説明

半導体ウエハの熱処理装置

【課題】 半導体ウエハの熱処理を一枚ずつ順次開始することができる提供する。
【解決手段】 半導体ウエハの熱処理装置は、管状の加熱炉と、その加熱炉内を伸びる複数の搬送シャフトと、複数の搬送シャフトをそれぞれ回転させるアクチュエータを備えている。管状の加熱炉は、半導体ウエハを搬入可能な搬入口から、半導体ウエハを搬出可能な搬出口まで伸びている。複数の搬送シャフトは、搬入口から加熱炉内を通って搬出口まで伸びているとともに、半導体ウエハの外周縁に当接可能な位置関係で配設されている。各々の搬送シャフトには、軸方向に沿って螺旋状に伸びるとともに、半導体ウエハの外周縁を受入可能な螺旋溝が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハを熱処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、半導体ウエハを熱処理する技術が開示されている。この技術では、多数の半導体ウエハを治具に載置し、当該治具を加熱炉内に収容することによって、多数の半導体ウエハを一括して熱処理している。
【0003】
【特許文献1】特開2003−100647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体ウエハを熱処理する場合、必要とされる処理時間が長いこともあって、特許文献1に開示された技術のように、複数の半導体ウエハを一括して熱処理することが多い。しかしながら、複数の半導体ウエハを一括して熱処理する手法では、前工程から既定数の半導体ウエハが供給されるまで、仕掛品の半導体ウエハを無用に滞留させてしまう。また、熱処理後においても、熱処理した多数の半導体ウエハを一括して後工程に供給することになり、やはり仕掛品の半導体ウエハを無用に滞留させてしまう。前工程から供給される半導体ウエハの熱処理を、順次開始することができる技術が必要とされている。
本発明は、上記の問題を解決する。本発明は、半導体ウエハの熱処理を順次開始することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、半導体ウエハを熱処理するための熱処理装置に具現化される。この熱処理装置は、管状の加熱炉と、その加熱炉内を伸びる複数の搬送シャフトと、複数の搬送シャフトをそれぞれ回転させるアクチュエータを備えている。管状の加熱炉は、半導体ウエハを搬入可能な搬入口から、半導体ウエハを搬出可能な搬出口まで伸びている。複数の搬送シャフトは、搬入口から加熱炉内を通って搬出口まで伸びているとともに、半導体ウエハの外周縁に当接可能な位置関係で配設されている。各々の搬送シャフトには、軸方向に沿って螺旋状に伸びるとともに、半導体ウエハの外周縁を受入可能な螺旋溝が形成されている。
【0006】
この熱処理装置では、加熱炉内を伸びる搬送シャフトに螺旋溝が形成されており、処理対象である半導体ウエハが、複数の搬送シャフトに形成された螺旋溝によって支持される。螺旋溝によって支持された半導体ウエハは、搬送シャフトが回転することによって、搬入口から加熱炉内を通って搬出口まで搬出される。回転する搬送シャフトには、半導体ウエハを順次載置することが可能であり、搬送シャフトに載置された半導体ウエハは、加熱炉内で順次熱処理されていく。前工程から供給される半導体ウエハの熱処理を、一枚ずつ順次開始することができるので、多数の半導体ウエハを一括して熱処理する従来の技術と比較して、仕掛品の半導体ウエハを工程内で無用に滞留させることがない。
【0007】
前記した搬送シャフトでは、螺旋溝のリードが、搬送シャフトの軸方向に沿って変化することが好ましい。この場合、螺旋溝のリードが、搬送シャフトの軸方向に沿って段階的に変化することも好ましいし、搬送シャフトの軸方向に沿って連続的に変化することも好ましい。
ここで、螺旋溝のリードとは、螺旋溝が搬送シャフトの回りを1周したときに、螺旋溝が搬送シャフトの軸方向に移動する移動量であり、螺旋溝が一条である場合は、螺旋溝のピッチ(間隔)と等しくなる。即ち、螺旋溝のリードは、搬送シャフトが一回転したときに半導体ウエハが搬送される距離に相当し、例えば螺旋溝のリードが短いほど、搬送シャフトの回転速度に対して、半導体ウエハの搬送速度は遅くなる。従って、螺旋溝のリードを搬送シャフトの軸方向に沿って適宜変化させると、搬送シャフトの回転速度を一定に維持したままでも、加熱炉内の位置毎に半導体ウエハの搬送速度を適宜変化させることができる。
【0008】
上記のように螺旋溝のリードを変化させる場合、加熱炉の中間区間に位置する範囲では、螺旋溝のリードを短くすることが好ましい。
この構成によると、比較的に高温に維持された加熱炉の中間区間に、半導体ウエハを長く滞在させることができ、半導体ウエハに十分な熱処理を行うことが可能となる。換言すれば、比較的に長い処理時間が必要とされる熱処理を、比較的に短い加熱炉によって実施することが可能となる。
【0009】
前記した複数の搬送シャフトには、同一方向に旋回する螺旋溝がそれぞれ形成されており、前記したアクチュエータは、複数の搬送シャフトを同一方向にそれぞれ回転させることが好ましい。
この構成によると、搬送シャフトに支持された半導体ウエハは、搬送シャフトとの間で生じる摩擦力によって、回転しながら搬送されることになる。半導体ウエハが回転しながら搬送されることで、搬送方向に垂直な断面において加熱炉内に温度差が生じている場合でも、半導体ウエハの全面に均一な熱履歴を与えることが可能となる。換言すれば、搬送方向に垂直な断面において加熱炉内の温度を均一にする必要がなくなり、加熱炉内を加熱するためのヒータの構成やその制御を、簡単なものとすることが可能となる。
【0010】
上記した構成によって半導体ウエハを回転させながら搬送する場合、螺旋溝の内面の少なくとも一部には、凹凸を形成しておくことが好ましい。
螺旋溝の内面に凹凸を形成しておくと、半導体ウエハと搬送シャフトとの間で生じる摩擦力を大きくすることができ、半導体ウエハをより確実に回転させることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、前工程から供給される半導体ウエハの熱処理を、一枚ずつ順次開始することができるので、仕掛品の半導体ウエハを工程内で無用に滞留させることを避けることができる。また、複数の半導体ウエハの熱処理を均一に行うことが可能となり、半導体ウエハから製造する半導体装置の製造品質を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための好適な特徴を列記する。
(形態1) 搬送シャフトは、例えば、石英、炭化珪素、アルミナ等で形成することができる。ただし、これらの材料に限られず、搬送シャフトを形成する材料には、比較的に高い強度を有するとともに、熱処理する半導体ウエハよりも耐熱性の高い他の材料を採用することができる。
(形態2) 複数の搬送シャフトは、半導体ウエハを、搬送方向に対して略垂直に支持することが好ましい。
(形態3) 加熱炉には、加熱炉を周方向から囲繞するヒータを、加熱炉の軸方向に沿って複数設けることが好ましい。この場合、リング形状を有するヒータを、加熱炉の軸方向に沿って複数設けてもよいし、管状の加熱炉を周方向から囲繞するように配置した複数のパネルヒータを、加熱炉の軸方向に沿って複数設けることが好ましい。
(形態4) 加熱炉は、搬入口から搬出口まで略水平に伸びていることが好ましい。この構成によると、加熱炉内で搬入口又は搬出口に向かう気流の形成が防止され、搬入口や搬出口から加熱炉内に塵等の異物が侵入することを抑制することができる。
(形態5) 加熱炉には、半導体ウエハに対して安定な(非反応性の)ガスを供給可能な安定ガス供給管が設けられていることが好ましい。この場合、安定ガス供給管は、加熱炉内の全区間に亘って安定なガスを供給可能であることが好ましい。ここで、安定なガスには、例えば窒素ガスが挙げられる。
(形態6) 加熱炉には、半導体ウエハの表面に被膜を形成する反応性ガスを供給可能な反応ガス供給管が設けられていることが好ましい。この場合、反応ガス供給管は、加熱炉の中間区間に位置する範囲のみに、反応性ガスを供給可能であることが好ましい。ここで、反応性ガスには、例えば酸化膜を形成する酸素ガスや、ポリシリコン膜を形成するシランガス等が挙げられる。
(形態7) 加熱炉には、加熱炉内のガスを排出するガス排出管が設けられていることが好ましい。この場合、ガス排出管は、搬送される半導体ウエハを挟んで、安定ガス供給管や反応ガス供給管と対向することが好ましい。
【実施例】
【0013】
本発明を実施した実施例について図面を参照しながら説明する。図1に、本実施例の熱処理装置10の構成を示す模式図を示す。図2は、図1中のII−II線断面図である。熱処理装置10は、半導体ウエハ100を加熱する熱処理を行うための装置である。熱処理装置10による熱処理により、導電型不純物を拡散させるアニール処理や、酸化膜等の被膜形成処理を行うことができる。本明細書では、半導体ウエハ100の加熱を伴うアニール処理や被膜形成処理を総括して、単に熱処理と称することがある。
【0014】
図1、図2に示すように、熱処理装置10は、主に、半導体ウエハ100を加熱する加熱炉12と、半導体ウエハ100を加熱炉12内で搬送する複数の搬送シャフト40を備えている。複数の搬送シャフト40は、モータ48が設けられている。モータ48は、複数の搬送シャフト40をそれぞれ回転させる。
加熱炉12は、断面形状が略円形の管形状を有している。ここで、加熱炉12の内径は、半導体ウエハ100の径よりも十分に大きい。加熱炉12の一端には、半導体ウエハ100を搬入可能な大きさで開口する搬入口12aが形成されている。加熱炉12の他端には、半導体ウエハ100を搬出可能な大きさで開口する搬出口12bが形成されている。即ち、搬入口12a及び搬出口12bの径は、半導体ウエハ100の径よりも十分に大きい。
詳しくは後述するが、処理対象である半導体ウエハ100は、複数の搬送シャフト40によって、搬入口12aから加熱炉12内に搬入され、加熱炉12内を搬送されて、搬出口12bから搬出される。複数の搬送シャフト40は、前工程から順次供給される半導体ウエハ100を、加熱炉12に順次搬入し、加熱炉12内を搬送して、加熱炉12外へ順次搬出する。
【0015】
加熱炉12は、略水平に配置されている。即ち、搬入口12aと搬出口12bは、鉛直方向の高さ位置が互いに等しく、同一の水平面内に位置している。そして、加熱炉12は、搬入口12aから搬出口12bまで、水平面内で略直線状に伸びている。
この構成によると、搬入口12aや搬出口12bから加熱炉12内に塵等の異物が侵入することを抑制することができる。換言すれば、搬入口12aと搬出口12bの高さ位置が異なり、管状の加熱炉12が水平方向に対して傾斜していると、搬入口12a又は搬出口12bから加熱炉12内に塵等の異物が侵入しやすくなる。例えば、搬入口12aよりも搬出口12bの方が上方に位置しており、加熱炉12が搬出口12bに向かって上方に傾斜している場合を想定する。この場合、加熱炉12内の高温なガスは、上方に位置する搬出口12bに向かって流れていく。その結果、加熱炉12内には搬入口12aから搬出口12bに向かう気流が発生し、搬入口12aから多くの外気が流れ込む。このとき、外気に含まれる塵等の異物が、外気と共に加熱炉12内に侵入しやすくなる。同様に、搬出口12bよりも搬入口12aの方が上方に位置しており、加熱炉12が搬入口12aに向かって上方に傾斜している場合には、外気と共に異物が搬出口12bから加熱炉12内に侵入しやすくなる。
【0016】
加熱炉12には、複数のヒータ14が設けられている。ヒータ14は、リング形状を有しており、管状の加熱炉12を周方向から囲繞している。ヒータ14の内周面は、加熱炉12内に向けて放熱するヒータ面となっている。複数のヒータ14は、加熱炉12の軸方向(図1中の左右方向)に沿って配列されている。本実施例では、リング形状を有する5つのヒータ14が、加熱炉12の軸方向に沿って配列されている。
ここで、個々のヒータ14は、リング形状のものに限られず、例えば複数のパネルヒータ(平面形状のヒータ)を、加熱炉12の周囲に複数配置して構成してもよい。
【0017】
複数のヒータ14は、図示しない温度調節装置によって、その出力が個々に制御される。それにより、図3に示すように、加熱炉12内には、搬入口12aから搬出口12bに向う方向(以下、単に搬送方向と称する)に沿って温度分布が形成されている。ここで、図3に示すグラフにおいて、横軸Xは搬入口12aからの距離を示しており、縦軸Tは温度を示している。
図1、図3に示すように、加熱炉12の搬入口12a側に位置する第1区間S1では、加熱炉12内の温度が搬送方向に沿って連続的に上昇している。なお、搬入口12aは常に開口しているので、搬入口12a付近では室温に近い温度となっている。次に、加熱炉12の中間部分に位置する第2区間S2では、加熱炉12内の温度が略一定に維持されている。第2区間S2における温度は、半導体ウエハ100に行う熱処理に応じて、必要とされる処理温度に設定することができる。最後に、加熱炉12の搬出口12b側に位置する第3区間S3では、加熱炉12内の温度が搬送方向に沿って下降している。なお、搬出口12bも常に開口しているので、搬出口12b付近では室温に近い温度となっている。
【0018】
加熱炉12内には、上記したような温度勾配が形成されている。それにより、搬入口12aから加熱炉12内に搬入された半導体ウエハ100は、加熱炉12の内部へと搬送される間に徐々に昇温されていく。また、搬出口12bから加熱炉12外に搬出される半導体ウエハ100は、搬出口12bへと搬送される間に徐々に降温されていく。それにより、加熱炉12内へ半導体ウエハ100が搬入される際、及び、加熱炉12外に半導体ウエハ100が搬出される際に、外部との温度差によって半導体ウエハ100の温度が急激に変化することが防止される。半導体ウエハ100の急激な温度変化が防止されることにより、熱応力に起因する半導体ウエハ100の破損が防止される。
また、全ての半導体ウエハ100は、搬入口12aから搬出口12bまで、加熱炉12内を同じように搬送される。従って、加熱炉12内の温度分布が搬送方向に沿って均一でなくとも、全ての半導体ウエハ100には略同一の熱履歴を与えることができる。
【0019】
図1、図2に示すように、加熱炉12には、安定ガス供給管20と、反応ガス供給管24が設けられている。安定ガス供給管20は、加熱炉12内の上部に設けられており、加熱炉12の搬入口12aから搬出口12bまで伸びている。安定ガス供給管20には、ガスを吐出するための吐出口20aが、加熱炉12の全区間S1、S2、S3に亘って複数形成されている。安定ガス供給管20の一端には、窒素ガスを供給する窒素供給装置22が接続されており、加熱炉12の全区間S1、S2、S3に亘って窒素ガスを供給可能となっている。なお、安定ガス供給管20は、半導体ウエハ100に対して安定な(非反応性の)ガスを供給するための管路であり、供給するガスは窒素ガスに限定されない。加熱炉12内を安定なガスで満たすことにより、半導体ウエハ100に無用に変質させることなく、半導体ウエハ100の熱処理を行うことができる。なお、安定ガス供給管20による窒素ガスの供給量は、搬入口12a及び搬出口12bの近傍で、特に多くすることも有効である。この場合、搬入口12a及び搬出口12bから大気が侵入することを効果的に防止することができる。
【0020】
反応ガス供給管24は、加熱炉12内の上部に設けられており、加熱炉12の搬入口12aから第2区間S2を越える位置まで伸びている。反応ガス供給管24にも、ガスを吐出するための吐出口24aが複数形成されている。ただし、反応ガス供給管24では、複数の吐出口24aが、加熱炉12の全区間S1、S2、S3ではなく、第2区間S2に位置する範囲に形成されている。反応ガス供給管24の一端には、酸素ガスを供給する酸素供給装置26が接続されており、加熱炉12の中間に位置する第2区間S2に、酸素ガスを供給可能となっている。高温に維持された第2区間S2に酸素ガスを供給することにより、少なくとも第2区間S2において、半導体ウエハ100の表面に酸化膜を形成することができる。このとき、安定ガス供給管20によって窒素ガスが同時に供給し、外部から加熱炉12内への空気の侵入を防止することができる。それにより、反応ガス供給管24からの酸素供給量を調節することによって、第2区間S2における酸素濃度を正確に調節することができる。
【0021】
ここで、反応ガス供給管24は、酸素ガスに限られず、他の反応性ガスを供給することもできる。例えば、反応ガス供給管24にシランガス等の供給装置を接続すれば、高温に維持された第2区間S2にシランガス等を供給することができ、半導体ウエハ100の表面にポリシリコン膜を形成することができる。このように、熱処理装置10では、半導体ウエハ100を単にアニール処理するだけでなく、反応ガス供給管24によって供給する反応性ガスの種類を変更することで、半導体ウエハ100の表面に酸化膜やポリシリコン膜といった様々な種類の被膜を形成することができる。
【0022】
図1、図2に示すように、加熱炉12には、ガス排出管28も設けられている。ガス排出管28は、加熱炉12内の下部に設けられており、加熱炉12の搬出口12bから第2区間S2を越える位置まで伸びている。ガス排出管28には、ガスを吸入するための吸入孔28aが複数形成されている。複数の吸入口28aは、加熱炉12の全区間S1、S2、S3ではなく、第2区間S2に位置する範囲に形成されている。ガス排出管28の一端には、図示しない吸引ポンプが接続されている。それにより、ガス排出管28は、加熱炉12の中間に位置する第2区間S2でガスを吸引し、吸引したガスを加熱炉12の外部に排出する。
【0023】
ガス排出管28は、搬送される半導体ウエハ100を挟んで、上部に位置する安定ガス供給管20及び反応ガス供給管24と対向している。それにより、少なくとも第2区間S2では、上方から下方に向う気流が形成されている。詳しくは後述するが、半導体ウエハ100は、搬送方向に対して垂直に支持されている。従って、当該気流は、半導体ウエハ100の表面に対して略平行に流れている。先に説明したように、加熱炉12の中間に位置する第2区間では、酸化膜等の被膜形成が行われる。その第2区間S2において、半導体ウエハ100の表面に対して平行な気流が形成されていると、半導体ウエハ100の表面に異物が吹きつけられず、また、付着している異物を除去することもできるため、形成する被膜に不純物が混入することを防止することができる。さらに、加熱炉12内で浮遊する異物についても、加熱炉12の外部へ速やかに排出される。
【0024】
図1に示すように、加熱炉12には、第1酸素計31と、第2酸素計32が設けられている。第1酸素計31及び第2酸素計32は、そのセンサヘッド31a、32aが加熱炉12内に配置されており、加熱炉12内の酸素濃度を測定する。
第1酸素計31は、第2区間S2の酸素濃度を監視するものであり、そのセンサヘッド31aは第1区間S1と第2区間S2との境界近傍に配置されている。センサヘッド31aが、第2区間S2内ではなく当該境界位置に配置されているのは、第2区間S2における酸素濃度の最低値を監視するためである。第1酸素計31で測定された酸素濃度は、酸素供給装置26による酸素ガスの供給量制御に用いられる。即ち、酸素供給装置26は、第1酸素計31による測定値に応じて、反応ガス供給管24に供給する酸素ガスの供給量を増減調節する。それにより、第2区間S2の酸素濃度が必要とされる濃度に維持される。なお、反応ガス供給管24から酸素以外の反応性ガスを供給する場合は、第1酸素計31に代えて、その反応性ガスの濃度を測定するセンサを設置するとよい。
第2酸素計32は、搬入口12aから侵入する外気を監視するものであり、そのセンサヘッド32aは搬入口12aの近傍に配置されている。第2酸素計32で測定された酸素濃度は、窒素供給装置22による窒素ガスの供給量制御に用いられる。即ち、窒素供給装置22は、第2酸素計32による測定値に応じて、安定ガス供給管20に供給する窒素ガスの供給量を増減調節する。それにより、搬入口12a及び搬出口12bから外気が侵入することを確実に防止する。
【0025】
次に、搬送シャフト40について説明する。図1、図2に示すように、本実施例の熱処理装置10では、四本の搬送シャフト40が設けられている。各々の搬送シャフト40は、石英で形成されており、約1200℃まで耐え得る耐熱性を有している。なお、搬送シャフト40は、必要な耐熱性を有する他の材料で形成することもできる。
複数の搬送シャフト40は、搬入口12aから加熱炉12内を通って搬出口12bまで、互いに平行に伸びている。なお、複数の搬送シャフト40の両端は、加熱炉12の外部まで伸びている。図2によく示されるように、四本の搬送シャフト40は、半導体ウエハ100の外周縁100eに当接するように、同一円周上に配設されている。図2中の矢印D1は、各々の搬送シャフト40の回転方向を示している。矢印D1で示すように、四本の搬送シャフト40は、モータ48(図1参照)によって同一方向に回転するように構成されている。
【0026】
図4は、搬送シャフト40の一部を拡大して示している。図4に示すように、搬送シャフト40には、その軸方向に沿って螺旋状に伸びる螺旋溝42(ねじ溝)が形成されている。螺旋溝42は、その幅が半導体ウエハ100の厚みよりも大きく、半導体ウエハ100の外周縁100eを受入可能となっている。また、螺旋溝42の底面42aには、微小な凹凸が形成されるように、軸方向に伸びる溝が多数形成されている。
本実施例の熱処理装置10では、全ての搬送シャフト40に、同様の螺旋溝42が形成されている。四本の搬送シャフト40は、半導体ウエハ100の外周縁100eを、螺旋溝42によって支持することができる。このとき、半導体ウエハ100は、搬送方向に対して垂直に支持される。搬送シャフト40がモータ48によって回転させられると、搬送シャフト40によって支持された半導体ウエハ100は、搬出口12bに向けて搬送される。即ち、四本の搬送シャフト40は、ねじ送りの原理によって半導体ウエハ100を搬送する。
【0027】
本実施例では、各々の搬送シャフト40に、同一方向に旋回する螺旋溝42が形成されている。そして、図2に示すように、各々の搬送シャフト40は、モータ48によって同一方向D1に回転する構成となっている。この構成によると、半導体ウエハ100は、螺旋溝42との間で生じる摩擦力によって、図2に示すD2方向に回転しながら搬送される。加熱炉12内では、搬送方向に垂直な断面において、避けられない温度差が生じ得る。このような場合でも、半導体ウエハ100が回転しながら搬送されれば、当該温度差に影響を受けることなく、半導体ウエハ100の全体を均一に加熱することができ、均一な熱履歴を与えることが可能となる。さらに、螺旋溝42の底面42aには、微小な凹凸が形成されているので、半導体ウエハ100と螺旋溝42との間で生じる摩擦力が比較的に大きく、半導体ウエハ100をより確実に回転させることができる。さらに、半導体ウエハ100が回転することにより、半導体ウエハ100に対して螺旋溝42が摺動することを抑制できるので、半導体ウエハ100の摩耗や欠損を避けることができる。
なお、上記した利点を特に必要としない場合、半導体ウエハ100を搬送する際に、半導体ウエハ100を回転させる必要は必ずしもない。この場合、搬送シャフト40毎に螺旋溝42の旋回方向を相違させ、それに応じて搬送シャフト40の回転方向が個々に異なる構成とすることもできる。即ち、各々の搬送シャフト40では、半導体ウエハ100を搬送可能となるように、その回転方向に応じて螺旋溝42が旋回していればよい。
【0028】
熱処理装置10では、搬送シャフト40に形成する螺旋溝42のリードを、搬送シャフト40の軸方向に沿って変化させることも有効である。ここで、螺旋溝42のリードとは、螺旋溝42が搬送シャフト40の回りを1周したときに、螺旋溝42が搬送シャフト40の軸方向に移動する移動量である。即ち、螺旋溝42のリードは、搬送シャフト40が一回転したときに半導体ウエハ100が搬送される距離に相当し、例えば螺旋溝42のリードを短くするほど、搬送シャフト40の回転速度に対して半導体ウエハ100の搬送速度を遅くすることができる。従って、螺旋溝42のリードを部分的に変化させると、搬送シャフト40の回転速度を一定に維持したまま、搬送方向の一部範囲で半導体ウエハ100の搬送速度を変化させることができる。
【0029】
本実施例の熱処理装置10では、図1に示すように、加熱炉12の第2区間S2に位置する範囲で、螺旋溝42のリードを短くしている。それにより、実際に熱処理が行われる第2区間S2に、半導体ウエハ100を長時間に亘って滞在させることができる。この構成によると、比較的に長い処理時間が必要とされる熱処理を、比較的に短い加熱炉12によって実施することが可能となる。
さらに、本実施例の熱処理装置10では、加熱炉12の外部の区間S0、S4に位置する範囲においても、螺旋溝42のリードを短くしている。搬入口12a側の外部に位置する区間S0は、搬送シャフト40に半導体ウエハ100を載置する区間である。この区間S0で螺旋溝42のリードを短くしておくと、螺旋溝42の軸方向への移動速度が遅くなり、半導体ウエハ100を搬送シャフト40に載置しやすい。一方、搬出口12b側の外部に位置する区間S4は、搬送シャフト40から半導体ウエハ100を取り上げる区間である。この区間S4で螺旋溝42のリードを短くしておくと、搬送シャフト40上の半導体ウエハ100の移動速度が遅くなり、搬送シャフト40から半導体ウエハ100が取り出しやすくなる。
【0030】
以上のように、本実施例の熱処理装置10では、前工程から順次供給される半導体ウエハ100を、回転する搬送シャフト40に順次載置することができる。搬送シャフト40に載置された半導体ウエハ100は、搬送シャフト40の螺旋溝42によって加熱炉12内へ順次搬入されていく。加熱炉12内へ搬入された半導体ウエハ100は、回転する搬送シャフト40の螺旋溝42によって加熱炉12内を搬送され、その間に熱処理が行われる。そして、加熱炉12で熱処理が完了した半導体ウエハ100は、回転する搬送シャフト40の螺旋溝42によって、加熱炉12から順次搬出される。このように、熱処理装置10は、半導体ウエハ100の熱処理を、一枚ずつ順次開始するとともに、一枚ずつ順次完了することができる。複数の半導体ウエハ100を一括して熱処理する必要がないので、仕掛品を無用に停滞させることがなく、半導体装置の製造を効率よく行うことが可能となる。
【0031】
また、本実施例の熱処理装置10では、全ての半導体ウエハ100が、搬入口12aから搬出口12bまで、加熱炉12内を同じように搬送される。即ち、複数の半導体ウエハ100を一括して熱処理する従来の技術と異なり、各々の半導体ウエハ100が特定の位置に留まることがない。それにより、加熱炉12内の温度分布がその断面ない搬送方向に沿って均一でなくとも、全ての半導体ウエハ100に略同一の熱履歴を与えることができる。さらに、半導体ウエハ100を回転させながら搬送することで、加熱炉12内の温度分布が搬送方向に垂直な断面内で均一でなくとも、半導体ウエハ100に与える熱履歴のばらつきを実質的に無くすこともできる。
【0032】
また、本実施例の熱処理装置10では、搬送される半導体ウエハ100が、搬送方向に対して垂直に支持されている。加熱炉12内の温度は、搬入口12a又は搬出口12bに向かって低下する。そのことから、加熱炉12内には、半導体ウエハ100の搬送方向に沿って温度勾配が生じている。この場合、例えば半導体ウエハ100が搬送方向に対して平行に保持されていると、半導体ウエハ100の搬送方向前方に位置する部分と、半導体ウエハ100の搬送方向後方に位置する部分との間で、比較的に大きな温度差が生じる。このような温度差が半導体ウエハ100に生じると、半導体ウエハ100には大きな熱応力が発生することから、半導体ウエハ100を破損させてしまうことがある。それに対して、半導体ウエハ100が搬送方向に対して略垂直に支持されていれば、半導体ウエハ100に生じる温度差は小さく抑えられ、半導体ウエハ100に過大な熱応力が生じることが防止される。
ただし、半導体ウエハ100の搬送速度が非常に低速であるなど、半導体ウエハ100に生じる温度差が小さい場合は、半導体ウエハ100を必ずしも垂直に支持する必要はない。この場合、複数の搬送シャフト40の位置関係を調整することで、半導体ウエハ100を搬送方向に対して斜めに支持しながら搬送することもできる。この構成であると、加熱炉12の断面積を比較的に小さくすることができる。
【0033】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、安定ガス供給管20、反応ガス供給管24、ガス排出管28の構成は、適宜変更することができる。図5に、その変形例を示す。図5に示す変形例のように、窒素供給装置22に接続された安定ガス供給管20を、加熱炉12の壁部を貫通するように配設することができる。この場合、複数の安定ガス供給管20を、加熱炉12の全体に亘って配設するとよい。また、酸素供給装置26に接続された反応ガス供給管24についても、加熱炉12の壁部を貫通するように配設することができる。この場合、複数の反応ガス供給管24を、加熱炉12の中間部分のみに配設するとよい。さらに、ガス排出管28についても、加熱炉12の中央位置で、加熱炉12の壁部を貫通するように配設することができる。
【0034】
また、加熱炉12には、さらに多数のヒータ14を配設することができる。図6にその変形例を示す。図6に示す変形例では、リング形状を有する6つのヒータ14が、加熱炉12の軸方向に沿って配設されている。さらに、この変形例では、搬出口12bに連なる区間で、ヒータ14が配設されていない。この構成によると、ヒータ14が存在しない区間も含め、搬送方向に沿って7区間に分けて温度勾配を形成することができる。なお、加熱炉12に設けるヒータ14の数は、逆に少なくすることも可能であり、少なくとも1つのヒータ14を第2区間S2(図1参照)に設ければ、搬送方向に沿って温度上昇する第1区間S1(図1参照)と、搬送方向に沿って温度が略一定の第2区間S2と、搬送方向に沿って温度低下する第1区間S3を実現することができる。
【0035】
また、搬送シャフト40には、複数の螺旋溝42を並行するように形成することもできる。即ち、多条の螺旋溝42を形成してもよい。螺旋溝42が一条である場合、搬送シャフト40が一回転する毎に、一枚の半導体ウエハ100を搬入、搬出することができる。それに対して、例えば螺旋溝42が二条である場合、搬送シャフト40が半回転する毎に、一枚の半導体ウエハ100を搬入、搬出させることができる。
【0036】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】熱処理装置の構成を示す模式図。
【図2】図1中のII−II線断面図。
【図3】加熱炉内の搬送方向における温度分布を示す図。
【図4】搬送シャフトを拡大して示す図。
【図5】安定ガス供給管、反応ガス供給管、ガス排出管の構成を変形した変形例を示す図。
【図6】ヒータの構成を変形した変形例を示す図。
【符号の説明】
【0038】
10:熱処理装置
12:加熱炉
12a:搬入口
12b:搬出口
14:ヒータ
20:安定ガス供給管
22:窒素供給装置
24:反応ガス供給管
26:酸素供給装置
28:ガス排出管
31:第1酸素計
32:第2酸素計
40:搬送シャフト
42:螺旋溝
42a:螺旋溝42の底面
48:モータ
100:半導体ウエハ
100e:外周縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハを熱処理するための熱処理装置であって、
半導体ウエハを搬入可能な搬入口から半導体ウエハを搬出可能な搬出口まで伸びる管状の加熱炉と、
前記搬入口から前記加熱炉内を通って前記搬出口まで伸びる複数の搬送シャフトと、
前記複数の搬送シャフトをそれぞれ回転させるアクチュエータを備え、
前記複数の搬送シャフトは、半導体ウエハの外周縁に当接する位置関係で配設されているとともに、各々の搬送シャフトには、半導体ウエハの外周縁を受入可能な螺旋溝が形成されていることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記螺旋溝のリードは、搬送シャフトの軸方向に沿って変化することを特徴とする請求項1に記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記螺旋溝のリードは、前記加熱炉の中間区間に位置する範囲で短くなっていることを特徴とする請求項2に記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記複数の搬送シャフトには、同一方向に旋回する螺旋溝がそれぞれ形成されており、
前記アクチュエータは、複数の搬送シャフトを同一方向にそれぞれ回転させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記螺旋溝の内面の少なくとも一部には、凹凸が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の熱処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−153468(P2010−153468A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327724(P2008−327724)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】