説明

動力伝達装置および動力伝達装置の制御装置

【課題】クラッチを備えた動力伝達装置において、回生制御中においてクラッチの係合、解放を適切に選択することで、車両全体の燃費を向上する。
【解決手段】動力伝達装置の制御装置は、回生制御を行うにあたって、クラッチを解放した場合に得られる、車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第1駆動エネルギーを算出する(ステップ224)とともに、クラッチを係合した場合に得られる、車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第2駆動エネルギーをそれぞれ算出し(ステップ226)、算出された第1駆動エネルギーが算出された第2駆動エネルギーより大きい場合には、クラッチを解放するように制御し(ステップ230)、一方、算出された第2駆動エネルギーが算出された第1駆動エネルギーより大きい場合には、クラッチを係合するように制御する(ステップ232)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置および動力伝達装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動力伝達装置の一形式として、特許文献1に示されているものが知られている。特許文献1の図1に示されているように、動力伝達装置においては、原動機としてのエンジン1のクランク軸を原動機かつ発電機としてのモータ2の回転軸に連結し、モータ2の回転軸を車両の駆動輪6に連結しており、エンジン1およびモータ2の少なくとも一方の駆動力により車両を駆動するとともに、車両減速時にモータ2を発電機として機能させることによりエネルギーを回生するようになっている。制御装置11は車両減速時に、エンジン1の出力軸の駆動輪6に対する連結を選択的に切断するクラッチ7を切断するとともに、エンジンブレーキに相当する負荷を発生するようモータ2を制御するようになっている。クラッチ7は油圧式クラッチである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−164403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の動力伝達装置において、回生制御中にクラッチ7を解放することで、回生エネルギーはクラッチ7を係合する場合と比べてエンジンフリクション分増大する。しかし、回生制御中にクラッチ7が解放されてエンジン1がアイドル状態に制御される場合には、エンジン1で燃料が消費されることになる。条件によっては増加した回生エネルギーよりアイドル状態で消費される燃料の熱エネルギーが大きくなり、クラッチ7を解放する効果を得られない場合があり、ひいては車両全体の燃費が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した問題を解消するためになされたもので、クラッチを備えた動力伝達装置において、回生制御中においてクラッチの係合、解放を適切に選択することで、車両全体の燃費を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、車両に搭載されて燃料の燃焼によって駆動力を発生させるエンジンとエンジンの駆動力によって駆動される車両の駆動輪との間の駆動経路に設けられ、電気エネルギーによって駆動力を発生させて駆動輪を駆動可能であり、発電機として作動されて運動エネルギーを電気エネルギーに変換するモータと、駆動経路上であってエンジンとモータとの間に設けられ、解放時にエンジンとモータとの間の動力伝達を遮断し一方係合時に動力伝達が可能となるクラッチと、クラッチを係合または解放するように制御する制御装置と、を備え、制御装置は、回生制御を行うにあたって、クラッチを解放した場合に得られる、車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第1駆動エネルギーを算出するとともに、クラッチを係合した場合に得られる、車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第2駆動エネルギーをそれぞれ算出し、算出された第1駆動エネルギーが算出された第2駆動エネルギーより大きい場合には、クラッチを解放するように制御し、一方、算出された第2駆動エネルギーが算出された第1駆動エネルギーより大きい場合には、クラッチを係合するように制御することである。
【0007】
また請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、第1駆動エネルギーは、クラッチを解放した時のモータの回生トルクと、クラッチのモータ側回転体の回転速度とから少なくとも算出されることである。
【0008】
また請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、第1駆動エネルギーは、車両の質量と車両の減速度から算出される車両に作用する減速度による力と、車両の質量と車両の速度から少なくとも算出される車両に作用する走行抵抗と、車両の車輪の有効半径とから少なくとも算出される、クラッチを解放した時のモータの回生トルクと、車両の速度と、車両の車輪の有効半径とから少なくとも算出されるクラッチのモータ側回転体の回転速度と、から少なくとも算出されることである。
【0009】
また請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、第2駆動エネルギーは、クラッチを係合した時のモータの回生トルクと、クラッチのモータ側回転体の回転速度と、エンジンのアイドル時における燃料の熱エネルギーとから少なくとも算出されることである。
【0010】
また請求項5に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、第2駆動エネルギーは、車両の質量と車両の減速度から算出される車両に作用する減速度による力と、車両の質量と車両の速度から少なくとも算出される車両に作用する走行抵抗と、車両の車輪の有効半径と、エンジンのフリクショントルクとから少なくとも算出される、クラッチを係合した時のモータの回生トルクと、車両の速度と、車両の車輪の有効半径とから少なくとも算出されるクラッチのモータ側回転体の回転速度と、エンジンのアイドル時における燃料の熱エネルギーと、から少なくとも算出されることである。
【0011】
また請求項6に係る発明の構成上の特徴は、車両に搭載されて燃料の燃焼によって駆動力を発生させるエンジンとエンジンの駆動力によって駆動される車両の駆動輪との間の駆動経路に設けられ、電気エネルギーによって駆動力を発生させて駆動輪を駆動可能であり、発電機として作動されて運動エネルギーを電気エネルギーに変換するモータと、駆動経路上であってエンジンとモータとの間に設けられ、解放時にエンジンとモータとの間の動力伝達を遮断し一方係合時に動力伝達が可能となるクラッチと、クラッチを係合または解放するように制御する制御装置と、を備えた動力伝達装置に適用され、制御装置は、回生制御を行うにあたって、クラッチを解放した場合に得られる、車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第1駆動エネルギーを算出するとともに、クラッチを係合した場合に得られる、車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第2駆動エネルギーをそれぞれ算出し、算出された第1駆動エネルギーが算出された第2駆動エネルギーより大きい場合には、クラッチを解放するように制御し、一方、算出された第2駆動エネルギーが算出された第1駆動エネルギーより大きい場合には、クラッチを係合するように制御することである。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した請求項1(および請求項6)に係る発明においては、制御装置は、回生制御を行うにあたって、クラッチを解放した場合に得られる、車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第1駆動エネルギーを算出するとともに、クラッチを係合した場合に得られる、車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第2駆動エネルギーをそれぞれ算出し、算出された第1駆動エネルギーが算出された第2駆動エネルギーより大きい場合には、クラッチを解放するように制御し、一方、算出された第2駆動エネルギーが算出された第1駆動エネルギーより大きい場合には、クラッチを係合するように制御する。これにより、回生制御中にできるだけ大きい駆動エネルギーを獲得できるように、クラッチの係合、解放を適切に選択することができ、ひいては車両全体の燃費を向上することができる。
【0013】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、請求項1において、第1駆動エネルギーは、クラッチを解放した時のモータの回生トルクと、クラッチのモータ側回転体の回転速度とから少なくとも算出される。これにより、第1エネルギーを正確かつ的確に算出することができる。
【0014】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、請求項1において、第1駆動エネルギーは、車両の質量と車両の減速度から算出される車両に作用する減速度による力と、車両の質量と車両の速度から少なくとも算出される車両に作用する走行抵抗と、車両の車輪の有効半径とから少なくとも算出される、クラッチを解放した時のモータの回生トルクと、車両の速度と、車両の車輪の有効半径とから少なくとも算出されるクラッチのモータ側回転体の回転速度と、から少なくとも算出される。これにより、比較的低コストかつ容易に検出、演算できる車両の質量、減速度、速度に基づいて第1エネルギーを低コストかつ容易に算出することができる。
【0015】
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、請求項1において、第2駆動エネルギーは、クラッチを係合した時のモータの回生トルクと、クラッチのモータ側回転体の回転速度と、エンジンのアイドル時における燃料の熱エネルギーとから少なくとも算出される。これにより、第2駆動エネルギーを正確かつ的確に算出することができる。
【0016】
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、請求項1において、第2駆動エネルギーは、車両の質量と車両の減速度から算出される車両に作用する減速度による力と、車両の質量と車両の速度から少なくとも算出される車両に作用する走行抵抗と、車両の車輪の有効半径と、エンジンのフリクショントルクとから少なくとも算出される、クラッチを係合した時のモータの回生トルクと、車両の速度と、車両の車輪の有効半径とから少なくとも算出されるクラッチのモータ側回転体の回転速度と、エンジンのアイドル時における燃料の熱エネルギーと、から少なくとも算出される。これにより、比較的低コストかつ容易に検出、演算できる車両の質量、減速度、速度、アイドル時における燃料量に基づいて第2駆動エネルギーを低コストかつ容易に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による動力伝達装置(動力伝達装置の制御装置)を適用したハイブリッド車の一実施形態の概要を示す概要図である。
【図2】図1に示した制御装置にて実行される制御プログラムのフローチャートである。
【図3】図1に示した制御装置にて実行される制御プログラム(クラッチの係合、解放を切り替えるプログラム)のフローチャートである。
【図4】ブレーキオンされないでアクセルオフのみである場合であって、クラッチ解放とクラッチ係合におけるエネルギー収支を示す図である。
【図5】アクセルオフに加えてブレーキオンされた場合であって、クラッチ解放とクラッチ係合におけるエネルギー収支を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明による動力伝達装置(および動力伝達装置の制御装置)をハイブリッド車に適用した一実施形態について図面を参照して説明する。図1はそのハイブリッド車の構成を示す概要図である。
【0019】
ハイブリッド車は、図1に示すように、ハイブリッドシステムによって駆動輪例えば左右後輪Wrl,Wrrを駆動させる車両である。ハイブリッドシステムは、エンジン11およびモータ12の2種類の動力源を組み合わせて使用するパワートレーンである。本実施形態の場合、エンジン11およびモータ12の双方で車輪を直接駆動する方式であるパラレルハイブリッドシステムである。
【0020】
エンジン11は、燃料の燃焼によって駆動力を発生させるものである。モータ12は、エンジン11とエンジン11の駆動力によって駆動される駆動輪Wrl,Wrrとの間の駆動経路Lに設けられている。モータ12は、電気エネルギーによって駆動力を発生させて駆動輪Wrl,Wrrを駆動可能であり、発電機として作動されて運動エネルギー(慣性による運動エネルギー)を電気エネルギーに変換して回収可能である(変換する)モータである。
【0021】
駆動経路Lとは、エンジン11から駆動輪Wrl,Wrrまでの間の経路であって両者間で動力が伝達する経路である。エンジン11の駆動力が駆動輪に伝達したり(加速時など)駆動輪の動力がエンジン11に伝達したり(エンジンブレーキ発生時など)する。エンジン11も駆動経路L内に含まれる場合がある。
【0022】
エンジン11のクランク軸(出力軸)はクラッチ16を介してモータ12の回転軸(入力軸)に連結されている。モータ12の回転軸(出力軸)はトランスミッション13、プロペラシャフト14およびディファレンシャルギア15を介してタイヤ(駆動輪;左右後輪)Wrl,Wrrの車軸15aに連結されている。トランスミッション13は、一般的な自動変速機である。なお、ハイブリッド車は従動輪(左右前輪)Wfl,Wfrを備えている。
【0023】
モータ12は、車体に固定されたハウジング(例えばトランスミッション13のハウジング)に固定されたステータ12bと、ステータ12bの径方向内側に同軸回転可能に配設されたロータ12aとを備えている。ステータ12bには、ロータ12aを回転させる磁界を形成するための複数のコイルが巻回されている。ロータ12aには、複数の磁石が周方向に沿って設けられている。
【0024】
クラッチ16は、駆動経路L上であってエンジン11とモータ12との間に設けられ、係合時にエンジン11とモータ12との間の動力が伝達可能であり一方解放時に動力を遮断するクラッチである。具体的には、クラッチ16は、エンジン11のクランク軸とモータ12の回転軸の間に介装されており、これらの間の連結を選択的に切断するものである。すなわち、クラッチ16は、非作動(非制御)時は係合状態とされエンジン11とモータ12との間の動力伝達を可能とし、一方作動(制御)時は解放状態とされ動力伝達を遮断するノーマルクローズ型のクラッチである。非作動時とは、平常時のことであり、クラッチ16に対して外部から何ら作用(作動)されていないことをいう。これに対して、作動時とは、クラッチ16に対し例えば油圧が外部から作用(作動)されていることをいう。
【0025】
ハイブリッド車においては、図1に示すように、エンジン11はエンジンECU31に接続され、トランスミッション13は自動変速機ECU32に接続され、クラッチ16はクラッチECU33に接続されている。また、モータ12はインバータ18を介してバッテリ19に接続され、インバータ18はモータECU34に接続されている。エンジンECU31、自動変速機ECU32、クラッチECU33およびモータECU34は互いに通信可能に接続されるとともに、これらECU31〜34はハイブリッドECU35とも互いに通信可能に接続されている。
【0026】
エンジンECU31は、エンジン11を制御するECU(エレクトロニック コントロール ユニット:電子制御装置。以下同様。)であり、エンジン11の回転数をエンジン11に設けられた回転数センサ11bから入力している。回転数センサ11bはエンジン11のクランク軸の回転数(すなわちエンジン回転数)を検出するものである。
【0027】
自動変速機ECU32は、トランスミッション13を制御するECUである。クラッチECU33は、クラッチ16を制御するECUであり、例えば、クラッチ16への油圧を給排することでクラッチ16を選択的に係合・解放するものである。
【0028】
モータ12は、車両の加速時にはエンジン11の出力を補助し駆動力を高めるものであり、一方車両の制動時には発電を行って回生制動力を駆動輪に発生させるものである。またモータ12は、エンジン11の出力により発電を行うものであり、エンジン始動時のスタータの機能としても使える。インバータ18は、直流電源としてのバッテリ19に電気的に接続されており、モータ12から入力した交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ19に供給したり、逆にバッテリ19からの直流電圧を交流電圧に変換してモータ12へ出力したりするものである。
【0029】
モータECU34は、インバータ18を介してモータ12を前述した各駆動となるように制御するECUである。モータECU34は、モータ12の回転数をモータ12に設けられた回転数センサ12cから入力している。回転数センサ12cはモータ12のロータ12aの回転数(すなわちモータ回転数)を検出するものである。なお、上述した各回転数とは、回転速度のことであり、単位時間当たりに回転体が回転する速さをいう。
【0030】
ハイブリッドECU35は、各ECU31〜34を統合的に制御するECUである。例えば、ハイブリッドECU35は、車両発進時には、モータ12でエンジン11をスタートさせ、車両加速時には、エンジン11の駆動力をモータ12の駆動力でアシストさせ、高速クルージング時には、モータ12のアシストなしでエンジン11の駆動力のみで駆動させるようにエンジン11、モータ12、クラッチ16などを制御することができる。また、モータ12の駆動力のみで走行させるように制御することができる。また、ハイブリッドECU35は、減速時(制動時)には、モータ12を発電させて回生制動力を駆動輪に発生させるように制御(回生制御)する。なお、ハイブリッドECU35が本願発明の制御装置である。また、クラッチECU33を本願発明の制御装置としてもよい。制御装置は、クラッチ16を係合または解放するように制御するものである。
【0031】
次に、上述したハイブリッド車の作動について図2、図3を参照して説明する。ハイブリッド車がすでに走行状態である場合について説明する。このとき、クラッチ16は係合(締結)されている。よって、エンジン回転数とモータ回転数は一致している(同一である)。また、クラッチ動作要求は係合要求に設定されている。また、回生制御は行われていない。
【0032】
ハイブリッドECU35は、走行中のハイブリッド車の車速が第1速度(例えば40km/h)以上であり、かつ、アクセルペダル36がオフされた場合には、ステップ102,104において「YES」と判定し、回生制御を開始させる(ステップ106)ハイブリッドECU35は、ステップ106において、回生制御指令をオンに設定してその旨をモータECU34に送信する。モータECU34は回生制御指令がオンである旨に基づいてインバータ18を制御してモータ12を発電機として機能させて回生制御を開始する。車両(ハイブリッド車)の運動エネルギーを電気エネルギーに変換回収するとともに、発生した回生トルクによる制動力が車両に付与される。
【0033】
回生制御指令はモータ12に対する制御指令であり、回生制御指令がオンのときはモータ12を発電機として作動させ、オフのときはモータ12を発電機として作動させない(電動機としても作動させない場合、電動機として作動させる場合を含む)。
【0034】
一方、走行中のハイブリッド車の車速が第1速度未満であり、または、車速が第1速度以上であってもアクセルペダル36がオフされない場合には、ハイブリッドECU35は、ステップ102において「NO」判定を繰り返し、または104において「NO」判定を繰り返す。
【0035】
ステップ102において、車速は、車速センサ、車輪速センサなどによって検出された検出値に基づいて導出される。ステップ104において、アクセルペダル36のオンオフ状態は、アクセルペダル36に付設されているアクセル開度センサ36aによって検出されるアクセル開度に基づいて判定される。
【0036】
ハイブリッドECU35は、上述した回生制御の開始と合わせてクラッチ16の断接切替を実行する(ステップ108)。すなわち、ハイブリッドECU35は、図3に示すフローチャートに沿ってクラッチ断接切替ルーチンを実行し、クラッチ16を係合させる(クラッチ接)かあるいは解放させる(クラッチ断)かを判定し、その判定結果に応じてクラッチ16を係合または解放に切り替える。
【0037】
ハイブリッドECU35は、回生制御を行うにあたって、クラッチ16を解放した場合に得られる、車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第1駆動エネルギーE1を算出するとともに、クラッチ16を係合した場合に得られる、車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第2駆動エネルギーE2をそれぞれ算出する。そして、ハイブリッドECU35は、算出された第1駆動エネルギーE1が算出された第2駆動エネルギーE2より大きい場合には、クラッチ16を解放するように制御し、一方、算出された第2駆動エネルギーE2が算出された第1駆動エネルギーE1より大きい場合には、クラッチ16を係合するように制御する。
【0038】
ここで、駆動エネルギーの算出方法について説明する。駆動エネルギーは、回生制御中に得られるエネルギーであって、得た後に車両を駆動するために使用されるエネルギーである。駆動エネルギーは、モータ12を発電機として使用して運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収する回生エネルギー、回生制御中にエンジン11に供給される燃料がカットされる場合においてそのとき使用しなくてすんだ燃料に相当する熱エネルギーなどから構成される。
【0039】
回生エネルギーは、モータ12にされた仕事であるから、モータ12が外力モーメントによって仕事をされる場合には、回生エネルギーは下記数1で算出することができる。
【0040】
(数1)
回生エネルギー=外力モーメント×回転角
【0041】
数1で得られる回生エネルギーはモータ12で発電される電気エネルギーであるため、バッテリ19に充電する際の充電効率とバッテリ19の電気を利用する際の放電効率を数1で得られた回生エネルギーに乗算することで、車両を駆動するために使用されるエネルギー(駆動エネルギー)を算出することができる。すなわち、駆動エネルギーは、回生エネルギー、充電効率、放電効率から下記数2で算出することができる。
【0042】
(数2)
駆動エネルギー=回生エネルギー×充電効率×放電効率
【0043】
また、回生制御中に使用しなくてすんだ燃料に相当する熱エネルギーは、燃料を供給してエンジン11をアイドル状態に維持する、クラッチ16を解放した場合と比較して、燃料の供給を停止してエンジン11を燃料カットする、クラッチ16を係合した場合に使用しない燃料に相当する熱エネルギーのことである。よって、クラッチ16を係合した場合に使用しない燃料、すなわちアイドル状態の燃料は、以降使用できるエネルギー(駆動エネルギー)に変換することができる。その駆動エネルギーは、エンジン11のエンジン効率を考慮して下記数3で算出することができる。
【0044】
(数3)
駆動エネルギー=アイドル時のエネルギー×エンジン効率
【0045】
以上のことから、回生制御を行うにあたって、クラッチ16を解放した場合に得られる、車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第1駆動エネルギーE1[kWs]は、回生エネルギーのみであるから、上記数1および数2から下記数4で示される。
【0046】
【数4】

【0047】
外力モーメントはモータ12にかかる回生トルクであるからである。回転角は、モータ12の回転角であり、モータ12が駆動輪側からの入力によって回転される回転数(インプット回転数(後述する):自動変速機13からの入力回転数)を使用して下記数5で示される。
【0048】
(数5)
回転角=インプット回転数×2π/60
【0049】
この数5を数4に代入すると、第1駆動エネルギーは下記数6で示される。
【0050】
【数6】

【0051】
ここで、クラッチ解放時のモータ回生トルク[Nm]をTr1で表し、インプット回転数[rpm]をRsで表す。
【0052】
一方、回生制御を行うにあたって、クラッチ16を係合した場合に得られる、車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第2駆動エネルギーE2[kWs]は、回生エネルギーとアイドル時の燃料の熱エネルギーの和であるから、上記数1、数2および数3から下記数7で示される。
【0053】
【数7】

【0054】
ここで、クラッチ係合時のモータ回生トルク[Nm]をTr2で表し、アイドル時のエネルギー[kWs]をE3で表す。
【0055】
次に、クラッチ解放時のモータ回生トルクTr1、クラッチ係合時のモータ回生トルクTr2およびアイドル時のエネルギーE3の算出方法を説明する。
図4に示すように、車両が減速する際の全エネルギーは制動エネルギーと走行抵抗によるエネルギーの和で表される。ブレーキオンされないでアクセルオフのみである場合であってクラッチ16が解放された場合には、車両に付与される制動力は液圧ブレーキ装置による液圧制動力は付与されないで回生制御による回生制動力のみ付与される。よって全エネルギーは走行抵抗によるエネルギーとクラッチ解放時の回生エネルギーの和となる。
【0056】
一方、ブレーキオンされないでアクセルオフのみである場合であってクラッチ16が係合された場合には、車両に付与される制動力は液圧ブレーキ装置による液圧制動力は付与されないで回生制御による回生制動力とエンジンフリクションによる制動力の合力が付与される。なお、この合力はクラッチ16が解放された場合の回生制動力と等しい。よって全エネルギーは走行抵抗によるエネルギーとエンジンフリクションによるエネルギーとクラッチ係合時の回生エネルギーの和となる。
【0057】
また、駆動エネルギーの観点から説明すると、クラッチ16が解放された場合には、クラッチ解放時の回生エネルギーが駆動エネルギーである。一方、クラッチ16が係合された場合には、クラッチ係合時の回生エネルギーと燃料カットで得するエネルギー(アイドル時のエネルギー)の和が駆動エネルギーである。
【0058】
クラッチ解放時のモータ回生トルクTr1の算出方法に説明を戻す。クラッチ解放時のモータ回生トルクTr1は、前述したように車両には回生制動力のみ付与されるので、モータ12に駆動輪側に入力されるトルクであるインプットトルクTr3である。このインプットトルクTr3は、車輪にかかるトルクすなわち駆動力×車輪の有効半径を総減速比(=トランスミッション変速比it×ファイナル比id)で除算して算出される。すなわち、インプットトルクTr3は下記数8で示される。
【0059】
(数8)
インプットトルクTr3=駆動力×車輪の有効半径/(総減速比)
【0060】
ここで、駆動力(制動力に相当する)は、図4で説明したように、車両に作用する減速度による力(全エネルギーに相当する)から走行抵抗を減じた値で表されるので、インプットトルクTr3は下記数9で示される。
【0061】
【数9】

【0062】
よって、クラッチ解放時のモータ回生トルクTr1は下記数10で示される。
【0063】
【数10】

【0064】
なお、車輪の有効半径[m]をrで示す。
【0065】
車両に作用する減速度による力は、車両の質量と減速度から下記数11で示される。
【0066】
(数11)
車両に作用する減速度による力=車両の質量×減速度
【0067】
ここで、車両に作用する減速度による力[N]をFで表し、車両の質量[kg]をMで表し、減速度[m/s]をαで表す。
【0068】
走行抵抗は、転がり抵抗と空気抵抗の和で表される。走行抵抗[N]をRで表し、転がり抵抗[N]をRrで表し、空気抵抗[N]をRaで表す。転がり抵抗Rrは下記数12で示され、空気抵抗Raは下記数13で示される。
【0069】
(数12)
転がり抵抗Rr=転がり抵抗係数×車両質量M×重力加速度
【0070】
【数13】

【0071】
ここで空気密度[kg/m]をρで表し、前影投影面積[m]をAで表し、車速[km/h]をVで表す。
【0072】
クラッチ係合時のモータ回生トルクTr2は、前述したように車両には回生制動力とエンジンフリクションによる制動力の合力が付与されるので、モータ12に駆動輪側に入力されるトルクであるインプットトルクTr3からエンジンフリクショントルクを減算した値である。よって、クラッチ係合時のモータ回生トルクTr2は下記数14で示される。
【0073】
【数14】

【0074】
ここで、エンジンフリクショントルク[Nm]は、インプット回転数に関する値であり関数f(インプット回転数)で示される。インプット回転数Rsは、モータ12が駆動輪側からの入力によって回転される回転数であるので、駆動輪の車輪速度を総減速比で除算した値である。よって、インプット回転数Rsは下記数15で示される。
【0075】
【数15】

【0076】
アイドル時のエネルギーE3の算出方法を説明する。アイドル時のエネルギーE3[kWs]は、アイドル時に供給される燃料を熱エネルギー換算すればよいので、下記数16で示される。
【0077】
(数16)
アイドル時のエネルギーE3=アイドル噴射量×燃料の発熱量/1000
【0078】
ここで、アイドル噴射量の単位は[g/s]であり、発熱量の単位は[J/g]である。
【0079】
ハイブリッドECU35が実行するクラッチ16の断接切替処理について説明を戻す。ハイブリッドECU35は、車速が第2速度以下となるまで、図3に示すフローチャートを所定の制御サイクルで繰り返し実行する。
【0080】
ハイブリッドECU35は、ステップ202において、モータ回転数をモータECU34から入力し、そのモータ回転数に基づいて車速を導出する。ハイブリッドECU35は、ステップ204において、モータ回転数をモータECU34から入力し、エンジン回転数およびエンジン11に設けたスロットル開度センサ11cが検出したスロットル開度をエンジンECU31から入力し、それらモータ回転数、エンジン回転数およびスロットル開度に基づいて車両質量を導出する。そして、ハイブリッドECU35は、ステップ206において、先に導出された車速に基づいて車両の減速度を導出する。
【0081】
ハイブリッドECU35は、ステップ208において、上記数11を使用して車両質量、減速度から車両に作用する減速度による力を導出する。ハイブリッドECU35は、ステップ210において、車両質量、車速から走行抵抗を導出する。具体的には、上記数12を使用して車両質量から転がり抵抗Rrを導出し、上記数13を使用して車速から空気抵抗Raを導出し、転がり抵抗Rrと空気抵抗Raを加算して走行抵抗を導出する。
【0082】
ハイブリッドECU35は、ステップ212において、上記数9を使用して車両に作用する減速度による力、走行抵抗からインプットトルクTr3を導出する。ハイブリッドECU35は、ステップ214において、上記数15を使用して車速からインプット回転数Rsを導出する。ハイブリッドECU35は、ステップ216において、上記関数f(インプット回転数)を使用してインプット回転数からエンジンフリクショントルクを導出する。
【0083】
ハイブリッドECU35は、ステップ218において、上記数10を使用してインプットトルクからクラッチ解放時のモータ回生トルクTr1を導出する。ハイブリッドECU35は、ステップ220において、上記数14を使用してインプットトルク、エンジンフリクショントルクからクラッチ係合時のモータ回生トルクTr2を導出する。ハイブリッドECU35は、ステップ222において、上記数16を使用してアイドル噴射量(アイドル時の燃料噴射量)からアイドル時のエネルギーを導出する。アイドル噴射量はスロットル開度から演算すればよい。
【0084】
ハイブリッドECU35は、ステップ224において、上記数6を使用してクラッチ解放時のモータ回生トルク、インプット回転数からクラッチ解放時の駆動エネルギーE1を導出する。ハイブリッドECU35は、ステップ226において、上記数7を使用してクラッチ係合時のモータ回生トルク、インプット回転数、アイドル時のエネルギーからクラッチ係合時の駆動エネルギーE2を導出する。
【0085】
そして、ハイブリッドECU35は、算出された第1駆動エネルギーE1が算出された第2駆動エネルギーE2より大きい場合には、クラッチ16に対するクラッチ動作要求を解放要求に設定しその旨をクラッチECU33に送信する(ステップ230)。クラッチECU33はクラッチ動作要求が解放要求である旨に基づいてクラッチ16を解放にする(ステップ230)。
【0086】
一方、算出された第2駆動エネルギーE2が算出された第1駆動エネルギーE1より大きい場合には、クラッチ16に対するクラッチ動作要求を係合要求に設定しその旨をクラッチECU33に送信する(ステップ232)。クラッチECU33はクラッチ動作要求が係合要求である旨に基づいてクラッチ16を係合にする(ステップ232)。
【0087】
そして、ハイブリッドECU35は、プログラムを図2のステップ110に進め、クラッチ動作要求が解放要求である場合には、エンジン11をアイドル状態に維持する(ステップ112)。具体的には、アクセルオフされ、クラッチ16が解放されると、燃料の供給が停止されてエンジン回転数は減少し、アイドル回転になると再びアイドル回転を維持する燃料が供給される。
一方、ハイブリッドECU35は、クラッチ動作要求が係合要求である場合には、エンジン11への燃料供給を停止する(ステップ114)。具体的には、燃料の供給が停止される。
【0088】
このように、クラッチ16が解放されまたは係合されて車両が減速されているなかで、車速が第1速度より小さい(遅い)第2車速(例えば20km/h)以下となると、ハイブリッドECU35は、ステップ116で「YES」と判定し、回生制御指令をオフに設定してその旨をモータECU34に送信する(ステップ118)。モータECU34は回生制御指令がオフである旨に基づいてインバータ18を制御してモータ12を発電機として機能させること(回生制御)を停止する(ステップ118)。回生トルクによる制動力が車両に付与されなくなる。
【0089】
ハイブリッドECU35は、回生制御終了とともに、ステップ122において、クラッチ16に対するクラッチ動作要求を係合要求に設定してその旨をクラッチECU33に送信する。クラッチECU33はクラッチ動作要求が係合要求である旨に基づいてクラッチ16を係合にする。
【0090】
上述した説明から明らかなように、本実施形態に係る動力伝達装置(または動力伝達装置の制御装置)の発明においては、制御装置(ハイブリッドECU35)は、回生制御を行うにあたって、クラッチ16を解放した場合に得られる、車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第1駆動エネルギーE1を算出する(ステップ224)とともに、クラッチ16を係合した場合に得られる、車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第2駆動エネルギーE2をそれぞれ算出し(ステップ226)、算出された第1駆動エネルギーE1が算出された第2駆動エネルギーE2より大きい場合には、クラッチ16を解放するように制御し(ステップ228,230)、一方、算出された第2駆動エネルギーE2が算出された第1駆動エネルギーE1より大きい場合には、クラッチ16を係合するように制御する(ステップ228,230)。これにより、回生制御中にできるだけ大きい駆動エネルギーを獲得できるように、クラッチ16の係合、解放を適切に選択することができ、ひいては車両全体の燃費を向上することができる。
【0091】
また、第1駆動エネルギーE1は、クラッチ16を解放した時のモータ12の回生トルクと、クラッチ16のモータ側回転体の回転速度(インプット回転数)とから少なくとも算出される(数4)。これにより、第1エネルギーE1を正確かつ的確に算出することができる。
【0092】
また、第1駆動エネルギーE1は、車両の質量と車両の減速度から算出される車両に作用する減速度による力と、車両の質量と車両の速度から少なくとも算出される車両に作用する走行抵抗と、車両の車輪の有効半径とから少なくとも算出される、クラッチ16を解放した時のモータの回生トルクと、車両の速度と、車両の車輪の有効半径とから少なくとも算出されるクラッチ16のモータ側回転体の回転速度と、から少なくとも算出される(数6、数10)。これにより、比較的低コストかつ容易に検出、演算できる車両の質量、減速度、速度に基づいて第1エネルギーE1を低コストかつ容易に算出することができる。
【0093】
また、第2駆動エネルギーE2は、クラッチ16を係合した時のモータ12の回生トルクと、クラッチ16のモータ側回転体の回転速度と、エンジン11のアイドル時における燃料の熱エネルギーとから少なくとも算出される(数7)。これにより、第2駆動エネルギーE2を正確かつ的確に算出することができる。
【0094】
また、第2駆動エネルギーE2は、車両の質量と車両の減速度から算出される車両に作用する減速度による力と、車両の質量と車両の速度から少なくとも算出される車両に作用する走行抵抗と、車両の車輪の有効半径と、エンジン11のフリクショントルクとから少なくとも算出される、クラッチ16を係合した時のモータの回生トルクと、車両の速度と、車両の車輪の有効半径とから少なくとも算出されるクラッチ16のモータ側回転体の回転速度と、エンジン11のアイドル時における燃料の熱エネルギーと、から少なくとも算出される(数7,8,14)。これにより、比較的低コストかつ容易に検出、演算できる車両の質量、減速度、速度、アイドル時における燃料量に基づいて第2駆動エネルギーを低コストかつ容易に算出することができる。
【0095】
なお、上述した実施形態においては、エネルギー収支についてアクセルオフのみされた場合を例に挙げて説明したが、アクセルオフに加えてブレーキオンされた場合にも本発明を適用できる。
【0096】
具体的には、図5に示すように、クラッチ16が解放された場合には、車両に付与される制動力は液圧ブレーキ装置による液圧制動力が付与されるとともに回生制御による回生制動力も付与される。よって全エネルギーは走行抵抗によるエネルギーと液圧制動力によるエネルギーとクラッチ解放時の回生エネルギーの和となる。
【0097】
一方、クラッチ16が係合された場合には、車両に付与される制動力は液圧制動力と回生制動力とエンジンフリクションによる制動力の合力が付与される。よって全エネルギーは走行抵抗によるエネルギーと液圧制動力によるエネルギーとエンジンフリクションによるエネルギーとクラッチ係合時の回生エネルギーの和となる。なお、液圧制動力とエンジンフリクションによる制動力の合力は、クラッチ16が解放された場合の液圧制動力と等しい。
【0098】
また、駆動エネルギーの観点から説明すると、クラッチ16が解放された場合には、クラッチ解放時の回生エネルギーが駆動エネルギー(第1駆動エネルギー)である。一方、クラッチ16が係合された場合には、クラッチ係合時の回生エネルギーと燃料カットで得するエネルギー(アイドル時のエネルギー)の和が駆動エネルギー(第2駆動エネルギー)である。
【0099】
この場合、クラッチ解放時の回生エネルギーとクラッチ係合時の回生エネルギーは等しいため、クラッチ係合時のモータ回生トルクTr2はクラッチ解放時のモータ回生トルクTr1と等しくなる。
【0100】
また、上述した実施形態においては、クラッチ16はノーマルクローズ型のクラッチであるが、ノーマルオープン型のクラッチでもよい。
【符号の説明】
【0101】
11…エンジン、11a…エンジン側回転体、11b…回転数センサ、12…モータ、12a…モータ側回転体(ロータ)、12b…ステータ、12c…回転数センサ、13…トランスミッション、14…プロペラシャフト、15…ディファレンシャルギア、16…クラッチ、18…インバータ、19…バッテリ、31…エンジンECU、32…自動変速機ECU、33…クラッチECU、34…モータECU、35…ハイブリッドECU(制御装置)、Wrl,Wrr…駆動輪。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて燃料の燃焼によって駆動力を発生させるエンジンと前記エンジンの駆動力によって駆動される前記車両の駆動輪との間の駆動経路に設けられ、電気エネルギーによって駆動力を発生させて前記駆動輪を駆動可能であり、発電機として作動されて運動エネルギーを電気エネルギーに変換するモータと、
前記駆動経路上であって前記エンジンと前記モータとの間に設けられ、解放時に前記エンジンと前記モータとの間の動力伝達を遮断し一方係合時に前記動力伝達が可能となるクラッチと、
前記クラッチを係合または解放するように制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
回生制御を行うにあたって、前記クラッチを解放した場合に得られる、前記車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第1駆動エネルギーを算出するとともに、前記クラッチを係合した場合に得られる、前記車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第2駆動エネルギーをそれぞれ算出し、
算出された前記第1駆動エネルギーが算出された前記第2駆動エネルギーより大きい場合には、前記クラッチを解放するように制御し、一方、算出された前記第2駆動エネルギーが算出された前記第1駆動エネルギーより大きい場合には、前記クラッチを係合するように制御することを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第1駆動エネルギーは、前記クラッチを解放した時の前記モータの回生トルクと、前記クラッチのモータ側回転体の回転速度とから少なくとも算出されることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項3】
請求項1において、前記第1駆動エネルギーは、
前記車両の質量と前記車両の減速度から算出される前記車両に作用する減速度による力と、前記車両の質量と前記車両の速度から少なくとも算出される前記車両に作用する走行抵抗と、前記車両の車輪の有効半径とから少なくとも算出される、前記クラッチを解放した時の前記モータの回生トルクと、
前記車両の速度と、前記車両の車輪の有効半径とから少なくとも算出される前記クラッチのモータ側回転体の回転速度と、
から少なくとも算出されることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項4】
請求項1において、前記第2駆動エネルギーは、前記クラッチを係合した時の前記モータの回生トルクと、前記クラッチのモータ側回転体の回転速度と、前記エンジンのアイドル時における燃料の熱エネルギーとから少なくとも算出されることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項5】
請求項1において、前記第2駆動エネルギーは、
前記車両の質量と前記車両の減速度から算出される前記車両に作用する減速度による力と、前記車両の質量と前記車両の速度から少なくとも算出される前記車両に作用する走行抵抗と、前記車両の車輪の有効半径と、前記エンジンのフリクショントルクとから少なくとも算出される、前記クラッチを係合した時の前記モータの回生トルクと、
前記車両の速度と、前記車両の車輪の有効半径とから少なくとも算出される前記クラッチのモータ側回転体の回転速度と、
前記エンジンのアイドル時における燃料の熱エネルギーと、
から少なくとも算出されることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項6】
車両に搭載されて燃料の燃焼によって駆動力を発生させるエンジンと前記エンジンの駆動力によって駆動される前記車両の駆動輪との間の駆動経路に設けられ、電気エネルギーによって駆動力を発生させて前記駆動輪を駆動可能であり、発電機として作動されて運動エネルギーを電気エネルギーに変換するモータと、
前記駆動経路上であって前記エンジンと前記モータとの間に設けられ、解放時に前記エンジンと前記モータとの間の動力伝達を遮断し一方係合時に前記動力伝達が可能となるクラッチと、
前記クラッチを係合または解放するように制御する制御装置と、を備えた動力伝達装置に適用され、
前記制御装置は、
回生制御を行うにあたって、前記クラッチを解放した場合に得られる、前記車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第1駆動エネルギーを算出するとともに、前記クラッチを係合した場合に得られる、前記車両を駆動するために使用される駆動エネルギーである第2駆動エネルギーをそれぞれ算出し、
算出された前記第1駆動エネルギーが算出された前記第2駆動エネルギーより大きい場合には、前記クラッチを解放するように制御し、一方、算出された前記第2駆動エネルギーが算出された前記第1駆動エネルギーより大きい場合には、前記クラッチを係合するように制御することを特徴とする動力伝達装置の制御装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−93433(P2011−93433A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249321(P2009−249321)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】