説明

制駆動力制御装置

【課題】道路形状を含む走行環境に基づいて制駆動力を補正する制駆動力制御において、運転者の意図に沿わない制駆動力制御となることを抑制することが可能な制駆動力制御装置を提供する。
【解決手段】走行環境(S101)及び外部情報(S103)に基づいて制駆動力を制御する制駆動力制御装置であって、現在エリアよりも先方の状況に基づく加減速の必要性を判定する判定手段(S104)と、前記現在エリアの状況に基づく制駆動力制御の制御量を求める手段(S102)と、前記判定手段により前記必要と判定された加減速の向きと、前記求められた前記制駆動力の制御量の加減速の向きとが異なる場合(S104−Y)には、前記必要と判定された加減速の向きと、前記求められた前記制駆動力の制御量の加減速の向きとが異ならない場合(S104−N)に比べて、前記求められた前記制駆動力の制御量を低減させる手段(S111)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制駆動力制御装置に関し、特に、道路形状を含む走行環境に基づいて車両の制駆動力を補正する制駆動力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路形状を含む走行環境に基づいて車両の制駆動力を制御する技術が知られている。道路形状には、路面勾配やコーナー情報などが含まれる。道路形状は、例えばナビゲーション装置や車両情報などから取得されることができ、取得された道路形状に基づいて、車両の制駆動力が補正される。例えば、道路形状に基づいて、登坂路を走行中に駆動力を増加補正させる制御が行われる。
【0003】
例えば、特開2001−221339号公報(特許文献1)には、走行路の分岐点、コーナなどに変速ポイントを設定してナビゲーション装置のCD−ROMに記憶しておき、第1の変速ポイントを通過したとき、変速準備を開始し、第2の変速ポイントを通過したとき、降坂勾配パラメータを増加補正する点が開示されている。
【0004】
上記のように道路形状を含む走行環境に基づいて車両の制駆動力が補正される場合に、以下に説明するように、運転者の意図に合致せずに不具合を生じる場合がある。
【0005】
例えば、登坂走行時に先方に一時停止がある場合である。先方に一時停止がある場合、運転者は減速したいと感じる。それにもかかわらず、路面勾配に基づく補正制御により駆動力を増加させると、運転者の期待する減速感が得られないため、運転者が違和感を感じることになる。
【0006】
【特許文献1】特開2001−221339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
道路形状を含む走行環境に基づいて制駆動力を補正する制駆動力制御において、運転者の意図に沿わない制駆動力制御となることを抑制できることが望まれている。
【0008】
本発明の目的は、道路形状を含む走行環境に基づいて制駆動力を補正する制駆動力制御において、運転者の意図に沿わない制駆動力制御となることを抑制することが可能な制駆動力制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の制駆動力制御装置は、走行環境及び外部情報に基づいて制駆動力を制御する制駆動力制御装置であって、現在エリアよりも先方の状況に基づく加減速の必要性を判定する判定手段と、前記現在エリアの状況に基づく制駆動力制御の制御量を求める手段と、前記判定手段により前記必要と判定された加減速の向きと、前記求められた前記制駆動力の制御量の加減速の向きとが異なる場合には、前記必要と判定された加減速の向きと、前記求められた前記制駆動力の制御量の加減速の向きとが異ならない場合に比べて、前記求められた前記制駆動力の制御量を低減させる手段とを備えたことを特徴としている。
【0010】
本発明の制駆動力制御装置は、駆動力の補正を行う制駆動力制御装置であって、道路形状を含む走行環境に基づいて駆動力を増加させる側の前記駆動力の補正量を算出する算出手段と、道路環境に基づいて減速の必要性を判定する判定手段と、前記減速の必要があると判定された場合には、前記減速の必要があると判定されなかった場合に比べて前記駆動力を増加させる側の前記補正量を低減させる調整手段とを備えたことを特徴としている。
【0011】
本発明の制駆動力制御装置において、前記道路形状には、コーナー及び道路勾配の少なくともいずれか一方が含まれ、前記道路環境には、一時停止、コーナー、踏み切り、信号、道幅減少、合流、渋滞、降坂、及び事故車の存在を含む減速が必要な道路環境が含まれることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の制駆動力制御装置によれば、道路形状を含む走行環境に基づいて制駆動力を補正する制駆動力制御において、運転者の意図に沿わない制駆動力制御となることを抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の制駆動力制御装置の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1及び図2を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、道路形状に基づいて車両の駆動力を補正する制駆動力制御装置に関する。
【0015】
上述したように、道路形状の情報に基づいて車両の駆動力が補正される場合に、先方の道路環境にかかわらず駆動力の補正制御が行われると、運転者が違和感を感じることがある。
【0016】
例えば、ナビゲーション装置の情報(コーナー、勾配情報など)や車両情報などに基づいて自動変速機の変速制御や駆動力を補正する制御が行われる場合に、先方の道路環境によっては運転者の意図に沿わない制御となることがある。
【0017】
特に、駆動力、またはスロットル開度を増加補正する制御(登坂時駆動力増補正制御、コーナー脱出時駆動力増補正制御)が実行される場合に、単に駆動力を増加させると不具合を生じる場合がある。以下では、路面勾配に基づいて登坂時に駆動力を増加補正する制御が行われる場合を例に上記問題について説明する。
【0018】
先方道路状況が、一時停止、コーナー、踏み切り、信号、先方道幅減少、合流、退出、降坂、渋滞など車両の減速が必要な状況である場合には、運転者の減速要求が生じる。登坂時において、先方に上記のような運転者の減速要求が生じる道路状況があるにもかかわらず、路面勾配に基づいて駆動力を増加補正させる制御(登坂時駆動力補正)が行われると、運転者の意図と異なって加速してしまったり、減速しない状態になったりしてしまう。
【0019】
本実施形態では、例えば、路面勾配、またはコーナー情報に応じて駆動力を補正制御する方法において、以下の制御が行われる。前方に一時停止や信号等、停止もしくは減速しなければならない箇所がある場合、現在走行地点から路面勾配が増加するとき、あるいはコーナーからの立ち上がり時に駆動力の増加補正が行われない(又は、駆動力の増加補正の度合いが低減される)。
【0020】
より具体的には、登坂時やコーナー脱出時には、路面勾配やコーナー情報に基づいて駆動力を増加させるための補正量が算出される(後述する図1のステップS102)。ナビゲーション装置等から取得される道路環境情報(図1のステップS103、外部情報)に基づいて、先方に運転者の減速要求が生じるような道路状況が検出された場合(図1のステップS104−Y)には、その道路状況に応じて、駆動力の補正量が増加を抑制する側に修正され(図1のステップS111)、修正された補正量に基づいて駆動力が制御される(図1のステップS108)。これにより、運転者の意図に沿わない制御となることが抑制される。
【0021】
本実施形態の構成としては、以下の(1)から(5)の構成を備えていることが前提となる。
(1)路面勾配(道路形状)を推定する手段。
(2)路面勾配(道路形状)に応じて駆動力を補正制御する手段。
(3)先方道路情報を検出する手段。
(4)先方道路情報に基づいて駆動力を補正する手段。
(5)上記情報に基づいて車両制御する手段。
【0022】
図2は、本実施形態に係る装置の概略構成図である。車両(図示せず)には、エンジン11が設けられている。エンジン11には、トルクコンバータ12を有する自動変速機13が連結されている。エンジン11の駆動力は、トルクコンバータ12を介して自動変速機13に入力され、デファレンシャルギヤ14及びドライブシャフト15を介して駆動輪16に伝達される。自動変速機13は、A/T油圧制御装置17により車両の運転状態に応じて変速比が自動的に制御される。ブレーキ装置18は、ブレーキ油圧制御装置19によって制御されて、車両を制動する。
【0023】
車両には、エンジン11や自動変速機13やブレーキ装置18などを制御する電子制御ユニット(ECU)20が設けられている。ECU20は、エンジン11、自動変速機13(A/T油圧制御装置17)及びブレーキ装置18(ブレーキ油圧制御装置19)の総合的な制御を行う。
【0024】
車両には、アクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出するアクセルポジションセンサ21が設けられている。アクセルポジションセンサ21により検出されたアクセル開度を示す信号は、ECU20に出力される。エンジン11の吸気管22には、スロットルコントロールバルブ23が設けられている。スロットルコントロールバルブ23は、スロットルアクチュエータ24により開閉可能とされている。ECU20は、スロットルアクチュエータ24にスロットルコントロールバルブ23を動作させる。ECU20は、スロットルコントロールバルブ23によるスロットル開度が、アクセル開度に応じたものとなるようにスロットルアクチュエータ24を制御する。
【0025】
吸気管22には、スロットルコントロールバルブ23をバイパスするバイパス通路25が設けられている。バイパス通路25には、エンジン11のアイドル回転数を制御するためにスロットルコントロールバルブ23の全閉時の吸気量を制御するアイドルスピードコントロールバルブ(ISCバルブ)26が設けられている。スロットルコントロールバルブ23の全閉状態(アイドル状態)及びスロットル開度を検出するアイドルスイッチ付スロットル開度センサ27が設けられている。アイドルスイッチ付スロットル開度センサ27によって検出されたアイドル状態及びスロットル開度のそれぞれを示す信号は、ECU20に出力される。
【0026】
エンジン11には、エンジン回転数(エンジン回転速度)を検出するエンジン回転数センサ28が設けられている。エンジン回転数センサ28により検出されたエンジン回転数を示す信号は、ECU20に出力される。車速センサ29は、車両の車速を検出する。車速センサ29により検出された車速を示す信号は、ECU20に出力される。
【0027】
シフトポジションセンサ30は、運転者が操作するシフトレバーの位置(シフトポジション)を検出する。シフトポジションセンサ30により検出されたシフトポジションを示す信号は、ECU20に出力される。
【0028】
ブレーキ操作量センサ32は、ブレーキ装置18の操作量を検出する。ブレーキ操作量センサ32により検出されたブレーキ装置18の操作量を示す信号は、ECU20に出力される。ステアリング舵角センサ33は、運転者により操作されるステアリングの舵角を検出する。ステアリング舵角センサ33により検出されたステアリングの舵角を示す信号は、ECU20に出力される。方向指示器スイッチ34は、運転者により操作され、方向指示器(図示せず)により指示される方向を特定するための操作が行われる。方向指示器により指示される方向を示す信号は、ECU20に出力される。
【0029】
運転モード設定スイッチ35は、運転者により操作され、運転モードを設定するための操作が行われる。運転者により、運転モード設定スイッチ35が操作されることで、スポーツ走行指向又は通常走行指向の運転モードが設定され、その設定された運転モードを示す信号がECU20に出力される。
【0030】
横Gセンサ37は、車両の横Gを検出し、前後Gセンサ38は、車両の前後Gを検出し、上下Gセンサ39は、車両の上下Gを検出する。横Gセンサ37により検出された横Gを示す信号、前後Gセンサ38により検出された前後Gを示す信号、及び上下Gセンサ39により検出された上下Gを示す信号のそれぞれは、ECU20に出力される。
【0031】
ヨーレートセンサ40は、車両のヨーレートを検出する。ヨーレートセンサ40により検出されたヨーレートを示す信号は、ECU20に出力される。
【0032】
ECU20は、変速マップを有しており、スロットル開度、車速などに基づいて、自動変速機13の変速段を決定し、この決定された変速段を成立させるようにA/T油圧制御装置17を制御することができる。
【0033】
ナビゲーション装置50は、自車両を所定の目的地に誘導することを基本的な機能としており、ECU60と、操作部51と、表示部52と、スピーカ53と、位置検出部54と、地図データベース55と、運転履歴記録部56とを備えている。ナビゲーション装置50のECU60は、ECU20と双方向の通信が可能である。
【0034】
ナビゲーション装置50は、運転者に車両の現在地周りの道路情報を知らせて、車両の目的地までの走行経路を誘導する。操作部51には、目的地などの指示データが入力される。表示部52には、現在地周辺の地図情報、現在位置、目的位置、経路などの情報が表示される。スピーカ53からは、案内音声が出力される。
【0035】
ECU60のCPU61は、入力された情報に基づいて、ナビゲーション処理等の各種演算処理を行う。ECU60のROM62には、目的地までの経路の検索、経路中の走行案内、特定区間の決定等を行うための各種プログラムが格納されている。
【0036】
位置検出部54は、GPSレシーバ、地磁気センサ、距離センサ、ビーコンセンサ、及びジャイロセンサを備えている。位置検出部54は、自車の位置を検出し、その検出した自車の位置を示すデータをECU60に出力する。
【0037】
地図データベース55には、車両の走行に必要な情報(地図、直線路、コーナー、登降坂、高速道路など)が記憶されている。地図データベース55は、地図データファイル、交差点データファイル、ノードデータファイル、道路データファイルを備えている。これら各ファイルには、経路探索を行うとともに、探索した経路に沿って案内図を表示するための各種データが格納されている。ECU60は、地図データベース55を参照して、必要な情報を読み出す。
【0038】
運転履歴記録部56には、車両が走行した走行路、及び車両が走行路を走行した日時などの情報が記録される。ECU60は、必要に応じて、運転履歴記録部56から運転履歴のデータを読み出す。
【0039】
ECU60は、操作部51から入力された目的地などの指示データ及び位置検出部54により検出された自車位置に基づいて、地図データベース55から必要な地図情報を検索し、その検索により得られた経路の情報を表示部52に表示させる。ECU60は、操作部51から入力された目的地などの指示データが入力されていない場合には、自車位置の周辺の道路情報を表示部52に表示する。
【0040】
車両には、カメラ71と、道路状況検出部72が設けられている。カメラ71は、車両の前方の道路状況を撮像する。道路状況検出部72は、カメラ71により撮像されたデータに基づいて、車両の前方の道路状況を検出する。道路状況検出部72による検出結果は、ECU20に出力される。
【0041】
図1を参照して、本実施形態の動作について説明する。
【0042】
ステップS101では、ECU20により、現在エリアの走行環境の情報、例えば道路形状情報が取得される。ステップS101では、道路形状情報として、路面勾配が求められることができる。例えば、車両が出力している駆動力から求められる加速度と、実際に生じている加速度との比較結果に基づいて、現在走行中の道路の路面勾配が求められることができる。あるいは、ナビゲーション装置50に保存されている勾配情報から、現在走行位置あるいは先方の路面勾配が求められることができる。
【0043】
ステップS101において、路面勾配に代えて、コーナー情報が取得されることができる。ナビゲーション装置50に保存されている地図位置情報と現在走行位置に基づいて先方道路形状が判断されることができる。これにより、どの位先にコーナーを立ち上がるかが算出されることができる。
【0044】
次に、ステップS102では、ECU20により、駆動力の補正量が算出される。ECU20は、ステップS101で取得された道路形状情報に基づいて、駆動力の補正量を算出する。例えば、現在位置の路面勾配が上り勾配である、即ち登坂時にはその路面勾配に応じて、駆動力を増加させるように駆動力の補正量が算出される。また、コーナー脱出時には、コーナー脱出時の立ち上がりを良くするために、駆動力を増加させるように駆動力の補正量が算出される。
【0045】
次に、ステップS103では、ECU20により、道路環境情報が取得される。ECU20は、ナビゲーション装置50から出力される情報や、車両に道路環境情報を提供するためのインフラ、プローブカー等から受け取る情報に基づいて、道路環境情報を取得する。取得される道路環境情報は、車両の現在エリアよりも先方の、一時停止、コーナー、踏み切り、信号、道幅減少、合流、退出、渋滞、事故車あり、工事中、降坂などの情報を含む。道路環境情報が取得されると、ステップS104へ進む。
【0046】
ステップS104では、ECU20により、減速あるいは停止する要因があるか否かが判定される。ステップS103で取得された道路環境情報に基づいて、例えば、先方に一時停止が検出された場合には、運転者が減速(及び停止)しようとすると判定される。
【0047】
ステップS104の判定の結果、減速あるいは停止する要因があると判定された場合(ステップS104−Y)には、ステップS110に進み、そうでない場合(ステップS104−N)には、ステップS105に進む。
【0048】
ステップS105では、ECU20により、駆動力を増加させる補正を要するか否かが判定される。先方に一時停止等の減速あるいは停止する要因がなく(ステップS104−N)、ステップS102で算出された補正量に基づいて駆動力を増加させる補正を行っても問題ない場合には、ステップS105において肯定判定がなされる。
【0049】
ステップS105の判定の結果、駆動力を増加させる補正を要すると判定された場合(ステップS105−Y)には、ステップS106に進み、そうでない場合(ステップS105−N)には、ステップS109に進む。
【0050】
ステップS106では、ECU20により、駆動力増補正制御中フラグFが1にセットされる。駆動力増補正制御中フラグFは、駆動力を増加させる補正が行われている場合に1にセットされるフラグである。
【0051】
次に、ステップS107では、ECU20により、駆動力を増加させるための駆動力の補正量が設定される。次に、ステップS108に進む。
【0052】
ステップS108では、ECU20により、設定された補正量に基づく駆動力の補正が行われて駆動力が出力される。ここで、ステップS107等で設定される補正量とは、例えばスロットルコントロールバルブ23の開度の補正や、トルク指令の補正等により、状況に応じてアクセル開度に対する駆動力の出力特性を変更するための補正量である。
【0053】
ステップS108が実行されると、本制御フローはリターンされる。
【0054】
ステップS104において肯定判定がなされてステップS110に進むと、ステップS110では、ECU20により、駆動力増補正制御中フラグFが1にセットされているか否かが判定される。ステップS110では、駆動力を増加補正させる制御が現在行われている(現在増補正されている状態)か否かが判定される。
【0055】
ステップS110の判定の結果、駆動力増補正制御中フラグFが1にセットされていると判定された場合(ステップS110−Y)には、ステップS111に進み、そうでない場合(ステップS110−N)には、ステップS109に進む。
【0056】
ステップS111では、ECU20により、ステップS104で検出された減速あるいは停止する要因に基づいて、駆動力の修正補正量が設定される。減速あるいは停止を必要とする要因に応じて、ステップS102で算出された駆動力の補正量に対して、その増補正分を低減させる修正(調整)が行われ、修正補正量が設定される。増補正分を低減させる場合には、例えば、一度の修正で補正量がゼロとされることができる。あるいは、本制御フローが複数回実行される間に増補正分が徐々に低減されていき、最終的に補正量がゼロとされてもよい。
【0057】
次に、ステップS112では、ECU20により、ステップS111で設定された修正補正量がゼロであるか否かが判定される。ステップS112の判定の結果、修正補正量がゼロであると判定された場合(ステップS112−Y)には、ステップS113に進み、そうでない場合(ステップS112−N)には、ステップS108に進む。
【0058】
ステップS113では、ECU20により、駆動力増補正制御中フラグFがゼロにセットされる。修正補正量がゼロに設定された(ステップS112−Y)ことで駆動力を増加補正させる制御が終了しているため、駆動力増補正制御中フラグFがリセットされる。
【0059】
ステップS105またはステップS110において否定判定がなされてステップS109に進むと、ステップS109では、ECU20により、駆動力の補正量がゼロに設定される。ステップS109に進む場合とは、駆動力を増加させる補正が必要ないと判定されている場合である。例えば、先方に登坂路が検出されており、その登坂路の勾配に基づいてステップS102において駆動力の補正量が駆動力を増加させる値として算出される場合がある。この場合に、車両の現在位置が平坦路である場合には、まだ駆動力を増加補正させる制御は必要とされない。よって、駆動力の補正量がゼロに設定される。駆動力の補正量がゼロに設定されると、ステップS108に進む。
【0060】
本実施形態によれば、道路形状情報に応じて車両の駆動力を増加補正する制御が行われている場合(ステップS110−Y)に、先方に減速あるいは停止する要因があると判定されている場合(ステップS104−Y)には、その減速あるいは停止する要因に応じて、駆動力の補正量における増補正分が低減される(ステップS111)。
【0061】
これにより、運転者の減速要求(減速意図)に反して加速してしまうことや、運転者の期待する減速度が得られない状態となることが抑制される。路面勾配などに基づく駆動力補正を先方道路状況情報に応じて実行することで、運転者のフィーリングにあった駆動力最適制御が実現可能となる。
【0062】
なお、本実施形態では、道路形状情報に基づいて行われる駆動力の補正が増加補正である場合を例に説明したが、これには限定されない。例えば、道路形状に基づいて駆動力の低減補正が行われる場合にも本実施形態の制御は有用である。
【0063】
この場合、取得された道路形状情報に基づいて、駆動力を低減させる補正量が算出される(ステップS102)。取得された道路環境情報に基づいて、先方に駆動力の低減を必要としない要因(例えば加速を必要とする要因)があるか否かが判定される(ステップS104)。その判定の結果、先方に駆動力の低減を必要としない要因があると判定された場合(ステップS104−Y)に、駆動力を低減補正させる制御が現在行われている場合(ステップS110−Y)には、その駆動力の低減を必要としない要因に基づいて、補正量における減補正分が低減される。これにより、駆動力を低減させる度合いが少なくなり、運転者の意図に沿わない制御となることが抑制される。
【0064】
上記実施形態以下の技術が開示される。
【0065】
(項1)
走行環境(S101)及び外部情報(S103)に基づいて制駆動力を制御する制駆動力制御装置であって、
現在エリアよりも先方の状況に基づく加減速の必要性を判定する判定手段(S104)と、
前記現在エリアの状況に基づく制駆動力制御の制御量を求める手段(S102)と、
前記判定手段により前記必要と判定された加減速の向きと、前記求められた前記制駆動力の制御量の加減速の向きとが異なる場合(S104−Y)には、前記必要と判定された加減速の向きと、前記求められた前記制駆動力の制御量の加減速の向きとが異ならない場合(S104−N)に比べて、前記求められた前記制駆動力の制御量を低減させる手段(S111)と
を備えたことを特徴とする制駆動力制御装置。
【0066】
上記実施形態では、前記判定手段により前記必要と判定された加減速の向きは、減速側であり、前記求められた前記制駆動力の制御量の加減速の向きは、加速側であったが、これに代えて、上記実施形態では、前記判定手段により前記必要と判定された加減速の向きは、加速側であり、前記求められた前記制駆動力の制御量の加減速の向きは、減速側であることができる。
【0067】
(項2)
駆動力の補正を行う制駆動力制御装置であって、
道路形状を含む走行環境に基づいて駆動力を増加させる側の前記駆動力の補正量を算出する算出手段(S102)と、
道路環境に基づいて減速の必要性を判定する判定手段(S104)と、
前記減速の必要があると判定された場合(S104−Y)には、前記減速の必要があると判定されなかった場合(S104−N)に比べて前記駆動力を増加させる側の前記補正量を低減させる調整手段(S111)と
を備えたことを特徴とする制駆動力制御装置。
【0068】
(項3)
項2記載の制駆動力制御装置において、
前記道路形状には、コーナー及び道路勾配の少なくともいずれか一方が含まれ、
前記道路環境には、一時停止、コーナー、踏み切り、信号、道幅減少、合流、渋滞、降坂、及び事故車の存在を含む減速が必要な道路環境が含まれる
ことを特徴とする制駆動力制御装置。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の制駆動力制御装置の第1実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図2】本発明の制駆動力制御装置の第1実施形態の概略構成図である。
【符号の説明】
【0070】
11 エンジン
12 トルクコンバータ
13 自動変速機
14 デファレンシャルギヤ
15 ドライブシャフト
16 駆動輪
17 A/T油圧制御装置
18 ブレーキ装置
19 ブレーキ油圧制御装置
20 ECU
21 アクセルポジションセンサ
22 吸気管
23 スロットルコントロールバルブ
24 スロットルアクチュエータ
25 バイパス通路
26 アイドルスピードコントロールバルブ
27 アイドルスイッチ付スロットル開度センサ
28 エンジン回転数センサ
29 車速センサ
30 シフトポジションセンサ
32 ブレーキ操作量センサ
33 ステアリング舵角センサ
34 方向指示器スイッチ
35 運転モード設定スイッチ
37 横Gセンサ
38 前後Gセンサ
39 上下Gセンサ
40 ヨーレートセンサ
50 ナビゲーション装置
51 操作部
52 表示部
53 スピーカ
54 位置検出部
55 地図データベース
56 運転履歴記録部
60 ECU
61 CPU
62 ROM
71 カメラ
72 道路状況検出部
F 駆動力増補正制御中フラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行環境及び外部情報に基づいて制駆動力を制御する制駆動力制御装置であって、
現在エリアよりも先方の状況に基づく加減速の必要性を判定する判定手段と、
前記現在エリアの状況に基づく制駆動力制御の制御量を求める手段と、
前記判定手段により前記必要と判定された加減速の向きと、前記求められた前記制駆動力の制御量の加減速の向きとが異なる場合には、前記必要と判定された加減速の向きと、前記求められた前記制駆動力の制御量の加減速の向きとが異ならない場合に比べて、前記求められた前記制駆動力の制御量を低減させる手段と
を備えたことを特徴とする制駆動力制御装置。
【請求項2】
駆動力の補正を行う制駆動力制御装置であって、
道路形状を含む走行環境に基づいて駆動力を増加させる側の前記駆動力の補正量を算出する算出手段と、
道路環境に基づいて減速の必要性を判定する判定手段と、
前記減速の必要があると判定された場合には、前記減速の必要があると判定されなかった場合に比べて前記駆動力を増加させる側の前記補正量を低減させる調整手段と
を備えたことを特徴とする制駆動力制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の制駆動力制御装置において、
前記道路形状には、コーナー及び道路勾配の少なくともいずれか一方が含まれ、
前記道路環境には、一時停止、コーナー、踏み切り、信号、道幅減少、合流、渋滞、降坂、及び事故車の存在を含む減速が必要な道路環境が含まれる
ことを特徴とする制駆動力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−12529(P2009−12529A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174437(P2007−174437)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】