説明

包絡線追跡電源の電源回路、電力増幅器及び無線基地局

【課題】広いダイナミックレンジと広帯域な信号を用いる高速無線システムの電力増幅器、例えば広帯域基地局電力増幅器に用いられる包絡線追跡電源において、デバイス特性に起因し、電源回路素子は高耐圧と帯域の両立が困難であり、出力波形において歪みが生じる上、効率が劣化する。
【解決手段】包絡線追跡電源を、第1の電圧発生部と第2の電圧発生部で構成し、第1の電圧発生部をスイッチング・アンプと誤差増幅器を備えた合成アンプ(Class-BD方式)とし、該第1の電圧発生部の入力を振幅あるいは周波数で制限することで、Class-BD方式の構成素子の仕様を大幅に緩和し、低歪みで高効率な増幅を実現する。また、残りの信号は、第2の電圧発生部で増幅し、第1の電圧発生部と第2の電圧発生部の出力を合成することで、全体の信号に対して低歪みで高効率な増幅を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、広帯域無線基地局に適した包絡線追跡電源の電源回路、電力増幅器、及び基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信の高速化を支えるデジタル変調技術として、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)が主流となっている。OFDMで用いられる信号は、高いPAPR(Peak to Average Power Ratio)を持つことから、電力増幅器における効率低下が顕著となる。したがって、常時動作し、消費電力が大きな基地局においては、電力増幅器の効率向上が、喫緊の課題となっている。
近年、その高効率化手法として注目されているのが、包絡線追跡電源を利用したEER(Envelope Elimination and Restoration)やET(Envelope Tracking)であり、例えば特許文献1にその動作原理が開示されている。これらの方式は、信号の包絡線に応じて主増幅器の電源電圧(MOS(Metal Oxide Semiconductor)の場合はドレイン電圧)を動的に制御・追跡することによって、広いダイナミックレンジの信号を高効率に増幅する方式である。
【0003】
EER電力増幅器の構成例を図14に示し、該電力増幅器回路中の各点での波形を図15に示す。図14に示す入力信号600は、EER電力増幅器への入力信号である。611はリミッタであり、入力信号600の振幅を制限することにより、包絡線を除去し位相情報を取り出す回路である。602は、リミッタ611から出力される位相信号である。612は、後述する振幅信号605と位相信号603のタイミングを調整する遅延部である。603は、遅延部612により遅延した位相信号である。613は、位相信号603を入力とし、後述する振幅信号605によりその電源電圧が変調される主増幅器である。617は、主増幅器613のドレイン電源の負荷インピーダンスである。606は、主増幅器613から出力されるRF信号(高周波信号)である。614は、振幅信号を取り出す振幅検出器である。604は振幅信号である。615は、包絡線追跡電源であり、振幅信号604を増幅し、振幅信号605を出力する。
【0004】
EER電力増幅器とET電力増幅器は、ほぼ同様な構成により実現されるが、それらの違いを簡単に説明すると、次のとおりである。EER電力増幅器では、主増幅器613への入力信号603は、振幅一定の包絡線の位相成分のみであるため、主増幅器613は、高効率な飽和型アンプ(D級やE級など)を使用することができる。振幅信号604は、包絡線追跡電源615により増幅され、入力信号600の包絡線波形が再現されて、主増幅器613の電源電圧として供給される。
【0005】
一方、ET電力増幅器では、図14の構成においてリミッタ611が不要となる。主増幅器613に対する入力信号603は、RF信号(位相・振幅変調信号)であり、主増幅器613は、線形アンプ(A級、AB級、B級)が使用される。通常のアンプと異なる点は、線形アンプ613の電源電圧を、入力信号600の包絡線にあわせて変調させることである。これにより、線形アンプ613の電源電圧に固定電圧を印加する場合と比べて、バックオフが小さくなり、線形アンプ613の高効率化が可能となる。
【0006】
EER電力増幅器でもET電力増幅器でも、包絡線追跡電源615は、同じ構成で実現することも可能であるが、EER電力増幅器では、増幅する信号の振幅成分を主増幅器613の電源電圧に再現するため、波形再生および位相信号603と振幅信号605のタイミング合わせにおいて精度が要求される。
以上のように、EER電力増幅器やET電力増幅器のいずれの包絡線追跡電源においても、広いダイナミックレンジを有する広帯域な信号を高効率で忠実に増幅する必要がある。公知の包絡線追跡電源としては、例えば、特許文献2に記載されているPWM(Pulse Width Modulation)を利用したS級増幅器や、非特許文献1、特許文献3に開示されている方式(以下、Class−BD方式と呼ぶ)がある。また、特許文献4には、低い電圧の入力信号に対しては固定電源を出力し、高い電圧の入力信号に対しては包絡線追跡を行う組合わせ方式に関するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6256482号明細書
【特許文献2】特開2009−016999号明細書
【特許文献3】特開1998−242779明細書
【特許文献4】特開2005−20693号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】G. B. Yundt, “Series or Parallel-Connected Composite Amplifiers,” IEEE Transactions on Power Electronics, Vol PE-1, No. 1, January 1986, pp 48-54.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
オーディオ系のアンプや狭帯域無線などの狭帯域信号用の包絡線追跡電源としては、特許文献2に開示されているようなS級増幅器が利用されている。S級増幅器は、入力包絡線信号を三角波と比較してパルス幅変調を行い、そのPWM信号でD級アンプを増幅し、後段のフィルタで所望の出力を得る方式である。入力包絡線信号と三角波を比較する際、入力信号帯域に対して数倍から数十倍の高速動作が必要となるため、広帯域システムへの適用は現実的ではない。
一方、Class−BD方式では、包絡線信号の信号帯域幅以下の周波数でスイッチング動作するため、D級アンプ効率は高く維持される。さらに、ボルテージ・フォロワーで構成される誤差増幅器により歪みを低減することが可能であり、S級で用いられるようなフィルタも不要となる。このため広帯域無線システムにおいては、非特許文献1や特許文献3に記載されるClass−BD方式が、歪みや効率の面からもより効果的である。
【0010】
非特許文献1に記載された、包絡線追跡電源(Class−BD方式)の従来例を図16に示す。動作の詳細に関しては、非特許文献1に記載されている。図16において、410はClass−BD方式の包絡線追跡電源、400は入力端子、401は包絡線追跡電源410への入力信号、402は包絡線追跡電源410からの出力信号である。403は、後述する誤差増幅器411からセンス抵抗412を介して流入又は流出される信号である。404は、スイッチング・アンプ414からインダクタ415を介して出力される出力信号。411は、B級動作するトランジスタやオペアンプなどから構成される誤差増幅器であり、入出力電圧を同一に保つような動作をするボルテージ・フォロワーの構成をとる。412はセンス抵抗。413は、センス抵抗412の両端間の電位差を増幅するセンス回路であり、計装アンプやヒステリシス・コンパレータなどから構成される。414は、D級アンプなどにより構成されるスイッチング・アンプ。415はインダクタ。409は、包絡線追跡電源410の出力端子であり、図14の主増幅器613の電源負荷617に接続される。一般に、誤差増幅器411は、広帯域で効率が低く、スイッチング・アンプは高効率ながら帯域は狭い。
【0011】
図17(a)及び図17(b)に、従来の包絡線追跡電源410の出力波形とスイッチング・アンプ414のスイッチング出力波形を示す。図17(a)は、包絡線追跡電源410に低周波信号(10kHz)が入力された場合、図17(b)は、高周波信号(1MHz)が入力された場合である。図17(a)及び図17(b)において、421及び423は、包絡線追跡電源410の出力波形であり、422及び424は、スイッチング・アンプ414のスイッチング出力波形である。
【0012】
包絡線追跡電源410に低周波信号が入力された場合は、スイッチング・アンプ114がその入力周波数よりも高速にスイッチングを繰り返し、矩形信号422を出力する。その矩形信号422はインダクタ415で平滑され、元の入力信号波形を出力端子409、すなわち、図14の負荷抵抗617に再現する(図17(a))。その際、誤差増幅器411は、入力信号401と出力信号402を比較し、それらの電圧差分を補うように、微小な電流を誤差増幅器411の出力に注入、もしくは誤差増幅器411の出力から引き抜く働きを担っている。スイッチング・アンプ414は、トランジスタがON/OFF動作をするだけなので、低い入力周波数の場合は非常に高い効率が得られる。一方、誤差増幅器411の効率は低いが、出力する電力が微小なため、包絡線追跡電源410の全体効率にはあまり影響しない。
【0013】
包絡線追跡電源410に高周波信号が入力された場合は、スイッチング・アンプ414およびインダクタ415は、両者で決定されるスルーレートの制約により、元の入力信号波形401を出力端子409、すなわち、図14の負荷抵抗617に再現できない。この場合は、誤差増幅器411が、元の入力信号波形401を出力端子409に再現することに大きく寄与する。このとき、スイッチング・アンプ414のスイッチング周波数は、入力信号401の周波数と同一となり、スイッチング・アンプ114は主に出力信号402のDC成分を担い、誤差増幅器411は出力信号402のAC成分を担うような動作を示す(図17(b))。
【0014】
このため、包絡線追跡電源410に高周波信号が入力されると、スイッチング・アンプ414は入力信号と同一の周波数で高周波動作し、効率が著しく劣化する。さらに、効率の低い誤差増幅器111の寄与度が大きくなるため、包絡線追跡電源410の全体効率が低下する。誤差増幅器411の効率が低い原因は、入力信号の高いダイナミックレンジに対応するため、平均電力出力時にはバックオフが大きい状態で増幅することに起因する(図18)。図18は、図16における誤差増幅器411の入出力特性を示す図である。図18において、431は入力信号401の波形、432及び436は平均電力、433は入力信号401のピーク電力、434は誤差増幅器411の出力波形、435は飽和電力、437は誤差増幅器411の入出力特性である。
例えば、誤差増幅器411のClass−B動作における効率を、簡易な理論式(1)から計算すると、バックオフ10dBの場合は、理論効率が24.8%となる。

ηb = ηmax×(Pb /Pmax1/2 (1)

ここで
Pb:バックオフ時の出力、Pmax:最大出力
ηb:バックオフ時の効率、ηmax:最大効率
【0015】
上記のように、高周波帯では、スイッチング・アンプ414の効率が劣化し、誤差増幅器411は低い効率で動作し、誤差増幅器411の出力信号への寄与度も高くなるため、包絡線追跡電源410全体として効率が低くなる。
なお、スイッチング・アンプ414が、入力信号よりも高速にスイッチングすることにより、波形を再現するモードを追従モードと呼ぶ。また、スイッチング・アンプ414が入力信号と同じ周波数で動作し、波形再現には誤差増幅器411の寄与が大きくなるモードを非追従モードと呼ぶ。各モードにおける包絡線追跡電源410の効率と入力周波数との関係を図19(a)に示す。また、各モードにおけるスイッチング・アンプ414のスイッチング周波数と入力周波数との関係を図19(b)に示す。図19(a)と図19(b)において、ftransは、追従モードと非追従モードが切り替わる入力周波数、fswは、追従モードにおけるスイッチング・アンプ414のスイッチング周波数を示す。パラメーターftrans、fswはいずれも、入力信号や包絡線追跡電源の各種パラメーター(電源電圧やインダクタンス)などにより決定される。
【0016】
このようなClass−BD構成の増幅器により、広いダイナミックレンジを持つ広帯域信号を高効率に増幅する際には、少なくとも次の2つの課題がある。
(1)Class−BD構成の増幅器を基地局に使用する場合、入力段に位置する誤差増幅器411は、高電圧(高耐圧)かつ広帯域な特性が必要となるが、現状では実現が困難である。
(2)広帯域な包絡線信号の増幅において、高周波帯における効率低下がもととなり全体効率が低下する。
以下、それぞれの課題を詳細に説明する。
上記(1)の課題を説明する。入力段に位置する誤差増幅器411は、入力信号401を歪み無く出力する必要があることから、入力信号401に対応した仕様が求められる。現在、想定される広帯域無線システムは、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access), LTE(Long Term Evolution)やLTE−Advancedなどであり、いずれも20〜100MHzの帯域幅が要求される。さらに基地局用の電力増幅器においては、高出力で高いPAPRの信号が使用されるので、電力増幅器回路の電圧も高くなる。即ち、誤差増幅器411は、高電圧かつ広帯域特性を有し、高効率であることが要求される。
一方、基地局で使用可能な、数十ボルトかつ数十MHzの帯域幅を有する誤差増幅器411(オペアンプやトランジスタで構成)は、現状入手不可能である。この理由は、高電圧(高耐圧)特性を実現する構造をとると、原理的に容量成分が大きくなり、周波数特性が悪くなるからである。つまり、トランジスタ等のデバイスにおいて、電圧(耐圧)と帯域幅はトレードオフの関係にあり、基地局向けの誤差増幅器411において両方の仕様を実現することは困難である。
【0017】
上記(2)の課題を説明する。図20に、OFDMの規格であるIEEE802.11aの包絡線スペクトルを示す。横軸は周波数、縦軸は電力である。OFDMの包絡線は広い周波数分布を持つが、図16に示す包絡線電源部410は、図19(a)に示すように、高い周波数帯では、高いスイッチング周波数に起因して効率が著しく劣化する。OFDMの包絡線は、ほとんどの信号電力をDC近辺に持つため、図16に示す包絡線電源部410においてもある程度の効率は得られるが、より高い効率を得るためには、高周波帯での効率向上が必須となる。
なお、特許文献4では、入力信号が0V付近で動作させた場合に発生するゲイン劣化や歪みを回避するため、低電圧では固定電圧で出力し、高い電圧の信号に対しては包絡線追跡を行うという組み合わせの方式が開示されているが、この方式は、上記の課題を解決するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記(1)の課題に対しては、電圧(耐圧)と帯域幅がトレードオフの関係にあるため、数十Vの電圧かつ数十MHzの帯域特性を有する誤差増幅器は実現困難であるが、(a)高電圧かつ狭帯域(数十Vかつ数MHz)特性を有する誤差増幅器、もしくは、(b)低電圧かつ広帯域(数Vかつ数十MHz)特性を有する誤差増幅器は、現状の技術でも実現可能である。したがって、高電圧かつ狭帯域あるいは低電圧かつ広帯域の入力信号のいずれかを、Class−BD方式の増幅回路である第1の電圧発生部で処理し、それ以外の入力信号に対しては、その信号に適した第2の電圧発生部で処理する。これにより、高電圧かつ広帯域な電力増幅器において歪みの少ない信号出力が可能となり、不要波を制限している電波法の観点からも運用が可能となる。
ただし、上記第1、第2の電圧発生部へ入力信号を分離、あるいは第1、第2の電圧発生部からの出力信号を合成する際は、分離、合成する際に波形歪みが生じることや、合成の際に第1、第2の電圧発生部の出力がお互いの出力に流入し、本来出力されるべき信号が出力されないということも懸念される。したがって、それらを補償あるいは回避する手段を含め提供する。
【0019】
上記(2)の課題は、スイッチング・アンプ414の高速動作による効率劣化と、バックオフを大きく取ることにより効率が低下した誤差増幅器411の寄与度が大きくなることに起因する。したがって、Class−BD方式の増幅回路を高速動作させないこと、バックオフを小さくすること、誤差増幅器411の寄与度を小さくすることが解決策となる。
具体的には、第1に、Class−BD方式の増幅回路への入力信号を低周波に制限し、Class−BD方式の増幅回路を追従モードで動作させる構成が考えられる。これによりスイッチング・アンプ414は低速動作となり、さらに、低効率な誤差増幅器411の影響がほとんどなくなるため、全体として高い効率が得られる。
あるいは、第2に、入力信号を低電圧に制限する構成が考えられる。これにより、使用するデバイスのサイズが小さくなるため、高周波での効率劣化要因である寄生容量などが軽減される。したがって、高周波帯域で高効率なスイッチング・アンプ414や誤差増幅器411を実現できる。さらに、入力信号のPAPRが小さくなることから、誤差増幅器411における電源電圧を小さく設定でき、バックオフの小さな高効率動作が可能となる。この第2の場合は、Class−BD方式の増幅回路に高い瞬時電力が入力されないような構成をとることにより実現される。
【0020】
具体的には、本発明は、次の構成を備えた電源回路により実現される。
第1の電圧発生部と第2の電圧発生部とを備えた電源回路であって、
前記第1の電圧発生部は、該第1の電圧発生部への入力信号が入力される誤差増幅器と、前記誤差増幅器の出力端子にその一端が接続されるセンス抵抗と、前記センス抵抗間に発生する電圧に基づいて制御信号を生成するセンス回路部と、前記センス回路部からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行って電流を出力するスイッチング・アンプ部と、前記スイッチング・アンプからの出力を平滑するインダクタとを備え、前記インダクタの出力は、前記センス抵抗の他端と接続され、
前記第1の電圧発生部において所定周波数以下の入力信号を増幅した出力電圧を発生するとともに前記第2の電圧発生部において所定周波数より高い周波数の入力信号に対応する出力電圧を発生するか、又は、前記第1の電圧発生部で所定振幅以下の入力信号を増幅した出力電圧を発生するとともに前記第2の電圧発生部で所定振幅より大きい振幅の入力信号に対応する出力電圧を発生し、
前記第1の電圧発生部からの出力と、前記第2の電圧発生部からの出力とを合成することを特徴とした電源回路。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高速伝送を可能にする広帯域無線システムに適用可能な、高効率・広帯域な特性を有する電源回路や電力増幅器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施例における包絡線追跡電源の構成例を示すブロック図。
【図2】図1における包絡線追跡電源の効率の周波数依存性を示す図。
【図3】図1におけるスイッチング・アンプの出力波形。
【図4】図1における包絡線追跡電源の電圧利得の周波数特性を示す図。
【図5】本発明の第2実施例における包絡線追跡電源の構成例を示すブロック図。
【図6】OFDM包絡線の振幅分布の一例を示す図。
【図7】本発明の第3実施例における包絡線追跡電源の構成例を示すブロック図。
【図8】本発明の第4実施例における包絡線追跡電源の構成例を示すブロック図。
【図9】図8に示す閾値比較部の動作を説明するための信号波形。
【図10】図8に示す閾値比較部の動作を説明するためのフローチャート。
【図11】図9(d)の波形を出力する、図8の電圧源の構成例を示すブロック図。
【図12】図9(e)の波形を出力する、図8の電圧源の構成例を示すブロック図。
【図13】本発明の第5実施例における包絡線追跡電源の構成例を示すブロック図。
【図14】EER型増幅器の従来例を示すブロック図。
【図15】図14記載のEER型増幅器における波形。
【図16】包絡線追跡電源の従来例を示すブロック図。
【図17】図16における出力波形の実測結果。
【図18】図16における誤差増幅器の入出力特性を示す図。
【図19】図16における、包絡線追跡電源の効率の入力周波数特性、及びスイッチング・アンプのスイッチング周波数の入力周波数特性を示す図。
【図20】IEEE802.11aの包絡線スペクトル。
【図21】本発明の包絡線追跡電源を使用する無線基地局の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、通信速度の高速化に伴い無線信号が広いダイナミックレンジを持ち、かつ、広帯域となる電力増幅器で使用される包絡線追跡電源において有用である。本発明を適用した包絡線追跡電源は、EER(Envelope Elimination and Restoration)方式や、ET(Envelope Tracking)方式など、無線信号の包絡線に応じて最終段電力増幅器の電源電圧を変動する電力増幅器へ適用されることが好ましい。また、EER方式、あるいはET方式の選択に際しては、歪みや効率などの目標仕様や本発明の実施形態に応じて、選択することが好ましい。
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。全ての実施形態を通じ、同様の構成要素には同一の参照番号を付与し、重複する説明は適宜省略する。
【0024】
(第1実施例)
まず、本発明の包絡線追跡電源を使用する無線基地局の構成について、図21を用いて説明する。図21は、本発明の包絡線追跡電源を使用する無線基地局800の構成例を示すブロック図であり、第1実施例のほか、後述する第2〜5実施例にも適用される。基地局800は、信号処理やアナログ部810、811の制御を行うベースバンド部801と、そのベースバンド部801から出力される制御信号825と、送受信信号の増幅や周波数変換を行うアナログ部810、811と、無線電波の送受信を行うアンテナ841、842などから構成される。
ベースバンド部801は、ネットワークとの接続部であるネットワーク・インターフェース部802、命令を実行するプロセッサー803、プログラムやデータなどを格納するメモリー804、変復調処理やFFT(高速フーリエ変換)など各種演算処理を行う信号処理部805、806などから構成される。アナログ部810、811は、RF部820とフロントエンド部830を備える。
【0025】
送信する場合は、RF部820では、ベースバンド部801からのデジタル信号をアナログ信号に変換し、所望のキャリア周波数に周波数変換(アップコンバート)し、送信信号の増幅を行う。フロントエンド部830では、RF部820からの送信信号を、電力増幅器831により所望の出力レベルまで増幅し、アイソレーターやフィルタ(図には記載していない)、送受信切替スイッチ833などを経て、アンテナ842から送信する。
受信する場合は、フロントエンド部830では、アンテナ842からの信号を、送受信切替スイッチ833を経て、ローノイズアンプ832で増幅する。RF部820では、フロントエンド部830からの受信信号を、ベースバンド信号に周波数変換(ダウンコンバート)し、デジタル信号にAD変換(アナログ・デジタル変換)する。AD変換された受信信号は、ベースバンド部801において復調される。なお、図21の構成では、MIMO(Multiple Input Multiple Output)対応として、信号処理部、アナログ部およびアンテナを2系統記載しているが、MIMO対応が不要な場合は、1系統としてもよい。
【0026】
次に、本発明による包絡線追跡電源の第1実施例を、図1を用いて説明する。図1は、本発明の第1実施例における包絡線追跡電源211の構成例を示すブロック図である。包絡線追跡電源211は、入力端子100と、出力端子109と、Class−BD方式の合成アンプ110と、ドハティ型電力増幅器120と、入力信号101を周波数により分割するローパス・フィルタ131及びハイパス・フィルタ132と、合成アンプ110とドハティ型電力増幅器120の出力をお互い干渉無く合成するローパス・フィルタ133とハイパス・フィルタ134と、合成アンプ110とドハティ型電力増幅器120との間の位相・振幅を調整する位相・振幅調整部128を備える。
【0027】
入力端子100からの信号線は2つに分岐されて、ローパス・フィルタ131の一端とハイパス・フィルタ132の一端に接続される。ローパス・フィルタ131の他端は、合成アンプ110の入力、すなわち、誤差増幅器111の一方の入力に接続される。誤差増幅器111の他方の入力は、誤差増幅器111の出力と接続され、更に、センス抵抗112の一端、及びセンス回路113の一方の入力に接続される。センス回路113の他方の入力は、センス抵抗112の他端に接続され、更に、ローパス・フィルタ133の入力に接続される。センス回路113の出力は、スイッチング・アンプ114の入力に接続される。スイッチング・アンプ114の出力は、インダクタ115の一端と接続され、インダクタ115の他端は、センス抵抗112の他端と接続される。
ハイパス・フィルタ132の他端は、位相・振幅調整部128の入力に接続される。位相・振幅調整部128の出力は、ドハティ型電力増幅器120の入力、すなわち、分配器121の入力に接続される。分配器121の出力の一方は、キャリア・アンプ123の入力に接続される。キャリア・アンプ123の出力は、90度位相器125の一端に接続される。90度位相器125の他端は、合成器122の入力の一方に接続される。分配器121の出力の他方は、90度位相器126の一端に接続される。90度位相器126の他端は、ピーク・アンプ124の入力に接続される。ピーク・アンプ124の出力は、合成器122の入力の他方に接続される。合成器122の出力は、ハイパス・フィルタ134の入力に接続される。ローパス・フィルタ133の出力とハイパス・フィルタ134の出力は、出力端子109に接続される。
【0028】
入力信号101のうち、ローパス・フィルタ131でフィルタリングされた低周波信号102(直流成分を含む)は、合成アンプ110で増幅される。ハイパス・フィルタでフィルタリングされた高周波信号103は、ドハティ型電力増幅器120で増幅される。合成アンプ110の出力106と、ドハティ型電力増幅器120の出力107は、それぞれフィルタ133、フィルタ134を通過後、加算され、出力信号108となり出力端子109に出力される。出力端子109は、図14のようなEER型増幅器の主増幅器613の電源負荷617などに接続されるので、主増幅器613の電源電圧は、出力信号108により変調される。ここで用いられる低周波や高周波、あるいは小振幅や大振幅という用語は、入力信号101における相対的な意味を表し、以下でも同様な意味で用いる。
なお、入力端子100の出力は、ローパス・フィルタ131とハイパス・フィルタ132の前で分岐されるが、その分岐においては単純な結線、もしくは分配器を用いてもよい。同様に、出力端子109においてローパス・フィルタ133とハイパス・フィルタ134の出力は、単純な結線、もしくは合成器を用いてもよい。
また、ローパス・フィルタ131、ハイパス・フィルタ132、位相・振幅調整部128は、DSP(Digital Signal Processor)などのデジタル信号処理により同じ機能を実現してもよいし、アナログ素子により実現してもよい。
【0029】
合成アンプ110は、広帯域で比較的効率の低い誤差増幅器111、センス抵抗112、センス回路113、狭帯域で高効率なスイッチング・アンプ114、インダクタ115を備えている。入力信号101のうち、スイッチング・アンプ114が処理しきれない広帯域な信号成分や、スイッチング・アンプ114の出すノイズは、誤差増幅器111の出力により打ち消され、高効率でノイズの小さい電源回路を実現する。なお、スイッチング・アンプ114は、スイッチング動作をする上側MOS(High Side MOS)181と下側MOS(Low Side MOS)182と、上側MOS181と下側MOS182が同時にONしないようにする貫通防止ロジック部180などから構成されている。本方式の合成アンプをClass−BD方式と称する理由は、誤差増幅器111がB級動作の電力増幅器で構成されることが多く、スイッチング・アンプ114がD級動作と呼ばれる電力増幅器であることに由来する。
【0030】
合成アンプ110の動作を、以下、簡単に説明する。ここでは説明を簡便にするため、DC信号が入力された場合について説明する。入力端子100から、DC信号が入力されたとき,ボルテージ・フォロワーを形成する誤差増幅器111は、入力のDCレベルと出力のDCレベルを等しくするように、その出力端子に電流を流す。誤差増幅器111は、その入力端子への入力信号と同じ電圧を該誤差増幅器111の出力端子に発生させるべく、該出力端子から電流を流出もしくは該出力端子に電流を流入させる。その際、センス抵抗112に電流が流れだし、センス抵抗112で発生する電位が、ヒステリシス・コンパレータなどから構成されるセンス回路部113の閾値をこえると、スイッチング・アンプ114のHigh Side MOS181をONにする。これにより、スイッチング・アンプ114は、合成アンプ110の出力106に電流を供給するようになる。合成アンプ110の出力106における電流は、誤差増幅器111からの電流とスイッチング・アンプ114からの電流の和となる。スイッチング・アンプ114からの電流が増え続けると、誤差増幅器111からの電流は小さくなっていき、結果、センス抵抗112で発生する電位が下がる。センス抵抗112で発生する電位が、ある電位まで下がると、センス回路113の閾値をわり、スイッチング・アンプ114のHigh Side MOS181がOFF(Low Side MOS182がON)になる。これにより、スイッチング・アンプ114から出力106への電流供給が減り、誤差増幅器111は、その出力端子に再度電流を流し始める。以上の動作を繰り返し、合成アンプ110は、所望の出力信号を生成する。
【0031】
ドハティ型電力増幅器120の動作を、以下、簡単に説明する。ドハティ型電力増幅器120は、キャリア・アンプ123とピーク・アンプ124と呼ばれる2つの増幅器と、所望の周波数において90度の位相差を発生させる90度位相器125、126と、分配器121と、合成器122を備える。なお、90度位相器125と合成器122、および90度位相器126と分配器121は所望の動作を満たすのであれば、それぞれ広帯域トランスのような1つの素子で構成されてもよい。また、キャリア・アンプ123は、A級、AB級、B級のいずれかにバイアスされたアンプであり、ピーク・アンプ124は大振幅の信号のみを増幅するようにC級バイアスされたアンプである。
ドハティ型電力増幅器120の入力端子から入力された信号は、分配器121で分割された後、一方は、キャリア・アンプ123に入力される。他方は、90度位相器126にて90度位相回転され、ピーク・アンプ124に入力される。キャリア・アンプ123の出力側には、90度位相器125が設けられている。キャリア・アンプ123からの出力信号は、90度位相器125により90度位相回転した後、合成器122により、ピーク・アンプ124の出力と合成される。
【0032】
ドハティ型電力増幅器120への瞬時入力電力が小さい場合には、キャリア・アンプ123は入力信号を増幅して出力するが、ピーク・アンプ124はC級バイアスされているためオフ状態で動作しない。このとき、ピーク・アンプ124の消費電力は充分小さく、低出力時に高い効率が得られるように調整されたキャリア・アンプ123は高い電力効率が得られる。
一方、ドハティ型電力増幅器120への瞬時入力電力が大きい場合には、ピーク・アンプ124も動作し、キャリア・アンプ123の出力と合算して出力される。ドハティ型電力増幅器では、90度位相器を利用することで、動作モードにより負荷に見えるインピーダンスが変化しており、このことがさらに高効率化に寄与している。
【0033】
図1の合成アンプ110とドハティ型アンプ120の並列構成アンプでは、それぞれが得意とする周波数帯で各アンプが動作するよう入力信号を制限し、包絡線追跡電源211全体の高効率化を実現する。すなわち、直流から低周波信号においての高効率動作が可能な合成アンプ110には、低周波信号をローパス・フィルタ131により入力し、合成アンプ110へ入力される信号より高い周波数の信号は、ハイパス・フィルタ132によりドハティ型アンプ120に入力し増幅する。それらの出力信号の合算により、出力信号108を出力する。
この構成をとることで、誤差増幅器111の仕様を、従来の課題であった高電圧かつ広帯域から、高電圧かつ狭帯域へと緩和することが可能になり、歪みを抑えて入力信号を増幅することが可能となる。さらに、ローパス・フィルタ131により入力信号帯域が制限されていることから、スイッチング・アンプ114は、高周波動作せず、低周波帯の高効率な領域での動作に限定される。一方、高周波信号は、ドハティ型電力増幅器120で高効率に増幅することが可能なため、上述した並列構成アンプでは、結果としてすべての帯域にわたって高効率に増幅できる。
【0034】
図2に本実施例による効率改善効果の一例を示す。図2は、図1の包絡線追跡電源211の効率の周波数依存性を示す図である。図2において、合成アンプ110の効率201は、低周波帯(この例では、DC〜f1)においてスイッチング・アンプ114が主に信号増幅を担うため、95%と高い。周波数がf1より高くなると、非追従モードとなり、スイッチング・アンプ114が高周波動作することや、効率の低い誤差増幅器111の全体出力に対する寄与度が高まることの影響により、合成アンプ110の効率201は低下し始める。
一方、ドハティ型電力増幅器120の効率202は、図2の例では、周波数に依らず一定であり、周波数f2以上においては、ドハティ型電力増幅器120の効率202は、合成アンプ110の効率201よりも大きくなる。したがって、合成アンプ110の効率201とドハティ型電力増幅器120の効率202が、同程度となる周波数(図2ではf2)を、それらの動作を切り替える遷移周波数として設定している。また、この遷移周波数に基づいて、ローパス・フィルタ131やハイパス・フィルタ132の通過帯域、ドハティ型電力増幅器120などの動作帯域を設定する。上記では、効率をもとに遷移周波数を設定したが、歪みなどのパラメーターを考慮して設計しても良い。
図2の例では、包絡線追跡電源211の効率203は、周波数f1以下においては、合成アンプ110の効率201により95%を示し、周波数f1〜f2においては、合成アンプ110の効率201により95〜50%を示し、周波数f2以上においては、ドハティ型電力増幅(120)の効率202により、50%を示している。
【0035】
さらに本実施例の場合は、合成アンプ110の出力106にローパス・フィルタ133、ドハティ型電力増幅器120の出力107にハイパス・フィルタ134を実装することで、それぞれの出力信号が相互に流入することなく、出力端子109に所望の信号を伝達することが可能となる。これはスイッチなどを用いて、出力106と出力107の出力を切り替える方式と比べ、切替による出力信号の不連続性の問題が回避される。
特に、図1に示すようなローパス・フィルタ133やハイパス・フィルタ134を実装する場合は、次の効果も期待される。図3は、スイッチング・アンプ114の出力波形の実測結果を示す。図3に示すように、スイッチング・アンプ114の出力波形には、スパイクや高周波のリンギング(この例ではおよそ100MHz)が観測される。これらのスパイクやリンギングは、包絡線追跡電源211の出力波形における歪みの原因となる。本実施例の場合は、合成アンプ110で発生した高周波歪み成分(スイッチングの際に発生するスパイク、リンギングなど)は、ローパス・フィルタ133によって減衰するため、包絡線追跡電源211の出力108は、低歪みとなる。
【0036】
本実施例では、合成アンプ110の出力とドハティ型アンプ120の出力を合成して、出力信号108を生成する。したがって、合成した出力信号108の振幅特性や位相特性を考慮して、合成アンプ110やドハティ型アンプ120のゲインや、遅延素子などの各種仕様を決定することが好ましい。以下、振幅特性に関して、具体例を図4により説明する。図4は、図1における包絡線追跡電源211の電圧利得の周波数特性を示す図である。図4において、500は合成アンプ110の電圧利得の周波数特性、501〜503はドハティ型電力増幅器120の電圧利得の周波数特性である。また、504〜506は、それぞれ500と501、500と502、500と503を合成した電圧利得の周波数特性である。包絡線追跡電源211における合成利得は、周波数依存性を持たない505のような特性が好ましい。しかし、例えば図14に示すようなEER型増幅器において、従来の包絡線追跡電源615に代えて、本実施例の包絡線追跡電源部211を用いる場合、主増幅器613の利得の周波数特性が、505のようにフラットでない場合は、主増幅器613の電圧利得の周波数特性を、包絡線追跡電源部211の電圧利得の周波数特性が打ち消すことにより、主増幅器613の出力606が周波数依存性を持たないように、包絡線追跡電源211の合成利得を設定するようにしてもよい。
なお、図1では第2の電圧発生部として、ドハティ型電力増幅器120を使用するが、これに限定せず、代わりに固定電源などの構成をとることも可能である。
【0037】
以下、本実施例及び後述する第2〜第5実施例のいずれにおいても適用可能な構成を記載する。
プリディストーションなどで実施されているように、図14に示す包絡線電源部615および主増幅器613などの周波数特性を予め測定し、それらの周波数特性を入力信号の周波数特性が打ち消して、主増幅器613の出力606における振幅の周波数特性や位相の周波数特性がフラットになるように、周波数特性を設定した入力信号、つまり、アンプ出力において歪みがなくなるようにする入力信号を、図1の入力信号101として入力するようにしてもよい。
加えて、合成アンプ110とドハティ型電力増幅器120の分配、増幅、合成による影響を考慮した波形を、入力信号101として入力してもよい。
【0038】
また、主増幅器613の出力信号606の一部を、方向性結合器などにより取り出してモニタリングし、図21のベースバンド部801においてアナログ部811への制御を行うことにより、出力信号606が線形出力されるよう動的に補正するようにしてもよい。具体的には、温度変化や経年変化などによって生じる各種素子(電力増幅器やアナログ部品など)の特性変動(ゲイン、位相変化など)をとらえて、その変動を補償するような入力信号101を、ベースバンド部801において生成・出力するなどが考えられる。動的制御の場合、事前には測定困難なパラメータ(温度変化など)に関して補正が可能となるため、より精密に調整することが可能となり、歪みの少ない出力信号606を得ることが可能となる。
【0039】
また、位相・振幅調整部128は、予め固定の値を設定しても良いし、前記プリディストーションと同様に、出力信号108の信号の一部を方向性結合器などにより取り出し、ベースバンド部801によりフィードバック制御をかけることで、より正確な調整も可能となる。例えば、ドハティ型電力増幅器120のゲインが減ることにより出力信号108の歪みが増えたと、ベースバンド部801が判断した場合には、その判断をもとに、ベースバンド部801が位相・振幅調整部128を調整し、合成アンプ110とドハティ型電力増幅器120の位相や増幅度のバランスをとることが可能である。上記ではベースバンド部801により制御を行う例を示したが、ロジック(論理演算部)、比較器、テーブルなどから構成された簡易な制御回路を、電力増幅器831に実装するようにしてもよい。
また、ベースバンド信号や入力信号101に応じて、包絡線追跡電源部の構成素子への印加電圧を制御することにより、分割、増幅、合成の流れの中で生じる歪みの制御や、効率を改善することも可能である。より具体的には、入力信号101にあわせて、誤差増幅器111やスイッチング・アンプ114の電源電圧を変化させる。これにより、誤差増幅器111においては、入力信号に対するバックオフが小さくなるため、効率が改善される。また、スイッチング・アンプ114においても、デューティを50%近くに保つことができるため、入出力間のオフセット電流が軽減され、効率が改善される。その結果、電源部全体の効率が改善される。さらに、上記と同様に、出力信号108に基づいてフィードバック制御を行うことにより、温度変化や経年変化に対応することが可能となり、効率や歪みが改善される。特に電力増幅器に関しては、バイアス電圧や電流の制御により、動作点を変化させ、歪み特性、利得、効率などを制御することが可能である。
【0040】
(第2実施例)
次に、本発明による包絡線追跡電源の第2実施例を、図5を用いて説明する。図5は、本発明の第2実施例における包絡線追跡電源212の構成例を示すブロック図である。包絡線追跡電源212は、入力端子100と、出力端子109と、合成アンプ110と、リミッタ169と、位相・振幅調整部128と、C級バイアスされたアンプ150と、アイソレーター161、162を備えている。
入力端子100からの信号線は2つに分岐されて、一方はリミッタ169の入力に接続され、他方は位相・振幅調整部128の入力に接続される。リミッタ169の出力は、合成アンプ110の入力に接続される。合成アンプ110内の回路は、図1の実施例と同様に接続される。合成アンプ110の出力、つまりセンス回路113の一方の入力と、センス抵抗112の他端と、インダクタ115の他端は、アイソレーター161の入力に接続される。位相・振幅調整部128の出力は、C級アンプ150の入力に接続される。C級アンプ150の出力は、アイソレーター162の入力に接続される。アイソレーター161、162の出力は、出力端子109に接続される。
【0041】
なお、入力端子100からの信号線は、2つに分岐されて、リミッタ169と位相・振幅調整部128とに接続されているが、図5に示すように単純な分岐の結線でもよいし、分配器などの構成をとることも可能である。また、出力端子109においても同様で、アイソレーター161と162の出力は、結線でも良いし、合成器などで構成してもよい。また、後述する図8の実施例のように、スイッチを用いて接続してもよい。
入力信号101がリミッタ169で制限されることにより、合成アンプ110には小振幅の信号のみが入力され、合成アンプ110は、低電圧かつ広帯域な回路構成により実現される。
一方、大振幅のピーク信号163は、C級バイアスされた電力増幅器150により増幅され、ピーク信号167となる。ピーク信号167は、合成アンプ110からの出力106と加算され、出力信号108として出力端子109から出力される。このとき、合成アンプ110からの出力がC級アンプ150の出力へ、あるいは、C級アンプ150の出力が合成アンプ110へ流入せずに、出力端子109に出力されるように、アイソレーター161、162を、それぞれ、合成アンプ110の出力、C級アンプ150の出力に配する。アイソレーターとは、1次側(入力側)から2次側(出力側)に信号を伝送するが、2次側(出力側)から一次側(入力側)には信号を伝送しないという方向性を持った素子である。本実施例の包絡線追跡電源212を、WiMAX無線基地局に適用する場合には、包絡線追跡電源212で増幅する帯域幅(DC〜20MHz程度)において、充分なアイソレーションが必要となる。
【0042】
次にリミッタ169の設定条件について説明する。図6に、IEEE802.11aにおける包絡線の振幅分布を示す。図6において、横軸は、最大瞬時電圧(ピーク電圧)を1とした場合の規格化電圧(振幅)であり、縦軸は分布密度である。このようにOFDM包絡線の信号は、高いPAPRを持つものの、平均電圧付近に多く分布する。例えば、規格化電圧0〜0.6の範囲に入る包絡線の信号の割合は、全体96%を占める。本実施例では、例えば、規格化電圧0.6でリミッタ169の制限値を設定し、合成アンプ110への入力を制限する。これにより合成アンプ110は低電圧動作となるため、低電圧かつ広帯域な誤差増幅器111の使用が可能となる。このように、誤差増幅器111とスイッチング・アンプ114を、低電圧なデバイスとすることができるので、高周波特性のよいデバイスを使用することができ、高周波帯域における合成アンプ110の効率が改善される。リミッタ169の制限値は、上記の例では規格化電圧0.6を設定されたが、入力信号の電圧分布や、合成アンプ110、C級アンプ150やその他素子の効率、歪みなどのパラメーターに応じて設定される。
【0043】
本構成の包絡線追跡電源212は、入力信号の瞬時電圧が小さい場合、合成アンプ110のみが動作し、C級アンプ150は動作しない第1の状態となる。入力信号の瞬時電圧が大きい場合は、両アンプ110と150が動作し、加算された出力信号108が出力端子109に出力される第2の状態となる。このとき、リミッタ169の制限値と、C級アンプ150のバイアス条件(C級アンプが増幅を始める入力電圧)を、上記の第1の状から第2の状態への遷移がスムーズにいくように設定する。例えば、上記の例では、規格化電圧0.6より小さい入力信号が合成アンプ110に入力されるような設定であれば、C級アンプ150は、残りの信号、即ち、規格化電圧0.6〜1.0の信号を増幅するように設定される。これにより、C級アンプ150は、出力端子109において出力信号108が歪みなく合成されるようなバイアス設定となる。また、両アンプにおける遷移状態(合成アンプだけ動いている第1の状態と、両方動き始める第2の状態の間の遷移状態)の利得や、第1の状態と第2の状態のそれぞれの利得を考慮した信号を、プリディストーターで生成し、包絡線追跡電源212に入力することも可能である。
本実施例では、非常に簡易な構成により、誤差増幅器111の仕様緩和や包絡線追跡電源212の高効率化などの目的を達成することができる。さらに合成アンプ110とC級アンプ150の出力は、スイッチにより切り替えているわけではないので、出力端109に出力される出力信号108の不連続性が発生しない。
【0044】
(第3実施例)
次に、本発明による包絡線追跡電源の第3実施例を、図7を用いて説明する。図7は、本発明の第2実施例における包絡線追跡電源213の構成例を示すブロック図である。図7において、第3実施例における包絡線追跡電源213は、入力端子100と、出力端子109と、位相・振幅調整部128と、合成アンプ190、200と、分配器191と、合成器192とを備えている。図7の合成アンプ190と200の構成素子は、図1の合成アンプ110の構成素子と同じなので、合成アンプ190の構成素子の番号は、図1に準じて誤差増幅器111A、スイッチング・アンプ114Aなど、合成アンプ200の構成素子の番号は、誤差増幅器111B,スイッチング・アンプ114Bなどと設定している。
【0045】
入力端子100からの信号線は、分配器191に接続される。分配器191の一方の出力は、合成アンプ190の入力に接続される。分配器191の他方の出力は、位相・振幅調整部128の入力に接続される。位相・振幅調整部128の出力は、合成アンプ200の入力に接続される。合成アンプ190と200内の回路は、図1の実施例と同様に接続される。合成アンプ190の出力は、合成器192の一方の入力に接続され、合成アンプ200の出力は、合成器192の他方の入力に接続される。合成器192の出力は、出力端子109に接続される。
【0046】
本実施例においては、入力信号101は、ローパス・フィルタ(図示していない)や、ベースバンド部801でのデジタル信号処理により、DC成分と低周波信号(包絡線の帯域に比べて低周波という意味)が入力されるよう、入力端子100の前段で信号処理されている。
合成アンプ190と200の仕様は異なっており、例えば、合成アンプ190は、高電圧かつ狭帯域な構成とし、合成アンプ200は、低電圧かつ広帯域な構成とする。これにより、各合成アンプの仕様、特に誤差増幅器111Aと111Bの仕様が緩和され、入力信号の全体域にわたって、歪みの小さな信号を高効率に出力することができる。
【0047】
また、分配器191と合成器192は、後述する図8のようにスイッチに置き換え、合成アンプ190と200が得意な動作領域で動作するよう、入力信号101をもとにした制御信号により合成アンプを切り替えることにより、適切な一方の合成アンプにのみ入力信号が入力されるようにしてもよい。例えば、上記のように、合成アンプ190は高電圧かつ狭帯域な構成とし、合成アンプ200は低電圧かつ広帯域な構成とする仕様となっている場合、大振幅(高電圧)かつ狭帯域信号が入力されたときには、入力端子100と合成アンプ190の入力を接続し、かつ、合成アンプ190の出力と出力端子109を接続する。小振幅(低電圧)かつ広帯域信号が入力されたときには、入力端子100と合成アンプ200の入力を接続し、かつ、合成アンプ200の出力と出力端子109を接続する。合成アンプ190の誤差増幅器111Aは、電源電圧が高く設定されているが、大振幅(高電圧)の信号が入力されてくるためバックオフが小さく、高い効率で動作する。その結果、合成アンプ190も高い効率で動作する。同様にして、合成アンプ200への入力信号は小さい振幅のものに限られているので、低い電源電圧に設定された誤差増幅器111Bも高い効率で動作し、合成アンプ200も高い効率で動作する。結果として、包絡線追跡電源213の全体で高効率化が実現される。また、それぞれの合成アンプにおいて、入力信号が適切であるため、歪みの発生も抑えられる。
図7には記載していないが、合成アンプ190の出力と200の出力が、それぞれ他方の出力へ流入することが懸念される場合には、それぞれの出力にアイソレーターなど方向性を持つ素子を実装することにより、お互いの出力への流入が抑止されるようにしてもよい。
【0048】
(第4実施例)
次に、本発明による包絡線追跡電源の第4実施例を、図8を用いて説明する。図8は、本発明の第4実施例における包絡線追跡電源214の構成例を示すブロック図である。
図8において、包絡線追跡電源214は、入力端子100と、出力端子109と、合成アンプ110と、スイッチ140、141と、位相・振幅調整部128と、入力信号101と予め設定した閾値を比較する閾値比較部142と、スイッチ140と141をそれぞれ制御する制御信号144と145と、電圧源170を備えている。
【0049】
入力端子100からの信号線は、スイッチ140の入力に接続される。スイッチ140の一方の出力は、合成アンプ110の入力に接続される。合成アンプ110内の回路は、図1の実施例と同様に接続される。合成アンプ110の出力は、スイッチ141の一方の入力に接続される。スイッチ140の他方の出力は、位相・振幅調整部128の入力に接続される。位相・振幅調整部128の出力は、電圧源170の入力に接続される。電圧源170の出力は、スイッチ141の他方の入力に接続される。スイッチ141の出力は、出力端子109に接続される。閾値比較部142の一方の出力は、スイッチ140の制御入力に接続され、閾値比較部142の他方の出力は、スイッチ141の制御入力に接続される。閾値比較部142の入力は、ベースバンド部801又は入力端子100に接続される。
【0050】
本実施例においては、電圧源170は、図11や図12に示すような構成とすることにより、複数の離散値の固定電圧やアナログ値の電圧を出力することも可能となる。また、閾値比較部142への制御入力信号は、ベースバンド部801からの制御信号を使用してもよいし、アナログ信号101を使用してもよい。
【0051】
以下、図8のブロック図と、図9の入力信号波形と、図10のフローチャートを用いて動作を説明する。図9は、図8に示す閾値比較部の動作を説明するための信号波形である。図10は、図8に示す閾値比較部の動作を説明するためのフローチャートである。
この例では電圧源170として2つの固定電圧を設定する例を示す。図10において、閾値比較部142の動作が開始されると、図8における入力端子100への入力信号101があるかを閾値比較部142が判断し(ステップS010)、入力信号101が無ければ処理を終了する。入力信号101があれば、入力信号101のレベルを閾値比較部142が取得する(ステップS011)。次に、閾値比較部142において、入力信号101と閾値1との比較が行われる(ステップS012)。入力信号101が閾値1以下の場合(ステップS012でN)には、スイッチ140は入力端子100と合成アンプ110の入力を接続し、スイッチ141は合成アンプ110の出力と出力端子109を接続する(ステップS019)。その後、閾値比較部142は次の入力信号を待つ(ステップ010)。入力信号101が閾値1より大きい場合(ステップS012でY)には、スイッチ140は入力端子100と位相・振幅調整部128の入力を接続し、スイッチ141は電圧源170の出力と出力端子109を接続する(ステップS013)。次に、入力信号101と閾値2を比較する(ステップS014)。入力信号101が閾値2より大きい場合(ステップS014でY)には、電圧源170の電圧2を出力信号107として出力し(ステップS015)、閾値比較部142は次の入力信号を待つ(ステップS010)。ステップS014において、入力信号101が閾値2以下の場合(ステップS014でN)には、電圧源170の電圧1を出力信号107として出力し(ステップS016)、ステップ010に戻る。
【0052】
上記のフローチャートの処理例においては、電圧源170として、2つの固定電圧(電圧1、電圧2)が用いられたが、1つの固定電圧(図9(c))、もしくは、3つ以上の固定電圧を使用する場合にも、当業者は、適宜処理フローを変えて適用することができる。また、複数の固定電圧を利用する場合には、入力信号101よりも高速に動作することで、アナログ信号を離散信号に変換した電圧を出力してもよいし(図9(d))、前記変換された離散信号に対して誤差アンプを使用することにより、補正したアナログ出力を出力しても良い(図9(e))。
【0053】
図8の電圧源170および図9(d)、図9(e)に示す出力を得るための回路構成の一例を、図11、図12に示す。図11は、図9(d)の出力波形を実現するための回路である。図11において電圧源170は、固定電圧源701と、固定電圧源701の出力電圧から昇降圧し一定の電圧に変換する複数のDCDCコンバーター702、703、704と、DCDCコンバーター702、703、704からの出力を切り替えて、信号107として出力するスイッチ705、706、707、708と、どのスイッチを切り替えるかの判断を行うスイッチ・コントローラー709を備える。なお、上記の判断はベースバンド部801で行い、その判断結果を制御信号710としてスイッチ・コントローラー709に入力して図11の制御回路を構成してもよいし、スイッチ・コントローラー709への入力710がアナログ入力信号101の場合には、簡易なロジックと比較器などにより、判断・制御回路として構成してもよい。また、適当なタイミングで電圧源170の出力が出力されるように、遅延なども考慮してシステムは設計されるべきである。
図12は、図9(e)の出力波形を実現するための回路である。図12において電圧源170は、さらにアナログの補正回路(誤差アンプ)711を備える。
なお、上記において電圧1は閾値2と同じ値かそれより大きな値、電圧2は出力される最大の電圧で設定される。閾値1と閾値2は、入力信号101の電圧分布と合成アンプ110や電圧源170の効率、歪みなどにより決定されるパラメーターである。
【0054】
以上をまとめると、本実施例においては、閾値1以下の入力信号の場合は、合成アンプ110から包絡線に追従した信号を出力し、閾値1より大きい入力信号の場合は、電圧源170から離散値もしくはアナログ的に緩く追従した形での電圧を出力する。もしくは、高精度に追従するように電圧源170を設定してもよい。電圧源170からの出力電圧をアナログ的に追従させる度合いは、回路規模、消費電力、効率、歪み等との兼ね合いで決定される。なお、電圧源170からの出力電圧107が、離散値により出力される場合には、入力信号103を超える複数の離散値(例えば、電圧1、電圧2)のうち、最小の電圧(例えば、電圧1)を出力する。これにより、出力可能な複数の離散値電圧の中で、その信号を歪みなく増幅する最小の電圧が出力されるため、入力信号増幅において高い効率が得られる。
【0055】
本実施例の構成が好適に適用されるET(Envelope Tracking)電力増幅器について、図14を用いて説明する。図14の包絡線追跡電源615は、図8の包絡線追跡電源214に置き換えられるので、小振幅(低電圧)の入力信号に対しては、Class−BD方式の合成アンプ110は、包絡線に追従した出力電圧605を主増幅器613の電源電圧(ドレイン電圧など)として印加する。入力信号を小振幅(低電圧)に制限することにより、包絡線追跡電源214は高い効率を示し、さらに主増幅器613での増幅に際しても、入力信号に対するバックオフは小さくなるため、ET電力増幅器全体の高効率化が実現される(追従モード)。
一方、大振幅(高電圧)の入力信号に対しては、包絡線追跡電源214からの出力は電圧源170で設定される固定電圧となり、通常の線形増幅を行う(以下、線形モードと呼ぶ)。設定可能な固定電圧値が多ければ、入力信号に対してバックオフ量が小さくなるため、包絡線追跡電源214の効率は良くなるが、回路が複雑になる。また、図6で示したように、大振幅信号の割合は少ないため、線形モードで動作する場合の効率は、ある程度低くても許容されると考えられる。電圧源170で設定される固定電圧の数は、回路規模、効率、歪み等の兼ね合いで決定される。
また、0V付近の非常に低い電圧の信号が入力された場合には、主増幅器613のゲインが低下し、歪みを引き起こす可能性がある。この場合には、0V付近の入力信号、例えば規格化電圧で0〜0.1の入力信号に対しては、包絡線追跡電源214を線形動作させ、規格化電圧で0.1〜0.6の入力信号に対しては、包絡線追跡電源214を追従動作させ、規格化電圧で0.6〜1の入力信号に対しては、包絡線追跡電源214を線形動作させる構成をとることもできる。なお、線形動作と追従動作を分ける前記規格化電圧の数値例は、デバイス特性や入力信号特性、および電力増幅器の仕様(歪みなど)により決定される。
【0056】
本実施例によれば、電圧源170の構成にも依存するが、比較的簡易な回路構成により、効率の高い包絡線追跡電源214が実現される。
なお、本実施例においても、図5の実施例のように、スイッチの代わりに振幅制限用のリミッタ169を用いてもよい。すなわち、入力信号101を分岐した後、合成アンプ110の入力にリミッタ169を用い、合成アンプ110の出力と電圧源170の出力を、合成器により合成するようにしてもよい。
【0057】
(第5実施例)
次に、本発明による包絡線追跡電源の第5実施例を、図13を用いて説明する。図13は、本発明の第5実施例における包絡線追跡電源215の構成例を示すブロック図である。図13において、包絡線追跡電源215は、入力端子100と、出力端子109と、合成アンプ110と、合成器194と、位相・振幅調整部128、129と、ローパス・フィルタ135と、ハイパス・フィルタ136と、パルス発生部171とを備えている。
入力端子100からの信号線は、位相・振幅調整部128の入力に接続される。位相・振幅調整部128の出力は、合成アンプ110の入力に接続される。合成アンプ110の出力は、ローパス・フィルタ135の入力に接続される。位相・振幅調整部129の入力は、制御信号146が接続される。制御信号146は、ベースバンド部801又は入力信号101に基づいて生成された信号である。位相・振幅調整部129の出力は、パルス発生部171の入力に接続される。パルス発生部171の出力は、ハイパス・フィルタ136の入力に接続される。ローパス・フィルタ135の出力と、ハイパス・フィルタ136の出力は、合成器194の入力に接続される。合成器194の出力は、出力端子109に接続される。
【0058】
本実施例においては、入力信号101は、ローパス・フィルタ(図示していない)や、ベースバンド部801でのデジタル信号処理により、DC成分と低周波信号(包絡線の帯域に比べて低周波という意味)が入力されるよう、入力端子100の前段で信号処理されている。パルス発生部171は、高周波信号が入力されるタイミングで、制御信号146によりトリガーされてパルス電圧107を発生し、合成アンプ110からの出力信号106に加算する。このとき、パルス発生部171が、複数の振幅・パルス幅のパルスを出力することが可能な場合には、所望の振幅・パルス幅の出力を得るような制御信号146が、パルス発生部171に入力される。また、パルス発生部171は、C級やE級などの高効率電力増幅器により構成することも可能である。その場合、制御信号146は、高周波帯(包絡線信号の中で高周波側という意味)の包絡線信号であり、制御信号146の入力を、パルス発生部171にて増幅して出力する。パルス発生部171は、公知の一般的な回路で実現される。
【0059】
合成アンプ110への入力信号は、上記ではDC成分と低周波信号のように周波数により制限したが、DC成分と低周波信号かつ小振幅な信号により制限してもよい。もしくは、低スルーレートの信号(dV/dtが小さい信号)を、合成アンプ110への入力信号としても良い。その場合、それら以外の信号はパルス発生部171により出力される。
合成器194に関しては、本実施例においても、図5のように直接結線したり、図8のようにスイッチを用いることもできるが、トランスにより構成されることが好ましい。位相・振幅調整部128、129は、合成アンプ110とパルス発生部171の回路や線路において生じる振幅や位相ずれを調整するのみならず、特に合成器194がトランスにより構成された場合は、トランス194の1次側から2次側への信号伝送に伴う180度の位相ずれを調整する。これらの位相・振幅調整部128、129は、出力信号108などの信号波形と、所望の信号波形との差異を解析し、所望の波形が出力端子109にて得られるよう、位相・振幅の調整をすることも可能である。
【0060】
本実施例は、合成アンプ110への入力周波数を制限することにより、高周波帯で高効率な増幅ができないという問題を回避することが可能となり、包絡線追跡電源215の全体効率も高くなる。また、合成アンプ110を構成する誤差増幅器111は、入力周波数を所定の帯域で制限する仕様であるため、実現性が高い。また、入力信号の分割や出力合成の際にスイッチング素子を使用していないため、合成アンプ110やパルス発生部171において、入力信号や出力の切替に起因した、動作の不連続点が発生しない。したがって、合成アンプ110やパルス発生部171の動作が安定であり、歪み成分の発生が回避される。また、第1実施例と同様、合成アンプ110から発生するスイッチング・ノイズを、ローパス・フィルタ135で抑圧し、歪みの小さな信号を出力することが可能である。
【0061】
なお、本実施を利用した電力増幅器は、パルス発生部171の構成にも依存するが、パルス発生部171が、単純な矩形波のような入力波形を忠実に再現しない簡易なパルス発生部171である場合には、EER動作させた場合の歪みが大きくなる。したがって、本構成はET(Envelope Tracking)に対する実施が好ましい。ただし、パルス発生部171の構成や性能、EER、ET適用の判断は、回路規模、効率、安定性、歪み、入力波形など複雑に絡み合うため、全体の目標性能などに応じて最適に設計されるべきである。
なお、本実施例においても、第4実施例のように、入力信号を周波数でなく振幅により制限することもできる。
【0062】
以上の、本明細書の記載に基づき、少なくとも次の発明を把握することができる。すなわち、第1の発明の電源回路は、
第1の電圧発生部と第2の電圧発生部とを備えた電源回路であって、
前記第1の電圧発生部は、該第1の電圧発生部への入力信号が入力される誤差増幅器と、前記誤差増幅器の出力端子にその一端が接続されるセンス抵抗と、前記センス抵抗間に発生する電圧に基づいて制御信号を生成するセンス回路部と、前記センス回路部からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行って電流を出力するスイッチング・アンプ部と、前記スイッチング・アンプからの出力を平滑するインダクタとを備え、前記インダクタの出力は、前記センス抵抗の他端と接続され、前記誤差増幅器は、その入力端子への入力信号と同じ電圧を該誤差増幅器の出力端子に発生させるべく、該出力端子から電流を流出もしくは該出力端子に電流を流入させるものであり、
前記第1の電圧発生部において所定周波数以下の入力信号を増幅した出力電圧を発生するとともに前記第2の電圧発生部において所定周波数より高い周波数の入力信号に対応する出力電圧を発生するか、又は、前記第1の電圧発生部で所定振幅以下の入力信号を増幅した出力電圧を発生するとともに前記第2の電圧発生部で所定振幅より大きい振幅の入力信号に対応する出力電圧を発生し、
前記第1の電圧発生部からの出力と、前記第2の電圧発生部からの出力とを合成することを特徴とする。
このように電源回路を構成すると、高速伝送を可能にする広帯域無線システムに適用可能な、高効率・広帯域な特性を有する電源回路を提供することができる。
【0063】
第2の発明の電源回路は、前記第1の発明の電源回路において、前記第1の電圧発生部と前記第2の電圧発生部への入力信号を、フィルタ、又はスイッチ、又はその両者を組み合わせたものにより制限することを特徴とする。
このように電源回路を構成すると、前記第1の電圧発生部と前記第2の電圧発生部への入力信号を容易に分けることができる。
【0064】
第3の発明の電源回路は、前記第1の発明の電源回路において、予めデジタル信号処理により、前記第1の電圧発生部と前記第2の電圧発生部へ入力する入力信号を弁別することを特徴とする。
このように電源回路を構成すると、電源回路の回路構成を簡略化でき、前記第1の電圧発生部と前記第2の電圧発生部への入力信号を容易に分けることができる。
【0065】
第4の発明の電源回路は、前記第1の発明ないし第3の発明の電源回路において、前記第1の電圧発生部からの出力と前記第2の電圧発生部からの出力を、トランス、又はフィルタ、又はスイッチ、又はアイソレーターか、あるいはそれらを組み合わせたものにより合成することを特徴とする。
このように電源回路を構成すると、前記第1の電圧発生部からの出力信号と、前記第2の電圧発生部からの出力信号が相互に流入することなく、出力端子109に所望の信号を伝達することが容易となる。
【0066】
第5の発明の電源回路は、前記第2の発明の電源回路において、前記スイッチは、当該電源回路への入力信号に基づいて制御されることを特徴とする。
このように電源回路を構成すると、前記スイッチを切り替えるタイミングを容易に生成することができる。
【0067】
第6の発明の電源回路は、前記第1の発明の電源回路において、前記第1の電圧発生部の入力信号伝送路又は出力信号伝送路、あるいは前記第2の電圧発生部の入力信号伝送路又は出力信号伝送路のいずれかの位置に少なくとも1つの遅延素子又は減衰器を備えたことを特徴とする。
このように電源回路を構成すると、前記第1の電圧発生部と前記第2の電圧発生部の間の遅延量や利得を容易に調整することができる。
【0068】
第7の発明の電源回路は、前記第6の発明の電源回路において、当該電源回路への入力信号、又は当該電源回路からの出力信号に基づき、遅延素子の遅延量や減衰器の減衰量を調整することを特徴とする。
このように電源回路を構成すると、入力信号の振幅や周波数に応じて、前記第1の電圧発生部と前記第2の電圧発生部の間の遅延量や利得を容易に調整することができる。
【0069】
第8の発明の電源回路は、前記第1の発明の電源回路において、当該電源回路への入力信号、又は当該電源回路からの出力信号に基づき、前記第1の電圧発生部、又は前記第2の電圧発生部の構成素子への印加電圧を制御することを特徴とする。
このように電源回路を構成すると、入力信号の振幅や周波数に応じて、前記第1の電圧発生部や前記第2の電圧発生部への印加電圧を、最適に制御することができ、電源回路の効率が向上する。
【0070】
第9の発明の電力増幅器は、
主増幅器と、該主増幅器へ電源電圧を供給する電源回路とを備えた電力増幅器であって、
前記電源回路は、前記電力増幅器へ入力される入力信号の包絡線に基づいて、出力電圧を変動させる電源回路であるとともに、第1の電圧発生部と第2の電圧発生部とを備えており、
前記第1の電圧発生部は、該第1の電圧発生部への入力信号が入力される誤差増幅器と、前記誤差増幅器の出力端子にその一端が接続されるセンス抵抗と、前記センス抵抗間に発生する電圧に基づいて制御信号を生成するセンス回路部と、前記センス回路部からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行って電流を出力するスイッチング・アンプ部と、前記スイッチング・アンプからの出力を平滑するインダクタとを備え、前記インダクタの出力は、前記センス抵抗の他端と接続され、前記誤差増幅器は、その入力端子への入力信号と同じ電圧を該誤差増幅器の出力端子に発生させるべく、該出力端子から電流を流出もしくは該出力端子に電流を流入させるものであり、
前記電源回路は、前記第1の電圧発生部において所定周波数以下の入力信号を増幅した出力電圧を発生するとともに前記第2の電圧発生部において所定周波数より高い周波数の入力信号に対応する出力電圧を発生するか、又は、前記第1の電圧発生部で所定振幅以下の入力信号を増幅した出力電圧を発生するとともに前記第2の電圧発生部で所定振幅より大きい振幅の入力信号に対応する出力電圧を発生し、前記第1の電圧発生部からの出力と、前記第2の電圧発生部からの出力とを合成する電源回路であることを特徴とする。
このように電力増幅器を構成すると、高速伝送を可能にする広帯域無線システムに適用可能な、高効率・広帯域な特性を有する電力増幅器を提供することができる。
【0071】
第10の発明の電力増幅器は、前記第9の発明の電力増幅器において、前記第2の電圧発生部がドハティ型電力増幅器を備え、前記第1の電圧発生部において所定周波数以下の入力信号を増幅し、前記第2の電圧発生部においてドハティ型電力増幅器が所定周波数より高い周波数の入力信号を増幅することを特徴とする。
このように電力増幅器を構成すると、誤差増幅器の仕様を、高電圧かつ広帯域から、高電圧かつ狭帯域へと緩和することが可能になり、歪みを抑えて入力信号を増幅することが可能となる。また、高周波信号は、ドハティ型電力増幅器で高効率に増幅するため、第10の発明の電力増幅器では、すべての帯域にわたって高効率に増幅できる。
【0072】
第11の発明の電力増幅器は、前記第9の発明の電力増幅器において、前記第2の電圧発生部がピーク増幅器を備え、前記第1の電圧発生部において所定振幅以下の入力信号を増幅し、前記第2の電圧発生部においてピーク増幅器が所定振幅より大きい振幅の入力信号を増幅することを特徴とする。
このように電力増幅器を構成すると、非常に簡易な構成により、誤差増幅器の仕様緩和や電力増幅器の高効率化を達成することができる。
【0073】
第12の発明の電力増幅器は、前記第9の発明の電力増幅器において、前記第2の電圧発生部は、該第2の電圧発生部への入力信号が入力される誤差増幅器と、前記誤差増幅器の出力端子にその一端が接続されるセンス抵抗と、前記センス抵抗間に発生する電圧に基づいて制御信号を生成するセンス回路部と、前記センス回路部からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行って電流を出力するスイッチング・アンプ部と、前記スイッチング・アンプからの出力を平滑するインダクタとを備え、前記インダクタの出力は、前記センス抵抗の他端と接続され、前記誤差増幅器は、その入力端子への入力信号と同じ電圧を該誤差増幅器の出力端子に発生させるべく、該出力端子から電流を流出もしくは該出力端子に電流を流入させるものであり、
前記第1の電圧発生部において所定周波数以下の入力信号を増幅し、前記第2の電圧発生部において所定周波数より高い周波数の入力信号を増幅することを特徴とする。
このように電力増幅器を構成すると、第1の電圧発生部と第2の電圧発生部で使用する誤差増幅器の仕様緩和が実現でき、電力増幅器の高効率化を実現することができる。
【0074】
第13の発明の電力増幅器は、前記第9の発明の電力増幅器において、前記第2の電圧発生部は、1つもしくは複数の固定電圧を出力する電源を備え、前記第1の電圧発生部において所定周波数以下の入力信号を増幅するとともに前記第2の電圧発生部において所定周波数より高い周波数の入力信号に対応する固定電圧を発生するか、又は、前記第1の電圧発生部で所定振幅以下の入力信号を増幅するとともに前記第2の電圧発生部で所定振幅より大きい振幅の入力信号に対応する固定電圧を発生することを特徴とする。
このように電力増幅器を構成すると、簡易な回路構成により、効率の高い電力増幅器が実現される。
【0075】
第14の発明の電力増幅器は、前記第13の発明の電力増幅器において、前記第2の電圧発生部は、出力電圧と離散値の固定電圧との差を補う誤差増幅器を備え、複数の固定電圧で出力する場合に、アナログ値の電圧を出力することを特徴とする。
このように電力増幅器を構成すると、入力信号に対してバックオフ量が小さくなるため、効率の高い電力増幅器が実現される。
【0076】
第15の発明の電力増幅器は、前記第9の発明の電力増幅器において、前記第2の電圧発生部は、パルス発生部を備え、前記第1の電圧発生部において所定周波数以下の入力信号を増幅するとともに前記第2の電圧発生部においてパルス発生部により所定周波数より高い周波数の入力信号に対応するパルスを発生するか、又は、前記第1の電圧発生部で所定振幅以下の入力信号を増幅するとともに前記第2の電圧発生部でパルス発生部により所定振幅より大きい振幅の入力信号に対応するパルスを発生することを特徴とする。
このように電力増幅器を構成すると、容易な回路構成により、効率の高い電力増幅器が実現される。
【0077】
第16の発明の無線基地局は、
送受信信号の増幅処理及び周波数変換処理を行うアナログ部と、送受信信号の変復調処理及び前記アナログ部の制御を行うベースバンド部を備えた無線基地局であって、
前記アナログ部は、送信信号の増幅処理を行う電力増幅器を備え、
該電力増幅器は、主増幅器と、該主増幅器に電源電圧を供給する電源回路を備え、
該電源回路は、第1の電圧発生部と第2の電圧発生部とを備え、
前記第1の電圧発生部は、該第1の電圧発生部への入力信号が入力される誤差増幅器と、前記誤差増幅器の出力端子にその一端が接続されるセンス抵抗と、前記センス抵抗間に発生する電圧に基づいて制御信号を生成するセンス回路部と、前記センス回路部からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行って電流を出力するスイッチング・アンプ部と、前記スイッチング・アンプからの出力を平滑するインダクタとを備え、前記インダクタの出力は、前記センス抵抗の他端と接続され、
前記電源回路は、前記第1の電圧発生部において所定周波数以下の入力信号を増幅した出力電圧を発生するとともに前記第2の電圧発生部において所定周波数より高い周波数の入力信号に対応する出力電圧を発生するか、又は、前記第1の電圧発生部で所定振幅以下の入力信号を増幅した出力電圧を発生するとともに前記第2の電圧発生部で所定振幅より大きい振幅の入力信号に対応する出力電圧を発生し、前記第1の電圧発生部からの出力と、前記第2の電圧発生部からの出力とを合成することを特徴とする。
このように無線基地局を構成すると、高速伝送を可能にする広帯域無線システムに適用可能な、高効率・広帯域な特性を有する無線基地局を提供することができる。
【0078】
第17の発明の無線基地局は、前記第16の発明の無線基地局の電源回路において、前記スイッチは、当該電源回路への入力信号、又は前記ベースバンド部からの制御信号に基づいて制御されることを特徴とする。
このように無線基地局を構成すると、前記スイッチを切り替えるタイミングを容易に生成することができる。
【0079】
第18の発明の無線基地局は、前記第16の発明の無線基地局の電源回路において、当該電源回路への入力信号、又は前記ベースバンド部からの制御信号に基づき、遅延素子の遅延量や減衰器の減衰量を調整することを特徴とする。
このように無線基地局を構成すると、入力信号の振幅や周波数に応じて、前記第1の電圧発生部と前記第2の電圧発生部の間の遅延量や利得を容易に調整することができる。
【0080】
第19の発明の無線基地局は、前記第16の発明の無線基地局の電源回路において、当該電源回路への入力信号、又は前記ベースバンド部からの制御信号に基づき、前記第1の電圧発生部、又は前記第2の電圧発生部の印加電圧を制御することを特徴とする。
このように無線基地局を構成すると、入力信号の振幅や周波数に応じて、前記第1の電圧発生部や前記第2の電圧発生部の構成素子への印加電圧を、最適に制御することができ、電源回路の効率が向上する。
【符号の説明】
【0081】
100…入力端子、101…入力信号、106…合成アンプ110からの出力信号、107…ドハティ型電力増幅器120からの出力信号、108…出力信号、109…出力端子、110…合成アンプ、111,111A,111B…誤差増幅器、112,112A,112B…センス抵抗、113,113A,113B…センス回路部、114,114A,114B…スイッチング・アンプ、115,115A,115B…インダクタ、120…ドハティ型電力増幅器、121…分配器、122…合成器、123…キャリア・アンプ、124…ピーク・アンプ、125、126…90度位相器、128、129…位相・振幅調整部、131,133,135…ローパス・フィルタ、132,134,136…ハイパス・フィルタ、140、141…スイッチ、142…閾値比較部、144,145,146…制御信号、150…C級アンプ、161,162…アイソレーター、163,167…ピーク信号、169…リミッタ、170…電圧源、171…パルス発生部、180…貫通防止ロジック部、181…High Side MOS、182…Low Side MOS、190…合成アンプ、191…分配器、192,194…合成器、200…合成アンプ、211〜215…包絡線追跡電源、500…合成アンプ110の電圧利得周波数特性、501〜503…ドハティ型アンプ120の電圧利得周波数依存性、504〜506…合成アンプ110とドハティ型アンプ120の合成電圧利得周波数依存性、600…入力信号、602,603…位相信号、604,605…振幅(包絡線)信号、606…RF信号、611…リミッタ、612…遅延部、613…主増幅器(飽和アンプ)、614…振幅検出器、615…包絡線追跡電源、617…電源負荷インピーダンス、801…ベースバンド部、802…ネットワーク・インターフェース部、803…プロセッサー、804…メモリー、805、806…信号処理部、810,811…アナログ部、820…RF部、825…制御信号、830…フロントエンド部、831…電力増幅器、832…ローノイズアンプ、833…送受信切替スイッチ、841,842…アンテナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電圧発生部と第2の電圧発生部とを備えた電源回路であって、
前記第1の電圧発生部は、該第1の電圧発生部への入力信号が入力される誤差増幅器と、前記誤差増幅器の出力端子にその一端が接続されるセンス抵抗と、前記センス抵抗間に発生する電圧に基づいて制御信号を生成するセンス回路部と、前記センス回路部からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行って電流を出力するスイッチング・アンプ部と、前記スイッチング・アンプからの出力を平滑するインダクタとを備え、前記インダクタの出力は、前記センス抵抗の他端と接続され、
前記第1の電圧発生部において所定周波数以下の入力信号を増幅した出力電圧を発生するとともに前記第2の電圧発生部において所定周波数より高い周波数の入力信号に対応する出力電圧を発生するか、又は、前記第1の電圧発生部で所定振幅以下の入力信号を増幅した出力電圧を発生するとともに前記第2の電圧発生部で所定振幅より大きい振幅の入力信号に対応する出力電圧を発生し、
前記第1の電圧発生部からの出力と、前記第2の電圧発生部からの出力とを合成する
ことを特徴とする電源回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電源回路において、
前記第1の電圧発生部と前記第2の電圧発生部への入力信号を、フィルタ、又はスイッチ、又はその両者を組み合わせたものにより制限する
ことを特徴とする電源回路。
【請求項3】
請求項1に記載の電源回路において、
予めデジタル信号処理により、前記第1の電圧発生部と前記第2の電圧発生部へ入力する入力信号を弁別する
ことを特徴とする電源回路。
【請求項4】
請求項1に記載の電源回路において、
前記第1の電圧発生部からの出力と前記第2の電圧発生部からの出力を、トランス、又はフィルタ、又はスイッチ、又はアイソレーターか、あるいはそれらを組合せたものにより合成する
ことを特徴とする電源回路。
【請求項5】
請求項2に記載の電源回路において、
前記スイッチは、当該電源回路への入力信号に基づいて制御される
ことを特徴とする電源回路。
【請求項6】
請求項1に記載の電源回路において、
前記第1の電圧発生部の入力信号伝送路又は出力信号伝送路、あるいは前記第2の電圧発生部の入力信号伝送路又は出力信号伝送路のいずれかの位置に少なくとも1つの遅延素子又は減衰器を備える
ことを特徴とする電源回路。
【請求項7】
請求項6に記載の電源回路において、
当該電源回路への入力信号、又は当該電源回路からの出力信号に基づき、遅延素子の遅延量や減衰器の減衰量を調整する
ことを特徴とする電源回路。
【請求項8】
請求項1に記載の電源回路において、
当該電源回路への入力信号、又は当該電源回路からの出力信号に基づき、前記第1の電圧発生部、又は前記第2の電圧発生部の構成素子への印加電圧を制御する
ことを特徴とする電源回路。
【請求項9】
主増幅器と、該主増幅器へ電源電圧を供給する電源回路とを備えた電力増幅器であって、
前記電源回路は、前記電力増幅器へ入力される入力信号の包絡線に基づいて、出力電圧を変動させる電源回路であるとともに、第1の電圧発生部と第2の電圧発生部とを備えており、
前記第1の電圧発生部は、該第1の電圧発生部への入力信号が入力される誤差増幅器と、前記誤差増幅器の出力端子にその一端が接続されるセンス抵抗と、前記センス抵抗間に発生する電圧に基づいて制御信号を生成するセンス回路部と、前記センス回路部からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行って電流を出力するスイッチング・アンプ部と、前記スイッチング・アンプからの出力を平滑するインダクタとを備え、前記インダクタの出力は、前記センス抵抗の他端と接続され、
前記電源回路は、前記第1の電圧発生部において所定周波数以下の入力信号を増幅した出力電圧を発生するとともに前記第2の電圧発生部において所定周波数より高い周波数の入力信号に対応する出力電圧を発生するか、又は、前記第1の電圧発生部で所定振幅以下の入力信号を増幅した出力電圧を発生するとともに前記第2の電圧発生部で所定振幅より大きい振幅の入力信号に対応する出力電圧を発生し、前記第1の電圧発生部からの出力と、前記第2の電圧発生部からの出力とを合成する電源回路である
ことを特徴とする電力増幅器。
【請求項10】
請求項9に記載の電力増幅器において、
前記第2の電圧発生部がドハティ型電力増幅器を備え、前記第1の電圧発生部において所定周波数以下の入力信号を増幅し、前記第2の電圧発生部においてドハティ型電力増幅器が所定周波数より高い周波数の入力信号を増幅する
ことを特徴とする電力増幅器。
【請求項11】
請求項9に記載の電力増幅器において、
前記第2の電圧発生部がピーク増幅器を備え、前記第1の電圧発生部において所定振幅以下の入力信号を増幅し、前記第2の電圧発生部においてピーク増幅器が所定振幅より大きい振幅の入力信号を増幅する
ことを特徴とする電力増幅器。
【請求項12】
請求項9に記載の電力増幅器において、
前記第2の電圧発生部は、該第2の電圧発生部への入力信号が入力される誤差増幅器と、前記誤差増幅器の出力端子にその一端が接続されるセンス抵抗と、前記センス抵抗間に発生する電圧に基づいて制御信号を生成するセンス回路部と、前記センス回路部からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行って電流を出力するスイッチング・アンプ部と、前記スイッチング・アンプからの出力を平滑するインダクタとを備え、前記インダクタの出力は、前記センス抵抗の他端と接続され、
前記第1の電圧発生部において所定周波数以下の入力信号を増幅し、前記第2の電圧発生部において所定周波数より高い周波数の入力信号を増幅する
ことを特徴とする電力増幅器。
【請求項13】
請求項9に記載の電力増幅器において、
前記第2の電圧発生部は、1つもしくは複数の固定電圧を出力する電源を備え、前記第1の電圧発生部において所定周波数以下の入力信号を増幅するとともに前記第2の電圧発生部において所定周波数より高い周波数の入力信号に対応する固定電圧を発生するか、又は、前記第1の電圧発生部で所定振幅以下の入力信号を増幅するとともに前記第2の電圧発生部で所定振幅より大きい振幅の入力信号に対応する固定電圧を発生する
ことを特徴とする電力増幅器。
【請求項14】
請求項13に記載の電力増幅器において、
前記第2の電圧発生部は、出力電圧と離散値の固定電圧との差を補う誤差増幅器を備え、複数の固定電圧で出力する場合に、アナログ値の電圧を出力する
ことを特徴とする電力増幅器。
【請求項15】
請求項9に記載の電力増幅器において、
前記第2の電圧発生部は、パルス発生部を備え、前記第1の電圧発生部において所定周波数以下の入力信号を増幅するとともに前記第2の電圧発生部においてパルス発生部により所定周波数より高い周波数の入力信号に対応するパルスを発生するか、又は、前記第1の電圧発生部で所定振幅以下の入力信号を増幅するとともに前記第2の電圧発生部でパルス発生部により所定振幅より大きい振幅の入力信号に対応するパルスを発生する
ことを特徴とする電力増幅器。
【請求項16】
送受信信号の増幅処理及び周波数変換処理を行うアナログ部と、送受信信号の変復調処理及び前記アナログ部の制御を行うベースバンド部を備えた無線基地局であって、
前記アナログ部は、送信信号の増幅処理を行う電力増幅器を備え、
該電力増幅器は、主増幅器と、該主増幅器に電源電圧を供給する電源回路を備え、
該電源回路は、第1の電圧発生部と第2の電圧発生部とを備え、
前記第1の電圧発生部は、該第1の電圧発生部への入力信号が入力される誤差増幅器と、前記誤差増幅器の出力端子にその一端が接続されるセンス抵抗と、前記センス抵抗間に発生する電圧に基づいて制御信号を生成するセンス回路部と、前記センス回路部からの制御信号に基づいてスイッチング動作を行って電流を出力するスイッチング・アンプ部と、前記スイッチング・アンプからの出力を平滑するインダクタとを備え、前記インダクタの出力は、前記センス抵抗の他端と接続され、
前記電源回路は、前記第1の電圧発生部において所定周波数以下の入力信号を増幅した出力電圧を発生するとともに前記第2の電圧発生部において所定周波数より高い周波数の入力信号に対応する出力電圧を発生するか、又は、前記第1の電圧発生部で所定振幅以下の入力信号を増幅した出力電圧を発生するとともに前記第2の電圧発生部で所定振幅より大きい振幅の入力信号に対応する出力電圧を発生し、前記第1の電圧発生部からの出力と、前記第2の電圧発生部からの出力とを合成する
ことを特徴とする無線基地局。
【請求項17】
請求項16に記載の無線基地局において、
前記スイッチは、当該電源回路への入力信号、又は前記ベースバンド部からの制御信号に基づいて制御される
ことを特徴とする無線基地局。
【請求項18】
請求項16に記載の無線基地局において、
当該電源回路への入力信号、又は前記ベースバンド部からの制御信号に基づき、遅延素子の遅延量や減衰器の減衰量を調整する
ことを特徴とする無線基地局。
【請求項19】
請求項16に記載の無線基地局において、
当該電源回路への入力信号、又は前記ベースバンド部からの制御信号に基づき、前記第1の電圧発生部、又は前記第2の電圧発生部の印加電圧を制御する
ことを特徴とする無線基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−9923(P2011−9923A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149752(P2009−149752)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】