説明

化粧用組成物および医薬用組成物

【課題】化粧用組成物および医薬用組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、インターロイキン8の放出およびケラチン生成細胞の最終分化の阻害など、ケラチン生成細胞からのHB-EGF(ヘパリン結合上皮成長因子)の放出、細胞増殖、炎症を生じる可能性のない表皮肥厚を含む、皮膚におけるレチノイド様活性を呈する新規の化合物に関するものである。また、本発明は、当該化合物の外用および非外用の双方への使用に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の背景〕
ヒトの皮膚は、特定の老化作用を受けるものであり、一部の老化作用は、内因性作用(例えば、経年老化)に起因するものであり、また、一部の老化作用は、外因性要素(例えば、光による老化)に起因するものである。さらに、ニキビ、脂性肌または乾燥肌、角化症、酒さ(rosacea)、光敏感症、炎症、紅班症、および、皮膚症および光線皮膚症等のアレルギー性または自己免疫反応性の反応等、皮膚の一時的な変化または恒久的な変化が生じることもある。
【0002】
上述した老化作用の結果には、皮膚の薄膜化、表皮と真皮との結合力の弱体化、および、細胞数および血管の血液供給量の減少が含まれることがある。この結果は、多くの場合、細線および皺の形成をもたらし、かつ、色素不足が生じることがある。
【0003】
レチノイド類は、内因性の老化、外因性の要素、あるいは、皮膚疾患によって生じる皮膚症状の治療に使用されてきた。しかし、レチノイドによる治療には薬効があるにもかかわらず、レチノイド類が皮膚に刺激を与えるため、その薬効は限定される。このようなレチノイド類の副作用は、レチノイドの使用を制限することがある。
【0004】
今まで、レチノイド類の代替化合物に関する調査は、皮膚萎縮症、ニキビ、光による老化等の老化に関連した皮膚疾患の治療について、および、皺、細線、伸展線、またはセルライトの発症の減少について、ある程度の成功をもたらしてきた。
【0005】
したがって、上述した皮膚疾患を治療するための新規の組成物および方法であって、レチノイド投与の悪影響を回避する、新規の組成物および方法を提供することが、本発明の目的である。
【0006】
〔発明の概要〕
本発明は、例えば、インターロイキン8の放出およびケラチン生成細胞の最終分化の阻害など、ケラチン生成細胞からのHB-EGF(ヘパリン結合上皮成長因子)の放出、細胞増殖、炎症を生じる可能性のない表皮肥厚化を含む、皮膚におけるレチノイド様活性を呈する新規の化合物に関するものである。
【0007】
本発明は、化学式(I)で示される化合物、あるいは当該化合物の化粧成分または医薬成分として許容される塩類、および、当該化学式(I)で示される化合物を含有する組成物、あるいは当該組成物の化粧成分または医薬成分として許容される塩類に関連している。
【化1】


但し、
R1は、-COOR10、-C(=O)R11、-CH2OR12、-SO2-OH、-SO3-OH、-NR15R16、-C(=O)-NR15R16、および、-B(OR17)2からなる群より選択されるものであり、
Zは、単結合、酸素原子、-O-C1-4-アルカンジイル(-alkanediyl-)、-C1-4-アルカンジイル-O-C1-4-アルカンジイル、O-C2-4-アルカンジイル、および-C2-4-アルカンジイル-O-C2-4-アルカンジイルからなる群より選択されるものであり、
R2は、水素原子およびヒドロキシ基からなる群より選択されるものであり、
R3は、水素原子およびヒドロキシ基からなる群より選択されるものであり、
Xは、-CR13=CR13'-、および、-N=N-からなる群より選択されるものであり、
R4は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R5は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R6は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R7は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R8は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R9は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R10は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R11は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R12は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R13およびR13'は、それぞれ独立して、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R14は、C1-4アルキル基より選択されるものであり、
R15およびR16は、それぞれ独立して、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R17は、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より独立して選択されるものである。
【0008】
また、本発明は、このような化合物の外用および非外用の双方への適用に関するものである。
【0009】
本発明の他の特徴および利点は、本発明の詳細な説明および特許請求の範囲から明白になるはずである。
【0010】
〔発明の詳細な説明〕
この明細書の記述に基づいて、この技術分野における当業者であれば本発明を最大限、利用できるものと考えられる。次の特定の実施の形態は、単なる実例であり、いかようにも残りの開示内容を制限するものではないと解釈される。
【0011】
他に規定されない限り、この明細書で使用される、すべての技術的用語および科学的用語は、本発明の属する技術分野における当業者によって一般に理解されるのと同一の意味を有している。また、この明細書で言及される、すべての刊行物、特許出願、特許および他の文献は、参照によって、この明細書にそっくりそのまま組み込まれる。この明細書で使用されるように、すべての百分率は、他に特定されない限り、組成物の総重量に対する重量%である。
【0012】
本発明の化合物は、化学式(I)で示される化合物、あるいは当該化合物の、化粧成分または医薬成分として許容される塩類として規定される。
【化2】


但し、
R1は、COOR10、C(=O)R11、CH2OR12、SO2-OH、-SO3-OH、-NR15R16、-C(=O)-NR15R16、および、-B(OR17)2からなる群より選択されるものであり、
Zは、単結合、酸素原子、-O-C1-4-アルカンジイル、-C1-4-アルカンジイル-O-C1-4-アルカンジイル、-O-C2-4アルカンジイル、および-C2-4-アルカンジイル-O-C2-4-アルカンジイルからなる群より選択されるものであり、
R2は、水素原子およびヒドロキシ基からなる群より選択されるものであり、
R3は、水素原子およびヒドロキシ基からなる群より選択されるものであり、
Xは、-CR13=CR13'-、および、-N=N-からなる群より選択されるものであり、
R4は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R5は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R6は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R7は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R8は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R9は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R10は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R11は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R12は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R13およびR13'は、それぞれ独立して、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R14は、C1-4アルキル基であり、
R15およびR16は、それぞれ独立して、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R17は、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より独立して選択されるものである。
【0013】
本発明の一つの実施の形態において、化学式(I)で示される化合物は、R6およびR7の双方が水素原子である場合の化学式(I)で示される化合物である。
【0014】
本発明の他の実施の形態において、化学式(I)で示される化合物は、R5が水素原子である場合の化学式(I)で示される化合物である。
【0015】
本発明のさらに他の実施の形態において、化学式(I)で示される化合物は、R2が水素原子である場合の化学式(I)で示される化合物である。
【0016】
本発明において、化学式(I)で示される化合物は、希釈していない純化合物であり、多少の不純物を有する化合物であり、例えば、少なくとも80重量%、好ましくは、少なくとも90重量%、特に、少なくとも94重量%の純度を有する化合物を含むことを意図するものである。
【0017】
化学式(I)で示される化合物のうち、興味深い化合物は、化学式(IA)で示される化合物である。
【化3】


但し、
R1は、COOR10、C(=O)R11、CH2OR12からなる群より選択されるものであり、
Zは、単結合、酸素原子、-O-C1-4アルカンジイル、- C1-4-アルカンジイル-O-C1-4-アルカンジイルから選択されるものであり、
R2は、水素原子およびヒドロキシ基からなる群より選択されるものであり、
R3は、水素原子およびヒドロキシ基からなる群より選択されるものであり、
Xは、-CR13=CR13'-、および、-N=N-からなる群より選択されるものであり、
R4は、水素原子、ヒドロキシ基、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R5は、水素原子およびハロゲン原子からなる群より選択されるものであり、
R6は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R7は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R8は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R9は、水素原子、ヒドロキシ基、および、OR14からなる群より選択されるものであり、
R10は、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R11は、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R12は、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R13およびR13'は、それぞれ独立して、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R14は、C1-4アルキル基であり、
R15およびR16は、それぞれ独立して、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものである。
【0018】
好適な化合物は、化学式(IB)で示される化合物である。
【化4】


但し、
R1は、COOR10であり、
Zは、単結合、および、-O-C1-4-アルカンジイルからなる群より選択されるものであり、
R2は、水素原子であり、
R3は、ヒドロキシ基であり、
Xは、-CH=CH-、および、-N=N-からなる群より選択されるものであり、
R4は、ヒドロキシ基、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R5は、水素原子であり、
R6は、水素原子であり、
R7は、水素原子であり、
R8は、水素原子、および、ハロゲン原子からなる群より選択されるものであり、
R9は、ヒドロキシ基であり、
R10は、水素原子であり、
R15およびR16は、それぞれ独立して、水素原子である。
【0019】
特に好適な化合物A、B、D、E、F、およびGは、化学式(I)で示される化合物群から選択される。
【化5】


【化6】


【化7】


【化8】


【化9】


【化10】

【0020】
本発明の化学式(I)で示される化合物は、当業者に周知である方法を用いて調製されてもよい。例えば、化合物D、G、およびFは、図1〜図3にそれぞれ示された化学合成経路によって作製できる。特定の実施の形態では、化学式(I)で示される全化合物に一般化できる条件が設定されている。
【0021】
また、本発明の化学式(I)で示される化合物は、化粧成分または医薬成分として許容される塩類の形態で存在してもよい。化粧品または医薬品として使用するための本発明の化合物の塩類は、概して、無毒性の「化粧成分または医薬成分として許容される塩類」と称され、これらの塩類は、化粧成分または医薬成分として許容される酸性/陰イオン性の塩類、または塩基性/陽イオン性の塩類である。化粧成分または医薬成分として許容される酸性/陰イオン性の塩類には、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、酸性酒石酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カムシレート、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート(estolate)、エシレート(esylate)、フマル酸塩、グリセプテート(glyceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸(glycollylarsanilate)、ヘキシルレゾルシン(hexylresorcinate)、ヒドラバミン(hydrabamine)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩(hydroxynaphthoate)、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシラート、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、ムカート(mucate)、ナプシラート(napsylate)、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩(polygalacturonate)、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩(teolate)、トシレートおよびトリエチオジド(triethiodide)が含まれるが、これらに限定されるものではない。化粧成分または医薬成分として許容される塩基性/陽イオン性の塩類には、アルミニウム、ベンザシン(benzathine)、カルシウム、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、リチウム、マグネシウム、メグルミン、カリウム、プロカイン、ナトリウムおよび亜鉛が含まれるが、これらに限定されるものではない。しかし、他の塩類も、本発明による化合物の調製、あるいは、当該化合物の、化粧成分として許容される塩類の調製に役立てるようにしてもよい。有機酸または無機酸には、ヨウ化水素酸、過塩素酸、硫酸、リン酸、プロピオン酸、グリコール酸、メタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、シュウ酸、2−ナフタレンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミン酸、サッカリン酸またはトリフルオロ酢酸が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
<用語>
この明細書で使用されるように、次の用語は、次の定義を有することを意図するものである。追加の定義は、必要に応じて、明細書中で提供されている。
【0023】
用語「C1-8アルキル基」とは、単独で使用されるか、あるいは、置換基の一部として使用されるか否かにかかわらず、飽和脂肪族の分枝鎖または直鎖状を有し、かつ、1個〜8個の炭素原子を有する一価の炭化水素基を云う。具体的には、例えば、「C1-8アルキル基」には、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、3級ブチル基、1−ブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、1−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、1−ヘプチル基、2−ヘプチル基、3−ヘプチル基、1−オクチル基、2−オクチル基、3−オクチル基およびこれらの同類の基が含まれる。また、当該「C1-8アルキル基」とは、当該基に関連したアルキルジイル基を云うものであってもよい。アルキル基およびアルキルジイル基は、末端の炭素原子により、あるいは、鎖状構造内の炭素原子により、コア分子に結合されてもよい。同様に、利用可能な価数を用いることによって結合できる場合には、変更可能な、いかなる置換基も、アルキル基またはアルキルジイル基に結合されてもよい。
【0024】
用語「C1-4アルキル基」とは、単独で使用されるか、あるいは、置換基の一部として使用されるか否かにかかわらず、飽和脂肪族の分枝鎖または直鎖状を有する一価の炭化水素基、あるいは、特定数の炭素原子を有するアルキルジイル結合基を云う。炭化水素基は、炭素原子から一つの水素原子を除去することによって誘導され、アルキルジイル結合基は、鎖状構造内の二つの炭素原子の各々から一つの水素原子を除去することによって誘導される。用語「C1-4アルキル基」とは、直鎖状または分枝鎖状の構造内の1個〜4個の炭素原子を有する基を云う。具体的には、例えば、「C1-4アルキル基」には、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、3級ブチル基、1−ブチル基およびこれらの同類の基が含まれる。アルキル基およびアルキルジイル基は、末端の炭素原子により、あるいは、鎖状構造内の炭素原子により、コア分子に結合されてもよい。同様に、利用可能な価数を用いることによって結合できる場合には、変更可能な、いかなる置換基も、アルキル基またはアルキルジイル基に結合されてもよい。
【0025】
用語「C1-4アルカンジイル基」とは、単独で使用されるか、あるいは、置換基の一部として使用されるか否かにかかわらず、飽和脂肪族の分枝鎖または直鎖状を有し、かつ、直鎖状または分枝状の構造内に1個〜4個の炭素原子(1個、2個、3個または4個)を有する二価の炭化水素基を云うものであり、二価の炭化水素基には、具体的に、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-などの基が含まれる。
【0026】
用語「C2-4アルケニル基」とは、2個〜4個の炭素原子を有するアルケニル基を云う。例えば、「C2-4アルケニル基」には、具体的に、エテニル基、プロペニル基、アリル(2−プロペニル)基、ブテニル基およびこれらの同類の基が含まれる。上述したように、アルケニル基は、同様に、コア分子に結合され、かつ、指示された場合に、さらに置換されてもよい。
【0027】
用語「C2-4アルケンジイル基」とは、2個〜4個の炭素原子(2個、3個または4個)を有する二価のアルケニル基を云う。例えば、アルケニル基には、-CH=CH-、-CH2-CH=CH-、およびこれらの同類の基などが含まれる。
【0028】
用語「ハロゲン原子(halo)」とは、それ自体か、あるいは、他の用語と組み合わせて、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子などのハロゲン原子を意味する。
【0029】
用語「置換(substituted)」とは、一以上のハロゲン原子が、利用可能な価数によって置換できる量の置換基と置き換えられたコア分子を云う。置換反応は、コア分子に対する置換に限定されないが、置換基上で生じてもよく、これによって、当該置換基を結合基とすることができる。
【0030】
用語「独立して選択される(independently selected)」とは、変更可能な置換基から選択できる二以上の置換基を云い、選択された複数の置換基は、同一のものであってもよく、あるいは、異なるものであってもよい。
【0031】
用語「従属的に選択される(dependently selected)」とは、コア分子中での置換基の所望の組み合わせで特定された変更可能な一以上の置換基(例えば、化合物の表中に示された置換基のグループに属する変更可能な置換基)を云う。
【0032】
この明細書では、概して、IUPAC(国際純正応用化学連合)の命名法が使用される。
【0033】
<組成物>
本発明に有用な組成物には、ヒトの皮膚等、標的組織への投与に適した剤形が含まれる。一つの実施の形態において、当該組成物には、化学式(I)で示される少なくとも一つの化合物と、化粧成分または医薬成分として許容される少なくとも一つの担体とが含まれる。
【0034】
この明細書で使用されるように、用語「化粧成分として許容される(cosmetically acceptable)」とは、過度の毒性、不適合性、不安定性、刺激性、アレルギー性反応およびこれらの同類の作用を受けることなく、組織(例えば、皮膚)との接触使用に適すると共に、使用時の利点とリスクとの妥当な比で釣り合う、化粧用活性剤、不活性成分、あるいは、当該用語が示す組成物を意味する。
【0035】
この明細書で使用されるように、用語「医薬成分として許容される(pharmaceutically acceptable)」とは、過度の毒性、不適合性、不安定性、刺激性、アレルギー性反応およびこれらの同類の作用を受けることなく、薬剤投与に適する、成分(複数成分の場合を含む)、あるいは、当該用語が示す組成物を意味する。
【0036】
本発明による組成物には、化学式(I)で示される少なくとも一つの化合物が、15重量%(w/w)まで好適に含まれる。化学式(I)で示される化合物の濃度は、組成物中に、10重量%(w/w)〜0.01重量%(w/w)の範囲とされることが好ましく、また、約5重量%(w/w)〜約0.1重量%(w/w)の範囲とされることが特に好ましい。
【0037】
当該組成物は、種々の化粧用品に製造されてもよく、当該化粧用品には、化粧水、クリーム、ゲル、スティック、噴霧剤、軟膏、洗浄液および洗浄用棒状固体(cleansing liquid washes and solid bars)、シャンプーおよび頭髪用コンディショナー、ペースト、発泡剤、粉剤、ムース、髭剃り用クリーム、拭き取り用繊維、剥ぎ取り用片(strips)、パッチ、通電式パッチ(electrically-powered patches)、創傷被覆材およびガーゼ付き絆創膏、ヒドロゲル剤、皮膜形成用製品、顔面用マスクおよび皮膚用マスク、ファンデーション、アイライナーおよびアイシャドウ等のメーキャップ用具、およびこれらの同類が含まれるが、これらに限定されるものではない。これらのタイプの製品には、化粧成分として許容される種々のタイプの担体が含まれてもよく、これらの担体には、溶液、懸濁液、マイクロエマルジョンおよびナノエマルジョン等の乳液、ゲル、固体およびリポソームが含まれるが、これらに限定されるものではない。このような担体の非限定的例は、後述される。他の担体は、この技術分野における当業者によって処方される。
【0038】
本発明に有用な組成物は、溶液として処方されてもよい。溶液には、主として、水性溶媒または有機溶媒(例えば、約50%〜約99.99%または約90%〜約99%の化粧成分として許容される水性溶媒または有機溶媒)が含まれる。例えば、適切な有機溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、200〜600)、ポリプロピレングリコール(例えば、425〜2025)、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトールエステル類、1,2,6−ヘキサントリオール、エタノール、および、これらの混合物が含まれる。
【0039】
化粧水は、上述のような溶液から調製される。化粧水には、主として、約1%〜約20%(例えば、約5%〜約10%)の軟化剤(複数の軟化剤の場合を含む)と、約50%〜約90%(例えば、約60%〜約80%)の水とが含まれる。この明細書で使用されるように、「軟化剤」とは、乾燥の防止または緩和、並びに、皮膚または頭髪の保護に使用される材料を云う。軟化剤の例には、ウェニンガー(Wenninger)およびマッキュアン(McEwen)編集による国際化粧品成分辞典(the International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook)(米国ワシントンDCのコスメティック・トイレトリ・フレグランス協会(The Cosmetic, Toiletry, and Fragrance Assoc.)発行、第7版、1997年(以下、「ICIハンドブック」という))の第1656頁〜第1661頁、第1626頁、および第1654頁〜第1655頁に述べられた軟化剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
溶液から調製されうる他のタイプの製品は、クリームである。クリームには、主として、約5%〜約50%(例えば、約10%〜約20%)の軟化剤(複数の軟化剤の場合を含む)と、約45%〜約85%(例えば、約50%〜約75%)の水とが含まれる。
【0041】
溶液から調製されうる更に他のタイプの製品は、軟膏である。軟膏には、単一の基剤として、動物性油、植物性油、あるいは、合成油または半固形状の炭水化物類が含まれてもよい。軟膏には、約2%〜約10%の軟化剤(複数の軟化剤の場合を含む)と、約0.1%〜約2%の増粘剤(複数の増粘剤の場合を含む)とが含まれる。増粘剤の例には、ICIハンドブックの第1693頁〜第1697頁に述べられた増粘剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
また、本発明に有用な組成物は、乳液として処方されてもよい。仮に担体が乳液である場合には、約1%〜約10%(例えば、約2%〜約5%)の担体には、乳化剤が含まれる。乳化剤は、非イオン性、陰イオン性、あるいは、陽イオン性であってもよい。乳化剤の例には、ICIハンドブックの第1673頁〜第1686頁に述べられた乳化剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
化粧水およびクリームは、乳液として処方されてもよい。このような化粧水には、主として、約0.5%〜約5%の乳化剤が含まれるのに対し、上述のようなクリームには、主として、約1%〜約20%(例えば、約5%〜約10%)の軟化剤と、約20%〜約80%(例えば、約30%〜約70%)の水と、約1%〜約10%(例えば、約2%〜約5%)の乳化剤とが含まれる。
【0044】
化粧水およびクリーム等、水中油型および油中水型の単一相のスキンケア製剤は、この技術分野において周知であり、かつ、本発明に有用である。また、水中油中水型または油中水中油型等、複数相の乳剤用組成物も、本発明に有用である。単一相または複数相の乳剤には、必須成分としての水、軟化剤、および乳化剤が含まれる。
【0045】
また、本発明の組成物は、ゲル(例えば、水性ゲル、アルコール性ゲル、アルコール/水性、あるいは、適切なゲル化剤(複数のゲル化剤の場合を含む)を用いた油性ゲル)として処方されてもよい。水性および/またはアルコール性のゲルに適したゲル化剤には、天然ガム、アクリル酸・アクリル酸塩ポリマー類およびコポリマー類、および、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース)が含まれるが、これらに限定されるものではない。油(鉱油等)性ゲルに適したゲル化剤には、水素添加型のブチレン/エチレン/スチレンコポリマー、および水素添加型のエチレン/プロピレン/スチレンコポリマーが含まれるが、これらに限定されるものではない。このようなゲルには、主として、約0.1重量%と5重量%との間の含有量のゲル化剤が含まれる。
【0046】
また、本発明の組成物は、固形の製剤(例えば、ワックス系スティック、棒状石鹸用組成物、粉剤および粉剤含有の拭き取り用繊維)に製造されてもよい。
【0047】
本発明に有用な組成物には、上述した成分に加えて、皮膚上に使用される組成物中において、この技術分野で確立した濃度で従来使用された、種々の油溶性材料および/または水溶性材料が含まれてもよい。
【0048】
また、本発明の組成物は、摂取可能な組成物に処方されてもよい。この明細書で使用されるように、「摂取可能な組成物」とは、体内に摂取されることを意図された組成物を意味する。摂取可能な組成物の形態例には、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、顆粒、溶液または懸濁液、およびドロップが含まれるが、これらに限定されるものではない。このような組成物は、丸呑み形態、あるいは、咀嚼可能な形態であってもよい。また、「摂取可能な組成物」は、クッキー、キャディー、棒状食品、チューインガム、ヨーグルト含有物、スプリンクル(sprinkles)、茶、ジュースまたは他の飲料、液状シェークまたはこれらの同類等、菓子または食品の形態であってもよい。摂取可能な組成物には、皮膚または口腔/膣腔へ局所的に投与されることを意図された組成物が含まれない。
【0049】
<用途>
本発明による組成物は、種々の皮膚疾患および症状を治療して、皮膚の老化、皮膚炎および皮膚の色素沈着の発現を緩和できるようにするために、使用されうる。
【0050】
本発明の組成物の局所使用または口腔内使用によって治療できる皮膚の老化の例には、皮膚上の皺、皮膚の硬さの喪失または弾力性の喪失、弛み、弛緩が含まれるが、これらに限定されるものではない。この明細書で使用されるように、用語「皺(wrinkle)」には、細線、細かな皺、粗い皺、セルライト、傷跡、および伸展線が含まれる。皺の例には、目元の細線(例えば、「カラスの足跡」)、額および頬の皺、眉間の皺、および、口元の笑い皺が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
本発明の組成物の局所使用または口腔内使用によって治療できる皮膚炎の例には、関節炎、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、脂漏性皮膚炎、湿疹、アレルギー性皮膚炎、多形性光線性発疹、炎症性皮膚疾患、毛嚢炎、脱毛症、ツタウルシ皮膚炎、虫刺され;薬物、外傷、汚染物質(タバコの煙等)、および、紫外線または風に誘発される炎症(UV or wind exposure)を含むが、これらに限定されない外因性要素により誘導される炎症、および、乾燥症、過角化症、掻痒症、炎症後の色素沈着過剰、瘢痕化を含むが、これらに限定されない炎症由来の二次的症状、およびこれらの同類が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
本発明の組成物の局所使用または口腔内使用によって治療できる皮膚の色素沈着の例には、皮膚の色素沈着過剰、皮膚の淡色領域、皮膚の色調の不均一化、目元の変色および腫れが含まれるが、これらに限定されるものではない。目元の変色および腫れには、目の下のクマおよび弛みが含まれるが、これらに限定されるものではない。一つの実施の形態において、目の下の皮膚内に血液が集中して増加する結果として、目の下のクマが治療される。
【0053】
<局所的な用途>
化学式(I)で示される少なくとも一つの化合物と、化粧成分として許容される担体とを含む、本発明の組成物の局所的な用途には、ヒトの皮膚の老化、乾燥肌、色素不良、紫外線による皮膚損傷、皺、細線、肌荒れまたは拡大した毛穴の肌等の皮膚の凹凸、ならびに、角質化不全、ニキビ、湿疹、炎症および皮膚萎縮症等、皮膚の老化に関連した疾患がある。
【0054】
この明細書で使用されるように、「局所的な用途(topically use)」および「局所的な塗布(topically applying)」とは、例えば、手を用いることによって、あるいは、拭き取り用繊維等のアプリケータを用いることによって、皮膚、頭髪または爪の上に直接、塗布または広げることを意味する。
【0055】
<追加の化粧用活性剤>
一つの実施の形態において、局所用組成物には、化粧用活性剤がさらに含まれる。「化粧用活性剤(cosmetically active agent)」とは、皮膚、頭髪または爪に対する化粧効果または治療効果を有する化合物、例えば、皮膚淡色化剤(lightening agents)、セルフ・タンニング剤等の皮膚黒化剤(darkening agents)、ニキビ抑制剤、光沢調整剤、抗菌剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗寄生虫剤、外用鎮痛剤、日焼け止め剤、光防御剤、抗酸化剤、角質溶解剤、洗剤/界面活性剤、保湿剤、栄養素、ビタミン類、エネルギ強化剤、制汗剤、収斂剤、消臭剤、脱毛剤、安定剤(firming agents)、タコ治療剤(anti-callous agents)、ならびに、頭髪、爪および/または皮膚状態を改善するための化合物を意味する。
【0056】
一つの実施の形態において、化粧用活性剤は、ヒドロキシ酸、過酸化ベンゾイル、硫黄レゾルシノール、アスコルビン酸、D−パンテノール、ヒドロキノン、メトキシ桂皮酸オクチル(octyl methoxycinnimate)、二酸化チタン、サリチル酸オクチル、ホモサレート、アヴォベンゾン(avobenzone)、ポリフェノール類、カロチノイド類、フリーラジカル捕捉剤、セラミド類、多価不飽和脂肪酸、必須脂肪酸、酵素類、酵素阻害剤、鉱物類、エストロゲン等のホルモン類、ヒドロコルチゾン等のステロイド類、2-ジメチルアミノエタノール、塩化銅等の銅塩、補酵素Q10、リポ酸、プロリンおよびチロシン等のアミノ酸類、ビタミン類、ラクトビオン酸、アセチル補酵素A、ナイアシン、リボフラボン、チアミン、リボース、還元型ニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、還元型フラビンアデニンジヌクレオチド(FADH2)等の電子伝達体、アロエベラ、夏白菊および大豆等の他の植物抽出物、ならびにこれらの誘導体および混合物からなり、これらに限定されない群より選択される。化粧用活性剤は、本発明の組成物中に、通常、当該組成物に対して約0.001重量%〜約20重量%、例えば、約0.1重量%〜約5重量%等の約0.01重量%〜約10重量%の量で存在するはずである。
【0057】
ビタミン類の例には、ビタミンA、ビタミンB(ビタミンB3、ビタミンB5およびビタミンB12等)、ビタミンC、ビタミンKおよびビタミンE、およびこれらの誘導体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
一つの実施の形態において、組成物には、一以上の抗酸化剤も含まれる。抗酸化剤の例には、スルフヒドリル化合物およびこれらの誘導体(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウムおよびN−アセチルシステイン)、リポ酸およびジヒドロリポ酸、レスベラトロール、ラクトフェリン、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸アスコルビルおよびアスコルビン酸ポリペプチド)等、水溶性の抗酸化剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の組成物への使用に適した油溶性の抗酸化剤には、ブチル化ヒドロキシトルエン、トコフェロール類(例えば、酢酸トコフェロール)、トコトリエノール類およびユビキノンが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の組成物への使用に適した抗酸化剤を含む天然抽出物には、フラボノイド類およびイソフラボノイド類およびこれらの誘導体(例えば、ゲニステインおよびジアドゼイン(diadzein))、レスベラトロールおよびこの同類を含む抽出物が含まれるが、これらに限定されるものではない。このような天然抽出物の例には、ブドウの種、緑茶、松樹皮(pine bark)および蜂蝋が含まれる。抗酸化剤の他の例は、ICIハンドブックの第1612頁〜第1613頁に見つけられる。
【0059】
<鉱水>
本発明の組成物は、鉱水、例えば、エヴィアン(Evian:登録商標)ミネラルウォーター(フランス国のエヴィアン社)等、自然に鉱化された鉱水を用いて調製されてもよい。一つの実施の形態において、鉱水は、少なくとも約200mg/L(例えば、約300mg/L〜約1000mg/L)の鉱物を有している。一つの実施の形態において、鉱水は、少なくとも約10mg/Lのカルシウムおよび/または少なくとも約5mg/Lのマグネシウムを含有している。
【0060】
<他の材料>
本発明に有用な組成物には、種々の他の材料も存在してもよい。これらの他の材料には、湿潤剤、蛋白質およびポリペプチド類、保存剤およびアルカリ化剤が含まれる。これらの材料の例は、ICIハンドブックの第1650頁〜第1667頁に開示されている。
【0061】
また、本発明の組成物には、キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸)および保存剤(例えば、パラベン類)が含まれてもよい。適切な保存剤およびキレート剤の例は、ICIハンドブックの第1626頁および第1654頁〜第1655頁に挙げられている。さらに、本発明に有用な組成物には、染料および顔料等の着色剤、乳白剤(例えば、二酸化チタン)および香料等、従来の化粧用補助剤が含まれてもよい。
【0062】
本発明の上述のような組成を含む組成物および製品は、この技術分野における当業者に周知の方法論を用いて調製されてもよい。
【0063】
〔実施例〕
本発明は、以下の実施例によって実証されるはずであるが、本発明は、当該実施例に限定されるものではない。
【0064】
<実施例1:化合物D、GおよびFの調製>
図1〜図3は、それぞれ、化合物D、GおよびFの化学合成経路を示している。約80mg〜約120mgの各化合物を、約95重量%の純度で調製した。
【0065】
<実施例2:処方>
表1および表2は、本発明の典型的な処方を示している。表1中の成分による剤形は、次のような複数のステップによって調製される。
水相作製ステップ:
− 適量の水を注入し、75℃〜80℃まで加熱し始める。
− 室温で、グリセリン/キサンタンガム混合物を添加する。
− 60℃で、メチルパラベンおよびフェノキシエタノールを添加する。
油相作製ステップ:
− 各成分(ポリソルベート60からブチロスパーマム・パーキー(Butyrospermum Parkii))を順次添加し、完全に溶解されるまで待つ。
− 80℃まで加熱する。
乳化ステップ:
− 水相および油相の双方が適温に達した際に、水相に油相を添加することによって乳液を作製する。
− 20分間、混合する。
− 乳液の温度を下げる。
冷却ステップ:
− 40℃で、化合物Gを添加した後に、香料を添加する。
【表1】

【0066】
表2中の成分による剤形は、次のような複数のステップによって調製される。
水相作製ステップ:
− 水中にカルボマーを分散し、75℃〜80℃まで加熱し始める。
− 水酸化ナトリウム溶液を調製する。
− カルボマーを中和する。
− 60℃で、パラベンおよびフェノキシエタノールを添加する。
油相作製ステップ:
− 各成分(ステアリン酸グリセリルからイソノナン酸イソノニル)を順次添加し、完全に溶解されるまで待つ。
− 80℃まで加熱する。
乳化ステップ:
− 水相および油相の双方が適温に達した際に、水相に油相を添加することによって乳液を作製する。
− 20分間、混合する。
− 乳液の温度を下げる。
冷却ステップ:
− 40℃で、化合物Gを添加した後に、香料を添加する。
【表2】

【0067】
<実施例3:ヒトのケラチン生成細胞株に対する化合物Gの検査:塗布48時間後のHB-EGF(ヘパリン結合上皮成長因子)およびIL8(インターロイキン8)への影響>
表皮増殖因子としてのHB-EGF(ヘパリン結合上皮成長因子)を誘発する能力に対してヒト扁平上皮癌細胞で、化合物Gを検査した。表3には、結果が示されている。この検査アッセイでは、ヒト扁平上皮癌細胞を25平方センチメートルのフラスコ中に播種し、80%の細胞密集度に達するまで、培養した。検査用化合物を培地に添加し、細胞を48時間、再度培養した。培養終了時に、細胞をトリプシン処理し、ペレット化した。核酸(NA)を抽出し、かつ、内部標準としてアクチン遺伝子発現を用いて、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(QRT-PCR)で遺伝子発現を測定した。遺伝子発現の変化は、未処理の対照に対する百分率で表現されている。定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応により評価された、HB-EGF(ヘパリン結合上皮成長因子)遺伝子発現への化合物Gの影響では、化合物Gの投与濃度が10−6M(モル/L)および10−5M(モル/L)である場合に、それぞれ、対照と比較して、+187%および+370%であった。このような投与濃度での化合物Gは、IL8(インターロイキン8)遺伝子発現を有効に誘発しなかった。
【表3】

【0068】
<実施例4:化合物Gの塗布5日後の細胞増殖および生体外でのヒト皮膚の外植片の表皮肥厚への影響>
生体外で、形成外科後の腹部皮膚に対する生検から皮膚の外植片を調製した。水飽和雰囲気中の37℃の培地中に皮膚の外植片を5日間、維持した。プロピレングリコール(30%)とエタノール(70%)との混合液中に、化合物Gを10−3M(モル/L)の濃度に希釈し、外植片の表面に局所的に塗布した。48時間後に、外植片の半分を取出し、上皮の伝令リボ核酸(mRNA)を抽出し、HB-EGF(ヘパリン結合上皮成長因子)およびIL8(インターロイキン8)の遺伝子発現を定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(QRT-PCR)によって測定した。表4には、結果が示されている。また、外植片を固定し、その切片を調製し、検査用のスライドガラス上に配置した。また、蛋白質Ki67に関連した抗体で細胞を染色した後、mm当たりの染色された(positive)細胞数を計数することによって、細胞増殖を評価した(表4)。
【表4】

【0069】
塗布の5日後に、外植片の残りの半分を固定し、その切片を調製し、検査用のスライドガラス上に配置した。マッソントリクロム染色法(Trichrome Masson method)による染色後の検査によって、表皮肥厚を評価した。図4および表5には、結果が示されている。
【表5】

【0070】
〔実施の態様〕
本発明の好適な実施態様を以下に示す。
(1)化学式(I)で示される化合物であって、
【化11】

R1は、-COOR10、-C(=O)R11、-CH2OR12、-SO2-OH、-SO3-OH、-NR15R16、-C(=O)-NR15R16、および、-B(OR17)2からなる群より選択されるものであり、
Zは、単結合、酸素原子、-O-C1-4-アルカンジイル、-C1-4-アルカンジイル-O-C1-4-アルカンジイル、-O-C2-4-アルカンジイル-、および-C2-4-アルカンジイル-O-C2-4-アルカンジイルからなる群より選択されるものであり、
R2は、水素原子およびヒドロキシ基からなる群より選択されるものであり、
R3は、水素原子およびヒドロキシ基からなる群より選択されるものであり、
Xは、-CR13=CR13'-、および、-N=N-からなる群より選択されるものであり、
R4は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R5は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R6は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R7は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R8は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R9は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R10は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R11は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R12は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R13およびR13'は、それぞれ独立して、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R14は、C1-4アルキル基より選択されるものであり、
R15およびR16は、それぞれ独立して、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R17は、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より独立して選択される、化合物。
(2)実施態様(1)記載の化合物において、
R6およびR7は、共に、水素原子である、化合物。
(3)実施態様(1)または実施態様(2)記載の化合物において、
R5は、水素原子である、化合物。
(4)実施態様(1)記載の化合物において、
前記化合物は、化学式(IA)で示される化合物であって、
【化12】

R1は、-COOR10、-C(=O)R11、-CH2OR12からなる群より選択されるものであり、
Zは、単結合、酸素原子、-O-C1-4-アルカンジイル、-C1-4-アルカンジイル-O-C1-4-アルカンジイルからなる群より選択されるものであり、
R2は、水素原子およびヒドロキシ基からなる群より選択されるものであり、
R3は、水素原子およびヒドロキシ基からなる群より選択されるものであり、
Xは、-CR13=CR13'-、および、-N=N-からなる群より選択されるものであり、
R4は、水素原子、ヒドロキシ基、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R5は、水素原子およびハロゲン原子からなる群より選択されるものであり、
R6は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R7は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R8は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R9は、水素原子、ヒドロキシ基、および、OR14からなる群より選択されるものであり、
R10は、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R11は、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R12は、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R13およびR13'は、それぞれ独立して、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R14は、C1-4アルキル基であり、
R15およびR16は、それぞれ独立して、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択される、化合物。
(5)実施態様(1)〜実施態様(4)のうち、いずれか1項に記載の化合物において、
前記化合物は、化学式(IB)で示される化合物であって、
【化13】

R1は、-COOR10であり、
Zは、単結合、および、-O-C1-4-アルカンジイルからなる群より選択されるものであり、
R2は、水素原子であり、
R3は、ヒドロキシ基であり、
Xは、-CH=CH、および、-N=N-からなる群より選択されるものであり、
R4は、ヒドロキシ基、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R5は、水素原子であり、
R6は、水素原子であり、
R7は、水素原子であり、
R8は、水素原子、および、ハロゲン原子からなる群より選択されるものであり、
R9は、ヒドロキシ基であり、
R10は、水素原子であり、
R15およびR16は、それぞれ独立して、水素原子である、化合物。
(6)実施態様(1)記載の化合物において、
前記化合物は、化合物A、B、D、E、F、およびG、あるいは、これらの混合物からなる群より選択される、化合物。
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【0071】
(7)化粧用または医薬用の組成物において、
実施態様(1)〜実施態様(6)のうち、いずれか1項に記載された少なくとも一つの化合物を含む、組成物。
(8)実施態様(7)記載の組成物において、
前記組成物は、約0.001重量%〜約10重量%の量で、実施態様(1)に記載された化合物を含む、組成物。
(9)実施態様(7)または実施態様(8)に記載の組成物を調製する方法において、
前記化学式(I)で示される化合物は、前記組成物の他の成分と密に混合される、方法。
(10)実施態様(1)〜実施態様(6)のうち、いずれか1項に記載された、化合物において、
医薬品として使用される、化合物。
(11)実施態様(1)〜実施態様(6)のうち、いずれか1項に記載された化合物において、
皮膚症状の治療用である、化合物。
(12)実施態様(1)〜実施態様(6)のうち、いずれか1項に記載された化合物において、
ニキビの治療用である、化合物。
(13)実施態様(1)〜実施態様(6)のうち、いずれか1項に記載された化合物において、
皮膚萎縮症の治療用である、化合物。
(14)実施態様(1)〜実施態様(6)のうち、いずれか1項に記載された化合物において、
光による老化の治療用である、化合物。
(15)実施態様(1)〜実施態様(6)のうち、いずれか1項に記載された化合物において、
皺、細線、伸展線、またはセルライトの発症を減少させる必要がある皮膚の治療用である、化合物。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】化合物Dの化学合成経路を示している。
【図2】化合物Eの化学合成経路を示している。
【図3】化合物Fの化学合成経路を示している。
【図4】化合物Gで処理して5日後の皮膚の外植片を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式(I)で示される化合物であって、
【化1】


R1は、-COOR10、-C(=O)R11、-CH2OR12、-SO2-OH、-SO3-OH、-NR15R16、-C(=O)-NR15R16、および、-B(OR17)2からなる群より選択されるものであり、
Zは、単結合、酸素原子、-O-C1-4-アルカンジイル、-C1-4-アルカンジイル-O-C1-4-アルカンジイル、-O-C2-4-アルカンジイル-、および-C2-4-アルカンジイル-O-C2-4-アルカンジイルからなる群より選択されるものであり、
R2は、水素原子およびヒドロキシ基からなる群より選択されるものであり、
R3は、水素原子およびヒドロキシ基からなる群より選択されるものであり、
Xは、-CR13=CR13'-、および、-N=N-からなる群より選択されるものであり、
R4は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R5は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R6は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R7は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R8は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R9は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R10は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R11は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R12は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R13およびR13'は、それぞれ独立して、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R14は、C1-4アルキル基より選択されるものであり、
R15およびR16は、それぞれ独立して、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R17は、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より独立して選択される、化合物。
【請求項2】
請求項1記載の化合物において、
R6およびR7は、共に、水素原子である、化合物。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の化合物において、
R5は、水素原子である、化合物。
【請求項4】
請求項1記載の化合物において、
前記化合物は、化学式(IA)で示される化合物であって、
【化2】


R1は、-COOR10、-C(=O)R11、-CH2OR12からなる群より選択されるものであり、
Zは、単結合、酸素原子、-O-C1-4-アルカンジイル、-C1-4-アルカンジイル-O-C1-4-アルカンジイルからなる群より選択されるものであり、
R2は、水素原子およびヒドロキシ基からなる群より選択されるものであり、
R3は、水素原子およびヒドロキシ基からなる群より選択されるものであり、
Xは、-CR13=CR13'-、および、-N=N-からなる群より選択されるものであり、
R4は、水素原子、ヒドロキシ基、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R5は、水素原子およびハロゲン原子からなる群より選択されるものであり、
R6は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R7は、水素原子およびC1-8アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R8は、水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、OR14、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R9は、水素原子、ヒドロキシ基、および、OR14からなる群より選択されるものであり、
R10は、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R11は、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R12は、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R13およびR13'は、それぞれ独立して、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択されるものであり、
R14は、C1-4アルキル基であり、
R15およびR16は、それぞれ独立して、水素原子およびC1-4アルキル基からなる群より選択される、化合物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうち、いずれか1項に記載の化合物において、
前記化合物は、化学式(IB)で示される化合物であって、
【化3】


R1は、-COOR10であり、
Zは、単結合、および、-O-C1-4-アルカンジイルからなる群より選択されるものであり、
R2は、水素原子であり、
R3は、ヒドロキシ基であり、
Xは、-CH=CH、および、-N=N-からなる群より選択されるものであり、
R4は、ヒドロキシ基、および、-NR15R16からなる群より選択されるものであり、
R5は、水素原子であり、
R6は、水素原子であり、
R7は、水素原子であり、
R8は、水素原子、および、ハロゲン原子からなる群より選択されるものであり、
R9は、ヒドロキシ基であり、
R10は、水素原子であり、
R15およびR16は、それぞれ独立して、水素原子である、化合物。
【請求項6】
請求項1記載の化合物において、
前記化合物は、化合物A、B、D、E、F、およびG、あるいは、これらの混合物からなる群より選択される、化合物。
【化4】


【化5】


【化6】


【化7】


【化8】


【化9】

【請求項7】
化粧用または医薬用の組成物において、
請求項1〜請求項6のうち、いずれか1項に記載された少なくとも一つの化合物を含む、組成物。
【請求項8】
請求項7記載の組成物において、
前記組成物は、約0.001重量%〜約10重量%の量で、請求項1に記載された化合物を含む、組成物。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の組成物を調製する方法において、
前記化学式(I)で示される化合物は、前記組成物の他の成分と密に混合される、方法。
【請求項10】
請求項1〜請求項6のうち、いずれか1項に記載された、化合物において、
医薬品として使用される、化合物。
【請求項11】
請求項1〜請求項6のうち、いずれか1項に記載された化合物において、
皮膚症状の治療用である、化合物。
【請求項12】
請求項1〜請求項6のうち、いずれか1項に記載された化合物において、
ニキビの治療用である、化合物。
【請求項13】
請求項1〜請求項6のうち、いずれか1項に記載された化合物において、
皮膚萎縮症の治療用である、化合物。
【請求項14】
請求項1〜請求項6のうち、いずれか1項に記載された化合物において、
光による老化の治療用である、化合物。
【請求項15】
請求項1〜請求項6のうち、いずれか1項に記載された化合物において、
皺、細線、伸展線、またはセルライトの発症を減少させる必要がある皮膚の治療用である、化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−149645(P2009−149645A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−323494(P2008−323494)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(500252718)ジョンソン・アンド・ジョンソン・コンシューマー・フランス・エスアーエス (9)
【氏名又は名称原語表記】Johnson and Johnson Consumer France, SAS.
【住所又は居所原語表記】1 Rue Camille Desmoulins, 92787 Issy−les−Moulineaux, CEDEX 9, France
【Fターム(参考)】