説明

化合物薄膜太陽電池およびその製造方法

【目的】裏面電極上に形成されたp型化合物半導体からなる光吸収層の上にヘテロ接合のためのn型のバッファ層を設けてなる化合物薄膜太陽電池の製造方法にあって、CBD法によりバッファ層を形成するに際して、溶液の混合および温度を制御することによって光吸収層の界面へのn型ドーパントの拡散とバッファ層の形成の最適化を図って接合性の良い特性の安定したpn接合を得ることができるようにする。
【構成】光吸収層の界面へn型ドーパントを拡散させる第1の工程と、表面反応律速領域による第1のバッファ層61を形成する第2の工程と、供給律速領域による第2のバッファ層62を第1のバッファ層に重ねて形成する第3の工程とをとるようにする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、裏面電極上に形成されたp型化合物半導体からなる光吸収層の上にヘテロ接合のためのn型のバッファ層を設けてなる化合物薄膜太陽電池およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1は、一般的な化合物半導体による薄膜太陽電池の基本構造を示している。それは、SLG(ソーダライムガラス)基板1上に裏面電極(プラス電極)となるMo電極2が成膜され、そのMo電極2上にp型の光吸収層5が成膜され、その光吸収層5上にヘテロ接合のためのn型のバッファ層6を介して透明電極(マイナス電極)7が成膜されている。
【0003】
その化合物半導体による薄膜太陽電池における光吸収層4としては、現在18%を超す高いエネルギー変換効率が得られるものとして、Cu,(In,Ga),SeをベースとしたI−III−VI2族系のCu(In+Ga)Se2によるCIGS薄膜が用いられている。
【0004】
従来、この種の化合物薄膜太陽電池におけるバッファ層として、CBD(ケミカルバスデポジション)法によって、溶液から化学的にII−VI族化合物半導体であるCdS膜を成長させることにより、CIS光吸収層と最適なヘテロ接合を得ることができるようにしている(米国特許第4611091号明細書参照)。
【0005】
また、従来、有害物質であるCdを含まない高い変換効率のヘテロ結合を得ることができるバッファ層として、CBD法によってZnS膜を形成させるようにしたものがある(特開平8−330614号公報参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする問題点は、従来の化合物薄膜太陽電池では、p型化合物半導体である光吸収層とn型半導体であるバッファ層の組成が全く異なるために、その接合に欠陥が生じやすいものになっていることである。
【0007】
また、CBD法によってバッファ層を成膜させるに際して、溶液に光吸収層を浸すと光吸収層へのZnまたはCd成分の拡散とZnSまたはCdSの成膜とが同時に進行するので、光吸収層の結晶性やその表面状態によって特性のバラツキを生じやすいものになってしまうという問題がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、裏面電極上に形成されたp型化合物半導体からなる光吸収層の上にヘテロ接合のためのn型のバッファ層を設けてなる化合物薄膜太陽電池の製造方法にあって、CBD法によりバッファ層を形成するに際して、溶液の混合および温度を制御することによって光吸収層の界面へのn型ドーパントの拡散とバッファ層の形成の最適化を図って特性の安定した良好なpn接合を得るべく、光吸収層の界面へn型ドーパントを拡散させる第1の工程と、表面反応律速領域による第1のバッファ層を形成する第2の工程と、供給律速領域による第2のバッファ層を第1のバッファ層に重ねて形成する第3の工程とをとるようにしている。
【0009】
また、本発明は、裏面電極上に形成されたp型化合物半導体からなる光吸収層の上にヘテロ接合のためのn型のS化IIb族元素によるバッファ層を設けてなる化合物薄膜太陽電池にあって、光吸収層とバッファ層との間で接合性の良い特性の安定したpn接合を得るようにするべく、光吸収層の界面にn型ドーパントが拡散された拡散層の上に、結晶の細かい粒子が堆積された第1のバッファ層と、結晶の粗い粒子が堆積された第2のバッファ層とが順次重ねて形成された構造をとるようにしている。
【0010】
【実施例】
図2および図3は、化合物薄膜太陽電池の製造過程を示している。
【0011】
まず、図2に示すように、SLG(ソーダライムガラス)基板1上に裏面電極としてのMo電極2をスパッタリングにより成膜する。次いで、そのMo電極2上にCIGS薄膜による光吸収層5を作製するに際して、先にIn単体ターゲットT1を用いた第1のスパッタ工程SPT−1によってIn層32を成膜したうえで、その上に、Cu−Gaの合金ターゲットT2を用いた第2のスパッタ工程SPT−2によってCu−Ga合金層31を成膜して、In層32およびCu−Ga合金層31からなる積層プリカーサ3を形成する。そして、熱処理工程HEATにおいて、その積層プリカーサ3をSe雰囲気中で熱処理することにより、CIGS薄膜による光吸収層5を作製する。
【0012】
このように、Mo電極2上にIn層32を設けたうえで、その上にCu−Ga合金層31を設けて積層プリカーサ3を形成するようにしているので、Mo電極2との界面における元素の固層拡散による合金化を抑制することができる。そして、その積層プリカーサ3をSe雰囲気中で熱処理してセレン化する際に、Mo電極2側にIn成分を充分に拡散させることができるとともに、拡散速度の遅いGaがMo電極2との界面に偏析して結晶性の悪いCu−Ga−Se層が形成されることがないようにして、均一な結晶による高品質なP型半導体のCu(In+Ga)Se2によるCIGSの光吸収層5を作製することができる。
【0013】
したがって、Mo電極2との界面に、結晶性が悪くて構造的に脆く、かつ導電性を有する異層(Cu−Ga−Se層)が偏析するようなことがなくなり、Mo電極2との密着性が高くて構造的に強固な、しかもセル間でリークをきたして電池特性が劣化することのない品質の良い光吸収層を得ることができるようになる。
【0014】
次に、図3に示すように、p型の光吸収層5とのヘテロ接合をとるためにn型のバッファ層6を形成する。そして、そのバッファ層6上にZnO:Al,TCOなどからなる透明電極7をスパッタリングにより成膜する。
【0015】
図4および図5は、化合物薄膜太陽電池の他の製造過程を示している。
【0016】
この場合には、積層プリカーサ3のセレン化の熱処理時に、Na成分が光吸収層5に拡散して光電変換効率を向上させることができるように、Mo電極2上にNa2Sからなるアルカリ層8を設けるようにしている。
【0017】
そのアルカル層8は、例えばNa2S・9H2O(硫化ナトリウム9水和物)を重量濃度0.1〜5%で純水に溶かした水溶液にMo電極2の成膜基板を浸して、スピンドライ乾燥させたのち、膜中残留水分の調整のために、大気中150℃で60分間のベーク処理を行うことによって形成する。
【0018】
そして、SLG基板1とMo電極2との間に、SLG基板1に含まれるNa成分が光吸収層5に拡散するのを制御するSiO2,Al2O3などからなる拡散制御層9をCVD法によって形成するようにしている。
【0019】
積層プリカーサ3をSe雰囲気中で熱処理して光吸収層5を作製するに際に、SLG基板1から拡散制御層9によって最適に制御された量のNa元素がMo電極2を通して光吸収層5に拡散するとともに、アルカリ層8から所定量のNa元素が光吸収層5に拡散する。
【0020】
その際、アルカリ層8は、予め所定量のNa元素を供給できる膜質(Na元素の含有密度)および膜厚をもって成膜されており、所定量のNa元素が光吸収層5に拡散して消滅する。
【0021】
また、SLG基板1から光吸収層5に拡散するNa元素にあっても、それが過剰に供給されることなく適量となるように、拡散制御層9の膜質および膜厚が設定されている。
【0022】
具体的には、単位面積1cm当り10E+10〜10E+16の範囲の原子数密度をもって、光吸収層5にMa元素が拡散されるようにする。
【0023】
このように、積層プリカーサ3をSe雰囲気中で熱処理するに際して、SLG基板1およびアルカリ層8から最適に制御された量のNa元素がそれぞれ効果的に効率良く光吸収層5に拡散して、エネルギー変換効率の良いCIGS薄膜による光吸収層5を作製することができるようになる。
【0024】
なお、アリカリ層8のみから必要な量のNa元素を拡散させるように設定したうえで、SLG基板1からNa元素が光吸収層5に必要以上に拡散しないようにするために、拡散層9の膜厚を厚くしてNa成分をしゃ断させるようにすることも可能である。
【0025】
本発明では、特に、バッファ層6を形成するに際して、湿式のCBD法を採用して、図6に示すように、光吸収層5の界面へn型ドーパントを拡散させて拡散層10を形成する第1の工程と、表面反応律速領域による第1のバッファ層61を形成する第2の工程と、供給律速領域による第2のバッファ層62を第1のバッファ層61に重ねて形成する第3の工程とをとるようにしている。
【0026】
具体的には、第1の工程として、アンモニア水溶液とn型ドーパント元素(例えばZnまたはCd)を含む化合物(例えばZnSO4またはCdSO4)の溶液とを混合した2液混合溶液に室温で、またはその2液混合溶液を室温から低側設定温度(例えば60℃程度)に加熱中に光吸収層5を浸す。
【0027】
この第1の工程の段階で、光吸収層5の界面へのZn(またはCd)の拡散が促進される。Zn(またはCd)はp型の光吸収層5に対してn型ドーパントとして作用することでpn接合形成時のバンドの曲りを促進し、界面での再結合確率を下げることになる。
【0028】
光吸収碑5と第1のバッファ層61とのpn接合部分でバンドの曲りが大きくなる理由としては、以下のとおりである。
【0029】
すなわち、光吸収層5の界面へのn型ドーパントの拡散効果が通常のCBD法によるバッファ層の成膜条件に比べて顕著である。また、界面近傍におけるのバッファ層の結晶性とカバレージの改善による構造的な欠陥の低減により、フェルミレベルのピンニング効果が抑制される。
【0030】
光吸収層5の界面へn型ドーパントを拡散させる際に、光電変換効率を良くするためには、浅く、高濃度のドーピングを行わせるのがよい。2液混合溶液によるドーピングは熱非平衡処理であり、このような浅く、高濃度のドーピングが実現されているものと考えられる。その際、単位面積cm当りの拡散濃度が、10E+12〜10E+16の範囲となるようにする。
【0031】
第2の工程として、その2液混合溶液にVIb族元素(例えばチオ尿素またはチオアセトアミド)の溶液を混合した3液混合溶液に低温設定温度下で光吸収層を浸す。
【0032】
そして、第3の工程として、その3液混合溶液を高側設定温度(例えば80℃程度)に加熱して、その高温設定温度下で光吸収層を浸す。
【0033】
第1の工程と第2の工程とによりpn接合が行われ、第3の工程により厚膜成長が行われる。それにより、高品質なpn接合部およびn型化合物半導体層を形成できるようになる。そして、面内均一性とVocの改善および特性の経時劣化の抑制が達成される。
【0034】
低側設定温度と高側設定温度との溶液温度の切換えによる第1のバッファ層61と第2のバッファ層62の膜質制御としては、以下のとおりである。
【0035】
大きく影響すると考えられる成膜初期段階の膜質を高品質なものとするために、その段階での膜成長を低温の表面反応律速領域で成膜し、透明電極7をスパッタリングによって形成するときのプラズマダメージ対策としての厚膜化を高温の供給律速領域で行う。
【0036】
光吸収層5の界面へのZn(またはCd)の拡散によるn型ホモ結合形成の促進としては、以下のとおりである。
【0037】
CBD法による成膜にはZnS(またはCdS)によるバッファ層そのものを形成する過程に加えて、光吸収層5にZnを拡散させて表面をn型化する効果がある。Znの拡散により光吸収層5の界面でpn接合が形成されることで、Vocの向上、均一性の改善が期待できる。
【0038】
実験結果によれば、通常のCBD法によってバッファ層を形成したときのVocが0.4V程度であるのに対して、本発明によって第1のバッファ層61と第2のバッファ層62とを形成したときのVocが0.48V程度にまで向上することが確認されている。光吸収層とバッファ層との接合状態はセルの開放電圧Vocに最も反映されるもので、本発明の優位性が顕著となっている。
【0039】
高温(70℃以上)でのZnSの膜成長としては、以下のとおりである。
【0040】
バッファ層を形成する目的としては、光吸収層5に対するpn接合の確保と透明電極7の形成時のプラズマダメージによる接合特性の劣化を緩和することにある。高温でのZnSの成膜は、プラズマダメージをpn接合の界面にまで到達させないために膜厚を厚くさせるためである。
【0041】
また、高温で成長したZnS膜は低温で成長したものと比べて結晶性が粗く、高抵抗であると考えられる。このことは、pn接合のシャントパスを低減する効果も期待でき、Vocの改善に役立つことになる。
【0042】
高温でのZnS膜の成長は供給律速が主体であると考えられ、溶液のかくはん状態などによって膜の成長速度が異なる。ちなみに、低温での膜成長だけで同等の膜厚を得るためには、10倍近い時間を要してしまう。
【0043】
光吸収層を投入しない状態でZnS成膜の溶液を75℃程度の温度に維持すると、数10分で溶液中に白色のコロイドが発生する。この白色コロイドはアンモニアに溶けないことから、ZnSの粒子が発生したものと考えられる。一方で、55℃程度の低温では数時間経っても白色コロイドは発生しない。
【0044】
高温でのZnS膜の成長においては、白濁した溶液に光吸収層を浸し続けることで膜厚が増加していく。つまり、ZnSのコロイドが発生した白濁状態においても膜は成長する。
【0045】
Znの拡散は、アルカリ溶液中での光吸収層5の帯電電位により電界増速されている可能性があり、それに関連していると考えられるアンモニアとZnSO4の2液を混合した段階で光吸収層5を溶液に浸すことで拡散効果を高めることが期待できる。また、その段階では、チオ尿素を加えないためにZnSの膜成長が始まらず、光吸収層5の界面に溶液から直接Znを供給することになり、浅く、高濃度の拡散を行わせることができるようになる。
【0046】
第2の工程によって形成される表面反応律速領域による第1のバッファ層61は、室温〜60℃の低温度域でのZnS(またはCdS)の成長は光吸収層5の界面での反応が主であり、結晶品質が良く、結晶の細かい粒子が堆積されたものとなる。そのため、光吸収層5の表面のラフネス(凹凸)に対するカバレージ(密着性)の良いバッファ層61を形成することができる。そして、第1の工程によって界面にn型ドーパントが拡散された光吸収層5に対して接合性の良い特性の安定したpn接合を得ることができるようになる。
【0047】
低温成長でカバレージが改善する理由としては、以下のとおりである。
【0048】
CBD法による成膜は溶液中での膜成長のため、真空蒸着法等による成膜に比べるとカバレージは良い。しかしながら、溶液の液層中で反応した微結晶状態のZnSが光吸収層5の表面に堆積する場合を考えると、その微結晶のサイズよりも小さいトレンチ等の内部へのZnSの埋め込みは不可能な状況となる。極端に小さな表面構造においても良好なカバレージを実現するには、供給される分子サイズが小さいほうが望ましく、表面への材料供給が分子状態で行われる表面反応律速領域での膜成長がカバレージの観点からも有利となる。
【0049】
また、第3の工程によって形成される供給律速領域による第2のバッファ層62は、結晶の粗い粒子が堆積されたものとなって高速での成膜が行われる。
【0050】
第1ないし第3の工程は、連続で行われるのが望ましい。
【0051】
図7は、第1ないし第3の工程を連続的に行うようにしたときの処理過程の一例を示している。
【0052】
ここでは、室温で2液混合溶液中に光吸収層5を浸し、その状態のまま溶液を低側設定温度である60℃にまで30分(10〜50分)かけて加熱して、光吸収層5の界面にn型ドーパントを所定に拡散させて、拡散層10を形成する。
【0053】
次いで、その低側設定温度下でチオ尿素の溶液を加えて、その3液混合溶液に光吸収層5を60分間浸して第1のバッファ層61を形成する。
【0054】
そして、その3液混合溶液を高側設定温度である80℃にまで加熱して、45分かけて第2のバッファ層62を形成する。
【0055】
最終的に、流水によるオーバフロー洗浄を行う。
【0056】
【効果】
以上、本発明は、裏面電極上に形成されたp型化合物半導体からなる光吸収層の上にヘテロ接合のためのn型のバッファ層を設けてなる化合物薄膜太陽電池の製造方法にあって、CBD法によりバッファ層を形成するに際して、光吸収層の界面へn型ドーパントを拡散させる第1の工程と、表面反応律速領域による第1のバッファ層を形成する第2の工程と、供給律速領域による第2のバッファ層を第1のバッファ層に重ねて形成する第3の工程とをとるようにしたもので、溶液の混合および温度を制御することによって光吸収層の界面へのn型ドーパントの拡散とバッファ層の形成の最適化を図って接合性の良い特性の安定したpn接合を得ることができるという利点を有している。
【0057】
また、本発明は、裏面電極上に形成されたp型化合物半導体からなる光吸収層の上にヘテロ接合のためのn型のS化IIb族元素によるバッファ層を設けてなる化合物薄膜太陽電池にあって、光吸収層の界面にn型ドーパントが拡散された拡散層の上に、結晶の細かい粒子が堆積された第1のバッファ層と、結晶の粗い粒子が堆積された第2のバッファ層とが順次重ねて形成された構造をとるようにしたもので、光吸収層とバッファ層との間で接合性の良い特性の安定したpn接合を得ることができるという利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的な化合物半導体による薄膜太陽電池の基本的な構造を示す正断面図である。
【図2】本発明によってSLG基板上に裏面電極および光吸収層を形成するまでの製造過程の一例を示す図である。
【図3】本発明によって光吸収層上にバッファ層および透明電極を形成するまでの製造過程を示す図である。
【図4】本発明によってSLG基板上に拡散制御層、裏面電極、アルカリ層および積層プリカーサを形成するまでの製造過程を示す図である。
【図5】本発明によってSLG基板上に拡散制御層を介して光吸収層、バッファ層および透明電極を形成するまでの製造過程を示す図である。
【図6】本発明によって光吸収層上にバッファ層を形成するまでの製造過程の詳細を示す図である。
【図7】本発明によって光吸収層上にバッファ層を形成する際の処理過程の一例を示す特性図である。
【符号の説明】
1 SLG基板
2 Mo電極
3 積層プリカーサ
5 光吸収層
6 バッファ層
61 第1のバッファ層
62 第2のバッファ層
7 透明電極
10 n型ドーパントの拡散層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面電極上に形成されたp型化合物半導体からなる光吸収層の上にヘテロ接合のためのn型のバッファ層を設けてなる化合物薄膜太陽電池の製造方法であって、CBD法によりバッファ層を形成するに際して、光吸収層の界面へn型ドーパントを拡散させる第1の工程と、表面反応律速領域による第1のバッファ層を形成する第2の工程と、供給律速領域による第2のバッファ層を第1のバッファ層に重ねて形成する第3の工程とをとるようにした化合物薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項2】
第1の工程として、アンモニアとn型ドーパント元素を含む化合物の溶液とを混合した2液混合溶液に室温で、またはその2液混合溶液を室温から低側設定温度に加熱中に光吸収層を浸すようにしたことを特徴とする請求項1の記載による化合物薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項3】
第2の工程として、2液混合溶液にVIb族元素の溶液を混合した3液混合溶液に低温設定温度下で光吸収層を浸すようにしたことを特徴とする請求項1の記載による化合物薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項4】
第3の工程として、3液混合溶液を高側設定温度に加熱して、その高温設定温度下で光吸収層を浸すようにしたことを特徴とする請求項1の記載による化合物薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項5】
第2のバッファ層の形成後に、流水によるオーバフロー洗浄を行うようにしたことを特徴とする請求項1の記載による化合物薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項6】
n型ドーパント元素がZnまたはCdであることを特徴とする請求項1の記載による化合物薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項7】
n型ドーパント元素を含む化合物がZnSO4またはCdSO4であることを特徴とする請求項2の記載による化合物薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項8】
VIb族元素がチオ尿素またはチオアセトアミドであることを特徴とする請求項3の記載による化合物薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項9】
裏面電極上に形成されたp型化合物半導体からなる光吸収層の上にヘテロ接合のためのn型のS化IIb族元素によるバッファ層を設けてなる化合物薄膜太陽電池において、光吸収層の界面にn型ドーパントが拡散された拡散層の上に、結晶の細かい粒子が堆積された第1のバッファ層と、結晶の粗い粒子が堆積された第2のバッファ層とが順次重ねて形成されていることを特徴とする化合物薄膜太陽電池。
【請求項10】
第1のバッファ層が表面反応律速領域によるものであることをことを特徴とする請求項9の記載による化合物薄膜太陽電池。
【請求項11】
第2のバッファ層が供給律速領域によるものであることをことを特徴とする請求項9の記載による化合物薄膜太陽電池。
【請求項12】
IIb族元素およびn型ドーパント元素がZnまたはCdであることを特徴とする請求項9の記載による化合物薄膜太陽電池。
【請求項13】
拡散層におけるIIb族元素の単位面積cm当りの濃度が、10E+12〜10E+16の範囲であることを特徴とする請求項9の記載による化合物薄膜太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2004−15039(P2004−15039A)
【公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−200614(P2002−200614)
【出願日】平成14年6月5日(2002.6.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】