説明

化合物半導体発光素子及びその製造方法

【課題】化合物半導体発光素子及び化合物半導体発行素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】、Si−Al合金基板101と、このSi−Al合金基板101の上面及び下面に設けられた保護層120と、このSi−Al合金基板101の上面に設けられた保護層120上に順に積層されているp型半導体層104、活性層105及びn型半導体層106とを含む化合物半導体発光素子100を提供する。また、化合物半導体発行素子100の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体発光素子及びその製造方法に関するものであり、より詳細には、Si−Al合金基板の表面に保護層を設けた化合物半導体発光素子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
青色または緑色発光ダイオード(LED)素子に使われる化合物半導体物質は、AlGaIn(1−x−y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)で表されるGaN系半導体であり、青色、紫外線領域の発光に適した化合物半導体物質である。一般的に使われるGaN系LEDは、サファイア基板上に順に成長させたn型GaN系半導体層、活性層及びp型GaN系半導体層と、2つの電極(n側電極及びp側電極)とを備えて構成される。成長用基板として使われるサファイア基板は絶縁性物質であるため、この2つの電極は水平に配置される。
【0003】
このような水平構造GaN系LEDにおいては、2つの電極の全てが素子の上部に配置されているため、LED素子の面積が広くならなければならない。また、電流拡散のための透明電極とn側電極とが近くに位置しているため、静電気による欠陥に対して脆弱である。
【0004】
上記のような短所を有する水平構造GaN系LEDの代わりに、最近では、GaN系半導体成長用基板として、導電性SiC基板を用いた垂直構造GaN系LEDが使われ始めている。しかしながら、この場合においては高価なSiC基板を用いなければならないという不都合がある。
【0005】
他の形態の垂直構造GaN系LEDは、導電性基板の接合工程とサファイア基板の分離工程とによって製造される。例えば、特許文献1には、導電性接着層によりGaN系半導体層に接合されたSi基板などの導電性基板を含む垂直構造GaN系LEDが示されている。
【0006】
しかしながら、前述のように、Si基板などの導電性基板の接合工程とサファイア基板の分離工程とを経る既存の垂直構造GaN系LEDの場合、レーザ照射によるサファイア基板の分離の際、GaN系半導体層にクラックなどの欠陥が生じるようになる。これは、導電性基板の材料であるSiの熱膨張係数(約2.6ppm/K)がサファイア基板の熱膨張係数(6〜7ppm/K)より遥かに小さいのに起因している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国特開第10-2004-0058479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
詳述すると、約200〜400℃の温度でSi材質の導電性基板をGaN系半導体層に接合した後、常温で冷却させれば、該導電性基板は少しだけ収縮するのに対して、サファイア基板はたくさん収縮することになる。したがって、該サファイア基板には大きい引張応力(tensile stress)が加えられ、このことによって、導電性基板とサファイア基板は歪んだ状態となる。このように引張応力により歪んだ状態で、レーザ照射によってサファイア基板を分離すると、該サファイア基板とGaN系半導体層との間の界面に機械的衝撃が加えられ、該GaN系半導体層上に多くのクラックが生じてしまうことになる。
【0009】
そのため、最近では、導電性基板としてSi基板の代わりに、サファイア基板と熱膨張係数が類似するSi−Al合金基板を用いることによって、クラック発生の少ない高品質な垂直構造半導体発光素子を得ることができるようになった。
【0010】
しかしながら、このSi−Al合金基板を用いる場合、発光素子の製造工程で使われる化学物質中の酸、アルカリなどの化学的侵食により、Si−Al合金基板のAl金属がエッチングされ易く、Si−Al合金基板の表面にたくさんの凹凸が生じ、これによってSi−Al合金基板上に接合されるGaN系半導体層が剥離してしまうという不都合があった。
【0011】
従って、本発明は上記の問題点に鑑みて成されたものであって、本発明は、Si−Al合金基板の表面に酸、アルカリなどの化学的侵食を防ぐような保護層を更に設け、Si−Al合金基板のAl金属が化学物質によりエッチングされることを防止することができる、化合物半導体発光素子及びその製造方法を提供することをその目的の一つとする。
【0012】
また、本発明は、該Si−Al合金基板表面の粗さを改善することのできる化合物半導体発光素子及びその製造方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一実施の形態による化合物半導体発光素子は、Si−Al合金基板と、前記Si−Al合金基板の上面及び下面に設けられた保護層と、前記Si−Al合金基板の上面に設けられた前記保護層上に順に積層されているp型半導体層、活性層及びn型半導体層とを含むことができる。
【0014】
ここで、前記保護層は、金属または伝導性誘電体で構成することができる。また、前記金属は、Ni、Au、Cu、W、Cr、Mo、Pt、Ru、Rh、Ti及びTaのうちのいずれか一つ、またはこれら金属群のうち少なくとも二つの合金から構成することができる。
【0015】
また、前記伝導性誘電体は、ITO、IZO及びCIOによって構成された群より選ばれるいずれか一つからなることができる。また、前記保護層は、0.01μm以上20μm以下の厚さを有して設けられてもよい。
【0016】
また、前記Si−Al合金基板の上面に設けられた前記保護層と前記p型半導体層との間に設けられた接合金属層を、さらに含むことができる。また、前記接合金属層と前記p型半導体層との間に設けられた反射金属層を、さらに含むことができる。
【0017】
また、上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の他の実施の形態による化合物半導体発光素子の製造方法は、成長用基板上にn型半導体層、活性層及びp型半導体層を順に設けるステップと、保護層が表面に設けられたSi−Al合金基板を備えるステップと、前記p型半導体層上に、前記保護層が表面に設けられた前記Si−Al合金基板を接合するステップと、前記成長用基板を前記n型半導体層から分離するステップと、前記n型半導体層上にn側電極を複数設けるステップと、前記n側電極間の前記n型半導体層、前記活性層、前記p型半導体層、前記保護層及び前記Si−Al合金基板をダイシングし、チップ単位に分離するステップと、を含むことができる。
【0018】
また、前記保護層が表面に設けられたSi−Al合金基板を備えるステップにおいて、該保護層は、金属または伝導性誘電体を用いて設けることができる。
【0019】
また、前記保護層が金属によって設けられる場合、該金属は無電解メッキ、金属蒸着、スパッタリング及びCVDのうちのいずれか一つの方式で設けることができる。また、前記保護層が伝導性誘電体によって設けられる場合、その伝導性誘電体は、蒸着またはスパッタリング方式で設けることができる。
【0020】
また、前記保護層は、前記Si−Al合金基板の表面に0.01μm以上20μm以下の厚さで設けることができる。また、前記保護層が表面に設けられたSi−Al合金基板を備えるステップの後に、前記保護層の表面をCMP処理するステップを、さらに含むことができる。
【0021】
また、前記保護層が表面に設けられた前記Si−Al合金基板を接合するステップは、前記保護層が表面に設けられた前記Si−Al合金基板を前記p型半導体層上に直接接合することによって実施されることができる。
【0022】
また、前記保護層が表面に設けられた前記Si−Al合金基板を接合するステップは、接合金属層を用いて前記p型半導体層上に、前記保護層が表面に設けられた前記Si−Al合金基板を接合することによって実施されることができる。また、前記p型半導体層を設けるステップの後に、前記p型半導体層上に反射金属層を設けるステップを、さらに含むことができる。
【0023】
また、上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明のさらに他の実施の形態による化合物半導体発光素子は、Si−Al合金基板と、前記Si−Al合金基板の上面に該Si−Al合金基板の一部を露出するように設けられた保護層と、前記保護層を含む前記Si−Al合金基板の上面に設けられた導電層と、前記導電層上に順に積層されているp型半導体層、活性層及びn型半導体層と、前記Si−Al合金基板の下面に設けられたコンタクト金属層とを含むことができる。ここで、前記保護層は、絶縁材によって設けることができる。
【0024】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明のさらに他の実施の形態による化合物半導体発光素子の製造方法は、成長用基板上にn型半導体層、活性層及びp型半導体層を順に設けるステップと、上面一部を除いた残りの部分上に保護層が設けられたSi−Al合金基板を備えるステップと、前記保護層を含む前記Si−Al合金基板の上面に導電層を設けるステップと、前記p型半導体層上に、前記Si−Al合金基板の上面に設けられた前記導電層を接合するステップと、前記成長用基板を前記n型半導体層から分離するステップと、前記n型半導体層上にn側電極を複数設けるステップと、前記保護層を含む前記Si−Al合金基板の下面をラッピングするステップと、前記Si−Al合金基板の下面にコンタクト金属層を設けるステップと、前記n側電極間の前記n型半導体層、前記活性層、前記p型半導体層、前記導電層、前記保護層、前記Si−Al合金基板及び前記コンタクト金属層をダイシングし、チップ単位に分離するステップとを含むことができる。
【0025】
ここで、前記上面の一部を除いた残りの部分上に保護層が設けられたSi−Al合金基板を備えるステップは、該Si−Al合金基板の全体表面に保護層を設けるステップと、前記保護層の一部を除去し、前記Si−Al合金基板の上面一部を露出するステップとを含むことができる。
【0026】
また、前記Si−Al合金基板の全体表面に保護層を設けるステップにおいて、該保護層は、絶縁材によって設けることができる。
【発明の効果】
【0027】
前述のように、本発明による化合物半導体発光素子及びその製造方法によれば、Si−Al合金基板の表面に酸、アルカリなどの化学的侵食を防ぐような保護層を更に設け、該Si−Al合金基板のAl金属がケミカル的にエッチングされることを防止することができる。従って、該Si−Al合金基板の表面に凹凸が生じてしまうことを防止し、該Si−Al合金基板上に接合される発光構造物が剥離してしまうという不良の発生を防止することができるという効果を奏する。
【0028】
また、本発明によれば、Si−Al合金基板の表面に設けられる保護層として金属を用いる場合、該金属材質の保護層により表面の粗さを改善することができ、該Si−Al合金基板と発光構造物との間の接合を堅固にし、接合の歩留まりを向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態による化合物半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態による化合物半導体発光素子の製造方法を順に示した工程断面図である。
【図3】図3は、図2と同じく、化合物半導体発光素子の製造方法を順に示した工程断面図である。
【図4】図4は、図2と同じく、化合物半導体発光素子の製造方法を順に示した工程断面図である。
【図5】図5は、図2と同じく、化合物半導体発光素子の製造方法を順に示した工程断面図である。
【図6】図6は、図2と同じく、化合物半導体発光素子の製造方法を順に示した工程断面図である。
【図7】図7は、図2と同じく、化合物半導体発光素子の製造方法を順に示した工程断面図である。
【図8】図8は、図2と同じく、化合物半導体発光素子の製造方法を順に示した工程断面図である。
【図9】図9は、図2と同じく、化合物半導体発光素子の製造方法を順に示した工程断面図である。
【図10】図10は、本発明の第2の実施の形態による化合物半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図11】図11は、本発明の第2の実施の形態による化合物半導体発光素子の製造方法を順に示した工程断面図である。
【図12】図12は、図11と同じく、化合物半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図13】図13は、図11と同じく、化合物半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図14】図14は、図11と同じく、化合物半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図15】図15は、図11と同じく、化合物半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図16】図16は、図11と同じく、化合物半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図17】図17は、図11と同じく、化合物半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図18】図18は、図11と同じく、化合物半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【図19】図19は、図11と同じく、化合物半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態による化合物半導体発光素子及びその製造方法について説明する。また、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付すこととし、繰り返しとなる説明は省略することがある。
【0031】
<第1の実施の形態>
まず、第1の実施の形態による化合物半導体発光素子の構造について図1を参照して説明する。
【0032】
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態による化合物半導体発光素子に対して詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態による化合物半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【0033】
図1に示したように、本発明の第1の実施の形態による化合物半導体発光素子100は、SiとAlとの合金から成る基板(以下、「Si−Al合金基板」という)101と、Si−Al合金基板101の上面及び下面に設けられた保護層120とを含む。
【0034】
Si−Al合金基板101の上面に設けられた保護層120上には、接合金属層102、反射金属層103、p型半導体層104、活性層105及びn型半導体層106が順に積層されている。
【0035】
p型半導体層104及びn型半導体層106と活性層105とは、GaN系半導体、即ちAlGaIn(1−x−y)N(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)半導体材料などで構成することができ、発光構造物をなす。n型半導体層106上には、n側電極107が設けられている。
【0036】
接合金属層102とp型半導体層104との間に介在する反射金属層103は、半導体層から入射した光を上方向に反射させることによって、化合物半導体発光素子100の輝度をより増加させる。
【0037】
反射金属層103は、Au、Ag、Al、Rhのような高反射率の金属、及びこれらのうち二つ以上の合金によって構成された群より選ばれる金属などで構成することができる。しかしながら、反射金属層103は、必要に応じて設けられない場合もある。
【0038】
接合金属層102は、Si−Al合金基板101を発光構造物に接合させる役割をする。接合金属層102としては、Auなどを用いることができる。
【0039】
ここで、本発明の第1の実施の形態では、化合物半導体発光素子100が接合金属層102を含んでいるが、接合金属層102ではなく、Si−Al合金基板101がp型半導体層104上に直接接合されていてもよい。
【0040】
そして、本発明の第1の実施の形態による化合物半導体発光素子100は、前述したようにSi−Al合金基板101を導電性基板として用いる。このようなSi−Al合金は、熱膨張係数、熱伝導性、機械的加工性及び値段の面から有利になるという長所がある。
【0041】
即ち、Si−Al合金基板101の熱膨張係数は、サファイア基板(図2中の符号150参照)の熱膨張係数(約6〜7ppm/K)と類似する。そのため、Si−Al合金基板101を用いて化合物半導体発光素子100を製造する場合、既存のSiから成る導電性基板の接合工程とレーザ照射によるサファイア基板の分離工程との際に発生した、基板の反り現象と発光構造物でのクラック発生現象とを大幅減少させ、欠陥の少ない高品質な化合物半導体発光素子100を得ることができるという長所がある。
【0042】
また、Si−Al合金基板101の熱伝導度は、約120〜180W/m・Kで熱放出特性に優れると共に、高圧でSiとAlとを溶融させることによってSi−Al合金基板101を容易に製造することができ、Si−Al合金基板101を低費用で容易に得ることができる。
【0043】
特に、本発明の第1の実施の形態による化合物半導体発光素子100において、Si−Al合金基板101の上下面には、Si−Al合金基板101への化学的侵食(chemical attack)を止める保護層120が更に設けられている。
【0044】
ここで、保護層120は、金属または伝導性誘電体などから成ることができる。この時、保護層120が金属からなる場合、該金属はNi、Au、Cu、W、Cr、Mo、Pt、Ru、Rh、Ti及びTaのうちのいずれか一つ、または該金属群のうち少なくとも二つの合金から成ることができる。
【0045】
また、保護層120が伝導性誘電体からなる場合、該伝導性誘電体はITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、またはCIO(Copper Indium Oxide)などから成ることができる。
【0046】
保護層120が金属から成る場合、保護層120は無電解メッキ方式により設けられてもよい。ここで、Si−Al合金基板101と金属材質の保護層120との間には保護層120のメッキ工程でシード(seed)の役割をするシード金属層110がさらに設けられる。シード金属層110はTi/Auなどで形成することができる。
【0047】
ここで、金属材質の保護層120は、前述のような無電解メッキ方式の他に、金属蒸着、スパッタリング、またはCVD(Chemical Vapor Deposition)方式などにより設けられたものであってもよい。
【0048】
また、保護層120が伝導性誘電体からなる場合、該伝導性誘電体材質の保護層120は、蒸着またはスパッタリング方式などにより設けられたものでもよい。このような保護層120は、0.01μm以上20μm以下の厚さで設けられることが望ましく、1μm以上10μm以下の厚さで設けられることがより望ましい。
【0049】
次に、本発明の第1の実施の形態による化合物半導体発光素子の製造方法について、図2〜図9を参照して詳細に説明する。図2〜図9は、本発明の第1の実施の形態による化合物半導体発光素子の製造方法を順に示した工程断面図である。
【0050】
まず、図2に示すように、成長用基板としてサファイア基板150を備え、その後、図3に示すように、サファイア基板150上にn型半導体層106、活性層105及びp型半導体層104を順に設ける。
【0051】
次に、図4に示すように、p型半導体層104上にAu、Al、Ag又はRhなどの高反射率の金属材料を用いて、反射金属層103を設ける。ここで、反射金属層103は必要に応じて設けられないこともある。
【0052】
続いて、図5に示すように、Si−Al合金基板101の表面に保護層120を設ける。保護層120は、金属または伝導性誘電体を用いて設けることができる。
【0053】
ここで、保護層120が金属によって設けられる場合、保護層120はNi、Au、Cu、W、Cr、Mo、Pt、Ru、Rh、Ti及びTaのうちのいずれか一つ、またはこれら金属群のうち少なくとも二つの合金から成るものとすることができ、無電解メッキ、金属蒸着、スパッタリング、またはCVDなどの方式で設けることができる。
【0054】
ここで、金属材質の保護層120が無電解メッキ方式で設けられる場合、Si−Al合金基板101の表面に保護層120を設ける前に、保護層120のメッキ工程で、シード層の役割をするシード金属層110を更に設けることができる。
【0055】
また、保護層120が伝導性誘電体によって設けられる場合には、保護層120はITO、IZO、又はCIOなどから成ることができ、蒸着またはスパッタリング方式などで設けることができる。
【0056】
保護層120は、Si−Al合金基板101の表面全体に亘って0.01μm以上20μm以下の厚さで設けることが望ましく、1μm以上10μm以下の厚さで設けることがより望ましい。
【0057】
保護層120が0.01μmより薄く設けられる場合、保護層120が後述するHCl、HF、KOHなどによる化学的侵食を防ぐ役割を適切に行うことは難しく、20μmより厚く設けられる場合、Si−Al合金基板101の熱膨張係数が変化することがあり、保護層120は上記範囲の厚さで設けることが望ましい。
【0058】
ここで、図に示されていないが、保護層120を設けた後、保護層120の表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理して表面粗さを改善することもできる。
【0059】
前述したように、保護層120が表面に設けられたSi−Al合金基板101を備えた後、図6に示すように、接合金属層102を用いて反射金属層103上に、保護層120が表面に設けられたSi−Al合金基板101を接合する。
【0060】
ここで前述したように、接合金属層102を用いてSi−Al合金基板101を接合することもできるが、接合金属層102を用いることなく、保護層120が表面に設けられたSi−Al合金基板101を反射金属層103上に直接接合してもよい。
【0061】
続いて、図7に示すように、レーザリフトオフ(Laser Lift Off:LLO)工程でサファイア基板150をn型半導体層106から分離する。サファイア基板150の分離後は、HCl、HF及びKOHなどの化合物を用いたクリーニング工程が行われる。
【0062】
その後、図8に示すように、サファイア基板150の分離により露出したn型半導体層106上に、複数のn側電極107を設ける。
【0063】
ここで、n側電極107を設ける前に、素子の光取出し効率を向上させるために、n型半導体層106の表面にKOHなどを用いたテクスチャリング工程を行うことができる。
【0064】
続いて、図9に示すように、n側電極107間のn型半導体層106、活性層105、p型半導体層104、反射金属層103、接合金属層102、保護層120、シード金属層110及びSi−Al合金基板101をダイシングし、チップ単位に分離する。これにより、本発明の第1の実施の形態による化合物半導体発光素子100が得られる。
【0065】
このように、本発明の第1の実施の形態では、Si−Al合金基板101の表面にNiのような保護層120を更に設けることによって、サファイア基板150の分離後に行われるクリーニング工程で使われるHCl、HF、KOHなどのケミカル、またはn型半導体層106の表面テクスチャリング工程で使われるKOHなどにより、Si−Al合金基板101のAl金属がエッチングされることを防止することができるという効果を奏する。従って、本発明の第1の実施の形態によれば、Si−Al合金基板101の表面に凹凸が生じることを防いで、Si−Al合金基板101上に接合される発光構造物が剥離するような不良の発生を防止することができるという効果を奏する。
【0066】
また、保護層120としてNiなどのような金属を用いる場合、Si−Al合金基板101の表面粗さを改善し、Si−Al合金基板101と発光構造物との間を堅固に接合することができるという利点がある。
【0067】
つまり、従来的には、Si−Al合金基板101が接合金属層102の形成前に自然酸化膜除去のために酸などの化学物質を用いたクリーニング工程を経て、Si−Al合金基板101の表面のAl金属がエッチングされながら平均200〜500nmの表面凹凸が設けられたが、本発明の第1の実施の形態でのように、Si−Al合金基板101の表面に保護層120としてNiなどの金属層を設けた後、Ni CMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を行うと、表面凹凸が5nm以下に減少して、鏡面のように表面粗さが改善される。
【0068】
このように、Si−Al合金基板101の表面粗さが改善されることによって、Si−Al合金基板と発光構造物との間を堅固に接合し、接合歩留まりを向上させることができるという効果を奏する。
【0069】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態による化合物半導体発光素子の構造について説明する。図10を参照して、本発明の第2の実施の形態による化合物半導体発光素子に対して詳細に説明する。ただし、第2の実施の形態の構成において、第1の実施の形態と同一の構成を有する部分についての説明は省略し、異なる構成に対してのみ詳述することにする。
【0070】
図10は、本発明の第2の実施の形態による化合物半導体発光素子の構造を示す断面図である。
【0071】
同図のように、本発明の第2の実施の形態による化合物半導体発光素子100は、保護層120はSi−Al合金基板101の上面及び下面全体に設けられずに、Si−Al合金基板101の上面に保護層120がSi−Al合金基板101の一部を露出するように設けられており、これら保護層120及び保護層120により露出されたSi−Al合金基板101の上面には、導電層122がさらに設けられており、Si−Al合金基板101の下面には、コンタクト金属層123が設けられている。これらの点を除き、第2の実施の形態は、第1の実施の形態と同様の構成を有する。
【0072】
特に、本発明の第2の実施の形態による化合物半導体発光素子において、保護層120は、金属や伝導性誘電体でなく絶縁材からなることが望ましい。
【0073】
即ち、本発明の第2の実施の形態による化合物半導体発光素子は、保護層120が金属や伝導性誘電体でなく絶縁材からなる代わりに、保護層120が設けられたSi−Al合金基板101と保護層120上部の発光構造物との間の通電のために、保護層120がSi−Al合金基板101の上面一部を露出するように設けられ、保護層120を含むSi−Al合金基板101の上面に導電層122が更に設けられるものである。ここで、導電層122は、金属などから構成することができる。
【0074】
以下、本発明の第2の実施の形態による化合物半導体発光素子の製造方法について、詳細に説明する。ただし、第2の実施の形態における構成のうち、第1の実施の形態と同一の部分についての説明は省略し、異なる構成に対してのみ詳述する。
【0075】
まず、前述した図2〜図4に示すように、サファイア基板150上にn型半導体層106、活性層105、p型半導体層104及び反射金属層103を順に設ける。ここで、反射金属層103は必要に応じて設けられないこともある。
【0076】
続いて、図11に示すように、Si−Al合金基板101の表面全体に保護層120が設けられる。
【0077】
ここで、保護層120は絶縁材で形成することができる。絶縁材からなる保護層120は、CVDまたはコーティング方式などにより0.01μm以上1μm以下の厚さで設けることができる。
【0078】
ここで、図示されていないが、保護層120を設けた後、保護層120の表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理することができる。
【0079】
次に、図12に示すように、保護層120の一部をエッチング方式などにより除去し、Si−Al合金基板101の上面一部を露出する。
【0080】
続いて、図13に示すように、保護層120を含むSi−Al合金基板101の上面に導電層122を設ける。
【0081】
続いて、図14に示すように、接合金属層102を用いて反射金属層103上に、Si−Al合金基板101の上面に設けられた導電層122を接合する。
【0082】
しかる後、図15に示すように、レーザリフトオフ工程でサファイア基板150をn型半導体層106から分離する。
【0083】
ここで、サファイア基板150の分離後は、HCl、HF及びKOHなどの化合物を用いたクリーニング工程が行われる。本発明の第2の実施の形態によれば、Si−Al合金基板101の表面に保護層120及び導電層122が設けられているため、該クリーニング工程で使われる化学物質により、Si−Al合金基板101のAl金属がエッチングされるのを防止することができる。
【0084】
その後、図16に示すように、サファイア基板150の分離により露出したn型半導体層106上に、複数のn側電極107を設ける。
【0085】
ここで、n側電極107を設ける前に、半導体発光素子の光取出し効率を向上するために、n型半導体層106の表面にKOHなどを用いたテクスチャリング工程を行うことができる。本実施の形態によれば、Si−Al合金基板101の表面に保護層120及び導電層122が設けられているため、該テクスチャリング工程で使われる化学物質により、Si−Al合金基板101のAl金属がエッチングされることを防止することができる。
【0086】
続いて、図17に示すように、ラッピング工程によって、保護層120を含むSi−Al合金基板101の下面を一定の厚さ分除去する。
【0087】
続いて、図18に示すように、前記ラッピング工程により露出したSi−Al合金基板101の下面に、コンタクト金属層123を設ける。
【0088】
その後、図19に示すように、n側電極107間のn型半導体層106、活性層105、p型半導体層104、反射金属層103、接合金属層102、導電層122、保護層120、Si−Al合金基板101及びコンタクト金属層123をダイシングし、チップ単位に分離する。これにより、本発明の第2の実施の形態による化合物半導体発光素子100が得られる。
【0089】
この本発明の第2の実施の形態による化合物半導体発光素子の製造方法によれば、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0090】
今回開示された実施の形態は例示にすぎず、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明によるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内におけるすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0091】
100 化合物半導体発光素子
101 Si−Al合金基板
102 接合金属層
103 反射金属層
104 p型半導体層
105 活性層
106 n型半導体層
107 n側電極
110 シード金属層
120 保護層
122 導電層
123 コンタクト金属層
150 サファイア基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si−Al合金基板と、
前記Si−Al合金基板の上面及び下面に設けられた保護層と、
前記Si−Al合金基板の上面に設けられた前記保護層上に順に積層されているp型半導体層、活性層及びn型半導体層と、
を含むことを特徴とする化合物半導体発光素子。
【請求項2】
前記保護層は、金属または伝導性誘電体からなることを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体発光素子。
【請求項3】
前記金属は、Ni、Au、Cu、W、Cr、Mo、Pt、Ru、Rh、Ti及びTaのうちのいずれか一つ、または該金属群のうち少なくとも二つの合金からなることを特徴とする請求項2に記載の化合物半導体発光素子。
【請求項4】
前記伝導性誘電体は、ITO、IZO及びCIOによって構成された群より選ばれるいずれか一つからなることを特徴とする請求項2に記載の化合物半導体発光素子。
【請求項5】
前記保護層は、0.01μm以上20μm以下の厚さで設けられたことを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体発光素子。
【請求項6】
前記Si−Al合金基板の上面に設けられた前記保護層と前記p型半導体層との間に設けられた接合金属層を、さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体発光素子。
【請求項7】
前記接合金属層と前記p型半導体層との間に設けられた反射金属層をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の化合物半導体発光素子。
【請求項8】
Si−Al合金基板と、
前記Si−Al合金基板の上面に、前記Si−Al合金基板の一部を露出するように設けられた保護層と、
前記保護層を含む前記Si−Al合金基板の上面に設けられた導電層と、
前記導電層上に順に積層されているp型半導体層、活性層及びn型半導体層と、
前記Si−Al合金基板の下面に設けられたコンタクト金属層と、
を含むことを特徴とする化合物半導体発光素子。
【請求項9】
前記保護層は、絶縁材で形成されることを特徴とする請求項8に記載の化合物半導体発光素子。
【請求項10】
成長用基板上にn型半導体層、活性層及びp型半導体層を順に設けるステップと、
保護層が表面に設けられたSi−Al合金基板を備えるステップと、
前記p型半導体層上に、前記保護層が表面に設けられた前記Si−Al合金基板を接合するステップと、
前記成長用基板を前記n型半導体層から分離するステップと、
前記n型半導体層上にn側電極を複数設けるステップと、
前記n側電極間の前記n型半導体層、前記活性層、前記p型半導体層、前記保護層及び前記Si−Al合金基板をダイシングし、チップ単位に分離するステップと、
を含むことを特徴とする化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記保護層が表面に設けられたSi−Al合金基板を備えるステップにおいて、
前記保護層は、金属または伝導性誘電体を用いて設けられることを特徴とする請求項10に記載の化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記保護層が金属で設けられる場合、該金属が無電解メッキ、金属蒸着、スパッタリング及びCVDのうちのいずれか一つの方式で設けられることを特徴とする請求項11に記載の化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記保護層が伝導性誘電体によって設けられる場合、該伝導性誘電体が蒸着またはスパッタリング方式で設けられることを特徴とする請求項11に記載の化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記保護層は、前記Si−Al合金基板の表面に0.01μm以上20μm以下の厚さで設けられたことを特徴とする請求項10に記載の化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項15】
前記保護層が表面に設けられたSi−Al合金基板を備えるステップの後、前記保護層の表面をCMP処理するステップを、さらに含むことを特徴とする請求項10に記載の化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項16】
前記保護層が表面に設けられた前記Si−Al合金基板を接合するステップは、前記保護層が表面に設けられた前記Si−Al合金基板を前記p型半導体層上に直接接合することによって行われることを特徴とする請求項10に記載の化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項17】
前記保護層が表面に設けられた前記Si−Al合金基板を接合するステップは、接合金属層を用いて前記p型半導体層上に前記保護層が表面に設けられた前記Si−Al合金基板を接合することによって行われることを特徴とする請求項10に記載の化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項18】
前記p型半導体層を設けるステップの後に、前記p型半導体層上に反射金属層を設けるステップを、さらに含むことを特徴とする請求項10に記載の化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項19】
成長用基板上にn型半導体層、活性層及びp型半導体層を順に設けるステップと、
上面一部を除いた残りの部分上に、保護層が設けられたSi−Al合金基板を備えるステップと、
前記保護層を含む前記Si−Al合金基板の上面に導電層を設けるステップと、
前記p型半導体層上に、前記Si−Al合金基板の上面に設けられた前記導電層を接合するステップと、
前記成長用基板を前記n型半導体層から分離するステップと、
前記n型半導体層上にn側電極を複数設けるステップと、
前記保護層を含む前記Si−Al合金基板の下面をラッピングするステップと、
前記Si−Al合金基板の下面にコンタクト金属層を設けるステップと、
前記n側電極間の前記n型半導体層、前記活性層、前記p型半導体層、前記導電層、前記保護層、前記Si−Al合金基板及び前記コンタクト金属層をダイシングし、チップ単位に分離するステップと、
を含むことを特徴とする化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項20】
前記上面一部を除いた残りの部分上に保護層が設けられたSi−Al合金基板を備えるステップは、
前記Si−Al合金基板の全体表面に保護層を設けるステップと、
前記保護層の一部を除去して前記Si−Al合金基板の上面一部を露出するステップと、
を含むことを特徴とする請求項19に記載の化合物半導体発光素子の製造方法。
【請求項21】
前記Si−Al合金基板の全体表面に保護層を設けるステップにおいて、前記保護層は絶縁材を用いて設けられることを特徴とする請求項20に記載の化合物半導体発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−114411(P2010−114411A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99981(P2009−99981)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(591003770)三星電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】