説明

剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物、これを用いた印刷回路基板およびその製造方法

【課題】熱的安定性、機械的強度などに優れ、かつ既存の基板製造工程を用いながらも高い剥離強度を有してメッキ層との密着力に優れた印刷回路基板を製造できる、剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物、これを用いた印刷回路基板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による印刷回路基板用難燃性樹脂組成物は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、およびリン系エポキシ樹脂を含む複合エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、炭酸カルシウム系無機充填剤と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物、これを用いた印刷回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、薄型化、軽量化の傾向に伴って、高密度実装が求められている。特に、携帯電話の高機能化、高容量化、およびスリム化の傾向により携帯電話基板の薄板化および微細パターンの実現の他、追加的に基板内に様々な機能が要求される。これにより、従来のV−プレスを用いた銅箔とPPGの一括積層工法の代わりに、絶縁フィルムを積層した後に微細回路を形成する工法の導入が望まれることになった。このような新工法の導入のためには、従来用いられていた絶縁材料とは差別化された、メッキ層との密着力が非常に優れる新たな絶縁材料の開発が求められている。
【0003】
既に開発されたビルドアップ用絶縁材料はデスミア条件により剥離強度が0.5〜0.8kN/m程度であり、1.0kN/m以上の剥離強度を安定的に維持するビルドアップ用絶縁材料は商品化されていない。しかし、携帯電話の高機能化、高容量化、およびスリム化の傾向により、携帯電話基板の薄板化および微細パターンの実現のためには、携帯電話基板の外層にビルドアップ用絶縁材料を使用しながらも、従来のPPGやRCCを用いた場合と比べて同等以上の落下信頼性を確保するために1.0kN/m以上の剥離強度を有するビルドアップ用絶縁材料が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした従来技術の問題点に鑑み、本発明は、熱的安定性と機械的強度などの物性に優れ、かつ既存の基板製造工程により高い剥離強度を有する印刷回路基板用難燃性樹脂組成物、これを用いた印刷回路基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によれば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、およびリン系エポキシ樹脂を含む複合エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、炭酸カルシウム系無機充填剤とを含む、剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物が提供される。
【0006】
本発明の一実施態様において、上記複合エポキシ樹脂は、エポキシ当量が100〜700であるビスフェノールA型エポキシ樹脂と、エポキシ当量が100〜600であるクレゾールノボラックエポキシ樹脂と、エポキシ当量が100〜500であるゴム変性型エポキシ樹脂と、エポキシ当量が400〜800であるリン系エポキシ樹脂とを含むことができる。
【0007】
本発明の一実施態様において、上記複合エポキシ樹脂は、上記複合エポキシ樹脂混合組成物100重量部に対して、上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂1〜20重量部と、上記クレゾールノボラックエポキシ樹脂30〜70重量部と、上記ゴム変性型エポキシ樹脂1〜20重量部と、上記リン系エポキシ樹脂1〜30重量部とを含むことができる。
【0008】
本発明の一実施態様において、上記硬化剤として、フェノールノボラック、ビスフェノールノボラック、およびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種を好ましく使用できる。
【0009】
本発明の一実施態様において、上記硬化剤は、軟化点が100〜140℃であり、水酸基当量(hydroxyl equivalent)が100〜150である、ビスフェノールAノボラック(BPA novolac)型のエポキシ樹脂硬化剤であってもよい。
【0010】
本発明の一実施態様において、上記硬化剤は、上記複合エポキシ樹脂のエポキシ基の混合当量に対して0.5〜1.3当量比で混合可能である。
【0011】
本発明の一実施態様において、上記硬化促進剤はイミダゾール系化合物であってもよい。
【0012】
本発明の一実施態様において、上記イミダゾール系化合物は、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−アルキルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、およびこれらの混合物からなる群より選択される、1種以上の化合物であり得る。
【0013】
本発明の一実施態様において、上記硬化促進剤は、上記複合エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜2重量部で混合されるものであってもよい。
【0014】
本発明の一実施態様において、上記炭酸カルシウム系無機充填剤は、重質炭酸カルシウム、硬質炭酸カルシウム、およびこれらの混合物からなる群より選択されるものを含むことができる。
【0015】
本発明の一実施態様において、上記重質炭酸カルシウムは板状であってもよい。
【0016】
本発明の一実施態様において、上記硬質炭酸カルシウムは、立方体状、コロイド状、および針状からなる群より選択される、少なくとも1種以上の形態の硬質炭酸カルシウムを含むものであってもよい。
【0017】
本発明の一実施態様において、上記炭酸カルシウム系無機充填剤は、粒子サイズが0.1〜10μmであってもよい。
【0018】
本発明の一実施態様において、上記炭酸カルシウム系無機充填剤は、上記複合エポキシ樹脂100重量部に対して10〜50重量部で混合されるものであってもよい。
【0019】
本発明の一実施態様において、上記炭酸カルシウム系無機充填剤は、シランカップリング剤で表面処理されたものであってもよい。
【0020】
本発明の一実施態様において、上記難燃性樹脂組成物は、デスミア工程を含む方法により基板を形成した後に絶縁層とメッキ層の剥離強度が1.0kN/m以上であることができる。
【0021】
本発明の別の側面によれば、上述した難燃性樹脂組成物を用いて製造された、剥離強度の強化された印刷回路基板が提供される。
【0022】
本発明のまた別の側面によれば、上述した難燃性樹脂組成物を準備するステップと、上記組成物を基板のコアレイヤ表面に積層するステップと、上記積層された基板を予備硬化するステップと、上記基板の表面をデスミア処理して表面粗さを形成するステップと、上記基板の表面に配線パターンを形成するステップとを含む、剥離強度が強化された印刷回路基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る難燃性樹脂組成物を用いることにより、熱的安定性、機械的強度などに優れ、かつ既存の基板製造工程を用いながらも高い剥離強度を有するため、メッキ層との密着力に優れた印刷回路基板を製造することができる。
【0024】
本発明の好ましい態様において、デスミア工程を含む通常の印刷回路基板の製造方法により基板を形成しても、1.0kN/m以上の剥離強度を得ることができる。
【0025】
本発明の好ましい態様において、優れた剥離強度を有する印刷回路基板が得られるため、特に携帯電話用薄板HDI(High density interconnection)基板に応用することができる。
【0026】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1による難燃性樹脂組成物を用いた絶縁層にデスミア工程を行った後の表面粗さの状態を撮影したSEM写真(左側500倍、右側2000倍)である。
【図2】本発明の比較例1による難燃性樹脂組成物を用いた絶縁層にデスミア工程を行った後の表面粗さの状態を撮影したSEM写真である。
【図3】本発明の一実施例によるデスミア工程による絶縁層の表面粗さの形成過程を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明による剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物、これを用いた印刷回路基板およびその製造方法について詳細に説明する。
【0029】
本発明の一態様における剥離強度の強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、およびリン系エポキシ樹脂を含む複合エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、炭酸カルシウム系無機充填剤とを含む。
【0030】
本発明に用いられる上記複合エポキシ樹脂は、ハロゲンを含まないエポキシ樹脂であって、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、およびリン系エポキシ樹脂を含む。
【0031】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、エポキシ当量が100〜700であることが好ましい。エポキシ当量が100未満であると所望の物性が得られにくくなり、700を超えると溶媒に溶けにくく、融点が極めて高くなって制御が困難になるので好ましくない。また、上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、複合エポキシ樹脂中の1〜20重量部を占めることが好ましい。ビスフェノールA型エポキシ樹脂の含量が1重量部未満であると配線材料との接着力が劣化し、含量が20重量部を超えると熱的・電気的性質および耐吸湿性が低下するため好ましくない。上記樹脂は、2−メトキシエタノール、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルセロソルブ(MCS)などの混合溶媒に溶解して使用することができる。
【0032】
ノボラック形態のエポキシ樹脂としてクレゾールノボラックエポキシ樹脂を用いるが、これは耐熱性の高い硬化物を得ることができるため、形成された基板の熱的安定性を向上させることができる。クレゾールノボラックエポキシ樹脂のエポキシ当量は100〜600であることが好ましく、複合エポキシ樹脂中の30〜70重量部を占めることが好ましい。エポキシ当量が100未満であると所望の物性が得られにくくなり、600を超えると溶媒に溶けにくく、融点が極めて高くなって制御が困難になるので好ましくない。また、クレゾールノボラックエポキシ樹脂の含量が30重量部未満であると、所望の熱的・機械的物性が得られなくなり、含量が70重量部を超えると最終硬化物が極めて壊れやすくなり、耐衝撃性が低下するので好ましくない。クレゾールノボラックエポキシ樹脂は、2−メトキシエタノール、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルセロソルブ(MCS)などの混合溶媒に溶解して使用することができる。
【0033】
ゴム変性型エポキシ樹脂は、例えばDGEBA(diglycidyl ether of bisphenol A)とCTBN(Carboxyl terminated butadiene acrylonitrile copolymer)の混合により得ることができ、エポキシ当量は100〜500であることが好ましい。エポキシ当量が100未満であると所望の物性が得られにくくなり、500を超えると溶媒に溶けにくく、融点が極めて高くなって制御が困難になるので好ましくない。このゴム変性型エポキシ樹脂は、複合エポキシ樹脂中の1〜20重量部を占めることが好ましい。ゴム変性型エポキシ樹脂の含量が1重量部未満であると所望の物性が得られなくなり、含量が20重量部を超えると絶縁材料が壊れやすくなってクラックが発生するので好ましくない。上記樹脂は、2−メトキシエタノール、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルセロソルブ(MCS)などの混合溶媒に溶解して使用することができる。
【0034】
リン系エポキシ樹脂は、難燃性と自己消火性に優れる。印刷回路基板に難燃性を付与するためにリン系エポキシ樹脂を添加でき、ハロゲンを含まないので環境にやさしい難燃性基板を得ることができる。上記リン系エポキシ樹脂は、エポキシ当量が400〜800であることが好ましい。エポキシ当量が400未満であると所望の物性が得られにくくなり、800を超えると溶媒に溶けにくく、融点が極めて高くなって制御が困難になるので好ましくない。リン系エポキシ樹脂は、複合エポキシ樹脂中の1〜30重量部を占めることが好ましい。含量が1重量部未満であると所望の難燃性を与えにくくなり、含量が30重量部を超えると電気的・機械的物性が低下するので好ましくない。上記樹脂は2−メトキシエタノール、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド(DMF)、メチルセロソルブ(MCS)などの混合溶媒に溶解して使用することができる。
【0035】
本発明に用いられる硬化剤は、フェノールノボラック、ビスフェノールノボラック、およびこれらの混合物からなる群より選択される1種以上の化合物であることができる。好ましい一実施例において上記硬化剤は、軟化点が100〜140℃であり、水酸基当量が100〜150であるビスフェノールAノボラック型のエポキシ樹脂硬化剤である。
【0036】
好ましい一態様において上記硬化剤は、上記混合エポキシ樹脂のエポキシ基の混合当量に対して0.5〜1.3当量比で混合され、より好ましくは、0.7〜1.2当量比で混合される。この範囲の当量比で混合されると、硬化された絶縁層すなわち基板の硬化度を基板製造工程に合わせて調節でき、基板の熱膨張率を最大限減らすことができる。当量比が0.5未満であると組成物の熱的・機械的性質が劣化し、当量比が1.3を超えると接着性が低下し未反応硬化剤が発生するなどの問題が生じ得るので好ましくない。最も好ましくは1.0当量比で混合されることである。
【0037】
本発明に用いられる硬化促進剤としては、イミダゾール系を使用でき、これに限定されることはないが、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−アルキルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、およびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。上記硬化促進剤は、上記複合エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜2重量部含まれることが好ましい。上記硬化促進剤の含量が0.1重量部未満であると硬化速度が著しく遅くなるため未硬化になることがあり、2重量部以上になると硬化速度を制御しにくくなり、再現性の確保が困難である。
【0038】
その他にも、追加的に難燃補助剤を添加してコストが相対的に高いリン系難燃性エポキシ樹脂の含量を低減することができる。このような難燃補助剤としてリンが含まれているAlのような化合物を使用することができる。
【0039】
本発明では無機充填剤として炭酸カルシウム(CaCO)系無機充填剤が使用される。上記炭酸カルシウム系無機充填剤は、重質炭酸カルシウム、硬質炭酸カルシウム、およびこれらの混合物からなる群より選択されるものであってもよい。上記重質炭酸カルシウムは石灰石原石を機械的に破砕・粉砕することにより得ることができ、上記硬質炭酸カルシウムは化学的合成方法により純粋な結晶として得られるものであって、多様な大きさや形態を有する結晶を形成することができる。上記重質炭酸カルシウム無機充填剤は、粒子の形態が板状であることが好ましく、上記硬質炭酸カルシウム無機充填剤は、粒子の形態が立方体状、コロイド状、針状などの形態を有することが好ましい。本発明の一実施例においては、単一種類の炭酸カルシウム系無機充填剤を用いてもよく、2種以上の多様な形態の炭酸カルシウムが混合された異型充填剤システムを用いてもよい。上記炭酸カルシウム系無機充填剤は、粒子の大きさの分布が0.1〜10μmであり、より好ましくは2.5〜5μmである。上記範囲から外れると、優れた剥離強度が得られにくくなる。本発明の好ましい実施例においては、多様な形態の多様な粒子サイズを有する炭酸カルシウム系充填剤を含むことが好ましい。上記無機充填剤は上記複合エポキシ樹脂100重量部に対して10〜50重量部含まれ、好ましくは10〜30重量部含まれる。無機充填剤の含量が10重量部未満であると所望の機械的物性の向上が期待しにくく、50重量部までのものは使用できるが、30重量部を超えると相分離が生じて所望の剥離強度や電気的特性を得られなくなるので好ましくない。
【0040】
このような炭酸カルシウム系無機充填剤は、エポキシ樹脂との化学結合による親和性を高めるために、シランカップリング剤を用いて表面処理したものを使用できる。このようなシランカップリング剤としては、アミノ系、エポキシ系、アクリル系、ビニル系などの様々な種類があり、その種類に制限なく使用可能である。
【0041】
上述した本発明による樹脂組成物を用いて、フレキシブル印刷回路基板(FPCB)、リジッドPCB、リジッド−フレキシブルPCB、ビルドアップ基板、FCBGA(Flip chip ball grid array)・PBGA(Plastic ball grid array)などの各種BGAなど、様々な基板の絶縁層を形成することができる。特に、本発明による樹脂組成物を使用するのに適する基板は高い剥離強度が要求される基板であって、例えば、携帯電話用薄板HDI基板が挙げられる。
【0042】
本発明による樹脂組成物を用いて通常の基板製造方法により印刷回路基板を製造することができる。
【0043】
好ましくは、本発明による樹脂組成物を用いて優れた剥離強度を有する印刷回路基板を得るための製造方法は、上述した本発明による難燃性樹脂組成物を準備するステップと、上記組成物を基板のコアレイヤ表面に積層するステップと、上記積層された基板を予備硬化するステップと、上記基板の表面をデスミア処理して表面粗さを形成するステップと、上記基板の表面に配線パターンを形成するステップと、を含むことができる。
【0044】
上記デスミア工程は印刷回路基板の表面に残っているスミア(smear)を膨潤させた後、例えば、過マンガン酸エッチング液などを用いてデスミア(desmear)することにより、表面に存在する無機充填剤を除去することができる(図3参照)。上記デスミア工程により、上述した炭酸カルシウム系無機充填剤による優れた表面粗さの加工面に仕上げることができ、これによりメッキ密着力および剥離強度が改善される。
【0045】
本発明による樹脂組成物を用いて、デスミア工程を含む通常の印刷回路基板の製造方法により基板を形成しても、1.0kN/m以上の剥離強度が得られる。
【0046】
以下、実施例により本発明をより詳しく説明し、下記の実施例は単に説明の目的のためのものであり、本発明の範囲を限定することはない。
【実施例】
【0047】
実施例1
炭酸カルシウム系無機充填剤を含む難燃性樹脂組成物の製造
ビスフェノールA型エポキシ樹脂250g、クレゾールノボラックエポキシ樹脂1375g、ゴム変性型エポキシ樹脂250g、リン系難燃性エポキシ樹脂625g、66.7重量%(溶媒:2−メトキシエタノール)のBPA(Bisphenol-A)ノボラック樹脂硬化剤1,636.06gだけ添加した後、MEK316.54gと2−メトキシエタノール524gとの混合溶媒に入れて、常温下300rpmで攪拌し、その後2.5〜3μmサイズの分布を有する不規則な板状の重質炭酸カルシウム充填剤を735.56gだけ添加した後に400rpmで3時間攪拌した。最後に、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.5gを添加後30分間攪拌して、絶縁材料組成物を製造した。
【0048】
印刷回路基板の製造
このように製造された絶縁材料組成物をPETフィルムにフィルムキャスティングしてロール(roll)形態の製品に製造した。製造された製品を405mm×510mmサイズに切断し、100℃で積層を行った。積層後に50℃〜150℃の温度で2時間30分間予備硬化を行い、デスミア工程を行った後、電気メッキ工程により25μm厚さの回路層を形成した。このように製造されたサンプルを用いて絶縁材料とメッキ層との間の剥離強度を測定し、追加に絶縁材料を完全硬化させた後ドッグボーン(dog bone)を製造して、機械的物性とCTEを測定した。Tg(TMA)は通常の方法を用いて、2回目のスキャニング時の値を採用した。測定結果を下記表1に示した。
【0049】
比較例1
球状シリカ無機充填剤を含む難燃性樹脂組成物の製造
ビスフェノールA型エポキシ樹脂250g、クレゾールノボラックエポキシ樹脂1,375g、ゴム変性型エポキシ樹脂250g、リン系難燃性エポキシ樹脂625g、66.7重量%(溶媒:2−メトキシエタノール)のBPAノボラック樹脂硬化剤を1636.06gだけ添加した後、MEK316.54gと2−メトキシエタノール524gとの混合溶媒に入れて常温下300rpmで攪拌後、平均粒子サイズが0.5μmの球状のシリカ無機充填剤を735.56g添加して、400rpmで3時間攪拌した。最後に、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.5gを添加した後、30分間攪拌して絶縁材料組成物を製造した。
【0050】
印刷回路基板の製造
上述した実施例1と同様の方法により印刷回路基板を製造し、その物性を測定した。測定結果を下記表1に示した。
【0051】
【表1】

【0052】
*物性測定方法
1)難燃性測定:UL94V(Vertical Burning Test)により試片を垂直に立て、バーナーで試片に火をつけ、火が消える程度に応じて、V−2、V−1、V−0、5Vなどに評価した。
2)TgおよびCTE測定:TA社のTMA Q400熱分析器を用いて測定し、Tgは2回目のスキャニング値を採用した。昇温速度は10℃/分とし、25〜250℃温度で測定した。
【0053】
上記表1に示すように、実施例1および比較例1において、V0の難燃性、すなわち試片の燃焼時間は両方とも10秒以下であって、ほぼ同一レベルの難燃性を有し、Tgの場合にもほぼ同様の値を示した。しかし、板状のCaCO充填剤を用いた実施例1では、CTE値、表面粗さ、剥離強度が非常に優れた値を示すことが分かった。
【0054】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、およびリン系エポキシ樹脂を含む複合エポキシ樹脂と、
硬化剤と、
硬化促進剤と、
炭酸カルシウム系無機充填剤と、
を含む、剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物。
【請求項2】
前記複合エポキシ樹脂は、
エポキシ当量が100〜700であるビスフェノールA型エポキシ樹脂と、
エポキシ当量が100〜600であるクレゾールノボラックエポキシ樹脂と、
エポキシ当量が100〜500であるゴム変性型エポキシ樹脂と、
エポキシ当量が400〜800であるリン系エポキシ樹脂と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物。
【請求項3】
前記複合エポキシ樹脂は、前記複合エポキシ樹脂100重量部に対して、
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂1〜20重量部と、
前記クレゾールノボラックエポキシ樹脂30〜70重量部と、
前記ゴム変性型エポキシ樹脂1〜20重量部と、
前記リン系エポキシ樹脂1〜30重量部と、
を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化剤は、フェノールノボラック、ビスフェノールノボラック、およびこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の、剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物。
【請求項5】
前記硬化剤は、軟化点が100〜140℃であり、水酸基当量が100〜150であるビスフェノールAノボラック型のエポキシ樹脂硬化剤であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の、剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物。
【請求項6】
前記硬化剤は、前記複合エポキシ樹脂のエポキシ基の混合当量に対して0.5〜1.3当量比で混合されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の、剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物。
【請求項7】
前記硬化促進剤は、イミダゾール系化合物であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の、剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物。
【請求項8】
前記イミダゾール系化合物は、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−アルキルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、およびこれらの混合物からなる群より選択される1種以上の化合物であることを特徴とする、請求項7に記載の、剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物。
【請求項9】
前記硬化促進剤は、前記複合エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜2重量部で混合されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の、剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物。
【請求項10】
前記炭酸カルシウム系無機充填剤は、重質炭酸カルシウム、硬質炭酸カルシウム、およびこれらの混合物からなる群より選択されるものを含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の、剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物。
【請求項11】
前記重質炭酸カルシウムが板状であることを特徴とする、請求項10に記載の剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物。
【請求項12】
前記硬質炭酸カルシウムが、立方体状、コロイド状、および針状からなる群より選択される1種以上の形態を有する硬質炭酸カルシウムを含むことを特徴とする、請求項10に記載の剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物。
【請求項13】
前記炭酸カルシウム系無機充填剤は、粒子サイズが0.1〜10μmであることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の、剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物。
【請求項14】
前記炭酸カルシウム系無機充填剤は、前記複合エポキシ樹脂100重量部に対して10〜50重量部で混合されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の、剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物。
【請求項15】
前記炭酸カルシウム系無機充填剤は、シランカップリング剤で表面処理されたことを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の、剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物。
【請求項16】
前記難燃性樹脂組成物は、デスミア工程を含む方法で基板を形成した後に、絶縁層とメッキ層の剥離強度が1.0kN/m以上の値を有することを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の、剥離強度が強化された印刷回路基板用難燃性樹脂組成物
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の、難燃性樹脂組成物を用いて製造された、剥離強度が強化された印刷回路基板。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか1項に記載の難燃性樹脂組成物を準備するステップと、
前記組成物を基板のコアレイヤ表面に積層するステップと、
前記積層された基板を予備硬化するステップと、
前記基板の表面をデスミア処理して表面粗さを形成するステップと、
前記基板の表面に配線パターンを形成するステップと、
を含む、剥離強度が強化された印刷回路基板の製造方法。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−251700(P2010−251700A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285549(P2009−285549)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】