説明

半導体チップ接合体の製造方法

【課題】カメラによる突起状電極及び/又はアライメントマークのコントラスト像の認識を容易にし、高精度な接合を行うことのできる半導体チップ接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】突起状電極、又は、突起状電極及びアライメントマークを有し、マトリックスとしての樹脂成分と樹脂成分に不溶な固体成分とを含有する封止樹脂層が前記突起状電極及び/又は前記アライメントマークを被覆するように設けられた半導体チップを準備する工程と、前記封止樹脂層に対して、600nm以上の波長を含む光を光軸が斜めになるように照射し、前記突起状電極及び/又は前記アライメントマークのコントラスト像をカメラにより認識させる工程と、被接合体としての基板又はその他の半導体チップに対して、前記半導体チップの位置調整を行う工程と、前記半導体チップの前記突起状電極と、前記基板又はその他の半導体チップの電極部とを接合するとともに、前記封止樹脂層を硬化させる工程とを有する半導体チップ接合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラによる突起状電極及び/又はアライメントマークのコントラスト像の認識を容易にし、高精度な接合を行うことのできる半導体チップ接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ますます進展する半導体装置の小型化、高集積化に対応するために、ハンダ等からなる突起状電極(バンプ)を有する半導体チップを用いたフリップチップ実装が多用されている。特に、半導体チップの突起状電極を有する面に予め封止樹脂層を設けておき、突起状電極の接合と樹脂封止とを同時に行うフリップチップ実装が重要視されている。
【0003】
このようなフリップチップ実装では、封止樹脂層越しに、突起状電極及び半導体チップ上に設けられたアライメントマークをカメラで認識し、半導体チップと被接合体との位置調整(アライメント)を行う。そのため、封止樹脂層の透明性が不充分であると、突起状電極及びアライメントマークをカメラが充分に認識できないという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するために、例えば、特許文献1には、半導体チップに絶縁性樹脂層を予め設けた半導体装置の製造方法において、絶縁性樹脂層は可視光透過率が10%以上であることが好ましく、これにより、位置調整工程において突起電極の位置の確認を通常の可視光カメラ等で行うことができる旨が記載されている。また、特許文献2には、半導体用接着組成物の波長350〜900nmにおける最大光線透過率が70%以上であると、フリップチップ実装時のアライメントマークの認識が良好となるため、高精度に回路基板上の電極パッドと半導体チップの接合を行うことができる旨が記載されている。
しかしながら、封止樹脂層の透明性を確保しようとすると組成の自由な設計が妨げられ、例えば、無機充填材の添加により線膨張率を低下させたり、厚い封止樹脂層を形成したりすることが困難となる。
【0005】
一方、例えば、特許文献3には、ウエハと露光マスクとの位置検出装置であって、露光面に対して斜めの光軸に沿って照明光を照射する照明光学系と、ウエハマークとマスクマークからの散乱光を結像させる受光面を有する観測光学系とを有する位置検出装置が記載されている。特許文献3には、同文献に記載の位置検出装置によれば、像と背景とのコントラストを高め、容易に位置検出を行うことができる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−260220号公報
【特許文献2】国際公開第06/132165号パンフレット
【特許文献3】特開平11−243048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載の位置検出装置は、封止樹脂層が設けられていないウエハに対して位置検出を行う装置である。封止樹脂層が予め設けられており、突起状電極及びアライメントマークが封止樹脂層により被覆されてしまっている半導体チップ又はウエハに対していかなる工夫を施せばアライメント性が向上するかについては、特許文献3においては検討されていない。
【0008】
本発明は、カメラによる突起状電極及び/又はアライメントマークのコントラスト像の認識を容易にし、高精度な接合を行うことのできる半導体チップ接合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、突起状電極、又は、突起状電極及びアライメントマークを有し、マトリックスとしての樹脂成分と樹脂成分に不溶な固体成分とを含有する封止樹脂層が前記突起状電極及び/又は前記アライメントマークを被覆するように設けられた半導体チップを準備する工程と、前記封止樹脂層に対して、600nm以上の波長を含む光を光軸が斜めになるように照射し、前記突起状電極及び/又は前記アライメントマークのコントラスト像をカメラにより認識させる工程と、被接合体としての基板又はその他の半導体チップに対して、前記半導体チップの位置調整を行う工程と、前記半導体チップの前記突起状電極と、前記基板又はその他の半導体チップの電極部とを接合するとともに、前記封止樹脂層を硬化させる工程とを有する半導体チップ接合体の製造方法である。
以下、本発明を詳述する。
【0010】
本発明者は、特に封止樹脂層が固体状硬化剤、固体状硬化促進剤、無機充填材等の固体成分を含有する場合には、突起状電極及びアライメントマークをカメラが充分に認識できず、正確にアライメントできなかったり、歩留まりが低下したりすることを見出した。
本発明者は、封止樹脂層が予め設けられた、突起状電極、又は、突起状電極及びアライメントマークを有する半導体チップを接合して得られる半導体チップ接合体の製造方法において、封止樹脂層に対して、特定の波長を含む光を光軸が斜めになるように照射し、突起状電極及び/又はアライメントマークのコントラスト像をカメラにより認識させることにより、封止樹脂層が固体成分を含有する場合であってもコントラスト像の認識が容易となって高精度な接合を行うことができることを見出し、本発明を完成させるに至った。このような方法によれば、封止樹脂層の組成を設計する際の自由度も大きく広がる。
【0011】
本発明の半導体チップ接合体の製造方法では、まず、突起状電極、又は、突起状電極及びアライメントマークを有し、マトリックスとしての樹脂成分と樹脂成分に不溶な固体成分とを含有する封止樹脂層が上記突起状電極及び/又は上記アライメントマークを被覆するように設けられた半導体チップを準備する工程を行う。
【0012】
上記封止樹脂層は、マトリックスとしての樹脂成分と、樹脂成分に不溶な固体成分とを含有する。
上記樹脂成分として、例えば、後述する硬化性化合物、硬化性化合物と反応可能な官能基を有する高分子化合物等が挙げられる。上記固体成分として、例えば、後述する固体状硬化剤、固体状硬化促進剤、無機充填材等が挙げられる。なお、本明細書中、樹脂成分に不溶な固体成分とは、封止樹脂層においてマトリックスとしての樹脂成分に溶解せずに固体状で存在している配合成分を意味する。
【0013】
上記封止樹脂層は、硬化性化合物と硬化剤とを含有することが好ましく、硬化性化合物と硬化剤との組み合わせによって上記封止樹脂層の硬化性を制御することができる。
上記硬化性化合物は、例えば、ユリア化合物、メラミン化合物、フェノール化合物、レゾルシノール化合物、エポキシ化合物、アクリル化合物、ポリエステル化合物、ポリアミド化合物、ポリベンズイミダゾール樹脂、ジアリルフタレート化合物、キシレン化合物、アルキル−ベンゼン化合物、エポキシアクリレート化合物、珪素樹脂、ウレタン化合物、エピスルフィド化合物、ビスマレイミド化合物等の熱硬化性化合物が挙げられる。なかでも、得られる半導体チップ接合体が信頼性及び接合強度に優れることから、エポキシ化合物又はエピスルフィド化合物が好ましい。
【0014】
上記エポキシ化合物は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ化合物、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ポリエーテル変性エポキシ化合物、ベンゾフェノン型エポキシ化合物、アニリン型エポキシ化合物、NBR変性エポキシ化合物、CTBN変性エポキシ化合物、及び、これらの水添化物等が挙げられる。なかでも、速硬化性が得られやすいことから、ベンゾフェノン型エポキシ化合物が好ましい。これらのエポキシ化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0015】
上記ビスフェノールF型エポキシ化合物のうち、市販品として、例えば、EXA−830−LVP、EXA−830−CRP(以上、DIC社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ化合物のうち、市販品として、例えば、EX−201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ポリエーテル変性エポキシ化合物のうち、市販品として、例えば、EX−931(ナガセケムテックス社製)、EXA−4850−150(DIC社製)、EP−4005(アデカ社製)等が挙げられる。
【0016】
上記エピスルフィド化合物は、エピスルフィド基を有していれば特に限定されず、例えば、エポキシ化合物のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物が挙げられる。
上記エピスルフィド化合物として、具体的には例えば、ビスフェノール型エピスルフィド化合物(ビスフェノール型エポキシ化合物のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物)、水添ビスフェノール型エピスルフィド化合物、ジシクロペンタジエン型エピスルフィド化合物、ビフェニル型エピスルフィド化合物、フェノールノボラック型エピスルフィド化合物、フルオレン型エピスルフィド化合物、ポリエーテル変性エピスルフィド化合物、ブタジエン変性エピスルフィド化合物、トリアジンエピスルフィド化合物、ナフタレン型エピスルフィド化合物等が挙げられる。なかでも、ナフタレン型エピスルフィド化合物が好ましい。これらのエピスルフィド化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
なお、エピスルフィド化合物は、例えば、チオシアン酸カリウム、チオ尿素等の硫化剤を使用して、エポキシ化合物から容易に合成される。酸素原子から硫黄原子への置換は、エポキシ基の少なくとも一部におけるものであってもよく、すべてのエポキシ基の酸素原子が硫黄原子に置換されていてもよい。
【0017】
上記エピスルフィド化合物のうち、市販品として、例えば、YL−7007(水添ビスフェノールA型エピスルフィド化合物、ジャパンエポキシレジン社製)等が挙げられる。
【0018】
上記封止樹脂層が上記エピスルフィド化合物を含有する場合、上記エピスルフィド化合物の配合量は特に限定されないが、上記封止樹脂層全体における好ましい下限が3重量%、好ましい上限が12重量%であり、より好ましい下限が6重量%、より好ましい上限が9重量%である。
【0019】
上記封止樹脂層は、上記硬化性化合物と反応可能な官能基を有する高分子化合物(以下、単に、反応可能な官能基を有する高分子化合物ともいう)を含有することが好ましい。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有することにより、得られる封止樹脂層は、熱によるひずみが発生する際の接合信頼性が向上する。
【0020】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記硬化性化合物としてエポキシ化合物を用いる場合には、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等を有する高分子化合物等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を有する高分子化合物が好ましい。上記エポキシ基を有する高分子化合物を含有することで、得られる封止樹脂層の硬化物は、優れた可撓性を発現する。即ち、上記封止樹脂層の硬化物は、上記硬化性化合物としてのエポキシ化合物に由来する優れた機械的強度、耐熱性及び耐湿性と、上記エポキシ基を有する高分子化合物に由来する優れた可撓性とを兼備することができ、耐冷熱サイクル性、耐ハンダリフロー性及び寸法安定性等に優れ、高い接着信頼性及び高い導通信頼性を発現する。
【0021】
上記エポキシ基を有する高分子化合物は特に限定されず、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子化合物であればよく、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ化合物、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を多く含有することができ、得られる封止樹脂層の硬化物の機械的強度及び耐熱性がより優れたものとなることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。これらのエポキシ基を有する高分子化合物は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0022】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、上記エポキシ基を有する高分子化合物の重量平均分子量の好ましい下限は1万である。上記エポキシ基を有する高分子化合物の重量平均分子量が1万未満であると、得られる封止樹脂層の硬化物の可撓性が充分に向上しないことがある。
【0023】
上記反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量の好ましい下限は200、好ましい上限は1000である。上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量が200未満であると、得られる封止樹脂層の硬化物の可撓性が充分に向上しないことがある。上記エポキシ基を有する高分子化合物のエポキシ当量が1000を超えると、得られる封止樹脂層の硬化物の機械的強度及び耐熱性が低下することがある。
【0024】
上記封止樹脂層が上記反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有する場合、上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が30重量部である。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量が1重量部未満であると、得られる封止樹脂層は、熱によるひずみが発生する際の接合信頼性が低下することがある。上記反応可能な官能基を有する高分子化合物の配合量が30重量部を超えると、得られる封止樹脂層の硬化物は、機械的強度、耐熱性及び耐湿性が低下することがある。
【0025】
上記硬化剤は特に限定されず、従来公知の硬化剤を上記硬化性化合物に合わせて適宜選択することができる。上記硬化性化合物としてエポキシ化合物を用いる場合、上記硬化剤として、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の加熱硬化型酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、カチオン系触媒型硬化剤、及び、これらのマイクロカプセル型硬化剤等が挙げられる。これらの硬化剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、これらの硬化剤のうち、固体状硬化剤として、マイクロカプセル型硬化剤が挙げられる。
【0026】
上記封止樹脂層が上記硬化剤を含有する場合、上記硬化剤の配合量は特に限定されないが、上記硬化性化合物の官能基と等量反応する硬化剤を用いる場合、上記硬化性化合物の官能基量に対して、0.6〜1当量であることが好ましい。また、触媒として機能する硬化剤を用いる場合、上記硬化剤の配合量は、上記硬化性化合物100重量部に対して好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。
【0027】
上記封止樹脂層は、硬化速度又は硬化温度を調整する目的で、上記硬化剤に加えて硬化促進剤を含有することが好ましい。
上記硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤、及び、これらのマイクロカプセル型硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、硬化速度の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。これらの硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
上記イミダゾール系硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イソシアヌル酸で塩基性を保護したイミダゾール系硬化促進剤(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)、その他、2MZ、2MZ−P、2PZ、2PZ−PW、2P4MZ、C11Z−CNS、2PZ−CNS、2PZCNS−PW、2MZ−A、2MZA−PW、C11Z−A、2E4MZ−A、2MA−OK、2MAOK−PW、2PZ−OK、2MZ−OK、2PHZ、2PHZ−PW、2P4MHZ、2P4MHZ−PW、2E4MZ・BIS、VT、VT−OK、MAVT、MAVT−OK(以上、四国化成工業社製)等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
これらの硬化促進剤のうち、固体状硬化促進剤として、常温固体で樹脂成分に非相溶の硬化促進剤やマイクロカプセル型硬化促進剤が挙げられる。
【0029】
上記硬化促進剤の配合量は特に限定されず、上記硬化性化合物100重量部に対して好ましい下限が1重量部、好ましい上限が10重量部である。
【0030】
上記硬化性化合物としてエポキシ化合物を用い、かつ、上記硬化剤と上記硬化促進剤とを併用する場合、用いる硬化剤の配合量は、用いるエポキシ化合物中のエポキシ基に対して理論的に必要な当量以下とすることが好ましい。上記硬化剤の配合量が理論的に必要な当量を超えると、得られる封止樹脂層を硬化して得られる硬化物から、水分によって塩素イオンが溶出しやすくなることがある。即ち、硬化剤が過剰であると、例えば、得られる封止樹脂層の硬化物から熱水で溶出成分を抽出した際に、抽出水のpHが4〜5程度となるため、エポキシ化合物から塩素イオンが多量溶出することがある。従って、得られる封止樹脂層の硬化物1gを、100℃の純水10gで2時間浸した後の純水のpHが6〜8であることが好ましく、pHが6.5〜7.5であることがより好ましい。
【0031】
上記封止樹脂層は、上記封止樹脂層の粘度を低減させるために反応性希釈剤を含有してもよい。
上記反応性希釈剤は、エポキシ基を有することが好ましく、1分子中のエポキシ基数の好ましい下限が2、好ましい上限が4である。1分子中のエポキシ基数が2未満であると、封止樹脂層の硬化後に充分な耐熱性が発現しないことがある。1分子中のエポキシ基数が4を超えると、硬化によるひずみが発生したり、未硬化のエポキシ基が残存したりすることがあり、これにより、接合強度の低下又は繰り返しの熱応力による接合不良が発生することがある。上記反応性希釈剤の1分子中のエポキシ基数のより好ましい上限は3である。
また、上記反応性希釈剤は、芳香環及び/又はジシクロペンタジエン構造を有することが好ましい。
【0032】
上記反応性希釈剤は、120℃での重量減少量及び150℃での重量減少量の好ましい上限が1%である。120℃での重量減少量及び150℃での重量減少量が1%を超えると、得られる封止樹脂層の硬化中又は硬化後に未反応物が揮発してしまい、生産性又は得られる半導体チップ接合体の性能に悪影響を与えることがある。
また、上記反応性希釈剤は、上記硬化性化合物よりも硬化開始温度が低く、硬化速度が大きいことが好ましい。
【0033】
上記封止樹脂層が上記反応性希釈剤を含有する場合、上記封止樹脂層全体における上記反応性希釈剤の配合量の好ましい下限は1重量%、好ましい上限は20重量%である。上記反応性希釈剤の配合量が上記範囲外であると、得られる封止樹脂の粘度を充分に低減できないことがある。
【0034】
上記封止樹脂層は、更に、チキソトロピー付与剤を含有してもよい。
上記チキソトロピー付与剤を含有することで、上記封止樹脂層の粘度挙動を、フリップチップ実装に最適となるように調整することができる。
【0035】
上記チキソトロピー付与剤は特に限定されず、例えば、金属微粒子、炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、酸化アルミニウム、窒化硼素、窒化アルミニウム、硼酸アルミ等の無機微粒子等が挙げられる。なかでも、ヒュームドシリカが好ましい。
また、上記チキソトロピー付与剤は、必要に応じて、表面処理が施されていてもよい。上記表面処理が施されたチキソトロピー付与剤は特に限定されないが、表面に疎水基を有する粒子が好ましく、具体的には、例えば、表面を疎水化したヒュームドシリカ等が挙げられる。
【0036】
上記チキソトロピー付与剤が粒子状である場合、該粒子状チキソトロピー付与剤の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい上限は1μmである。上記粒子状チキソトロピー付与剤の平均粒子径が1μmを超えると、得られる封止樹脂層が所望のチキソトロピー性を発現できないことがある。
【0037】
上記封止樹脂層全体における上記チキソトロピー付与剤の配合量は特に限定されないが、上記チキソトロピー付与剤に表面処理がなされていない場合には、好ましい下限が0.5重量%、好ましい上限が20重量%である。上記チキソトロピー付与剤の配合量が0.5重量%未満であると、得られる封止樹脂層に充分なチキソトロピー性を付与することができないことがある。上記チキソトロピー付与剤の配合量が20重量%を超えると、半導体チップ接合体を製造する際に上記封止樹脂層の排除性が低下することがある。上記チキソトロピー付与剤の配合量のより好ましい下限は3重量%、より好ましい上限は10重量%である。
【0038】
上記封止樹脂層は、更に、無機充填材を含有することが好ましい。
上記無機充填材として、例えば、表面処理されたシリカフィラー等が挙げられる。上記表面処理されたシリカフィラーは特に限定されないが、フェニルシランカップリング剤で表面処理されたシリカフィラーが好ましい。
【0039】
上記封止樹脂層が上記無機充填材を含有する場合、上記封止樹脂層における上記無機充填材の配合量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が30重量部、好ましい上限が400重量部である。上記無機充填材の配合量が30重量部未満であると、得られる封止樹脂層が充分な信頼性を保持することができないことがある。上記無機充填材の配合量が400重量部を超えると、得られる封止樹脂層の粘度が高くなりすぎることがある。
【0040】
上記封止樹脂層は、必要に応じて、無機イオン交換体を含有してもよい。
【0041】
上記封止樹脂層は、必要に応じて、ブリード防止剤、イミダゾールシランカップリング剤等の接着性付与剤等のその他の添加剤を含有してもよい。
【0042】
上記封止樹脂層が設けられた半導体チップを準備する方法として、例えば、ウエハに上記封止樹脂層を設けた後でウエハを個別の半導体チップにダイシングする方法、ウエハを個別の半導体チップにダイシングした後で半導体チップに上記封止樹脂層を設ける方法等が挙げられる。
上記封止樹脂層をウエハ又は半導体チップに設ける方法は特に限定されず、例えば、ペースト状の封止樹脂組成物をスクリーン印刷等によりウエハ又は半導体チップに塗布する方法、シート状の封止樹脂組成物をウエハ又は半導体チップに貼り合わせる方法等が挙げられる。また、シート状の封止樹脂組成物をウエハ又は半導体チップに貼り合わせる場合には、上記封止樹脂層と基材とを有するシート状材料を用い、このシート状材料をウエハに貼り合わせた状態でウエハのバックグラインドを行った後、基材の剥離及びウエハのダイシングを経て、ウエハを個別の半導体チップにダイシングしてもよい。
【0043】
上記封止樹脂層が設けられた半導体チップにおいては、上記封止樹脂層が半導体チップの突起状電極及び/又はアライメントマークを被覆している。
本発明の半導体チップ接合体の製造方法では、後述する工程において、上記封止樹脂層に対して、特定の波長を含む光を光軸が斜めになるように照射し、上記突起状電極及び/又は上記アライメントマークのコントラスト像をカメラにより認識させることにより、上記封止樹脂層が固体成分を含有する場合であってもコントラスト像の認識が容易となって高精度な接合を行うことができる。
【0044】
本発明の半導体チップ接合体の製造方法では、次いで、上記封止樹脂層に対して、600nm以上の波長(可視光(赤色の光)領域〜近赤外線領域)を含む光を光軸が斜めになるように照射し、上記突起状電極及び/又は上記アライメントマークのコントラスト像をカメラにより認識させる工程を行う。
【0045】
上記工程によれば、カメラにより上記突起状電極及び/又は上記アライメントマークのコントラスト像をはっきりと認識することができる。従って、本発明の半導体チップ接合体の製造方法によれば、アライメント性が向上し、高精度な接合を行うことができる。
これは、(1)600nm以上という波長が、上記封止樹脂層に含まれるエポキシ化合物、ビスマレイミド化合物等の樹脂成分が吸収しにくい波長であること、(2)このような光を上記封止樹脂層に対して光軸が斜めになるように照射することにより、上記封止樹脂層に含まれる固体成分による散乱光を抑制できること、及び、これら(1)と(2)との相乗効果によって、上記封止樹脂層に被覆されている上記突起状電極及び/又は上記アライメントマークに、上記600nm以上の波長を含む光を効率よく照射できることによると推測される。
光が600nm未満の波長のみを含む場合には、カメラにより上記突起状電極及び/又は上記アライメントマークのコントラスト像をはっきりと認識することができない。上記波長の好ましい下限は700nm、好ましい上限は900nmである。
【0046】
本明細書中、封止樹脂層に対して光を光軸が斜めになるように照射するとは、例えば、封止樹脂層に対して入射角が45〜60°程度の角度となるように光を照射することを意味する。
【0047】
上記波長を上述した範囲に調整する方法として、例えば、白色光の波長をフィルターで調整する方法、上述した範囲の波長を出力する単色光源を使用する方法等が挙げられる。
また、上記封止樹脂層に対して、上述した範囲の波長を含む光を光軸が斜めになるように照射し、上記突起状電極及び/又は上記アライメントマークのコントラスト像をカメラにより認識する装置として、例えば、光源の位置及び波長を調節した光源装置を、通常のアライメントカメラ付フリップチップボンダに組み合わせた装置等が挙げられる。
【0048】
本発明の半導体チップ接合体の製造方法では、次いで、被接合体としての基板又はその他の半導体チップに対して、上記半導体チップの位置調整を行う工程を行う。
上記位置調整は、上述した工程におけるカメラによる上記突起状電極及び/又は上記アライメントマークのコントラスト像の認識に基づいて行われる。
【0049】
本発明の半導体チップ接合体の製造方法では、次いで、上記半導体チップの上記突起状電極と、上記基板又はその他の半導体チップの電極部とを接合するとともに、上記封止樹脂層を硬化させる工程を行う。
上記工程では、上記半導体チップの上記突起状電極と上記基板又はその他の半導体チップの上記電極部とを接触させた後、上記突起状電極及び上記電極部のうちの少なくとも一方を構成する電極材料を溶融させることで、上記突起状電極と上記電極部とを接合するとともに上記封止樹脂層を硬化させる。本発明の半導体チップ接合体の製造方法では、上述する工程においてカメラにより上記突起状電極及び/又は上記アライメントマークのコントラスト像をはっきりと認識することができるため、アライメント性が向上し、高精度な接合を行うことができる。
【0050】
上記突起状電極と上記電極部とを接触させる際の温度、荷重、時間等の条件は、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば特に限定されず、例えば、120〜220℃、1〜30N、0.1〜60秒等が挙げられる。上記荷重が低すぎると、上記突起状電極と上記電極部とが接触しないことがある。上記荷重が高すぎると、上記突起状電極がつぶれすぎて隣の突起状電極と接触し、ショートすることがある。
上記突起状電極と上記電極部とを接触させる際には、例えば、フリップチップボンダ等を用いることができる。
【0051】
上記突起状電極と上記電極部とを接合する際の温度、荷重、時間等の条件は、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば特に限定されず、例えば、230〜300℃、1〜30N、0.1〜60秒等が挙げられる。なお、上記突起状電極及び上記電極部のうちの少なくとも一方を構成する電極材料がハンダである場合には、ハンダ溶融温度以上に加熱すればよい。
上記突起状電極と上記電極部とを接合する際には、フリップチップボンダを用いてもよく、リフロー炉等の他の加熱手段を用いてもよい。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、カメラによる突起状電極及び/又はアライメントマークのコントラスト像の認識を容易にし、高精度な接合を行うことのできる半導体チップ接合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。なお、実施例、比較例で使用した材料の詳細は次に示す通りである。
【0054】
(エポキシ化合物)
ビフェニル型エポキシ樹脂(商品名「YX−4000」、ジャパンエポキシレジン社製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「1004AF」、ジャパンエポキシレジン社製)
【0055】
(反応可能な官能基を有する高分子化合物)
グリシジル基含有アクリル樹脂(重量平均分子量2万、商品名「G−0250SP」、日油社製)
【0056】
(硬化剤)
トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸(商品名「YH−306」、ジャパンエポキシレジン社製)
【0057】
(硬化促進剤)
2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン イソシアヌル酸付加塩(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)
【0058】
(無機充填材)
表面フェニル処理無機フィラー(シリカ)(商品名「SE−1050−SPT」、アドマテックス社製)
表面疎水化ヒュームドシリカ(商品名「MT−10」、トクヤマ社製)
【0059】
(その他)
シランカップリング剤(商品名「KBM−573」、信越化学社製)
溶剤 メチルエチルケトン(MEK、和光純薬工業社製)
【0060】
(実施例1)
(1)アライメント装置
光源として、白色光を用いた。この光を光ファイバーで、フリップチップボンダ(東レエンジニアリング社製)のアライメントカメラに接続されたレンズの外周の外側から内側へ集光させるように向けて、封止樹脂面に斜めから照射するように配置した。入射角はおおよそ45〜60°となるように調整した。
【0061】
(2)半導体チップ接合体の製造
直径20cm、厚み725μmであり、表面に高さ35μm、幅35μm角の正方形の銅ポストの上に高さ20μmのハンダをつけたバンプ(突起状電極)が50μmピッチでペリフェラル状に多数形成されている、1チップの大きさが7.6mm角のウエハを用意した。表1の組成に従って、ホモディスパーを用いて上記に示す各材料を攪拌混合し、封止樹脂溶液を調製した。スピンコーターによりバンプ付ウエハのバンプ面に、バンプ及びアライメントマークを被覆するように封止樹脂溶液をコートし、80℃20分で乾燥し、封止樹脂層付きウエハを得た。
ダイシングリングの付いたダイシングテープにウエハ裏面(封止樹脂層が形成されていない面)を貼り合わせた。その後、ダイシングストリートに従って、封止樹脂層ごとウエハをダイシングカットし、封止樹脂層付きチップをピックアップした。フリップチップボンダのヘッドで封止樹脂層付きチップを保持した状態で、上記のアライメント装置を用いて封止樹脂層付きチップと基板とのアライメント(位置調整)を行い、その後、フリップチップボンダにより、封止樹脂層付きチップのバンプと基板の電極部とを接合するとともに封止樹脂層を硬化させ、半導体チップ接合体を得た。
【0062】
(実施例2)
封止樹脂溶液の組成を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、半導体チップ接合体を得た。
【0063】
(実施例3)
アライメント装置の光源として、ハロゲンランプの白色光を集光して使用し、光軸線上にフィルターを設けることで波長700〜900nmの近赤外線領域の光を取り出したこと以外は実施例2と同様にして、半導体チップ接合体を得た。
【0064】
(実施例4)
アライメント装置の光源として、ハロゲンランプの白色光を集光して使用し、光軸線上にフィルターを設けることで波長620〜750nmの赤色の光を取り出したこと以外は実施例2と同様にして、半導体チップ接合体を得た。
【0065】
(実施例5)
アライメント装置の光源として、ハロゲンランプの白色光を集光して使用し、光軸線上にフィルターを設けることで波長570〜620nmの黄色の光を取り出したこと以外は実施例2と同様にして、半導体チップ接合体を得た。
【0066】
(比較例1)
同軸光(封止樹脂層に対して垂直に入射する光)を利用してアライメントを実施したこと以外は実施例1と同様にして、半導体チップ接合体を得た。
【0067】
(比較例2)
同軸光(封止樹脂層に対して垂直に入射する光)を利用してアライメントを実施したこと以外は実施例2と同様にして、半導体チップ接合体を得た。
【0068】
(比較例3)
同軸光(封止樹脂層に対して垂直に入射する光)を利用してアライメントを実施したこと以外は実施例3と同様にして、半導体チップ接合体を得た。
【0069】
(比較例4)
アライメント装置の光源として、ハロゲンランプの白色光を集光して使用し、光軸線上にフィルターを設けることで波長380〜450nmの紫色の光を取り出したこと以外は実施例2と同様にして、半導体チップ接合体を得た。
【0070】
(比較例5)
アライメント装置の光源として、ハロゲンランプの白色光を集光して使用し、光軸線上にフィルターを設けることで波長450〜495nmの青色の光を取り出したこと以外は実施例2と同様にして、半導体チップ接合体を得た。
【0071】
(比較例6)
アライメント装置の光源として、ハロゲンランプの白色光を集光して使用し、光軸線上にフィルターを設けることで波長495〜570nmの緑色の光を取り出したこと以外は実施例2と同様にして、半導体チップ接合体を得た。
【0072】
(コントラスト像評価)
実施例及び比較例におけるアライメント調整の際に、カメラに認識された突起状電極及び/又はアライメントマークのコントラスト像について、以下の基準で評価を行った。コントラスト像がかなり鮮明に観察された場合を◎、ある程度鮮明に観察された場合を○、不鮮明ではあるが観察可能であった場合を△、ほとんど観察されなかった場合を×とした。結果を表1に示す。
【0073】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、カメラによる突起状電極及び/又はアライメントマークのコントラスト像の認識を容易にし、高精度な接合を行うことのできる半導体チップ接合体の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
突起状電極、又は、突起状電極及びアライメントマークを有し、マトリックスとしての樹脂成分と樹脂成分に不溶な固体成分とを含有する封止樹脂層が前記突起状電極及び/又は前記アライメントマークを被覆するように設けられた半導体チップを準備する工程と、
前記封止樹脂層に対して、600nm以上の波長を含む光を光軸が斜めになるように照射し、前記突起状電極及び/又は前記アライメントマークのコントラスト像をカメラにより認識させる工程と、
被接合体としての基板又はその他の半導体チップに対して、前記半導体チップの位置調整を行う工程と、
前記半導体チップの前記突起状電極と、前記基板又はその他の半導体チップの電極部とを接合するとともに、前記封止樹脂層を硬化させる工程とを有する
ことを特徴とする半導体チップ接合体の製造方法。

【公開番号】特開2013−58548(P2013−58548A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195104(P2011−195104)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】