説明

加速度センサー装置

【課題】 小型で温度安定性に優れた加速度センサー装置を提供する。
【解決手段】 可動部を有するMEMSチップとMEMSチップの少なくとも可動部を密
封するキャップチップとで形成されたMEMS組立体を有し、配線基板と回路基板と前記
MEMS組立体を積層し、前記配線基板と前記回路基板の間を第1のダイアタッチフィル
ムで接続し、前記回路基板と前記MEMS組立体の間を第2のダイアタッチフィルムで接
続し、前記MEMSチップと前記回路基板、前記回路基板と前記配線基板は、おのおの配
線で接続され、前記配線基板上において、前記回路基板、前記配線および前記MEMS組
立体が樹脂部材で封止されていることを特徴とする半導体センサー装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(Micro−Electro−Mechanical Syst
ems)チップを有する半導体センサー装置に関し、特に、可動部を有するMEMSチッ
プを備えたピエゾ検出型半導体加速度センサー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセス技術に機械加工技術や材料技術などを組み合わせることによって、
半導体基板上に三次元的な微細構造を有するシステムを実現するMEMS技術は、極めて
広汎な分野に応用可能である。特に、自動車や航空機、携帯端末機器、玩具などに用いら
れるこれら半導体センサー装置は、加速度や角速度、圧力等の物理量検出分野への適用が
注目されている。
【0003】
これらの半導体センサー装置は、MEMS技術で形成された可動部を有しているのが特
徴である。可動部の変化をピエゾ抵抗素子の抵抗変化や静電容量変化で検知し、データー
処理することで、加速度や角速度、圧力等の値を得るものである。特許文献1から3に加
速度センサー装置、特許文献4から6に角速度センサー装置、特許文献7から8に圧力セ
ンサー装置が開示されている。
各特許文献における半導体センサー装置は微小な可動部を有する。可動部を有する部分
の気密性を上げる方法の一例が特許文献9に記載されている。
さらに特許文献10には半導体の樹脂封止技術(樹脂モールド技術)を応用し、MEM
S組立体を樹脂で覆った半導体センサー装置が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−133123号 公報
【特許文献2】特開平8−233851号 公報
【特許文献3】特開平11−160348号 公報
【特許文献4】特開2006−175554号 公報
【特許文献5】特開2003−194545号 公報
【特許文献6】特表2005−524077号 公報
【特許文献7】特開2004―132947号 公報
【特許文献8】特開平10−098201号 公報
【特許文献9】特開平3−002535号 公報
【特許文献10】特開平10−170380号 公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂封止技術(樹脂モールド技術)を応用し、MEMS組立体を樹脂で覆った半導体セ
ンサー装置においては、モールド樹脂と半導体センサーチップの熱膨張係数の不一致に起
因して温度安定性の低下が課題となっている(非特許文献1)。
【0006】
【非特許文献1】”Chip scale packaging of a MEMS accelerometer”, L.E. Felton, et al, Proc.2004 Electric Components and Technology Conference, pp.869−873, (2004)(”チップスケールパッケージング オブ ア メムス アクセロメーター”, エル・イー・フェルトン他 ,プロシーディング オブ 2004年エレクトリック コンポーネンツ アンド テクノロジー カンファレンス, pp.869−873, (2004) )
【0007】
半導体センサーチップの小型化は半導体センサーチップ自身の対称性を犠牲にする傾向
にあるので、上述した温度安定性の低下の問題は半導体センサーチップを小型化する場合
により顕著になる。
【0008】
本願発明の目的は、小型で温度安定性に優れた半導体センサー装置を、より具体的には
加速度センサー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の加速度センサー装置は、可動部を有するMEMSチップと、MEMSチップ
の少なくとも可動部を密封するキャップチップで形成されたMEMS組立体を有し、
配線基板と回路基板と前記MEMS組立体を積層し、
前記配線基板と前記回路基板の間を第1のダイアタッチフィルムで接続し、
前記回路基板と前記MEMS組立体の間を第2のダイアタッチフィルムで接続し、
前記MEMSチップと前記回路基板、前記回路基板と前記配線基板は、おのおの配線で
接続され、
前記配線基板上において、前記回路基板、前記配線および前記MEMS組立体が樹脂部
材で封止されており、第1のダイアタッチフィルムが第2のダイアタッチフィルムより厚
い。
【0010】
前記キャップチップは上下キャップチップで構成されており、前記第2のダイアタッチ
フィルムを介して、前記MEMS組立体の下キャップチップが前記回路基板と固着されて
いることが望ましい。
【0011】
本願発明の加速度センサー装置は、熱膨張係数の大きな配線基板(リードフレーム)の
変形およびそれに起因して発生する応力を配線基板(リードフレーム)と回路基板(検出
用IC)との間の厚いダイアタッチフィルム(下DAF)で吸収すると同時に、回路基板
(検出用IC)と下キャップチップとの間を薄いダイアタッチフィルム(上DAF)で接
続することで回路基板(検出用IC)と下キャップチップを実質的に一体化する。
【0012】
これにより、外乱としての応力が回路基板(検出用IC)およびそれに接続する半導体
センサーチップへ伝播することを下DAFで抑制すると同時に、実質的に一体化させ高い
剛性を与えた回路基板(検出用IC)と下キャップチップとで伝播してきた応力の作用を
軽減する。その結果、半導体センサーチップの出力は安定化する。実使用上は温度変化に
起因する外乱の頻度が高いので、本願発明の加速度センサー装置では、温度変化に対する
安定性が向上する。
【0013】
さらに下DAFの厚さは上DAFの厚さの2倍以上とすることが望ましい。さらに上D
AFの厚さは薄い方が望ましい。作業性を考慮すると上DAFを10μm程度、下DAF
を25μm程度とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本願発明において、配線基板(リードフレーム)と回路基板(検出用IC)との間の下
DAFを厚くすると同時に、回路基板(検出用IC)と下キャップチップとの間の上DA
Fを薄くすることで、小型で温度変化に対する安定性に優れた加速度センサー装置を提供
できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、これら実施形態
により本発明が必ずしも限定されるものではない。
【0016】
[実施形態1]
本願発明の加速度センサー装置は、可動部を有するセンサーチップと少なくともセンサ
ーチップ内の可動部を密封する上下キャップチップで形成されたMEMS組立体の下キャ
ップチップを配線基板上に固着された回路基板上に固着し、センサーチップと回路基板お
よび回路基板と配線基板を配線で接続し、配線基板上の回路基板と配線およびMEMS組
立体を樹脂部材で封止した半導体センサー装置である。
【0017】
外部から加速度や角速度および圧力等の力がセンサーチップに加わると、可動部上に形
成した抵抗素子や静電容量素子等で形成した電気回路が、外部からの加速度や角速度およ
び圧力等の力を電流や電圧および静電容量等の物理量に変換して出力する。出力される物
理量の変化は非常に微小であるため、回路基板には出力を増幅する素子(増幅回路等)を
形成する。また、前記素子が温度の影響を受ける場合、温度補正回路等を搭載することが
好ましい。
【0018】
MEMS組立体はセンサーチップと上キャップチップおよび下キャップチップの3要素
を構成要素にもつ。センサーチップと上キャップチップおよびセンサーチップと下キャッ
プチップはそれぞれ接合部で接合されている。
【0019】
上キャップチップのセンサーチップ対向面側は、センサーチップと固着する接合部と可
動部の駆動を抑制する凹部(駆動抑制溝)、電極パッドの開口部(分離溝)を構成要素と
して有する。分離溝の深さを駆動抑制溝より深く形成することで、上キャップチップの個
片化が容易となる。センサー基板と上下キャップ基板が接合されたMEMS組立基板の、
上キャップ基板をエッチングや研磨加工で分離し個片化して上キャップチップとするが、
分離溝を深くしておくことで、短時間のエッチングや研磨加工で個片化できる。これらの
接合部や駆動抑制溝および分離溝は、フォトリソ技術とウェットエッチング、ドライエッ
チング技術を用いて形成することができる。
【0020】
下キャップチップのセンサーチップ対向面側は、センサーチップと固着する接合部と可
動部の駆動を抑制する凹部(駆動抑制溝)を構成要素として有する。接合部や駆動抑制溝
は、フォトリソ技術とウェットエッチング、ドライエッチング技術を用いて形成すること
ができる。
【0021】
接合部には、低融点金属や樹脂等の接合材料を形成する。接合材料でセンサー基板とキ
上下ャップ基板を密封固着するものである。接合材料はリフトオフやイオンミリング、エ
ッチング、めっき等の手法を用いて接合部に形成する。接合材料に低融点金属や樹脂等の
様に加熱時に流れ易い材料を用いる場合、接合部面に接合材料の流れを堰き止める溝等を
形成して置くことが好ましい。
【0022】
センサーチップと上下キャップチップとの接合は、センサーチップ上の検出素子や配線
、電極パッド等が耐高温特性ではないため、陽極接合や低融点材料接合(低融点金属接合
や共晶接合、低融点ガラス接合、樹脂接合等を含む)、拡散接合、表面活性化接合のいず
れかの方法を用いることが好ましい。センサーチップ基板と上下キャップ基板との接合は
、低融点材料接合がより好ましい。センサーチップ基板と上下キャップ基板を位置合わせ
した後、加圧と加熱により接合する。センサーチップ基板と上下キャップ基板のうねり等
により発生する隙間を、低融点材料が流れることで隙間を埋め気密性を向上させることが
できる。このため、大きな圧力を加えて基板のうねりを強制する必要がないので、上下キ
ャップ基板等を破損する危険性が低くなる。MEMS組立体内の空間を真空(減圧下)に
保つ、もしくは乾燥窒素や不活性ガス等を充填気密するため、真空(減圧)雰囲気下や乾
燥窒素、不活性ガス雰囲気下で接合できることが好ましい。
【0023】
上下キャップ基板をウェットエッチングや研磨加工で薄肉化し、上キャップ基板を個片
化した後、MEMS組立体基板をダイヤモンド砥石で切断することで、MEMS組立体を
得ることができる。MEMS組立体基板を個片化し、MEMS組立体とするのに、ウェッ
トエッチングやダイヤモンド砥石による切断(ダイシング)を用いる。
【0024】
配線基板(リードフレーム)上にダイアタッチフィルム(下DAF)を用いて回路基板
(検出用IC)を接着する。さらに、回路基板(検出用IC)上にMEMS組立体をダイ
アタッチフィルム(上DAF)で接着する。下DAFは上DAFよりも厚く、望ましくは
2倍以上厚くする。一方、上DAFは薄くすることが望ましい。作業性を考慮して10μ
m程度とすることが望ましい。
【0025】
ここで配線基板はCuを主成分とするため約16×10−6/℃の熱膨張係数を持つ。
一方回路基板はSiを主成分とするため約3×10−6/℃の熱膨張係数を持つ。両者の
熱膨張係数は大きく異なるので、トランスファーモールド工程後、あるいは加速度センサ
ー装置完成後の環境温度の変化に対し、配線基板は回路基板と比較して大きな変形を示す
。配線基板の変形および変形に起因する応力が回路基板を介して、MEMS組立体に伝播
し、加速度センサー装置の出力に影響する。
【0026】
図10a)および図10b)に、配線基板26の変形の影響およびその吸収効果を図示
した。図10a)および図10b)は半導体センサーチップ装置1に温度変化を与えたと
きの変形を断面図で示したものである。図10a)および図10b)から、下DAFを厚
くすることで、配線基板26の変形およびそれに起因する応力が吸収できることが確認で
きた。さらに、上DAFを薄くすることで回路基板25と下キャップチップ23が一体の
ように変形すること、即ち実質的に一体化することが確認できた。このとき配線基板26
の変形は高剛性化した回路基板と下キャップチップに阻まれてセンサーチップに伝播し難
い。
【0027】
下DAFを厚くし上DAFを薄くすることで、望ましくは下DAFを上DAFの2倍以
上とすることで、さらに望ましくは上DAFを10μmとした上で下DAFを上DAFの
2倍以上とすることで、下DAFによる応力吸収と上DAFによる応力伝播抑制の効果の
併用が可能となり、加速度センサー装置の出力を安定させることができる。
【0028】
MEMS組立体と回路基板、回路基板と配線基板は金属の極細線(ワイヤー)等で接続
する。電極パッドと金属の極細線の接続は、超音波溶接もしくは半田溶接で行うことがで
きる。金属の極細線による接続の代わりに、半田ボールやボールボンドによる接続を用い
ることもできる。なお、配線基板はプリント回路やリードフレーム等である。
【0029】
配線基板はセンサーチップに形成した電気回路に対応した主端子を有する。主端子は葉
半導体センサー装置の底面の4方向に、回転対称配置することが望ましい。配線基板(を
構成する主端子、補助端子、ダイパッド等)は半導体センサー装置において大きな熱膨張
係数を有する部材である。主端子を4方向に配置することで、配線基板(を構成する主端
子、補助端子、ダイパッド等)に起因する変形を対象にすることができるので、配線基板
の変形に起因する半導体センサー装置の特性ばらつきを抑制できる。また、環境温度が変
化し配線基板の変形が生じた場合においても、配線基板の変形に起因する半導体センサー
装置の特性変動を抑制することができる。
【0030】
別の形態として、配線基板を構成する主端子の配置を軸対称とし、主端子と補助端子、
ダイパッド等が全体で回転対称を模した形状とすることは、半導体センサー装置の特性の
安定化に有効である。具体的には、対向する二辺に主端子を配置し、残りの二辺に補助端
子を配置し、ダイパッドを概略中央に配置する形状である。この形状は半導体センサー装
置の変形の対称性を向上させることで特性を安定化させる。さらに望ましくは主端子と補
助端子を実装基板にはんだ接続する。主端子と補助端子を実装基板にはんだ接続すること
で、半導体センサー装置の変形の対称性だけでなく、基板実装後の実装基板からの影響も
均等に付与することができる。この結果、半導体センサー装置の特性の安定性が向上する

【0031】
図9にセンサーチップの構造が異なる2ケースについて、対称化した配線基板(図8b
))と非対称な配線基板に対して、有限要素法を用いて半導体センサー装置の特性安定性
を計算し比較した結果を示す。センサーチップ構造は主として梁構造を変更したが、いず
れのケースにおいても対称化した配線基板で特性が安定化することが判った。同様の結果
は、図7および図8a)の配線基板に対しても得られた。
【0032】
MEMS組立体と回路基板、配線基板、ワイヤーの樹脂封止には、エポキシ樹脂やシリ
コン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。成型方法は、液状樹
脂を用いたポッティング法もしくは粉体樹脂を用いたトランスファーモールド法を用いる
ことができる。トランスファーモールド法は、MEMS組立体と回路基板、配線基板、ワ
イヤーが一体化されたものを金型内に設置し、モールド機のポッドにタブレット状に成型
された樹脂を装填しポッドの押出し部を加熱して樹脂を軟化させ、プランジャー(押圧機
構)でポッド内の軟化した樹脂を金型内に押圧する。金型内で樹脂を硬化させた後、金型
から樹脂モールド品を取り出し半導体センサー装置を得る。ポティング法は、MEMS組
立体と回路基板、配線基板、ワイヤーが一体化されたものを金型内に設置し、液状樹脂を
金型内に流し込み樹脂を硬化させた後、金型から樹脂モールド品を取り出し半導体センサ
ー装置を得る。
【0033】
以下、本願発明の半導体センサー装置としての加速度センサー装置を、図1から図5を
用いて、より具体的に説明する。そのため、センサーチップ基板を加速度センサーチップ
基板と同義で、センサーチップを加速度センサーチップと同義で用いている。
図1は加速度センサーチップ2の斜視図である。
図2はMEMS組立体21の斜視図および分解図である。MEMS組立体21は上キャ
ップチップ22とセンサーチップ2と下キャップチップ23を接合することで実現する。
図3は3軸加速度センサーの樹脂パッケージ組立構造、即ち加速度センサー装置1、を
示す半透視斜視図である。
図4は加速度センサー装置1の構造を示す断面図である。
図5は加速度センサー装置の製造プロセスを説明する図である。
【0034】
図1はピエゾ抵抗素子側から見た加速度センサーチップの斜視図である。図1に示すよ
うに、加速度センサーチップ2はピエゾ抵抗素子13、14、15と配線(省略)、電極
パッド24、接合部20、梁部12、錘部11、支持枠部10等で構成している。
【0035】
加速度センサーチップ2の製作には、約400μm厚のシリコン板に数μmのシリコン
酸化層と約6μmのシリコン層を有するSOI(Silicon on Insulat
or)ウェファーを使用した。シリコン層側の面にピエゾ抵抗素子13、14、15の形
状にフォトレジストのパターンを形成した。シリコン層にボロンを1〜3x1018原子
/cm打ち込み、ピエゾ抵抗素子13、14、15を形成し、ピエゾ抵抗素子13、1
4、15に接続する配線を、金属スパッターとドライエッチング装置を用いて形成した。
シリコン層とシリコン板をフォトリソとドライエッチング装置を用いて加工し、シリコン
層に形成される梁部12、およびシリコン層からシリコン板に渡って形成される錘部11
を形成した。シリコン酸化層はシリコンのドライエッチングの際にエッチングストッパー
として機能する。ドライエッチングされるのはシリコンのみであるので、シリコン板はド
ライエッチングされるがシリコン酸化層は残っている。ドライエッチング後、弗酸、弗化
アンモニウム水溶液に漬けシリコン酸化層をウェットエッチングで除去した。ドライエッ
チングはSF、酸素混合ガスとCガスとを交互に導入するプラズマ内で行った。
1枚のウェファー上に多数の加速度センサーチップを作製した。
【0036】
加速度センサーのピエゾ抵抗素子13、14、15や配線、電極パッド24を形成した
後、それらの上に窒化シリコンをCVDで(厚さ0.1μm)積層した後、電極パッド上
の窒化シリコンをフォトリソ、エッチングで除去した。次にフォトレジストで電極パッド
24および接合部を開口した後、金属スパッターで、Cr(厚さ0.1μm)−Ni(厚
さ0.2μm)−Au(厚さ0.5μm)の順で積層膜を形成した。次に電極パッド24
と接合部20以外のフォトレジストと金属膜を除去し、ウェットエッチング液に晒される
部位を保護した。
【0037】
図6に加速度センサー基板2’の一部を示す。加速度センサー基板2’には、加速度セ
ンサーチップ2が多数個接合されている。加速度センサー基板2’はウェファー状態で上
キャップ基板22’および下キャップ基板23’と一体化した後、一点鎖線で示した分離
部(ダイシングライン)90で分離し個片化した。加速度センサー基板2’の上下面には
、上キャップ基板22’および下キャップ基板23’と接合する接合材が形成された接合
部20を設けた。接合材はAu−Sn合金の積層膜を3〜5μm厚に真空蒸着で形成した

【0038】
図6に上キャップ基板22’の一部分を示す。上キャップ基板22’は400μm厚の
シリコン平板の片面に駆動抑制溝31と分離溝32を凹状に、接合部20を凸状に形成し
たものである。まず、シリコン平板の片面に、酸化シリコン(厚さ0.5μm)を積層し
て錘部と対向する駆動抑制溝31のレジストパターンを形成した。その後、窒化シリコン
0.1μmを積層してキャップ基板の分離溝32のパターンを形成した。次に67℃の温
度で、40wt%水酸化カリウム水溶液を用い分離溝32を85μm深さにウェットエッ
チングした。次に、窒化シリコンを除去して、駆動抑制溝31を深さ15μmに、分離溝
32を15μm追加ウェットエッチングし、分離溝32の深さを100μmとした。分離
溝32と駆動抑制溝31の間に形成された接合部20には、Au−Sn合金積層膜を3〜
5μm厚に真空蒸着で形成した。
【0039】
駆動抑制溝31と分離溝32の形成方法は上記のウェットエッチングに限定されない。
別の実施形態として、SF、酸素混合ガスとCガスとを交互に導入するプラズマ
内でのドライエッチングを適用した。更に別の実施形態として駆動抑制溝31を上記のウ
ェットエッチングにて形成し、分離溝32を上記のドライエッチングにて形成した。いず
れの場合も分離溝32は100μm以上の深さとした。1枚のウェファー上に多数の駆動
抑制溝31と分離溝32を作製する。
【0040】
図6に下キャップ基板23’の一部分を示す。下キャップ基板23’は400μm厚の
シリコン平板の片面に駆動抑制溝31を凹状に、接合部20を凸状に形成した。シリコン
平板の片面に、酸化シリコン0.5μmを積層して錘部の駆動抑制溝31のレジストパタ
ーンを形成した。次に67℃の温度で、40wt%水酸化カリウム水溶液を用い駆動抑制
溝31を深さ15μmにウェットエッチングした。接合部20には、Au−Sn合金積層
膜を3〜5μm厚に真空蒸着で形成した。
【0041】
駆動抑制溝31の形成方法は上記のウェットエッチングに限定されない。別の実施形態
として、SF、酸素混合ガスとCガスとを交互に導入するプラズマ内でのドライ
エッチングを適用した。1枚のウェファー上に多数の駆動抑制溝31および接合部20を
作製した。
【0042】
接合部20の幅は気密封止できるように60μmとした。上キャップ基板22’、下キ
ャップ基板23’(以下、上下キャップ基板と称する。)は各々の厚さ400μmとした
ので、上下キャップ基板と加速度センサー基板2’を加圧接合する時の圧力約10kNに
対して十分な強度を有しており、加圧接合時に割れたりクラックが入ったりするような問
題は起きなかった。
【0043】
図6を用いて、本実施形態の加速度センサー装置1の製造プロセスを説明する。加速度
センサー基板2’の上下面に上下キャップ基板22’、23’を接合し、MEMS組立体
基板45を得る(図6a))。
【0044】
67℃に加熱した40wt%水酸化カリウム水溶液にMEMS組立体基板45を浸漬し
て、上下キャップ基板を300μmエッチングし(即ち上下キャップ基板の厚さを100
μmとし)、上キャップ基板23’が分離溝32で分割された状態の基板、即ち上下キャ
ップ基板を薄肉化したMEMS組立体基板45を得た(図6b))。
【0045】
別の実施形態として上下キャップ基板を300μm研磨加工し、薄肉化したMEMS組
立体基板45を得た。
【0046】
MEMS組立体基板45の下キャップ側にダイアタッチフィルム(上DAF)61aを
貼り、図6b)に一点鎖線で示したダイシングライン90でダイシングすることで個片化
したMEMS組立体21を得た(図6c))。
【0047】
厚さ125μmの配線基板(リードフレーム)26上に、加速度センサーチップ2から
の信号の増幅や温度補正等を行う回路基板(検出用IC)25を、ダイアタッチフィルム
(下DAF)61bで固定した(図6d))。配線基板26は複数個配列した状態で用意
した。
【0048】
回路基板25の上に個片化したMEMS組立体21をダイアタッチフィルム(上DAF
)61aで固着した(図6e))。本工程で利用したダイアタッチフィルム(上DAF)
は図6c)でのダイシング工程前に貼り付けた上DAF61aである。
【0049】
MEMS組立体21の電極パッド24と回路基板25の電極パッド(24’)、及び回
路基板25の電極パッド24’と配線基板26は、各々、超音波ボンダーを用いて直径2
5μmの金の裸ワイヤー27で接続した。
【0050】
MEMS組立体21と回路基板25、配線基板26が組立てられた構造体を、トランス
ファーモールド法を用いエポキシ樹脂(モールド樹脂)29で、被覆するように、成型し
た。完成後の加速度センサー装置1において環境温度変化の影響を抑制するために、トラ
ンスファーモールドに用いるエポキシ樹脂(モールド樹脂)29の熱膨張係数はMEMS
組立体21の主な構成部材であるSiの熱膨張係数に近接していることが望ましい。本加
速度センサー装置においては熱膨張係数が約6×10−6/℃の樹脂を用いた。
【0051】
トランスファーモールド作業は次の手順、条件で行った。MEMS組立体21と回路基
板25、配線基板26が組立てられた構造体を、成型用金型内の所定の位置に保持した。
モールド機のポッドにタブレット状に成型された樹脂を装填し、ポッドの押出し部を加熱
して樹脂を軟化させ、プランジャー(押圧機構)でポッド内の軟化した樹脂を金型内に押
圧する。金型内に175℃の樹脂を5MPaの圧力で押圧した。成型時間は2分とした。
金型内で樹脂を硬化させた後、金型から樹脂モールド品を取り出し個片化することで加速
度センサー装置1を得た(図6g))。一度のトランスファーモールド作業で、50個の
加速度センサー装置1が得られる金型を用いた。
【0052】
図4および図5に、それぞれ、加速度センサー装置1のX断面図およびY断面図を示し
た。図4および図5の装置の斜視図が図3に相当する。図6を参照した製造プロセスの説
明で言及した通り、配線基板26と回路基板25、および回路基板25とMEMS組立体
21は、それぞれ上DAF61aおよび下DAF61bで接続した。配線基板26と回路
基板25を接続する下DAF61bは厚さ25μmとした。回路基板25とMEMS組立
体21を接続する上DAF61aは厚さ10μmとした。配線基板26と回路基板25を
接続する厚さ25μmの下DAF61aはトランスファーモールド工程後、あるいは加速
度センサー装置1完成後の環境温度の変化に対する配線基板26の変形およびそれに起因
する応力が回路基板25に伝播することを抑制する。回路基板25とMEMS組立体21
を接続する厚さ10μmの上DAF61aは、回路基板25とMEMS組立体21を強固
に接続することで実質的にMEMS組立体21の剛性を高め、配線基板26の変形に起因
する応力の影響を軽減し、かつトランスファーモールド樹脂起因の応力の影響も軽減する

【0053】
これらのDAF61a、61bはMEMS組立体21への外乱的応力の作用を軽減して
加速度センサー装置1の特性を安定化させる。
【0054】
図7に加速度センサー装置1を配線基板(Cuリードフレーム)26側から見た平面図
を示す。なお別の実施例として図8a)、b)それぞれに記載した形状であっても図7で
示した加速度センサー装置と同様の効果が得られる。また図7及び図8で粗いハッチング
領域で示した領域はモールド樹脂が露出している領域であり、断面を示すものではない。
【0055】
配線基板26の主端子26aは回路基板25を介して加速度センサー基板2と電気回路
的に接続している。補助端子26bは下DAF61bを介して回路基板25と接続してい
る。図7に示した4つの補助端子26bは中央に配置したパッド(ダイパッド)26cと
加速度センサー装置1内部で一体とした(26d)。図5に加速度センサー装置1内部で
の補助端子26bとパッド26cが一体となっている様子を示した。またこの部分は図7
及び8における細かいハッチング領域で示した。
【0056】
図7に示した配線基板26を適用することで、トランスファーモールド工程後、あるい
は加速度センサー装置1完成後の環境温度の変化に対する配線基板26の変形およびそれ
に起因する応力を、MEMS組立体に対して均一に作用させることができるので、加速度
センサー装置1の特性を安定化させる。
【0057】
また、主端子26aに加えて補助端子26bも実装基板(図示せず)に接続することで
、実装基板起因の変形およびそれに起因する応力を、MEMS組立体に対して均一に作用
させることができるので、加速度センサー装置1の特性をさらに安定化することができる

【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】加速度センサーチップの斜視図である。
【図2】MEMS組立体の斜視図および分解図である。
【図3】加速度センサー装置の半透視斜視図である。
【図4】加速度センサー装置1の構造を示す断面図である。
【図5】加速度センサー装置1の構造を示す断面図である。
【図6】加速度センサー装置の製造プロセスを説明する図である。
【図7】加速度センサー装置の裏面を示す上面図である。
【図8】加速度センサー装置の裏面の他の例を示す上面図である。
【図9】加速度センサー装置の特性安定化に対する配線基板の対称構造化の効果を示す。
【図10】配線基板の変形の影響およびその吸収効果を示す図面である。
【符号の説明】
【0059】
1 加速度センサー装置、
2 加速度センサーチップ(センサーチップ)、
2’ 加速度センサー基板(センサー基板)、
10 支持枠部
11 錘部
12 梁部
13 X軸用のピエゾ抵抗素子、
14 Y軸用のピエゾ抵抗素子、
15 Z軸用のピエゾ抵抗素子、
20 接合部
21 MEMS組立体
22 上キャップチップ、
22’ 上キャップ基板
23 下キャップチップ、
23’ 下キャップ基板
24、24’ 電極パッド
25 回路基板(検出用IC)
26 配線基板(リードフレーム)
26a 主端子、
26b 補助端子、
26c ダイパッド、
26d 内部接続部
27 ワイヤー、
29 モールド樹脂
31 駆動抑制溝、
32 分離溝
45 MEMS組立体基板
61a 上DAF(上ダイアタッチフィルム)
61b 下DAF(上ダイアタッチフィルム)
90 ダイシングライン、
90’ ダイシングライン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部を有するMEMSチップと、MEMSチップの少なくとも可動部を密封するキャ
ップチップで形成されたMEMS組立体を有し、
配線基板と回路基板と前記MEMS組立体を積層し、
前記配線基板と前記回路基板の間を第1のダイアタッチフィルムで接続し、
前記回路基板と前記MEMS組立体の間を第2のダイアタッチフィルムで接続し、
前記MEMSチップと前記回路基板、前記回路基板と前記配線基板は、おのおの配線で
接続され、
前記配線基板上において、前記回路基板、前記配線および前記MEMS組立体が樹脂部
材で封止されており、第1のダイアタッチフィルムが第2のダイアタッチフィルムより厚
いことを特徴とする半導体センサー装置。
【請求項2】
前記第1のダイアタッチフィルムの厚さが、前記第2のダイアタッチフィルムの厚さの
2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体センサー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−19692(P2010−19692A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180575(P2008−180575)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(506334171)トレックス・セミコンダクター株式会社 (19)
【Fターム(参考)】