説明

加熱装置

【課題】フィルム加熱方式の加熱装置の非通紙部昇温を改善するともに、被加熱材搬送方向の発熱分布に関する自由度を高めることにより、被加熱材の加熱性と非通紙部昇温対策の両立を図る。
【解決手段】加熱体25の通電発熱体43の裏面に絶縁層45を設け、絶縁層45に開口部46を形成し、開口部46から電極を確保して絶縁層45上に導電パターン51〜56を形成することにより、通電発熱体43の長手方向発熱領域を調整することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真方式等の画像形成装置に搭載される定着装置として用いて好適なフィルム加熱方式の加熱装置に関する。
【0002】
フィルム加熱方式の加熱装置は、加熱体と、加熱体に密着して走行する可撓性部材と、を有し、被加熱材を可撓性部材と一緒に加熱体位置を移動通過させて加熱体の熱エネルギーを可撓性部材を介して被加熱材に付与する加熱装置である。
【背景技術】
【0003】
従来、複写機やレーザービームプリンタ等の画像形成装置に用いられる像加熱装置としての定着装置における加熱方式として、フィルム加熱方式が提案され、実用化されている。
【0004】
この定着装置は、加熱体に、可撓性部材(以下、定着フィルムと記す)を加圧ローラ(加圧用弾性回転体)で密着させて摺動搬送させる。そして、定着フィルムを挟んで加熱体と加圧ローラとで形成される圧接ニップ部の定着フィルムと加圧ローラとの間に未定着画像を担持した記録材(被加熱材)を導入して定着フィルムと一緒に搬送させる。これにより、定着フィルムを介して付与される加熱体からの熱と圧接ニップ部の加圧力によって未定着画像を記録材上に固着画像として定着させるものである。
【0005】
このフィルム加熱方式の定着装置は、定着装置全体を低熱容量部材で構成することができるため、省電力化・ウェイトタイム短縮化(クイックスタート性)が可能である。
【0006】
この種の定着装置に用いられる加熱体としては、特許文献1に示されるようなものがある。これは、アルミナ(Al)や窒化アルミニウム(AlN)、炭化珪素(SiC)等の低熱容量で電気絶縁性の板状セラミック基材をベース(ヒータ基板)としている。そして、その一面に銀パラジウム(Ag/Pd)等のPTC抵抗体を用いた導電性の発熱パターン(発熱体層)、及び前記発熱パターンに通電させるためのAg等の低抵抗部材よりなる給電電極パターンをスクリーン印刷等で形成具備させている。さらに、前記発熱パターン形成面を薄肉ガラス保護層(摺動層)で覆ってなるものである。PTC抵抗体は、温度が増大するにつれて抵抗が上がっていく正の抵抗温度係数(正温度特性:PTC−Positive Temperature Coefficient)を有する。
【0007】
図13に、この加熱体の一例の模式図を示す。この加熱体500は、記録材搬送方向aに交差(直交)する方向を長手とする細長いセラミック基材501の一面側に、基材長手に沿って発熱パターン(通電発熱体)503が形成具備されている。本例では、並行2本の発熱パターン503を形成具備させている。2本の発熱パターン503の一端部側には、それぞれ、第1と第2の給電電極パターン502a・502bを電気的に導通させて形成具備させてある。また、2本の発熱パターン503の他端部側はつなぎ電極パターン502cを介して互いに電気的の導通させてある。つまり、2本の発熱パターン503はこのつなぎ電極パターン502cで直列接続されている。また、セラミック基材501の発熱パターン形成面をつなぎ電極パターン502cの部分も含めて薄肉ガラス保護層(摺動層)504で覆わせている。この加熱体500の第1と第2の給電電極パターン502a・502b側の端部には給電用コネクタ505が嵌着されて、加熱体500と給電回路部506とが電気的に接続される。そして、給電回路部506から第1と第2の給電電極パターン502a・502bを介して発熱パターン503に通電がなされることにより発熱パターン503が全長域に渡って発熱し、加熱体の有効発熱長さ領域の全体が急速昇温する。この通電発熱に際しては、例えば発熱パターン503の電極間抵抗(全体抵抗)10〜30Ω程度に対して電源部507から交流電圧100〜120V印加することにより、数百ワット以上の電力を投入して通電発熱させる。この加熱体500の昇温が、加熱体500に当接或いは近傍に配置された温度検知手段としてのサーミスタ509により検知され、温度に関する検知情報が加熱体駆動制御部(CPU)510へフィードバックされる。加熱体駆動制御部510はサーミスタ509で検知される加熱体500の温度が所定の温度(定着温度)に維持されるように、給電回路部506のトライアック508を制御して発熱パターン503に対する通電を制御する。すなわち加熱体500は所定の定着温度に温調制御される。
【0008】
ところで、フィルム加熱方式の定着装置は、低熱容量であることによりクイックスタート性に優れている反面、低熱容量であるがゆえの問題として、いわゆる非通紙部昇温現象を顕著に生じやすい。これについて以下に説明する。図13において、Aを記録材の最大通紙幅とする。ここで、通紙幅とは、記録材面において、記録材搬送方向に交差する方向の記録材寸法である。発熱パターン503の長さ(加熱体の有効発熱長さ領域)は、最大通紙幅Aと同じか、それよりも少し長い設定である。Bを最大通紙幅Aよりも幅が小さい記録材(小サイズ紙)の通紙幅とする。なお、ここでは、各種幅サイズの記録材の通紙は、いずれも記録材幅中心のいわゆる中央基準搬送であり、Sはその中央基準線(仮想線)である。Cは小サイズ紙を通紙した時の、最大通紙幅Aと小サイズ紙の通紙幅Bとの差領域である非通紙部である。小サイズ紙を通紙した時の、通紙幅Bに対応する加熱体部分と非通紙部Cに対応する加熱体部分とでは、加熱体から奪われる熱量が大きく異なる。即ち、加熱体長手方向において、記録材に熱量を奪われる通紙幅Bに対応する加熱体部分の温度は、奪熱による温度低下が補償されるように温調制御されて所定の定着温度に維持される。これに対して、記録材に熱量が奪われない非通紙部Cに対応する加熱体部分は、小サイズ紙が連続的に通紙されていくにしたがって蓄熱することで、所定の定着温度を超えて徐々に温度上昇していく。これが非通紙部昇温現象である。そして、過度の非通紙部昇温は定着装置の構成部材を熱損させて装置寿命を低下させる等の弊害を生じさせる。そのため、これら弊害を回避するべく、小サイズ紙の連続通紙時においては、単位時間当りの記録材搬送枚数(以下、小サイズ生産性とも称する)を、幅の広い大サイズ紙の生産性に対して大幅に落とさざるを得なかった。
【0009】
上記の非通紙部昇温を解消するための加熱体の構成として、特許文献2に示されるようなものがある。これは、基材に複数の発熱体を設け、発熱体毎に長手方向の長さが異なる構成とする。そして、小サイズ紙通紙時には長手方向の長さが短い発熱体を駆動して定着を行なうことにより、非通紙部での発熱を最小限に抑えるものである。
【0010】
図14に、この加熱体の一例の模式図を示す。図13の加熱体と共通する構成部材・部分には共通の符号を付して再度の説明を省略する。
【0011】
この加熱体500は、基材501の一面側に、それぞれ、長さを異ならせた第1から第3の3本の発熱パターン(通電発熱体)503−1、503−2、503−3を並行させて形成具備させてある。第1の発熱パターン503−1は大サイズ記録材の通紙幅W1に対応する長さ寸法に設定してある。第2の発熱パターン503−2は中サイズ記録材の通紙幅W2に対応する長さ寸法に設定してある。第3の発熱パターン503−3は小サイズ記録材の通紙幅W3に対応する長さ寸法に設定してある。W1>W2>W3である。この例においては、この3本の発熱パターンは、基材501の短手方向(加熱体幅方向)に関して、記録材搬送方向aの上流側から下流側に、第1、第2、第3の発熱パターンの順に配置されている。
【0012】
そして、加熱体駆動制御部510は、大サイズ記録材の通紙時には、給電回路部506の第1のトライアック508−1をオンにする。これにより、第1の発熱パターン503−1の一端部側の第1の給電電極パターン502−1と他端部側の共通電極パターン502−4との間に通電する。そうすると、大サイズ記録材の通紙幅W1に対応した長さの第1の発熱パターン503−1だけが発熱し、その長さ領域の加熱体部分が所定の定着温度に温調制御される。
【0013】
また、通電駆動制御部510は、中サイズ記録材の通紙時には、給電回路部506の第2のトライアック508−2をオンにする。これにより、第2の発熱パターン503−2の一端部側の第2の給電電極パターン502−2と他端部側の共通電極パターン502−4との間に通電する。そうすると、中サイズ記録材の通紙幅W2に対応した長さの第2の発熱パターン503−2だけが発熱し、その長さ領域の加熱体部分が所定の定着温度に温調制御される。
【0014】
また、加熱体駆動制御部510は、小サイズ記録材の通紙時には、給電回路部506の第3のトライアック508−3をオンにする。これにより、第3の発熱パターン503−3の一端部側の第3の給電電極パターン502−3と他端部側の共通電極パターン502−4との間に通電する。そうすると、小サイズ記録材の通紙幅W3に対応した長さの第3の発熱パターン503−3だけが発熱し、その長さ領域の加熱体部分が所定の定着温度に温調制御される。
【0015】
このように図14の加熱体500は、第1から第3の3本の発熱パターン503−1〜503−3が、電極パターン502−1〜502−4を介して個別に通電可能な構成となっており、記録材の幅によって、駆動する発熱パターンを選択可能な構成になっている。これにより、非通紙部昇温を解消している。なお、505−1は第1から第3の給電電極パターン502−1〜502−3に対する給電用コネクタである。505−2は共通電極パターン502−4に対する給電用コネクタである。
【0016】
しかしながら、複数の発熱パターンを有する加熱体において、多くの種類の紙幅に対応しようとすれば、発熱パターンの数もそれに応じて多くなり、基材501の幅の増大につながってしまう。特に、基材501の両端部側に電極を設ける場合は、電極部、コネクタが長手両端に必要になる。そのため、装置の大型化を招くばかりか、コネクタ505−1、505−2からの束線の這いまわしも複雑化するため、組立て性が悪化するほか、束線コストも余分にかかることになり、この点の更なる改善が望まれている。
【0017】
また、加熱体における記録材搬送方向(加熱体幅方向)の発熱分布は、均一又は記録材搬送方向上流側寄りに発熱ピークがあることが望ましい。これは、記録材に熱が加えられてから、圧接ニップ部で挟持搬送されることにより、未定着画像が均一化される時間が十分確保できるからである。
【0018】
しかし、複数の発熱パターンを設けた場合、使用する発熱パターンによって、発熱パターンの基材501上の位置が異なるため、加熱体幅方向の発熱分布が使用する発熱パターンによって異なることとなる。例えば、記録材搬送方向下流側に配置された第3の発熱パターン503−3を用いて定着を行なう場合を考える。この場合は、図15に示すごとく、記録材搬送方向上流側に配置された第1の発熱パターンにくらべて、定着温度がピークを迎えてから、圧接ニップ部を記録材が挟持搬送される時間が短くなる。これは、定着性に関して不利になる。このため、下流側の第3の発熱パターン503−3を用いる場合は記録材の搬送速度を落とすなど、生産性の低下が発生していた。
【0019】
また、上記非通紙部昇温を低減させるための他の加熱体構成として、負の抵抗温度係数(負温度特性)を有するNTC抵抗体を加熱体の発熱パターンとして用いる方法が特許文献3等で提案されている。
【0020】
負の抵抗温度係数を有するNTC抵抗体は、温度が増大するにつれて抵抗が下がっていく特性を有する(NTC:Negative Temperature Coefficient)。
【0021】
この種の加熱体は、例えば酸化ルテニウム(RuO)、窒化タンタル(TaN)等、金属的導電性質を有する化合物に絶縁性ガラス成分を混合した材料や、グラファイトなどのカーボン系材料を、発熱パターン形成材として用いたものである。スクリーン印刷等によって発熱パターンが形成されている。この発熱パターンは、電気伝導的にNTC抵抗体であり、PTC抵抗体と逆の性質を有していることによって、上記非通紙部昇温の悪化を防止するというものである。
【0022】
しかしながら、上に挙げたNTC抵抗体を加熱体の発熱パターンとして用いる場合、以下に示す課題があった。
【0023】
例えば、酸化ルテニウムとガラス成分の混合体において、NTC特性を付与するための材料配合により形成した場合、それ自身の体積抵抗値が非常に大きくなってしまう。この材料を発熱パターンとして形成した場合、電極間抵抗値(全体抵抗)は数百Ω以上になり、定着装置に用いる加熱体の通電抵抗としては高すぎる抵抗値になってしまっていた。また、全体抵抗を下げるためにAg/Pd等の金属系抵抗体を混合させるとNTCの絶対値が小さくなり、上記非通紙部昇温の緩和に対して効果が少なくなってしまっていた。
【0024】
さらに、上述の特許文献4には、炭化珪素を主成分とする導電セラミックを略半円断面の棒状に形成することにより、NTC通電発熱体として用いる構成が開示されている。このような導電セラミック構成の場合、電極は加熱体の両端部から取る必要があり、記録材の加熱定着に必要な部分以外での通電発熱量が大きく、この点の更なる改善が望まれている。
【特許文献1】特開2005−142008号公報
【特許文献2】特開2000−77170号公報
【特許文献3】特開平06−019347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
以上述べたように、従来の加熱体構成においては、記録材搬送方向の発熱分布を均一にしたり、定着性に関して好ましい形に分布を調整したりすることと、非通紙部昇温対策を両立させることが困難であった。
【0026】
また、棒状や板状に形成した導電セラミックを発熱体として用いた加熱体の場合は、両端部以外から電極を取ることが困難であった。
【0027】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、第1の目的は、フィルム加熱方式の加熱装置の非通紙部昇温を改善するともに、被加熱材搬送方向の発熱分布構成の自由度を高めることにより、被加熱材の加熱性を向上させる。これによって、この種の加熱装置の品質・信頼性を向上させることである。
【0028】
第2の目的は、棒状や板状に形成した導電セラミックを通電発熱体として用いた加熱体を採用した加熱装置において、電極位置の自由度を増し、端部昇温に有利な構成を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記の目的を達成するための本発明に係る加熱装置の代表的な構成は、加熱体と、前記加熱体に密着して走行する可撓性部材と、を有し、被加熱材を前記可撓性部材と一緒に加熱体位置を移動通過させて前記加熱体の熱エネルギーを前記可撓性部材を介して前記被加熱材に付与する加熱装置であり、前記加熱体は、前記被加熱材の移動方向と交差する方向を長手とし、その長手方向に異なる少なくとも二箇所の位置から通電されて発熱する通電発熱体を有し、少なくとも前記可撓性部材に接触しない面に、開口部を設けた絶縁層を有し、前記開口部において前記通電発熱体に導電部材が接続されて前記通電発熱体に対する通電電極が確保されていることを特徴とする。
【0030】
また、上記の目的を達成するための本発明に係る加熱装置の他の代表的な構成は、加熱体と、前記加熱体に密着して走行する可撓性部材と、を有し、被加熱材を前記可撓性部材と一緒に加熱体位置を移動通過させて前記加熱体の熱エネルギーを前記可撓性部材を介して前記被加熱材に付与する加熱装置であり、前記加熱体は、立法晶系の炭化珪素を主成分とするセラミック半導体であって、前記被加熱材の移動方向と交差する方向を長手とし、その長手方向に異なる少なくとも二箇所の位置から通電されて発熱する通電発熱体を基材としており、前記基材の少なくとも前記可撓性部材に接触しない面に、開口部を設けた絶縁層を有し、前記開口部において前記基材に導電部材が接続されて前記基材に対する通電電極が確保されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明の加熱装置によれば、加熱体の長手方向の任意の位置から通電電極を取ることが可能となり、複数の被加熱材のサイズに最適化されたパターンを形成することにより、非通紙部昇温を大幅に改善することが可能となる。
【0032】
また、加熱体の被加熱材搬送方向における発熱分布形成の自由度が高まるため、被加熱材搬送方向に均一な発熱分布を持つ通電発熱体を形成したり、装置に導入される被加熱材の幅に関わらず任意の搬送方向発熱分布を持つ加熱体を構成することが可能となる。
【0033】
さらに、棒状や板状に形成した導電セラミックを通電発熱体として用いた加熱体を採用した加熱装置においても、通電電極位置の自由度を増し、端部昇温に有利な構成を可能にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
[実施例1]
(1)画像形成装置例
図1は本実施例における画像形成装置の概略構成模型図である。本実施例の画像形成装置は電子写真方式を用いたレーザープリンタである。この画像形成装置1は、搬送可能な最大用紙幅が210mm、搬送速度が180mm/secであり、A4サイズ(210mm×297mm)を縦通紙で30枚/分の出力が可能な、搬送基準が長手中央(記録材幅中心の中央基準)である。
【0035】
画像形成装置1のコントローラ部(制御基板、制御回路部、CPU)2にホストコンピュータ(外部ホスト装置)3からインターフェイスを介してプリント指令が入力される。そうすると、像担持体であるドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)4が矢印の時計方向に所定の速度で回転駆動される。また、ホストコンピュータ3からコントローラ部2に入力した電気的画像情報(画像信号)が画像処理される。
【0036】
また、ホストコンピュータ3からコントローラ部2に入力した記録材選択指定情報により、第1〜第3の給紙カセット5・6・7のうちの、選択指定されたサイズの記録材(以下、用紙と記す)Pが収容されている給紙部の給紙ローラ9が駆動される。これにより、給紙ローラ9が駆動された給紙カセットから用紙Pが一枚分離給紙される。また手差し給紙部8からの給紙の場合は、この手差し給紙部8の給紙ローラ9が駆動されることにより手差し給紙部8にセットされている用紙Pが一枚分離給紙される。その給紙された記録材Pのサイズが紙サイズ検知センサ(不図示)により検知され、その紙サイズ検知情報がコントローラ部2に入力する。コントローラ部2が、ホストコンピュータ3又は紙サイズ検知センサからの用紙のサイズ情報(装置に導入される被加熱材としての用紙のサイズ情報)を取得する手段として機能している。
【0037】
第1〜第3の給紙カセット5・6・7或いは手差し給紙部8から給紙された用紙Pは、搬送ガイド(シートパス)10を通って画像転写部へ搬送される。搬送ガイド10を通る用紙Pは途中でトップセンサ11のレバーを倒す。これにより、用紙の先端がトップセンサ位置を通過したことが検知される。この後、用紙Pの後端がトップセンサ11を通過するまで、トップセンサ11は紙有状態を検知し続ける。トップセンサ11のレバーは用紙Pの後端が通過すると元に戻る。これにより、用紙Pの後端がトップセンサ11の位置を通過したことが検知される。
【0038】
一方、回転駆動された感光ドラム4は、帯電ローラ12により所定の極性・電位に一様に帯電される。その帯電面に対してレーザー走査露光装置13より画像情報の走査露光(画像情報の書き込み)Lがなされる。レーザー走査露光装置13はコントローラ部2から入力する画像処理済みの電気的画像情報に対応して変調されたレーザー光を感光ドラム4に出射して走査露光する。これにより、感光ドラム4の面に走査露光パターンに対応した静電潜像が形成される。そして、その潜像が現像装置14によってトナー像として可視化される。上記の像露光と現像は、いわゆるイメージ露光と反転現像とを組み合わせて用いられることが多い。
【0039】
感光ドラム4に形成されたトナー像は、引き続く感光ドラム4の回転により、感光ドラム4と転写ローラ15との当接部である画像転写部(転写ニップ部)に至り、この画像転写部に搬送された用紙Pの面に順次に転写されていく。転写ローラ15には、用紙Pが画像転写部を通過している間、トナーの帯電極性とは逆極性の帯電バイアスが印加される。これにより、感光ドラム4側のトナー像が用紙P側に静電的に転写される。画像転写部において、感光ドラム4側のトナー像の先端部と、用紙P側の画像形成先端部とを一致させるために、トップセンサ11の用紙先端検知信号により、レーザー走査露光装置13による感光ドラム4の走査露光開始タイミングが制御されている。
【0040】
画像転写部を出た用紙Pは感光ドラム4の面から分離され、搬送ガイド17に導かれて加熱装置たる定着装置(定着器)18へ導入され、熱及び圧力が印加されて、用紙の先端側からトナー像が定着されていく。そして、定着装置18によりトナー像の定着処理を受けた用紙は、搬送ガイド19に導かれて、プリンタ上面の排紙トレイ20上に画像形成物(プリント、コピー)として排紙される。
【0041】
また、用紙分離後の感光ドラム4の面はクリーニング装置16により転写残りトナー等の残留付着物の除去を受けて清浄面化されて繰り返して画像形成に供される。
【0042】
(2)定着装置18
図2は定着装置18の要部の拡大横断面模型図である。この定着装置18は、特開平4−44075号公報等に記載の、加圧ローラを駆動するテンションレスタイプのフィルム加熱方式の加熱装置である。
【0043】
21は加熱部材としての定着フィルムユニット、22は加圧部材としての弾性加圧ローラであり、該両者21・22を上下に並行に配列し、加圧ローラ22の弾性に抗して圧接させて両者21・22間に定着ニップ部Nを形成させている。
【0044】
定着フィルムユニット21において、23は加熱体支持体であり、例えば、PPS・PAI・PI・PEEK・液晶ポリマー等の樹脂や、これらの樹脂とセラミックス・金属・ガラス等との複合材料で形成された断熱性・高耐熱性・剛性を有する成形品である。この加熱体支持体23は、図面に垂直な方向を長手とする部材であり、その下面に長手に沿って設けた溝部に、図面に垂直な方向を長手とする加熱体24を嵌め込んで保持させてある。加熱体24は定着装置18の熱源として機能している。この加熱体24の構成については次の(3)項で詳述する。25は可撓性部材としての、自由状態において円筒状の定着フィルムである。この定着フィルム25は、加熱体24を保持させた加熱体支持体23に対してルーズに外嵌させてある。
【0045】
定着フィルム25は、例えば、耐熱性のPTFE、PFA又はFEP等を主成分とする無端状の単層フィルムである。或いは、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES又はPPS等を主成分とする無端状のベースフィルム(基層)の外周面に、PTFE、PFA又はFEP等をコーティングした複合層フィルムに構成されている。また、定着フィルム25は、全層厚が100μm以下、好ましくは40μm以上80μm以下に設定している。定着フィルム25は、可撓性を有する、金属円筒体や金属層を有する複合層構成の円筒体であってもよい。
【0046】
そして、定着フィルムユニット21の加熱体24に対して、加圧ローラ22を定着フィルム25を挟ませて加圧ローラ22の弾性に抗して加圧手段(不図示)にて加圧して、加熱定着に必要な所定幅の定着ニップ部Nを形成させてある。定着ニップ部Nの幅とは記録材搬送方向a(フィルム回転方向)におけるニップ寸法である。
【0047】
加圧ローラ22は、鉄・アルミニウム等の円柱状若しくは略円柱状の芯金22aの外周面に、耐熱性及び離型性を有するシリコーンゴム等を主成分とする円筒状の弾性層22bを被覆するなどして構成されている。
【0048】
加圧ローラ22は、前記芯金22aが駆動機構Mから駆動力を受けることにより記録材搬送方向である矢印の反時計方向に所定の速度で回転駆動される。この加圧ローラ22の回転駆動により、加圧ローラ22と定着フィルム25の外面との定着ニップ部Nにおける摩擦力で定着フィルム25に回転力が作用する。これにより、定着フィルム25が加熱体支持体23の外回りをフィルム内面が加熱体24の下向き面に密着して摺動しながら矢印の時計方向に従動回転する。定着フィルム25と加熱体24及び加熱体支持体23との接触部には潤滑剤を介在させて、定着フィルム25の摺動抵抗を低減させている。加熱体支持体23は、加熱体24を支持するとともに、回転する定着フィルム25の内面を長手方向全域にわたってガイドする機能をもつ。
【0049】
加圧ローラ22の回転駆動による定着フィルム25の回転がなされ、加熱体24に対する通電により加熱体24が昇温して所定の定着温度に立ち上がって温調された状態において、定着ニップ部Nに未定着トナー像taを担持した記録材Pが導入される。定着ニップ部Nは導入された記録材Pを挟持搬送するとともに加熱加圧する。即ち、記録材Pは、定着ニップ部Nにおいて、トナー像担持面が定着フィルム25の外面に密着して定着フィルム25と一緒に定着ニップ部Nを搬送されていく。そして、その搬送過程で、加熱体24の熱が定着フィルム25を介して記録材Pに伝達され、未定着トナー像taが記録材Pの面に熱と圧力で固着画像tbとして定着される。定着ニップ部Nを通った記録材Pは定着フィルム25の面から曲率分離して排出搬送されていく。
【0050】
即ち、この定着装置18は、加熱体24と、この加熱体24に密着して走行する可撓性部材としての定着フィルム25を有する。そして、被加熱材としての用紙Pを定着フィルム25と一緒に加熱体位置である定着ニップ部Nを移動通過させて加熱体24の熱エネルギーを定着フィルム25を介して用紙Pに付与する加熱装置である。
【0051】
31は加熱体24に対する給電回路部であり、加熱体24はこの給電回路部31から通電されることで昇温する。32は加熱体24の温度を検出する温度検知手段としてのサーミスタである。このサーミスタ32は、加熱体24の背面側(定着フィルム25が接触摺動する面とは反対側の面)において、用紙搬送の中央基準線対応位置付近に配置されており、用紙通紙域内における加熱体温度を検知する。このサーミスタ32の加熱体温度に関する検知情報が、コントローラ部2の加熱体駆動制御部33へフィードバックされる。加熱体駆動制御部33はサーミスタ32で検知される加熱体24の温度が所定の温度(定着温度)に維持されるように、給電回路部31を制御して加熱体24に対する通電を制御する。即ち、加熱体24の通紙部が所定の定着温度に温調制御される。
【0052】
(3)加熱体24の構成
ここで、以下の説明において、加熱体24と加熱体基材(ヒータ基板)に関して、表面側とは定着フィルム25と対面する側であり、背面側とは定着フィルム25と対面する側とは反対面側である。
【0053】
図3は、加熱体24の表面側の平面模型図である。図4は、加熱体24の背面側の平面模型図と、通電系統のブロック図である。図5は、図4における(5)−(5)線に沿う横断面(端面)模型図である。図6は、図4における(6)−(6)線に沿う横断面(端面)模型図である。図7は加熱体24の構成部材・部分の分解斜視模型図である。なお、図面に描いた加熱体やその構成部材・部分の長さ・幅・厚み等の相互寸法比率、各種サイズ用紙の通紙幅の相互寸法比率は、以下に記載の実寸比率に対応しているものではない。
【0054】
本実施例の加熱体24は、加熱体基材41の背面側に発熱体層(通電発熱体)43を設けた、背面加熱型の加熱体である。そして、本実施例の加熱体24は、それぞれ中央基準で縦送り搬送される、大サイズ用紙としてのA4サイズ用紙、中サイズ用紙としてのB5サイズ用紙、小サイズ用紙としてA5サイズ用紙に対して最適化した加熱体構成である。A4サイズ用紙は210mm×297mm、B5サイズ用紙は182mm×257mm、A5サイズ用紙は148mm×210mmである。
【0055】
本実施例の加熱体24は、加熱体基材41として、記録材搬送方向aに交差する方向を長手とする、平板状の細長いセラミック部材(セラミック基材:電気絶縁性・耐熱性・良熱伝導性の部材)を用いている。具体的には、長さ240mm、幅5mm、厚み0.6mmの窒化アルミニウム(AlN)基材である。
【0056】
この基材41の表面側には、スクリーン印刷等によって、ガラス層等の耐熱性摺動層42が形成されている。定着フィルム25はこの摺動層42の表面に密着して摺動移動する。
【0057】
基材41の背面側には、スクリーン印刷等によって、通電により発熱する発熱体層43が形成されている。本実施例において、この発熱体層43は、銀パラジウム(Ag/Pd)等を用いたPTC抵抗体層である。この発熱体層43の長さは、大サイズ用紙としてのA4サイズ用紙の通紙幅W1よりも少し長く、幅は基材41の幅よりも少し短い、横長・幅広の帯状パターン層として形成されている。即ち、発熱体層43は、定着フィルム25が加熱体24に密着する短手方向幅に均一(略均一も含む)に形成されている。
【0058】
この発熱体層43の表面には、その長手方向において、大サイズ用紙としてのA4サイズ用紙の通紙幅W1の両端部に対応する位置に第1と第2の導電層44aと44bが形成されている。また、中サイズ用紙としてのB5サイズ用紙の通紙幅W2の両端部に対応する位置に第3と第4の導電層44cと44dが形成されている。また、小サイズ用紙としてA5サイズ用紙の通紙幅W3の両端部に対応する位置に第5と第6の導電層44eと44fが形成されている。上記の第1・第3・第5の導電層44a・44c・44eと、第2・第4・第6の導電層44b・44d・44fは、用紙搬送の中央基準線Sに関して対称の位置関係にある。
【0059】
上記の第1乃至第6の導電層44(a・b・c・d・e・f)は、それぞれ、Ag等の低抵抗部材を用いてスクリーン印刷等によって、発熱体層43の幅寸法(長手方向と交差する短手方向の寸法)に略対応する長さの短冊状パターンの形態で形成されている。
【0060】
上記のように第1乃至第6の導電層44(a・b・c・d・e・f)を形成具備させた発熱体層43を被わせて、スクリーン印刷等によって、ガラス・耐熱性樹脂等の絶縁層45が形成されている。ただし、この絶縁層45は、第1乃至第6の各導電層44(a・b・c・d・e・f)の一部に対応する部分をそれぞれ開口部(スルーホール)46にして形成されている。
【0061】
そして、上記の絶縁層45の上面と基材41の長手方向一端部側の背面とにかけて、Ag等の低抵抗部材を用いてスクリーン印刷等によって、第1乃至第6の6本の導電部材(通電電極)51乃至56が形成されている。
【0062】
第1の導電部材51の絶縁層45側の端部51aは、第1の導電層44aに対応している開口部46において、第1の導電層44aと電気的に接続している。また、この第1の導電部材51の基材41側の端部51bは、第1の給電用電極部とされている。
【0063】
第2の導電部材52の絶縁層45側の端部52aは、第2の導電層44bに対応している開口部46において、第2の導電層44bと電気的に接続している。また、この第2の導電部材52の基材41側の端部52bは、第2の給電用電極部とされている。
【0064】
第3の導電部材53の絶縁層45側の端部53aは、第3の導電層44cに対応している開口部46において、第3の導電層44cと電気的に接続している。また、この第3の導電部材53の基材41側の端部53bは、第3の給電用電極部とされている。
【0065】
第4の導電部材54の絶縁層45側の端部54aは、第4の導電層44dに対応している開口部46において、第4の導電層44dと電気的に接続している。また、この第4の導電部材54の基材41側の端部54bは、第4の給電用電極部とされている。
【0066】
第5の導電部材55の絶縁層45側の端部55aは、第5の導電層44eに対応している開口部46において、第5の導電層44eと電気的に接続している。また、この第5の導電部材55の基材41側の端部55bは、第5の給電用電極部とされている。
【0067】
第6の導電部材56の絶縁層45側の端部56aは、第6の導電層44fに対応している開口部46において、第6の導電層44fと電気的に接続している。また、この第6の導電部材56の基材41側の端部56bは、第6の給電用電極部とされている。
【0068】
上記加熱体24の第1乃至第6の給電用電極部51b・52b・53b・54b・55b・56bを配置した側の端部には給電用コネクタ34が嵌着されて、加熱体24と給電用回路部31とが電気的に接続される。
【0069】
そして、コントローラ部2の加熱体駆動制御部33は、大サイズ用紙としてのA4サイズ用紙の通紙時には、第1のトライアック35をオンにする。これにより、第1と第2の給電用電極部51b・52b間に通電がなされる。そうすると、発熱体層43の第1と第2の導電層44a・44b間の発熱体層部分、即ち、A4サイズ用紙の通紙幅W1に対応する長さ範囲の発熱体層部分が発熱する。そして、加熱体24の昇温が、加熱体24に当接或いは近傍に配設された温度検知手段としてのサーミスタ32により検知され、温度に関する検知情報が加熱体駆動制御回路部33にフィードバックされる。加熱体駆動制御回路部33はサーミスタ32で検知される加熱体24の温度が所定の温度(定着温度)に維持されるように、給電回路部31の第1のトライアック35を制御して発熱体層43に対する通電を制御する。即ち、電源部38のAC電圧を位相制御或いは波数制御等のパルス幅変調をかけ、サーミスタ32による加熱体24の検知温度が一定となるように加熱体24に対する通電を制御している。また、加熱体24の過昇温を防止する安全素子(温度ヒューズ、サーモスイッチ等)39が通電ライン上に直列接続され、加熱体24に当接或いは近傍に配置されている。サーミスタ32と安全素子39は小サイズ用紙としてのA5サイズ用紙の通紙幅W3内に対応する加熱体部分に対応させて配設してある。
【0070】
また、加熱体駆動制御部33は、中サイズ用紙としてのB5サイズ用紙の通紙時には、第2のトライアック36をオンにする。これにより、第3と第4の給電用電極部53b・54b間に通電がなされる。そうすると、発熱体層43の第3と第4の導電層44c・44d間の発熱体層部分、即ち、B5サイズ用紙の通紙幅W2に対応する長さ範囲の発熱体層部分が発熱する。そして、その長さ領域の加熱体部分が所定の定着温度に温調制御される。発熱体層43の非通紙部に対応する部分には通電がなされず発熱しない。従って、加熱体24に非通紙部昇温は生じない。
【0071】
また、加熱体駆動制御部33は、小サイズ用紙としてのA5サイズ用紙の通紙時には、第3のトライアック37をオンにする。これにより、第5と第6の給電用電極部55b・56b間に通電がなされる。そうすると、発熱体層43の第5と第6の導電層44e・44f間の発熱体層部分、即ち、A5サイズ用紙の通紙幅W3に対応する長さ範囲の発熱体層部分が発熱する。そして、その長さ領域の加熱体部分が所定の定着温度に温調制御される。発熱体層43の非通紙部に対応する部分には通電がなされず発熱しない。従って、加熱体24に非通紙部昇温は生じない。
【0072】
このように、加熱体25の通電発熱体43の裏面に絶縁層45を設け、絶縁層45に開口部46を形成する。そして、開口部46から電極を確保して絶縁層45上に導電部材(導電パターン)51〜56を形成することにより、通電発熱体43の長手方向発熱領域を調整することを可能にする。これにより、フィルム加熱方式の加熱装置の非通紙部昇温を改善するともに、被加熱材搬送方向の発熱分布に関する自由度を高めることにより、定着性と非通紙部昇温対策の両立を図ることができる。
【0073】
本実施例の画像形成装置(最大通紙幅:210mm、搬送速度:180mm/秒、A4サイズ生産性:30枚/分)において、給紙間隔を調整しながら、坪量80g/mの中サイズ用紙(B5)及び小サイズ用紙(A5)を200枚連続通紙させた。いずれのサイズの用紙も、200枚連続通紙において、定着装置18が熱損しない程度の非通紙部昇温に収まるような生産性として、30枚/分を維持することが出来た。
【0074】
前述した図13に示す従来の加熱体500を用いて、同じ検証をおこなったところ、B5サイズ生産性の最大値は10枚/分、A5サイズ生産性の最大値は6枚/分だった。本発明に係る加熱体を用いることによって、小サイズの生産性を大幅に向上させることができた。
【0075】
上記のように、本実施例における加熱体24は、被加熱材である用紙Pの移動方向と交差する方向を長手とし、その長手方向に異なる少なくとも二箇所の位置から通電されて発熱する通電発熱体である発熱体層43を有する。そして、少なくとも可撓性部材である定着フィルム25に接触しない面に、開口部46を設けた絶縁層45を有し、開口部46において発熱体層43に導電部材51・52・53・54・55・56が接続されて発熱体層43に対する通電電極が確保されている。
【0076】
より具体的には、加熱体24は、セラミック基材41と、セラミック基材上に形成された通電発熱体43と、通電発熱体の上に形成された絶縁層45と、を有する。そして、絶縁層45は複数の開口部46を有し、開口部46より通電発熱体43に接続し、絶縁層上に形成された導電部材51・52・53・54・55・56を有する。導電部材51・52・53・54・55・56は、終端部がセラミック基材41の長手方向の片側に向けてパターン形成されている。
【0077】
そして、加熱体24に複数存在する通電電極51b・52b・53b・54b・55b・56bのいずれに通電するかを制御可能である。より具体的には、装置に導入される被加熱材である用紙Pのサイズ情報に応じて、加熱体24に複数存在する通電電極51b・52b・53b・54b・55b・56bのいずれに通電するかを制御可能である。さらにより具体的には、装置に導入される被加熱材のサイズ情報を取得する手段(コントローラ部3)を有し、取得した被加熱材のサイズ情報に応じて、加熱体に複数存在する通電電極のいずれに通電するかを制御可能である。
【0078】
本実施例においては、定着フィルム25の材質として、ポリイミド等の耐熱性樹脂を用いたが、定着フィルムの材質として、SUS、Ni等の金属を圧延加工等によってフィルム状に加工したものを用いても良い。また、フィルムにシリコーンゴム等の弾性層を被覆し、さらにフッ素チューブ等を被覆することにより、カラー画像形成装置に対応させた定着フィルムを用いることも可能である。
【0079】
加熱体24の摺動層42としては、樹脂コーティング、特にポリイミドコーティングを用いた系としても良い。
【0080】
本実施例の加熱体24では、通電発熱体である発熱体層43は一本しか用いていないが、通電発熱体として複数の発熱体層43を持つ加熱体に対しても、本発明を適用することが可能である。即ち、発熱体層43は、定着フィルム25が加熱体24に密着する短手方向幅の中に複数本形成されている形態とすることが可能である。この場合、その複数本形成される発熱体層は、発熱体層間において、用紙搬送方向に任意の発熱量分布を持たせても良い。即ち、複数本形成される発熱体層は異なる抵抗値を持つ形態とすることが可能である。
【0081】
また、導電部材51・52・53・54・55・56が通電電極側の終端部を除き、前記絶縁層45(第1の絶縁層)と異なる絶縁層47(第2の絶縁層)により被覆されている加熱体形態とすることも可能である。
【0082】
さらに、本実施例においては、A4サイズ、B5サイズとA5サイズに最適化した発熱体構成を用いたが、これ以外のサイズ(例えばUSレターサイズとEXEサイズや封筒などの組合せ)に最適化した加熱体構成を採用することも可能である。また、導電部材(通電電極)の個数も任意に増やすことが可能であり、4つ以上の用紙サイズに対応することも可能である。
【0083】
[実施例2]
図8は、本実施例における加熱体24の表面側の平面模型図である。図9は、加熱体24の背面側の平面模型図と、通電系統のブロック図である。図10は、図9における(10)−(10)線に沿う横断面(端面)模型図である。図11は、図9における(11)−(11)線に沿う横断面(端面)模型図である。図12は加熱体24の構成部材・部分の分解斜視模型図である。実施例1の図3乃至図7に示した加熱体24と共通する構成部材・部分には同じ符号を付して再度の説明を省略する。また、画像形成装置の構成、及び加熱装置である定着装置の構成は、実施例1における図1の画像形成装置の構成、及び図2の定着装置18の構成と同じであるから再度の説明を省略する。
【0084】
本実施例の加熱体24は、実施例1の加熱体24のように電気絶縁性の加熱体基材41に発熱体層43を形成するのではなく、加熱体基材自体に抵抗を持たせ、この加熱体基材に直接電圧を印加することにより発熱させ、加熱定着を行なうことを特徴とする。
【0085】
本実施例においては、加熱体基材41Aとして、β型のSiCを主成分とする導電性セラミック(立方晶系の炭化珪素を主成分とするセラミック半導体)を使用し、長さ240mm、幅5mm、厚み1mmの寸法で形成した。
【0086】
基材41Aとしての、β型のSiCを主成分とする導電性セラミックは、(株)ブリヂストン社製、商品名:ピュアベータ−R、体積抵抗値:4探針法で約0.1Ω・cm、抵抗温度係数:室温付近〜200℃までの範囲で−3000ppm/K)である。
【0087】
この加熱体基材41Aの表面側に、実施例1の加熱体24と同様に、ガラス層・樹脂コーティング等の耐熱性摺動層42が形成されている。
【0088】
また、基材41Aの背面側に、実施例1の加熱体24と同様に、第1乃至第6の導電層44a・44b・44c・44d・44e・44f、開口部46を有する絶縁層45、第1乃至第6の導電部材51・52・53・54・55・56が形成されている。
【0089】
この加熱体24に対する通電系統、及び通電制御も実施例1の加熱体24の場合と同様である。
【0090】
コントローラ部2の加熱体駆動制御部33は、大サイズ用紙としてのA4サイズ用紙の通紙時には、第1のトライアック35をオンにする。これにより、第1と第2の給電用電極部51b・52b間に通電がなされる。そうすると、加熱体基材41Aの第1と第2の導電層44a・44b間の部分、即ち、A4サイズ用紙の通紙幅W1に対応する長さ範囲の加熱体基材部分が発熱する。そして、加熱体24の昇温が、加熱体24に当接或いは近傍に配設された温度検知手段としてのサーミスタ32により検知され、温度に関する検知情報が加熱体駆動制御回路部33にフィードバックされる。加熱体駆動制御回路部33はサーミスタ32で検知される加熱体24の温度が所定の温度(定着温度)に維持されるように、給電回路部31の第1のトライアック35を制御して加熱体基材41Aに対する通電を制御する。
【0091】
また、加熱体駆動制御部33は、中サイズ用紙としてのB5サイズ用紙の通紙時には、第2のトライアック36をオンにする。これにより、第3と第4の給電用電極部53b・54b間に通電がなされる。そうすると、加熱体基材41Aの第3と第4の導電層44c・44d間の部分、即ち、B5サイズ用紙の通紙幅W2に対応する長さ範囲の加熱体基材部分が発熱する。そして、その長さ領域の加熱体部分が所定の定着温度に温調制御される。加熱体基材41Aの非通紙部に対応する部分には通電がなされず発熱しない。従って、加熱体24に非通紙部昇温は生じない。
【0092】
また、加熱体駆動制御部33は、小サイズ用紙としてのA5サイズ用紙の通紙時には、第3のトライアック37をオンにする。これにより、第5と第6の給電用電極部55b・56b間に通電がなされる。そうすると、加熱体基材41Aの第5と第6の導電層44e・44f間の部分、即ち、A5サイズ用紙の通紙幅W3に対応する長さ範囲の加熱体基材部分が発熱する。そして、その長さ領域の加熱体部分が所定の定着温度に温調制御される。加熱体基材41Aの非通紙部に対応する部分には通電がなされず発熱しない。従って、加熱体24に非通紙部昇温は生じない。
【0093】
本実施例の加熱体24を用いて、実施例1の加熱体と同様に、中サイズ用紙(B5)及び小サイズ用紙(A5)の生産性を確認した。結果は、いずれのサイズの用紙も、200枚連続通紙において、定着装置が熱損しない程度の非通紙部昇温に収まるような生産性として、A4サイズと同様の30枚/分を維持することが出来た。
【0094】
本実施例における加熱体24は、立方晶系の炭化珪素を主成分とするセラミック半導体であって、被加熱材の移動方向と交差する方向を長手とし、その長手方向に異なる少なくとも二箇所の位置から通電されて発熱する通電発熱体を基材41Aとしている。そして、この基材41Aの少なくとも定着フィルム25に接触しない面に、開口部46を設けた絶縁層45を有し、開口部46において基材41Aに導電部材51・52・53・54・55・56が接続されている。これにより、基材41Aに対する通電電極が確保されている。即ち、加熱体24は、基材41A上に形成された絶縁層45を有し、絶縁層45は複数の開口部46を有し、開口部46より基材41Aに接続し、絶縁層上に形成される導電部材51・52・53・54・55・56を有する。導電部材51・52・53・54・55・56は、通電電極側の終端部が基材41Aの長手方向の片側に向けてパターン形成されている。
【0095】
そして、加熱体24に複数存在する通電電極51b・52b・53b・54b・55b・56bのいずれに通電するかを制御可能である。より具体的には、装置に導入される被加熱材である用紙Pのサイズ情報に応じて、加熱体24に複数存在する通電電極51b・52b・53b・54b・55b・56bのいずれに通電するかを制御可能である。さらにより具体的には、装置に導入される被加熱材のサイズ情報を取得する手段(コントローラ部3)を有し、取得した被加熱材のサイズ情報に応じて、加熱体に複数存在する通電電極のいずれに通電するかを制御可能である。
【0096】
また、導電部材51・52・53・54・55・56が通電電極側の終端部を除き、前記絶縁層45(第1の絶縁層)と異なる絶縁層47(第2の絶縁層)により被覆されている加熱体形態とすることも可能である。
【0097】
実施例1や実施例2で説明した加熱体構成によれば、加熱体24の発熱体層(通電発熱体)43又は導電性セラミック(セラミック半導体)41Aの長手の任意の位置から電極を取ることが可能となる。そこで、複数の被加熱材のサイズに最適化された導電部材(導電パターン)を形成することにより、非通紙部昇温を大幅に改善することが可能となる。
【0098】
また、被加熱材搬送方向における発熱分布形成の自由度が高まる。そのため、被加熱材搬送方向に均一な発熱分布を持つ通電発熱体を形成したり、装置に導入する被加熱材の幅に関わらず、被加熱材搬送方向に任意の発熱分布を持つ加熱体を構成することが可能となる。
【0099】
さらに、棒状や板状に形成した導電性セラミックを発熱体として用いた加熱体を採用した加熱装置においても、フィルムと密着する面と反対側に絶縁層を設ける。そして、絶縁層の開口部から電極を取る構成を採用することにより、電極位置の自由度を増し、端部昇温に有利な構成を可能にすることが可能となる。
【0100】
[特記事項]
1)実施例の加熱装置は被加熱材の搬送を中央基準で行う構成であるが、本発明の加熱装置は被加熱材の搬送を片側基準で行う構成にすることもできる。
【0101】
2)フィルム加熱方式の加熱装置は、エンドレスベルト状のフィルムをテンションを与えて懸回張設し、これを回転駆動させる装置構成にすることもできる。また、ロール巻にした長尺の有端フィルムを用い、これを張り出し軸側から加熱体を経由させて巻き取り軸側へ所定の速度で走行させるように装置構成することも出来る。
【0102】
3)また、本発明のフィルム加熱方式の加熱装置は、未定着画像を加熱定着させる定着装置としての使用に限られるものではない。その他に、例えば、記録材に定着された画像を加熱することにより画像の光沢を増大させる光沢度増大装置(像加熱装置)、仮定着処理する像加熱装置としても使用することができる。また、被加熱材としてシート状部材を給送して、乾燥処理、ラミネート処理、熱シール処理、シワ取り処理する等の加熱装置、インクジェットプリンタ等に用いられる乾燥用の加熱装置等として広く使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】実施例1における画像形成装置の概略構成模型図
【図2】定着装置の要部の拡大横断面模型図
【図3】加熱体の表面側の平面模型図
【図4】加熱体の背面側の平面模型図と、通電系統のブロック図
【図5】図4における(5)−(5)線に沿う横断面(端面)模型図
【図6】図4における(6)−(6)線に沿う横断面(端面)模型図
【図7】加熱体の構成部材・部分の分解斜視模型図
【図8】実施例1における加熱体の表面側の平面模型図
【図9】加熱体の背面側の平面模型図と、通電系統のブロック図
【図10】図9における(10)−(10)線に沿う横断面(端面)模型図
【図11】図9における(11)−(11)線に沿う横断面(端面)模型図
【図12】加熱体の構成部材・部分の分解斜視模型図
【図13】従来の加熱体を示す図
【図14】従来の加熱体(複数の通電発熱体を持つもの)を示す図
【図15】図14の加熱体の記録材搬送方向発熱分布を示す図
【符号の説明】
【0104】
18・・定着装置(加熱装置)、24・・加熱体、25・・定着フィルム(可撓性部材)、31・・給電回路部、32・・温度検知手段、33・・加熱体駆動制御回路部、41・・加熱体基材、42・・摺動層、43・・発熱層(通電加熱体)、44a〜44f・・第1〜第6の導電層、45・・絶縁層、46・・開口部、51〜56・・第1〜第6の導電部材
P・・記録材(被加熱材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱体と、前記加熱体に密着して走行する可撓性部材と、を有し、被加熱材を前記可撓性部材と一緒に加熱体位置を移動通過させて前記加熱体の熱エネルギーを前記可撓性部材を介して前記被加熱材に付与する加熱装置であり、
前記加熱体は、前記被加熱材の移動方向と交差する方向を長手とし、その長手方向に異なる少なくとも二箇所の位置から通電されて発熱する通電発熱体を有し、
少なくとも前記可撓性部材に接触しない面に、開口部を設けた絶縁層を有し、前記開口部において前記通電発熱体に導電部材が接続されて前記通電発熱体に対する通電電極が確保されていることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記通電発熱体は、前記可撓性部材が前記加熱体に密着する短手方向幅に均一に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記通電発熱体は、前記可撓性部材が前記加熱体に密着する短手方向幅の中に複数本形成されていることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記複数本形成される通電発熱体は異なる抵抗値を持つことを特徴とする請求項3に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記導電部材が終端部を除き、前記絶縁層と異なる絶縁層により被覆されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項6】
前記加熱体は、セラミック基材と、前記セラミック基材上に形成された通電発熱体と、前記通電発熱体の上に形成された絶縁層と、を有し、前記絶縁層は複数の開口部を有し、前記開口部より前記通電発熱体に接続し、前記絶縁層上に形成された導電部材を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項7】
前記導電部材は、終端部が前記セラミック基材の長手方向の片側に向けてパターン形成されていることを特徴とする請求項6に記載の加熱装置。
【請求項8】
加熱体と、前記加熱体に密着して走行する可撓性部材と、を有し、被加熱材を前記可撓性部材と一緒に加熱体位置を移動通過させて前記加熱体の熱エネルギーを前記可撓性部材を介して前記被加熱材に付与する加熱装置であり、
前記加熱体は、立方晶系の炭化珪素を主成分とするセラミック半導体であって、前記被加熱材の移動方向と交差する方向を長手とし、その長手方向に異なる少なくとも二箇所の位置から通電されて発熱する通電発熱体を基材としており、前記基材の少なくとも前記可撓性部材に接触しない面に、開口部を設けた絶縁層を有し、前記開口部において前記基材に導電部材が接続されて前記基材に対する通電電極が確保されていることを特徴とする加熱装置。
【請求項9】
前記導電部材が、終端部を除き、前記絶縁層と異なる絶縁層により被覆されていることを特徴とする請求項1乃至8に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記加熱体は、前記基材上に形成された絶縁層を有し、前記絶縁層は複数の開口部を有し、前記開口部より前記基材に接続し、前記絶縁層上に形成される導電部材を有することを特徴とする請求項8に記載の加熱装置。
【請求項11】
前記導電部材は、終端部が前記基材の長手方向の片側に向けてパターン形成されていることを特徴とする請求項10に記載の加熱装置。
【請求項12】
前記加熱体に複数存在する通電電極のいずれに通電するかを制御可能であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項13】
装置に導入される被加熱材のサイズ情報に応じて、前記加熱体に複数存在する通電電極のいずれに通電するかを制御可能であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項14】
装置に導入される被加熱材のサイズ情報を取得する手段を有し、取得した被加熱材のサイズ情報に応じて、前記加熱体に複数存在する通電電極のいずれに通電するかを制御可能であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の加熱装置。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図15】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−64657(P2009−64657A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231320(P2007−231320)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】