされる。環状複合体6の内周部には、制振基材層5によるグロメット部5aが厚み方向両側(前記2平面1b、2a側)に突出する山形ビード状に形成されている。
【0017】
本発明において、制振基材層5を構成するゴム又は樹脂としては、ゴム状の弾性体を意味する広義のエラストマー(ゴム及び熱可塑性エラストマーが含まれる)や樹脂が対象とされる。ゴムとしては、FKM、NBR、H−NBR、EPDM、CR、ACM、AEM、VMQ及びFVMQ等のゴム材が用いられる。また、熱可塑性エラストマー(以下、TPEという)としては、塩素化ポリエチレン系TPE、官能基付与型スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー、ランダムタイプの水素添加型スチレン−ブタジエンコポリマー、イソブラント化ポリオレフィン系TPE、シンジオタクチック−1,2ポリブタジエン系TPE、スチレン系TPE、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロックコポリマー、スチレン−イソブチレン−スチレンブロックコポリマー、ブレンド型ポリオレフィン系TPE、ポリアミド系TPE、ポリエステル系TPE、トランス−1,4ポリイソプレン系TPE、天然ゴム系TPE、ポリオレフィン系TPE、ポリウレタン系TPE、動的加硫型ポリオレフィン系TPE、ポリ塩化ビニル系TPE等のTPE材が用いられる。更に、樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン;テフロン樹脂(登録商標))、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエチレンエーテルケトン)、PA(ナイロン;ポリアミド)等の樹脂材が用いられる。制振基材層5は、これらのゴム材、TPE材或いは樹脂材をベースとして形成され、環状に形成された上記コイルスプリング4及び円環状金属板7を所定の金型(不図示)内に配し、未加硫或いは未硬化の上記ゴム材、TPE材或いは樹脂材を金型のキャビティ内に注入して加硫或いは硬化させることにより、環状複合体6と円環状金属板7とが一体とされた制振ワッシャ3が得られる。この成型の際に、上記平板部4a,4bの2平面1b、2aに対面する側の面にゴム材、TPE材或いは樹脂材が回り込み、上記厚みdの制振基材層5の薄膜が不可避的に形成される。この薄膜を除去して、平板部4a,4bの上記片面を制振基材層5より露出させても良いが、図のように残した状態で使用しても、へたり等の悪影響を生じることがない。尚、上記厚みdが50μmを超えると、制振基材層5のへたりが生じ易くなる。
【0018】
上記制振ワッシャ3は、図3に示すように、エンジン等の内燃機関のシリンダヘッド1にインジェクター2を支持する部位に挟装される。この挟装状態ではグロメット部5aが圧縮弾性変形(図3の拡大部分参照)し、その復元弾力に伴う弾性面圧によって、支持孔1a内の燃焼ガスの漏出が阻止される。また、インジェクター2の噴射動作に伴う白抜矢示方向aの振動荷重は、2平面1b、2aを介して環状複合体6に負荷される。この負荷は、弾性板材4の両平板部4a,4bを繋ぐ傾斜板部4cを圧偏する方向及び制振基材層5の厚み方向に作用し、その複合した弾性によって吸収され、振動が抑えられて騒音の発生が抑制される。特に、環状複合体6は、弾性板材4の傾斜板部4cによる弾性と制振基材層5の厚み方向の弾性とが複合した弾性を発現するから、弾性板材4のみに依存しないばね定数の小さな構造の弾性体とされる。
【0019】
環状複合体6は、弾性板材4と制振基材層5との一体化により、安定な変形が得られ、ゴム状弾性或いは樹脂特有の弾性と減衰性とが相乗し優れた制振効果を発揮する。また、ゴム材、TPE材或いは樹脂材の使用により、シール機能の為のグロメット部5aの形成が容易であり、図3に示すようなインジェクター2の支持部に用いれば、支持孔1aからの燃焼ガスの漏出阻止も確実になされる。そして、弾性板材4の復元弾力により、制振基材層5のへたりが抑えられるから、長く振動吸収機能及びシール性が維持される。しかも、弾性板材4は、周方向に複数の透孔4d…を備えているから、弾性板材4の一部のみが荷重を受ける構造となり、これによって、環状複合体6のばね定数の設定がし易く、使用条件に応じた設計自由度が広くなる。また、両平板部4a,4bの片面が制振基材層5より露出乃至は制振基材層5の薄膜で覆われるよう構成されるから、この両平板部4a,4bの片面により荷重の多くを受けることになり、制振基材層5のへたり抑止効果が助長される。弾性板材4と一体とされる制振基材層5は、上記透孔4d…内に係入し、そのアンカー効果により強固な一体化が図られ、薄型でありながら、ばね定数が小さく、耐久性の優れた制振ワッシャ3が得られる。
【0020】
図4は、本発明の制振ワッシャの別の実施形態を示す。図4の制振ワッシャ3においては、透孔4d…の形状が矩形状である点で上記と異なる。図例では各辺が直線状の略台形状であることを示しているが、曲線状の各辺による矩形状であっても良い。また、この矩形状の透孔4d…は、周方向に傾いた状態、即ち同一周方向に配向した状態で且つ等間隔に形成されている。上記実施形態のように透孔4dを円形とする場合は、パンチング治具として汎用のものが使用できるので加工に有利であるが、透孔4dを本実施形態のような形成態様にすれば、その形成面積を大きく確保し易く、これにより、弾性板材4の弾性率の選定自由度がより広がる。その他の構成は上記と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、その説明を割愛する。
【0021】
図5〜図9は更に別の実施形態を示す。図5に示す制振ワッシャ3では、上記同様の複合環状体6の上下両面(前記2平面1b,2aに対面する部位)に、円環状金属板(金属製リング部材)7が一体とされている。その他の構成は上記と同様である。このような制振ワッシャ3も、図3に示すように、エンジン等の内燃機関のシリンダヘッド1にインジェクター2を支持する部位に挟装される。この挟装状態では上記同様グロメット部5aが圧縮弾性変形し、その復元弾力に伴う弾性面圧よって、支持孔1a内の燃焼ガスの漏出が阻止される。また、インジェクター2の噴射動作に伴う白抜矢示方向aの振動荷重は、円環状金属板7を介して環状複合体6に負荷される。従って、円環状金属板7に荷重が直接負荷されることになるから、耐荷重が大となる。そして、この負荷は、弾性板材4の傾斜板部4cを圧偏する方向及び制振基材層5の厚み方向に作用し、その複合した弾性によって吸収され、振動が抑えられて騒音の発生が抑制される。尚、図5では弾性板材4の段違い状平板部4a,4bの上下両面に円環状金属板7が密着的に一体とした例を示しているが、円環状金属板7とこの平板部4a,4bとの間に制振基材層5による薄膜が介在されていても良い。
この実施形態は、図1乃至図4に示すいずれの実施形態にも適用される。また、その他の構成は上記と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその説明を割愛する。
【0022】
図6に示す制振ワッシャ3は、前記弾性板材4が、内外周部に位置する平板部4eと弾性板材4の周方向に沿って連続的な突条体の山形状部4fとよりなり、この平板部4eと山形状部4fとにより前記起伏形状部が形成され、山形状部4fに、内外周部の平板部4eに跨る状態で透孔4dが形成されている。弾性板材4は、上記同様制振基材層5に略全体が埋入された状態で一体化され、環状複合体6が構成される。平板部4eの下面(シリンダヘッド1の肩部1b側の面)と、山形状部4fの頂面(インジェクター2の段差部2a側の面)は、制振基材層5より露出乃至は制振基材層5の薄膜で覆われるよう構成されている。また、環状複合体6の上下両面には、円環状金属板7が一体とされている。従って、図3のような使用状態においては、円環状金属板7に荷重が直接負荷されることになるから、耐荷重が大となる。そして、この負荷は、弾性板材4の山形状部4fを圧偏する方向及び制振基材層5の厚み方向に作用し、上記同様その複合した弾性によって吸収され、振動が抑えられて騒音の発生が抑制される。
【0023】
図7に示す制振ワッシャ3は、図6の例の変形例であって、弾性板材4が周方向に沿って連続的な2条の同心状突条体からなる山形状部4fを備え、その内外周部及び両山形状部4f間に平板部4eが形成されたものである。3条の平板部4eと2条の山形状部4fとにより起伏形状部が形成され、各山形状部4fに、両側の平板部4eに跨る状態で透孔4dが形成されている。弾性板材4は、上記同様制振基材層5に略全体が埋入された状態で一体化されて環状複合体6が構成される。平板部4eの下面と、山形状部4fの頂面は、制振基材層5より露出乃至は制振基材層5の薄膜で覆われるよう構成されている。また、環状複合体6の上下両面には、円環状金属板7が一体とされている。このように、2条の山形状部4fを形成することにより、環状複合体6の弾性率の設定自由度がより広くなる。
【0024】
図8に示す制振ワッシャ3は、図6の例の更に別の変形例であって、上記山形状部4fが、複数の不連続山部からなる。即ち、弾性板材4の平板部4eに、その周方向に沿って複数の山部を独立的に賦形形成して山形状部4fとなし、この複数の山部からなる山形状部4fとその周辺部の平板部4eとにより起伏形状部が形成され、各山形状部4fに、両側の平板部4eに跨る状態で透孔4dが形成されている。この山形状部4fは、周方向に1列に配列されているものに限らず、複数列に配列されているものであっても良い。その他の構成は、図6、図7に示す例と同様である。このように、複数の山形状部4fを形成するようにすれば、その個数等の適宜等により、環状複合体6の弾性率の設定変更が可能となり、その設計自由度がより広くなる。
図6〜図8に示す実施形態の他の構成は上記と同様であるので、共通部分に同様の符号を付し、その説明を割愛する。
【0025】
図9に示す制振ワッシャ3は、前記弾性板材4が、山部4gと谷部4hとが繰り返す波形部材からなり、前記起伏形状部が、この山部4gと谷部4hとにより形成され、山部4gに透孔4dが形成されている。弾性板材4は、上記同様エラストマー層5に略全体が埋入された状態で一体化されて環状複合体6が構成される。谷部4hの下面(シリンダヘッド1の肩部1b側の面)と、山部4gの頂面(インジェクター2の段差部2a側の面)は、制振基材層5より露出乃至は制振基材層5の薄膜で覆われるよう構成されている。また、環状複合体6の上下両面には、円環状金属板7が一体とされている。従って、図3のような使用状態においては、円環状金属板7に荷重が直接負荷されることになるから、耐荷重が大となる。この負荷は、弾性板材4を圧偏する方向及び制振基材層5の厚み方向に作用し、上記同様その複合した弾性によって吸収され、振動が抑えられて騒音の発生が抑制される。この場合、弾性板材4はウエーブワッシャ状の形状をなすから、その特有のばね特性と制振基材層5との相乗した弾性によって、優れた制振機能が発現される。そして、透孔4dの形成態様と関連付けて、環状複合体6の弾性率の設定が適宜なし得る点は上記と同様である。その他の構成は上記各実施形態と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその説明を割愛する。
【0026】
尚、本発明の制振ワッシャは、インジェクターの支持部に用いればその制振・防音効果により、自動車のエンジンにおける騒音低減化に大きく寄与するので、この分野での応用が特に望ましいが、これに限らず、その他の振動発生部位にも用いれば同様の効果を得ることができる。また、透孔4dとして、形状が円形及び台形状のものについて例示したが、長方形、正方形、その他の多角形、長円形、楕円形等であっても良い。更に、図6〜図9に示す実施形態において、環状複合体6の両面に円環状金属板7を一体とした例を示したが、円環状金属板7を設けるか否かは、適用条件に応じて適宜設定される。加えて、透孔4dの形成位置は図示の位置に限らず、例えば平板部や谷部であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の制振ワッシャの一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1におけるX−X線矢視断面図である。
【図3】同制振ワッシャを介してシリンダヘッドにインジェクターを支持させた状態を示す縦断面図である。
【図4】他の実施形態の制振ワッシャを示す図1と同様図である。
【図5】更に他の実施形態の制振ワッシャを示す図2と同様図である。
【図6】更に他の実施形態の制振ワッシャを示す図2と同様図である。
【図7】図6の実施形態の変形例を示す図2と同様図である。
【図8】図6の実施形態の別の変形例を示す図2と同様図である。
【図9】更に他の実施形態の制振ワッシャを示す図2と同様図である。
【符号の説明】
【0028】
1 シリンダヘッド(部材)
1b 肩部(平面)
2 インジェクター(部材)
2a 段差部(平面)
3 制振ワッシャ
4 弾性板材
4a 内周側部分の環状平板部(起伏形状部)
4b 外周側部分の環状平板部(起伏形状部)
4c 環状傾斜板部(起伏形状部)
4d 透孔
4e 平板部(起伏形状部)
4f 山形状部(起伏形状部)
4g 山部(起伏形状部)
4g 谷部(起伏形状部)
5 制振基材層
5a グロメット部
6 環状複合体
7 円環状金属板(金属製リング部材)
a 荷重負荷方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重が負荷される2つの部材の対向する2平面間に挟装される制振ワッシャであって、
環状に形成された弾性板材とゴム又は樹脂からなる制振基材層とを一体とした環状複合体からなり、上記弾性板材は、上記荷重が負荷される方向に賦形された起伏形状部を含み、且つ周方向に沿って複数の透孔を備え、上記弾性板材は、その板面の一部が制振基材層より露出乃至は制振基材層の薄膜で覆われると共に上記透孔内に制振基材層が係入した状態で制振基材層に埋入されていることを特徴とする制振ワッシャ。
【請求項2】
請求項1に記載の制振ワッシャにおいて、
前記弾性板材が、内周側部分及び外周側部分の段違い状平板部と、両平板部を繋ぐ傾斜板部とよりなる皿ばね状部材からなり、上記段違い状平板部と傾斜板部とにより前記起伏形状部が形成されることを特徴とする制振ワッシャ。
【請求項3】
請求項1に記載の制振ワッシャにおいて、
前記弾性板材が、平板部と山形状部とよりなり、この平板部と山形状部とにより前記起伏形状部が形成されることを特徴とする制振ワッシャ。
【請求項4】
請求項3に記載の制振ワッシャにおいて、
前記山形状部が、前記弾性板材の周方向に沿って連続的な突条体からなることを特徴とする制振ワッシャ。
【請求項5】
請求項3に記載の制振ワッシャにおいて、
前記山形状部が、複数の不連続山部からなることを特徴とする制振ワッシャ。
【請求項6】
請求項1に記載の制振ワッシャにおいて、
前記弾性板材が山部と谷部とが周方向に繰り返す波形部材からなり、前記起伏形状部が、この山部と谷部とにより形成されることを特徴とする制振ワッシャ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の制振ワッシャにおいて、
前記透孔が円形であって、周方向に等間隔で形成されていることを特徴とする制振ワッシャ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の制振ワッシャにおいて、
前記透孔が矩形状であって、周方向に等間隔且つ周方向に配向するよう形成されていることを特徴とする制振ワッシャ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の制振ワッシャにおいて、
前記環状複合体の外周部の少なくとも前記2平面に対面する部位には金属製リング部材が一体とされていることを特徴とする制振ワッシャ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の制振ワッシャにおいて、
前記環状複合体の内周部に、前記制振基材層によるグロメット部が形成されていることを特徴とする制振ワッシャ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−255975(P2008−255975A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−112870(P2007−112870)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【Fターム(参考)】