説明

半導体ウェーハ用治具

【課題】半導体ウェーハのバックグラインドされた裏面に回路が形成される場合に、裏面の回路の汚染や損傷を抑制し、リングスペーサを省略して薄い半導体ウェーハの破損を防止できる半導体ウェーハ用治具を提供する。
【解決手段】バックグラインドされた薄い半導体ウェーハWを搭載する積層可能な治具であって、中空に形成され、半導体ウェーハWよりも拡径の治具本体1と、治具本体1に形成されて半導体ウェーハWを支持する複数の弾性支持片10とを備える。そして、各弾性支持片10を、治具本体1の内周縁部から上方内側に傾斜しながら伸長する傾斜起立部11と、傾斜起立部11の上部に屈曲形成されて半導体ウェーハWの周縁部を水平に支持する保持部13とから形成する。半導体ウェーハWの表裏面に何も接触させないので、例えバックグラインドされた裏面に回路が形成される場合でも、汚染を嫌う裏面に合紙等が接触することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックグラインドされた薄い半導体ウェーハを搭載する半導体ウェーハ用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体ウェーハは、裏面のバックグラインドにより薄く加工され、表面の回路パターン面から保護テープが剥離された後、基板収納容器に収納して保管、搬送、輸送されるが、この収納の際、合紙を介して複数枚が積層されている(特許文献1参照)。
ところで、半導体ウェーハは、表面に回路やバンプが形成されるが、近年、メモリ容量の拡大や生産性向上の観点からバックグラインドされた裏面にも回路が形成されてきている。
【特許文献1】特公表2005−508805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来における半導体ウェーハは、以上のように基板収納容器への収納の際、裏面に合紙が重ねて積層されるので、バックグラインドされた裏面に回路が形成される場合には、汚染を嫌う裏面に合紙が接触することとなり、結果として回路の汚染や損傷を招くという問題がある。
この問題を解消する手段としては、半導体ウェーハの収納の際、半導体ウェーハの周縁部に接触する硬質のリングスペーサを介して複数枚の半導体ウェーハを積層収納する方法が考えられる。
【0004】
しかしながら、係る方法を採用する場合には、半導体ウェーハの回路の汚染や損傷を防ぐことができるものの、リングスペーサが緩衝機能や弾性に欠けるので、積層に伴い薄い半導体ウェーハが割れてしまうという問題が新たに生じることとなる。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたもので、半導体ウェーハのバックグラインドされた裏面に回路が形成される場合に、裏面の回路の汚染や損傷を抑制し、リングスペーサを省略して薄い半導体ウェーハの破損を防ぐことのできる半導体ウェーハ用治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては上記課題を解決するため、バックグラインドされた薄い半導体ウェーハを搭載する積層可能なものであって、
中空に形成され、半導体ウェーハよりも幅広の治具本体と、この治具本体に形成されて半導体ウェーハを支持する複数の弾性支持片とを備え、
各弾性支持片は、治具本体から上方内側に傾斜しながら伸びる傾斜起立部と、この傾斜起立部の上部に形成されて半導体ウェーハの周縁部を水平に支持する保持部とを含んでなることを特徴としている。
【0007】
なお、治具本体を、略リング形に形成され、半導体ウェーハよりも拡径の金属フレームと、略リング形に形成されて金属フレームに嵌め合わされる樹脂フレームとから形成し、金属フレームの内周縁部から内方向に樹脂フレームの内周縁部を露出させ、この樹脂フレームの内周縁部に複数の弾性支持片を所定の間隔をおいて配列することができる。
また、弾性支持片の保持部に、半導体ウェーハの周縁部に干渉して位置決めする干渉部を形成することができる。
【0008】
ここで、特許請求の範囲における半導体ウェーハは、φ200mm、300mm、450mm等の種類や可撓性の有無を特に問うものではない。この半導体ウェーハは、表面に回路の他、バンプが形成されるタイプでも良いし、バックグラインドされた裏面に回路が形成されるタイプでも良い。治具本体は、全部又は一部が金属製でも良いし、樹脂製でも良い。この治具本体の樹脂フレームには、強度保持リブを形成することができる。また、弾性支持片の傾斜起立部には、他の半導体ウェーハ用治具の干渉部に貫通される切り欠きを形成することができる。
【0009】
本発明によれば、半導体ウェーハ用治具に半導体ウェーハを搭載する場合には、弾性を有する複数の弾性支持片の保持部に半導体ウェーハの周縁部を支持させれば、半導体ウェーハ用治具に薄い半導体ウェーハを搭載することができる。
この際、複数の弾性支持片と半導体ウェーハの周縁部とが接触し、半導体ウェーハの表面や裏面の大部分に弾性支持片や合紙等が接触することがないので、汚染や損傷を招くおそれが少ない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例え半導体ウェーハのバックグラインドされた裏面に回路が形成される場合にも、裏面の回路の汚染や損傷を抑制することができるという効果がある。また、リングスペーサを省略し、薄い半導体ウェーハの破損を防ぐことができるという効果がある。
【0011】
また、治具本体を、略リング形に形成された半導体ウェーハよりも拡径の金属フレームと、略リング形に形成されて金属フレームに嵌め合わされる樹脂フレームとから形成すれば、適度な重さと剛性の治具本体を得ることができる。
また、弾性支持片の保持部に、半導体ウェーハの周縁部に干渉して位置決めする干渉部を形成すれば、簡易な構成で半導体ウェーハの支持時の位置ずれや脱落を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明に係る半導体ウェーハ用治具の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における半導体ウェーハ用治具は、図1ないし図3に示すように、バックグラインドされた薄い半導体ウェーハWを搭載する積層可能な治具であって、中空に形成され、半導体ウェーハWよりも拡径の治具本体1と、この治具本体1の周縁部に一体形成されて半導体ウェーハWの周縁部を支持する複数の弾性支持片10とを備え、コインスタック型の基板収納容器に収納して保管、搬送、輸送される。
【0013】
半導体ウェーハWは、例えばφ200mmのシリコンウェーハからなり、表面に回路やバンプが形成され、裏面にバックグラインド処理が施されて屈曲可能な160μm以下の薄さにされた後、裏面に貫通電極等の回路が形成される。このような半導体ウェーハWは、バックグラインドされた裏面を上方に向けた状態で複数の弾性支持片10に浮いた状態で支持される。
【0014】
治具本体1は、図1や図2に示すように、リング形に形成されて半導体ウェーハWよりも拡径の金属フレーム2と、リング形に形成されて金属フレーム2に下方から嵌合される軽量の樹脂フレーム4とを備え、金属フレーム2の内周縁部から内方向に樹脂フレーム4の内周縁部が露出しており、この樹脂フレーム4の内周縁部周方向に、複数の強度保持リブ5と共に複数(本実施形態では4本)の弾性支持片10が所定の間隔をおいて配列形成される。
【0015】
金属フレーム2は、例えばアルミニウムやステンレス等を使用して平板に形成され、複数の長孔と取付孔3とが所定の間隔をおいて穿孔される。また、樹脂フレーム4は、例えばポリカーボネートやポリプロピレン等を含む成形材料を用いて円弧形に形成された複数枚の平板がリング形に組み合わされることにより形成される。この樹脂フレーム4の表面には複数の凸部6が所定の間隔をおいて突出形成され、この複数の凸部6が金属フレーム2の取付孔3に下方から密嵌して固定される。
【0016】
各弾性支持片10は、図1や図2に示すように、治具本体1、具体的には樹脂フレーム4の内周縁部から上方内側に傾斜しながら伸長するバネ性の傾斜起立部11と、この傾斜起立部11の上部に水平に屈曲形成されて半導体ウェーハWの表面周縁部を水平に支持する平坦な保持部13とを備えて形成される。
【0017】
弾性支持片10は、傾斜起立部11の上端側方に矩形の切り欠き12が部分的に切り欠かれ、保持部13の表面外側には、半導体ウェーハWの周縁部に干渉して位置決めしたり、脱落を防止する干渉部14が傾斜して起立形成される。この干渉部14は、複数の半導体ウェーハ用治具が積層される際、上方の半導体ウェーハ用治具の切り欠き12に遊挿され、複数の半導体ウェーハ用治具の積層の障害とならないよう機能する。
【0018】
コインスタック型の基板収納容器は、有底円筒部内に複数の半導体ウェーハ用治具を収納可能な容器本体と、この容器本体を着脱自在に上方から被覆する蓋体とを備え、この蓋体の内部には、容器本体の有底円筒部に上方から密嵌する円筒部が一体形成される。
【0019】
上記構成において、半導体ウェーハ用治具に半導体ウェーハWを搭載する場合には図1に示すように、半導体ウェーハWの表面を下方に向けた状態で複数の弾性支持片10に支持させれば良い。具体的には、各弾性支持片10の平坦な保持部13に半導体ウェーハWの周縁部を水平に保持させ、かつ干渉部14に半導体ウェーハWの周縁部を位置決め接触させれば、半導体ウェーハ用治具にバックグラインドされた薄い半導体ウェーハWを浮いた状態で搭載し、保管することができる。
【0020】
また、複数の半導体ウェーハ用治具を積層して図示しないコインスタック型の基板収納容器に収納する場合には図3に示すように、半導体ウェーハWを搭載した半導体ウェーハ用治具を上下に重ねて上方の弾性支持片10の切り欠き12に下方の弾性支持片10の干渉部14を遊挿し、上下の弾性支持片10の干渉部14を相互に対向させれば、積層した複数の半導体ウェーハ用治具を基板収納容器に収納して保管、搬送、輸送することができる。
【0021】
上記構成によれば、複数の弾性支持片10に半導体ウェーハWの周縁部を位置決め支持させ、半導体ウェーハWの表裏面に何も接触させないので、例えバックグラインドされた裏面に回路が形成される場合でも、汚染を嫌う裏面に合紙が接触することがない。したがって、回路の汚染や損傷を抑制防止することができる。
【0022】
また、各弾性支持片10に弾性やバネ性を付与して応力を緩和可能とするので、リングスペーサを省略することができる他、積層に伴い薄く脆い半導体ウェーハWが割れてしまうことがない。さらに、治具本体1や樹脂フレーム4が中空のリング形なので、例え半導体ウェーハWが弓なりに撓んでも、治具本体1に半導体ウェーハWが接触して汚染することがない。
【0023】
なお、上記実施形態では治具本体1を金属フレーム2と樹脂フレーム4とから形成したが、金属フレーム2を省略し、複数の樹脂フレーム4により形成しても良い。また、樹脂フレーム4の内周縁部に複数の弾性支持片10を所定の間隔で配列形成したが、半導体ウェーハWの周縁部を補助的に支持する支持補助片20を必要数形成しても良く、この支持補助片20を弾性支持片10に隣接させても良い。この支持補助片20については、治具本体1、具体的には樹脂フレーム4の周縁部から上方内側に傾斜しながら伸長するバネ性の傾斜起立部11と、この傾斜起立部11の上部に屈曲形成されて半導体ウェーハWの表面周縁部を水平に支持可能な保持部13とから形成することができる。
【0024】
また、複数の弾性支持片10は、3本、5本、6本等としても良い。また、弾性支持片10の傾斜起立部11を、治具本体1の外周縁部から上方内側に傾斜しながら伸長させても良いし、治具本体1の表面から上方内側に傾斜しながら伸長させることもできる。さらに、傾斜起立部11の上部を断面略V字形に屈曲形成して干渉部14とし、下方に折り返した自由端部を水平内方向に屈曲して保持部13とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る半導体ウェーハ用治具の実施形態における半導体ウェーハの搭載状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図2】本発明に係る半導体ウェーハ用治具の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図3】本発明に係る半導体ウェーハ用治具の実施形態における積層状態を模式的に示す斜視説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 治具本体
2 金属フレーム
4 樹脂フレーム
10 弾性支持片
11 傾斜起立部
12 切り欠き
13 保持部
14 干渉部
W 半導体ウェーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックグラインドされた薄い半導体ウェーハを搭載する積層可能な半導体ウェーハ用治具であって、
中空に形成され、半導体ウェーハよりも幅広の治具本体と、この治具本体に形成されて半導体ウェーハを支持する複数の弾性支持片とを備え、
各弾性支持片は、治具本体から上方内側に傾斜しながら伸びる傾斜起立部と、この傾斜起立部の上部に形成されて半導体ウェーハの周縁部を水平に支持する保持部とを含んでなることを特徴とする半導体ウェーハ用治具。
【請求項2】
治具本体を、略リング形に形成され、半導体ウェーハよりも拡径の金属フレームと、略リング形に形成されて金属フレームに嵌め合わされる樹脂フレームとから形成し、金属フレームの内周縁部から内方向に樹脂フレームの内周縁部を露出させ、この樹脂フレームの内周縁部に複数の弾性支持片を所定の間隔をおいて配列した請求項1記載の半導体ウェーハ用治具。
【請求項3】
弾性支持片の保持部に、半導体ウェーハの周縁部に干渉して位置決めする干渉部を形成した請求項1又は2記載の半導体ウェーハ用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−62453(P2010−62453A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228579(P2008−228579)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】