説明

半導体ウェハーの処理方法

【課題】半導体ウェハー基板上に形成されたシリコン含有有機膜を除去するリワークプロセスにおいて、シリコン化合物残渣が発生し、この除去が困難であった。
【解決手段】半導体ウェハー基板上に形成されたシリコン含有有機膜を除去した表面を、アンモニア水溶液により洗浄処理を行う第1のステップと、希釈フッ酸水溶液により洗浄処理を行う第2のステップを少なくとも有する方法で処理する。アンモニア水溶液中のアンモニア濃度は、0.01重量パーセント以上、30重量パーセント以下であることが好ましい。希釈フッ酸水溶液中のフッ酸濃度は、0.01重量パーセント以上、2.0重量パーセント以下であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体製造プロセス中のリソグラフィ工程における半導体ウェハーの処理方法に関し、特にフォトレジスト膜(以下、レジストと簡略化して記載)又は有機膜のリワークプロセスにおける剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の高集積化はとどまるところを知らず、現在もその為の研究開発が活発に行われている。より高い集積度を達成する為には、半導体製造工程における回路パターニングの線幅をより微細化することが最も有効な方法である。この回路パターニングは、主としてリソグラフィ工程の微細化能力により決定されるところが大きい為、リソグラフィ解像度を高めることが半導体装置の高集積化に最も有効な方法である。リソグラフィ解像度を高める為の一つのアプローチとして、有機膜(レジストも含む)上にさらに別のレジストを積層した多層レジストプロセスが提案されている。また、多層レジストプロセスの一つで、特に二層膜より構築されるものはバイレイヤープロセスと呼ばれている。
【0003】
同一のレジストを用いて露光解像度を高めるには、露光対象となるレジストの膜厚を薄くすることが有効である。多層レジストプロセスは基本的には露光対象となるレジストを薄くすることにより高解像度を達成しようとするものである。
【0004】
しかし、このように露光対象となるレジストを薄くする場合にあっても、このレジストは、その次の工程において、その下層の有機膜を酸素プラズマ、またはフッ素系プラズマ等によりエッチングする際のマスクとして、あるいは、さらに下層の金属やシリコン酸化膜等の本来の被加工物のエッチングに対するマスクとして、十分な耐性を有しなければならない。すなわち、当該レジストはその下層膜のエッチングのマスクとなる為、下層膜を除去するのに必要なエッチング耐性が要求されるが、昨今、高解像用途に用いられる化学増幅型レジストはこのエッチング耐性が一般的に弱く、レジスト膜厚を薄くするとますます下層膜のエッチングに耐えられない状況となっている。
【0005】
そこで、レジストのエッチング耐性を高める為、例えば、ポリシロキサン系化学増幅レジストのようなシリコン含有フォトレジストが提案されている。ポリシロキサン系化学増幅レジストは、例えば、主鎖にシリコン原子を有し、アセタール構造、エステル構造、ブチルオキシカルボニル構造等の酸分解性基を含有するシロキサンポリマーを用いたレジスト組成物と光酸発生剤からなる化学増幅レジストに、主鎖にシリコン原子を有し分子内にシラノール構造を有するポリシロキサンをブレンドしたレジスト等が挙げられる。ポリシロキサン系レジストの他には、ポリシラン系レジスト、カルボシラン系レジスト、シリコン含有官能基を有するアクリルポリマー系レジストなどが挙げられる。シリコン含有フォトレジストはエッチング耐性が高いため、レジストを薄くしても、必要なエッチング耐性が得られる。
【0006】
一方、半導体製造プロセスには、被加工膜上に一旦塗布したレジストや有機膜を除去し、リソグラフィ工程を初めからやり直す、いわゆるリワークプロセスがある。このシリコン含有フォトレジストを用いた場合におけるレジストや有機膜を除去する剥離プロセス関連技術としては、特許文献1〜4に記載されている方法がある。
【特許文献1】特開2004−177669号公報
【特許文献2】特開2005−285989号公報
【特許文献3】特開2005−189660号公報
【特許文献4】特開2004−95899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、シリコン含有フォトレジストを用いた場合のリワークプロセスにおいて、露光や有機溶媒による溶解剥離、または酸素プラズマアッシング工程等を経た後に発生するシリコン化合物残渣を完全に除去することが困難であるという不具合があった。
【0008】
シリコン化合物残渣が発生するメカニズムは、明確には分かっていないが、次のように考えられる。すなわち、シリコン含有フォトレジスト中のシリコンが露光現像時や有機溶媒による溶解時、又は酸素アッシング時に、レジストの樹脂鎖から脱落し、これが元になってシリコンと有機物が結合した化合物、あるいはシリコンが酸化物化した物質等のシリコン化合物が発生し、これが剥離除去されずに残留し残渣となる為であると考えられている。リワークプロセスでは、その後に、レジストあるいは有機膜の形成工程から新たにやり直すのであるから、マスクとなるべきフォトレジストや有機膜、あるいは残渣等は完全に除去することが必要である。このシリコン化合物残渣は、シンナー剥離等の有機溶媒による溶解剥離や、酸素プラズマによるアッシングでは容易に除去できない為、リソグラフィ工程のやり直し、すなわちリワークが困難であるという課題を有している。
【0009】
また、露光対象にシリコンを含有しない通常のレジストを用い、その下層にシリコン含有有機膜を用いた多層レジストプロセスにおいても同様の不具合が発生する。
【0010】
図3および図4はこの不具合を説明する為の図である。
【0011】
図3は下層有機膜、およびシリコン含有フォトレジストを使用したバイレイヤープロセスでのリワークの為の剥離プロセスを順に示した断面図である。
【0012】
図3(a)は半導体ウェハー100上に、配線となる金属やシリコン酸化膜などの絶縁膜である被加工膜700を形成し、下層有機膜200、シリコン含有フォトレジスト300を塗布し、シリコン含有フォトレジスト300を露光、現像した後の状態を示している。この時点ではまだシリコン化合物残渣は発生していない。
【0013】
シリコン含有フォトレジスト300は、例えば、ポリシロキサン系化学増幅レジストや、他には、ポリシラン系レジスト、カルボシラン系レジスト、シリコン含有官能基を有するアクリルポリマー系レジストなどが挙げられる。ポリシロキサン系化学増幅レジストは、例えば、主鎖にシリコン原子を有し、アセタール構造、エステル構造、ブチルオキシカルボニル構造等の酸分解性基を含有するシロキサンポリマーを用いたレジスト組成物と光酸発生剤からなる化学増幅レジストに、主鎖にシリコン原子を有し分子内にシラノール構造を有するポリシロキサンをブレンドしたレジスト等が挙げられる。
【0014】
下層有機膜200は、例えば、ポリヒドロキシスチレン樹脂を主成分として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートあるいは乳酸エチル等の有機溶媒に架橋剤等を加えたものが挙げられる。
【0015】
次に図3(b)に示すように、シリコン含有フォトレジスト300を、シンナー処理にて除去する。シンナー処理は、有機溶媒を用いてフォトレジストを溶解除去する工程である。有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、γ−プロラクチン、乳酸エチル、イソプロパノール等、あるいはこれらの混合液が使用できる。この工程を経ると、図3(b)に示すように、シリコン化合物残渣400が下層有機膜200の表面上に発生する。
【0016】
次に、図3(c)に示すように、酸素プラズマアッシング処理工程により、下層有機膜200を除去する。酸素プラズマアッシング処理工程後においても、図3(b)の工程で発生したシリコン化合物残渣400は除去されず、被加工膜700上に残留している。
【0017】
その後、再び下層有機膜およびシリコン含有フォトレジストの塗布を行い、リワークのリソグラフィ工程に移る(図示せず)。
【0018】
図4は、下層有機膜、シリコン含有有機膜およびフォトレジストを使用した多層レジストプロセスでのリワークの為の剥離プロセスを順に示した断面図である。
【0019】
図4(a)は半導体ウェハー100上に、配線となる金属やシリコン酸化膜などの絶縁膜である被加工膜700を形成し、下層有機膜200、シリコン含有有機膜500、およびシリコンを含有していないフォトレジスト600を塗布し、フォトレジスト600を露光、現像した後の状態を示している。この時点ではまだシリコン化合物残渣は発生していない。
【0020】
シリコン含有有機膜500としては、ポリシラン系有機組成物、シロキサン系有機組成物、又はノボラック樹脂やアクリルポリマーからなる有機組成物に、ポリシロキサン又はポリシランをブレンドした有機組成物等が挙げられる。
【0021】
次に、図4(b)に示すように、シンナー処理によってフォトレジスト600を溶解除去する。このフォトレジスト600はシリコンを含有していない為、この工程を経てもシリコン化合物残渣は発生しない。
【0022】
次に、図4(c)に示すように、シリコン含有有機膜500をフルオロカーボンガスによるプラズマエッチングによりエッチング除去する。この工程を経ると、シリコン化合物残渣400が下層有機膜200の表面上に発生する。
【0023】
次に、図4(d)に示すように、酸素プラズマアッシング処理工程により、下層有機膜200を除去する。酸素プラズマアッシング処理工程後においても、図4(c)の工程で発生したシリコン化合物残渣400は除去されず、被加工膜700上に残留している。
【0024】
その後、再び下層有機膜およびシリコン含有有機膜、フォトレジストの塗布を行い、リワークのリソグラフィ工程に移る(図示せず)。
【0025】
以上説明したように、シリコン含有有機膜若しくはシリコン含有フォトレジストを用いた場合、一旦塗布したレジスト、シリコン含有有機膜、又は下層の有機膜を除去し、リソグラフィ工程をやり直すいわゆるリワークプロセスにおいて、露光や酸素プラズマアッシング等の工程を経た後に発生するシリコン化合物残渣を完全に除去することが困難であるという不具合があった。このシリコン化合物残渣は、シンナー剥離等の有機溶媒による溶解剥離や、酸素プラズマによるアッシングでは容易に除去できない為、リソグラフィ工程のやり直し、すなわちリワークが困難であるという課題を有している。すなわち、このシリコン化合物残渣が残留したままリワークプロセスを経ると、露光の障害となったり、プロセス中のゴミとなったり、エッチングの際に意図しないマスクとなって不具合を生じたりして、デバイスの信頼性を低下させたりすることになる。
【0026】
また、シリコン化合物残渣400は、シリコン酸化膜をエッチングする薬液や、アンモニア過水溶液(Ammonium Hydroxide/Hydrogen Peroxide/Water Mixture;組成NH4OH/H22/H2O;略称APM)や硫酸過水溶液(Sulfuric Acid/Hydrogen Peroxide/Water Mixture;組成H2SO4/H22;略称SPM)等による洗浄によって除去することは可能である。
【0027】
しかし、被加工膜700がシリコン酸化膜である場合は、リワークにおいてシリコン酸化膜のエッチング速度が速い薬液を利用することはできない。また被加工膜700が、タングステン、アルミ、チタンなどの金属膜である場合、SPM洗浄又はAPM洗浄を用いると、これら金属が溶解し半導体ウェハー基板を汚染する為、これら薬液は使用できない。
【0028】
すなわち、リワークに用いることができる実用的な有機膜又はレジストの除去手段は見当たらないのが現状である。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は、このような課題に対して、有効な解決手段を提供するものである。なお、ここでは、シリコン含有有機膜と言うときは、その下位概念であるシリコン含有フォトレジスト膜も含まれる。
【0030】
すなわち、本発明は、半導体ウェハー基板上に形成されたシリコン含有有機膜を除去した表面を、アンモニア水溶液により洗浄処理を行う第1のステップと、希釈フッ酸水溶液により洗浄処理を行う第2のステップを少なくとも有することを特徴とする半導体ウェハーの処理方法である。
【0031】
また、本発明は、半導体ウェハー基板上に、下層有機膜、シリコン含有有機膜、シリコンを含有しないフォトレジストを順次塗布するステップと、前記フォトレジストを露光し、現像するステップと、シンナー処理により前記フォトレジストを除去するステップと、フルオロカーボンガスを用いたプラズマエッチングにより前記シリコン含有有機膜を除去するステップと、酸素プラズマによるアッシング処理を施し、前記下層有機膜を除去するステップと、アンモニア水溶液により洗浄処理を行う第1のステップと、希釈フッ酸水溶液により洗浄処理を行う第2のステップとを少なくとも有することを特徴とする半導体ウェハーの処理方法である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、シリコン含有有機膜若しくはシリコン含有フォトレジストを用いたフォトリソグラフィー工程における工程のやり直し、いわゆるリワークプロセスにおいて、シリコン化合物残渣の除去を十分に行うことが可能となるという、これまでにない効果を有する。従って、本発明を半導体装置の製造に適用する場合、リソグラフィにおけるリワークプロセスを行っても、信頼性の高い半導体装置を製造することができるという効果を有する。また、下層にタングステン、アルミニウム、チタンなどの金属膜が存在していても、それら金属が溶解することが無いという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態について、図を用いて説明する。
【0034】
<第1の実施例>
図1は、本発明の第1の実施例を説明する為の、主要工程の断面図を工程順に示した図である。具体的には、下層有機膜、およびシリコン含有有機膜としてシリコン含有フォトレジストを使用したバイレイヤープロセスでのリワークの為の剥離プロセスに本発明を適用した工程を順に示した断面図である。
【0035】
図1(a)は、半導体ウェハー100上に、配線となるタングステン、アルミニウム、チタンなどの金属やシリコン酸化膜などの絶縁膜である被加工膜700を形成し、下層有機膜200、シリコン含有フォトレジスト300を塗布し、シリコン含有フォトレジスト300を露光、現像した後の状態を示している。この時点ではまだシリコン化合物残渣は発生していない。
【0036】
ここで、本実施例では、半導体ウェハー100にはシリコン単結晶ウェハーを用い、金属やシリコン酸化膜の成膜は公知の方法を用いた。例えば、化学気相堆積法(chemical vapor deposition;CVD法)により成膜することができる。また、下層有機膜200はスピン塗布により半導体ウェハー100表面に塗布され、200℃にて60秒間焼成し、膜厚300nmの下層有機膜200を得た。下層有機膜200は、例えば、ポリヒドロキシスチレン樹脂を主成分として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートあるいは乳酸エチル等の有機溶媒に架橋剤等を加えたものが使用できる。
【0037】
また、シリコン含有フォトレジスト300はスピン塗布により下層有機膜200表面に塗布され、85℃にて60秒間焼成し、100nmのシリコン含有フォトレジスト300を得た。その後、スキャン露光装置にて露光し、現像処理を行った。シリコン含有フォトレジスト300は、例えば、ポリシロキサン系化学増幅レジストや、他には、ポリシラン系レジスト、カルボシラン系レジスト、シリコン含有官能基を有するアクリルポリマー系レジスト、およびこれらの2以上の組合せからなるレジストなどが使用できる。ポリシロキサン系化学増幅レジストは、例えば、主鎖にシリコン原子を有し、アセタール構造、エステル構造、ブチルオキシカルボニル構造等の酸分解性基を含有するシロキサンポリマーを用いたレジスト組成物と光酸発生剤からなる化学増幅レジストに、主鎖にシリコン原子を有し分子内にシラノール構造を有するポリシロキサンをブレンドしたレジスト等が挙げられる。
【0038】
露光はステップ・アンド・スキャン方式の露光装置やステップ・アンド・リピート方式の露光装置を用いることができ、投影方式は縮小投影方式、あるいは等倍投影方式を用いることができる。または、電子線描画装置を用いることもできる。露光光源としては、g線(波長:436nm)、i線(波長:365nm)、KrFエキシマレーザー(波長:248nm)、ArFエキシマレーザー(波長:193nm)、X線、若しくは電子線ビーム(EB)等を用いることができる。
【0039】
次に図1(b)に示すように、シリコン含有フォトレジスト300を、シンナー処理にて除去する。シンナー処理は、有機溶媒を用いてフォトレジストを溶解除去する工程である。有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、γ−プロラクチン、乳酸エチル、イソプロパノール等、あるいはこれらの混合液が使用できる。この工程を経ると、図1(b)に示すように、シリコン化合物残渣400が下層有機膜200の表面上に発生する。
【0040】
次に、図1(c)に示すように、酸素プラズマアッシング処理工程により、下層有機膜200を除去する。酸素プラズマアッシングは、酸素ガスを用い、ガス圧力100mTorr、RFパワー150W、60秒にて処理した。酸素プラズマアッシング処理工程後においても、図1(b)の工程で発生したシリコン化合物残渣400は除去されず、被加工膜700上に残留している。この時点でシリコン化合物残渣400は、酸素プラズマによりある程度は酸化されているものと考えられる。
【0041】
その後、図1(d)に示すように、アンモニア(NH3)と水(H2O)を混合して形成したアンモニア水溶液による洗浄処理、および、フッ酸(HF)と水(H2O)を混合して形成した希釈フッ酸水溶液による洗浄処理を施す。このアンモニア水溶液による洗浄処理、および、希釈フッ酸水溶液による洗浄処理を行うと、シリコン化合物残渣400が除去される。
【0042】
ここで、アンモニア水溶液による洗浄処理は、枚葉式洗浄装置を用いて、アンモニア濃度が0.01重量パーセント以上、30重量パーセント以下のアンモニア水溶液を、回転する被加工膜700上に吐出させて行うことが好ましい。より好ましくは、アンモニア濃度が10重量パーセント以上、30重量パーセント以下のアンモニア水溶液により処理することができる。本実施例では、濃度10重量パーセント、温度25℃、流量毎分2リットル、処理時間30秒にて処理した。なお、このアンモニア水溶液に、適当なキレート剤、界面活性剤を混合しても良い。
【0043】
次に、希釈フッ酸水溶液による洗浄処理は、枚葉式洗浄装置を用いて、フッ酸濃度が0.01重量パーセント以上、2.0重量パーセント以下の希釈フッ酸水溶液を、回転する半導体ウェハー100上に吐出させて行うことが好ましい。より好ましくは、フッ酸濃度が0.1重量パーセント以上、1.0重量パーセント以下の希釈フッ酸水溶液により処理することができる。本実施例では、濃度0.5重量パーセント、温度25℃、流量毎分2リットル、処理時間30秒にて処理した。
【0044】
これら処理を行うことにより、図1(d)に示すように、シリコン化合物残渣400が除去され、被加工膜700の清浄な表面が得られる。
【0045】
その後、再び下層有機膜およびシリコン含有フォトレジストの塗布を行い、リワークのリソグラフィ工程に移る(図示せず)。
【0046】
このリワークプロセスでは、本発明を適用した結果、シリコン化合物残渣が存在していないので、シリコン化合物残渣が露光の障害になったり、その後のプロセスでのゴミになることがなく、シリコン化合物残渣に起因するプロセス上の不具合を回避できている。また、被加工膜700がタングステンやアルミニウム等の金属膜の場合にも、シリコン化合物残渣400の除去に際して、被加工膜700の溶解による汚染が発生しない。
【0047】
<第2の実施例>
図2は、本発明の第2の実施例を説明する為の、主要工程の断面図を工程順に示した図である。具体的には、下層有機膜、シリコン含有有機膜およびフォトレジストを使用した多層レジストプロセスでのリワークの為の剥離プロセスに本発明を適用した工程を順に示した断面図である。
【0048】
図2(a)は半導体ウェハー100上に、配線となるタングステン、アルミニウム、チタンなどの金属やシリコン酸化膜などの絶縁膜である被加工膜700を形成し、下層有機膜200、シリコン含有有機膜500、およびシリコンを含有していないフォトレジスト600を塗布し、フォトレジスト600を露光、現像した後の工程を示している。この時点ではまだシリコン化合物残渣は発生していない。
【0049】
ここで、本実施例では、半導体ウェハー100にはシリコン単結晶ウェハーを用い、金属やシリコン酸化膜の成膜は公知の方法を用いた。例えば、化学気相堆積法(CVD法)により成膜することができる。また、下層有機膜200はスピン塗布により半導体ウェハー100表面に塗布され、200℃にて60秒間焼成し、膜厚200nmの下層有機膜200を得た。下層有機膜200は、例えば、ポリヒドロキシスチレン樹脂を主成分として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートあるいは乳酸エチル等の有機溶媒に架橋剤等を加えたものが使用できる。
【0050】
また、シリコン含有有機膜500はスピン塗布により下層有機膜200表面に塗布され、85℃にてこの60秒間焼成し、200nmのシリコン含有有機膜500を得た。シリコン含有有機膜500としては、ポリシロキサン系有機膜、ポリシラン系有機膜、カルボシラン系有機膜、シリコン含有官能基を有するアクリルポリマー系有機膜、およびこれらの2以上の組合せからなる有機膜や、ノボラック樹脂やアクリルポリマーからなる有機組成物に、ポリシロキサン又はポリシランをブレンドした有機組成物等が使用できる。
【0051】
また、フォトレジスト600はスピン塗布によりシリコン含有有機膜500表面に塗布され、85℃にて60秒間焼成し、100nmのフォトレジスト600を得た。なお、フォトレジスト600としては、シリコンを含有していない通常のレジストを使用できる。その後、スキャン露光装置にて露光し、現像処理を行った。露光はステップ・アンド・スキャン方式の露光装置やステップ・アンド・リピート方式の露光装置を用いることができ、投影方式は縮小投影方式、あるいは等倍投影方式を用いることができる。または、電子線描画装置を用いることもできる。露光光源としては、g線(波長:436nm)、i線(波長:365nm)、KrFエキシマレーザー(波長:248nm)、ArFエキシマレーザー(波長:193nm)、X線、若しくは電子線ビーム(EB)等を用いることができる。
【0052】
次に、図2(b)に示すように、シンナー処理によってフォトレジスト600を溶解除去する。このフォトレジスト600はシリコンを含有していない為、この工程を経てもシリコン化合物残渣は発生しない。
【0053】
次に、図2(c)に示すように、シリコン含有有機膜500をフルオロカーボンガスによるプラズマエッチングによりエッチング除去する。
【0054】
フルオロカーボンガスによるプラズマエッチングは、テトラフルオロカーボン(CF4)をエッチングガスに用い、圧力80mTorr、RFパワー100W、希釈ガスとして、窒素ガスを混合し、ガス流量80sccmで行った。他に使用できるエッチングガスとしては、パーフルオロカーボンやハイドロフルオロカーボンが挙げられ、例えば、テトラフルオロカーボンの他に、トリフルオロメタン(CHF3)、ヘキサフルオロエタン(C26)、テトラフルオロエタン(C224)等が挙げられる。
【0055】
この工程を経ると、シリコン化合物残渣400が下層有機膜200の表面上に発生する。
【0056】
次に、図2(d)に示すように、酸素プラズマアッシング処理工程により、下層有機膜200を除去する。酸素プラズマアッシングは、酸素ガスを用い、ガス圧力100mTorr、RFパワー150W、60秒にて処理した。酸素プラズマアッシング処理工程後においても、図2(c)の工程で発生したシリコン化合物残渣400は除去されず、被加工膜700上に残留している。この時点でシリコン化合物残渣400は、酸素プラズマによりある程度は酸化されているものと考えられる。
【0057】
その後、図2(e)に示すように、アンモニア(NH3)と水(H2O)を混合して形成したアンモニア水溶液による洗浄処理、および、フッ酸(HF)と水(H2O)を混合して形成した希釈フッ酸水溶液による洗浄処理を施す。このアンモニア水溶液による洗浄処理、および、希釈フッ酸水溶液による洗浄処理を行うと、シリコン化合物残渣400が除去される。
【0058】
ここで、アンモニア水溶液による洗浄処理は、枚葉式洗浄装置を用いて、アンモニア濃度が0.01重量パーセント以上、30重量パーセント以下のアンモニア水溶液を、回転する被加工膜700上に吐出させて行うことが好ましい。より好ましくは、アンモニア濃度が10重量パーセント以上、30重量パーセント以下のアンモニア水溶液により処理することができる。本実施例では、濃度10重量パーセント、温度25℃、流量毎分2リットル、処理時間30秒にて処理した。なお、このアンモニア水溶液に、適当なキレート剤、界面活性剤を混合しても良い。
【0059】
次に、希釈フッ酸水溶液による洗浄処理は、枚葉式洗浄装置を用いて、フッ酸濃度が0.01重量パーセント以上、2.0重量パーセント以下の希釈フッ酸水溶液を、回転する半導体ウェハー100上に吐出させて行うことが好ましい。より好ましくは、フッ酸濃度が0.1重量パーセント以上、1.0重量パーセント以下の希釈フッ酸水溶液により処理することができる。本実施例では、濃度0.5重量パーセント、温度25℃、流量毎分2リットル、処理時間30秒にて処理した。
【0060】
これら処理を行うことにより、図2(e)に示すように、シリコン化合物残渣400が除去され、被加工膜700の清浄な表面が得られる。
【0061】
その後、再び下層有機膜およびシリコン含有有機膜、フォトレジストの塗布を行い、リワークのリソグラフィ工程に移る(図示せず)。
【0062】
このリワークプロセスでは、本発明を適用した結果、シリコン化合物残渣が存在していないので、シリコン化合物残渣が露光の障害になったり、その後のプロセスでのゴミになることがなく、シリコン化合物残渣に起因するプロセス上の不具合を回避できている。また、被加工膜700がタングステンやアルミニウム等の金属膜の場合にも、シリコン化合物残渣400の除去に際して、被加工膜700の溶解による汚染が発生しない。
【0063】
表1には、本発明の効果を示すための実験結果を示す。
【0064】
実験は、本発明を適用した場合(処理後)と、適用しなかった場合(処理前)の比較結果を示した実験1と、さらに他の薬液との比較の為に希釈フッ酸処理のみを行った実験2の結果からなる。
【0065】
実験1は、上述の本発明の実施例1に説明したような膜構成として実験を行った。すなわち、半導体ウェハー上に、被加工膜を想定したシリコン酸化膜を形成し、その上に、下層有機膜、シリコン含有フォトレジストを塗布し、シンナー処理、および、酸素プラズマアッシング処理を施した後に、アンモニア水溶液による洗浄処理、および、希釈フッ酸水溶液による洗浄処理を施した。処理条件は、アンモニア水溶液による洗浄処理は、枚葉式洗浄装置を用いて、濃度10重量パーセント、温度25℃、流量毎分2リットル、処理時間30秒で処理し、希釈フッ酸水溶液による洗浄処理は、枚葉式洗浄装置を用いて、濃度0.5重量パーセント、温度25℃、流量毎分2リットル、処理時間30秒にて処理した。
【0066】
他方、実験2も、上述の本発明の実施例1に説明したような膜構成として実験を行った。すなわち、半導体ウェハー上に、被加工膜を想定したシリコン酸化膜を形成し、その上に、下層有機膜、シリコン含有フォトレジストを塗布し、シンナー処理、および、酸素プラズマアッシング処理を施した後に、希釈フッ酸水溶液による洗浄処理のみを施した。この希釈フッ酸水溶液による洗浄処理は、枚葉式洗浄装置を用いて、濃度0.5重量パーセント、温度25℃、流量毎分2リットル、処理時間30秒にて処理した。
【0067】
実験の評価は、かかる処理の前と処理の後の半導体ウェハー1枚あたりのシリコン化合物残渣の個数をパーティクルカウンターにてカウントすることにより行った。半導体ウェハーは8インチシリコン単結晶ウェハーを用いた。カウントするパーティクルの大きさは、0.1〜1.0μmとした。実験1、実験2のおのおの3枚の半導体ウェハーで実験し、シリコン化合物残渣の個数としてパーティクル数をカウントし、それぞれのシリコン化合物残渣の個数の減少率を計算した。減少率は、
(処理前残渣数−処理後残渣数)/処理前残渣数×100(%)
により計算した。
【0068】
その結果、本発明を適用した場合(処理後)と適用しない場合(処理前)の比較実験である実験1の結果は、どの半導体ウェハーも98%を超える減少率であった。他方、比較の為の実験である実験2では、およそ78%から88%程度の減少率であった。以上から、本発明を適用すると、処理をしない場合に比較して、98%以上のシリコン化合物残渣を除去することが可能となることがわかった。また、希釈フッ酸水溶液による洗浄処理のみの処理を行った実験2に比較しても、シリコン化合物残渣の減少率が約10%から20%以上優れていることがわかった。
【0069】
【表1】

【0070】
以上説明したように、本発明を用いると、シリコン含有有機膜若しくはシリコン含有フォトレジストを用いたフォトリソグラフィー工程における工程のやり直し、いわゆるリワークプロセスにおいて、シリコン化合物残渣の除去を十分に行うことが可能となるという、これまでにない効果を有する。従って、本発明を半導体装置の製造に適用する場合、リソグラフィにおけるリワークを行っても、信頼性の高い半導体装置を製造することができるという効果を有する。また、APM洗浄処理やSPM洗浄処理と異なり、本発明では下層に配線となるタングステン、アルミ、チタンなどの金属膜が存在していても、それら金属が溶解することが無いという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施例を示す断面図である。
【図3】背景技術の一例を示す断面図である。
【図4】背景技術の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0072】
100 半導体ウェハー
200 下層有機膜
300 シリコン含有フォトレジスト
400 シリコン化合物残渣
500 シリコン含有有機膜
600 フォトレジスト
700 被加工膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェハー基板上に形成されたシリコン含有有機膜を除去した表面を、アンモニア水溶液により洗浄処理を行う第1のステップと、希釈フッ酸水溶液により洗浄処理を行う第2のステップを少なくとも有することを特徴とする半導体ウェハーの処理方法。
【請求項2】
前記第1のステップの前に、シンナー処理ステップと、酸素プラズマによるアッシング処理ステップとを有することを特徴とする請求項1に記載の半導体ウェハーの処理方法。
【請求項3】
半導体ウェハー基板上に、下層有機膜、シリコン含有有機膜、シリコンを含有しないフォトレジストを順次塗布するステップと、
前記フォトレジストを露光し、現像するステップと、
シンナー処理により前記フォトレジストを除去するステップと、
フルオロカーボンガスを用いたプラズマエッチングにより前記シリコン含有有機膜を除去するステップと、
酸素プラズマによるアッシング処理を施し、前記下層有機膜を除去するステップと、
アンモニア水溶液により洗浄処理を行う第1のステップと、
希釈フッ酸水溶液により洗浄処理を行う第2のステップと
を少なくとも有することを特徴とする半導体ウェハーの処理方法。
【請求項4】
前記シリコン含有有機膜は、ポリシロキサン系有機膜、ポリシラン系有機膜、カルボシラン系有機膜、シリコン含有官能基を有するアクリルポリマー系有機膜、およびこれらの2以上の組合せからなる有機膜のいずれかであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の半導体ウェハーの処理方法。
【請求項5】
前記シリコン含有有機膜は、シリコンを含有するフォトレジスト膜であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の半導体ウェハーの処理方法。
【請求項6】
前記アンモニア水溶液中のアンモニア濃度は、0.01重量パーセント以上、30重量パーセント以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の半導体ウェハーの処理方法。
【請求項7】
前記アンモニア水溶液中のアンモニア濃度は、10重量パーセント以上、30重量パーセント以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の半導体ウェハーの処理方法。
【請求項8】
前記希釈フッ酸水溶液中のフッ酸濃度は、0.01重量パーセント以上、2.0重量パーセント以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の半導体ウェハーの処理方法。
【請求項9】
前記希釈フッ酸水溶液中のフッ酸濃度は、0.1重量パーセント以上、1.0重量パーセント以下であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の半導体ウェハーの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−177532(P2008−177532A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−280259(P2007−280259)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】